ガソリンによって燃料供給されるエンジンは一般的には、製造コスト節約を達成するように設計され、これにより、エンジンに入る空気のスロットル調整(制限)の目的のためおよび燃焼室へと送達される均質な空気燃料混合物の発生の起因する、制御方法の意図される設計の非効率および損失が可能になる。ガソリンエンジンは、設計された運転速度またはRPM(毎分回転数)と、およその理論空燃比におけるトルク範囲とで動作して、均質な混合物が形成される。前記均質な混合物は、燃焼室内のいずれの位置においても火花点火可能である。生成される出力の制御は、空気吸気を低減するためのスロットル調整レベルと、付加される燃料量の対応する低減(制限)との関数である。有害排出物の低減を一定レベルで達成している現代のエンジンにおいて、完全燃焼のための理論空燃比の余剰空気または「リーンな燃料側」上の予混合を提供するための吸気系真空度の大きさに応じた比率で燃料が供給される。
現代の予混合エンジンは、吸気系内に入る空気の可変絞り(スロットル調整)と、電子制御燃料噴射器とによって動作する。前記電子制御燃料噴射器は、各位置または機械カムによって作動する吸気弁の吸気マニホルードポートにおいて、燃料を吸気系内に噴霧する。そのため、得られた均質な空気燃料混合物を各燃焼室内へと送る最終タイミングが前記カム作動型吸気弁から提供される。
「アイドル」(最低持続RPM)時およびエンジン減速時において、吸気真空状態は最高となり、約14.7質量部分の空気が1質量部分未満の燃料と混合され(すなわち、約14.7:1)、これにより、燃焼時におけるエネルギー放出が最小となるように予混合が形成される。加速によりより高いRPMで走行している場合、より多量の空気が吸気系内へとスロットル調整され、より多量の燃料を加えることで、予混合における空燃比をほぼ14.7:1で維持することができる。このような空燃比は、巡航およびより高出力動作において用いられる。
エンジンの吸気系の真空状態を保持するためには高出力が必要であり、このような高出力は、当該エンジンが送達することが可能な出力から減算する必要がある。アイドル、巡航および加速を含む全ての動作モードにおいて、大幅な量のエンジン出力が、寄生損失のために用いられている(例えば吸気真空度維持に用いられる出力)。
ディーゼルエンジンの場合、燃焼室内に入る空気のスロットル調整を行わないため、吸気系真空度の維持に必要な出力損失を回避できるという利点がある。全負荷下におけるディーゼルエンジンの空燃比は、17:1〜29:1である。アイドル時または無負荷時においては、この比は145:1を越え得る。直接噴射動作型ディーゼルの燃焼室内において、空燃比は局所的に変化する。ディーゼル燃料噴射は液体燃料をストリームまたは液滴として送達するように設計されているため、燃料と空気との均質混合を初期に達成することは不可能である場合がある。
点火および持続燃焼は、「噴霧化」後に発生し得る。噴霧化において、十分な高温空気を浸透させることにより、高速噴霧された液体燃料液滴が蒸発し、その後さらなる高温空気を浸透させることで大きな分子をより小さな成分へと分解し、これらの小成分を酸化させることで、連鎖反応の継続のための十分な熱を放出することにより、前記液滴が「熱分解」する。
高圧力ディーゼル燃料噴射を行うと、より良好な燃料噴霧化が得られ、その結果燃料量が低減し、その結果酸化シーケンスが発生しなくなり、これにより、視認可能な煙粒子を含む多様な汚染物質が燃焼室から出て行く。最近の進歩により、より高い燃料噴射圧力が可能となっており、その結果、ポンプ装置中で発生する熱も増加し、また、高圧燃料送達回路の冷却に必要な燃料ポンピングおよび燃料再循環を達成するためにエンジン出力から転用する必要のある出力も増加している。
圧縮加熱空気における液滴蒸発および化学的熱分解発生の結果得られたディーゼル燃料の燃焼特性は、以下のような変数の関数である:圧縮比、大気圧、過給圧力、前記燃焼室内に入る空気の温度、ピストンへの熱損失後の圧縮空気の温度、シリンダー、およびヘッド、噴射を開始するタイミング、噴射圧力、噴射口の寸法と数および方向、噴射継続時間、噴射器放出曲線など。
圧縮開始時における特定の大きさの圧縮比、大気圧、過給圧力および空気温度と、ピストンに対する熱損失後の圧縮空気温度、シリンダー、およびエンジンヘッド構成要素とが分かれば、トルク要求またはエンジン負荷を満たすように直接型ディーゼル燃料噴射を開始する電子的タイミングを調節することができる。自動車用途のための高速ディーゼルエンジンにおいて、起動時、アイドル時または無外部負荷時における最適化された噴射は、いくつかの場合において上死点前(BTDC)におけるクランク軸で約2度〜上死点後(ATDC)において4度であり、これにより起動をより高速にすることができる。
ディーゼル燃料の開始の負荷タイミングは、約8度BTDCから4度ATDCへと部分的に調節することができる。圧縮速度および圧縮レベルと、ピストン、シリンダー、およびエンジンヘッド構成要素に対する熱損失とに起因する空気温度および空気圧力に応じて、大幅な「ディーゼル遅延」時間がディーゼル燃料液滴の蒸発および熱分解において必要であるため、ディーゼル燃料噴射を開始するタイミングの進歩が必要である。全負荷のための最大定格トルクを生成するためには、ディーゼル燃料噴射の開始を8〜16度BTDCにおいて開始し、最大燃料率における燃焼継続時間は、約40〜70度のクランク軸回転間において変化する。
圧縮ストローク時においてディーゼル燃料噴射を開始するタイミングが早すぎた場合、ピストンがまだ上昇しているときに大幅な燃焼が発生し、その結果、ピストン、シリンダーおよびエンジンヘッド構成要素に対する熱損失の増加に起因して、純トルク生成量が低下し、熱効率にも妥協が生じる。その結果、燃料消費およびエンジンメンテナンスの率が増加する。しかし、触媒反応体および他の処理後の装置への熱送達を増加するために、このような動作を意図的に行う場合もある。圧縮時においてシリンダー圧力が急上昇した場合も、軸受およびリングの摩耗ならびにエンジン騒音の増加に繋がる。一方、ディーゼル燃料噴射が遅すぎた場合、純トルクが同様に低下し、不完全燃焼が発生し、その結果、未燃炭化水素の放出が増加する。
ポート燃料噴射ガソリンによって動作するより一般的な予混合エンジンの場合、噴射燃料量は、スロットル調整される空気のレベルと、噴射器が「開口」するレベル(すなわち、開口時間)とに直接比例する。対照的に、現在のディーゼル噴射器の場合、噴射圧力と燃焼室圧力との間の差、温度に依存する燃料密度、および燃料の動的圧縮率の関数としてディーゼル燃料の質量流がほぼ変化する。
上記した変数に対応し、有害放出物の低減を可能にするためには、電子制御によって動作するディーゼル燃料噴射器において、以下のような異なる妥協および目的に合わせていくつかの噴射期間を用いればよい。
第1の噴射を短時間で継続することで、燃焼圧力上昇速度を低下させ、これにより、燃焼騒音を低下させ、高速圧力上昇を伴う「ディーゼルノック」燃焼時における酸化窒素(NOX)発生を一定レベルまで低下させる。
その後、燃料送達の主要部分である第2の噴射において、主要噴射フェーズを行う。
第3の噴射において、より小量の空気を浸透させることで、煤塵放出を低下させる。このような煤塵放出の低下は、燃焼後残留物を燃焼させることで、第1の噴射および第2の噴射において不完全燃焼によって残留した炭化水素を急冷する必要無く消費することにより、可能となる。
その後、第4の噴射をクランク軸で180度までの角度において行って、再加熱における出力生成を無くす目的のための噴射後遅延を可能とし、詳細には、セラミック微粒子フィルターの「再生」と呼ばれる処理においてNOXアキュムレーター型触媒コンバーターの可能化および/または収集された炭化水素粒子を「完全燃焼」するための平均排出ガス温度の十分な上昇を行う。
典型的なディーゼル燃料噴射量は、第1の噴射器事前噴射における約1立方ミリメートルから、全負荷送達のための約50立方ミリメートルまでの範囲である。噴射継続時間は、1〜2ミリ秒である。
ほとんどの種類の自動車用ディーゼルエンジンにおいては、各ディーゼル燃料噴射器への燃料送達をコモンレール送達によって行っている。そのため、燃料加圧機能と燃料噴射機能とが分離されており、コモンレールシステムは一般的には、機械的加圧およびタイミング動作が組み合わされた従来のシステムの場合よりも、より広範囲の噴射タイミングおよび圧力値にわたって燃料供給を行うことができる。
高圧ポンプにより、コモンレールによって送達される燃料が加圧される。マスター燃料レール制御および圧力調節弁により、燃料圧力を電子制御装置によって設定されたレベルで維持する。前記コモンレール圧力の維持により、各燃料噴射器が機能する。電子コンピューター(ECU)は、燃料圧力、エンジン速度、カムシャフト位置、アクセルペダル移動量、過給機給気圧、吸気空気温度、およびエンジン冷却剤温度についてのセンサー入力を受信する。用途に応じて、さらなるセンサーから、車両速度、排気温度、排気酸素濃度、触媒背圧および微粒子捕捉背圧が報告され得る。
ほとんどの場合、コモンレールディーゼルエンジンにおいては、寒冷天候における始動を可能にするための空気の事前加熱のためにグロープラグが未だ必要であることが多い。グロープラグの制御の他に、ECUのさらなる機能として、機械式過給機または排気駆動ターボチャージャ給気圧、排出ガス再循環レベルの調節があり、いくつかのエンジンにおいて、スワールまたは他の吸気空気流れの推進のための吸気ポート調節可能フラップが調節される。
高圧ポンプは、コモンレールシステムにおいて1600バール(23500PSI)までのディーゼル燃料を供給する。このようなポンプは、クランク軸から駆動され、多くの場合において、ラジアルピストン設計である。これらの極めて高圧のポンプ構成要素の潤滑は、フィルター付きディーゼル燃料によって慎重に行われる。典型的なポンプの場合、純出力容量から約4kWまでのエンジン出力が必要となる。
燃料圧力制御は典型的には、ソレノイド弁によって行われる。ソレノイド弁において、1kHzの周波数におけるパルス幅変調によって弁開口が変化する。圧力制御弁が起動していないとき、内部ばねにより、燃料圧力が約100バール(1500PSI)において維持される。前記弁の起動時において、電磁石プランジャーから付加された力によって前記ばねが支援され、これにより、前記弁の純開口が低減して、送達燃料圧力が増加する。燃料圧力制御弁はまた、ポンプからの高周波圧力パルスを低減するための機械圧力ダンパーとしても機能し得る。
ディーゼルエンジン排気低減のためのアプローチとして、排出ガス再循環と、排気系内への尿素添加の2つのアプローチがある。この排気系内への尿素添加においては、燃焼室の動作によって発生した酸化窒素を水素によって低減する。
排出ガス再循環においては、吸気空気放出と混合される排出ガスの一部を用いて、酸化窒素排気を低減する。その結果、酸素濃度および燃焼室における利用可能性、ピーク燃焼温度、および排出ガス温度が低下する。また、エンジンの体積効率も大幅に低下する。動作状態の一部において、再循環率は50パーセントにも達する場合がある。
再循環に起因して、予混合エンジン動作におけるスロットル調整において空気が発生するという同様の妥協が多く発生する。
未燃燃料酸化型触媒コンバーターは、未燃燃料成分と、燃焼室内において予備加熱された酸素との反応を促進することにより、炭化水素および一酸化炭素排気を低減するために用いられる。未燃燃料成分(例えば一酸化炭素および炭化水素)が燃焼室の排気弁から逃げた場合、これらの成分は酸化して、水および二酸化炭素を形成する。動作温度に迅速に到達するために、この種の触媒コンバーターは、エンジンの近隣に取り付けられる。
燃焼プロセスにおいて発生した酸化窒素を減衰させるために、アキュムレーター型触媒コンバーターも用いられている。この種のリアクターは、30秒〜数分間の期間にわたってNOXを保存することによって滞留時間を延ばすことにより、NOXを分解させる。空燃比が燃料リーンであるため燃料燃焼において酸素が余剰となる場合、酸化窒素は、NOXアキュムレーター表面上の金属酸化物と組み合わさって硝酸エステルを形成する。
しかし、このようなNOX保存はわずか短期間であり、酸化窒素によってさらなる酸化窒素へのアクセスが遮断された場合、前記保存されたNOXを窒素および酸素の二原子分子へと放出および変換するプロセスにより、「分極した」触媒コンバーターを再生する必要がでてくる。このような再生を行うためには、エンジンを濃縮混合物と共に短期間動作させる必要がでてくる。例示的に、前記エンジンの動作は、濃縮燃料混合物の空燃比が約13.8:1である状態で、新規到着したNOXがNOXアキュムレーター表面上の金属酸化物と一時的に組み合わさることが可能な十分な時間にわたって行う必要がある。
再生を行う必要がある時期を検出した後、当該再生が十分に完了したことを検出するプロセスは複雑であり、疑似信号の要因にもなる。1つのアプローチとして、保存された酸化窒素の量を触媒コンバーター温度に基づいて推測および計算するためのモデルを用いたアプローチがある。別のアプローチとして、アキュムレーター触媒コンバーターの下流に特定のNOXセンサーを配置することで、アキュムレーターアセンブリー中の金属酸化物の有効性の喪失を検出するアプローチもある。十分な再生の決定は、モデルに基づいたアプローチまたは触媒床の下流に配置された酸素センサーによって行う。高酸素から低酸素への信号変化は、再生動作の終了が近づいていることを示す。
NOX保存触媒システムを低温始動または軽負荷エンジン動作から有効かつ確実に作動させるためには、電気抵抗ヒーターを用いて排出ガスを加熱することが多い。その場合、出力において別の寄生損失が発生し、エンジンの燃料消費が増加して電力が発生し、前記電力がバッテリーに保存され、前記保存されたエネルギーは、前記エンジンの有効作動が得られない様態で消散する。また、このような場合、メンテナンスにおけるコストも嵩む。
別の種類の寄生損失および動作費用における懸念として、ディーゼル排出ガス中のNOX低減のための排気処理として還元剤(例えば希釈尿素)が用いられる点がある。このアプローチにおいて、還元剤(例えば希釈尿素溶液)を比較的少量だけ排気に加える。加水分解触媒コンバーターにより、前記尿素は解離してアンモニアとなり、このアンモニアから放出された水素がNOXと反応して、窒素および水が形成される。このシステムは、通常の空燃比よりもリーンとなるようにNOX排気を有効に低減するには十分であり得、場合によっては、尿素分配システムおよび動作コストのうち一部を相殺するように燃料節約を向上することができる。尿素タンクは、必要に応じて再充填が必要な旨の警告を出すように構成され、これにより、排気中の酸化窒素が低減する。
上記および他の制約は、ガソリン燃料エンジンおよびディーゼル燃料エンジンの作動において存在している。
本出願は、以下の特許出願それぞれの内容全体を参考のため援用する:米国特許出願第12/841170号(出願日:2010年7月21日、名称:INTEGRATED FUEL INJECTORS AND IGNITERS AND ASSOCIATED METHODS OF USE AND MANUFACTYREE)、米国特許出願第12/804510号(出願日:2010年7月21日、名称:FUEL INJECTOR ACTUATOR ASSEMBLIES AND ASSOCIATED METHODS OF USE AND MANUFACTURE)、米国特許出願第12/841146号(出願日:2010年7月21日、名称:INTEGRATED FUEL INJECTOR IGNITERS WITH CONDUCTIVE CABLE ASSEMBLIES)、米国特許出願第12/841149号(出願日:2010年7月21日、名称:SHAPING A FUEL CHARGE IN A COMBUSTION CHAMBER WITH MULTIPLE DRIVERS AND/OR IONIZATION CONTROL)、米国特許出願第12/841135号(出願日:2010年7月21日、名称:CERAMIC INSULATOR AND METHODS OF USE AND MANUFACTURE THEREOF)、米国特許出願第12/804509号(出願日:2010年7月21日、名称:METHOD AND SYSTEM OF THERMOCHEMICAL REGENERATION TO PROVIDE OXYGENATED FUEL, FOR EXAMPLE, WITH FUEL-COOLED FUEL INJECTORS)、米国特許出願第12/804508号(出願日:2010年7月21日、名称:METHODS AND SYSTEMS FOR REDUCING THE FORMATION OF OXIDES OF NITROGEN DURING COMBUSTION IN ENGINES)、米国特許出願第12/581825号(出願日:2009年10月19日、名称:MULTIFUEL STORAGE, METERING AND IGNITION SYSTEM)、米国特許出願第12/653085号(出願日:2009年12月7日、名称:INTEGRATED FUEL INJECTORS AND IGNITERS AND ASSOCIATED METHODS OF USE AND MANUFACTURE)、米国特許出願第12/006774号(現米国特許第7628137号)(出願日:2008年1月7日、名称:MULTIFUELSTORAGE, METERING AND IGNITION SYSTEM)、PCT出願第PCT/US09/67044号(出願日:2009年12月7日、名称:INTEGRATED FUEL INJECTORS AND IGNITERS AND ASSOCIATED METHODS OF USE AND MANUFACTURE)、米国仮出願第61/237425号(出願日:2009年8月27日、名称:OXYGENATED FUEL PRODUCTION)、米国仮出願第61/237466号(出願日:2009年8月27日、名称:MULTIFUEL MULTIBURST)、米国仮出願第61/237479号(出願日:2009年8月27日、名称:FULL SPECTRUM ENERGY)、米国仮出願第61/304403号(出願日:2010年2月13日、名称:FULL SPECTRUM ENERGY AND RESOURCE INDEPENDENCE)、および米国仮出願第61/312100号(出願日:2010年3月9日、名称:SYSTEM AND METHOD FOR PROVIDING HIGH VOLTAGE RF SHIELDING, FOR EXAMPLE, FOR USE WITH A FUEL INJECTOR)。本出願は、以下の特許出願それぞれの内容全体を参考のため援用する:本出願と同時に2010年10月27日に出願され、名称がINTEGRATED FUEL INJECTOR IGNITERS SUITABLE FOR LARGE ENGINE APPLICATIONS AND ASSOCIATED METHODS OF USE AND MANUFACTURE(弁理士事件整理番号69545−8039US)、およびFUEL INJECTOR SUITABLE FOR INJECTING A PLURALITY OF DIFFERENT FUELS INTO A COMBUSTION CHAMBER(弁理士事件整理番号69545−8054US)という米国特許出願。
概要
本開示において、燃焼室内において燃料を燃焼させるための装置、システムおよび方法について説明する。さらに、本開示において、燃焼室内におけるイオン化を制御するための装置、システムおよび方法、関連付けられたシステム、アセンブリー、構成要素および方法について説明する。例えば、以下に説明する実施形態のうちいくつかは、燃焼室内におけるイオン化の適応制御を、前記燃焼室内の多様な状態および/または前記燃焼室内の点火装置/噴射器の領域またはその近隣における多様な状態に基づいて行うことに関する。多様な本開示の実施形態の深い理解のために、以下の記載および図1〜図9において、特定の詳細について説明する。しかし、内燃機関、噴射器、点火装置および/または燃焼系の他の局面と関連付けられることの多い周知の構造およびシステムについての他の詳細については、多様な本開示の実施形態の記載を不必要に曖昧にしないようにするために、以下においては説明しない。よって、以下に記載される詳細のうちいくつかは、関連分野における当業者による記載の実施形態の作製および理解が可能なように以下の実施形態を記載することが理解される。しかし、詳細および利点のうちいくつかは、しかし、特定の本開示の実施形態の実行において不要である場合もある。
図面中に記載される詳細、寸法、角度、形状および他の特徴のうちの多くは、本開示の特定の実施形態の例示に過ぎない。従って、他の実施形態においては、本開示の意図または範囲から逸脱することなく、他の詳細、寸法、角度および特徴が可能である。加えて、当業者であれば、本開示のさらなる実施形態は、以下に記載される詳細のうち一部がなくても実施可能であることを理解する。
本明細書中において、「一実施形態」または「実施形態」とは、当該実施形態と関連して記載された特定特徴、構造または特性が本開示の少なくとも1つの実施形態において含まれることを意味する。よって、本明細書中の多様な部分における「一実施形態において」または「実施形態において」という記載は、必ずしも同じ実施形態を指していない。さらに、特定の実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造または特性は、1つ以上の他の実施形態における任意の適切な様態と組み合わせることができる。本明細書中に記載の見出しは、あくまで便宜上のものであり、請求される開示の範囲または意味を妨げるものではない。
適切なシステムおよび構成要素
図1は、本開示の実施形態に従って構成された統合型の噴射器/点火装置110(「噴射器110」)の模式断面側面図である。図1に示す噴射器110は、異なる燃料を燃焼室104内に噴射し、燃料噴射または爆発のパターンおよび/または頻度を燃焼室104内の燃焼特性および状態に基づいて適応的に調節し、適応制御システムからの命令を制御されかつ/または受信するように、構成される。前記適応制御システムは、燃焼室104内におけるイオン化を制御する。噴射器110は、高速点火および完全燃焼のために、燃料噴射を最適化することができる。燃料噴射に加えて、噴射器110は、1つ以上の統合型の点火機能部を含む。前記1つ以上の統合型の点火機能部は、噴射された燃料を点火するように構成される。このようにして、噴射器110を用いて、複数の選択された異なる燃料に対して動作することが可能なように従来の内燃機関を変換することが可能となる。図示の噴射器110の特徴のうちいくつかを例示のために模式的に図示しているが、いくつかのこれらの模式的に図示された特徴のうちいくつかについては、本開示の実施形態の多様な特徴を参照して詳細に説明する。よって、図1中の噴射器の模式的に図示の構成要素の位置、寸法、方向などは、本開示を制限することを意図しない。さらに、適切な噴射器についてのさらなる詳細が、米国特許出願第12/653085号(出願日:2009年12月7日、名称:INTEGRATED FUEL INJECTORS AND IGNITERS AND ASSOCIATED METHODS OF USE AND MANUFACTURE)中に開示がある。ここに、同文献全体を参考のため援用する。
図示の実施形態において、噴射器110は、本体112を含む。本体112は、中央部116を有する。中央部116は、基部114と、ノズル部118との間に延びる。ノズル部118は、エンジンヘッド107内のポートを通じて、燃焼室104とのインターフェースにおけるノズル部118の端部119の位置へと少なくとも部分的に延びる。噴射器110は、通路または通路123をさらに含む。通路または通路123は、本体112を通じて基部114からノズル部118へと延びる。通路123は、燃料を本体112内に流動させるように構成される。通路123はまた、他の構成要素(例えばアクチュエーター122)が本体112ならびに計装構成要素および/または噴射器110のエネルギー変換構成要素およびソース構成要素を通過するように構成される。特定の実施形態において、アクチュエーター122は、ケーブルまたはロッドであり得、第1の端部を有する。第1の端部は、ノズル部118の端部119によって支えられる流量制御装置または弁120へと動作可能に連結される。このようにして、流量制御弁120は、燃焼室104とのインターフェースの近隣に配置される。図1に図示していないが、特定の実施形態において、噴射器110は、1つ以上の流量制御弁と、燃焼室104の近隣に配置された1つ以上の逆止め弁と、本体112上の他の位置とを含み得る。
図示の実施形態の別の特徴によれば、アクチュエーター122はまた、第2の端部を含む。第2の端部は、ドライバー124へと動作可能に連結される。第2の端部は、コントローラーまたはプロセッサー126へとさらに連結され得る。多様な本開示の実施形態を参照して以下に詳述するように、コントローラー126および/またはドライバー124は、アクチュエーター122を高速かつ正確に作動させて、流量制御弁120を介して燃料を燃焼室104へと噴射させるように、構成される。例えば、特定の実施形態において、流量制御弁120は、(例えば燃焼室104に向かって)外側方向に移動することができ、他の実施形態において、流量制御弁120は、内側方向に(例えば燃焼室104から離隔方向に)移動して、前記燃料噴射を計量および制御することができる。さらに、特定の実施形態において、ドライバー124は、アクチュエーター122へ張力付与することで、流量制御弁120を閉口位置または配置位置において保持することができ、ドライバー124は、アクチュエーター122への張力付加を解除することで流量制御弁120から燃料を噴射させることができ、この逆も成り立つ。ドライバー124は、コントローラーおよび他の力発生構成要素(例えば音響構成要素、電磁石構成要素および/または圧電構成要素)に応答して、前記噴射された燃料爆発の所望の頻度およびパターンを達成することができる。
特定の実施形態において、アクチュエーター122は、燃焼室の特性および状態を検出するための1つ以上の統合型の感知構成要素および/または伝送構成要素を含み得る。例えば、アクチュエーター122は、光ファイバーケーブル、ロッドまたはケーブル内において統合された絶縁トランスデューサーから形成され得、あるいは、燃焼室情報の検出および通信を行うための他のセンサーを含み得る。図1に示すように、他の実施形態において、以下に詳細に説明するように、噴射器110は、噴射器110上の多様な位置に配置された他のセンサーまたは監視用計装を含み得る。例えば、本体112は、本体112の材料に統合された光ファイバーを含んでもよいし、あるいは、本体112の材料そのものを用いて燃焼情報を1つ以上のコントローラーと通信してもよい。加えて、流量制御弁120は、噴射器110と関連付けられた1つ以上のコントローラーへ燃焼情報を送信するためのセンサーを感知または支えるように構成され得る。この情報の送信は、無線、有線、光または他の伝送媒体を介して行うことができる。このようなフィードバックにより、燃料噴射要素および特性(例えば燃料送達圧力、燃料噴射を開始するタイミング、複数の層状または層状給気の生成のための燃料噴射継続時間、1つの、複数のまたは連続するプラズマ点火または容量放電のタイミング)の最適化のために、極めて高速かつ適応した調節を行うことが可能となる。
また、コントローラー126、ドライバー124および/またはアクチュエーター126によるこのようなフィードバックおよび適応調節により、結果(例えば出力生成、燃料経済、および酸化窒素を含む有害排気の最小化または排除)の最適化も可能となる。米国特許出願公開第2006/0238068号(本明細書中、同文献全体を参考のため援用する)において、噴射器110および本明細書中に記載の他の噴射器中の超音波トランスデューサーを作動させるための適切なドライバーが開示されている。
噴射器110はまた、点火およびフロー調節装置またはカバー121(図1中破線で示す)を任意選択的に含み得る。点火およびフロー調節装置またはカバー121は、エンジンヘッド107の近隣の端部119によって支えられる。カバー121は、流量制御弁120を少なくとも部分的に収容または包囲する。カバー121はまた、噴射器110の特定の構成要素(例えばセンサーまたは他の監視用構成要素)を保護するように構成され得る。カバー121はまた、点火触媒、触媒担体、燃料点火のための絶縁熱保持熱刺激装置、および/または噴射された燃料の点火のための第1の電極としても機能し得る。さらに、カバー121は、噴射された燃料の形状、パターン、および/またはフェーズに影響を与えるように構成することも可能である。流量制御弁120はまた、噴射された燃料のこれらの特性に影響を与えるように構成することも可能である。例えば、特定の実施形態において、カバー121および/または流量制御弁120は、燃料がこれらの構成要素を通過した際に突然気化するように構成することもできる。より詳細には、カバー121および/または流量制御弁120は、高速進入する液体燃料または液体および固体燃料の混合物からガスまたは上記を発生させる鋭い縁部、触媒または他の特徴を有する表面を含み得る。流量制御弁120の作動の加速および/または頻度により、噴射された燃料を突然気化させてもよい。動作時において、このような突然の気化に起因して、蒸気またはガスがノズル部118から発生し、これにより燃焼がより高速かつ完全になる。さらに、このような突然の気化を、液体燃料およびプラズマの過熱または推測される燃料爆発の音響推進力との多様な組み合わせにおいて用いてもよい。さらなる実施形態において、流量制御弁120を作動させる頻度に起因して、噴射された燃料の形状および/またはパターンに対してプラズマ放射が有利に影響し得る。米国特許出願第672636号(米国特許第4122816号)(本明細書中、同文献全体を参考のため援用する)において、噴射器110および本明細書中に記載の他の噴射器によってプラズマ放射を作動させるための適切なドライバーについての記載がある。
図示の実施形態の別の局面によれば、以下に詳細に説明するように、本体112の少なくとも一部は、異なる燃料(例えば未精製燃料または低エネルギー密度燃料)を燃焼させるための高エネルギー点火の可能化に適した1つ以上の誘電材料117から構成される。これらの誘電材料117により、点火のための火花またはプラズマの製造、絶縁および/または送達のための高電圧の十分な電気絶縁が可能となる。特定の実施形態において、本体112は、単一の誘電材料117から構成され得る。しかし、他の実施形態において、本体112は、2つ以上の誘電材料を含み得る。例えば、中央部116のうち少なくとも一部を第1の誘電強度を有する第1の誘電材料から構成し、ノズル部118のうち少なくとも一部を第1の誘電強度よりも高い第2の誘電強度を有する誘電材料から構成することができる。第2の誘電強度は比較的高いため、第2の誘電材料により、噴射器110を熱および機械的衝撃、ファウリング、電圧トラッキングなどから保護することができる。適切な誘電材料の例と、本体112に対するこれらの材料の位置とについて、以下に詳述する。
誘電材料に加えて、噴射器110は、噴射された燃料を燃焼させるための点火イベントを発生させるための出力または高電源に連結することもできる。第1の電極は、噴射器110を通じて延びる1つ以上の導体を介して、電源(例えば電圧発生源および/または逓倍ソース(例えば容量放電、誘導または圧電システム))に連結することができる。ノズル部118、流量制御弁120および/またはカバー121の領域は、点火イベント(例えば火花、プラズマ、圧縮点火動作、高エネルギー容量放電、長期誘導ソース火花および/または直流または高周波プラズマ)を発生させるための第1の電極として機能することができ、エンジンヘッド107の対応する第2の電極と共に燃焼を迅速に誘発、推進および完了させるための超音波用途と共に用いることができる。以下に詳述するように、第1の電極は、耐久性および長寿命が得られるように構成することができる。本開示のさらなる実施形態において、噴射器110は、燃焼室ソースからのエネルギー変換が可能でありかつ/または燃焼イベントから得られるエネルギーからの噴射器110の1つ以上の構成要素から駆動するための熱化学再生を介した廃熱またはエネルギーを回復するように、構成することができる。
図2は、本開示のいくつかの実施形態に従って構成された燃料噴射器210を有する内部燃焼システム200の一部の環境を示す側面図である。図示の実施形態において、模式的に示す噴射器210は、内燃機関204の燃焼室202内の異なる燃料を噴射および点火するように構成された1種類の噴射器を示すだけである。図2に示すように、燃焼室202は、噴射器210および弁を含むヘッド部と、移動可能なピストン201およびシリンダー203の内面との間に形成される。しかし、他の実施形態において、噴射器210は、他の種類の燃焼室および/またはエネルギー移動装置(例えば多様なベーン、軸、およびラジアルピストンエキスパンダー)を多数の種類のロータリー燃焼エンジンと共に用いた他の環境内において用いることができる。以下にさらに詳細に説明するように、噴射器210は、燃焼室202内の異なる燃料の噴射および点火のみを可能にするだけでなく、噴射器210が異なる燃焼状態または要求に従ってこれらの異なる燃料を適応的に噴射および点火しかつ/または燃焼室202内におけるイオン化レベルを適応的に変更することも可能にするいくつかの特徴を含む。例えば、噴射器210に含まれる1つ以上の絶縁材料は、異なる種類の燃料(例えば未精製燃料または低エネルギー密度燃料)を燃焼させるための高エネルギー点火を可能にするように構成される。これらの絶縁材料はまた、異なる種類の燃料(例えば、高電圧、疲労、衝撃および腐食劣化)の燃焼において必要な厳しい状態に耐えるようにも構成される。
図示の実施形態の別の局面によれば、噴射器210は、燃焼室202内の燃焼プロセスの多様な特性(例えば燃料空気中への浸透特性、点火特性、燃焼プロセス特性、燃焼室202の特性、エンジン204の特性)を感知するための計装をさらに含み得る。これらの感知された状態に応答して、噴射器210は、燃料噴射および点火特性の最適化、イオン化レベルの変更などを適応的に行うことで、燃料効率および出力生成の増加、騒音、エンジンノック、熱損失および/または振動の低減を達成することができ、これにより、エンジンおよび/または車両の寿命を延ばすことができる。さらに、噴射器210は、噴射された燃料の特定の流れまたは噴霧パターン205およびフェーズを達成するように燃料を燃焼室202内へと噴射するための作動構成要素を含む。例えば、噴射器210は、燃焼室202のインターフェースの近隣に配置された1つ以上の弁を含み得る。噴射器210の作動構成要素により、少なくとも以下の特徴を制御するための弁の正確な高周波動作が可能となる:すなわち、燃料噴射の開始および完了の;タイミング、燃料噴射の反復の頻度および継続時間、および/またはタイミングおよび点火イベントの選択。
図3A〜図3Dは、本開示の実施形態に従って構成された噴射器によって得ることが可能ないくつかの燃料爆発パターン305(第1〜第4のパターン305a〜305dとして個別に示す)を示す。当業者であれば理解するように、図示のパターン305は、本開示のいくつかの実施形態のうち代表的なもののみを示す。よって、本開示は、図3A〜図3Dに示すパターン305に限定されず、他の実施形態において、噴射器は、図示のパターン305と異なる爆発パターンを分配し得る。図3A〜図3Dに示すパターン305は異なる形状および構成を有するが、これらのパターン305は、連続する燃料層307を有する特徴を共有する。対応するパターン305の個々の層307により、噴射された燃料の体積比に対する比較的大きい表面という恩恵が得られる。体積比に対するこれらの大型表面により、燃料供給のより高い燃焼速度が得られ、また、燃料供給の完全燃焼の断熱および加速が支援される。このような高速かつ完全な燃焼により、燃料供給をより低速で燃焼した場合に比べていくつかの利点が得られる。例えば、燃料供給をより低速で燃焼した場合、より早期の点火が必要となり、燃焼室表面に対する熱損失が増加し、また、エンジンサイクルの圧縮プロセス時におけるより早期の点火からの早期の圧力上昇を解消するための後方作業または出力トルク損失が発生する。このような従来の燃焼動作の場合、有害排気(例えば炭素を豊富に含む炭化水素微粒子、酸化窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、急冷および未燃炭化水素)ならびにシリンダー壁部、ピストン、リング上の潤滑膜の有害な加熱および劣化ならびにその結果発生するピストン、リング、シリンダー壁部、弁、および燃焼室の他の構成要素の摩耗の点においても不利である。
よって、本開示によるシステムおよび噴射器によれば、従来の噴射器、グロープラグまたは点火プラグ(例えばディーゼル燃料噴射器、ガソリンのための点火プラグ)に代替し、広範囲の多様な再生可能燃料(例えば水素、メタン、および広範に利用可能な汚水、廃棄物および作物および動物排泄物から発生する多様な廉価な燃料アルコール)によりフルレート出力を生成することが可能な能力を得られる。これらの再生可能燃料は、精製化石燃料と比較してエネルギー密度がおよそ3000倍低い場合があり、本開示のシステムおよび噴射器は、効率的なエネルギー生成ならびに温室効果ガスの全体的発生量の大幅な低減または排除のために、これらの再生可能燃料を噴射および点火することができる。
本明細書中記載するように、いくつかの実施形態において、イオン化制御システムは、燃焼室内のイオン化レベルの制御、変更および/または個別調整を行うために、噴射器と通信する。図4は、イオン化を適応制御するためのシステム400を示す。システム400は、適応制御システム410を含む。適応制御システム410は、噴射器425または燃焼室420内の他の構成要素と通信する。適応制御システム410、燃焼室420および噴射器425についてのさらなる詳細について説明する。
本明細書中に記載のシステム、装置、構成要素およびモジュール(例えば図4〜図6に示すようなもの)は、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、あるいは本明細書中に記載の目的に適したソフトウェア、ファームウェアまたはハードウェアのまたは任意の組み合わせ(単数または複数)を含み得る。ソフトウェアおよび他のモジュールは、サーバー、ワークステーション、パーソナルコンピューター、コンピューターライズドタブレット、PDA、および本明細書中に記載の目的に適した他の装置に常駐し得る。換言すれば、本明細書中に記載のソフトウェアおよび他のモジュールは、汎用コンピューター(例えばサーバーコンピューター、無線装置またはパーソナルコンピューター)によって実行することができる。当業者であれば、前記システムの局面は、他の通信、情報処理またはコンピューターシステム構成によって実行することが可能であることを理解する(例えばインターネット装置、ハンドヘルド装置(例えばパーソナルデジタルアシスタント(PDA))、ウェアラブルコンピューター、全ての様態のセルラー電話または携帯電話、マルチプロセッサーシステム、マイクロプロセッサ−ベースのまたはプログラム可能な消費者電子機器、セットトップボックス、ネットワークPC、ミニコンピューター、メインフレームコンピューターなど)。実際、「コンピューター」、「サーバー」、「ホスト」、「ホストシステム」などの用語は一般的には、本明細書中において相互交換的に用いられ、上記の装置およびシステムならびに任意のデータプロセッサーのうちの任意のものを指す。さらに、前記システムの局面は、専用コンピューターまたはデータプロセッサー内において具現化することができる。このような専用コンピューターまたはデータプロセッサーは、本明細書中に詳述するコンピューターで実行可能な命令のうち1つ以上を行うように、特定にプログラム、構成または構築される。
ソフトウェアおよび他のモジュールへのアクセスは、ローカルメモリーを介して、ネットワークを介して、ブラウザーを介してまたはASPコンテキスト中の他のアプリケーションを介して、または本明細書中に記載の目的に適した他の手段を介して行うことができる。上記技術の例は、分散型コンピューティング環境においても実行することができ、このような環境において、タスクまたはモジュールは、リモート処理装置によって行われる。リモート処理装置は、通信ネットワークを通じて接続される(例えばローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、またはインターネット)。分散型コンピューティング環境、プログラムモジュールは、ローカルメモリー記憶装置およびリモートメモリー記憶装置双方に配置され得る。本明細書中に記載のデータ構造は、コンピューターファイル、変数、プログラミングアレイ、プログラミング構造、または任意の電子情報保存スキームまたは方法、あるいは本明細書中に記載の目的に適したこれらの任意の組み合わせを含み得る。本明細書中に記載のユーザーインターフェース要素は、グラフィカルユーザーインターフェース、コマンドラインインターフェース、および本明細書中に記載の目的に適した他のインターフェースからの要素を含み得る。本明細書中に提示および記載されるスクリーンショットは、情報の入力、アクセス、変更、操作、改変、調整および協働のために当該分野において公知のような異なる方法で表示することができる。
上記技術の例は、コンピューターで読み出し可能な媒体(例えば磁気的に読み出し可能なまたは光学的に読み出し可能なコンピューターディスク、ハードワイヤードまたは事前プログラムされたチップ(例えばEEPROM半導体チップ)、ナノテクノロジーメモリー、バイオロジカルメモリー、または他の情報記憶媒体)に記憶または分配することができる。実際、コンピューターによって実行される命令、データ構造、画面表示および本システムの局面下における他の情報は、インターネットを介してまたは他のネットワーク(例えば無線ネットワーク)を介して、伝播媒体の伝播信号(例えば電磁波(単数または複数)、音波)に一定期間にわたって分配することもできるし、あるいは、任意のアナログまたはデジタルネットワーク(パケット切り換え、回路切り換え、または他のスキーム)に設けることもできる。
図5は、本開示のいくつかの実施形態による適応制御システム410を示すブロック図である。適応制御システム410は、多様なハードウェアおよび/またはソフトウェアモジュールを含む。これらの多様なハードウェアおよび/またはソフトウェアモジュールは、燃焼室内の状態の監視、燃焼室内の噴射器の制御、燃焼室内のイオン化レベルの調節などを行うように構成またはプログラムされる。
適応制御システム410は、燃焼室内の状態を監視する監視用モジュールまたは構成要素510を含む。例えば、監視用モジュール510は、燃焼時における燃焼室内の温度、燃焼時における燃焼室内の圧力、または本明細書中に記載される他の状態を監視し得る。
適応制御システム410はまた、決定モジュールまたは構成要素520を含む。決定モジュールまたは構成要素520は、監視された状態が特定の基準と生業するかを決定する。決定モジュール520は、燃焼室内における特定の状態についての情報を監視用モジュール510から情報を受信し、前記燃焼室内における所望の状態または望ましくない状態と関連付けられた所定の基準または特定の基準と前記状態が整合するかを決定する。
決定モジュール520から受信された情報に応答して、変更モジュールまたは構成要素530は、燃焼イベントと関連付けられた1つ以上のパラメーターを変更または制御し得る。例えば、変更モジュール530は、イオン化電圧の印加および/または燃焼室内の燃料を燃焼させる際に用いられる電極上の電流を変更するよう噴射器に命令する制御情報を前記噴射器へと送信し得る。
適応制御システム410はまた、メモリーモジュールまたは構成要素540を含む。メモリーモジュールまたは構成要素540は、情報、基準、ログ、アルゴリズム、および/または燃焼室内のイオン化レベルの適応制御と関連付けられた他の情報、ならびに他のモジュール550または構成要素(例えばネットワーク上の他の装置へと情報を通信するモジュール、適応制御システム410とのユーザー相互作用を促進するためのモジュール(例えばユーザーインターフェース、タッチスクリーン)、ならびに本明細書中に記載されるルーチンおよび方法の実行を促進する他の構成要素を保存する。
図6は、適切な適応制御された点火装置/噴射器600(例えば燃焼室内のイオン化制御および変更を実行するように適応制御システム410によって制御され得る噴射器)を示す。図7は、図6の点火装置/噴射器600の端面図を示す。噴射器600は、噴射器600内またはその近隣における状態の測定、監視および/または検出を行うことが可能な多様な構成要素を含む。例えば、噴射器600は、透明な誘電絶縁体672を含む。透明な誘電絶縁体672により、応力センサー662Dに対する燃焼室圧力状態に対応する歪み信号の変化と共に、燃焼室から光電子センサー662Pへの放射周波数のライトパイプ透過が可能となる。
埋設型コントローラー662は、効率、出力生成、動作の円滑さ、フェールセーフ可能性、およびエンジン構成要素の長寿命における向上として、アナログまたはデジタル燃料送達および火花点火イベントの生成のための信号をセンサー662Dおよび662Pから受信する。コントローラー662は、センサーからの通知または情報を記録して、各シリンダーのトルク発生間の時間を決定して、適応燃料噴射および火花点火タイミングならびにフローデータの関数として正および負のエンジン加速を導出し、これにより、所望のエンジン動作パラメーターの最適化のために必要な調節を決定する。よって、コントローラー662は、マスターコンピューターとして機能して、噴射器の動作の多様な選択を制御し、適応制御システム410およびその多様なモジュールと通信することができる。もちろん、噴射器600は、適応制御システム410から制御情報を受信する他の構成要素を含み得る。
実質的に透明な逆止め弁684は、流量制御弁674の下側の光ファイバー束またはケーブル660を保護し得る。いくつかの場合において、逆止め弁684は、高速に閉鎖し、透明本体内に封入された強磁性要素を含む。多様なジオメトリーの構成要素を用いることで、逆止め弁684(例えば図示のような透明ディスク内の強磁性ディスクまたは透明ボール内の強磁性ボール)の動作の支援が可能となる。動作時において、前記ジオメトリーにより、逆止め弁684を磁気により強制的にノーマルクローズ位置へと引き寄せて、図示のように流量制御弁674およびケーブル660の端部の極めて近隣に移動させることができる。流量制御弁674を上昇させて燃料フローが提供されると、逆止め弁684は、ウェルボア内の開口位置内へと強制的に移動される。前記ウェルボアは、逆止め弁684を交差する溝部688内に収容する。これらの溝部688により、燃料が磁気弁座690を通じて逆止め弁684を通過し、溝部688を通過し、燃焼室中の空気へ燃料を極めて高い表面積対体積で浸透させることができる。よって、ケーブル660は、逆止め弁684を通過する放射周波数を受信および送信することにより、燃焼室イベントを監視する。逆止め弁684の透明部の適切な材料を挙げると、サファイア、石英、高温ポリマー、セラミック、および所望の監視周波数に対して透明である他の材料がある。
いくつかの場合において、最高トルクを最小の燃料消費で生成することが望ましい場合がある。密集した街中の道路内の領域においては、酸化窒素排気は好ましくないため、適応燃料噴射および点火タイミングにより、ピーク燃焼温度が2200℃(4000°F)に到達することなく最大トルクを得ることが可能となる。小直径の光ファイバーケーブル660または大型の透明絶縁体672を用いた炎温度検出器を用いて、ピーク燃焼温度を検出することができる。このような場合、絶縁体672は、耐熱コーティングおよび耐摩耗コーティングと共に製造することができる(例えば高温ポリマーの燃焼室面上のサファイアコーティングまたはダイヤモンドコーティング、または噴射器600内における複合機能のための石英、サファイアまたはガラスからのもの(例えば図示のようなコントローラー662のセンサー662Dに対する燃焼によって発生した放射のライトパイプ透過))。さらに、コントローラー662、643および/または632は、各燃焼室内のセンサー662Dからの信号を監視して、燃料噴射および/または火花点火タイミングを適応的に調節してイオン化を所望のレベルに適合させることが可能な適応制御システム410に対する状態を通信することができる。
よって、絶縁ケーブル660からノーマルクローズ状態の流量制御弁674へと送信される燃料制御力と、最適な点火プラグまたはディーゼル燃料噴射器位置における一体火花点火とにより、燃焼室へのインターフェースから、現代のエンジンの密集した弁および弁オペレーターの上方の位置への実質的に任意の距離を提供することができる。燃料噴射器600の構成により、点火プラグまたはディーゼル燃料噴射器の代わりに噴射器を用いて、オクタン、セタン、粘度、温度、または燃料エネルギー密度レーティングと関係無く、極めて多様な燃料選択(例えばより廉価な燃料)の高効率層状給気燃焼のための高精度の燃料噴射タイミングおよび適応火花点火が可能となり、また、燃焼室内において適応イオン化レベルを得ることが可能となる。より低コストでありかつ環境にずっと優しい燃料についての本開示により、特定のオクタンまたはセタンレーティングを用いた燃料を用いた動作に従来制限されていたエンジンを変換して、より効率的かつより抗寿命の動作を得ることが可能となる。加えて、噴射器をパイロット燃料送達および点火系として動作させることもできるし、あるいは、火花のみを用いた点火系として動作させることができ、気化または吸気マニホールド燃料噴射系から送達されたガソリンにより、エンジンをもともとの動作へと戻すことができる。同様に、これらの多様な燃料計量、イオン化制御および他の点火組み合わせに応じて、ディーゼル燃料または別の火花点火燃料と動作するように噴射器600を構成することができる。
よって、前記システムは、燃料経済の最大化、特定の出力生成、燃焼室シリンダーに対する潤滑膜の確保、騒音の最小化、イオン化レベルの制御などの目的のために、燃料噴射タイミングおよび火花点火タイミングを適応制御することができる。いくつかの場合において、噴射器600は、流量制御弁674を通じてまたは燃料分散ノズルの燃焼室面の近隣においてケーブル660を延ばすことができ、これにより、図示のように溝部688の中央を通じて燃焼室イベントを視認することが可能となる。いくつかの場合において、ケーブル660は、1つ以上の自由運動屈曲範囲を形成し得る(例えばアーマチュア停止ボール635の上方のループ)。このようなループにより、好適にはアーマチュア648が移動を開始して推進した後、ケーブル660を上昇させ始め、これにより、流量制御弁を突如上昇させ、軟性磁石コア654を固定的に通過して、図示のように放射波長を燃焼室からセンサー640へと送達することができる。
いくつかの実施形態において、センサー640は、別個のものであってもよいし、あるいは図示のようにコントローラー643に統合してもよい。例えば、光電子センサーシステムは、図示のようなエンジン630の燃焼室内の圧力および/または放射検出の関数として、燃焼室状態を包括的に監視し得る(例えば燃焼、膨張、排気、吸気、燃料噴射および点火イベント)。よって、センサー640および/またはセンサー662Dおよび/またはセンサー662Pからの温度および対応する圧力信号により、コントローラー632は、燃焼室圧力、ピストン位置および燃焼物の化学的性質によって燃料が燃焼しているときの温度および温度における時間を瞬時かつ迅速に相関付けることができる。
このような相関付けは、米国特許第6015065号、第6446597号、第6503584号、第5343699号および第5394852号に記載の技術ならびに同時係属中の出願第60/551219号ならびに図示のように光ファイバー束/ライトパイプアセンブリー/ケーブル660からセンサー640へと送られる燃焼室放射情報により、ピストン位置、燃焼室圧力の情報集合組み合わせによってエンジンを動作させることにより、容易に達成される。このようにして得られた相関関数により、ケーブル660からセンサー640へと送達される放射信号およびピストン位置情報により、燃焼状態の燃焼室圧力、温度およびパターンを必要に応じて通知して、多様なエンジン機能(例えば燃料経済の最大化、出力生成、酸化窒素の回避、熱損失の回避など)を適応的に最適化することができる。その後、ケーブル660およびセンサー640からコントローラー643へと送られた情報により、極めてコスト効率のよい噴射器と共に、エンジン機能の高速の適応制御が可能となる。
いくつかの実施形態において、より包括的に適応する噴射システムは、センサー640およびケーブル660双方と、当該分野において公知のような1つ以上の圧力センサーおよび/または本明細書中に参考のために記載される特許出願および同時係属中の出願に開示されるような1つ以上の圧力センサーとを用いることができる。いくつかの場合において、前記システムは、1つ以上のコントローラーを介して、燃料経済および出力生成管理の適応的向上のために、エンジンの回転加速を監視する。よって、多数の技術(例えばクランク軸またはカム軸タイミング、分配器タイミング、歯車タイミング、ピストン速度検出)により、エンジン加速を監視することが可能となる。エンジン加速を制御変数(例えば燃料種選択、燃料種温度、燃料噴射タイミング、噴射圧力、噴射繰り返し率、点火タイミングおよび燃焼室温度マッピング)の関数として用いることにより、従来の燃料またはより廉価な燃料により、エンジン性能、燃料経済、排気制御、エンジン寿命などの向上を促進することが可能となる。
いくつかの実施形態において、多様な燃料粘度、加熱値および蒸気圧力の燃焼を最適化するための適応タイミングを用いた火花プラズマ点火の発生が、リモート弁オペレーター648および流量制御弁674を共に燃焼室インターフェースまたはその実質的近隣に配置することにより、達成される。この構成により、したたり前後の有害イベントが実質的に無くなる。なぜならば、流量制御弁674と燃焼室との間のクリアランス量がほとんどゼロになるからである。流量制御弁674を燃焼室インターフェースに配置することにより、燃料を回路として送達する通路に起因して主に発生する燃料フローインピーダンスが回避される。いくつかの実施形態において、適切な機械ばねによってまたはケーブルまたはロッド660上への圧縮力によって、流量制御弁674をノーマルクローズ状態へと付勢することができる。このような圧縮力は、ばねによって付加される力または弁座690へと引き寄せられる磁石ばねによって付加される力の関数である(例えばこのようなクローズ動作の組み合わせ)。
いくつかの実施形態において、アーマチュアドライバー648の自由加速を可能にした後にボール635に衝撃を与えることにより、圧力耐性性能が達成される。ボール635は、ボール635を突然上昇させるかまたは変位させるように構成された位置において、ケーブル660に固定される。いくつかの場合において、ドライバー648は、電磁石ポールピースに向かって比較的自由に移動し、図示のように固定ケーブル660を通過する。大きな推進力を得た後、ドライバー648は、図示のばねウェル内のボール635に衝突する。ボール635は、図示のようにばね636内のケーブル660へと取り付けられ得る。そのため、動作時において、この衝撃による高い力またはずっと高い力の突然付加が直接作用型ソレノイド弁によって発生し得、その結果、比較的より小型の慣性およびノーマルクローズの流量制御弁674がシート690内の通路の上側弁座から突然浮き上がる場合がある。
流量制御弁674のために任意の適切なシートを利用することが可能であるが、小型エンジンの燃焼室用途の場合、当該噴射器は、シート690内においてまたはシート690として永久磁石を用いて、図示のように流量制御弁674をノーマルクローズ状態へと付勢することができる。このようにして、アーマチュア648によって流量制御弁674が突然に衝撃作動すると、燃料温度、粘度、スラッシュ結晶の存在、または所望の燃料送達層とを確保するために必要となり得る付加圧力と無関係に、燃料の正確な流れを確保することが可能となる。永久磁石(例えばSmCoおよびNdFeB)を用いることで、205℃(401°F)までの動作温度において所望の磁力を容易に得ることができ、また、流量制御弁674を磁気弁座690上のノーマルクローズ位置へと確実に付勢して、したたり後のクリアランス量を実質的に無くすことができる。
例えば、絶縁体664のボア内から導電性ノズル670への送達のために流量制御弁674においてアーマチュア648を用いた場合、図示のクリアランス量内に一時的に存在するしたたり後燃料量を、エンジンサイクルにおける所望のタイミングにおける意図される燃料送達量とできるだけ近づけることができる。このようなしたたり後の流れは、最終膨張段階において発生する場合もあるし、あるいは、排気ストローク段階において発生する場合もあるため、保護シリンダー壁潤滑の炎衝突損失、不要なピストン加熱、および膨張差に起因する摩擦増加、および排気系構成要素の過熱を発生させつつ、全てではないにしろほとんどが無駄になる。さらに、従来の弁動作システムの場合、ドライバー648がケーブル660上およびよって流量制御弁674上へと突然衝突した場合に得られる700気圧を越える気圧と比較して、圧力降下が約7気圧に制限される。りんごソースまたはカッテージチーズに匹敵する極めて困難な質感および粘度の極低温スラッシュ燃料が、比較的大型の通路を通じて、ノーマルクローズの流量制御弁674へと容易に送達される。流量制御弁674は、シート690内の大型直径開口に配置される。高速加速の後、大型慣性電磁石アーマチュア648による突然の衝撃により、極めて大きなつり上げ力が誘電ケーブル660を通じて伝わり、流量制御弁674をシート690の大型開口から突然かつ確実につり上げて、これにより、ノーマルクローズの逆止め弁684(ただし、存在する場合)が開口し、燃料スラッシュ混合物が燃焼室内へと噴出される。上記が存在する場合、断続的に行われるような400°F(204℃)以上の温度における任意の相または相混合物中の燃料(例えば水素および他の極めて低粘度の燃料)のしたたり後が有ってもまたは制限されても、送達が確保される。
燃焼室中のイオン化レベルの適応制御
本明細書中に記載のように、いくつかの実施形態において、噴射器(例えば噴射器100または600)は、燃焼室内の状態を監視し、監視された情報を制御システムへと通信し、フィードバックを制御システムから受信し、前記フィードバックに基づいて動作を調節する。よって、制御システムから命令(単数または複数)を受信した噴射器は、燃焼室内のイオン化レベルを適応的に調節して所望のレベルのイオン化を達成することができ、これにより、前記燃焼室内において燃焼持続を早期に実現するなどの恩恵が得られる。図8および図9は、このような噴射器を指示する制御システム(例えば適応制御システム410または噴射器に配置されるかまたは。噴射器から遠隔位置に配置される他の制御システム)によって行われる多様なルーチンを示す。
図8は、燃焼室内の燃料を燃焼させるためのルーチン800を示す流れ図である。ステップ810において、前記システムは、噴射器の所与のまたは指定された動作期間において、噴射器またはその近隣における1つ以上の領域(例えば電極または逆止め弁の近隣の領域)を監視する。前記システムは、状態を監視する噴射器の多様な構成要素(例えばケーブル660、絶縁体672、センサー662および/または他の要素)と協働して、監視用モジュール510を用い得る。
特定の期間において、多様な領域を監視することができる(例えば電極の近隣またはその間の領域、逆止め弁の近隣またはその内部の領域)。監視可能な噴射器600の例示的領域を以下に挙げる。
弁674および/または684などを通過した燃料が到着する直前の、電極間のギャップにおける空間領域(例えば電極685および688間のギャップ)。
電極間のギャップ(例えば電極685および688間のギャップ)を通過する際に弁674によって制御および計量される燃料の領域。
電極間のギャップ(例えば電極685および688間のギャップ)における空気および燃料の領域。
電極間のギャップ(例えば電極685および688間のギャップおよび他の領域)における空気/燃料/空気層の領域。
ステップ820において、前記システムは、監視された領域内における特定の十分なかつ/または適切な状態を検出または決定する。例えば、前記システムは、ここで上述した多様な構成要素を用いて、2つの電極間に配置された特定量の燃料と関連付けられた特定の状態が満足されたことを決定する。
ステップ830において、前記システムは、満足すると決定された前記領域またはその近隣における電極にイオン化電圧を印加する。例えば、前記システムは、十分な燃料が電極685および688間のギャップにあると決定されたのに応答して、前記電極間に電圧を印加し、これにより、燃焼イベントを発生させ、所望のイオン化レベルを達成する。
よって、いくつかの実施形態において、前記システムは、燃料の領域の燃焼室インターフェースまたはその近隣、空気および燃料の領域、ならびに/または空気燃料混合物の領域における十分なイオン化を得るためのイオン化電圧の1回以上の印加時間を測定するために、ルーチン800を用いる。
よって、前記システムは、これらの物質の十分かつ効率的なイオン化を達成することができ、これにより、従来のエンジン動作の場合よりも燃焼継続を比較的より早期に実現することができる。ルーチン800を用いることにより、前記システムにおいては、空気の圧縮を十分に行いかつポンプ燃料を極めて高圧までポンピングして必要なときにグロープラグを動作させて特性遅延後に燃焼を発生させるために必要なイオン化のためのエネルギーよりも、比較的少量のエネルギーですむ。
前記システムがディーゼルエンジンで動作する場合、本明細書中に記載の領域のうち1つ以上において行われるようなイオン化を行えば、燃焼室内の空気との反応継続をずっと早期に実現するための実質的蒸発、分子熱分解およびイオン化を十分に提供することができる。イオン化空気および/または燃料噴射を開始するタイミングは、完全にTDC(ATDC)の後ではないにしろ後期であり、これにより、燃料あたりの仕事量が比較的高くなり、これにより、エンジンの範囲および燃料効率が増加するなどの恩恵が得られる。
特定の燃焼イベントを達成するためのイオン化電圧印加の適応制御に加えて、前記システムは、燃焼室内のイオン化レベルも適応制御することができる。すなわち、イオン化レベルを適応的に増減することで、エンジンの出力サイクルあたりの1つ以上の燃料噴射イベントによって送達される燃料の燃焼の早期完了の所望のレベルの度を達成することができる。図9は、燃焼室内のイオン化レベルを調節するためのルーチン900を示す流れ図である。
ステップ910において、前記システムは、燃焼室内の1つ以上の状態を監視する。前記システムは、状態を監視する噴射器の多様な構成要素(例えばケーブル660、絶縁体672、センサー662および/または他の要素)と協働して、監視用モジュール510を用い得る。監視可能な状態を以下に挙げる:BTUまたは各燃料噴射イベント毎に噴射される燃料のKcal値毎に発生するトルク、最高燃焼温度、燃焼プロセスによって発生する圧力、および本明細書中に記載の他の状態。
ステップ920において、前記システムは、前記監視状態と、望ましい状態または理想的な状態とを比較する。前記システムは、1つ以上の監視状態が規則または閾値を満たすかまたは規則または閾値を満たさないと検出または決定し得る。例えば、前記システムは、閾値よりも高い最高温度または閾値よりも低い圧力を検出し、イオン化レベルの調節と関連付けられた規則が満たされたことを決定し得る。
ステップ930において、前記システムは、ステップ920においてなされた決定に応答して、燃焼室内の燃焼イベントと関連付けられた1つ以上のパラメーターを調節し、燃焼室内のイオン化レベルを調節する。前記システムは、前記パラメーターを増減することができる。例示的なパラメーターまたは変数を以下に挙げる:圧縮比、大気圧、過給圧力、燃焼室内に入る空気の温度、ピストン、シリンダーおよびヘッドに対する熱損失後の圧縮空気の温度、噴射を開始するタイミング、噴射圧力、噴射方向および層状イオン化パターン、噴射継続時間、噴射器放出曲線など。
よって、いくつかの場合において、比較的少量の燃料および/または空気をイオン化することで、存在する全体的に均質な混合物のうちのごく一部において、従来の火花発生の場合よりも燃焼完了を比較的早期に引き起こすことが可能となる。同様に、比較的少量の燃料および/または空気をイオン化して、ディーゼル燃料の完了を圧縮点火シーケンスの場合よりもより早期に引き起こすことが可能となる。いくつかの場合において、加速燃焼プロセスの絶縁体としての余剰空気の最も有効な利用を確保するために、燃焼室に進入した燃料分子のうち全てまたは大部分をイオン化することが望ましい場合がある。
図8および図9を参照して述べたルーチンおよび方法に加えて、前記システムは、特定の燃料種を用いることにより、燃焼完了を加速させることができる。表1は、多様な燃料種(例えば適応制御システム410によって制御されるイオン化燃料種値の加熱を向上させるために、前駆体燃料の熱化学再生によって導出され得る物質)の利用を示す。この表は、前駆体燃料、新規な燃料種、新規の燃料熱、前記前駆体燃料と比較した場合の、前記新規燃料種のイオン化に必要なエネルギーの低減による利点を示す。
表1に羅列する物質の適応的イオン化から、特に有用な恩恵が可能になる(例えば予混合およびディーゼルエンジンの動作に必要となるサブシステムの低減または不要化)。サブシステム(例えば表2中に羅列するもの)を不要化することで、動作コストの大幅な節約および排気低減が可能となる。
結論
多様な変更および改変が本開示の範囲から逸脱することなく可能であることが明らかである。例えば、別の材料および処理手段を含むように、誘電強度を変更または改変することができる。アクチュエーターおよびドライバーは、燃料または噴射器の用途に応じて変更することができる。燃料分配の形状および完全性を保証するためにキャップを用いることができ、異なる機能、性能および保護が得られるように、キャップの寸法、設計または位置を変更することができる。あるいは、噴射器も変更することができ、例えば、電極、光学部品、アクチュエーター、多様な触媒、ノズルまたは本体を別の材料から構成してもよいし、あるいは、図示および記載される代替的構成を含んでもよく、このような構成も本開示の意図内である。
本記載および特許請求の範囲全体において、文脈から明らかに分かる場合を除いて、「含む」などの用語は、排他的または網羅的な意味ではなく、包括的な意味として(すなわち、非限定的に「含む」意味として)とらえられるべきである。単数形および複数形を用いた単語は、それぞれ複数形および単数形を含む。特許請求の範囲中において2つ以上のものについて「または」という言葉が用いられる場合、この言葉は、以下の解釈全てを網羅する:すなわち、羅列されたもののうち任意のもの、羅列されたもの全て、および羅列されたものの任意の組み合わせ。
さらに、上述した多様な実施形態を組み合わせることで、さらなる実施形態が得られる。本明細書中に記載されかつ/または出願データシート中に羅列された米国特許、米国特許出願公開文献、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許公開文献全体を参考のため本明細書中において援用する。必要であれば、燃料噴射器および点火装置を多様な特許、出願および公開文献の多様な構成およびコンセプトと共に用いるように本開示の局面を変更することで、本開示のさらなる実施形態が可能となる。
これらの変更および他の変更は、上記において詳述した記載を鑑みて本開示において行うことが可能である。一般的に、以下の特許請求の範囲において、用いられる用語は、本明細書中および特許請求の範囲中に開示される特定の実施形態に本開示を限定するものとして解釈されるべきではなく、特許請求の範囲に従って動作する全てのシステムおよび方法を含むものとして解釈されるべきである。よって、本発明は本開示によって制限されるのではなく、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって広範に決定されるべきである。