JP2013256708A - 誘電体部材、成膜装置及び薄膜形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プラスチック容器の内面にDLCを成膜する成膜装置の外部電極の内側に設置される有底筒状に形成された誘電体部材を、外部電極とともに上半部と下半部とに分割可能に設け、上半部と下半部の接合部を、接合部の接合面の長さ寸法が誘電体部材の肉厚寸法よりも大きくなる断面形状に設ける。
【選択図】図1
Description
同図に示される成膜装置1は、空所内に容器10が収容される中空状の外部電極2と、絶縁部材4を介して外部電極2の上部に設置されていて外部電極2の空所内に収容された容器10の内側に挿入される管状の内部電極3と、外部電極2の空所内を排気する排気手段5と、内部電極3を通して原料ガスを容器10内に供給する供給手段6と、外部電極2に接続された高周波電源7とを備えて構成されている。
同図に示されるように、本発明の誘電体部材8は、有底筒状に形成されて外部電極2の内側に設置されるものであり、分割構造の外部電極2とともに上下に分割し得るように、その上半部81が外部電極2の上半部21の内周面、下半部82が外部電極2の下半部22にそれぞれ設置される。
そして、図示した誘電体部材8では、上下半部81,82の接合部を段違い形状に設けることで、前記接合部の接合面の長さ寸法が誘電体部材8の肉厚寸法よりも大きくなるように構成してある。
詳しくは、同図(B)に示されるように、外部電極2の上下半部21,22同士の接合部が平坦であるのに対し、誘電体部材8の上下半部81,82同士の接合部は、その上半部81の下端内周側に下方に突出した上側切片81a、下片部82の上端外周側に上方へ突出した下側切片82aがそれぞれ周方向に沿って設けられ、上下半部81,82の端部同士を接合させたときに、前記上側切片81aと下側切片82aが互いに噛み合って接合し、これにより誘電体部材8の内側面に表出する接合縁と外側面に表出する接合縁の高さが互いに異なるように、段違いの断面形状に設けてある。
例えば図2に示されるように、上側切片81aと下側切片82aの接合面が傾斜する断面形状(同図(A))や上側切片81aよりも下側切片82aの方が肉厚な段違いの断面形状(同図(B))、上側切片81aの中央が湾曲した凹凸断面形状(同図(C))、上側切片81aと下側切片82aが互いに湾曲した段違いの断面形状(同図(D))、上側切片81aの中央が三形に突出した凹凸断面形状(同図(E))など、適宜な断面形状に接合部を設けることができる。
この場合、上側切片81aと下側切片82aが隙間を生じさせることなく確実に噛み合って接合するようにするため、上側切片81aと下側切片82aの接合面の噛み合い角度θは45〜90°の範囲、より好ましくは60〜80°の範囲に設定されていることが好ましい(図4参照)。
また、接合部の接合面の長さ寸法は、誘電体部材8の肉厚寸法より大きく設定され、使用する誘電体部材8の肉厚により異なるが、後述するように誘電体部材8の厚みが15mm以下の場合は前記接合面の長さ寸法が5〜20mmの範囲、誘電体部材8の厚みが5mm以下の場合には5〜10mmの範囲に設定されていることが好ましい。
誘電体部材8の厚みが0mm、つまり誘電体部材8を外部電極2の内側に配置しない場合、容器10の厚みやその表面の凹凸形状によっては、外部電極2に高周波電力を印加した際に容器10の内面の任意の箇所に電界が局部的に集中し、容器10が変形したり孔が空いたりし易い。一方、外部電極2の内側に配置する誘電体部材8の厚みが15mmを超えると、プラズマの粒子速度が遅くなって十分なガスバリア性能を持つDLCを成膜できない。十分な高ガスバリア性を持つDLCを成膜するには、誘電体部材8の厚みは10mm以下であることがより好ましい。
本発明の成膜装置1は、前記図6に示された構成の装置の他、汎用のプラズマCVD装置により構成することが可能である。
一般に、プラズマCVD装置を用いた具体的なDLCの形成方法は、先ず、真空チャンバー内にプラスチック製の容器をセットする。真空チャンバー内には一対の電極が備えられ、片方に所定(例えば13.56Mhz)の高周波(RF)電源が接続され、もう一方は接地される。
この真空チャンバー内を、真空ポンプを用いて所定の圧力(例えば1〜50Pa)まで減圧し、ガス導入口から原料ガスを真空チャンバー内に導入する。次いで、前記電極に高周波電力を印加することにより、容器内部にプラズマを発生させる。
プラズマによって、原料ガスがイオン化し、容器内面に堆積して、DLCを形成される。DLCの形成方法はこれに限定されるものではなく、成膜対象である容器の種類や大きさ、厚みなどに応じ、公知の方法を適宜用いることが可能である。ボトル形状の容器内面にDLCを成膜する場合、前記一対の電極は、図6に示されるように、容器10が収容される上下分割構造の外部電極2と、原料ガスの噴出口を兼ねた管状の内部電極3により構成するのが好適であり、外部電極2の内側に誘電体部材8が設置される。
成膜動作時にプラズマの発生により装置内部が温度上昇するのに伴って誘電体部材8が熱膨張するが、外部電極2の内部上面と誘電体部材8の上半部81の上面との間に隙間を設けてあることにより、誘電体部材8の膨張が当該隙間方向に誘導されるので、誘電体部材8の表面に凹凸が生じたり前記上下半部の接合部に隙間ができたりすることはなく、異常な放電の発生を効果的に防止することができる。誘電体部材8の材質により膨張する長さも変わるが、隙間が大きいと逆に異常放電を誘発することから、前記隙間は0mmを超えて3.0mm以下、好ましくは1.0mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下に設定することが好ましい。
また、誘電体部材8は、その内部に容器10を挿入した状態で、容器10の首部と誘電体部材8の左右の間隔d1と前後の間隔d2がそれぞれd1=9.85mm、d2=8.85mm、容器10の胴部と誘電体部材8の左右の間隔d3と前後の間隔d4がそれぞれd3=1mm、d4=1.5mmとなるように形成した。
図4(A)に示される、上半部81と下半部82の接合部に上側切片81aと下側切片82aをそれぞれ有する、厚みが5mm:D1=5mm(図1参照)の誘電体部材8を形成した。
両切片の各部の寸法は、t1=5mm、t2=1.9mm、t3=2.1mm、t4=5.1mmに設定し、上側切片81aと下側切片82aの接合面の噛み合い角度θを79°に設定した。接合部の接合面の長さ(t2+t3+t4)は9.1mmである。
この誘電体部材8を外部電極2の内側に設置した。外部電極2の内部上面と誘電体部材8の上半部81の上面との間には隙間D2(図1参照)は設けなかった。
誘電体部材8内に容器10を収容した状態で、外部電極2に印加される高周波電力:800W、原料ガス(アセチレンガス)の流量:65sccm、高周波電力の印加時間:1.0secの条件で、容器10の内面にDLCを成膜した。
実施例1と同じ誘電体部材8を用い、外部電極2の内部上面と誘電体部材8の上半部81の上面との間に0.5mmの隙間:D2=0.5mm(図1参照)を設けて誘電体部材8を設置した以外、実施例1と同じ条件で、容器10の内面にDLCを成膜した。
図4(B)に示される、上半部81と下半部82の接合部に上側切片81aと下側切片82aをそれぞれ有する、厚みが10mm:D1=10mmの誘電体部材8を形成した。
両切片の各部の寸法は、t1=8mm、t2=3mm、t3=4mm、t4=8.45mmに設定し、上側切片81aと下側切片82aの接合面の噛み合い角度θを69°に設定した。接合部の接合面の長さは15.45mmである。
この誘電体部材8を、外部電極2の内部上面と誘電体部材8の上半部81の上面との間に0.5mmの隙間:D2=0.5mmを設けて設置し、実施例1と同じ装置動作条件で、容器10の内面にDLCを成膜した。
図4(C)に示される、上半部81と下半部82の接合部に上側切片81aと下側切片82aをそれぞれ有する、厚みが15mm:D1=15mmの誘電体部材8を形成した。
両切片の各部の寸法は、t1=8mm、t2=3mm、t3=9mm、t4=8.45mmに設定し、上側切片81aと下側切片82aの接合面の噛み合い角度θを69°に設定した。接合部の接合面の長さは20.45mmである。
この誘電体部材8を、外部電極2の内部上面と誘電体部材8の上半部81の上面との間に0.5mmの隙間:D2=0.5mmを設けて設置し、実施例1と同じ装置動作条件で、容器10の内面にDLCを成膜した。
図5(A)に示される、厚みが5mm:D1=5mmで、上半部81と下半部82の接合部が平らな誘電体部材8を形成した。
この誘電体部材8を外部電極2の内側に、外部電極2の内部上面と誘電体部材8の上半部81の上面との間に隙間D2を設けずに設置し、実施例1と同じ装置動作条件で、容器10の内面にDLCを成膜した。
図5(B)に示される、厚みが13mm:D1=13mmの誘電体部材8を形成した。
上半部81と下半部82の接合部は、当該接合部面内の下半部82の肉厚方向中央に凸部を設け、この凸部に上半部81の肉厚方向両側の凹部が噛み合って接合するように形成した。凸部の寸法は、t1=5mm、t5=5mmに設定した。
この誘電体部材8を外部電極2の内側に、外部電極2の内部上面と誘電体部材8の上半部81の上面との間に隙間D2を設けずに設置し、実施例1と同じ装置動作条件で、容器10の内面にDLCを成膜した。
また、バリア性は、非常にバリア性が高いもの(目安としては酸素透過率が0.003(cc/pkg/day・air)以下)は「◎」、バリア性が高いもの(酸素透過率0.008(cc/pkg/day・air)以下)は「○」、バリア性が幾らかあるもの(酸素透過率0.010(cc/pkg/day・air)以下)は「△」を記してある。
〔膜厚〕
容器10の内面に黒色インキ等でマスキングを行って、DLC膜を成膜した後、ジエチルエーテル等でマスキングを除去し、高精度微細形状測定器(小坂研究所株式会社製ET4000A)を用いて膜厚を測定した。
〔密着性〕
DLC膜形成面を碁盤の目状にナイフで切り込みを入れ、粘着テープによる剥離試験を行った。1mm×1mmのマス目100個のうち、剥離せずに残ったマス目の個数により判定を行い、評価した。
同表において、剥離せずに残ったマス目の個数が100個のものは「◎」、99〜75個のものは「△」、74個以下のものは「×」を記してある。
〔酸素透過率〕
酸素透過率測定装置(Modern Control社製 Oxtran)を用いて、23℃、相対湿度80%の条件にて測定した。
〔全光線透過率・着色度〕
測色計(スガ試験器株式会社製SC−T)を用いて、各波長での光線透過率を測定した。また、同装置でb*値を測定することにより、着色の程度を評価した。
参考例1と比較例2は、容器10の内面にDLCの成膜はできるものの、DLCを十分な厚みに形成することができないため、実施例のものよりも、ガスバリア性や酸素透過率、全光線透過率などで劣るものであった。
また、比較例1は異常な放電が発生して容器10が変形を来し、DLCを成膜できなかった。
Claims (6)
- プラスチック容器の内面にDLCを成膜する成膜装置の外部電極の内側に設置される有底筒状に形成された誘電体部材であって、
外部電極とともに上半部と下半部とに分割可能に設けられているとともに、上半部と下半部の接合部が、誘電体部材の肉厚寸法よりも当該接合部の接合面の長さ寸法が大きくなるように設けられた構成を有することを特徴とする誘電体部材。 - 上半部と下半部の接合部が、上下半部を接合させたときの内側面に表出する接合縁と外側面に表出する接合縁の高さが異なる段違い断面形状に設けられた構成を有することを特徴とする請求項1に記載の誘電体部材。
- 15mm以下の厚みに設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の誘電体部材。
- 請求項1〜3の何れかに記載の誘電体部材を具備した構成を有することを特徴とする成膜装置。
- 外部電極の内部上面と、誘電体部材の上半部の上面との間に隙間が設けられ構成を有ることを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。
- 請求項4又は5に記載の成膜装置により、プラスチック容器の内面にDLCを成膜する薄膜形成方法。
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