JP2013256418A - メソ構造体、メソ構造体の製造方法、及びx線分光素子 - Google Patents

メソ構造体、メソ構造体の製造方法、及びx線分光素子 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、ヘキサゴナル構造を備え、ヘキサゴナル構造におけるX線回折の強度の高い面の法線が基板に平行となるメソ構造体を提供することを目的とする。
【解決手段】基板上に形成され、2nm以上50nm以下の周期構造を備えるメソ構造体であって、前記周期構造が前記基板に垂直な断面において二次元ヘキサゴナル構造となるように存在する複数の孔を有し、前記複数の孔は、前記基板面内において一つの方向に配向するシリンダー状の孔であって、前記二次元ヘキサゴナル構造の<10>方向が、前記基板に平行で、かつ前記一つの方向に垂直である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、周期構造を有するメソ構造体、メソ構造体の製造方法、及びX線分光素子に関する。
多孔質材料は、孔径が2nm未満のマイクロポーラス、2以上50nm以下のメソポーラス、50nmより大きいマクロポーラスに分類され、吸着、分離など様々な分野で利用されている。ゼオライトに代表されるマイクロポーラスは、触媒等に広く応用されているが、その孔径は最大で1.5nm程度であり、ポリマーや生体材料のような材料との複合化による機能性材料の合成には、さらに大きな径の孔を有する多孔質材料が求められている。
より孔径の大きいメソポーラス材料は、主に界面活性剤の分子集合体が鋳型となって形成される多孔質材料で、孔径が均一で、かつ高い規則性を有する孔を作成することが可能である。シリンダー状の孔がハニカム状にパッキングされた構造の二次元ヘキサゴナル構造や、球状の孔が最密充填構造の場合と同様の位置に存在する構造(ただし最密充填構造そのものではない)の三次元ヘキサゴナル構造/キュービック構造のものが代表的だが、その細孔構造は多用で、非常に多くの構造が知られている。
このメソポーラス材料における孔の配列の規則性は、結晶における原子配列の規則性に類似しており、それ故に、メソポーラス材料は、結晶同様、明瞭なX線回折パターンを示す。但し、構造周期が結晶よりも一桁大きいために、回折ピークは、結晶の場合よりも低角度領域に現れる。近年、遷移金属酸化物等、多くのメソポーラス材料が報告されている最も代表的なメソポーラス材料は、メソポーラスシリカである。一般的には、細孔中に鋳型の界面活性剤分子集合体が残存している状態のものをシリカメソ構造体、細孔内から界面活性剤を焼成や抽出等の方法で除去したものをメソポーラスシリカと呼ぶが、本明細書中では細孔内に界面活性剤やその他の材料を保持している状態のものも、メソポーラスシリカの定義内に含めるものとする。また、これらメソポーラス材料の孔の内部に無機材料、有機材料が充填されている材料を含め、本明細書ではまとめてメソ構造体と称する。
上記の、規則的な細孔構造を有するメソポーラス材料を、機能性材料として工業的に使用する場合、これらの材料を基板上に均一に保持する技術が重要である。基板上に均一なメソポーラスシリカ膜を作成する方法としては、ゾル−ゲル法に基づき、スピンコートやディップコートで成膜する方法、水熱合成法で固体表面に膜形成する方法等がある。
上記の成膜法で基板上に形成された2次元ヘキサゴナル構造を有するメソポーラスシリカ膜の場合、一般的に基板面内での配列方向はランダムであるものの、基板表面に対しての細孔の配向方向は<10>に決定される。つまり、シリンダー状細孔が面内で曲がりくねったような構造を有するものの、ヘキサゴナル構造の<10>方向は、場所によらず基板に垂直な方向になる。
面内での配列が制御されていない場合には、膜は、局所的には細孔の配列規則性に基づく面内異方性を有していたとしても、巨視的に見た場合には、等方的な性質を有することになる。例えば、チューブ状細孔のメソポーラス材料膜を考えた場合、1本のチューブは形状異方性の大きいナノスケールの空間を提供するものの、膜全体で見た場合には、1本のチューブ状細孔の異方性は配向のランダムさに隠されてしまう。ここで、メソポーラス材料膜中の面内における細孔の配列方向を制御することができれば、面内で物性の異方性を示すような、複合材料膜を作製することが可能である。
従来、メソポーラスシリカ膜において、膜面内での孔の配向方向を制御する技術として、2回対象性を有する結晶面を用いて孔の配向を制御する技術が開示されている(特開2000−233995号公報(特許文献1))。
また、配向性高分子膜を用いて孔の配向を制御する技術についても開示されている(特開2001−145831号公報(特許文献2)、特開2005−246369号公報(特許文献3))。また、偏光照射した光反応性高分子膜を用いて孔の配向を制御する技術が開示されている(特開2005−272532号(特許文献4))。
図11は、これらの従来のメソポーラス膜の構造を模式的に示した図である。メソポーラス膜のシリンダー状の孔は、膜面内において、一つの方向に配向制御されている。一方で、シリンダー状の孔の面内配向方向が制御された場合であっても、膜面外方向の配向方向は、異方性基板による細孔の面内配向制御による影響を受けず、膜に垂直な方向は、2次元ヘキサゴナル構造の<10>の方向になる。
特開2000−233995号 特開2001−145831号 特開2005−246369号 特開2005−272532号
しかしながら、このような二次元ヘキサゴナル構造の<10>方向が基板に垂直となるヘキサゴナル構造のメソ構造体では、このヘキサゴナル構造の構造規則性を利用するに際して、基板に平行な面の使用に制限されてしまう恐れがあった。
そこで本発明は、二次元ヘキサゴナル構造を備え、二次元ヘキサゴナル構造における<10>方向が基板に平行となるメソ構造体を提供することを目的とする。
本発明のメソ構造体は、以下の構成を有する。即ち、基板上に形成され、2nm以上50nm以下の周期構造を備えるメソ構造体であって、前記周期構造が前記基板に垂直な断面において二次元ヘキサゴナル構造となるように存在する複数の孔を有し、前記複数の孔は、前記基板面内において一つの方向に配向するシリンダー状の孔であって、前記二次元ヘキサゴナル構造の<10>方向が、前記基板に平行で、かつ前記一つの方向に垂直である。
また、本発明のメソ構造体の製造方法は、以下の構成を有する。即ち、二次元ヘキサゴナル構造の<10>方向が、基板に平行となるメソ構造体の製造方法であって、表面に所定の異方性を備える前記基板上に、無機酸化物前駆体とブロックコポリマーとを少なくとも含む溶液を付与する工程を有し、前記ブロックコポリマーは、炭素数が20以上の長鎖アルキル基を少なくとも備える。
本発明のX線分光素子は、以下の構成を有する。即ち、基板と、前記基板上の所定の領域にそれぞれ存在する、2nm以上50nm以下の周期構造を備える複数のメソ構造体と、を有し、前記複数のメソ構造体は、前記周期構造が前記基板に垂直な断面において二次元ヘキサゴナル構造となるように存在する複数の孔を有し、前記複数の孔は、前記基板面内において一つの方向に配向するシリンダー状の孔であって、前記二次元ヘキサゴナル構造の<10>方向が、前記基板に平行で、かつ前記一つの方向に垂直である。
二次元ヘキサゴナル構造を備えるメソ構造体において、二次元ヘキサゴナル構造の<10>方向を、基板に平行とすることができる。
本実施形態のヘキサゴナル構造を備えるメソポーラス膜について示した図。 従来と本実施形態のメソポーラス膜におけるヘキサゴナル構造について説明するための図。 従来のメソポーラス膜を用いて、X線分光素子に応用するときの図。 本実施形態のメソポーラス膜を用いて、X線分光素子に応用するときの図。 本実施形態のメソポーラスシリカ膜を製造するディップコーティングに用いる装置の図。 基板の表面構造を説明するための図。 本実施形態のメソポーラスシリカ膜の形成メカニズムについて説明する図。 実施例1のメソポーラスシリカ膜の回折パターンを示す図。 実施例1で作製したメソポーラスシリカ膜の断面を透過電子顕微鏡で観察した図。 実施例4のX線分光素子(モノクロメータ)を説明するための図。 従来の二次元ヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカ膜を示す図。
本発明は、メソポーラスシリカ、メソポーラスチタン等に代表されるメソ構造体に関するものである。以下、本実施形態を図面に基づき説明する。
[メソ構造体]
ここで、本明細書におけるメソ構造体とは、2nm以上50nm以下の周期構造を有する構造体のことであり、周期的に配列された複数の孔を有する構造体や、その複数の孔に孔以外の部分とは異なる無機材料、有機材料が充填されている構造体をも含めたものとする。なお、本明細書及び本発明においては、孔の内部が無機材料や有機材料によって完全にふさがれてしまっている場合も、便宜上孔と呼ぶ。具体的には、メソポーラスシリカやメソポーラスチタン等がある。
以下、本実施形態では、メソ構造体として主にメソポーラス膜を用いて説明する。
[メソポーラス膜]
メソポーラス膜は、シリカ(酸化シリコン)等の無機酸化物を壁部として複数の孔を有する多孔質膜で、構造規則性の高い多孔質膜である。
メソポーラス膜は、二次元ヘキサゴナル構造のものや、三次元ヘキサゴナル構造のものがある。本実施形態は、シリンダー状の孔が細密パッキングした二次元ヘキサゴナル構造のメソポーラス膜である。前述のように、孔は中空でも、孔内に物質が充填されていてもよい。
[X線]
本明細書においてX線とは、物質(コア材料等)の屈折率実部が1以下となる波長帯域の電磁波である。具体的には、本明細書におけるX線とは、極端紫外光(Extreme Ultra Violet(EUV)光)を含む100nm以下の波長の電磁波を指すこととする。
X線の波長帯域では、屈折率実部が最大の1となる物質は真空であり、空気に代表される気体は真空とほぼ同じ屈折率を持つが、気体以外のほぼすべての物質の屈折率実部は、1よりも小さい値となる。
[本実施形態の二次元ヘキサゴナル構造を備えるメソポーラス膜]
図1は、本実施形態のヘキサゴナル構造を備えるメソポーラス膜について示した図である。図1(a)は、本実施形態のメソポーラス膜の概略構成について示した図、(b)は、本実施形態のメソポーラス膜の断面Aにおける断面について示した図である。
図1(a)に示すとおり、本実施形態のメソポーラス膜12は、基板1に形成される。また、メソポーラス膜のシリンダー状の孔2は、基板に平行で、かつ矢印B方向に伸びて形成されている。この矢印B方向に垂直な断面Aの断面図について、(b)に示す。(b)からも分かる通り、本実施形態のメソポーラス膜は、シリンダー状の孔の伸びる方向に垂直な断面において、孔2がヘキサゴナル構造となるように配列されている。
ここで、本明書中におけるヘキサゴナル構造について説明する。ヘキサゴナル構造とは、結晶学的には六方晶系のことであり、図1(b)に示すように、孔の単位構造を規定するベクトルh、k、lが、|h|=|k|=|l|の条件を満たし、互いに120°の角度をなしている構造を指す。ヘキサゴナル構造は、シリンダー状の孔がハニカム状にパッキングされた構造の二次元ヘキサゴナル構造のものである。
メソポーラス膜においては、界面活性剤の分子集合体が鋳型となってメソポーラス膜を形成した直後から、孔壁部のシリカの重縮合反応が進行するため、膜の構造周期は膜厚方向に収縮しやすい。そのため、図に示すような理想的なヘキサゴナル構造から逸脱する場合がある。本明細書においては、このようなヘキサゴナル構造の対称性を逸脱したものについても、ヘキサゴナル構造に含めるものとする。
ここで、本実施形態のヘキサゴナル構造の格子面の方位について説明する。ヘキサゴナル構造における構造周期の揃う方向を矢印<10>とすると、本実施形態のメソポーラス膜12は、基板に平行な方向となる。本実施形態のメソポーラス膜12は、ヘキサゴナル構造を備え、そのヘキサゴナル構造の<10>方向が、基板に平行な方向に配向していることを特徴としている。さらに、シリンダー状の複数の孔2の長手方向が、基板に対して平行な平面内において、図に示す通り一方向となるように配向を制御されているのが望ましい。即ち、シリンダー状の孔2の長手方向が基板に平行で、且つ基板上で1つの方向に配向を制御されているのが望ましい。さらに、ヘキサゴナル構造における<10>方向が、孔2の配向制御される1つの方向に、垂直であることが望ましい。
次に、ヘキサゴナル構造の格子面の方位について説明する。図2は、従来と本実施形態のメソポーラス膜におけるヘキサゴナル構造について説明するための図である。図2(a)は従来のメソポーラス膜の断面図、(b)は本実施形態のメソポーラス膜の断面図を示している。
まず、(a)に示される従来のメソポーラス膜は、基板面に垂直な方向が、<10>方向となるヘキサゴナル構造と規定される。一方で、本実施形態のメソポーラス膜の構造は、図2(b)に示す構造である。つまり、基板に対して垂直な方向は、hのベクトルで示される<11>方向のヘキサゴナル構造となる。
ここで、孔2の面方位について説明する。結晶においては、原子の位置が厳密に規定されている結果、結晶方位は、逆格子空間上の点として表現される。しかし、メソポーラス膜の場合には、結晶と同様の構造規則性をもった構造体とは言え、その格子面の方位は、広がりを有するものとして表現される。そのため、本実施形態のヘキサゴナル構造における、<10>方向、<11>方向は、厳密に等しい場合だけでなく、結晶学的に規定される方向に対して、角度にして±15°まで許容されることとする。
これと同様に、<10>配向、<11>配向という場合にも、配向方向は±20°程度の幅を許容するものとする。この様な配向方向、及びその幅は、X線回折分析等によって決定することが可能である。同様に、「平行」、「垂直」という文言も、それぞれ厳密な数学的定義による平行、垂直から±20°程度の幅について許容するものとする。
[メソポーラス膜を用いるX線分光素子]
図3は、従来のメソポーラス膜を用いて、X線分光素子とするときの図である。このように2つのメソポーラス膜を用いて、X線分光素子に用いる場合には、基板の法線方向での配向方向の制約ゆえに、メソポーラス膜に対してX線を、メソポーラス膜の表面からブラッグ角θだけ傾いた角度で入射させる必要があった。そのため、2つのメソポーラス膜を対向させ、その相互の位置関係を、精密に制御することが必要となる。
一方、図4は、本実施形態のメソポーラス膜を用いて、X線分光素子とするときの図である。本実施形態のメソポーラス膜は、強いX線回折の強度を与える<10>が、基板に対して垂直に、かつ一方向となるように配向されている。
このため、2つのメソポーラス膜を、一つの基板1でX線分光素子(モノクロメータ)を作製することが可能になる。この作製にあたっては、この2つのメソポーラス膜は、一つの配向メソポーラス膜をパターニングするだけで良い。
もともと一つのメソポーラス膜をパターニングするので、メソポーラス膜91とメソポーラス膜92の二次元ヘキサゴナル構造の結晶学的方位は一致する。そのため、2つのメソポーラス膜の位置関係を制御する必要が無く、従来のメソポーラス膜に比べて簡易な作成方法とすることができる。
[メソポーラスシリカ膜の製造方法]
ヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカ膜12を等方的な表面を有する基板上に作製する場合には、基板1に対する孔2の配向方向(膜の基板に垂直な結晶学的方位)は、<10>方向となり、基板に平行な面内でのシリンダー状孔の長手方向は一軸に配向されずにランダムな配向を示す。
ヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカ膜の孔2の長手方向の配向方向は、表面に構造異方性を有する基板を用いることで一軸に配向するように制御できる。表面に構造異方性を有する基板としては、単結晶基板、膜中での高分子鎖の配向方向に異方性を有する高分子膜を形成した基板、斜方蒸着膜を形成した基板、表面に異方的凹凸を有する基板等を用いることが可能である。その結果得られる構造として、シリンダー状の孔2の長手方向が基板面内で一方向に配向する。ただし、このような製造方法を用いても、従来の二次元ヘキサゴナル構造のメソポーラス膜においては、その基板に対する配向方向、すなわち、基板に垂直な方向は、いずれも<10>方向であった。
そこで、本発明者らは、表面に構造異方性を有する基板を用い、さらに使用する界面活性剤を長鎖アルキル基を有する界面活性剤とすることによって、シリンダー状の孔2の長手方向を基板面内で一軸となるように配向すると同時に、基板に垂直な方向の方位を<11>方向に変化させ、<10>方向を基板に平行な方向に制御することが可能であることを見出した。
ここで表面に構造異方性を有する基板として、単結晶基板、膜中での高分子鎖の配向方向に異方性を有する高分子膜を形成した基板、斜方蒸着膜を形成した基板、表面に異方的凹凸を有する基板等を用いることができる。
その中でも特に、高分子鎖の配向性に面内異方性を有する高分子化合物が形成されている基板を用いることが好ましい。ここでいう高分子化合物としては、ポリイミドが好ましく用いられる。高分子鎖の配向性は、ラビング処理や偏光照射等によって、基板上に高分子膜を形成した後に付与しても、ラングミュア−ブロジェット法等により高分子鎖に配向性が付与されるような成膜法を用いて形成しても良い。
ここで、基板上へのメソ構造体薄膜の製造方法は、主に2つの方法に大別される。ひとつは水熱合成法に基づく方法で、もうひとつはゾル−ゲル法に基づく方法である。
はじめに水熱合成法について説明する。この方法は、界面活性剤水溶液に、例えばシリコンアルコキシド、シリコンハロゲン化物のようなシリカ源となる物質と、酸を添加した前駆体溶液中に、表面に構造異方性を有する基板を保持し、80℃程度の温度で5日間程度保持することによって、メソポーラスシリカの薄膜を基板上に形成させる方法である。この工程で、膜表面に、鋳型となる界面活性剤の集合体が、シリカマトリクス中に規則的に配向した、メソポーラスシリカ薄膜が形成される。基板に垂直な方向の方位が二次元ヘキサゴナル構造の<11>方向であるメソポーラスシリカ膜を作製するために使用可能な界面活性剤としては、ポリエチレン−ポリエチレンオキシドブロックコポリマー、ポリブタジエン−ポリエチレンオキシドブロックコポリマー等が用いられる。特に、ポリエチレンブロックを構成する炭素数が20以上のポリエチレン−ポリエチレンオキシドジブロックコポリマーが好ましく用いられる。また、界面活性剤ミセルの径を調整するために、アルカン、メシチレン等の添加物を加えても良い。
次に、ゾルーゲル法に基づくメソポーラスシリカ膜の作製方法について説明する。この方法は、臨界ミセル濃度以下の界面活性剤と、シリカ源とを含む有機溶媒/水混合溶液を、スピンコート、ディップコート等によって基板上に塗布する方法である。
コーティング中の溶媒の乾燥による界面活性剤濃度の上昇に従って規則的なメソ構造が形成される。有機溶媒としてはアルコール等が用いられる。比較的反応条件が穏やかなため、基板材質の制約が小さく、また短時間で膜作製が可能である等の利点を有している。スピンコートやディップコートを行うための装置は、一般的なものを用いることができる。
[本実施形態のメソポーラスシリカ膜の製造方法]
図5は、本実施形態のメソポーラスシリカ膜を製造するディップコーティングに用いる装置の図である。ディップコーティングを用いたメソポーラスシリカ膜の製造方法について以下に説明する。
ヘキサゴナル構造におけるX線の最も強い回折を示す面の法線方向が基板に平行となるメソポーラスシリカ膜の製造方法である。表面に所定の異方性を備える基板上に、無機酸化物前駆体とブロックコポリマーとを少なくとも含む溶液を付与する工程を有し、ブロックコポリマーは、炭素数が20以上の長鎖アルキル基を少なくとも備えることを特徴とする。
図において、61は容器、62は表面に構造異方性を有する基板、63は前駆体溶液である。前駆体溶液63は臨界ミセル濃度以下の界面活性剤と、シリカ前駆物質を含む有機溶媒と水の混合溶液で、加水分解重縮合触媒として作用する酸が添加される。使用される有機溶媒としては、アルコールが一般的で、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどが好ましく用いられる。酸としては、塩酸、硝酸等の一般的な酸を使用することができる。
また、本実施形態のメソポーラスシリカ膜の作製に使用できる界面活性剤は、水熱合成法による膜作製の場合と同様に、ポリエチレン−ポリエチレンオキシドブロックコポリマー、ポリブタジエン−ポリエチレンオキシドブロックコポリマー等であり、特に、ポリエチレンブロックを構成する炭素数が20以上のポリエチレン−ポリエチレンオキシドジブロックコポリマーが好ましく用いられる。
また、この方法においても、界界面活性剤ミセルの径を調整するために、アルカン、メシチレン等の添加物を加えても良い。界面活性剤の濃度は、使用する界面活性剤の使用する溶媒への溶解度や、溶液中の臨界ミセル濃度等を考慮して、最適な値に調整する。シリカ源の具体例としては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等が用いられ、こちらも濃度を最適な値に調整する。メソポーラス膜を作製する基板1は、ホルダー64を用いてロッド65に固定され、zステージ66によって上下させる。反応溶液を塗布した基板は、温度や湿度の制御が可能な装置の中で乾燥させることが好ましい。乾燥工程の後に、高湿度雰囲気中でエージングを行うこともある。
このようにして作製されたメソポーラスシリカ膜は、孔内に界面活性剤分子集合体を含んでいるが、これらの界面活性剤を除去することや、他の物質を孔内に導入する等しても良い。
界面活性剤分子集合体の除去には、一般的な方法を用いることができ、焼成、溶剤による抽出、オゾンによる酸化・分解等の中から選択される。例えば、空気中、350℃で4時間焼成することによって、メソ構造をほとんど破壊することなく、界面活性剤を除去することができる。
孔の面内配向を規定するための表面に異方性を有する基板が、高分子鎖の配向性に面内異方性を有する高分子化合物が形成されている基板等の場合には、この焼成工程において、該高分子材料も焼失し、基板上に直接メソポーラスシリカ膜が形成された構造の膜を得ることもできる。基板表面の、構造異方性を有する高分子膜を残存させる必要がある場合には、焼成工程の代わりに抽出等の工程を選択すればよい。
[本実施形態のメソポーラスシリカ膜の形成の推定メカニズム]
以下、本実施形態のメソポーラスシリカ膜が形成される際の、形成メカニズムについて説明する。
図6は、基板の表面構造を説明するための図である。(a)において、81は表面異方性の小さい基板、82は表面の異方性の小さい基板表面に吸着した界面活性剤分子の疎水部、83は表面の異方性の小さい基板上に形成されるミセルの親−疎水界面のアウトラインを示す。また、(b)において、84は表面の異方性の大きい基板、85は表面の異方性の大きい基板表面に吸着した界面活性剤分子の疎水部、86は表面異方性の大きい基板上に形成されるミセルの親−疎水界面のアウトライン、矢印は、基板表面に付与された構造異方性の最も顕著な方向を示す。
図示したように、(b)の構造異方性の大きい基板表面において、界面活性剤分子は基板と平行に、延伸された状態で吸着される。延伸された吸着のドライビングフォースとしは、例えば高分子の配向状態に異方性を有する高分子膜を形成した基板の場合の疎水相互作用の異方性等があげられる。図6(b)に示す異方性の大きい基板を用いる場合、疎水性部位が延伸された状態で界面活性剤分子が表面に吸着するために、界面においては表面ミセルの疎水部間の間隔が大きくなる。
図7は、本実施形態のメソポーラスシリカ膜の形成メカニズムについて説明するための図である。以下、形成メカニズムについて説明する。所定の異方性を備える基板を用いる場合((c)、(d))、異方性の小さい基板((a)、(b))に比べて、疎水性部位が延伸された状態で界面活性剤分子が表面に吸着するために、界面において表面ミセルの疎水部間の間隔がla→la’と大きくなる。この場合、界面での間隔と液晶相の格子間隔が一致するように弾性変形し、基板表面に吸着する界面活性剤分子の構造が歪む。このように、弾性変形を起こすことで、膜の結晶学的方位が保持される結果、二次元ヘキサゴナル構造の<10>方向が基板法線方向に配向したメソポーラス膜(d)が得られるものと考えられる。
以上より、本実施形態のメソポーラス膜の作製方法としては、表面に所定の構造異方性を備える基板上に無機酸化物前駆体と界面活性剤としてブロックコポリマーとを少なくとも含む溶液を付与する工程を有し、また界面活性剤が、以下に示す炭素数が20以上の長鎖アルキル基を備えることで形成されるものと考えられる。
本実施形態のメソポーラスシリカ膜を作製するのに用いられる界面活性剤は、ポリエチレン−ポリエチレンオキシドブロックコポリマー、ポリブタジエン−ポリエチレンオキシドブロックコポリマー等で、特に、ポリエチレンブロック、ポリブタジエンブロックを構成する炭素数が20以上のポリエチレン−ポリエチレンオキシドジブロックコポリマー、ポリブタジエン−ポリエチレンオキシドブロックコポリマーが好ましく用いられる。このような疎水ブロックの大きな界面活性剤を用いた場合、書得知の異方性を有する基板上で界面活性剤親水部が延伸配向することによって、表面ミセルの疎水部間の間隔は、図に示すようにさらに増大する。
この状況において、シリカトロピックが<10>配向を保持したままで液晶相の間隔を界面ミセルの間隔に合わせるためには、液晶相は大きな変形を余儀なくされ、大きな弾性エネルギーを持った状態に成らざるを得ない。そのエネルギーがある限界を超えたところで、この液晶相は、この配向状態を保持することができなくなる。そこで、シリカトロピック液晶相の配向変化が起こる結果、(d)に示す本実施形態のメソポーラス膜の配向を達成すると本発明者らは考察している。すなわち、la’’に<10>方向の面間隔の2倍(2d01)がマッチするように、シリカトロピック液晶相全体の配向が変化するというメカニズムである。この場合、理想的なヘキサゴナル構造を仮定した場合でも、d10はd11の√3倍の大きさとなり、大きな弾性エネルギーの蓄積は不要になる。尚、本実施形態の基板の構造異方性としては、メソポーラス膜の構造周期の1.5〜3倍程度の周期にするのが望ましい。作成するメソポーラス膜の2−50nmの周期構造に合わせて、基板の異方性についても決定し、その周期構造の1.5〜3倍程度とする。
尚、図7(d)に示す本実施形態のメソポーラスシリカ膜は、基板界面における表面ミセル間の距離が、シリカのシリカトロピック液晶層の<11>方向の面間隔d11の2倍とほぼ同じとなる。
[X線回折分析]
本実施形態のメソポーラスシリカ膜の構造は、X線回折分析等によって確認することができる。例えば、基板表面に付与された構造異方性の最も顕著な方向に対して、入射X線の基板上での射影方向が垂直/平行になるような2つの方向から、膜表面に対してすれすれの入射角でX線を入射して(Grazing Incidence)、2次元X線検出器で回折パターンを記録することによって構造を確認することができる。本実施形態のメソポーラスシリカ膜の2次元X線回折パターンにおいては、従来のメソポーラスシリカ膜とは異なり、基板に対して平行な格子面に対応する回折スポットは観測されない。
また、メソポーラスシリカ膜の面内での配向分布は、面内X線回折分析において、基板と垂直に配向した<10>方向の回折ピーク位置に検出器を固定し、試料を面内で回転した際の回折強度のプロファイルを記録することにより定量的に求めることが可能である。
また、メソポーラスシリカの構造は、膜の断面の透過電子顕微鏡観察によって、直接確認することでも可能である。
以下、実施例を用いてさらに詳しく説明する。
(実施例1)
本実施例は、ラビング処理を施したポリイミド膜を形成した基板と、ポリエチレン−b−ポリエチレンオキシドブロックコポリマー界面活性剤を構造規定剤として用いる。シリンダー状の孔が基板面内において一つの方向に配向制御され、且つ、<10>方向が、ラビングによって規定される孔の長手方向に垂直、且つ基板に平行な方向に配向している二次元ヘキサゴナル構造を有するメソポーラスシリカ膜を作製した。
シリコン基板上に、poly(hexamethylenepyromellitimide)の前駆体をスピンコートにより塗布し、200℃で焼成してポリイミド膜を得た。このポリイミド膜に対して、ナイロンを巻きつけた外径24mmのラビングローラーを用いて、ラビング処理を行った。ラビング条件は、布の押し込み量0.4mm、回転数1000rpm、ステージ速度60mm/sで、この条件のラビング処理を2回繰り返し行った。
次に、メソポーラスシリカ膜の前駆体溶液を作製する。界面活性剤として、ポリエチレン−b−ポリエチレンオキシドブロックコポリマーC2245(OC20Hを用いた。テトラプロポキシシラン、エタノール、C2245(OC20H、塩酸、水をモル比で1.0:22:0.06:0.004:4.0になるように混合し、前駆体溶液を得た。
ラビング処理を施したポリイミド基板に、この前駆体溶液を、ディップコーティングによって塗布した。ディップコート時の基板の引き上げ速度は3mm/sである。塗布後、膜を室温において24時間乾燥し、構造中に界面活性剤分子集合体が包含された状態のメソポーラスシリカ膜を得た。
このメソポーラスシリカ膜の構造をX線回折分析によって評価した。エネルギー8.02keVのX線を、基板に対して0.2°の角度で入射し、回折パターンを、反射配置において2次元検出器で測定した。図8は、本実施例のメソポーラスシリカ膜の回折パターンを示す図である。基板に投影した入射X線の方向が、孔の長手方向(ラビング方向)に平行な配置(−180°、0°、180°)と、垂直な配置(−90°、90°)の回折パターンについても得られている。
図からわかるように、入射X線の方向とラビング方向が平行な配置では、回折スポットは観測されないが、垂直な配置では明瞭な複数の回折スポットが観測されている。これより、このメソポーラスシリカ膜は、面内における構造異方性を有していることが分かる。また、この回折パターンから、<10>方向が基板と平行に配向した二次元ヘキサゴナル構造であることが分かる。
即ち、本実施例で作製したメソポーラスシリカ膜においては、二次元ヘキサゴナル構造を有し、二次元ヘキサゴナル構造の<10>方向が、孔の長手方向に対して垂直、且つ基板に平行な方向に配向していることが確認された。
また、このメソポーラスシリカ膜における、シリンダー状孔の面内配向性を調べるために、面内X線回折分析を試みた。面内X線回折分析のラジアルスキャンでは、d=8nmに相当する位置に回折ピークが観測された。この観測された回折ピーク位置に検出器を固定して試料を基板に垂直な軸に対して回転させ、面内ロッキングカーブを測定し、図に示すような結果を得た。
この結果から、本実施例のメソポーラスシリカ膜においては、シリンダー状の孔は、基板面内において、ラビング方向と垂直な方向に延伸し、半値幅約6.5°の極めて狭い配向分布を持って一軸に配向することが確認された。
また、図9は、本実施例で作製したメソポーラスシリカ膜の断面構造を、透過電子顕微鏡で観察した図である。(a)は、ラビング方向に平行に、すなわちシリンダー状の孔の長手方向に垂直にカットした試料において、観察された断面写真を図に示す。(b)は、孔の構造が分かり易いように断面を拡大した図である。この図からも、本実施例のメソポーラスシリカ膜は、<10>方向が孔の軸配向方向に垂直で、且つ基板面に平行な方向の二次元ヘキサゴナル構造であることが明らかである。
以上の様に、構造が決定されたメソポーラスシリカ膜は、焼成や溶媒抽出等の、一般的な方法で孔中に存在する界面活性剤を除去し、中空のメソポーラスシリカ薄膜とすることが可能である。焼成によって界面活性剤を除去する場合には、孔壁を構成するシリカの縮合反応が進行するために膜厚方向に膜が収縮し、界面活性剤除去前と比較して構造が変化することがある。
(実施例2)
本実施例は、ポリイミドのラングミュア−ブロジェット膜を形成した基板上で、実施例1と同じポリエチレン−b−ポリエチレンオキシドブロックコポリマー界面活性剤を構造規定剤に用いた。シリンダー状の孔が基板面内において一つの方向に配向制御されており、且つ、<10>方向が、ラビング方向に平行(孔配向方向に垂直)、且つ膜面に平行な方向に配向している二次元ヘキサゴナル構造を有するメソポーラスシリカ薄膜を作製した。
無水ピロメリット酸とエチレンジアミンを重合させて合成した、実施例1で使用したpoly(hexamethylenepyromellitimide)の前駆体であるポリアミック酸とN,N−ジメチルヘキサデシルアミンとを1:2のモル比で混合し、ポリアミック酸AのN,N−ジメチルヘキサデシルアミン塩を作製する。これをN,N−ジメチルアセトアミドに溶解し0.5mMの溶液とし、この溶液を20℃に保ったLB膜成膜装置の水面上に滴下する。水面上に形成された単分子膜は、30mN/mの一定の表面圧を印加しながら、5.4mm/minのディップ速度でシリコン基板上に移し取る。
基板上に30層のポリアミック酸アルキルアミン塩LB膜を成膜した後、窒素ガスフロー下で300℃、30分間焼成してポリイミドpoly(hexamethylenepyromellitimide)のLB膜を形成する。ポリアミック酸の脱水閉環によるイミド化は赤外吸収スペクトルより確認される。また、形成されたポリイミドLB膜中の高分子鎖の配向性は、赤外吸収スペクトルの2色性により分析し、高分子鎖はLB膜作成時の基板の引き上げ方向に平行に配向していることが確かめられる。
この基板上に、実施例1と同じ手順で、同じ組成の前駆体溶液と、同じ条件のディップコーティングによって、メソポーラスシリカ膜を作製する。
得られたメソポーラスシリカ膜の構造を、実施例1と同様、X線回折分析によって評価する。先ず、2次元X線回折パターンを、反射配置において実施例1と同じ条件で記録する。測定は、入射X線の基板上への射影の方向と、LB膜作製時における基板の引き上げ方向とが、垂直、及び平行になる、2つの方向で行う。明瞭なX線回折パターンが観測されるのは、入射X線の基板上への射影の方向が、LB膜成膜時の基板引き上げ方向と垂直な配置の場合で、平行配置では明瞭な回折スポットは観測されなかった。この異方性は、シリンダー状孔が膜面内において配向制御されていることを示す。垂直配置において観測されたX線回折パターンについても、実施例1と実質的に同じである。
このことから、本実施例において、ポリイミドのLB膜を形成した基板と、ポリエチレン−b−ポリエチレンオキシドブロックコポリマーC2245(OC20Hを使用することによって、実施例1で作製されたのと同様、<10>方向が基板と平行に配向した二次元ヘキサゴナル構造を有するメソポーラスシリカ膜が作製できることが示された。
この膜を、実施例1と同様に面内X線回折分析によって評価し、シリンダー状孔の面内での配向を定量的に評価する。面内X線回折分析のラジアルスキャンでは、実施例1と同様に、d=8nmに相当する位置に回折ピークが観測される。この観測された回折ピーク位置に検出器を固定して試料を基板に垂直な軸に対して回転させ、面内ロッキングカーブ測定を行うと、図8と同様のプロファイルが得られ、シリンダー状の孔がLB膜作製時の基板の引き上げ方向に対して垂直に配向していることが確認される。その配向分布は、半値幅が20°という狭いものである。
以上の構造解析から、本実施例で作製した膜においては、二次元ヘキサゴナル構造の<10>方向が、LB膜作製時の基板の引き上げ方向に垂直な孔の配向方向に対して垂直、且つ膜面に平行な方向に配向していることが確認される。
本実施例で作製した膜の断面を透過電子顕微鏡で観察すると、実施例1で作製した膜において観察されたのと同様の構造が確認され、これからも、本実施例で作製したメソポーラスシリカ膜は<10>面が孔配向方向に垂直、且つ基板面に略平行な方向に配向した、二次元ヘキサゴナル構造であることが確認された。
(実施例3)
本実施例は、ラビング処理を施したポリイミド膜を形成した基板と、ポリブタジエン−b−ポリエチレンオキシドブロックコポリマー界面活性剤を構造規定剤として用いた。
実施例1と同様の手順で、シリコン基板上に実施例1で用いたのと同じポリイミド膜を形成した後、実施例1と同じ条件でラビング処理を施す。ただし、これらの説明については省く。
次に、メソポーラスシリカ膜の前駆体溶液を作製する。界面活性剤として、ポリブタジエン−b−ポリエチレンオキシドブロックコポリマーPBD24−b−PEO20を用いる。テトラプロポキシシラン、テトラヒドロフラン、PBD24−b−PEO20、塩酸、水をモル比で1.0:28:0.03:0.004:4.0になるように混合し、前駆体溶液を得る。
ラビング処理を施したポリイミド基板に、この前駆体溶液を、スピンコーティングによって塗布する。スピンコート時の基板の回転速度は1000rpmとした。塗布後、膜を室温において24時間乾燥し、構造中に界面活性剤分子集合体が包含された状態のメソポーラスシリカ膜を得た。
得られたメソポーラスシリカ膜の構造を、実施例1と同様、X線回折分析によって評価する。先ず、2次元X線回折パターンを、反射配置において実施例1と同じ条件で記録する。測定は、入射X線の基板上への射影の方向と、基板のラビング方向とが、垂直、及び平行になる、2つの方向で行う。明瞭なX線回折パターンが観測されるのは、入射X線の基板上への射影の方向が、ラビング方向と垂直な配置の場合で、平行配置では明瞭な回折スポットは観測されない。この異方性は、シリンダー状孔が膜面内において配向制御されていることを示す。垂直配置において観測されたX線回折パターンは、実施例1と実質的に同じである。
このことから、本実施例において、ラビング処理を施したポリイミド膜を形成した基板と、ポリブタジエン−b−ポリエチレンオキシドブロックコポリマーPBD24−b−PEO20を使用することによって、<10>方向が基板と平行に配向した二次元ヘキサゴナル構造を有するメソポーラスシリカ膜が作製できることが示される。
この膜を、実施例1と同様に面内X線回折分析によって評価し、シリンダー状孔の面内での配向を定量的に評価する。面内X線回折分析のラジアルスキャンでは、d=10nmに相当する位置に回折ピークが観測される。この観測された回折ピーク位置に検出器を固定して試料を基板に垂直な軸に対して回転させ、面内ロッキングカーブ測定を行う実施例1と同様、2つのピークがラビング方向に対して±90°の位置に観測され、シリンダー状孔が基板のラビング方向に対して垂直に配向していることが確認される。その配向分布は、半値幅が30°と求められる。
以上の構造解析から、本実施例で作製した膜においても、二次元ヘキサゴナル構造の<10>方向が、ラビング方向に垂直な、孔の配向方向に対して垂直、且つ膜面に平行な方向に配向していることが確認された。
(実施例4)
本実施例は、実施例1で作製した面内での孔の配向方向が制御されたメソポーラスシリカ膜を、部分的エッチングによって2つの部分に分離し、X線分光素子(モノクロメータ)100を作製することを特徴とする。図10は、本実施例のX線分光素子(モノクロメータ)100を説明するための図である。
本実施例のX線分光素子(モノクロメータ)100は、基板上の所定の領域にそれぞれ形成される複数のメソ構造体を有し、複数のメソ構造体は、前記基板に垂直な断面において、ヘキサゴナル構造に配列される複数の孔を備え、ヘキサゴナル構造におけるX線の最も強い回折を示す面の法線方向が前記基板に平行であることを特徴とする。
実施例1で記述したメソポーラス膜を用いて、ラビング処理を施したポリイミドを形成した基板上に、膜厚1μmのメソポーラスシリカ膜を作製する。膜厚は、ディップコーティング時の基板の引き上げ速度を調整することで制御が可能である。この膜を実施例1で記述したのと同じ手法で構造解析した結果は、基本的に実施例1で作製された膜の結果と同様であり、本実施例で作製したメソポーラスシリカ膜は、シリンダー状孔が、ハニカム状に配向した二次元ヘキサゴナル構造を有しており、<10>面が膜面内孔配向方向に垂直、且つ基板面に略平行な方向に配向していることが確認される。
孔中に界面活性剤分子集合体を保持した状態の、このメソポーラスシリカ膜を、フォトリソグラフィの手法によって、図の様にパターニングし、0.5mmのギャップを挟んで対向する2つの領域に分ける。以下、この2つの領域を第一のメソポーラス膜1301、第二のメソポーラス膜1302とする。パターニングした領域は図示したサイズの長方形で、その長手方向が二次元ヘキサゴナル構造の<10>方向に垂直になるようにしてある。
この2つのメソポーラス膜のうち、第一のメソポーラス膜1301に、<10>方向に平行な方向と基板上へのX線の射影方向とが0.56°になるようにX線を入射させる。使用したX線のエネルギーは8.02keVで、この0.56°という角度は、このエネルギーのX線を用いた場合の、本実施例で使用するメソポーラスシリカ膜の膜面内での面間隔8nmに対応するブラッグ角である。
入射X線の基板に対する入射角は、0.2°という、全反射が起こらない小さい角度に設定する。入射したX線は、第一のメソポーラス膜1301によって回折された後、第二のメソポーラス膜1302で再び回折され、最終的に入射方向と同じ方向に進行する。
この配置は、2結晶モノクロメータと同じ配置である。2つのメソポーラス膜1301、1302は、もともと一つの方位を有する膜をパターニングしたものであるから、その結晶方位は同じであり、さらに構造周期の位相も一致している。このため、モノクロメータにおいて、通常の2結晶モノクロメータで必要な2つの結晶の精密な位置調整は不要となる。メソポーラス材料の逆格子点は、ある幅を有しているので、入射角がブラッグ角に厳密に一致しなくてもある程度の強度のブラッグ回折を起こす。
そのため、簡単なプロセスと安価な材料を用いて、簡素な構成の分光素子を得ることができる。
この配置において、第二のメソポーラス膜1302から出射されるX線を、X線検出器で観測し、その特性を評価する。この時、第1の領域の終端と第二のメソポーラス膜の示端にビームストッパ−1303を図示したように設け、2つのメソポーラス膜の回折を受けたX線以外は検出されないように構成した。
観測の結果、この配置のように作製したメソポーラスシリカ膜を用いたモノクロメータから出射されるX線は、発散角が0.1°未満の非常に平行度に優れたものであった。
尚、同一の基板に形成されるメソポーラス膜としては2つに限定されず、複数のメソポーラス膜を形成するとしても良い。
1 基板
2 孔
12 メソポーラス膜(メソポーラスシリカ膜)
61 容器
63 前駆体溶液
64 基板ホルダー
100 X線分光素子(モノクロメータ)
1301 第一のメソポーラス膜
1302 第二のメソポーラス膜
1303 ビームストッパ−

Claims (10)

  1. 基板上に形成され、2nm以上50nm以下の周期構造を備えるメソ構造体であって、
    前記周期構造が前記基板に垂直な断面において二次元ヘキサゴナル構造となるように存在する複数の孔を有し、
    前記複数の孔は、前記基板面内において一つの方向に配向するシリンダー状の孔であって、
    前記二次元ヘキサゴナル構造の<10>方向が、前記基板に平行で、かつ前記一つの方向に垂直であることを特徴とするメソ構造体。
  2. 前記基板は表面に構造異方性を備えていることを特徴とする請求項1に記載のメソ構造体。
  3. 前記基板の表面には、高分子鎖の配向性が面内異方性を有する高分子化合物が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のメソ構造体。
  4. 前記複数の孔には、孔以外の部分とは異なる無機材料または有機材料が充填されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のメソ構造体。
  5. 前記メソ構造体は、メソポーラスシリカからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のメソ構造体。
  6. X線分光素子であって、
    基板と、前記基板上の所定の領域にそれぞれ存在する、2nm以上50nm以下の周期構造を備える複数のメソ構造体と、を有し、
    前記複数のメソ構造体は、前記周期構造が前記基板に垂直な断面において二次元ヘキサゴナル構造となるように存在する複数の孔を有し、前記複数の孔は、前記基板面内において一つの方向に配向するシリンダー状の孔であって、
    前記二次元ヘキサゴナル構造の<10>方向が、前記基板に平行で、かつ前記一つの方向に垂直であることを特徴とするX線分光素子。
  7. 二次元ヘキサゴナル構造の<10>方向が、基板に平行となるメソ構造体の製造方法であって、
    表面に所定の異方性を備える前記基板上に、無機酸化物前駆体とブロックコポリマーとを少なくとも含む溶液を付与する工程を有し、
    前記ブロックコポリマーは、炭素数が20以上の長鎖アルキル基を少なくとも備えることを特徴とするメソ構造体の製造方法。
  8. 前記ブロックコポリマーは、ポリエチレン−ポリエチレンオキシドブロックコポリマー、またはポリブタジエン−ポリエチレンオキシドブロックコポリマーであることを特徴とする請求項7に記載のメソ構造体の製造方法。
  9. 前記ブロックコポリマーは、ポリエチレンブロック、ポリブタジエンブロックを構成する炭素数が20以上のポリエチレン−ポリエチレンオキシドジブロックコポリマー、またはポリブタジエン−ポリエチレンオキシドブロックコポリマーであることを特徴とする請求項7に記載のメソ構造体の製造方法。
  10. 前記基板にラビング処理をして、構造異方性を付与する工程を有することを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載のメソ構造体の製造方法。
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