JP2013254633A - 電気化学デバイス用電解液及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

電気化学デバイス用電解液及びリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】ゲル状の電解液の高い安全性を達成しつつ、さらに高い電池特性を実現する、電気化学デバイス用電解液及びこれを用いたリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】非水溶媒と電解質と低分子ゲル化剤とを含有する電気化学デバイス用電解液であって、前記非水溶媒と前記電解質とを合わせて4種以上含む、電解液。また、前記の電気化学デバイス用電解液と、正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料からなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する正極と、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料及び金属リチウムからなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する負極と、を備えるリチウムイオン二次電池。
【選択図】なし

Description

本発明は、電気化学デバイス用電解液及びリチウムイオン二次電池に関する。
従来、各種産業分野で有機液体類を固化するのに、低分子量又は高分子量の有機ゲル化剤が用いられている。低分子量のゲル化剤としては、例えばアミノ基、アミド基及び尿素基などの水素結合性官能基を分子内に有する低分子量化合物群が知られている。低分子量のゲル化剤は、化粧品、香粧品及び汚泥処理などの分野で好適に用いられている。
一方、高分子ゲル化剤とは、三次元的なネットワーク構造を分子内に有する高分子化合物群のことである。高分子ゲル化剤として、例えばポリエーテル系化合物などがよく知られている。高分子ゲル化剤についての研究例は多く、様々な分野に展開されている。
低分子量の有機ゲル化剤は、高分子量のものに比べて開発が比較的遅く、知られているゲル化剤の種類は少ない。低分子量の有機ゲル化剤として、例えば、ジアルキルウレア誘導体(特許文献1)及びパーフルオロアルキル誘導体(特許文献2、3、非特許文献1)が知られている。
特開平8−231942号公報 特開2007−191626号公報 特開2007−191661号公報
J.Fluorine Chem.110、p47−58(2001年)
ところで、現在、リチウムイオン二次電池は携帯機器の充電池として主に用いられている。ところが、従来のリチウムイオン二次電池には有機溶媒系の電解液が用いられており、その安全性の更なる改善は大きな課題となっている。特に、近い将来に展開が期待されている自動車用途ではこれまで以上に高い電池安全性(非漏洩であること、難燃性であること、デンドライドの生成を抑制すること等)が求められる。そのため、例えば、ポリマー(ゲル)電池、イオン性液体やフルオロ溶媒を電解液として用いた電池などの開発が進められている。しかしながら、従来のリチウムイオン二次電池において、電池安全性と電池特性(充放電特性、低温作動性、高温耐久性等)とはトレードオフの関係になっているのが実情であり、電池安全性と電池特性とを両立することは困難である。例えば、ポリマー(ゲル)電池は電池安全性に加えて電池の小型化や形態自由度を増す観点からも期待されているが、既存のドライポリマー電池は電池特性(特に低温作動性)が高いものとはいえない。また、ゲルポリマー電池は、ドライポリマー電池よりも電池特性(特にレート特性や低温作動性)の改善効果は認められるものの、液状の電解質電池には及ばない。さらに、低分子量の有機ゲル化剤を用いた電池の研究例は、現在のところ、数が少ない。
リチウムイオン二次電池に代表される電気化学デバイス用電解液では各種性能を両立させるため、複数の溶媒を混合したり、複数の電解質を混合したりして、それらを配合することがよく行われている。例えば、複数の溶媒を用いて、粘度及び誘電率を広範な温度範囲でバランスさせることで、高出力性能の電解液を広範な温度領域で達成することができたり、複数の電解質を混合することで、高温や高負荷な充放電環境でも電解液及び電極等の劣化を低減することができたりしている。しかしながら、低分子ゲル化剤を含むゲル状の電解液については、非水溶媒や電解質の組成の検討はほとんど行われていなかった。それは、ゲル状の電解液そのものが高粘度であったり、電解液の調製や電池の作製工程が従来用いられている液体の電解液とは異なっていたりするために、低分子ゲル化剤を含むゲル状の電解液では、そこに含まれる非水溶媒や電解質の組成を変更しても大きな効果が期待できなかったことによる。
そこで、本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、ゲル状の電解液の高い安全性を達成しつつ、さらに高い電池特性を実現する、電気化学デバイス用電解液及びリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
本発明者らは上記目的を達成すべく、低分子ゲル化剤を含む電解液について、非水溶媒及び電解質の組成を変更する検討を行った。その結果、非水溶媒及び電解質を合計した成分の種類を4種以上にすることで、高い電池特性と高い安全性とを両立できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1]非水溶媒と電解質と低分子ゲル化剤とを含有する電気化学デバイス用電解液であって、前記非水溶媒と前記電解質とを合わせて4種以上含む、電解液。
[2]前記電解質を2種以上含む、上記電気化学デバイス用電解液。
[3]前記電解質の1種がヘキサフルオロリン酸リチウムである、上記電気化学デバイス用電解液。
[4]前記電解質の1種以上がホウ素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる1種以上を有するリチウム塩である、上記電気化学デバイス用電解液。
[5]前記非水溶媒の1種以上が環状カーボネート部位を有する溶媒である、上記電気化学デバイス用電解液。
[6]前記低分子ゲル化剤が、下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含む、上記電気化学デバイス用電解液。
Rf1−R1−X1−L1−R2 (1)
Rf1−R1−X1−L1−R3―L2―X2―R4―Rf2 (2)
5−O−Cy−X3−Cm (3)
(式(1)及び(2)中、Rf1及びRf2はそれぞれ独立に、炭素数2〜20のパーフルオロアルキル基を示し、R1及びR4はそれぞれ独立に、単結合若しくは炭素数1〜6の2価の飽和炭化水素基を示し、X1及びX2はそれぞれ独立に、下記式(1a)、(1b)、(1c)、(1d)、(1e)、(1f)及び(1g)で表される基からなる群より選ばれる2価の基を示し、L1及びL2はそれぞれ独立に、単結合、アルキル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよいオキシアルキレン基、アルキル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよいオキシシクロアルキレン基、又は、アルキル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい2価のオキシ芳香族基を示し、R2は、アルキル基若しくはハロゲン原子(ただし、フッ素原子を除く。)で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、アルキル基若しくはハロゲン原子(ただし、フッ素原子を除く。)で置換されていてもよいフルオロアルキル基、アリール基若しくはフルオロアリール基、又は、これらの基のうちの1種以上とこれらの基に対応する2価の基のうちの1種以上とが結合した1価の基を示し、R3は主鎖に酸素及び/又は硫黄原子を1つ以上有してもよく、かつ、アルキル基で置換されていてもよい炭素数1〜18の2価の飽和炭化水素基を示す。
Figure 2013254633
式(3)中、R5は主鎖の炭素数1〜20の置換又は無置換の1価の炭化水素基を示し、Cyは置換若しくは無置換の核原子数5〜30の2価の芳香族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示し、X3は、下記式(3a)、(3b)、(3c)、(3d)、(3e)、(3f)及び(3g)で表される基からなる群より選ばれる2価の基、又は、それらの2価の基のうち2種以上が結合した2価の基を示し、Cmは下記一般式(3z)で表される1価の基を示し、下記式(3z)中、複数のRaはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を示す。
Figure 2013254633
Figure 2013254633
[7]前記X1及びX2が、それぞれ独立に、前記式(1a)又は前記式(1d)で表される2価の官能基である、上記電気化学デバイス用電解液。
[8]前記X1及びX2がいずれも、前記式(1d)で表される2価の基である、上記電気化学デバイス用電解液。
[9]高分子ゲル化剤を含む、上記電気化学デバイス用電解液。
[10]上記電気化学デバイス用電解液と、正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料からなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する正極と、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料及び金属リチウムからなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する負極と、を備えるリチウムイオン二次電池。
[11]前記正極は、前記正極活物質として、リチウム含有化合物を含む、上記リチウムイオン二次電池。
[12]前記リチウム含有化合物は、リチウムを有する金属酸化物及びリチウムを有する金属カルコゲン化物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含む、上記リチウムイオン二次電池。
[13]前記負極は、前記負極活物質として、金属リチウム、炭素材料、及び、リチウムと合金形成が可能な元素を含む材料、からなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する、上記リチウムイオン二次電池。
本発明によると、高い安全性(例えば、漏液低減性、デンドライド抑制性、難燃性)を実現しつつ、高い電池特性(例えば、充放電特性、低温作動性、高温耐久性)を達成できる電気化学デバイス用電解液及びリチウムイオン二次電池を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。本実施形態の電気化学デバイス用電解液(以下、単に「電解液」ともいう。)は非水溶媒と電解質と低分子ゲル化剤とを含む。また、本実施形態のリチウムイオン二次電池は、上記電解液と、正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料からなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する正極と、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な負極材料及び金属リチウムからなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する負極とを備えるものである。
本実施形態に係る電解液は、(i)非水溶媒と(ii)電解質と(iii)低分子ゲル化剤とを含有する。
<非水溶媒>
非水溶媒としては、特に限定されず様々なものを用いることができるが、室温で液体である非水溶媒を用いるのが一般的である。
そのような非水溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール及びオクタノールなどのアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、γ−ブチロラクトン、γ―バレロラクトン、δ―バレロラクトン及びε―カプロラクトンなどの酸エステル類;アセトン、ジメチルケトン、ジエチルケトン、エチルメチルケトン及び3−ペンタノンなどのケトン類;ペンタン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、フルオロベンゼン及びヘキサフルオロベンゼンなどの炭化水素類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、クラウンエーテル類、グライム類、テトラヒドロフラン及びフルオロアルキルエーテルなどのエーテル類;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド及びN−メチルピロリドン(NMP)などのアミド類、エチレンジアミン及びピリジンなどのアミン類;イミダゾール類;プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、トランス−2,3−ブチレンカーボネート、シス−2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、トランス−2,3−ペンチレンカーボネート、シス−2,3−ペンチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート及びメチルトリフルオロエチルカーボネートなどのカーボネート類;アセトニトリル、プロピオニトリル、アジポニトリル及びメトキシアセトニトリルなどのニトリル類;スルホラン及び3−メチルスルホランなどのスルホン類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;シリコンオイル及び石油などの工業オイル類;並びに、食用油が挙げられる。
また、非水溶媒としてイオン液体を用いることもできる。イオン液体とは、有機カチオンとアニオンとを組み合わせたイオンからなる常温溶融塩である。イオン液体は、難燃性であり、爆発性が低く、蒸気圧がほとんどないこと、熱やイオンの伝導性が高いこと、及び、イオン種の選択によって物性制御デザインが可能であること、などが特徴である。
有機カチオンとしては、例えば、ジアルキルイミダゾリウムカチオン、トリアルキルイミダゾリウムカチオン等のイミダゾリウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、アルキルピリジニウムイオン、ジアルキルピロリジニウムイオン、ジアルキルピペリジニウムイオンが挙げられる。
これらの有機カチオンのカウンターとなるアニオンとしては、例えば、PF6アニオン、PF3(C253アニオン、PF3(CF33アニオン、BF4アニオン、BF2(CF32アニオン、BF3(CF3)アニオン、ビスオキサラトホウ酸アニオン、Tf(トリフルオロメタンスルフォニル)アニオン、Nf(ノナフルオロブタンスルホニル)アニオン、ビス(フルオロスルフォニル)イミドアニオン、ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドアニオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルフォニル)イミドアニオン、ジシアノアミンアニオン、ハロゲン化物アニオンが挙げられる。
これらの非水溶媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
電気化学デバイスがリチウムイオン二次電池又はリチウムイオンキャパシタである場合、非水溶媒として、例えば非プロトン性溶媒が挙げられる。リチウムイオン二次電池の電解液に含まれる非水溶媒としては、非プロトン性極性溶媒が好ましい。その具体例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、トランス−2,3−ブチレンカーボネート、シス−2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、トランス−2,3−ペンチレンカーボネート、シス−2,3−ペンチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及び4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート及びビニルエチレンカーボネートに代表される環状カーボネート;γ−ブチロラクトン及びγ−バレロラクトンに代表されるラクトン;スルホランに代表される環状スルホン;テトラヒドロフラン及びジオキサンに代表される環状エーテル;エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート及びメチルトリフルオロエチルカーボネート、並びに、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートの有する水素原子の一つ以上をフッ素原子で置換した含フッ素カーボネートに代表される鎖状カーボネート;アセトニトリル、プロピオニトリル及びアジポニトリルに代表されるニトリル;ジメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジグライム、トリグライム、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル−1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチルエチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロプロピルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピルエーテル、及びヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテルに代表される鎖状エーテル;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル及びプロピオン酸エチルに代表される鎖状カルボン酸エステル;スルホラン、ジメチルスルホキシド及びエチレンサルファイトなどの含硫黄化合物が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
電解液がリチウムイオン二次電池又はリチウムイオンキャパシタに使用される場合、その充放電に寄与する電解質であるリチウム塩の電離度を高めるために、非水溶媒は、環状の非プロトン性極性溶媒を1種以上含むことが好ましい。同様の観点から、非水溶媒は、カーボネート部位を有する環状の溶媒、すなわち環状カーボネート類を1種以上含むと好ましく、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートに代表される環状カーボネートを1種以上含むことがより好ましい。環状の化合物は誘電率が高く、リチウム塩の電離を助けると共にゲル化能を高める。
特にリチウムイオン二次電池の充放電に寄与するリチウム塩の電離度を高めるために、非水溶媒は、環状の非プロトン性極性溶媒を1種類以上含むことが好ましく、特に、環状カーボネートを1種類以上含むことがより好ましい。
また、非水溶媒は、電解質の溶解性、伝導度及び電離度という機能を全て良好にするために、2種以上の溶媒の混合溶媒であることが好ましい。この混合溶媒における非水溶媒としては、上記と同様のものを例示できる。このときの溶媒は様々な組成比のものを選択することができる。
非水溶媒として、環状の非プロトン性極性溶媒とその他の溶媒との混合溶媒を用いる場合、環状の非プロトン性極性溶媒(2種以上の場合にはその混合物)が、その他の溶媒(2種以上の場合にはその混合物)よりも体積比で少量であることが好ましい。
<電解質>
(II)電解質は、電解液において、通常の非水電解質として用いられているものであれば特に限定されず、いずれのものであってもよい。電解液がリチウムイオン二次電池及びリチウムイオンキャパシタに用いられる場合、電解質としてリチウム塩が用いられる。リチウム塩の具体例としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、Li2SiF6、LiOSO2k2k+1〔kは1〜8の整数〕、LiN(SO2k2k+12〔kは1〜8の整数〕、LiPFn(Ck2k+16-n〔nは1〜5の整数、kは1〜8の整数〕、LiBFn((Ck2k+14-n〔nは1〜3の整数、kは1〜8の整数〕、LiB(C242で表されるリチウムビス(オキサレート)ボレート、LiBF2(C24)で表されるリチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート、LiPF3(C24)で表されるリチウムトリフルオロ(オキサレート)フォスフェート、LiPO22、LiPO3Fが挙げられる。
また、下記一般式(4a)、(4b)又は(4c)で表されるリチウム塩を電解質として用いることもできる。
LiC(SO211)(SO212)(SO213) (4a)
LiN(SO2OR14)(SO2OR15) (4b)
LiN(SO216)(SO2OR17) (4c)
ここで、式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17は、互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を示す。
これらの電解質は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。リチウムイオン二次電池用途では、これらの電解質のうち、電池特性や電池安定性に加え、ゲル化能を高める観点から、LiPF6、LiBF4、LiPO22、LiPO3F及びLiN(SO2k2k+12〔kは1〜8の整数〕が好ましい。
本実施形態の電解液は、本発明による目的をより有効かつ確実に達成する観点から、これらの電解質を2種以上含むことが好ましい。また、電解液が電解質を2種以上含む場合、電池特性の観点から、その1種がヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)であることが好ましい。さらに、長期安定性や耐久性の観点から、電解液において、電解質の1種以上が、ホウ素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる1種以上を有するリチウム塩であることが好ましい。そのようなリチウム塩としては、例えば、LiBF4及びLiN(SO2k2k+12〔kは1〜8の整数〕、LiB(C242で表されるリチウムビス(オキサレート)ボレート、LiBF2(C24)で表されるリチウムジフルオロ(オキサレート)ボレートが挙げられる。その中でもLiBF4及びLiN(SO2k2k+12〔kは1〜8の整数〕が入手容易性の観点から好ましい。
電解質の濃度は、本発明の目的達成を阻害しない範囲で任意であり特に限定されないが、電解質は、溶媒の少なくとも一部を除去した後の電解液中において、好ましくは0.1〜3モル/リットル、より好ましくは0.5〜2モル/リットルの濃度で含有される。また、溶媒の少なくとも一部を除去して電解液を得る前の液(電解液含有液)中において、好ましくは0.005〜2.8モル/リットル、より好ましくは0.025〜1.8モル/リットルの濃度で調製される。
本実施形態において、電解液は、非水溶媒と電解質とを、合わせて4種以上含む。非水溶媒及び電解質のそれぞれの種類の数は特に限定されない。ただし、電解液が非水溶媒及び電解質を、それぞれ2種以上含むと、高レート放電、高サイクル及び高電圧などの高負荷条件での電池性能がより優れる傾向にあるので好ましい。
本実施形態の非水溶媒及び電解質は、任意の方法で混合することができる。例えば、それらうち、合わせて4種以上の成分を一度に混合して撹拌することもでき、1種又は2種以上の成分を逐次的に混合することもできる。また、非水溶媒及び電解質を混合する混合装置としては、バッチ式の混合装置及び連続式の混合装置のいずれをも用いることができる。
<低分子ゲル化剤>
本実施形態で用いられる低分子ゲル化剤とは、単量体を重合することで得られる重合体(高分子)以外でゲル化能を有する化合物の総称である。本発明において、超分子のゲル化剤も低分子ゲル化剤に含まれる。低分子ゲル化剤は、溶液中において一次元的に自己集合して擬似的な高分子(超分子ファイバー)を形成し、更にそれらが絡まり合うことで溶媒を保持してゲルを形成する。低分子ゲル化剤の分子量は、ゲル化能とゲルのハンドリングとの観点から、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した重量平均分子量が50〜10000であることが好ましく、100〜5000であることがより好ましい。
低分子ゲル化剤は、その取扱いの観点と電池特性の観点とから、物理ゲルを形成する相転移型のゲル化剤を含むことが好ましい。ここで、物理ゲルを形成する相転移型のゲル化剤とは、可逆的な物理相互作用で、ゾル−ゲルの転移が可能なゲルを形成することができるゲル化剤のことである。また、物理相互作用としては、例えば、温度(熱)変化、光の照射及び圧力の印加が挙げられる。
本実施形態における低分子ゲル化剤は、特に限定されず、例えば、アミド基、ウレア基及びウレタン基のうち1つ以上の基を有する化合物、アミノ酸誘導体、「Chem.Rev.第97巻、p3133〜p3159、1997年発行」に記載されている化合物、特開平10−175901号公報に記載されている化合物、国際公開2006/82768号に記載されている化合物、特開2007−506833号公報に記載されている化合物、特開2009−155592号公報に記載されている化合物、「Chem.Mater.11巻、p649−655、1999年発行」に記載されている化合物、並びに「J.Phys.Chem.B 105巻、p12809〜12815、2001年発行」に記載されている化合物が挙げられる。
低分子ゲル化剤は、充放電性能や安全性等の目的の性能を発現させるために、複数のゲル化剤の混合物であってもよい。
本実施形態に用いる低分子ゲル化剤は、電気化学的安定性と電解液に対するゲル化能との観点から、下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含むことが好ましい。
Rf1−R1−X1−L1−R2 (1)
Rf1−R1−X1−L1−R3―L2―X2―R4―Rf2 (2)
5−O−Cy−X3−Cm (3)
上記一般式(1)及び(2)において、Rf1及びRf2はそれぞれ独立に、炭素数2〜20のパーフルオロアルキル基を示す。当該炭素数が2〜20であることにより、原料の入手とその化合物の合成とが容易となる。上記一般式(1)及び(2)で表される化合物(以下、「パーフルオロ化合物」とも記す。)の電解液への混合性、電解液の電気化学的特性、及びゲル化能の観点から、上記炭素数は2〜12であることが好ましい。パーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロエチル基、パーフルオロn−プロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロn−ブチル基、パーフルオロt−ブチル基、パーフルオロn−ヘキシル基、パーフルオロn−オクチル基、パーフルオロn−デシル基及びパーフルオロn−ドデシル基が挙げられる。
上記一般式(1)及び(2)において、R1及びR4はそれぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜6の2価の飽和炭化水素基を示し、当該炭素数は2〜5であると好ましい。上記2価の飽和炭化水素基の炭素数が3以上である場合、分岐があってもなくてもよい。このような2価の飽和炭化水素基としては、例えば、メチリデン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基及びn−ブテン基が挙げられる。
また、X1及びX2はそれぞれ独立に、下記式(1a)、(1b)、(1c)、(1d)、(1e)、(1f)及び(1g)で表される基からなる群より選ばれる2価の基を示す。これらの中では、電気化学的な観点から、下記式(1a)、(1b)及び(1d)で表される基からなる群より選ばれる2価の基が好ましく、下記式(1a)又は下記式(1d)で表される2価の基であることがより好ましく、下記式(1d)で表される2価の基であることが更に好ましい。
Figure 2013254633
1及びL2はそれぞれ独立に、単結合、アルキル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい(すなわち置換されていなくてもよい)オキシアルキレン基、アルキル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい(すなわち置換されていなくてもよい)オキシシクロアルキレン基、又は、アルキル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい(すなわち置換されていなくてもよい)2価のオキシ芳香族基(−OAr−;Arは2価の芳香族基を示す。)を示す。オキシアルキレン基としては、例えば、炭素数2〜10のオキシアルキレン基、より具体的には、オキシエチレン基(−C24O−)及びオキシプロピレン基(−C36O−)が挙げられる。オキシシクロアルキレン基としては、例えば、炭素数5〜12のオキシシクロアルキレン基、より具体的には、オキシシクロペンチレン基、オキシシクロヘキシレン基、オキシジシクロヘキシレン基が挙げられる。
これらの中でも、ゲル化能及び電解液の安全性向上の観点から、アルキル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい2価のオキシ芳香族基が好ましい。アルキル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい2価のオキシ芳香族基における2価の芳香族基は、いわゆる「芳香族性」を示す環式の2価の基である。この2価の芳香族基は、単素環式(好ましくは炭素環式)の基であっても複素環式の基であってもよい。
単素環式の基は、その核原子数が6〜30であり、上述のとおりアルキル基若しくはハロゲン原子により置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。その具体例としては、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基、アントラニレン基、フェナンスリレン基、ピレニレン基、クリセニレン基、フルオランテニレン基に代表される核を有する2価の基が挙げられる。
複素環式の基は、その核原子数が5〜30であり、上述のとおりアルキル基若しくはハロゲン原子により置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。その具体例としては、例えば、ピローレン基、フラニレン基、チオフェニレン基、トリアゾーレン基、オキサジアゾーレン基、ピリジレン基及びピリミジレン基に代表される核を有する2価の基が挙げられる。これらの中でも、2価の芳香族基として、フェニレン基、ビフェニレン基又はナフチレン基が好ましい。また、置換基である上記アルキル基としては、例えばメチル基及びエチル基が挙げられ、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられる。
オキシシクロアルキレン基及びオキシ芳香族基には複数の環が接続されたものも含まれ、このような基としては、例えば、オキシビフェニレン基、オキシターフェニレン基及びオキシシクロアルキルフェニレン基が挙げられる。
上記一般式(1)中のR2は、アルキル基若しくはハロゲン原子(ただし、フッ素原子を除く。)で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、アルキル基若しくはハロゲン原子(ただし、フッ素原子を除く。)で置換されていてもよいフルオロアルキル基、アリール基若しくはフルオロアリール基、又は、これらの基のうちの1種以上とこれらの基に対応する2価の基(例えば、アルキル基に対応するアルキレン基、アリール基に対応するアリーレン基)のうちの1種以上とが結合した1価の基(例えば、アルキレン基とアリール基とが結合したアラルキル基)を示す。R2としては、より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基及びn−デシル基に代表される炭素数1〜12のアルキル基が挙げられる。これらのアルキル基は、更にアルキル基又はハロゲン原子(ただし、フッ素原子を除く。)で置換されていても、置換されていなくてもよい。
フルオロアルキル基としては、炭素数1〜12のフルオロアルキル基(ただし、パーフルオロアルキル基を除く。)若しくは炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基が好ましい。炭素数1〜12のフルオロアルキル基(ただし、パーフルオロアルキル基を除く。)及び炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基としては、具体的には、トリフルオロメチル基、1,1,1,2,2−ペンタフルオロエチル基、1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロn−ブチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−ドデカフルオロn―ヘキシル基及び1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロn−デシル基が挙げられる。フルオロアルキル基は、更にアルキル基又はハロゲン原子(ただし、フッ素原子を除く。)で置換されていても、置換されていなくてもよい。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基及びナフチル基に代表される核原子数が6〜12のアリール基、フルオロアリール基としては、例えば、モノフルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基及びテトラフルオロフェニル基に代表される核原子数が6〜12のフルオロアリール基が挙げられる。
また、R2は、上述のアルキル基、フルオロアルキル基、アリール基及びフルオロアリール基のうちの1種以上と、それらの基に対応する2価の基、すなわち、アルキレン基、フルオロアルキレン基、アリーレン基及びフルオロアリーレン基、のうちの1種以上とが結合した1価の基であってもよい。そのような基としては、例えば、アルキレン基とパーフルオロアルキル基とが結合した基(ただし、この基はフルオロアルキル基の1種でもある。)、アルキレン基とアリール基とが結合した基(アラルキル基)、フルオロアルキル基とフルオロアリーレン基とが結合した基が挙げられる。
2は、本発明の効果をより有効且つ確実に奏する観点から、アルキル基又はフルオロアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のフルオロアルキル基(ただし、パーフルオロアルキル基を除く。)又は炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数2〜10のフルオロアルキル基(ただし、パーフルオロアルキル基を除く。)であることが更に好ましい。
上記一般式(2)中のR3は、主鎖に酸素及び/又は硫黄原子を1つ以上有していても有していなくてもよく、かつ、アルキル基で置換されていてもいなくてもよい炭素数1〜18の2価の飽和炭化水素基を示す。当該炭素数は、1〜16であることが好ましく、2〜14であることがより好ましい。R3の炭素数によってもゲル化能を制御することができる。また、合成及び原料入手の観点から、上記範囲の炭素数であることが好ましい。
上記一般式(1)又は(2)で表される、パーフルオロアルキル基を有するゲル化剤としては、例えば、Rf1−R1−O−R2、Rf1−R1−S−R2、Rf1−R1−SO2−R2、Rf1−R1−OCO−R2、Rf1−R1−O−Ar−O−R2(ここで、Arは2価の芳香族基を示す。以下同様。)、Rf1−R1−SO2−Ar−O−R2、Rf1−R1−SO2−Ar−O−Rf4、Rf1−R1−SO2−Ar−O−Rf3−Rf4(ここで、Rf3はフルオロアルキレン基、Rf4はフルオロアルキル基を示す。)、Rf1−R1−SO−Ar−O−R2、Rf1−R1−S−Ar−O−R2、Rf1−R1−O−R5−O−R2(ここで、R5は、アルキレン基を示す。)、Rf1−R1−CONH−R2、Rf1−R1―SO2―Ar1−O−R3−O−Ar2−SO2−R4−Rf2(ここで、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に、2価の芳香族基を示す。以下同様。)、Rf1−R1−O−Ar1−O−R3−O−Ar2―O―R4―Rf2、Rf1−R1−SO2−Ar1−O−R6−O−R7−O−Ar2−O−R4−Rf2(ここで、R6及びR7はそれぞれ独立に、アルキレン基を示す。以下同様。)の一般式で表される化合物が挙げられる。より具体的には、Rf1及びRf2がそれぞれ独立に、炭素数2〜10のパーフルオロアルキル基、R1が炭素数2〜4のアルキレン基、Arが(又はAr1及びAr2がそれぞれ独立に)p−フェニレン基又はp−ビフェニレン基、R2が炭素数4〜8のアルキル基である上記各一般式で表される化合物、並びに、その二量体構造、例えば、Rf1−R1−O−Ar−O−R2、Rf1−R1−SO2−Ar−O−R2、Rf1−R1−O−Ar1−O−R3−O−Ar2―O―R4―Rf2、Rf1−R1−SO2−Ar1−O−R6−O−R7−O−Ar2−O−R4−Rf2の一般式で表される化合物が挙げられる。
上記一般式(3)において、Cyは置換又は無置換の核原子数5〜30の2価の芳香族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示す。2価の芳香族炭化水素基は、いわゆる「芳香族性」を示す環式の2価の基である。この2価の芳香族炭化水素基は、単素環式の基であっても複素環式の基であってもよい。これらの2価の芳香族炭化水素基は、置換基により置換されていてもよく、置換されていない無置換のものであってもよい。2価の芳香族炭化水素基の置換基は、合成や原料入手の容易性という観点から選ぶこともできる。あるいは、2価の芳香族炭化水素基の置換基は、ゲル化剤の溶解温度及びゲル化能の観点から選ぶこともできる。
単素環式の基は、その核原子数が6〜30であり、置換基により置換されていてもよく、置換されていない無置換のものであってもよい。その具体例としては、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基、アントラニレン基、フェナンスリレン基、ピレニレン基、クリセニレン基及びフルオランテニレン基に代表される核を有する2価の基が挙げられる。
複素環式の基は、その核原子数が5〜30であり、置換基により置換されていてもよく、置換されていない無置換のものであってもよい。その具体例としては、例えば、ピローレン基、フラニレン基、チオフェニレン基、トリアゾーレン基、オキサジアゾーレン基、ピリジレン基及びピリミジレン基に代表される核を有する2価の基が挙げられる。
芳香族炭化水素基は、原料入手容易性及び合成容易性の観点並びに電解液におけるゲル化能の観点から、置換又は無置換の核原子数6〜20の2価の芳香族炭化水素基であることが好ましく、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、ターフェニレン基及びアントラニレン基からなる群より選ばれる基であることがより好ましい。
また、上記置換基としては、メチル基及びエチル基に代表されるアルキル基、並びにハロゲン原子が挙げられる。
脂環式炭化水素基は、置換又は無置換の核原子数が5〜30である基であってもよく、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びシクロオクチル基が挙げられる。
芳香族炭化水素基又は脂環式炭化水素基は、その核原子数が上記範囲内であれば複数の基が連結したり、単素環と複素環との両者を有したり、芳香族基と脂環式基との両者を有したりしてもよい。
上記一般式(3)において、R5は主鎖の炭素数1〜20の置換若しくは無置換の1価の炭化水素基を示し、飽和であっても不飽和であってもよい。R5は脂肪族炭化水素基であってもよく、更に芳香族炭化水素基を有していてもよい。その脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基における炭化水素基の一部又は全部が、ハロゲン原子で置換されていてもよい。1価の炭化水素基が1価の脂肪族炭化水素基である場合、分岐していても分岐していなくてもよく、分岐鎖の一部又は全部がハロゲン原子で置換されていてもよい。また、この炭化水素基は、その鎖中に酸素原子及び/又は硫黄原子を有していてもよい。さらに、1価の炭化水素基が芳香族炭化水素基を有する場合、この芳香族炭化水素基が更に置換基を有していても有していなくてもよい。ただし、この1価の炭化水素基は、上記一般式(3)で表される化合物(以下「化合物(3)」とも表記する。)が非水溶媒に溶解して、その非水溶媒を含む電解液をゲル化させるために、ベンジル基に代表されるアラルキル基等の、化合物(3)を非水溶媒に容易に溶解可能にする炭化水素基であることが好ましい。また、その1価の炭化水素基の炭素数が21以上であると、原料の入手が困難となる傾向にある。R5で示される1価の炭化水素基は、本発明の効果をより有効かつ確実に奏する観点から、炭素数4〜18のアルキル基であることが好ましく、炭素数4〜14のアルキル基であることが更に好ましい。また、R5は、ゲル化能とハンドリング性との観点から、直鎖のアルキル基であると好ましい。
上記一般式(3)において、X3は下記式(3a)、(3b)、(3c)、(3d)、(3e)、(3f)及び(3g)(以下、(3a)〜(3g)と表記する。)で表される基からなる群より選ばれる2価の基、又は、下記式(3a)〜(3g)で表される基のうち2種以上が結合した2価の基を示す。これらの中でも、ゲル化能と電池の充放電特性及び長期安定性の観点から、下記式(3a)、(3e)及び(3g)で表される基からなる群より選ばれるいずれかの2価の基であることが好ましい。
Figure 2013254633
上記一般式(3)において、X3は化合物(3)をリチウムイオン二次電池に用いた際に、長期にわたって安定である点とゲル化能とから選択すると好ましい。X3が上記式(3a)で表される基である場合、そのゲル化剤を含む組成物は、非常に安定性が高いゲルとなる傾向にある。また、X3が上記式(3e)で表される基である場合、そのゲル化剤を含む組成物は、ゲル−ゾルの転移を温度調整だけではなく、光照射によっても誘起できる点で用途拡大に繋がる。
上記一般式(3)において、Cmは下記一般式(3z)で表される1価の基(クマリン部位)を示し、下記式(3z)中、複数のRaは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を示す。Raがアルキル基である場合、その炭素数は1〜6であることが好ましく、アルコキシ基である場合、その炭素数は1〜8であるこ
とが好ましい。
Figure 2013254633
低分子ゲル化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
本実施形態に係る低分子ゲル化剤は、常法により合成されてもよく、市販品を入手してもよい。このゲル化剤のうち、パーフルオロアルキル基を有するゲル化剤は、例えば、国際公開第2007/083843号、特開2007−191626号公報、特開2007−191627号公報、特開2007−191661号公報及び国際公開第2009/78268に記載の方法を参照して製造することができる。
本実施形態に用いるパーフルオロアルキル基を有する低分子ゲル化剤は、例えば、次のスキームによって合成することができる。まず、下記一般式(11a)で表されるチオール化合物を、乾燥THFなどの溶媒中、トリエチルアミンなどの塩基の存在下、下記一般式(11b)で表される化合物でスルフィド化して、下記一般式(11c)で表される化合物を得る。
HS−Ar−OH (11a)
m2m+1p2p1 (11b)
m2m+1p2p−S−Ar−OH (11c)
次いで、上記一般式(11c)で表される化合物を3−ペンタノンなどの溶媒中、K2CO3などのアルカリ金属化合物の存在下、下記一般式(11d)で表される化合物でエーテル化して、下記一般式(11e)で表される化合物を得る。
12 (11d)
m2m+1p2p−S−Ar−O−R1 (11e)
そして、上記一般式(11e)で表される化合物を、酢酸などの触媒の存在下で、過酸化水素などの酸化剤により酸化することで、下記一般式(11j)で表されるパーフルオロ化合物が得られる。
m2m+1p2p−SO2−Ar−O−R1 (11j)
ここで、上記一般式(11j)で表されるパーフルオロ化合物の製造スキームにおける限り、Arは置換又は無置換の核原子数8〜30の2価の芳香族基を示し、R1は飽和又は不飽和の炭素数1〜20の1価の炭化水素基を示し、mは2〜16の自然数を示し、pは0〜6の整数を示し、X1は、例えばヨウ素原子などのハロゲン原子を示し、X2は、例えば臭素原子などのハロゲン原子を示す。
かかる合成法としては、例えば、国際公開第2009/78268に記載の合成法を参照することができる。
また、Arがビフェニレン基やターフェニレン基などの複数の芳香環を単結合により結合した基である場合は、例えば下記合成法により、上記一般式(11j)で表されるパーフルオロ化合物を得ることができる。まず、下記一般式(11f)で表されるチオール化合物を、乾燥THFなどの溶媒中、トリエチルアミンなどの塩基の存在下、上記一般式(11b)で表される化合物でスルフィド化して、下記一般式(11g)で表される化合物を得る。ここで、式(11f)及び(11g)中、m及びpは式(11j)におけるものと同義であり、X3は、例えば臭素原子などのハロゲン原子を示し、Ar2は、上記式(11j)におけるArを構成する2価の芳香族炭化水素基の一部を示す。
HS−Ar2−X3 (11f)
m2m+1p2p−S−Ar2−X3 (11g)
次いで、上記一般式(11g)で表される化合物を、酢酸などの触媒の存在下で、過酸化水素などの酸化剤により酸化することで、下記化合物(11h)が得られる。ここで、式(11h)中、Ar2、X3、m及びpは、式(11g)におけるものと同義である。
m2m+1p2p−SO2−Ar2−X3 (11h)
そして、上記一般式(11h)で表される化合物と下記一般式(11i)で表される化合物とから、K2CO3などの塩基水溶液中、パラジウム触媒の存在下で、鈴木・宮浦カップリングにより、上記一般式(11j)で表されるパーフルオロ化合物を得る。ここで、式(11i)中、R1は、上記式(11j)におけるものと同義であり、Ar3は、上記式(11j)におけるArを構成する2価の芳香族炭化水素基のAr2とは別の一部を示し、Ar2とAr3が単結合により結合したものがArとなる。
1−O−Ar3−B(OH)2 (11i)
また、本実施形態に用いるパーフルオロアルキル基を有するゲル化剤は、例えば、次のスキームによって合成することができる。すなわち、下記一般式(Ia)で表される化合物と下記一般式(IIa)で表される化合物とから、光延反応などの脱水縮合により、パーフルオロアルキル基を有するゲル化剤の一種である下記一般式(IIIa)で表される化合物を合成することができる。ここで、式中、Y1及びY2はそれぞれ独立に、硫黄原子又は酸素原子である。
Rf1−R1−Y1−Z−Y2H (Ia)
Rf22OH (IIa)
Rf1−R1−Y1−Z−Y2−R2−Rf2 (IIIa)
また、上記一般式(IIIa)で表される化合物において、Y1及び/又はY2が硫黄原子である場合に、その硫黄原子を更にスルホニル化又はスルホキシド化することにより、パーフルオロアルキル基を有するゲル化剤の別の一種である下記一般式(IVa)で表される化合物を合成することができる。ここで、Y3及びY4の少なくとも一方は、SO基又はSO2基であり、Y3及びY4の一方がSO基又はSO2基である場合の他方は硫黄原子又は酸素原子である。
Rf1−R1−Y3−Z−Y4−R2−Rf2 (IVa)
上記一般式(Ia)で表される化合物は、例えば、下記式(Va)で表される化合物の活性水素(チオール基又は水酸基の水素原子)を、アルカリ条件下で、パーフルオロアルカンハロゲン化物(例えばヨウ化物)のパーフルオロアルキル基で置換することにより合成することができる。
HY1−Z−Y2H (Va)
また、上記式(IIa)で表される化合物は、パーフルオロアルカンハロゲン化物(例えばヨウ化物)のアルケノールへの付加反応により得られるアルカノールのハロゲン化物を、更に還元することにより合成することができる。
ここで、上記一般式(IIIa)又は(IVa)で表されるパーフルオロ化合物(ゲル化剤)の製造スキームにおける限り、Rf1及びRf2はそれぞれ独立に、主鎖の炭素数2〜18の置換又は無置換のパーフルオロアルキル基を示し、R1及びR2はそれぞれ独立に、単結合又は主鎖の炭素数1〜8の置換若しくは無置換の2価の炭化水素基を示し、Zは置換又は無置換の核原子数5〜30の2価の芳香族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示す。
ただし、本実施形態に用いるパーフルオロアルキル基を有するゲル化剤の合成方法は上記の方法に限定されない。
また、本実施形態に係る化合物(3)はクマリン型のゲル化剤であり、化合物(3)として、例えば、液晶討論会講演予稿集p44(2007)に記載の化合物を用いることができる。
また、アゾ基を有する化合物(3)、すなわち、X3が上記式(3e)で表される化合物(3)は、例えば、下記のような反応経路で合成することができる。
Figure 2013254633
このように合成されるアゾ基を有する化合物(3)としては、例えば、下記式(3I)で表される化合物(以下、「化合物(3I)」とも表記する。)及び下記式(3II)で表される化合物(以下、「化合物(3II)」とも表記する。)が挙げられる。
Figure 2013254633
以下、化合物(3I)及び(3II)の合成方法について詳細に説明する。
〔化合物(3I)の合成方法〕
(工程1:化合物(a)の合成)
Figure 2013254633
ナスフラスコに濃硝酸及び濃硫酸の混合溶液を加える。当該ナスフラスコを氷浴で冷却しながら、クマリンを、混合溶液の温度が20℃を超えないように徐々に加える。クマリンを全量加え終えたら氷浴を外し、室温で1時間攪拌して反応させる。当該反応液を水中に注ぎ、析出した固体を濾取する。濾取した固体を、トルエンで再結晶を行い、淡黄色の固体の化合物(a)を得る。
(工程2:化合物(b)の合成)
Figure 2013254633
ナスフラスコにおいて、化合物(a)をエタノール及びトルエンの混合溶液に溶かして、Pd/Cの存在下、水素添加反応を行う。水素添加反応後、Pd/Cを濾取し、濾液をエバポレーターで濃縮する。析出した固体をトルエンで再結晶を行い、黄色固体の化合物(b)を得る。
(工程3:化合物(c)の合成)
Figure 2013254633
ナスフラスコにおいて、5℃の氷冷下、12Nの塩酸水溶液を調製する。当該水溶液中に、化合物(b)及び亜硝酸ナトリウム(NaNO2)を加えて、20分間攪拌する。さらに、フェノール、水酸化ナトリウム及び水の混合溶液を加えて攪拌する。析出した固体をトルエンで再結晶を行い、化合物(c)を得る。
(工程4:化合物(3I)の合成)
Figure 2013254633
ナスフラスコにおいて、化合物(c)を3−ペンタノンに溶解する。得られた溶液中に、1−ブロモオクタン及び炭酸カリウムを加えて15時間還流を行う。得られた固体をトルエンで再結晶させ、カラムクロマトグラフィーで精製して化合物(3I)を得る。なお、上記カラムクロマトグラフィーにおいて、充填剤としてシリカゲルを用い、展開溶媒としてクロロホルムを用いる。
〔化合物(3II)の合成方法〕
Figure 2013254633
ナスフラスコにおいて、化合物(c)を3−ペンタノンに溶解する。得られた溶液中に、1−ブロモヘキサン及び炭酸カリウムを加えて15時間還流を行う。得られた固体をトルエンで再結晶を行い、カラムクロマトグラフィーで精製して化合物(3II)を得る。なお、上記カラムクロマトグラフィーにおいて、充填剤としてシリカゲルを用い、展開溶媒としてクロロホルムを用いる。
ただし、化合物(3)の製造方法は、上記方法に限定されるものではない。
ゲル化剤と非水溶媒との混合比は任意であるが、ゲル化能とハンドリング性とを良好にする観点から、質量基準で、ゲル化剤:非水溶媒が0.1:99.9〜20:80であると好ましく、0.3:99.7〜10:90であるとより好ましく、0.3:99.7〜5:95であると更に好ましい。ゲル化剤が多いほど相転移点が高く強固なゲルとなり、ゲル化剤が少ないほど粘度が低く取り扱いやすいゲルとなる。
非水溶媒と電解質とゲル化剤との混合比は目的に応じて選択できる。非水溶媒に対しリチウム塩を好ましくは0.1〜3モル/リットル、より好ましくは0.5〜2モル/リットル混合した混合液に対して、ゲル化剤を質量基準のゲル化剤:非水溶媒で、好ましくは0.1:99.9〜20:80、より好ましくは0.3:99.7〜10:90、更に好ましくは0.3:99.7〜5:95添加するのが好ましい。このような組成で電解液を作製することで、電池特性、取扱い性及び安全性の全てを一層良好なものとすることができる。
本実施形態における電解液は、必要に応じてさらに高分子のゲル化剤(以下、「高分子ゲル化剤」という。)を含有してもよい。高分子ゲル化剤とは、単量体を重合することで得られる重合体(高分子)でゲル化能を有する化合物の総称である。高分子ゲル化剤は、繊維状の高分子が、架橋したり絡まり合ったりすることで溶媒を保持し、膨潤してゲルを形成する。高分子ゲル化剤の分子量は、ゲル化能とゲルのハンドリングの観点から、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した重量平均分子量が100〜100000であることが好ましく、200〜10000であることがより好ましい。低分子ゲル化剤と高分子ゲル化剤とは性能が異なる点もあることから、両者を併用することで、安全性を中心とする性能の観点から効果が期待できる。
高分子ゲル化剤としては、特に限定されず、公知のものであってもよい。本実施形態の高分子ゲル化剤としては、例えば、ポリエーテル部位を有する重合体(ポリマー)、ポリアルキレンポリオール部位を有する重合体、ポリ(メタ)アクリル酸部位を有する重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル部位を有する重合体、ポリアクリロニトリル部位を有する重合体、ポリウレタン部位を有する重合体、ポリアミド部位を有する重合体、及び含ハロゲン重合体(例えば、ポリフッ化ビニリデン部位を有する重合体及びポリ塩化ビニリデン(PVdF)部位を有する重合体)が挙げられる。それらの中では、ポリ塩化ビニリデン(PVdF)部位を有する重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル部位を有する重合体、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレンポリオール部位を有する重合体及びポリエーテル部位を有する重合体が好ましい。
高分子ゲル化剤は、充放電性能や電池安全性という性能を発現させるために、複数のゲル化剤の混合物であってもよいし、共重合体であってもよいし、ポリマーアロイであってもコンパウンドしたものであってもよい。
高分子ゲル化剤を電解液に含有させる方法としては、例えば、予め重合及び/又は架橋が完了した重合体を電解液に配合してもよく、高分子ゲル化剤の原料となるモノマーやオリゴマーを電解液に配合し、その後、インサイチュ(in−situ)で重合したり架橋させたりして、電解液中に含有させてもよい。
高分子ゲル化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられ、常法により合成されても、市販品として入手されてもよい。
本実施形態において、高分子ゲル化剤の電解液中での含有量は、非水溶媒と電解質との総量100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましく、0.5〜20質量部であることがより好ましく、1〜10質量部であることが更に好ましい。
本実施形態における電解液には、必要に応じてゲル化剤以外の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、熱安定剤、難燃剤、熱暴走抑制剤、過充電抑制添加剤、増粘剤、乳化剤、強化剤、電極保護皮膜形成用の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、固体(塊状)、粉末状、液体状のいずれでもよく、また、電解液に溶解するものであっても、溶解しないものであってもよい。
本実施形態の電気化学デバイスは、本実施形態の電解液を備える以外は特に限定されないが、リチウムイオン二次電池である場合、更に、正極と負極と上記電解液と必要に応じてセパレータとを備える。
<正極>
正極は、リチウムイオン二次電池の正極として作用するものであれば特に限定されず、公知のものであってもよい。正極は、正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料からなる群より選ばれる1種以上の材料を含有すると好ましい。そのような材料としては、例えば、下記一般式(6a)及び(6b)で表される複合酸化物、トンネル構造及び層状構造の金属カルコゲン化物及び金属酸化物が挙げられる。
LixMO2 (6a)
Liy24 (6b)
ここで、式中、Mは遷移金属から選ばれる1種以上の金属を示し、xは0〜1の数、yは0〜2の数を示す。
より具体的には、例えば、LiCoO2に代表されるリチウムコバルト酸化物;LiMnO2、LiMn24、Li2Mn24に代表されるリチウムマンガン酸化物;LiNiO2に代表されるリチウムニッケル酸化物;LizMO2(MはNi、Mn、Co、Al及びMgからなる群より選ばれる2種以上の元素を示し、zは0.9超1.2未満の数を示す)で表されるリチウム含有複合金属酸化物;LiFePO4で表されるリン酸鉄オリビンが挙げられる。また、正極活物質として、例えば、S、MnO2、FeO2、FeS2、V25、V613、TiO2、TiS2、MoS2及びNbSe2に代表されるリチウム以外の金属の酸化物も例示される。さらには、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリピロールに代表される導電性高分子も正極活物質として例示される。
また、正極活物質としてリチウム含有化合物を用いると、高電圧及び高エネルギー密度を得ることができる傾向にあるので好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、リチウムを含有するものであればよく、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物及びリチウムと遷移金属元素とを含むケイ酸金属化合物(例えばLituSiO4、Mは上記式(6a)と同義であり、tは0〜1の数、uは0〜2の数を示す。)が挙げられる。より高い電圧を得る観点から、特に、リチウムと、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、バナジウム(V)及びチタン(Ti)からなる群より選ばれる1種以上の遷移金属元素とを含む複合酸化物並びにリン酸化合物が好ましい。
より具体的には、かかるリチウム含有化合物としてリチウムを有する金属酸化物、リチウムを有する金属カルコゲン化物及びリチウムを有するリン酸金属化合物が好ましく、例えば、それぞれ下記一般式(7a)、(7b)で表される化合物が挙げられる。
LivI2 (7a)
LiwIIPO4 (7b)
ここで、式中、MI及びMIIはそれぞれ1種以上の遷移金属元素を示し、v及びwの値は電池の充放電状態によって異なるが、通常vは0.05〜1.10、wは0.05〜1.10の数を示す。
上記一般式(7a)で表される化合物は一般に層状構造を有し、上記一般式(7b)で表される化合物は一般にオリビン構造を有する。これらの化合物において、構造を安定化させる等の目的から、遷移金属元素の一部をAl、Mg、その他の遷移金属元素で置換したり結晶粒界に含ませたりしたもの、酸素原子の一部をフッ素原子等で置換したものも挙げられる。更に、正極活物質表面の少なくとも一部に他の正極活物質を被覆したものも挙げられる。
正極活物質は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
正極活物質の数平均粒子径(一次粒子径)は、好ましくは0.05μm〜100μm、より好ましくは1μm〜10μmである。正極活物質の数平均粒子径は湿式の粒子径測定装置(例えば、レーザー回折/散乱式粒度分布計、動的光散乱式粒度分布計)により測定することができる。あるいは、透過型電子顕微鏡にて観察した粒子100個をランダムに抽出し、画像解析ソフト(例えば、旭化成エンジニアリング株式会社製の画像解析ソフト、商品名「A像くん」)で解析し、その相加平均を算出することでも得られる。この場合、同じ試料に対して、測定方法間で数平均粒子径が異なる場合は、標準試料を対象として作成した検量線を用いてもよい。
正極は、例えば、下記のようにして得られる。すなわち、まず、上記正極活物質に対して、必要に応じて、導電助剤やバインダー等を加えて混合した正極合剤を溶剤に分散させて正極合剤含有ペーストを調製する。次いで、この正極合剤含有ペーストを正極集電体に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成し、それを必要に応じて加圧し厚みを調整することによって、正極が作製される。
ここで、正極合剤含有ペースト中の固形分濃度は、好ましくは30〜80質量%であり、より好ましくは40〜70質量%である。
正極集電体は、例えば、アルミニウム箔、又はステンレス箔などの金属箔により構成される。
<負極>
負極は、リチウムイオン二次電池の負極として作用するものであれば特に限定されず、公知のものであってもよい。負極は、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料及び金属リチウムからなる群より選ばれる1種以上の材料を含有すると好ましい。そのような材料としては金属リチウムの他、例えば、アモルファスカーボン(ハードカーボン)、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛、熱分解炭素、コークス、ガラス状炭素、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭、グラファイト、炭素コロイド、カーボンブラックに代表される炭素材料が挙げられる。これらのうち、コークスとしては、例えば、ピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークスが挙げられる。また、有機高分子化合物の焼成体は、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものである。なお、本発明においては、負極活物質に金属リチウムを採用した電池もリチウムイオン二次電池に含めるものとする。
更に、リチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料としては、リチウムと合金を形成可能な元素を含む材料も挙げられる。この材料は金属又は半金属の単体であっても合金であっても化合物であってもよく、またこれらの1種又は2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものであってもよい。
なお、本明細書において、「合金」には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを有するものも含める。また、合金が、その全体として金属の性質を有するものであれば非金属元素を有していてもよい。その合金の組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物又はこれらのうちの2種以上が共存する。
このような金属元素及び半金属元素としては、例えば、チタン(Ti)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アルミニウム、インジウム(In)、ケイ素(Si)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、銀(Ag)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)及びイットリウム(Y)が挙げられる。
これらの中でも、長周期型周期表における4族又は14族の金属元素及び半金属元素が好ましく、特に好ましいのはチタン、ケイ素及びスズである。
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素、マグネシウム(Mg)、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン(Ti)、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン及びクロム(Cr)からなる群より選ばれる1種以上の元素を有するものが挙げられる。
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、マグネシウム、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン及びクロムからなる群より選ばれる1種以上の元素を有するものが挙げられる。
チタンの化合物、スズの化合物及びケイ素の化合物としては、例えば酸素(O)又は炭素(C)を有するものが挙げられ、チタン、スズ又はケイ素に加えて、上述の第2の構成元素を有していてもよい。
負極活物質は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
負極活物質の数平均粒子径(一次粒子径)は、好ましくは0.1μm〜100μm、より好ましくは1μm〜10μmである。負極活物質の数平均粒子径は、正極活物質の数平均粒子径と同様にして測定される。
負極は、例えば、下記のようにして得られる。すなわち、まず、上記負極活物質に対して、必要に応じて、導電助剤やバインダー等を加えて混合した負極合剤を溶剤に分散させて負極合剤含有ペーストを調製する。次いで、この負極合剤含有ペーストを負極集電体に塗布し、乾燥して負極合剤層を形成し、それを必要に応じて加圧し厚みを調整することによって、負極が作製される。
ここで、負極合剤含有ペースト中の固形分濃度は、好ましくは30〜80質量%であり、より好ましくは40〜70質量%である。
負極集電体は、例えば、銅箔、ニッケル箔又はステンレス箔などの金属箔により構成される。
正極及び負極の作製にあたって、必要に応じて用いられる導電助剤としては、例えば、グラファイト、アセチレンブラック及びケッチェンブラックに代表されるカーボンブラック、並びに炭素繊維が挙げられる。導電助剤の数平均粒子径(一次粒子径)は、好ましくは0.1μm〜100μm、より好ましくは1μm〜10μmであり、正極活物質の数平均粒子径と同様にして測定される。また、バインダーとしては、例えば、PVDF、PTFE、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム及びフッ素ゴムが挙げられる。
<セパレータ>
本実施形態のリチウムイオン二次電池において、正負極の短絡防止、シャットダウン等の安全性付与の観点から、正極と負極との間にセパレータを備えることができる。セパレータは、イオン透過性が大きく、機械的強度に優れる絶縁性の薄膜が好ましい。
本実施形態に用いるセパレータの材質は、例えば、セラミック、ガラス、樹脂及びセルロースが挙げられる。樹脂としては、合成樹脂であっても天然樹脂(天然高分子)であってもよく、また、有機樹脂であっても無機樹脂であってもよいが、セパレータとしての性能に優れている観点から、有機樹脂であると好ましい。有機樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、並びに、液晶ポリエステル及びアラミドなどの耐熱樹脂が挙げられる。セパレータの低分子ゲル化剤及び高分子結着剤以外の材質は、高い耐熱性の観点から、セラミック及びガラスが好ましく、ハンドリング性及び耐熱性の観点から、ポリエステル、ポリアミド、液晶ポリエステル、アラミド、及びセルロースが好ましい。また、セパレータの低分子ゲル化剤及び高分子結着剤以外の材質は、コスト及び加工性の観点から、ポリオレフィンが好ましい。これらの材質のうち、樹脂を採用する場合、単独重合体である樹脂を用いてもよく、共重合樹脂を用いてもよく、また、複数種の樹脂の混合体及びアロイを用いてもよい。
また、セパレータは、複数の材質の膜を積層した積層体であってもよい。セパレータが積層体の場合、各層の材質が互いに同じものであっても異なるものであってもよい。積層体のセパレータを作製する場合、ある層を別の層上に形成することを繰り返すことで順に積層して、すなわち逐次多層化して作製してもよく、それぞれ別に作製した複数の膜を張り合わせることで積層体を作製してもよい。
本実施形態に用いるセパレータの形態は、例えば、合成樹脂を製膜して製造した合成樹脂性微多孔膜、合成樹脂又は天然高分子を紡糸した繊維、ガラス繊維又はセラミック繊維を加工した織布、不織布、編布、抄紙、並びに、合成樹脂及びガラスの微粒子を配列して作製した膜が挙げられる。
セパレータは、複数の製法で作製した複数の膜を重ねることで得られてもよく、複数の製法で逐次多層化することで得られてもよい。
本実施形態のセパレータは、膜の補強、充放電の補助、耐熱性向上などの観点から、上記以外の成分、例えば、有機フィラー、無機フィラー、有機粒子又は無機粒子をセパレータの表面及び/又は内部に含んでもよい。
<電池の作製方法>
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、上述の電解液、正極、負極及び任意にセパレータを用いて、公知の方法により作製される。例えば、正極と負極とを、その間にセパレータを介在させた積層状態で巻回して巻回構造の積層体に成形したり、それらを折り曲げや複数層の積層などによって、交互に積層した複数の正極と負極との間にセパレータが介在する積層体に成形したりする。次いで、電池ケース(外装)内にその積層体を収容して、本実施形態に係る電解液をケース内部に注液し、上記積層体を電解液に浸漬して封印することによって、本実施形態のリチウムイオン二次電池を作製することができる。あるいは、ゲル化させた電解液を含む電解質膜を予め作製しておき、正極、負極、電解質膜及び任意にセパレータを、上述のように折り曲げや積層によって積層体を形成した後、電池ケース内に収容してリチウムイオン二次電池を作製することもできる。本実施形態のリチウムイオン二次電池の形状は、特に限定されず、例えば、円筒形、楕円形、角筒型、ボタン形、コイン形、扁平形及びラミネート形などが好適に採用される。
本実施形態の電気化学デバイス用電解液及びリチウムイオン二次電池は、高い安全性(例えば、難燃性、保液性)と高い電池特性(例えば,長期耐久性、高レートでの放電特性、低温特性)を達成し、リチウムイオン二次電池は、高い電池特性(例えば、充放電特性、低温作動性、高温耐久性等)を有すると同時に高い安全性(リチウムデンドライトの抑制)をも実現する。具体的には、電解液が、非水溶媒と電解質とを合わせて4種以上含むことで高い電池特性を達成し、その性質に対して影響の小さい低分子ゲル化剤を含むため、本実施形態の電気化学デバイス用電解液及びリチウムイオン二次電池は、非水溶媒と電解質とを含むことにより達成する性能を低下させることなく発現できる。また、電解液が低分子ゲル化剤を含有することにより、電解液の電池外部への漏洩を防止できるのはもちろんのこと、本実施形態のリチウムイオン二次電池は、リチウムデンドライトによる不具合や燃焼も更に低減することができる。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、電解液及びリチウムイオン二次電池の各種特性は下記のようにして測定、評価された。
(i)リチウムイオン二次電池の性能試験(1)
測定用のリチウムイオン二次電池として、1C=45.0mAとなる単層ラミネート型電池を作製した。測定は、アスカ電子(株)製充放電装置ACD−01(商品名)及び二葉科学社製恒温槽PLM−63S(商品名)を用いて行った。45.0mAの定電流で充電し、4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で、合計8時間充電を行った。その後、45.0mAの定電流で2.75Vまで放電し、ここまでを1サイクルの充放電サイクルとした。この充放電サイクルを150サイクル行い、2サイクル目の放電容量を100%としたときの150サイクル目の放電容量維持率を求めた。なお、充放電試験は50℃で実施した。
(ii)リチウムイオン二次電池の性能試験(2)
測定用のリチウムイオン二次電池として、1C=45.0mAとなる単層ラミネート型電池を作製した。測定は、アスカ電子(株)製充放電装置ACD−01(商品名)及び二葉科学社製恒温槽PLM−63S(商品名)を用いて行った。45.0mAの定電流で充電し、4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で、合計8時間充電を行った(以下、ここまでの充電を「4.2Vまでの定電流−定電圧充電」という。)。その後、45.0mAの定電流で2.75Vまで放電し、再度4.2Vまでの定電流−定電圧充電を行った。充電後の電池を55℃の環境下で30日間保管し、30日後に45.0mAの定電流で放電して残存の放電容量を測定し、保管前の放電容量に対する保管後の放電容量率を「残存放電容量率」として求めた。その後、再度4.2Vまでの定電流−定電圧充電と、45.0mAの定電流で2.75Vまでの放電とを行って、放電容量を測定し、保管前の放電容量に対する放電容量率を「回復放電容量率」として求めた。
(iii)電池の漏液試験
測定用のリチウムイオン二次電池として、1C=45.0mAとなる単層ラミネート型電池を作製した。この電池に0.2mmφの孔を表裏それぞれ5箇所ずつ形成し、20Gの遠心力を印加し、印加前後のセルの重量から保液率を求めた。
(iv)リチウムイオン二次電池のリチウム析出試験
リチウム析出試験は、「(i)リチウムイオン二次電池の性能試験(1)」と同様にして作製した単層ラミネート型電池を用いて行った。9.0mAの定電流で4.2Vまで充電した電池を9.0mAの定電流で3.0Vまで放電し、さらに45mAの定電流で1.5時間充電を行った。この充電池を露点が−60℃以下、酸素濃度10ppm以下の雰囲気下で解体した。解体した電池の負極表面を倍率2000倍の光学顕微鏡で観察し、リチウムの析出挙動を下記の基準で評価した。
A:リチウムの析出が認められない。
B:リチウムの析出は認められるが析出物の表面は平滑である。
C:リチウムの析出が認められ、析出物の表面には鋭い樹状突起(デンドライト)が認められる。
なお、デンドライトの析出は電池短絡の要因となり、電池安全性が低下する原因となる。
(合成例1)
低分子ゲル化剤として下記構造式(イ)で表される化合物(以下「化合物(イ)」とも表記する。)を以下のとおり合成した。合成は国際公開2010/095572号公報に記載の方法に従って行った。
Figure 2013254633
(合成例2)
低分子ゲル化剤として下記構造式(ロ)で表される化合物(以下「化合物(ロ)」と表記する。)を上記合成例1と同様の方法により合成した。
Figure 2013254633
(合成例3)
低分子ゲル化剤として下記構造式(ハ)で表される化合物(以下「化合物(ハ)」と表記する。)を、Mol.Cryst.Liq.Cryst.Vol.439、p209−220に記載の合成法に従って合成した。
Figure 2013254633
(調製例1)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比で1:2になるように混合し、混合液を得た。この混合液に、LiPF6を0.9モル/L,LiN(SO2CF32を0.1モル/Lになるよう添加して、ゲル化されていない電解液(A)を作製した(以下、ゲル化剤添加前の電解液を「母電解液」という。)。この母電解液(A)100質量部に対して、低分子ゲル化剤として上記合成例1で合成した化合物(イ)を1質量部添加し、95℃に加熱して均一に混合した後、25℃に降温して電解液(a)を得た。
(調製例2〜10)
低分子ゲル化剤、電解質、非水溶媒の種類及び含有割合を、表1に記載のように変更した以外は調製例1と同様にして、母電解液(B)〜(J)と、低分子ゲル化剤を含有する電解液(b)〜(j)を調製した。
Figure 2013254633
(正極の作製)
正極活物質として数平均粒子径11μmのリチウムのニッケル、マンガン及びコバルト混合酸化物と、導電助剤として数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末及び数平均粒子径48nmのアセチレンブラック粉末と、PVdFとを、混合酸化物:グラファイト炭素粉末:アセチレンブラック粉末:PVdF=100:4.2:1.8:4.6の質量比で混合した。得られた混合物にN−メチル−2−ピロリドンを固形分68質量%となるように投入して更に混合して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延した。圧延後のものを50mm×30mmの矩形状に打ち抜いて正極(α)を得た。
(負極の作製)
負極活物質として数平均粒子径12.7μmのグラファイト炭素粉末(I)及び数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末(II)と、バインダーとしてカルボキシメチルセルロース溶液(固形分濃度1.83質量%)と、ジエン系ゴム(ガラス転移温度:−5℃、乾燥時の数平均粒子径:120nm、分散媒:水、固形分濃度40質量%)とを、グラファイト炭素粉末(I):グラファイト炭素粉末(II):カルボキシメチルセルロース溶液:ジエン系ゴム=90:10:1.44:1.76の固形分質量比で全体の固形分濃度が45質量%になるように混合して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ10μmの銅箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延した。圧延後のもの50mm×30mmの矩形状に打ち抜いて負極(β)を得た。
(実施例1)
アルミニウム層と樹脂層とを積層したラミネートフィルム(絞り加工なし、厚さ120μm、68mm×48mm)2枚を、アルミニウム層側を外側にして重ねて、三辺をシールしてラミネートセル外装を作製した。続いて、セパレータとしてポリエチレン製微多孔膜(膜厚20μm、53mm×33mm)を用意し、上述のようにして作製した正極(α)と負極(β)とをセパレータを介して交互に複数重ね合わせた積層体を、ラミネートセル外装内に配置した。次いで、そのセル外装内に90℃に加熱した電解液(a)を注入し、積層体を電解液に浸漬した。90℃で2.5時間保持した後、25℃まで降温して単層ラミネート型電池(a)を得た。
得られた単層ラミネート型電池(a)に対し、「(i)リチウムイオン二次電池の性能試験(1)」、「(ii)リチウムイオン二次電池の性能試験(1)」、「(iii)電池の漏液試験」及び「(iv)リチウムイオン二次電池のリチウム析出試験」を実施した。結果を表2に示す。
(実施例2〜9、比較例1〜4)
電解液を表2に示すものに変更した以外は実施例1と同様にして、電池を作製した。得られた電池に対して、実施例1と同様にして各種の試験を実施した。結果を表2に示す。
Figure 2013254633
上記実施例に示すように、非水溶媒と電解質とを合わせて4種以上含む母電解液に対し低分子ゲル化剤を導入した電解液は、耐久性に代表される電池特性と安全性向上とに寄与するものである。
本発明によると、ゲル状の電解液の高い安全性を達成しつつ、さらに高い電池特性を実現する、電気化学デバイス用電解液及びリチウムイオン二次電池を提供することができる。したがって、そのような特性が求められる電気化学デバイス(例えばリチウムイオン二次電池)に産業上の利用可能性がある。

Claims (13)

  1. 非水溶媒と電解質と低分子ゲル化剤とを含有する電気化学デバイス用電解液であって、
    前記非水溶媒と前記電解質とを合わせて4種以上含む、電解液。
  2. 前記電解質を2種以上含む、請求項1に記載の電気化学デバイス用電解液。
  3. 前記電解質の1種がヘキサフルオロリン酸リチウムである、請求項1又は2に記載の電気化学デバイス用電解液。
  4. 前記電解質の1種以上がホウ素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる1種以上を有するリチウム塩である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用電解液。
  5. 前記非水溶媒の1種以上が環状カーボネート部位を有する溶媒である、請求項1〜4のいずれか1項記載の電気化学デバイス用電解液。
  6. 前記低分子ゲル化剤が、下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用電解液。
    Rf1−R1−X1−L1−R2 (1)
    Rf1−R1−X1−L1−R3―L2―X2―R4―Rf2 (2)
    5−O−Cy−X3−Cm (3)
    (式(1)及び(2)中、Rf1及びRf2はそれぞれ独立に、炭素数2〜20のパーフルオロアルキル基を示し、R1及びR4はそれぞれ独立に、単結合若しくは炭素数1〜6の2価の飽和炭化水素基を示し、X1及びX2はそれぞれ独立に、下記式(1a)、(1b)、(1c)、(1d)、(1e)、(1f)及び(1g)で表される基からなる群より選ばれる2価の基を示し、L1及びL2はそれぞれ独立に、単結合、アルキル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよいオキシアルキレン基、アルキル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよいオキシシクロアルキレン基、又は、アルキル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい2価のオキシ芳香族基を示し、R2は、アルキル基若しくはハロゲン原子(ただし、フッ素原子を除く。)で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、アルキル基若しくはハロゲン原子(ただし、フッ素原子を除く。)で置換されていてもよいフルオロアルキル基、アリール基若しくはフルオロアリール基、又は、これらの基のうちの1種以上とこれらの基に対応する2価の基のうちの1種以上とが結合した1価の基を示し、R3は主鎖に酸素及び/又は硫黄原子を1つ以上有してもよく、かつ、アルキル基で置換されていてもよい炭素数1〜18の2価の飽和炭化水素基を示す。
    Figure 2013254633
    式(3)中、R5は主鎖の炭素数1〜20の置換又は無置換の1価の炭化水素基を示し、Cyは置換若しくは無置換の核原子数5〜30の2価の芳香族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示し、X3は、下記式(3a)、(3b)、(3c)、(3d)、(3e)、(3f)及び(3g)で表される基からなる群より選ばれる2価の基、又は、それらの2価の基のうち2種以上が結合した2価の基を示し、Cmは下記一般式(3z)で表される1価の基を示し、下記式(3z)中、複数のRaはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を示す。
    Figure 2013254633
    Figure 2013254633
  7. 前記X1及びX2が、それぞれ独立に、前記式(1a)又は前記式(1d)で表される2価の官能基である、請求項6に記載の電気化学デバイス用電解液。
  8. 前記X1及びX2がいずれも、前記式(1d)で表される2価の基である、請求項6又は7に記載の電気化学デバイス用電解液。
  9. 高分子ゲル化剤を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用電解液。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用電解液と、
    正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料からなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する正極と、
    負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料及び金属リチウムからなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する負極と、
    を備えるリチウムイオン二次電池。
  11. 前記正極は、前記正極活物質として、リチウム含有化合物を含む、請求項10に記載のリチウムイオン二次電池。
  12. 前記リチウム含有化合物は、リチウムを有する金属酸化物及びリチウムを有する金属カルコゲン化物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含む、請求項11に記載のリチウムイオン二次電池。
  13. 前記負極は、前記負極活物質として、金属リチウム、炭素材料、及び、リチウムと合金形成が可能な元素を含む材料、からなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する、請求項10〜12のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
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