JP2013254023A - 反射制御素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】 光学素子、光学部材等の所定の反射面での中赤外領域の光に対する反射率制御を好適に実現することが可能な反射制御素子を提供する。
【解決手段】 支持体100と、支持体100の所定の面101上に順に形成された、所定波長の光の反射を制御する反射制御膜510、及び保護膜518とを備えて、反射制御素子1Aを構成する。また、このような構成において、反射制御膜510を、少なくとも1層のCeO膜515を含む構成とするとともに、反射制御素子1Aの最外層として形成された保護膜518により、反射制御膜510に含まれるCeO膜515を大気などの外部雰囲気から保護する構成とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、所定波長の光の反射を制御する光学素子である反射制御素子に関するものである。
中赤外の波長領域(例えば波長4〜15μm)の光は、分光分析分野において重要な波長領域となっている。このような波長領域での高性能な半導体光源として、近年、量子カスケードレーザ(QCL:Quantum Cascade Laser)が注目を集めている(例えば、特許文献1〜3、非特許文献1参照)。
量子カスケードレーザは、半導体量子井戸構造中に形成されるサブバンドによる準位構造を利用し、サブバンド間での電子遷移によって光を生成するモノポーラタイプのレーザ素子であり、量子井戸構造で構成され活性領域となる量子井戸発光層を多段にカスケード結合することによって、高効率、高出力動作を実現することが可能である。また、この量子井戸発光層のカスケード結合は、発光上準位へと電子を注入するための電子注入層を用い、量子井戸発光層と注入層とを交互に積層することによって実現される。
米国特許第5457709号公報 特開2009−206340号公報 特開2008−10733号公報 特開2006−72031号公報 特開2009−86533号公報
J. Nguyen et al., "Optical coatings by ion-beam sputteringdeposition for long-wave infrared quantum cascade lasers", Appl. Phys.Lett. Vol.89 (2006) 111113-1 - 111113-3
上記した中赤外領域の量子カスケードレーザにおいて、そのレーザ共振器構造での端面の反射率制御は非常に重要である。例えば、外部共振器(EC:External Cavity)型、あるいは素子中に回折格子を配置した分布帰還(DFB:Distributed Feed Back)型の量子カスケードレーザなどの単一モード動作のレーザ素子では、光の共振方向に位置する素子端面における反射防止(AR:Anti Reflection)膜、あるいは高反射(HR:High Reflection)膜などの反射制御膜の形成が必須となっている。また、このような中赤外領域の光に対する反射制御は、量子カスケードレーザの素子端面以外においても、様々な光学素子、光学部材等において重要となっている。
しかしながら、このような光学素子、光学部材等の所定の面(反射制御膜形成面)上での反射制御膜の形成において、中赤外領域内の光、特に、7〜15μmの波長領域内の光に対して高い透過性(透明性)を示し、かつ、膜形成面上に良好な状態で反射制御膜を形成、保持することが可能な材料は、これまでに充分には知られていない。
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、光学素子、光学部材等の所定の面での中赤外領域の光に対する反射率制御を好適に実現することが可能な反射制御素子を提供することを目的とする。
このような目的を達成するために、本発明による反射制御素子は、支持体と、支持体の所定の面(膜形成面)上に順に形成された、少なくとも1層のCeO膜を含み所定波長の光の反射を制御する反射制御膜、及びCeO膜を保護するための保護膜とを備えることを特徴とする。
上記した反射制御素子では、反射制御の対象となる所定波長の光に対し、支持体の反射制御膜形成面上に、少なくとも1層のCeO膜を含む反射制御膜、及びCeO膜を保護する保護膜を順に形成している。ここで、本願発明者の検討結果によれば、詳しくは後述するように、CeO(酸化セリウム)は中赤外領域の光に対して高い透過性を示し、また、絶縁性などについて良好な特性を示す材料である。したがって、CeOによる光学膜は、中赤外領域の光に対する反射制御膜において好適に適用することができる。
また、例えば上記のようにCeO膜を含む反射制御膜が形成された光学素子を長期間大気中に暴露される環境で使用するなどの使用条件では、CeOの潮解性が問題となる場合がある。これに対して、上記の反射制御素子では、反射制御膜に含まれるCeO膜に対して、その支持体とは反対側に、CeO以外の所定の材料からなる保護膜を形成している。このように、CeO膜を含む反射制御膜と、CeO膜を保護する保護膜との積層構造によれば、支持体の膜形成面上に形成された反射制御膜を良好な状態に保持しつつ、中赤外領域の光に対する反射率制御を好適に実現することが可能となる。
ここで、CeO膜を保護するための保護膜については、保護膜は、反射制御膜に含まれており、反射制御膜の最外層となっている構成を用いることができる。このように、反射制御膜の最外層が、CeO以外の材料からなる光学膜によって構成されている場合には、この最外光学膜を保護膜として機能させて、反射制御膜に含まれるCeO膜を好適に保護することができる。また、この場合、具体的な保護膜としては、例えば、多層膜において高屈折率膜として用いられるGe膜がある。
あるいは、反射制御膜の最外層は、CeO膜であり、保護膜は、反射制御膜とは別個の層としてCeO膜上に形成されている構成を用いることができる。このように、反射制御膜とは別個に保護膜を設ける構成によっても、反射制御膜に含まれるCeO膜を好適に保護することができる。また、この場合、具体的な保護膜の材料については、保護膜は、Si膜であることが好ましい。また、このように反射制御膜とは別個に保護膜を設ける場合には、反射制御膜による中赤外領域の光に対する反射特性、透過特性などの光学特性に過度の影響を与えない材料、膜厚によって保護膜を形成することが好ましい。
また、所定波長の光に対する反射制御膜については、具体的には、反射制御膜は、低屈折率膜であるCeO膜と、所定の材料からなる高屈折率膜とが積層された多層膜である構成を用いることができる。このような反射制御多層膜によれば、低屈折率膜及び高屈折率膜を用いた多層構造の具体的な設計により、反射面での所定波長の光に対する反射率を好適に制御することができる。
また、このように反射制御膜を多層膜として構成する場合、低屈折率膜として機能するCeO膜に対し、多層膜における高屈折率膜は、Ge膜であることが好ましい。このように、CeO膜とGe膜とを交互に積層した構造によれば、多層構造の反射制御膜を好適に構成することができる。
あるいは、この反射制御膜については、CeO膜を含む多層膜によって構成するのではなく、単一のCeO膜から構成されていることとしても良い。このような構成によっても、反射面での所定波長の光に対する反射率を好適に制御することができる。
また、上記構成の反射制御素子において、支持体上に、保護膜とともに形成される反射制御膜は、所定波長の光に対する反射防止膜、または所定波長の光を所定の反射率で反射する反射膜であることが好ましい。上記のように、CeO膜を含む反射制御膜と、CeO膜を保護する保護膜とを組み合わせた構成によれば、反射防止(AR)膜、または反射膜(例えば高反射(HR)膜)などの反射制御膜が支持体上に設けられた反射制御素子を好適に実現することができる。
本発明の反射制御素子によれば、支持体の所定の面上に、少なくとも1層のCeO膜を含み所定波長の光の反射を制御する反射制御膜と、CeO膜を保護するための保護膜とを順に形成することにより、支持体上に形成された反射制御膜を良好な状態に保持しつつ、中赤外領域の光に対する反射率制御を好適に実現することが可能となる。
反射制御素子の第1実施形態の構成を示す側面図である。 反射制御素子の第2実施形態の構成を示す側面図である。 酸化物系光学材料の屈折率nの波長依存性を示すグラフである。 酸化物系光学材料の消衰係数kの波長依存性を示すグラフである。 酸化物系光学材料の消衰係数kの波長依存性を示すグラフである。 CeOの消衰係数kの波長依存性を示すグラフである。 反射制御素子の第1の構成例を示す側面図である。 図7に示した反射制御素子の光学特性を示すグラフである。 反射制御素子の第2の構成例を示す側面図である。 図9に示した反射制御素子の光学特性を示すグラフである。 反射制御素子の第3の構成例を示す側面図である。 図11に示した反射制御素子の光学特性を示すグラフである。 反射制御素子の第4の構成例を示す側面図である。 図13に示した反射制御素子の光学特性を示すグラフである。 反射制御素子の第5の構成例を示す側面図である。 図15に示した反射制御素子の光学特性を示すグラフである。 反射制御素子の第6の構成例を示す側面図である。 図17に示した反射制御素子の光学特性を示すグラフである。 量子カスケードレーザの基本構成を概略的に示す図である。 量子カスケードレーザの活性層の構成、及び活性層におけるサブバンド準位構造の一例を示す図である。
以下、図面とともに、本発明による反射制御素子の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
図1は、本発明による反射制御素子の第1実施形態の構成を示す側面図である。本実施形態による反射制御素子1Aは、所定波長の光、例えば波長4〜15μmの中赤外領域の光、あるいは特に波長7〜15μmの中赤外領域の光の反射を制御するための光学素子である。この反射制御素子1Aは、支持体100と、支持体100の所定の面である膜形成面(図中の上面)101上に支持体100側から順に形成された反射制御膜510、及び保護膜518とを備えて構成されている。
反射制御膜510は、所定波長の光の反射を制御する光学膜であり、少なくとも1層のCeO膜515を含んで構成されている。図1に示す構成において、CeO膜515は、反射制御膜510における最外層、すなわち、支持体100からみて最も外側に位置する光学膜となっている。さらに、このようなCeO膜515を含む反射制御膜510に対し、CeO膜515の外側に、CeO膜515を大気などの外部雰囲気から保護するための保護膜518が形成されている。このような保護膜518は、CeO以外の所定の材料(例えばSi)からなる光学膜によって構成される。
本実施形態による反射制御素子1Aの効果について説明する。
図1に示した反射制御素子1Aでは、反射制御の対象となる所定波長の光に対し、支持体100の反射制御膜形成面101上に、少なくとも1層のCeO膜515を含む反射制御膜510、及びCeO膜を保護する保護膜518を順に形成している。ここで、本願発明者の検討結果によれば、CeO(酸化セリウム)は中赤外領域の光、例えば、7〜15μmの波長領域内の光に対して、高い透過性を示し、また、支持体100上に形成したときに、絶縁性などについて良好な特性を示す材料である。したがって、このようなCeOによる光学膜515は、中赤外領域の光に対する反射制御膜510において好適に適用することができる。
また、例えば上記のようにCeO膜515を含む反射制御膜510が形成された光学素子を長期間大気中に暴露される環境で使用するなどの使用条件では、CeOの潮解性が問題となる場合がある。これに対して、上記の反射制御素子1Aでは、反射制御膜510に含まれるCeO膜515に対して、その支持体100とは反対側に、CeO以外の所定の材料からなる保護膜518を形成している。このように、CeO膜を含む反射制御膜510と、CeO膜を外部雰囲気から保護する保護膜518との積層構造によれば、支持体100の膜形成面101上に形成された反射制御膜510を良好な状態に保持しつつ、中赤外領域の光に対する反射率制御を好適に実現することが可能となる。なお、CeO、及びCeO膜を含む反射制御膜の特性については詳しく後述する。
ここで、CeO膜を保護するための保護膜については、図1に示したように、反射制御膜の最外層は、CeO膜であり、保護膜は、反射制御膜とは別個の層としてCeO膜上に形成されている構成を用いることができる。このように、反射制御膜とは別個に保護膜を設ける構成によれば、反射制御膜に含まれるCeO膜を好適に保護することができる。また、この場合、具体的な保護膜の材料については、保護膜は、Si膜であることが好ましい。また、このように反射制御膜とは別個に保護膜を設ける場合には、反射制御膜による中赤外領域の光に対する反射特性、透過特性などの光学特性に過度の影響を与えない材料、膜厚によって保護膜を形成することが好ましい。
あるいは、このような保護膜については、保護膜は、反射制御膜に含まれており、反射制御膜の最外層となっている構成を用いることができる。このように、反射制御膜の最外層が、CeO以外の材料からなる光学膜によって構成されている場合には、この最外光学膜を保護膜として機能させて、反射制御膜に含まれるCeO膜を好適に保護することができる。また、この場合、具体的な保護膜としては、例えば、多層膜において高屈折率膜として用いられるGe膜がある。このように、反射制御膜の最外層を保護膜とする反射制御素子の構成の例を図2に示す。
図2は、本発明による反射制御素子の第2実施形態の構成を示す側面図である。本実施形態による反射制御素子1Bは、図1に示す反射制御素子1Aと同様に、所定波長の光の反射を制御するための光学素子である。この反射制御素子1Bは、支持体100と、支持体100の膜形成面101上に形成された反射制御膜520とを備えて構成されている。
反射制御膜520は、所定波長の光の反射を制御する光学膜であり、少なくとも1層のCeO膜525を含んで構成されている。図2に示す構成において、CeO膜525は、反射制御膜520における最外から2番目に位置する光学膜となっている。さらに、このようなCeO膜525を含む反射制御膜520において、CeO膜525の外側に、CeO以外の所定の材料(例えばGe)からなる最外層として光学膜526が形成されている。この反射制御膜520の最外光学膜526は、CeO膜525を外部雰囲気から保護するための保護膜として機能している。
このように、CeO膜525を保護するための保護膜526が最外層として反射制御膜520に含まれる図2の構成によっても、図1の構成と同様に、支持体100の膜形成面101上に形成された反射制御膜520を良好な状態に保持しつつ、中赤外領域の光に対する反射率制御を好適に実現することが可能となる。
支持体上の反射制御膜において光学材料として用いられるCeO、及びCeO膜を含む反射制御膜の特性について、さらに詳しく説明する。光学素子、光学部材等の反射面での反射率制御において、例えば、波長4μm以上の中赤外領域では、一般に可視領域、近赤外領域で広く用いられている光学材料では光の吸収が大きく、好適な特性が得られない。また、例えばCaF、BaFなどのフッ化物系の材料においても、10μm以上の波長領域には対応が難しい。
このような波長領域に用いる反射制御膜としては、例えば、低屈折率材料としてZnSまたはZnSeを用い、高屈折率材料としてGeを用いた多層膜が考えられる。しかしながら、これらの光学材料を用いた構成では、素子の本体部分との絶縁が必要な場合に、その確保が難しく、また、10μm以上の波長領域には対応が難しい。一方、素子の面上にAl、SiOなどの材料による絶縁膜を形成した場合には、絶縁膜での光の吸収によって特性が劣化してしまう。また、光の透過性を確保するために薄い絶縁膜とした場合には、充分な絶縁が確保できずに素子の安定動作が得られない。また、例えば非特許文献1では、ZnO/PbTe多層膜による反射防止膜を用いているが、このような構成においても、充分な特性は得られていない。
また、ZnS、ZnSe、PbTeなどを反射制御膜の材料として用いた場合、これらの材料は、蒸着などの方法で多層膜を形成する際にVI族元素の組成制御が難しいため、素子としての歩留りが低下する場合がある。また、これらの材料は、その物質としての有害性、法律による規制などを考慮すると、実験室レベルではなく、広く普及する光学素子を構成する上で問題がある。
このような問題に対し、素子本体部分との絶縁の確保を考慮すると、反射制御膜を構成する光学材料としては、一般に酸化物を用いることが考えられる。これについて、本願発明者は、分光エリプソメータを用いて、様々な材料について中赤外領域における光学定数を調べたところ、上述したCeOが有望であるとの知見を得た。このCeOは毒劇物には該当せず、通常の取扱いが可能な物質である。
ここで、光学材料の特性を調べるための分光エリプソメトリーについて簡単に説明しておく。光学材料の屈折率(refraction index)、消衰係数(extinctioncoefficient)などの光学特性を、所望の波長範囲で正確に把握することは、反射制御膜などの機能性光学薄膜の設計において非常に重要である。本願発明者は、波長2〜30μmの範囲まで測定可能な分光エリプソメータを導入し、中赤外領域において様々な材料の光学特性の直接的な評価を行っている。
エリプソメトリーでは、2つの独立な量、すなわち、振幅比Ψ及び位相差Δを測定することが可能であり、複素誘電率(複素屈折率)の実部と虚部とを直接得ることができる。振幅比Ψ、位相差Δは以下のように表され、試料での反射光、または透過光の偏光状態の変化として記述される。
Figure 2013254023

ここで、r、rは入射面での偏光(p偏光、s偏光)に対する測定試料の反射係数である。分光エリプソメトリーは、この複素比ρを波長の関数として測定する。
多入射角分光エリプソメトリーでは、波長と入射角との両方を関数として上記の測定を実行することにより、未知の多層膜の評価が可能となる。また、振幅比Ψ、位相差Δは、次式により直接、材料の光学定数に変換することができる。
Figure 2013254023

ここで、φは光の入射角である。入射角を変えて何点か(例えば3点)の測定を行い、入射角の変化によって光路長が変わっても同時に関係式を満足するようにフィッティングを行うことにより、膜厚に依存することなく、測定試料の屈折率n、消衰係数kを精度良く求めることができる。
図3は、酸化物系光学材料の屈折率nの波長依存性を示すグラフである。このグラフにおいて、横軸は波長(μm)を示し、縦軸は屈折率nを示している。また、図3のグラフにおいて、グラフA1、A2、A3、A4は、それぞれ、酸化物系光学材料であるCeO、Al、HfO、Yの屈折率特性を示している。
図4、5は、酸化物系光学材料の消衰係数kの波長依存性を示すグラフである。これらのグラフにおいて、横軸は波長(μm)を示し、縦軸は消衰係数kを示している。また、図4のグラフにおいて、グラフB1、B2、B3、B4は、それぞれ、酸化物系光学材料であるCeO、Al、HfO、Yの消衰係数特性を示している。また、図5のグラフにおいて、グラフB6、B7、B8、B9は、それぞれ同様に、CeO、Al、HfO、Yの消衰係数特性を一部拡大して示している。
例えば、反射制御膜として高屈折率材料をGeとする多層膜を想定すると、Geは屈折率がn=4であるので、低屈折率材料については、その屈折率が少なくともn≦4、好ましくはn<2.5であって、また、波長10μm以上の領域でも充分に透明である必要がある。これに対して、図3のグラフに示すように、CeOは屈折率がn<2であり、反射制御多層膜における低屈折率材料として好適に用いることが可能である。
また、図4、5のグラフに示すように、他の酸化物系材料と比較して、CeOは波長15μm付近まで高い透過性を有している。したがって、CeOは、中赤外領域の光に対する反射制御膜において好適に適用可能である。なお、上記した非特許文献1では、Au膜を含む高反射膜に対して、その素子端面側に、Al膜等に代わる絶縁膜としてY膜を形成している。これに対し、図4、5のグラフによれば、Yは波長10μm以上で吸収が大きくなっており、中赤外領域の光に対する反射制御膜において好適に用いることはできないと考えられる。
また、反射制御膜においてCeO膜を用いる場合、CeOは大気中の水分と反応する性質があり、このため、図4、5のグラフに示すように、波長10μm以下の領域においてOH基による吸収が発生する場合がある。このような場合、例えば電子ビーム蒸着などによるCeO膜の成膜の際に基板加熱を行うことが好ましい。
図6はCeOの消衰係数kの波長依存性を示すグラフであり、グラフC1は室温で成膜を行った場合のCeOの消衰係数特性を示し、グラフC2は250℃で基板加熱して成膜を行った場合のCeOの消衰係数特性を示している。このグラフに示すように、成膜時に基板加熱を行うことにより、水分の混入の防止、及び膜質の向上等によってOH基による吸収の影響が低減され、また、透明領域も長波長側に延びることがわかる。
反射制御素子において支持体の所定の面(反射面)に形成される反射制御膜、及び保護膜の具体的な構成について、さらに説明する。
所定波長の光に対する支持体上の反射制御膜については、具体的には、反射制御膜は、低屈折率膜であるCeO膜と、CeO以外の所定の材料からなる高屈折率膜とが交互に積層された多層膜である構成を用いることができる。このような反射制御多層膜によれば、低屈折率膜及び高屈折率膜を用いた多層構造における層数、層厚などの具体的な設計により、反射面での所定波長の光に対する反射率を好適に設定、制御することができる。
また、このように反射制御膜を多層膜として構成する場合、低屈折率膜として機能するCeO膜に対し、図3の屈折率のグラフに関して上述したように、多層膜における高屈折率膜は、Ge膜であることが好ましい。このように、1または複数のCeO膜と、1または複数のGe膜とを交互に積層した構造によれば、多層構造を有する反射制御膜を好適に構成することができる。
あるいは、このような反射制御膜については、上記のようにCeO膜を含む多層膜によって構成するのではなく、単一のCeO膜から反射制御膜を構成することとしても良い。このような構成によっても、CeO膜の膜厚などの具体的な設計により、反射面での所定波長の光に対する反射率を好適に制御することができる。
また、上記構成の反射制御素子において、支持体上に、保護膜とともに形成される反射制御膜は、所定波長の光に対する反射防止膜、または所定波長の光を所定の反射率で反射する反射膜であることが好ましい。上記のように、CeO膜を含む反射制御膜と、CeO膜を保護する保護膜とを組み合わせた構成によれば、反射防止(AR)膜、または反射膜(例えば高反射(HR)膜)などの反射制御膜が支持体上に設けられた反射制御素子を好適に実現することができる。以下、図7〜図18を参照して、反射制御膜及び保護膜を含む反射制御素子の構成の具体例、及びその特性について説明する。
図7は、反射制御素子の第1の構成例を示す側面図である。本構成例の反射制御膜110は、波長λ=10μmの光に対する反射防止(AR)膜として設計されたものであり、支持体100の面101上に、厚さ0.193μmのCeO膜111、厚さ0.418μmのGe膜112、厚さ0.826μmのCeO膜113、厚さ0.107μmのGe膜114、及び厚さ0.633μmのCeO膜115を積層することで、CeO低屈折率膜及びGe高屈折率膜による多層膜の反射防止膜110が構成されている。
また、本構成例では、反射防止膜110に対し、その最外層であるCeO膜115上に、反射防止膜110とは別個の層として、厚さ10nmのSi保護膜118が形成されている。このような反射制御膜110のCeO膜を保護するためのSi膜118は、上述したように、反射制御膜110の光学特性に大きな影響を与えない程度に薄い膜厚(例えば、図7に示した10nm程度の膜厚)で形成することが好ましい。
図8は、図7に示した反射制御素子における反射制御膜110の光学特性を示すグラフである。このグラフにおいて、横軸は波長(μm)を示し、縦軸は光の透過率または反射率(%)を示している。また、図8のグラフにおいて、グラフD1は透過率を示し、グラフD2は反射率を示している。この多層膜の構成例では、波長10μmの光に対してT=99.995%と高い透過率Tが得られている。
図9は、反射制御素子の第2の構成例を示す側面図である。本構成例の反射制御膜120は、波長λ=10μmを含む、広帯域の光に対する反射防止(AR)膜として設計されたものであり、支持体100の面101上に、厚さ0.283μmのCeO膜121、厚さ0.336μmのGe膜122、厚さ0.283μmのCeO膜123、厚さ1.25μmのGe膜124、厚さ0.633μmのCeO膜125、及び厚さ0.107μmのGe膜126を積層することで、多層膜の反射防止膜120が構成されている。また、本構成例では、反射防止膜120に含まれる最外層のGe膜126が、CeO膜に対する保護膜となっている。
図10は、図9に示した反射制御素子における反射制御膜120の光学特性を示すグラフである。図10のグラフにおいて、グラフD3は透過率を示し、グラフD4は反射率を示している。この多層膜の構成例では、波長10μmの光に対してT=96.855%と高い透過率が得られており、また、波長10μmを含む広い波長帯域で高い透過率Tが得られている。
図11は、反射制御素子の第3の構成例を示す側面図である。本構成例の反射制御膜130は、波長λ=10μmの光に対する高反射(HR)膜として設計されたものであり、支持体100の面101上に、厚さ1.70μmのCeO膜131、厚さ0.625μmのGe膜132、厚さ1.70μmのCeO膜133、及び厚さ0.625μmのGe膜134を積層することで、多層膜の高反射膜130が構成されている。また、本構成例では、高反射膜130の最外層のGe膜134が保護膜となっている。
図12は、図11に示した反射制御素子における反射制御膜130の光学特性を示すグラフである。図12のグラフにおいて、グラフD5は透過率を示し、グラフD6は反射率を示している。この多層膜の構成例では、波長10μmの光に対してR=97.746%と高い反射率Rが得られている。
図13は、反射制御素子の第4の構成例を示す側面図である。本構成例による反射制御膜140は、波長λ=10μmの光に対する反射防止(AR)膜として設計されたものであり、支持体100の面101上に厚さ1.70μmのCeO膜141を形成することで、単一のCeO膜による反射防止膜140が構成されている。なお、ここでは、支持体100としてInPが想定されている。InPの屈折率はn=3.2、CeOの屈折率はn=1.47である。また、本構成例では、反射防止膜140に対し、その最外層であるCeO膜141上に、厚さ10nmのSi保護膜148が形成されている。
図14は、図13に示した反射制御素子における反射制御膜140の光学特性を示すグラフである。図14のグラフにおいて、グラフD7は透過率を示し、グラフD8は反射率を示している。この単一膜の構成例では、波長10μmの光に対してT=96.243%と高い透過率Tが得られている。なお、このときの反射率はR=3.757%である。
図7〜14に示した反射制御素子の第1〜第4の構成例では、いずれも、波長λ=10μmの光を反射制御の対象として、反射防止膜または高反射膜として反射制御膜を設計した例を示している。ただし、このような反射制御膜は、波長10μmの光に限らず、一般に任意の波長の光に対して同様に設計、適用することが可能である。
図15は、反射制御素子の第5の構成例を示す側面図である。本構成例の反射制御膜210は、波長λ=8μmの光に対する反射防止(AR)膜として設計されたものであり、支持体100の面101上に、厚さ0.155μmのCeO膜211、厚さ0.332μmのGe膜212、厚さ0.655μmのCeO膜213、厚さ0.079μmのGe膜214、厚さ0.501μmのCeO膜215、及び厚さ0.010μmのGe膜216を積層することで、多層膜の反射防止膜210が構成されている。また、本構成例では、反射防止膜210の最外層のGe膜216が保護膜となっている。
図16は、図15に示した反射制御素子における反射制御膜210の光学特性を示すグラフである。図16のグラフにおいて、グラフE1は透過率を示し、グラフE2は反射率を示している。この多層膜の構成例では、波長8μmの光に対してT=99.644%と高い透過率Tが得られている。
図17は、反射制御素子の第6の構成例を示す側面図である。本構成例による反射制御膜220は、波長λ=13μmの光に対する反射防止(AR)膜として設計されたものであり、支持体100の面101上に、厚さ0.250μmのCeO膜221、厚さ0.552μmのGe膜222、厚さ1.077μmのCeO膜223、厚さ0.174μmのGe膜224、厚さ0.827μmのCeO膜225、及び厚さ0.010μmのGe膜226を積層することで、多層膜の反射防止膜220が構成されている。また、本構成例では、反射防止膜220の最外層のGe膜226が保護膜となっている。
図18は、図17に示した反射制御素子における反射制御膜220の光学特性を示すグラフである。図18のグラフにおいて、グラフE3は透過率を示し、グラフE4は反射率を示している。この多層膜の構成例では、波長13μmの光に対してT=99.869%と高い透過率Tが得られている。
単一のCeO膜、またはCeO膜を含む多層膜によって構成される反射制御膜の設計方法について、簡単に説明する。まず、最も基本となる単一膜の場合を考える。光の入射側媒質、反射薄膜、及び支持体の屈折率を、それぞれn、n、nとし、波長λの光が膜厚dの薄膜に垂直入射する場合、反射防止(無反射)コーティングにおいて反射率Rが0となる条件は、
nd=qλ/4 (q=1,3,5,…)
n=(n1/2
となる。この2式はそれぞれ、波長と膜厚の関係、及び屈折率の関係を示している。
膜厚がλ/4、λ/2などの組合せで、種々の支持体上に反射制御膜のコーティングを施すためには、目的とする波長域において、上記の式で求められた任意の屈折率の薄膜を用意する必要がある。このような問題を解決する1つの方法として、等価膜という考え方がある。すなわち、この考え方は、屈折率n、膜厚λ/4の薄膜を、低屈折率nの材料の薄膜と、高屈折率nの材料の薄膜との周期的な多層構造によって等価的に構成するというものである。この場合、屈折率、各層の膜厚、層数の組合せは理論的には無限に可能であるが、その中から現実的な解を採用して反射制御膜を設計することとなる。
例えば、λ/4の2層として反射率R=0となる屈折率の組合せn、n(ただし、n<n<n)を算出する。そして、そのn、nと屈折率が等価となるように、それぞれ実際の物質(例えば、CeOとGe)の周期構造で置き換える。なお、上記においては、R=0となる反射防止膜について説明したが、例えばR=1となる高反射膜などの反射膜についても同様の考え方によって設計が可能である。また、反射制御膜の設計における実際の計算は、例えば、市販の設計ソフトウェア、あるいは汎用の計算プログラム等によっても実行可能である。
ここで、図1、2に示した反射制御素子1A、1Bの構成において、反射制御膜(反射制御用のコーティング)の形成の基体となる支持体100については、様々な光学素子、光学部材等を適用することが可能である。そのような支持体100としては、具体的には例えば、半導体レーザ素子などの発光素子、フォトダイオードなどの受光素子、光学系に用いられるレンズ、ミラーなどの光学要素、Ge窓、Geレンズ、あるいは光学素子に用いられるパッケージング窓材などがある。また、中赤外領域の光を出力する半導体レーザ素子としては、例えば、上述した量子カスケードレーザ等を用いることができる。このような構成において、反射制御膜に用いられる光学材料が透明な波長領域では、光の反射帯域、あるいは透過帯域を自由に設計することができ、また、必要があれば反射制御膜にフィルタリング機能を付加することも可能である。
上記構成の反射制御素子における反射制御膜の製造方法の一例について、簡単に説明する。ここでは、支持体として量子カスケードレーザを用いた場合について説明するが、他の光学素子、光学部材を支持体とした場合においても、同様の方法で反射制御膜及び保護膜を形成することが可能である。
まず、通常の量子カスケードレーザの製造工程と同様に、例えばInP基板等の所定材料の基板上に、MOCVD法等によってレーザ構造の結晶成長を行う。そして、フォトリソグラフィ、エッチング技術を用いてストライプ構造を形成し、レーザ共振器構造における素子端面をへき開によって形成して、レーザバーの状態とする。
続いて、真空蒸着装置、例えば電子ビーム(EB)蒸着装置において、専用のジグを用いて素子端面のみが露出するようにレーザバーを固定し、所望の材料の薄膜を必要な膜厚となるように端面上に形成する。例えば、反射制御膜をCeO/Ge多層膜とする場合には、CeO、Geを蒸着源としたマルチソースで蒸着を行い、CeO膜とGe膜とが交互に積層された反射制御多層膜を形成する。また、反射制御膜の外側に反射制御膜とは別個にSi保護膜を形成する場合には、CeO、Geに加えて、Siを蒸着源としたマルチソースで蒸着を行えば良い。ここで、CeO、Ge、Siは、ともに電子ビーム蒸着で成膜が可能であり、マルチソースの蒸着装置にて真空を破ることなく、反射制御多層膜及び保護膜を形成することが可能である。
また、図6のグラフに関して上述したように、このような反射制御膜の形成工程において、例えば250℃での基板加熱を行うことにより、水分の混入の防止、及び膜質の向上などの効果が得られる。量子カスケードレーザの素子端面に反射制御膜を形成した後は、レーザバーの状態から1チップに切り出し、組立工程、パッケージング工程を行うことによって、レーザ素子が完成する。なお、反射制御膜、及び保護膜の成膜については、一般には上記した電子ビーム蒸着が用いられるが、例えば抵抗加熱蒸着、スパッタなどの他の方法を用いても、同様に成膜が可能である。
支持体、反射制御膜、及び保護膜を含む本発明による反射制御素子の構成を適用した光学素子の具体的な一例として、反射制御素子における支持体を上記した量子カスケードレーザとした場合について説明する。
図19は、本発明による反射制御素子の構成を用いた量子カスケードレーザの基本構成を概略的に示す図である。本実施形態の量子カスケードレーザ2Aは、半導体量子井戸構造におけるサブバンド間の電子遷移を利用して光を生成するモノポーラタイプのレーザ素子である。この量子カスケードレーザ2Aは、半導体基板10と、基板10上に形成された活性層15とを備えて構成されている。また、この基板10及び活性層15を含む積層構造に対して、基板10側(図中の下側)、及び活性層15側(図中の上側)には、それぞれレーザ2Aを駆動するための電極13、14が形成されている。
活性層15は、光の生成に用いられる量子井戸発光層と、発光層への電子の注入に用いられる電子注入層とが交互かつ多段に積層されたカスケード構造を有する。具体的には、量子井戸発光層及び注入層からなる半導体積層構造を1周期分の単位積層体16とし、この単位積層体16が多段に積層されることで、カスケード構造を有する活性層15が構成されている。量子井戸発光層及び注入層を含む単位積層体16の積層数は適宜設定されるが、例えば数100程度である。また、活性層15は、半導体基板10上に直接に、あるいは他の半導体層を介して形成される。
図20は、図19に示した量子カスケードレーザ2Aにおける活性層の構成、及びその活性層において形成されるサブバンド準位構造の一例を示す図である。なお、図20においては、量子カスケードレーザ2Aの活性層15における単位積層体16による多段の繰返し構造のうちの一部について、その量子井戸構造、及びサブバンド準位構造を模式的に示している。また、この図において、横方向は活性層内での積層方向の位置に相当し、縦方向はエネルギーに相当する。
図20に示すように、活性層15に含まれる複数の単位積層体16のそれぞれは、量子井戸発光層17と、電子注入層18とによって構成されている。これらの発光層17及び注入層18は、それぞれ量子井戸層及び量子障壁層を含む所定の量子井戸構造を有して形成される。これにより、単位積層体16中においては、量子井戸構造によるエネルギー準位構造であるサブバンド準位構造が形成される。
本構成例では、活性層15における1周期分の単位積層体16は、11個の量子井戸層161〜164、181〜187、及び11個の量子障壁層171〜174、191〜197が交互に積層された量子井戸構造として構成されている。また、このような積層構造において、4層の井戸層161〜164及び障壁層171〜174からなる積層部分が発光層17となり、7層の井戸層181〜187及び障壁層191〜197からなる積層部分が注入層18となっている。
発光層17の各半導体層のうちで、1段目の量子障壁層171が、前段の注入層と発光層17との間に位置し、前段の注入層から発光層への電子に対する注入障壁(injection barrier)層となっている。また、注入層18の各半導体層のうちで、1段目の量子障壁層191が、発光層17と注入層18との間に位置し、発光層から注入層への電子に対する抽出障壁(exit barrier)層となっている。
図20に示す単位積層体16は、そのサブバンド準位構造において、サブバンド間遷移による発光に関わる準位として、発光上準位(準位3)及び発光下準位(準位2)を有している。また、単位積層体16は、これらの発光上準位、下準位に加えて、上準位3よりも高いエネルギー準位である注入準位(準位4)、及び下準位2よりも低いエネルギー準位である緩和準位(準位1)を有している。
このようなサブバンド準位構造において、前段の注入層からの電子eは、注入障壁層171を介して、共鳴トンネル効果によって発光層17の注入準位4へと注入される。また、注入準位4に注入された電子は、例えば縦光学(LO)フォノン散乱などによって上準位3へと供給される。さらに、上準位3に供給された電子は下準位2へと発光遷移し、このとき、準位3及び準位2のサブバンド準位間のエネルギー差に相当する波長の光hνが生成される。また、下準位2へと遷移した電子は、LOフォノン散乱などによって緩和準位1へと緩和されて引き抜かれる。これにより、上準位3と下準位2との間でレーザ発振を実現するための反転分布が形成される。
また、緩和準位1に緩和された電子は抽出障壁層191及び注入層18を介して、後段の発光層の注入準位へと注入される。このような電子の注入、発光遷移、及び緩和を活性層15の複数の単位積層体16で繰り返すことにより、活性層15においてカスケード的な光の生成が起こる。すなわち、発光層17及び注入層18を多数交互に積層することにより、電子は積層体16をカスケード的に次々に移動するとともに、各積層体でのサブバンド間遷移の際に所定波長の光hνが生成される。また、このような光がレーザ2Aのレーザ共振器構造で共振されることにより、所定波長のレーザ光が生成される。
なお、活性層15の単位積層体16における半導体積層構造、量子井戸構造、及びサブバンド準位構造については、図20はその一例を示すものであり、具体的には上記した構成に限らずに、様々な構成を用いて良い。一般には、活性層15は、カスケード構造を有し、量子井戸構造でのサブバンド間遷移によって光を生成することが可能に構成されていれば良い。例えば、図20に示したサブバンド準位構造のうち、注入準位4、緩和準位1については、不要であれば設けない構成としても良い。また、発光層17、注入層18を構成する量子井戸層、障壁層の層数、各層厚についても、発光動作に必要な具体的な準位構造等に応じて適宜に設定して良い。
本実施形態による量子カスケードレーザ2Aでは、図19に模式的に示すように、活性層15で生成される所定波長の光hνに対するレーザ共振器構造において、共振方向(図中の左右方向)に互いに対向して、第1端面11、及び第2端面12の両端面が設けられている。このような構成において、基板10及び活性層15を含むレーザ2Aの素子本体部分が、図1、図2に示した構成における支持体100に相当する。また、レーザ2Aの共振器構造における第1、第2端面11、12が、それぞれ、反射制御膜を形成するためのレーザ素子端面である膜形成面101に相当する。
図19の構成では、これらの各レーザ素子端面について、第1端面11上に、第1反射制御膜20、及び保護膜28を端面側から順に形成している。また、第2端面12上に、同様に、第2反射制御膜30、及び保護膜38を端面側から順に形成している。第1、第2反射制御膜20、30は、それぞれ例えば反射防止(AR)膜、または高反射(HR)膜などの反射膜である。また、これらの反射制御膜20、30は、それぞれ、少なくとも1層のCeO膜を含んで構成されている。保護膜28、38は、反射制御膜20、30に含まれているCeO膜を保護するために最外層として設けられている。
本発明による反射制御素子は、上記した実施形態及び構成例に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、反射制御膜の構成については、上記した各構成例以外にも、具体的には様々な構成を用いて良い。また、保護膜が反射制御膜とは別個の層として設けられる場合、その保護膜としては上記したSi膜以外にも、他の材料による保護膜を用いても良い。
本発明は、光学素子、光学部材等の所定の面での中赤外領域の光に対する反射率制御を好適に実現することが可能な反射制御素子として利用可能である。
1A、1B…反射制御素子、100…支持体、101…膜形成面(所定の面)、510…反射制御膜、515…CeO膜、518…保護膜、520…反射制御膜、525…CeO膜、526…保護膜、110〜140、210、220…反射制御膜、118、148…保護膜、
2A…量子カスケードレーザ、10…半導体基板、11…第1端面、12…第2端面、13、14…電極、15…活性層、16…単位積層体、17…量子井戸発光層、18…注入層、20…第1反射制御膜、28…保護膜、30…第2反射制御膜、38…保護膜。

Claims (8)

  1. 支持体と、
    前記支持体の所定の面上に順に形成された、少なくとも1層のCeO膜を含み所定波長の光の反射を制御する反射制御膜、及び前記CeO膜を保護するための保護膜と
    を備えることを特徴とする反射制御素子。
  2. 前記保護膜は、前記反射制御膜に含まれており、前記反射制御膜の最外層となっていることを特徴とする請求項1記載の反射制御素子。
  3. 前記反射制御膜の最外層は、前記CeO膜であり、前記保護膜は、前記反射制御膜とは別個の層として前記CeO膜上に形成されていることを特徴とする請求項1記載の反射制御素子。
  4. 前記保護膜は、Si膜であることを特徴とする請求項3記載の反射制御素子。
  5. 前記反射制御膜は、単一の前記CeO膜から構成されていることを特徴とする請求項3または4記載の反射制御素子。
  6. 前記反射制御膜は、低屈折率膜である前記CeO膜と、所定の材料からなる高屈折率膜とが積層された多層膜であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の反射制御素子。
  7. 前記多層膜における前記高屈折率膜は、Ge膜であることを特徴とする請求項6記載の反射制御素子。
  8. 前記反射制御膜は、前記所定波長の光に対する反射防止膜、または前記所定波長の光を所定の反射率で反射する反射膜であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載の反射制御素子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2024053124A1 (ja) * 2022-09-09 2024-03-14 キヤノンオプトロン株式会社 多層膜、光学部材、眼鏡および多層膜の製造方法

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