JP2013247316A - 有機薄膜太陽電池およびその製造方法 - Google Patents

有機薄膜太陽電池およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 光電変換効率等の特性の向上を図るとともに、特性の経時的な劣化を防止し、長寿命化が可能な有機薄膜太陽電池を提供する。
【解決手段】 透明基板上に、少なくとも、正極と光電変換層と負極とをこの順で備え、前記負極はアルミニウムまたはアルミニウム合金とし、前記負極との界面近傍の前記光電変換層は、酸化珪素を含む酸化珪素含有光電変換層としたことを特徴とする有機薄膜太陽電池。および、透明基板上に正極となる金属酸化物層を形成する工程と、前記正極の表面に光電変換層を形成する工程と、前記光電変換層の表面近傍に酸化珪素を含む酸化珪素含有光電変換層を形成する工程と、前記酸化珪素含有光電変換層の表面に負極となる金属層を形成する工程とを有することを特徴とする有機薄膜太陽電池の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、有機薄膜太陽電池、および有機薄膜太陽電池の製造方法に関する。
近年、化石燃料に代わる新たなエネルギー源として、発電の際に二酸化炭素を全く排出しないクリーンなエネルギー源である太陽電池が注目されている。現在、市場で広く使用されている太陽電池は、主に、シリコン系太陽電池に代表されるいわゆる無機太陽電池である。
一方、有機半導体を用いた太陽電池、いわゆる有機太陽電池は、無機太陽電池に比べて、製造工程の容易であり、低コストで大面積化が可能であるという利点を有する。しかし、現在の有機太陽電池の発電効率や耐久性は、無機太陽電池に比べ低く、その改善が重要な課題となっている。
そして、現在は、発電効率の改善ほかの有機太陽電池の重要課題が解決できる技術が要望されており、その技術の研究開発は、世界規模で推進されている。また、発電層である光電変換層として共役系ポリマーとフラーレン誘導体との混合層を備えたバルクへテロ接合型の有機薄膜太陽電池は、近年特に注目されており、様々な研究機関で高効率な有機太陽電池を得るための技術開発がなされている。
有機薄膜太陽電池の実用化には、光を電気に効率良く変換し、その特性を長時間維持することが必要である。しかし、現状の有機薄膜太陽電池は、その特性を長時間維持することが困難であり、実用化を図る上で耐久性に問題がある。有機薄膜太陽電池の耐久性の問題は、大気中の酸素や水蒸気による電極や光電変換層の劣化が原因とされている。
そして、有機薄膜太陽電池の耐久性の向上を図る手段としては、例えば、特許文献1に開示されているように、大気よりも水分濃度が低く、かつ大気よりもオゾン濃度が低い空気雰囲気を有するハウジング内で光電変換層を形成する有機薄膜太陽電池の製造方法や、特許文献2に開示されているように、正極、光電変換層、金属酸化物層、および鉄よりも貴な金属を含む負極をこの順序で含む有機発電積層体を、基板としてのガスバリアフィルムとガスバリア層とで封止した有機薄膜太陽電池が提案されている。
特開2011−124281号公報 特開2012−4239号公報
しかしながら、有機薄膜太陽電池の耐久性を向上するために、上記の特許文献1および特許文献2に開示された技術を適用して酸素や水分を除去しても、特性の劣化は徐々に進行し、酸素や水分の除去のみでは、有機薄膜太陽電池の十分な耐久性が得られていないという課題がある。
本発明は、上記課題を解決するもので、光電変換効率等の特性の向上を図るとともに、特性の経時的な劣化を防止し、長寿命化が可能な有機薄膜太陽電池を提供することを目的とするものである。
上記課題のもとに、本発明者は、鋭意検討を行なった結果、光電変換層と負極との間の密着性も、有機薄膜太陽電池の特性の劣化の一要因であり、光電変換層と負極との間の密着性と結合力を改善することで、変換効率等の初期特性が改善できるとともに、経時的な低下を抑えることができ、有機薄膜太陽電池の変換効率の低下防止と寿命の向上が図れるとの知見を得た。本発明はこの知見に基づいて成されたものである。
上記目的を達成するために、本発明の有機薄膜太陽電池は、透明基板上に、少なくとも、正極と光電変換層と負極とをこの順で備え、前記負極はアルミニウムまたはアルミニウム合金とし、前記負極との界面近傍の前記光電変換層は、酸化珪素を含む酸化珪素含有光電変換層としたことを特徴とする。
そして、本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法は、透明基板上に正極となる金属酸化物層を形成する工程と、前記正極の表面に光電変換層を形成する工程と、前記光電変換層の表面近傍に酸化珪素を含む酸化珪素含有光電変換層を形成する工程と、前記酸化珪素含有光電変換層の表面に負極となる金属層を形成する工程とを有することを特徴とする。
本発明の有機薄膜太陽電池によれば、アルミニウムまたはアルミニウム合金である負極との界面近傍の光電変換層を、酸化珪素を含む酸化珪素含有光電変換層としたことにより、光電変換層と負極との間の密着性と結合力が向上し、変換効率等の初期特性が改善できるとともに、変換効率等の特性の経時的な低下を抑えることができ、有機薄膜太陽電池の特性の改善と寿命の向上を図ることができる。
そして、本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法によれば、比較的簡易な方法で、光電変換層と負極との間の密着性を向上させることができ、変換効率等の特性および寿命の向上が図れた有機薄膜太陽電池を製造することができる。
以下、本発明の有機薄膜太陽電池について、実施の形態を用いて詳細に説明する。ここで述べる実施の形態は本発明を実施するための一例であり、この記載内容に限定されるものではない。
本実施の形態の有機薄膜太陽電池は、透明基板と、透明基板の一表面に形成された正極と、正極上に形成されたホール輸送層と、ホール輸送層上に形成され光を吸収して発電する光電変換層と、光電変換層上に形成された負極とをこの順で備えている。そして、負極はアルミニウムまたはアルミニウム合金とし、光電変換層の負極との界面近傍は、光電変換層と負極との密着性を高め強固な接合を得るために、酸化珪素を含む酸化珪素含有光電変換層とした構成を備えている。
また、本実施の形態の有機薄膜太陽電池は、基板として透明基板を用いるとともに、正極を透明電極により構成してあり、透明基板の他表面を太陽光など外来光の入射面としている。以下、本実施の形態における有機薄膜太陽電池とその製造方法について、それぞれの構成毎に順に説明する。
透明基板としては、可視光に対して透明な樹脂基板を用いることができ、その厚みは12〜200μmの範囲にあることが好ましい。具体的な樹脂の種類としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)等のプラスチックが挙げられる。これらうち、有機薄膜太陽電池の製造工程において光電変換層を熱処理する際に、150℃程度の温度にさらされることから、耐熱性の低いプラスチックは好ましくなく、耐熱性に優れ、安価でかつ透明性と柔軟性も兼ね備えている等の観点から、特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナナフタレート(PEN)が好ましい。
透明基板の一表面に形成する正極は、透明導電膜により構成する。透明導電膜は、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)等の金属酸化物半導体の蒸着膜またはスパッタ膜などを用いることができ、特に、インジウムスズ酸化物(ITO)は比抵抗が小さく好ましい。太陽電池の電極としては、抵抗損失が少ないことが特に重要であるから、正極は2層以上積層しても良く、インジウムスズ酸化物(ITO)の透明導電膜と透明基板との間に、金属薄膜の細線パターンをグリッド状に設けた補助電極と組み合わせて正極を構成することも出来る。
そして、本実施の形態のように太陽光を、正極を透過させて光電変換層に入射させるためには、正極の光透過率を70%以上にすることが好ましい。さらに、正極は、シート抵抗を数百Ω/□以下とすることが好ましく、100Ω/□以下とすることが、特に好ましい。正極の膜厚は、光透過率、シート抵抗などの特性に応じて適宜設定すればよく、正極の材料により異なるが、割れや剥離の影響を少なくするためには、1μm以下とすることが好ましい。
正極上に形成され、正極と光電変換層との間に介在させるホール輸送層は、内部短絡に起因する光電変換層から正極への電子の漏れを抑制する電子ブロッキング効果や、正極との濡れ性を改善しホール移動効果を高める層として機能することが知られている。ホール輸送層の材料としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)が特に好ましいものとして挙げられる。
ホール輸送層としてのポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)は、スピンコート、ディップ、ドクターブレードなど種々の湿式塗布法で正極の上に形成することができる。ホール輸送層の厚さについては、有機導電性化合物は比較的電気抵抗が大きいために500nm以下であることが好ましく、特に10〜200nm程度が好ましい。これより膜厚が大きいとホール輸送層自体の電気抵抗に由来する内部抵抗が大きくなる。また、これより膜厚が小さいと電子ブロッキング効果やホール移動効果を高める層として機能を果たせなくなる。
ホール輸送層上に形成され光を吸収して発電する光電変換層は、例えば、N型半導体としてフラーレン誘導体であるフェニルC61酪酸メチルエステル(PCBM)と、P型半導体として導電性高分子材料の一種であるポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)との混合物からなる有機膜で形成される。混合比は、PCBMが50〜70wt%であることが好適である。N型半導体としてのフラーレン誘導体は、さらに高次なC70やC84を使用することもできるが、一般的なC61が価格面などから好適である。P型半導体としては、テトラベンゾポルフィリン等のポルフィリン化合物やフタロシアニン化合物を用いることもできる。
光電変換層は、スピンコート、ディップ、ドクターブレードなど種々の湿式塗布法で形成することができる。光電変換層の厚みとしては、太陽光を完全に吸収できる厚みが好ましいが、一方で厚い光電変換層は大きな電気抵抗を有するので、電気の取り出し効率が低下することが知られている。したがって、好ましい厚みの範囲は、100nm〜1000nmである。
そして、特に、本実施の形態の有機薄膜太陽電池においては、光電変換層と負極であるアルミニウムとの密着性を高め強固な接合を得るために、負極との界面近傍の光電変換層は、酸化珪素を含む酸化珪素含有光電変換層としている。光電変換層は、上記のようにハイドロカーボンである有機膜で形成されているため、アルミニウムとの親和性は無く密着性が悪い。しかし、負極であるアルミニウムとの界面近傍の光電変換層を、酸化珪素を含む酸化珪素含有光電変換層とすることにより、アルミニウムとの密着性が高まり、強固な接合が得られる。
酸化珪素含有光電変換層は、以下のようにして形成することができる。上記で形成した光電変換層の上に、パーヒドロポリシラザン(PHPS)の溶液を塗布し、これを乾燥する。これにより、パーヒドロポリシラザン(PHPS)を前駆体とする酸化珪素が光電変換層内に浸透分散して形成され、光電変換層の表面近傍(後に形成する負極であるアルミニウムとの界面近傍)ほど、酸化珪素の含有比率が高く分散した酸化珪素含有光電変換層が形成される。
また、酸化珪素含有光電変換層の他の形成方法としては、上記で形成した光電変換層の上に、上記で光電変換層の形成に用いた、フェニルC61酪酸メチルエステル(PCBM)とポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)との混合物にパーヒドロポリシラザン(PHPS)を添加した溶液を作製して塗布し、これを乾燥する。この方法でも、パーヒドロポリシラザン(PHPS)を前駆体とする酸化珪素が光電変換層内に分散して形成され、光電変換層の表面近傍(後に形成する負極であるアルミニウムとの界面近傍)ほど、酸化珪素の含有比率が高く分散した酸化珪素含有光電変換層が形成される。
これらにより、光電変換層の表面近傍(後に形成する負極であるアルミニウムとの界面近傍)ほど、酸化珪素の含有比率が高く分散した酸化珪素含有光電変換層が形成され、光電変換層の発電効率を損なわずに、光電変換層と負極であるアルミニウムとの密着性を向上させ、強固な接合を得ることができる。酸化珪素含有光電変換層の厚さは、50〜400nmの範囲であることが好ましい。これより厚さが大きいと酸化珪素含有光電変換層自体の電気抵抗に由来する内部抵抗が大きくなる。また、これより厚さが小さいと負極との密着性を高める層としての効果が小さくなる。
そして、本実施の形態の有機薄膜太陽電池においては、酸化珪素含有光電変換層の上に負極を備えている。負極は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を用いて金属膜として形成することが好ましい。アルミニウムの金属膜は真空蒸着法などで酸化珪素含有光電変換層上に堆積させて形成することができる。また、必要に応じて、アルミニウムの金属膜の上に銅や銀、金等のより比抵抗が小さい金属膜を積層することもできる。さらに、アルミニウムにこれらの金属を混合した合金の金属膜として負極を形成することもできる。
なお、本発明の有機薄膜太陽電池においては、透明基板上に正極、ホール輸送層、光電変換層、酸化珪素含有光電変換層、負極をこの順で備えた上記本実施の形態の有機薄膜太陽電池の構成に加えて、表面保護シート、封止層、裏面保護シートなどを備えた構成としても良い。
以下、本発明の有機薄膜太陽電池とその製造方法について、実施例に基づいて詳細に説明する。ただし、本発明は実施例に限定されるものではない。
〈実施例1〉
実施例1の有機薄膜太陽電池は、以下のようにして作製した。まず、透明基板として、125μmのポリエチレンナナフタレート(PEN)準備し、このフィルム上に、表面抵抗(シート抵抗)が15Ω/□となるようにインジウムスズ酸化物(ITO)膜を積層し、4cm×4cmのサイズに切り出した透明導電性フィルムを作製した。
次に、この透明導電性フィルムの3辺の端から約5mmの部分のインジウムスズ酸化物(ITO)膜を塩酸でエッチングして、絶縁性部分を作製した。この絶縁性部分が、後記におけるアルミニウムの負極の取り出し部分となる。また、エッチングされていない1辺の端から約5mmの部分のインジウムスズ酸化物(ITO)膜が、正極の取り出し部となる。
次に、上記の透明導電性フィルムのインジウムスズ酸化物(ITO)膜上に、正極の取り出し部となるITO膜の一部分を除いて縦横3cmの大きさで、ホール輸送層を形成した。ホール輸送層を形成する材料としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン/ポリスチレンスルホン酸溶液(PEDOT/PSS、ヘレウス社製CleviosTM PH1000)をエタノールで希釈した溶液を用いた。この溶液を、乾燥後の厚みが約100nmとなるようにバーコーターで塗布し、約90℃のオーブン中で溶媒を蒸発させて、ホール輸送層を形成した。
次に、上記のホール輸送層の上に、光電変換層を形成した。光電変換層を形成する材料として、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT、シグマアルドリッチ社製 445703−1G)の重量1に対して、フェニルC61酪酸メチルエステル(PCBM、フロンティアカーボン社製 ナノスペクトラE100)を重量比で0.6の割合で添加し、キシレン溶媒に分散させた溶液を作製した。このP3HTとPCBMの混合溶液を用いて、乾燥後の厚さが約100nmとなるようにバーコーターで塗布し、乾燥させて光電変換層を形成した。
続いて、上記光電変換層の表面近傍を、酸化珪素を含む酸化珪素含有光電変換層とした。酸化珪素含有光電変換層の形成は、以下のようにして行った。まず、酸化珪素含有光電変換層を形成する材料として、パーヒドロポリシリラザン(PHPS)を含有するコーティング剤アクアミカ(登録商標、AZエレクトロニックマテリアルズ社製)のPHPS固形分重量1に対して、上記で光電変換層の形成に用いたP3HTとPCBMの混合溶液を固形分重量比で27の割合で添加し、キシレン溶媒に分散させたPHPS濃度0.005wt%のPHPSとP3HTとPCBMとの混合キシレン溶液を調製した。この溶液を用いて、上記で形成した光電変換層の上に、乾燥後の厚さが約100nmとなるようにバーコーターで塗布し、約90℃のオーブン中で溶媒を蒸発させて、光電変換層の表面近傍に酸化珪素を含む酸化珪素含有光電変換層を形成した。
次に、正極の取り出し部となるITO膜の一部分をテープでマスキングし、真空蒸着装置により純度5Nのアルミニウムワイヤーを用いて、上記で形成した酸化珪素含有光電変換層の上に、約200nmの厚みでアルミニウムの蒸着し、負極を形成した。マスキングを取り外し、150℃のオーブンで、約5分間熱処理して、太陽電池セルのサイズが縦横3cmの実施例1の有機薄膜太陽電池を作製した。
〈実施例2〉
実施例2の有機薄膜太陽電池が、実施例1と異なる点は、光電変換層の乾燥後の厚さを約200nmとしたことと、酸化珪素含有光電変換層の形成に用いた材料のみであり、その他の条件および方法は、実施例1と全く同様にして、実施例2の有機薄膜太陽電池を作製した。酸化珪素含有光電変換層を形成する材料として、実施例1では、PHPS濃度0.005wt%のPHPSとP3HTとPCBMとの混合キシレン溶液を用いたが、実施例2では、混合溶液ではなく濃度0.005wt%のPHPSキシレン溶液を用いた。
〈比較例1〉
比較例1の有機薄膜太陽電池が、実施例1と異なる点は、光電変換層の乾燥後の厚さを約200nmとしたことと、酸化珪素含有光電変換層を形成していない点のみであり、その他の条件および方法は、実施例1と全く同様にして、比較例1の有機薄膜太陽電池を作製した。
〈比較例2〉
比較例2の有機薄膜太陽電池が、実施例1と異なる点は、光電変換層および酸化珪素含有光電変換層であり、その他の条件および方法は、実施例1と全く同様にして、比較例2の有機薄膜太陽電池を作製した。実施例1では、P3HTとPCBMの混合溶液を用いて光電変換層を形成し、この光電変換層の上に、PHPS濃度0.005wt%のPHPSとP3HTとPCBMとの混合キシレン溶液を用いて酸化珪素含有光電変換層を形成したが、比較例2では、実施例1の酸化珪素含有光電変換層の形成に用いた、PHPS濃度0.005wt%のPHPSとP3HTとPCBMとの混合キシレン溶液を用いて、層全体を酸化珪素含有光電変換層とした乾燥後の厚さが約200nmの光電変換層を形成した。
以上により作製した、実施例1、実施例2、比較例1、および比較例2の4種の有機薄膜太陽電池について、評価した。評価としては、太陽電池としての初期出力特性と寿命特性、および、負極の密着性を評価した。評価結果を、その試料No.とともに、(表1)に示す。
なお、太陽電池としての初期出力特性は、試料である有機薄膜太陽電池の透明基板側に、100Wのハロゲン電球の光を照射し、テスターで解放電圧と最大電流をそれぞれ測定し、この解放電圧と最大電流の値から出力電力を求めた。また、寿命特性は、100Wのハロゲン電球の光に100時間暴露した後に、上記と同様にして、出力電力を求めて評価した。
また、負極の密着性は、テープ剥離テストで評価した。具体的には、作製した有機薄膜太陽電池セルの負極であるアルミニウムの電極上に、セロハンテープを気泡が入らないように貼り付け、約90度の角度で引きはがした後に、セル上にアルミニウムの電極が残存した量で評価した。評価基準は、80%以上残存を◎、60〜80%を○、40〜60%を△、40%以下の残存を×とした。
Figure 2013247316
(表1)の評価結果に示したように、実施例1および実施例2の有機薄膜太陽電池は、負極であるアルミニウムとの界面近傍の光電変換層を、酸化珪素を含む酸化珪素含有光電変換層としたので、負極であるアルミニウムとの密着性が高まり、強固な接合が得られている。また同時に、負極の密着性を高めることにより、初期出力特性や寿命特性も向上している。
一方、酸化珪素含有光電変換層を形成していない比較例1の有機薄膜太陽電池は、初期の出力電力が小さく、また、負極であるアルミニウムの密着性が劣っている。つまり、比較例1の有機薄膜太陽電池は、負極であるアルミニウムの密着性が悪いために負極と光電変換層との間に接触不良が生じ、これによって電流の取り出し効率が低下して出力電力が小さくなったものと考えられる。
また、光電変換層全体を酸化珪素含有光電変換層で形成した比較例2の有機薄膜太陽電池は、負極の密着性は良好であるが、初期の出力電力が極端に低下した。これは、層全体にわたって酸化珪素が含まれた光電変換層としたために、光電変換効率が低下するとともに、光電変換層自体の電気抵抗が大きく、このために、電流の取り出し効率が低下して出力電力が極端に小さくなったものと考えられる。
本発明に係る有機薄膜太陽電池は、光電変換効率等の特性が向上するとともに、長寿命化が可能な有機薄膜太陽電池であり、加えて、比較的簡易なプロセスにより製造することが可能であり、安価な太陽電池として産業上有用である。

Claims (7)

  1. 透明基板上に、少なくとも、正極と光電変換層と負極とをこの順で備え、前記負極はアルミニウムまたはアルミニウム合金とし、前記負極との界面近傍の前記光電変換層は、酸化珪素を含む酸化珪素含有光電変換層としたことを特徴とする有機薄膜太陽電池。
  2. 酸化珪素含有光電変換層は、前記正極もしくは負極との界面の近接するほど、酸化珪素の含有比率が高くなる濃度分布を有していることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜太陽電池。
  3. 酸化珪素含有光電変換層の酸化珪素は、パーヒドロポリシラザンを前駆体として形成したことを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜太陽電池。
  4. 酸化珪素含有光電変換層の厚さは、50〜400nmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜太陽電池。
  5. 透明基板上に正極となる金属酸化物層を形成する工程と、前記正極側の表面に光電変換層を形成する工程と、前記光電変換層の表面近傍に酸化珪素を含む酸化珪素含有光電変換層を形成する工程と、前記酸化珪素含有光電変換層の表面に負極となる金属層を形成する工程とを有することを特徴とする有機薄膜太陽電池の製造方法。
  6. 酸化珪素含有光電変換層を形成する工程は、光電変換層の表面に、パーヒドロポリシラザンを含む塗料を塗布して、前記光電変換層の表面近傍に酸化珪素を含む酸化珪素含有光電変換層を形成することを特徴とする請求項5に記載の有機薄膜太陽電池の製造方法。
  7. 酸化珪素含有光電変換層を形成する工程は、光電変換層の表面に、パーヒドロポリシラザンを添加した有機光電変換組成物の塗料を塗布して、前記光電変換層の表面近傍に酸化珪素を含む酸化珪素含有光電変換層を形成することを特徴とする請求項5に記載の有機薄膜太陽電池の製造方法。


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