JP2013245383A - 溶接ロータおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】靱性を回復し、残留応力を低減し、かつ応力腐食割れを抑制する熱処理は、引張強度を低下させてしまい、ホイール部に必要な強度を確保することができない。
【解決手段】溶接ロータ1の溶接部3-1〜3-3およびその周辺部に対して局部表面熱処理を行った後、溶接後熱処理を実施して、接合部3-1〜3-3およびホイール部2の強度を確保しつつ残留応力を低下させ、かつ応力腐食割れを発生しにくくした。
【選択図】図2
【解決手段】溶接ロータ1の溶接部3-1〜3-3およびその周辺部に対して局部表面熱処理を行った後、溶接後熱処理を実施して、接合部3-1〜3-3およびホイール部2の強度を確保しつつ残留応力を低下させ、かつ応力腐食割れを発生しにくくした。
【選択図】図2
Description
本発明の実施形態は、溶接接合部およびホイール部の強度を確保しつつ残留応力を低下させ、かつ応力腐食割れが発生しにくい溶接ロータおよびその製造方法に関する。
蒸気タービンの低圧ロータには、一体型ロータ、あるいは軸方向に予め分割して製作されたタービンロータを互いに溶接して一体化した溶接ロータが採用されている。溶接ロータの場合、個々に分割して製作されたタービンロータを溶接により接合するので、一体型ロータに比べて、大型の溶解炉や製造設備の必要がないこと、溶接される各タービンロータは中空なので全体としての物量が減少することなどの利点が挙げられる。しかし、溶接時の熱影響は材料の特性を変化させる要因となる。
低圧ロータに使用される低合金鋼(例えば、3.5NiCrMoV鋼)は高温に加熱したのち急冷すると焼入れ状態となり、機械特性が変化し硬く脆い材料となる。従って、焼入れ状態となった後には焼き戻しといわれる熱処理が必要となる。溶接を行うとロータ溶接部はこの焼入れを何度も繰り返すことになるため、溶接熱影響部は硬くなるとともに靱性が低下する。従って、溶接ロータは焼き戻しに相当する熱処理、すなわち溶接後熱処理(PWHT;Post Weld Heat Treatment)を行う必要がある。また、溶接熱影響部には残留応力が発生するため、応力腐食割れ(SSC;Stress Corrosion Cracking)の発生を防ぐためにも溶接後熱処理は不可欠となる。
しかしながら、靱性を回復し、残留応力を低減し、かつ応力腐食割れを抑制する熱処理条件では、引張強度が低下し、ホイール部に必要な強度を確保することができなくなる。一方、強度を確保するための条件下で熱処理を実施すると、硬さを十分に下げることができず、応力腐食割れが発生し易くなる。また、温度分布によっては歪が生じてしまい、残留応力を再発生させる懸念もある。
そこで本発明は上記の課題を解決するために、蒸気タービンの低圧ロータを溶接によって製造する場合、溶接後の溶接部周辺に対して局部表面熱処理を行ってから溶接後熱処理を実施することによって、接合部およびホイール部の強度を確保しつつ残留応力を低下させ、かつ応力腐食割れが発生しにくい溶接ロータおよびその製造方法を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、本発明の実施形態は、複数のタービンロータを溶接によって互いに接合したのち、溶接部およびその周辺部に対して局部表面熱処理を実施し、その後さらに溶接後熱処理を行うことを特徴とする。
また、上記の目的を達成するために、本発明の実施形態は、複数のタービンロータを溶接によって互いに接合したのち、溶接部およびその周辺部に対して前記局部表面熱処理および溶接後熱処理を実施し、さらにその後当該溶接部およびその周辺部に対して加圧力と摩擦熱とから塑性流動を生じさせて表面改質コーティング層を生成するか、またはプラズマまたは高速フレーム溶射により表面改質コーティング層を生成することを特徴とする。
本発明によれば、溶接接合部およびホイール部の強度を確保しつつ残留応力が低下し、かつ応力腐食割れが発生しにくい溶接ロータおよびその製造方法を提供することができる。
以下、本発明に係る溶接ロータおよびその製造方法について、図面を参照して説明する。
[実施形態1]
図1は、分割して製作された複数のタービンロータを溶接により一体化した溶接ロータの概略図であり、各実施形態に共通する図である。図2は、本実施形態1に係る溶接ロータの局部表面熱処理方法および溶接後熱処理方法を実施する装置を模式的に描いた図であり、図3は3.5%ニッケルクロムモリブデンバナジウム(3.5NiCrMoV)の溶接継手の熱影響部の硬さとラーソンミラーパラメータとの関係を示す特性図である。
[実施形態1]
図1は、分割して製作された複数のタービンロータを溶接により一体化した溶接ロータの概略図であり、各実施形態に共通する図である。図2は、本実施形態1に係る溶接ロータの局部表面熱処理方法および溶接後熱処理方法を実施する装置を模式的に描いた図であり、図3は3.5%ニッケルクロムモリブデンバナジウム(3.5NiCrMoV)の溶接継手の熱影響部の硬さとラーソンミラーパラメータとの関係を示す特性図である。
(構成)
図1において、1は蒸気タービンの低圧ロータ等の溶接ロータであって、軸方向に4つに分割されて製作されたタービンロータ1-1、1-2、1-3および1-4を対向する端部3箇所を溶接して一体化したものである。各タービンロータ1-1、1-2、1-3および1-4の端部の外径は、ホイール部(動翼植え込み部と称する場合もある)2の相互間に形成された溝(ホイール溝)の内径と同等の寸法に形成され、かつ中央部分に僅かな窪み部を有するように形成されている。このため、タービンロータ1-1、1-2、1-3および1-4の対向する端部を溶接すると溶接部の内側に空洞部が形成される。図中、3-1、3-2および3-3はそれぞれ溶接部を示す。
図1において、1は蒸気タービンの低圧ロータ等の溶接ロータであって、軸方向に4つに分割されて製作されたタービンロータ1-1、1-2、1-3および1-4を対向する端部3箇所を溶接して一体化したものである。各タービンロータ1-1、1-2、1-3および1-4の端部の外径は、ホイール部(動翼植え込み部と称する場合もある)2の相互間に形成された溝(ホイール溝)の内径と同等の寸法に形成され、かつ中央部分に僅かな窪み部を有するように形成されている。このため、タービンロータ1-1、1-2、1-3および1-4の対向する端部を溶接すると溶接部の内側に空洞部が形成される。図中、3-1、3-2および3-3はそれぞれ溶接部を示す。
図2は図1で示した3箇所の溶接部3-1、3-2、3-3のうちの一箇所の溶接部3-1に対して本実施形態1による局部表面熱処理方法および溶接後熱処理方法を実施する装置を模式的に描いたもので、溶接部3-1およびその軸方向の周辺部に対して局部表面熱処理による表面改質を行なうために、ホイール溝内の溶接部3-1の外周面に高周波誘導加熱装置5の高周波加熱コイル6を円筒状に巻き、この高周波加熱コイル6に整合用トランス7を介して高周波電源8に接続する。この高周波電源8の内部構成は特に図示していないが、交流電源と高周波インバータとを備えており、高周波インバータから出力された高周波の電力を整合用トランス7に供給するようになっている。
そして、溶接部3-1の外周面と高周波加熱コイル6との間に温度センサー例えば熱電対9の検出部9aを挟むように設置して溶接部3-1の温度を計測するようにしている。熱電対9の出力信号は高周波電源8に帰還されることにより予め設定されている設定温度と比較され、整合用トランス7から高周波加熱コイル6に供給する電力を制御する。これにより、溶接部3-1およびその周辺部は予め設定した温度が維持されるように高周波誘導加熱される。
一方、溶接部3-1の両側に位置するホイール部2には、溶接後熱処理(PWHT)を行なうための電気熱処理炉あるいはバンドヒータ等の電気加熱装置4-1、4-2を設置している。
(作用)
(i)溶接部およびその周辺部に対する局部表面熱処理方法。
まず、溶接部およびその周辺部に対する表面改質を行うために、熱処理範囲(高周波誘導加熱の電流浸透深さ)δを表面から0.1mm以上0.4mm以下の深さに設定する。
(i)溶接部およびその周辺部に対する局部表面熱処理方法。
まず、溶接部およびその周辺部に対する表面改質を行うために、熱処理範囲(高周波誘導加熱の電流浸透深さ)δを表面から0.1mm以上0.4mm以下の深さに設定する。
ここで、0.1mmとは応力腐食割れき裂が発生したか否かの判断可能な1粒界分の深さであり、また0.4mmとは亀裂検出限界長さである。高周波誘導加熱の電流浸透深さδは、次式(1)を用いて算出可能であるため、この式(1)を用いて条件を決定する。このときの周波数fは50〜3000(Hz)とする。
局部表面熱処理の温度は、焼戻し温度以上でかつA1変態点以下とし、処理時間は、ラーソンミラーパラメータ(L.M.P)[P=T(C+logtr)]を用いて決定する。ここで、Tは絶対温度(K)、Cは材料定数、trは処理時間(h)である。このときの熱処理影響部の硬さは、脆性破壊が懸念される硬さ(0.2%耐力:1000〜1100MPa)まで下げることを目標とする。
図3は、3.5%ニッケルクロムモリブデンバナジウム鋼(3.5NiCrMoV鋼)の溶接継手の熱影響部の硬さ(HA1)とラーソンミラーパラメータ(L.M.P)との関係を示す図である。図3の例によれば、硬さを例えば350HVまで下げる場合、ラーソンミラー値を18200程度にすればよいことがわかる。仮に熱処理温度を640℃と選定した場合、前記のラーソンミラーパラメータ(L.M.P)[P=T(C+logtr)]を用いて処理時間は1時間程度と算出することができる。
(ii)溶接部およびその周辺部に対する溶接後熱処理(PWHT)方法。
上記のようにして蒸気タービンの低圧ロータ1の溶接部3-1およびその周辺部に対して局部表面熱処理による表面改質を行った後に、溶接後熱処理(PWHT)を行う。この溶接後熱処理は、高周波誘導加熱装置5および電気加熱装置4-1、4-2を用いてホイール部2の強度を低下させないように、母材製作時の焼き戻し温度を電気加熱装置4-1、4-2の最高温度として溶接部3-1周辺部を加熱して行う。
同様にして、他の溶接部3-2、3-3およびその周辺部に対しても、局部表面熱処理による表面改質および溶接後熱処理を行う。
上記のようにして蒸気タービンの低圧ロータ1の溶接部3-1およびその周辺部に対して局部表面熱処理による表面改質を行った後に、溶接後熱処理(PWHT)を行う。この溶接後熱処理は、高周波誘導加熱装置5および電気加熱装置4-1、4-2を用いてホイール部2の強度を低下させないように、母材製作時の焼き戻し温度を電気加熱装置4-1、4-2の最高温度として溶接部3-1周辺部を加熱して行う。
同様にして、他の溶接部3-2、3-3およびその周辺部に対しても、局部表面熱処理による表面改質および溶接後熱処理を行う。
(効果)
以上述べたように、本実施形態1によれば、複数のタービンロータを溶接によって互いに接合したのち、溶接部3-1〜3-3およびその周辺部に対して高周波誘導加熱装置5を使用して局部表面熱処理による表面改質を行い、さらにその後に高周波誘導加熱装置5と電気加熱装置4-1、4-2とを用いて溶接後熱処理(PWHT)を実施するようにしたので、溶接による接合部およびホイール部の強度を確保しつつ残留応力が低下し、かつ応力腐食割れが発生しにくい溶接ロータを製造することができる。
以上述べたように、本実施形態1によれば、複数のタービンロータを溶接によって互いに接合したのち、溶接部3-1〜3-3およびその周辺部に対して高周波誘導加熱装置5を使用して局部表面熱処理による表面改質を行い、さらにその後に高周波誘導加熱装置5と電気加熱装置4-1、4-2とを用いて溶接後熱処理(PWHT)を実施するようにしたので、溶接による接合部およびホイール部の強度を確保しつつ残留応力が低下し、かつ応力腐食割れが発生しにくい溶接ロータを製造することができる。
しかも、ホイール溝底部に円筒状に巻かれた高周波加熱コイル6によって溶接部3-1〜3-3とその周辺部に対する局部表面熱処理および溶接後熱処理の温度制御を正確に行うことができる。
[実施形態2]
以下、本発明の実施形態2について、図4を参照して説明する。
図4は実施形態2に係る溶接ロータの局部表面熱処理方法および溶接後熱処理方法を実施する装置を模式的に描いた図である。
以下、本発明の実施形態2について、図4を参照して説明する。
図4は実施形態2に係る溶接ロータの局部表面熱処理方法および溶接後熱処理方法を実施する装置を模式的に描いた図である。
本実施形態2が前述した実施形態1と異なる点は、高周波誘導加熱装置5に替えて、炎焼入れ装置10を設置し、火炎の熱による表面改質を行うようにした点であり、溶接部の両側に位置するホイール部2を包囲して溶接後熱処理(PWHT)を行なうための電気加熱装置4-1、4-2については実施形態1と変わらない。
本実施形態2で採用した炎焼入れ装置10は、溶接部3-1およびその周辺部に対してアセチレンガス、プロパンガスなどと酸素との火炎を放射するバーナー11と、このバーナー11にアセチレンガスおよび酸素の混合ガスを供給するためのアセチレンガスやプロパンガスを充填したガスボンベ12および酸素を充填した酸素ボンベ13と、火炎の温度を制御する制御装置14で構成されている。
本実施形態2の場合も、溶接部3-1の近傍に熱電対9の検出部9aを取付け、熱電対9で検出した温度の信号を制御装置14に帰還し、溶接部3-1周辺部の温度が予定の温度になるように制御装置14でアセチレンガスおよび酸素の混合ガス量を制御するようにしている。この場合の熱処理範囲、処理時間は前述した実施形態1と同様である。
本実施形態2では、炎焼入れ装置10により溶接部3-1およびその周辺部に対して局部表面熱処理を行なう。そしてその後、電気加熱装置4-1、4-2および炎焼入れ装置10を用いてホイール部2の強度を低下させないように母材製作時の焼き戻し温度を電気加熱装置4-1、4-2の最高温度として溶接部3-1の周辺部を加熱して溶接後熱処理(PWHT)を行う。
以上述べたように、本実施形態2によれば、複数のタービンロータを溶接によって互いに接合したのち、溶接部3-1およびその周辺部に対して炎焼入れ装置10を使用して局部表面熱処理による表面改質を行い、さらにその後に炎焼入れ装置10と電気加熱装置4-1、4-2を用いて溶接後熱処理(PWHT)を実施するようにしたので、溶接による接合部およびホイール部の強度を確保しつつ残留応力が低下し、かつ応力腐食割れが発生しにくい溶接ロータを製造することができる。
[実施形態3]
図5は実施形態3に係る溶接ロータの局部表面熱処理方法および溶接後熱処理方法を実施する装置を模式的に描いた図である。
図5は実施形態3に係る溶接ロータの局部表面熱処理方法および溶接後熱処理方法を実施する装置を模式的に描いた図である。
本実施形態3が、前述した実施形態1と異なる点は、高周波誘導加熱装置5に替えて、レーザ熱処理装置15を設置してレーザ熱による表面改質を行うようにした点であり、溶接部の両側に位置するホイール部2を包囲して溶接後熱処理(PWHT)を行なうための電気加熱装置4-1、4-2については変わらない。
本実施形態3によるレーザ熱処理装置15は、レーザヘッド16、CO2等のガスを充填したガスボンベ18、レーザ発信器19で構成されている。17はレーザビームである。
本実施形態3の場合も、溶接部3-1の近傍に熱電対9の検出部9aを取付け、この熱電対9で検出した温度信号をレーザ発信器19に帰還し、溶接部3-1周辺部の温度が予定の温度になるようにレーザ発信器19を制御して溶接部3-1に照射するレーザビーム17の強度を制御するようにしている。この場合の熱処理範囲、処理時間も前述した実施形態1と同様である。
本実施形態3では、レーザ熱処理装置15により溶接部3-1およびその周辺部に対して局部表面熱処理を行なう。そしてその後、電気加熱装置4-1、4-2およびレーザ熱処理装置15を用いてホイール部2の強度を低下させないように母材製作時の焼き戻し温度を電気加熱装置4-1、4-2の最高温度として溶接部3-1の周辺部を加熱し、溶接後熱処理(PWHT)を行う。
以上述べたように、本実施形態3によれば、複数のタービンロータを溶接によって互いに接合したのち、溶接部3-1およびその周辺部に対してレーザ熱処理装置15を使用して局部表面熱処理による表面改質を行い、さらにその後にレーザ熱処理装置15と電気加熱装置4-1、4-2を用いて溶接後熱処理(PWHT)を実施するようにしたので、溶接による接合部およびホイール部の強度を確保しつつ残留応力が低下し、かつ応力腐食割れが発生しにくい溶接ロータを製造することができる。
[実施形態4]
図6は本実施形態4に係る溶接ロータの表面改質コーティングを実施する装置を模式的に描いた図であり、特に図6(a)は局部表面熱処理および溶接後熱処理後に表面改質コーティングを行った溶接ロータの断面図、図6(b)は局部表面熱処理および溶接後熱処理を実施した部分に表面改質コーティングを行なう様子を描いた図である。
図6は本実施形態4に係る溶接ロータの表面改質コーティングを実施する装置を模式的に描いた図であり、特に図6(a)は局部表面熱処理および溶接後熱処理後に表面改質コーティングを行った溶接ロータの断面図、図6(b)は局部表面熱処理および溶接後熱処理を実施した部分に表面改質コーティングを行なう様子を描いた図である。
本実施形態4は、局部表面熱処理および溶接後熱処理を実施した後に、耐応力腐食割れ性を向上させるために、溶接部とその周辺部に対する表面改質コーティング層Cの生成に摩擦攪拌を用いることを特徴とする溶接ロータ熱処理方法に関する。
20は、本実施形態4で新たに設けた摩擦攪拌装置であり、回転して摩擦熱を発生させる回転ツール21と、この回転ツール21を支える加圧用支持板22と、回転ツール21に所定の圧力を加える加圧装置23と、溶接部3-1の近傍に取付けた熱電対9の検出部9aの検出温度を帰還させて回転ツール21への加圧力を制御して摩擦熱を制御する制御装置24とから構成されている。
本実施形態4では、局部表面熱処理および溶接後熱処理を実施した後に、溶接部3-1に摩擦攪拌装置20を設置し、回転ツール21を加圧して回転させることにより摩擦熱を生じさせ、このときの加圧力と摩擦熱とから溶接部3-1およびその近傍部の表面に塑性流動を生じさせ、これにより溶接部3-1表面に肉盛コーティング層Cを生成する。そして、肉盛コーティング後は研磨等により溶接部3-1とその周辺部の表面高さを調整する。なお、このときの回転ツール21の材質は母材と同じ低合金鋼(例えば、3.5NiCrMoV)か耐食性が良好なオーステナイト系ステンレス鋼(例えば、SUS304またはSUS316L)とする。
本実施形態4によれば、局部表面熱処理および溶接後熱処理を実施した後に、回転ツール21を回転させ加圧力と摩擦熱とから溶接部3-1およびその近傍部の表面に塑性流動を生じさせて、母材と同じ低合金鋼か、耐食性が良好なオーステナイト系ステンレス鋼で溶接部3-1の表面に肉盛コーティング層Cを生成するようにしたので、耐応力腐食割れ性を向上させることができる。
[実施形態5]
図7は本実施形態5に係る溶接ロータの表面改質コーティングを実施する装置を模式的に描いた図であり、特に図7(a)は局部表面熱処理および溶接後熱処理後に表面改質コーティングを行った溶接ロータの断面図、図7(b)は局部表面熱処理および溶接後熱処理を実施した部分に表面改質コーティングを行なう様子を描いた図である。
図7は本実施形態5に係る溶接ロータの表面改質コーティングを実施する装置を模式的に描いた図であり、特に図7(a)は局部表面熱処理および溶接後熱処理後に表面改質コーティングを行った溶接ロータの断面図、図7(b)は局部表面熱処理および溶接後熱処理を実施した部分に表面改質コーティングを行なう様子を描いた図である。
本実施形態5は、局部表面熱処理および溶接後熱処理を実施した後に、耐応力腐食割れ性を向上させるために、溶接部とその周辺部に対する表面改質コーティング層Cの生成にプラズマまたは高速フレーム溶射を用いることを特徴とする溶接ロータ熱処理方法に関する。
25は本実施形態5で新たに設けたプラズマまたは高速フレーム溶射装置であり、溶射ガン26、粉末供給装置27、燃焼ガスボンベ28、制御装置29、冷却装置30で構成されている。なお、実施形態を制御する温度は溶接部3-1の近傍に熱電対9の検出部9aを取り付けて測定する。
本実施形態5では、局部表面熱処理および溶接後熱処理を実施した後に、溶接部3-1に溶射ガン26より、粉末状の低合金鋼やオーステナイト系ステンレス鋼(例えば、SUS304またはSUS316L)を噴出し、溶接部3-1の表面に表面改質コーティング層Cを生成する。
本実施形態5によれば、局部表面熱処理および溶接後熱処理を実施した後に、溶接部3-1とその周辺部に対して母材と同じ低合金鋼か耐食性が良好なSUS304またはSUS316Lでプラズマまたは高速フレーム溶射を行ない、表面改質コーティング層Cを生成するようにしたので、耐応力腐食割れ性を向上させることができる。
以上、本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態はその他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1…ロータ、1-1〜1-4…分割ロータ、2…ホイール部、3-1〜3-3…溶接部、4-1,4-2…電気加熱装置(電気熱処理炉あるいはバンドヒータ)、5…高周波誘導加熱装置、6…高周波加熱コイル、7…整合用トランス、8…高周波電源装置、9…熱電対、9a…検出部、10…炎焼入れ装置、11…バーナー、12…ガスボンベ、13…酸素ボンベ、14…制御装置、15…レーザ熱処理装置、16…レーザヘッド、17…レーザビーム、18…ガスボンベ、19…レーザ発信器、20…摩擦攪拌装置、21…回転ツール、22…加圧用支持板、23…加圧装置、24…制御装置、25…プラズマまたは高速フレーム溶射装置、26…溶射ガン、27…粉末供給装置、28…燃焼ガス、29…制御装置、30…冷却装置、C…表面改質コーティング層。
Claims (5)
- 複数のタービンロータを溶接によって互いに接合したのち、溶接部およびその周辺部に対して局部表面熱処理を実施し、その後さらに溶接後熱処理を行うことを特徴とする溶接ロータ製造方法。
- 前記局部表面熱処理を、高周波加熱装置、炎焼入れ装置、レーザ熱処理装置から選択された装置により実施することを特徴とする請求項1記載の溶接ロータ製造方法。
- 前記溶接部およびその周辺部に対して前記局部表面熱処理および溶接後熱処理を実施した後に、当該溶接部およびその周辺部に対して、加圧力と摩擦熱とから塑性流動を生じさせて表面改質コーティング層を生成するか、またはプラズマまたは高速フレーム溶射により表面改質コーティング層を生成することを特徴とする請求項2に記載の溶接ロータ製造方法。
- 前記表面改質コーティング層の材料として、ロータと同等の低合金鋼またはSUS304あるいはSUS316Lを使用することを特徴とする請求項3に記載の溶接ロータ製造方法。
- 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法により製造されたことを特徴とする溶接ロータ。
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