以下、以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明が適用されたドーム型カメラ調整システムの構成を示した図である。
同図に示すように本システムは、ドーム型カメラ10と、調整治具12とコントローラ14(調整治具12とコントローラ14とからなる調整装置)とを備え、監視等を行う撮影場所の天井や壁等の設置面にドーム型カメラ10が設置され、所定の撮影方向及び撮影画角での動画撮影又は静止画撮影が行われるようになっている。また、ドーム型カメラ10の設置作業時や設置後のメンテナンス作業時等において、着脱可能な調整治具12をドーム型カメラ10に装着し、調整治具12にケーブルで接続されたコントローラ14からの遠隔操作によってドーム型カメラ10の撮影方向(後述のカメラ本体の姿勢(向き))の調整作業を行うことができるようになっている。
このシステムによれば、天井等のモニタを近くにおいて作業をすることが困難な場所にドーム型カメラ10を設置した場合に、容易に配備することができる場所に置かれた不図示のモニタ(又は運用時に使用するモニタ)とドーム型カメラ10とをケーブルで接続すると共に、ドーム型カメラ10に調整治具12を装着し、そのモニタの画面を観察できる場所でドーム型カメラ10の撮影映像を確認しながらコントローラ14を使用してドーム型カメラ10の撮影方向を調整することができる。したがって、作業者が1人であっても上記の調整作業を行うことができるようになる。また、詳細を後述するようにドーム型カメラ10のドームカバーを取り外すことなく調整治具12をドーム型カメラ10に装着することができ、調整治具12をドーム型カメラ10に装着する作業が容易であり、かつ、上記の調整作業時において運用時と同様のドームカバーを介して撮影された映像で姿勢調整の良否を判断することができるようになる。
図2は、上記ドーム型カメラ10の構成を示した斜視図である。
同図に示すようにドーム型カメラ10は、カメラ本体20と基台部22とドームカバー24とから構成されている。
カメラ本体20は、被写体像を結像する光学系(レンズ鏡筒)や光学系により結像された被写体像を画像信号(映像信号)として出力する撮像素子及び処理回路等を備えており、このカメラ本体20によって被写体の映像(動画又は静止画)が撮影されるようになっている。
また、カメラ本体20は基台部22の前面側に支持されており、基台部22の背面側が撮影場所の天井等の設置面に固着されることによってカメラ本体20が所定の設置場所に設置されるようになっている。
基台部22の前面側には、半球状で透明のドームカバー24が着脱可能に取り付けられ、ドームカバー24と基台部22とで囲まれた内部の空間にカメラ本体20が収容されている。これによって、カメラ本体20が外部の影響(雨、風、破壊行為等)を受けないように保護されるようになっている。
なお、基台部22は、ドームカバー24が装着される本体部22Aと、その本体部22Aの一部から側方に突出した治具装着部22Bとを有しており、基台部22の治具装着部22Bには、詳細を後述するように図1の調整治具12が着脱可能に装着されるようになっている。
基台部22は、カメラ本体20を本体部22Aとドームカバー24とで囲まれた内部の空間内で支持すると共に、カメラ本体20の姿勢(向き)を可変する姿勢調整機構(パン調整機構及びチルト調整機構)を有する支持機構26を備えており、その姿勢調整機構による姿勢調整によって上記のようにドーム型カメラ10の撮影方向の調整を行うことができるようになっている。
基台部22におけるカメラ本体20の支持機構26について説明する。図3は、基台部22の支持機構26のみを抽出して示した斜視図である。なお、以下、パン方向とは、基台部22が固設される設置面(基台部22の背面)に対して垂直のパン軸の周りの方向、即ち、設置面に対して水平方向にカメラ本体20を回動させる方向をいい、チルト方向とは、基台部22が固設される設置面に対して水平のチルト軸の周りの方向、即ち、設置面に対して垂直方向にカメラ本体20を回動させる方向をいうものとする。
図2及び図3に示すようにカメラ本体20の支持機構26は、カメラ本体20をチルト方向に回動可能に支持するチルト回転台30と、チルト回転台30を介してカメラ本体20をパン方向に回動可能に支持するパン回転台32とを備えている。
チルト回転台30は、図3に示すように設置面(基台部22の筐体23の背面部23A)に対して平行に配置される水平部34と、水平部34の両端部から起立した1対の起立部36、38とにより門型に一体形成されており、水平部34がパン回転台32の前端面32Aに固設されることによってチルト回転台30がパン回転台32に支持されている。
起立部36、38の対向位置には各々、棒状のチルト軸部材39(一方のみ破線で図示)がその中心軸周りに回動可能に軸支されており、それらのチルト軸部材39の内側端部にカメラ本体20が固定されている。したがって、カメラ本体20がそれらのチルト軸部材39の中心軸をチルト軸としてチルト方向に回動可能にチルト回転台30に支持されている。
パン回転台32は、円柱状に形成されており、基台部22の筐体23の背面部23Aに支持されると共に、その中心軸が設置面(背面部23A)に対して垂直となるように配置されて中心軸周りの方向に回動可能に支持されている。したがって、カメラ本体20がチルト回転台30及びパン回転台32を介して基台部22(本体部22A)の筐体23の背面部23Aに支持されると共に、パン回転台32の中心軸をパン軸としてパン方向に回動可能に支持されている。
なお、調整治具12をドーム型カメラ10に装着してカメラ本体20の姿勢調整を行う方法以外に、ドームカバー24を基台部22から取り外してカメラ本体20を直接把持し、カメラ本体20に対してパン方向とチルト方向の各々の方向に回転力を加えることによってもカメラ本体20をパン方向及びチルト方向に回動させて姿勢調整を行うことができる。
続いて、支持機構26に具備される姿勢調整機構について説明すると、姿勢調整機構は、パン回転台32を回動させてカメラ本体20のパン方向に関する姿勢を調整するパン調整機構と、チルト回転台30のチルト軸部材(起立部36に回動可能に軸支されたチルト軸部材)を回動させてカメラ本体20のチルト方向に関する姿勢を調整するチルト調整機構とを備えている。
まず、パン調整機構について説明すると、図2及び図3に示すように基台部22の治具装着部22Bにおける筐体23の内部には、パン回転台32の側部となる位置にパン用動力伝達部材40が配置されている。このパン用動力伝達部材40は、筐体23の背面部23Aに支持されると共に、背面部23A(設置面)に対して垂直方向の軸を回転軸として水平方向に回動可能に支持されている。
パン用動力伝達部材40は、円板状の第1ギヤ形成部42と第1ギヤ形成部42の中心部から突出したモータ連結部44とから形成されている。
モータ連結部44には、六角穴44Aが形成されており、その六角穴44Aに図3のように連結用六角軸82が嵌入されることによって、モータ連結部44と連結用六角軸82が連結されるようになっている。
モータ連結部44は、図2のように治具装着部22Bにおける筐体23の前面部23Bの開口から外部に突出して配置されている。一方、連結用六角軸82は後述のように図1に示した調整治具12に設けられ、図3のように調整治具12に内蔵されたパンモータ80の出力軸80Aに固着されている。そして、調整治具12をドーム型カメラ10の治具装着部22Bに装着することによってモータ連結部44に連結されるようになっている。
したがって、調整治具12をドーム型カメラ10の治具装着部22Bに装着することによってパンモータ80の出力軸80Aが連結用六角軸82及びモータ連結部44を介してパン用動力伝達部材40に連結されるようになっている。これによってパンモータ80の動力によりパン用動力伝達部材40が回動し、第1ギヤ形成部42が回動するようになっている。
第1ギヤ形成部42の外周面には、第1ギヤ(歯車)42Aが形成されており、第1ギヤ形成部42は、その第1ギヤ42Aを介してパン回転台32の第2ギヤ形成部46に連結されている。
第2ギヤ形成部46は、パン回転台32の側面外周部に径方向に突出して円環状に形成されており、その外周面に第2ギヤ46Aが形成されている。そして、その第2ギヤ46Aが第1ギヤ42Aと歯合している。したがって、これらの第1ギヤ42Aと第2ギヤ46Aの歯合によって第1ギヤ形成部42と第2ギヤ形成部46とが連結され、第1ギヤ形成部42が回動すると第2ギヤ形成部46が回動し、これに連動してパン回転台32が回動してカメラ本体20がパン方向に回動するようになっている。
以上のパン調整機構によれば、ドーム型カメラ10の治具装着部22Bに調整治具12を装着してパンモータ80を駆動することにより、パンモータ80の動力がパン用動力伝達部材40(モータ連結部44及び第1ギヤ形成部42)及び第2ギヤ形成部46からなる動力伝達機構を介してパン回転台32に伝達する。そして、その動力でパン回転台32が回動することによって、カメラ本体20がパン方向に回動するようになっている。したがって、パンモータ80を駆動することによってカメラ本体20のパン方向に関する姿勢調整を行うことができるようになっている。
なお、パンモータ80の動力をカメラ本体20のパン方向の回転力として伝達する動力伝達機構の構成は上記実施の形態のものに限らずどのような構成であってもよい。また、パンモータ80とパン用動力伝達部材40とを連結する手段も任意の手段を採用することができる。
次に、チルト調整機構について説明すると、図2及び図3に示すように基台部22の治具装着部22Bにおける筐体23の内部には、パン回転台32の側部となる位置にチルト用第1動力伝達部材50が配置されている。このチルト用第1動力伝達部材50は、筐体23の背面部23Aに支持されると共に、背面部23A(設置面)に対して垂直方向の軸を回転軸として水平方向に回動可能に支持されている。
チルト用第1動力伝達部材50は、円板状の第1ギヤ形成部52と第1ギヤ形成部52の中心から突出したモータ連結部54とから形成されている。
モータ連結部54には、パン調整機構のモータ連結部44と同様に、六角穴54Aが形成されており、その六角穴54Aに図3のように連結用六角軸92が嵌入されることによって、モータ連結部54と連結用六角軸92が連結されるようになっている。
モータ連結部54は、図2のように治具装着部22Bにおける筐体23の前面部23Bの開口から外部に突出して配置されている。一方、連結用六角軸92は後述のように図1に示した調整治具12に設けられ、図3のように調整治具12に内蔵されたチルトモータ90の出力軸90Aに固着されている。そして、調整治具12をドーム型カメラ10の治具装着部22Bに装着することによってモータ連結部54に連結されるようになっている。
したがって、調整治具12をドーム型カメラ10の治具装着部22Bに装着することによってチルトモータ90の出力軸90Aが連結用六角軸92及びモータ連結部54を介してチルト用第1動力伝達部材50に連結されるようになっている。これによってチルトモータ90の動力によりチルト用第1動力伝達部材50が回動し、第1ギヤ形成部52が回動するようになっている。
第1ギヤ形成部52の外周面には、第1ギヤ52Aが形成されており、第1ギヤ形成部52は、その第1ギヤ52Aを介してチルト用第2動力伝達部材(第2ギヤ形成部)56に連結されている。
チルト用第2動力伝達部材(第2ギヤ形成部)56は、円筒状に形成されてパン回転台32の側面外周部に回動可能に外嵌されており、パン調整機構の第2ギヤ形成部46よりも前側に配置されている。そのチルト用第2動力伝達部材56の外周面には第2ギヤ56Aが形成されている。そして、その第2ギヤ56Aが第1ギヤ形成部52の第1ギヤ52Aに歯合している。したがって、これらの第1ギヤ52Aと第2ギヤ56Aの歯合によって第1ギヤ形成部52とチルト用第2動力伝達部材56とが連結され、第1ギヤ形成部52が回動すると、パン回転台32の周り(パン軸の周り)をチルト用第2動力伝達部材56が回動するようになっている。
また、チルト用第2動力伝達部材56には、第2ギヤ56Aを介してチルト用第3動力伝達部材58の第3ギヤ形成部60が連結されている。チルト用第3動力伝達部材58は、設置面に対して垂直方向の軸を中心軸とする円柱状の軸部(不図示)を有し、その軸部がチルト回転台30の起立部36から外側に突設された支持部30Aに回動可能に軸支されている。その軸部の後側端部には円板状(円柱状)の第3ギヤ形成部60が取り付けられ、前側端部には円錐台状の第4ギヤ形成部62が取り付けられている。
第3ギヤ形成部60の外周面には、第3ギヤ60Aが形成されており、その第3ギヤ60Aがチルト用第2動力伝達部材56の第2ギヤ56Aに歯合している。したがって、これらの第2ギヤ56Aと第3ギヤ60Aの歯合によってチルト用第2動力伝達部材56と第3ギヤ形成部60とが連結され、チルト用第2動力伝達部材56が回動すると、第3ギヤ形成部60が回動し、これに連動してチルト用第3動力伝達部材58が回動して第4ギヤ形成部62が回動するようになっている。
第4ギヤ形成部62の外周面(側面)には、第4ギヤ(かさ歯車)62Aが形成されており、第4ギヤ形成部62は、その第4ギヤ62Aを介して第5ギヤ形成部64に連結されている。
第5ギヤ形成部64は、円錐台状に形成されており、チルト回転台30の一方の起立部36に軸支されたチルト軸部材39(図3の破線)の外側端部に固着されている。チルト軸部材39は、その中心軸がチルト軸となる棒状部材であり、上記の起立部36に形成された軸孔を貫通して配置され、内側端部が上記のようにカメラ本体20に固定されている。
第5ギヤ形成部64の外周面(側面)には、第5ギヤ(かさ歯車)64Aが形成されており、その第5ギヤ64Aが第4ギヤ形成部62の第4ギヤ62Aに歯合している。したがって、これらの第4ギヤ62Aと第5ギヤ64Aの歯合によって第4ギヤ形成部62と第5ギヤ形成部64とが連結され、第4ギヤ形成部62が回動すると、第5ギヤ形成部64が回動し、これと連動してチルト軸部材が回動してカメラ本体20がチルト方向に回動するようになっている。
以上のチルト調整機構によれば、ドーム型カメラ10の治具装着部22Bに調整治具12を装着してチルトモータ90を駆動することにより、チルトモータ90の動力が、チルト用第1動力伝達部材50(モータ連結部54及び第1ギヤ形成部52)、チルト用第2動力伝達部材(第2ギヤ形成部)56、チルト用第3動力伝達部材58(第3ギヤ形成部60及び第4ギヤ形成部62)、及び第5ギヤ形成部64からなる動力伝達機構を介してチルト軸部材39に伝達する。そして、その動力によってチルト軸部材39が回動することによってカメラ本体20がチルト方向に回動するようになっている。したがって、チルトモータ90を駆動することによってカメラ本体20のチルト方向に関する姿勢調整を行うことができるようになっている。
なお、チルトモータ90の動力をカメラ本体20のチルト向の回転力として伝達する動力伝達機構の構成は上記実施の形態のものに限らずどのような構成であってもよい。また、チルトモータ90とチルト用第1動力伝達部材50とを連結する手段も任意の手段を採用することができる。
ここで、チルト用第2動力伝達部材56の回動、即ち、カメラ本体20のチルト方向の回動に対して負荷(抵抗)を与えるための抵抗付与手段が設けられている。抵抗付与手段の一例として、例えば図4に示すように基台部22の筐体23の背面部23Aに突設された2つの対向する狭持部材70、72の間に板バネ74(弾性を有する板状部材)の基端側が狭持され、その板バネ74の先端がチルト用第2動力伝達部材56の第2ギヤ56Aに係合されている。
これにより、カメラ本体20が自重によりチルト方向に回動してしまうことや、カメラ本体20をパン方向に回動させる際にパン回転台32の回動と共に、チルト用第2動力伝達部材56が回動してカメラ本体20がチルト方向に回動してしまうという事態が防止されている。
なお、抵抗を直接的に付与する対象は、チルト用第2動力伝達部材56にかかわらずチルト調整機構を構成する他の動力伝達部材でも良く、また、どのような手段で抵抗を付与するものであってもよい。また、パン回転台32の回動に対しては、筐体23の背面部23Aとの摩擦等により適度な負荷が与えられており、カメラ本体20の自重や、カメラ本体20をチルト方向に回動させる際のチルト用第2動力伝達部材56の回動によってカメラ本体20がパン方向にも回動してしまう不具合は生じないが、カメラ本体20のチルト方向の回動に対する抵抗の付与と同様にパン方向の回動に対する抵抗を付与する抵抗付与手段を設けてもよい。
次に図1等に示した調整治具12に関して説明する。
上記のように本実施の形態のドーム型カメラ10は、治具装着部22Bに調整治具12を装着することによって、調整治具12に内蔵されたパンモータ80及びチルトモータ90の動力によりカメラ本体20をパン方向及びチルト方向に回動させてカメラ本体20の姿勢調整を行うことができるようになっている。
ドーム型カメラ10の基台部22には図1及び図2に示したようにドームカバー24が装着される本体部22Aの側方(設置面に対して水平方向)に突出して調整治具12を装着するための治具装着部22Bが設けられており、その治具装着部22Bにおける筐体23の内部にパン調整機構のパン用動力伝達部材40とチルト用第1動力伝達部材50とが配置されている。
治具装着部22Bは、図5の部分拡大図に示すよう筐体23によって略全体が覆われており、その前面部23Bには、2つの開口が形成され、それらの開口の各々からパン用動力伝達部材40のモータ連結部44と、チルト用第1動力伝達部材50のモータ連結部54とが突出して配置されている。
一方、調整治具12は、図6及び図7の前面側及び背面側を示した斜視図に示すように略矩形状の筐体100に覆われており、その筐体100の前面側となる前面部100Aがドーム型カメラ10の治具装着部22Bの前面部23Bに対向するようにして治具装着部22Bに装着されるようになっている。
その調整治具12の前面部100Aには、図3に示した連結用六角軸82、92が突設されている。これらの連結用六角軸82、92の各々には、図3に示したように調整治具12の筐体100の内部に配置されたパンモータ80とチルトモータ90の各々の出力軸80A、90Aが、調整治具12の前面部100Aに形成された開口を挿通して固着されている。
これによれば、ドーム型カメラ10の治具装着部22Bに調整治具12を後述の治具着脱機構により装着すると、調整治具12の連結用六角軸82、92が、ドーム型カメラ10の治具装着部22Bのパン用動力伝達部材40のモータ連結部44とチルト用第1動力伝達部材50のモータ連結部54の各々の六角穴44A、54Aに嵌入されて連結されるようになっている。これによって、図3で示したパン調整機構及びチルト調整機構にパンモータ80及びチルトモータ90が具備されて、パンモータ80の動力によりカメラ本体20がパン方向に回動し、チルトモータ90の動力によりカメラ本体20がチルト方向に回動するようになっている。なお、パンモータ80の出力軸80Aとモータ連結部44とを連結する手段、チルトモータ90の出力軸90Aとモータ連結部54とを連結する連結手段は、上記のように六角軸と六角穴の係合によるものではなく、他の形状による係合であってもよいし、どのような方法を用いた連結手段であってもよい。
また、上記のパンモータ80及びチルトモータ90は、図1のように調整治具12にケーブルで接続されたコントローラ14からの制御信号にしたがって駆動されるようになっている。なお、調整治具12とコントローラ14との接続はケーブルに限らず無線による接続であってもよい。
コントローラ14には、作業者が回動操作するパン調整用ツマミ14Aとチルト調整用ツマミ14Bが設けられており、それらの回転位置に基づく制御信号がコントローラ14から調整治具12のモータ駆動回路に与えられるようになっている。
したがって、作業者がパン調整用ツマミ14Aを回動操作することによってパンモータ80を駆動してカメラ本体20をパン方向に回動させ、チルト調整用ツマミ14Bを回動操作することによってチルトモータ90を駆動してカメラ本体20をチルト方向に回動させることができ、カメラ本体20のパン方向及びチルト方向の姿勢調整を遠隔操作により行うことができるようになっている。
なお、パン調整用ツマミ14Aとチルト調整用ツマミ14Bの各々の回転位置の変化量に応じた回転量分をパンモータ80とチルトモータ90の各々の出力軸80A、90Aが回動するように制御してもよいし、パン調整用ツマミ14Aとチルト調整用ツマミ14Bの基準位置からの回転量に応じた回転速度でパンモータ80とチルトモータ90の各々の出力軸80A、90Aが回転するように制御してもよい。
続いて、ドーム型カメラ10の治具装着部22Bに調整治具12を装着し、又は、取り外すための治具着脱機構について説明する。
図5に示すようにドーム型カメラ10の治具装着部22Bには、筐体23の互いに対向する側面部23C、23Dの各々に係合孔110A、110Bが形成され、それらの係合孔110A、110Bに対して前側となる位置に側面部23C、23Dから前面部23Bに渡って傾斜する案内溝112A、112Bが形成されている。また、治具装着部22Bの前面部23Bには、位置決め用長孔114が側面部23Eに渡って形成されている。
一方、調整治具12の筐体100の前面部100Aには、図6に示すように位置決め用凸部116が突設されると共に、1対のクランプアーム120、122が突出して配置されている。
位置決め用凸部116は、ドーム型カメラ10の治具装着部22Bにおける位置決め用長孔114に嵌合するようになっており、治具装着部22Bに調整治具12を装着する際に、位置決め用凸部116を位置決め用長孔114に嵌合させることによって調整治具12が規定の装着位置に位置合わせされるようになっている。
クランプアーム120、122は、筐体100の内部から筐体100の前面部100Aに設けられた開口124、126を挿通して外部に突出されており、詳細は後述するが、互いに近づく方向に付勢されると共に、その付勢力に抗して互いに離間する方向に移動させることできるようになっている。
各クランプアーム120、122の先端部には、ドーム型カメラ10の治具装着部22Bの係合孔110A、110Bに嵌入して係合する係止部(係止爪)120A、122Aが突出形成されている。
図8(A)〜(C)は、ドーム型カメラ10の治具装着部22Bにおける係合孔110A、110B、案内溝112A、112、位置決め用長孔114、及びモータ連結部44、54の位置と、調整治具12における位置決め用凸部116、クランプアーム120、122、連結用六角軸82、92、及び後述の取り外し治具挿入孔150の位置を、治具装着部22Bの側面部23E(図5参照)側から模式的に示した図であり、治具装着部22Bに調整治具12を装着する際の様子を示している。
図8(A)に示すよう調整治具12の位置決め用凸部116を治具装着部22Bの位置決め用長孔114に嵌合させるようにして調整治具12の前面部100Aを治具装着部22Bの前面部23Bに対向させながら近づけていくと、図8(B)に示すように各クランプアーム120、122の係止部120A、122Aが治具装着部22Bの案内溝112A、112Bに当接する。そして、更に近づけると、案内溝112A、112Bの斜面によりクランプアーム120、122が互いに離間する方向に押し広げられた後、図8(C)に示すように治具装着部22Bの前面部23Bと、調整治具12の前面部100Aとが略当接する状態になるところで、各クランプアーム120、122の係止部120A、122Aが、係合孔110A、110Bに嵌入すると共に、クランプアーム120、122がそれらに内向きに作用する付勢力により間隔を狭める方向に移動する。
これにより、調整治具12がドーム型カメラ10の治具装着部22Bに略離脱不能な状態に装着され、また、上記のように調整治具12の連結用六角軸82、92が治具装着部22Bの前面部23Bのモータ連結部44とモータ連結部54の六角穴44A、54Aの各々に連結されるようになっている。
続いて、調整治具12のクランプアーム120、122によるクランプ機構について図9の断面図(図6の9−9矢視断面図)を用いて説明する。上記の1対のクランプアーム120、122の各々は、クランプ部材130、132の水平方向に伸びる基端部134、136に対して直交する方向に延設された部分であり、クランプアーム120、122の各々の先端に上述の係止部120A、122Aが突出形成されている。
クランプ部材130、132の基端部134、136は、筐体100の内部に配置されており、基端部134、136の水平方向(筐体100の前面部100Aに平行方向)に沿って形成された長孔134A、134B、136A、136Bの各々に筐体100の側面部100Cから突設された係合ピン138A、138B、140A、140Bが係合している。これにより、クランプ部材130、132が筐体100の内部において水平方向に移動可能に支持されている。
また、基端部134、136と筐体100の側面部100Cとの間にはコイルバネ142、144が取り付けられており、コイルバネ142、144によってクランプ部材130、132が互いに近づく方向に付勢されている。
一方、クランプアーム120、122の各々は、筐体100の前面部100Aの開口124、126を挿通して外部に突出配置されており、それらの開口124、126はクランプアーム120、122が水平方向の所定範囲で移動可能な大きさに形成されている。
これにより、上述のように、クランプアーム120、122が互いに近づく方向に付勢されると共に、その不勢力に抗してクランプアーム120、122を開口124、126の範囲内で互いに離間する方向に動かすことができるようになっている。
なお、上述の図8(C)のようにクランプアーム120、122の係止部120A、122Aが治具装着部22Bの係合孔110A、110Bに嵌入して調整治具12が治具装着部22Bに装着している状態では、クランプアーム120、122が開口124、126の内側の端部に当接するよりも外側の位置で治具装着部22Bの筐体23に当接して、係止部120A、122Aが係合孔110A、110Bの完全に嵌入するようになっており、容易には係止部120A、122Aが係合孔110A、110Bから容易に外れないようになっている。
次に、ドーム型カメラ10の治具装着部22Bに装着した調整治具12を取り外すための取り外し機構について説明する。
図7及び図9に示すように、調整治具12の筐体100の背面部100Bには、クランプアーム120(クランプ部材130)とクランプアーム122(クランプ部材132)との間の略中央となる位置に筐体100の内部から外部とを連通する円形状の取り外し治具挿入孔150が形成されている。この取り外し治具挿入孔150には、図10のような取り外し治具152の先端に取り付けられた円柱状の挿入部154を挿入することができるようになっている。なお、取り外し治具挿入孔150は、挿入部154を挿入することができる大きさの孔であれば、どのような形状であってもよい。
ここで、図9に示すようにクランプ部材130の基端部134とクランプ部材132の基端部136の間には、隙間部160が形成されており、その隙間部160を形成する基端部134、136の対向する端面の背面側の角部が切り欠かれて隙間部160の背面側の幅が広げられている。また、基端部134、136の対向する端面には凸部134C、136Cが突設されている。
一方、取り外し治具152は、図10のように先端側から順に挿入部154と首部156と把持部158とから構成されており、挿入部154は、円柱部材の先端側の角部が面取りされて先端がテーパー状に形成されており、側面部に円弧状の凹部154Aが周方向に沿って形成されている。そして、この挿入部154の基端側は棒状で細径の首部156を介して棒状で太径の把持部158の先端に固着されている。
この取り外し治具152の挿入部154を調整治具12の取り外し治具挿入孔150から挿入し、コイルバネ142、144の付勢力に抗して図11のように挿入部154を隙間部160に挿入すると、隙間部160の幅が挿入部154の最大径(直径)と一致する位置までクランプ部材130、132が移動し、クランプアーム120、122が互いに離間する方向に移動するようになっている。このときのクランプアーム120、122は、それらの先端の係止部120A、122Aの両方がドーム型カメラ10の治具装着部22Bの係合孔110A、110Bから完全に抜け出る距離まで離間するようになっている。したがって、調整治具12を治具装着部22Bに装着している場合に、取り外し治具152を調整治具12の取り外し治具挿入孔150に挿入することによって、調整治具12を治具装着部22Bから取り外せる状態にすることができる。
また、取り外し治具152の挿入部154を取り外し治具挿入孔150から所定位置まで挿入すると、図11のように挿入部154の凹部154Aがクランプ部材130、132の凸部134C、136Cに係合して、調整治具12と取り外し治具152とが連結されるようになっている。なお、調整治具12の背面部100Bには、挿入部154の凹部154Aがクランプ部材130、132の凸部134C、136Cに係合する位置まで挿入部154を挿入したときに取り外し治具152の把持部158の先端が嵌入する溝162が形成されている(図7参照)。
したがって、調整治具12を治具装着部22Bに装着している場合に、取り外し治具152を調整治具12の取り外し治具挿入孔150に挿入すると共に、挿入部154の凹部154Aがクランプ部材130、132の凸部134C、136Cに係合する位置まで(把持部158の先端が調整治具12の背面部100Bの溝162に嵌入する位置まで)挿入することによって、その後、取り外し治具152に調整治具12を連結させた状態で調整治具12を治具装着部22Bから取り外すことができ、調整治具12が落下してしまう等の不測の事態を防止することできる。
図12(A)〜(C)は、図8と同様にドーム型カメラ10の治具装着部22Bにおける係合孔110A、110B、案内溝112A、112、位置決め用長孔114、及びモータ連結部44、54の位置と、調整治具12における位置決め用凸部116、クランプアーム120、122、連結用六角軸82、92、及び取り外し治具挿入孔150の位置と、取り外し治具152における挿入部154の位置とを、治具装着部22Bの側面部23E側から模式的に示した図であり、治具装着部22Bに装着された調整治具12を取り外す際の様子を示している。
図12(A)に示すように、ドーム型カメラ10の治具装着部22Bに調整治具12が装着されている状態において、調整治具12の背面部100Bの取り外し治具挿入孔150から取り外し治具152の挿入部154を挿入すると、上述のようにクランプアーム120、122が互いに離間する方向に移動する。これによって、図12(B)のようにクランプアーム120、122の係止部120A、122Aが係合孔110A、110Bから抜出して係止部120A、122Aと係合孔110A、110Bとの係合が解除され、調整治具12を治具装着部22Bから取り外すことできる状態となる。
また、上述のように取り外し治具152と調整治具12とが連結され、調整治具12を治具装着部22Bから引き離す方向に取り外し治具152の把持部158を動かすと、図12(C)のように取り外し治具152で調整治具12を支持しながら調整治具12が治具装着部22Bを取り外すことができる。
なお、上記取り外し治具152では、挿入部154を円柱状として、軸周りの任意角度の回転に対して対称となる(元の形状と重なる)ようにし、調整治具12の取り外し治具挿入孔150を挿入部154を挿入することができる孔とすることで、取り外し治具152の軸周りの方向に関して取り外し治具152を任意の角度で調整治具12の取り外し治具挿入孔150から内部に挿入して調整治具12(クランプ部材130、132)に連結できるようにしている。
これに対して、取り外し治具152の挿入部154及び調整治具12の取り外し治具挿入孔150を図13及び図14に示すような形態としてもよい。図13及び図14には、図10及び図7に示した取り外し治具152及び調整治具12と同一又は類似の作用の構成要素には同一符号を付しており、形状が相違する取り外し治具152の挿入部154と調整治具12の取り外し治具挿入孔150についてのみ説明する。
図13の取り外し治具152において、挿入部154は、四角い板の先端側の2つの角部が切り欠かれて先端の板幅が狭くなる形状に形成されており、両側部に円弧状の凹部154A、154Aが形成されている。
一方、図14の調整治具12において、取り外し治具152の挿入部154が挿入される取り外し治具挿入孔150は長孔状に形成されている。
これによれば、図13の取り外し治具152の挿入部154を、その板幅方向を取り外し治具挿入孔150の長手方向に向けて挿入することで、挿入部154が調整治具12内のクランプアーム120、122の間に挿入され、図10の取り外し治具152の場合と同様にクランプアーム120、122が互いに離間する方向に移動して調整治具12を治具装着部22Bから取り外すことできる状態となる。
また、挿入部154の凹部154A、154Aが図10の取り外し治具152の場合と同様にクランプ部材130、132の凸部134C、136Cに係合して、調整治具12と取り外し治具152とが連結され、その後、取り外し治具152に調整治具12を連結させた状態で調整治具12を治具装着部22Bから取り外すことができる。