JP2013243119A - ガス拡散電極およびその製法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】導電性基体と、該導電性基体の表面に形成された、Ta、Ti、Nb、Zr、Wから選択される少なくとも1種の金属の酸化物を含有する助触媒からなる助触媒層と、該助触媒層上に形成された、Pt、Ir、Ru、Pd、Rh及びAgから選択される少なくとも1種の金属及び/又は金属の酸化物を含有する主触媒の微粒子を含有する触媒層を形成したガス拡散電極。
【選択図】図1
Description
燃料電池は、化学エネルギーを電気エネルギーに変換可能なクリーンかつ高効率な発電システムである。水素や有機炭素原料の酸化反応と、空気中の酸素の還元反応を組み合わせることにより、その起電力から電気エネルギーを得るものであり、特に1960年代の低温型宇宙用電池としての実用化で注目された後、最近、燃料電池自動車、小型可搬電源、家庭用電源として再び注目されている。
アノード: 2H2→4H++4e- (1)
カソード: O2+4H++4e-→2H2O (2)
アノード: 4OH-+H2→4H2O+4e- (3)
カソード: O2+2H2O+4e -→ 4OH- (4)
正味の反応: 2H2+O2→2H2O (5)
触媒サイズの一般的な傾向としては、小さいほど活性が増大するが、5nm以下では結晶、露出割合、電子構造の変化、原料供給速度などの影響を受け、触媒性能が変化することも知られている。
白金に替わる安価な触媒の検討は以前から行われており、白金等の貴金属は、高い電位においても安定で、かつ触媒能が高いため、各種の電気化学システムの電極用触媒に用いられている。しかし、白金の価格が高いことや資源量が限られていることから、白金を代替できる高活性の触媒が要望されている。水電解、有機電解、燃料電池などの分野において酸性電解質中で用いられる電気化学システム用の電極触媒として有用である。
酸性電解質に使用するガス電極における触媒に関しては、以下例示するように、多くの非貴金属触媒の開発が進められた。
燃料電池用負極触媒として優れた性能を有し、且つ、白金と比較して安価であって、しかも一酸化炭素の存在する雰囲気下においても優れた触媒活性を維持できる、燃料電池用の新規な触媒物質を提供する。金微粒子を含む燃料電池用負極触媒、更に、チタン、バナジウム、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ、セリウム、タンタル、インジウム及びこれらの金属の酸化物からなる群から選ばれた少なくとも1種の成分、及び/又は白金、ルテニウム及びルテニウムの酸化物からなる群から選ばれた少なくとも一種の成分を含む燃料電池用負極触媒が開示されている。
特許文献15では、酸素欠損を有するZrO2、Ta2O5、Nb2O5、SnO2、TiO2、V2O5、MoO3、WO3のうち、少なくとも一つの遷移金属酸化物を主触媒とし金を助触媒とし、酸性電解質に接触して可逆水素電極電位に対して0.4Vより高い電位で使用されることを特徴とする耐食性酸素還元用電極触媒が開示され、この触媒は、遷移金属酸化物及び金を微粒子として、又は遷移金属酸化物を金微粒子に被覆した微粒子として、電子伝導性粉末である触媒担体上に分散させるなどの形態で使用できる。
特許文献19は、有機溶媒を用いたTa、Nbの多孔性センサー材料の製造方法として、金属または金属合金上に、ニオブ層またはタンタル層を電着するために、五塩化ニオブまたは五塩化タンタルを含み、水と酸素を除いた炭酸プロピレン溶液で、0〜120℃の温度で周期的な電流反転により電析する技術が開示されている。
本発明者等は、酸素還元に対する活性向上に関して研究を重ね、導電性基体表面に形成した白金族金属系等の主触媒粒子の表面に、タンタル等金属及び/又は金属酸化物を含む助触媒層を形成したガス拡散電極において、導電性基体表面に形成した主触媒粒子の表面に助触媒層を形成することにより、水素ガス酸化および酸素ガス還元活性が向上することを発明し、特許出願した(特許文献23)。然るに、特許文献23に開示された主触媒粒子の表面に助触媒層を形成した層構造では、助触媒層が最表面層となるため、酸素還元反応(ORR)の向上が必ずしも十分ではなかった。
本発明においては、TaOxとTa2O5等の活性の小さいTa、Ti、Nb、Zr、Wから選択される少なくとも1種の金属の酸化物を含有する助触媒が共存し、導電性を発現すると同時に、酸素化学種のスピルオーバー現象に寄与し主触媒の活性が向上するものと考えられる。
更に、本発明によれば、助触媒層の上に活性なPt等の主触媒を形成させることにより、主触媒の活性を向上することができるとともに、導電性基体であるカーボン微粉末の一部の表面もTaOx等によりメッキされるため、Pt等の主触媒のみならず導電性基体であるカーボン減耗も防止され、長期的安定性に貢献することができる。
本発明者は、前記した従来の問題点を解決するため、鋭意研究した結果、酸素還元反応(以下、「ORR」という)に対し高い電極触媒能を持つガス拡散電極触媒として、Pt含有量の少ないPt ナノ粒子担持TaOx修飾グラッシーカーボン(以下、「GC」という)である(Pt/TaOx/GC)の新しい複合材電極触媒の開発に成功したものである。
酸素含有種のスピルオーバーは、PtとTaOxとの電子的相互作用により、Pt/TaOx/GC電極触媒でのORR向上のための支配的要因であると考えられる。ここで注目すべきことは、d軌道の電子はPtと酸化物間の電子的相互作用を強制的に引き起こすことである。一方、Ta2O5は、d軌道にPtと共有されるいかなる電子も持たない。Ptは、XPSスペクトルから明らかなように、Ta2O5層に担持されたと想定される。
ORR向上には、XPS分析から明らかなように、PtとTaOx間の電子的相互作用からくる酸素含有種のスピルオーバーが重要な要素として強く示唆される。このスピルオーバー効果は、また、Pt/TaOx/GC電極触媒上で電気化学的に活発なPt表面積の増加をもたらしている。
導電性基体は、カーボンから成るクロス、繊維焼結体等の多孔性材料を用いることが望ましい。該基体はガス、液の供給、除去のため、適度の多孔性を有しかつ十分な導電性を保つことが好ましい。厚さ0.01〜5mm、空隙率が30〜95%、代表的孔径が0.001〜1mmが好ましい。カーボンクロスは数μmの細いカーボン繊維を数百本の束とし、これを織布としたものであるが、気液透過性に優れた材料である。カーボンペーパーはカーボン原料繊維を製紙法にて薄膜の前駆体とし、これを焼結したものであるが、これも使用に適する材料である。上記基体材料の表面の疎水性は運転とともに低下するため、長期的に十分なガス供給能を維持するために、疎水性バインダーを添加することが知られている。
助触媒層は使用状況における安定性があり、貴金属に比較して安価な材料であることが不可欠であり、Ta、Ti、Nb、Zr、Wから選ばれる少なくとも1種類以上の金属酸化物を含有する助触媒の粒子よりなる。この助触媒としては、Ta、Ti、Nb、Zr、Wから選ばれる少なくとも1種類以上の金属を含有してもよい。
めっきする対象の金属イオンは、陽極溶解により補給することが可能である。また、金属塩を溶解させておくことも好ましい。金属イオン濃度は0.002mol/L〜0.1mol/Lであることが好ましく、0.005mol/L〜0.05mol/Lであることが特に好ましい。
有機溶媒温度は0℃〜70℃であることが好ましく、15℃〜50℃であることがより好ましい。温度がこれよりも低いと溶液のイオン溶解度が低下し、また、70℃を超えると溶液が蒸発し利用が困難となる。
助触媒となる金属酸化物の表面には自然酸化膜が形成されて安定化している。必要に応じて、熱処理を加えることができる。
主触媒の微粒子は、Pt、Ir、Ru、Pd、Rh、Agから選択される少なくとも1種類以上の金属又はその酸化物を含み、前記導電性基体上に形成される。具体例としては、Pt単独、Ru−Pt、Ru酸化物などがある。また、主触媒の微粒子は、これら白金族金属や銀及び/又その金属酸化物以外に、ランタン系金属、バルブ金属、鉄系金属から選択される少なくとも1種類の金属及び/又金属酸化物を含んで、合金や複合酸化物を構成していても良い。具体例としては、Pt−Ag、Pd−Ag、Ru−Ni酸化物、Pt−Ce酸化物、Ru−Ce酸化物、Pt−La酸化物、Ru−La酸化物などがある。
本発明の触媒成分は粒子に展開することにより、触媒表面積を有効に拡大することができる、通常、グラッシーカーボン、ファーネスブラック、アセチレンブラックなどと称される微粒子状の炭素微粒子が用いられる。炭素粒子の粒径は0.01〜1μmが好ましい。
前記酸素極用ガスケット4には、イオン交換膜に向かう側に複数の凹面が形成された酸素極フレーム8の周縁が接触し、この酸素極フレーム8と酸素極2間に酸素極室9が形成されている。
12は酸素極フレーム8の上部に横向きに開口された酸素ガス供給口、13は酸素極フレーム8の下部に横向きに開口された未反応酸素ガス及び生成水取出口、14は水素極フレーム10の上部に横向きに開口された水素ガス供給口、15は水素極フレーム10の下部に横向きに開口された未反応水素ガス取出口である。
グラッシーカーボンを0.5M硫酸水溶液中で2.0Vの電位(銀・塩化銀電極を基準として)に20秒保持し、前処理を施した。電解質として1MのLiClO4を含むポリカーボネートに塩化タンタルを0.05M溶解させた。この溶液に前処理した前記グラッシーカーボン板を浸漬し、室温にて、0.3Vから−2.0V(同液に浸漬したAg極を基準として)の間で電位操作を2回繰り返し、グラッシーカーボン板上にTaOxよりなる助触媒の粒子を含有する助触媒層を形成した。次いで、これを塩酸に塩化白金酸3mM溶解した溶液において、−0.06V(銀・塩化銀電極を基準として)に保持しめっきを行い、100nmのナノサイズのPtの微粒子を前記助触媒層上に形成した。このときのPt厚さは160mg/m2であり、Pt/Ta2O5(2c)/GC電極(括弧は電位操作回数を示す)が製作された。更に、−1.24Vでの還元操作において、一部のTa2O5の還元が進行し、TaOxの生成が起きていると推定される。
計算根拠は以下の通りである。
Ptの比重は21.45g/cm3、100nmの層の重さは1m2あたりで、
100×10-7cm×100cm×100cm×21.45g/cm3=2.145(g)
160mg/m2の被覆率は、
0.16÷2.145=0.08、約8%となる。
Ta2O5の比重は8.73g/cm3、100nmの層の重さは1m2あたり
100×10-7cm×100cm×100cm×8.73g/cm3=0.873(g)
分子量441であるから、0.873g/m2は、
0.873÷441=0.002、約2mmol/m2となる。
20回品が約2mmol/m2となるので、比例計算して、2回品は約0.2mmol/m2となる。また、40回品は約4mmol/m2となる。
0.160÷195=0.821mmol/m2となる。
従って、Pt/Ta比は、
0.821mmol/m2 ÷(0.2mmol/m2〜4mmol/m2)=4.1〜0.2となる。
実施例2は、実施例1における助触媒形成の際の電位操作を2回から電位操作を8回に変更し、実施例3は、電位操作を20回に変更し、それ以外の条件は、全て実施例1と同様とした。実施例2の電極を、Pt/TaOx(8C)/GC電極(括弧は電位操作回数を示す)、実施例3の電極を、Pt/TaOx(20C)/GC電極(括弧は電位操作回数を示す)という。
実施例4として、40回電位操作を繰り返したPt/TaOx(40C)/GC電極を作製し、電気化学的特性を測定したところ、Tafel勾配は、電流密度の小さい範囲で−87mV/dec、大きい範囲で−180mV/decであった。過酸化水素の生成割合は10%となった。Pt/TaOx(40C)/GCはPt/TaOx(20C)/GC電極よりやや性能が劣っているが、比較例1よりも改善が認められた。実施例4の電極を、Pt/TaOx(40C)/GC電極(括弧は電位操作回数を示す)という。
炭素繊維(バラード社製)製クロスの片面に、炭素粉末(米国キャボット社製バルカンXC−72)とテトラフルオロカーボン樹脂の水懸濁液(三井デュポンフロロケミカル株式会社製30J)から成る混合ペーストを塗布し、大気中300 ℃で焼成した。次に1MのLiClO4を含むポリカーボネート(PC)に塩化タンタルを0.1M溶解させた。室温にて、前記クロスに0.5C/cm2の電気量を流し、ガス電極上にTaをめっきした。助触媒量は500mg/m2で析出量は、2.778mmol/m2あった。次に、塩酸に塩化白金酸0.03mM溶解した溶液においてPtめっきを行った。このときのPt厚さは160mg/m2であった。
表1に実施例1〜5におけるPt及びTaの析出量及びモル比率であるA/Bを示した。
Ta層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で電極を作成した。比較例1の電極をPt/GC電極という。
Taめっきを行わなかった電極で同様の電池評価を実施したところ、初期は0.63Vの出力が得られたものの、750時間後には0.5Vまで低下した。
また、図6(a)、(b)および(c)は、実施例1のPt/TaOx(2C)/GC電極の電子顕微鏡写真およびBSEMであり、TaOx(2C)層がGC表面を均一に被覆していることがわかる。BSEM(バックスキャッタリング電子顕微鏡)測定によりTaOx(20C)層の厚さが100nm程度であり、その層内に100nm程度のPt粒子が析出していることがわかる。
これらの図より、実施例1のPt/TaOx(2C)/GC電極は、Pt粒子はTaOx粒子に取り囲まれることで触媒性能が向上していることが推察される。
比較例1のPt/GC板について実施例1と同様の計測を行ったところ、実施例1−5に比較してわずかな電流しか観察されなかった。有効な電極面積は0.27m2/g(Pt)であった。
比較例1のPt/GC板(1)では、Tafelプロットは、上記の通りであり、酸素還元活性は実施例1〜3に比較して減少することが分かった。
2 酸素極
3 水素極
4 酸素極用ガスケット
5 水素極用ガスケット
6 酸素極用集電体
7 水素極用集電体
8 酸素極フレーム
9 酸素極室
10 水素極フレーム
11 水素極室
12 酸素ガス供給口
13 未反応酸素ガス及び生成水取出口
14 水素ガス供給口
15 未反応水素ガス取出口
Claims (10)
- 導電性基体と、該導電性基体の表面に形成された、Ta、Ti、Nb、Zr、Wから選択される少なくとも1種の金属の酸化物を含有する助触媒からなる助触媒層と、該助触媒層上に形成された、Pt、Ir、Ru、Pd、Rh及びAgから選択される少なくとも1種の金属及び/又は金属の酸化物を含有する主触媒の微粒子からなる主触媒層とよりなることを特徴とするガス拡散電極。
- 前記主触媒が、ランタン系金属、弁金属、鉄系金属、銀から選択される少なくとも1種の金属及び/又は金属の酸化物を含有することを特徴とする請求項1に記載のガス拡散電極。
- 前記導電性基体がカーボン導電性基体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス拡散電極。
- 前記助触媒の量が、0.2mmol/m2から4mmol/m2であり、前記主触媒の触媒量(A)と前記助触媒の触媒量(B)の比率(A/B)が0.20〜4.10であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガス拡散電極。
- 前記主触媒の微粒子がPt、助触媒層がTaOxからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のガス拡散電極。
- 導電性基体の表面に、Ta、Ti、Nb、Zr、Wから選択される少なくとも1種の金属の塩を溶解した有機溶媒を用いためっきを行うことにより、前記基体上にTa、Ti、Nb、Zr、Wから選択される少なくとも1種の金属の酸化物を含有する助触媒からなる助触媒層を形成し、しかる後、該助触媒層上に、Pt、Ir、Ru、Pd、Rh及びAgから選択される少なくとも1種の金属及び/又は金属の酸化物を含有する主触媒の微粒子からなる主触媒層を形成することを特徴とするガス拡散電極の製造方法。
- 前記主触媒が、ランタン系金属、弁金属、鉄系金属、銀から選択される少なくとも1種類の金属又は金属の酸化物を含有することを特徴とする請求項6に記載のガス拡散電極の製造方法。
- 前記導電性基体がカーボン導電性基体であることを特徴とする請求項6又は7に記載ガス拡散電極の製造方法。
- 前記助触媒の量が、0.2mmol/m2から4mmol/m2であり、前記主触媒の触媒量(A)と前記助触媒の触媒量(B)の比率(A/B)が0.20〜4.10であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載のガス拡散電極の製造方法。
- 前記主触媒の微粒子がPt、助触媒がTaOxであることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載のガス拡散電極の製造方法。
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