JP2013242259A - 原子炉用ジェットポンプ - Google Patents

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Abstract

【課題】原子炉用ジェットポンプのスロートの振動を抑制する。
【解決手段】本発明による原子炉用ジェットポンプは、ノズル装置と、スロートと、スロートの下端が挿入されるディフューザと、スロートを水平方向に支持するリストレイナと、スロートをリストレイナに固定するためにリストレイナに設けられた固定具とを備え、固定具は、鉛直方向に延在するスロートに対して水平な3方向から当接してスロートを固定し、リストレイナによる支持位置よりも下方でスロートとディフューザとがスリップジョイントで接続され、スロートは、スリップジョイントで接続された箇所においてスロートとディフューザとの間隙を狭くする3つの凸部を有し、凸部は、固定具がスロートに対して当接する3方向と対向する方向に向かって突出することを特徴とする。
【選択図】図7

Description

本発明は、原子炉用ジェットポンプに係り、特に、沸騰水型原子炉に適用するのに好適な原子炉用ジェットポンプに関する。
従来の沸騰水型原子炉(BWR)は、再循環系配管が接続された原子炉圧力容器(以下、RPVという)と、炉心を取り囲むシュラウドとの間に形成されたダウンカマ内にジェットポンプとを備える。ジェットポンプは、エルボ、ノズル、ベルマウス、スロートおよびディフューザを備える。再循環ポンプの駆動によって昇圧された冷却水は、再循環系配管を通り、駆動水としてノズルからスロート内に噴出される。ノズルは駆動水の速度を増加させる。ダウンカマ内のノズル周囲に存在する冷却水が、噴出された駆動水の作用によって、被駆動水としてスロート内に吸込まれ、駆動水と運動量を交換しながらディフューザ内に流入する。ディフューザから排出された冷却水は、RPV内の下部プレナムを通って炉心に供給される。
原子炉に設置されているジェットポンプは、検査や修理等のためエルボからスロートまでが取り外し可能な構造となっている。熱膨張差を吸収するため、スロートとディフューザの接合部は、スリップジョイント(滑り継手)と呼ばれる構造となっている。スリップジョイントには微小な隙間があり、スリップジョイント部ではジェットポンプ内部の圧力が外部よりも大きいため、隙間を通る漏洩流が発生する。経年変化によりジェットポンプの剛性が低下すると、振動が増加しジェットポンプの磨耗等が発生する可能性がある。さらに、ジェットポンプ内の流れまたは漏洩流の乱れ等の周波数と、剛性の低下したジェットポンプの固有振動数とが一致すると、共振して比較的大きな振動が発生し、磨耗を早める可能性がある。
このようなジェットポンプのスロートの振動を抑制するために、たとえば、スロート入口の直管部にベロー部等を設けて柔構造とし、振動を吸収することが考えられる(特許文献1参照)。
特開2011−69691号公報
ジェットポンプは、スロート部においてリストレイナで水平方向から支持・固定されている。リストレイナには3つの固定具(2つのセットスクリューと一つのウェッジ)が設けられている。2つのセットスクリューと一つのウェッジは、スロートの外周面に対して水平方向から当接することで、スロートを3点で支持・固定する。これらの固定具が磨耗すると、スロートと固定具の間に隙間が生じて、振動が大きくなる可能性がある。
スロート入口部は、ノズルから噴出された駆動水がスロート周囲から吸込まれた被駆動水と混合する場所であり、流れの乱れが大きく、ジェットポンプに生じる振動の主要な加振源である。したがって、上述した特許文献に記載されたように、スロート入口部に柔構造を設けることで、加振源において振動を吸収することにより振動エネルギーを効率よく抑制することができる。しかし、柔構造を追加することになるため、製作コストの増加が課題となる。
本発明による原子炉用ジェットポンプは、駆動流体を噴出するノズル装置と、駆動流体の噴出によって吸い込まれるノズル装置の周囲に存在する被駆動流体および駆動流体が混合するスロートと、スロートの下端が挿入され、混合した流体の圧力を回復させて排出するディフューザと、スロートを水平方向に支持するリストレイナと、スロートをリストレイナに固定するためにリストレイナに設けられた固定具とを備え、固定具は、鉛直方向に延在するスロートに対して水平な3方向から当接してスロートを固定し、リストレイナによる支持位置よりも下方でスロートとディフューザとがスリップジョイントで接続され、スロートは、スリップジョイントで接続された箇所においてスロートとディフューザとの間隙を狭くする3つの凸部を有し、凸部は、固定具がスロートに対して当接する3方向と対向する方向に向かって突出することを特徴とする。
本発明によれば、原子炉用ジェットポンプの振動を抑制できる。
本発明による原子炉用ジェットポンプが適用される沸騰水型原子炉の概略の構造を示す図である。 本発明による原子炉用ジェットポンプの全体図である。 図2におけるIII−III矢視断面図である。 スリップジョイント部の縦断面図である。 縮小試験による測定結果を示す図である。 スリップジョイント部でスロートとディフューザとが接触している場合に変動荷重が大きくなる理由を説明するための概要図である。 第1の実施の形態におけるスロートの出口付近のスロートおよびディフューザの水平断面図である。 第2の実施の形態におけるスロートの出口付近のスロートおよびディフューザの水平断面図である。 第3の実施の形態のスロートの出口付近の外観を示す図であり、スロートがディフューザ側に偏った状態を示している。 第3の実施の形態におけるスロートの出口付近のスロートおよびディフューザの水平断面図である。
−−−第1の実施の形態−−−
図1〜7を参照して、本発明による原子炉用ジェットポンプの第1の実施の形態を説明する。図1および図2は、本実施の形態の原子炉用ジェットポンプが適用される沸騰水型原子炉の概略の構造示す図である。図1および図2に示すように、沸騰水型原子炉(BWR)は、原子炉圧力容器(原子炉容器)3を有している。原子炉圧力容器3内には炉心シュラウド2が設置されている。以下の説明では、原子炉圧力容器をRPVと称する。炉心シュラウド2内には、複数の燃料集合体(図示せず)が装荷された炉心5が配設されている。気水分離器6および蒸気乾燥器7は、RPV3内で炉心5の上方に配設される。RPV3と炉心シュラウド2の間には環状のダウンカマ4が形成されている。ダウンカマ4内には、原子炉用ジェットポンプ(ジェットポンプ)1が配設されている。RPV3に設けられる再循環系は、再循環系配管11および再循環系配管11に接続された再循環ポンプ12を有する。
再循環系配管11の一端はダウンカマ4に連絡される。再循環系配管11の他端は、ダウンカマ4内に配置されたライザ管13の下端に接続される。ライザ管13の上端は分岐管19の下端に接続される。分岐管19の上端はジェットポンプ1のエルボ14の一端と接続される。エルボ14は流路を略180度曲げる。エルボ14の他端はノズル台座51の上端に接続される。ノズル台座51の下部にはノズル15が取り付けられている。ノズル15は、複数の支持板20によってベルマウス16およびスロート17と一体とされている。
すなわち、エルボ14からスロート17までが一体構造となっている。エルボ14からスロート17までの部分をインレットミキサ21と呼ぶ。インレットミキサ21は、エルボ14がビーム25により鉛直方向に固定される。また、インレットミキサ21は、図3に示すように鉛直下方に延在するスロート17がリストレイナ26に設けられたセットスクリュー28a,28bとウェッジ27とによって3点で支持・固定される。このとき、セットスクリュー28a,28bおよびウェッジ27は、水平な3方向からスロート17の外周面に当接してスロート17をリストレイナ26に固定する。すなわち、セットスクリュー28a,28bおよびウェッジ27は、リストレイナ26に複数の方向からスロート17を支持・固定するための固定具である。なお、以下の説明では、セットスクリュー28a,28bおよびウェッジ27を一括して指し示す場合、固定具27,28と呼ぶ。なお、図3は、図2におけるIII−III矢視断面図である。
RPV3内の上部に存在する被駆動水である冷却水(被駆動流体、冷却材)は、給水配管9からRPV3に供給された給水と混合されてダウンカマ4内を下降する。冷却水は、再循環ポンプ12の駆動によって再循環系配管11内に吸引され、再循環ポンプ12によって昇圧される。この昇圧された冷却水を、便宜的に、駆動水(駆動流体)という。この駆動水は、再循環系配管11、ライザ管13、分岐管19およびエルボ14内を流れてジェットポンプ1のノズル台座51内に達し、ノズル15から下方に向かって噴出される。ノズル15の周囲に存在する被駆動水である冷却水は、ノズル15から噴出される駆動水によって、ベルマウス16からスロート17内に吸い込まれる。この冷却水は、駆動水と共にスロート17内を下降し、ディフューザ18内で圧力が回復されて、ディフューザ18の下端から吐出される。
ディフューザ18から吐出された冷却水は、下部プレナム22を経て炉心5に供給される。冷却水は、炉心5を通過する際に加熱されて水および蒸気を含む気液二相流となる。気水分離器6は気液二相流を蒸気と水に分離する。分離された蒸気は、更に蒸気乾燥器7で湿分を除去されて主蒸気配管8に導かれる。この蒸気は、蒸気タービン(図示せず)に導かれ、蒸気タービンを回転させる。蒸気タービンに連結された発電機が回転し、電力が発生する。蒸気タービンから排出された蒸気は、復水器(図示せず)で凝縮されて水となる。この凝縮水は、給水として給水配管9によりRPV3内に供給される。気水分離器6および蒸気乾燥器7で分離された水は、落下して冷却水としてダウンカマ4内に達する。
ライザ管13、エルボ14、ノズル台座51、ノズル15、ベルマウス16、スロート17およびディフューザ18を主要な構成要素とするジェットポンプ1は、ノズル15周囲の冷却水を吸い込むことにより、少ない駆動水の流量でより多くの冷却水を炉心5に送り込むことができる。
スロート17の入口部は、流速の大きい駆動水と流速に小さい被駆動水が混合し、流れの乱れが最も大きい場所である。この流れの乱れがジェットポンプ1の振動の主要な要因のひとつである。
沸騰水型原子炉に用いられているジェットポンプ1は、検査・補修のためインレットミキサ21を取り外しできるように、リストレイナ26による支持位置よりも下方でスロート17とディフューザ18とがスリップジョイントで連結されている。スリップジョイントによる連結部分(接続部分)の縦断面を図4に示す。スロート17とディフューザ18との接続部分をスリップジョイントにすることで、接続部分での熱膨張差による応力の発生を防止している。以下、スロート17とディフューザ18とのスリップジョイントによる接続部分を説明の便宜上、スリップジョイント部10と呼ぶ。
図4に示すように、スロート17の外周面とディフューザ18の内周面との間には隙間50がある。スリップジョイント部10におけるジェットポンプ内部圧力は、外部圧力(ダウンカマ4の圧力)よりも大きい。そのため、その内外差圧によってジェットポンプ内の水が隙間50からジェットポンプ1の外部へ漏洩流24として漏洩する。漏洩流24の流量は、ジェットポンプ全体の流量に対してごく僅かであるので、ジェットポンプ1の効率の低下も僅かである。なお、図4において、符号CLdはディフューザ18の軸心を指している。
たとえば、ビーム25の経年劣化やウェッジ27の磨耗により、図3に示したセットスクリュー28a,28bとスロート17との当接箇所に隙間が発生して、インレットミキサ21の支持剛性が低下すると、ジェットポンプ1の振動が増加する可能性がある。特に、図4に示したジェットポンプ1内の流れ21や漏洩流24の乱れ等の周波数と、剛性の低下したジェットポンプの固有振動数とが一致すると、共振して比較的大きな振動が発生し、固定具27,28の磨耗等の進展を早める可能性がある。
ここで、リストレイナ26におけるスロート17を水平方向に動かないように固定する機能を維持すると、インレットミキサ21の支持剛性の低下が抑制され、しいては、固定具27,28の磨耗等の進展が抑制される。リストレイナ26におけるスロート17の固定力を低下させるのは、固定具27,28に繰り返しかかる変動荷重であり、この変動荷重を小さくするとリストレイナ26におけるスロート17の固定力低下を抑制できる。
発明者らは、ジェットポンプ1を模した1/3スケールの試験装置を用いて、スリップジョイント部10におけるスロート17とディフューザ18との接触の有無をパラメータとして、固定具27,28にかかる荷重を測定した。測定した変動荷重の一例を図5に示す。スロート17の固定具27,28のそれぞれは、周方向に互いに略120度の間隔で3箇所に設けられている。図5では、固定具27,28のそれぞれに取り付けた荷重測定器で検出された変動荷重の測定値(相対値)を示している。
図5の上側のグラフで示すように、スリップジョイント部10でスロート17とディフューザ18とが接触していない場合には、各方向の変動荷重に大きな差がないことを発明者らは確認した。一方、図5の下側のグラフで示すように、スリップジョイント部10でスロート17とディフューザ18とが接触している場合には、菱形および三角形のプロットで表したように、接触していないときと比較して変動荷重が4倍程度大きくなることを発明者らは確認した。また、スリップジョイント部10でスロート17とディフューザ18とが接触している場合であっても、丸印のプロットで表したように変動荷重が増加しない場合があることも発明者らは確認した。なお、図5の上側のグラフでは、菱形のプロットと丸印のプロットが略重なっている。
スリップジョイント部10でスロート17とディフューザ18とが接触している場合に変動荷重が大きくなる理由を図6の概要図を用いて説明する。たとえば、図6に示すようにスロート17が図示左側に傾いて(説明の便宜上、傾きを誇張している)、ディフューザ18と図示右側で接触する場合について考える。この場合にスロート17の入口部での流れの乱れにより図示左方向に加振力が加わると、梃子の原理により接触点31を支点として作用点には大きな荷重が加わる。
したがって、接触点31の上方であって、軸心CLdに対する円周方向の位置が接触点31とは略180度ずれた位置に固定具27,28のいずれかが存在する場合、当該いずれかの固定具27,28が作用点となり、当該いずれかの固定具27,28には大きな荷重が加わる。
スロート17とディフューザ18との接触位置が上述した接触点31のままであって、上述の場合とは逆に図示右方向に加振力が加わった場合には、支点となるスロート17とディフューザ18の接触点が存在しない。そのため、梃子の原理が働かず、加振力が増幅されない。したがって、接触点31の上方であって、軸心CLdに対する円周方向の位置が接触点31と略同じ位置に固定具27,28のいずれかが存在する場合、当該いずれかの固定具27,28には大きな荷重が加わらない。
図5に測定結果を示した一例においては、プロットを丸印で示した荷重測定器が取り付けられていたいずれかの固定具27,28が、図6における接触点31の上方であって、軸心CLdに対する円周方向の位置が接触点31と略同じ位置に存在していた場合について示したものである。しかし、他の2カ所の固定具27,28(すなわち、プロットを三角形および菱形で示した荷重測定器が取り付けられていた固定具27,28)は、軸心CLdに対する円周方向の位置が接触点31とは略120度ずれている。そのため、これら2カ所の固定具27,28では、梃子の原理により、接触点31を支点として作用する変動荷重が増幅される。
スリップジョイント部10におけるスロート17とディフューザ18との間隙50はたとえば0.5mmよりも狭く、たとえばジェットポンプ1の全長6m程度に対して非常に小さい(図4)。そのため、スロート17をディフューザ18に嵌挿する際に、たとえば0.5mm以下の精度でスロート17の軸芯とディフューザ18の軸芯CLdとを一致させ、かつスロート17をディフューザ18に対して傾かないようにして、間隙50を一様にすることは困難である。また、スロート17の軸芯とディフューザ18の軸芯CLdとを完全に一致させ、間隙50を均一にできたとしても、原子炉の運転時にはジェットポンプ1の周囲が高温になるため、ジェットポンプ1の各部に熱膨張によって軸心がずれて間隙50の均一性(一様性)が失われる可能性がある。
スロート17の軸芯とディフューザ18の軸芯CLdとが一致していない場合には、間隙50が狭くなる場所が存在し、スロート17が振動したときに、その位置でスロート17とディフューザ18とが接触しやすくなる。スロート17とディフューザ18とが接触した場合には、この接触点31の上方であって、軸心CLdに対する円周方向の位置が接触点31とは略180度ずれた位置では、上述したように変動荷重が増幅される可能性がある。また、このときに、いずれかの固定具27,28が設けられた方向と荷重のかかる方向とが一致すると、当該一致したいずれかの固定具27,28に大きな荷重がかかることになり、その固定具27,28の磨耗等の経年劣化を早める可能性がある。
そこで、本実施の形態では、図7に示すように、スロート17の軸心に垂直な半径方向外側に向かってスロート17の出口付近の外周面が3方向に凸になるように加工した。これにより、スロート17とディフューザ18とが完全に同一軸芯上に並んだときに、スリップジョイント部10のスロート17の外周面とディフューザ18の内周面との間の間隙50が、3カ所の凸部41a,41b,41cで最も狭くなる。スロート17の出口付近の内径を従来のスロート17と同じとし、スロート17の肉厚を円周方向に沿ってなだらかに変化させることにより上述した外周面形状としている。
さらに、凸部41a,41b,41cは、固定具27,28がスロート17に対して当接する3方向と対向する方向に向かって突出している。具体的には、凸部41bの突出方向は、ウェッジ27による水平方向からの支持方向と対向している。凸部41a,41cの突出方向は、セットスクリュー28a,28bによる水平方向からの支持方向と対向している。なお、スロート17の図3における図面上の前後左右方向と、図7における図面上の前後左右方向とは一致している。
このようにすることで、スロート17が振動したとき、スロート17の外周面の凸部41a,41b,41cがディフューザ18の内周面と接触する。なお、図7では凸部41a、41b、41cの高さ、すなわち凸部41a,41b,41cにおけるスロート17の肉厚を誇張して示している。
スロート17の入口部では流体混合による乱流に伴い、ある特定の周波数で加振力が発生する。また、加振力の向きもある周波数で変動する。ウェッジ27からライザ管13の向きに加振力が加わった場合には、梃子の原理により、凸部41bを支点としてライザ管13側に増幅された変動荷重が作用する(図3,7参照)。この増幅された変動荷重は、リストレイナ26の2つのセットスクリュー28a、28bで支持されるため、2つのセットスクリューに変動荷重が分散され、セットスクリュー1つあたりの変動荷重が低減する。一般的に、材料の強度は、(荷重)×(繰り返し回数)で劣化していくため、上述のようにセットスクリュー1つあたりの荷重を低減することによって、劣化までの期間を延長できる。
逆に、ライザ管13からウェッジ27の向きに加振力が加わった場合には、凸部41aまたは凸部41cがディフューザ18内面と接触し、そこを支点としてそれぞれ略180度反対側の方向に増幅された変動加重が作用する。この変動荷重は、セットスクリュー28bとウェッジ27またはセットスクリュー28aとウェッジ27に分散されるため、セットスクリューおよびウェッジの1つあたりの荷重を低減できる。
なお、凸部41a,41b,41cを設けず、スロート17とディフューザ18の接触位置が制御できない場合、たとえば、セットスクリュー28aと正反対の位置でスロート17とディフューザ18が接触する可能性がある。この場合、上述した梃子の原理によりセットスクリュー28aだけに大きな変動荷重がかかる。セットスクリュー28aに作用する荷重が増えるため、セットスクリュー28aが劣化するまでの期間が短くなる可能性がある。
したがって、スロート17に対するセットスクリュー28a、28bおよびウェッジ27の当接方向と対向する方向にできるだけ一致するように凸部41a,41b,41cを突出させるのがよい。凸部41bの突出方向がスロート17に対するウェッジ27の当接方向と対向する方向と一致していると、上述したように、増幅された変動荷重がセットスクリュー28a、28bに均等に分散される。たとえば、図7において凸部41bの突出方向がスロート17に対するウェッジ27の当接方向と対向する方向から図示時計方向にずれた場合、変動荷重の増幅される方向も同様に図示時計方向にずれる。そのため、セットスクリュー28a、28bへの変動荷重が均等に分散されず、セットスクリュー28bよりセットスクリュー28aへの荷重が大きくなり、変動荷重が均等に分散された場合と比較して、セットスクリュー28aが劣化するまでの期間が短くなる可能性がある。
なお、この凸部は上述した3方向に向かってそれぞれ突出するように配設する必要がある。たとえば、凸部41bのみ設けた場合には、ライザ管13からウェッジ27側に加振力が加わったときに、スロート17の外周面のうち、ウェッジ27の当接位置とは略180度ずれたライザ管13に最も近い部分がディフューザ18の内周面と接触(当接)する。この接触点が梃子の支点となり、ウェッジ27のみに増幅された変動荷重が作用し、セットスクリュー28a、28bへ荷重を分散することができない。しかし本実施の形態のように、上述した3方向に突出する凸部41a,41b,41cを設けることで、加振力がどの方向に加わっても、いずれかの凸部41a,41b,41cでディフューザ18の内周面と接触する。そして、増幅された変動荷重はウェッジ27とセットスクリュー28a、28bのいずれかに分散される。そのため、セットスクリュー28a、28bおよびウェッジ27が劣化するまでの期間を延長することができる。
−−−第2の実施の形態−−−
図8を参照して、本発明によるジェットポンプの第2の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、主に、スロート17の肉厚を変えることに代えて、スロート17の出口付近の外周面に突起物を設ける点で、第1の実施の形態と異なる。
すなわち、本実施の形態のスロート17では、図8の水平断面図に示すように、出口付近の外周面の3箇所にそれぞれ突起物を取り付けることで3つの突起42a,42b,42cを設けている。各突起42a,42b,42cの突出方向は、スロート17に対する固定具27,28の当接方向と対向する3つの方向と一致している。突起42a,42b,42cの効果は上述した第1の実施の形態における凸部41a,41b,41cの場合と同じである。
第1の実施の形態のスロート17では、スロート17の鋳造後に機械加工によって凸部41a,41b,41cを形成している。しかし、スロート17の軸心に垂直な断面の形状が凸部41a,41b,41cを含む位置では、外周面の形状が単純な円形ではないため、凸部41a,41b,41cの形成の工数が増加する。これに対して本実施の形態の突起42a,42b,42cの場合には、スロート17の外周面を断面が円形になるように機械加工した後に、溶接により突起物を取り付けることによって形成可能である。したがって、製作工数を低減して製作コストを抑制できる。
−−−第3の実施の形態−−−
図9,10を参照して、本発明によるジェットポンプの第3の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1および第2の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1または第2の実施の形態と同じである。本実施の形態では、主に、3方向へ突出する凸部と凸部との間に後述する縦溝43を設ける点で、第1および第2の実施の形態と異なる。
図9は、本実施の形態のスロート17の出口付近の外観を示す図であり、スロート17がディフューザ18側に偏った状態を示している。図10は、スロート17の出口付近のスロート17およびディフューザ18の水平断面図である。図9,10に示すように、本実施の形態では、スロート17は、鉛直方向に延在して、スリップジョイントで接続された箇所においてスロート17とディフューザ18との間隙50を狭くする3本の突条(凸部44a,44b,44c)を有する。そしてスロート17は、隣り合う突条(凸部44a,44b,44c)同士の間に設けられた、突条(凸部44a,44b,44c)と平行な方向に延在する複数の溝部(縦溝43)を有する。
すなわち、本実施の形態では、スロート17の出口付近の外周面に複数の縦溝43を形成している。したがって、隣り合う縦溝43の間の部分は凸状となる。この凸状となった部分のうち、固定具27,28がスロート17に対して当接する3方向と対向する方向へ突出する部分(凸部44a,44b,44c)は、他の凸状となる部分よりも突出高さが高い。
凸部44a,44b,44cによる変動荷重の分散効果は第1および第2の実施の形態と同じである。上述したように、本実施の形態では、隣り合う3つの凸部44a,44b,44cの間に縦溝43が設けられている点で第1および第2の実施の形態と異なる。そして、縦溝43を設けることで、後述するようにスリップジョイント部10からの漏洩流24に伴う振動を抑制できる。
スロート17の振動要因の一つとして、スリップジョイント部10からの漏洩流24が挙げられる。スロート17の軸心とディフューザ18の軸心CLdとが一致して、偏りがなく均一な間隙50から漏洩流24が漏洩していれば、スロート17に対して半径方向に均一に力が加わる。そのため、スロート17に対して半径方向に加わる力が相殺されるので、結果としてスロート17は漏洩流24から影響を受けない。
しかし、間隙50が不均一となった場合、間隙50の広いところでは漏洩流速が増加し、間隙50の狭いところでは漏洩流速が低下する。流速による静圧の低下は流速に依存する。間隙50の広いところでは流速が大きいため、静圧が大きく低下するが、間隙50の狭いところでは流速が小さいため、静圧があまり低下しない。このため、間隙50の狭いところの静圧が広いところの静圧よりも高くなるため、間隙50の狭いところの方から広いところの方へ静圧差による力が加わり、スロート17が間隙50の広いところの方へ向かって移動する。
このようにしてスロート17が移動すると、間隙50の大小関係が逆転するため、静圧差による力の作用方向も逆転し、スロート17がそれまでとは逆の方向へ移動する。これらを繰り返すことにより、スリップジョイント部10からの漏洩流24に起因してスロート17が振動する可能性がある。
本実施の形態では、スロート17がディフューザ18側に偏った場合でも、縦溝43が漏洩流24の流路を確保して漏洩流路が極端に狭くなることを防いでいる。このため、間隙50の狭くなったところであっても漏洩流速がある程度確保されるため、縦溝43がない場合と比較して静圧が低下するので、間隙50の広いところとの静圧差が小さくなり、スロート17に加わる力が小さくなる。これにより、スロート17の振動を抑制できる。
また、スロート17の出口付近が振動しても、凸部44a,44b,44cでディフューザ18の内周面と接触するため、リストレイナ26の固定具27,28にかかる変動荷重は分散され、固定具27,28が劣化するまでの期間を延長することができる。
なお、上述した各実施の形態は、それぞれ組み合わせてもよい。
1…原子炉用ジェットポンプ(ジェットポンプ)、3…原子炉圧力容器(原子炉容器、RPV)、4…ダウンカマ、10・・・スリップジョイント部、11…再循環系配管、12…再循環ポンプ、13…ライザ管、14…エルボ、15…ノズル、16…ベルマウス、17…スロート、18…ディフューザ、19…分岐管、22…下部プレナム、24…漏洩流、25…ビーム、26…リストレイナ、27…ウェッジ(固定具)、28…セットスクリュー(固定具)、31…接触点、41…凸部、42…突起、43…縦溝、44…凸部、50…間隙、51…ノズル台座、CLd・・・軸心

Claims (4)

  1. 駆動流体を噴出するノズル装置と、前記駆動流体の噴出によって吸い込まれる前記ノズル装置の周囲に存在する被駆動流体および前記駆動流体が混合するスロートと、前記スロートの下端が挿入され、混合した流体の圧力を回復させて排出するディフューザと、前記スロートを水平方向に支持するリストレイナと、前記スロートを前記リストレイナに固定するために前記リストレイナに設けられた固定具とを備え、
    前記固定具は、鉛直方向に延在する前記スロートに対して水平な3方向から当接して前記スロートを固定し、
    前記リストレイナによる支持位置よりも下方で前記スロートと前記ディフューザとがスリップジョイントで接続され、
    前記スロートは、前記スリップジョイントで接続された箇所において前記スロートと前記ディフューザとの間隙を狭くする3つの凸部を有し、
    前記凸部は、前記固定具が前記スロートに対して当接する前記3方向と対向する方向に向かって突出することを特徴とする原子炉用ジェットポンプ。
  2. 請求項1に記載の原子炉用ジェットポンプにおいて、
    前記凸部は、前記スロートの肉厚が厚くなるように円周方向に沿って肉厚をなだらかに変化させていることを特徴とする原子炉用ジェットポンプ。
  3. 請求項1に記載の原子炉用ジェットポンプにおいて、
    前記凸部は、前記スロートの外周面に形成した3つの突起物であることを特徴とする原子炉用ジェットポンプ。
  4. 駆動流体を噴出するノズル装置と、前記駆動流体の噴出によって吸い込まれる前記ノズル装置の周囲に存在する被駆動流体および前記駆動流体が混合するスロートと、前記スロートの下端が挿入され、混合した流体の圧力を回復させて排出するディフューザと、前記スロートを水平方向に支持するリストレイナと、前記スロートを前記リストレイナに固定するために前記リストレイナに設けられた固定具とを備え、
    前記固定具は、鉛直方向に延在する前記スロートに対して水平な3方向から当接して前記スロートを固定し、
    前記リストレイナによる支持位置よりも下方で前記スロートと前記ディフューザとがスリップジョイントで接続され、
    前記スロートは、前記スリップジョイントで接続された箇所において前記スロートと前記ディフューザとの間隙を狭くする3本の突条と、隣り合う前記突条同士の間に設けられた前記突条と平行な方向に延在する複数の溝部とを有し、
    前記突条は、前記固定具が前記スロートに対して当接する前記3方向と対向する方向に向かって突出することを特徴とする原子炉用ジェットポンプ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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