JP2013234167A - 神経変性疾患の治療及び/又は予防のための医薬組成物、及び、その有効成分のスクリーニング方法 - Google Patents

神経変性疾患の治療及び/又は予防のための医薬組成物、及び、その有効成分のスクリーニング方法 Download PDF

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Masayo Fujita
雅代 藤田
Akio Sekikawa
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Abstract

【課題】シヌクレイノパチーに対する効果的な医薬組成物、及び、その有効成分のスクリーニング方法を開発する。
【解決手段】本発明は、アディポネクチン受容体アゴニスト及び/又は該アゴニストを誘導する化合物を有効成分として含む、神経変性疾患の治療及び/又は予防のための医薬組成物を提供する。前記アディポネクチン受容体アゴニスト及び/又は該アゴニストを誘導する化合物として、アディポネクチンタンパク質と、球状アディポネクチンタンパク質と、アディポネクチンタンパク質の発現を誘導する化合物と、球状アディポネクチンタンパク質の発現を誘導する化合物とからなるグループから少なくとも1つが選択される。本発明は、アディポネクチンが関与するα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はリン酸化タウの凝集及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制することに基づく神経変性の抑制及び/又は改善する化合物のスクリーニング方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、アディポネクチン受容体アゴニスト及び/又は該アゴニストを誘導する化合物を有効成分として含む、神経変性疾患の治療及び/又は予防のための医薬組成物を提供する。また、本発明は、神経変性の抑制及び/又は改善する化合物のスクリーニング方法を提供する。
神経変性疾患とは、中枢神経系の神経細胞が徐々に変性して細胞死に陥る進行性疾患をいう。神経変性疾患のうち、パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)及び多系統萎縮症等を含むシヌクレイノパチーではα(alpha)シヌクレインが異常蓄積し、アルツハイマー病(AD)ではアミロイドβ(beta)タンパク質及びタウが異常蓄積し、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症及びピック病ではタウが異常蓄積することが知られている。そしてこれらのタンパク質の遺伝子異常も家族性神経変性疾患を引き起こすことから、これらのタンパク質が中枢神経系の神経細胞に異常凝集・蓄積することにより神経毒性を獲得し、神経細胞死等をきたすような機序が神経変性疾患の病態の中心を占めることが明らかにされている。
また、アルツハイマー病やタウ病を含む神経変性疾患はリン酸化タウによっても惹起される。タウタンパク質は、神経細胞の構造タンパク質である微小管に結合してチューブリンとチューブリンとの間のヒンジとしての役目をもち、チューブリンから微小管への重合促進能を有している。タウタンパク質はリン酸化されると、微小管結合能を失い、正常な細胞骨格が崩壊する。さらにリン酸化タウタンパク質はPaired Helical filaments(PHF)を形成し、神経原線維変化を伴う神経変性を惹起する。ADでは、主にアミロイドβ(beta)タンパク質及びタウの異常蓄積が認められる。また、多くのAD患者の脳ではα(alpha)シヌクレインの蓄積も認められ、ADの青斑核や扁桃体では、同一神経細胞内にα(alpha)シヌクレイン等から構成されるレビー小体とタウタンパク質による神経原線維変化が共局在することが知られている。また、脳幹型レビー小体の明暈(ハロー)部分では、リン酸化タウ及びα(alpha)シヌクレインが同じ部位に存在し、タウとα(alpha)シヌクレインとは互いに線維化を促進するものと考えられている。実際に、ADはPDを合併しやすく、PDはADを合併しやすいことから、分子レベルでのこれらの相互作用の関与が推察される。
Hashimoto M, Masliah E. Brain Pathol. 9(4):707−20. (1999)
神経変性疾患のうちα(alpha)シヌクレインの異常蓄積を伴うものをシヌクレイノパチーという。パーキンソン病はアルツハイマー病に次いで頻度の高い神経変性疾患である。レビー小体型認知症は、アルツハイマー病、脳血管障害に次いで3番目に頻度の高い認知症の原因である。現時点ではシヌクレイノパチーに対する原因療法は存在せず、介護に関わる家族及び介護施設の重い負担と、莫大な医療費とを含めて深刻な社会問題となっている。そこでシヌクレイノパチーに対する効果的な医薬組成物、及び、その有効成分のスクリーニング方法を開発する必要がある。
神経変性疾患は加齢性疾患という側面があり、糖尿病や動脈硬化のような他の加齢性疾患と同様、運動やカロリー制限に予防効果があることが知られている。そこで本発明者らは、抗糖尿病因子及び抗動脈硬化因子として知られているアディポネクチンに注目して、神経変性疾患におけるアディポネクチンの関与について研究している。そして本発明者らは、α(alpha)シヌクレインの凝集、タウのリン酸化及びプロテアソーム活性低下をアディポネクチンが抑制することを発見した。本発明はかかる発見に基づいて想到された。
本発明は、アディポネクチン受容体アゴニスト及び/又は該アゴニストを誘導する化合物を有効成分として含む、神経変性疾患の治療及び/又は予防のための医薬組成物を提供する。
本発明の神経変性疾患の治療及び/又は予防のための医薬組成物における前記アディポネクチン受容体アゴニスト及び/又は該アゴニストを誘導する化合物として、アディポネクチンタンパク質と、球状アディポネクチンタンパク質と、アディポネクチンタンパク質の発現を誘導する化合物と、球状アディポネクチンタンパク質の発現を誘導する化合物とからなるグループから少なくとも1つが選択される。
本発明は、前記アディポネクチン受容体アゴニスト及び/又は該アゴニストを誘導する化合物を含む、α(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制するための医薬組成物を提供する。
本発明のα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制するための医薬組成物における前記アディポネクチン受容体アゴニスト及び/又は該アゴニストを誘導する化合物として、アディポネクチンタンパク質と、球状アディポネクチンタンパク質と、アディポネクチンタンパク質の発現を誘導する化合物と、球状アディポネクチンタンパク質の発現を誘導する化合物とからなるグループから少なくとも1つが選択される。
本発明の神経変性疾患の治療及び/又は予防用医薬組成物、及び/又は、本発明のα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制するための医薬組成物は、ヒトアディポネクチンタンパク質を含む場合があり、前記球状アディポネクチンタンパク質は、ヒト球状アディポネクチンタンパク質の場合がある。
本発明の神経変性疾患の治療及び/又は予防用医薬組成物、及び/又は、本発明のα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制するための医薬組成物における前記ヒトアディポネクチンタンパク質として、(1)配列番号21に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質と、(2)配列番号21に記載のヌクレオチド配列と80%以上の相同性を示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(3)配列番号21に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションをするポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(4)配列番号22に記載のアミノ酸配列を含むヒトアディポネクチンタンパク質と、(5)配列番号22のアミノ酸配列に1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(6)特異的結合タグペプチドが前記(1)ないし(5)のいずれかのタンパク質に連結した融合タンパク質とを含むグループから少なくとも1つが選択される。
本発明の神経変性疾患の治療及び/又は予防用医薬組成物、及び/又は、本発明のα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制するための医薬組成物における前記ヒト球状アディポネクチンタンパク質として、(1)配列番号23に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質と、(2)配列番号23に記載のヌクレオチド配列と80%以上の相同性を示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(3)配列番号23に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションをするポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(4)配列番号24に記載のアミノ酸配列を含むヒト球状アディポネクチンタンパク質と、(5)配列番号24のアミノ酸配列に1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(6)特異的結合タグペプチドが前記(1)ないし(5)のいずれかのタンパク質に連結した融合タンパク質とからなるグループから少なくとも1つが選択される。
本発明の神経変性疾患の治療及び/又は予防用医薬組成物、及び/又は、本発明のα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制するための医薬組成物における前記アディポネクチンの発現を誘導する化合物は、(1)配列番号21に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質と、(2)配列番号21に記載のヌクレオチド配列と80%以上の相同性を示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(3)配列番号21に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションをするポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(4)配列番号22に記載のアミノ酸配列を含むヒトアディポネクチンタンパク質と、(5)配列番号22のアミノ酸配列に1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(6)特異的結合タグペプチドが前記(1)ないし(5)のいずれかのタンパク質に連結した融合タンパク質とからなるグループから選択される少なくとも1種類のタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドを含む場合がある。
本発明の神経変性疾患の治療及び/又は予防用医薬組成物、及び/又は、本発明のα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制するための医薬組成物における前記球状アディポネクチンの発現を誘導する化合物は、(1)配列番号23に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質と、(2)配列番号23に記載のヌクレオチド配列と80%以上の相同性を示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(3)配列番号23に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションをするポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(4)配列番号24に記載のアミノ酸配列を含むヒト球状アディポネクチンタンパク質と、(5)配列番号24のアミノ酸配列に1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(6)特異的結合タグペプチドが前記(1)ないし(5)のいずれかのタンパク質に連結した融合タンパク質とからなるグループから選択される少なくとも1種類のタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドを含む場合がある。
本発明の神経変性疾患の治療及び/又は予防用医薬組成物、及び/又は、本発明のα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制するための医薬組成物における前記アディポネクチンの発現を誘導する化合物は、(1)配列番号21に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質と、(2)配列番号21に記載のヌクレオチド配列と80%以上の相同性を示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(3)配列番号21に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションをするポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(4)配列番号22に記載のアミノ酸配列を含むヒトアディポネクチンタンパク質と、(5)配列番号22のアミノ酸配列に1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(6)特異的結合タグペプチドが前記(1)ないし(5)のいずれかのタンパク質に連結した融合タンパク質とからなるグループから選択される少なくとも1種類のタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターの場合がある。
本発明の神経変性疾患の治療及び/又は予防用医薬組成物、及び/又は、本発明のα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制するための医薬組成物における前記球状アディポネクチンの発現を誘導する化合物は、(1)配列番号23に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質と、(2)配列番号23に記載のヌクレオチド配列と80%以上の相同性を示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(3)配列番号23に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションをするポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(4)配列番号24に記載のアミノ酸配列を含むヒト球状アディポネクチンタンパク質と、(5)配列番号24のアミノ酸配列に1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(6)特異的結合タグペプチドが前記(1)ないし(5)のいずれかのタンパク質に連結した融合タンパク質とからなるグループから選択される少なくとも1種類のタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターの場合がある。
本発明の神経変性疾患の治療及び/又は予防用医薬組成物、及び/又は、本発明のα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制するための医薬組成物における前記アディポネクチンの発現を誘導する化合物は、ペルオキシソーム増殖剤活性化レセプター(PPAR)−γ(gamma)のアゴニストの場合がある。
本発明は神経変性疾患の治療及び/又は予防のための方法を提供する。本発明の方法は、アディポネクチン受容体アゴニスト及び/又は該アゴニストを誘導する化合物の有効量を投与するステップを含む。
本発明の方法における前記アディポネクチン受容体アゴニスト及び/又は該アゴニストを誘導する化合物として、アディポネクチンタンパク質と、球状アディポネクチンタンパク質と、アディポネクチンタンパク質の発現を誘導する化合物と、球状アディポネクチンタンパク質の発現を誘導する化合物とからなるグループから少なくとも1つが選択される。
本発明はα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制するための方法を提供する。本発明の方法は、アディポネクチン受容体アゴニスト及び/又は該アゴニストを誘導する化合物が、アディポネクチンタンパク質と、球状アディポネクチンタンパク質と、アディポネクチンタンパク質の発現を誘導する化合物と、球状アディポネクチンタンパク質の発現を誘導する化合物とからなるグループから選択される少なくとも1つの有効量を投与するステップを含む。
本発明の神経変性疾患の治療及び/又は予防のための方法、及び/又は、本発明のα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制するための方法において、前記アディポネクチンはヒトアディポネクチンタンパク質の場合があり、前記球状アディポネクチンタンパク質は、ヒト球状アディポネクチンタンパク質の場合がある。
本発明の神経変性疾患の治療及び/又は予防のための方法、及び/又は、本発明のα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制するための方法における前記ヒトアディポネクチンタンパク質として、(1)配列番号21に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質と、(2)配列番号21に記載のヌクレオチド配列と80%以上の相同性を示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(3)配列番号21に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションをするポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(4)配列番号22に記載のアミノ酸配列を含むヒトアディポネクチンタンパク質と、(5)配列番号22のアミノ酸配列に1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(6)特異的結合タグペプチドが前記(1)ないし(5)のいずれかのタンパク質に連結した融合タンパク質とからなるグループから少なくとも1つが選択される。
本発明の神経変性疾患の治療及び/又は予防のための方法、及び/又は、本発明のα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制するための方法における前記ヒト球状アディポネクチンタンパク質として、(1)配列番号23に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質と、(2)配列番号23に記載のヌクレオチド配列と80%以上の相同性を示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(3)配列番号23に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションをするポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(4)配列番号24に記載のアミノ酸配列を含むヒト球状アディポネクチンタンパク質と、(5)配列番号24のアミノ酸配列に1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(6)特異的結合タグペプチドが前記(1)ないし(5)のいずれかのタンパク質に連結した融合タンパク質とからなるグループから少なくとも1つが選択される。
本発明の神経変性疾患の治療及び/又は予防のための方法、及び/又は、本発明のα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制するための方法における前記アディポネクチンの発現を誘導する化合物は、(1)配列番号21に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質と、(2)配列番号21に記載のヌクレオチド配列と80%以上の相同性を示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(3)配列番号21に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションをするポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(4)配列番号22に記載のアミノ酸配列を含むヒトアディポネクチンタンパク質と、(5)配列番号22のアミノ酸配列に1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(6)特異的結合タグペプチドが前記(1)ないし(5)のいずれかのタンパク質に連結した融合タンパク質とからなるグループから選択される少なくとも1種類のタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドを含む場合がある。
本発明の神経変性疾患の治療及び/又は予防のための方法、及び/又は、本発明のα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制するための方法における前記球状アディポネクチンの発現を誘導する化合物は、(1)配列番号23に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質と、(2)配列番号23に記載のヌクレオチド配列と80%以上の相同性を示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(3)配列番号23に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションをするポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(4)配列番号24に記載のアミノ酸配列を含むヒト球状アディポネクチンタンパク質と、(5)配列番号24のアミノ酸配列に1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(6)特異的結合タグペプチドが前記(1)ないし(5)のいずれかのタンパク質に連結した融合タンパク質とからなるグループから選択される少なくとも1種類のタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドを含む場合がある。
本発明の神経変性疾患の治療及び/又は予防のための方法、及び/又は、本発明のα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制するための方法における前記アディポネクチンの発現を誘導する化合物は、(1)配列番号21に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質と、(2)配列番号21に記載のヌクレオチド配列と80%以上の相同性を示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(3)配列番号21に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションをするポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(4)配列番号22に記載のアミノ酸配列を含むヒトアディポネクチンタンパク質と、(5)配列番号22のアミノ酸配列に1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(6)特異的結合タグペプチドが前記(1)ないし(5)のいずれかのタンパク質に連結した融合タンパク質とからなるグループから選択される少なくとも1種類のタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターの場合がある。
本発明の神経変性疾患の治療及び/又は予防のための方法、及び/又は、本発明のα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制するための方法における前記球状アディポネクチンの発現を誘導する化合物は、(1)配列番号23に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質と、(2)配列番号23に記載のヌクレオチド配列と80%以上の相同性を示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(3)配列番号23に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションをするポリヌクレオチドによってエンコードされるアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(4)配列番号24に記載のアミノ酸配列を含むヒト球状アディポネクチンタンパク質と、(5)配列番号24のアミノ酸配列に1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性を有するタンパク質と、(6)特異的結合タグペプチドが前記(1)ないし(5)のいずれかのタンパク質に連結した融合タンパク質とからなるグループから選択される少なくとも1種類のタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターの場合がある。
本発明の神経変性疾患の治療及び/又は予防のための方法、及び/又は、本発明のα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下を抑制するための方法における前記アディポネクチンの発現を誘導する化合物はペルオキシソーム増殖剤活性化レセプター(PPAR)−γ(gamma)のアゴニストの場合がある。
本発明の神経変性疾患の治療及び/又は予防のための方法、及び/又は、本発明のα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制するための方法におけるペルオキシソーム増殖剤活性化レセプター(PPAR)−γ(gamma)のアゴニストはピオグリタゾン塩酸塩の場合がある。
本発明は、アディポネクチンが関与するα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はリン酸化タウの凝集及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制することに基づく神経変性の抑制及び/又は改善する化合物のスクリーニング方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法は、a)α(alpha)シヌクレインを発現する生物学的材料を用意するステップと、b)前記生物学的材料と被験化合物とを接触させるステップと、c)前記生物学的材料由来のアディポネクチンのタンパク質及び/又はmRNAの量と、アディポネクチン受容体のタンパク質及び/又はmRNAの量と、リン酸化タウの量と、リン酸化酵素の量及び/又は活性と、α(alpha)シヌクレインの凝集体の量と、アディポネクチン及びα(alpha)シヌクレインの凝集体の量と、プロテアソーム活性とからなる群から選択される少なくとも1つの測定値を決定するステップと、d)決定された測定値に基づいて被験化合物の効果を比較するステップとを含む場合がある。
本発明は、a)α(alpha)シヌクレイン発現細胞を用意するステップと、b)前記細胞に被験化合物を添加し、インキュベーションするステップと、c)アディポネクチンのタンパク質及び/又はmRNAの量と、リン酸化酵素の量及び/又は活性と、αシヌクレインの凝集体の量と、アディポネクチン及びαシヌクレインの凝集体の量と、プロテアソーム活性とからなる群から選択される少なくとも1つの測定値を決定するステップと、d)決定された測定値に基づいて被験化合物の効果を比較するステップとを含む場合がある。
本発明のスクリーニング方法において、前記ステップa)は、プロテアソーム阻害剤存在下、α(alpha)シヌクレイン発現細胞を培養するステップの場合がある。
本発明のスクリーニング方法において、前記ステップa)における前記細胞に、さらに、アディポネクチン及び/又はアディポネクチン受容体のsiRNAを導入するステップを含む場合がある。
本発明のスクリーニング方法における前記ステップc)の前記リン酸化酵素として、AMPKと、リン酸化AMPKと、p38 MAPKと、リン酸化p38 MAPKと、GSK−3β(beta)と、リン酸化GSK−3β(beta)とからなる群から少なくとも1つが選択される。
本発明のスクリーニング方法は、a)神経細胞特異的にヒトα(alpha)シヌクレインを発現するトランスジェニック動物より摘出した脳組織と、被験化合物とをインキュベーションするステップと、b)アディポネクチンのタンパク質及び/又はmRNAの量と、アディポネクチン受容体のタンパク質及び/又はmRNAの量と、リン酸化タウの量と、リン酸化酵素の量及び/又は活性と、α(alpha)シヌクレインの凝集体の量と、アディポネクチン及びα(alpha)シヌクレインの凝集体の量と、プロテアソーム活性とからなる群から選択される少なくとも1つの測定値を決定するステップと、c)決定された測定値に基づいて被験化合物の効果を比較するステップとを含む場合がある。
本発明のスクリーニング方法は、a)神経細胞特異的にヒトα(alpha)シヌクレインを発現するトランスジェニック動物に被験化合物を投与するステップと、b)前記トランスジェニック動物の脳組織の、アディポネクチンのタンパク質及び/又はmRNAの量と、アディポネクチン受容体のタンパク質及び/又はmRNAの量と、リン酸化タウの量と、リン酸化酵素の量及び/又は活性と、α(alpha)シヌクレインの凝集体の量と、アティポネクチン及びα(alpha)シヌクレインの凝集体の量と、プロテアソームの活性とからなる群からなる少なくとも1つの測定値を決定するステップと、c)決定された測定値に基づいて被験化合物の効果を比較するステップとを含む場合がある。
本明細書において「タンパク質」、「ペプチド」、「オリゴペプチド」又は「ポリペプチド」とは、2個以上のアミノ酸がペプチド結合で連結した化合物である。「タンパク質」、「ペプチド」、「オリゴペプチド」又は「ポリペプチド」は、メチル基を含むアルキル基、リン酸基、糖鎖、及び/又は、エステル結合その他の共有結合による修飾を含む場合がある。また、「タンパク質」、「ペプチド」、「オリゴペプチド」又は「ポリペプチド」は、金属イオン、補酵素、アロステリックリガンドその他の原子、イオン、原子団か、他の「タンパク質」、「ペプチド」、「オリゴペプチド」又は「ポリペプチド」か、糖、脂質、核酸等の生体高分子か、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリビニル、ポリエステルその他の合成高分子かを共有結合又は非共有結合により結合又は会合している場合がある。
アディポネクチンは、Maeda,K.ら(Biochem. Biophys. Res. Commun. 221: 286(1996))によってクローニングされた脂肪細胞で大量に発現する遺伝子産物で、脂肪細胞の分化を抑制又は阻害する。アディポネクチンのmRNAはノザンブロットでは正常な脳で検出されない。脳室内に投与されると、主にエネルギー消費を刺激して体重を減少させる作用がある。アディポネクチンは、α(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化を抑制又は軽減する特性及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する特性に基づいて、神経変性疾患の治療及び/又は予防という本発明の作用効果を奏する。ヒトアディポネクチンのコーディング領域のヌクレオチド配列は本明細書に添付する配列表の配列番号21に示され、ヒトアディポネクチンのコーディング領域のアミノ酸配列は本明細書に添付する配列表の配列番号22に示される。本発明においてヒトアディポネクチンにはヒトアディポネクチンの均等物、すなわち、ヒトアディポネクチンと非常に類似したアミノ酸配列のタンパク質であって、本発明のアディポネクチンの作用である、神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する活性を備えるタンパク質も含まれる。
球状アディポネクチンは、アディポネクチンのN末端のコラーゲン様ドメインがプロテアーゼにより切断されたアディポネクチンのアイソフォームの一種であり、アディポネクチン受容体に対してアゴニストとしての機能を有する。
本発明において、アディポネクチン受容体アゴニストとは、アディポネクチン受容体に働いて、アディポネクチンと同様の機能を示す化合物をいい、前記アディポネクチン、組換えアディポネクチン、前記球状アディポネクチン、及び、組換え球状アディポネクチンを含む。
アディポネクチン受容体(AdipoR)には、AdipoR1及びAdipoR2の2種類が存在し、球状アディポネクチン及び完全長アディポネクチンの受容体として機能する。前記受容体は、AMPK、PPAR−α(alpha)及びp38 MAPKを含むシグナル伝達分子群の活性化や、脂肪酸の酸化及びグルコースの摂取の増大を仲介することが知られている。
本発明において、アディポネクチン受容体アゴニストは、アディポネクチン受容体に働いて、細胞内シグナル伝達系を構成するAMPK、p38 MAPK、GSK−3β(beta)などのリン酸化酵素を誘導及び/又は活性化し、リン酸化AMPK、リン酸化p38 MAPK、リン酸化GSK−3β(beta)を増加し、さらに、タウのリン酸化、リン酸化タウの凝集、α(alpha)シヌクレインの凝集、及び/又は、タウとα(alpha)シヌクレインとの凝集形成を抑制する。
本発明において、アディポネクチンの発現を誘導する化合物とは、培養細胞か、ヒト又は実験動物の個体に経口的又は非経口的に投与すると、アディポネクチンの発現が誘導される化合物をいう。アディポネクチンの発現の誘導とは、アディポネクチンを産生する細胞内でアディポネクチンの量が増大すること、及び/又は、アディポネクチンを産生する細胞からアディポネクチンが分泌されることをいう。前記アディポネクチンの発現を誘導する化合物は、アディポネクチン又はその均等物をエンコードするcDNAの場合がある。また、前記アディポネクチンの発現を誘導する化合物は、アディポネクチン又はその均等物をエンコードするcDNAを含む組換えベクターの場合がある。前記アディポネクチンの発現を誘導する化合物は、WO2005/094866に記載のKLF9と、特開2008−10594に記載のアシルアミド化合物と、特開2008−195630に記載のPPAR−γ(gamma)アゴニスト、例えばピオグリタゾン塩酸塩と、特開2011−148748に記載のポルフィラン又はその塩類と、特開2011−236236に記載のシメジから抽出された抽出物とを含むが、これらに限定されない、アディポネクチンの発現を誘導することが本発明の出願前に公知の全ての化合物をいう。さらに、前記アディポネクチンの発現を誘導する化合物が脳血液関門を通過するのを促進する全ての化合物も本発明のシヌクレイノパチーの治療及び/又は予防用医薬組成物に含まれる。
本発明において、球状アディポネクチンの発現を誘導する化合物とは、培養細胞か、ヒト又は実験動物の個体に経口的又は非経口的に投与すると、球状アディポネクチンの発現が誘導される化合物をいう。球状アディポネクチンの発現の誘導とは、球状アディポネクチンを産生する細胞内で球状アディポネクチンの量が増大すること、及び/又は、球状アディポネクチンを産生する細胞から球状アディポネクチンが分泌されることをいう。前記球状アディポネクチンの発現を誘導する化合物は、球状アディポネクチン又はその均等物をエンコードするcDNAの場合がある。また、前記球状アディポネクチンの発現を誘導する化合物は、球状アディポネクチン又はその均等物をエンコードするcDNAを含む組換えベクターの場合がある。前記球状アディポネクチンの発現を誘導する化合物は、WO2005/094866に記載のKLF9と、特開2008−10594に記載のアシルアミド化合物と、特開2008−195630に記載のPPAR−γ(gamma)アゴニスト、例えばピオグリタゾン塩酸塩と、特開2011−148748に記載のポルフィラン又はその塩類と、特開2011−236236に記載のシメジから抽出された抽出物とを含むが、これらに限定されない。さらに、前記球状アディポネクチンの発現を誘導する化合物が脳血液関門を通過するのを促進する全ての化合物も本発明のシヌクレイノパチーの治療及び/又は予防用医薬組成物に含まれる。
本発明の組成物は、アディポネクチン、アディポネクチンの発現を誘導する化合物、球状アディポネクチン、及び/又は、球状アディポネクチンの発現を誘導する化合物が、神経細胞におけるα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する効果を損なわないことを条件として、さらに1種類又は2種類以上の薬学的に許容される添加物を含む場合がある。前記添加物は、結合剤、滑剤、崩壊剤、溶解剤、緩衝剤、着色剤、香料、甘味料、防腐剤、安定化剤、及び、当業者に知られたその他の医薬品添加剤を含むが、これらに限られない。
本発明における有効量とは、本発明の組成物を投与された被験者が健康を害さず、かつ、該被験者で本発明の効果を有する投与量をいう。前記有効量は、被験者の体重、年齢、性別、遺伝子型、病状等を考慮して設定されることが好ましい。
本発明の組成物の剤型は、アディポネクチン、アディポネクチンの発現を誘導する化合物、球状アディポネクチン、及び/又は、球状アディポネクチンの発現を誘導する化合物が、神経細胞におけるα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制する効果を損なわないことを条件として、特に限定されない。本発明の組成物の剤型は、例えば経鼻スプレー等の経鼻剤の場合がある。
本発明の組成物の製造は、医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理規範に適合した条件(good manufacturing practice、GMP)で実施されることが好ましい。
本発明の化合物の送達には、アディポネクチン、アディポネクチンの発現を誘導する化合物、球状アディポネクチン、及び/又は、球状アディポネクチンの発現を誘導する化合物の体内分布を、量的、空間的及び時間的に制御できる当業者に周知の送達システムを用いることができる。
本発明において、神経変性疾患とは、中枢神経系の神経細胞が異常タンパク質の蓄積により、徐々に変性していき、機能不全や細胞死に陥る進行性疾患をいう。前記神経変性疾患は、パーキンソン病、レビー小体型認知症、アルツハイマー病、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症、ピック病、及び、多系統萎縮症を含むが、これらに限定されない。本発明の神経変性疾患はα(alpha)シヌクレインの異常蓄積を伴う、いわゆるシヌクレイノパチーの場合がある。
本発明において、アディポネクチンは神経細胞内でα(alpha)シヌクレインと相互作用して、α(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化を抑制又は軽減し、あるいは、プロテアソーム活性低下を改善して、α(alpha)シヌクレインの凝集及び/又は蓄積を抑制する。しかし、本明細書の実施例に示すとおり、アディポネクチンはα(alpha)シヌクレインと直接タンパク質間相互作用を行うことが示されるので、細胞外でのα(alpha)シヌクレインの凝集物の形成を抑制又は軽減することによりシヌクレイノパチーの治療及び/又は予防という作用効果を奏することも本発明に含まれる。
本明細書においてヌクレオチド配列の相同性は、本発明のヌクレオチド配列と、比較対象のヌクレオチド配列との間でヌクレオチド配列が一致する部分が最も多くなるように整列させて、ヌクレオチド配列が一致する部分のヌクレオチドの数を本発明のヌクレオチド配列のヌクレオチドの総数で割った商の百分率で表される。同様に、本明細書においてアミノ酸配列の相同性は、本発明のアミノ酸配列と、比較対象のアミノ酸配列との間で配列が一致するアミノ酸残基の数が最も多くなるように整列させて、配列が一致するアミノ酸残基の数の合計を本発明のアミノ酸配列のアミノ酸残基の総数で割った商の百分率で表される。本発明のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列の相同性は、当業者に周知の配列整列プログラムCLUSTALWを使用することにより算出することができる。
本明細書において「ストリンジェントな条件」とは、当業者に周知のサザンブロットで以下の実験条件で行うことをいう。比較対象のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドをアガロース電気泳動によりバンドを形成させた上で毛管現象又は電気泳動によりニトロセルロースフィルターその他の固相に不動化する。6× SSC及び0.2% SDSからなる溶液で前洗浄する。本発明のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを放射性同位元素その他の標識物質で標識したプローブと前記固相に不動化された比較対象のポリヌクレオチドとの間のハイブリダイゼーション反応を6× SSC及び0.2% SDSからなる溶液中で65°C、終夜行う。その後前記固相を1× SSC及び0.1% SDSからなる溶液中で65°C、各30分ずつ2回洗浄し、0.2× SSC及び0.1% SDSからなる溶液中で65°C、各30分ずつ2回洗浄する。最後に前記固相に残存するプローブの量を前記標識物質の定量により決定する。本明細書において「ストリンジェントな条件」でハイブリダイゼーションをするとは、比較対象のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを不動化した固相に残存するプローブの量が、本発明のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを不動化した陽性対照実験の固相に残存するプローブの量の少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%以上であることをいう。
本発明の融合タンパク質は、特異的結合タグペプチドが前記(1)ないし(5)のいずれかのタンパク質のアミノ末端又はカルボキシル末端に連結したものである。
本発明の特異的結合タグペプチドは、前記(1)ないし(5)のいずれかのタンパク質を調製する際に、発現したタンパク質の検出、分離又は精製をより容易に行うことを可能にするために、他のタンパク質、多糖類、糖脂質、核酸及びこれらの誘導体、樹脂等と特異的に結合するポリペプチドである。特異的結合タグと結合するリガンドは、水溶液中に溶解した遊離状態の場合も固体支持体に不動化される場合もある。そこで、本発明の融合タンパク質は固体支持体に不動化されたリガンドに特異的に結合するため、発現系の他の成分を洗浄除去することができる。その後、遊離状態のリガンドを添加したり、pH、イオン強度その他の条件を変えることにより、固体支持体から前記融合タンパク質を分離して回収することができる。本発明の特異的結合タグは、Hisタグ、mycタグ、HAタグ、インテインタグ、MBP、GSTその他これらに類するポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。本発明の特異的結合タグは、融合タンパク質が神経細胞におけるヒトα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化を抑制する活性を保持することを条件として、いかなるアミノ酸配列を有してもかまわない。
本明細書において「組換えベクター」とは、所望の機能を有するタンパク質を宿主生物において発現させるために使用される、該所望の機能を有するタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドが組み込まれたベクターである。
本明細書において「ベクター」とは、所望の機能を有するタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドを組み込み宿主生物へ導入することにより、所望の機能を有するタンパク質を該宿主生物において複製及び発現させるためのプラスミド、ウイルス、ファージ、コスミド等を含むがこれらに限定されない。好ましくは前記ベクターはプラスミドの場合がある。
本発明の組換えベクターは、制限酵素、DNA連結酵素等を使用する当業者に周知の遺伝子工学手法を用いて本発明のタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドといずれかのベクターとを連結することにより作製される場合がある。
前記生物学的試料は、ヒト、実験動物の生体内から採取された細胞、組織及び器官と、培養細胞とを含むが、これらに限定されない。前記培養細胞は、生体内から採取した細胞の初代培養と、継代培養された細胞と、iPS細胞、外胚葉系幹細胞その他の多分化能を有する幹細胞から分化された細胞と、細胞株とを含むが、これらに限定されない。前記細胞株はB103神経芽細胞の場合がある。前記実験動物は、ノックアウト動物及びトランスジェニック動物を含む。前記トランスジェニック動物は、Thy−1−α(alpha)Sトランスジェニックマウス(α(alpha)S tgマウス)の場合がある。前記生物学的試料は、当業者に標準的な方法で調製することができる。前記生物学的試料の生物種は、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ヤギ及びブタを含むが、これらに限定されない。前記ヒトは、健常者と、神経変性疾患患者(例えば、パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、アルツハイマー病、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症、ピック病等)とを含むが、これらに限定されない。本発明において、前記生物学的材料は、in vitro、ex vivo、又は、in vivoで用いられる。
本発明のスクリーニング方法において、被験化合物は、微生物、菌類、植物及び動物から調製される化合物と、化学的に合成される化合物とを含むが、これらに限定されない。
本発明において、mRNAの量は、細胞内に存在する所望のmRNAの量の他、前記細胞における所望の遺伝子の転写活性を含む。前記細胞内に存在する所望のmRNAの量は、RT−PCR、ノザンブロットその他の固相雑種形成を含むがこれらに限定されない方法によって測定される。前記転写活性は、核酸コンストラクトを培養細胞に一時的又は永続的に導入することによって測定されるのが典型的である。前記核酸コンストラクトは、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β(beta)−ガラクトシダーゼ(LacZ)、ルシフェラーゼ(Luc)、緑色蛍光タンパク質(GFP)を含むレポータータンパク質遺伝子の発現を調節可能な場合がある。前記核酸コンストラクトはベクターの場合がある。前記細胞内に存在する所望のmRNAの量をRT−PCRによって測定するためには、配列表に示されたヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドが、プライマーの対として用いられる場合がある。
本発明において、mRNAの量は、測定するときの細胞の数又は全mRNAの量によって標準化された測定値として決定される場合がある。あるいは、同じ数の細胞が複数の同一容器、例えば、ウェル、ディッシュ、フラスコ等に播種される場合には、培養後の容器1つあたりの所望のmRNAの量は、被験化合物を添加する前の前記細胞の所望のmRNAの量を基準とする測定値で表される場合がある。さらに、本発明において、所望のmRNAの量は、同じ数の細胞が複数の同一容器、例えば、ウェル、ディッシュ、フラスコ等に播種される場合には、同一条件で処理された容器1つあたりの対照遺伝子のmRNAの量で標準化される場合がある。前記対照遺伝子は、いわゆるハウスキーピング遺伝子を含むが、これらに限定されず、例えば遺伝子発現アレイチップ等の手段で見つけることができる。本発明において、ハウスキーピング遺伝子は、28SrRNA、18SrRNA、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)、グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、β(beta)−アクチン、シクロフィリンA等を含むが、これらに限定されない。前記細胞内に存在するシクロフィリンAのmRNAの量をRT−PCRによって測定するためには、配列番号13及び14に示されたヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドが、プライマーの対として用いられる場合がある。本発明のスクリーニング方法において、被験化合物の効果は前記測定値を用いて比較される場合がある。
前記所望のmRNAは、成熟mRNA、スプライシング・バリアント及び未成熟mRNAを含むが、これらに限定されない。
本発明における固相雑種形成には、いわゆるノザンブロット法の他、遺伝子発現アレイチップへの雑種形成を含むが、これらに限定されない。
本発明において、タンパク質の量は、細胞により産生されたタンパク質の量の他、採取された生物学的試料中に存在するタンパク質の量を含む。所望のタンパク質の量は、ELISA、ウェスタンブロット、免疫沈降法及び免疫比濁法を含むが、これらに限定されない方法によって測定される。前記方法において、所望のタンパク質を特異的に認識する抗体が用いられる場合がある。前記抗体は、当業者に標準的な方法で調製されてもよく、商業的に入手可能な抗体であってもかまわない。
本発明において、タンパク質の量は、測定するときの細胞の数又は全タンパク質の量によって標準化された測定値として決定される場合がある。あるいは、同じ数の細胞が複数の同一容器、例えば、ウェル、ディッシュ、フラスコ等に播種される場合には、培養後の容器1つあたりの所望のタンパク質の量は、被験化合物を添加する前の前記細胞の所望のタンパク質の量を基準とする測定値で表される場合がある。さらに、本発明において、所望のタンパク質の量は、同じ数の細胞が複数の同一容器、例えば、ウェル、ディッシュ、フラスコ等に播種される場合には、同一条件で処理された容器1つあたりの対照タンパク質の量で標準化される場合がある。前記対照タンパク質は、いわゆるハウスキーピング遺伝子のタンパク質、例えば、β(beta)−アクチン、γ(gamma)−チューブリン等を含むが、これらに限定されない。ハウスキーピング遺伝子のタンパク質の量をELISA等によって測定するためには、前記タンパク質を特異的に認識する抗体が用いられる場合がある。本発明のスクリーニング方法において、被験化合物の効果は前記測定値を用いて比較される場合がある。
本発明において、リン酸化タウ及び/又はリン酸化酵素の量は、細胞により産生されたリン酸化タウ及び/又はリン酸化酵素の量の他、採取された生物学的試料中に存在するリン酸化タウ及び/又はリン酸化酵素の量を含む。所望のリン酸化タウ及び/又はリン酸化酵素の量は、ELISA、ウェスタンブロット、免疫沈降法及び免疫比濁法を含むが、これらに限定されない方法によって測定される。前記方法において、所望のリン酸化タウ又はリン酸化酵素を特異的に認識する抗体が用いられる場合がある。前記抗体は、当業者に標準的な方法で調製されてもよく、商業的に入手可能な抗体であってもかまわない。
本発明において、リン酸化タウ及び/又はリン酸化酵素の量は、測定するときの細胞の数又は全タンパク質の量によって標準化された測定値として決定される場合がある。あるいは、同じ数の細胞が複数の同一容器、例えば、ウェル、ディッシュ、フラスコ等に播種される場合には、培養後の容器1つあたりの所望のリン酸化タウ及び/又はリン酸化酵素の量は、被験化合物を添加する前の前記細胞の所望のリン酸化タウ及び/又はリン酸化酵素の量を基準とする測定値で表される場合がある。さらに、本発明において所望のリン酸化タウ及び/又はリン酸化酵素の量は、同じ数の細胞が複数の同一容器、例えば、ウェル、ディッシュ、フラスコ等に播種される場合には、同一条件で処理された容器1つあたりの対照のリン酸化タンパク質の量で標準化される場合がある。前記リン酸化酵素は、AMPK、p38 MAPK、及び/又は、GSK−3β(beta)を含むが、これらに限定されない。本発明のスクリーニング方法において、被験化合物の効果は前記測定値を用いて比較される場合がある。
本発明において、リン酸化酵素の活性は、細胞により産生されたリン酸化酵素の活性の他、採取された生物学的試料中に存在するリン酸化酵素の活性を含む。所望のリン酸化酵素の活性は、ELISAを含むが、これらに限定されない方法によって測定される。
本発明において、リン酸化酵素の活性は、測定するときの細胞の数又は全リン酸化酵素の活性によって標準化された測定値として決定される場合がある。あるいは、同じ数の細胞が複数の同一容器、例えば、ウェル、ディッシュ、フラスコ等に播種される場合には、培養後の容器1つあたりの所望のリン酸化酵素の活性は、被験化合物を添加する前の前記細胞の所望のリン酸化酵素の活性を基準とする測定値で表される場合がある。さらに、本発明において所望のリン酸化酵素の活性は、同じ数の細胞が複数の同一容器、例えば、ウェル、ディッシュ、フラスコ等に播種される場合には、同一条件で処理された容器1つあたりの対照のリン酸化酵素の活性で標準化される場合がある。本発明のスクリーニング方法において、被験化合物の効果は前記測定値を用いて比較される場合がある。
本発明において、凝集体の量は、細胞により産生された凝集体の量の他、採取された生物学的試料中に存在する凝集体の量を含む。所望の凝集体の量は、ELISA、ウェスタンブロット、免疫沈降法及び免疫比濁法を含むが、これらに限定されない方法によって測定される。前記方法において、所望の凝集体を特異的に認識する抗体が用いられる場合がある。前記抗体は、当業者に標準的な方法で調製されてもよく、商業的に入手可能な抗体であってもかまわない。
本発明において、凝集体の量は、測定するときの細胞の数又は全凝集体の量によって標準化された測定値として決定される場合がある。あるいは、同じ数の細胞が複数の同一容器、例えば、ウェル、ディッシュ、フラスコ等に播種される場合には、培養後の容器1つあたりの所望の凝集体の量は、被験化合物を添加する前の前記細胞の所望の凝集体の量を基準とする測定値で表される場合がある。前記凝集体は、α(alpha)シヌクレインの凝集体、アティポネクチン及びα(alpha)シヌクレインの凝集体を含むが、これらに限定されない。本発明のスクリーニング方法において、被験化合物の効果は前記測定値を用いて比較される場合がある。
本発明において、プロテアソームの活性は、培養細胞の他、採取された生物学的試料のプロテアソームの活性を含む。前記プロテアソームの活性は、商業的に入手可能なキットを用いて測定することができる。前記プロテアソームは、20S、26S等のプロテアソームの場合がある。
本発明において、プロテアソームの活性は、測定するときの細胞の数又は全プロテアソームの活性によって標準化された測定値として決定される場合がある。あるいは、同じ数の細胞が複数の同一容器、例えば、ウェル、ディッシュ、フラスコ等に播種される場合には、培養後の容器1つあたりの所望のプロテアソームの活性は、被験化合物を添加する前の前記細胞のプロテアソームの活性を基準とする測定値で表される場合がある。本発明のスクリーニング方法において、被験化合物の効果は前記測定値を用いて比較される場合がある。
本発明のスクリーニング方法において、アディポネクチンのsiRNA、アディポネクチン受容体のsiRNA及びアディポネクチン受容体阻害剤が用いられる場合がある。また、本発明のスクリーニング方法において、被験化合物以外の化合物の投与や、細胞培養の温度、ガス組成、ガス分圧や、飼育時の温度、給餌、明暗時間の変更等のスクリーニング条件が変更される場合がある。
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。
免疫細胞化学染色したPD及びDLB患者由来の脳サンプルの共焦点顕微鏡写真。 健常者及びDLB患者の脳サンプルから調製したさまざまな抽出画分を、抗アディポネクチン抗体、抗リン酸化α(alpha)シヌクレイン抗体、抗アディポネクチン受容体1抗体、及び、抗β(beta)−アクチン抗体を用いて検出したウェスタンブロット図。 図1Bの実験結果をまとめたグラフ。 α(alpha)S tgマウス及びnon tgマウスおけるアディポネクチンのmRNA量を調べた実験の電気泳動図。 図2Aの実験のmRNA量をまとめたグラフ。 α(alpha)S tgマウス及びnon tgマウスにおけるアディポネクチンタンパク質の量を調べた実験結果を示すウェスタンブロット図。 図2Cの実験結果をまとめたグラフ。 B103神経芽細胞(α(alpha)S)及びB103神経芽細胞(ベクター)におけるアディポネクチンのmRNA量を調べた実験の電気泳動図。 図3AのmRNA量をまとめたグラフ。 B103神経芽細胞(α(alpha)S)における界面活性剤可溶分画を抗アディポネクチン抗体、抗α(alpha)シヌクレイン抗体、抗アディポネクチン受容体1抗体、及び、抗β(beta)−アクチン抗体を用いて検出したウェスタンブロット図。 図3Cのアディポネクチンタンパク質の定量結果をまとめたグラフ。 B103神経芽細胞(α(alpha)S)及びB103神経芽細胞(ベクター)の共焦点顕微鏡写真。 B103神経芽細胞(α(alpha)S)及びB103神経芽細胞(ベクター)におけるα(alpha)シヌクレインタンパク質の凝集状態に対するアディポネクチンsiRNAの影響を調べた実験の結果を示すウェスタンブロット図。 B103神経芽細胞(α(alpha)S/Ad siRNA)及びB103神経芽細胞(ベクター/Ad siRNA)におけるα(alpha)シヌクレインタンパク質の凝集状態に対するアディポネクチンsiRNAの影響を調べた実験の結果を示すチオフラビンT染色細胞の共焦点顕微鏡写真。 図4Aの実験結果をまとめたグラフ。 B103神経芽細胞(α(alpha)S)及びB103神経芽細胞(ベクター)に10μMのMG132を添加した場合(+)又は添加しなかった場合(−)のアディポネクチンのmRNA量への影響を調べた実験の電気泳動図。 図5Aの実験結果をまとめたグラフ。 B103神経芽細胞(α(alpha)S)及びB103神経芽細胞(ベクター)におけるアディポネクチンの一過的発現の影響を調べた実験の結果を示すウェスタンブロット図。 B103神経芽細胞(α(alpha)S)及びB103神経芽細胞(ベクター)におけるα(alpha)シヌクレインタンパク質によるプロテアソーム活性低下に対するアディポネクチンの一過的発現の影響を調べた実験の結果を示すグラフ。 B103神経芽細胞(α(alpha)S)におけるα(alpha)シヌクレインタンパク質によるプロテアソーム活性低下に対するアディポネクチンの影響を調べた実験の結果を示すグラフ。 アディポネクチン組換えタンパク質の試験管内での凝集と、これに対するα(alpha)シヌクレイン組換えタンパク質の影響とを調べた実験結果のウェスタンブロット図。 図7Aの実験結果をまとめたグラフ。 B103神経芽細胞(α(alpha)S)及びB103神経芽細胞(ベクター)から調製したさまざまな抽出画分を、抗α(alpha)シヌクレイン抗体を用いて検出したウェスタンブロット図。 B103神経芽細胞(α(alpha)S)及びB103神経芽細胞(ベクター)から調製した界面活性剤可溶分画を、抗リン酸化AMPKα(alpha)抗体、抗AMPKα(alpha)抗体、抗リン酸化p38 MAPK抗体、抗p38α(alpha)/SAPK2a抗体、抗リン酸化GSK−3β(beta)(Ser9)抗体、抗GSK−3β(beta)抗体、及び、抗β(beta)−アクチンマウスモノクローナル抗体を用いて検出したウェスタンブロット図。 アディポネクチンと、p38 MAPK阻害剤又はAMPK阻害剤とで処理したB103神経芽細胞(α(alpha)S)から調製したTBS可溶分画、SDS可溶分画及びギ酸可溶分画を、抗α(alpha)シヌクレイン抗体を用いて検出したウェスタンブロット図。 アディポネクチンと、p38 MAPK阻害剤又はAMPK阻害剤とで処理したB103神経芽細胞(α(alpha)S)から調製した界面活性剤可溶分画を、抗リン酸化GSK−3β(beta)抗体を用いて検出したウェスタンブロット図。 B103神経芽細胞(α(alpha)S)から調製した界面活性剤可溶分画を、抗リン酸化タウ(Ser202)抗体及び抗リン酸化タウ(Ser396)抗体を用いて検出したウェスタンブロット図。 B103神経芽細胞(α(alpha)S)から調製したNP40可溶分画を用いて、抗α(alpha)シヌクレイン抗体を用いて免疫共沈降したリン酸化タウ(Ser202)を抗リン酸化タウ(Ser202)抗体を用いて検出したウェスタンブロット図。 siRNAをトランスフェクションしたB103神経芽細胞(α(alpha)S)から調製したギ酸可溶画分を、抗リン酸化α(alpha)シヌクレイン抗体を用いて検出したウェスタンブロット図。 蛍光免疫組織化学染色したα(alpha)S tgマウス及びnon tgマウスの脳サンプル(嗅脳、大脳皮質及び脳幹)の共焦点顕微鏡写真。 免疫組織化学染色したα(alpha)S tgマウス及びnon tgマウスの脳サンプル(視床)の顕微鏡写真。 免疫組織化学染色したα(alpha)S tgマウス及びnon tgマウスの脳サンプル(嗅脳)の顕微鏡写真。 免疫組織化学染色したα(alpha)S tgマウス及びnon tgマウスの脳サンプル(大脳皮質)の顕微鏡写真。 α(alpha)S tgマウス及びnon tgマウスから調製した界面活性剤不溶分画を、抗GFAP抗体を用いて検出したウェスタンブロット図。 α(alpha)S tgマウス及びnon tgマウスから調製したさまざまな抽出画分を、抗α(alpha)シヌクレイン抗体を用いて検出したウェスタンブロット図。
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。
以下の実験は公益財団法人東京都医学総合研究所(旧東京都神経科学総合研究所)の研究倫理委員会の承認(承認番号:2302、承認日:2011年4月1日)を得て実施された。
以下の実験は、アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health(NIH))のガイドラインに従って実施された。
ヒト脳におけるアディポネクチンの発現及び局在
1.材料及び方法
1.1 抗体
抗アディポネクチンC末端認識ウサギポリクローナル抗体(Novus Biologicals, LLC)、抗アディポネクチンN末端認識ウサギポリクローナル抗体(Abcam plc.)、抗アディポネクチン受容体1(AdipoR1)ヤギポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology, Inc)、抗α(alpha)シヌクレインマウスモノクローナル抗体(syn−1、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)、抗リン酸化α(alpha)シヌクレインマウスモノクローナル抗体(和光純薬工業株式会社)、抗β(beta)−アクチンマウスモノクローナル抗体(C−15、シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)が1次抗体として適宜希釈して用いられた。
蛍光免疫組織化学染色には、Alexa Fluor 488 標識抗ウサギ抗体及びAlexa Fluor 594標識抗マウス抗体(Invitrogen、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)が2次抗体として適宜希釈して用いられた。ウェスタンブロットには、HRP標識抗ウサギIgG抗体、HRP標識抗ヤギIgG抗体及びHRP標識抗マウスIgG抗体(DAKO)が2次抗体として適宜希釈して用いられた。
1.2 剖検脳
弧発性パーキンソン病(以下、「PD」という。)及び弧発性レビー小体型認知症(以下、「DLB」という。)の患者の脳サンプルと、健常者の脳サンプルとは福祉村病院ブレインバンクの赤津裕康先生から提供された。PD及びDLBの診断はCalneらの診断基準(Ann Neurol. 32(Suppl):S125(1992))と、DLBコンソーシアム(Mckeithら、Neurology 65:1863(2005))の報告とに基づいて行われた。前記脳サンプルは死後2時間で剖検され、ウェスタンブロット用のサンプルは−80°Cで凍結保存された。蛍光免疫組織化学染色用のサンプルは、PD患者の脳サンプル(中脳黒質)については4%パラホルムアルデヒド(PFA)で、DLB患者の脳サンプル(大脳皮質帯状回)についてはメタカン固定液(メタノール/クロロホルム/氷酢酸)で、それぞれ浸漬固定され、パラフィン包埋に供された。
1.3 蛍光免疫組織化学染色
蛍光免疫組織化学染色は当業者に周知な標準的な手順で行われた。簡潔には、前記脳サンプルはパラフィンで包埋され、薄切切片が4μmの厚さで作製された。脱パラフィン後、薄切切片は10mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)に入れられ、マイクロウエーブ(MW)を用いる抗原賦活処理(95°C、10分間)が施された。前記抗原賦活処理の後、前記薄切切片は10%ヤギ正常血清(Vector Laboratories, Inc.)/0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)/TBS(25mM Tris−HCl(pH7.5)、0.15M NaCl)で30分間ブッロキングされた。その後、前記薄切切片は0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)/TBSで希釈された1次抗体と4°Cで終夜インキュベーションされた。洗浄後、前記薄切切片は0.1% BSA/TBSで希釈されたAlexa Fluor標識2次抗体と室温で1時間インキュベーションされた。封入後、前記薄切切片は共焦点レーザー顕微鏡(FV1000、オリンパス株式会社)を用いて観察された。
1.4 さまざまな可溶分画の抽出及びウェスタンブロットによる検出
ウェスタンブロットは藤田らの方法に従って実施された(Fujitaら、Nat. Commun. 1:110(2010))。脳サンプルはTBSでホモジネート後、100,000×g、4°Cで30分間遠心分離され、上清がTBS可溶分画として回収された。TBS不溶性の沈殿物は1% SDSに溶かされ、100,000×gで遠心分離され、上清がSDS可溶分画として回収された。SDS不溶性の沈殿物は70%ギ酸(FA)に溶解され、20,000×gで遠心分離された。上清がギ酸可溶分画として回収され、遠心濃縮機(株式会社トミー精工)による減圧乾燥後、1×SDSサンプルバッファーに溶解された。それぞれの分画のタンパク質濃度がBioRad Protein Assay reagent(バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社)を使用して測定され、1つのレーンあたり10μgが2−メルカプトエタノール(2ME)を含む1×SDSサンプルバッファーに溶かされた。アディポネクチンを検出する場合には、サンプルは30分間震盪後、95°Cで10分間加熱された。その他の場合には、サンプルは震盪せずに95°C10分間加熱された。SDS−PAGE(10〜16%)後、ニトロセルロース膜(GEヘルスケア・ジャパン株式会社)にタンパク質が転写された。前記ニトロセルロース膜は、3% BSA/0.2% Tween 20が添加されたTBSで30分間ブロッキングされた後、3% BSA/0.2% Tween 20が添加されたTBSで希釈した1次抗体と4°Cで終夜インキュベーションされた。その後、前記ニトロセルロース膜は、0.2% Tween 20が添加されたTBSで洗浄後、2次抗体とインキュベーションされ、抗原抗体複合体がECL Plus kit(GEヘルスケア・ジャパン株式会社)により検出された。
2 結果
2.1 免疫組織化学染色
図1Aは、免疫細胞化学染色したPD及びDLB患者由来の脳サンプルの共焦点顕微鏡写真である。図1Aの写真のそれぞれの上部に用いた1次抗体が示される。図1Aの上段ではPD患者由来の黒質サンプルが用いられ、図1Aの下段ではDLB患者由来の大脳皮質サンプルが用いられた。「重ね合わせ」は、2枚の写真の画像を合成したことを意味する。抗アディポネクチン抗体及び抗リン酸化α(alpha)シヌクレイン抗体はそれぞれAlexa Fluor 488 標識抗ウサギ抗体及びAlexa Fluor 594標識抗マウス抗体で検出されるため、アディポネクチン及びリン酸化α(alpha)シヌクレインはそれぞれ緑色及び赤色に染色される。そして両方の抗原が共局在する場合には、合成された画像では黄色になる。図1Aに示されるとおり、アディポネクチン(APN)及びリン酸化α(alpha)シヌクレイン(リン酸化α(alpha)S)はレビー小体の明暈(ハロー)で共局在することが観察された。
2.2 各可溶分画ごとのタンパク質の定量
図1Bは、健常者及びDLB患者の脳サンプルから調製したさまざまな抽出画分を、抗アディポネクチン抗体、抗リン酸化α(alpha)シヌクレイン抗体、抗アディポネクチン受容体1抗体、及び、抗β(beta)−アクチン抗体を用いて検出したウェスタンブロット図である。図1Cは、図1Bの実験結果をまとめたグラフである。各実験条件の誤差棒は同一条件で4回繰り返した実験結果の測定値の標準誤差を示す。統計学的検定には、one−way ANOVA及びTukey’s post hoc テストが用いられた(Prism4、GraphPad Software, Inc.)。アステリスク(**)はp値が1%未満であることを示す。図1B及び1Cに示されるとおり、SDS可溶画分中のAPN及びリン酸化α(alpha)シヌクレインは健常者よりもDLB患者で多かった。SDS画分中のアディポネクチン量は健常者よりもDLB患者で統計学的に有意に多かった。ギ酸可溶画分中のリン酸化α(alpha)シヌクレインは健常者よりもDLB患者で多かった。しかし、アディポネクチンはギ酸可溶画分では検出されなかった。したがって、SDSで溶解できる程度のα(alpha)シヌクレインの凝集体にアディポネクチンが結合していることが示された。
従来の知見では、アディポネクチンは成人の脳では発現しないとされてきた。しかし本実施例の実験結果から、レビー小体の明暈におけるアディポネクチン及びリン酸化α(alpha)シヌクレインの共局在が示された。また、アディポネクチンはDLB患者で不溶化していることが示された。したがって、アディポネクチンは、リン酸化α(alpha)シヌクレインとともにレビー小体の形成に関与する可能性が示された。
脳特異的にα(alpha)シヌクレインを発現するThy−1−α(alpha)Sトランスジェニックマウスでのアディポネクチン発現
1.材料及び方法
1.1 トランスジェニック動物
Thy−1−α(alpha)Sトランスジェニックマウス(以下、α(alpha)S tgマウスという。)は、Thy−1プロモーターにより神経細胞特異的にヒトα(alpha)シヌクレイン遺伝子を発現する(カリフォルニア大学サンジエゴ校、Eliezer Masliah教授より寄贈、Rockensteinら、J. Neurosci. Res.66:573(2002))。α(alpha)S tgマウスは東京都医学総合研究所内のSPF動物室において飼育、繁殖された。C57BL/6(日本クレア株式会社)と交配され、PCRにより遺伝子診断を行って、トランスジーンを有するマウスを実験群とし、同腹仔の野生型マウス(以下、non tgマウスという。)を対照群とした。7ヶ月齢のオスα(alpha)S tgマウス及びnon tgマウスは麻酔後、0.1Mリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を灌流して脱血され、頸椎脱臼により安楽死された。脳サンプルは液体窒素により凍結され、−80°Cで保存された。
1.2 アディポネクチンmRNAの定量
RT−PCRは藤田らの方法を用いて実施された(Fujitaら、Nat. Commun. 1:110(2010))。α(alpha)S tgマウス及びnon tgマウスの脳凍結サンプルからISOGEN(株式会社 ニッポンジーン)により全RNAが抽出され、37°Cで30分間のDNase(DNase 1、Invitrogen、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)処理が施された。cDNAはSuperscript III Fisrst−Strand Synthsis system(Invitrogen、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いて2.5μgの全RNAから合成された。
逆転写産物は以下のプライマーを用いたPCRにより増幅された。
マウスアディポネクチンフォワードプライマー:5’−CTACAACTGAAGAGCTAGCTCCTG−3’(配列番号1)
マウスアディポネクチンリバースプライマー:5’−CACACTGAACGCTGAGCGATACAC−3’(配列番号2)
ラットアディポネクチンフォワードプライマー:5’−GGACAACAATGGACTCTATGCAGATA−3’(配列番号3)
ラットアディポネクチンリバースプライマー:5’−CTACGGGCTGCTCTGAATTAGGTG−3’(配列番号4)
マウスアディポネクチン受容体1(AdipoR1)フォワードプライマー:5’−CAACATCTGGACACATCTGCTTGG−3’(配列番号5)
マウスアディポネクチン受容体1(AdipoR1)リバースプライマー:5’−GTAGAGCAATCCCTGAATAGTCCAG−3’(配列番号6)
ラットアディポネクチン受容体1(AdipoR1)フォワードプライマー:5’−ATCTTCCGCATCCACACAGAA−3’(配列番号7)
ラットアディポネクチン受容体1(AdipoR1)リバースプライマー:5’−ATATTTGGTCTGAGCATGGTCAAG−3’(配列番号8)
マウスアディポネクチン受容体2(AdipoR2)フォワードプライマー:5’−TTGGACACATCTCCTAGGTTGTGTA−3’(配列番号9)
マウスアディポネクチン受容体2(AdipoR2)リバースプライマー:5’−CACAGATGACAATCAGGTAGATGAAG−3’(配列番号10)
ラットアディポネクチン受容体2(AdipoR2)フォワードプライマー:5’−AGATAGGCTGGCTAATGCTCATG−3’(配列番号11)
ラットアディポネクチン受容体2(AdipoR2)リバースプライマー:5’−GATGTCACATTTGCCAGGAAAG−3’(配列番号12)
マウス及びラットのシクロフィリンAフォワードプライマー:5’−TCCATGGCAAATGCTGGAC−3’(配列番号13)
マウス及びラットのシクロフィリンAリバースプライマー:5’−GTCTTGCCATTCCTGGACCC−3’(配列番号14)
PCRの反応条件は、94°C、5分間の後、95°C、30秒間と、55°C、30秒間と、72°C、60秒間とを35回繰り返した後、72°C、10分間の後4°Cで静置する条件であった。PCR産物は1.2%アガロースゲルで電気泳動された。各遺伝子のmRNAの量は、臭化エチジウム染色されたPCR産物のバンドの濃度がデンシトメーター(ATTO)によって定量化された。アディポネクチンのmRNA量はシクロフィリンAのmRNA量で標準化された。
1.3 各可溶分画ごとのタンパク質の定量
さまざまな可溶分画の抽出及びウェスタンブロットによる検出は実施例1で説明された手順に従って実施された。タンパク質サンプルが前記α(alpha)S tgマウス及びnon tgマウスの大脳皮質から当業者に周知な標準的な方法で調製された。抗アディポネクチン抗体、抗アディポネクチン受容体1抗体、及び、抗β(beta)−アクチン抗体が1次抗体として用いられた。HRP標識抗ウサギIgG抗体、HRP標識抗ヤギIgG抗体及びHRP標識抗マウスIgG抗体(DAKO)が2次抗体として用いられた。各タンパク質の量は、発光反応で検出されたバンドの濃度がImage J (NIH: National Institutes of Health)によって定量化された。アディポネクチンタンパク質の量はβ(beta)−アクチンタンパク質の量で標準化された。
2.結果
2.1 アディポネクチンmRNAの定量
図2Aは、α(alpha)S tgマウス及びnon tgマウスの脳におけるアディポネクチンのmRNA量を調べた実験の電気泳動図である。図2Bは図2Aの実験のmRNA量をまとめたグラフである。各誤差棒は、α(alpha)S tgマウス又はnon tgマウス(各8ないし9匹)のシクロフィリンAで標準化されたアディポネクチンのmRNA量の標準誤差を示す。アステリスク(**)はone−way ANOVA及びTukey’s post hoc テストによる検定でp値が1%未満であることを示す。アディポネクチンのmRNA量は、non tgマウスよりもα(alpha)S tgマウスで統計学的に有意に多かった。
2.2 各可溶分画ごとのタンパク質の定量
図2Cは、α(alpha)S tgマウス及びnon tgマウスにおけるアディポネクチンタンパク質の量を調べた実験結果を示すウェスタンブロット図である。図2Dは図2Cの実験結果をまとめたグラフである。各誤差棒は、α(alpha)S tgマウス又はnon tgマウス(各8−9匹)のβ(beta)−アクチンで標準化されたアディポネクチンタンパク質の量の標準誤差を示す。アステリスク(*)はone−way ANOVA及びTukey’s post hoc テストによる検定でp値が5%未満であることを示す。アディポネクチンタンパク質の量は、non tgマウスよりもα(alpha)S tgマウスで統計学的に有意に多かった。本実施例の実験結果から、α(alpha)シヌクレインを発現する脳ではアディポネクチンの遺伝子発現が誘導されることが示された。
α(alpha)シヌクレインを発現する培養神経細胞でのアディポネクチン発現
1.材料及び方法
1.1 細胞培養
ラットB103神経芽細胞は、10%ウシ胎仔血清(FBS、BioWest、フナコシ株式会社)と、1%v/vペニシリン/ストレプトマイシン(カタログ番号:15070−063、Invitrogen、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)とを添加した高グルコースダルベッコ変法イーグル培地(以下、「DMEM」という。GIBCO、Invitrogen、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)で37°C、5% CO2条件下で培養・継代された。
1.2 α(alpha)シヌクレインを強制発現するラットB103神経芽細胞の調製
竹之内らにより作製されたpCEP4−α(alpha)シヌクレインコンストラクト(Takenouchiら、Mol. Cell. Neurosci.,17:141(2001))がα(alpha)シヌクレインのcDNAを恒常的に発現するために用いられた。前記pCEP4−α(alpha)シヌクレインコンストラクトをトランスフェクションしたB103神経芽細胞(以下、B103神経芽細胞(α(alpha)S)という。)はTakenouchiら(Mol. Cell. Neurosci.,17:141(2001))によって説明された手順に従って調製された。対照群として、α(alpha)シヌクレインcDNAが挿入されない空のpCEP4発現ベクターをトランスフェクションしたB103神経芽細胞(以下、B103神経芽細胞(ベクター)という。)が用いられた。前記コンストラクトがトランスフェクションされたB103細胞をハイグロマイシン(100μg/mL、Calbiochem、メルク株式会社)存在下で選択し、得られたハイグロマイシン耐性B103細胞クローンのうち、α(alpha)シヌクレインを安定的に発現するクローンがα(alpha)シヌクレインを発現する神経芽細胞として本実施例の実験に用いられた。
1.3 アディポネクチンのmRNA及びタンパク質の定量
B103神経芽細胞(α(alpha)S)及びB103神経芽細胞(ベクター)におけるアディポネクチンのmRNA及びタンパク質の定量は実施例1及び2で説明された手順に従って実施された。
1.4 免疫細胞化学染色
各細胞はポリリジンでコーティングしたカバーガラス上に増殖され、70%コンフルエント程度の状態において4%パラホルムアルデヒドで15分間固定され、さらに0.1% TritonX−100(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)で15分間処理されて、細胞膜の透過性が亢進された。前記各細胞は、PBSで洗浄後、10%正常ヤギ血清(Vector、フナコシ株式会社)/0.1% BSA/TBSで30分間固定された。前記各細胞は、PBSで洗浄後、0.1% BSA/TBSに希釈された1次抗体と4°Cで終夜インキュベーションされた。洗浄後、前記各細胞は、0.1% BSA/TBSで希釈されたAlexa Fluor標識2次抗体と室温で1時間インキュベーションされた。封入後、前記各細胞は、共焦点レーザー顕微鏡(FV1000、オリンパス株式会社)を用いて観察された。
2.結果
2.1 アディポネクチンmRNAの定量
図3Aは、B103神経芽細胞(α(alpha)S)及びB103神経芽細胞(ベクター)におけるアディポネクチンのmRNA量を調べた実験の電気泳動図である。図3Bは図3AのmRNA量をまとめたグラフである。各誤差棒は、6個の同一条件のサンプルのシクロフィリンAで標準化されたアディポネクチンタンパク質の量の標準誤差を示す。アステリスク(*)はone−way ANOVA及びTukey’s post hoc テストによる検定でp値が5%未満であることを示す。図3A及び3Bから示されるとおり、アディポネクチンのmRNA量は、空ベクターがトランスフェクションされた神経芽細胞の対照群と比較して、pCEP4−α(alpha)シヌクレインコンストラクトがトランスフェクションされ、α(alpha)シヌクレインを発現する神経芽細胞で統計学的に有意に多かった。
2.2 各可溶分画ごとのタンパク質の定量
図3Cは、B103神経芽細胞(α(alpha)S)における界面活性剤可溶分画を抗アディポネクチン抗体、抗α(alpha)シヌクレイン抗体、抗アディポネクチン受容体1抗体、及び、抗β(beta)−アクチン抗体を用いて検出したウェスタンブロット図である。図3Dは、図3Cのアディポネクチンタンパク質の定量結果をまとめたグラフである。各誤差棒は、6個の同一条件のサンプルのβ(beta)−アクチンで標準化されたアディポネクチンタンパク質の量の標準誤差を示す。アステリスク(**)はone−way ANOVA及びTukey’s post hoc テストによる検定でp値が1%未満であることを示す。アディポネクチンタンパク質の量は、空ベクターがトランスフェクションされたB103神経芽細胞の対照群と比較して、pCEP4−α(alpha)シヌクレインコンストラクトがトランスフェクションされ、α(alpha)シヌクレインを発現するB103神経芽細胞で統計学的に有意に多かった。
2.3 免疫細胞化学染色
図3Eは、B103神経芽細胞(α(alpha)S)及びB103神経芽細胞(ベクター)の共焦点顕微鏡写真である。用いられた1次抗体は図3Eの写真のそれぞれの左上に示される。図3Eの上段はB103神経芽細胞(α(alpha)S)であり、下段はB103神経芽細胞(ベクター)である。「重ね合わせ」は、2枚の写真の画像を合成したことを意味する。抗アディポネクチン抗体及び抗α(alpha)シヌクレイン抗体はそれぞれAlexa Fluor 488 標識抗ウサギ抗体及びAlexa Fluor 594標識抗マウス抗体で検出されるため、アディポネクチン及びα(alpha)シヌクレインはそれぞれ緑色及び赤色に染色される。そして両方の抗原が共局在する場合には、合成された画像では黄色になる。図3Eに示されるとおり、アディポネクチン(APN)及びα(alpha)シヌクレイン(α(alpha)S)はB103神経芽細胞(α(alpha)S)の周辺部で共局在することが観察された。本実施例の実験結果から、B103神経芽細胞(α(alpha)S)では、アディポネクチンも発現しα(alpha)シヌクレインと共局在することが示された。そこで、α(alpha)シヌクレインの発現によってアディポネクチンの発現が誘導されることが示された。
siRNAを用いたアディポネクチンの発現抑制
1.材料及び方法
1.1 siRNAの導入
ラットアディポネクチンのセンス鎖RNA:5’−CAAUGACUCUACAUUUACAtt−3’(配列番号15)と、アンチセンス鎖RNA:5’−UGUAAAUGUAGAGUCAUUGtt−3’(配列番号16)と、対照実験のランダム配列のセンス鎖RNA:5’−UCUUAAUCGCGUAUAAGGCtt−3’(配列番号17)と、アンチセンス鎖RNA:5’−GCCUUAUACGCGAUUAAGAtt−3’(配列番号18)とはTakara siRNA Design Support System(http://www.takara−bio.co.jp/rnai/)(タカラバイオ株式会社)を利用して調製された。B103神経芽細胞(α(alpha)S)と、対照実験のB103神経芽細胞(ベクター)とが市販の6穴プレートで培養され、30〜50%コンフルエント程度の状態でLipofectamine2000(Invitrogen、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いてトランスフェクションされた。トランスフェクション6時間後に培地が10%FBS含有DMEMに交換された。24時間培養後、培地は、FBS中のアディポネクチンによる影響を避けるため無血清DMEM培地に置換された。さらに3日間培養された後、トランスフェクションしたB103神経芽細胞が回収され、α(alpha)シヌクレインの凝集状態の検出と、プロテアソーム活性の測定とに供された。また、チオフラビンT染色用のB103細胞はポリリジンコートをしたカバーガラスの上でトランスフェクションが行われた。前記B103神経芽細胞は無血清培地で培養された後、4%パラホルムアルデヒドで20分間固定された。前記B103神経芽細胞はPBSで洗浄された後、0.1%チオフラビンT(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)で7分間染色された。
1.2 各可溶分画の抽出及びウェスタンブロットによる検出
各可溶分画の抽出と、ウェスタンブロットによる各可溶分画ごとのタンパク質の定量は実施例1ないし3と同様の手順で実施された。
1.3 プロテアソーム活性の測定
siRNAが導入されたB103神経芽細胞は、HEPESバッファー(50mM HEPES(pH 7.4)、10mM EDTA、10mM NaCl)にて回収された。その後、凍結融解を繰り返すことで細胞膜が破壊され、20,000×g、4°Cで10分間遠心分離することによって上清が回収された。タンパク質濃度が測定され、10μgが40μMのbenzyloxycarbonyl−Leu−Leu−Glu−amidomethylcoumarin蛍光プロテアソーム基質(Chemicon、日本ミリポア株式会社)を含むHEPESバッファーに溶解された。プロテアソームの活性は、基質の分解量をBerthold Mithras LB940 マイクロプレートリーダー(ベルトールドジャパン株式会社)により1時間、37°C(励起波長380nm、測定波長460nm)の条件で経時的に測定することで算出された。
2.結果
図4Aは、B103神経芽細胞(α(alpha)S)及びB103神経芽細胞(ベクター)におけるα(alpha)シヌクレインタンパク質の凝集状態に対するアディポネクチンsiRNAの影響を調べた実験の結果を示すウェスタンブロット図である。B103神経芽細胞(α(alpha)S)と、対照実験のB103神経芽細胞(ベクター)とに、アディポネクチンのアンチセンス鎖siRNA(APN siRNA)又は対照実験のランダム配列のsiRNA(ランダム配列)が導入され、72時間培養後に、培養上清と、TBS、SDS及びギ酸で順次抽出されて得られた可溶分画とがウェスタンブロットにより解析された結果である。図4Aに示されるとおり、B103神経芽細胞(α(alpha)S)におけるアディポネクチンの発現がsiRNAで抑制されない場合には、α(alpha)シヌクレインは培養上清、TBS及びSDS可溶分画で検出されるが、ギ酸可溶分画では検出されなかった。しかし、アディポネクチンの発現がsiRNAで抑制される場合には、α(alpha)シヌクレインはギ酸可溶分画でも検出された。
図4Bは、B103神経芽細胞(α(alpha)S/Ad siRNA)及びB103神経芽細胞(ベクター/Ad siRNA)におけるα(alpha)シヌクレインタンパク質の凝集状態に対するアディポネクチンsiRNAの影響を調べた実験の結果を示すチオフラビンT染色細胞の共焦点顕微鏡写真である。アディポネクチンのアンチセンス鎖siRNAが導入されたα(alpha)シヌクレインを発現するB103神経芽細胞(α(alpha)S/Ad siRNA)と、対照実験の空の発現ベクターがトランスフェクションされたB103神経芽細胞(ベクター/Ad siRNA)とをそれぞれチオフラビンT染色によりタンパク質の凝集を確認したところ、アディポネクチンの発現が抑制されたα(alpha)シヌクレイン発現神経芽細胞ではチオフラビンT陽性像が観察され、タンパク質の凝集が示された。
図4Cは図4Aの実験結果をまとめたグラフである。各誤差棒は、4ないし5個の同一条件のサンプルのプロテアソーム活性の測定値の標準誤差を示す。アステリスク(*)はone−way ANOVA及びTukey’s post hoc テストによる検定でp値が5%未満であることを示す。アステリスク(***)はone−way ANOVA及びTukey’s post hoc テストによる検定でp値が0.1%未満であることを示す。図4Cに示すとおり、B103神経芽細胞(α(alpha)S/Ad siRNA)では、対照実験のB103神経芽細胞(ベクター/Ad siRNA)と比較してプロテアソーム活性が低下した。さらに、アディポネクチンのsiRNAが導入されたB103神経芽細胞では、ランダム配列のsiRNAが導入されたB103細胞と比較してプロテアソーム活性が低下した。本実施例の結果から、α(alpha)シヌクレインの発現はプロテアソーム活性を低下させ、アディポネクチンはプロテアソーム活性低下を部分的に阻害することが示された。
プロテアソーム機能阻害によるアディポネクチン発現誘導
1.材料及び方法
MG132(Calbiochem、メルク株式会社)がプロテアソーム阻害剤として用いられた。DMSO中に10mMのMG132を溶解したストック溶液が調製され、10μMのMG132を含む10% FBS添加DMEM培地が用時調製された。80−90%コンフルエント程度のB103神経芽細胞の培地がMG132を含む10% FBS添加DMEM培地に交換された。6時間後、前記細胞は回収され、アディポネクチンmRNAの発現がRT−PCRにより測定された。
2.結果
図5Aは、B103神経芽細胞(α(alpha)S)及びB103神経芽細胞(ベクター)に10μMのMG132を添加した場合(+)又は添加しなかった場合(−)のアディポネクチンのmRNA量への影響を調べた実験の電気泳動図である。図5Bは図5Aの実験結果をまとめたグラフである。各誤差棒は、5ないし6個の同一条件のサンプルのシクロフィリンAで標準化されたアディポネクチンのmRNA量の標準誤差を示す。アステリスク(*)はone−way ANOVA及びTukey’s post hoc テストによる検定でp値が5%未満であることを示す。アステリスク(**)はone−way ANOVA及びTukey’s post hoc テストによる検定でp値が1%未満であることを示す。図5Bに示されるとおり、α(alpha)シヌクレインが強制的に発現されたB103神経芽細胞ではアディポネクチンの発現が誘導されたが、α(alpha)シヌクレインの発現の有無にかかわらず、MG132によりプロテアソーム活性が低下するとアディポネクチンの発現誘導が増大した。
アディポネクチンの過剰発現によるα(alpha)シヌクレインの凝集及びプロテアソーム活性への影響
1.材料及び方法
1.1 アディポネクチンの発現ベクターコンストラクトの作製
マウスのcDNA遺伝子ライブラリーからアディポネクチンに特異的な配列を含むプライマーが設計された。アディポネクチンのN−末端の塩基配列を含むフォワードプライマー(N−adiponectin)5’−GGGATGCTACTGTTGCAAGCT−3’(配列番号19)と、アディポネクチンのC−末の塩基配列を含むリバースプライマー(C−adiponectin)5’−GAGTAGTTGCAGTCAGTTGGTATCATG−3’(配列番号20)とのプライマーが調製され、マウスアディポネクチンのcDNAがマウス脂肪組織から得られたcDNAを鋳型にしてPCR反応により増幅された。得られたDNA断片を1%アガロースゲルで分離し、アディポネクチンcDNAのバンドをゲルから切り出して、DNAが精製された。その後、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(タカラバイオ株式会社)により前記アディポネクチンcDNA断片の5’末端にリン酸基が付加された。制限酵素PvuIIであらかじめ消化されたpCEP4ベクター(Invitrogen、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)がアルカリフォスファターゼで脱リン酸化された。脱リン酸化pCEP4のPyuII部位にリン酸化アディポネクチン断片がT4リガーゼ(タカラバイオ株式会社)により挿入された。その結果、アディポネクチンの全長を含む発現ベクターコンストラクトpCEP4−APNが得られた。その後、塩基配列の決定によりpCEP4−APNの構造が確認された。
1.2 アディポネクチンを過剰発現するB103神経芽細胞(α(alpha)S)の作製
アディポネクチンを安定的に発現するラットB103神経芽細胞は前記pCEP4−APN発現ベクターコンストラクトをラットB103神経芽細胞(α(alpha)S)及びB103神経芽細胞(ベクター)にトランスフェクションして作製された。簡潔には、約80%コンフルエント程度のB103神経芽細胞(α(alpha)S)及びB103神経芽細胞(ベクター)にリポフェクタミン2000(Invitrogen、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いてpCEP4−APNが導入された。対照として、空のpCEP4発現ベクターがB103神経芽細胞(α(alpha)S)及びB103神経芽細胞(ベクター)に導入された。前記導入後、培養培地はDMEM培地に置換され、48時間後に前記細胞は回収された。
α(alpha)シヌクレインの可溶性
その後、TBS可溶分画、SDS可溶分画及びギ酸可溶分画が、実施例1で説明された方法に従って調製された。アディポネクチンの発現及びα(alpha)シヌクレインの可溶性はウェスタンブロットにより確認された。前記ウェスタンブロットは実施例1で説明された方法に従って行われた。
プロテアソーム活性の測定
0、0.5又は1μg/ウェルのpCEP4−APNが、6穴プレートに培養したB103細胞(α(alpha)S)にトランスフェクションされた(黒塗り)。対照として、空のpCEP4発現ベクターが、培養したB103細胞(ベクター)にトランスフェクションされた(白抜き)。48時間後、トランスフェクションした細胞はHEPESバッファーで回収された、プロテアソーム活性が測定された。前記プロテアソーム活性の測定は、実施例4で説明された方法に従って行われた。
2.結果
図6Aは、B103神経芽細胞(α(alpha)S)及びB103神経芽細胞(ベクター)におけるアディポネクチンの一過的発現の影響を調べた実験の結果を示すウェスタンブロット図である。図6Aに示されるとおり、B103神経芽細胞(α(alpha)S)においてアディポネクチンの一過性発現を行わなかった場合には、α(alpha)シヌクレインはTBS、SDS及びギ酸の可溶分画全てで検出された。しかしB103神経芽細胞(α(alpha)S)においてアディポネクチンの一過性発現を行った場合には、α(alpha)シヌクレインはTBS及びSDSの可溶分画では検出されたが、ギ酸可溶分画では検出されなかった。これは、アディポネクチンが過剰に発現された場合には、α(alpha)シヌクレインはSDSに不溶性の凝集体は形成しなかったことを意味する。すなわち、アディポネクチンの過剰発現によりα(alpha)シヌクレインの凝集が抑制された。
図6Bは、B103神経芽細胞(α(alpha)S)及びB103神経芽細胞(ベクター)におけるα(alpha)シヌクレインタンパク質によるプロテアソーム活性低下に対するアディポネクチンの一過的発現の影響を調べた実験の結果を示すグラフである。各誤差棒は、5ないし7個の同一条件のサンプルのプロテアソーム活性の測定値の標準誤差を示す。アステリスク(**)はone−way ANOVA及びTukey’s post hoc テストによる検定でp値が1%未満であることを示す。図6Bに示すとおり、アディポネクチンを一過的に発現したB103神経芽細胞(α(alpha)S)では、α(alpha)シヌクレインによるプロテアソーム活性低下を実質的に回復できた。これは、アディポネクチンの過剰発現にはα(alpha)シヌクレインによる神経変性疾患を治療及び/又は改善できる効果があることを示す。
アディポネクチン添加によるプロテアソーム活性低下に対する影響
1.材料及び方法
細胞培養は実施例1で説明された方法に従って行われた。前記細胞培養では、B103神経芽細胞(α(alpha)S)が、80〜90%コンフルエント程度の状態まで市販の6穴プレートで培養された。その後、前記細胞は洗浄され、1μg/mLの組換えヒトアディポネクチン(ProSpec、岩井化学薬品株式会社)含有培地で培養された(APN)。PBSが対照として用いられた(control)。24時間後、前記B103神経芽細胞(α(alpha)S)はHEPESバッファーで回収され、プロテアソーム活性が測定された。前記プロテアソーム活性の測定は、実施例4で説明された方法に従って行われた。
2.結果
図7は、B103神経芽細胞(α(alpha)S)におけるα(alpha)シヌクレインタンパク質によるプロテアソーム活性低下に対するアディポネクチンの影響を調べた実験の結果を示すグラフである。各誤差棒は、6個の同一条件のサンプルのプロテアソーム活性の測定値の標準誤差を示す。アステリスク(*)はone−way ANOVA及びTukey’s post hoc テストによる検定でp値が5%未満であることを示す。図7に示すとおり、アディポネクチンを添加したB103神経芽細胞(α(alpha)S)では、α(alpha)シヌクレインによるプロテアソーム活性低下が統計学的に有意に改善された。これは、アディポネクチンにはα(alpha)シヌクレインによる神経変性疾患を治療及び/又は改善できる効果があることを示す。
α(alpha)シヌクレイン及びアディポネクチンのタンパク質間相互作用
1.材料及び方法
ヒトアディポネクチンの組換えタンパク質(ProSpec、岩井化学薬品株式会社)0.5μgと、ヒトα(alpha)シヌクレインの組換えタンパク質(Hashimotoら、Brain Res. 799:301(1998))1.0μgとが100mM酢酸ナトリウム溶液中で37°C、500rpm(Thermomixer、エッペンドルフ株式会社)で48時間インキュベーションされた。その後、実施例1ないし6と同様の手順でウェスタンブロットにより解析された。各サンプルは2MEを含まない1×サンプルバッファーに溶解され、95°Cで10分間加熱された。対照実験では、室温でインキュベーションが行われた。また、α(alpha)シヌクレインの代わりにBSA(1.0μg)がアディポネクチンとインキュベーションされた。
2.結果
図8Aは、アディポネクチン組換えタンパク質の試験管内での凝集と、これに対するα(alpha)シヌクレイン組換えタンパク質の影響とを調べた実験結果のウェスタンブロット図である。各実験条件ごとに異なる2個のサンプルが調製され、隣接したレーンで電気泳動が行われた。図8Aに示されるとおり、アディポネクチンは室温でも2量体及び3量体が検出されたが、37°Cでのインキュベーションでは2量体が増大した。アディポネクチンにα(alpha)シヌクレインを添加してインキュベーションを行うとき、アディポネクチンの2量体がさらに増大するとともに、ほとんど分離されないアディポネクチンの凝集体がゲルの上端に検出された。α(alpha)シヌクレインの代わりにBSAを添加してアディポネクチンとともにインキュベーションを行うときには、アディポネクチンの凝集状態はアディポネクチン単独でインキュベーションされたときとほぼ同様であった。
図8Bは、図8Aの実験結果をまとめたグラフである。各誤差棒は、45個の同一条件のサンプルについて、図8Aのウェスタンブロット図の左に「aggregate」と示された範囲のデンシトメーターの測定値の標準誤差を示す。アステリスク(***)はone−way ANOVA及びTukey’s post hoc テストによる検定でp値が0.5%未満であることを示す。「n.s.」は前記検定で有意差が認められなかったことを示す。図8Bから明らかなとおり、α(alpha)シヌクレインの存在下ではアディポネクチンの凝集が有意に促進された。
本実施例の結果から、アディポネクチンとα(alpha)シヌクレインとの間には直接的なタンパク質間相互作用が生じていることが示された。そこで、アディポネクチンは、神経細胞内でのα(alpha)シヌクレインの凝集の阻害又は抑制に関与するだけでなく、細胞外でのα(alpha)シヌクレインの凝集物の形成の抑制又は軽減に関与することが想定される。
アディポネクチンによるα(alpha)シヌクレインの凝集、シグナル伝達及びタウのリン酸化への影響
1.材料及び方法
1.1 アディポネクチンの添加実験(1)(α(alpha)シヌクレインの凝集)
B103神経芽細胞(α(alpha)S)と、B103神経芽細胞(ベクター)とは、実施例3で説明された方法に従って調製され、培養された。前記B103神経芽細胞(α(alpha)S)及びB103神経芽細胞(ベクター)は6穴プレートに播種され、80〜90%コンフルエント程度に培養された。PBS洗浄後、前記細胞は、組換えヒトアディポネクチン(1μg/mL、3量体、PROSPEC)を無血清培地に添加した試験培地で24時間培養された。対照として、前記組換えヒトアディポネクチンの代わりにPBSを添加した対照培地が用いられた。培養後、TBS可溶分画、SDS可溶分画及びギ酸可溶分画が実施例1で説明された方法に従って調製された。また、ウェスタンブロットが実施例1で説明された方法に従って行われた。α(alpha)シヌクレインの凝集を評価するために、前記ウェスタンブロットでは、抗α(alpha)シヌクレインマウスモノクローナル抗体(syn−1、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)が1次抗体として適宜希釈して用いられた。また、HRP標識抗マウスIgG抗体(DAKO)が2次抗体として適宜希釈して用いられた。
1.2 アディポネクチンの添加実験(2)(シグナル伝達及びタウのリン酸化)
前記B103神経芽細胞(α(alpha)S)及びB103神経芽細胞(ベクター)は5cmディッシュに播種され、80〜90%コンフルエント程度に培養された。その後、前記細胞はPBSで洗浄され、無血清培地で4時間培養された。PBS洗浄後、前記細胞は、組換えヒトアディポネクチン(1μg/mL、3量体、PROSPEC)を無血清培地に添加した試験培地(アディポネクチン添加群)で培養された。対照として、前記組換えヒトアディポネクチンの代わりにPBSを添加した対照培地(アディポネクチン非添加群)が用いられた。培養時間は、シグナル伝達を評価する際には0、10及び30分間であり、タウのリン酸化を評価する際には0、1及び2時間であった。回収した前記細胞それぞれは、細胞溶解液(1% TritonX−100、1% Nonidet P−40、50 mM HEPES、150 mM NaCl、10% グリセロール、1.5 mM MgCl2、1 mM EGTA、100 mM フッ化ナトリウム、プロテアーゼ阻害剤(ナカライテスク株式会社))で溶解された。上清が100,000×g、30分間の遠心分離後に回収され、界面活性剤可溶分画としてウェスタンブロットで用いられた。前記ウェスタンブロットは実施例1で説明された方法に従って行われた。
シグナル伝達を評価するために、前記ウェスタンブロットでは、抗リン酸化AMPKα(alpha)(Thr172)抗体(Cell Signaling Technology)、抗AMPKα(alpha)抗体(Cell Signaling Technology)、抗リン酸化p38 MAPK(Thr180/Thr182)抗体(D3F9、Cell Signaling Technology)、抗p38α(alpha)/SAPK2a抗体(BD Biosciences)、抗リン酸化GSK−3β(beta)(Ser9)抗体(D85E12、Cell Signaling Technology)、抗GSK−3β(beta)抗体(BD Biosciences)、抗β(beta)−アクチンマウスモノクローナル抗体(C−15、シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)が1次抗体として適宜希釈して用いられた。また、HRP標識抗マウスIgG抗体(DAKO)が2次抗体として適宜希釈して用いられた。
タウのリン酸化を評価するために、前記ウェスタンブロットでは、抗リン酸化タウ(Ser202)抗体(ANASPEC)、抗リン酸化タウ(Ser396)抗体(ANASPEC)、及び、抗β(beta)−アクチンマウスモノクローナル抗体(C−15、シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)が1次抗体として適宜希釈して用いられた。また、HRP標識抗マウスIgG抗体(DAKO)が2次抗体として適宜希釈して用いられた。
1.3 p38 MAPK阻害剤及びAMPK阻害剤の添加実験(α(alpha)シヌクレインの凝集体形成抑制効果、及び、タウのリン酸化におけるシグナル伝達経路の検討)
前記B103神経芽細胞(α(alpha)S)は6穴プレートに播種され、80〜90%コンフルエント程度に培養された。PBS洗浄後、前記細胞は、5μM p38 MAPK阻害剤(SB203580、Promega)又は5μM AMPK阻害剤(Compound C、Calbiochem)を無血清培地に添加した阻害試験培地で10分間培養された。対照として、前記阻害剤の代わりにDMSOが無血清培地に添加された。その後、組換えヒトアディポネクチン(1μg/mL、3量体、PROSPEC)又はPBSが添加され、前記細胞は30分間培養された。回収した前記細胞それぞれは、前記細胞溶解液で溶解された。実施例1で説明された方法に従って、TBS可溶分画、SDS可溶分画及びギ酸可溶分画が調製され、ウェスタンブロットに供された。
シグナル伝達経路を検討するために、前記ウェスタンブロットでは、抗α(alpha)シヌクレインマウスモノクローナル抗体(syn−1、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)、抗リン酸化GSK−3β(beta)(Ser9)抗体(D85E12、Cell Signaling Technology)、抗GSK−3β(beta)抗体(BD Biosciences)、及び、抗β(beta)−アクチンマウスモノクローナル抗体(C−15、シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)が1次抗体として適宜希釈して用いられた。また、HRP標識抗マウスIgG抗体(DAKO)が2次抗体として適宜希釈して用いられた。
1.4 免疫沈降
免疫沈降は当業者に周知な標準的な手順で行われた。簡潔には、前記B103神経芽細胞(α(alpha)S)は10cmディッシュに播種され、80〜90%コンフルエント程度に培養された。その後、前記細胞はPBSで洗浄され、組換えヒトアディポネクチン(1μg/mL、3量体、PROSPEC)を無血清培地に添加した試験培地(アディポネクチン添加群)で培養された。対照として、前記組換えヒトアディポネクチンの代わりにPBSを添加した対照培地(アディポネクチン非添加群)が用いられた。24時間培養後、前記細胞はNP40溶解液(1% IGEPAL CA630 (シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)、150 mM NaCl、50mM Tris−HCl(pH8.0)、プロテアーゼ阻害剤(ナカライテスク株式会社))で溶解された。上清が100,000×g、30分間の遠心分離後に回収され、NP40可溶分画として免疫沈降に用いられた。免疫沈降はImmunoprecipitation Starter Pack (GEヘルスケア・ジャパン株式会社)を用いて製造・販売者の指示書に従って行われた。アディポネクチンで処理したか、若しくは処理していないB103神経芽細胞(α(alpha)S)のNP40可溶分画に抗α(alpha)シヌクレインマウスモノクローナル抗体(syn−1、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)が、アディポネクチンで処理したか、若しくは処理していないB103神経芽細胞(α(alpha)S)のNP40可溶分画(200μg)に添加され、4°Cで終夜インキュベーションされた。また、対照には、マウスIgG1抗体(DAKO)が添加された。前記インキュベーション後、50%スラリーアガロース結合体懸濁液(Protein G Sepharose 4 Fast Flow)が添加され、4℃で60分間インキュベーションされた。その後、免疫沈降した複合体が遠心分離によって回収された。前記複合体はPBSに再懸濁され、4℃で遠沈された。3回の洗浄後、回収した複合体は1×SDSサンプルバッファーに溶解され、ウェスタンブロットに供された。前記ウェスタンブロットは実施例1で説明された方法に従って行われた。前記ウェスタンブロットでは、抗リン酸化タウ(Ser202)抗体(ANASPEC)、及び、抗α(alpha)シヌクレインマウスモノクローナル抗体(syn−1、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)が1次抗体として適宜希釈して用いられた。また、HRP標識抗ウサギIgG抗体(DAKO)及びHRP標識抗マウスIgG抗体(DAKO)が2次抗体として適宜希釈して用いられた。
1.5 siRNAを用いたアディポネクチン受容体の発現抑制実験
前記B103神経芽細胞(α(alpha)S)は6穴プレートに播種され、30〜50%コンフルエント程度に培養された。その後、ラットのアディポネクチン受容体1(Adipo R1)のsiRNA(sc−156024、Santa Cruz Biotechnology, Inc.)、及び、ラットのアディポネクチン受容体2(Adipo R2)のsiRNA(sc−156025、Santa Cruz Biotechnology, Inc.)と、ランダム配列のsiRNA(配列番号17及び18、センスsiRNA及びアンチセンスsiRNAの混合物)とは、Lipofectamine2000(Invitrogen、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いてトランスフェクションされた。6時間後、培地が10%FBS含有DMEMに切り換えられ、前記細胞は48時間培養された。その後、組換えヒトアディポネクチン(1μg/mL、3量体、PROSPEC)を無血清DMEM培地に添加した培地で24時間培養された。対照として、前記組換えヒトアディポネクチンの代わりにPBSが無血清DMEM培地に添加された。前記細胞は培養後にPBSで洗浄され、TBS可溶分画、SDS可溶分画及びギ酸可溶分画が実施例1で説明された方法に従って調製された。また、ウェスタンブロットは実施例1で説明された方法に従って行われた。前記ウェスタンブロットでは、抗α(alpha)シヌクレインマウスモノクローナル抗体(syn−1、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)が1次抗体として適宜希釈して用いられた。また、HRP標識抗マウスIgG抗体(DAKO)が2次抗体として適宜希釈して用いられた。
2 結果
2.1 アディポネクチンの添加実験(1)(α(alpha)シヌクレインの凝集)
図9は、B103神経芽細胞(α(alpha)S)及びB103神経芽細胞(ベクター)から調製したさまざまな抽出画分を、抗α(alpha)シヌクレイン抗体を用いて検出したウェスタンブロット図である。図9に示されるとおり、ギ酸可溶画分及び培養上清中のα(alpha)シヌクレインは、アディポネクチンの添加によって減少した。したがって、α(alpha)シヌクレインの凝集体形成はアディポネクチンの存在下で抑制されることが示された。なお、アディポネクチン添加による細胞毒性は、特に観察されなかった。
2.2 アディポネクチンの添加実験(2)(シグナル伝達)
図10Aは、B103神経芽細胞(α(alpha)S)及びB103神経芽細胞(ベクター)から調製した界面活性剤可溶分画を、抗リン酸化AMPKα(alpha)抗体、抗AMPKα(alpha)抗体、抗リン酸化p38 MAPK抗体、抗p38α(alpha)/SAPK2a抗体、抗リン酸化GSK−3β(beta)(Ser9)抗体、抗GSK−3β(beta)抗体、及び、抗β(beta)−アクチンマウスモノクローナル抗体を用いて検出したウェスタンブロット図である。図10Aに示されるとおり、p38 MAPK、AMPK及びGSK−3β(beta)のリン酸化は、アディポネクチンの添加によって増大した。したがって、アディポネクチンは、p38 MAPK、AMPK及びGSK−3β(beta)によるシグナル伝達を亢進することが示された。なお、アディポネクチン添加による細胞毒性は、特に観察されなかった。
2.3 p38 MAPK阻害剤及びAMPK阻害剤の添加実験(α(alpha)シヌクレインの凝集体形成抑制効果におけるシグナル伝達経路の検討)
図10Bは、アディポネクチンと、p38 MAPK阻害剤又はAMPK阻害剤とで処理したB103神経芽細胞(α(alpha)S)から調製したTBS可溶分画、SDS可溶分画及びギ酸可溶分画を、抗α(alpha)シヌクレイン抗体を用いて検出したウェスタンブロット図である。図10Bに記載の「IB」はイムノブロットを示す。図10Bに示されるとおり、α(alpha)シヌクレインの凝集体は、アディポネクチン非添加群(Control)、阻害剤非添加群(APN)、p38 MAPK阻害剤処理群(APN+SB203580)及びAMPK阻害剤処理群(APN+Compound C)のB103神経芽細胞(α(alpha)S)から調製したTBS可溶分画及びSDS可溶分画では検出された。また、前記α(alpha)シヌクレインの凝集体は、アディポネクチン非添加群(Control)、阻害剤非添加群(APN)及びAMPK阻害剤処理群(APN+Compound C)のB103神経芽細胞(α(alpha)S)から調製したギ酸可溶分画でも検出された。しかし、前記α(alpha)シヌクレインの凝集体は、阻害剤非添加群(APN)及びp38 MAPK阻害剤処理群(APN+SB203580)のB103神経芽細胞(α(alpha)S)から調製したギ酸可溶分画では検出されなかった。したがって、アディポネクチンによるα(alpha)シヌクレインの凝集体形成抑制効果は、AMPKを介するシグナル伝達経路に依存していることが示された。
2.4 p38 MAPK阻害剤及びAMPK阻害剤の添加実験(タウのリン酸化におけるシグナル伝達経路の検討)
図10Cは、アディポネクチンと、p38 MAPK阻害剤又はAMPK阻害剤とで処理したB103神経芽細胞(α(alpha)S)から調製した界面活性剤可溶分画を、抗リン酸化GSK−3β(beta)抗体を用いて検出したウェスタンブロット図である。図10Cに示されるとおり、リン酸化GSK−3β(beta)は、アディポネクチン非添加群(Control)、阻害剤非添加群(APN)及びAMPK阻害剤処理群(APN+Compound C)のB103神経芽細胞(α(alpha)S)から調製した界面活性剤可溶分画では検出された。しかし、前記リン酸化GSK−3β(beta)は、p38 MAPK阻害剤処理群(APN+SB203580)のB103神経芽細胞(α(alpha)S)から調製した界面活性剤可溶分画では検出されなかった。したがって、アディポネクチンによるGSK−3β(beta)のリン酸化の亢進は、p38 MAPKに依存していることが示された。
2.5 アディポネクチンの添加実験(3)(タウのリン酸化)
図11Aは、B103神経芽細胞(α(alpha)S)から調製した界面活性剤可溶分画を、抗リン酸化タウ(Ser202)抗体及び抗リン酸化タウ(Ser396)抗体を用いて検出したウェスタンブロット図である。図11Aに示されるとおり、リン酸化タウはアディポネクチンの添加によって減少した。したがって、アディポネクチンは、α(alpha)シヌクレインの凝集体形成を抑制するだけでなく、タウのリン酸化も抑制することが示された。また、タウのリン酸化抑制にはp38 MAPKを介するシグナル伝達経路が関係しており、p38 MAPKを介するシグナル伝達を阻害することによってタウのリン酸化(タウの蓄積)も抑制できることが示された。なお、アディポネクチン添加による細胞毒性は、特に観察されなかった。
2.6 免疫沈降
図11Bは、B103神経芽細胞(α(alpha)S)から調製したNP40可溶分画を用いて、抗α(alpha)シヌクレイン抗体を用いて免疫共沈降したリン酸化タウ(Ser202)を抗リン酸化タウ(Ser202)抗体を用いて検出したウェスタンブロット図である。図11Bに記載の「Input」は免疫沈降していないサンプルを示し、「IP」は免疫沈降を示し、「IB」はイムノブロットを示す。図11Bに示されるとおり、抗α(alpha)シヌクレイン抗体で免疫沈降したアディポネクチン非添加群では、リン酸化タウはα(alpha)シヌクレインと共沈降した。また、抗α(alpha)シヌクレイン抗体で免疫沈降したアディポネクチン添加群では、リン酸化タウはα(alpha)シヌクレインと共沈降しなかった。したがって、タウの凝集体形成抑制にもアディポネクチンが効果的であると示された。
2.7 siRNAを用いたアディポネクチン受容体の発現抑制実験
図12は、siRNAをトランスフェクションしたB103神経芽細胞(α(alpha)S)から調製したギ酸可溶画分を、抗リン酸化α(alpha)シヌクレイン抗体を用いて検出したウェスタンブロット図である。図12に示されるとおり、リン酸化α(alpha)シヌクレインは、ランダム配列のsiRNAをトランスフェクションした実験群と比較して、アディポネクチン受容体1及び2のsiRNAをトランスフェクションした実験群で増大した。したがって、アディポネクチンによるα(alpha)シヌクレインの凝集体形成は、アディポネクチン受容体の下流のシグナル伝達経路を介して抑制されることが示された。
α(alpha)S tgマウスへの球状アディポネクチンの単回投与実験(鼻腔内投与によるgAPNの浸透評価)
1.材料及び方法
1.1 球状アディポネクチンの単回投与
α(alpha)S tgマウスは実施例2で説明された方法に従って鑑別された。N末端にFLAGでタグ化した球状アディポネクチン(FLAG−gAPN)又はPBSが、0、3、6、9、12、15、18及び21日目にα(alpha)S tgマウスに鼻腔内投与された。鼻腔内投与では、粘膜吸収促進剤(5mg/mL ポリ−L−アルギニン塩酸塩(分子量 >70,000)(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)を含むPBS) 10μLが鼻孔内に投与された。30分後、前記球状アディポネクチン(1mg/ml FLAG−gAPN(AdipoGen)を含むPBS)10μL又はPBS 10μLが鼻孔内に投与された。30分後、前記マウスは実施例2で説明された方法に従って安楽死され、脳サンプルが採取された。
1.2 蛍光免疫組織化学染色
蛍光免疫組織化学染色は当業者に周知な標準的な手順で行われた。簡潔には、前記脳サンプルの半球は、20%スクロース/0.01MPBS液での置換後、Tissue−Tek OCT compound 4583(サクラ精機株式会社)に包埋され、液体窒素で凍結された。前記脳サンプルの薄切切片が7μmの厚さで作製され、スライドガラス上に載置された。風乾後、前記薄切切片は0.01M PBSで水和され、10%ヤギ正常血清(Vector Laboratories, Inc.)/TBS(25mMTris−HCl(pH7.5)、0.15M NaCl)で30分間ブッロキングされた。その後、前記薄切切片は0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)/TBSで希釈された1次抗体(抗DDDDK−tag抗体、株式会社 医学生物学研究所)と4°Cで終夜インキュベーションされた。洗浄後、前記薄切切片は0.1% BSA/TBSで希釈された2次抗体(Alexa Fluor488標識抗体、Invitrogen、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)と室温で1時間インキュベーションされた。封入後、前記薄切切片は共焦点レーザー顕微鏡(FV1000、オリンパス株式会社)を用いて観察された。
2 結果
蛍光免疫組織化学染色
図13は、蛍光免疫組織化学染色したα(alpha)S tgマウス及びnon tgマウスの脳サンプル(嗅脳、大脳皮質及び脳幹)の共焦点顕微鏡写真である。図13に示されるとおり、FLAG−gAPNが、嗅脳、大脳皮質及び脳幹で検出された。また、FLAG−gAPNが他の脳組織でも検出された(図示されない)。したがって、FLAG−gAPNは、鼻腔内投与によってマウスの脳内に浸透することが明らかとなった。なお、球状アディポネクチンの単回投与による副作用は、特に観察されなかった。
α(alpha)S tgマウスへの球状アディポネクチンの連続投与実験
1.材料及び方法
1.1 球状アディポネクチンの連続投与
α(alpha)S tgマウス及びnon tgマウスは実施例2で説明された方法に従って鑑別された。球状アディポネクチン(gAPN)が、0、3、6、9、12、15、18及び21日目にα(alpha)S tgマウス及びnon tgマウスに鼻腔内投与された。また、対照として、PBSが、0、3、6、9、12、15、18及び21日目にα(alpha)S tgマウス及びnon tgマウスに鼻腔内投与された。鼻腔内投与では、粘膜吸収促進剤(5mg/mLポリ−L−アルギニン塩酸塩(分子量 >70,000)(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)を含むPBS)10μLが鼻孔内に投与され、30分後に、球状アディポネクチン(1mg/mL gAPN(Prospec)を含むPBS)10μL又はPBS 10μLが鼻孔内に投与された。鼻腔内投与22日目に、前記マウスは実施例2で説明された方法に従って安楽死され、脳サンプルが採取された。病理学的解析用の半球は4%パラホムアルデヒドで浸漬固定され、パラフィン包埋された。ウェスタンブロット用の他の半球は液体窒素により凍結され、−80°Cで保存された。
1.2 免疫組織化学染色
免疫組織化学染色は当業者に周知な標準的な手順で行われた。簡潔には、パラフィンで包埋した前記脳サンプルを用いて、薄切切片が4μmの厚さで作製された。脱パラフィン後、前記薄切切片は10mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)に入れられ、マイクロウエーブ(MW)を用いる抗原賦活処理(95°C、10分間)が施された。前記抗原賦活処理の後、前記薄切切片は3%過酸化水素を含むメタノールで15分間処理された。洗浄後、前記薄切切片は10%ヤギ正常血清(Vector Laboratories, Inc.)/TBS(25mMTris−HCl(pH7.5)、0.15M NaCl)で30分間ブッロキングされた。その後、前記薄切切片は0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)/TBSで希釈された1次抗体(抗α(alpha)シヌクレイン抗体又は抗GFAP抗体)と4°Cで終夜インキュベーションされた。洗浄後、前記薄切切片は0.1% BSA/TBSで希釈された2次抗体(ビオチン標識抗マウスIgG抗体(Vector Laboratories, Inc.))と室温で20分間インキュベーションされた。染色では、ABCキット(Vector Laboratories, Inc.)及び3,3’−diaminobenzidinet tetrahydrochloride (DAB)が用いられた。前記染色後、前記薄切切片は顕微鏡を用いて観察された。
1.3 界面活性剤不溶分画でのGFAPの検出
脳サンプルは、細胞溶解液(1% TritonX−100、1% Nonidet P−40、50 mM HEPES、150 mM NaCl、10% グリセロール、1.5 mM MgCl2、1 mM EGTA、100 mM フッ化ナトリウム、プロテアーゼ阻害剤(ナカライテスク株式会社))でホモジネート後、100,000×g、4°Cで30分間遠心された。沈殿物が界面活性剤不溶分画としてウェスタンブロットで用いられた。ウェスタンブロットは実施例1で説明された方法に従って行われた。前記ウェスタンブロットでは、抗GFAP抗体(Progen)及び抗β(beta)−アクチンマウスモノクローナル抗体(C−15、シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)が1次抗体として適宜希釈して用いられた。また、HRP標識抗マウスIgG抗体(DAKO)が2次抗体として適宜希釈して用いられた。
1.4 さまざまな分画でのα(alpha)シヌクレインの凝集の評価
TBS可溶分画、SDS可溶分画及びギ酸可溶分画は、実施例1で説明された方法に従って前記脳サンプルの大脳皮質から調製された。ウェスタンブロットは実施例1で説明された方法に従って行われた。前記ウェスタンブロットでは、抗α(alpha)シヌクレインマウスモノクローナル抗体(syn−1、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)が1次抗体として適宜希釈して用いられた。また、HRP標識抗マウスIgG抗体(DAKO)が2次抗体として適宜希釈して用いられた。
2 結果
2.1 免疫組織化学染色
図14Aは、免疫組織化学染色したα(alpha)S tgマウス及びnon tgマウスの脳サンプル(視床)の顕微鏡写真である。図14Aに示されるとおり、α(alpha)シヌクレインの凝集体が、gAPN非投与群のα(alpha)S tgマウスで検出された。しかし、α(alpha)シヌクレインの凝集体は、gAPN投与群のα(alpha)S tgマウスではほとんど検出されなかった。図14Bは、免疫組織化学染色したα(alpha)S tgマウス及びnon tgマウスの脳サンプル(嗅脳)の顕微鏡写真である。図14Bに示されるとおり、α(alpha)シヌクレインの凝集体が、gAPN非投与群のα(alpha)S tgマウスで検出された。しかし、α(alpha)シヌクレインの凝集体は、gAPN投与群のα(alpha)S tgマウスではほとんど検出されなかった。図14Cは、免疫組織化学染色したα(alpha)S tgマウス及びnon tgマウスの脳サンプル(大脳皮質)の顕微鏡写真である。図14Cに示されるとおり、アストロサイトの増生が、gAPN非投与群のα(alpha)S tgマウスで検出された。しかし、アストロサイトの増生は、gAPN投与群のα(alpha)S tgマウスではほとんど検出されなかった。したがって、gAPNは、脳内でのα(alpha)シヌクレインの凝集体形成及びアストロサイトの増生を抑制できることが示された。これらの結果から、gAPNは、アディポネクチンと同様にα(alpha)シヌクレインの凝集体形成を抑制できることが明らかとなった。また、gAPNは、α(alpha)シヌクレインの凝集体形成及び/又はプロテアソーム活性低下を抑制することによって、凝集体形成を伴う神経変性疾患を治療、予防及び/又は緩和できることが示された。なお、球状アディポネクチンの連続投与による副作用は、特に観察されなかった。
2.2 界面活性剤不溶分画でのGFAPの検出
図15Aは、α(alpha)S tgマウス及びnon tgマウスから調製した界面活性剤不溶分画を、抗GFAP抗体を用いて検出したウェスタンブロット図である。図15Aに示されるとおり、GFAPは、gAPN投与群及びgAPN非投与群のα(alpha)S tgマウスで検出された。しかし、前記α(alpha)S tgマウスにおいて、GFAPは、gAPN非投与群と比較してgAPN投与群で少なかった。したがって、アストロサイトの異常活性が、gAPN投与群のα(alpha)S tgマウスでは抑制されていることが明らかとなった。蓄積したα(alpha)シヌクレインの神経毒性により誘発したアストロサイトの活性化をgAPNが抑制することが示された。
2.3 さまざまな分画でのα(alpha)シヌクレインの凝集の評価
図15Bは、α(alpha)S tgマウス及びnon tgマウスから調製したさまざまな抽出画分を、抗α(alpha)シヌクレイン抗体を用いて検出したウェスタンブロット図である。図15Bに示されるとおり、α(alpha)シヌクレイン凝集体は、gAPN投与群のα(alpha)S tgマウスから調製したSDS可溶画分では顕著に減少した。したがって、α(alpha)シヌクレインの凝集体形成はアディポネクチンの存在下で抑制されることが示された。

Claims (14)

  1. アディポネクチン受容体アゴニスト及び/又は該アゴニストを誘導する化合物を有効成分として含むことを特徴とする、神経変性疾患の治療及び/又は予防のための医薬組成物。
  2. 前記アディポネクチン受容体アゴニスト及び/又は該アゴニストを誘導する化合物として、アディポネクチンタンパク質と、球状アディポネクチンタンパク質と、アディポネクチンタンパク質の発現を誘導する化合物と、球状アディポネクチンタンパク質の発現を誘導する化合物とからなるグループから少なくとも1つが選択されることを特徴とする、請求項1の医薬組成物。
  3. α(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はタウのリン酸化及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制するために用いられることを特徴とする、請求項1又は2の医薬組成物。
  4. 前記アディポネクチン受容体アゴニストの発現を誘導する化合物はペルオキシソーム増殖剤活性化レセプター(PPAR)−γ(gamma)のアゴニストであることを特徴とする、請求項1ないし3の医薬組成物。
  5. 前記ペルオキシソーム増殖剤活性化レセプター(PPAR)−γ(gamma)のアゴニストはピオグリタゾン塩酸塩であることを特徴とする、請求項4の医薬組成物。
  6. アディポネクチンが関与するα(alpha)シヌクレインの凝集及び/又はリン酸化タウの凝集及び/又はプロテアソーム活性低下、を抑制することに基づく神経変性の抑制及び/又は改善する化合物のスクリーニング方法。
  7. a)α(alpha)シヌクレインを発現する生物学的材料を用意するステップと、
    b)前記生物学的材料と被験化合物とを接触させるステップと、
    c)前記生物学的材料由来のアディポネクチンのタンパク質及び/又はmRNAの量と、アディポネクチン受容体のタンパク質及び/又はmRNAの量と、リン酸化タウの量と、リン酸化酵素の量及び/又は活性と、α(alpha)シヌクレインの凝集体の量と、アディポネクチン及びα(alpha)シヌクレインの凝集体の量と、プロテアソーム活性とからなる群から選択される少なくとも1つの測定値を決定するステップと、
    d)決定された測定値に基づいて被験化合物の効果を比較するステップと
    を含むことを特徴とする、請求項6のスクリーニング方法。
  8. a)α(alpha)シヌクレイン発現細胞を用意するステップと、
    b)前記細胞に被験化合物を添加し、インキュベーションするステップと、
    c)アディポネクチンのタンパク質及び/又はmRNAの量と、リン酸化酵素の量及び/又は活性と、αシヌクレインの凝集体の量と、アディポネクチン及びαシヌクレインの凝集体の量と、プロテアソーム活性とからなる群から選択される少なくとも1つの測定値を決定するステップと、
    d)決定された測定値に基づいて被験化合物の効果を比較するステップと
    を含むことを特徴とする、請求項6のスクリーニング方法。
  9. 前記ステップa)は、プロテアソーム阻害剤存在下、α(alpha)シヌクレイン発現細胞を培養するステップであることを特徴とする、請求項8のスクリーニング方法。
  10. 前記ステップa)における前記細胞に、さらに、アディポネクチン及び/又はアディポネクチン受容体のsiRNAを導入するステップを含むことを特徴とする、請求項8のスクリーニング方法。
  11. 前記ステップa)における前記細胞に、さらに、アディポネクチン及び/又はアディポネクチン受容体のsiRNAを導入するステップを含むことを特徴とする、請求項9のスクリーニング方法。
  12. 前記ステップc)の前記リン酸化酵素として、AMPKと、リン酸化AMPKと、p38 MAPKと、リン酸化p38 MAPKと、GSK−3β(beta)と、リン酸化GSK−3β(beta)とからなる群から少なくとも1つが選択されることを特徴とする、請求項8ないし11のスクリーニング方法。
  13. a)神経細胞特異的にヒトα(alpha)シヌクレインを発現するトランスジェニック動物より摘出した脳組織と、被験化合物とをインキュベーションするステップと、
    b)アディポネクチンのタンパク質及び/又はmRNAの量と、アディポネクチン受容体のタンパク質及び/又はmRNAの量と、リン酸化タウの量と、リン酸化酵素の量及び/又は活性と、α(alpha)シヌクレインの凝集体の量と、アディポネクチン及びα(alpha)シヌクレインの凝集体の量と、プロテアソーム活性とからなる群から選択される少なくとも1つの測定値を決定するステップと、
    c)決定された測定値に基づいて被験化合物の効果を比較するステップと
    を含むことを特徴とする、請求項6のスクリーニング方法。
  14. a)神経細胞特異的にヒトα(alpha)シヌクレインを発現するトランスジェニック動物に被験化合物を投与するステップと、
    b)前記トランスジェニック動物の脳組織の、アディポネクチンのタンパク質及び/又はmRNAの量と、アディポネクチン受容体のタンパク質及び/又はmRNAの量と、リン酸化タウの量と、リン酸化酵素の量及び/又は活性と、α(alpha)シヌクレインの凝集体の量と、アティポネクチン及びα(alpha)シヌクレインの凝集体の量と、プロテアソームの活性とからなる群からなる少なくとも1つの測定値を決定するステップと、
    c)決定された測定値に基づいて被験化合物の効果を比較するステップと
    を含むことを特徴とする、請求項6のスクリーニング方法。
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