JP2013233522A - 有害物質の不活化方法及び不活化装置 - Google Patents

有害物質の不活化方法及び不活化装置 Download PDF

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Abstract

【課題】有害物質を非接触的に不活化する方法及び装置を提供する。
【解決手段】本発明の有害物質不活化方法は、放電電極(12)と、放電電極(12)と対向する対極電極(3)とを設置し、対極電極(3)側に有害物質を含有する水(2)を配置する工程と、気中放電により気中に正又は負イオンを発生させ、有害物質を含有する水(2)に対して正又は負イオンを放射する工程と、を備える。そして、放電電極(12)において発生した正又は負イオン流が水(2)に到達することにより、気中放電に由来するイオン又は化合物イオンが、水(2)中に生じ、イオン又は化合物イオンが有害物質に作用することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、気中放電イオン流により有害物質を不活化する方法及びそのための装置に関する。
水中に含まれる雑菌等を不活化するための従来の方法及び装置として、例えば特許文献1に記載の水中放電による殺菌技術が提案されている。
特許文献1に記載の殺菌装置は、水を溜めた殺菌容器内に対をなす電極部からなる少なくとも一対の電極対を有するとともに、上記電極対の両電極部が同時に上記水の中に浸漬されるように配置されている。そして、当該文献では、上記電極対の電極部間に高電圧パルスを印加し、電極部間において水中放電することにより、殺菌を行うことが記載されている。
特許第4789988号明細書
しかしながら、上記したような水中放電を用いた殺菌方法では、電極対の双方が同時に水中に浸漬されるように構成されていなければならず、殺菌装置の構成上、種々の制限がなされる不都合があった。また、従来の方法では、両電極が被処理体の殺菌容器底面に接触しない程度まで水面が高くないと放電できず、水膜のような微量の水量中での殺菌には応用できないという問題があった。例えば、冷房運転時のエアコン放熱フィンの表面では空気中の水分が凝縮されるため、水膜もしくは水滴が形成される。カビ、酵母及び細菌等の微生物は、このような微量の水分でも繁殖できるものが少なくない。これら微生物の殺菌は難しく、特に連続運転時に絶えず生成される水膜ないし水滴を温床とするカビや酵母などの殺菌は困難をきわめる。同様に、加湿器の内部でも継続的に水を使用するため、やはり微生物の制御は容易ではなかった。
また、水中放電では、電気分解により、陰極側に、陽極側から溶出した金属等が析出するため、次第に陰極側が肥大して陽極側との距離が変化し、両極間に流れる電流が変化する。そのため、電流の変化を制御するための装置が不可欠であった。
さらに、構成的に高電圧側の電極とその対向電極が水に浸漬されるため、両者の間に必然的に沿面が発生し、この沿面を通る電流を無くすことが原理的に難しいため、その結果高圧絶縁を長期的に保つことが難しいという問題もあった。例えば、リーク電流の発生により、表面の劣化(トラッキング現象など)が生じることが懸念され、水分が多量にあるところで電極の性能を保持するためには高い絶縁性が要求されていた。そのため、必然的に樹脂材料を絶縁材として使用することができず、例えばセラミック等の碍子で絶縁する必要があった。また、絶縁不良による装置の劣化が生じ易いという問題もあった。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、水と接触する金属に対して非接触的に電流を流すことにより、極めて少ない水量でも、水中の有害物質を不活化するための方法及びそのための装置を提供することにある。さらに、有害物質を不活化する不活化水を生成するための方法及びそのための装置を提供することにある。
本発明の第一の態様に係る有害物質の不活化方法は、放電電極と、放電電極と対向する対極電極とを設置し、対極電極側に有害物質を含有する水を配置する工程を備える。また、気中放電により気中に正又は負イオンを発生させ、有害物質を含有する水に対して正又は負イオンを放射する工程を備える。そして、放電電極において発生した正又は負イオン流が水に到達することにより、気中放電に由来するイオン又は化合物イオンが水中に生じ、イオン又は化合物イオンが有害物質に作用することを特徴とする。
本発明の第二の態様に係る有害物質の不活化方法は、放電電極と、放電電極と対向する対極電極とを設置し、対極電極側に水を配置する工程と、気中放電により気中に正又は負イオンを発生させ、水に対して正又は負イオンを放射する工程を備える。また、正又は負イオン流が水に到達することにより、気中放電に由来するイオン又は化合物イオンを水中に生じさせる工程を備える。そして、イオン又は化合物イオンを含有する水を有害物質に作用させることを特徴とする。
本発明の第三の態様に係る有害物質の不活化装置は、有害物質を含有する水と、気中放電により気中に正又は負イオンを発生させ、水に対して前記正又は負イオンを放射するイオン放射手段を備える。また、水側に配置され、イオン放射手段における放電電極に対向する対極電極と、を備える。そして、放電電極において発生した正又は負イオン流が水に到達することにより、気中放電に由来するイオン又は化合物イオンが水中に生じ、イオン又は化合物イオンが有害物質に作用することを特徴とする。
本発明の第四の態様に係る有害物質の不活化装置は、気中放電により気中に正又は負イオンを発生させ、水に対して正又は負イオンを放射するイオン放射手段と、水側に配置され、イオン放射手段における放電電極に対向する対極電極と、を備える。そして、放電電極において発生した正又は負イオン流が水に到達することにより、有害物質に作用する気中放電由来のイオン又は化合物イオンが水中に生じ、イオン又は化合物イオンを含有する水を有害物質に作用させることを特徴とする。
本発明の態様に係る有害物質の不活化方法によれば、気中放電により正又は負イオンを発生させ、この正又は負イオン流を、有害物質を含有する水及び対極電極に対して放射する。この正又は負イオン流が水表面に到達することにより、水中に放電由来のイオン又は化合物イオンが発生する。そして、この液中のイオン又は化合物イオンが水中の有害物質に作用することで、有害物質が不活化する。また、対極電極が金属であって水と直接接触している場合に、負イオン流を放射することで、金属イオンが水中に溶出する。この金属イオンも有害物質の不活化に効果を奏するため、有害物質の不活化効果は相乗的になる。さらに、同様に水にイオン放射を行い、イオン又は化合物イオンが発生した水もしくはさらに金属イオンが溶出された水を予め準備しておき、イオンを含む水を有害物質に作用させることもできる。したがって、本発明の方法によれば、水中放電を用いないため、電極対の双方を同時に水中に浸漬させる必要がなく、さらに微量の水に含まれる有害物質を不活化することができる。また、非接触的に有害物質を不活化することができるため、絶縁性を確保するための構成を不要とし、絶縁不良等の危険性も著しく低減される。
本発明の態様に係る有害物質の不活化装置によれば、イオン放射手段により、有害物質を含有する水に対して正又は負イオン流を放射する。そして、この正又は負イオン流が水表面に到達することにより、水中に放電由来のイオン又は化合物イオンが発生する。そして、この液中のイオン又は化合物イオンが水中の有害物質に作用することで、有害物質が不活化する。また、対極電極が金属であって、水と直接接触している場合に負イオン流を放射することで、金属イオンが水中に溶出する。この金属イオンも有害物質の不活化に効果を奏するため、有害物質の不活化効果は相乗的になる。さらに、同様に水にイオン放射を行い、イオン又は化合物イオンが発生した水もしくはさらに金属イオンが溶出された水を予め準備しておき、イオンを含む水を有害物質に作用させることもできる。したがって、本発明の装置によれば、水中放電を用いないため、電極対の双方を同時に水中に浸漬させるための装置構成を不要とし、さらに微量の水に含まれる有害物質を不活化することができる。また、非接触的に有害物質を不活化することができるため、絶縁性を確保するための装置構成を不要とし、絶縁不良等の危険性も著しく低減される。
本発明の一実施形態に係る有害物質の不活化装置の全体構成を原理的に示す概略図である。 図1の不活化装置におけるイオン放射装置例の分解斜視図である。 図2の装置において、針式のコロナ放電を用いる場合の放電電極を示す概略図である。 図2の装置において、線式のコロナ放電を用いる場合の放電電極を示す概略図である。 図2の装置において、対向電極がメッシュ又はスクリーン形状である場合の放電電極を示す概略図である。 イオン放射を行わずに1時間放置した滅菌蒸留水を、イオンクロマトグラフ分析(アニオンを対象)に供した場合の分析結果である。 イオン放射を行わずに1時間放置した滅菌蒸留水を、イオンクロマトグラフ分析(カチオンを対象)に供した場合の分析結果である。 負イオン放射を1時間行った滅菌蒸留水を、イオンクロマトグラフ分析(アニオンを対象)に供した場合の分析結果である。 負イオン放射を1時間行った滅菌蒸留水を、イオンクロマトグラフ分析(カチオンを対象)に供した場合の分析結果である。 正イオン放射を1時間行った滅菌蒸留水を、イオンクロマトグラフ分析(アニオンを対象)に供した場合の分析結果である。 正イオン放射を1時間行った滅菌蒸留水を、イオンクロマトグラフ分析(カチオンを対象)に供した場合の分析結果である。 図12(a)は、図1の不活化装置を用いて有害物質の不活化処理を行う実験系を示す説明図である。また、図12(b)は、赤色酵母を含有する培養液を被処理体に採用した場合の(a)の系において、培養後の容器を上方から見た平面図である。 図1に示した不活化装置の変形例の全体構成を原理的に示す概略図である。
以下、本発明の一実施形態に係る有害物質の不活化装置及び方法について、図面に基づき詳細に説明する。なお、図面中、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。
[有害物質の不活化装置]
図1に示すように、本実施形態に係る有害物質の不活化装置1は、有害物質を含有する水2と接触して設置される対極電極3に対して、正又は負イオン流5を放射するイオン放射装置4を備える。図1に示すように、本形態の不活化装置1は、対極電極3を接地した構成とすることができる。なお、対極電極3は水2に完全に表面を覆われている必要はなく、水2が液滴として対極電極3に点在するような構成でもよい。
また、対極電極3の被処理表面がなす平面に対して略垂直方向にイオン放射装置4が配置されているが、対極電極3とイオン放射装置4の位置関係については、必ずしもこのように配置する必要はない。すなわち、正又は負イオン流5を対極電極3の被処理表面に放射できる構成であれば、特に限定されるものではない。また、対極電極3とイオン放射装置4の距離については、特に限定されないが、正又は負イオンが気中を飛来して金属に到達する距離であれば、数mm〜数十m程度まで可能である。一般に、気中放電で発生した分子性イオンの移動速度は次式(1)で表されるように、電界の強さに依存するが、通常、数m/sから数十m/s程度の速度であれば容易に到達することができる。
Figure 2013233522
(Vは移動速度、μは移動度、Eは電界)
そのため、イオンは多少の風の影響があっても、ほぼ電気力線に沿って進み、イオン放射装置4から出た電気力線に沿って対極電極3に向かう。イオン放射装置4と対極電極3との距離が離れている場合でも、電気力線が終端している限り、イオンは到達する。つまり、電界が十分に強ければ、必ずしもファンによる風を要さない。
図1の例では、有害物質を含有する水2は、対極電極3は直接接触しているが、容器等に入れて対極電極3側に配置される構成としてもよい。その他、本形態における有害物質の不活化装置の構成を変形した例として、図13に示すように、プラスチックシャーレ等の容器6中で、水2と対極電極3が接触する構成とすることもできる。
なお、図13に示す構成にあっては、水の下に接地導電板を配置しているので、イオン放射装置4から出たイオンが電気力線に沿ってこの導電板に向かう。つまり、電気力でもってイオンが水中に強制的に取り込まれることになる。
水2に含有され、本発明における不活化処理の対象となる有害物質としては、花粉等のアレルゲンや、真菌類、細菌類、ウィルス等の微生物が挙げられる。なお、水2は純水に限らず、その他の物質を含有していてもよい。また、本実施形態における被処理体としては、有害物質を含有する水を採用するものであるが、有害物質をその他の溶媒に含有させたものを採用することもできる。また、有害物質を特に含有しない水に本法にてイオン又は化合物イオンが発生した水を予め準備しておき、この水を使って有害物質に作用させることもできる。
ここで、不活化とは、主に、微生物やアレルゲンなどの有害物質を制菌、殺菌、分解又は除去等することを意味する。
次いで、イオン放射装置4について、図2を参照して詳細に説明する。図2に示すように、本発明の一実施形態に係るイオン放射装置4は、図中矢印Y1の方向から外部空気を導入し、装置内部で正又は負イオンを発生させ、図中矢印Y2の方向に正又は負イオン流50として放出する。
本実施形態のイオン放射装置4は、外気導入放出器20と、放電器21とから構成され、外気導入放出器20は、装置内部に外部空気を導入する送風ファン16と、空気を案内・整流して装置内部の正又は負イオン発生機構に空気流を供給する通気路19とを備える。また、放電器21は、外気導入放出器20における通気路19の下流側に連設されている。そして、放電器21は、プラスチック等の絶縁体で構成された電極固定フレーム11と、電極固定フレーム11に形成されたスリット13に嵌合して固定される放電電極12と、放電電極12と対向配置される平板形状の対向電極14とを備えている。なお、これらの部材は各孔16a、19a、11a、14a内に図示しないネジを貫通させるなどして組み立てられる。
次いで、イオン放射装置4の放電器21の構成及び作用について説明する。ところで、本発明においては、例えば図3に示すような針式放電や図4に示すような線式放電を放電器21に適用することができる。また、図5に示すようなスクリーンを対抗電極とする形態もとりうる。なお、図2に示すイオン放射装置は、図3に示すような針式の放電器を採用した例に対応しており、以下もこの例に基づき説明する。
放電電極12は、図3に示すような長尺平板形状をなす導電性材料で構成することができる。図3では、長尺平板の一つの辺における複数箇所(本実施形態では3箇所)に設けられた針形状をなす突起が、針状電極18となっている。また、図2に示す例では、各針状電極18の先端部が対向電極14に形成された各開口部15の中心となり、かつ、対向電極14と同一面となる領域に位置するように設定されている。
なお、装置が全体として大型化する場合は線式の放電電極を使用することが多い。図4に示すような線式の放電電極において、対向電極14は、その電極面が放電電極12の伸長方向と平行になるように配置されている。このような構成を採用する場合は、図2における矢印Y1からY2に至る外気の流れを妨げることがなく、対向電極14の中央部に円形の開口部15を設ける必要はない。つまり、放電器21は前述したような構成に限らず、図4のような最も一般的な平行平板型アイオナイザー形状の放電電極においても効果を発揮することが出来る。さらに、対象物に向かうイオン流の比率を高める目的で、並行平板の代わりに図示しない円柱形の丸棒を対向電極に採用することもできる。丸棒の直径は両極性放電が起きない程度の太さであり、かつ、通路を塞がないことが要求される。特に、対向電極間隔の1/8〜1/3程度の範囲で、実用的には3mm〜15mm程度が好ましい。また、図5に示すように、気流と直行する比較的間隔の広いメッシュ又はスクリーン(円柱列)に向かって放電することで、スクリーンを対向電極とするイオン放射装置とすることが出来る。この場合、電気力線はスクリーンに向かうが、一部は通り抜けて対象物としての水膜及び金属体に向かう。この例では、奥行き方向の厚みが厚くなるが、イオンが対向電極に向かって流れる方向と対象物に向かう方向が同じであるため、イオン風の効果も加算されて十分なイオン流が得られる。
電源17は、例えば、放電電極12を負極性電圧(第2電圧)とし、対向電極14をグランド電圧(第1電圧)として、対向電極14と放電電極12との間に一定の電流を流す直流電源とすることができる。すなわち、第2電圧は第1電圧に比べて相対的に負極性である。そして、針状電極18と対向電極14との間において、例えばコロナ放電を行うことにより、局所的(針状電極18尖端部を中心とする周囲領域)に負イオンが発生する。その一部は円形対向電極に向かい、また一部は外部に放出されて対象物に到達する。なお、対向電極の存在により、放電開始電圧を下げる効果が得られる一方で、負イオンを吸収するという相反的な効果も得られる。そのため、対向電極は適度な面積を有することが好ましい。また、針先端位置と対向電極との位置関係についても、イオン流が対象物に向かうように配置されることが好ましい。
次に、上述のように構成された本実施形態に係るイオン放射装置4の作用についてさらに詳細に説明する。本実施形態において、針状電極18に負の電圧を印加することとすれば、針状電極18と対向電極14との間となる開口部15内の空間で放電が発生し、開口部15の周囲に負イオンを発生させることができる。この放電原理は、前述のようにコロナ放電に基づくものとすることができる。したがって、本実施形態においては、コロナ放電開始電圧以上の電圧を印加するものとすればよい。
コロナ放電とは、特に針状の尖端部を有するような形状の導体において、高電圧(一般的には3〜10kV程度)を印加した際に観測され、電極周囲に不均一な電界が生じることで起こる、微弱発光を伴う放電をいう。気体の電離に十分な電界集中を生じる高圧電極と、高圧電極と一定間隔を保ち、平面もしくは曲率半径の大きな表面を有する対向電極と、から構成される一対の電極において観測される。コロナ放電により、電極の尖端部近傍の気体が電離し、電子と正イオンを対生成するが、印加電圧が負のとき、正イオンは負極に向かい電極に到達した所で電荷を電極に与える。図2を例にすると、電子は気体分子と衝突し電子付着により負イオンとなり、一部は対向電極14に向かう。また、一部はY2の方向に沿って電極外部に放出される。印加電圧が正の時は対生成で生じた電子は正極に吸収され、正イオンは対向電極に向かう。なお、周辺雰囲気が空気であって、負のコロナ放電を行う場合は、主に窒素、酸素、炭酸ガス等が解離、電離又は電子付着される。このようにして、O 、NO 、O 、CO 、HCO 、NO 、NO HNOなど様々な気中イオン種を生成することが知られている。正コロナ放電を行った場合は、NH 等が発生する。Am241のような放射線同位元素を用いたイオン放射装置の場合には、上述したものとは多少異なるイオン種が生成されることも知られている。
負イオン放射の場合は、水膜に達した負イオンの一部は水に溶け水中イオンと化し、一部は水と反応し副生成物を生む。正イオン放射の場合は、水膜に達した正イオンの一部が水に溶けて水中イオンと化し、また一部は水と反応し副生成物を生む。なお、これらの気中コロナ放電により生成された多種多様な負イオンが飛来し水中に達していることは、例えばイオンクロマトグラフ分析で実験的に確認することができる。また、この水中に存在する正又は負コロナ放電由来のいわゆる活性種は、有害物の不活化に効果を奏する。つまり、銀イオン等の金属イオンがなくとも有害物質の不活化に効果を奏する。このことは実験的にも確かめられており、単に電気分解で生成した金属イオンで不活化する方法と比して明確な作用効果の違いがある。
なお、本実施形態においては、イオン放射装置4と対極電極3の間に空気層を介在させ、空気中で放電する構成を説明したが、不活性雰囲気等その他の気相において放電及び負イオン流5の放出を行う構成としてもよい。
ところで、上述のコロナ放電が、負イオン流を放射するものであって、対極電極を水と直接接触している金属とした場合にあっては、上述した効果に加え、次に述べる効果を相乗的に得ることができる。
上記したように、針先端部近傍で発生した負イオンは、一部が対向電極14に、また一部は送風ファン16により発生した気流に乗りY2の方向へ送られアース体に向かって負イオンの流れを形成する。つまり、この空気中における負イオン流50に起因して電流が発生することになる。この空間を流れる電流密度は次の(2)式で与えられる。
Figure 2013233522
(jはイオンの電流密度、eは電荷素量、nはイオン密度、vはイオン速度を表す。)
この電流は最終的には金属に向かって流れるが、途中で水膜を経由する。また、電気抵抗ρの物質中を電流が流れると、水膜の厚みをdとすると、水2の両端に電位差Vが発生する。この電圧Vは、(3)式で表される。
Figure 2013233522
(Vは電圧、jはイオンの電流密度、ρは電気抵抗率、dは厚みを表す。)
上記の二式から、気中放電による空気中負イオンの流れが対極電極表面に向かう電流となり((2)式)、この電流が水中を通過して金属に到達すると水中の電気抵抗によって水中に電圧が発生する((3)式)ことがわかる。
ここで、水と金属が接触する系においては、前述のように発生する電圧に起因して水―金属間に電位差が生じ、容易に金属の腐食電位を超えるため、金属の腐食が促進される。つまり、金属の腐食反応により、液中の金属が局部的に犠牲アノードとして働き、このアノード側の金属がイオンとなって液中に溶出する。このようなアノード溶解作用により溶出した金属イオンが有害物質の不活化に効果を発揮する。
ところで、放電条件(電圧、時間等)については、選択される金属の種類や処理対象となる有害物質の種類等により、適宜最適化して決定すればよい。そして、(2)式において、得られるVの値が金属から溶出する金属イオンの溶出電圧以上となるようなイオン電流密度jとなるように制御することが好ましい。
上記金属の種類としては、例えば、Li、Na、K、Ca、Mg、Zn、Al、Ti、Zr、Sn、Fe、Co、Ni、V、Cr、Mo、W、Mn、Cu、Ag、Au、Rh、Pd、Ptからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素の単体、または合金を使用することができる。
なお、有害物質の不活化を行う上での、金属の種類と有害物質との相性については、次のようになる。例えば、スギ花粉はAl、Fe、Cu等の金属イオンで不活化される。また、赤色酵母はAl、Cu、Zn、Mg、Ag等の金属イオンで不活化される。さらに、カビの不活化にはAgイオンが特に好ましい。
本実施形態に係る不活化装置の第一の適用例として、ファンコイルを代表とする冷暖房装置のフィンを挙げることができる。また、例えば、エアコンのフィンを対極電極3とみなし、その上流側にイオン放射装置4としてのコロナ放電電極12を設置することができる。この場合、夏場の高温多湿空気を冷やすことで容易に水滴ないし水膜が確保できるため、フィン表面に付着した有害物質を効率よく不活化することができる。なお、フィンの材質は通常Alであるが、Al以外の金属層を形成することも可能である。多種の金属層を形成する方法については、例えばAl表面にあっても、帯状のその他の金属層を単層又は複数種形成することができる。有害物質との相性を考慮して層形成する金属材料を選択することで、目的とする種々の有害物質の不活化を促進することができる。もちろん、これらの金属層はアルミ表面全体をカバーする必要はない。なお、フィン表面を伝って流れる水滴の自然落下により金属イオンも下方へと流れ、表面を覆うため、有害物質の不活化が促進される。
本実施形態に係る不活化装置の第二の適用例として、冷暖房装置の内部ドレンパンを挙げることができる。例えば、エアコンのドレンパンを対極電極3とみなし、これに対向するようにイオン放射装置4としてのコロナ放電電極12を設置することができる。冷房運転時においては、ドレンパンにも常に水が溜まるため、この水分を温床として、赤色酵母やカビが増殖しやすい。ここで、ドレンパンが金属の場合、そこをアースに落とせば、これを対極電極3とみなすことができる。すなわち、ドレンパンに金属イオンが溜まることで有害物質の不活化が促進される。仮に、ドレンパンが金属ではなく、樹脂等から構成される場合でも、ドレンパンの底面に所定の材質の金属層を単層又は複数種形成することで対象微生物の不活化が促進される。
本実施形態に係る不活化装置の第三の適用例として、気化式加湿器のデミスター部を挙げることができる。例えば、加湿器のデミスター部を対極電極3とみなし、これに対向するようにイオン放射装置4としてのコロナ放電電極12を設置することができる。なお、デミスター部には金属以外の材質が使用されることが多いが、前述と同様にデミスター部表面に所定の材質の金属層を単層又は複数種形成することで、これを対極電極3とみなすことができる。このようにして、デミスター部における有害物質の不活化が促進される。特に、加湿器の性質上、装置内部や通路に水気が多くかびが繁殖しやすいが、銀等の金属層を形成し接地することで、効率的にカビを不活化することができる。ここで、金属層形成の方法については、金属粒含有塗料による塗装、真空蒸着、金属箔の貼り付け等が挙げられる。装置の使用年数、設計寿命に応じて、これらの中から適宜選択すれば良い。
上述した原理で生成される放電由来のイオン又は化合物イオンが発生した水もしくはさらに金属イオンが溶出された水を予め準備しておき、これらの水を有害物質に作用させることで上述同様の不活化効果を得ることもできる。
以上述べたように、本実施形態における装置によれば、放電電極12、対極電極3有害物質を含有する水及び気中に生じた正又は負イオンの相互作用により、水中に有害物質を不活化する成分が生じる。このようにして、非接触的に有害物質を不活化することができる。なお、放電電極が金属であって、水と直接接触している場合に負イオン流を放射することで、金属イオンが水中に溶出する。この金属イオンも有害物質に作用するため、有害物質の不活化が促進される。さらに、同様に水にイオン放射を行い、イオン又は化合物イオンが発生した水もしくはさらに金属イオンが溶出された水を予め準備しておき、イオンを含む水を有害物質に作用させることでも同様の不活化効果を得られる。すなわち、水面の高さが変化する系や、水量が少ない系、あるいは水滴が点在する系など種々の状況に容易に対応できる。また、非接触的な処理であるため、高電圧箇所を水などから離して設置でき、絶縁不良等の危険性が低減する等、安全性の確保に寄与する。
ところで、菌の不活化という観点からは、抗菌剤を練りこんだ樹脂が用いられることがある。しかし、この場合、金属が自然に溶け出す金属イオンの量は電圧印加された場合と比べ極めて小さく、あまり大きな効果が期待できないばかりでなく、練りこまれた抗菌剤のうち表面だけの一部分だけしか効果に預からない。また時間がたつと溶け出る部分が樹脂に埋もれて、効果の持続性に難点がある。またこのような樹脂の表面にごみが堆積した場合、ごみ上の微生物を殺菌することができないが、本実施形態の装置では、常に新しく生成しながら溶出される金属イオンが有害物質の不活化に寄与するため、ごみ上の有害物質についても不活化することができる。また、負イオン発生量を調整することで溶出する金属イオン量を調節できるため、殺菌効果及び装置寿命の調節が容易となる。さらに、殺菌効果と寿命のバランスを自由に変化させることができる。
さらに、本実施形態における装置によれば、高電圧電極と被不活化処理電極において、電気分解による電極肥大の影響(両極間に流れる電流の変化や金属イオン発生量の変化)がないため、このような影響を防ぐための電流制御装置を設ける必要がない。したがって、省スペース化に寄与できる。また、電気分解方式では、発生させたイオンの一部が陰極側に析出し、処理効率上の無駄が生じるが、本実施形態の装置では、このような問題はなく、金属イオン資源を有効に利用できる。また電気分解方式では発生させたイオンは陰極に集中する傾向があり、均一濃度を得ることが難しいが、本形態では水膜表面が仮想陰極となるため水面全体に広がりやすく、全体を不活化するのに適している。
他にも、金属は、水中又は空気中の塩素成分や硫黄成分と反応することで、その表面に不動態膜を形成することがある。このような不動態膜存在下では、金属イオンが溶出し難いため、殺菌効果が期待できないものと考えられていたが、本実施形態の装置によれば、負イオン流との相互作用により、強制的に金属イオンを溶出させることができる。したがって、本実施形態の装置によれば、不動態膜の存在をも問題とせず有害物質の不活化に効果を発揮する。
なお、金属イオンが微生物の殺菌・不活化に寄与するという現象については、様々な報告例がある。しかし、そのメカニズムについては未だ判然としておらず、諸説議論のなされるところである。例えば、銀イオンでは水中の溶存酸素が銀イオンの触媒作用で活性酸素に変わり、その活性酸素が細胞膜に穴を開けるという説、銀イオンが細胞内部に侵入し、酵素の働きあるいは細胞分裂を阻害するという説がメカニズムとして推論されている。気中コロナ放電によって生成された各種イオンの微生物に対する殺菌・不活化のメカニズムについても、細胞膜の破壊、DNA損傷、細胞内部への進入と代謝阻害など、活発な研究が行われている。しかし、未だ不明な点も多く、現時点では諸説議論のなされるところである。水中に溶けた活性種、あるいは水と反応し水中で新たに生成された活性種の微生物に対する殺菌・不活化のメカニズムについては測定が難しいこともあり、実験的に効果の検証が行われているのが現状である。
[有害物質の不活化方法]
次いで、例えば有害物質の不活化装置1を用いて実行できるような有害物質の不活化方法について説明する。
本実施形態の有害物質の不活化方法は、第一の工程として、放電電極と、前記放電電極と対向する対極電極とを設置し、前記対極電極側に有害物質を含有する水を配置する工程を備える。本工程において、有害物質を含有する水2は、容器等に入れて対極電極3側に配置されてもよいし、水と対極電極は直接接触していてもよい。なお、不活化処理の対象とする有害物質、被処理体としての溶媒(水)、金属の具体例としては、前述したとおりである。
第二の工程として、気中放電により気中に正又は負イオンを発生させ、有害物質を含有する水に対して正又は負イオンを放射する工程を備える。本工程においては、前述したイオン放射装置4内の放電器21において正又は負イオンが発生し、外気導入放出器20により対極電極3に対して正又は負イオン流5を放射する。なお、放電原理は、前述のように例えばコロナ放電を用いることができる。また、放電の際の条件としては、本実施形態においても、前述のとおりコロナ放電開始電圧以上の電圧を印加して放電するものとすればよい。
放電由来で発生した正又は負イオンについて、水膜に達した正又は負イオンの一部は水に溶け水中イオンと化し、また一部は水と反応し副生成物を生む。この水中に存在する正又は負コロナ放電由来のいわゆる活性種は、有害物の不活化に効果を奏する。
上記形態において、対極電極3を金属とし、負イオン流を放射するものとする場合、前述同様の原理で金属イオンが水中に溶出される。この金属イオンも有害物質の不活化に効果を奏するため、不活化効果は相乗的になる。
上記のように発生した正又は負イオン流5は、前述のように、上記(1)式に基づいて電流を発生させる。そして、電気抵抗のある物質中をイオン(電流)が通過すると、上記(2)式に基づき、水2中において電圧が発生する。
上記の(1)、(2)式から、気中放電により空気中に生じたイオンの流れが電流となり、この電流が水中を通過して金属に到達すると水中の電気抵抗によって水中に電圧が発生する。
ここで、水と金属が接触する系においては、前述のように発生する電圧に起因して水―金属間に電位差が生じ、容易に金属の腐食電位を超えるため、金属の腐食が促進される。つまり、金属の腐食反応により、液中の金属が局部的に犠牲アノードとして働き、このアノード側の金属が液中にイオンとなって溶出する。このように溶出した金属イオンが有害物質の不活化に効果を発揮する。
また、放電条件(電圧、時間等)については、本実施形態においても、選択される金属の種類や処理対象となる有害物質の種類等により、適宜最適化して決定すればよい。典型例としては、放電電圧が数キロボルトであるのに対し、金属の腐食電圧が数ボルトになるので、インピーダンスの高い空間にほとんどの電圧が分配される。つまり、金属イオン生成から見ると、全体として定電流電源として作用している。従って金属から流れ出す電流の値は、金属からアースに接続された線を流れる電流を測定すれば得られ、これは腐食電流、すなわち実質的な溶出イオン生成電流となる。この値を見ながら効果と寿命のバランスを見定めればよい。この電流はイオン放射装置の印加電圧、放電電流、に影響されるが、直接的には溶出イオン用の金属に向かう電気力線の数に依存する。図2の対向電極における丸穴は、放電を安定化し、放電開始電圧を下げる効果があるため必要な構成であり、対向電極に向かう電気力線と遠方へ向かう電気力線の比率を変えることで溶出イオン電流を調節することが出来る。風速もイオン移動速度に近くなれば、影響を与える。送風ファンがない場合、すなわち風速がゼロのときでもイオンは遠方に向かって飛び出すことが出来るが、電界が弱く移動速度が遅い場合、送風ファンを用いることが好ましい。
上述した原理で生成される放電由来のイオン又は化合物イオンが発生した水もしくはさらに金属イオンが溶出された水を予め準備しておき、これらの水を有害物質に作用させることで不活化することもできる。
このように、本実施形態における方法によれば、放電電極、有害物質を含有する水及び気中に生じた正又は負イオンの相互作用により、水中に有害物質を不活化する成分が生じる。このようにして、非接触的に有害物質を不活化することができる。なお、対極電極が金属であって、水と直接接触している場合に負イオン流を放射することで、金属イオンが水中に溶出する。この金属イオンも有害物質に作用するため、有害物質の不活化が促進される。さらに、同様に水にイオン放射を行い、イオン又は化合物イオンが発生した水もしくはさらに金属イオンが溶出された水を予め準備しておき、イオンを含む水を有害物質に作用させることでも同様の不活化効果を得られる。すなわち、水面の高さが変化する系や、水量が少ない系、あるいは水滴が点在する系など種々の状況に容易に対応できる。また、非接触的な処理工程であるため、高電圧箇所が水などから離れており、絶縁不良等の危険性が低減する等、安全性の確保に寄与する。
また、本実施形態の方法では、溶出する金属イオンが有害物質の不活化に寄与するため、ごみ上の有害物質についても不活化することができる。また、前述のとおり、殺菌効果及び金属イオン資源の寿命の調節が容易となる。さらに、殺菌効果と寿命のバランスを自由に変化させることができる。
さらに、本実施形態の方法では、前述のような電気分解による電極肥大の影響を防ぐための電流制御工程が不要であり、有害物質の不活化処理工程を簡素化できる。また、前述した電気分解雰囲気における発生させた金属イオンの析出等の問題がなく、金属イオン資源を有効利用できる。
他にも、本実施形態の方法によれば、前述のように不動態膜の存在をも問題とせず有害物質の不活化に効果を発揮する。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(1)イオン放射由来のイオン又は化合物イオンによる有害物質の不活化
イオン放射装置4を使用し、放電由来のイオン又は化合物イオンが発生した水を形成させた場合の、カビ及び酵母の殺菌効果を確認するため、次の要領で試験を行った。
DW(蒸留水)1mL中に、各菌のコロニーから白金耳20かき分を懸濁させ、菌液とした。次いで、シャーレ内に滅菌したDWを5mL投入し、これを2セット用意した。2セットのうちの1つをプラスチックカップに乗せてアクリル製チャンバー内に置き、上からイオン放射装置4の放射距離が3cmとなるようにセットした。イオン放射開始を0分とし、10min、30min、1hr、3hr、6hrの時点で各セットからDW0.1mL/1チューブを菌の種類分だけ採取し、すぐに各菌液5μLを投入してよく攪拌し、イオン放射DW−菌液とした。各イオン放射DW−菌液を24時間室内放置した後、カビ及び赤色酵母はPDA培地へ、細菌はSCD培地へ、各0.1mLずつ塗布した。なお、カビ及び赤色酵母は25℃、細菌は35℃で数日間培養した。一方、0.27mLのDW中に各菌液5μLを投入・攪拌したものも同様に培養し、DW−菌液とした。培養後、生成したコロニー数をカウントし、次式(4)により殺菌率を算出した。
Figure 2013233522
(Cnは、DW−菌液におけるコロニー数[cfu/0.1mL]であり、Cmは、イオン放射DW−菌液におけるコロニー数[cfu/0.1mL]である。)
イオン放射せずとも経時的に死滅する菌量を考慮し、自然死滅を除く、正味の殺菌率は次のように算出した。
Figure 2013233522
(但し、残存率=100−殺菌率である。)
上記の負コロナ放電による試験結果を、次の表1に示す。また、上記の正コロナ放電による試験結果を表2に示す。
Figure 2013233522
Figure 2013233522
表1〜2の例では、酵母や細菌については正イオン放射を行った水、負イオン放射を行った水とも高い殺菌率を示した。カビについては、負イオン放射を行った水が特に高い殺菌率を示した。
次いで、イオン放射によりイオンが水中に生ずることを確認するため、以下のような実験を行った。
放射装置の下方約3cmの距離に滅菌蒸留水を入れたプラスチックシャーレを設置し、放射装置で1時間、滅菌蒸留水にイオンを放射した。その処理直後に滅菌蒸留水を採取し、イオンクロマトグラフィーで滅菌蒸留水中のイオンを測定した。イオン放射を行わずに1時間放置した場合の滅菌蒸留水も、イオンクロマトグラフィーで測定し、比較対照とした。なお、イオン放射装置における高圧側針電極に対して、負の高圧印加がなされた場合と、正の高圧印加がなされた場合の夫々について同様の測定を行った。
イオンクロマトグラフの試験結果を図6〜図11に示す。イオン放射を行わなかった滅菌蒸留水を用いたアニオンのバックグラウンドである図6と、負イオン放射を行った滅菌蒸留水を用いた結果である図8を比較すると、負イオン放射後の滅菌蒸留水で検出されるアニオンは明らかに増加していた。そして、イオン放射を行わなかった滅菌蒸留水を用いたカチオンのバックグラウンドである図7と、正イオン放射を行った滅菌蒸留水を用いた結果である図11を比較すると、正イオン放射を行った場合にNH 等のカチオンの増加が見て取れる。これは放電由来の正又は負イオンが滅菌蒸留水中に発生したことを示唆するものである。これらの結果とは逆に、図9、図10では、逆極性ゆえに、示されたイオンの増加が認められなかったことを示すものである。
このように、本発明の装置ないし方法を用いれば、非接触的なイオン放射によって放電由来のイオンを水中に発生させる効果が得られることが確認された。そして、この放電由来のイオンが有害物質に作用することで、各種の有害物質が不活化されることが確認された。
(2)金属イオン溶出による有害物質の不活化
(赤色酵母の不活化)
本実施例の実験系の説明図を、図10(a)に示す。まず、シャーレなどの容器600の内周に鉄、銅、銀及びマグネシウムのいずれかからなる金属線300を取り付けた。次いで、金属線300をアースに接続した。この容器内に、さらに赤色酵母を懸濁させた培養液200を、金属線300と接触するように加えた。これらの上方2cmの位置に負イオン放射装置400を配置した。このような実験系において、電圧5kV、1.5時間の条件で放電を行い、負イオン流500を上記被処理体に放射した。この被処理体を赤色酵母の一般的な生育条件にて培養した。
その結果、培養した後の容器600を上方から観察すると、図10(b)中にXで示す金属の周囲10〜30mmに至るまでの領域において、赤色酵母の増殖は認められなかった。一方で、Yで示す領域には赤色酵母のコロニー形成が認められた。
このように、本発明の装置ないし方法を用いて金属イオンを溶出させることにより、赤色酵母、すなわち微生物を不活化する効果が得られることが確認された。
(スギ花粉の不活化)
赤色酵母の場合と同様に、図10に示すような系において、次の実験を行った。鉄、銅及びアルミニウムのいずれかからなる金属線300に、スギ花粉を付着させた。この金属線300を容器600の内周に取り付け、アースに接続した。そして、この容器600に、金属線300と接触するように蒸留水を加えた。次いで、これらの上方2cmの位置に負イオン放射装置400を配置した。そして、電圧5kV、1.5時間の条件で放電を行い、負イオン流500を上記被処理体に対して放射した。その後、被処理体から、スギ花粉の典型的アレルゲン成分であるCryj1を抽出し、ELISA法によりCryj1の不活化率を測定した。
その結果、蒸留水に懸濁させただけのものと比較して90%以上の不活化率、すなわち検出限界以下の値が得られた。
このように、本発明の装置ないし方法を用いて金属イオンを溶出させることにより、スギ花粉、すなわちアレルゲンを不活化する効果が得られることが確認された。
以上の実施例から得た結果から、本発明の装置ないし方法を用いることにより、非接触的に有害物質を不活化する効果が得られることが確認された。
以上、本発明を若干の実施形態及び実施例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
本発明は、ウィルス、細菌、真菌といった微生物や、アレルゲンなどの広範な有害物質を対象とし、しかも非接触的に不活化することができる極めて有用なものである。
1 有害物質の不活化装置
2 水
3 対極電極
4 イオン放射装置
5 正又は負イオン流
12 放電電極

Claims (35)

  1. 放電電極と、前記放電電極と対向する対極電極とを設置し、前記対極電極側に有害物質を含有する水を配置する工程と、
    気中放電により気中に正又は負イオンを発生させ、前記有害物質を含有する水に対して前記正又は負イオンを放射する工程と、
    を備え、
    前記放電電極において発生した前記正又は負イオン流が前記水に到達することにより、前記気中放電に由来するイオン又は化合物イオンが前記水中に生じ、前記イオン又は化合物イオンが、前記有害物質に作用することを特徴とする有害物質の不活化方法。
  2. 前記正又は負イオン流の放射が、空気層を通じて行われることを特徴とする請求項1に記載の有害物質の不活化方法。
  3. 前記気中放電がコロナ放電であって、前記放電電極の高圧側からの電気力線が、前記水及び前記対極電極に到達していることを特徴とする請求項1又は2に記載の有害物質の不活化方法。
  4. 前記対極電極が、前記水と直接接触していることを特徴とする請求項1乃至3に記載の有害物質の不活化方法。
  5. 前記対極電極が金属であり、前記負イオン流が前記金属に対して放射され、
    前記負イオン流が前記金属表面に到達することにより、前記有害物質に作用する金属イオンが、前記金属から前記水中に溶出されることを特徴とする請求項4に記載の有害物質の不活化方法。
  6. 前記金属が、Li、Na、K、Ca、Mg、Zn、Al、Ti、Zr、Sn、Fe、Co、Ni、V、Cr、Mo、W、Mn、Cu、Ag、Au、Rh、Pd、Ptからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含むことを特徴とする請求項5に記載の有害物質の不活化方法。
  7. 前記有害物質が、赤色酵母を含み、
    前記金属が、Al、Cu、Zn、Mg、Agからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含むことを特徴とする請求項5に記載の有害物質の不活化方法。
  8. 前記有害物質が、スギ花粉を含み、
    前記金属が、Al、Fe、Cuからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含むことを特徴とする請求項5に記載の有害物質の不活化方法。
  9. 前記有害物質が、カビを含み、
    前記金属が、Agを含むことを特徴とする請求項5に記載の有害物質の不活化方法。
  10. 放電電極と、前記放電電極と対向する対極電極とを設置し、前記対極電極側に水を配置する工程と、
    気中放電により気中に正又は負イオンを発生させ、前記水に対して前記正又は負イオンを放射する工程と、
    前記正又は負イオン流が前記水に到達することにより、前記気中放電に由来するイオン又は化合物イオンを前記水中に生じさせる工程と、
    を備え、
    前記イオン又は化合物イオンを含有する水を有害物質に作用させることを特徴とする有害物質の不活化方法。
  11. 前記正又は負イオン流の放射が、空気層を通じて行われることを特徴とする請求項10に記載の有害物質の不活化方法。
  12. 前記気中放電がコロナ放電であって、前記放電電極の高圧側からの電気力線が、前記水及び前記対極電極に到達していることを特徴とする請求項10又は11に記載の有害物質の不活化方法。
  13. 前記対極電極が、前記水と直接接触していることを特徴とする請求項10乃至12に記載の有害物質の不活化方法。
  14. 前記対極電極が金属であり、前記負イオン流が前記金属に対して放射され、
    前記負イオン流が前記金属表面に到達することにより、前記有害物質に作用する金属イオンが、前記金属から前記水中に溶出されることを特徴とする請求項13に記載の有害物質の不活化方法。
  15. 前記金属が、Li、Na、K、Ca、Mg、Zn、Al、Ti、Zr、Sn、Fe、Co、Ni、V、Cr、Mo、W、Mn、Cu、Ag、Au、Rh、Pd、Ptからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含むことを特徴とする請求項14に記載の有害物質の不活化方法。
  16. 前記有害物質が、赤色酵母を含み、
    前記金属が、Al、Cu、Zn、Mg、Agからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含むことを特徴とする請求項14に記載の有害物質の不活化方法。
  17. 前記有害物質が、スギ花粉を含み、
    前記金属が、Al、Fe、Cuからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含むことを特徴とする請求項14に記載の有害物質の不活化方法。
  18. 前記有害物質が、カビを含み、
    前記金属が、Agを含むことを特徴とする請求項14に記載の有害物質の不活化方法。
  19. 有害物質を含有する水と、
    気中放電により気中に正又は負イオンを発生させ、前記水に対して前記正又は負イオンを放射するイオン放射手段と、
    前記水側に配置され、前記イオン放射手段における放電電極に対向する対極電極と、
    を備え、
    前記放電電極において発生した前記正又は負イオン流が前記水に到達することにより、前記気中放電に由来するイオン又は化合物イオンが前記水中に生じ、前記イオン又は化合物イオンが、前記有害物質に作用することを特徴とする有害物質の不活化装置。
  20. 前記イオン放射手段が、空気層を介して前記対極電極に対向することを特徴とする請求項19に記載の有害物質の不活化装置。
  21. 前記イオン放射手段がコロナ放電電極であって、前記放電電極の高圧側からの電気力線が、前記水及び前記対極電極に到達していることを特徴とする請求項19又は20に記載の有害物質の不活化装置。
  22. 前記対極電極が、前記水と直接接触していることを特徴とする請求項19乃至21に記載の有害物質の不活化装置。
  23. 前記対極電極が金属であり、前記負イオン流が前記金属に対して放射され、
    前記負イオン流が前記金属表面に到達することにより、前記有害物質に作用する金属イオンが、前記金属から前記水中に溶出されることを特徴とする請求項22に記載の有害物質の不活化装置。
  24. 前記金属が、Li、Na、K、Ca、Mg、Zn、Al、Ti、Zr、Sn、Fe、Co、Ni、V、Cr、Mo、W、Mn、Cu、Ag、Au、Rh、Pd、Ptからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含むことを特徴とする請求項23に記載の有害物質の不活化装置。
  25. 前記対極電極が、単層の金属層又は複数層の金属層から構成されることを特徴とする請求項19乃至24に記載の有害物質の不活化装置。
  26. 前記対極電極が、冷暖房装置のフィンであることを特徴とする請求項19乃至25に記載の有害物質の不活化装置。
  27. 前記対極電極が、冷暖房装置のドレンパンであることを特徴とする請求項19乃至25に記載の有害物質の不活化装置。
  28. 前記対極電極が、気化式加湿器のデミスター部に設けられることを特徴とする請求項19乃至25に記載の有害物質の不活化装置。
  29. 気中放電により気中に正又は負イオンを発生させ、水に対して前記正又は負イオンを放射するイオン放射手段と、
    前記水側に配置され、前記イオン放射手段における放電電極に対向する対極電極と、
    を備え、
    前記放電電極において発生した前記正又は負イオン流が前記水に到達することにより、前記有害物質に作用する気中放電由来のイオン又は化合物イオンが、前記水中に生じ、前記イオン又は化合物イオンを含有する水を有害物質に作用させることを特徴とする有害物質の不活化装置。
  30. 前記イオン放射手段が、空気層を介して前記対極電極に対向することを特徴とする請求項29に記載の有害物質の不活化装置。
  31. 前記イオン放射手段がコロナ放電電極であって、前記放電電極の高圧側からの電気力線が、前記水及び前記対極電極に到達していることを特徴とする請求項29又は30に記載の有害物質の不活化装置。
  32. 前記対極電極が、前記水と直接接触していることを特徴とする請求項29乃至31に記載の有害物質の不活化装置。
  33. 前記対極電極が金属であり、前記負イオン流が前記金属に対して放射され、
    前記負イオン流が前記金属表面に到達することにより、前記有害物質に作用する金属イオンが、前記金属から前記水中に溶出されることを特徴とする請求項32に記載の有害物質の不活化装置。
  34. 前記金属が、Li、Na、K、Ca、Mg、Zn、Al、Ti、Zr、Sn、Fe、Co、Ni、V、Cr、Mo、W、Mn、Cu、Ag、Au、Rh、Pd、Ptからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含むことを特徴とする請求項33に記載の有害物質の不活化装置。
  35. 前記対極電極が、単層の金属層又は複数層の金属層から構成されることを特徴とする請求項29乃至34に記載の有害物質の不活化装置。
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