本発明の一実施形態によるミリメートル波またはサブミリメートル波ポータル・システム1の模式図を図1に示す。概略的に、ポータル・システム1は、電気光学ソース10と、1つ以上のミリメートル波またはサブミリメートル波検出器150とを備えている。電気光学ソースは、光信号発生器120、光スイッチングおよびエンコーディング回路130、ならびに1つ以上の光学/電気変換器140を備えている。
本発明について説明し定める目的上、ここでミリメートルおよびサブミリメートル波信号に言及する場合、30GHz以上の周波数を示すことを注記しておく。光信号発生器120は、少なくとも約30GHzの変調周波数によって特徴付けられる変調光信号を発生するように構成されている。光回路は、光ファイバ、導波路、またはその他の適した光伝送線135を通じて変調光信号を1つ以上の光学/電気変換器140に導くように構成されている。各光学/電気変換器140は、変調光信号をミリメートル波またはサブミリメートル波100に変換し、ミリメートル波またはサブミリメートル波100を、ミリメートル波またはサブミリメートル波検出器150の1つによって定められる視野内に位置する物体200の方向に射出する。各ミリメートル波またはサブミリメートル波検出器150は、物体200からのミリメートル波またはサブミリメートル波の反射110を、物体200からの反射時におけるミリメートル波またはサブミリメートル波100の減衰を表す信号に変換する。
特定の対象品目が物体200中にあるかまたは物体上に支持されているか判断するためには、物体200からの反射時におけるミリメートル波またはサブミリメートル波100の減衰を表す信号に種々の分析方式を適用することができる。これらの方式の詳細は、ミリメートル波またはサブミリメートル波検出に関する従来の教示または今後開発される教示から少しずつ集めることができる。例えば、限定ではなく、衣服の下に秘匿されている金属物体または非金属物体は、ミリメートル波(mmw)撮像を用いて、減衰をフランネル、ポリエステル、綿、ナイロン、ポリカーボネート、人の肌等のような普通の素材の周波数依存減衰、または反射率と相関付けることによって観察することができる。
本発明の一実施形態では、人のmmw画像を所与の周波数で撮影する場合、異なる周波数においてその同じ人に予期される画像は、人の肌の反射率の周波数依存性のみに基づいて、相応に正しく近似することができる。人が秘匿物体を携行している場合、第2周波数においてその人に予期される画像は、秘匿物体の反射率が異なるために、予期された画像とは異なることになる。この代替周波数における予期画像と測定画像との間のずれを用いると、画像の人の判読(interpretation)が無くても、秘匿物体の存在を示すことができる。本発明は多数のmmw周波数の使用には限定されないが、本発明のポータル・システムにおいて2つよりも多い周波数を用いると、秘匿物質を検出する能力を犠牲にすることなく、擬陽性の数を低減することができる。例えば、所与の周波数における総反射電力は目標物のサイズおよび形状に依存するだけでなく、着衣やあらゆる秘匿物体にも依存するので、システムは、多数の周波数における反射信号の減衰を比較するようにデータ収集および分析ユニット160をプログラミングすることによって、自己較正することができる。物体20のサイズおよび形状、ならびに衣服の組成は、しかるべき周波数における目標物体200の応答を比較し、秘匿物体の存在のみを残して、予期した周波数依存応答から反射率を変化させることによって、変数のように除去することができる。
秘匿物体の潜在的な存在の判定は、データ収集および分析ユニット160によって行われる。多数のmmwセキュリティ・ポータルを1つのmmw波形発生器によって配給する(serve)と、共通のデータ分析ユニット160を有することができることが考えられる。次いで、潜在的秘匿物質の存在を適正なポータルにおいて、「ビープ」または既存の磁気計において見受けられるような(occur)その他のインディケータによって通知することができる。あるいは、本発明によるmmwポータルに、物体200の画像を発生するように較正した検出器150のアレイを装備することもでき、この場合、データ収集および分析ユニット160には、適した画像処理ソフトウェアを組み込むことが必要となる。
通例、ミリメートル波またはサブミリメートル波検出器150によって定められる視野では、検出器150の視野も通過しなければ、物体200がポータル・システム100のポータル170を通過すること、またはその近くを通ることができないようになっている。図示の実施形態では、ポータル160はウオーク・スルー・ポータル(walk-through portal)として構成されており、1対のミリメートル波またはサブミリメートル波構成機器180と、従来の金属検出器として動作する補足の検出部190、あるいはポータル・システムにおいて用いるのに適した別の種類の従来のまたは今後開発される検出器または撮像デバイスとを含む。本発明を定め説明する目的のために、ここで「ポータル」に言及する場合、物体の分析に適した種々の構造または構成をその適用範囲に含めるように解釈することとし、門戸(doorway)、ゲートウェイ、エントリ、敷居、ポルティコ(portico)、ステーション、ターミナル、通路等を含み、しかもこれらには限定されないことを注記しておく。
光信号発生器120は、変調光信号を発生するのに適した種々の従来の形態または今後開発される形態をなすことができるが、本発明の一実施形態によれば、発生器120は電気光学側波帯発生器20と光学フィルタ30とを備えている。これらの構造については、図2から図11を参照しながら以下で詳しく説明する。図2から図11を参照しながら以下で説明するが、図2Aおよび図2Bに示す本発明の一実施形態の場合、アレイ状の導波路格子(AWG)を光学フィルタ30として採用しており、発生器120の出力の各々は別個の光周波数を搬送する。何故なら、AWGは多数の周波数チャネルを備えており、その各々は一意の比較的狭い帯域幅によって特徴付けられるからである。
例えば、25GHz AWGの場合、AWGの各出力チャネルは、約25GHzの3dB帯域幅を有し、隣接するチャネルから25GHzだけ分離されている。したがって、以下で説明する、図6に示すAWG構造を概略的に参照すると、非変調光を通過させる出力チャネルを中央チャネルに指定し、追加の各ポートには+/−ポート番号を割り当てて、中央チャネルからのそのポートの順次周波数分離を示す。25GHz AWGの場合、中央チャネルの高周波数側にある最初のポート(ポートP1+)の中心波長は、中央チャネル(P0)のそれよりも25GHz上にあり、一方中央チャネルの低周波数側にある最初のポート(ポートP1−)の中心波長は、中央チャネル(P0)のそれよりも25GHz下にある。ポートP1+は25GHzの3dB帯域幅を有するので、このチャネルは、λ0+12.5GHzからλ0+37.5GHzまでの波長を通過させる。ここで、λ0は中央チャネルの波長を表す。同様に、中央チャネルの高周波数側にある2番目のポート(ポートP2+)の中心波長は、中央チャネル(P0)のそれよりも50GHz上にあり、一方中央チャネルの低周波数側にある2番目のポート(ポートP2−)の中心波長は、中央チャネル(P0)のそれよりも50GHz下にある。ポートP2+も25GHzの3dB帯域幅を有するので、このチャネルはλ0+37.5GHzからλ0+62.5GHzまでの波長を通過させる。したがって、側波帯発生器によって生ずる別個の周波数は、AWGチャネルの特定的な中心波長と一致する必要はない。むしろ、AWGの設計、および側波帯発生器の構成は、側波帯発生器によって生ずる別個の周波数を別々のAWGチャネルに通過させる構成が得られるようにするだけでよい。
図2Cにおいて、複数の導波路55および光カプラ58が、導波路基板上に形成され、AWGの出力チャネルに結合するのに適した一連の入力チャネルIと、光カプラ58によって組み合わされるそれぞれの信号対を送信するように構成された一連の出力チャネルOとを定める。図示の構成では、中央チャネル信号は、中央チャネル信号は、適した光ダンプDに導かれ、一方、一次側波帯、二次側波帯、および三次側波帯は、組み合わされて出力チャネルOに導かれる。これらの組み合わされたMMW光キャリアは、追加の光スイッチング回路に導いて、正しいキャリアをエンコードすること、および/またはMMW信号の送信に適したO/E変換器に導くことを確保することができる。
光信号発生器120を駆動する様式の一例を、以下の表および図2Dに示す。光信号発生器120は、例えば、17.5GHzで駆動すると、互いに約35GHzだけ離間した一次側波帯を発生することができる。更に具体的には、自明のこととして、各一次側波帯は、駆動信号から17.5GHzだけ離間されており、したがって、一次側波帯は互いからその量の2倍、即ち、35GHzだけ離間されている。これら一次側波帯の各々は、光ファイバ30によって別個の発生器出力に導かれ、スイッチング回路130によって選択的に組み合わされて35GHzにおいて連続波Ka−帯光変調を生ずる(yield)ことができる。17.5GHz駆動周波数の二次、三次、四次側波帯の選択および組み合わせにより、それぞれ、70GHz(V−帯)、105GHz(W−帯)、および140GHz(F−帯)の光変調が生ずる。この線形関係を、約10GHzから約22GHzにわたる駆動周波数範囲における一次側波帯、二次側波帯、三次側波帯、および四次側波帯について、図2Dに示す。
図2Cおよび図2Dならびに上の表に示す側波帯の発生は、単に、同様の次数の側波帯、例えば、+/−1、+/−3、+/−4等を伴うに過ぎない。しかしながら、光回路130は、別個の周波数光出力のうち異なるものを選択し組み合わせて、種々の別個の連続波変調光信号出力を生成するように構成することができることも想定している。例えば、本発明の一実施形態によれば、一連の導波路および波長コンバイナは、1つの導波路基板上に形成することができ、異なる次数の側波帯、例えば、+4/0、+1/−2;−3/−5等からの別個の周波数の光出力の選択および組み合わせをし易くするように構成することができる。その結果、本発明のこの実施形態による光信号発生器120および光回路は、協同して周波数選択能力を電気光学ソース10に導入する。
図2Cに示す交差導波路構成は、三帯域(tri-band)電気光学ソースが望ましい場合に、特に有用である。具体的には、図2Aに示す側波帯発生器20を十分過酷に駆動すると、図2Cに示す交差導波路構成の入力チャネルIの各々は別個の側波帯を搬送する。これら別個の側波帯は、導波路55および光カプラ58の組み合わせによって自ずと決定されるように組み合わせて、3つの周波数別個MMWキャリア信号を生成することができ、これらの各々は別々の出力チャネルOを通じて送信することができる。尚、図2Cの目盛りは、それぞれの導波路55間の分離が大きくなるように、非対称となっていることを注記しておく。加えて、それぞれの光カプラの構成は、単に模式的に図示したに過ぎない。最後に、それぞれの交差角度が、光干渉を回避するように相応に大きいのであれば、導波路が図2Cに示すように交差してもよいことを注記しておく。
限定した数の顕著な側波帯だけを形成できるように厳しく側波帯発生器20を駆動する場合、レーザソース15の中心波長を、周波数選択を強化するようにチューニングすることができる。例えば、側波帯発生器が単に顕著な一次および三次側波帯のみを形成する場合を考える。レーザソース15の波長をAWGの中央チャネルにチューニングすると、導波路網55は2つの周波数別個MMWキャリア信号のみを発生する。一方は+/−1側波帯に対応し、他方は+/−3側波帯に対応する。好ましいMMWキャリア信号が実際には+/−2側波帯に対応する場合、レーザの波長をチューニングして、AWGの+1チャネルおよび導波路網55の+1入力チャネルにずれるようにすることができる。その結果、導波路網55および光カプラ58は、−3/+1チャネル上に位置する信号を組み合わせ、−3/+1側波帯に対応するMMWキャリアを発生することになる。これは、+/−2側波帯の組み合わせと同等である。
また、波長選択は、側波帯発生器の駆動周波数を変化させることによっても行うことができる。例えば、前述の表および図2Dに更に示すように、光信号発生器120を、例えば、15.67GHzで駆動して、互いから約94GHzだけ離間した三次側波帯を発生することができる。これらの側波帯の各々は、光学フィルタ30によって別個の発生器出力に導かれ、スイッチング回路130によって選択的に組み合わされて、W−帯、即ち、94GHzにおいて連続波光変調を生ずることができる。
したがって、図2Dに示すように、本発明のこの態様の信号発生器およびスイッチング回路をプログラマブル・コントローラまたはその他の適した制御ハードウェアに結合すれば、広い範囲に渡る電気光学ソース10の変調周波数を制御する有効な手段を設けることができる。駆動周波数を制御し適した側波帯を選択し/組み合わせることによって、電気光学ソース10を複数の変調帯に跨ってまたは広い周波数範囲全域で実質的に連続的に走査し、所望の変調周波数を生成することができる。尚、周波数走査光出力、または別個周波数光出力の様々な組み合わせを共通の光学/電気変換器140、複数の異なる光学/電気変換器140、または双方に導くことができることも想定している。更に、変調光信号を、1つのポータル170における1つの光学/電気変換器140に、1つのポータルにおける複数の光学/電気変換器に、または数個のポータル170に跨って分布する複数の光学/電気変換器140に導くことができることも考えられる。光回路130は、変調光信号を複数の変調出力に分割することによって、1つの光学/電気変換器140からの変調光信号を順次再度次の変換器に導くことによって、または双方によってそのようにするように構成することができる。
また、光回路130は、光学/電気変換器140に導く前に、変調光信号をエンコードするように構成することもできる。例えば、一旦変調光信号を確立したなら、例えば、図2A、図2B,および図7を参照して以下で詳細に説明するデータ・エンコードを利用することによって、トーンまたはディジタル・シグネーチャ(digital signature)を光キャリア上に組み込むことができる。THz信号を変調するよりも光信号を変調する方が容易なので、トーンまたはディジタル・シグネーチャを光ドメインにおいて信号上にエンコードする。マッハ−ゼンダー干渉計のように比較的単純に構成した変調器を用いて、トーンまたはディジタル・シグネーチャをエンコードすることができる。尚、本発明の範囲から逸脱することなく、光ドメインまたは電気ドメインにおいて光信号を変調するために代替手段を用いてもよいことも考えられる。
一旦トーンまたはディジタル・シグネーチャを変調光信号上にエンコードしたなら、複合信号を任意に増幅することができる。光増幅は比較的単純である。エルビウム・ドープ・ファイバ増幅器のような光増幅器は、光信号上でデータ変調を過度に損失せずに、光パワーを増大する。潜在的な増幅の後、次に光信号を切り換えるかまたは分割して、種々のmmwセキュリティ・ポータルにおける種々のmmwエミッタにこの信号を送る。任意に、光信号の増幅は、光信号の切換または分割の後に行うこともできる。
検出器150は反射mmw信号を、物体200からの反射時におけるミリメートル波またはサブミリメートル波100の減衰を表す信号に変換するのに適した種々の従来の形態または今後開発される形態をなすことができるが、本発明の一実施形態によれば、検出器150はアンテナ・アセンブリを備えている。このアンテナ・アセンブリは、テーパースロット・アンテナ部分20’および電気光学導波路部分30’を備えている。これらの構造については以下で図12から図19を参照しながら詳細に説明する。
図2から図11を纏めて参照し、最初に図2Aを参照すると、本発明の一部の実施形態によるセキュリティ・ポータルに用いるのに適した電気光学ソース10が示されている。一般に、図示した電気光学ソース10は、とりわけ、側波帯発生器20、光学フィルタ30、および導波路ネットワーク55を備えている。導波路ネットワーク55は、電気光学ソース10の光入力12からの光信号を、側波帯発生器20および光学フィルタ30を経由して電気光学ソース10の光出力14に導くように構成されている。図3から図5を参照して更に詳しく論ずるが、側波帯発生器20は入力光信号IINのキャリア周波数λ0を中心とする周波数側波帯Sを発生するように構成されている。光学フィルタ30は、周波数側波帯Sとキャリア周波数λ0との間で弁別を行い、特定の対象側波帯を光出力14に、ミリメートル波光信号IMMWの形態で導くように構成されている。出力信号のデータ・エンコード変調が望まれる場合、電気光学ソース10は更に、エンコード光データ信号IDを発生するように構成されているデータ・エンコーダ40も備えている。
側波帯発生器20は、電気光学干渉計として構成することができる。更に具体的には、マッハ−ゼンダー干渉計のように、干渉計の入力セグメントを伝搬する光信号を、例えば、Y−スプリッタにおいて2つの等しい部分に分割する。2つの光信号は、干渉計の2本のアームに沿って伝搬した後に、例えば、Y−コンバイナによって再度組み合わされる。Y−コンバイナにおいて2つの光信号が同相である場合、信号は加算的に干渉し、最大強度が伝搬して出力導波路に出ていく。しかしながら、2つの光信号の位相が外れている場合、これらの信号は減算的に干渉し、出力強度は低下する。Y−コンバイナにおける信号の位相がπラジアンだけ外れている場合、2つの信号は減算的に干渉し、出力は最少となる。
電気光学制御マッハ−ゼンダー干渉計では、例えば、変調信号入力端子22および50Ω制御信号端子24を通じて電気光学導波路に12GHz電圧を印加すると、位相シフトが誘起され、信号コンバイナにおいて加算的干渉および減算的干渉を調節する。電気光学導波路に印加された電圧によって2本のアーム間にπの位相シフトが誘起された場合、出力は最少になる。πの位相を誘起する電圧は、Vπと言えば分かる。限定ではなく例示として、本発明の側波帯発生器20およびデータ・エンコーダ40に用いるための適したある制御電極および導波路構成に関する具体的な教示が、米国特許出願公開第2005/0226547号A1「DC結合電極を用いた電気光学変調器」および第2004/0184694号A1「電気光学変調器およびこれを組み込んだ導波路」に紹介されている。
電気光学干渉計を−π/2でバイアスしfmの周波数で変調すると(注意:ωm=2πfm)、基本周波数および奇数高調波(即ち、3ωm、5ωm、...)の各々における出力光信号の強度は、ベッセル関数を用いて計算することができる。表1は、基本周波数および奇数高調波の大きさを纏める。
表1から、Vπ未満の電圧で変調器を駆動すると、高調波の振幅は非常に低いことがわかる。しかしながら、変調器を厳しく駆動していくに連れて、高調波の大きさは基本波よりも大きくなる。図3Aから図3Dは、駆動電圧の振幅がVπ/4、Vπ/2、Vπ、および2Vπに等しい場合の干渉計の時間ドメイン応答を示す。図3Cでは、奇数高調波3ωmがキャリア周波数ωmを支配する(dominate)。図3Dでは、奇数高調波5ωmがキャリア周波数ωmを支配する。
図4は、基本波、第3高調波、第5高調波、および第7高調波と正規化した駆動電圧Vm/Vπとの間における振幅の関係をグラフで示す。図4から分かるように、側波帯発生器20として機能する電気光学変調器を2Vπよりも少し大きな電圧振幅で駆動すると、第5高調波(W5)の振幅が最大となる。どの側波帯を対象の側波帯に選択するかには関係なく、対象の側波帯の振幅が最大に達する正弦波電圧に近似するように、制御信号を選択できることが考えられる。
図5Aから図5Cを参照すると、1550nmの光信号を10GHzで変調する例が示されており、基本変調周波数およびいずれの高調波も、1550nmキャリアから+/−0.08nmにおいて光キャリア上に側波帯として現れる。図5Aは、非変調光信号を示す。図5Bは、Vm=Vπとしたときの側波帯発生器20の出力における光スペクトルを示す。図5Cは、Vm=2Vπとしたときのスペクトルを示す。図5Cにおける光スペクトルは、1549.52nmおよび1550.48nmにおける優勢側波帯を示す。周波数ドメインでは、これらの波長は193,608.4GHzおよび193,488.4GHzにそれぞれ対応する。これら2つの周波数間の差は120GHzである。この場合もこれは12GHz変調周波数の+/−第5高調波(即ち、+/−5×12GHz即ち+/−60GHz)に対応する。
尚、対象の側波帯が側波帯発生器20から出力される光信号を支配する必要がないことが考えられる。むしろ、本発明の多くの実施形態では、対象の周波数側波帯の大きさが、側波帯発生器の出力において、電気光学ソースの光入力における光キャリア信号の大きさよりも少なくとも10%であることを確保しさえすれば十分である場合もある。
光学フィルタ30に関しては、先に注記したように、光学フィルタ30の目的は、所望の側波帯を選択し、キャリア周波数およびいずれの不要な側波帯をも除去することである。この光学濾波機能は、種々の技術を用いて遂行することができ、ブラグ格子反射フィルタ、波長選択マッハ−ゼンダー・フィルタ、多層薄膜光学フィルタ、アレイ状導波路格子(AWG)、マイクロ・リング共振フィルタ、および波長選択的な指向性カプラ・フィルタ(directional coupler filter)が含まれる。アレイ状導波路格子は特に有用である。何故なら、これは、狭い帯域幅によって特徴付けられる多数のチャネルを有する集積光学デバイスであるからである。以下の論述では、AWGの使用を中心に据えるが、他のフィルタも本発明にしたがって用いることができる。
AWGの役割は、望ましくない側波帯を濾波することであり、信号コンバイナとの協同により、2つの対象側波帯を組み合わせることである。例えば、チャネル間隔が60GHz(Δλ=0.48nm)またはチャネル間隔が30GHz(Δλ=0.24nm)のAWGが、前述の120GHzシステムには非常に適している。図6に模式的に示すように、側波帯発生器から変調光信号IMODとして発生した側波帯波長が光学フィルタ30に供給されると、側波帯の各々は、その特性波長に応じて、フィルタ30の別個の出力チャネルから出てくる。限定ではなく例示として、側波帯発生器20の出力をAWGに挿入すると、図6に模式的に示すように、2つの望ましい第5高調波がポート3およびポート7から出てくる。しかしながら、60GHzのAWGを用いた場合、所望の五次側波帯は、変位量が少ないが、別個のポート、即ち、4および6から出てくる。30GHzのAWGの利点の1つは、ポートの帯域幅がはるかに狭いことである。しかしながら、30GHzのAWGの方が生産および動作が難しいことが多い。これらの理由のために、60GHzのAWGを光学フィルタ30として利用することによって、本発明の一部の実施形態を動作させることが好ましい場合もある。
本発明による信号コンバイナ70も図6には示されており、所望の側波帯は導波路Y−コンバイナによって組み合わされる。例えば、2つの第五高調波側波帯を信号コンバイナ70において組み合わせると、光学信号IMMWは120GHzの連続波変調を有することになる。尚、光学フィルタが、一元光路に沿って対象側波帯の伝搬を維持するように構成されている光学デバイスを備えている場合、信号コンバイナは必要でないことが考えられる。
図7を参照すると、一旦変調光信号IMMWを形成すると、例えば、10GB/s電気データ信号を利用し、データ信号入力端子42および50Ω制御信号端子44を通じてデータ・エンコーダ40に結合することによって、データをキャリア上に組み込むことができる。THz信号を変調するよりも光信号を変調する方が一般的には簡単であるので、光ドメインにおいてデータを信号IMMW上にエンコードする。ここで、マッハ−ゼンダー干渉計として構成された簡単な変調器を用いて、データをエンコードする。尚、本発明の範囲から逸脱することなく、光ドメインまたは電気ドメインにおいて光信号IMMWを変調するには代替手段を採用してもよいことも考えられる。
一旦変調光信号上にデータをエンコードしたなら、複合信号IDを増幅し、次いでスペクトルのTHz部分に変換することができる。光増幅は比較的単純である。エルビウム・ドープ・ファイバ増幅器のような光増幅器は、光信号上でデータ変調を過度に損失せずに、光パワーを増大する。
限定ではなく一例として、一動作モードでは、約1550nmを中心とする帯域幅において連続波(CW)モードで動作する電気通信級レーザ・ダイオード15が、デバイス10の光部分で用いられる光キャリア周波数λ0を供給する。電気光学変調器は、側波帯発生器20として機能し、以下に述べるように過剰駆動して、得られる光信号が複数の側波帯Sを光キャリアλ0上に含むようにする。例えば、しかるべく構成した変調器をVπの2倍で過剰駆動すると、変調周波数の5倍の対象側波帯を発生する。ここで、Vπは、変調器のそれぞれのアーム間にπの位相シフトが生ずる電圧を表す。したがって、変調器を12GHzで過剰駆動すると、+/−60GHzにおいて1550nmの光キャリアを中心として対象側波帯が発生する。
60GHzチャネルを有する電気通信級アレイ状導波路格子(AWG)を光学フィルタ30として用いると、キャリア光信号λ0を濾波し、2つの対象光側波帯を組み合わせて、120GHzで変調したミリメートル波光信号を形成する。第2電気光学変調器をデータ・エンコーダ40として用いて、データをmmw−変調光信号上にエンコードし、データをエンコードした信号IDを発生する。マッハ−ゼンダー干渉計において位相を制御するために電気光学効果を用いる電気通信級光変調器は、10GB/s以上でデータをエンコードすることができる。
光増幅器75は、適した光学/電気変換器80における変換に先だって、変調光信号IDを増大させる。光学/電気変換器80は、適した従来の形態または今後開発される形態をなすことができる。例えば、限定としてではなく、0.12THzにおいて動作するようにチューニングした高速フォトダイオードを用いると、光キャリアを除去し、信号IDを変調THz信号EDに変換することができる。
ここでは、指向性結合領域の形態とした光信号スプリッタおよびコンバイナを参照しながら、本発明の多くの実施形態を例示しているが、本発明は、光信号の分割または組み合わせに適しているのであれば、任意の従来の構造または今後開発される構造の利用をも想定していることを注記しておく。例えば、光信号を分割するおよび組み合わせるのに適した代替構造には、限定ではないが、2×2指向性結合領域、1×2指向性結合領域、1×2Y字状信号スプリッタおよびコンバイナ、ならびに1×2および2×2マルチモード干渉要素スプリッタおよびコンバイナが含まれる。これらの構造の具体的な設計パラメータは、本発明の範囲を超えており、2005年2月8日に発行された米国特許第6,853,758号を含む既存の情報ソースおよび今後作成される情報ソースから少しずつ集めることができる。この特許の開示内容は、ここで引用したことにより、本願にも含まれるものとする。
この時点までは、本明細書の論述では、初期マッハ−ゼンダーをVπ/2の2本のアームにおいてある位相差でバイアスすると仮定していた。しかしながら、位相差がπ(またはπの倍数)に等しくなるように変調器をバイアスすると、出力光信号は変調信号の偶数高調波(2ω、4ω、6ω、...)を有することになる。Vπ未満の電圧で側波帯発生器20を駆動すると、高調波の振幅は比較的低くなる。しかしながら、側波帯発生器20を更に厳しく駆動するに連れて、高調波の大きさは基本キャリア周波数よりも大きくなる。図8Aから図8Dは、駆動電圧振幅がVπ/4、Vπ/2、Vπ、および2Vπに等しい場合の側波帯発生器20の時間ドメイン応答を示す。尚、このバイアス構成では、基本周波数では変調がないことを注記しておく。代わりに、第2高調波が直ちに増大し始める。
図9は、駆動電圧の関数としての、偶数高調波の振幅を表すグラフである。このグラフは、第2高調波(W2)、第4高調波(W4)、および第6高調波(W6)の振幅を示す。J0についてのデータは、光信号の相対的光バイアスに対応する。以前に開発された分析を用いると、このπ構成は、変調周波数の2倍、4倍、および6倍における側波帯を形成するために用いることができる。12GHzの駆動周波数を仮定すると、このバイアス方法は、96GHz(+/−第4高調波)および144GHz(+/−第6高調波)においてCW−変調を有する光信号を生成するために用いることができる。
尚、駆動周波数を特定の値に固定する必要はないことが考えられる。具体的には、可変周波数ソースとして12GHz変調制御信号を代わりに用いた場合、THz帯信号の周波数も可変となることができる。例えば、12GHzの制御信号を12.5GHzに変更すると、第5高調波の差は120GHzから125GHzに変化する。勿論、高調波の周波数が変化すると、フィルタ30の動作パラメータの変化も必要となる場合もある。何故なら、新たな対象側波帯はフィルタ30を通じて作られるからである。同様に、光学フィルタとY−コンバイナとの間に光スイッチを追加すると、種々の側波帯を組み合わせることが可能になる。これによって、ある範囲の連続波変調光信号を得る際に、柔軟性を得ることができる。
図10を参照すると、側波帯発生器20は、図1から図9を参照して先に説明した干渉計とは異なり、位相変調器の形態をなしてもよいことが考えられる。図10は、本発明のこの態様による適した位相変調器の構成の模式図である。一般に、位相変調側波帯発生器20は、電気光学コアおよび/またはクラッディングを有する直線導波路52を備えており、側波帯発生器20の電気光学機能部56を横切るように電界をかけると、導波路52の屈折率が変化し、これによって導波路52の機能部56を伝搬する光信号の位相の進みまたは遅れが生ずるようになっている。
図10に示す形式の位相変調器の信号出力は、以下の式で表すことができる。
ここで、ωcは光周波数、ωmは変調周波数であり、電界および信号の強度は、
と表すことができる。
位相変調器の電圧の大きさがVm=Vπとなるような場合、sinωmtが−1から1まで変化する際に、位相項は+πと−πとの間で変調する。言い方を変えると、Vm=Vπという条件の下では、位相シフトは2πとなる。
干渉計に基づく側波帯発生器の文脈において先に注記したように、基本周波数および奇数高調波(即ち、3ωm、5ωm、...)の各々における出力光信号の大きさは、ベッセル関数を用いて計算することができる。図11Aから図11Dは、Vm=0.01Vπ、Vm=0.50Vπ、Vm=Vπ、およびVm=2.04Vπとした場合の本発明による位相変調側波帯発生器20の出力における基本波および奇数高調波の相対的な大きさを示す。干渉計に基づく側波帯発生器20の場合と同様、位相変調側波帯発生器20の第5高調波の大きさはVm=2.04Vπにおいて最大値に達する。
干渉計に基づく側波帯発生器20と位相変調側波帯発生器20との間で選択する際、多数の要因が関与して来る。具体的には、干渉計の場合、出力強度は駆動電圧と共に変動し、干渉計上のDCバイアスを用いて出力強度信号を調節し、側波帯の相対的な高さを制御することができる。対照的に、側波帯発生器20を位相変調器として構成した場合、出力強度は、駆動電圧を変化させても、比較的一定のまま留まり、光信号の位相のみが変化する。加えて、駆動電圧のDCバイアスは、出力強度に影響を及ぼすことはなく、位相変調器が発生する側波帯の高さを変えることもない。位相変調器は、側波帯の発生については、干渉計と同様に効率的である。例えば、図4および図11Dを参照すると、双方の形式の側波帯発生器は、約2.04Vπの駆動電圧で第5高調波を最適化する。
干渉計は、プッシュ−プル構成で作動させることができ、したがって1つの導波路デバイスの半分の長さでπの位相シフトを得ることができる。位相変調器は、プッシュ−プル条件では作動させることはできない。したがって、同等の電気光学物資を用いる場合、位相変調器は干渉計よりも概ね2倍長くしなければならない。しかしながら、干渉計をπ/2でバイアスすると、3dB(50%)の固有損失(inherent loss)が生ずる。対照的に、位相変調器にはこの固有損失は起こらない。したがって、本発明を実用化する者は、干渉計に基づく側波帯発生器と位相変調器型側波帯発生器との間で選定する際、これらの要因および利用可能な電気光学資材の光減衰を考慮してみるとよい。
図2Bに模式的に示すように、側波帯発生器20、光学フィルタ30、データ・エンコーダ40、および導波路ネットワーク55は、これらを共通デバイス基板60上に都合良く形成できるように構成されている。具体的には、文献や以下で引用することにより本願にも含まれるものとする米国特許文書に記載されている光導波路、電気光学変調器、およびアレイ状導波路格子に精通する者には認められようが、側波帯発生器20、光学フィルタ30、データ・エンコーダ40、および導波路ネットワーク55のそれぞれの機能的構造は、各々、例えば、シリコン下地層によって支持されているシリカ・クラッディング層を備えている共通基板60上に製作するのに適している。このように、共通デバイス基板上に形成できることは、これらのデバイスのそれぞれの構造が多種多様の構成要素および構成を組み込んでいる場合にも当てはまる。したがって、本発明の範囲は一般的なデバイス構成に及び、Vπよりも大きい制御電圧で駆動する側波帯発生器20の提供には限定されないことを注記しておく。
図2Bに示す実施形態は、導波路ネットワーク50も含むことができる。導波路ネットワーク50は、デバイス10の光入力12からデバイス10の光出力14まで達する、実質的に連続の導波路コアを備えている。更に具体的には、図2Bを更に詳細に参照すると、導波路ネットワーク50は、動作導波路部52および遷移導波路部54を備えることができる。動作導波路部は、側波帯発生器20、光学フィルタ30、およびデータ・エンコーダ40において定められ、一方遷移導波路部54は、光入力12、側波帯発生器20、光学フィルタ30、データ・エンコーダ40、および電気光学ソース10の光出力14の間で光信号を導くように構成されている。これらの部分を想定すると、動作導波路部52および遷移導波路部54を、動作導波路部52および遷移導波路部54によって定められるそれぞれの光路長の少なくとも大部分にわたって存在する共通の光伝送媒体で構成することができる。更に、動作導波路部52および遷移導波路部54は、実質的に平面の光波回路を定めるように構成することができる。
導波路ネットワークの導波路媒体は、シリカ・クラッディング層上に形成したシリカ系導波路を構成することができ、一方側波帯発生器の導波路媒体は、ポリマ電気光学クラッディング媒体によって包囲された導波路コアまたは埋め込まれた導波路コアを構成することができる。しかしながら、多くの場合平面光波回路(PLC)の性質により、別個の構成要素は共通基板上における形成に向いている。本発明を定め説明する目的のために、「上」(over)という用語は、2つの層または領域の間に介在する層があることを想定していることを注記しておく。例えば、シリコン基板上に形成された導波路媒体は、導波路媒体とシリコン基板との間に層が介在する可能性を想定している。導波路コアを形成する光伝送媒体の具体的な組成は、本発明の多くの実施形態における強調点ではなく、例えば、ドープまたは非ドープ・シリカ、ドープまたは非ドープ・シリコン、酸窒化シリコン、ポリマ、およびその組み合わせを含む材料から選択するとよい。
本発明を定め説明する目的のために、平面光波回路(PLC)は、通例、光入力、光出力、およびそれらの間にある伝搬点を定めるだけに過ぎず、伝搬点は実質的に共通綿内にあるか、あるいは実質的に平面の回路構成要素の上に形成されていることを注記しておく。本明細書における「回路」という単語の使用は、PLC内を伝搬する光信号がその発生点に戻るという推論を生ずることを意図していない。
本発明の電気光学変調器を形成するには、種々の構成を利用することができる。例えば、限定としてではなく、電気光学変調器の機能的領域は、電気光学クラッド・シリカ導波路、シリコン導波路に注入する電荷が導波路を不透明にする、電子吸収変調器(electroabsorptive modulator)を有するシリコン導波路、電気光学クラッディングを有するゾル−ゲル導波路、導波路の屈折率が印加される電界に依存するニオブ酸リチウム導波路、および電気光学ポリマ導波路を含むことができる。例えば、限定としてではなく、電気光学変調器が導波路コアと、この導波路コアに光学的に結合されている光学的機能クラッディング領域とを備えている場合、光学的機能クラッディング領域は、ポッケル効果、カー効果、またはその他の何らかの電気光学効果によって支配される有極または無極電気光学ポリマを含むことができる。
本発明を説明し定める目的のために、電気光学機能領域とは、当該領域に電気制御信号を印加することにより、導波路構造内に定められる光軸に沿って伝搬する光信号の特性を当該構造の非電気光学領域よりも遥かに大きい程度まで変化させる、光導波路構造の領域であることを注記しておく。例えば、本発明による電気光学機能領域は、制御電極によって発生する適した電界の印加の下で変化する屈折率を定めるように構成されている電気光学ポリマを含むことができる。このようなポリマは、ポッケル効果、カー効果、またはその他の何らかの電気光学効果によって支配される有極または無極電気光学ポリマを含むことができる。これらの効果ならびに種々の構造およびその作成や使用に適した材料は、以下の公開特許文書および発行特許文書において導波路デバイスの文脈で詳しく記載されている。その開示内容は、ここで引用したことにより本願にも含まれるものとする。米国特許第6,931,164号"Waveguide Devices Incorporating Kerr-Based and Other Similar Optically Functional Medium(カーに基づく光機能材料およびその他の同様の光機能材料を組み込んだ導波路デバイス)、第6,610,219号"Functional Materials for use in Optical Systems"(光システムに用いるための機能性材料)、第6,687,425号"Waveguides and Devices Incorporating Optically Functional Cladding Regions"(光機能クラッディング領域を組み込んだ導波路およびデバイス)、および第6,853,758号"Scheme for Controlling Polarization in Waveguides"(導波路において偏光を制御する方式)、ならびに米国特許出願公開第2005/0226547号A1"Electrooptic Modulator Employing DC Coupled Electrodes"(DC結合電極を用いた電気光学変調器)、第2004/0184694号A1"Electrooptic Modulators and Waveguide Devices Incorporating the Same"(電気光学変調器およびこれを組み込んだ導波路デバイス)、および第2004/0131303号A1"Embedded Electrode Integrated Optical Devices and Methods of Fabrication" (埋め込み電極集積光デバイスおよび製造方法)。更に、光導波路構造においてポッケル効果、カー効果、またはその他の何らかの電気光学効果を発生するのに適した材料および構造に関する種々の教示が、前述の特許文献全体において、特にOptimer Photonic Inc.または発明者の氏名をあげると、Richard W. Ridgway、Steven M. Risser、Vincent McGinniss、および/またはDavid W. Nippaに譲渡された導波路技術における特許文献に紹介されている。
本発明を説明し定める目的のために、「光」または「光信号」の波長は、電磁スペクトルのいずれの特定波長または部分にも限定されないことを注記しておく。むしろ、「光」および「光信号」という用語は、本明細書では相互交換可能に用いられており、主題の別個の集合を包含することは意図しておらず、本明細書では、光導波路内を伝搬することができる電磁放射線のいずれの波長もカバーすると定める。例えば、電磁スペクトルの可視部分および赤外線部分における光または光信号は、双方共光導波路内を伝搬することができる。光導波路は、適した信号伝搬構造であればいずれでも含むことができる。光導波路の例には、光ファイバ、スラブ導波路、および、例えば、集積光回路において用いられる薄膜が含まれるが、これらに限定されるのではない。
本発明を説明し定める目的のために、マッハ−ゼンダー干渉計構造は、一般に光学構成を備えており、導波路に沿って伝搬する光信号を1対の導波路アームに分割し、導波路アームの一方または双方をそれぞれ伝搬する光信号の処理の後に、1本の導波路に再度組み合わせる。例えば、導波路アームの一方における信号は、その中を伝搬する光信号が所与の位相遅れを受けるように処理することができる。その結果、それぞれの導波路アームの信号を再び組み合わせると、これらは干渉して、その干渉を示す出力信号を発生する。先に記した特許文書には、多数のマッハ−ゼンダー干渉計の構造が詳細に図示されている。
図1に模式的に示す検出器150は、ミリメートル波およびサブミリメートル波の検出および分析に適しているのであればいずれの形態でもなすことができる。例えば、限定としてではなく、検出器150は、ショットキ・ダイオード検出器を備えることができ、その例には、米国特許第4,839,709号に記載されている修正バリア集積ダイオード(MBID:modified barrier integrated diode)プロセスを用いて製作することができるGaAsビームリード検出ダイオード、および常温および10GHz以下の周波数において優れた性能を発揮するシリコン・ゼロ・バイアス・ショットキ検出器が含まれる。
図12から図19をまとめて参照すると、本発明の一実施形態によれば、検出器150は、電気光学アンテナ・アセンブリ150として構成することができる。概略的に、アンテナ・アセンブリ150は、アンテナ部20’と電気光学導波路部30’とを備えている。アンテナ部20’は、テーパースロット・アンテナとして構成されており、その設計については図14および図15を参照しながら以下で更に詳しく説明する。導波路部30’は、少なくとも1つの電気光学導波路32’を備えており、この導波路32’はアンテナ・アセンブリ150の光入力34’と光出力36’との間にある光路の少なくとも一部に沿って延びている。
電気光学導波路32’は、導波路コア35’を備えている。導波路コア35’は、アンテナ・アセンブリ150のアクティブ領域15’において、テーパースロット・アンテナ20’のスロットライン22’に実質的に平行に延びており、少なくとも部分的に速度一致電気光学ポリマ38’をアンテナ・アセンブリ150のアクティブ領域15’内に備えている。尚、速度一致電気光学ポリマ38’は導波路コア35’、非ポリマ導波路コアを包囲するクラッディングの全部または一部、あるいは導波路32’のコア35’およびクラッディングの双方を形成してもよいことも考えられる。
テーパースロット・アンテナ20’および電気光学導波路32’は、(i)アクティブ領域15’においてテーパースロット・アンテナ20’に沿って進行するミリメートル波またはサブミリメートル波信号100の速度veが少なくとも部分的に速度一致電気光学ポリマ38’の誘電係数の関数となるように、そして、(ii)アクティブ領域15’において導波路コア35’に沿って伝搬する光信号の速度voが、少なくとも部分的に速度一致電気光学ポリマ38’の屈折率の関数となるように、互いに対して相対的に位置付けられている。本発明を説明し定める目的のために、本明細書において、あるパラメータまたはその他の変数の「関数」である変数に言及する場合、その変数は羅列したパラメータまたは変数だけの関数であることを示そうとしているのではない。むしろ、本明細書において、羅列したパラメータの「関数」である変数に言及する場合、その変数は1つのパラメータまたは複数のパラメータの関数でもよいように、自由形式であることを意図している。
速度一致電気光学ポリマ38’のプロパティに対するこの共通依存性を想定して、アンテナ・アセンブリ150のアクティブ領域15’および速度一致電気光学ポリマ38’は、ミリメートル波および光信号のアクティブ領域15’における速度一致を強化するように構成することができる。例えば、アクティブ領域15’および速度一致電気光学ポリマ38’は、veおよびvoがアクティブ領域において実質的に同じになるように、またはこれらが少なくとも次の関係を満たすように構成することができる。
前述のアンテナ・アセンブリは特定のアンテナ用途には限定されないが、当該アセンブリの速度一致特性の重要性は、ミリメートル波信号がテーパースロット・アンテナ20’に沿って進行して、導波路コア35’内を伝搬する光キャリア信号上に側波帯を形成する用途を参照して記載することもできる。具体的には、図2から図11を参照して先に説明したように、周波数ωmのミリメートル波電圧を変調器の進行波電極に入力しつつ周波数ω0のコヒーレント光信号を電気光学変調器の電気光学導波路部に沿って導くことにより、ミリメートル波は、光キャリア上に側波帯を形成するために用いることができる。図12および図13に示す本発明の実施形態では、テーパースロット・アンテナ20’の第1および第2導電性エレメント24’、26’ならびに電気光学導波路32’が、電気光学変調器を形成し、コヒーレント光キャリア信号を電気光学導波路32’に沿って導く。第1および第2導電性エレメント24’、26’は、前述の刊行物に記載されているそれぞれの進行波電極に類似した仕方で機能し、したがって電気光学導波路32’と協同して、電気光学導波路32’に沿って伝搬する光キャリア上に側波帯を形成する。
更に具体的には、光キャリアω0およびミリメートル波信号100は、テーパースロット・アンテナ20’および電気光学導波路32’によって形成される電気光学変調器の長さに沿って同時に伝搬するので、ミリメートル波100の電界とアクティブ領域15’におけるポリマの電気光学材料との相互作用によって、電気光学導波路32’に屈折率変化が生ずる。この屈折率変化は、ミリメートル波100の時間可変電界に合わせて動揺する。この屈折率の時間的変動の結果、光キャリアに時間依存位相シフトが生ずる。これは、側波帯を光キャリアω0に分与することに相当する。光キャリアをミリメートル波で変調すると、その結果変調器から生ずる光出力は、キャリア周波数における成分ω0と側波帯周波数における成分ω0±ωmを有する。本発明者は、側波帯における応答の大きさは、ミリメートル波の電圧のVπに対する比率、変調器をオン状態からオフ状態に完全に変化させるために必要な電圧、および変調器に沿って同時に伝搬する光キャリアとミリメートル波との間における速度一致の度合いによって決められることを認識した。
ミリメートル波の電圧は外部変数であるが、光キャリアとミリメートル波との間における速度一致度は、主にアンテナ・アセンブリ150の設計パラメータの関数であり、したがって、アンテナ・アセンブリ150のパラメータの設計の注意深い制御によって最適化することができる。例えば、ミリメートル波が、テーパースロット・アンテナ20’の導電性エレメント24’、26’および誘電体基板40’を備えているアクティブ領域15’を伝搬する際、アクティブ領域15’におけるミリメートル波またはサブミリメートル波信号の速度veは、アクティブ領域15’の有効透磁率(permittivity)εeffの関数となる。
アクティブ領域15’では、誘電体基板40’が厚さtを定め、底面層42’、導波路コア35’、速度一致電気光学ポリマ38’、少なくとも1つの追加光クラッディング層44’を備えており、これらの各々がアクティブ領域15’における厚さtに寄与する。つまり、アクティブ領域15’の有効透磁率εeffは、基板の厚さtと、底面層42’、導波路コア35’、速度一致電気光学ポリマ38’、および追加光クラッディング層44’のそれぞれの誘電係数との関数である。
アクティブ領域15’における導波路32’に沿って伝搬する光信号の速度voは、アクティブ領域15’の有効屈折率ηeffの関数である。
アクティブ領域15’の有効屈折率ηeffは、導波路コア35’、速度一致電気光学ポリマ38’、および追加光クラッディング層44’のそれぞれの屈折率の関数である。したがって、光キャリアとミリメートル波との間における速度一致の度合いは、アクティブ領域15’の有効透磁率εeffおよび有効屈折率ηeffを制御することによって最適化することができる。
速度一致電気光学ポリマを導波路32’の構成要素として選択すると、アクティブ領域15’の有効屈折率ηeffが1.5となり、光信号の速度vOが、
となるように、電気光学変調器を構成することが可能となる。同じ文脈において、シリカ系誘電体基板40’を選択し導波路32’において速度一致電気光学ポリマを用いると、アクティブ領域15’の誘電率εeffとなり、ミリメートル波またはサブミリメートル波信号の速度veが光信号の速度vOの速度と一致するように、アクティブ領域を構成することが可能となる。
対照的に、有効誘電率εeffが約3.76である従来のシリカ系テーパースロット・アンテナにおけるミリメートル波信号またはサブミリメートル波信号の速度veは、光信号の速度voとは著しく異なる。
アクティブ領域15’の電気光学変調器構造における全位相シフトを可能な最大位相シフトの50%以内に維持するためには、アクティブ領域15’および速度一致電気光学ポリマ38’は、速度veおよび速度voが以下の関係を満たすように構成しなければならない。
ここで、Lはアクティブ領域の長さであり、βは導波路の伝搬係数である。
速度一致を達成する1つの方法は、光信号およびミリメートル波のそれぞれの速度が事実上等しくなる材料を用いることである。また、速度一致は、特殊なデバイス設計によっても達成することができる。例えば、誘電体基板またはその構成層のいずれかの厚さを、シリコン微細加工、反応性イオン・エッチング、またはその他の方法によって、速度一致を達成するように特別に製作することができる。あるいは、誘電体基板40’の幾何学的形状を変化させることによって、例えば、誘電体に孔を形成する、または誘電体の形状または寸法を変えることによって、有効誘電係数を構想することができる。図14および図15に示すアンテナ20’を参照すると、アンテナ20’に沿って進行する94GHz波の文脈では、スロットライン22’がアクティブ領域15’における20’ミクロンの電極ギャップを特徴とし、電極24’、26’をシリカ上に製作すると仮定すると、誘電体基板の厚さtを約170ミクロンにすることによって、ミリメートル波と光信号波との間に適した速度一致が得られるデバイス設計の基礎を形成することができる。
図12および図13に示すアンテナ・アセンブリ150は、光入力34’から光出力36’に伝搬する光信号が、1つのテーパースロット・アンテナ20;を備える1つのアクティブ領域15’だけを通過するように構成されている。更に具体的なテーパースロット・アンテナ20’の設計に話題を転ずると、テーパースロット・アンテナ(TSA)は、エンド・ファイア(end-fire)進行波アンテナであり、通例、金属の薄膜上にエッチングしたテーパースロットから成ることを注記しておく。これは、膜の一方側に誘電体基板を用いても、または用いなくても行うことができる。平面テーパースロット・アンテナは2つの共通機構、即ち、放射スロットとフィード・ラインとを有する。放射スロットは、アンテナの接地面として作用し、アンテナはフィード・ラインによって給電(feed)され、フィード・ラインは、例えば、平衡スロットラインまたはいずれかの適したフィード構造とすればよい。用いようとする具体的なフィード構造の性質は、本発明の範囲を超えており、米国特許第6,317,094号に明記されている教示を含む、本主題に関するいずれの従来の教示または今後開発される教示から少しずつ集めることができる。米国特許第6,317,094号の関連部分は、ここで引用したことにより、本願にも含まれるものとする。一般に、フィード構造は、比較的小型で、損失が少なくなければならない。適したフィード構造には、同軸ライン・フィード、およびマイクロストリップ・ライン・フィードが含まれるが、これらに限定されるのではない。本発明を説明し定める目的のために、本明細書においてアンテナ「アセンブリ」に言及するときは、当該アセンブリが一片(one-piece)、一体アセンブリ、または明記した構成要素の全てが互いに物理的に接続されているアセンブリであることも暗示しようとしているのではないことを注記しておく。むしろ、本発明によるアンテナ・アセンブリは、単に、特定の様式で互いに機能的に連結されている構成要素の集合体であればよい。
TSA用には多くのテーパー輪郭(taper profile)が存在し、指数、接線、放物線、線形、線形−一定、指数−一定、段階−一定、分断線形などが含まれるが、これらに限定されるのではない。図14は、線形テーパー輪郭を示す。図15は、ヴィヴァルディ(Vivaldi)輪郭を示す。図14および図15において、テーパースロット・アンテナ20’の第1および第2導電性エレメント24’、26’間のギャップは、例えば、20’ミクロン程度で、アクティブ領域15’内では非常に小さく、ミリメートル波信号の導波路と全く同様に振る舞う。アンテナ20’の2つの導電性エレメント24’、26’間のギャップを狭めることにより、ミリメートル波信号の電界の大きさが増大する。これは、応答が、ギャップ間の電圧ではなく、電界に比例する電気光学材料では重要である。動作において、入射ミリメートル波放射線は、アンテナの開口に入り、アンテナ・エレメント24’、26’に沿ってアクティブ領域15’に向かって伝搬する。ミリメートル波信号は、アクティブ領域15’に出射し、再度放射し固定インピーダンス内にて終端することができる。
図12から図15に示すアンテナ・アセンブリは、例えば、最初に、光用途には十分に低い、ある程度の表面粗さを有する底面層42’を設けることによって製作することができる。この基板上に下位クラッディング44‘を被覆し、導波路パターンをその中にエッチングする。次に、導波路コアおよび速度一致電気光学ポリマ38’は、同じ材料で形成しても異なる材料で形成してもよく、エッチングしたクラッディングの上に被覆し、電気光学層38上に上位クラッディング44’を形成する。最後に、テーパースロット・アンテナ20’の導電性エレメント24’、26’を、上位クラッディング上に製作する。
電気光学材料38’は、応答のために必要であれば、極性調整することができる。下位および上位クラッディング44の屈折率は、電気光学層38’のそれよりも低く、クラッディング44’の厚さは、光キャリアを基板42’およびアンテナ20’から光学的に隔離するのに十分である。電気光学層38’は、光キャリアの誘導モード(guided mode)を、定めた電気光学波長に閉じ込めるような厚さとなっている。導波路の製作について、ここでは、下位クラッディングをエッチングするという文脈で説明したが、電気光学材料のエッチング、フォトブリーチング(photobleaching)、または拡散というような、電気光学材料内に電気光学導波路を形成する他のいずれの方法でも、電気光学導波路を定めるために用いることができる。
先に注記したように、テーパースロット・アンテナ20’はアンテナ20’の放射スロットを定めるように配列した、第1および第2導電性エレメント24’、26’を備えている。図12から図15の実施形態は、電気光学導波路32’の上方において、共通面に配列した第1および第2導電性エレメント24’、26’を含むが、代替構造も考えられる。例えば、図16および図17を参照すると、第1および第2導電性エレメント24’、26’は、異なる面内に、一方波高電導波路32’の上、他方は電気光学導波路32の下に配置することができる。加えて、図16および図17に示すように、第1および第2導電性エレメント24’、26’は、アンテナ・アセンブリのアクティブ領域15’内に重複するように配列することもできる。
尚、図16および17に示す製作手法は、EOポリマ変調器のミリメートル波に対する応答を高めることに至り、アンテナの応答性を改善することができると考えられる。このような応答の向上は、電気光学材料の極性調整の改良、およびミリメートル波電界と電気光学材料との間の相互作用の強化から得ることができる。図16および図17のアセンブリは、基板42’上に下位電極26’を形成し、下位クラッディング44’を被着し、導波路コア35’を形成し、電気光学層38’および上位クラッディング44’を被着し、最後にテーパースロット・アンテナ20’の上位電極24’を形成することによって製作することができる。本発明者は、多くの現行の電気光学ポリマは、平行板電極によって極性調整すると、共通面電極(coplanar electrode)と比較して、電気光学応答が良化することを認めている。したがって、この点において、EO応答に必要であれば、EO材料に合った従来の極性調整条件またはその他の今後開発される適した極性調整条件を用いて、電気光学材料を極性調整することができる。
クラッディングおよび電気光学層全体の厚さは、通例、5から25ミクロンの範囲であるが、他の厚さも本発明の範囲内に該当する。ミリメートル放射線が最初にアンテナに入射するとき、電界は図16および17におけるX−軸に沿って分極する。しかしながら、ミリメートル波がアンテナ20’に沿って伝搬するに連れて、電界の分極は、電界がアクティブ領域15’においてZ−方向に分極されるまで回転する。アクティブ領域では、ミリメートル波は一層緊密にクラッディングおよび電気光学材料に閉じ込められるので、ミリメートル波信号の速度は、これら組み合わせ層の有効誘電係数によって決定される。
本発明の用途において、デバイスが極性調整される後までTM光が導波路32’内で誘導しない場合、基板表面に追加の金属を付加すると、導波路32’の長さ全体の極性調整が可能になる。簡略化のために、導波路は、デバイスに入るのと同じ側面から出るように敷設することができるが、これは必須ではない。このデバイスを製作するには、最初に底面層42’上に下位電極26’を形成し、下位クラッディング44’を被着し、導波路コア35’および電気光学層38’を形成し、次いで上位クラッディング44’を形成する。上位クラッディング44’をデバイス上に配した後、1組の極性調整電極を導波路32’上に形成し、電気光学材料38’の極性調整を行う。これらの極性調整電極は、上位クラッディング44’上に続いて形成する上位電極24’の製作のために都合が良いのであれば、除去することができる。
図16および図17の構成では、第1および第2導電性エレメント24’、26’の垂直分離が、約5から25ミクロン程度であり、アクティブ領域15’における電界が、電気光学導波路32’内を伝搬するTM偏光光が見る屈折率を変化させる。電極は平行板電界を供給し、図12から図15に示した共通面電極によって発生する電極よりも、電気光学材料と効率的に相互作用することができる。この電界の強化と、潜在的に狭くなる電極キャップにより、アンテナ・アセンブリ150のミリメートル波放射線に対する応答を劇的に改良することができる。
図12から図17を参照して本明細書において説明した実施形態の各々では、導波路32’の光入力34’における光キャリア信号は、アンテナ・スロット22’に入り、その中を進んでアクティブ領域15に達する。アクティブ領域15では、入射ミリメートル波(MMW)100の電界がアクティブ領域15’の電気光学材料38’と相互作用して、光信号の位相を変化させる。光信号は、アクティブ領域15’の長さ全体にわたって位相シフトを蓄積し、導波路32’の光出力36’に伝搬し、ここで光キャリアは光ファイバ、導波路、またはその他の光媒体に移行する。
図12から図17は、アクティブ領域15’を位相変調電気光学変調器として図示し、光信号は1つの導波路に残る。あるいは、アクティブ領域をマッハ−ゼンダー干渉計(MZI)として構成することも可能である。この場合、光信号は2つの電気光学導波路間で等しく分割された後に、アームの一方がテーパースロット・アンテナ20’の2つの電極24’、26’間にあるアクティブ領域15’に入る。第2アームは、アンテナ20’のアクティブ領域の外側に留まる。アクティブ領域の下流では、2つの光信号が再度組み合わせられる。また、導波路アームの一方または双方が、当該アームに沿って伝搬する光の位相を変化させるメカニズムを有することができることも考えられる。2つの導波路アーム間の相対的位相は、MZIがその最低パワー状態でいることができるように調節することができる。この状態では、光キャリアを15dB以上低減することができ、一方側波帯内に含有されるパワーは不変である。元の光パワーの半分だけがアクティブ領域を横断するので、側波帯におけるパワーは、位相変調器の場合よりも約3dB低くなる。しかしながら、キャリアが3dBよりも遥かに多く低減するので、信号対ノイズ比は、MZI構成を用いると、著しく改善されると考えられる。
これより図18および図19に移ると、複数のテーパースロット・アンテナ20’と、それぞれの入力部34’および出力部36’を有する対応の導波路コアを、共通基板40’上に配列することができる。テーパースロット・アンテナ20’毎に、導波路コアの光出力36’における光信号は、キャリア周波数帯ω0および周波数側波帯ω0±ωmを含む。これらの信号の各々は、周波数依存光学フィルタ50’を経由して導き、周波数側波帯ω0±ωmを光キャリアω0から分離し、側波帯ω0±ωmおよび光キャリアω0をフィルタ出力ポート51’、52’、53’、54’の1つの個々の成分出力(component output)A、B、Cに導くことによって、周波数側波帯ω0±ωmをキャリア周波数帯ω0から弁別することができる。更に別の導波路、ファイバ、またはその他の適した光伝搬媒体を、フィルタ出力ポート51’〜54’の下流に設け、信号を光検出器アレイまたはその他の何らかの形式の光センサに導く。
また、図18および図19は、テーパースロット・アンテナ20’を一次元または二次元焦点面アレイ内に配列した、本発明の一実施形態も示す。加えて、導波路コアおよびテーパースロット・アンテナ20’は、並列電気光学回路として構成することができる。このような構成では、光検出器アレイの出力は、一次元または二次元でMMW信号100を分析するために用いることができる。何故なら、光検出器アレイ内にある各センサ・エレメントのそれぞれの出力36’は、対応するアンテナ20’によって定められるセンサ・エレメントに対応する位置において変調器に入力されるミリメートル波電圧の大きさの関数となるからである。更に具体的には、図18および図19に示すように、アレイに配列されたテーパースロット・アンテナ20’の各々は、焦点面アレイ内においてアンテナ画素を定める。したがって、各アンテナ20’は、焦点面アレイに入射するミリメートル波信号またはサブミリメートル波信号100の別個の画素部分を受信し、各導波路のそれぞれの出力部36’における光信号は、MMW信号100の一次元分布または二次元分布を示すセンサ出力を供給する。
図18に示す一次元アレイの場合、テーパースロット・アンテナ20’の一次元アレイは、共通基板40’上に形成することができ、同様に共通基板40’上に形成されている12以上のチャネルのAWG50’を設けると、4つのアンテナ20’全てからの信号を同時に濾波することができる。図19は、図18に示す一次元アレイを複数個積み重ねてテーパースロット・アンテナ20’の二次元アレイを形成することを除いて、本発明の同様の実施形態を示す。図19の実施形態では、アンテナ20’の一次元集合体毎に、1つのAWGを用いることができ、望ましければ、積み重ねたアンテナ・アレイのための濾波を行うのに1つのAWGを用いることもできる。
図18および図19はアレイ状導波路格子(AWG)の光学フィルタ50’としての使用を模式的に示すが、図示の実施形態の光学濾波機能は、種々の技術を用いて遂行することができ、ブラグ格子反射フィルタ、波長選択マッハ−ゼンダー・フィルタ、多層薄膜光学フィルタ、マイクロ・リング共振フィルタ、および波長選択的な指向性カプラ・フィルタが含まれる。更に、図18および図19に示す実施形態は、導波路32’を形成する際にニオブ酸リチウムまたはその他の非ポリマ電気光学材料を利用する、実用的な代替案であることも想定している。
アレイ状導波路格子は、特に有用である。何故なら、これは比較的狭い帯域幅を特徴とする多数のチャネルを有する集積光学デバイスであるからである。動作において、AWGは多数の周波数を有する入力光信号を取り込み、N個の等しく離間された周波数を異なる出力に出力する。例えば、30GHzまたは60GHzのチャネル間隔を有するAWGが、120GHzアンテナ・システムには非常に適している。AWGの所望のチャネル間隔は、ミリメートル波の周波数がAWGチャネル間隔の倍数になるようにまたは倍数に近くなるようにするとよい。
AWGのプロパティに関するこれまでの論述は、AWGの1つの入力ポートの使用に中心を据えていたが、N個の出力ポートを有するAWGもN個の入力ポートを有することが多く、ポートの各々はN個の出力ポート全てに光を出力する。例えば、16×16AWG(16入力×16出力)の文脈では、16個の入力ポートの各々が16の等しく離間した波長の光を有し、光の間隔はAWGの設計間隔に対応する。次いで、1つのポートの出力に注目すると、選択したポートの光出力も16の個々の波長を有するが、各波長は異なる入力ポートから来る。したがって、図18に示すように、4つの別個の光信号が、4つの別個のアンテナ20に対応する4つの別個の光出力36’から出力される場合、これらの出力の各々は光キャリアω0および2つの側波帯ω0±ωmを含むことができる。これら4つの光信号を次にAWGの4つの異なる入力ポートAに供給すると、4つの光キャリアおよびそれらの対応する8つの側波帯がAWGの12個の異なる出力ポートから出射する。つまり、1つのAWGは、入力信号の数がAWGポートの数を3(各ポートにおける別個の波長帯の数)で除算した値未満である限り、多数の入力信号を濾波するために用いることができる。
AWGを光学フィルタとして用いることの第2の利点も、図6に記載されている。AWGは、双方の側波帯をそれに付随する光キャリアから区別する。対照的に、標準的なバンドパス・フィルタは、光キャリアおよび側波帯の1つを除去する。更に、2つの側波帯がコヒーレントであるとすると、AWGの下流においてこれらを再度組み合わせることができ、単に1つの側波帯を用いる場合よりも光応答が3dB増大する結果となる。図6の場合は、そのようになっている。
尚、本明細書において、特定の固有性を具現化する、特定の様式で機能する等のために「構成されている」本発明の構成要素について詳述する場合、これらは、意図する使用の詳述ではなく、構造的な詳述であることを注記しておく。更に具体的には、本明細書において、構成要素が「構成されている」様式に言及する場合、当該構成要素の既存の物理的条件を示すのであり、したがって当該構成要素の構造的特徴の確定的詳述として捕らえることとする。例えば、本発明の文脈では、これらの構造的特徴は構成要素または構成要素の幾何学的形状の電気的および光学的特性を含むことができる。
尚、「好ましくは」、「共通に」、および「通例」というような用語は、本明細書において利用される場合、特許請求する発明の範囲を限定するように、またはある種の特徴が、特許請求する発明の構造または機能にとって不可欠、必須、または重要であることも暗示するように捕らえるべきではないことを注記しておく。むしろ、これらの用語は、単に、本発明の特定的な実施形態において利用してもしなくてもよい代替的な特徴または付加的な特徴を強調することを意図するに過ぎない。
本発明を説明し定める目的のために、「実質的に」という用語は、本明細書において利用する場合、いずれかの定量的比較、値、測定値、またはその他の表現に起因する可能性がある不確実性の内在的度合い(inherent degree)を表すことを注記しておく。また、「実質的に」という用語は、本明細書においては、定量的表現が、問題の主題の基本的機能の変化が生ずることなく、規定した基準から変動してもよい度合いを表す。「実質的に」という用語は、更に、本明細書では、問題の主題の詳述した機能性を産み出すために、定量的表現が、規定の基準から変動しなければならない最小の度合い表す。
以上、特定的な実施形態を参照しながら本発明について詳細に説明したが、添付した特許請求の範囲に規定した発明の範囲から逸脱することなく、修正や変形が可能であることは明白であろう。更に具体的には、本発明の態様の一部を本明細書では好ましいまたは特に有利であるとして特定したが、本発明は必ずしもこれら発明の好ましい態様には限定されないことも想定している。例えば、具体的な構成ではカー効果媒体はポッケル効果によって支配される媒体よりも遥かに大きな変化を屈折率にもたらす適応性(capacity)があるので、本発明の具体的な実施形態による電気光学機能領域は、屈折率の変動がカー効果から得られる電気光学応答によって支配されるように選択することができるが、電気光学領域は、ポッケル効果、カー効果、またはその他の何らかの電気光学効果によって支配されてもよいことは言うまでもない。
尚、以下の請求項の1つ以上は、ポータルであって、「そのポータルの構造が、少なくとも以下の条件に該当するようになっている」ことを明記することを注記しておく。本発明を定める目的のために、この句は、当該構造の一連の特性の詳述を導入するために用いられる、修正の余地を残した移行性の句として導入されたのであり、それよりも更に慣例的に用いられる、制約のない前提用語「備えている」(comprising)と同様に解釈すべきことを注記しておく。