JP2013227566A - 有機顔料を含む相変化インク - Google Patents

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Abstract

【課題】室温にては固体で、基材に適用される高温においては溶融状態であるインクジェット印刷に好適な固体インク組成物を提供する。
【解決手段】固体インク組成物は、結晶性化合物として酒石酸のジエステル、非晶質化合物は酒石酸またはクエン酸のジエステル、および有機顔料を含み液体状態から迅速に結晶化するインク組成物。
【選択図】なし

Description

本実施形態は、室温にて固体であり、溶融インクが基材に適用される高温においては溶融状態であることを特徴とする固体インク組成物に関する。これらの固体インク組成物は、インクジェット印刷のために使用できる。本実施形態は、非晶質化合物、結晶性化合物、および着色剤を含む新規な固体インク組成物、およびそれらの製造方法を対象とする。特に、非晶質化合物は、酒石酸またはクエン酸のエステルであり、結晶性化合物は酒石酸のエステルである。
コーティングされた紙基材での印刷を含むインクジェット印刷のための、結晶性化合物、非晶質化合物、および有機顔料を含む新規な固体インク組成物が提供され、ここでこの相変化インクは、有機顔料を含まない同じ組成物に比べて、液体状態から迅速に結晶化する。
特に、本実施形態は、非晶質化合物;結晶性化合物;および有機顔料を含む相変化インクを提供し、ここでこの相変化インクは、有機顔料を含まない同じ組成物よりも液体状態から迅速に結晶化する。
実施形態において、非晶質化合物;結晶性化合物;有機顔料;および染料を含む相変化インクが提供され、この非晶質化合物が、式Iの第1酒石酸エステルを含み
式中、RおよびRのそれぞれは、独立に、アルキル基(ここでこのアルキル部分は、直鎖、分岐状または環状、飽和または不飽和、置換または非置換であり、約1〜約40個の炭素原子を有する)あるいは置換または非置換芳香族またはヘテロ芳香族基であり;ここでこの相変化インクは、有機顔料を含まない同じ組成物よりも液体状態から迅速に結晶化する。
さらに他の実施形態において、ジベンジルL−タートラート、ジフェネチルL−タートラート、ビス(3−フェニル−1−プロピル)L−タートラート、ビス(2−フェノキシエチル)L−タートラート、ジフェニルL−タートラート、ビス(4−メチルフェニル)L−タートラート、ビス(4−メトキシフェニル)L−タートラート、ビス(4−メチルベンジル)L−タートラート、ビス(4−メトキシベンジル)L−タートラート、ジシクロヘキシルL−タートラート、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)L−タートラートおよびこれらのいずれかの立体異性体および混合物からなる群から選択される結晶性化合物;ビス(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)L−タートラート、およびこれらのいずれかの立体異性体および混合物からなる群から選択される非晶質化合物;ならびに有機顔料を含む相変化インク組成物が提供され、ここでこの相変化インクは、有機顔料を含まない同じ組成物より液体状態から迅速に結晶化する。
図1は、代表的なインクベースにおける、結晶化オンセットから結晶化終了までの結晶形成の画像を示すTROMプロセスを例示する。 図2は、顔料着色インクの周波数掃引レオロジーデータを例示するグラフである。 図3は、インクベースおよび顔料着色インクの温度掃引レオロジーデータを例示するグラフである。
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、脂肪族炭化水素基を指す。アルキル部分は、アルケンまたはアルキン部分を含有しないことを意味する「飽和アルキル」基であってもよい。アルキル部分はまた、アルケンまたはアルキン部分を少なくとも1つ含有することを意味する「不飽和アルキル」部分であってもよい。「アルケン」部分は、少なくとも2つの炭素原子および少なくとも1つの炭素−炭素二重結合からなる基を指し、「アルキン」部分は、少なくとも2つの炭素原子および少なくとも1つの炭素−炭素三重結合からなる基を指す。アルキル部分は、飽和または不飽和であるかに拘わらず、分岐状、直鎖または環状であってもよい。
アルキル基は、1〜40個の炭素原子を有していてもよい(それが本明細書で現れるときはいつでも、数値範囲、例えば「1〜40」は、所与の範囲にある各整数を指す;例えば「1〜40個の炭素原子」は、アルキル基が、1個、2個、3個などの炭素原子から、40個を含む炭素原子までからなってもよいことを意味するが、本定義はまた、数値範囲が指定されていない「アルキル」という用語の発生もカバーする)。アルキル基は、1〜10個の炭素原子を有していてもよい。アルキル基は、1〜4個の炭素原子を有する低級アルキルであってもよい。本発明の化合物のアルキル基は、「C−Cアルキル」または同様の指定、すなわちアルキル鎖は、メチル、エチル、プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、およびt−ブチルとして指定されてもよい。
アルキル基は、置換または非置換であってもよい。置換されている場合、水素の他、いずれかの基は置換基であることができる。置換されている場合、置換基は、1つ以上の基であり、個々におよび独立に、アルキル、シクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、シアノ、ハロ、およびモノ−およびジ−置換されたアミノ基を含むアミノから選択されるが、これらの例示リストに限定されない。典型的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、三級ブチル、ペンチル、ヘキシル、エテニル、プロペニル、ブテニル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。各置換基は、さらに置換されてもよい。
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、単独または組み合わせて、1つ、2つまたは3つの環を含有する炭素環式芳香族システムを意味し、ここでこうした環は、ペンダント様式で一緒に結合されてもよく、または縮合されてもよい。「アリール」という用語は、芳香族ラジカル、例えばベンジル、フェニル、ナフチル、アントラセニル、およびビフェニルを包含する。
本明細書で使用される場合、「アリールアルキル」という用語は、単独または組み合わせて、アルキル基を通して親分子部分と結合するアリール基を指す。
「アルカンジイル」という用語は、アルカン基の二価ラジカルを指す。こうしたアルカンジイルは、一般式−Cn(RxRy)n−を有し、式中、RxおよびRyのそれぞれは、独立に、低級アルキル基または水素である。
固体インク技術は、多くの市場に対して印刷能および顧客基盤を拡大し、印刷用途の多様性は、プリントヘッド技術、プリントプロセスおよびインク材料の有効な集積によって促進される。固体インク組成物は、室温(例えば20〜27℃)にて固体であり、溶融インクが基材に適用される高温においては溶融状態であることを特徴とする。現在のインク選択肢は多孔質紙基材について成功しているが、これらの選択肢はコーティングされた紙基材については必ずしも満足するものではない。
以前には、固体インク配合物における結晶性および非晶質小分子化合物の混合物を用いることにより、堅牢性インクを提供し、特にコーティングされた紙上に堅牢性の画像を示す固体インクを提供することが見出された。(米国特許出願整理番号13/095,636)。こうした相変化インクを用いて製造されたプリントサンプルは、現在利用可能な相変化インクに比べてスクラッチ、曲げおよび曲げオフセットに対して良好な堅牢性を示す。
しかし、この手法を用いることは、結晶性材料または非晶質材料の既知の特性からは、驚くべきことである。結晶性材料について、小分子は、一般に固化するときに結晶化する傾向があり、低分子量の有機固体は一般に結晶である。結晶性材料は一般に硬質であり、より抵抗性であるが、こうした材料は相当脆弱でもあり、結果として主に結晶性のインク組成物を用いて製造された印刷物は損傷に対して非常に感受性となる。非晶質材料に関して、高分子量非晶質材料、例えばポリマーは、高温で粘稠になり、粘着性の液体になるが、高温では十分に低い粘度を示さない。結果として、ポリマーは、所望の噴出温度(≦140℃)にてプリントヘッドノズルから噴出させることができない。しかし、実施形態において、堅牢性の固体インクは、結晶性および非晶質化合物のブレンドを通して得ることができることが見出されている。
しかし本発明者らは、多くの場合、染料着色剤を、非晶質および結晶性化合物を含むインクベース組成物に添加すると、迅速な印刷に有用ではなくなる程度に非常に遅く固化する、すなわち結晶化するインクが得られることを見出した。さらに、非晶質および結晶性構成成分の混合物で構成された多くのインクベース組成物は、非常に遅く固化することもあることが示された。インクの固化は、冷却時にインク中の結晶性構成成分の結晶化によるものである。本発明者らは、結晶性−非晶質組成物の迅速な結晶化は、組成物の固有の特性ではないことを見出した。迅速に結晶化する結晶性−非晶質インクを提供する方法は自明でない。
本発明者らは、結晶性および非晶質構成成分で構成された組成物に有機顔料を添加すると、溶融状態から冷却される場合に、インクの結晶化が加速されることを見出した。
本実施形態は、一般にそれぞれ約60:40〜約95:5の重量比において(1)結晶性および(2)非晶質化合物のブレンドを含むインクジェット固体インク組成物の新規なタイプを提供する。実施形態において、結晶性化合物と非晶質化合物との重量比は、約65:35〜約95:5、または約70:30〜約90:10、または約70:30〜約80:20である。他の実施形態において、結晶性および非晶質化合物は、それぞれ約1.5〜約20または約2.0〜約10の重量比でブレンドされる。
各化合物または構成成分は特定の特性を固体インクに付与し、これらの非晶質および結晶性化合物のブレンドを組み込んで得られたインクは、コーティングされていない基材およびコーティングされた基材上での優れた堅牢性を示す。インク配合物中の結晶性化合物は、冷却時の迅速な結晶化を通して相変化を駆動する。結晶性化合物はまた、最終インクフィルムの構造を設定し、非晶質化合物の粘着性を低下させることによって硬質インクを創製する。非晶質化合物は、粘着性を提供し、印刷されたインクに堅牢性を付与する。
非晶質化合物
実施形態において、非晶質化合物は、式Iの第1の酒石酸エステルまたは式IIの第1のクエン酸エステルを含む
式中、R、R、R、R、およびRのそれぞれは、独立に、アルキル基(ここでこのアルキルは、1〜40個の炭素原子を有する、直鎖、分岐状または環状、飽和または不飽和、置換または非置換であることができる)、あるいは置換または非置換芳香族またはヘテロ芳香族基である。実施形態において、R、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立に、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルおよびt−ブチルから選択される1つ以上のアルキル基で場合により置換されるシクロヘキシル基である。実施形態において、R、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立に、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルおよびt−ブチルから選択される1つ以上のアルキル基で場合により置換されるシクロヘキシル基である。
式Iを参照して、実施形態においては、RおよびRの1つが、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、RおよびRの他の1つは、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、またはシクロヘキシルであり、あるいはRおよびRの1つは、4−t−ブチルシクロヘキシルであり、RおよびRの他の1つはシクロヘキシルである。実施形態において、RおよびRのそれぞれは、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルである。実施形態において、Rは、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、Rは、4−t−ブチルシクロヘキシルである。実施形態において、Rは、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、Rは、シクロヘキシルである。実施形態において、Rは、4−t−ブチルシクロヘキシルであり、Rは、シクロヘキシルである。
式IIを参照すれば、実施形態において、R、RおよびRの1つは、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、R、RおよびRの他の1つは、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、またはシクロヘキシルであり、あるいはR、RおよびRの1つは、4−t−ブチルシクロヘキシルであり、R、RおよびRの他の1つはシクロヘキシルである。実施形態において、R、RおよびRのそれぞれが、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルである。実施形態において、Rは、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、RおよびRのそれぞれは4−t−ブチルシクロヘキシルである。実施形態において、Rは2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、RおよびRのそれぞれがシクロヘキシルである。実施形態において、Rは4−t−ブチルシクロヘキシルであり、RおよびRのそれぞれはシクロヘキシルである。
特定実施形態において、非晶質化合物は、ビス(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)L−タートラートまたは(4−t−ブチルシクロヘキシル)(シクロヘキシル)−L−タートラート、およびこれらのいずれかの立体異性体および混合物からなる群から選択される。
一部の好適な非晶質材料は、米国特許出願整理番号13/095,784に開示される。非晶質材料は、式
を有する酒石酸のエステルを含んでいてもよく、式中、RおよびRのそれぞれは、互いに独立に、またはそれらは同一または異なることができることを意味して、アルキル基(ここでこのアルキル部分は、1〜40個の炭素原子を有する直鎖、分岐状または環状、飽和または不飽和、置換または非置換基であることができる)あるいは置換または非置換芳香族またはヘテロ芳香族基からなる群から選択される。実施形態において、RおよびRのそれぞれは、独立に、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルおよびt−ブチルから選択される1つ以上のアルキル基で場合により置換されるシクロヘキシル基である。実施形態において、RおよびRのそれぞれは、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルである。
酒石酸骨格はL−(+)−酒石酸、D−(−)−酒石酸、DL−酒石酸、またはメソ酒石酸、およびこれらの混合物から選択される。R基および酒石酸の立体化学に依存して、エステルは結晶または安定な非晶質化合物を形成できる。特定実施形態において、非晶質化合物は、ジ−L−メンチルL−タートラート、ジ−DL−メンチルL−タートラート、ジ−L−メンチルDL−タートラート、ジ−DL−メンチルDL−タートラート、ならびにこれらのいずれかの立体異性体および混合物からなる群から選択される。
これらの材料は、噴出温度付近において(≦140℃、または約100〜約140℃、または約105〜約140℃)、相対的に低い粘度(<10センチポイズ(cps)、または約1〜約100cps、または約5〜約95cps)を示し、室温において非常に高い粘度(>10cps)を示す。
非晶質構成成分を合成するために、酒石酸は、米国特許出願整理番号13/095,784に示されるように、種々のアルコールと反応させ、ジ−エステルを製造した。本実施形態にて使用されるべき好適なアルコールは、アルキルアルコール(ここでアルコールのアルキル部分は、1〜40個の炭素原子を有する直鎖、分岐状または環状、飽和または不飽和、置換または非置換であることができる)、あるいは置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基、およびこれらの混合物であってもよい。種々のアルコール、例えばメントール、イソメントール、ネオメントール、イソネオメントールならびにこれらのいずれかの立体異性体および混合物がエステル化に使用されてもよい。脂肪族アルコールの混合物は、エステル化に使用されてもよい。例えば、2つの脂肪族アルコールの混合物は、エステル化に使用されてもよい。脂肪族アルコールのモル比は、25:75〜75:25、40:60〜60:40、または約50:50であってもよい。酒石酸と反応する場合、混合物が非晶質化合物を形成する好適な脂肪族アルコールの例としては、シクロヘキサノールおよび置換シクロヘキサノール(例えば、2、3または4−tert−ブチル−シクロヘキサノール)が挙げられる。
実施形態において、2モル当量以上のアルコールは、酒石酸のジエステルを製造するための反応中に使用されてもよい。1モル当量のアルコールが使用される場合、結果は大部分がモノエステルである。
他の好適な非晶質構成成分としては、米国特許出願整理番号13/095,795に開示されるものが挙げられる。非晶質材料は、以下の構造を有する化合物を含んでいてもよく;
、RおよびRは、独立に、アルキル基(ここでこのアルキルは、1〜40個の炭素原子を有する、直鎖、分岐状または環状、飽和または不飽和、置換または非置換基であることができる)、あるいは置換または非置換芳香族またはヘテロ芳香族基、およびこれらの混合物である。
これらの非晶質材料は、クエン酸のエステル化反応によって合成される。特に、クエン酸は、そこで開示される合成スキームに従って、トリエステルを製造するために種々のアルコールと反応させた。実施形態において、相変化インク組成物は、クエン酸および少なくとも1つのアルコールからエステル化反応において合成される非晶質化合物を用いることによって得られる。
実施形態において、非晶質材料は、インク組成物の総重量の5重量%〜40重量%、または5重量%〜35重量%、または10重量%〜30重量%の量で存在する。
結晶性化合物
実施形態において、結晶性化合物は、式IIIの第2の酒石酸エステルを含む
式中、RおよびRのそれぞれは独立に、場合により低級アルキルおよびアルコキシで置換されたアリールまたはヘテロアリールであり、各nは独立に0〜3である。特定実施形態において、RおよびRのそれぞれは、独立に、フェニルのような、場合により置換されたアリールである。実施形態において、RおよびRのそれぞれは、独立に、置換されていない、あるいはメチル、エチル、イソプロピル、メトキシまたはエトキシで置換されている。実施形態において、RおよびRのそれぞれは、独立に、メチルまたはメトキシで場合により置換されたフェニルである。
実施形態において、RおよびRのそれぞれは、独立に、
およびこれらの混合物からなる群から選択される。
実施形態において、酒石酸骨格はL−(+)−酒石酸、D−(−)−酒石酸、DL−酒石酸、またはメソ酒石酸、およびこれらの混合物から選択される。
実施形態において、結晶性化合物は、ジベンジルL−タートラート、ジフェネチルL−タートラート、ビス(3−フェニル−1−プロピル)L−タートラート、ビス(2−フェノキシエチル)L−タートラート、ジフェニルL−タートラート、ビス(4−メチルフェニル)L−タートラート、ビス(4−メトキシルフェニル)L−タートラート、ビス(4−メチルベンジル)L−タートラート、ビス(4−メトキシルベンジル)L−タートラート、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
結晶性材料は、シャープな結晶化を示し、約140℃の温度において、相対的に低い粘度(≦10センチポイズ(cps)、または約0.5〜約20cps、または約1〜約15cps)を示すが、室温にて非常に高い粘度(>10cps)を示す。これらの材料は、150℃未満、または約65〜約150℃、または約66〜約145℃の溶融温度(T融点)を有し、60℃を超える、または約60℃〜約140℃、または約65〜約120℃の結晶化温度(T結晶)を有する。T溶融とT結晶との間のΔTは約55℃未満である。
実施形態において、結晶性材料は、インク組成物の総重量の60重量%〜95重量%、65重量%〜95重量%、または70重量%〜90重量%の量で存在する。
本実施形態の結晶性および非晶質材料は、互いに混和性であることがわかっており、結晶性および非晶質材料を用いて配合されて得られたインク組成物は、良好なレオロジープロファイルを示す。K−プルーフによってコーティングされた紙に相変化インク組成物によって創製された画像サンプルは、優れた堅牢性を示す。K−プルーファーは、印刷所での共通の試験装置である。この場合、プルーファーは、印刷プレートを加熱して相変化インクを溶融するために変更されている。使用されるK−プルーファーは、それぞれ約9.4×4.7cmの3つの長方形グラビアパターンを有する。第1の長方形のセル密度は、通常100%であり、第2のセル密度は80%、第3のセル密度は60%である。実際、このK−プルーフプレートは、厚さ(または高さ)約5ミクロンのフィルム(またはピクセル)をもたらす。試験インクは、加熱されたグラビアプレートにわたって展延され、試験プリントは、試験紙が固定されているプレート表面にわたってワイピングブレードを通過させ、その直後にゴムロールを通過させることによって製造される。紙ロールが通過するときに、インクはグラビアセルから紙に転写される。さらに、本結晶性および非晶質材料は、低コストであり、潜在的な生物誘導供給源から誘導されるという追加の利点を有する。
本実施形態は、液体から固体へのシャープな相転移を実現するためにバランスのとれた非晶質および結晶性材料を含み、所望のレベルの粘度を維持しながら、硬質および堅牢性の印刷画像を促進する。このインクで製造されたプリントは、市販のインクにも優る利点、例えばスクラッチに対する良好な堅牢性を示した。故に、相変化インクのために結晶性構成成分を提供する本タートラート化合物およびそれらの誘導体は、所望のレオロジープロファイルを有する堅牢性インクを製造すること、およびインクジェット印刷に関する多くの要件を満たすことを見出した。
実施形態において、固体インク組成物はまた、着色剤と組み合わせて結晶性および非晶質材料を含んでいてもよい。本実施形態は、液体から固体へのシャープな相転移を実現するためにバランスのとれた非晶質および結晶性材料を含み、所望のレベルの粘度を維持しながら、硬質および堅牢性の印刷画像を促進する。このインクで製造されたプリントは、市販のインクにも優る利点、例えばスクラッチに対する良好な堅牢性を示した。故に、結晶性および非晶質化合物のブレンドを含む得られたインク組成物は、良好なレオロジープロファイルを示し、インクジェット印刷に関する多くの要件を満たす。
酒石酸エステルの合成
酒石酸は、ジエステルを製造するために種々のアルコールと反応させたが、これは本実施形態の酒石酸ジエステル化合物の調製を例示する。エステル化は、1工程反応によって行われた。:
ROHおよびR’OHは同一または異なっていてもよい。
非晶質材料を合成するために、種々の脂肪族アルコール、例えばメントール、イソメントール、ネオメントール、イソネオメントールおよびこれらのいずれかの立体異性体および混合物がエステル化に使用されてもよい。
メントールは、実験データのために選択されたアルコールであった。酒石酸およびメントールの両方が立体異性体を有するので、キラリティに関して多くの可能性としての組み合わせが存在する。酒石酸およびメントール(ジ−L−メンチルL−タートラート、ジ−DL−メンチルL−タートラート、ジ−L−メンチルDL−タートラート)の3つの組み合わせを合成した。驚くべきことに、すべての組み合わせは、光学的に純粋なL−メントールおよびL−酒石酸の組み合わせであっても、無定形に設定された材料を製造した。本実施形態にて使用されるべき好適なアルコールは、アルキルアルコールからなる群から選択されてもよく、ここでアルコールのアルキル部分は、1〜16個の炭素原子を有する直鎖、分岐状または環状、飽和または不飽和、置換または非置換であることができる。
結晶性材料を合成するために、種々の芳香族アルコールをエステル化に使用してもよい。芳香族アルコールの非限定例としては、以下に示される構造およびこれらのいずれかの立体異性体および混合物が挙げられる。
実施形態において、2モル当量以上のアルコールは、酒石酸のジエステルを製造するための反応中に使用されてもよい。1モル当量のアルコールが使用される場合、結果は大部分がモノエステルである。
有機顔料
本実施形態のインク組成物は、有機顔料を含む。有機顔料は、相変化インクについて好適な着色剤である。有機顔料の例としては、Carbon Black、Pigment Blue15、Pigment Blue15:1、Pigment Blue15:2、Pigment Blue15:3、Pigment Blue15:4、Pigment Blue15:6、Pigment Blue1、Pigment Blue10、Pigment Blue14、Pigment Blue60、Pigment Blue61、Pigment Yellow1、Pigment Yellow3、Pigment Yellow12、Pigment Yellow13、Pigment Yellow14、Pigment Yellow17、Pigment Yellow24、Pigment Yellow55、Pigment Yellow62、Pigment Yellow63、Pigment Yellow65、Pigment Yellow73、Pigment Yellow74、Pigment Yellow81、Pigment Yellow83、Pigment Yellow93、Pigment Yellow95、Pigment Yellow97、Pigment Yellow110、Pigment Yellow111、Pigment Yellow123、Pigment Yellow126、Pigment Yellow127、Pigment Yellow139、Pigment Yellow147、Pigment Yellow150、Pigment Yellow151、Pigment Yellow154、Pigment Yellow155、Pigment Yellow168、Pigment Yellow170、Pigment Yellow174、Pigment Yellow175、Pigment Yellow176、Pigment Yellow179、Pigment Yellow180、Pigment Yellow183、Pigment Yellow185、Pigment Yellow188、Pigment Yellow191、Pigment Yellow194、Pigment Yellow214、Pigment Red2、Pigment Red3、Pigment Red4、Pigment Red5、Pigment Red8、Pigment Red9、Pigment Red12、Pigment Red13、Pigment Red21、Pigment Red22、Pigment Red23、Pigment Red31、Pigment Red32、Pigment Red48:1、Pigment Red48:2、Pigment Red48:3、Pigment Red48:4、Pigment Red49:1、Pigment Red49:2、Pigment Red52:1、Pigment Red52:2、Pigment Red53:1、Pigment Red53:3、Pigment Red57:1、Pigment Red63:1、Pigment Red81、Pigment Red112、Pigment Red122、Pigment Red123、Pigment Red144、Pigment Red146、Pigment Red149、Pigment Red166、Pigment Red169、Pigment Red170、Pigment Red171、Pigment Red175、Pigment Red176、Pigment Red177、Pigment Red178、Pigment Red179、Pigment Red184、Pigment Red185、Pigment Red188、Pigment Red189、Pigment Red202、Pigment Red208、Pigment Red210、Pigment Red224、Pigment Red242、Pigment Red245、Pigment Red254、Pigment Red266、Pigment Red268、Pigment Red269、Pigment Orange5、Pigment Orange13、Pigment Orange16、Pigment Orange34、Pigment Orange36、Pigment Orange63、Pigment Violet1、Pigment Violet2、Pigment Violet3、Pigment Violet19、Pigment Violet23、Pigment Violet27、Pigment Green7、Pigment Green36が挙げられ、すべて、英国染料染色学会および米国繊維化学技術・染色技術協会によるカラーインデックスの刊行物に列挙されている。
有機顔料の特定例としては、PALIOGEN Violet5100(BASF);PALIOGEN Violet5890(BASF);HELIOGEN Green L8730(BASF);LITHOL Scarlet D3700(BASF);SUNFAST Blue15:4(Sun Chemical);Hostaperm Blue B2G−D(Clariant);Permanent Red P−F7RK;Hostaperm Violet BL(Clariant);LITHOL Scarlet4440(BASF);Bon Red C(Dominion Color Company);ORACET Pink RF(BASF);PALIOGEN Red3871K(BASF);SUNFAST Blue15:3(Sun Chemical);PALIOGEN Red3340(BASF);SUNFAST Carbazole Violet23(Sun Chemical);LITHOL Fast Scarlet L4300(BASF);SUNBRITE Yellow17(Sun Chemical);HELIOGEN Blue L6900、L7020(BASF);SUNBRITE Yellow74(Sun Chemical);SPECTRA PAC C Orange16(Sun Chemical);HELIOGENBlueK6902、K6910(BASF);SUNFAST Magenta122(Sun Chemical);HELIOGEN Blue D6840、D7080(BASF);Sudan BlueOS(BASF);NEOPEN Blue FF4012(BASF);PV Fast BlueB2GO1(Clariant);IRGALITE Blue BCA(BASF);PALIOGEN Blue6470(BASF);Sudan Orange G(Aldrich)、Sudan Orange220(BASF);PALIOGEN Orange3040(BASF);PALIOGEN Yellow152、1560(BASF);LITHOL Fast Yellow0991K(BASF);PALIOTOL Yellow1840(BASF);NOVOPERM Yellow FGL(Clariant);Lumogen Yellow D0790(BASF);Suco−YellowL1250(BASF);Suco−YellowD1355(BASF);Suco Fast Yellow Dl355、Dl351(BASF);HOSTAPERM Pink E02(Clariant);Hansa Brilliant Yellow5GX03(Clariant);Permanent Yellow GRL02(Clariant);Permanent Rubine L6B05(Clariant);FANAL Pink D4830(BASF);CINQUASIA Magenta(DUPONT);PALIOGEN Black L0084(BASF);Pigment Black K801(BASF);およびカーボンブラック、例えばREGAL330(商標)(Cabot)、Carbon Black5250、Carbon Black5750(Columbia Chemical)、これらの混合物などが挙げられる。1つの実施形態において、インクは1つの有機顔料を含有していてもよい。別の実施形態において、インクは、少なくとも2つの異なる有機顔料の混合物を含有してもよい。
特定実施形態において、有機顔料は、インク組成物の総重量に対して、少なくとも0.1重量%〜50重量%、または少なくとも0.5重量%〜20重量%、0.5重量%〜10重量%、1重量%〜5重量%の量で、インク組成物に存在する。
通常、本開示に使用するのに好適な有機顔料粒子は、10nm〜400nm、50nm〜300nm、または80nm〜250nmの平均粒径を有する。
カラー印刷のための相変化インクは、通常、相変化インク相溶性の着色剤と組み合わせた相変化インクキャリア組成物を含む。1つの実施形態において、一連の着色された相変化インクは、インクキャリア組成物を相溶性の減法混色の原色着色剤と組み合わせることによって形成できる。減法混色の原色の着色相変化インクは、4つの構成成分染料または顔料、すなわちシアン、マゼンタ、イエローおよびブラックを含み得るが、インクはこれらの4つの色に限定されない。これらの減法混色の原色着色インクは、単一染料または顔料、または染料の混合物もしくは顔料の混合物、または染料および顔料の混合物を用いることによって形成できる。
相変化インク組成物はさらに、同時に2つのタイプの着色剤:染料および顔料を含有するインクをもたらす追加の染料着色剤を含んでいてもよい。染料単独では、徐々に結晶化するインクを提供する。顔料は迅速な結晶化を可能にする。そのため、染料および顔料の組み合わせは、所望の色および迅速な印刷能の両方を提供するので、有益である。いずれかの所望のまたは有効な染料着色剤は、染料着色剤がインクキャリア中に溶解でき、他のインク構成成分と相溶性である限り、相変化インク組成物に利用できる。相変化キャリア組成物は、従来の相変化インク染料着色剤材料と組み合わせて使用できる。ポリマー染料も使用できる。
追加の染料着色剤は、いずれかの所望の色または色相を得るためにいずれかの所望の量または有効量、例えば少なくともインクの0.1重量%〜50重量%、少なくともインクの0.2重量%〜20重量%、および少なくともインクの0.5重量%〜10重量%で相変化インク中に存在してもよい。
実施形態において、溶融状態において、得られた固体インクは、噴出温度で約1〜約22cps、または約4〜約15cps、または約6〜約12cpsの粘度を有する。噴出温度は、通常、約100℃〜約140℃の範囲に含まれる。実施形態において、固体インクは、室温にて約>10cpsの粘度を有する。実施形態において、固体インクは、10℃/分の速度にてDSCによって測定される場合に、約65〜約150℃、または約70〜140℃、約80〜約135℃のT溶融、および約40〜約140℃、または約45〜約130℃、約50〜約120℃のT結晶を有する。
実施形態のインクは、従来の添加剤をさらに含み、こうした従来の添加剤と関連した既知の機能を活用してもよい。こうした添加剤としては、少なくとも1つの酸化防止剤、消泡剤、スリップおよび平滑剤、浄化剤、粘度調整剤、接着剤、分散剤、可塑剤などを挙げることができる。
インクは、場合により、酸化から画像を保護するための酸化防止剤を含有してもよく、インク貯蔵器にて加熱された溶融物として存在する間、酸化からインク構成成分を保護してもよい。存在する場合、酸化防止剤は、いずれかの所望のまたは有効な量、例えばインクの0.25重量%〜10重量%または1重量%〜5重量%でインク中に存在してもよい。
インクベース中の顔料分散液は、分散剤によって安定化されてもよい。液体ビヒクル中の顔料の分散を可能にするために、場合により分散剤または分散剤の組み合わせを提供してもよい。通常、分散剤は、インクビヒクル中の粒子を安定化するために使用され得る。分散剤は、一般に、分散剤と顔料粒子とを繋ぐ第1の官能基、およびインクビヒクルと相溶性である第2の官能基を含む。第1の官能基は、いずれかの好適な様式において、例えば水素結合、化学結合、酸−塩基反応、ファンデルワールス相互作用において、顔料粒子に好適に繋がるまたは吸着し得る。
故に、分散剤を顔料粒子に繋ぐ好適な第1の官能基の例としては、エステル、アミド、カルボン酸、ヒドロキシル、無水物、ウレタン、尿素、アミン、アミド、塩の基、例えば四級アンモニウム塩などのような基が挙げられる。第1の官能基は、分散剤を着色剤粒子に繋ぎ、分散剤が、例えば、顔料粒子に吸着される、顔料粒子に結合される、または顔料粒子にグラフトされるようにする。同様に、インクビヒクルと相溶性である第2の官能基の例としては、アルキル基のような基が挙げられ、これは、直鎖または分岐状、飽和または不飽和などであることができる。個々の分散剤または組み合わせは、場合により、共力剤と共に使用されてもよい。
分散剤は、いずれかの有効な量、例えばインクの0.1重量%〜40重量%、例えば0.5重量%〜25重量%、または1重量%〜13重量%の量で、固体インクに存在してもよい。
実施形態において、溶融状態では、相変化インクのためのインクキャリアは、噴出温度で約1〜約22cps、または約4〜約15cps、または約6〜約12cpsの粘度を有してもよい。噴出温度は、通常、約100℃〜約140℃の範囲に含まれる。実施形態において、固体インクは、室温にて約>10cpsの粘度を有する。実施形態において、固体インクは、10℃/分の速度にてDSCによって測定される場合に、約65〜約150℃、または約70〜約140℃、または約80〜約135℃のT溶融、および約40〜約140℃、または約45〜約130℃、約50〜約120℃のT結晶を有する。
インク組成物は、いずれかの所望のまたは好適な方法によって調製できる。例えば、インクキャリアの各構成成分は、共に混合されることができ、その後この混合物を少なくともその融点、例えば60℃〜150℃、80℃〜145℃および85℃〜140℃に加熱する。任意の染料着色剤は、インク成分を加熱する前またはインク成分を加熱した後に添加されてもよい。顔料および分散剤は溶融混合物に添加され、磨砕機またはボールミル装置または他の高エネルギー混合装置での粉砕に供されることができ、インクキャリア中の顔料の分散に影響を与える。次いで加熱された混合物は、約5秒〜約30分以上撹拌され、実質的に均質で、均一な溶融物が得られ、続いてインクを周囲温度(20℃〜25℃)まで冷却する。インクは周囲温度にて固体である。特定実施形態において、形成プロセス中、それらの溶融状態におけるインクは、モールドに注がれ、次いで冷却され、固化されてインクスティックを形成する。
インクは、直接印刷インクジェットプロセスのための装置および間接(オフセット)印刷インクジェット用途に利用できる。別の実施形態は、本明細書に開示されるインクをインクジェット印刷装置に組み込む工程、インクを溶融する工程、および溶融したインクの液滴を記録基材上の画像様パターンに放出させる工程を含むプロセスを対象とする。別の実施形態は、本明細書に開示されるインクをインクジェット印刷装置に組み込む工程、インクを溶融させる工程、溶融したインクの液滴を中間転写部材上に画像様パターンに放出させる工程および中間転写部材から画像様パターンのインクを最終記録基材に転写する工程を含むプロセスを対象とする。本明細書に開示される相変化インクはまた、ホットメルトインクジェット印刷プロセス以外の印刷プロセスに使用できる。
いずれかの好適な基材または記録シートは、コーティングされたまたは普通紙を含むものが使用できる。透明材料、布地、繊維製品、プラスチック、ポリマーフィルム、無機記録媒体、例えば金属および木材も使用されてもよい。
こうした堅牢性インクは、高速での印刷設備と共に使用されてもよい。通常、プロダクションデジタルプレスは、約100〜500フィート/分以上を含む速度にて印刷する。これは、印刷紙が積み重ねられているまたは巻かれているのいずれかである場合に、迅速な印刷プロセス中に印刷された画像のオフセットを防止するために、紙上に配置されたら非常に迅速に固化できるインクを必要とする。迅速な結晶化は、結晶性−非晶質堅牢性インクの一般的なまたは固有の特性ではない。そのため、すべての結晶性−非晶質インクが、迅速な印刷に向いているわけではない。
迅速な印刷のための試験インクの好適性を評価するために、結晶性構成成分を含有する固体インクの結晶化速度を測定するための定量方法が開発された。TROM(時間分解光学顕微鏡法)は、種々の試験サンプルを比較でき、結果として、迅速な結晶化インクの設計に関して行われた進行をモニターするための有用なツールである。
TROMは、同時係属中の米国特許出願番号13/456,847に記載されている。
時間分解光学顕微鏡法
TROMは、偏光顕微鏡法(POM)を用いることによって結晶の外観および成長をモニターする。サンプルは、顕微鏡の直交偏光子間に置かれる。結晶性材料は、それらが複屈折であるために視覚可能である。光を通さない、例えばそれらの溶融状態のインクと同様の非晶質材料または液体は、POMの下では黒色に見える。故に、POMは、結晶性構成成分を見る場合に画像コントラストを可能にし、溶融状態から設定温度に冷却された場合に結晶性−非晶質インクの結晶化動力学を追跡できる。偏光顕微鏡法(POM)は、結晶性構成成分を見る場合に特別な画像コントラストを可能にする。
異なるおよび種々のサンプルを比較できるデータを得るために、実際の印刷プロセスに関連する多くのパラメータを含むことを目的として標準TROM実験条件を設定した。重要な設定パラメータは以下を含む:
(a)16〜25mm直径のガラススライドおよび0.2mm〜0.5mmを含む厚さ
(b)5〜25ミクロンの範囲を含むインクサンプルの厚さ
(c)40℃に設定される冷却温度。
結晶形成および成長は、カメラで記録される。
TROMプロセスにおける重要な工程を図1に例示するが、非晶質および結晶性構成成分だけを含有する(染料または顔料を含まない)メインラインインクベースを用いる測定プロセスにおいて重要な工程を強調している。POMの下で見る場合に、溶融状態および時間ゼロにおいて、結晶性−非晶質インクは、光を通さない場合に黒色に見える。サンプルが結晶化したときに、結晶性領域はより明るく見える。TROMによって報告される数は、最初の結晶(結晶化オンセット)から最後の結晶(結晶化終了)までの時間を含む。
TROMプロセスの重要な測定されたパラメータの定義を以下に記載する:
時間ゼロ(T=0s)−溶融サンプルは、顕微鏡の下で冷却段階に置かれる。
Tオンセット=第1の結晶が現れる時間
T成長=第1の結晶(Tオンセット)から結晶化終了までの結晶成長期間(T合計)
T合計=Tオンセット+T成長
選択されたインクのためのTROM方法を用いて得られた結晶化時間は、実際の印刷デバイスにおけるインク液滴の結晶化時間であることとは同一ではない。実際の印刷デバイス、例えば印刷機において、インクは相当速く固化する。本発明者らは、TROM方法によって測定される合計結晶化時間と印刷機内のインクの固化時間との間には良好な相関が存在することを決定した。上記で記載される標準化条件において、本発明者らは、インクは、TROM方法によって測定される10〜15秒以内に固化し、通常100フィート/分以上の速度での迅速な印刷に好適であることを決定した。そのため、本開示の趣旨上、15秒未満の結晶化速度は、迅速な結晶化であると考えられる。
実施形態において、相変化インクは、20秒未満で結晶化する。
実施例1
インクサンプルの調製 インク系配合物において、ジ−DL−メンチルL−タートラート(DMT)を非晶質化合物として使用し、ジ−フェネチルL−タートラート(DPT)を結晶性化合物として使用した。これらの材料の両方の合成は、以前に、米国特許出願整理番号13/095,784における実施例1(DMT)および米国特許出願整理番号13/095,715における実施例1(DPT)に記載されていた。
DMTおよびDPTの混合物は、染料を含まずに、140℃にて溶融状態で撹拌され、次いで冷却されて、インクベースサンプルを得た。インクサンプルの結晶性:非晶質比は、おおよそ、重量%で80:20であった。結晶性および非晶質材料は、この混合比で非常に混和性であった。
インク配合物の詳細を表1に示す。インクサンプル1は、DPTおよびDMTを含有し、着色剤を含まない。着色インクは、インクベース(サンプル1)に染料または顔料を添加することによって調製した。インクサンプル2、3および4は、それぞれ染料SB101、SB67およびDR60を含有する。インクサンプル5、6および7はすべて、シアン顔料、B4GまたはSpectra PACを含有する。
実施例2
TROM結果(結晶化速度)
インクベース(サンプル1)および6個の代表的なインクをTROMによって検査した。表2に示されるように、顔料着色インク配合物(サンプル5〜7)は、インクベース(サンプル1)よりも合計結晶化時間が速く、染料着色インク配合物(サンプル2〜4)よりも結晶化の合計時間が相当速い。サンプルの合計結晶化時間はTROMによって測定され、表に示される時間は、2つのガラススライドサンプルの3回の測定の平均、すなわち6回の測定の平均を表していた。例えば、インクベース(サンプル1)の測定された合計結晶化時間の範囲は、20〜28秒であり、平均の合計結晶化時間は、24秒であったが、これは異なるサンプルおよびインク構成成分のロット番号において約8回の測定から計算された。
顔料系インクサンプル5、6および7についての合計結晶化時間は、それぞれ14s、19sおよび12sである。故に、インクを顔料着色することによって、合計結晶化時間は、1.3倍以上加速された。
加速因子(AF)を使用して、インクベース配合物(すなわち染料も顔料も含まない)と比較した場合の、インクの結晶化速度(T合計)の加速を計算する。AFは、AF=T合計ベース/T合計インクとして定義される。故に、AF>1は、インクベースに比べて結晶化が速いこと(より短時間)を意味する。AF<1は、インクベースに比べて結晶化が遅いこと(より長時間)を意味する。要約すれば、AF>1は、迅速な印刷速度に望ましい。
表2は、すべての染料系インク(サンプル2〜4)は、インクベースよりも結晶化が遅いが、すべての顔料系インク(サンプル5〜7)は、インクベースよりも結晶化が速いことを示す。顔料着色インクのすべては、インクベースに比べて、結晶化プロセスの加速を示した(AF>1)。
溶融は、インクが、TROM測定の間溶融している、すなわちTROM冷却プロセスが始動する、セ氏度にて測定される温度である。この温度は、通常、10〜12cpsにて含まれる理想の噴出温度と同一であるように選択される。
実施例3
顔料着色インクのレオロジー
インクサンプル5、6および7は、Peltier加熱プレートを備えたRFS3制御された歪レオメータ(TA instruments)にて、25mm平行プレートを用いて測定された。インクの粘度は、増大する周波数の関数として、0.1Hz〜15.8Hzで測定した。製造された顔料着色インクサンプルのレオロジーデータを図2に示す。
顔料着色インクは、140℃でニュートン粘度(図2)、同じ温度で噴出可能粘度(すなわち≦12ps)(図3)を示した。図3において、インク粘度は、140℃での開始から30℃への5℃ずつ低下する温度の関数として測定した。
インクサンプル5は、続いてK−印刷プルーファー(RK Print Coat Instrument Ltd.,Litlington,Royston,Heris,SG80OZ,U.K.が製造)を用いて、Xerox Digital Color Elite Gloss,120gsm(DCEG)にコーティングし、基材から容易に取り除くことができない堅牢性画像を形成した。
垂直から約15°の角度にて湾曲した先端を有するスクラッチ/ゴージフィンガーを、528gの重りと共に、約13mm/sの速度で画像にわたって引き寄せた場合に、インクは画像から明確には取り除かれなかった。スクラッチ/ゴージ先端は、約12mmの曲率半径を有する旋盤円形ノーズ切削ビットに類似する。
本明細書において言及されるすべての特許および出願は、それら全体を本明細書に参考として完全に組み込まれる。

Claims (10)

  1. 非晶質化合物;
    結晶性化合物;および
    有機顔料を含む相変化インクであって;
    ここでこの相変化インクは、有機顔料を含まない同じ組成物よりも液体状態から迅速に結晶化する、インク。
  2. 前記相変化インクが、20秒未満で結晶化する、請求項1に記載の相変化インク。
  3. 前記非晶質化合物が、式Iの第1の酒石酸エステルまたは式IIの第1のクエン酸エステルを含み
    式中、R、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立に、アルキル基(ここでこのアルキルは、約1〜約40個の炭素原子を有する直鎖、分岐状または環状、飽和または不飽和、置換または非置換である)あるいは置換または非置換芳香族またはヘテロ芳香族基であり;および
    前記結晶性化合物が、式IIIの第2の酒石酸エステルを含む、請求項1に記載の相変化インク
    式中、RおよびRのそれぞれは、独立に、場合により低級アルキルおよびアルコキシで置換されたアリールまたはヘテロアリールであり、各nは独立に0〜3である。
  4. およびRのそれぞれは、独立に、
    およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の相変化インク。
  5. 前記結晶性/非晶質比が、約60:40〜約95:5である、請求項1に記載の相変化インク。
  6. 前記有機顔料が、Carbon Black、Pigment Blue15、Pigment Blue15:1、Pigment Blue15:2、Pigment Blue15:3、Pigment Blue15:4、Pigment Blue15:6、Pigment Blue1、Pigment Blue10、Pigment Blue14、Pigment Blue60、Pigment Blue61、Pigment Yellow1、Pigment Yellow3、Pigment Yellow12、Pigment Yellow13、Pigment Yellow14、Pigment Yellow17、Pigment Yellow24、Pigment Yellow55、Pigment Yellow62、Pigment Yellow63、Pigment Yellow65、Pigment Yellow73、Pigment Yellow74、Pigment Yellow81、Pigment Yellow83、Pigment Yellow93、Pigment Yellow95、Pigment Yellow97、Pigment Yellow110、Pigment Yellow111、Pigment Yellow123、Pigment Yellow126、Pigment Yellow127、Pigment Yellow139、Pigment Yellow147、Pigment Yellow150、Pigment Yellow151、Pigment Yellow154、Pigment Yellow155、Pigment Yellow168、Pigment Yellow170、Pigment Yellow174、Pigment Yellow175、Pigment Yellow176、Pigment Yellow179、Pigment Yellow180、Pigment Yellow183、Pigment Yellow185、Pigment Yellow188、Pigment Yellow191、Pigment Yellow194、Pigment Yellow214、Pigment Red2、Pigment Red3、Pigment Red4、Pigment Red5、Pigment Red8、Pigment Red9、Pigment Red12、Pigment Red13、Pigment Red21、Pigment Red22、Pigment Red23、Pigment Red31、Pigment Red32、Pigment Red48:1、Pigment Red48:2、Pigment Red48:3、Pigment Red48:4、Pigment Red49:1、Pigment Red49:2、Pigment Red52:1、Pigment Red52:2、Pigment Red53:1、Pigment Red53:3、Pigment Red57:1、Pigment Red63:1、Pigment Red81、Pigment Red112、Pigment Red122、Pigment Red123、Pigment Red144、Pigment Red146、Pigment Red149、Pigment Red166、Pigment Red169、Pigment Red170、Pigment Red171、Pigment Red175、Pigment Red176、Pigment Red177、Pigment Red178、Pigment Red179、Pigment Red184、Pigment Red185、Pigment Red188、Pigment Red189、Pigment Red202、Pigment Red208、Pigment Red210、Pigment Red224.Pigment Red242、Pigment Red245、Pigment Red254、Pigment Red266、Pigment Red268、Pigment Red269、Pigment Orange5、Pigment Orange13、Pigment Orange16、Pigment Orange34、Pigment Orange36、Pigment Orange63、Pigment Violet1、Pigment Violet2、Pigment Violet3、Pigment Violet19、Pigment Violet23、Pigment Violet27、Pigment Green7、Pigment Green36およびこれらの混合物である、請求項1に記載の相変化インク。
  7. 前記有機顔料が、前記相変化インク全体に基づいて約0.1重量%〜約50重量%の量で存在する、請求項1に記載の相変化インク。
  8. 前記顔料が、10〜400nmの平均粒径を有する、請求項1に記載の相変化インク。
  9. 約100〜約140℃の温度において、約5〜約22cpsの粘度を有する、請求項1に記載の相変化インク。
  10. ジベンジルL−タートラート、ジフェネチルL−タートラート、ビス(3−フェニル−1−プロピル)L−タートラート、ビス(2−フェノキシエチル)L−タートラート、ジフェニルL−タートラート、ビス(4−メチルフェニル)L−タートラート、ビス(4−メトキシフェニル)L−タートラート、ビス(4−メチルベンジル)L−タートラート、ビス(4−メトキシベンジル)L−タートラート、ジシクロヘキシルL−タートラート、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)L−タートラートおよびこれらのいずれかの立体異性体および混合物からなる群から選択される結晶性化合物;
    ビス(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)L−タートラート、およびこれらのいずれかの立体異性体および混合物からなる群から選択される非晶質化合物;および
    有機顔料を含む相変化インクであって:
    ここでこの相変化インクが、有機顔料を含まない同じ組成物よりも液体状態から迅速に結晶化する、インク。
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