JP2013227383A - 強誘電性液晶組成物および液晶表示素子 - Google Patents

強誘電性液晶組成物および液晶表示素子 Download PDF

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大輔 松浦
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Abstract

【課題】強誘電性液晶組成物の複屈折を小さくすることができ、液晶表示素子に用いた場合には透過率を向上させることができる強誘電性液晶組成物を提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物と、耐衝撃性に寄与するキラル化合物とを含有することを特徴とする強誘電性液晶組成物。

(上記式(1)において、R31およびR32はそれぞれアルキル基等、K、Kは、単結合またはエーテル結合を表す。Z、Z、Z、Zは、それぞれ独立してフッ素原子または水素原子を表す。)
【選択図】なし

Description

本発明は、複屈折の小さい強誘電性液晶組成物およびそれを用いた液晶表示素子に関するものである。
液晶表示素子は薄型で低消費電力などといった特徴から、大型ディスプレイから携帯情報端末までその用途を広げており、その開発が活発に行われている。これまで液晶表示素子は、TN方式、STNのマルチプレックス駆動、TNに薄層トランジスタ(TFT)を用いたアクティブマトリックス駆動等が開発され実用化されているが、これらはネマチック液晶を用いているために、液晶材料の応答速度が数ms〜数十msと遅く、動画表示に充分対応しているとはいえない。
強誘電性液晶は、応答速度がμsオーダーと極めて短く、高速デバイスに適した液晶であり、視野角が広いなどの優位性を有するため、高性能な液晶表示素子が提供できるとして期待されている。
強誘電性液晶は複屈折が大きいため、強誘電性液晶を用いた液晶表示素子では、色ずれの発生を抑制して良好な白色表示を得るにはセルギャップを2μm未満と非常に狭くする必要がある。しかしながら、狭いセルギャップでは、厚みムラの発生、厚みムラによる色ムラや表示ムラの発生等により製造上の歩留りが低下するという問題がある。
そこで、セルギャップの大きい液晶表示素子においても良好な白色表示を実現できる強誘電性液晶が望まれている。
複屈折効果による着色を防止して視認性の高い白黒表示を可能とする液晶表示素子を提供することを目的として、例えば特許文献1には、基板に複屈折をもたせるとともに、基板の光学主軸を強誘電性液晶のスメクチック層法線から30度傾けて配置し、基板と液晶層のリタデーションの差を所定の範囲とすることが提案されている。
また、強誘電性液晶ではないが、ネマチック液晶に関して、表示特性を改善するために液晶材料を添加することが知られている。例えば特許文献2には、所望の複屈折率を有する液晶材料や比較的大きな複屈折率を有する液晶材料を添加することが提案されている。
また、強誘電性液晶は、ネマチック液晶に比べて分子の秩序性が高いために、衝撃により分子配向の規則性が乱されると元の状態に戻りにくい、すなわち外部衝撃に非常に弱いという問題を抱えている。
耐衝撃性を向上させる手段としては、例えば、強誘電性液晶組成物にゲル化剤を添加する方法、強誘電性液晶組成物に硬化型樹脂を添加する方法、強誘電性液晶組成物に熱可塑性樹脂を添加する方法(特許文献3参照)、強誘電性液晶構造を側鎖に有する強誘電性高分子液晶を用いる方法、液晶高分子化合物と低分子の強誘電性液晶化合物を混合する方法(特許文献4参照)が提案されている。しかしながら、これらの方法では、強誘電性液晶組成物に高分子化合物を用いたとしても、ある程度の弱い衝撃に対して分子配向の規則性が乱れにくくなるという効果は示すものの、強い衝撃によって配向の規則性が乱れると元の状態に戻りにくいという本質的な問題は解決されていない。
最近では、耐衝撃性の向上を目的として、強誘電性液晶組成物自体の耐衝撃性を高める試みがなされており、強誘電性液晶組成物に用いるキラル化合物の構造が種々検討されている(特許文献5参照)。特許文献5によれば、複数個のベンゼン環が直接結合された所定の構造を有するキラル化合物を含有する強誘電性液晶組成物を用いた場合には、衝撃を加えた後でもコントラスト比が良好であったことが報告されている。
しかしながら、上記のような耐衝撃性を有する強誘電性液晶組成物では、キラル化合物が複数個のベンゼン環が直接結合された所定の構造を有するため、強誘電性液晶組成物の複屈折が大きいという問題が顕著になる。そこで、セルギャップの大きい液晶表示素子においても良好な白色表示を可能にするためには、耐衝撃性に寄与する特定の構造を有するキラル化合物を含有する強誘電性液晶組成物の複屈折を小さくすることが強く求められる。
さらに、液晶表示素子には、高透過率であることも求められている。
透過率を向上させる手段としては、例えば、液晶表示素子のVT特性(電圧−透過率特性)を変化させる方法が提案されており、強誘電性液晶組成物を用いた液晶表示素子では、例えば特許文献6に、強誘電性液晶組成物に添加するキラル化合物の種類を適宜選択することで、液晶表示素子のVT特性を変化させることが提案されている。
特許第3225084号公報 特開2001−34197号公報 特開2003−114440号公報 特許第3541437号公報 国際公開第2010/031431号パンフレット 特開平9−302342号公報
上記の耐衝撃性を有する強誘電性液晶組成物の複屈折を小さくするためには、強誘電性液晶組成物に複屈折の小さな材料を添加することが考えられる。しかしながら、上記の耐衝撃性を有する強誘電性液晶組成物に複屈折の小さな材料を添加すると、液晶表示素子に用いた場合に、駆動特性が変化して液晶分子のチルト角が小さくなり輝度が低下するという問題がある。
また、従来では、透過率の高い液晶表示素子を得る方法として、強誘電性液晶組成物に添加するキラル化合物の種類を適宜選択することでVT特性を変化させる方法が提案されているが、耐衝撃性を向上させるための特定のキラル化合物を含有する強誘電性液晶組成物を用いた液晶表示素子では、キラル化合物の種類を変えると、所望の耐衝撃性が得られなくなるといった問題がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、耐衝撃性を有する強誘電性液晶組成物において、強誘電性液晶組成物の複屈折を小さくすることができ、セルギャップの大きい液晶表示素子においても良好な白色表示を実現できるとともに、液晶表示素子に用いた場合には透過率を向上させることができる強誘電性液晶組成物を提供することを主目的とするものである。
本発明者らは、耐衝撃性を有する強誘電性液晶組成物を用いた液晶表示素子の複屈折および透過率について種々検討を重ねた結果、特定の構造を有する化合物を用いることで、強誘電性液晶組成物の複屈折を小さくすることができ、液晶表示素子に用いた場合にはセルギャップが比較的大きくとも色ずれの発生を抑制し良好な白色表示を得ることが可能であるだけでなく、液晶表示素子に用いた場合に透過率を向上させることができることを見出した。さらには、特定の構造を有する化合物を含有させることにより、液晶表示素子に用いた場合には引っかき耐性をも向上させることができることを見出した。本発明はこのような知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表されるキラル化合物Aおよび下記一般式(3)で表されるキラル化合物Bの少なくともいずれかのキラル化合物とを含有することを特徴とする強誘電性液晶組成物を提供する。
(上記式(1)において、R31およびR32はそれぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよく、ケイ素原子を含んでいてもよい、炭素原子およびケイ素原子の数の合計が6〜14の飽和もしくは不飽和のアルキル基である。
、Kは、それぞれ独立して単結合またはエーテル結合を表す。ただし、K、Kは、少なくともいずれかがエーテル結合である。
、Z、Z、Zは、それぞれ独立してフッ素原子または水素原子を表す。ただし、ZおよびZの少なくともいずれかがフッ素原子である場合、Z、Zは水素原子であり、ZおよびZの少なくともいずれかがフッ素原子である場合、Z、Zは水素原子である。)
(上記式において、R1、Rは、非キラルな基であり、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数4〜18の飽和もしくは不飽和のアルキル基もしくはアルコキシアルキル基である。R、Rは、キラルな基であり、下記一般式(4)で表される基である。
(上記式において、Rは、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10の飽和もしくは不飽和のアルキル基もしくはアルコキシアルキル基である。Yは、−CHまたはフッ素原子を表す。mは0または1である。nは0または1である。*印はキラル中心を示す。)X〜X、X〜X20は、それぞれ独立して−CH、−CF、ハロゲン原子または水素原子を表す。ただし、X〜Xのうち1つ以上およびX〜X20のうち1つ以上は、それぞれ独立して−CH、−CFまたはハロゲン原子である。Kは、単結合またはシクロヘキサン環を表す。)
本発明によれば、上記式(2)で表されるキラル化合物Aおよび上記式(3)で表されるキラル化合物Bのような複数個のベンゼン環が直接結合されたキラル化合物は、その構造から、耐衝撃性を向上させることができるものの、複屈折が大きい。しかしながら、上記式(1)で表される化合物を含有することにより、複屈折を小さくすることができ、本発明の強誘電性液晶組成物を液晶表示素子に用いた場合には、セルギャップが比較的大きくとも色ずれの発生を抑制し、良好な白色表示を得ることができる。また、上記式(1)で表される化合物を含有することにより、本発明の強誘電性液晶組成物を液晶表示素子に用いた場合には、VT特性を変化させて液晶表示素子の透過率を向上させ、明るさを増大させることができるとともに、引っかき耐性をも向上させることができる。
また本発明は、第1基材、上記第1基材上に形成された第1電極層、および、上記第1電極層上に形成された第1配向膜を有する第1配向処理基板と、第2基材、上記第2基材上に形成された第2電極層、および、上記第2電極層上に形成された第2配向膜を有する第2配向処理基板と、上記第1配向膜および上記第2配向膜の間に形成され、上述の強誘電性液晶組成物を含む液晶層とを有することを特徴とする液晶表示素子を提供する。
本発明によれば、上記強誘電性液晶組成物を用いるので、複屈折を小さくすることができ、セルギャップが比較的大きくとも色ずれの発生を抑制し良好な白色表示を得ることが可能であり、歩留りを向上させることが可能となる。また、上記強誘電性液晶組成物を用いることにより、VT特性を変化させて透過率を向上させ、明るさを増大させることができる。さらには、引っかき耐性をも向上させることができる。
本発明においては、耐衝撃性に寄与するキラル化合物を含有する強誘電性液晶組成物に、上記式(1)で表される化合物を含有させることにより、複屈折を小さくすることができ、色ずれの発生を抑制し、良好な白色表示を得ることができるとともに、VT特性を変化させて透過率を向上させ明るさを増大させることができ、さらには引っかき耐性をも向上させることができるという効果を奏する。
本発明における液晶分子の配向状態の一例を示す模式図である。 本発明の液晶表示素子の一例を示す概略断面図である。 実施例および比較例における液晶表示素子の色度図である。 液晶表示素子のVT特性を示すグラフである。
以下、本発明の強誘電性液晶組成物および液晶表示素子について、詳細に説明する。
A.強誘電性液晶組成物
本発明の強誘電性液晶組成物は、下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表されるキラル化合物Aおよび下記一般式(3)で表されるキラル化合物Bの少なくともいずれかのキラル化合物とを含有することを特徴とするものである。
(上記式(1)において、R31およびR32はそれぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよく、ケイ素原子を含んでいてもよい、炭素原子およびケイ素原子の数の合計が6〜14の飽和もしくは不飽和のアルキル基である。
、Kは、それぞれ独立して単結合またはエーテル結合を表す。ただし、K、Kは、少なくともいずれかがエーテル結合である。
、Z、Z、Zは、それぞれ独立してフッ素原子または水素原子を表す。ただし、ZおよびZの少なくともいずれかがフッ素原子である場合、Z、Zは水素原子であり、ZおよびZの少なくともいずれかがフッ素原子である場合、Z、Zは水素原子である。)
(上記式において、R1、Rは、非キラルな基であり、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数4〜18の飽和もしくは不飽和のアルキル基もしくはアルコキシアルキル基である。R、Rは、キラルな基であり、下記一般式(4)で表される基である。
(上記式において、Rは、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10の飽和もしくは不飽和のアルキル基もしくはアルコキシアルキル基である。Yは、−CHまたはフッ素原子を表す。mは0または1である。nは0または1である。*印はキラル中心を示す。)X〜X、X〜X20は、それぞれ独立して−CH、−CF、ハロゲン原子または水素原子を表す。ただし、X〜Xのうち1つ以上およびX〜X20のうち1つ以上は、それぞれ独立して−CH、−CFまたはハロゲン原子である。Kは、単結合またはシクロヘキサン環を表す。)
本発明において、上記式(2)で表されるキラル化合物Aは、コア部にベンゼン環を3個とシクロヘキサン環1個を有しており、また、上記式(3)で表されるキラル化合物Bは、コア部にベンゼン環を4個有している。本発明においては、このような特定の構造を有する上記式(2)で表されるキラル化合物Aおよび上記式(3)で表されるキラル化合物Bを含有するので、耐衝撃性を有する強誘電性液晶組成物とすることができる。
一方、上記式(2)で表されるキラル化合物Aおよび上記式(3)で表されるキラル化合物Bは、ベンゼン環を複数個有しており、形状が直線状になる傾向があり、またベンゼン環は平面的な構造をとるためベンゼン環平面が積層して配向する傾向があることから、屈折率の異方性、すなわち複屈折が大きくなる。また、不飽和結合による共役が多いほど複屈折が大きくなることが知られている。
一方、上記式(1)で表される化合物は、エステル結合を有するため、棒状ではなく、折れ曲がった形状を有しているので、屈折率の異方性が小さくなる。また、上記式(1)で表される化合物は、不飽和結合による共役が少ないため、複屈折が小さくなると推量される。
したがって本発明においては、上記式(1)で表される化合物が強誘電性液晶組成物に添加されていることにより、複屈折を小さくすることができる。よって、セルギャップの比較的大きな液晶表示素子に用いた場合にも、色ずれの発生を抑制して良好な白色表示を得ることが可能となる。
また本発明においては、上記式(1)で表される化合物を強誘電性液晶組成物に添加することにより、強誘電性液晶組成物を液晶表示素子に用いた場合に、VT特性を変化させて、透過率を向上させることができる。
強誘電性液晶組成物を用いた液晶表示素子のVT特性は、例えば図4(a)、(b)に示されるように、横軸を電圧とし、縦軸を透過率としたときに、V字状の曲線(以下、V字曲線という)を描く。このV字曲線において正電圧+Vを印加した時の透過率T、および負電圧−Vを印加した時の透過率Tの平均値(T+T)/2から、液晶表示素子の透過率が求められる。具体的に図4(a)、(b)に示すVT特性について、図4(b)に示されるVT特性は、図4(a)に示されるVT特性と比較して、正電圧+Vを印加した時の透過率Tおよび負電圧−Vを印加した時の透過率Tの平均値(T+T)/2が大きくなる。したがって、VT特性を、図4(b)に例示するように、よりV字状に近いV字曲線へと変化させて、正電圧+Vを印加した時の透過率Tおよび負電圧−Vを印加した時の透過率Tの平均値(T+T)/2を大きくすることにより、液晶表示素子の透過率を向上させることができる。
本発明においては、上記式(1)で表される化合物を強誘電性液晶組成物に添加することにより、VT特性を、V字状により近いV字曲線へと変化させることができるので、液晶表示素子の透過率を向上させることができる。
なお、上記式(1)で表される化合物を強誘電性液晶組成物に添加することにより、上述のようにVT特性が変化する理由については明らかではないが、上記式(1)で表される化合物が、上記エステル結合部位で折れ曲がった形状を有していることが要因であると推量される。
また本発明において、上記式(1)で表される化合物は、エステル結合部位で折れ曲がった形状を有しているので、耐衝撃性を改善する上記式(2)で表されるキラル化合物Aおよび上記式(3)で表されるキラル化合物Bの少なくともいずれかのキラル化合物を含有する強誘電性液晶組成物の規則的過ぎる液晶相構造を緩和することができると考えられる。また、上記式(1)で表される化合物を強誘電性液晶組成物に添加すると、粘度は上記化合物の添加前と比べて同等もしくは低くなる傾向があり、大幅に高くなることはない。
したがって本発明においては、上記式(1)で表される化合物を含有することにより、本発明の強誘電性液晶組成物を液晶表示素子に用いた場合には、引っかき耐性を向上させることができると推量される。
なお、「引っかき耐性」とは、液晶配向が引っかきに耐える性能をいい、尖ったもので引っかいたときの液晶配向を評価するものである。具体的には、ペンを用いて液晶表示素子表面を引っかき、引っかき傷が消えるまでの時間を評価する。
さらに本発明において、上記式(1)で表される化合物は、末端鎖部のアルキル基の炭素数が所定の範囲内であるので、強誘電性液晶組成物に添加しても、液晶分子のチルト角が大幅に小さくなることがない。したがって、本発明の強誘電性液晶組成物を液晶表示素子に用いた場合には、十分な輝度を得ることができる。
以下、本発明の強誘電性液晶組成物における各成分について説明する。
1.上記式(1)で表される化合物
上記式(1)において、R31は、飽和もしくは不飽和のアルキル基であり、ハロゲン原子で置換されていてもよく、ケイ素原子を含んでいてもよい。
31において、炭素原子およびケイ素原子の数の合計は6〜14であればよいが、中でも6〜12が好ましい。炭素原子およびケイ素原子の数の合計が上記範囲よりも多いと、強誘電性液晶組成物がスメクチックB相等の結晶相に近い液晶相を発現しやすくなるおそれがある。スメクチックB相等の結晶相に近い液晶相が発現すると、相系列が複雑になり、液晶分子が配向しにくくなる。さらに、炭素原子およびケイ素原子の数の合計が上記範囲よりも多いと、上記式(1)で表される化合物の製造が難しくなるおそれがある。一方、炭素原子およびケイ素原子の数の合計が上記範囲よりも少ないと、強誘電性液晶組成物がスメクチック相を発現しないおそれがある。スメクチック相が発現しないと、液晶分子のチルト角が小さくなったり、透過率や液晶分子の配向に悪影響を及ぼしたり、強誘電性液晶組成物としてのカイラルスメクチックC相の温度範囲が狭くなったりする。炭素原子およびケイ素原子の数の合計が上記範囲内であることにより、強誘電性液晶組成物を液晶表示素子に用いた際に、液晶分子のチルト角をより大きくすることができる。
31において、アルキル基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。アルキル基がハロゲン原子で置換されている場合、強誘電性液晶組成物では、スメクチック液晶の相転移温度が広がるので、低温でも安定して液晶表示素子を駆動することが可能となる。
31において、アルキル基は、ケイ素原子を含んでいてもよい。アルキル基がケイ素原子を含む場合、上記の場合と同様に、強誘電性液晶組成物では、スメクチック液晶の相転移温度が広がるので、低温でも安定して液晶表示素子を駆動することが可能となる。
31において、アルキル基は、直鎖状または分岐状である。
上記式(1)において、R32は、飽和もしくは不飽和のアルキル基であり、ハロゲン原子で置換されていてもよく、ケイ素原子を含んでいてもよい。
なお、R32については、上記のR31と同様であるので、ここでの説明は省略する。
上記式(1)において、KおよびKは、それぞれ独立して単結合またはエーテル結合を表す。ただし、KおよびKは、少なくともいずれかがエーテル結合である。
およびKとしては、KおよびKのいずれかがエーテル結合であってもよく、KおよびKのいずれもがエーテル結合であってもよい。中でも、KおよびKのいずれもがエーテル結合であることが好ましい。KおよびKのいずれもがエーテル結合である場合には、液晶分子のチルト角を大きくし、かつVT特性を変化させて、よりV字状に近いV字曲線とすることができるため、結果として正電圧を印加した時の透過率および負電圧を印加した時の透過率の平均値を大きくすることができ、液晶表示素子の透過率を高めることができる。さらに、後述するようにZ、Z、ZおよびZのいずれもがフッ素原子でない場合、すなわちZ、Z、ZおよびZのいずれもが水素原子である場合には、KおよびKのいずれもがエーテル結合であることにより、スメクチック性が発現しやすくなる。
一方、KおよびKのいずれかがエーテル結合である場合には、KおよびKのいずれもがエーテル結合である場合と比較して、上記キラル化合物を含有する強誘電性液晶組成物の規則的過ぎる分子配列をより緩和することができ、引っかき耐性をさらに良くすることができる。KおよびKのいずれかがエーテル結合である場合、Kがエーテル結合であり、Kが単結合であってもよく、Kが単結合であり、Kがエーテル結合であってもよい。
上記式(1)において、Z、Z、ZおよびZは、それぞれ独立してフッ素原子または水素原子を表す。ただし、ZおよびZの少なくともいずれかがフッ素原子である場合、Z、Zは水素原子であり、ZおよびZの少なくともいずれかがフッ素原子である場合、Z、Zは水素原子である。
、Z、ZおよびZにおいて、ZおよびZの少なくともいずれか、あるいはZおよびZの少なくともいずれかがフッ素原子であってもよく、Z、Z、ZおよびZのいずれもがフッ素原子でなくてもよい。ZおよびZの少なくともいずれか、あるいはZおよびZの少なくともいずれかがフッ素原子である場合には、スメクチック性が発現しやすくなり、さらに液晶分子のチルト角をより大きくすることができる。また、Z、Z、ZおよびZのいずれもがフッ素原子でない場合、すなわちZ、Z、ZおよびZのいずれもが水素原子である場合には、強誘電性液晶組成物の複屈折をより小さくすることができる。
また、ZおよびZの少なくともいずれかがフッ素原子であり、ZおよびZのいずれもが水素原子であってもよく、ZおよびZのいずれもが水素原子であり、ZおよびZの少なくともいずれかがフッ素原子であってもよい。中でも、ZおよびZの少なくともいずれかがフッ素原子であり、ZおよびZのいずれもが水素原子であることが好ましい。ZおよびZの少なくともいずれかがフッ素原子であり、ZおよびZのいずれもが水素原子である場合には、強誘電性液晶組成物がスメクチック性を発現しやすくなる。
およびZの少なくともいずれかがフッ素原子である場合には、ZおよびZのいずれかがフッ素原子であってもよく、ZおよびZのいずれもがフッ素原子であってもよい。中でも、ZおよびZのいずれもがフッ素原子であることが好ましい。
なお、ZおよびZについては、上記ZおよびZと同様であるので、ここでの説明は省略する。
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、下記式(1−1)〜(1−3)で表される化合物を挙げることができる。
(上記式(1−1)〜(1−3)において、h、iは6〜14である。Z、Zは、それぞれ独立してフッ素原子または水素原子を表す。ただし、Z、Zの少なくともいずれかはフッ素原子である。)
本発明に用いられる上記式(1−1)で表される化合物は、末端鎖部C2h+1および末端鎖部C2i+1がエーテル結合によってコア部に連結され、コア部のベンゼン環にフッ素原子が置換されていない構造となっている。
上記式(1−1)で表される化合物は、上述のような構造をなすことにより、強誘電性液晶組成物の複屈折をより小さくすることができ、セルギャップの大きい液晶表示素子においても良好な白色表示を実現できる。
本発明に用いられる上記式(1−2)で表される化合物は、末端鎖部C2h+1および末端鎖部C2i+1がエーテル結合によってコア部に連結され、ZおよびZの少なくともいずれかがフッ素原子である構造となっている。
上記式(1−2)で表される化合物は、上述のような構造をなすことにより、液晶分子のチルト角をより大きくすることができ、上記式(1−2)で表される化合物を含有する強誘電性液晶組成物を液晶表示素子に用いた場合に十分な明るさを得ることができる。
上記式(1−3)で表される化合物は、末端鎖部C2h+1がエーテル結合によってコア部に連結され、末端鎖部C2i+1が単結合によってコア部に連結されており、ZおよびZの少なくともいずれかがフッ素原子である構造となっている。
上述のような構造をなす上記式(1−3)で表される化合物は、末端鎖部のいずれもがエーテル結合によってコア部に連結されている構造を有する化合物と比較して、上記キラル化合物を含有する強誘電性液晶組成物の規則的過ぎる分子配列をより緩和することができ、引っかき耐性をさらに良くすることができる。
上記式(1−1)〜(1−3)において、hおよびiは6〜14であり、好ましくは6〜12である。なお、hおよびiが上記範囲である好ましい理由については、上記式(1)におけるR31およびR32の場合と同様であるため、ここでの説明は省略する。
上記式(1−2)および(1−3)において、ZおよびZは、それぞれ独立してフッ素原子または水素原子を表す。ただし、ZおよびZの少なくともいずれかはフッ素原子である。
およびZとしては、ZおよびZのいずれかがフッ素原子であってもよく、ZおよびZのいずれもがフッ素原子であってもよいが、中でも、ZおよびZのいずれもがフッ素原子であることが好ましい。ZおよびZのいずれもがフッ素原子である場合、カイラルスメクチックC相を発現しやすくなり、上記化合物単体でのカイラルスメクチックC相の温度範囲が広がる。これにより、強誘電性液晶組成物が安定的にカイラルスメクチックC相を発現しやすくなり、強誘電性液晶組成物に含まれる他の成分の自由度が増す。また、カイラルスメクチックC相が安定的に発現することにより、液晶分子のチルト角が大きくなり、透過率を向上させることができる。
上記式(1−1)〜(1−3)で表される化合物の具体例としては、4−Heptyloxy−benzoic acid 4−hexyloxy−phenyl ester、4−Decyloxy−benzoic acid 4−decyloxy−phenyl ester、2,3−Difluoro−4−octyloxy−benzoic acid 4−octyloxy−phenyl ester、4−Decyloxy−2,3−difluoro−benzoic acid 4−octyloxy−phenyl ester、2,3−Difluoro−4−octyloxy−benzoic acid 4−decyloxy−phenyl ester、4−Decyloxy−2,3−difluoro−benzoic acid 4−decyloxy−phenyl ester、および2,3−Difluoro−4−octyloxy−benzoic acid 4−octyl−phenyl esterを挙げることができる。
上記式(1)で表される化合物としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記式(1)で表される化合物を2種以上混合して用いる場合、例えば、上記式(1−1)、(1−2)および(1−3)で表される化合物を混合して用いてもよい。上記式(1−1)、(1−2)および(1−3)で表される化合物を混合して用いる場合には、上記式(1−1)、(1−2)および(1−3)で表される各化合物が有する利点を全て兼ね備えた強誘電性液晶組成物とすることができる。すなわち、上記式(1−1)、(1−2)および(1−3)で表される化合物を混合して用いる場合には、上記式(1−1)で表される化合物が有する複屈折をより小さくすることができるという利点と、上記式(1−2)で表される化合物が有するチルト角をより大きくすることができるという利点と、上記式(1−3)で表される化合物が有する規則的過ぎる分子配列をより緩和することができるという利点と、を全て兼ね備えた強誘電性液晶組成物とすることができる。
強誘電性液晶組成物中の上記式(1)で表される化合物の含有量としては、本発明の効果が得られる程度であれば特に限定されるものではないが、強誘電性液晶組成物中にて5質量%〜60質量%の範囲内であることが好ましく、中でも10質量%〜50質量%の範囲内であることが好ましく、特に20質量%〜40質量%の範囲内であることが好ましい。上記式(1)で表される化合物の含有量が少ないと、強誘電性液晶組成物の複屈折の低減、液晶表示素子の透過率の向上、液晶表示素子の引っかき耐性の向上という効果が十分に得られない場合があり、また上記式(1)で表される化合物の含有量が多いと、結晶化しやすくなったり、駆動性能が劣化したりするおそれがあるからである。
2.キラル化合物
本発明の強誘電性液晶組成物は、下記一般式(2)で表されるキラル化合物Aおよび下記一般式(3)で表されるキラル化合物Bの少なくともいずれかのキラル化合物を含有するものである。
(上記式において、R1、Rは、非キラルな基であり、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数4〜18の飽和もしくは不飽和のアルキル基もしくはアルコキシアルキル基である。R、Rは、キラルな基であり、下記一般式(4)で表される基である。
(上記式において、Rは、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10の飽和もしくは不飽和のアルキル基もしくはアルコキシアルキル基である。Yは、−CHまたはフッ素原子を表す。mは0または1である。nは0または1である。*印はキラル中心を示す。)X〜X、X〜X20は、それぞれ独立して−CH、−CF、ハロゲン原子または水素原子を表す。ただし、X〜Xのうち1つ以上およびX〜X20のうち1つ以上は、それぞれ独立して−CH、−CFまたはハロゲン原子である。Kは、単結合またはシクロヘキサン環を表す。)
以下、キラル化合物Aおよびキラル化合物Bに分けて説明する。
(1)キラル化合物A
本発明に用いられるキラル化合物Aは、上記式(2)で表されるものである。
上記式(2)において、R1は、非キラルな基であり、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数4〜18の飽和もしくは不飽和のアルキル基もしくはアルコキシアルキル基である。
炭素数は4〜18であればよいが、中でも6〜18が好ましく、6〜12がさらに好ましい。炭素数が上記範囲よりも多いと、キラル化合物Aの合成が困難となり、コストが嵩むからである。一方、炭素数が上記範囲よりも少ないと、強誘電性液晶組成物がスメクチック相を発現しない場合があるからである。なお、アルキル基およびアルコシキアルキル基がハロゲン原子で置換されている場合には、炭素数が比較的少なくとも、強誘電性液晶組成物がスメクチック相を発現する場合がある。
アルキル基またはアルコシキアルキル基は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、ハロゲン原子で置換されていなくてもよいが、中でも、ハロゲン原子で置換されていないことが好ましい。
アルキル基またはアルコキシアルキル基は、直鎖状または分岐状である。
アルキル基またはアルコシキアルキル基は、飽和であっても不飽和であってもよいが、中でも飽和であることが好ましい。環状の不飽和アルカン以外の不飽和アルカンにおいては、不飽和アルカンは飽和アルカンに比べて反応性が高く、長期の保存・駆動や温度変化により材質が変化し、表示品質が劣化するおそれがあるからである。
1はアルキル基であってもアルコキシアルキル基であってもよいが、中でもアルキル基であることが好ましい。
上記式(2)において、Rは、1個以上のキラル中心をもつキラルな基であり、上記式(4)で表される基である。
上記式(4)において、Rは、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10の飽和もしくは不飽和のアルキル基もしくはアルコキシアルキル基である。
アルキル基またはアルコキシアルキル基は、直鎖状、分岐状または環状である。
はアルキル基であってもアルコキシアルキル基であってもよいが、中でもアルキル基であることが好ましい。
上記式(4)において、Yは、−CHまたはフッ素原子を表す。−CHの場合には、キラル化合物Aの合成が容易であるという利点を有する。一方、フッ素原子の場合、液晶分子の自発分極の大きさを大きくすることができ、応答速度を速くすることができるという利点もある。
は−CHであってもフッ素原子であってもよいが、中でも−CHであることが好ましい。上述したようにキラル化合物Aの合成が容易であり、安定してキラル化合物Aを製造することができ、強誘電性液晶組成物を安価に得ることができるからである。
上記式(4)において、mは0または1である。
また、上記式(4)において、*印はキラル中心を示す。m=0のとき、1位の炭素原子がキラル中心となり、m=1のとき、2位の炭素原子がキラル中心となる。
上記式(4)において、nは0または1である。
上記式(2)において、X〜Xは、それぞれ独立して−CH、−CF、ハロゲン原子または水素原子を表す。ただし、X〜Xのうち1つ以上は、それぞれ独立して−CH、−CFまたはハロゲン原子である。
〜Xのすべてが水素原子である場合には、キラル化合物Aの溶解性が低下するため、キラル化合物Aの合成、精製が困難になり、コストが高くなったり、また強誘電性液晶組成物が、分子配列の規則性がより高く、結晶相に近い分子の配列状態になりやすくなり、所望の耐衝撃性が得られなかったりするおそれがある。これに対し、本発明のようにX〜Xのうち1つ以上が−CH、−CFまたはハロゲン原子である場合には、キラル化合物Aの溶媒への溶解性が高くなり、大量合成、精製が可能になる。また、キラル化合物Aの立体構造に歪みが生じ、この歪みが規則的過ぎる分子配列を緩和するので、高い耐衝撃性を得ることができると考えられる。
中でも、X〜X、X〜Xのいずれか1つ以上が、それぞれ独立して−CH、−CFまたはハロゲン原子であることが好ましい。X〜X、X〜Xの位置に置換基を有する場合はX、Xの位置の場合よりもキラル化合物の溶解性が良いからである。これは、X、Xの位置の場合は他の位置の場合に比べて置換基による歪みが少ないためであると考えられる。
〜Xが結合している2個のベンゼン環のうち、置換基を有するベンゼン環は、1〜4個の置換基を有することができるが、中でも1個の置換基を有することが好ましい。すなわち、例えばX、X、X、Xが結合しているベンゼン環が置換基を有する場合には、X、X、X、Xのうちいずれか1つが、−CH、−CFまたはハロゲン原子であることが好ましい。またX、X、X、Xが結合しているベンゼン環が置換基を有する場合も上記の場合と同様である。
特に、X〜Xのうちいずれか1つのみが、−CH、−CFまたはハロゲン原子であることが好ましい。
また、ベンゼン環が有する置換基は、−CHまたは塩素原子であることが特に好ましい。
上記式(2)で表されるキラル化合物Aの具体例としては、下記一般式(2−1)および(2−2)で表されるキラル化合物Aが挙げられる。
(上記式(2−1)および(2−2)において、R11は炭素数1〜10の飽和または不飽和のアルキル基であり、*印はキラル中心を示し、mは0または1であり、pは4〜18であり、X21およびX22はそれぞれ独立して−CH、−CFまたはハロゲン原子を表し、jおよびkは一方が0、他方が1である。)
上記式(2−1)および(2−2)において、pは4〜18であり、好ましくは6〜18、より好ましくは6〜12である。上述したように、炭素数が上記範囲よりも多いと、キラル化合物Aの合成が困難となるからである。一方、炭素数が上記範囲よりも少ないと、強誘電性液晶組成物がスメクチック相を発現しない場合があるからである。
上記式(2−1)および(2−2)において、R11は炭素数1〜10の飽和または不飽和のアルキル基である。アルキル基は、直鎖状、分岐状または環状である。中でも、R11は、直鎖状もしくは分岐状の飽和のアルキル基、またはフェニルアルキル基であることが好ましい。
上記式(2−2)において、mは0または1である。
また、上記式(2−1)および(2−2)において、*印はキラル中心を示す。上記式(2−1)では、1位の炭素原子がキラル中心となる。上記式(2−2)では、m=0のとき、1位の炭素原子がキラル中心となり、m=1のとき、2位の炭素原子がキラル中心となる。
上記式(2−1)および(2−2)において、X21およびX22は、それぞれ独立して−CH、−CFまたはハロゲン原子を表す。中でも、−CHまたは塩素原子が好ましい。
21およびX22の位置としては、上述のX〜Xの位置と同様である。
また、上記式(2−1)および(2−2)において、jおよびkは、一方が0、他方が1である。
上記式(2−1)および(2−2)で表されるキラル化合物Aの具体例としては、表1に示すキラル化合物Aを挙げることができる。なお、表1において、右旋性を(+)、左旋性を(−)で示す。
このようなキラル化合物Aとしては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
キラル化合物Aは、例えば、国際公開第2010/031431号パンフレットに記載の方法により合成することができる。
(2)キラル化合物B
本発明に用いられるキラル化合物Bは、上記式(3)で表されるものである。
上記式(3)において、Kは、単結合またはシクロヘキサン環を表す。Kが単結合である場合、下記一般式(3−1)で表されるように、キラル化合物Bは4個のベンゼン環が直接結合されたものとなる。Kがシクロヘキサン環である場合、下記一般式(3−2)で表されるように、キラル化合物Bは4個のベンゼン環と1個のシクロヘキサン環とが直接結合されたものとなる。中でも、Kは単結合であることが好ましい。
(上記式(3−1)および(3−2)において、R、R、X〜X20は、上記式(3)と同様である。)
上記式(3)において、Rは、非キラルな基であり、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数4〜18の飽和もしくは不飽和のアルキル基もしくはアルコキシアルキル基である。なお、Rについては、上記式(2)におけるRと同様であるため、ここでの説明は省略する。
上記式(3)において、Rは、1個以上のキラル中心をもつキラルな基であり、上記式(4)で表される基である。なお、上記式(4)で表される基については、上記キラル化合物Aの場合と同様であるため、ここでの説明は省略する。
上記式(3)において、X〜X20は、それぞれ独立して−CH、−CF、ハロゲン原子または水素原子を表す。ただし、X〜X20のうち1つ以上は、それぞれ独立して−CH、−CFまたはハロゲン原子である。なお、X〜X20のうち1つ以上が−CH、−CFまたはハロゲン原子である理由については、上記式(2)におけるX〜Xの場合と同様であるので、ここでの説明は省略する。
中でも、X〜X13、X15〜X19のいずれか1つ以上が、それぞれ独立して−CH、−CFまたはハロゲン原子であることが好ましい。X〜X13、X15〜X19の位置に置換基を有する場合はX14、X20の位置の場合よりもキラル化合物の溶解性が良いからである。これは、X14、X20の位置の場合は他の位置の場合に比べて置換基による歪みが少ないためであると考えられる。
〜X20が結合している3個のベンゼン環のうち、置換基を有するベンゼン環は、1〜4個の置換基を有することができるが、中でも1個の置換基を有することが好ましい。すなわち、例えばX、X10、X15、X16が結合しているベンゼン環が置換基を有する場合には、X、X10、X15、X16のうちいずれか1つが、−CH、−CFまたはハロゲン原子であることが好ましい。またX11、X12、X17、X18が結合しているベンゼン環が置換基を有する場合やX13、X14、X19、X20が結合しているベンゼン環が置換基を有する場合も上記の場合と同様である。
特に、X〜X20が結合している3個のベンゼン環のうち、1個または2個のベンゼン環がそれぞれ1個の置換基を有することが好ましい。
また、ベンゼン環が有する置換基は、−CHまたは塩素原子であることが特に好ましい。
上記式(3)で表されるキラル化合物Bの具体例としては、下記一般式(3−3)〜(3−6)で表されるキラル化合物Bが挙げられる。
(上記式(3−3)〜(3−6)において、R12は炭素数1〜10の飽和または不飽和のアルキル基であり、*印はキラル中心を示し、mは0または1であり、vは4〜18であり、X31〜X33はそれぞれ独立して−CH、−CFまたはハロゲン原子を表し、r、sおよびtはいずれか1つまたは2つが1、残りが0である。)
上記式(3−3)〜(3−6)において、vは4〜18であり、好ましくは6〜18、より好ましくは6〜12である。上述したように、炭素数が上記範囲よりも多いと、キラル化合物Bの合成が困難となるからである。一方、炭素数が上記範囲よりも少ないと、強誘電性液晶組成物がスメクチック相を発現しない場合があるからである。
上記式(3−3)〜(3−6)において、R12は炭素数1〜10の飽和または不飽和のアルキル基である。アルキル基は、直鎖状、分岐状または環状である。中でも、R12は、直鎖状もしくは分岐状の飽和のアルキル基、またはフェニルアルキル基であることが好ましい。
上記式(3−4)、(3−6)において、mは0または1である。
また、上記式(3−3)〜(3−6)において、*印はキラル中心を示す。上記式(3−3)、(3−5)では、1位の炭素原子がキラル中心となる。上記式(3−4)、(3−6)では、m=0のとき、1位の炭素原子がキラル中心となり、m=1のとき、2位の炭素原子がキラル中心となる。
上記式(3−3)〜(3−6)において、X31〜X33は、それぞれ独立して−CH、−CFまたはハロゲン原子を表す。中でも、−CHまたは塩素原子が好ましい。
31〜X33の位置としては、上述のX〜X20の位置と同様である。
上記式(3−3)〜(3−6)において、r、sおよびtはいずれか1つまたは2つが1、残りが0である。
上記式(3−3)〜(3−6)で表されるキラル化合物Bの具体例としては、表2に示すキラル化合物Bを挙げることができる。なお、表2において、右旋性を(+)、左旋性を(−)で示す。
上記式(3−3)〜(3−6)で表されるキラル化合物Bのうち、中でも、上記式(3−3)および(3−5)で表されるキラル化合物Bが好ましい。
このようなキラル化合物Bとしては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
例えば、強誘電性液晶組成物が、上記式(3−1)で表されるキラル化合物Bと上記式(3−2)で表されるキラル化合物Bとを含有していてもよい。
キラル化合物Bは、例えば、国際公開第2010/031431号パンフレットに記載の方法により合成することができる。
(3)キラル化合物Aおよびキラル化合物B
本発明の強誘電性液晶組成物は、キラル化合物Aおよびキラル化合物Bの少なくともいずれかを含有する。本発明においては、キラル化合物Aのみを含有していてもよく、キラル化合物Bのみを含有していてもよく、キラル化合物Aおよびキラル化合物Bを含有していてもよい。また、強誘電性液晶組成物がキラル化合物Aを含有する場合、1種類のキラル化合物Aを含有していてもよく、2種類以上のキラル化合物Aを含有していてもよい。同様に、強誘電性液晶組成物がキラル化合物Bを含有する場合、1種類のキラル化合物Bを含有していてもよく、2種類以上のキラル化合物Bを含有していてもよい。
中でも、本発明の強誘電性液晶組成物は、キラル化合物Aを少なくとも含有することが好ましい。キラル化合物Aは、3個のベンゼン環および1個のシクロヘキサン環が直接結合されたものである。ベンゼン環は平面的な構造をとるのに対して、シクロヘキサン環は立体的な構造をとるため規則的過ぎる分子配列を緩和するものと推量される。強誘電性液晶組成物が、分子配列の規則性がより高く、結晶相に近い分子の配列状態になりやすいものであると、衝撃が加わって液晶分子が移動したときに元の状態に戻りにくくなり、耐衝撃性が劣ってしまう。そのため、強誘電性液晶組成物がシクロヘキサン環を含むキラル化合物Aを含有する場合には、規則的過ぎる分子配列が緩和され、耐衝撃性を高めることができる。
また、本発明の強誘電性液晶組成物は、上記式(3−2)で表される4個のベンゼン環および1個のシクロヘキサン環が直接結合されたキラル化合物Bを少なくとも含有することも好ましい。上述のように、強誘電性液晶組成物がシクロヘキサン環を含むキラル化合物B2を含有する場合には、規則的過ぎる分子配列が緩和され、耐衝撃性を高めることができる。
特に、本発明の強誘電性液晶組成物は、キラル化合物Aとキラル化合物Bとを含有することが好ましい。また、本発明の強誘電性液晶組成物は、上記式(3−1)で表される4個のベンゼン環が直接結合されたキラル化合物B1と上記式(3−2)で表される4個のベンゼン環および1個のシクロヘキサン環が直接結合されたキラル化合物B2とを含有することも好ましい。このような2種類のキラル化合物が含有されていることにより、耐衝撃性を効果的に向上させることができるからである。
本発明の強誘電性液晶組成物がキラル化合物Aのみを含有する場合、強誘電性液晶組成物中のキラル化合物Aの含有量としては、耐衝撃性の効果が得られる程度であれば特に限定されるものではない。上記キラル化合物Aを1種単独で用いる場合にはそのキラル化合物Aの含有量が、上記キラル化合物Aを2種以上混合する場合には2種以上のキラル化合物Aの各含有量が、強誘電性液晶組成物中にて5質量%以上であることが好ましい。中でも、上記キラル化合物Aを1種単独で用いる場合にはそのキラル化合物Aの含有量が、上記キラル化合物Aを2種以上混合する場合には2種以上のキラル化合物Aの合計含有量が、強誘電性液晶組成物中で5質量%〜35質量%の範囲内であることが好ましく、15質量%〜30質量%の範囲内であることがより好ましい。キラル化合物Aの含有量が上記範囲よりも少ないと、所望の耐衝撃性が得られない場合があり、一方、キラル化合物Aの含有量が上記範囲よりも多いと、強誘電性液晶組成物が、粘度が高くなったり、結晶化しやすくなったりして、十分な耐衝撃性が得られない場合があり、また液晶表示素子を作製する際に液晶層の形成が困難となる場合があるからである。
本発明の強誘電性液晶組成物がキラル化合物Bのみを含有する場合、強誘電性液晶組成物中のキラル化合物Bの含有量としては、耐衝撃性の効果が得られる程度であれば特に限定されるものではなく、上記キラル化合物Aの含有量と同様である。
また、本発明の強誘電性液晶組成物がキラル化合物Bのみを含有する場合であって、上記式(3−1)で表される4個のベンゼン環が直接結合されたキラル化合物B1と上記式(3−2)で表される4個のベンゼン環および1個のシクロヘキサン環が直接結合されたキラル化合物B2とを含有する場合、強誘電性液晶組成物中のキラル化合物B1の含有量は、キラル化合物B2の含有量以上であることが好ましい。キラル化合物B2はキラル化合物B1と比較して、電圧を印加したときの液晶分子のチルト角を小さくする傾向があるので、キラル化合物B1に比べてキラル化合物B2の含有量を多くすると、液晶分子のチルト角が小さくなり、明るさが十分得られないおそれがある。これに対し、キラル化合物B1がキラル化合物B2に比べて多く含有されていることにより、液晶分子のチルト角を大きくすることができ、駆動性能を向上させることができる。
本発明の強誘電性液晶組成物がキラル化合物Aおよびキラル化合物Bを含有する場合、強誘電性液晶組成物中のキラル化合物Aおよびキラル化合物Bの合計含有量としては、耐衝撃性の効果が得られる程度であれば特に限定されるものではなく、上記キラル化合物Aの含有量と同様である。
また、本発明の強誘電性液晶組成物がキラル化合物Aおよびキラル化合物Bを含有する場合、強誘電性液晶組成物中のキラル化合物Bの含有量は、キラル化合物Aの含有量以上であることが好ましい。なお、好ましい理由については、上述のキラル化合物B1およびキラル化合物B2の含有量の場合と同様である。
3.ホスト液晶
本発明の強誘電性液晶組成物は、ホスト液晶をさらに含有していてもよい。
ホスト液晶としては、強誘電性液晶組成物のホスト液晶として一般的に用いられるものを使用することができ、例えば、フェニルピリミジン化合物を挙げることができる。
ここで、フェニルピリミジン化合物はコア部にベンゼン環およびピリミジン環の芳香環を少なくとも2個有するので複屈折が大きくなりやすいが、本発明においては上記式(1)で表される化合物が添加されていることによって強誘電性液晶組成物の複屈折を小さくすることができる。
ホスト液晶は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
強誘電性液晶組成物中のホスト液晶の含有量としては、上記式(1)で表される化合物およびキラル化合物の含有量を上記範囲とすることができれば特に限定されるものではない。
4.強誘電性液晶組成物
本発明の強誘電性液晶組成物としては、カイラルスメクチックC(SmC)相を発現するものであれば特に限定されるものではない。強誘電性液晶組成物の相系列としては、例えば、降温過程においてネマチック(N)相−コレステリック(Ch)相−SmC相と相変化するもの、N相−SmC相と相変化するもの、N相−スメクチックA(SmA)相−SmC相と相変化するもの、N相−Ch相−SmA相−SmC相と相変化するもの、などを挙げることができる。
また、本発明の強誘電性液晶組成物としては、双安定性を示すものおよび単安定性を示すもののいずれも用いることができる。中でも、単安定性を示す強誘電性液晶組成物が好ましい。単安定性を示す強誘電性液晶組成物を用いた場合には、電圧変化により液晶のダイレクタ(分子軸の傾き)を連続的に変化させ、透過光度をアナログ変調することで、階調表示が可能となるからである。単安定性を示す強誘電性液晶組成物を用いることにより、TFTを用いたアクティブマトリックス方式による駆動が可能になり、また、電圧変調により階調制御が可能になり、高精細で高品位の表示を実現することができるからである。
なお、「単安定性を示す」とは、電圧無印加時の液晶分子の状態がひとつの状態で安定化している状態をいう。強誘電性液晶組成物は、図1に例示するように、液晶分子25が層法線zから傾いており、層法線zに垂直な底面を有する円錐(コーン)の稜線に沿って回転する。このような円錐(コーン)において、液晶分子25の層法線zに対する傾き角をチルト角θという。このように、液晶分子25は層法線zに対しチルト角±θだけ傾く二つの状態間をコーン上に動作することができる。具体的に説明すると、単安定性を示すとは、電圧無印加時に液晶分子25がコーン上のいずれかひとつの状態で安定化している状態をいう。
このような本発明の強誘電性液晶組成物としては、一般に知られる液晶材料の中から要求特性に応じて種々選択することができる。特に、SmA相を経由してSmC相を発現する強誘電性液晶組成物は、よりV字状に近いV字曲線が得られやすいことから好ましい。
B.液晶表示素子
本発明の液晶表示素子は、第1基材、上記第1基材上に形成された第1電極層、および、上記第1電極層上に形成された第1配向膜を有する第1配向処理基板と、第2基材、上記第2基材上に形成された第2電極層、および、上記第2電極層上に形成された第2配向膜を有する第2配向処理基板と、上記第1配向膜および上記第2配向膜の間に形成され、上述の強誘電性液晶組成物を含む液晶層とを有することを特徴とするものである。
本発明の液晶表示素子について図面を参照しながら説明する。
図2は、本発明の液晶表示素子の一例を示す断面図である。図2に例示するように、液晶表示素子1は、第1基材2a、上記第1基材2a上に形成された第1電極層3a、および、上記第1電極層3a上に形成された第1配向膜4aを有する第1配向処理基板11aと、第2基材2b、第2基材2b上に形成された第2電極層3b、および、上記第2電極層3b上に形成された第2配向膜4bを有する第2配向処理基板11bと、上記第1配向膜4aおよび第2配向膜4bの間に形成された液晶層5とを有しており、上記液晶層5が上記強誘電性液晶組成物を含んでいる。
本発明においては、上記強誘電性液晶組成物を用いるので、複屈折を小さくすることができ、セルギャップが比較的大きくとも色ずれの発生を抑制し良好な白色表示を得ることが可能であり、歩留りを向上させることが可能となる。また、上記強誘電性液晶組成物を用いることにより、VT特性を変化させて透過率を向上させ、明るさを増大させることができる。さらには、引っかき耐性をも向上させることができる。
以下、本発明の液晶表示素子における各構成について説明する。
1.液晶層
本発明における液晶層は、第1配向処理基板の第1配向膜および第2配向処理基板の第2配向膜の間に形成され、上記強誘電性液晶組成物を含むものである。
なお、強誘電性液晶組成物については、上記の「A.強誘電性液晶組成物」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
液晶層の厚みは、2.0μm〜10.0μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは2.3μm〜5.0μmの範囲内、さらに好ましくは2.5μm〜3.5μmの範囲内である。液晶層の厚みが薄すぎると製造時の異物の混入により欠陥が目立ちやすくなるおそれがあり、逆に液晶層の厚みが厚すぎると液晶分子が配向しにくくなりコントラストが低下する可能性があるからである。液晶層の厚みは、ビーズスペーサ、柱状スペーサ、隔壁等により調整することができる。
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば真空注入方式、液晶滴下方式等を用いることができる。
強誘電性液晶組成物を配向させる際には、徐冷すればよく、液晶層に電圧を印加する必要はない。
2.第1配向処理基板
本発明に用いられる第1配向処理基板は、第1基材と、第1基材上に形成された第1電極層と、第1電極層上に形成された第1配向膜とを有するものである。
以下、第1配向処理基板における各構成について説明する。
(1)第1配向膜
本発明に用いられる第1配向膜は、強誘電性液晶組成物の配向制御が可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光配向膜、ラビング配向膜、斜方蒸着配向膜等が挙げられる。以下、これらの配向膜について説明する。
(a)光配向膜
光配向膜の形成に利用される光励起反応としては、大きく、光反応と光異性化反応とに分けることができる。また、光反応としては、光二量化反応と光分解反応とを挙げることができる。
光配向膜の材料、形成方法および厚みとしては、一般的なものを適用することができ、例えば、特開2006−350322号公報、特開2006−323214号公報、特開2005−258429号公報、特開2005−258428号公報等に記載のものを用いることができる。
(b)ラビング配向膜
ラビング配向膜の材料、形成方法および厚みとしては、一般的なものを適用することができる。
(c)第1配向膜および第2配向膜の構成材料の組成
本発明においては、第1配向膜および第2配向膜の構成材料が液晶層を挟んで互いに異なる組成を有することが好ましい。第1配向膜および第2配向膜を互いに異なる組成を有する材料を用いて形成することにより、それぞれの材料に応じて第1配向膜表面および第2配向膜表面の極性を異ならせることができる。これにより、強誘電性液晶組成物および第1配向膜の極性表面相互作用と、強誘電性液晶組成物および第2配向膜の極性表面相互作用とが異なるものとなるため、第1配向膜および第2配向膜の表面極性を考慮して材料を適宜選択することによって、ジグザグ欠陥、ヘアピン欠陥、電圧無印加時の液晶分子の安定状態が異なる2種類のドメイン等の配向欠陥の発生を抑制することができるからである。その結果、コントラストを向上させることができる。
第1配向膜および第2配向膜の構成材料を液晶層を挟んで互いに異なる組成を有するものとするには、例えば、一方を光配向膜とし、他方をラビング配向膜とすればよい。
また例えば、両方をラビング配向膜として、ラビング配向膜の構成材料の組成を異なるものとする;両方を光配向膜として、光配向膜の構成材料の組成を異なるものとすればよい。
第1配向膜および第2配向膜がラビング配向膜である場合、骨格、置換基、側鎖を変えたり、添加剤の添加量を変えたりすることや、添加剤の有無によって、組成を変化させることもできる。
また、第1配向膜および第2配向膜が光配向膜である場合、例えば一方の光配向膜に光異性化型材料を用い、他方の光配向膜に光反応型材料を用いることにより、光配向膜の構成材料の組成を異なるものとすることができる。
さらに、第1配向膜および第2配向膜が光異性化型材料を用いた光配向膜である場合、異性化反応性骨格、置換基、側鎖等を変えたり、単分子化合物および重合性モノマーをそれぞれ用いたり、添加剤の添加量を変えたりすることや、添加剤の有無によって、組成を変化させることもできる。
またさらに、第1配向膜および第2配向膜が光二量化型材料を用いた光配向膜である場合、二量化反応部位、置換基、側鎖等を変えたり、添加剤の添加量を変えたりすることや、添加剤の有無によって、組成を変化させることもできる。
(2)第1電極層
本発明に用いられる第1電極層は、一般に液晶表示素子の電極として用いられているものであれば特に限定されるものではない。
(3)第1基材
本発明に用いられる第1基材は、一般に液晶表示素子の基材として用いられるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ガラス板、プラスチック板などが好ましく挙げられる。
(4)その他の構成
本発明においては、第1基材上または第2基材上に隔壁または柱状スペーサが形成されていてもよい。隔壁および柱状スペーサとしては、一般的な隔壁および柱状スペーサを適用することができる。
また、本発明においては、第1基材上または第2基材上に着色層が形成されていてもよい。着色層が形成されている場合には、着色層によってカラー表示を実現することができるカラーフィルタ方式の液晶表示素子を得ることができる。着色層としては、一般的なものを適用することができる。
3.第2配向処理基板
本発明に用いられる第2配向処理基板は、第2基材と、第2基材上に形成された第2電極層と、第2電極層上に形成された第2配向膜とを有するものである。
なお、第2基材、第2電極層、第2配向膜およびその他の構成については、上記第1配向処理基板における第1基材、第1電極層、第1配向膜およびその他の構成とそれぞれ同様であるので、ここでの説明は省略する。
4.液晶表示素子の駆動方法
本発明の液晶表示素子の駆動方法としては、強誘電性液晶組成物の高速応答性を利用することができるので、1画素を時間分割し、良好な動画表示特性を得るために高速応答性を特に必要とするフィールドシーケンシャルカラー方式にも好適に用いることができる。
また、本発明の液晶表示素子の駆動方法は、フィールドシーケンシャル方式に限定されるものではなく、着色層を用いてカラー表示を行う、カラーフィルタ方式であってもよい。
本発明の液晶表示素子の駆動方法としては、薄膜トランジスタ(TFT)を用いたアクティブマトリックス方式が好ましい。TFTを用いたアクティブマトリックス方式を採用することにより、目的の画素を確実に点灯、消灯できるため高品質なディスプレイが可能となるからである。
また、本発明の液晶表示素子の駆動方法は、セグメント方式であってもよい。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
(強誘電性液晶組成物)
下記に示す化合物のa〜g、および下記表3に示すキラル化合物を用い、下記表4に示すように強誘電性液晶組成物を準備した。
a. 4−Heptyloxy−benzoic acid 4−hexyloxy−phenyl ester
b. 4−Decyloxy−benzoic acid 4−decyloxy−phenyl ester
c. 2,3−Difluoro−4−octyloxy−benzoic acid 4−octyloxy−phenyl ester
d. 4−Decyloxy−2,3−difluoro−benzoic acid 4−octyloxy−phenyl ester
e. 2,3−Difluoro−4−octyloxy−benzoic acid 4−decyloxy−phenyl ester
f. 4−Decyloxy−2,3−difluoro−benzoic acid 4−decyloxy−phenyl ester
g. 2,3−Difluoro−4−octyloxy−benzoic acid 4−octyl−phenyl ester
(液晶表示素子の作製)
まず、ITOコーティングされたガラス基板1上にΦ5.0μmの円状で、高さ2.5μmの樹脂スペーサを0.1mmピッチで形成した。次いで、その上にラビング配向膜材料(SE610:日産化学工業株式会社)を回転数1500rpmで30秒間スピンコーティングした。その後、オーブンで180℃、30分間乾燥後、ラビング処理を行った。
また、ITOコーティングされたガラス基板2上に光異性化型の光配向膜材料(LIA012:DIC株式会社)の溶液を1500rpmで30秒間スピンコーティングした。その後、オーブンで100℃、3分間乾燥後、偏光露光機で2J偏光露光処理を行った。
次に、基板上に四角い枠状にシール材を塗布した。その基板上に、上述の強誘電性液晶組成物を点状に塗布し、二つの基板をラビング処理の方向と偏光処理の方向が垂直になるように組み立て熱圧着を行った。その後、液晶セルを冷却し、強誘電性液晶組成物を配向させた。液晶層の厚みは2.5μmであった。
(評価)
1.色度
液晶表示素子の複屈折は、ラムダビジョン社の顕微分光システムTFCAM−7000をオリンパス社の偏光顕微鏡BX51に設置し、色度を測定することにて評価を行った。まず、偏光顕微鏡における2枚の偏光板をパラレルの状態に設定し、強誘電性液晶組成物が充填されていない空セルについて色度を測定し、標準光源を測定した。その後、偏光顕微鏡における2枚の偏光板をクロスニコルの状態に設定し、強誘電性液晶組成物が充填された液晶セルを透過光量が一番多くなる位置まで回転させた。その状態で色度を測定した。
2.チルト角
液晶分子の動いた角度は、偏光顕微鏡にて測定した。クロスニコルの状態に設定した2枚の偏光板の間に、強誘電性液晶組成物が充填された液晶セルを置き、電圧無印加状態の黒表示の位置を基準とし、正電圧(+5V)および負電圧(−5V)印加時に動いた液晶分子の角度を測定した。
3.透過率
液晶表示素子の透過率を測定した。
なお透過率は、チルト角より算出しており、チルト角が45度のときの透過率を100%とした場合の値である。また、この値は正電圧(+5V)印加時の透過率および負電圧(−5V)印加時の透過率の平均値である。
4.引っかき耐性
得られた液晶表示素子について、引っかき試験を行った。
引っかき試験は、3インチの液晶表示素子をペンで引っかき、引っかき傷が消える時間(秒)を測定した。
5.応答速度
応答速度については、波形発生装置で±2.5V、60Hzの矩形波を入れた際の液晶表示素子の透過光量の振幅を100%とし、振幅が10%に達した点を変化の開始点、振幅が90%に達した点を変化の終了点とした時、その開始点から終了点までの時間を「応答速度」と規定し、測定した。
これらの評価結果を表5に示す。また図3に実施例1〜7(化合物a〜g)および比較例1(base)の色度図を示す。
表5および図3に示すように、本発明における化合物a〜gが添加された強誘電性液晶組成物を用いた液晶表示素子は、上記化合物a〜gが添加されていない液晶表示素子に比べて複屈折を小さくし、白色に近づけることができた。中でも、Z〜Zのいずれもが水素原子である化合物aおよびbを用いた実施例1および実施例2が有効であった。
表5に示すように、本発明における化合物a〜gを添加することで、負電圧(−5V)印加時の透過率を高め、VT特性を示すV字曲線をよりV字状に近づけることができた。また、本発明における化合物a〜gが添加された強誘電性液晶組成物を用いることで、正電圧(+5V)印加時の透過率および負電圧(−5V)印加時の透過率の平均値を大きくすることができ、液晶表示素子の透過率を高めることができた。中でも、上記式(1)におけるZおよびZのいずれもがフッ素原子であり、KおよびKのいずれもがエーテル結合である化合物c〜fを用いた実施例3〜実施例6および実施例8〜12が有効であった。
表5に示すように、本発明における化合物a〜gが添加された強誘電性液晶組成物を用いることで、上記化合物a〜gが添加されていない液晶表示素子に比べて引っかき耐性に優れた液晶表示素子とすることができた。
また、本発明における化合物a〜gが添加された強誘電性液晶組成物を用いた液晶表示素子では、チルト角を大きくすることができ、中でも、上記式(1)におけるZおよびZのいずれもがフッ素原子であり、KおよびKのいずれもがエーテル結合である化合物c〜fを用いた実施例3〜6および実施例8〜12が有効であった。
さらに、本発明における化合物a〜gが添加された強誘電性液晶組成物を用いた液晶表示素子は、上記化合物a〜gが添加されていない液晶表示素子と応答速度が同程度であり、高速応答性を有していた。
1 … 液晶表示素子
2a … 第1基材
2b … 第2基材
3a … 第1電極層
3b … 第2電極層
4a … 第1配向膜
4b … 第2配向膜
5 … 液晶層
11a … 第1配向処理基板
11b … 第2配向処理基板
25 … 液晶分子
z … 層法線

Claims (2)

  1. 下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表されるキラル化合物Aおよび下記一般式(3)で表されるキラル化合物Bの少なくともいずれかのキラル化合物とを含有することを特徴とする強誘電性液晶組成物。
    (上記式(1)において、R31およびR32はそれぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよく、ケイ素原子を含んでいてもよい、炭素原子およびケイ素原子の数の合計が6〜14の飽和もしくは不飽和のアルキル基である。
    、Kは、それぞれ独立して単結合またはエーテル結合を表す。ただし、K、Kは、少なくともいずれかがエーテル結合である。
    、Z、Z、Zは、それぞれ独立してフッ素原子または水素原子を表す。ただし、ZおよびZの少なくともいずれかがフッ素原子である場合、Z、Zは水素原子であり、ZおよびZの少なくともいずれかがフッ素原子である場合、Z、Zは水素原子である。)
    (上記式において、R1、Rは、非キラルな基であり、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数4〜18の飽和もしくは不飽和のアルキル基もしくはアルコキシアルキル基である。R、Rは、キラルな基であり、下記一般式(4)で表される基である。
    (上記式において、Rは、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10の飽和もしくは不飽和のアルキル基もしくはアルコキシアルキル基である。Yは、−CHまたはフッ素原子を表す。mは0または1である。nは0または1である。*印はキラル中心を示す。)X〜X、X〜X20は、それぞれ独立して−CH、−CF、ハロゲン原子または水素原子を表す。ただし、X〜Xのうち1つ以上およびX〜X20のうち1つ以上は、それぞれ独立して−CH、−CFまたはハロゲン原子である。Kは、単結合またはシクロヘキサン環を表す。)
  2. 第1基材、前記第1基材上に形成された第1電極層、および、前記第1電極層上に形成された第1配向膜を有する第1配向処理基板と、
    第2基材、前記第2基材上に形成された第2電極層、および、前記第2電極層上に形成された第2配向膜を有する第2配向処理基板と、
    前記第1配向膜および前記第2配向膜の間に形成され、請求項1に記載の強誘電性液晶組成物を含む液晶層と
    を有することを特徴とする液晶表示素子。
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