JP2013215097A - メラミン類の分解方法及びメラミン類分解微生物 - Google Patents

メラミン類の分解方法及びメラミン類分解微生物 Download PDF

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Abstract

【課題】複雑な培養制御を要しないメラミン類の分解方法及びメラミン分解微生物の提供。
【解決手段】以下の(1)及び(2)から選択される1種又は2種を含む、メラミン類分解剤。(1)以下の菌学的性質及び分類学的性質を有するリゾビウム属菌(菌学的性質)好気的条件下でメラミン類を分解する。(形態学的性質)(使用培地:LB培地、37℃、48時間)細胞形態:桿菌コロニー色調:淡黄色(生理学的性質)グラム染色:−(分類学的性質)特定の塩基配列からなるDNA16SrDNA遺伝子を有する。(2)以下の菌学的性質及び分類学的性質を有するロドコッカス属菌(菌学的性質)好気的条件下でメラミン類を分解する。(形態学的性質)(使用培地:LB培地、37℃、48時間)細胞形態:桿菌コロニー色調:淡いオレンジ色(生理学的性質)グラム染色:+(分類学的性質)他の特定の塩基配列を有するDNAを含む16SrDNA遺伝子を有する。
【選択図】なし

Description

本明細書の開示は、メラミン類の分解方法及びメラミン類分解微生物等に関する。
塗料工場や塗装工程を有する工場から排出される廃水には、親水性有機化合物が多く含まれている。廃水は一般に活性汚泥によって処理されるが、廃水中には難分解性物質も含まれており、こうした難分解性物質は分解されずに排出されてしまう可能性がある。例えば、塗料中に架橋剤として含まれるメラミン樹脂も難分解性物質の一つである。メラミン樹脂は、トリアジン環を有するメラミン類の一種であるメラミンをメチロ-ル化して重縮合して得られる重合体である。メラミン類が完全分解されれば、CO2とNH4となる。
廃水中のメラミン樹脂を分解するために、種々のメラミン類の分解微生物あるいは微生物群が探索されてきている。例えば、活性汚泥によると、1000〜7500ppmのメラミン溶液を嫌気性条件下、pH9付近、30〜37℃という条件で、1日で87%以上の分解率で可能であることが開示されている(特許文献1)。
また、塗料製造工場の廃水処理施設から採取したスラッジから単離したメラミン分解性微生物(4種の菌株を含む菌ペースト)をメラミン含有培地(メラミン100mg/l)で培養したところ、49日で培地中のメラミンを100%分解できたことが記載されている(特許文献2)。
水田土壌より単離したメラミン分解性微生物を公知のベータプロテオバクテリアCDB21やブラディルゾビジウムジャポニカムCSB1と組み合わせて用いて、メラミン含有培地(メラミン濃度5mg/L)を30℃で210rpm、暗所で培養を行うことにより、メラミンの分解実験を行ったことが記載されている(特許文献3)。この文献によれば、メラミン分解性微生物と公知の微生物とを組み合わせることにより、初めて、完全にメラミンを分解できたことが開示されている。
また、種々の環境から採取したトリアジン環化合物を分解する微生物群を単離し、メラミン分解性評価を行ったところ、100ppmメラミン溶液を、1日で20%、2日で70%の分解性を示したことも記載されている(非特許文献1)。
特開昭54−163892号公報 特開2007−282631号公報 特開2010−130965号公報
塗料の研究、No.149,p2-p7, 2008年3月
しかしながら、これまで単離されたメラミン分解性微生物は、必ずしも十分なメラミン分解性を発揮する物ではなかった。文献に開示されるのは、いずれも、複合的な微生物群による複合的なメラミン系化合物の分解処理である。こうした微生物群による分解処理は、安定した菌組成を常時得ることが困難であるほか、個々に分解性能の異なる微生物を良好に機能させるための制御が困難であり、安定してメラミン系化合物を分解するのは困難であった。また、分解速度も十分でなかった。また、できるだけ低エネルギーコスト(例えば、処理時間の短時間化や省エネルギー化)で廃水処理を行うことも望まれている。
そこで、本発明では、メラミン類を複雑な培養制御を要することなくメラミン類を効率的に分解できる微生物及び効率的な廃水処理方法を提供することを一つの目的とする。
本発明者らは、メラミン類を含む廃水処理の現状を鑑み、より現実的でかつ効率的にメラミン類を分解する方法を検討した。その結果、様々な分解処理条件が想定されるなか、特定の分解処理条件を実現できれば、効率的にメラミン類を分解できるという推論を構築した。そこで、当該推論に基づき、当該分解処理条件下で優れたメラミン類分解能を発揮する微生物を取得することができた。さらに、当該分解処理条件を取得した微生物により実施することで、分解処理条件を探索し、種々の環境から、当該分解処理条件下でメラミン類を分解する微生物を探索したところ、優れた分解活性を有する微生物を見出した。さらに、本発明者らは、実廃水に対して、前記特定の分解処理条件と見出した微生物とを適用して、メラミン類を分解したところ、メラミン類を効率的に分解できることを確認した。本明細書の開示によれば、以下の手段が提供される。
本明細書の開示によれば、以下の(1)及び(2)から選択される1種又は2種を含む、メラミン類分解剤が提供される。
(1)以下の菌学的性質及び分類学的性質を有するリゾビウム属菌
(菌学的性質)
(科学的性質)
好気的条件下でメラミン類を分解する。
(形態学的性質)(使用培地:LB培地、37℃、48時間)
細胞形態:桿菌
コロニー色調:淡黄色
(生理学的性質)
グラム染色:−
(分類学的性質)
配列番号1に示す塩基配列からなるDNA又は前記塩基配列と98.1%超の同一性を有するDNAを含む16S rDNA遺伝子を有する。
(2)以下の菌学的性質及び分類学的性質を有するロドコッカス属菌
(菌学的性質)
(科学的性質)
好気的条件下でメラミン類を分解する。
(形態学的性質)(使用培地:LB培地、37℃、48時間)
細胞形態:桿菌
コロニー色調:淡いオレンジ色
(生理学的性質)
グラム染色:+
(分類学的性質)
配列番号2に示す塩基配列からなるDNA又は前記塩基配列と99.7%超の同一性を有するDNAを含む16S rDNA遺伝子を有する。
前記リゾビウム属菌及び前記ロドコッカス属菌における前記科学的性質は、好気的酸性条件としてもよく、さらには好気的酸性条件下、20℃でメラミン及びモノメトキシメチルメラミンを分解する性質とすることができる。さらに、前記リゾビウム属菌は、好ましくはリゾビウム ラジオバクターであり、より好ましくは、リゾビウム ラジオバクターP5−19−30−1(受領番号FERM ABP−11477)又はその変異株としてもよい。さらに、前記ロドコッカス属菌は、ロドコッカスP5−19−30−3B(受領番号FERM ABP−11478)又はその変異株としてもよい。
本明細書の開示によれば、前記メラミン類分解剤を用いて、メラミン類を分解する工程、を備える、メラミン類の分解方法が提供される。
前記分解工程は、前記メラミン類分解剤と、好気的条件下、15℃以上40℃以下の温度でメラミン類と、を接触させる工程としてもよい。また、前記分解工程は、好気的酸性条件下で実施してもよい。さらに、前記分解工程に先だって、活性汚泥により分解可能な物質を伴う前記メラミン類を活性汚泥により処理する工程を備えていてもよい。
本明細書の開示によれば、メラミン類の分解方法であって、好気的酸性条件下、多置換メラミン類を含む前記メラミン類と前記好気的酸性条件下でメラミンを分解する微生物とを接触させる工程を備える方法が提供される。
前記分解方法において、前記微生物は、以下の(1)及び(2)から選択されてもよい。
(1)以下の菌学的性質及び分類学的性質を有するリゾビウム属菌
(菌学的性質)
(科学的性質)
好気的酸性条件下でメラミン類を分解する。
(形態学的性質)(使用培地:LB培地、37℃、48時間)
細胞形態:桿菌
コロニー色調:淡黄色
(生理学的性質)
グラム染色:−
(分類学的性質)
配列番号1に示す塩基配列からなるDNA又は前記塩基配列と98.1%超の同一性を有するDNAを含む16S rDNA遺伝子を有する。
(2)以下の菌学的性質及び分類学的性質を有するロドコッカス属菌
(菌学的性質)
(科学的性質)
好気的酸性条件下でメラミン類を分解する。
(形態学的性質)(使用培地:LB培地、37℃、48時間)
細胞形態:桿菌
コロニー色調:淡いオレンジ色
(生理学的性質)
グラム染色:+
(分類学的性質)
配列番号2に示す塩基配列からなるDNA又は前記塩基配列と99.7%超の同一性を有するDNAを含む16S rDNA遺伝子を有する。
本明細書の開示によれば、メラミン類の分解のための微生物のスクリーニング方法であって、好気的酸性条件下、少なくとも炭素源としてメラミン類の存在下で被験微生物を培養する工程と、前記培養工程における増殖性又は前記メラミン類の分解能に基づいて前記被験微生物のメラミン類分解能を評価する工程と、を備える方法が提供される。
本明細書の開示によれば、前記メラミン類分解剤を備えるメラミン類を分解するための分解槽を有する、廃水処理装置が提供される。
本明細書の開示によれば、好気的酸性条件下でのメラミン類分解能を有し、リゾビウム ラジオバクターP5−19−30−1(受領番号FERM ABP−11477)又はその変異株である、微生物が提供される。また、本明細書の開示によれば、好気的酸性条件下でのメラミン類分解能を有し、ロドコッカスP5−19−30−3B(受領番号FERM ABP−11478)又はその変異株である、微生物が提供される。
図1は、本明細書に開示されるメラミン類の分解方法におけるフローの一例を示す図である。 図2は、好気的酸性条件下でメラミン類分解能を有する微生物の二次スクリーニング結果を示す図である。 図3は、メラミン類分解能とpHとの関係を示す図である。 図4は、実廃水中のメラミン類の酸及び微生物による分解結果を示す図であり、(a)はリゾビウム ラジオバクターP15−19−30−1による結果を示し、(b)は、非耐酸性微生物による分解結果を示す。
本明細書の開示は、メラミン類を分解するための新たな方法並びにメラミン類分解微生物及びその利用に関する。本明細書に開示されるメラミン類分解微生物は、メラミンに代表されるメラミン類を、「好気的条件」好ましくは「好気的酸性条件」という共通する条件で分解できる。しかもこれらの微生物は、低エネルギーコストでメラミン類を分解できる。したがって、例えば、これらの微生物を1種又は2種用いることで、複雑な制御を要さず、効率的にメラミン類を分解できる。また、これらの微生物は、「好気的酸性条件」でメラミン類を分解するものであることから、多置換メラミン類を酸性条件下で単置換又は無置換のメラミン類に分解するのと同時に、分解によって生じたメラミン類等を代謝し分解することができる。したがって、多置換又は単置換メラミンを特に効率的に分解できる。さらに、これらの微生物は、モノメトキシメチルメラミンなどの単置換メラミンを含む「置換基を有するメラミン」を分解できる。したがって、メラミン樹脂を使用する工程の廃水の廃水処理に有用である。以下、本明細書の開示の実施形態について詳細に説明する。
(メラミン類分解剤)
本明細書に開示されるメラミン類分解剤は、リゾビウム(Rhizobium)属又はロドコッカス(Rhodococcus)属に属し、好気的条件下でのメラミン類分解能を有する微生物を含んでいる。本明細書に開示される微生物製剤は、これらの各微生物が、共通する「好気的条件」下で単独で高いメラミン類の分解能を発揮でき、同様の分解傾向を有することから、任意の組み合わせで用いても、高いメラミン類の分解活性を有する製剤を得ることができる。また、これら微生物は、15℃以上40℃以下の温度でしかも、炭素源及び窒素源の使用を抑制又は回避しつつメラミン類を分解できるため、培養コストを低減することができる。さらに、これら微生物は、「好気的酸性条件」でメラミン類を分解できる。このため多置換メラミン類を酸分解して単置換メラミン類としつつ、同時に分解生成物である単置換メラミンを効率的にメラミン及びさらなる低分子化合物へと分解できる。
本メラミン類分解剤を用いてメラミン類を分解する条件は、メラミン類が分解される限り、特に限定されない。好ましくは、後述する好気的条件を適用できる。本メラミン類分解剤は、好気的条件下、好ましくは好気的酸性条件下、夏場における冷却手段や冬場における加熱手段を要することなく、例えば、15℃以上40℃以下でメラミン類を効果的に分解できる。
本メラミン類分解剤は、メラミン類の分解の用途に用いられ、メラミン類を含んでいればとくにその分解対象は限定されない。典型的には、例えば、メラミン類を含有する工場廃水、農業廃水、家庭廃水などを適用対象とすることができる。また、分解対象は、土壌、堆肥等のメラミン類の残留可能性のある適用対象中のメラミン類としてもよい。なお、こうした固形物中のメラミン類は、固形物を適宜水等の液体に懸濁して液体にメラミン類を溶解させた懸濁物やその固液分離物であってもよい。工場廃水としては、特に塗装工程を有する工場や現場の廃水(塗装廃水ともいう。)が挙げられる。
本明細書に開示されるメラミン類分解剤に含まれるメラミン類分解微生物は、リゾビウム属又はロドコッカス属に属している。これらの微生物は、土壌、堆肥及び塗装廃水から微生物を採取して、選択されたものである。また、これらの微生物は、共通して、置換基を有するメラミンを炭素源として含む培地で、「好気的酸性条件下」、20℃で、培養継続することにより、選択されたものである。なお、本メラミン類分解剤は、これら2種の微生物のいずれかあるいは双方を含むが、他の微生物を含んでいてもよい。
これらの微生物は、いずれも、単独で高いメラミンの分解能を有するほか、置換基を有するメラミンの分解能を有する。したがって、これらの微生物を単独であるいは複数組み合わせて用いることで、メラミン類を効率的に分解することができる。また、これらの微生物は、メラミンを、アンメリン、アンメリド及びシアヌル酸を経て、さらに低分子にまで分解し、トリアジン環を有しない化合物へと無害化することができる。
(リゾビウム属菌)
本明細書に開示されるリゾビウム属菌は、好ましくはリゾビウム ラジオバクターであり、以下の菌学的性質及び分類学的性質を有する。
(菌学的性質)
(科学的性質)
好気的条件下でメラミン類を分解する。好ましくは好気的酸性条件下でメラミン類を分解する。より好ましくは、20℃、好気的酸性条件下で、メラミン及びモノメトキシメチルメラミンを分解する。
本明細書において、好気的条件は、通常、大気圧雰囲気での培養により容易に得ることができる条件が挙げられる。典型的には、大気圧雰囲気下で、必要に応じて、静置培養のほか、振とう培養、撹拌培養、通気培養等の各種の好気的培養手法を適宜採用することができる。こうした好気的条件に適用される温度条件は、メラミン類が分解される限り特に限定されないが、10℃以上40℃以下であることが好ましく、より好ましくは15℃以上であり、さらに好ましくは20℃以上である。また、より好ましくは35℃以下であり、さらに好ましくは30℃以下である。好気的条件に適用されるpH条件は、pH9以下であることが好ましく、より好ましくは、pH8以下であり、さらに好ましくはpH7以下である。一層好ましくは、pH6.5以下の酸性条件であり、より一層好ましくはpH6.0以下であり、さらに好ましくはpH5.0以下である。なお、好気的条件にこれらの酸性条件が組み合わされる条件を、好気的酸性条件というものとする。こうした酸性条件であると、多置換メラミン類を単置換メラミン類又はメラミンへと分解することができ、本明細書に開示される微生物によって分解しやすいメラミン類を供給できるため、多置換メラミン類を効率的に分解できるようになる。酸性条件は、好ましくは、pH4.0以上であることが好ましく、より好ましくはpH4.5以上であり、さらに好ましくはpH5.0以上である。
(形態学的性質)(使用培地:LB培地、37℃、48時間)
細胞形態:桿菌
コロニー色調:淡黄色
(生理学的性質)
グラム染色:−
(分類学的性質)
16S rRNAをコードする塩基配列(16S rDNA遺伝子)について、配列番号1に示す配列を有している。配列番号1に示す塩基配列をもとにデータベース(アポロン DB−BA 7.0(テクノスルガ・ラボ、静岡)及びアポロン2.0(テクノスルガ・ラボ、静岡)を用いてホモロジー検索したところ、配列番号1に示す塩基配列は“Rhizobium radiobacter ATCC 19358”として登録された塩基配列と最も高い同一性(99.1%)を示した。
以上の菌学的性質及び16S rRNAの塩基配列に基づく知見から、本明細書に開示されるリゾビウム属菌はリゾビウム ラジオバクターに属する新規な菌株であると推定された。このため本微生物を新菌株と認定し、リゾビウム ラジオバクター P5−19−30−1と命名し、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305-8566茨城県つくば市東1-1-1中央第6)に2012年3月5日に寄託申請し、2012年3月6日(受領日)付けで受領番号FERM ABP−11477として受領された。
なお、本明細書の開示に係る新規なリゾビウム ラジオバクター菌は、受領番号FERM ABP−11477で特定される寄託菌株に限定されず、当該寄託菌株と同じ菌種に分類される他の微生物も含むものである。例えば、本明細書に開示されるリゾビウム ラジオバクター菌は、上記した菌学的性質を有するリゾビウム ラジオバクター菌を含んでいる。また、本明細書に開示されるリゾビウム ラジオバクター菌は、その16S rDNA遺伝子について配列番号1に示す塩基配列に対して98.1%超の同一性を有する塩基配列からなるDNAを含んでいることが好ましく、より好ましくは98.2%以上、さらに好ましくは98.5%以上、一層好ましくは99.0%以上、より一層好ましくは99.1%以上、さらに一層好ましくは99.1%超、より好ましくは99.5%以上、さらに好ましくは99.8%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNAを含んでいることが好ましい。また、例えば、好気的条件下、好ましくは好気的酸性条件下、低温(例えば20℃)でメラミン及び/又はモノメトキシメチルメラミンを分解する能力を有するリゾビウム属菌(好ましくはリゾビウム ラジオバクター)を含んでいる。
(ロドコッカス属菌)
本明細書に開示されるロドコッカス属菌は、以下の菌学的性質及び分類学的性質を有する。
(菌学的性質)
(科学的性質)
好気的条件下でメラミン類を分解する。好ましくは、好気的酸性条件下でメラミン類を分解する。より好ましくは、20℃、好気的酸性条件下で、メラミン及びモノメトキシメチルメラミンを分解する。なお、当該科学的性質における好気的条件、好気的酸性条件等については、リゾビウム属菌と同様の態様が適用される。
(形態学的性質)(使用培地:LB培地、37℃、48時間)
細胞形態:桿菌
コロニー色調:淡いオレンジ色
(生理学的性質)
グラム染色:+
(分類学的性質)
16S rRNAをコードする塩基配列(16S rDNA遺伝子)について、配列番号2に示す配列を有している。配列番号2に示す塩基配列をもとにデータベース(アポロン DB−BA 7.0(テクノスルガ・ラボ、静岡)及びアポロン2.0(テクノスルガ・ラボ、静岡)を用いてホモロジー検索したところ、配列番号1に示す塩基配列は“Rhodococcus ginshengii djl-6"及び“Rhodococcus jialingiae dji-6-2”として登録された塩基配列と最も高い同一性(99.9%)を示した。
以上の菌学的性質及び16S rRNAの塩基配列に基づく知見から、本発明に係るロドコッカス属菌はロドコッカスに属する新規な菌株であると推定された。このため本微生物を新菌株と認定し、ロドコッカスP5−19−30−3Bと命名し、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305-8566茨城県つくば市東1-1-1中央第6)に2012年3月5日に寄託申請し、2012年3月6日(受領日)付けで受領番号FERM ABP−11478として受領された。
なお、本明細書の開示に係る新規なロドコッカス属菌は、受領番号FERM ABP−11478で特定される寄託菌株に限定されず、当該寄託菌株と同じ属ないし種に分類される他の微生物も含むものである。例えば、本発明に係るロドコッカス属菌は、上記した菌学的性質を有するロドコッカス属菌を含んでいる。また、本発明に係るロドコッカス属菌は、その16S rDNA遺伝子について、配列番号2に示す塩基配列に対して99.7%超の同一性を有する塩基配列からなるDNAを有していることが好ましく、より好ましくは99.8%以上、さらに好ましくは99.9%以上、一層好ましくは99.9%超の同一性を有する塩基配列からなるDNAを有していることが好ましい。また、例えば、好気的条件下、低温(例えば20℃)でメラミン及び/又はモノメトキシメチルメラミンを分解する能力を有するロドコッカス属菌を含んでいる。
これらの微生物は、後述するスクリーニング方法により取得することができる。
また、これらの微生物を、公知の方法により変異処理し、一定条件下でスクリーニングすることにより、メラミン類の分解能に関し同等あるいはそれ以上の変異株を取得できる。なお、こうした微生物の変異処理方法としては、例えば物理的方法又は化学的方法が挙げられる。物理的方法としては、紫外線照射、X線照射等が用いられ、化学的方法としては、変異原性化学物、例えば亜硝酸、N−メチルN′−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)、エチルメタンスルホネート(EMS)、アクリジン系色素等が使用される。こうした方法は、いずれも当業者における周知技術である。
本明細書に開示される微生物は、いずれも、特別な炭素源及び窒素源がなくても、メラミン類を分解・資化して生存、増殖することが可能である。このため、炭素源及び窒素源の使用を抑制又は回避して、低コストでメラミン類を分解処理することができる。
本明細書においてメラミン類とは、例えば、以下の式(1):
Figure 2013215097
(式(1)において、X1は、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、ヒドロキシアルキルアミノ基、アルコキシアルキルアミノ基、ビス(アルコキシアルキル)アミノ基、ビス(ヒドロキシアルキル)アミノ基からなる群から選択される基であり、好ましくは、アミノ基、アルコキシアルキルアミノ基、ビス(アルコキシアルキル)アミノ基であり、特に好ましくはアミノ基であり、X2、X3は、それぞれ独立に、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子、水素原子、アルキル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アミノアルキル基、アルコキシアルキルアミノ基、ビス(アルコキシアルキル)アミノ基、ヒドロキシアルキルアミノ基、ビス(ヒドロキシアルキル)アミノ基からなる群から選択される基である。)
で表されるトリアジン環を1分子中に少なくとも1個有する化合物である。メラミン類には、トリアジン環を一つ有する単核性メラミン類と複数個有する多核性メラミン類が含まれる。
トリアジン環におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロパン−1−イル基、プロパン−2−イル基(イソプロピル基)、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基を例示することができ、好ましくはメチル基、エチル基、特に好ましくはメチル基を挙げることができる。アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基を例示することができ、好ましくはメチルチオ基を挙げることができる。アルキルアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロパン−1−イルアミノ基、プロパン−2−イルアミノ基(イソプロピルアミノ基)、イソブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基を例示することができ、好ましくはエチルアミノ基を挙げることができる。ジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基を例示することができ、好ましくはジメチルアミノ基を挙げることができる。アミノアルキル基としては、例えば、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロパン−1−イル基、アミノプロパン−2−イル(アミノイソプロピル基)、アミノイソブチル基、アミノsec−ブチル基、アミノtert−ブチル基を例示することができ、好ましくはアミノメチル基を挙げることができる。ヒドロキシアルキルアミノ基としては、例えば、ヒドロキシメチルアミノ基、ヒドロキシエチルアミノ基を例示することができ、好ましくはヒドロキシメチルアミノ基を挙げることができる。ビス(ヒドロキシアルキル)アミノ基としては、例えば、ビス(ヒドロキシメチル)アミノ基、ビス(ヒドロキシエチル)アミノ基を例示することができ、好ましくはビス(ヒドロキシメチル)アミノ基を挙げることができる。アルコキシアルキルアミノ基としては、メトキシメチルアミノ基、メトキシエチルアミノ基、エトキシエチルアミノ基、エトキシメチルアミノ基等が挙げられる。また、ビス(アルコキシアルキル)アミノ基としては、ビス(メトキシメチル)アミノ基、ビス(メトキシエチル)アミノ基、ビス(エトキシメチル)アミノ基、ビス(エトキシエチル)アミノ基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子又は塩素原子、好ましくは塩素原子を挙げることができる。
トリアジン環において、X1はアミノ基、アルコキシアルキルアミノ基、ビス(アルコキシアルキル)アミノ基とすることが好ましい。また、X2、X3は、それぞれ独立に、アミノ基、アルコキシアルキルアミノ基、ビス(アルコキシアルキル)アミノ基、水酸基、ハロゲン原子、アミノアルキル基、ヒドロキシアルキルアミノ基、ビス(ヒドロキシアルキル)アミノ基、又は水素原子とすることができる。
単核性のメラミン類は、上記式Iにおいて、X1、X2及びX3がアミノ基(NH2)である化合物(メラミン)が含まれる。また、単核性のメラミン類には、メラミンにおいてアミノ基の一つのHが置換されているメラミン類である単置換メラミン、メラミンにおいて、二つ以上のHが置換されている多数置換メラミンである「置換基を有するメラミン」が含まれる。また、単核性のメラミン類には、X1及びX2がアミノ基であり且つX3が水酸基である化合物(アンメリン)、X1がアミノ基であり且つX2及びX3が水酸基である化合物(アンメリド)などのメラミン類の分解中間体が含まれる。
単置換メラミンには、X1がアルコキシアルキルアミノ基であり、X2及びX3がアミノ基である、モノアルコキシアルキルメラミンが挙げられる。また、多置換メラミンには、X1及びX2がアルコキシアルキルアミノ基であり、X3がアミノ基である、ジアルコキシアルキルメラミンが挙げられる。さらに、X1〜X3がアルコキシアルキルアミノ基であるトリアルコキシアルキルメラミンが挙げられる。さらに、X1がビス(アルコキシアルキル)アミノ基であり、X2及びX3がアミノ基であるジアルコキシアルキルメラミンが挙げられる。さらに、このほか、メラミンの水素原子1個〜6個のうち、1〜6個がアルコキシアルキル基で置換されたアルコキシアルキル置換メラミンが含まれる。
単核性のメラミン類は、好ましくはメラミンの有するアミノ基のうち水素原子の少なくとも一つがメトキシメチル基で置換された単置換メラミン及び多置換メラミンが挙げられる。こうしたメラミン類としては、モノメトキシメチルメラミン、ジメトキシメチルメラミン、トリメトキシメチルメラミンを始めとして、最大6個がモノメトキシメチル基で置換されたメラミンが挙げられる。
この他、メラミン類としては、シアヌル酸、イソシアヌル酸、硫酸メラミン、ポリリン酸メラミン、メラム、硫酸メラム、ベンズグアナミン、アセトグアナミン、フタロジグアナミン、サクシノグアナミン、メラミンシアヌレート、メラミンフォスフェート、ピロリン酸メラミン、ブチレンジグアナミン、ノルボルネンジグアナミン、トリグアナミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、メチレンジメラミン、エチレンジメラミン、トリメチレンジメラミン、テトラメチレンジメラミン、ヘキサメチレンジメラミン、1,3−ヘキシレンジメラミン、トリス(β−シアノエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
また、多核性のメラミン類としては、上記式(1)で表されるトリアジン環を複数含む化合物が挙げられる。例えば、同一又は異なるトリアジン環を単量体ユニットとして有する重合体が挙げられる。こうした多核性メラミン類としては、いわゆるメラミン樹脂が挙げられる。ここで、メラミン樹脂とは、メラミンなどの単核性メラミン類にアルデヒド、殊にホルムアルデヒド及び/又はアルコールを反応させることにより得られる重合体を包含し、例えば、メチルエーテル化メラミン、エチルエーテル化メラミン、ブチルエーテル化メラミン等のアルキルエーテル化メラミンやメチロール化メラミンなどを挙げることができる。
モノメトキシメチルメラミン、サイメル303及び305(いずれも日本サイテックインダストリーズ製)が挙げられる。モノメトキシメチルメラミン並びにサイメル303及び305に含まれるトリアジン環構造を以下に示す。なお、サイメル303及び305は、平均重合度がそれぞれ1.7及び2.3である。
Figure 2013215097
塗装工程における廃水には、塗料に由来する各種のメラミン樹脂あるいは当該メラミン樹脂の部分分解物である多核性及び単核性メラミン類(単置換メラミンや多置換メラミン)が含まれていることが多い。
(メラミン類の分解方法)
本明細書に開示されるメラミン類の分解方法は、図1(a)に示すように、本メラミン類分解剤を用いて、メラミン類を分解する工程を備えることができる。本分解方法によれば、加熱手段又は冷却手段を特に必要とすることなく、また、好気的条件でメラミン類を微生物によって分解処理できるため、低コストで実施できる。また、メラミン類分解剤を構成する微生物は、いずれも、単独で、メラミン類を分解する能力が良好であるため、複雑な制御を必要とせずに、効率的にメラミン類を分解できる。
本分解方法に適用されるメラミン類は、典型的には、例えば、工場廃水、農業廃水、家庭廃水等のメラミン類含有廃水などの対象物に含まれうる。工場廃水としては、特に塗装工程を有する工場や現場の廃水(塗装廃水ともいう。)が挙げられる。その他、土壌、堆肥等のメラミン類の残留可能性のある適用対象中に含まれうる。なお、こうした固形物中のメラミン類は、固形物を適宜水等の液体に懸濁して液体にメラミン類を溶解させた懸濁物やその固液分離物であってもよい。本メラミン類分解方法は、こうした各種態様でメラミン類を含む分解対象中のメラミン類の分解方法、あるいは、塗装廃水の処理方法等、こうした分解対象の処理方法としても実施できる。
(メラミン類分解工程)
分解工程において、本分解剤を構成する微生物が、メラミン類を分解し資化する条件は、特に限定されないが、分解工程は、微生物の培養工程である以上、本明細書に開示される微生物が生存し増殖できる組成を含む環境下で実施される。したがって、本明細書に開示される微生物の生育のための各種無機塩類が前記組成に含まれるようにする。本分解工程では、本明細書に開示される微生物はメラミン類を炭素源及び/又は窒素源とすることができるため、前記組成においてメラミン類以外の炭素源及び窒素源の含有量を低減ないし不含有とすることができる。
分解工程は、好気的条件下でメラミン類分解剤とメラミン類とを接触させる工程であること好ましい。好気的条件については、既にリゾビウム属菌に関して説明した各種態様を適用できる。温度条件については、好ましくは、好気的条件下で15℃以上40℃以下の温度で前記メラミン類に接触させるようにする。本明細書に開示される微生物は、こうした温度域、すなわち、加温を必要としない温度域においても、良好なトリアジン分解能及び置換メラミン分解能を有している。この温度域は、メラミン樹脂を使用する工程の工程廃水としては通常の温度であるほか、年間を通じて外気又は室内において一定期間放置することにより容易に得ることができる温度である。このため、本明細書に開示される微生物は、特に廃水を加温や冷却等の温度制御を必須とすることなく、低エネルギーコストで廃水処理をすることが可能である。本方法では、35℃以下、より好ましくは30℃以下、さらに好ましくは25℃以下、さらに20℃以下であっても十分にメラミン類や置換メラミン類を分解できる。一方、メラミン類分解活性が維持される限り、20℃以上であってもよい。より高温域であれば、メラミン類の分解活性はより向上する。こうした観点からは、分解温度は、25℃以上であってもよく、30℃以上であってもよい。なお、40℃を超える高温での分解工程を排除するものではない。
分解工程に要する時間は、特に限定されないが、メラミン類の当初濃度、メラミン類分解剤量及び他の条件のほか、メラミン類の分解程度に基づき、数時間から数週間程度の時間を設定することができる。
分解工程は、本メラミン類分解剤と活性汚泥とを用いる工程であってもよい。こうした分解工程を実施することで、活性汚泥による分解作用とメラミン類分解剤による分解作用とを同時に実現することができる。また、こうした分解工程を備えることで、後段で詳述するように分解工程に先立って行う活性汚泥による処理工程を補ったりあるいは省略することも可能である。こうした分解工程は、上記した本分解工程における条件の範囲内で分解工程を実施することができる。
(酸性条件での分解工程)
本分解方法は、図1(b)に示すように好気的酸性条件下での分解工程を備えるものであってもよい。分解工程のpH条件は、中性付近とすることも可能であるが、pH6.5以下、好ましくはpH6.0以下であり、さらに好ましくはpH5.5以下の酸性条件とする。本発明者らによれば、酸性下にメラミン類を曝すことで、多置換メラミン類が分解されてメラミン、あるいはこれに加えて単置換メラミンが主成分となることがわかっている。メラミン、あるいはこれに加えて単置換メラミンを主成分とすることで、本メラミン類分解剤を用いた分解を効率的に行うことができる。
本明細書に開示される微生物は、こうした酸性条件でメラミン類分解能を有しているため、酸性条件での分解工程に特に有利である。すなわち、酸性条件による化学的なメラミン類分解工程と微生物による生物学的なメラミン類分解工程とを同時に実現でき、メラミン類を効率的に分解できるようになる。本明細書の開示によれば、好気的酸性条件下、多置換メラミン類を含むメラミン類と前記好気的酸性条件下でメラミン類分解能を有する微生物とを接触させる工程を備える、メラミン類の分解方法も提供される。
酸性条件は、好ましくは、pH4.0以上であることが好ましく、より好ましくはpH4.5以上であり、さらに好ましくはpH5.0以上である。酸性条件を付与するには、適宜、塩酸などの各種無機酸あるいは各種有機酸を用いることができる。
(酸性処理工程)
図1(c)に示すように、多置換メラミン類を酸性条件で分解するこの種の酸性処理工程は、メラミン類分解剤を用いる分解工程とは別個に、これに先立って、行われていてもよい。本メラミン類分解剤は、酸性下でもメラミン類を分解できるため、こうした酸性処理工程後における中性付近へのpH調整を簡略化ないし省略することができる。メラミン類が、多置換メラミン類を含んでいる場合に有用である。
この処理工程の酸性条件は特に限定しないが、分解促進の観点からは、好ましくは、pH6以下であり、より好ましくはpH5以下であり、さらに好ましくはpH4以下であり、一層好ましくはpH3以下である。また、その後の分解工程に供するためのpH調整操作の観点からは、好ましくはpH3以上であり、より好ましくはpH4以上であり、さらに好ましくはpH5以上である。メラミン類含有廃水は、例えば、適当な有機酸及び/又は無機酸で酸性化することができる。典型的には塩酸などの無機酸が挙げられる。酸性処理工程は、その温度は特に限定しないが、好ましくは15℃以上40℃以下程度とし、適宜撹拌しながら行うことが好ましい。時間も、置換基の解離を促進し、分解物であるメラミン、あるいはこれに加えて単置換メラミンが主成分となるように実施する。温度にもよるが、例えば、数時間から60時間程度、好ましくは10時間から50時間程度行うことが好ましい。
酸性処理工程後の液等を分解工程に供する場合、分解工程を中性域で行う場合には、アルカリ等でpH調整する。酸性条件下での分解工程に供する場合には、pHを調整しないかあるいは適切な酸性条件までpH調整すればよい。
(活性汚泥処理工程)
図1(d)に示すように、本分解工程等に先立って活性汚泥処理工程が行われてもよい。メラミン類が活性汚泥によって分解可能な物質等を伴っている場合に有用である。メラミン類は、上記のように各種の廃水、典型的には車両を始め、各種の塗装工程の廃水に含まれる。本発明者らによれば、メラミン樹脂を含む塗料の塗装工程等の廃水には、メラミン樹脂に由来する多様なメラミン類が含まれているが、活性汚泥処理により、メラミン類を含む廃水のうち、メラミン類以外の溶剤などの各種成分が分解除去され、ひいては、メラミン類が主成分ともなりうることがわかっている。すなわち、メラミン類分解剤による分解処理前に活性汚泥処理工程を実施することで、微生物の増殖阻害を生じさせるような成分を除去でき、その後のメラミン類分解剤を用いた分解工程に適した組成とすることができる。
活性汚泥処理の手法や種類は特に限定されないで、例えば、従来メラミン類を含みうる塗装工程廃水に適用した方法をそのまま適用することができる。例えば、活性汚泥を添加し、例えば15℃〜40℃、pH6〜8で曝気処理30〜70日間程度とすることができる。
活性汚泥処理工程後は、固液分離により活性汚泥処理液を取得し、この処理液を次工程に供する。活性汚泥処理後に分解工程に供してもよいし、必要に応じてpH調整して、酸性処理工程に供してもよいし酸性条件下での分解工程に供してもよい。なお、酸性処理工程と活性汚泥処理工程とは、必要に応じていずれか一方を行ってもよいが、その双方を行ってもよい。双方を行う場合には、好ましくは活性汚泥処理工程を先に行い、その後、酸性処理工程を行う。活性汚泥処理工程後に酸性処理工程を実施することで、酸性処理工程をより効果的に行うことができる。
(スクリーニング方法)
本明細書に開示されるメラミン類の分解のための微生物のスクリーニング方法は、好気的酸性条件下、少なくとも炭素源としてメラミン類の存在下で被験微生物を培養する工程と、前記培養工程における前記被験微生物の増殖能又は前記メラミン類の分解能を評価する工程と、を備えることができる。本スクリーニング方法によれば、好気的酸性条件下で、多置換メラミン類を含むメラミン類が酸で分解されて得られる単置換メラミン類やメラミンを分解し資化する微生物を得ることができる。こうした微生物によれば、好気的酸性条件下で多置換メラミン類を含むメラミン類を効率的に分解できる。
被験微生物としては、特に採取源を限定することなく各種の被験微生物を適用することができる。典型的には、土壌、堆肥、塗装廃水などが挙げられる。
培養工程における好気的酸性条件は、既にメラミン類分解剤やメラミン類の分解方法で記載した態様を適宜採用することができる。また、分解対象となるメラミン類は、モノメトキシメチルメラミンなどの単置換メラミンやメラミンなどとすることができるほか、サイメル303(商品名、完全アルキル化メトキシメチルメラミン)やサイメル325(商品名、イミノ基型メトキシメチルメラミン)などの多置換メラミン類であってもよい。
培養工程の長さは特に限定しないが、増殖性やメラミン分解能を評価できる程度に適宜設定することができる。また、培養工程における上記した好気的酸性条件以外の培養条件は、当業者であれば被験微生物の種類に応じて適宜設定できる。
評価工程は、培養工程における被験微生物の増殖能やメラミン類分解能を測定する。こうした、測定結果に基づき、メラミン類を好気的酸性条件下で分解できる被験微生物を選択することができる。すなわち、被験微生物につき、培養工程における増殖能が肯定される場合、培養工程におけるメラミン類分解能が肯定される場合には、当該被験微生物を好気的酸性条件下でのメラミン類分解に適した微生物の候補として選択することができる。
培養工程における増殖能は、例えば、培養工程におけるコロニーの大きさや細胞濃度(濁度)等で評価できる。培養工程におけるメラミン類分解能は、例えば、培地中のメラミン類をHPLC等で測定することにより評価できる。
(廃水の処理装置)
本明細書の開示によれば、本メラミン類分解剤を備える、メラミン類を分解する分解槽を有する、廃水処理装置が提供される。本装置によれば、常温でかつ好気的条件でメラミン類を分解できる分解槽を有しているため、装置構成も簡略化できるし、しかも、低コストで連続運転させることができる。本処理装置の使用に際しては、本分解方法について説明した各種の実施態様を適用することができる。
分解槽におけるこれらの本メラミン類分解剤を構成する微生物の存在形態は特に限定しない。浮遊状態であってもよいし、凝集形態であってもよいし、なんらかの固相担体に固定化された状態であってもよい。また、分解槽の形態も特に限定されない、必要に応じてバッチ式あるいは連続式の処理に適したものとすることができる。
本処理装置は、メラミン樹脂塗料を用いた塗装工程廃水処理設備の一部であってもよい。また、前記分解槽の前段には、活性汚泥処理槽及び/又は酸性処理槽を備えることもできる。活性汚泥処理槽及び酸性処理槽における各処理は、活性汚泥処理工程及び酸処理工程について既に説明した各種の実施態様を適用できる。好ましくはこれらの双方を有し、上流から順に活性汚泥処理槽、酸性処理槽及び本分解槽を備える。
以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(耐酸性メラミン分解微生物のスクリーニング)
土壌、堆肥、塗装廃水などから微生物を採取し、培地A(0.1%サイメル303(完全アルキル化型メトキシメチルメラミン、日本サイテックインダストリーズ製)、0.1%サイメル325(イミノ基型メトキシメチルメラミン、日本サイテックインダストリーズ製)、0.1Mクエン酸バッファ(pH5)、0.5%NaCl、1mM MgSO4、0.1mM CaCl2、5mg/L EDTA、2mg/L FeSO4・7H2O、0.1mg/L ZnSO4・7H2O、0.043mg/L MnSO4、・5H2O、0.3mg/L H3BO3、0.223mg CoCl2・6H2O、0.01mg/L CuSO4・5H2O、0.015mg/L NiCl2・6H2O、0.03mg/L Na2MoO4・2H2O、0.66mg/L CaCO3)10mlに加え、20℃、150rpmで振とうし、1週間ごとに培養液1mlを採取し、新しい培地A9mlに加え、再び、20℃、150rpmで振とうを続ける操作を5週間継続した。振とう液0.1mlを選択培地B(培地A、15g/L 寒天)に塗布し、20℃、7日間培養した。培養後、出現したコロニーの中から7株を分離した。
(耐酸性メラミン分解微生物のメラミン分解能評価)
培地C(培地Aのうち、サイメル303及びサイメル325を0.06%メラミン(和光純薬株式会社製)としたもの)10mlに濁度2(波長660nm)に調整した分解菌7株の懸濁液500μl又は滅菌精製水500μl(コントロール)を添加し、20℃で24時間、150rpmで振とう培養してメラミン分解能を評価した。メラミンの分解能は、溶液中に存在するメラミンをHPLC(島津製作所Prominence、カラム:インタクト製Unison UK-C8)を用いて分析し、その濃度変化により評価した。結果を図2に示す。
図2に示すように、スクリーニングによって得られた菌株のうち、P5-19-30-1、P5-19-30-3Bは、pH5条件下でも、それぞれ65%、58%のメラミン分解率を呈した。
(耐酸性メラミン分解微生物によるメラミン類分解能のpH特性の評価)
pH3、4、5、6、7、8及び9に調製された培地(pH3及び4のときには、0.1M第2クエン酸ナトリウム−塩酸バッファ、pH5、6、7及び8のときには、0.1Mリン酸バッファ、0.5%NaCl、1mM MgSO4、0.1mM CaCl2、5mg/L EDTA、2mg/L FeSO4・7H2O、0.1mg/L ZnSO4・7H2O、0.043mg/L MnSO4、・5H2O、0.3mg/L H3BO3、0.223mg CoCl2・6H2O、0.01mg/L CuSO4・5H2O、0.015mg/L NiCl2・6H2O、0.03mg/L Na2MoO4・2H2O、0.66mg/L CaCO3)10mlに濁度2(波長660nm)に調製したP5-19-30-1、P5-19-30-3B及びメラミン類分解能の至適pHが7であるメラミン類分解菌A(2KA14-3株)の懸濁液500μlを添加し、20℃で24時間、150rpmで振とう培養して各pHにおけるメラミン分解能を評価した。結果を図3に示す。
図3に示すように、pH7で高いメラミン類分解活性を有するメラミン類分解菌Aは、pH7では高い活性を示すもののpH5条件では活性が伸びずpH5条件においての使用は困難であることがわかった。これに対してP5-19-30-1、P5-19-30-3Bは、pH5〜6にメラミン類分解活性のピークが観察されており、こうしたpHでの使用が可能であることがわかった。
(実廃水でのメラミン類分解能評価)
本実施例は、高濃度の多置換メラミン類を含有する塗装工程の実廃水B(COD6000mg/ml)1lに活性汚泥を添加し(MLSS2700mg/l)、20〜25℃、pH7〜8で曝気処理50日間行った。ろ過により固液分離を行い、活性汚泥処理液(液層)を得た。図示はしないが、GC−MS分析及びNMR分析により、この活性汚泥処理液の含有成分は溶剤成分が消失し、トリアジン環を有するメラミン類が主成分として残留していることがわかった。
活性汚泥処理液10mlを1N塩酸を用いてpH5に調整後、吸光度2(波長660nm)に調製したP5-19-30-1株の懸濁液500μl又は生理食塩液500μl(コントロール)を添加し、20℃で3週間振とう培養を行い、メラミン類分解能を評価した。メラミン類分解能は実施例2と同様にして評価した。P5-19-30-1株の結果を図4(a)に示し、コントロールの結果を図4(b)に示す。
図4(b)に示すように、コントロールの結果から、3週間でほとんどの多置換メラミン類は、置換基が脱離されてメラミンが蓄積することがわかった。これに対して図4(a)に示すように、P5-19-30-1株は、多置換メラミン類の減少傾向はコントロールと同様であったが、メラミンは、5日まではコントロールと同様に蓄積傾向が観察されたが、それ以降は、メラミンの分解が進行し、メラミン濃度の減少傾向が観察された。3週間後には、メラミン及び多置換メラミン類はこれらの初期濃度の10分の1程度にまで減少していた。
以上の結果から、多置換メラミン類を含む実廃水に対してP5-19-30-1株など好気的酸性条件下でメラミン類を分解する微生物を適用することで効率的にメラミン類を分解できることがわかった。
(菌株の同定)
本実施例では、P5-19-30-1及びP5-19-30-3Bにつき、菌株を同定した。すなわち、これらの菌につき、形態学的性質及び遺伝学的性質を解析した。形態学的性質はLB寒天培地で37℃、48時間培養後に形成されたコロニーを実体顕微鏡(オリンパス製 SZH10)で、グラム染色後に光学顕微鏡(オリンパス製 BX50F4)で観察した。結果を表1に示す。
Figure 2013215097
また、分類学的性質は、これらの各菌株菌体からゲノム抽出し、定法に従い、16S rDNA遺伝子の塩基配列に基づく遺伝学的解析を行った。すなわち、16S rRNA領域をPCRにより増幅し、その後、配列決定を行った。なお、使用したプライマーは、以下のとおりとした。
増幅プライマー
9F:5'-gag ttt gat cct ggc tca g-3'(配列番号3)
1510R:5'-gtg aag ctt acg gyt acc ttg tta cga ctt-3'(配列番号4)
Y=t 又はc
シークエンスプライマー
9F:5'-gag ttt gat cct ggc tca g -3'(配列番号3)
802R:5'-tac cag ggt tac taa tcc-3'(配列番号5)

785F:5'- gga tta gat acc ctg gta -3'(配列番号6)
1510R:5'-gtg aag ctt acg gyt acc ttg tta cga ctt-3'(配列番号4)
得られた増幅産物につき、定法に従い、塩基配列を決定した。得られた16S rDNA領域の塩基配列に基づいて相同性検索及び簡易分子系統解析を行った。データベースとしてはアポロンDB−BA7.0(テクノスルガ・ラボ、静岡)を使用した。遺伝学的解析結果を表2〜3に示す。
Figure 2013215097
Figure 2013215097
遺伝学的解析によればP5-19-30-1株は、リゾビウム ラジオバクターに属する可能性が高いと考えられた。また、菌学的性質の観察結果から得られた性質は、16S rDNA塩基配列解析の結果において帰属が示唆されたリゾビウム ラジオバクターの一般性状と一致するものの、若干異なっていると考えられた。以上のことから、P5-19-30-1株は種のレベルにおいてリゾビウム ラジオバクターに含まれると判断された。一方、リゾビウム ラジオバクターに属する公知株には、こうしたメラミン分解性を有しているものが報告されていないことから、P5-19-30-1株はリゾビウム ラジオバクターに属する新規菌株であると判断された。
遺伝学的解析によればP5-19-30-3B株は、ロドコッカスに属する可能性が高いと考えられた。また、菌学的性質の観察結果から得られた性質は、16S rDNA塩基配列解析の結果において帰属が示唆されたロドコッカス属菌の一般性状と一致するものの、若干異なっていると考えられた。以上のことから、P5-19-30-3B株は属のレベルにおいてロドコッカスに含まれると判断された。一方、ロドコッカスに属する公知株には、こうしたメラミン分解性を有しているものが報告されていないことから、P5-19-30-3B株はロドコッカスに属する新規菌株であると判断された。
配列番号3〜6:プライマー

Claims (15)

  1. 以下の(1)及び(2)から選択される1種又は2種を含む、メラミン類分解剤。
    (1)以下の菌学的性質及び分類学的性質を有するリゾビウム属菌
    (菌学的性質)
    (科学的性質)
    好気的条件下でメラミン類を分解する。
    (形態学的性質)(使用培地:LB培地、37℃、48時間)
    細胞形態:桿菌
    コロニー色調:淡黄色
    (生理学的性質)
    グラム染色:−
    (分類学的性質)
    配列番号1に示す塩基配列からなるDNA又は前記塩基配列と98.1%超の同一性を有するDNAを含む16S rDNA遺伝子を有する。
    (2)以下の菌学的性質及び分類学的性質を有するロドコッカス属菌
    (菌学的性質)
    (科学的性質)
    好気的条件下でメラミン類を分解する。
    (形態学的性質)(使用培地:LB培地、37℃、48時間)
    細胞形態:桿菌
    コロニー色調:淡いオレンジ色
    (生理学的性質)
    グラム染色:+
    (分類学的性質)
    配列番号2に示す塩基配列からなるDNA又は前記塩基配列と99.7%超の同一性を有するDNAを含む16S rDNA遺伝子を有する。
  2. 前記リゾビウム属菌及び前記ロドコッカス属菌における前記科学的性質は、好気的酸性条件下でメラミン類を分解する性質である、請求項1に記載のメラミン類分解剤。
  3. 前記リゾビウム属菌及び前記ロドコッカス属菌における前記科学的性質は、好気的酸性条件下、20℃でモノメトキシメチルメラミン及びメラミンを分解する性質である、請求項1又は2に記載のメラミン類分解剤。
  4. 前記リゾビウム属菌は、リゾビウム ラジオバクターP5−19−30−1(受領番号FERM ABP−11477)又はその変異株である、請求項1〜3のいずれかに記載のメラミン類分解剤。
  5. 前記ロドコッカス属菌は、ロドコッカスP5-19-30-3B(受領番号FERM ABP−11478)又はその変異株である、請求項1〜4のいずれかに記載のメラミン類分解剤。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のメラミン類分解剤を用いて、メラミン類を分解する工程、
    を備える、メラミン類の分解方法。
  7. 前記分解工程は、前記メラミン類分解剤と、好気的条件下、15℃以上40℃以下の温度でメラミン類と、を接触させる工程である、請求項6に記載のメラミン類の分解方法。
  8. 前記分解工程は、好気的酸性条件下で実施する、請求項6又は7に記載のメラミン類の分解方法。
  9. 前記分解工程に先だって、活性汚泥により分解可能な物質を伴う前記メラミン類を活性汚泥により処理する工程を備える、請求項6〜8のいずれかに記載の分解方法。
  10. メラミン類の分解方法であって、
    好気的酸性条件下、多置換メラミン類を含む前記メラミン類と、前記好気的酸性条件下でメラミンを分解する微生物と、を接触させる工程、を備える、方法。
  11. 前記微生物は、以下の(1)及び(2):
    (1)以下の菌学的性質及び分類学的性質を有するリゾビウム属菌
    (菌学的性質)
    (科学的性質)
    好気的酸性条件下でメラミン類を分解する。
    (形態学的性質)(使用培地:LB培地、37℃、48時間)
    細胞形態:桿菌
    コロニー色調:淡黄色
    (生理学的性質)
    グラム染色:−
    (分類学的性質)
    配列番号1に示す塩基配列からなるDNA又は前記塩基配列と98.1%超の同一性を有するDNAを含む16S rDNA遺伝子を有する。
    (2)以下の菌学的性質及び分類学的性質を有するロドコッカス属菌
    (菌学的性質)
    (科学的性質)
    好気的酸性条件下でメラミン類を分解する。
    (形態学的性質)(使用培地:LB培地、37℃、48時間)
    細胞形態:桿菌
    コロニー色調:淡いオレンジ色
    (生理学的性質)
    グラム染色:+
    (分類学的性質)
    配列番号2に示す塩基配列からなるDNA又は前記塩基配列と99.7%超の同一性を有するDNAを含む16S rDNA遺伝子を有する、
    から選択される、請求項10に記載の分解方法。
  12. メラミン類の分解のための微生物のスクリーニング方法であって、
    好気的酸性条件下、少なくとも炭素源としてメラミン類の存在下で被験微生物を培養する工程と、
    前記培養工程における増殖性又は前記メラミン類の分解能に基づいて前記被験微生物のメラミン類分解能を評価する工程と、
    を備える、方法。
  13. 請求項1〜5のいずれかに記載のメラミン類分解剤を備えるメラミン類を分解するための分解槽を有する、廃水処理装置。
  14. 好気的酸性条件下でのメラミン類分解能を有し、リゾビウム ラジオバクターP5−19−30−1(受領番号FERM ABP−11477)又はその変異株である、微生物。
  15. 好気的酸性条件下でのメラミン類分解能を有し、ロドコッカスP5−19−30−3B(受領番号FERM ABP−11478)又はその変異株である、微生物。
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