JP2013211201A - 触媒−電解質複合体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】触媒が外れたり、抜け出さず、且つイオン伝導性を有する触媒・電解質複合体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】金属触媒20を担持したカーボン担体21をイオン伝導体22で被覆する。イオン伝導体22は、ジルコニウム化合物を含有する無機プロトン伝導体、アニオン伝導性無機化合物を含有する無機アニオン伝導体、無機有機積層体である。該イオン伝導体22に被覆されることにより、金属触媒がカーボン担体から外れたり、抜け出ることが防止されるため、触媒性能の低下を防止できると共に、イオン伝導性を得ることができる。
【選択図】図2
【解決手段】金属触媒20を担持したカーボン担体21をイオン伝導体22で被覆する。イオン伝導体22は、ジルコニウム化合物を含有する無機プロトン伝導体、アニオン伝導性無機化合物を含有する無機アニオン伝導体、無機有機積層体である。該イオン伝導体22に被覆されることにより、金属触媒がカーボン担体から外れたり、抜け出ることが防止されるため、触媒性能の低下を防止できると共に、イオン伝導性を得ることができる。
【選択図】図2
Description
本発明は、例えば燃料電池等の触媒層に用いられる触媒−電解質複合体及びその製造方法に関するものである。
燃料電池は、水素やメタノールなどの燃料を酸化し、酸素を還元することにより発電する電池であり、その酸化、還元の反応を触媒する粒子の担持体として炭素材料が用いられている。
燃料電池は、水素や酸素を用いているため、排出されるものは水であり、地球環境保護の観点から非常に有用な電源である。燃料電池の中でも固体高分子形燃料電池は、水素イオンの伝導性を有する高分子電解質膜を挟んで、水素が供給されるアノード側に触媒層が配置され、酸素が供給されるカソード側にも触媒層が配置され、更に各触媒層の外側に、外部から供給された水素や酸素を触媒層に供給するガス拡散層が配置され、更に各ガス拡散層の外側にセパレータが配置され、これらが重ね合わされた構造のセルを有する。
この固体高分子形燃料電池の触媒層は、導電性を有し、且つアノード側の水素の酸化反応及びカソード側の酸素の還元反応が起こりやすくなるように、カーボンナノチューブ等の炭素材料に、白金や白金とコバルト、白金と鉄、白金とニッケルの合金等を触媒として担持させた電極触媒で形成されている(例えば、非特許文献1参照。)。触媒層に用いられるカーボンナノチューブは、比表面積が大きく、高い電子伝導性を有し、安定性に優れている触媒の担持体である。
しかしながら、カーボンナノチューブを触媒の担持体として用いた場合には、担持した白金がカーボンナノチューブから外れたり、抜け出てしまうといった問題がある。白金が外れたり、抜け出てしまうと、触媒機能が低下し、カソード及びアノードにおける反応効率が悪くなり、電池性能が低下してしまう。
また、触媒を担持した炭素材料は、イオン伝導性が十分ではない。アノード側の触媒層では、生成された水素イオンを高分子電解質膜へ伝導させ、カソード側の触媒層では、層内において到達した水素イオンを電子と反応させるため、触媒層のイオン伝導性が悪いと電池性能が低下してしまう。したがって、触媒層におけるイオン伝導性を向上させることが求められている。
Yangchuan Xing. 「The Journal of Physical Chemustry B」2004, 108, 19255−19259
本発明は、上記した従来の事情に鑑み、触媒を担持したカーボン担体から触媒が外れたり、抜け出てしまうことが抑制され、更にイオン伝導性を有する触媒−電解質複合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
上述した目的を達成する本発明に係る触媒−電解質複合体は、金属触媒を担持したカーボン担体にイオン伝導体が被覆されたものである。
また、上述した目的を達成する本発明に係る触媒−電解質複合体の製造方法は、金属触媒を担持したカーボン担体をイオン伝導体で被覆する。
本発明では、金属触媒を担持したカーボン担体にイオン伝導体が被覆されていることによって、金属触媒がカーボン担体から外れたり、抜け出ることを防止できる。これにより、本発明では、触媒性能の低下を防止できると共に、イオン伝導性を得ることができる。
以下に、本発明を適用した触媒−電解質複合体及びその製造方法について詳細に説明する。なお、本発明は、特に限定がない限り、以下の詳細な説明に限定されるものではない。説明は、以下の順序で行い、触媒−電解質複合体の説明に先だって燃料電池の説明を行う。
1.燃料電池
2.触媒−電解質複合体
2−1.無機プロトン伝導体を有する触媒−電解質複合体
2−2.無機アニオン伝導体を有する触媒−電解質複合体
2−3.無機有機積層体を有する触媒−電解質複合体
1.燃料電池
2.触媒−電解質複合体
2−1.無機プロトン伝導体を有する触媒−電解質複合体
2−2.無機アニオン伝導体を有する触媒−電解質複合体
2−3.無機有機積層体を有する触媒−電解質複合体
<1.燃料電池>
まず、本発明を適用した触媒−電解質複合体が用いられる燃料電池について説明する。なお、本発明を適用した触媒−電解質複合体は、下記に説明する固体高分子形燃料電池に限定されるものではない。
まず、本発明を適用した触媒−電解質複合体が用いられる燃料電池について説明する。なお、本発明を適用した触媒−電解質複合体は、下記に説明する固体高分子形燃料電池に限定されるものではない。
固体高分子形燃料電池1は、図1に示すように、中央に設けられるイオン伝導性を有する高分子電解質膜2と、この高分子電解質膜2を挟んで設けられる一対の触媒層3、4と、この触媒層3、4の外側に設けられる一対のガス拡散層5、6と、更にこのガス拡散層5、6の外側に設けられる一対のセパレータ7、8とから構成されるセルを有する。
固体高分子形燃料電池1において、水素等の燃料ガスが供給されるアノード9側は、触媒層3、ガス拡散層5、セパレータ7によって構成され、酸素が供給されるカソード10側は、触媒層4、ガス拡散層6、セパレータ8によって構成されている。固体高分子形燃料電池1は、アノード9側の触媒層3等と、カソード10側の触媒層4等とが外部回路11に電気的に接続される。
この固体高分子形燃料電池1は、アノード9側の触媒層3にセパレータ7からガス拡散層5を介して水素が供給され、触媒層3では水素の酸化反応が生じ、水素イオンと電子とが生成される。生成された水素イオンは、イオン伝導性を有する高分子電解質膜2を介して、カソード10側の触媒層4に移動する。また、生成された電子は、外部回路11を通りカソード10側の触媒層4に移動する。カソード10側に到達した水素イオン及び電子は、カソード10側において、外部からセパレータ8を介してガス拡散層6に供給され、ガス拡散層6を透過した酸素と反応して、水を生成する。
カソード10側の触媒層4では、酸素の還元反応が生じる。還元反応により生成された水は、カソード10側のガス拡散層6から外部に排出されたり、高分子電解質膜2に供給される。固体高分子形燃料電池1では、アノード9側及びカソード10側の触媒層3、4で起こるこれらの一連の反応によって、外部に電気を供給する。
なお、固体高分子形燃料電池1に限定されず、メタノールを燃料に用いた直接メタノール形燃料電池であってもよい。この直接メタノール形燃料電池では、アノード側の触媒層においてメタノールの酸化反応を生じ、カソード側の触媒層において酸素の還元反応が生じ、触媒がこれらの反応を活性化する。
また、燃料電池としては、アニオンが伝導するアルカリ形燃料電池であってもよい。アルカリ形燃料電池では、アノード側の触媒層において、水素とカソード側から供給された水酸化物イオンとが反応して水と電子を生成する。生成された電子は、外部回路を通りカソード側の触媒層に移動する。カソード側の触媒層に到達した電子は、外部からセパレータ、ガス拡散層を介して供給された酸素及び水と反応して、水酸化物イオンを生成する。
<2.触媒−電解質複合体及びその製造方法>
以上のような種々の燃料電池の触媒層に用いられる触媒−電解質複合体は、金属触媒を担持したカーボン担体をイオン伝導体で被覆したものである。この触媒−電解質複合体は、金属触媒を担持したカーボン担体の表面をイオン伝導体で被覆することによって、金属触媒がカーボン担体から外れたり、抜け出すことを防止できる。また、触媒−電解質複合体は、カーボン担体の表面がイオン伝導体で覆われていることによって、水素イオン等のカチオンや水酸化物イオン等のアニオンのイオン伝導性に優れている。
以上のような種々の燃料電池の触媒層に用いられる触媒−電解質複合体は、金属触媒を担持したカーボン担体をイオン伝導体で被覆したものである。この触媒−電解質複合体は、金属触媒を担持したカーボン担体の表面をイオン伝導体で被覆することによって、金属触媒がカーボン担体から外れたり、抜け出すことを防止できる。また、触媒−電解質複合体は、カーボン担体の表面がイオン伝導体で覆われていることによって、水素イオン等のカチオンや水酸化物イオン等のアニオンのイオン伝導性に優れている。
金属触媒としては、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、金、コバルト、鉄、ニッケル、銅、銀、チタン、マンガン、亜鉛、クロム、鉛、アルミニウム、ジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である。これらの中でも、触媒として活性が高い白金が好ましく、コストの面からは卑金属が好ましい。
カーボン担体としては、カーボンブラックや黒鉛、活性炭、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェン等、これらを単独又は混合して使用できる。これらの中でも、比表面積が大きく、高い電子伝導性を有し、安定性に優れているカーボンナノチューブが好ましい。
イオン伝導体としては、水素イオンを伝導させることができる無機プロトン伝導体、水酸化物イオン等のアニオンを伝導させることができる無機アニオン伝導体、無機有機積層体等を挙げることができる。イオン伝導体は、金属触媒を覆い、かつイオン伝導経路が触媒層中でつながるようにカーボン担体上に形成されていればよい。したがって、イオン伝導体は、カーボン担体の一部又は全体を覆うように形成されている。各イオン伝導体を有する触媒−電解質複合体について具体的に説明する。
<2−1.無機プロトン伝導体を有する触媒−電解質複合体>
無機プロトン伝導体は、プロトン伝導性無機化合物を含有するものである。プロトン伝導性無機化合物としては、ジルコニウム化合物等を挙げることができる。ジルコニウム化合物としては、硫酸ジルコニウム、スルホフェニルホスホン酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、硫酸ジルコニア等を挙げることができる。
無機プロトン伝導体は、プロトン伝導性無機化合物を含有するものである。プロトン伝導性無機化合物としては、ジルコニウム化合物等を挙げることができる。ジルコニウム化合物としては、硫酸ジルコニウム、スルホフェニルホスホン酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、硫酸ジルコニア等を挙げることができる。
無機プロトン伝導体を有する触媒−電解質複合体は、カーボン担体が無機プロトン伝導体で被覆されていることによって、カーボン担体から金属触媒が外れたり、抜け出ることを防止でき、プロトンの伝導性にも優れている。
無機プロトン伝導体を有する触媒−電解質複合体は、予め金属触媒を担持したカーボンナノチューブ、及びプロトン伝導性無機化合物を含有する無機プロトン伝導体を作製し、金属触媒を担持したカーボンナノチューブを無機プロトン伝導体で覆うことによって製造することができる。
または、無機プロトン伝導体を有する触媒−電解質複合体は、溶媒中で、金属触媒を担持したカーボン担体と、プロトン伝導性無機化合物の前駆体と、スルホン酸基、スルホ基、スルホニル基、リン酸基のいずれかを有する酸性化合物とを反応させて、カーボン担体を、プロトン伝導性無機化合物を含有するプロトン伝導体で被覆することによっても製造することができる。
無機プロトン伝導体を有する触媒−電解質複合体の一例としては、金属触媒として白金を担持したカーボンナノチューブを、硫酸ジルコニウムを含有する無機プロトン伝導体で被覆したものを挙げることができる。
このような触媒−電解質複合体は、予め白金を担持したカーボンナノチューブ、及び硫酸ジルコニウムを含有する無機プロトン伝導体を作製し、白金を担持したカーボンナノチューブを無機プロトン伝導体で覆うことによって製造できる。
または、例えば溶媒中で、白金を担持したカーボン担体と、ジルコニウム前駆体と、酸性化合物の硫酸とを反応させて、カーボン担体を、硫酸ジルコニウムを含有するプロトン伝導体で被覆する。この触媒−電解質複合体の製造方法は、硫酸ジルコニウムの生成と共に、生成された硫酸ジルコニウムでカーボンナノチューブを被覆することで、カーボン担体が無機プロトン伝導体で覆われた触媒−電解質複合体が得られる。
カーボン担体に金属触媒を担持させる方法は、例えば、含浸法、液相担持法、蒸発乾固法、コロイド吸着法、噴霧熱分解法、逆ミセル(マイクロエマルジョン法)等の公知の方法により、カーボン担体に金属触媒を担持させる。
硫酸ジルコニウムの前駆体となるジルコニウム前駆体は、ジルコニウムナノ粒子である。ジルコニウムナノ粒子は、出発原料として、ジルコニウムアルコキシドとキレート剤(表面改質剤)と触媒とを溶媒中で反応させて、一般にゾルゲル法と呼ばれる金属アルコキシドの加水分解及び重縮合反応により得られる。
溶媒は、出発原料であるジルコニウムアルコキシドを溶解させるものであり、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール)、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−ブタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等)、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等)、カーボネート化合物(エチレンカーボネート、プロプレンカーボネート等)、環状エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、鎖状エーテル類(ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレンジアルキルエーテル等)、ニトリル化合物(アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等)、エステル類(カルボン酸エステル、リン酸エステル、ホスホン酸エステル等)、非プロトン極性物質(ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、非極性溶媒(トルエン、キシレン等)、塩素系溶媒(メチレンクロライド、エチレンクロライド等)、水等が用いられる。これらの溶媒の中では、キレート効果及び生成物の粒径に及ぼす効果等を考慮して、2−プロパノールを用いることが好ましい。なお、これらの溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ジルコニウムアルコキシドにおけるアルコキシドは、直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜10である。アルコキシドとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、t−オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、2−ヘキシルデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシルメチル基、オクチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
キレート剤としては、ジルコニウムアルコキシドに対してキレート化して加水分解、重縮合反応を抑制しうるもの、例えば、アセト酢酸エステル類(アセト酢酸エチル等)、1,3−ジケトン類(アセチルアセトン、3−メチル−2,4−ペンタンジオン等)、アセトアセタミド類(N,N'−ジメチルアミノアセトアセタミド等)が用いられる。これらのキレート剤の中では、キレート効果をより発揮させるためにアセチルアセトンを用いるのが好ましい。キレート剤の濃度は、例えば、ジルコニウム原子に対するモル比で0.5〜2.5倍程度とするのが好ましい。このような濃度とすることで、キレート同士で反発しあってキレート効果が不十分となってしまうのを防止して、ナノサイズの粒径を有するジルコニウムナノ粒子を作製することが可能となる。
ジルコニウム前駆体の製造に用いる触媒は、ジルコニウムアルコキシドの加水分解、重縮合反応を開始させるために加えるものであり、例えば、酸やアルカリが用いられる。酸としては、無機又は有機のプロトン酸を用いることができる。無機プロトン酸としては、例えば、塩酸、硫酸、ホウ酸、硝酸、過塩素酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロ砒素酸、臭化水素酸等が挙げられる。有機プロトン酸としては、例えば、酢酸、シュウ酸、メタンスルホン酸等が挙げられる。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、アンモニア等が挙げられる。また、これらの酸やアルカリを2種以上併用してもよい。触媒としては、例えば、1Mの硝酸溶液を使用し、ジルコニウムに対するプロトンのモル比が0.2〜0.6となることが好ましい。このような濃度の硝酸溶液を使用することで、キレート剤によるキレート効果を十分に発揮させて、ジルコニウムナノ粒子の粒径が重縮合反応により大きくなりすぎるのを防止することが可能となる。
続いて、ジルコニウムナノ粒子の製造方法の一例について説明する。ジルコニウムアルコキシドを溶媒に分散させ、ジルコニウムアルコキシド溶液中にキレート剤を加える。そして、キレート剤を加えたジルコニウムアルコキシド溶液中に触媒を加える。
そして、溶媒を乾燥させて乾燥後の生成物、すなわち、ジルコニウムナノ粒子の粉体を回収する。回収されたジルコニウムナノ粒子は、ナノサイズの粒径を有する。ここで、ナノサイズの粒径を有するジルコニウムナノ粒子とは、例えば、動的光散乱法により測定した体積平均粒径が数nm〜数十nmのものをいう。
酸性化合物としては、硫酸の他に、スルホフェニルホスホン酸、pH調整した硫酸溶液、スルホン酸、リン酸を挙げることができる。
触媒−電解質複合体の製造方法の一例としては、白金を担持したカーボンナノチューブが分散した水を3分間超音波処理し、この超音波処理した水に、以上のようにして得られたジルコニウムナノ粒子と水とを体積比1:1として水に分散させたジルコニウムナノ粒子を加え、110℃で1時間加熱環流する。その後、1Mの硫酸を1mL加える。次に、45分間遠心分離を行い、アセトンで洗浄を行う工程を2回行う。これにより、図2に示すように、白金20を担持したカーボンナノチューブ21の表面が硫酸ジルコニウムを含有する無機プロトン伝導体22で覆われた触媒−電解質複合体23を製造することができる。なお、図2では、カーボンナノチューブ21の全体を無機プロトン伝導体22で覆った触媒−電解質複合体23を示したが、カーボンナノチューブ21の一部を無機プロトン伝導体22で覆うようにしてもよい。
また、図3(A)に、白金を担持したカーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡による写真を示し、図3(B)に、白金を担持したカーボンナノチューブを硫酸ジルコニウムを含有する無機プロトン伝導体で被覆した触媒−電解質複合体の透過型電子顕微鏡による写真を示す。図3(A)と(B)を比較すると、図3(B)の透過型電子顕微鏡の写真では、白金を担持したカーボンナノチューブが無機プロトン伝導体で被覆されていることがわかる。
なお、無機プロトン伝導体で覆われた触媒−電解質複合体の製造方法は、このことに限定されず、金属触媒を担持したカーボン担体や無機プロトン伝導体の種類等によって製造条件を適宜選択する。例えば、加熱環流の際の温度は、80℃〜130℃の範囲内とすることが好ましく、加熱環流時間は、1時間〜24時間とすることが好ましい。酸性化合物の濃度は、0.1〜3Mとするのが好ましい。酸性化合物の濃度をこの範囲とすることによって、硫酸ジルコニウム化合物の基本骨格を形成することが可能となる。
次に、無機プロトン伝導体を被覆した触媒−電解質複合体の特性等について説明する。先ず、白金を担持したカーボンナノチューブを硫酸ジルコニウムを含有する無機プロトン伝導体で被覆した触媒−電解質複合体(ZrS−Pt−CNT−MW)と、無機プロトン伝導体が被覆されていない白金を担持したカーボンナノチューブ(Pt−CNT−MW)のX線回折による分析結果を図4に示し、熱重量測定結果を図5に示す。使用したカーボンナノチューブは、多層構造のマルチウォールナノチューブである。白金は、触媒−電解質複合体の全体、即ち白金とカーボンナノチューブと無機プロトン伝導体との合計に対して15重量%担持されている。無機プロトン伝導体の厚さは、2〜3nmである。
図4に示すX線回折の結果から、白金を担持したカーボンナノチューブを硫酸ジルコニウム化合物を含有する無機プロトン伝導体で被覆した触媒−電解質複合体は、白金を担持したカーボンナノチューブと結晶構造がほぼ同一であることがわかる。
また、図5に示す熱重量測定結果から、無機プロトン伝導体で被覆した触媒−電解質複合体では、無機プロトン伝導体及びカーボンナノチューブの分解が約450〜550℃の範囲で起き、白金を担持したカーボンナノチューブでは、カーボンナノチューブの分解が約500℃で起きていることがわかる。
次に、白金を担持したカーボンナノチューブを硫酸ジルコニウムを含有する無機プロトン伝導体で被覆した触媒−電解質複合体(以下、単に無機プロトン伝導体で被覆した触媒−電解質複合体ともいう。)、及び白金を担持したカーボンナノチューブについて、触媒の酸化還元特性についてサイクリックボルタンメトリー法を用いて評価した。サイクリックボルタンメトリー測定条件は、0.06V〜1.2V、掃引速度20mV/s、測定温度は室温、電解液は0.1Mの次亜塩素酸、窒素雰囲気で行った。測定結果を図6に示す。図6に示す結果から、無機プロトン伝導体で被覆した触媒−電解質複合体(ZrS−Pt−CNT)は、白金を担持したカーボンナノチューブ(Pt−CNT)とほぼ同程度の電気化学的比表面積を有することがわかる。
次に、無機プロトン伝導体で被覆した触媒−電解質複合体、及び白金を担持したカーボンナノチューブについて、酸素還元反応の電流電圧特性を測定した。電流電圧特性の測定条件は、電位走査を1.2Vから0.06Vへ行い、掃引速度20mV/s、1600回転で行った。測定結果を図7に示す。図7に示す結果から、無機プロトン伝導体で被覆した触媒−電解質複合体は、電流電圧特性はわずかに低下したものの、触媒性能が大きく低下するほどではないことがいえる。
また、電圧0.9Vにおいて、単位質量あたりにおける酸素還元反応の電流電圧特性及び単位面積あたりにおける酸素還元反応の電流電圧特性の測定結果、電気化学的比表面積等を表1に示す。表1に示すように、無機プロトン伝導体で被覆した触媒−電解質複合体は、白金を担持したカーボンナノチューブに比べて、表面積や触媒活性はわずかに低下したものの、触媒性能が大きく低下するほどではないことがいえる。
次に、無機プロトン伝導体で被覆した触媒−電解質複合体について回転数の違いによる酸素還元反応の電流電圧特性を測定した。電流電圧特性の測定条件は、電位走査を1.2Vから0.06Vへ行い、掃引速度20mV/s、回転数を400から3600rpmまでとし、測定温度は室温、電解液は0.1Mの次亜塩素酸、酸素雰囲気で行った。測定結果を図8に示す。
また、白金を担持したカーボンナノチューブについても同様にして回転数の違いによる酸素還元反応の電流電圧特性を同じ条件で測定した。測定結果を図9に示す。
図10は、図7及び図8に基づいて、異なる電極電位における物質移動の寄与がない場合の反応電流ikを算出してプロットした図である。図10に示す結果から、無機プロトン伝導体で被覆した触媒−電解質複合体の比活性は、白金を担持したカーボンナノチューブと大きく変わらないことが分かる。
次に、無機プロトン伝導体で被覆した触媒−電解質複合体、及び白金を担持したカーボンナノチューブについて、単位面積あたりのメタノール酸化反応の比活性をサイクリックボルタンメトリー測定により評価した。測定条件は、0.06V〜1.2V、掃引速度20mV/s、0.1Mの次亜塩素酸と0.1Mのメタノールで窒素雰囲気下、室温で行った。無機プロトン伝導体で被覆した触媒−電解質複合体又は白金を担持したカーボンナノチューブを作用電極とし、対極に白金ワイヤを用い、基準電極に可逆水素電極(RHE)を用いた。測定結果を図11に示す。
図11に示す結果から、無機プロトン伝導体で被覆した触媒−電解質複合体は、酸化方向への掃引時のピーク電流と還元方向の掃引時のピーク電流値の比が白金を担持したカーボンナノチューブに比べて大きいことから、CO耐性が良いことがわかる。
また、窒素雰囲気下で0.1Mの次亜塩素酸と0.1Mのメタノールの混合液を用いて、窒素雰囲気下で定電位電解法によりメタノール酸化開始電位を測定した。測定結果を図12に示す。図12に示すように、無機プロトン伝導体で被覆した電極触媒及び白金を担持したカーボンナノチューブは、共に650mVの開始電位となった。
また、窒素雰囲気下で0.1Mの次亜塩素酸と0.1Mのメタノールの混合溶媒を用いて、窒素雰囲気下で定電位電解法により0.8Vにおける安定性を測定した。測定結果を図13に示す。図13に示す結果から、無機プロトン伝導体で被覆した触媒−電解質複合体及び白金を担持したカーボンナノチューブは、共に200mA/cm2で維持できていることがわかる。したがって、無機プロトン伝導体で被覆した場合であっても、長期安定性を有することがわかる。
以上より、白金を担持したカーボンナノチューブを硫酸ジルコニウムを含有する無機プロトン伝導体で被覆した触媒−電解質複合体は、無機プロトン伝導体が被覆されていても触媒としての活性が高く、また触媒が外れたり、抜け出さず、更に無機プロトン伝導体によりプロトンの伝導性が良好である。したがって、この触媒−電解質複合体を触媒層に用いることによって、電池性能を向上させることができる。同様に、金属触媒を担持したカーボン担体をプロトン伝導性無機化合物を含有するプロトン伝導体で被覆した触媒−電解質複合体であれば、触媒としての活性が高く、また触媒が外れたり、抜け出さず、無機プロトン伝導体によりプロトンの伝導性が良好である。
<2−2.無機アニオン伝導体を有する触媒−電解質複合体>
無機アニオン伝導体は、アニオン伝導性無機化合物を含有する。アニオン伝導性無機化合物としては、層状複水酸化物等を挙げることができる。層状複水酸化物(LDH)は、無機層状化合物であり、[M2+ 1−xM3+ x(OH)2][An− x/n・mH2O]で表され、式中のM2+はMg、Mn、Fe、Co、Ni等の2価の金属イオン、M3+はAl、Cr、Fe等の3価の金属イオンを示し、層間にAn−で示されるCO3 2−、OH−、Cl−、SO4 2−等のアニオンを示し、xは、0.11〜0.33である。
無機アニオン伝導体は、アニオン伝導性無機化合物を含有する。アニオン伝導性無機化合物としては、層状複水酸化物等を挙げることができる。層状複水酸化物(LDH)は、無機層状化合物であり、[M2+ 1−xM3+ x(OH)2][An− x/n・mH2O]で表され、式中のM2+はMg、Mn、Fe、Co、Ni等の2価の金属イオン、M3+はAl、Cr、Fe等の3価の金属イオンを示し、層間にAn−で示されるCO3 2−、OH−、Cl−、SO4 2−等のアニオンを示し、xは、0.11〜0.33である。
金属触媒を担持したカーボン担体に層状複水酸化物を被覆した触媒−電解質複合体(以下、単に層状複水酸化物を被覆した触媒−電解質複合体ともいう。)は、次のように製造することができる。先ず、1つ目の触媒−電解質複合体の製造方法は、層状複水酸化物と、金属触媒を担持したカーボン担体とをそれぞれ作製し、カーボン担体に層状複水酸化物を被覆する方法である。なお、以下の説明においてこの製造方法を第1の触媒−電解質複合体の製造方法という。
例えば、層状複水酸化物として[Mg2+ 1−xAlx(OH)2][Co3 2− x/2・mH2O](x=0.11〜0.33)を製造する方法は、先ず、Mg(NO3)2・H2Oと、Al(NO3)3・9H2Oと、Na2CO3・9H2Oとを水の中で混合し、水酸化ナトリウムを添加してpH9に調整し、30分間結晶成長させる。次に、80℃の乾燥機で4時間維持し、更に結晶成長させる。次に、得られた生成物を乾燥機から取出し、遠心分離を行い、洗浄する。そして、80℃で乾燥させて[Mg2+ 1−xAlx(OH)2][Co3 2− x/2・mH2O](x=0.11〜0.33)が得られる。なお、層状複水酸化物の製造方法は、このことに限定されず、製造する層状複水酸化物に応じて製造条件を適宜選択する。
金属触媒を担持したカーボン担体は、例えば、含浸法、液相担持法、蒸発乾固法、コロイド吸着法、噴霧熱分解法、逆ミセル(マイクロエマルジョン法)等の公知の方法により、カーボン担体に金属触媒を担持させて製造することができる。
そして、以上のようにして得られた例えば層状複水酸化物の[Mg2+ 1−xAlx(OH)2][Co3 2− x/2・mH2O]と、白金が担持されたカーボン担体とを30分間均質化することで、白金が担持されたカーボン担体と層状複水酸化物の合計に対して50重量%(白金が担持されたカーボン担体と層状複水酸化物の比が1:1)が層状複水酸化物で被覆された触媒−電解質複合体を得ることができる。
2つ目の触媒−電解質複合体の製造方法は、層状複水酸化物の製造と、金属触媒を担持したカーボン担体を層状複水酸化物で被覆することとを同時に行い、カーボン担体に層状複水酸化物を被覆する方法である。なお、以下の説明においてこの製造方法を第2の触媒−電解質複合体の製造方法という。
具体的に、Mg(NO3)2・H2Oと、Al(NO3)3・9H2Oと、Na2CO3・9H2Oと水中で混合し、水酸化ナトリウムを添加してpH3に調整して核生成させる。その後、白金が担持されたカーボン担体と混合して、30分間超音波処理する。この状態では白金が担持されたカーボン担体は分散性が良く、活性は低下していない。次に、水酸化ナトリウムを加え、pHを9に調整し、30分間、層状複水酸化物となる結晶を成長させる。次に、80℃の油浴中で4時間維持し、更に層状複水酸化物となる結晶を成長させる。次に、得られた生成物を遠心分離し、洗浄する。そして、80℃で乾燥させて、白金を担持したカーボン担体に[Mg2+ 1−xAlx(OH)2][Co3 2− x/2・mH2O](x=0.33、Mg:Al=2:1)で被覆された触媒−電解質複合体を得ることができる。なお、層状複水酸化物の製造方法は、このことに限定されず、製造する層状複水酸化物に応じて製造条件を適宜選択する。
層状複水酸化物の被覆量は、層状複水酸化物の原料となるMg(NO3)2・H2O、Al(NO3)3・9H2O、Na2CO3・9H2Oの添加量に応じて調整することができる。
第2の触媒−電解質複合体の製造方法により得られた仕込み比で50重量%、25重量%の層状複水酸化物が被覆された金属触媒を担持したカーボン担体からなる触媒−電解質複合体、層状複水酸化物のみのX線回折を行った。X線回折の結果を図14に示す。図14に示す結果から、50重量%の層状複水酸化物では、白金及び層状複水酸化物のピークが観察でき、25重量%の層状複水酸化物では、白金のピークが観察できた。
また、上述した第1、第2の触媒−電解質複合体の製造方法の違いによる触媒−電解質複合体のI−V試験を行った。I−V試験を行うにあたり、膜電極接合体を次のように作製した。膜電極接合体は、カーボンペーパーの上に拡散層を形成し、その上に触媒層を形成した上で、電解質膜とのホットプレスにより接合した。
先ず、カーボンペーパー上に拡散層を形成した。フッ素処理済みのカーボンペーパーを3cm×3cmに切断した。30mLのビーカーに、カーボンブラック(Cabot製 商品名XC−72)を0.37gと、イソプロパノ−ル(IPA)を4.0gとを加え、超音波処理にて印刷に適した粘度になるまで混ぜた。その後、このビーカーに0.140gのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)溶液を添加し、約1分間撹拌し、拡散層作製用のペーストとした。その後、カーボンペーパー(東レ社製カーボンペーパー EC−TP1−060T)上に、スクリ−ン印刷法により拡散層作製用のペーストを塗布して拡散層を得た。その後、マッフル炉にて作製した拡散層を280℃で2時間焼成した後、350℃で2時間の条件にて焼成した。
次に、層状複水酸化物0.2gと46.1質量%の白金坦持カーボン(Pt:46.1%(田中貴金属社製、TEC10E50E))0.2gとエタノール2.6gを入れ30分間超音波ホモジナイザーにて混合した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)溶液0.13gを加えて5分間超音波ホモジナイザーにて混合することで、触媒層形成用のペーストを得た。続いて、スクリ−ン印刷法により、先に作製した拡散層付きカーボンペーパー上に触媒層形成用のペーストを塗布し、電極を作製した。作製した電極を乾燥した後、後述する作製方法により作製したMAPTAC(メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド)細孔フィリング膜と、作製した電極とを130℃、2kNの条件で1分間ホットプレスを用いて接合し、膜電極接合体(MEA)を作製した。
MAPTAC細孔フィリング膜は、ポリエチレンや耐熱架橋ポリエチレン等の多孔質基材をドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムで親水化した後、MAPTAC50重量%水溶液、架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド(N,N'-Methylenebisacrylamide)、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩(2,2’-Azobis (2-methyl propionamidine) dihydrochloride)の混合溶液へ含浸し、60℃で18時間以上静置することで多孔質基材内での充填重合を行った。洗浄を行った後、必要に応じて多孔質基材内での重合・洗浄を繰り返して、MAPTAC細孔フィリング膜を得た。
そして、作製した膜電極接合体を用いてI−V試験を行った。I−V試験は、セルを燃料電池発電評価装置(北斗電工社製、型番HJ1010ST8)へセットし、セルの温度を50℃、セルに対し空気極に相対湿度90%の加湿酸素500ml/min、燃料極に相対湿度90%の加湿水素100ml/minを供給してI−V特性を測定した。I−V試験の結果を図15(A)、(B)に示す。図15(A)、(B)に示す結果から、層状複水酸化物の製造と、金属触媒を担持したカーボン担体を層状複水酸化物で被覆することとを同時に行う第2の触媒−電解質複合体の製造方法の方が、層状複水酸化物の製造した後、カーボン担体を層状複水酸化物で被覆する第1の触媒−電解質複合体の製造方法に比べて、イオン伝導度が高く、電池性能が高くなることがわかる。
また、カーボン担体への層状複水酸化物の被覆量の違いによるI−V試験を行った。層状複水酸化物の被覆量が50重量%、25重量%の触媒−電解質複合体で触媒層を形成し、膜電極接合体を作製したこと以外は、上述したI−V試験の条件と同様の条件にてI−V試験を行った。
I−V試験の結果を図16(A)、(B)に示す。図16(A)、(B)に示す結果から、層状複水酸化物の被覆量がカーボン担体全体に対して50重量%である触媒−電解質複合体の方が、被覆量が25重量%の電極触媒より、イオン伝導度が高く、電池性能が高いことがわかる。
次に、層状複水酸化物の結晶構造と電池性能との関係を示す。先ず、以下の4種類の電極触媒を作製した。
(1)層状複水酸化物として[Mg2+ 1−xAlx(OH)2][Co3 2− x/2・mH2O](x=0.33)を合成した後、触媒ペーストへ導入し、上述した第1の触媒−電解質複合体の製造方法により、層状複水酸化物と白金を担持したカーボン(白金担持カーボン)の比率が1:1である触媒−電解質複合体を含有する触媒層塗布液を作製した。
(2)白金担持カーボンに層状複水酸化物として[Mg2+ 1−xAlx(OH)2][Co3 2− x/2・mH2O](x=0.33)を被覆した触媒−電解質複合体を上述した第2の触媒−電解質複合体の製造方法において、Mg(NO3)2・H2Oと、Al(NO3)3・9H2Oと、Na2CO3・9H2Oとを水の中で混合し、水酸化ナトリウムを添加してpH9に調整して核生成させた後、白金が担持されたカーボン担体と混合して、30分間超音波処理する。次に、80℃の油浴中で4時間維持し、層状複水酸化物となる結晶を成長させる。次に、得られた生成物を遠心分離し、洗浄する。そして、80℃で乾燥させて、白金を担持したカーボン担体を[Mg2+ 0.66Al0.33(OH)2][Co3 2− 0.17・mH2O]で被覆された触媒−電解質複合体を作製した。層状複水酸化物と白金担持カーボンとの仕込み比率は1:1である。この触媒−電解質複合体を含有する触媒層塗布液を作製した。
(3)白金担持カーボンに層状複水酸化物として[Mg2+ 1−xAlx(OH)2][Co3 2− x/2・mH2O](x=0.33)を被覆した触媒−電解質複合体を上述した第2の触媒−電解質複合体の製造方法により作製した。層状複水酸化物と白金担持カーボンとの仕込み比率は1:1である。この触媒−電解質複合体を含有する触媒層塗布液を作製した。
(4)炭素に46%白金を担持した電極触媒(Pt/C)を含有する触媒層塗布液を作製した。
(1)層状複水酸化物として[Mg2+ 1−xAlx(OH)2][Co3 2− x/2・mH2O](x=0.33)を合成した後、触媒ペーストへ導入し、上述した第1の触媒−電解質複合体の製造方法により、層状複水酸化物と白金を担持したカーボン(白金担持カーボン)の比率が1:1である触媒−電解質複合体を含有する触媒層塗布液を作製した。
(2)白金担持カーボンに層状複水酸化物として[Mg2+ 1−xAlx(OH)2][Co3 2− x/2・mH2O](x=0.33)を被覆した触媒−電解質複合体を上述した第2の触媒−電解質複合体の製造方法において、Mg(NO3)2・H2Oと、Al(NO3)3・9H2Oと、Na2CO3・9H2Oとを水の中で混合し、水酸化ナトリウムを添加してpH9に調整して核生成させた後、白金が担持されたカーボン担体と混合して、30分間超音波処理する。次に、80℃の油浴中で4時間維持し、層状複水酸化物となる結晶を成長させる。次に、得られた生成物を遠心分離し、洗浄する。そして、80℃で乾燥させて、白金を担持したカーボン担体を[Mg2+ 0.66Al0.33(OH)2][Co3 2− 0.17・mH2O]で被覆された触媒−電解質複合体を作製した。層状複水酸化物と白金担持カーボンとの仕込み比率は1:1である。この触媒−電解質複合体を含有する触媒層塗布液を作製した。
(3)白金担持カーボンに層状複水酸化物として[Mg2+ 1−xAlx(OH)2][Co3 2− x/2・mH2O](x=0.33)を被覆した触媒−電解質複合体を上述した第2の触媒−電解質複合体の製造方法により作製した。層状複水酸化物と白金担持カーボンとの仕込み比率は1:1である。この触媒−電解質複合体を含有する触媒層塗布液を作製した。
(4)炭素に46%白金を担持した電極触媒(Pt/C)を含有する触媒層塗布液を作製した。
以上のようにして作製した触媒層塗布液に含有させた触媒−電解質複合体について、透過型電子顕微鏡にて観察した結果を図17〜図20に示す。図17は、LDHのみであり、図18は、上記(2)の触媒−電解質複合体であり、図19は、上記(3)の触媒−電解質複合体であり、図20は、上記(4)の電極触媒(Pt/C)である。図18から上記(2)の触媒−電解質複合体は、白金担持カーボンに層状複水酸化物が付着している構造を確認できたが、層状複水酸化物の形状は不均一であった。層状複水酸化物の結晶構造はほとんど不定形となった。図19から上記(3)の電極触媒は、白金担持カーボンに層状複水酸化物が付着していることを確認できた。更に、(3)の触媒−電解質複合体は、層状複水酸化物の層状結晶が綺麗に現われていた。したがって、透過型電子顕微鏡による観察によって、(3)の触媒−電解質複合体の結晶構造は、(2)の結晶構造と異なることがわかった。
次に、(1)〜(4)の触媒−電解質複合体のX線回折を行った。(1)〜(4)のX線回折の結果を図21〜24に示す。図21に示す(1)については、触媒と混合する前の層状複水酸化物のみのX線回折では、(006)面に由来する10度のピークがはっきり確認できた。図22及び図23に示す白金担持カーボンに層状複水酸化物を被覆した(2)及び(3)のX線回折では、いずれも(006)面に由来するピークが明確に確認できなかった。また、図24に示すPt/Cの(4)のX線回折と比較すると、10度のピークが若干存在することが分かった。
次に、(1)〜(4)の触媒塗布液をMAPTAC膜上に塗布し、乾燥して触媒層を形成し、膜電極接合体を作製した。また、I−V試験の条件は、上述したI−V試験と同じである。I−V試験の1日目の測定結果を図25及び図26に示し、2日目の測定結果を図27及び図28に示す。
図25及び図26に示す結果から、層状複水酸化物を全く導入せず、Pt/Cを触媒に用いた(4)の場合は、イオン伝導度が低く、電池性能が低下することがわかる。(1)の触媒−電解質複合体の場合では、膜電極接合体のイオン伝導度が一番高く、性能が高いことがわかった。(2)及び(3)の触媒−電解質複合体の場合では、イオン伝導度はほぼ同じであるが、開回路電圧は全く違う挙動が見られた。(3)の方が、開回路電圧が低いことがわかる。
また、図27及び図28に示す2日目の測定結果から、すべての膜電極接合体の性能が落ちていることがわかる。層状複水酸化物を含む触媒−電解質複合体を使用した膜電極接合体の(2)及び(3)では、触媒−電解質複合体の作製手法にかかわらず、ほぼ同じ性能となった。また、開回路電圧を見ると、(1)の触媒−電解質複合体を用いた膜電極接合体と(4)のPt/Cのみの膜電極接合体は、1日目と比べて著しく低下した。(2)及び(3)の触媒−電解質複合体を用いた膜電極接合体の開回路電圧は、1日目とほとんど変化していない。
以上の図25〜28に示す結果から、カーボン担体を層状複水酸化物で被覆することによって、層状複水酸化物を被覆していないPt/Cよりもイオン伝導性が向上することがわかる。このことから、触媒層では、層状複水酸化物を介してイオン伝導していることがわかる。また、層状複水酸化物を被覆していないPt/Cを電極触媒に用いた膜電極接合体では、イオン伝導が低いため、性能が落ちている。また、(2)及び(3)の触媒−電解質複合体では、触媒層の三相界面を保つことができているといえる。更に、(2)及び(3)の触媒−電解質複合体を用いた試験結果から、異なる結晶構造の層状複水酸化物を用いた場合、電池性能も異なることがわかった。
以上より、金属触媒を担持したカーボン担体を層状複水酸化物等のアニオン伝導無機化合物を含有する無機アニオン伝導体を被覆した触媒−電解質複合体は、アニオン伝導無機化合物で金属触媒を担持したカーボン担体に被覆されていても触媒としての活性が高く、また触媒が外れたり、抜け出さず、更に無機アニオン伝導体によりアニオンの伝導性が良好である。したがって、この電極触媒をアルカリ形燃料電池等の触媒層に用いることによって、電池性能を向上させることができる。
<2−3.無機有機積層体を有する触媒−電解質複合体>
無機有機積層体は、無機化合物と、有機化合物とを積層したものであり、有機無機の異相界面を形成することでイオン伝導性を向上させることができる。無機有機積層体は、例えば、触媒担持カーボンに無機化合物、有機化合物の順、又は有機化合物、無機化合物の順に積層したもの等を挙げることができる。
無機有機積層体は、無機化合物と、有機化合物とを積層したものであり、有機無機の異相界面を形成することでイオン伝導性を向上させることができる。無機有機積層体は、例えば、触媒担持カーボンに無機化合物、有機化合物の順、又は有機化合物、無機化合物の順に積層したもの等を挙げることができる。
無機化合物としては、硫酸ジルコニウム、スルホフェニルホスホン酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、硫酸ジルコニア等のジルコニウム化合物、層状複水酸化物等を挙げることができる。
有機化合物としては、例えば、スルホン酸基、アンモニウム基、アニオン交換基等を含有するポリマーを挙げることができる。スルホン酸基を有するポリマーとしては、例えば、SPEEK:スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、SPEK:スルホン化ポリエーテルケトン、SPES、SP3O:ポリ(2,6−ジフェニル−4−フェニレンオキサイド)、SPPBP:スルホン化ポリ(4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン)、SPPO:スルホン化ポリフェニレンオキサイド又はポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)、SPPQ:ポリ(フェニルキノザリン)、SPS:スルホン化ポリスチレン、SPSF:スルホン化ポリスルホン、SPSU:スルホン化ポリスルホンウデル(sulfonated polysulfone Udel)、パーフルオロスルホン酸ポリマー(Nafion(登録商標)等)等を挙げることができる。
アンモニウム基を有するポリマーとしては、フルオロカーボン系や炭化水素系のポリマーへアニオン交換基を導入したポリマーを挙げることができ、アニオン交換基としてはトリメチルアンモニウム等の第4級アンモニウム基等を挙げることができる。具体的には、フルオロカーボン系の主鎖あるいは骨格部位として、次のものを挙げることができる。ポリテトラフルオロエチレン(perfluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(poly(vinylidene fluoride))、ポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重体(poly(tetrafluoroethylene-co-hexafluoropropylene))、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(poly(ethylene-co-tetrafluoroethylene))等である。トリメチルアンモニウム(trimethylammonium)等の4級アンモニウム基の導入法としては、パーフルオロアルキルエーテル(perfluoroalkyl ether)側鎖との反応や、骨格ポリマーへ4−(クロロメチル)スチレン(vinylbenzyl chloride(VBC))を放射線グラフト重合(radiation-graft)したうえで変換する等である。
また、炭化水素系のポリマーにアニオン交換基を導入したポリマーの主鎖としては、次のものを挙げることができる。具体的に、ポリアリーレンエーテルスルホン(poly(arylene ether sulfone))、ポリフタラジノンエーテルスルホンケトン(poly(phthalazinone ether sulfone ketone))、ポリスルホン(polysulfone)、ポリスチレン−ブロック−ポリエチレン・ブチレン共重合体−ブロック−ポリスチレン(polystyrene-b-poly(ethylene-co-butylene)-b-polystyren)、ポリエピクロロヒドリン・アリルグリシジルエーテル共重合体(poly(epichlorohydrin -co-allyl glycidyl ether)、ポリビニルアルコール(poly(vinyl alcohol))、ポリフェニレン(poly(phenylene))、ポリクロロメチルスチレン(poly(vinylbenzyl chloride))等である。イオン伝導性官能基の導入手法としては、主鎖をクロロメチル化した後に、トリメチルアミン(trimethylamine)、トリエチルアミン(triethylamine)、グアニジニウム(guanidinium)でアミン化反応あるいはN,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン(N,N,N’,N’-tetramethyl-1,6-hexanediamine)でアミン化および架橋反応を行う方法、あるいは主鎖マトリックス中に、1,4−ジアザビシクロ−[2,2,2]オクタン(1,4-diazabicyclo-[2,2,2]-octane)、1−アザビシクロ−[2,2,2]オクタン(1-azabicyclo-[2,2,2]-octane)を導入し、ヘキサンジチオール(hexanedithiol)で架橋する方法、側鎖に官能基を有するポリマーの場合は側鎖の官能基との反応によりトリメチルアンモニウム(trimethylammonium)基を導入する方法がある。また、ポリMAPTACや、オレフィン(olefin)を持つモノマーとシクロオクタン(cyclooctene)から合成されるポリマーでも良い。なお、イオン伝導性官能基としては、トリメチルアンモニウムに限らずオニウム構造を有していれば良い。
金属触媒を担持したカーボン担体を無機有機積層体で被覆することによって、触媒の溶出を抑制でき、触媒層における酸化還元反応の活性を維持できると共に、プロトンやイオン伝導性を良好にすることができる。
以上のようなイオン伝導体で被覆された金属触媒が担持されたカーボン担体は、触媒としての性能が維持できると共に、イオン伝導性が良好である。したがって、この触媒−電解質複合体を用いた燃料電池では、電池性能を向上させることができる。
1 固体高分子形燃料電池、2 高分子電解質膜、3、4 触媒層、5、6 ガス拡散層、7、8 セパレータ、9 アノード、10 カソード、11 外部回路
Claims (26)
- 金属触媒を担持したカーボン担体にイオン伝導体が被覆された触媒−電解質複合体。
- 上記イオン伝導体は、プロトン伝導性無機化合物を含有する無機プロトン伝導体である請求項1記載の触媒−電解質複合体。
- 上記プロトン伝導性無機化合物は、ジルコニウム化合物である請求項2記載の触媒−電解質複合体。
- 上記ジルコニウム化合物は、硫酸ジルコニウム、スルホフェニルホスホン酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、硫酸ジルコニアのいずれかである請求項3記載の触媒−電解質複合体。
- 上記カーボン担体は、カーボンナノチューブである請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の触媒−電解質複合体。
- 上記金属触媒は、白金又はこの合金である請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の触媒−電解質複合体。
- 上記イオン伝導体は、アニオン伝導性無機化合物を含有する無機アニオン伝導体である請求項1記載の触媒−電解質複合体。
- 上記アニオン伝導性無機化合物は、層状複水酸化物である請求項7記載の触媒−電解質複合体。
- 上記カーボン担体は、カーボンナノチューブである請求項7又は請求項8記載の触媒−電解質複合体。
- 上記金属触媒は、白金又はこの合金である請求項7乃至請求項9のいずれか1項記載の触媒−電解質複合体。
- 上記イオン伝導体は、無機有機積層体である請求項1記載の触媒−電解質複合体。
- 金属触媒を担持したカーボン担体をイオン伝導体で被覆する触媒−電解質複合体の製造方法。
- 上記イオン伝導体は、プロトン伝導性無機化合物を含有する無機プロトン伝導体である請求項12記載の触媒−電解質複合体の製造方法。
- 溶媒中で、上記金属触媒を担持したカーボン担体と、上記プロトン伝導性無機化合物の前駆体と、スルホン酸基、スルホ基、スルホニル基、リン酸基のいずれかを有する酸性化合物とを反応させて、上記カーボン担体を、上記プロトン伝導性無機化合物を含有する無機プロトン伝導体で被覆する請求項13記載の触媒−電解質複合体の製造方法。
- 上記金属触媒を担持したカーボン担体、及び上記プロトン伝導性無機化合物を含有する無機プロトン伝導体を作製し、
上記カーボン担体を上記無機プロトン伝導体で被覆する請求項13記載の触媒−電解質複合体の製造方法。 - 上記プロトン伝導性無機化合物は、ジルコニウム化合物である請求項13乃至請求項15のいずれか1項記載の触媒−電解質複合体の製造方法。
- 上記ジルコニウム化合物は、硫酸ジルコニウム、スルホフェニルホスホン酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、硫酸ジルコニアのいずれかである請求項16項記載の触媒−電解質複合体の製造方法。
- 上記カーボン担体は、カーボンナノチューブである請求項12乃至請求項17のいずれか1項記載の触媒−電解質複合体の製造方法。
- 上記金属触媒は、白金又はこの合金である請求項12乃至請求項18のいずれか1項記載の触媒−電解質複合体の製造方法。
- 上記イオン伝導体は、アニオン伝導性無機化合物を含有する無機アニオン伝導体である請求項12記載の触媒−電解質複合体の製造方法。
- 上記アニオン伝導性無機化合物を含有する溶媒に、上記金属触媒を担持したカーボン担体を分散させ、上記カーボン担体を、上記アニオン伝導性無機化合物を含有する無機アニオン伝導体で被覆する請求項20記載の触媒−電解質複合体の製造方法。
- 上記金属触媒を担持したカーボン担体、及び上記アニオン伝導性無機化合物を含有する無機アニオン伝導体を作製し、
上記カーボン担体を上記無機アニオン伝導体で被覆する請求項20記載の触媒−電解質複合体の製造方法。 - 上記アニオン伝導性無機化合物は、層状複水酸化物である請求項20乃至請求項22のいずれか1項記載の触媒−電解質複合体の製造方法。
- 上記カーボン担体は、カーボンナノチューブである請求項20乃至請求項23のいずれか1項記載の触媒−電解質複合体の製造方法。
- 上記金属触媒は、白金又はこの合金である請求項20乃至請求項24のいずれか1項記載の触媒−電解質複合体の製造方法。
- 上記イオン伝導体は、無機有機積層体である請求項12記載の触媒−電解質複合体の製造方法。
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