JP2013209326A - 浮上性包装体 - Google Patents
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Abstract
【課題】湖沼や湾で異常増殖する植物プランクトンの殺滅/増殖抑制のため、水面近傍で一定時間以上過酸化水素を放出させ、適度な濃度で維持させる。
【解決手段】水との接触により過酸化水素を生じる固形組成物が水透過性高分子フィルムに密包された形態で、水面近傍での浮上性及び過酸化水素の徐放性を特徴とする浮上性包装体を提供する。
【選択図】なし
【解決手段】水との接触により過酸化水素を生じる固形組成物が水透過性高分子フィルムに密包された形態で、水面近傍での浮上性及び過酸化水素の徐放性を特徴とする浮上性包装体を提供する。
【選択図】なし
Description
本発明は、水と接触して過酸化水素を生じる固形組成物の包装体とその使用法に関する。
水と接触して過酸化水素を生じる過酸化水素付加物乃至は過酸化物を主成分とする固形組成物は、液体である過酸化水素と比較して保存や輸送、取り扱いが容易となることから、広い用途で用いられている。
過酸化水素の付加物の例として、炭酸ナトリウム過酸化水素付加物(一般名過炭酸ナトリウム)が挙げられる。この過炭酸ナトリウムは、酸素系漂白剤として粉系洗剤に配合されており、使用時は水に溶解して過酸化水素を遊離し、酸化剤として働くことで漂白作用を示す。
また、水と接触して過酸化水素を生じる過酸化物には、例えば過酸化カルシウムがある。過酸化カルシウムは水に難溶であるが、ゆるやかに水と反応して過酸化水素を生じる。この過酸化水素がさらに分解して酸素を生じる性質に着目し、農業における土壌改良剤、養殖業における酸素供給剤、あるいは土壌浄化における注入剤として用いられている。
また、水と接触して過酸化水素を生じる過酸化物には、例えば過酸化カルシウムがある。過酸化カルシウムは水に難溶であるが、ゆるやかに水と反応して過酸化水素を生じる。この過酸化水素がさらに分解して酸素を生じる性質に着目し、農業における土壌改良剤、養殖業における酸素供給剤、あるいは土壌浄化における注入剤として用いられている。
これらの固形組成物は、一般的に水中に投入した場合は速やかに沈降する。これはその比重が水より大きいためである。固形組成物の粒の大きさなどにより見掛け上の比重を変化させることは可能であるが、真の比重を変化させることは困難であり、水面近くで長時間浮遊する過酸化水素付加物乃至は過酸化物の固形組成物は報告されていない。
また、これら固形組成物を増量賦活剤や発泡剤によって被覆、あるいは両者を混合したものについては種々の前例があり公知であるが、長時間浮遊する性質を与えたものについては報告されていない。かつ、こうした配合物では、固形組成物の主成分である過酸化水素付加物乃至は過酸化物の安定性を損ない、短時間で該成分が分解してしまう恐れがある。
過酸化水素付加物乃至は過酸化物の固形組成物を水面近くで浮遊させることが望まれる例として、例えば異常増殖した植物プランクトンの殺滅/増殖抑制がある。
植物プランクトンが水質の富栄養化などの影響により異常に増殖する現象は海水域では赤潮、淡水域ではアオコや淡水赤潮と呼ばれており、その発生種によって周辺環境に大きな被害を与える。赤潮は水域の貧酸素化を招き、養殖業において養殖魚の大量斃死に繋がることがある。
アオコは同じく水域の貧酸素化を招いて魚介類の大量斃死に繋がる他に、水道水のカビ臭の原因となる。また、その死骸からの悪臭の発生による近隣住民の苦情、あるいは景観の悪化など、幅広い損害を社会に与えている。
アオコは同じく水域の貧酸素化を招いて魚介類の大量斃死に繋がる他に、水道水のカビ臭の原因となる。また、その死骸からの悪臭の発生による近隣住民の苦情、あるいは景観の悪化など、幅広い損害を社会に与えている。
発生する植物プランクトンの種により被害状況は異なるが、特に大きな被害を及ぼす可能性があるとされているのは、赤潮における渦鞭毛藻類及びラフィド藻類、アオコにおける藍藻類である。これらの植物プランクトンの異常増殖は比較的水面近くで起こることが特徴である。
これらの原因となる植物プランクトンの殺滅/増殖抑制については、過酸化水素が有効であることが実験室での検討などで知られている。(特許文献1〜2、非特許文献1)
しかしながら、過酸化水素水溶液を湖沼・海域などに直接散布する場合には、その対象となる水量の大きさから、より大量の溶液を散布せざるを得ず、それが水域全体に拡散して植物プランクトン以外の多くの微生物・魚介類・昆虫・水生植物などの水棲生物に悪影響を及ぼし、生態系の保全を損なう事が懸念される。
また、環境中に散布された過酸化水素は、水中に存在する遷移金属イオンなどと容易に接触して分解が促進されるので、植物プランクトンの殺滅/増殖抑制という目的に合致した持続性を得ることが難しい。一方、水との接触により過酸化水素を生じる過酸化水素付加物乃至は過酸化物の固形組成物を水系に散布した場合、それらは水面もしくはその近傍に留まらずに水底へと沈降していく。結果として、水底においてほとんどの過酸化水素が放出されるため、水面近くの植物プランクトンに有効に作用させることは難しい。
農業分野においては、農薬をポリビニルアルコールなどの水溶性フィルムで包装することで、水面に散布したときにフィルムが内部の薬剤と共に展開しながら溶解し、該薬剤が水と直接的に接触して効果を発揮する、という発明が報告されている。(特許文献3〜4)この発明を用いると、包装体が水面散布後に一時的に浮上することが記載されている。
しかし、当該発明の目的は、農薬散布にかかる手間を低減するというものであり、農薬に水面もしくはその近傍で効果を発揮せしむ事を目的とはしていない。また、包装体は一時的に浮上性を得るが、その水溶性フィルムは、水に容易に溶解して内包する農薬を速やかに放出する材質のものが選ばれているため、持続的な浮上性を与える事はできない。
Biochemistry(Moscow),Vol.64,No.1,1999年,47〜53ページ
異常増殖した植物プランクトン対策のためなど、過酸化水素を水面近くで持続的に放出しうる簡易な手段として、水と接触して過酸化水素を生じる固形組成物に浮上性を与え、かつ該過酸化水素を持続的に周辺水に放出しうるような製剤形態が望まれている。本発明はこの要望に答える技術を提供するものである。
本発明者は前記要望に答える技術を鋭意研究した結果、本発明に至ったものである。すなわち本発明は、水との接触により過酸化水素を生じる固形組成物を、水透過性高分子フィルムで包装して浮上性を与える製剤化技術と、この包装体を水系に投入することにより持続的に水面近くで過酸化水素を放出させる方法を提供する。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
[1]水との接触により過酸化水素を生じる固形組成物と水透過性高分子フィルムからなり、水面を含む水中で過酸化水素を徐放することを特徴とする、浮上性包装体。
[2]水との接触により過酸化水素を生じる固形組成物を水透過性高分子フィルムで密包することを特徴とする、[1]に記載の浮上性包装体。
[3]前記固形組成物が、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウム、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウムからなる群より選択される1種または2種以上を含む固形組成物であることを特徴とする、[1]または[2]に記載の浮上性包装体。
[4]前記水透過性高分子フィルムがポリビニルアルコールである、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の浮上性包装体。
[5][1]〜[4]のいずれか一項に記載の浮上性包装体を水系に投げ込み、過酸化水素を水面もしくは水中で徐放させることを特徴とする散布方法。
[6][1]〜[4]のいずれか一項に記載の浮上性包装体を水系に投げ込み、徐放される過酸化水素により植物プランクトンを殺滅/増殖抑制することを特徴とする植物プランクトン抑制方法。
本発明の包装体を水系に投入すると、水透過性高分子フィルムを透過して水が内部に侵入し、包装された固形組成物と接触する。次いで水との接触により固形組成物から過酸化水素が発生するが、本発明者は、該過酸化水素が水透過性高分子フィルムを透過して包装体の外部へ放出されることを発見した。これは、過酸化水素が、分子量的には水分子の約1.9倍あるにもかかわらず、分子構造や親水性など物理・化学的性質が水分子に近いために起こると考えられる。
本発明では、水透過性高分子フィルムに固形組成物を包含させる際に、包含方法にも拠るが、ある程度の空気がフィルム内に保持される。また、該固形組成物が水と反応して過酸化水素が放出されると、その一部はさらに分解して気体(酸素)となるため、これもフィルム内に保持される。こうした気体保持等によって、本発明の浮上性包装体は十分な浮上性を有する。
本発明は、水と接触して過酸化水素を生じる固形組成物を水透過性高分子フィルムで包装して持続的な浮上性を与えたことに加え、生じた過酸化水素が水透過性高分子フィルムを通過して放出される点に着目した発明である。本発明により、水と接触して過酸化水素を生じる固形組成物を水系に散布する場合でも、容易かつ持続的に水面近く過酸化水素を放出させることが可能となる。
例えば、湖沼環境において問題視されるアオコを殺滅/増殖抑制する場合、本発明を用いれば固形組成物を浮上性包装体として散布することができ、取扱いが非常に容易となる。また、該アオコは風や水の流れで水面を移動しやすいが、その場合も、本発明の浮上性包装体もアオコと共に移動するので、確実にアオコに対する過酸化水素の殺滅/増殖抑制効果が期待できる。また、このとき、過酸化水素の発生が穏やかな固形組成物、特に過酸化カルシウムなどを用いることで、アオコに選択的に効果を示すような低い濃度を維持した過酸化水素の放出が可能となる。
本発明に用いる、水と接触して過酸化水素を生じる固形組成物は、単独であれば水に沈降するが、本発明により浮上性を与えられるものであれば何でも用いることができる。例えば、過酸化水素付加物としては炭酸ナトリウム過酸化水素付加物、ホウ酸ナトリウム過酸化水素付加物が挙げられる。過酸化物としては、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウムが挙げられる。これらのうちから1種もしくは2種以上を含む固形組成物を用いれば良い。特に過酸化カルシウムや過酸化マグネシウムのように難溶性の物質は、過酸化水素の放出が長時間にわたって行われる特徴があり、好ましい。
また、固形組成物の形状は、目的に応じて適宜選択すればよい。同じもの、例えば過酸化カルシウムであれば、同量であっても粒状か粉状かによって徐放される過酸化水素の量・濃度をコントロールすることができる。したがって、所望の過酸化水素濃度・該濃度持続時間を得るために、固形組成物の量・形状、さらには後述する水透過性フィルムの種類、膜厚などを適宜選択すればよい。
固形組成物を包装する水透過性フィルムは水を透過させる性質を持ち、一定の強度を持つものならば適宜選択することができる。例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、デンプン、改質デンプン、ゼラチンが挙げられる。ただし、包装された状態で固形組成物と共に内封されている気体を透過させない材質を選ぶ必要がある。
また、フィルムの水溶性については固形組成物に浮上性を与えたい期間に応じて選択すればよい。フィルム水溶性は、原料の重合度、フィルムの厚み、化学的な修飾等により変化させることができる。自然環境中に使用する場合は、生分解性を持つフィルムを用いることで、環境への影響を低減させることができる。
包装の形態については、固形組成物を密包できるものであれば適宜選ぶことができるが、例えば2枚重ねした、あるいは袋状に折りたたんだフィルム片の周辺部を熱接着する方法、筒状のフィルムの両端を縛る方法等が挙げられる。このとき、任意の量の空気を固形組成物と共に内封することで、水系に投入した直後から浮上性を得ることができる。内封した空気量が不十分な場合であっても、水と接触した固形組成物から過酸化水素が生じ、その一部が水と酸素に分解する過程で気体(酸素)が生じるので、これにより水系に投入した後一定の期間をおいて浮上性を得ることもできる。
本発明の浮上型包装体には、必要に応じて、何らかの添加物を共に包装してもよい。ただし、水と接触して過酸化水素を生じる固形組成物の安定性を損なうものもの、もしくは過酸化水素の発生が阻害されるものは、特段の理由がない限り、避けるほうが好ましい。
包装体の材質・大きさ・厚さ、および中身の量・形状そのほかの条件は、包装体の浮上性や過酸化水素の徐放性、また水系への投与方法など取扱性等が、使用目的に合致するよう適宜選択できる。
次に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)過酸化カルシウムの2mm粒剤(日本パーオキサイド(株)製)4gをポリビニルアルコールのフィルム(厚さ30マイクロメートル、5cm□)2枚で上下から挟み、フィルムの四辺を熱接着することで包装体を得た。
(実施例2)実施例1における過酸化カルシウム2mm粒剤の代わりに粉剤(日本パーオキサイド(株)製)を用い、同じく包装体を調製した。
(比較例1)過酸化カルシウムの2mm粒剤4gを包装体としないでそのまま用いた。
(試験例)
400mlの水を入れた容器を3つ用意し、実施例1および実施例2の包装体をそれぞれ投入した。また、比較例1の粒剤をそのまま投入した。これらを30℃に保ちながら観察し、包装体および粒剤の浮上性を観察した。また、水中の過酸化水素濃度を過マンガン酸カリウム滴定により測定した。
400mlの水を入れた容器を3つ用意し、実施例1および実施例2の包装体をそれぞれ投入した。また、比較例1の粒剤をそのまま投入した。これらを30℃に保ちながら観察し、包装体および粒剤の浮上性を観察した。また、水中の過酸化水素濃度を過マンガン酸カリウム滴定により測定した。
浮上性:実施例1および実施例2の包装体は、投入直後から水面に浮上し、5時間経過した時点でも浮上性を保った。比較例1では、投入した2mm粒剤はただちに沈降し、浮上することはなかった。
過酸化水素濃度:表1に、水中の過酸化水素濃度を示す。いずれの試料においても、水中から過酸化水素が検出されたが、実施例1、2では0.5ppm〜2ppmと好ましいレベルを保った。比較例1では10ppmと高い濃度を示した。
環境問題である植物プランクトンの異常増殖への対策として、例えばアオコを殺滅/増殖抑制する場合、本発明を用いれば固形組成物を浮上性包装体として散布することができ、取扱いが非常に容易となる。また、アオコが風や水の流れで移動した場合に、本発明の浮上性包装体がアオコと共に移動することで、確実にアオコに対する過酸化水素の殺滅/増殖抑制効果が期待できる。このとき、過酸化水素の発生が穏やかな固形組成物、特に過酸化カルシウムなどを用いることで、アオコに選択的に効果を示すような低い濃度を維持した過酸化水素の放出が可能となる。
Claims (6)
- 水との接触により過酸化水素を生じる固形組成物と水透過性高分子フィルムからなり、水面を含む水中で過酸化水素を徐放することを特徴とする、浮上性包装体。
- 水との接触により過酸化水素を生じる固形組成物を水透過性高分子フィルムで密包することを特徴とする、請求項1に記載の浮上性包装体。
- 前記固形組成物が、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウム、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウムからなる群より選択される1種または2種以上を含む固形組成物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の浮上性包装体。
- 前記水透過性高分子フィルムがポリビニルアルコールである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の浮上性包装体。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の浮上性包装体を水系に投げ込み、過酸化水素を水面もしくは水中で徐放させることを特徴とする散布方法。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の浮上性包装体を水系に投げ込み、徐放される過酸化水素により植物プランクトンを殺滅/増殖抑制することを特徴とする植物プランクトン抑制方法。
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