JP2013208574A - 固液分離装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】固液分離装置において、処理対象の懸濁液から固形物を効率良く回収すると共に、固液分離槽11内のフィルタ浮上側11Aにおける固形物濃度の濃縮を防止する。
【解決手段】固形物で懸濁した処理対象液W1が供給される固液分離槽11と、この固液分離槽11内に処理対象液W1に一部浸漬された状態で循環移動可能に配置されて固液分離槽11内に濾液貯留室Sを画成するフィルタ121と、フィルタ121の外周面に付着・堆積した固形物を剥離回収する回収手段13を備える固液分離装置において、固液分離槽11内におけるフィルタ没入側11Bの深部とフィルタ浮上側11Aの浅部とを移送手段5を介して連通させ、この移送手段5によってフィルタ没入側11Bの深部とフィルタ浮上側11Aの浅部の間で処理対象液を移送可能とした。
【選択図】図2
【解決手段】固形物で懸濁した処理対象液W1が供給される固液分離槽11と、この固液分離槽11内に処理対象液W1に一部浸漬された状態で循環移動可能に配置されて固液分離槽11内に濾液貯留室Sを画成するフィルタ121と、フィルタ121の外周面に付着・堆積した固形物を剥離回収する回収手段13を備える固液分離装置において、固液分離槽11内におけるフィルタ没入側11Bの深部とフィルタ浮上側11Aの浅部とを移送手段5を介して連通させ、この移送手段5によってフィルタ没入側11Bの深部とフィルタ浮上側11Aの浅部の間で処理対象液を移送可能とした。
【選択図】図2
Description
本発明は、外周面に固液分離処理対象液中の固形物による濾過層を形成する無端のフィルタを用いて前記固形物を分離回収する固液分離装置に関するものである。
昨今、廃棄物の減量や再利用による資源の循環及び有効利用の重要性が高まっており、液体に含まれる微小固形物やその溶媒においても例外ではない。
懸濁液は微小な固形物と液体とで構成され、微小固形物が有用物であれば、これを液体から分離して効率的に回収することで資源として再利用することができる。また、液体分が有用であれば、微小固形物を効率的に除去することで液体を資源として再利用することができる。
例えば、有機性の懸濁液として、洗米排水やでんぷん排水などの食品工場排水が挙げられる。これらの排水中には微小な有機固形物が高濃度で含有されており、固形物を効率的に回収することでメタン発酵などのバイオガス化によるエネルギー回収を見込むことができる。また、回収物によっては飼料化やバイオプラスチック化、堆肥化などが可能となる。一方で、焼酎工場排水などは液体中に高濃度の有機物を含むため、液体用のメタン発酵(UASB法)によるエネルギー回収が見込めるが、固形物が多いと処理が阻害されることがあり、メタン発酵の前段でこのような固形物を除去することが望ましい。
一方、無機性の懸濁液としては、金属加工排水、シリコン系排水、セメント排水などが挙げられる。これらの排水についても、固形物を回収することで固形物もしくは液体分のリサイクルが可能となる。
しかしながら、これら有機性あるいは無機性の固形物は、粒径が150μm以下の微小粒子の占める割合が大きいことから、その回収が難しく、従来は凝集剤を用いて微小な粒子を凝集してフロック化し、沈降もしくは浮上分離していることが多い。ところが、このような浮遊フロックや沈降汚泥は、含水率が98%〜99%と高いことから有効利用は難しく、汚泥として産業廃棄物処理されているのが現状である。このため有効利用というよりも、むしろ懸濁排水処理に莫大な水処理コストがかかることが問題となっている。
ところで、このような懸濁液から微小固形物を分離回収する固液分離装置としては、下記の特許文献1に開示されているような、回転ドラム型の固液分離装置が知られており、製紙業界において、パルプの濃縮や白水処理に用いられている。
図8は、従来の固液分離装置を示すもので、懸濁液である固液分離対象水W1を貯留する固液分離槽101と、この固液分離槽101内に水平軸心を中心として回転可能に配置され、外周壁がワイヤクロスや濾布などによる円筒状のフィルタ102aからなる固液分離ドラム102と、前記フィルタ102aの外周面に付着・堆積した懸濁粒子からなるプレコート層PCを剥離回収する転写ローラ103a及びスクレーパ103b又はカッタからなる回収装置103とを備える。
すなわち、この固液分離装置100は、固液分離槽101内へ固液分離対象水W1を供給する一方、回転する固液分離ドラム102内へ濾過された水(濾水W2)を、排水口104を通じて排出することによって、固液分離ドラム102のフィルタ102aの外周面に固液分離対象水W1中の微小固形物(懸濁粒子)が付着・堆積したプレコート層PCを形成させ、このプレコート層PC自体の濾過機能を利用して、フィルタ102aのメッシュサイズより粒径の細かい懸濁粒子を分離可能としている。そしてこのようにして固液分離ドラム102のフィルタ102aの外周面にプレコート層PCとして付着・堆積された固形物は、回収装置103によって剥離・回収される。また、固液分離ドラム102の回転速度によって、排水(濾水W2)の処理量、プレコート層PCの厚さ、及び濾水W2の水質を調整することができる。
図9は、固液分離ドラム102のフィルタ102aにプレコート層が形成されて行く過程を模式的に示すものである。まず図9における(A)は、フィルタ102aが、図8においてプレコート層PCが回収装置103により剥離回収された直後の位置にある状態を示している。そして図8における反時計方向へ固液分離ドラム102が回転して行くのに伴って、フィルタ102aが固液分離対象水W1の水面下に没入して行くと、没入直後の位置では、固液分離対象水W1がフィルタ102aを通過する際に、まず図9の(B)のように、フィルタ102aのメッシュサイズよりも粒径の大きな粗大化固形物SS1が捕捉されると、この捕捉された粗大化固形物SS1による目詰まり現象で、捕捉された粗大化固形物SS1自体が濾過作用を奏するようになるので、図9の(C)のように、メッシュサイズよりも粒径の小さな懸濁粒子SS2も捕捉され、さらに図9の(D)のように、微小な粒径の懸濁粒子SS3も捕捉されるようになって、徐々に懸濁粒子によるプレコート層PCが形成されて行くのである。
しかしながら、この種の固液分離装置100では、粗大化した汚泥などを含む固液分離対象水によっては、固液分離ドラム102のフィルタ102aに含水率の高い固形物が厚く堆積することがある。このような場合は、固液分離ドラム102に堆積した固形物が回収装置103の転写ローラ103aにより押しつぶされることで、その一部が、図8に符号Fで示すようにフィルタ浮上側の槽内に滑り落ちることがある。このため、固液分離槽101内のフィルタ浮上側における固形物濃度の濃縮が進み、場合によってはフィルタ浮上側では固液分離槽101内の水位とは関係なく浮遊固形物Fが盛り上がり、最終的に槽外に浮遊固形物Fが流出するおそれがあった。
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、固液分離装置において、処理対象の懸濁液から固形物を効率良く回収すると共に、固液分離槽内のフィルタ浮上側における固形物濃度の濃縮を防止することにある。
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る固液分離装置は、固形物で懸濁した処理対象液が供給される固液分離槽と、この固液分離槽内に前記処理対象液に一部浸漬された状態で循環移動可能に配置されて前記固液分離槽内に濾液貯留室を画成するフィルタと、前記フィルタの外周面に付着・堆積した固形物を剥離回収する回収手段を備える固液分離装置において、前記固液分離槽内におけるフィルタ没入側の深部とフィルタ浮上側の浅部とを移送手段を介して連通させ、この移送手段によって前記フィルタ没入側の深部とフィルタ浮上側の浅部の間で前記処理対象液を移送可能としたことを特徴とするものである。
上記構成の固液分離装置は、固液分離槽内へ処理対象液を供給すると共に、回転する固液分離ドラムの内部空間から、この固液分離ドラム内へ濾過された濾液を排出することによって、固液分離槽内を循環移動するフィルタの外周面に処理対象液中の固形物が付着・堆積した層を形成させ、これを回収手段によって回収するものである。そしてこの種の固液分離装置は、固液分離槽内のフィルタ浮上側の浅部では固形物濃度が上昇しやすいが、フィルタ没入側の深部とフィルタ浮上側の浅部の間で前記処理対象液を移送可能としたことによって、フィルタ浮上側の浅部の固形物濃度上昇を抑制することができる。
請求項2の発明に係る固液分離装置は、請求項1に記載の構成において、移送手段が固液分離槽内のフィルタ浮上側の浅部に生じる高濃度の処理対象液をフィルタ没入側の深部へ移送するものであることを特徴とするものである。
請求項3の発明に係る固液分離装置は、請求項1に記載の構成において、移送手段が固液分離槽内のフィルタ没入側の深部に生じる低濃度の処理対象液をフィルタ浮上側の浅部へ移送するものであることを特徴とするものである。
請求項4の発明に係る固液分離装置は、請求項3に記載の構成において、移送手段の下流端部に水平方向への分散供給手段を設けたことを特徴とするものである。
本発明に係る固液分離装置によれば、固液分離槽内のフィルタ浮上側の処理対象液の濃縮進行による懸濁粒子の回収率低下を防止し、かつ浮遊固形物が固液分離槽から流出するといったおそれを防止することができる。
以下、本発明に係る固液分離装置の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
まず図1は、本発明に係る固液分離装置の第一の実施の形態を概略的に示す平面図、図2は、図1におけるII−II’断面図、図3は、図1におけるIII−III’断面図である。これらの図に示す固液分離装置は、固液分離装置本体1と、粗大化固形物生成部2と、粗大化固形物供給部3と、粗大化固形物分画装置4と、固液分離対象水移送装置5とを備える。
固液分離装置本体1は、懸濁水からなる固液分離対象水W1を貯留する固液分離槽11と、この固液分離槽11内に配置された固液分離ドラム12と、この固液分離ドラム12の円筒状のフィルタ121の外周面に固液分離対象水W1中の懸濁粒子により形成されたプレコート層(固形物)PCを剥離回収する固形物回収装置13を備える。なお、固液分離対象水W1は、請求項1に記載された処理対象液に相当するものであり、濾水W2は、請求項1に記載された濾液に相当するものであり、固形物回収装置13は、請求項1に記載された回収手段に相当するものである。
固液分離装置本体1における固液分離ドラム12は、固液分離槽11内の固液分離対象水W1に上部を除く部分が浸漬された状態で、不図示の電動モータ及び減速装置により与えられる駆動力によって、不図示の水平軸を中心として低速回転されるものであって、軸方向一側が開放された形状となっている。そして固液分離ドラム12の円筒状の外周壁はワイヤクロスなどのフィルタ121からなり、開放された側の端部に設けられたシール部材123(図1)が、固液分離槽11の一方の側壁11aの内側面に摺動可能に密接されることによって、この側壁11aとの間に濾水貯留室Sが画成されている。濾水貯留室Sは請求項1に記載の濾液貯留室に相当する。
固液分離ドラム12のフィルタ121としては、メッシュサイズが150μm以下のものが採用される。これは、メッシュサイズが150μmを超えるものでは、初期の固液分離工程においてフィルタ121に予めプレコート剤による層を形成しておかないと、フィルタ121の外周面に固形物の付着・堆積が起こりにくく、すなわちプレコート層PCが形成されにくいからである。また、フィルタ121の材質としては、ステンレス、亜鉛、真鍮、アルミ等の金属からなるワイヤクロス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン等の合成樹脂繊維、障子紙などのパルプ繊維、ガラス繊維、炭素繊維及びそれらの繊維素材から構成される濾布を使用することが可能である。
固液分離槽11には、その一方の側壁11aにおける固液分離ドラム12との対向面の下部に位置して排水口11bが開設され、この排水口11bを介して固液分離ドラム12の内周の濾水貯留室Sと連通する排水槽6が設けられ、排水口11bを通じて濾水貯留室Sから排水槽6へ流れ込んだ濾水W2を、排水ポンプP1によって排出するようになっている。また、参照符号14は固液分離槽11の水位を検出する水位センサである。
固液分離ドラム12は図2における反時計方向へ回転するものであり、したがってこの固液分離ドラム12の外周のフィルタ121は、固液分離槽11における参照符号11Aで示される側(以下、フィルタ浮上側11Aという)で固液分離対象水W1の水面から浮上する一方、参照符号11Bで示される側(以下、フィルタ没入側11Bという)で固液分離対象水W1の水面下へ没入するように、水面下と水面上を経由して反時計方向へ循環移動される。
固液分離装置本体1における固形物回収装置13は、固液分離ドラム12のフィルタ121の外周面に形成されたプレコート層PCの表面に、固液分離槽11における固液分離対象水W1の水位より上方で接触しながら、固液分離ドラム12と逆方向へ回転されることによって、前記フィルタ121からプレコート層PCを転写・付着させる転写ローラ131と、この転写ローラ131に転写・付着された回収固形物Cを掻き取るスクレーパ132からなる。
粗大化固形物生成部2は、原水供給口21a及び固液分離対象水流出口21bを有する凝集撹拌槽21を備える。この凝集撹拌槽21には、図3に示すように原水供給口21aから供給される原水W0を撹拌する撹拌機22と、原水W0に凝集剤を添加するための凝集剤添加部23及びpH調整剤を添加するためのpH調整剤添加部24が設けられている。凝集剤添加部23は、図1に示すように、凝集剤貯留槽23aと、この凝集剤貯留槽23aに貯留された凝集剤を凝集撹拌槽21へ送るポンプP2からなり、pH調整剤添加部24も同様に、pH調整剤貯留槽24aと、この凝集剤貯留槽24aに貯留されたpH調整剤を凝集撹拌槽21へ送るポンプP3からなる。すなわちこの粗大化固形物生成部2は、原水供給口21aから凝集撹拌槽21内に供給された原水W0に凝集剤を添加すると共に、撹拌機22で撹拌することによって、原水W0に含まれる懸濁粒子SSaを凝集させて粗大化固形物(フロック)SSbを生成するものである。
凝集撹拌槽21への原水W0の供給(流入)は、通常は、併設した固液分離槽11の水位を水位センサ14によって検出し、原水W0を凝集撹拌槽21へ送るポンプP4や電動弁MVの駆動を制御すれば良い。しかしながら、凝集撹拌槽21から固液分離槽11への流出配管の閉塞等、何らかの原因によって固液分離槽11の水位と凝集撹拌槽21の水位が連動せずに、凝集撹拌槽21の水位が上昇し、槽外部へ原水W0(固液分離対象水W1)がオーバーフローするおそれも考えられる。このため、凝集撹拌槽21には水位センサ26を設置し、異常水位が検出された時には前記ポンプP4や電動弁MVにより供給を停止させる制御系を導入することが望ましい。またこの場合、撹拌機22の駆動によって原水W0に生じる撹拌流によって、水位センサ26の検出精度に狂いを生じることがないように、凝集撹拌槽21内に、固液分離対象水流出口21b側へ向かう水流が底部を迂回するように整流板21cを設置し、整流板21cの下流側に水位センサ26を設置する。なお、参照符号25は原水W0のpHを計測するpH電極である。
また、粗大化固形物生成部2の凝集撹拌槽21は固液分離装置本体1の固液分離槽11と隣接して配置し、凝集撹拌槽21における固液分離対象水流出口21bの下流端部すなわち粗大化固形物供給部3は、粗大化固形物SSbを含んだ原水(固液分離対象水W1)を、配管31などによって前記固液分離槽11へ自然流下させ、水面付近で水平方向へ分散供給するものであることが望ましい。凝集撹拌槽21を固液分離槽11から離れた位置に設置して、固液分離対象水W1をポンプで固液分離槽11へ移送することも可能ではあるが、この場合は、凝集撹拌槽21内で原水W0中の懸濁粒子SSaを凝集して生成させた粗大化固形物(フロック)SSbが壊れてしまうおそれがあるからである。また、水面付近で水平方向へ分散供給することによって、粗大化固形物SSbや微小懸濁粒子SSaなどの固形物を略均一に供給することができる。
なお、粗大化固形物供給部3による固液分離槽11への固液分離対象水W1の供給は、フィルタ浮上側11Aでもフィルタ没入側11Bでも構わないが、固液分離対象水W1には粗大化固形物SSbだけでなく微小な懸濁粒子SSaも残っているため、フィルタ浮上側11Aへ導入し、沈殿した粗大化固形物を、後述する粗大化固形物分画装置4によって分画し、フィルタ没入側11Bへ供給することが有効である。
図2に示す粗大化固形物分画装置4は、固液分離装置本体1における固液分離槽11の底部に形成した粗大化固形物溜まり41と、この粗大化固形物溜まり41に沈殿した粗大化固形物SSbにより濃縮された濃縮水W3を固液分離槽11におけるフィルタ没入側11Bの水面近傍へ供給する配管42及びポンプP5を備える。
固液分離槽11におけるフィルタ没入側11Bの水面近傍には、粗大化固形物SSbを水平方向に分散供給するための三角堰43が設けられている。この三角堰43は、固液分離槽11の内面に水平に取り付けられた樋状の板からなるものであって、上縁に沿って多数のV字形切欠43aが形成されている。
図2に示す固液分離対象水移送装置5は、固液分離槽11内のフィルタ浮上側11Aの浅部(例えば10cm以浅)に設けた引き抜き部51と、この引き抜き部51から延びて下流端部52aがフィルタ没入側11Bの深部(例えば10cm以深)に開口した送水管52と、この送水管52に設けられて引き抜き部51から送水管52を介して濃縮水W4(固液分離対象水W1)をフィルタ没入側11Bの深部へ送水するポンプP6からなる。なお、固液分離対象水移送装置5は請求項1に記載された移送手段に相当するものである。
固液分離対象水移送装置5における引き抜き部51としては、例えば図4に示すように、略水平方向へ延び、粗大化固形物SSbの径よりも大きな開口径の多数の穴51aが開設された多孔管や、あるいは不図示の多岐管(マニホールド)を用いることができる。
また、粗大化固形物供給部3において、固液分離対象水W1を固液分離槽11へ自然流下させて水平方向へ分散供給するための手段は、先に説明した図4と同様の多孔管や多岐管を用いるなど、種々の構成が考えられる。
以上のように構成された固液分離装置は、粗大化固形物生成部2の凝集撹拌槽21から粗大化固形物供給部3を介して固液分離装置本体1の固液分離槽11に供給された固液分離対象水W1を、この固液分離対象水W1に浸漬された固液分離ドラム12の内周の濾水貯留室Sにおける濾水W2との水頭差によって固液分離ドラム12の円筒状フィルタ121で濾過し、この濾過作用によって前記フィルタ121に捕捉されて堆積した懸濁粒子の層(プレコート層PC)を、固形物回収装置13で回収する一方、濾水貯留室Sへ流入した濾水W2を処理済み水として排出するものである。
粗大化固形物供給部3により固液分離槽11に供給される固液分離対象水W1には、粗大化固形物生成部2の凝集撹拌槽21において、原水供給口21aから供給された原水W0に凝集剤を添加すると共に撹拌機22で撹拌することによって、原水W0に含まれる懸濁粒子SSaが凝集した多くの粗大化固形物(フロック)SSbが含まれており、水より比重が大きい物質からなる同じ成分の固形物の場合、粒子径が大きいほど比表面積が小さくなることによって、沈降速度が速くなるため、固液分離槽11におけるフィルタ浮上側11Aに供給された固液分離対象水W1に含まれる粗大化固形物SSbは徐々に沈下し、固液分離槽11の底部に形成した粗大化固形物溜まり41に溜まる。
粗大化固形物溜まり41への粗大化固形物SSbの沈降によって得られた粗大化固形物濃縮水W3は、粗大化固形物分画装置4のポンプP5の駆動によって、固液分離槽11のフィルタ没入側11Bの水面近傍へ供給される。このため、フィルタ没入側11Bの固液分離対象水W1中における粗大化固形物SSbの密度が高く保持される。
また、粗大化固形物分画装置4によって固液分離槽11のフィルタ没入側11Bへ供給される粗大化固形物濃縮水W3は、三角堰43の底板によって水平方向へ広がり、長孔状のV字形切欠43aから前記フィルタ没入側11Bの水面近傍へ分散流入するため、水面近傍における粗大化固形物SSbの分布を均一化させることができる。
そしてこのような粗大化固形物SSbの分画供給によって、固液分離槽11におけるフィルタ没入側11Bでは、粗大化固形物SSbの密度が著しく高くなるため、水面上で固形物回収装置13によってプレコート層PCが剥離回収された(プレコート層PCが未形成の)フィルタ121が、図2における反時計方向への固液分離ドラム12の回転に伴って、固液分離対象水W1の水面下に没入して行くと、このプレコート層未形成のフィルタ121の外周面へ速やかに粗大化固形物SSbが捕捉され、プレコート層PCの形成が促される。
このため、フィルタ121に付着した粗大化固形物SSb(プレコート層PC)による濾過作用が速やかに発現されるので、メッシュサイズよりも粒径の小さな懸濁粒子が濾水W2中へ流出してしまうのを有効に抑制することができ、すなわち、微小な懸濁粒子SSaの捕捉が効率良く行われ、これら粗大化固形物SSb及び微小懸濁粒子SSaによるプレコート層PCの形成が促進される。
また、固液分離槽11内におけるフィルタ浮上側11Aでは、凝集撹拌槽21から粗大化固形物供給部3を介して固液分離対象水W1が供給されていることや、微小懸濁粒子SSaは固液分離ドラム12の回転に伴い発生する上昇流に逆らって沈下しにくいことや、あるいは固液分離ドラム12のフィルタ121に含水率の高い固形物が厚く堆積した固形物(プレコート層PC)が回収装置13の転写ローラ131により押しつぶされ、その一部が図2に符号Fで示すように滑り落ちて水面に浮遊することなどによって、固液分離槽11内のフィルタ浮上側11Aの浅部における固形物濃度の濃縮が進みやすい。
一方、固液分離槽11内におけるフィルタ没入側11Bでは、粗大化固形物分画装置4によって、固液分離槽11の底部の粗大化固形物溜まり41に沈降分画した粗大化固形物SSbを水面近傍に導入していることから、浅部では比較的粗大化固形物SSbの濃度が高いが、すぐに固液分離ドラム12のフィルタ121に濾過作用により捕捉されるため、フィルタ没入側11Bの中層以深では濃度が低くなる。
そこで、上述の第一の実施の形態では、固液分離対象水移送装置5のポンプP6を駆動させることによって、固液分離槽11内のフィルタ浮上側11Aの浅部に設けた多孔管からなる引き抜き部51で水面の浮遊固形物Fや固形物濃度の高い固液分離対象水(濃縮水W4)を引き抜いて、送水管52を介してフィルタ没入側11Bの深部へ移送可能としている。そしてこのようにすることで、フィルタ浮上側11Aの浅部における固形物濃度の上昇や浮遊固形物Fの増加を防止すると共に、引き抜いた濃縮水W4や固形物をフィルタ没入側11Bの中層以深に供給することで、従来は低濃度になりやすかったこの付近が所要の固形物濃度に維持されるので、プレコート層PCの形成が促進される。
したがって、先に説明したように、固液分離槽11の粗大化固形物溜まり41で固液分離対象水W1から沈降分離(分画)された粗大化固形物SSbを高密度で含む粗大化固形物濃縮水W3を、粗大化固形物分画装置4によって、固液分離槽11におけるフィルタ没入側11Bへ供給することで、プレコート層PCの形成が促進されることに加え、固液分離対象水移送装置5によりフィルタ没入側11Bの中層以深でも懸濁粒子SSaなどの捕捉が効率良く行われる。そしてその結果、濾水W2の清澄性を向上させ、かつ固形物の回収率を高めることができ、また固液分離ドラム12の回転速度も、従来よりも上昇させることができる。すなわち、装置規模あたりの固液分離対象水W1の処理速度が高まるため、処理コストを大幅に削減することができる。
次に図5は、本発明に係る固液分離装置の第二の実施の形態を概略的に示すものである。この第二の実施の形態において、上述した第一の実施の形態と異なるところは、固液分離対象水移送装置5が、固液分離装置本体1における固液分離槽11内のフィルタ没入側11Bの深部(例えば10cm以深)に設けた引き抜き部53と、この引き抜き部53から延びて下流端部54aがフィルタ浮上側11Aの浅部(例えば10cm以浅)に開口した送水管54と、この送水管54に設けられて引き抜き部53から送水管54を介して低濃度の固液分離対象水(以下、低濃度水という)W5をフィルタ浮上側11Aの浅部へ送水するポンプP7からなる点にある。その他の部分は、第一の実施の形態と同様に構成される。
なお、引き抜き部53は第一の実施の形態における引き抜き部51と同様の多孔管からなるものとすることができる。
また、図6に示すように、固液分離槽11内のフィルタ浮上側11Aの浅部には水平方向へ延びる三角堰55を設け、送水管54の下流端部54aを、この三角堰55の内側空間に開口させることが好ましい。詳しくは、三角堰55は固液分離槽11の内面に取り付けられた樋状の板からなり、上縁に沿って多数のV字形切欠55aが所定間隔で形成されたものである。このようにすれば、フィルタ没入側11Bの深部から引き抜かれた低濃度水W5が三角堰55へ流れ込み、この三角堰55に形成された多数のV字形切欠55aから固液分離槽11におけるフィルタ浮上側11Aへ水平方向に分散流入することになる。なお、三角堰55は請求項4に記載された分散流入手段に相当するものである。
上述のように構成された第二の実施の形態によれば、固液分離対象水移送装置5のポンプP7を駆動させることによって、固液分離槽11内のフィルタ没入側11Bの深部に生じる低濃度水W5を引き抜いて、固形物濃度が高くなっているフィルタ浮上側11Aの浅部へ移送することができる。そしてこのようにすることで、フィルタ浮上側11Aの浅部における固液分離対象水W1が希釈されるので、その固形物濃度の上昇が防止される。しかも、引き抜いた低濃度水W5をフィルタ浮上側11Aの浅部へ導入することで、フィルタ浮上側11Aから固液分離ドラム12の下側を廻ってフィルタ没入側11Bへ向かう固液分離対象水W1の循環流が惹起され、フィルタ没入側11Bの深部へフィルタ浮上側11Aの固形物が補給されるので、プレコート層PCの形成が促進される。
したがって、固液分離槽11の粗大化固形物溜まり41で固液分離対象水W1から沈降分離(分画)された粗大化固形物SSbを高密度で含む粗大化固形物濃縮水W3を、粗大化固形物分画装置4によって、固液分離槽11におけるフィルタ没入側11Bへ供給することで、プレコート層PCの形成が促進されることに加え、固液分離対象水移送装置5によりフィルタ浮上側11Aの浅部を希釈して固形物濃度の上昇を防止すると共に、フィルタ没入側11Bへ向かう固液分離対象水W1の循環流によってフィルタ没入側11Bの中層以深でも懸濁粒子SSaの捕捉が効率良く行われる。そしてその結果、濾水W2の清澄性を向上させ、かつ固形物の回収率を高めることができ、また固液分離ドラム12の回転速度も、従来よりも上昇させることができる。すなわち、装置規模あたりの固液分離対象水W1の処理速度が高まるため、処理コストを大幅に削減することができる。
なお、固液分離槽11内のフィルタ没入側11Bの深部からフィルタ浮上側11Aの浅部への低濃度水W5の流量を多くし過ぎると、粗大化固形物分画装置4によってフィルタ没入側11Bの浅部に供給された粗大化固形物SSbを高密度で含む粗大化固形物濃縮水W3を引き込んでしまうおそれがあるので、ポンプP7による流量は適切に管理することが望ましい。
さらに図7は、本発明に係る固液分離装置の第三の実施の形態を概略的に示すものである。この第三の実施の形態は、固液分離装置本体1の固液分離槽11のフィルタ浮上側11Aへ、図1又は図3に示す粗大化固形物生成部2の凝集撹拌槽21から多くの粗大化固形物SSbが含まれる固液分離対象水W1を供給する粗大化固形物供給部3が、固液分離槽11におけるフィルタ浮上側11Aの水面近傍の壁面に取り付けられた三角堰32と、この三角堰32で仕切られた空間内に、凝集撹拌槽21から自然流下によって固液分離対象水W1を供給する配管31からなる。三角堰32は、固液分離槽11の内面に水平に取り付けられた樋状の板からなるものであって、上縁に沿って多数のV字形切欠32aが形成されており、この三角堰32には、第二の実施の形態と同様の希釈方式による固液分離対象水移送装置5の三角堰55が一体的に設けられている。その他の部分は、第二の実施の形態と同様に構成される。
上記構成において、粗大化固形物生成部2の凝集撹拌槽21から固液分離装置本体1における固液分離槽11のフィルタ浮上側11Aへ供給される固液分離対象水W1は、粗大化固形物供給部3の三角堰32のV字形切欠32aによって水平方向へ分散流入するため、固液分離対象水W1中の粗大化固形物SSb等を均一な密度で供給することができる。
また、固液分離槽11のフィルタ浮上側11Aでは、凝集剤により懸濁粒子を凝集して粗大化させた粗大化固形物SSbによって、固液分離ドラム12のフィルタ121に含水率の高い固形物(プレコート層PC)が厚く堆積し、このプレコート層PCが回収装置13の転写ローラ131により押しつぶされて水面に滑り落ち、濃縮化が生じやすいが、図7に示す第三の実施の形態では、フィルタ没入側11Bの深部からフィルタ浮上側11Aの浅部へ低濃度水W5を供給する固液分離対象水移送装置5の三角堰55を、粗大化固形物供給部3の三角堰32に一体的に設けて複合化することで、濃縮化を有効に防止することができる。
なお、固液分離対象水移送装置5として、第一の実施の形態のように、固液分離槽11内のフィルタ浮上側11Aの浅部から濃縮水W4を引き抜いて、フィルタ没入側11Bの深部へ移送する方式を採用するか、あるいは第二又は第三の実施の形態のように、フィルタ没入側11Bの深部から低濃度水W5を引き抜いて、フィルタ浮上側11Aの浅部へ移送する方式を採用するかについては、固液分離対象水の物性によって、試験を行い、効果的な方式を選択するのが望ましい。
なお、上述した実施の形態では、固液分離装置本体1として、粗大化固形物により形成されたプレコート層の濾過機能を利用して、フィルタのメッシュサイズより粒径の細かい懸濁粒子を分離可能とするプレコート式の固液分離装置を用いるものとして説明したが、本発明は、微小なメッシュサイズのフィルタを用いた固液分離ドラムによって、プレコートせずにそのまま粒子を捕集する固液分離装置についても適用可能である。
1 固液分離装置本体
11 固液分離槽
11A フィルタ浮上側
11B フィルタ没入側
12 固液分離ドラム
121 フィルタ
13 固形物回収装置(回収手段)
2 粗大化固形物生成部
3 粗大化固形物供給部
4 粗大化固形物分画装置
5 固液分離対象水移送装置(移送手段)
55 三角堰(分散流入手段)
PC プレコート層
S 濾水貯留室(濾液貯留室)
W0 原水
W1 固液分離対象水(処理対象液)
W2 濾水(濾液)
W3 粗大化固形物濃縮水
W4 濃縮水
W5 低濃度水
11 固液分離槽
11A フィルタ浮上側
11B フィルタ没入側
12 固液分離ドラム
121 フィルタ
13 固形物回収装置(回収手段)
2 粗大化固形物生成部
3 粗大化固形物供給部
4 粗大化固形物分画装置
5 固液分離対象水移送装置(移送手段)
55 三角堰(分散流入手段)
PC プレコート層
S 濾水貯留室(濾液貯留室)
W0 原水
W1 固液分離対象水(処理対象液)
W2 濾水(濾液)
W3 粗大化固形物濃縮水
W4 濃縮水
W5 低濃度水
Claims (4)
- 固形物で懸濁した処理対象液が供給される固液分離槽と、この固液分離槽内に前記処理対象液に一部浸漬された状態で循環移動可能に配置されて前記固液分離槽内に濾液貯留室を画成するフィルタと、前記フィルタの外周面に付着・堆積した固形物を剥離回収する回収手段を備える固液分離装置において、前記固液分離槽内におけるフィルタ没入側の深部とフィルタ浮上側の浅部とを移送手段を介して連通させ、この移送手段によって前記フィルタ没入側の深部とフィルタ浮上側の浅部の間で前記処理対象液を移送可能としたことを特徴とする固液分離装置。
- 移送手段が固液分離槽内のフィルタ浮上側の浅部に生じる高濃度の処理対象液をフィルタ没入側の深部へ移送するものであることを特徴とする請求項1に記載の固液分離装置。
- 移送手段が固液分離槽内のフィルタ没入側の深部に生じる低濃度の処理対象液をフィルタ浮上側の浅部へ移送するものであることを特徴とする請求項1に記載の固液分離装置。
- 移送手段の下流端部に水平方向への分散流入手段を設けたことを特徴とする請求項3に記載の固液分離装置。
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JP2012080751A JP2013208574A (ja) | 2012-03-30 | 2012-03-30 | 固液分離装置 |
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2012
- 2012-03-30 JP JP2012080751A patent/JP2013208574A/ja active Pending
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