JP2013208189A - X線撮像装置およびx線撮像方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】X線撮像装置であって、
X線源から被写体に照射されたX線を検出する検出器と、
前記検出器により検出されたX線から、前記被写体の位相コントラスト情報と、前記被写体の吸収コントラスト情報を分離して取得するための処理を行う処理手段とを有し、
前記処理手段は、前記位相コントラスト情報に重み付けを行い、該重み付けされた情報と前記吸収コントラスト情報とを足し合わせて合成画像情報を生成する。
【選択図】 図4
Description
X線は波長が約0.01〜100Å(10−12〜10−8m)程度の電磁波であり、このうち波長の短いX線(λ=0.01〜1Å)を硬X線、波長の長いX線(λ=1〜100Å)を軟X線という。
工業分野においては、X線による吸収能の違いを用いた吸収コントラスト法により、鉄鋼材料などの内部亀裂検査や手荷物検査などのセキュリティ分野の用途として実用化されている。
また、医療診断分野でも、元素や組織によってX線吸収率が違うことを利用して、X線を被写体に照射しその透過像を得る吸収コントラスト像を用いた診断がおこなわれている。
吸収コントラスト法は、骨折や骨病変等の診断に有用であり、医療の画像診断の分野で多く用いられてきた。
しかしながら、乳房におけるマンモグラフィ検査や軟骨の状態撮影など、軟組織を撮像する分野に同手法を適用する場合、X線の吸収能に大きな差がないため、吸収コントラスト法ではコントラスト差をつけることが難しいという課題があった。
吸収コントラスト法でコントラストがつき難い軟組織を撮像する手法として、X線の位相情報によりコントラストをつける位相コントラスト法があるが、被写体全域の視認性向上という観点では課題が残されていた。
一方、近年発展が目覚ましいデジタル画像処理技術を活用することで、X線の照射線量を増やさず画像処理によって画質を向上させることが可能である。
特許文献1には吸収コントラスト像に加えて、位相コントラスト像を用い、両者を比較することで診断を容易にする発明が開示されている。
そのなかで、位相コントラスト像の輝度およびコントラスト調整や色付け処理を実施した後、吸収コントラスト像と重ねあわせるという手段が開示されている。
そのため、より質の高い診断用のX線画像を得ることが求められていた。
X線源から被写体に照射されたX線を検出する検出器と、
前記検出器により検出されたX線から、前記被写体の位相コントラスト情報と、前記被写体の吸収コントラスト情報を分離して取得するための処理を行う処理手段とを有し、
前記処理手段は、前記位相コントラスト情報に重み付けを行い、該重み付けされた情報と前記吸収コントラスト情報とを足し合わせて合成画像情報を生成することを特徴とする。
また、本発明のX線撮像方法は、X線源から被検体に照射されたX線を検出する工程と、
前記検出器により検出されたX線から、前記被検体の位相コントラスト情報と、
前記被検体の吸収コントラスト情報を分離して取得するための処理を行う処理工程と、を有し、
前記処理工程は、前記位相コントラスト情報に重み付けを行い、該重み付けされた情報と前記吸収コントラスト情報とを足し合わせて合成画像情報を生成することを特徴とする。
この画像処理手段では、位相コントラスト像に、適切な重みを付けるに当たり、画像のコントラスト対ノイズ比(CNR)をパラメタとしており、この指標(重み付けの係数)に基づいて適切な重みを決定する。
この指標であるCNRは、画像のコントラストをS1(シグナル(S1))とし、ノイズをσ1(ノイズ(σ1))とするとき、次の(1)式により表すことができ、より詳しくは図2に示されている。
すなわち、このCNRは、被写体のコントラスト対雑音の比率で表現され、医療画像の画質を定量化する数値である。
これにより、従来、吸収コントラスト像単体、位相コントラスト像単体、あるいはその単純な重ねあわせでは判別できなかった被写体についても、像として十分認識することが可能となる。
本発明を医療画像の診断分野で適用する場合、X線の照射線量を増やすことなく、従来よりも画質のよい画像を使うことが可能となるため、被ばく量が同じで、より確度の高い画像診断をおこなうことが可能となる。
まず、撮像方法について説明する。
図1は本発明の装置構成を示す図である。101はX線管であり、X線を発生するX線源であれば特に制限はなく、回転対陰極X線管、封入X線管、放射光X線源などを用いることが可能である。
回転対陰極X線管あるいは封入X線管を用いる場合、金属ターゲットとしては、銀(Ag)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ロジウム(Rh)などが適宜選択して用いられる。
102はフィルタであり、101のX線管からのX線線質を所望のスペクトルに設定する目的で用いられ、数μm〜数mm厚の各種金属が用いられるが、その種類や厚みなどに特に制限はない。
また、フィルタとして機能を果たすものであれば、複数の種類を重ねて用いてもよいし、同じフィルタを複数枚重ねてもよい。
103は分割素子であり、101から102を介して被写体に照射されるためのX線光束を成形するために用いられる。
103の材料としては、非開口部のX線を吸収することが目的であるので、プラチナ(Pt)、金(Au)、鉛(Pb)、タンタル(Ta)、タングステン(W)などが用いられるが、X線を吸収する材料であれば特に制限はない。
ここでは、X線の吸収能や加工性を考慮すると、金(Au)あるいはタングステン(W)など比較的原子番号が大きい材料を用いることが好ましい。
104は2次元検出器であるが、X線を検出して画像にする検出器であれば特に制限はなく、蛍光体でX線を光に変換する間接変換型や直接X線を検出する直接変換型、フォトンカウンティング型などが用いられる。
ここでは、用いるX線のエネルギーに対応して適宜選択して用いられる。105は得られた画像から、吸収コントラスト像、ならびに位相コントラスト像を構築し、さらに、両画像の関心領域を定めた時に関心領域のCNR値を最適化する処理部である。
106は被写体(サンプル)である。被写体106は、X線を通し被写体を平滑化する圧迫板(不図示)で挟み込んでもよいし、圧迫板を用いずそのまま撮像に用いてもよい。
ここでは、位相コントラスト像を構築するブロックとして、4行4列の16画素を用い重心法によって計算する例を示している。位相コントラスト像の構築方法はこの内容に限定されるものではなく、位相コントラスト像を構築する手法であれば特に制限はない。
演算に用いる画素領域は、6行4列、8行4列、2行2列など任意のサイズでよく、画像構築の手法も重心法ではなく差分法であっても特に問題はなく、画像に応じて適宜選択して画像構築が実施される。
構築された位相コントラスト像は、画像のノイズ除去や画質向上に関する各種フィルタリング処理(移動平均化処理やメディアンフィルタ処理)を実施しても何ら問題はなく、画像によって適宜実施される。
また、(2)式で示すような重心解析等では、被写体の左右で符号が逆転することから、画像の各画素値の絶対値化処理を実施してもかまわない。
吸収コントラスト像についても位相コントラスト像同様、4行4列の16画素を用いて演算を実施する方法を示した。画像構築に用いる画素領域については位相コントラスト像構築に用いた画素領域と対応していればよく、それ以外の制限は特にない。
構築された吸収コントラスト像は、適宜、画像のノイズ除去や画質向上に関する各種フィルタリング処理(移動平均化処理やメディアンフィルタ処理)を実施しても何ら問題はなく、画像によって適宜実施される。
吸収コントラスト像と位相コントラスト像は、次の(4)式によって合成される。
図4は、(4)式を模式的に表したものである。
ここでweight値は、画質を評価する指標であるCNR(コントラスト対ノイズ比)に基づき決定され、その範囲は位相コントラスト像と吸収コントラスト像の比率が等価の合成となるweight=1以上で設定されることが好ましい。
さらに好ましくは、位相コントラスト像か吸収コントラスト像のCNRが大きい画像を画像1としたとき、画像1より合成画像のCNRのほうが大きくなるようなweightの範囲で設定される。
まず、ステップ1(S1)としてノイズ領域を設定する。ノイズ領域は、被写体の存在しない領域で設定するが、その場所や領域の大きさに特に制限はない。次にステップ2(S2)として、画像の関心領域を設定する。
画像の関心領域は、被写体部分のみの領域であってもよいし、また被写体部分と被写体が存在しない部分の二つの領域を含んでいてもよく、観察者により適宜選択される。
ステップ3(S3)では、S1とS2で設定したノイズ領域および、画像の関心領域を位相コントラスト像に適用し、関心領域でのCNR値を算出する。
ステップ4(S4)では、S3で設定した領域と同じ領域で吸収コントラスト像の関心領域のCNR値を算出する。
ステップ5(S5)では、位相コントラスト像と吸収コントラスト像のCNR値を比較し、CNR値が大きいほうを画像1として選択する。
ステップ6(S6)では、位相コントラスト像に掛けあわせる重み係数weightを変化させ、合成画像を複数枚作成し関心領域のCNR値を算出する。
作成した合成画像群からCNR値を算出し、weightに対してプロットした例が図6である。
ステップ8(S8)では、S7で見積もったweightの範囲でweight値を設定し合成画像を構築し表示するものである。
S8で使用するweight値は、吸収コントラスト像と位相コントラスト像の比率が同じであるweight=1以上であれば特に制限はない。
さらに好ましくは、S7で見積もったweightの範囲で設定されることである。
以上が、合成画像の関心領域におけるCNR値を最適化して表示する一連のステップとなる。ステップ9に移って関心領域を再度設定する場合は、S9からS2へと移って再度画像の関心領域を設定する。
重み係数weightは、位相コントラスト像に掛ける係数であるので、重み係数が0のとき、合成画像のCNR値は吸収コントラスト像のCNR値となる。
この場合、位相コントラスト像を20000倍して吸収コントラスト像と足し合わせて合成画像を形成するが、比率からして位相コントラスト像の寄与が大きくなる。
重み係数が大きくなればなるほどこの傾向は強くなり、合成画像は位相コントラスト像に近づいていく。そのため、合成画像のCNR値は位相コントラスト像のCNR値に漸近していくことが分かる。
それではCNR値が比較的小さい場合、図6において重み係数weightが0〜10000の範囲にある場合、どうなるかについて考えてみる。
合成画像のCNRは定義より、シグナルとノイズの比として記述することができる。そこで、図6に示す合成画像のCNRを、図7に示すようにシグナルとノイズに分けてその特性を記述し調べてみる。
図8は、図7の重み係数が0〜6000の範囲について拡大した図であり、図8(a)にシグナル、図8(b)にノイズの特性を示している。
まず、図8(a)のシグナルの特性について考えてみる。図8(a)には、合成画像のシグナルに加えて、合成画像をそれぞれ吸収成分と位相成分に分けた吸収コントラスト像のシグナル、ならびに位相コントラスト像のシグナル値も同時に示している。
位相コントラストの重みweightに対して、位相コントラスト像のシグナル(weight*S(phase))は正比例の関係で増加している様子が確認できる。
一方、吸収コントラスト像のシグナル値(S(abs))は、重み係数とは無関係なので、weightに対して常に一定値となる。
合成した画像のシグナルは、両者を足し合わせたものになるので、重み係数に対して比例関係で増加していく。
定式化すると合成画像のシグナルは、次の(5)式のように記述することができる。
図には、合成画像のノイズに加えて、位相コントラスト像と吸収コントラスト像のノイズについて、それぞれプロットしている。
シグナルと同様に、位相コントラスト像のノイズは、重み係数に正比例して増加していることが確認できる。
一方、吸収コントラスト像のノイズは、位相コントラスト像の重み係数に対して一定値になる。合成画像のノイズは両者を足し合わせたものになるが、ノイズは被写体の存在しない箇所でのpixel強度の標準偏差と定義されるため、シグナルのように単なる足し算とはならない。
ここで、Noiseは合成画像のノイズ、Nabs(i,j)は吸収コントラスト像のアドレス(i,j)におけるノイズ値である。
また、Nabs_aveは吸収コントラスト像のノイズの平均値である。
また、Nphase(i,j)は位相コントラスト像のアドレス(i,j)におけるノイズ値である。
また、Nphase_aveは位相コントラスト像のノイズの平均値、weightは重み係数、nは総画素数である。
weightが十分に大きい場合は、位相コントラストのノイズが支配的になるので、合成画像のノイズレベルは位相コントラスト像のノイズレベルに漸近していくことが分かる。
最後に、weightが比較的小さい場合、図8において0〜6000の範囲において考えてみる。この重み係数weightの範囲内では、合成画像のノイズ(Noise)は、吸収コントラスト像のノイズと位相コントラスト像のノイズの単純な和とはならず、単純な和より小さい値を取ることが図8(b)および(6)式より確認することが出来る。
以上が、本発明で開示する装置および方法で作成したX線合成画像が、吸収コントラスト像および位相コントラスト像単体の像よりも高いCNR値を示すメカニズムである。
[実施例1]
実施例1として、本発明を適用したX線撮像装置およびX線撮像方法の構成例について説明する。
なお、ここに示す実施例は、本発明を完全に理解できるよう具体的な例を挙げて説明するものであって、本発明の請求内容が実施例の内容に限定されるものではない。
具体的には、図1に示すように、X線管(101)の直後にフィルタ(102)、約700mm離して分割素子(103)、マンモファントム(106)、そして約1120mm離して検出器(104)を設置した。
マンモファントム(106)としては、京都科学製マンモステップファントムを用いた。マンモファントムは、圧迫板(3mmのアクリル板)で前後からサンドイッチした(圧迫板は不図示)。
該ファントムは、ベース材料としてウレタンが用いられており、これにリン酸カルシウムを添加し各段階のレベル調整がおこなわれている。
模擬腫瘤マンモファントムは、約0.5mm厚、約7mmφのアクリル板がベース材の上に貼りあわされているものである。
X線管としては回転対陰極X線管を用い、ターゲット金属としてはAgを使用した。X線源の条件は、管電圧30kV管電流20mAとした。
フィルタ(102)としては、30μm厚のPd箔を用いた。X線管(101)−検出器(104)の距離は、分割素子(103)のスリットピッチと検出器(104)の画素ピッチから決まる。
ここでは、分割素子として120μmピッチ30μm幅のAu スリットアレイ、48μm画素サイズの検出器(Rad−icon Imaging社のRad−eye)を用い、Au スリットアレイの1周期が検出器の4画素に投影される配置について説明する。
この場合、X線管(101)−検出器(104)の距離は、幾何学的な配置より(48*4)*700/120=1120mmと決定される。
撮像は、マンモファントム(106)を分割素子1ピッチ分走査(この場合、120μmを0.0025mm/sec.で走査)しながら、連続的に画像を取得した。
マンモファントム(106)の走査速度は、平均乳腺線量から決定した。得られた画像の例を、図3(a)に示す。
Au スリットアレイの形状を反映し、マンモファントムのコントラストに加えて周期的なスリットのコントラストがついた像であることが確認できる。
また、図では分からないが、図3(a)はサンプルを走査させた画像を積層した画像となっている。
まず、取得したファントム画像(図3(a))からdark画像(不図示)を各層から差し引く。つぎに、隣接する4x4のブロックから、(2)式で示す演算(重心解析)を各画素に対してそれぞれおこなうことで、図3(b)に示すような位相コントラスト画像を作製する。
(2)式中、I(i)は検出器の各画素で検出された検出強度であり、分母は4x4画素の合計、分子は左半分の8画素と右半分8画素の差分となる。
X線は図3(a)の図中、I5−I8の列とI9−I12列を跨ぐようにアライメントされている(図3(a)に画素の拡大図を示しているが点線で囲った領域に、そのX線照射位置を示してある)。
そのため、被写体が存在せずX線が屈折しない領域では、I5〜I8の和とI9〜I12の和は同じ値となり、(2)式において分子はゼロとなる。
被写体が存在する場合は、被写体の屈折率差に伴って差分が生じ、特に被写体の端部では屈折率差が大きくなるので、(2)式の分子は大きくなり像としてコントラストが顕著になる(図3(b)にその様子を示す)。以上が、セグメント法で得られた画像を重心解析法で解析し、位相コントラスト像を構築する方法である。
次に、吸収コントラスト像であるが、図3(a)で示したstack画像と同じ画像群を用い、(3)式に示すように4x4の画素ブロックを足し合わせることで、図3(c)に示すような吸収コントラスト画像(B画像)を構築することができる。
まず、得た位相コントラスト像を用い、被写体の存在しない箇所でノイズ領域を設定する(ステップ1:S1)。
次に、画像の中で特に注目しCNR値を最適化したい領域である画像の関心領域を設定する(S2)。
次に、S1とS2で見積もったノイズ値(0.00341)およびシグナル値(0.05541)から、位相コントラスト像のその領域のCNR値(16.25)を算出する(S3)。
次に、位相像で設定したノイズ領域とシグナル領域を吸収コントラスト像に適用し、吸収コントラスト像のCNR値(3.97)を算出する(S4)。
位相コントラスト像のCNR値(16.25)と吸収コントラスト像のCNR値(3.97)を比較し、CNR値が大きい位相コントラスト像を画像1とする(S5)。
次に、位相コントラスト像に掛ける重み係数weightを1、100、500、1000、1500、3000、4350、6000、10000、20000として吸収コントラスト像と足し合わせた合成画像群を作成する。
そして、上述の要領でそれぞれCNR値を算出する(S6)。
位相コントラスト像の重みを横軸にし、合成画像のCNR値を縦軸にプロットした図を図6に示す。図中には、吸収コントラスト像から見積もったCNR値の水準と、位相コントラスト像から見積もったCNR値の水準を示している。
画像1のCNR値より合成画像のCNR値が大きくなる重み係数weightを図6から見積もると、weightが2660より大きくなる領域では合成画像のCNRが大きくなることが確認できる。
ここで、そのなかでもCNRが極大値付近である6000を選択すると、関心領域のCNR値は約17.5となり、吸収コントラスト像や位相コントラスト像単体よりも大きなCNR値の画像が得られる。
図4には、吸収コントラスト像、位相コントラスト像、および重み係数6000をかけて両者を合成した画像を示す。
さらに同図には、これら画像のラインプロファイルについても同時に示してある。ラインプロファイルを取得した位置を吸収コントラスト像に例示しており、被写体の中央付近でプロファイルを取得している。
ラインプロファイルをみると、合成画像では、ノイズは増加するがシグナルも大幅に伸びており、CNRとしては吸収コントラスト像あるいは位相コントラスト像単体よりも大きな値を示すことが確認できる。
実施例2として、実施例1と異なる形態についてのX線撮像装置およびX線撮像方法の構成例について、図5および図9を用いて説明する。
図9は、被写体と画像のCNR特性を示したものである。
図9(a)にはマンモグラフィでの被写体を模したサンプルの吸収コントラスト像と位相コントラスト像を合成した画像を示す。同図(b)にはその被写体のラインプロファイルを、同図(c)には位相コントラスト像の重み係数に対する合成画像のCNR値についてプロットした図を示している。
本実施例で用いた被写体は、石灰化を模した模擬石灰化サンプルであり、ウレタン材の上に約200μmφのアルミナ粒が星形に配置されているものである。
ここで用いた重み係数値は、1、100、1000、3000、5000、10000、50000であり、それぞれの重みで合成画像を構築し関心領域においてCNR値を見積もっている。
まず、(a)に示す被写体の吸収コントラスト像のCNR値と位相コントラスト像のCNR値について確認すると、それぞれは画像(不図示)から、7.70、5.83と求められる。
これらの水準を図9(c)で表すと、吸収CNR、位相CNRと示した水準で示される。ここで、合成画像を構築する流れ図(図5)をみると、ステップ5(S5)でCNR値が高いほうの画像を画像1とすることから、本実施例では吸収コントラスト像が画像1となる。
ステップ(S6)で図9(c)を作製し、ステップ7(S7)では画像1のCNR値と合成画像のCNR値を比較している。
本実施例では、画像1より合成画像のCNRが大きくなる重み係数の範囲は、〜30000であることが確認できる。
ステップ(S8)では、S7で見積もった重み係数の範囲で重みを決定するが、ここではCNR値が極大値を取る5000を選択する。
以上のプロセスで作成した合成画像が図9(a)であり、吸収コントラスト像あるいは位相コントラスト像単体の像よりも高いCNR値を有した像が、X線の線量を増加させることなく得ることができる。
実施例3として、上記実施例と異なる形態についてのX線撮像方法の構成例について、処理の流れ図(図10)と像の模式図(図11)を用いて説明する。
まず、ステップ1(S1)では、ノイズを見積もる領域を設定する。ここでは、被写体部分と被写体が存在しない部分の両方が含まれる場所でノイズ領域を設定する。ノイズ値として、図11(a)の点線で囲んだ領域の標準偏差(σ1)を設定する。
次に、ステップ2(S2)では、シグナルを見積もる画像の関心領域を設定する。こでは、評価する被写体画像をすべて含んだ形で関心領域を設定し、関心領域の標準偏差(σtotal)を見積もる。
ここで示したCNRの定義は、臨床画像を評価する手法の一つであり、非特許文献1に詳細が記述されている。
次に、ステップ3(S3)では、上記関心領域で、位相コントラスト情報のCNRの値を求める。ここでは、位相コントラスト像の関心領域のCNRの値を、次の(7)式で算出する。
次に、ステップ5(S5)では、位相コントラスト情報のCNRの値と、吸収コントラスト情報のCNRの値とを比較し、その値が大きい方の画像情報を選択する。
次に、ステップ6(S6)では、位相コントラスト情報への重み付け係数を変化させながら合成画像情報を生成し、上記関心領域におけるCNRの値を求める。すなわち、位相コントラスト情報への重み付け係数を変化させながら合成画像を複数枚作成し関心領域のCNRの値を算出する。
次に、ステップ7(S7)では、前記合成画像情報のCNRの値が、前記ステップ6(S6)で画像情報として選択された値が大きい方の画像情報のCNRの値よりも大きくなる重み付け係数の範囲を求める。
そして、ステップ8(S8)では、上記重み付け係数の範囲で合成画像情報を画像表示させる。ここでは、S7で見積もった重み係数の好ましい範囲の中から、CNRが極大値を取るCNR値の付近の重み係数を選択し、合成画像を作製し画像表示する。
医療分野においては、特に軟組織(乳房や軟骨など)に対して有効な手段となる。工業分野においては、特に高分子材料などの相分離構造体に対して有効な手段となる。
102:フィルタ
103:分割素子
104:2次元検出器
105:処理部
106:サンプル(マンモファントム)
Claims (5)
- X線撮像装置であって、
X線源から被写体に照射されたX線を検出する検出器と、
前記検出器により検出されたX線から、前記被写体の位相コントラスト情報と、前記被写体の吸収コントラスト情報を分離して取得するための処理を行う処理手段とを有し、
前記処理手段は、前記位相コントラスト情報に重み付けを行い、該重み付けされた情報と前記吸収コントラスト情報とを足し合わせて合成画像情報を生成することを特徴とするX線撮像装置。 - X線撮像方法であって、
X線源から被写体に照射されたX線を検出する工程と、
前記検出器により検出されたX線から、前記被写体の位相コントラスト情報と、
前記被写体の吸収コントラスト情報を分離して取得するための処理を行う処理工程と、を有し、
前記処理工程は、前記位相コントラスト情報に重み付けを行い、該重み付けされた情報と前記吸収コントラスト情報とを足し合わせて合成画像情報を生成することを特徴とするX線撮像方法。 - 前記処理工程は、
前記ノイズを見積もる領域を設定する工程と、
前記シグナルを見積もる画像の関心領域を設定する工程と、
前記関心領域で、前記位相コントラスト情報のCNRの値を求める工程と、
前記ノイズを見積もる領域と、前記関心領域を用いて、前記吸収コントラスト情報のCNRの値を求める工程と、
前記位相コントラスト情報のCNRの値と、前記吸収コントラスト情報のCNRの値とを比較し、その値が大きい方の画像情報を選択する工程と、
前記位相コントラスト情報への前記重み付け係数を変化させながら合成画像情報を生成し、前記関心領域におけるCNRの値を求める工程と、
前記合成画像情報のCNRの値が、前記画像情報を選択する工程での値が大きい方の画像情報のCNRの値よりも大きくなる重み付け係数の範囲を求める工程と、
前記重み付け係数の範囲で合成画像情報を画像表示させる工程と、
を含むことを特徴とする請求項4に記載のX線撮像方法。
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