JP2013203709A - グリオーマ細胞を殺傷するための組成物、並びにグリオーマ細胞を殺傷するための方法 - Google Patents

グリオーマ細胞を殺傷するための組成物、並びにグリオーマ細胞を殺傷するための方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 グリオーマ、特にグリオーマ幹細胞に特異的に発現する分子を見出し、当該分子を標的とした、グリオーマ細胞を殺傷するための組成物、並びにグリオーマ細胞を殺傷するための方法を提供すること。
【解決手段】 光感受性物質を備えた抗Eva1タンパク質抗体、該抗体を有効成分とする、グリオーマ細胞を殺傷するための組成物、並びに該抗体を利用する、グリオーマ細胞を殺傷するための方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、光感受性物質を備えた抗Eva1タンパク質抗体に関する。また、本発明は、該抗体を有効成分とする、グリオーマ細胞を殺傷するための組成物、並びに該抗体を対象に投与する、グリオーマ細胞を殺傷するための方法に関する。
脳腫瘍の治療は手術による脳摘出を基本とし、術後の放射線・化学療法を組み合わせた集学的治療が一般的である。手術においては取り残しを防ぐために腫瘍及び周辺の正常脳組織を含めて切除することが適すると考えられるものの、脳の機能部位(言語野、運動野等)の温存という観点から、腫瘍周囲の正常組織を拡大して切除することは困難であることが多い。しかしながら、悪性度の高い脳腫瘍(膠芽腫:グリオーマ)では腫瘍細胞が腫瘍の周囲の正常組織内に広く浸潤していることが多く、再発の原因と考えられている。
この問題を解決するために光線力学的療法(Photodynamic therapy:PDT)の脳腫瘍への応用が試みられている。これは、レーザー光照射により細胞傷害性のある一重項酸素を発生する光感受性物質が腫瘍細胞に集積しやすいこと等から検討されている治療法である。すなわち、特定波長のレーザー光を照射することにより活性化された光感受性物質は、基底状態から励起状態へと変化した後、蛍光を発することで基底状態へと遷移する。その過程において発生した一重項酸素等が細胞膜などに反応し細胞傷害性をもたらす。これが光線力学的療法の原理である。現在、光感受性物質としてポルフィマーナトリウム(Porfimer sodium、商品名:フォトフィリン)、タラポルフィンナトリウム(Talaporfin sodium、商品名:レザフィリン)、ベルテポルフィン(Verteporfin、商品名:ビスダイン)、5−アミノレブリン酸(5−aminolevulinic acid(5−ALA)、商品名:5−ALA軟膏)が開発され早期の肺癌・胃癌・子宮頸癌、表在性食道癌、滲出型加齢性黄斑変性症、日光角化症に適用されている。安全性が高く侵襲性も低く、また他の治療法との併用も容易なことから期待される治療法となっている。特に、手術不能な高齢者に対しては第一選択となり得る。
しかしながら、これらの光感受性物質は分子構造の改良によりある程度は腫瘍特異性を高めているものの正常細胞への取込みは少なくはない。すなわち、レーザー光照射時に正常細胞への傷害性が問題となっている。さらには、皮膚に取り込まれる太陽光を浴びることで光線過敏症の発症が指摘されている。これらの問題を解決するには腫瘍細胞特異的な集積能を持つ光感受性物質の開発が期待されており、例えば、腫瘍細胞に特異的な抗体等と結合させることにより、光感受性物質に極めて高い腫瘍細胞特異的な集積能を持たせることが試みられている(特許文献1〜3、非特許文献1〜10)。
また、近年の研究により、癌には造腫瘍能、治療抵抗性という性質を備えた、癌の根源細胞である癌幹細胞というものが存在することが判明している。癌幹細胞は、抗癌剤、放射線に対して耐性を有するため、従来型の癌治療方法では普通の癌細胞を死滅させることは可能であっても、癌幹細胞は残存してしまうことから、治療後のこの細胞の有無が再発及び生存率を大きく左右する因子であると考えられている。そのため、癌幹細胞を根絶する治療法の開発が試みられているものの、癌幹細胞を死滅させる薬剤はいまだ開発されていない。
一方、一回膜貫通型の細胞膜タンパク質であるEva1(Epithelial V−like antigen、MPZL2とも称される)は、細胞骨格系に関わる分子であり、胸腺等で発現していることが知られている。また、このタンパク質と、肺小細胞癌(SCC)、転移性肺小細胞癌(SCLC)、膵がん、乳頭状甲状腺癌等との関連性について報告されている(非特許文献11〜14)。しかしながら、Eva1とグリオーマとの関係、特にEva1とグリオーマ幹細胞との関係については、これまで何ら報告されていない。
米国特許出願公開第2012/0010558号明細書 米国特許第7498029号明細書 特開2009−280607号公報
Mitsunaga Mら、Nat Med.、2011年11月6日、17巻、12号、1685〜1691ページ Anatelli F,ら、Mol Pharm、2006年11−12月、3巻、6号、654〜664ページ Soukos NS,ら、Cancer Res.、2001年6月1日、61巻、11号、4490〜4496ページ Hamblin MR,ら、Br J Cancer.、2000年12月、83巻、11号、1544〜1551ページ Del Governatore M,ら、Cancer Res.、2000年8月1日、60巻、15号、4200〜4205ページ Molpus KL,ら、Gynecol Oncol.、2000年3月、76巻、3号、397〜404ページ Del Governatore M,ら、Br J Cancer.、2000年1月、82巻、1号、56〜64ページ Duska LR.ら、Br J Cancer.、1997年、75巻、6号、837〜844ページ Hamblin MR,ら、Cancer Res.、1996年11月15日、56巻、22号、5205〜5210ページ Strong L.ら、Ann N Y Acad Sci.、1994年11月30日、745巻、297〜320ページ Arumugam T.ら、Cancer Res.、2009年7月15日、69巻、14号、5820〜5828ページ Jarzab B.ら、Cancer Res.、2005年2月15日、65巻、4号、1587〜1597ページ Difilippantonio S.ら、Eur J Cancer.、2003年9月、39巻、13号、1936〜1947ページ Piyushら、Cell、2009年、138巻、645〜659ページ
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、グリオーマ細胞、特にグリオーマ幹細胞に特異的に発現する分子を見出し、当該分子を標的としたグリオーマ細胞を殺傷するための組成物、並びにグリオーマ細胞を殺傷するための方法に関する。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、Eva1タンパク質がグリオーマ細胞、特にグリオーマ幹細胞に特異的に発現していることを見出した。さらに、本発明者らは、抗Eva1タンパク質抗体に光感受性物質 クロリン e6(Chlorin e6)を結合させ、培養グリオーマ幹細胞の培地に添加した後、レーザー光照射を行うことによって、該光感受性物質を単独で添加した場合と比較し、グリオーマ幹細胞への取込み量が増加していること、さらには細胞傷害性の向上がもたらされていることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、より詳しくは、以下の発明を提供するものである。
(1) 光感受性物質を備えた抗Eva1タンパク質抗体。
(2) 光感受性物質を備えた抗Eva1タンパク質抗体を有効成分とする、グリオーマ細胞を殺傷するための組成物。
(3) グリオーマ細胞を殺傷するための方法であって、光感受性物質を備えた抗Eva1タンパク質抗体を対象に投与し、前記対象に光照射を行い、前記対象内のグリオーマ細胞を殺傷する方法。
本発明によれば、Eva1タンパク質を標的として、特異性高く、グリオーマ細胞、特にグリオーマ幹細胞を殺傷することが可能となった。
ヒトEva1(hEva1)アミノ酸配列(配列番号2に記載のアミノ酸配列)及びマウスEva1(mEva1)アミノ酸配列(配列番号4に記載のアミノ酸配列)のアライメントを示す図である。図中、下線が引かれているアミノ酸配列は、抗Eva1抗体の抗原として用いた合成ペプチドの配列(86〜102アミノ酸)であることを示す。また、太字はシグナル配列(1〜20アミノ酸)であることを示し、四角で囲んだ箇所は膜貫通ドメイン(152〜175アミノ酸)であることを示し、矢印はシステイン残基を指し示す。 FLAGタグを融合させたhEva1タンパク質を用いたウェスタンブロッティングにより、抗Eva1抗体を評価した結果を示す写真である。なお、抗FLAGタグ抗体を用いた分析の結果は抗Eva1抗体を用いた分析の結果の陽性対照であり、抗GAPDH抗体を用いた分析の結果を内部標準(ローディングコントロール)とした。 マウスグリオーマ幹細胞及びヒトグリオーマ幹細胞におけるEva1の発現を、RT−PCRにより分析した結果を示す電気泳動の写真である。なお、gapdh遺伝子の発現を内部標準とした。 NSCL61及びhGICにおけるEva1タンパク質の発現を、免疫染色により分析した結果を示す顕微鏡写真である。なお、図中緑色に発光している部分は抗Eva1抗体によって染色された部位を示し、図中青色に発光している部分は、Hoechst33342を用いて対比染色された細胞内の核を示す。また図中のスケールバーは50μmを示す。 NSCL61由来の腫瘍におけるEva1タンパク質の発現を、免疫染色により分析した結果を示す顕微鏡写真である。なお、図中赤色に発光している部分は抗Eva1抗体によって染色された部位を示し(真ん中の2パネル 参照)、図中緑色に発光している部分はGFPの発現を示し(左側の2パネル 参照)、図中青色に発光している部分は、Hoechst33342を用いて対比染色された細胞内の核を示す。また図中のスケールバーは200μmを示す。なお、GFPはNSCL61を樹立するために導入したベクター内に組み込まれているものであるため、その発現はNSCL61又はNSCL61由来の細胞であることを示している。 hGIC由来の異種移植腫瘍におけるEva1タンパク質の発現を、免疫染色により分析した結果を示す顕微鏡写真である。なお、図中緑色に発光している部分は抗Eva1抗体によって染色された部位を示し、図中青色に発光している部分は、Hoechst33342を用いて対比染色された細胞内の核を示す。また図中のスケールバーは50μmを示す。 グリオーマ組織原発性GBM(primary GBM、primary glioblastoma multiforme、原発性多形性神経膠芽腫)におけるEva1タンパク質の発現を、免疫染色により分析した結果を示す顕微鏡写真である。なお、図中緑色に発光している部分は抗Eva1抗体によって染色された部位を示し、図中青色に発光している部分は、Hoechst33342を用いて対比染色された細胞内の核を示す。また図中のスケールバーは50μmを示す。 マウス脳の矢状断面(胎生18日(E18)、生後1日(P1)、生後100日(P100))におけるEva1タンパク質の発現を、免疫染色により分析した結果を示す顕微鏡写真である。図中緑色に発光している部分はEva1の発現を示し(上から2段目の3パネル 参照)、図中赤色に発光している部分はNestinの発現を示し(一番上の3パネル 参照)、図中青色に発光している部分は、Hoechst33342を用いて対比染色された細胞内の核を示す。また、図中「V」は脳室を示し、スケールバーは50μmを示す。 ヒト原発性グリオーマ組織及びヒトグリオーマ幹細胞におけるEva1の発現を、RT−PCRにより分析した結果を示す電気泳動の写真である。なお、gapdh遺伝子の発現を内部標準とした。 グリオーマ細胞株におけるEva1の発現を、RT−PCRにより分析した結果を示す電気泳動の写真である。なお、gapdh遺伝子の発現を内部標準とした。 hGIC及びグリオーマ細胞株のEva1を免疫染色し、フローサイトメトリーによって分析した結果を示す図である。図中左側は二次抗体(Alexa568で標識されたヤギ由来の抗ウサギIgG抗体)のみを各細胞と反応させたものの結果を示し、図中真ん中はコントロール抗体(ウサギIgG)のみを各細胞と反応させたものの結果を示し、図中右側は、抗Eva1抗体と二次抗体とを各細胞に反応させたものの結果を示す。 光感受性物質を備えた抗EVA1タンパク質抗体(Ce6−Eva1抗体)を培地に添加してレーザーを照射した後の、グリオーマ幹細胞(NSCL61)の形態学的変化を示す、顕微鏡写真である。 Ce6−Eva1抗体を培地に添加してレーザーを照射した後の、グリオーマ幹細胞(EVA1陽性細胞、NSCL61)の生細胞数の相対値を示す、グラフである。
<グリオーマ細胞を殺傷するための組成物>
本発明は、光感受性物質を備えた抗Eva1タンパク質抗体を提供する。また、本発明は、該抗体を有効成分とする、グリオーマ細胞を殺傷するための組成物も提供する。
本発明において「グリオーマ」とは、神経幹細胞、神経系前駆細胞及び神経膠細胞から発生した腫瘍の総称であり、例えば、多形神経膠芽腫(GBM)、星細胞腫(アストロサイトーマ)、随芽腫、脳室上位腫、オリゴデンドログリオーマ、脈絡叢乳頭腫、特に退形成アストロサイトーマ、退形成オリゴデンドロアストロサイトーマ、退形成オリゴデンドログリオーマが挙げられるが、これらの疾病に限定されない。
本発明において「グリオーマ細胞」とは、これらグリオーマを構成する細胞又はこれらグリオーマに由来する細胞(例えば、これらグリオーマから単離され、継代培養を経て樹立された細胞)のことをいう。さらに、前記グリオーマにおいては、多分化能及び自己増殖能を備えた細胞、すなわちグリオーマ幹細胞が存在していることが知られているため、グリオーマ幹細胞も、本発明における「グリオーマ細胞」に含まれるものである。
本発明において、「Eva1タンパク質」は、ヒト由来のものであれば典型的には配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質(配列番号1に記載のDNA配列からなる遺伝子がコードするタンパク質)であり、マウス由来のものであれば典型的には配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質(配列番号3に記載のDNA配列からなる遺伝子がコードするタンパク質)である。しかしながら、タンパク質をコードする遺伝子のDNA配列は、その変異等により、自然界において(すなわち、非人工的に)変異しうる。従って、本発明においては、このような天然の変異体も、「Eva1タンパク質」に含まれる。
本発明における「抗Eva1タンパク質抗体」としては、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよく、抗体の機能的断片であってもよい。また、「抗体」には、免疫グロブリンのすべてのクラス及びサブクラスが含まれる。抗体の「機能的断片」とは、抗体の一部分(部分断片)であって、Eva1タンパク質を特異的に認識するものを意味する。具体的には、Fab、Fab’、F(ab’)2、可変領域断片(Fv)、ジスルフィド結合Fv、一本鎖Fv(scFv)、sc(Fv)2、ダイアボディー、多特異性抗体、及びこれらの重合体などが挙げられる。
また、抗Eva1タンパク質抗体には、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、及びこれら抗体の機能的断片が含まれる。本発明の抗体を治療薬としてヒトに投与する場合は、副作用低減の観点から、キメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体が望ましい。
本発明において「キメラ抗体」とは、ある種の抗体の可変領域とそれとは異種の抗体の定常領域とを連結した抗体である。キメラ抗体は、例えば、抗原をマウスに免疫し、そのマウスモノクローナル抗体の遺伝子から抗原と結合する抗体可変部(可変領域)を切り出して、ヒト骨髄由来の抗体定常部(定常領域)遺伝子と結合し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入して産生させることにより取得することができる(例えば、特開平8−280387号公報、米国特許第4816397号公報、米国特許第4816567号公報、米国特許第5807715号公報)。また、本発明において「ヒト化抗体」とは、非ヒト由来の抗体の抗原結合部位(CDR)の遺伝子配列をヒト抗体遺伝子に移植(CDRグラフティング)した抗体であり、その作製方法は、公知である(例えば、EP239400、EP125023、WO90/07861、WO96/02576参照)。本発明において、「ヒト抗体」とは、すべての領域がヒト由来の抗体である。ヒト抗体の作製においては、免疫することで、ヒト抗体のレパートリーを生産することが可能なトランスジェニック動物(例えばマウス)を利用することが可能である。ヒト抗体の作製手法は、公知である(例えば、Nature,1993,362,255−258、Intern.Rev.Immunol,1995,13,65−93、J.Mol.Biol1991,222,581−597、Nature Genetics,1997,15,146−156、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2000,97:722−727、特開平10−146194号公報、特開平10−155492号公報、特許2938569号公報、特開平11−206387号公報、特表平8−509612号公報、特表平11−505107号公報)。
また、抗Eva1タンパク質抗体には、望ましい活性(Eva1タンパク質への結合活性、及び/又はその他の生物学的特性等)を減少させることなく、そのアミノ酸配列が修飾された抗体が含まれる。アミノ酸配列変異体は、抗体鎖をコードするDNAへの変異導入によって、又はペプチド合成によって作製することができる。抗体のアミノ酸配列が改変される部位は、改変される前の抗体と同等の活性を有する限り、抗体の重鎖又は軽鎖の定常領域であってもよく、さらに、可変領域(フレームワーク領域及びCDR)であってもよい。CDR以外のアミノ酸の改変は、抗原との結合親和性への影響が相対的に少ないと考えられるが、現在では、CDRのアミノ酸を改変して、抗原へのアフィニティーが高められた抗体をスクリーニングする手法が公知である(PNAS,102:8466−8471(2005)、Protein Engineering,Design&Selection,21:485−493(2008)、国際公開第2002/051870号、J.Biol.Chem.,280:24880−24887(2005)、Protein Engineering,Design & Selection,21:345−351(2008))。
改変されるアミノ酸数は、好ましくは、10アミノ酸以内、より好ましくは5アミノ酸以内、最も好ましくは3アミノ酸以内(例えば、2アミノ酸以内、1アミノ酸)である。アミノ酸の改変は、好ましくは、保存的な置換である。本発明において「保存的な置換」とは、化学的に同様な側鎖を有する他のアミノ酸残基で置換することを意味する。化学的に同様なアミノ酸側鎖を有するアミノ酸残基のグループは、本発明の属する技術分野でよく知られている。例えば、酸性アミノ酸(アスパラギン酸及びグルタミン酸)、塩基性アミノ酸(リシン・アルギニン・ヒスチジン)、中性アミノ酸においては、炭化水素鎖を持つアミノ酸(グリシン・アラニン・バリン・ロイシン・イソロイシン・プロリン)、ヒドロキシ基を持つアミノ酸(セリン・トレオニン)、硫黄を含むアミノ酸(システイン・メチオニン)、アミド基を持つアミノ酸(アスパラギン・グルタミン)、イミノ基を持つアミノ酸(プロリン)、芳香族基を持つアミノ酸(フェニルアラニン・チロシン・トリプトファン)で分類することができる。アミノ酸配列変異体は、抗原への結合活性が対象抗体(例えば、本実施例に記載の抗体)と同等であることが好ましい。抗原への結合活性は、例えば、フローサイトメーター、ELISA,ウェスタンブロッティング、免疫沈降法等を用いて解析することにより評価することができる。
さらに、本発明においては、抗体の安定性を増加させる等の目的で脱アミド化されるアミノ酸若しくは脱アミド化されるアミノ酸に隣接するアミノ酸を他のアミノ酸に置換することにより脱アミド化を抑制してもよい。また、グルタミン酸を他のアミノ酸へ置換して、抗体の安定性を増加させることもできる。本発明は、こうして安定化された抗体をも提供するものである。
抗体の改変は、例えば、グリコシル化部位の数又は位置を変化させるなどの抗体の翻訳後プロセスの改変であってもよい。これにより、例えば、抗体のADCC活性を向上させることができる。抗体のグリコシル化とは、典型的には、N−結合又はO−結合である。抗体のグリコシル化は、抗体を発現するために用いる宿主細胞に大きく依存する。グリコシル化パターンの改変は、糖生産に関わる特定の酵素の導入又は欠失などの公知の方法で行うことができる(特開2008−113663、米国特許第5047335号、米国特許第5510261号、米国特許第5278299号、国際公開第99/54342号)。
本発明において「光感受性物質」とは、光照射により活性化されることにより、それ自体が細胞傷害性(細胞毒性)を示す形態に変化する物質、又は細胞傷害性物質(細胞毒性物質)を生じさせる物質のことを意味する。「光照射により活性化されることにより、それ自体が細胞傷害性を示す形態に変化する物質」としては特に制限はないが、例えば、紫外線の感受性を高める物質であるソラレン類が挙げられる。また、「細胞傷害性物質(細胞毒性物質)」としては特に制限はないが、例えば、一重項酸素及び他の酸素由来のフリーラジカルといった酸化剤が挙げられ、さらに「光照射により活性化されることにより、細胞傷害性物質を生じさせる物質」としては特に制限はないが、例えば、ポルフィマーナトリウム(Porfimer sodium、登録商標:フォトフリン)、タラポルフィンナトリウム(Talaporfin sodium、商品名:レザフィリン)、ベルテポルフィン(Verteporfin、商品名:ビスダイン)、合成ジポルフィリン、合成ジクロリン、フタロシアニン及びその金属置換体、クロロアルミニウムフタロシアニン、O−置換テトラフェニルポルフィリン(ピケットフェンスポルフィリン)、3,1-メソテトラキス(o-プロピナミドフェニル)ポルフィリン、ベルジン(verdins)、プルプリン(purpurins)、スズオクタエチルプルプリン、亜鉛オクタエチルプルプリン、エチオプルプリン、ヒドロポルフィリン(hydroporphyrins)、テトラ(ヒドロキシフェニル)ポルフィリンシリーズのバクテリオクロリン、クロリン(chlorins)、クロリンe6、クロリンe6のモノ-l-アスパチル誘導体、クロリンe6のジ−l−アスパチル誘導体、スズ(IV)クロリンe6、メタ-テトラヒドロキシフェニルクロリン、ベンゾポルフィリン、ベンゾポルフィリン一酸誘導体(BPD-MA)、ベンゾポルフィリンのテトラシアノエチレン付加体、ベンゾポルフィリンのジメチルアセチレンジカルボキシレート付加体、ベンゾポルフィリンの一酸環“a”誘導体、スルホン化アルミニウムPC、スルホン化AIPc、二スルホン化誘導体、三スルホン化誘導体、四スルホン化誘導体、スルホン化アルミニウムナフタロシアニン、ナフタロシアニン、アントラセンジオン(anthracenediones)、アントラピラゾール(anthrapyrazoles)、アミノアントラキノン(aminoanthraquinone)、フェノキサジン染料(phenoxazine dyes)、フェノキサジン誘導体、ピリリウムカルコゲン染料(chalcogenapyrylium dyes)、陽イオン性のピリリウムセレン及びピリリウムテルルの誘導体、環置換陽イオン性PC(ring−substituted cationic PC)、フェオホルビド(pheophorbide)誘導体、天然生成ポルフィリン、へマトポルフィリン、ALA−誘導プロトポルフィリンIX、5−アミノレブリン酸(5−aminolevulinic acid(5−ALA、商品名:5−ALA軟膏)、ベンゾナフトポルフィラジン、陽イオン性イミン塩、テトラサイクリン、ルテチウムテクサフィリン(lutetium texaphyrin)、スズ−エチオプルプリン、ポルフィセン(porphycenes)、ベンゾフェノチアジニウム化合物(benzophenothiazinium)、及びこれらの前駆体及び誘導体が挙げられる。そして、当業者であれば、このような化合物の中から、種々の観点、例えば、一重項酸素等への高い光反応収率を有すること、組織透過性の高い長波長側(特に波長600nm以上)のスペクトルにおいて高い吸収を示すこと、光感受性物質自体の体内動態、光感受性物質自体の副作用が低いこと等の観点に基づき、適宜選択し、前記「抗Eva1タンパク質抗体」に備えさせ、利用することができるが、他の光感受性物質よりも排泄されにくいため、グリオーマ細胞への到達率がより高いという観点から、クロリンe6であることが好ましい。
本発明の「光感受性物質を備えた抗Eva1タンパク質抗体」において、光感受性物質と抗Eva1タンパク質抗体との結合様式は特に制限はなく、間接的な結合であってもよく、直接的な結合であってもよい。「間接的な結合」としては、例えば、光感受性物質に直接結合した二次抗体を介した、光感受性物質と抗Eva1タンパク質抗体(一次抗体)との結合が挙げられる。また、光感受性物質と抗Eva1タンパク質抗体との結合様式は、共有結合であってもよく、非共有結合であってもよいが、グリオーマ幹細胞により特異的に集積し、より効率良く細胞傷害をもたらすために、生理条件下にて安定した結合であることが望ましいという観点から、「共有結合」であることが好ましい。
このような「共有結合」としては特に制限はなく、例えば、アミノ基とカルボキシル基とのアミド結合、アミノ基とアルキルハライド基とのアルキルアミン結合、チオ―ルどうし間のジスルフィド結合、チオール基とマレイミド基又はアルキルハライド基とのチオエステル結合が挙げられ、当業者であれば、利用する光感受性化合物の性質(構造)に合わせて適宜選択することができる。さらに、後述の実施例において示す通り、かかる共有結合に必要な反応基は、種々のカップリング剤を適宜利用することにより、光感受性化合物又は抗体に導入することができる。かかる「カップリング剤」としては、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、エチル(ジメチルアミノプロピル) カルボジイミド(EDC)、N−スクシニミジル−S−アセチル−チオアセテート(SATA)、N−スクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、オルト−フェニレン−ジマレイミド(o−PDM)、スルホスクシニミジル4−(N−マレイミド−メチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート(スルホ−SMCC)が挙げられる。
「非共有結合」としては、例えば、アビジンを直接結合した光感受性物質とビオチンを直接結合した抗Eva1タンパク質抗体とを利用した際の、ビオチン−アビジン間結合を介した光感受性物質と抗Eva1タンパク質抗体との結合が挙げられる。
また、本発明の「光感受性物質を備えた抗Eva1タンパク質抗体」において、備える光感受性物質は1種に限らず、複数種の光感受性物質を1の抗Eva1タンパク質抗体が備えていてもよい。
後述の実施例において示す通り、光感受性物質に抗Eva1タンパク質抗体を結合させることにより、該光感受性物質のグリオーマ幹細胞への取込み量を増加させ、さらには細胞傷害性の向上がもたらされる。従って、本発明の「光感受性物質を備えた抗Eva1タンパク質抗体を有効成分とする、グリオーマ細胞を殺傷するための組成物」は、グリオーマの治療のために投与される医薬組成物又は研究目的(例えば、インビトロやインビボの実験)に用いられる試薬の形態であり得る。
また、本発明の「光感受性物質を備えた抗Eva1タンパク質抗体を有効成分とする、グリオーマ細胞を殺傷するための組成物」は、当該抗体と任意の成分、例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、リン酸緩衝液を含有する組成物の形態で使用することができる。賦形剤としては乳糖、デンプン、ソルビトール、D−マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、ジエチリン亜硫酸塩、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としてはアジ化ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等を用いることができる。
また、本発明の「光感受性物質を備えた抗Eva1タンパク質抗体」には、後述の脳関門透過物質が結合されていても良い。さらに、当該抗体は、グリオーマ特異的なEVA1タンパク質を標的としているため、グリオーマの治療のみならず、グリオーマの診断への応用も考えられる。前記抗体をグリオーマの診断に用いる場合又はグリオーマの治療における腫瘍部位の検出に用いる場合、前記抗体は、前記光感受性物質以外の化合物にて標識したものであってもよい。このような標識としては、例えば、放射性物質、蛍光色素、化学発光物質、酵素、補酵素を用いることが可能であり、具体的には、ラジオアイソトープ、フルオレセイン、ローダミン、ダンシルクロリド、ルシフェラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、リゾチーム、ビオチン/アビジンが挙げられる。
<グリオーマ細胞を殺傷するための方法>
本発明は、光感受性物質を備えた抗Eva1タンパク質抗体を対象に投与し、前記対象に光照射を行って、前記対象内のグリオーマ細胞を殺傷するための方法を提供する。
本発明の治療方法における「対象」は、グリオーマを治療するために本発明の方法を用いる際には、グリオーマ患者である。ヒト以外の動物におけるグリオーマの治療を目的とする場合には、対象は、例えば、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、鳥等が挙げられる。また、インビトロやインビボの実験に本発明の方法を用いる際には、グリオーマ細胞を含む培地等である。
光感受性物質を備えた抗Eva1タンパク質抗体を対象に投与する方法としては、グリオーマの治療を目的とする場合には、例えば、脳内への直接投与や静脈注射等により行うことができる。また、当業者であれば、適宜選択した前記任意の成分と当該抗体とを組み合わせることにより、各投与形態に適した本発明の組成物を調製することができ、該組成物を利用することによって、前記抗体を対象に効率よく投与することが可能となる。前記抗体を脳内に直接投与する方法としては、例えば、定位脳手術方法によってカニューレ等を挿入し、当該カニューレを通じてグリオーマに投与する方法が挙げられる。前記抗体を脳内に直接投与しない場合には、前記抗体に脳関門透過物質を結合させて投与する方法を利用することができるが、これに制限されない。対象がGBMを羅患している生体である場合は、血管新生が生じた脳腫瘍内血管に正常な脳にある脳関門(BBB)が形成されていないことから、脳関門透過物質を結合させなくとも、前記抗体を静脈注射等によってGBMに送達することができる。脳関門透過物質としては、例えば、狂犬病ウィルス由来の29アミノ酸からなる糖タンパク質(Kumarら、Nature、2007年7月5日、448巻、39〜43ページ 参照)が挙げられるが、これに制限されない。
本発明の光感受性物質を備えた抗Eva1タンパク質抗体の投与量は、投与対象の年齢、体重、性別、健康状態(グリオーマの進行の程度)、投与経路、備えている光感受性物質の種類・量、抗Eva1タンパク質抗体の力価等により変動しうるが、一般的に、成人には体重1kg当たり1日0.1〜1000mg、好ましくは1〜100mgであり、投与の回数は通常1日1回である。
そして、このようにして対象に投与された光感受性物質を備えた抗Eva1タンパク質抗体は、後述の実施例において示す通り、グリオーマ、特にグリオーマ幹細胞に対して極めて高い細胞傷害性を示すため、グリオーマに対する光線力学的療法(Photodynamic therapy:PDT)に好適に利用することができる。
本発明の方法をグリオーマを治療するために用いる際には、他のグリオーマの治療法(例えば、抗腫瘍剤を用いた化学的療法、放射線療法)と併用してもよい。
また、インビトロやインビボの実験に本発明の方法を用いる際に、光感受性物質を備えた抗Eva1タンパク質抗体を対象に投与する方法としては、例えば、グリオーマ細胞を含む培地に当該抗体を添加する方法が挙げられる。
本発明の方法において、光感受性物質を活性化させるために対象に照射される光は、非コヒーレント(非レーザー)光であってもよく、コヒーレント(レーザー)光であってもよいが、光の収束性、指向性に優れているという観点から、コヒーレント(レーザー)光であることが好ましい。また、非コヒーレント光の光源としては特に制限はなく、例えば、光フィルターを備えた、水銀及びキセノンアークランプ、タングステンランプ、冷陰極蛍光ランプ、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)、白熱光源が挙げられる。レーザー光の光源としては、半導体レーザー(レーザーダイオード)、アルゴンイオンレーザー、波長可変レーザー、Ti−サファイアレーザー、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、ヘリウム−ネオンレーザー、GaAlAs及びInGaAsダイオードレーザー、Nd−YLFレーザー、Nd−ガラスレーザー、Nd−YAGレーザー、ファイバーレーザーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
照射される光の波長としては特に制限はなく、抗Eva1タンパク質抗体が備えた光感受性物質の種類に応じて適宜選択して利用することができるが、グリオーマの治療を目的とする場合には、組織透過性が高いという観点から、長波長側(特に波長600nm以上)であることが好ましい。
照射の領域及びタイミングは、グリオーマの治療を目的とする場合には、治療される病理学的症状(グリオーマの浸潤の程度等)、位置、領域によって適宜決定され、例えば、グリオーマ摘出後の摘出腔に対する照射が挙げられる。
また、照射時間は、備えている光感受性物質の種類・量、抗Eva1タンパク質抗体の力価等により変動し得、さらにグリオーマの治療を目的とする場合には、投与対象の年齢、体重、性別、健康状態(グリオーマの進行の程度)等を考慮して設定されるが、総照射時間として、通常1〜20分、好ましくは5〜10分である。
照射のために使用される光の全体の流量及びエネルギーも、備えている光感受性物質の種類・量、抗Eva1タンパク質抗体の力価等により変動し得、さらにグリオーマの治療を目的とする場合には、投与対象の年齢、体重、性別、健康状態(グリオーマの進行の程度)等を考慮して設定されるが、総エネルギーとしては、通常10〜1000J/cm、好ましくは100〜500J/cmである。さらに、照射のために使用される光の照射強度は、通常75〜500mW/cm、好ましくは100〜300mW/cmである。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、下記実施例は、以下に記載した実験方法に基づいて行った。
(実施例1)
<抗Eva1ポリクロ―ナル抗体の作製>
先ずヒト由来のEva1タンパク質(hEva1、配列番号2の細胞外領域(1〜150アミノ酸)から、抗原として86〜102アミノ酸(PMSGRFKDRVSWDGNPE、配列番号11、図1参照)を抗原として選択した。次に選択したアミノ酸配列からなる合成ペプチドを作製し、これを用いてウサギに免疫付与した。そして、かかるウサギから血清を採取し、ペプチドアフィ二ティーカラムを用いて精製して、ウサギ由来の抗Eva1ポリクローナル抗体を調製した。
また、得られた抗Eva1ポリクロ―ナル抗体の特異性はウェスタンブロッテングにより評価した。ウェスタンブロッティングは、「Takanaga H,ら、Stem Cells、2009年、27巻、165〜74ページ」の記載の通りに行った。ウェスタンブロッティングの分析には、pcDNA3−eva1−2xFLAG−c等をCos7細胞にトランスフェクションすることにより導入し、そのトランスフェクションの2日後に細胞から抽出したタンパク質を供した。さらに、hEva1 shRNA(ヒトeva1をノックダウンするためのヘアピン配列)によってhEva1−2xFLAGの発現が抑制されている細胞由来のタンパク質も供した。なお、かかるトランスフェクション並びにhEva1 shRNAについては、後述の<ベクターの構築>にて示す。また、ブロットしたメンブレンを、前記ウサギ由来の抗Eva1ポリクロ―ナル抗体(1/500に希釈して使用)、マウス由来の抗FLAG抗体(SIGMA社製、1/1000に希釈して使用)、又はマウス由来の抗GAPDH抗体(Chemicon社製、1/1000に希釈して使用)を用いてプローブした。さらに、ECLシステム(Amersham社製)を検出のために用いた。得られた結果を図2に示す。
図2に示した結果から明らかなように、pcDNA3−eva1−2xFLAG−cが導入されたCos7細胞由来のタンパク質を用いたウェスタンブロッテングにおいては、前記抗Eva1ポリクロ―ナル抗体は抗FLAGタグ抗体同様に、2xFLAGタグが結合されたEva1タンパク質(hEva1−2xFLAG)を検出できることが確認された。また、コントロールベクター(pcDNA3)のみを発現させた細胞由来のタンパク質を用いたウェスタンブロッテングにおいては、前記抗Eva1ポリクロ―ナル抗体は、Eva1以外のタンパク質を非特異的に検出しないことも確認された。さらに、hEva1 shRNAによってhEva1−2xFLAGの発現が抑制されている細胞由来のタンパク質を用いたウェスタンブロッテングにおいては、前記抗Eva1ポリクロ―ナル抗体は抗FLAGタグ抗体同様に、細胞内に発現した少量のEva1タンパク質を特異的に検出できることが確認された。
<動物及び試薬類>
マウスは、理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター(CDB)の動物資源開発室及び日本チャールズリバー株式会社から入手した。また、マウスに関する全ての実験プロトコールは理研CDB動物実験委員会の承認を受けたものである。試薬及び成長因子は、特に記載される場合を除き、シグマアルドリッチジャパン及びぺプロテック社から各々購入した。
<細胞培養>
マウス神経幹細胞(NSC)、マウスNSCL61、及び、ヒトグリオーマ幹細胞(hGIC)は、下記文献に記載している通りに調製を行い、NSC培地(試薬、bFGF (10ng/ml)、EGF(10ng/ml)を添加したDMEM/F12(Gibco,BRL社製))中で培養した(Kondo Tら、Genes Dev、2004年、18巻、2963〜2972ページ、及び、Hide Tら、Cancer Res.、2009年、69巻、7953〜7959ページ 参照)。
また、OPCL61の樹立は下記の通りに行った。すなわち、先ず、オリゴデンドロ前駆細胞(OPC)への分化誘導を、マウス由来のp53欠損神経幹細胞(p53−deficient NSC)をOPC培地(試薬、PDGFAA(10ng/ml)、bFGF(2ng/ml)、及び0.25%ウシ胎児血清(FCS))を用いて培養することによって行った後、イムノパニング(immunopanning、Kondo Tら、Genes Dev、2004年、18巻、2963〜2972ページ 参照)を逐次行うことによって精製した。そして、得られたOPC 2×10個を、HRasの恒常的活性型(constitutive active form)及びGFPをコードしているpCMS−EGFP−HRasL61 10μgを含有するマウスNSC Nucleofector溶液(LONZA社製)100μl中に懸濁した。そして、このプラスミドベクターを遺伝子導入装置(製品名:Nucleofector、LONZA社製)を用いてOPCに導入した。遺伝子導入されたOPCを、最適化した培地中で培養し、GFP陽性細胞をフローサイトメトリー(製品名:JSANセルソーター、ベイバイオサイエンス株式会社製)を用いて単離した。
グリオーマ(神経膠芽腫)細胞株(C6、T98G、Tp483、SF126、U87、及び、U251)は10% ウシ胎児血清(FCS)、100units/ml ペニシリンG、及び、100ug/ml ストレプトマイシン(GIBCO社製)を添加したDMEM中で維持した。Eva1染色に関しては、細胞をNSC培地中で7日間培養し、フローサイトメトリーを用いて解析した。SF126はHS研究資源バンクより購入した。
<蛍光励起細胞分取(FACS)>
hGIC及びグリオーマ細胞株は、前記ウサギ由来の抗Eva1ポリクロ―ナル抗体(10μg/ml)、及びAlexa568で標識されたヤギ由来の抗ウサギIgG抗体(Molecular Probe社製、1/400に希釈して使用)によって免疫標識した。そして免疫標識した細胞は、JSANセルソーター(ベイバイオサイエンス株式会社製)を通し、二波長の励起光(488nm固体レーザー及び638nm半導体レーザー)を用いて分析した。なお、ヨウ化プロピジウム(PI)陽性細胞(例えば、死細胞)は、この分析から除外した。
<免疫染色>
解剖したマウスの脳を、4%パラホルムアルデヒド中、4℃で一晩固定した。固定後、12〜18%スクロース含有PBSを用いて脳を凍結保護し、OCTコンパウンド中に包埋した。そして、大脳皮質から冠状切片(厚さ10μm)を調製した。なお、Eva1は、HistoVT One(ナカライテスク社製)を、その使用説明書に従って用いて賦活化した。次に、抗体を浸透させるために、切片は0.3% TritonX−100含有PBSをもって前処理し、次いでブロッキング溶液(2% スキムミルク、,0.3% TritonX−100、PBS)中で1時間処理した。そして、一次抗体とともに4℃で16時間インキュベーションした。固定した細胞の免疫染色は下記文献に記載の通りに行った(Kondo T,ら、EMBO J、2000年、19巻、1998〜2007ページ 参照)。また、以下の抗体は細胞内抗原を検出するのに用いた。
前記ウサギ由来の抗Eva1ポリクローナル抗体(5μg/ml)
マウス由来の抗ラットNestinモノクローナル抗体(BD Bioscience社製、1/400に希釈して使用)
ラット由来の抗GFPモノクローナル抗体(ナカライテスク社製、1/500に希釈して使用)
マウス由来の抗CD31モノクローナル抗体(Abcam社製、1/200に希釈して使用)
マウス由来の抗Ceacam1モノクローナル抗体(R&D社製、1/50に希釈して使用)
これらの抗体は、Alexa568標識ヤギ由来の抗ウサギIgG(Molecular Probe社製、1/400に希釈して使用)、Alexa488標識ヤギ由来の抗ウサギIgG若しくは抗ラットIgG(Molecular Probe社製、1/400に希釈して使用)、又はCy3標識ヤギ由来抗マウスIgG抗体(Jackson Immunoresearch社製、1/400に希釈して使用)を用いて検出した。また、核を可視化するために、Hoechst33342(1μg/ml)により、細胞を対比染色した。
<ヒト脳腫瘍>
ヒト由来のグリオーマ幹細胞であるhGIC(hGIC1及びhGIC2)は、「Hide Tら、Cancer Res.、2009年、69巻、7953〜7959ページ」に記載のものを用いた。また、ヒト由来のprimary GBM(primary Glioblastoma multiforme、原発性多形神経膠芽腫)組織、ヒト原発性グリオーマ組織は、熊本大学医学部脳外科教室より提供を受けた。そして、これらのヒト由来の試料は、理研CDB及び熊本大学大学院医学教育部の倫理委員会での承認を得て、それぞれの研究ガイドラインに従って使用した。なお、hGIC、hGIC1及びhGIC2は各々hGSC、hGSC1及びhGSC2とも称する。
また、これらの試料から、ポリ(A)+RNAはQuickPrep mRNA Purification Kit(GEヘルスケア社製)を用いて調製し、cDNAはTranscription First Strand cDNA Synthesis Kit(ロシュ社製)を用いて合成した。
また、パラフィン包埋したヒト脳腫瘍は厚さ6μmの切片に調製した。そして、Eva1染色に関しては、HistoVT One(ナカライテスク社製)を、その使用説明書に従って用いて、抗原を賦活化した。次に、切片は5%スキムミルク含有TPBS中にて室温下で30分間前処理し、ウサギ由来の抗Eva1ポリクロ―ナル抗体(1/50に希釈して使用)と共に室温下で2時間インキュベーションし、次いで、Alexa488標識ヤギ由来の抗ウサギIgG(Molecular Probe社製、1/400に希釈して使用)を用いて免疫染色を行った。また、全ての核を可視化するために、Hoechst33342(1μg/ml)により、細胞を対比染色した。
<ヌードマウスの脳への頭蓋内細胞移植>
NSCL61及びhGICは5μlの培地中に懸濁し、そして前もって10%ペントバルビタールで麻酔をかけておいた5〜8週齢の雌ヌードマウスの脳内に注入した。注入部位の定位座標は、ラムダから2mm前方、矢状縫合から2mm後方、5mmの深部とした。
<RT−PCR>
RT−PCRは下記文献に記載の通りに行った(Kondo T,ら、EMBO J、2000年、19巻、1998〜2007ページ 参照)。サイクルパラメーターは、94℃で20秒、57℃で30秒、72℃で35秒の35サイクルとした。なお、gapdhの増幅に関しては、94℃で15秒、53℃で30秒、72℃で90秒の22サイクルとした。また、eva1の増幅には、以下のオリゴブクレオチドDNAプライマーを合成し用いた。
センスプライマー:5’−TTCTCCAGCTTTGCCCCTGT−3’(配列番号:5)
アンチセンスプライマー:5’−CCGCCCATCGCTTTTTCCGG−3’
(配列番号:6)。
<ベクターの構築>
全長マウスeva1は、マウスNSC cDNAから、RT−PCR及びKODplusポリメラーゼ(TOYOBO社製)を用いて、使用説明書に従って増幅し、そしてpMOSBlueベクター(ロシュ社製)にクローニングした。なお、ヌクレオチド配列はBigDye Terminator Kit version3.1(AppliedBiosystems社製)及びABIシークエンサーモデル3130xl(AppliedBiosystems社製)を用いて確認した。そして、マウスeva1cDNAをpcDNA3−2xFLAG−cベクター(Invitrogen社製)に挿入し、pcDNA3−eva1−2xFLAG−cを得た。
なお、全長マウスeva1cDNAを増幅するために、以下のオリゴヌクレオチドDNAプライマーを合成した。
5’プライマー:5’−AGAATTCGCCACCATGTATGGCAAGAGCCCCGC−3’(配列番号:7)
3’プライマー:5’−ACTCGAGGTCTGTATCTTCCACAAAAACA−3’(配列番号:8)。
る。
また、ヒトeva1をノックダウンするために、ヘアピン配列をInvivoGen siRNA Wizard(http://www.sirnawizard.com/)を用いて作製し、psiRNA−h7SKhygro G1発現ベクター(InvivoGen社製)に挿入し、psiRNA−h7SKhygro−heva1shを得た。
なお、ヒトeva1の標的配列は、5’−GTGCACACTGTACGCTTCTCT−3’(配列番号:9)であり、本実施例において、これらのベクターから発現されたEva1遺伝子に対するshRNAを「hEva1shRNA」とも称する。
コントロールshRNA(EGFP遺伝子に対するshRNA)の標的配列は、5’−GCAAGCTGACCCTGAAGTTCA−3’(配列番号:10)である。
また、トランスフェクションは、Hide,T.ら、Cancer Res.、2009年、69巻、7953〜7959ページ、Hide,T.ら、Stem Cells、2011年、29巻、4号、590〜599ページに記載した通り、Nucleofector(Lonza社製)を用いて、その製造会社の説明書に従って行った。
(実施例2)
<グリオーマ幹細胞におけるEva1の発現>
グリオーマ幹細胞(NSCL61、OPCL61、hGIC1、hGIC2)及び正常細胞(NSC、OPC、NB(neuroblast、神経幹細胞))におけるEva1のmRNAレベルでの発現を調べるため、RT−PCRを行った。得られた結果を図3に示す。
また、これらの細胞におけるEva1のタンパク質レベルでの発現を調べるため、抗Eva1ポリクロ―ナル抗体を用いた免疫染色を行った。得られた結果を図4に示す。さらに、NSC61又はhGICをヌードマウスの脳に移植することによって形成されたグリオーマにおけるEva1のタンパク質レベルでの発現を調べるため、抗Eva1抗体を用いた免疫染色を行った。得られた結果を図5〜6に示す。また、ヒト由来のprimary GBM組織におけるEva1のタンパク質レベルでの発現を調べるため、抗Eva1抗体を用いた免疫染色を行った。得られた結果を図7に示す。
さらに、マウスの脳の発生過程におけるEva1のタンパク質レベルでの発現を調べるため、マウス脳の矢状断面(胎生18日(E18)、生後1日(P1)、生後100日(P100))を、抗Eva1抗体及び抗Nestin(神経幹細胞のマーカータンパク質)抗体を用いた免疫染色を行った。得られた結果を図8に示す。
図3に示した結果から明らかなように、マウス由来のグリオーマ幹細胞(NSCL61、OPCL61)及びヒト由来のグリオーマ幹細胞(hGIC1、hGIC2)ではeva1は発現しているものの、OPC及びNBにおいては発現しておらず、NSCにおいてもごくわずかな発現しか認められなかった。また、図4に示した結果からも明らかなように、マウス由来のグリオーマ幹細胞(NSCL61)及びヒト由来のグリオーマ幹細胞(hGIC1、hGIC2)ではEva1は発現しているものの、正常な細胞(NSC)においてはごくわずかな発現しか認められなかった。
さらに、図5〜7に示した結果から明らかなように、ヌードマウス脳内に形成されたグリオーマ幹細胞由来の腫瘍組織、及びヒト由来のprimary GBM組織においても、Eva1の発現が確認された。特に、NSCL61由来の腫瘍組織においては、腫瘍組織全体よりも腫瘍辺縁部において、Eva1を高発現している細胞が存在していることが確認された。
また、図8に示した結果から、Eva1の発現は発生段階(E18、P1)の脳の神経幹細胞に限局して検出され、成体(P100)の脳においてはその発現は消失していることが明らかになった。これは、図3及び図4に示した結果と一見矛盾しているようにも思われるが、図3及び図4で使用したNSCは長期間(3カ月以上)試験管内で培養しているため、図8に示した成体(P100)の脳における神経幹細胞と同様に、Eva1の発現は、図3及び図4で使用したNSCにおいて低下したことが考えられる。
(実施例3)
<グリオーマ組織及びグリオーマ細胞株におけるEva1の発現>
次に、実施例2において明らかになったグリオーマ組織におけるEva1の発現を詳細に調べるために、外科手術で取り除かれたグリオーマ組織におけるEva1のmRNAレベルでの発現を調べるためのRT−PCRを行った。調べたグリオーマ組織は下記の通りである
GBM:glioblastoma multiforme、多形神経膠芽腫(WHO診断基準のグレード4)
AO:Anaplastic oligodendroglioma、退形成性乏突起膠腫(WHO診断基準のグレード3)
AOA:Anaplastic oligo−astrocytoma、退形成性乏突起星細胞腫(WHO診断基準のグレード3)
OLI:Oligodendroglioma、乏突起膠細胞腫(WHO診断基準のグレード2)。
また、前記グリオーマ組織と併せて、正常脳組織(NB:Normal brain又はCB:Control human brain)、及び、実施例2において用いたhGICについても、RT−PCRを行った。得られた結果を図9に示す。
さらに、ヒトGBM由来のグリオーマ細胞株及びラットグリオーマ細胞株におけるEva1のmRNAレベルでの発現を調べるため、RT−PCRを行った。調べたグリオーマ細胞株は下記の通りである
T98G:ヒトグリオーマ細胞(Steinら、J.Cell.Physiol.、1979年、99巻、43〜54ページ 参照)
Tp483:ヒトグリオーマ細胞(Lawら、Cancer Genet Cytogenet.、2005年、160巻、1〜14ページ 参照)
SF126:ヒトグリオーマ細胞(Rosenblumら、Pharmacol.、1981年、6巻、227〜235ページ 参照)
U87:ヒトグリオーマ細胞(Clarkら、PLoS Genetics、2010年、6巻、1号、e1000832 参照)
U251:ヒトグリオーマ細胞(Bignerら、Exp.Neurol.、1981年、40巻、201〜229ページ 参照)
C6:ラットグリオーマ細胞(Bendaら、Science、1968年、161巻、370〜371ページ 参照)。
また、前記グリオーマ細胞株と併せて、実施例2において用いたNSC、NSCL61、及びhGIC2、並びにNSCL61の基となったp53−/−NSC(p53欠損神経幹細胞)についても、RT−PCRを行った。得られた結果を図10に示す。
図9及び図10に示した結果から明らかなように、eva1は調べた殆どのGBM組織において発現しており、また、いくつかのGBM由来のグリオーマ細胞株においてもeva1の発現は確認された。
(実施例4)
<グリオーマ幹細胞及びグリオーマ細胞株におけるEva1の発現>
次に、ヒトグリオーマ幹細胞及びヒトグリオーマ細胞株におけるEva1のタンパク質レベルでの発現を調べるため、抗Eva1抗体を用いたFACSによる分析を行った。なお陰性対照として、二次抗体(Alexa568で標識されたヤギ由来の抗ウサギIgG抗体)のみを各細胞と反応させたもの、コントロール抗体(ウサギIgG)のみを各細胞と反応させたものを用意し、FACSにて分析を行った。得られた結果を図11に示す。
図11に示した結果から明らかなように、Eva1はヒトグリオーマ幹細胞(hGIC1及びhGIC2)において強く発現していることが確認された。しかしながら、グリオーマ細胞株においては、Eva1の発現をFACSにて検出することはできなかった。
なお、一般的にグリオーマ細胞株を脳内に移植しても実際の脳腫瘍と同じ病理的所見を見つけることは出来ず、一方、グリオーマ幹細胞においては、実際の脳腫瘍と同様の病理的所見を容易に見つけられることが知られている。
従って、実施例2〜4の記載の通り、成体の脳の正常組織では発現せず、グリオーマ幹細胞及びグリオーマ組織(特にGBM)において高発現しているEva1は、グリオーマ細胞を殺傷するための方法に利用できることが考えられる。
(実施例5)
<グリオーマに対する光線力学的療法>
前述の通り、Eva1は、グリオーマ細胞を殺傷するための方法に利用できることが想定されるため、以下に示す通り、光感受性物質としてクロリンe6を備えた抗Eva1タンパク質抗体を調製し、該抗体によるグリオーマ細胞を殺傷するための方法における有効性を評価した。
<クロリンe6−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(Ce6−NHSエステル)の合成>
クロリンe6と抗体のアミノ基とのアミド結合を形成させるため、クロリンe6のカルボキシル基をN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)にてエステル化し、活性化エステル基とした。具体的には、クロリンe6(Ce6)(Frontier Scientific社製)と、ジシクロヘキシルカルボジイミド(和光純薬社製)と、N−ヒドロキシスクシンイミド(和光純薬)とを、1:1.5:1.5(モル比)にてジメチルスルホキシド(DMSO)5mLに溶解し、遮光条件にて室温下で24時間反応させ、Ce6−NHSエステルを調製した。反応液は分注し、抗体との結合反応に用いるまで−80℃にて保存した。
<Ce6−Eva1抗体複合体の合成>
Ce6−Eva1抗体複合体を合成するため、前記ウサギ由来の抗Eva1ポリクローナル抗体のアミノ基とCe6−NHSエステルとをアミド結合により結合させた。具体的には、0.1mLの0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.3)に0.1mgの前記ウサギ由来の抗Eva1ポリクローナル抗体を溶解し、抗体とCe6−NHSエステルとを1:25(モル比)で混合、遮光条件で室温24時間反応させた。未反応のCe6−NHSエステルを除去するために遠心濃縮フィルターアミコンウルトラ0.5(分画分子量50kDa)(日本ミリポア社製)にサンプルを添加、12000回転 10分間遠心、途中、溶媒を置換するために10mMリン酸緩衝食塩液(pH7.4)を300uLづつ添加し合計5回遠心分離を行った。精製したCe6を備えた抗Eva1タンパク質抗体(「Ce6−Eva1抗体」「Ce6−Eva1抗体複合体」とも称する)は実験に用いるまで4℃で保存した。
<Ce6−Eva1抗体複合体におけるCe6結合数の計測>
前記ウサギ由来の抗Eva1ポリクローナル抗体へのCe6結合数を解析するためにマトリックス支援レーザー脱離イオン化 飛行時間型質量分析計(MALDI−TOF−MS)を用いて質量分析を行った。具体的にはCe6−Eva1抗体をゲル濾過脱塩用スピンカラムPD Spin Trap G−25(GEヘルスケア社製)に添加、800回転1分間遠心し塩類を除去した濾液を凍結乾燥させ質量分析用サンプルとした。なお、サンプルは蒸留水5uLで溶解し、うち1uLでタンパク濃度を測定した。また、質量分析用のマトリックスとしてはシナピン酸(和光純薬)を20mg/mlになるように66%アセトニトリル(和光純薬)/0.1%トリフルオロ酢酸(和光純薬)水溶液で調整したものを用いた。Ce6−Eva1抗体溶液とシナピン酸溶液とを1:4(容量比)で混合したもの1uLを質量分析用金属プレートに点置し室温で自然乾燥後、質量分析を行った。マトリックス支援レーザー脱離イオン化 飛行時間型質量分析計Ultraflex TOF/TOF(BRUKER DALTONICS社製)を用いてレーザーパワー60%でイオン化し質量数を測定し、Ce6未結合のEva1抗体との質量数の差を求めることでCe6結合数を算出した。その結果、前記抗Eva1タンパク質抗体へのCe6結合数は1抗体分子当たり平均1.1個であった。
<Ce6−Eva1抗体複合体によるEva1陽性癌幹細胞を標的とした、グリオーマ細胞を殺傷するための方法>
96穴マイクロプレート(ファルコン社製)に1×10個/穴の濃度でグリオーマ幹細胞NSCL61を播種、COインキュベーター(アステック社製)で48時間培養後に実験に用いた。培地100μLあたりCe6−Eva1抗体(5μg)を添加し、COインキュベーターで3時間培養後、上清を除去し、200μLの培地で3回洗浄して、結合していないCe6−Eva1抗体を除去した。その後、暗所にて半導体レーザー発振装置(Power Technology社製)を用いて688nmのレーザー光を15分間照射後、COインキュベーターにて24時間培養した。レーザーの照射は、レーザー強度120mW/cm、照射部位1cm(総エネルギー:108J)にて行った。
そして、レーザーを照射してから24時間後に、細胞数を測定するため、生細胞数測定試薬SF(ナカライテスク社製)を10μL添加し、COインキュベーターでさらに2時間培養後、マイクロプレートリーダー(Bio−Rad社製)で450nmの吸光度を測定、対照群(培地のみ添加)と比較検討を行った。なお、Ce6−Eva1抗体の対照実験として5μgのCe6−Eva1抗体溶液のみ又は同等量の23ngのCe6のみを添加した実験も行った。さらに、細胞の形態学的変化についてはレーザーを照射してから0時間後、12時間後及び24時間後に倒立顕微鏡にて観察を行いCCDカメラで記録した。得られた結果を図12に示す。また、24時間後の生細胞数を定量した結果を図13に示す。
図12に示した結果から明らかな通り、レーザー照射12時間後には、対照群(未添加群)と比較し、Ce6−Eva1抗体添加群でのみ顕著な細胞変性及び細胞死が観察された。また、Ce6添加群においては若干の細胞増殖の減少傾向が認められた。さらに、24時間後のCe6−Eva1抗体添加群において、殆どの細胞における細胞死をが観察された。
また、図13に示した結果から明らかな通り、レーザー照射24時間後において、対照群と比較しCe6添加群では約40%の生細胞数の減少が認められたのに対し、Ce6−Eva1抗体投与群では約90%もの顕著な生細胞数の減少が認められた。
従って、光感受性物質に抗EVA1タンパク質抗体を備えさせることにより、光感受性物質のグリオーマ幹細胞への取込み量を増加させ、さらには細胞傷害性の向上がもたらされることが明らかになった。
以上説明したように、本発明によれば、グリオーマ、特にグリオーマ幹細胞に対して、高い特異性並びに細胞傷害性を示す組成物、並びにグリオーマ細胞を殺傷するための方法を提供することができる。
したがって、本発明の抗体及び該抗体を有効成分とする組成物は、正常細胞への光感受性物質の取り込まれを極めて低く抑えることができ、また、抗癌剤や放射線照射に耐性を有するため、従前のがん治療技術では死滅させることが困難であったグリオーマ幹細胞をも死滅させることができるため、グリオーマの治療において極めて有用である。
配列番号1
<223> ヒトEVA1
配列番号3
<223> マウスEVA1
配列番号5〜8
<223> 人工的に合成されたプライマーの配列
配列番号9〜10
<223> shRNA標的配列

Claims (3)

  1. 光感受性物質を備えた抗Eva1タンパク質抗体。
  2. 光感受性物質を備えた抗Eva1タンパク質抗体を有効成分とする、グリオーマ細胞を殺傷するための組成物。
  3. グリオーマ細胞を殺傷するための方法であって、光感受性物質を備えた抗Eva1タンパク質抗体を対象に投与し、前記対象に光照射を行って、前記対象内のグリオーマ細胞を殺傷する方法。
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