〔第1の実施の形態〕
図1は第1の実施の形態に係る通信装置を示している。図2は、通信システムを示している。図1および図2に示す構成は一例であって、斯かる構成に本開示の通信装置、信号処理プログラム、信号処理方法および通信システムが限定されるものではない。本開示の実施の形態において、音声は、音を表す用語、声を表す用語、または、声と音が混在する音を表す用語として用いている。声と音が混在する音には、時間経過の中で音又は声が部分的に存在している場合を含んでいる。
通信装置2は、周囲に位置する他の通信装置14(図2)から音声信号を取得する。通信装置2は、処理部4により、マイク(マイクロフォン)12から出力される出力信号に含まれる他の通信装置14側の音声を、他の通信装置14から取得した音声信号を用いて打ち消し、減少させ、相殺する。通信装置2、14は、例えば、携帯電話、スマートフォン、固定電話などの電話装置、音声通信機能を有する携帯情報端末(PDA: Personal Digital Assistant)、又は音声通信機能を有するPC(パーソナルコンピュータ)である。この処理部4は、マイク12に接続される。マイク12の出力信号が処理部4に入力される。処理部4には、マイク12の出力信号、すなわち、マイク12からの入力音声信号と他の通信装置14(図2)からの音声信号が入力され、音声の出力信号を通信装置2の外部に出力する。
通信装置14は、通信装置2とは別に配置された他の通信装置であって、通信部16を含む処理部17及びマイク18を備える。通信部16は、通信装置2の通信部6と無線通信を行ない、音声信号を送信する。マイク12及びマイク18は、取り込んだ音声をマイクに接続されている装置に入力する音声入力装置の一例である。マイク12は、取り込んだ音声を音声信号に変換して出力し、この出力信号を入力音声として処理部4に入力する。マイク18は、取り込んだ音声を音声信号に変換して出力し、この出力信号を入力音声として処理部17に入力する。なお、この実施の形態および以下に示す実施の形態では、通信部間の無線通信の一例として、近距離無線通信の例を示す。この実施の形態では、通信部16が通信部6と近距離無線通信を行なう例を示す。本開示の範囲は、近距離無線通信に限定されるものではなく、他の無線通信であってもよい。
通信部6は、通信手段の一例であり、例えば、近距離無線通信機能を有する近距離無線通信部で構成し、例えば近距離無線通信回路により構成される。通信部6は、例えば近距離無線通信により、他の通信装置14と通信を行う。通信部6は、通信装置2から近距離の範囲にある通信装置14を検出し、通信装置14に接続し、通信装置14から音声信号を取得する。通信部6は、通信装置14からの音声信号を信号相殺部10に出力する。
信号相殺部10は、音声信号に含まれる特定の音声を相殺する手段の一例である。信号相殺部10は、マイク12からの入力音声と、通信装置14から受信した音声信号を取得する。信号相殺部10は、マイク12からの入力音声又は通信装置14から通信部6で受信した音声信号又はこれらの両方の音声の位相を調整した後、入力音声と音声信号とを合成する。入力音声及び音声信号の合成に際し、入力音声又は音声信号の何れかの位相を180[度]反転させておく。この位相の反転は、信号相殺部10又は通信装置14に逆位相生成機能を形成して、信号相殺部10又は通信装置14で行えばよい。入力音声又は音声信号を反転させて合成するので、音声信号を相殺することができる。
マイク12からの入力音声には、マイク12に向かって音声を発している話者SP1(図2)の音声が含まれている。マイク12からの入力音声には、話者SP1以外の話者SP2(図2)の音声が含まれている。この他、マイク12からの入力音声には、周辺環境からもたらされる環境音を含んでいる。話者SP1の音声通信において、話者SP2の音声及び環境音は、周囲音であって、不要な音声(不要音)である。話者SP1は、通信装置2の利用者であって、例えば、通信装置2を使用して通信相手CP1(図2)と音声通信をするオペレータである。話者SP2は、通信装置14の利用者であって、例えば、通信装置2の周囲において通信装置14を使用して通信相手CP2(図2)と音声通信をする周囲のオペレータである。話者SP2は、通信装置14に向かって音声を発している。
通信装置2の周囲において、通信装置14を用いて話者SP2が音声通信をしている場合、マイク12が話者SP2の音声を取り込むことになる。マイク12からの入力音声は、マイク12が取り込んだ話者SP2の音声を含んでいる。信号相殺部10は、マイク12からの入力音声中の話者SP2の音声を相殺する。すなわち、信号相殺部10は、マイク12からの入力音声から話者SP2の音声を除去するように、マイク12からの入力音声又は周囲の通信装置14からの音声の位相を調整して、話者SP2の音声を相殺する。
通信部6及び信号相殺部10は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)やCPU(Central Processing unit)等のプロセッサを用いて構成する。このプロセッサは、音声処理を行う音声処理手段の一例であり、プロセッサに組み込まれるプログラムに基づいて、既述の機能を実行する。
図2に示す通信装置2及び通信装置14は、通信システム19を構成している。通信装置2及び通信装置14は、互いに近距離無線通信可能な範囲に配置され、近距離無線通信により近距離無線接続している。通信装置14には、話者SP2の音声が直接入力される。通信装置14は、この入力される音声を通信相手CP2に音声送信するとともに、近距離無線通信により処理部4に送信する。なお、通信装置14は、第一の通信装置を構成し、通信装置2は第二の通信装置を構成している。
処理部4に接続されているマイク12は、話者SP1の音声の他、周囲の話者SP2の音声を取り込む。処理部4には、通信装置14からの音声信号と、マイク12からの音声信号が入力される。通信装置14は、この入力される音声を信号相殺部10で調整して通信相手CP1に音声送信する。
次に音声について図3を参照する。図3Aはマイクからの音声信号の一例を示す図、図3Bは、近距離無線通信で受信した音声信号の一例を示す図である。図3A及び図3Bにおいて、縦軸は、音の強さ(単位:db)を表している。横軸は、時間を表している。すなわち、図3A及び図3Bでは、音の強さの時間変化が表されている。なお、図3に示す音声信号は一例であって、斯かる音声信号に本開示の範囲が限定されるものではない。
図3Aに示す音声信号20は、例えば既述のマイク12からの入力音声信号に対応する。音声区間23、25には話者SP1の音声が取り込まれている。音声区間22、24には話者SP2の音声が取り込まれている。話者SP1の音声がマイク12に直接取り込まれるのに対し、話者SP2の音声は、周囲に拡散した音声の一部が取り込まれる。よって、音声信号20では、話者SP1の音声は話者SP2の音声より高い強度を示している。話者SP2の音声は、処理部4又は通信装置2における音声通信において不要な音声、即ち不要音であって、抑制の対象となる音声である。なお、音声区間21、22、23、24、25には、話者SP2の音声以外の環境音が含まれている。
図3Bに示す音声信号30は、通信装置14からの音声信号を表している。音声区間32、34には話者SP2の音声が取り込まれている。音声区間31、33、35では、話者SP2による発声がなく、音声が全くもしくはほとんど取り込まれていない区間になっている。音声区間22の波形は、音声区間32の波形に対応しており、マイク12及び通信装置14が同一の音声を取り込んでいることを表している。音声区間24の波形は、音声区間34の波形に対応しており、マイク12及び通信装置14が同一の音声を取り込んでいることを表している。信号処理に時間を必要とするため、音声区間32の波形及び音声区間34の波形は、それぞれ音声区間22の波形及び音声区間24の波形から時間ΔDほど遅れて発生している。
次に音声の位相反転及び合成について図4を参照する。図4Aはマイクからの音声信号の一例を示す図、図4Bは、近距離無線通信で受信した音声信号の一例を示す図、図4Cは、図4Bに示す音声信号を逆位相にした図、図4Dは、合成された音声の出力信号の一例を示す図である。縦軸は、音の強さ(単位:db)を表している。横軸は、時間を表している。なお、図4に示す位相反転及び合成は一例であって、斯かる位相反転及び合成に本開示の範囲が限定されるものではない。
図4Aに示す音声信号20及び図4Bに示す音声信号30は、それぞれ図3Aに示す音声信号20及び図3Bに示す音声信号30と同様である。図4に示す例では、話者SP2の音声の抑制には、通信装置14からの音声信号の位相を180[度]反転させた逆位相信号を用いる。この逆位相信号は、信号相殺部10が備える逆位相生成機能により、通信装置14からの音声信号から生成される。この逆位相信号も音声信号であって、例えば逆位相音声を示している。
図4Cに示す逆位相信号37は、図4Bに示す音声信号の逆位相信号である。
図4Dに示す出力信号40は、図4Aに示すマイク12からの音声信号20と、図4Cに示す逆位相信号37を合成することで得られる。これらの信号を合成する際、例えばマイク12からの音声信号20の位相が調整される。位相は、例えば、音声区間22と音声区間32が一致し、音声区間24と音声区間34が一致するように、マイク12からの音声信号を時間的に遅延させることで調整される。音声区間41から音声区間45は、それぞれ音声区間21から音声区間25に対応する。音声区間42、44では、話者SP2の音声が逆位相信号37によりフィルタリングされて抑制される。よって、話者SP2の発生した音声を認識することができなくできる。位相の調整は、音声信号20の位相を調整しながら話者SP2の音声が最も消音になるように、位相にフィードバックをかけるので、安定して話者SP2の音声を抑制できる。
次に、音声の抑制処理について図5を参照する。図5は、音声の抑制処理の一例を示すフローチャートである。なお、図5に示す処理手順は一例であって、斯かる処理手順に本開示の範囲が限定されるものではない。この処理手順は本開示の信号処理プログラム、信号処理方法の一例であって、本開示の通信装置2がこの処理又は方法を実行する。
この抑制処理は、音声通話の開始を契機として、例えば処理部4が実行する。
通信装置2が通話等の音声通信を開始すると、処理部4は、周囲に通信装置14が存在するかを確認する(S1)。この確認は、例えば、通信部6を用いて近距離無線通信により行う。近距離無線通信が可能な近距離範囲に通信装置14が存在しない場合、通信装置14なしと判断し(S1のNO)、この処理手順を終了する。近距離範囲に通信装置14が存在する場合、通信装置14ありと判断し(S1のYES)、この通信装置14が音声通話中かを判断する(S2)。音声通話中でない場合、(S2のNO)、この処理手順を終了する。音声通話中である場合(S2のYES)、処理部4と通信装置14の間で近距離無線通信を開始する(S3)。近距離無線通信が開始されると、通信部6により通信装置14から音声信号が受信される(S4)。信号相殺部10は、取得した音声信号の逆位相信号と、マイク12から入力される音声信号との間で位相を調整し、これらの信号を合成して信号を相殺する(S5)。
処理部4は、近距離無線通信により周囲の通信装置14から周囲の通信装置14に対する話者SP2の音声信号を取得し、取得した音声信号に基づきマイク12が取り込んだ話者SP2の音声を抑制することができる。これにより、通信装置2の通信の際に話者SP2の音声が話者SP1の通信相手CP1に伝達されることが抑制される。すなわち、この抑制により、話者SP2が発した音声情報が通信相手CP1に漏洩することが防止される。例えば、携帯電話で通話中に、マイク12を通して入力される周囲の携帯電話の音声を消音又は抑制する目的で、処理部4が携帯電話に搭載される。処理部4は、周囲の携帯電話から入力される音声を近距離無線通信により受信する。また、処理部4は、周囲の携帯電話から入力される音声の逆位相をとるとともに、この音声の逆位相を信号相殺部10によりマイク12から入力された周囲の音声と合成し、周囲音声が消音又は抑制するように、合成位相を調整する。この調整により、携帯電話における通信において、通信相手に周囲の話者が話した情報が漏洩することが抑制される。
処理部4は、周囲の通信装置14に対する話者SP2の音声信号を近距離無線通信で受信するので、音声信号を受信できる方位が広く、効率的に音声信号を受信することができる。また、話者SP2の直接的な音声を受信し、この音声を話者SP2の音声信号により抑制するので、話者SP2の音声を効率的に抑制できる。
〔第2の実施の形態〕
図6は第2の実施の形態に係る通信装置を示している。図7は、音声抑制機能を示している。図6及び図7に示す構成又は機能は一例であって、斯かる構成又は機能に本開示の通信装置、信号処理プログラム、信号処理方法および通信システムが限定されるものではない。図1及び図2と同一部分には同一符号を付してある。
図6に示す通信装置2は、例えば、携帯電話や固定電話等の電話装置、携帯情報端末又はPCであって、音声による通信機能を有している。
記憶部102は、記憶手段の一例であって、例えば、ROM(Read Only Memory)104及びRAM(Random Access Memory)106を含む。ROM104は、不揮発性のメモリであって、例えばフラッシュメモリやEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory )等で構成する。ROM104は、OS(Operating System)や各種プログラムを記憶するほか、各種のデータの記憶に用いられる。RAM106は、高速なアクセスが可能なメモリであって、例えばデータの一時的記憶に用いられる。
プロセッサ108は、通信装置2を制御する制御手段の一例であり、記憶部102に記憶されているOSや各種プログラムを実行し、無線通信機能132(図7)、逆位相音声通信機能134(図7)、及びキーの入力処理機能等の機能を構成する。プロセッサ108は、DSP(Digital signal Processor)110を伴って、例えば、音声の入力制御機能及び音声の出力制御機能等の音声通話に関連する制御を行う。即ち、プロセッサ108及びDSP110は、例えば既述の処理部4を構成し、音声の抑制を行う。なお、無線通信機能132は、通信手段の一例であり、無線通信部を構成し、例えば、無線通信により、通信先と通信を行う。無線通信機能132は、無線通信により合成された出力音声を通信先に送信する。逆位相音声通信機能134は、音声信号を通信する音声通信機能又は音声通信手段の一例であって、例えば、逆位相にするための音声信号を周囲の通信装置から受信するための制御を行う。
DSP110は、音声の抑制を制御する制御手段の一例である。DSP110は、例えば、ディジタル信号を処理するマイクロプロセッサにより構成し、ディジタル信号を高速に処理する。DSP110は、逆位相信号の生成及び音声信号の位相調整等の処理を行う。
オーディオコーデック112は、信号をディジタル化又はアナログ化し、ディジタル信号を圧縮又は伸張する信号変換手段の一例である。オーディオコーデック112は、マイク12から入力されたアナログの音声信号をディジタルの音声信号に変換し、ディジタルの音声信号を圧縮して、圧縮された音声データをDSP110に出力する。また、オーディオコーデック112は、圧縮された音声データをDSP110から受け、この音声データを伸長して、圧縮されていない音声信号に変換する。オーディオコーデック112は、伸長された音声信号をアナログ化し、アナログの音声信号を出力する。オーディオコーデック112により圧縮された音声データは、例えば無線通信又は近距離無線通信に用いられる。オーディオコーデック112から出力されるアナログの音声信号は、例えば、増幅器114により増幅された後、スピーカ116から音声として出力される。オーディオコーデック112は、例えば、ディジタル・シグナル・プロセッサにより構成する。この場合、DSP110がオーディオコーデック112を含んで構成されてもよい。DSP110とオーディオコーデック112は、DSP110とオーディオコーデック112の間で信号を行き来させて、音声信号を処理する。
近距離無線通信I/F(interface)118は、近距離無線通信用のインタフェースであって、例えば、近距離無線通信用のアンテナ120に接続して、アンテナ120を介して近距離無線通信を行う。近距離無線通信には、Bluetooth(登録商標)規格に準拠した通信、Wi−Fi規格に準拠した通信及び赤外線通信等がある。
無線通信I/F(interface)122は、無線通信用のインタフェースであって、例えば、無線通信用のアンテナ124に接続して、アンテナ124を介して無線通信を行う。この無線通信は、例えば、無線通信基地局を介した無線通信である。なお、近距離を越えた場所に存在する通信相手に音声通信できれば良く、例えば近距離無線通信により近距離に配置された親機等に無線通信し、親機が有線又は無線で通信する構成であってもよい。
キー入力部126は、操作に応じてデータを生成するデータ生成手段の一例であり、例えば、操作入力キー、キーボード又はタッチパネルで構成する。また、キー入力部126は、例えば、キーを表示した画面と、マウスや移動キー等のポインティング・デバイスとを含んで構成し、ポインティング・デバイスを操作して画面のキーを選択して、データを生成するようにする。キー入力部126の操作により、キー入力部126が入力情報を生成する。
表示部128は、情報を表示する表示手段の一例であって、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の各種ディスプレイ装置で構成され、文字、数字、記号及び記号列等を表示する。
次に、処理部の音声抑制機能について、図7を参照する。
近距離無線通信機能129は、通信部6の一例である。近距離無線通信機能129は、例えば近距離無線通信により、他の通信装置と通信を行う。近距離無線通信機能129は、通信装置2から近距離の範囲にある通信装置14を検出し、通信装置14に接続し、通信装置14から音声信号を取得する。近距離無線通信機能129は、取得した音声信号に基づき、通信装置14からの音声を逆位相生成機能130に出力する。
逆位相生成機能130は、入力される信号の位相を反転させる位相反転手段の一例であり、位相反転部を構成する。逆位相生成機能130では、入力された信号の逆位相信号が生成される。即ち、逆位相生成機能130は、入力された信号の逆位相信号を生成する逆位相生成手段でもあり、逆位相生成部を構成し、例えば逆位相生成回路により構成される。逆位相生成機能130は、例えば、信号の位相を180[度]反転させて、逆位相の信号を生成する。逆位相生成機能130は通信装置14からの音声信号を近距離無線通信機能129から受信し、通信装置14からの音声信号の位相を180[度]反転させ、逆位相信号を生成する。逆位相生成機能130は、この逆位相信号を、音位相調整機能131に出力する。逆位相生成機能130は、音位相調整機能131とともに、既述の信号相殺部10を構成する。なお、逆位相信号は、逆位相生成機能130が受信した音声信号に対して位相が180[度]反転している音声信号であり、例えば、逆位相音声を表している。
音位相調整機能131は、位相遅延機能136と、位相合成機能138と、レベル測定機能140を含む。音位相調整機能131は、マイク12から出力される出力信号に含まれる他の通信装置14側の音声を、逆位相信号を用いて打ち消し、減少させ、相殺する。
位相遅延機能136は、音声信号を遅延させる遅延手段の一例であり、例えば位相遅延回路により構成される。位相遅延機能136は、マイク12からの入力音声信号を受信し、レベル測定機能140から信号を遅延させる量を表す遅延設定値DVを受ける。位相遅延機能136は、この遅延設定値DVに基づき入力音声信号を遅延させる。なお、遅延設定値DVは変数であり、マイク12からの入力音声信号に対する逆位相信号の遅延時間ΔDに応じて調整される。この遅延設定値DVはマイク12からの入力音声信号を遅延させる際の係数として用いられる。
位相合成機能138は、信号を合成する合成手段の一例であり、例えば合成回路により構成される。位相合成機能138は、逆位相生成機能130により生成した逆位相信号を位相遅延機能136により遅延されたマイク12からの入力音声信号に合成する。
レベル測定機能140は、音声信号のレベルを測定する測定手段の一例であり、例えば、レベル測定回路により構成される。レベル測定機能140は、位相合成機能138から出力される合成された音声信号の音量レベルを測定して、この音量が減少するように遅延設定値DVを調整する。
次に音声信号及び逆位相信号について図8を参照する。図8Aはマイクからの音声信号の一例を示す図、図8Bは、近距離無線通信で受信した音声信号の一例を示す図、図8Cは、近距離無線通信で受信した音声信号の逆位相信号一例を示す図である。縦軸は、音の強さ(単位:db)を表している。横軸は、時間を表している。すなわち、図8A、図8B及び図8Cでは、音の強さの時間変化が表されている。なお、図3に示す音声信号及び逆位相信号は一例であって、斯かる音声信号及び逆位相信号に本開示の通信装置、信号処理プログラム、信号処理方法および通信システムが限定されるものではない。図3及び図4と同一部分には同一符号を付してある。
図8Aに示す音声信号20、図8Bに示す音声信号30及び図8Cに示す逆位相信号37は、それぞれ図3A(図4A)に示す音声信号20、図3B(図4B)に示す音声信号30及び図4Cに示す逆位相信号37と同様である。図8Bに示す信号の位相の反転は、例えば、DSP110により高速に処理される。このため、位相を反転させる処理による遅延は時間ΔDに対して十分に小さく、無視されている。よって、図8Aに示すマイクからの音声信号20と図8Cに示す逆位相信号37を合成する場合、遅延設定値DVとして、時間ΔDを設定して、マイク12からの音声信号20を遅延させる。
図9に示す音位相調整機能131には、図8Aに示すマイク12からの音声信号20と、図8Cに示す逆位相信号37とが入力されている。この場合、音声信号20は、位相遅延機能136により遅延され、位相合成機能138により、逆位相信号37と合成される。レベル測定機能140は、合成された合成信号の音量が一番小さな音量になるように遅延設定値DVを調整して、遅延設定値DVとして値ΔDを得る。レベル測定機能140は、得られた値ΔDを位相遅延機能136にフィードバックする。遅延設定値DVは、例えば、初回において、遅延時間ΔDを複数回サンプリングしてその平均値を遅延時間の推定平均値ΔDに設定する。推定平均値を設定した後、遅延時間ΔDのサンプリングを継続して、遅延時間ΔDを更新していく。この更新により、遅延時間ΔDがフィードバックされる。
図10に示すグラフの曲線142は、合成信号の音量と遅延設定値との関係の一例を示している。曲線142では、遅延設定値が位相ΔDに相当する時間において合成信号の音量が最小値となり位相ΔDに相当する時間より離れるにつれて、合成信号の音量が増加している。位相ΔDに相当する時間では、逆位相信号37がより多くの音声を打ち消し、合成信号の音量が最小値となっている。よって、遅延設定値をΔDにすると、近距離無線通信により音声信号を提供している提供元の通信装置に向かって話をしている話者の音声を抑制することができる。
次に、音声の抑制処理について図11及び図12を参照する。図11は通信システムの一例を示している。図12は、音声の抑制処理のフローチャートの一例である。なお、図11に示すシステム及び図12に示す処理手順は一例であって、斯かるシステム及び処理手順に本開示の通信装置、信号処理プログラム、信号処理方法および通信システムが限定されるものではない。図12に示す処理手順は本開示の信号処理プログラム及び信号処理方法の一例であって、本開示の処理部4又は通信装置2の逆位相音声通信機能134が実行する。図1及び図2と同一部分には同一符号を付してある。
図11に示す通信装置2の周囲には、複数の通信装置として例えば携帯電話152−1、152−2、・・・、152−Nが存在している(以下、一つ又は一部の携帯電話を示す場合を含め、「携帯電話152」と表す)。この場合において、逆位相音声通信機能134は、通話の開始を契機にして、周囲の携帯電話152を近距離無線通信によりサーチを行う。周囲に携帯電話152が存在した場合、この周囲の携帯電話152と近距離無線通信を開始する。逆位相音声通信機能134は、近距離無線通信先の携帯電話152に対して端末通話状態の問い合わせを送信する。この端末通話状態の問い合わせは、例えば通話中かを問い合わせる問い合わせ又は待ち受けかを問い合わせる問い合わせである。周囲の携帯電話152が通話中である場合、逆位相通信を行う。即ち、逆位相にするための音声信号を受信する。なお、各携帯電話152は通信装置14の一例であり、通信部16を含む処理部17−1、17−2、・・・、17−3及びマイク18−1、18−2、・・・、18−N(以下、一つ又は一部のマイクを示す場合を含め、「マイク18」と表す)を含む。
近距離無線通信によるサーチの結果、複数の近距離通信要求の返答を受信した場合、逆位相音声通信機能134は、例えば全ての携帯電話152との間に同時に又は順次に近距離通信を確立させる。逆位相音声通信機能134は、複数の携帯電話152におけるマイク18の入力レベルを携帯電話152から受け取る。この入力レベルは、例えば、入力レベルの過去の平均値である。逆位相音声通信機能134は一番大きい入力レベルをもつ携帯電話152から順に、携帯電話152に関連する不要音のレベルが所定の閾値TL(図8A)を超えているかを判定する。逆位相音声通信機能134は、不要音のレベルが閾値TLを超えていたら逆位相通信を行い、超えていなかったら次に大きい入力レベルを持つ携帯電話152に関連する不要音のレベルが閾値TLを超えているかを判定する。斯かる手順が繰り返される。
図12に示す音声抑制の処理手順では、周囲の通信装置14として、端末の一形態である携帯電話152を例示し、近距離無線通信としてBT通信(Bluetooth(登録商標)通信)を例示している。処理部4を搭載した通信装置2において通話を開始すると(S101)、逆位相音声通信機能134は不要音があるかを確認する(S102)。不要音の確認は、例えば、マイク12が取り込んだ音声の波形から判断する。マイク12からの音声では、通信装置2に対する話者SP1の音声とその他の音声の間に強度の差があるので、例えば、通信装置2に対する話者SP1の音声に比べて低い強度の音声の有無により不要音の有無を判断する。この場合、不要音が話者SP2の音声によるものか、それ以外の環境音によるものかを例えば不要音の波形から判断し、話者SP2の音声による場合に、不要音ありと判断してもよい。不要音がない場合(S102のNO)、確認を繰り返し、不要音がある場合(S102のYES)、処理部4又は通信装置2の周囲に携帯電話152があるかを確認する(S103)。周囲に携帯電話152がない場合(S103のNO)、不要音があるかの確認(S102)及び周囲に携帯電話152があるかの確認(S103)を繰り返す。周囲に携帯電話152がある場合(S103のYES)、確認された携帯電話152にBT通信を要求する(S104)。BT通信が確立したかを確認し(S105)、BT通信が確立しない場合(S105のNO)、BT通信の確立の確認を繰り返す。BT通信が確立すると(S105のYES)、BT通信先の携帯電話152に端末通話状態を問い合わせる(S106)。この問い合わせに基づいて、逆位相音声通信機能134は、BT通信先の携帯電話152が音声通話中かを判断する(S107)。BT通信先の携帯電話152が音声通話中である場合(S107のYES)、不要音のレベルが閾値TLを超えているかを確認する(S108)。なお、BT通信先の携帯電話152が音声通話中でない場合(S107のNO)、BT通信先の携帯電話152に対して音声通話のための音声入力がないので、不要音の確認(S102)に戻って処理を繰り返す。複数のBT通信先の携帯電話152が存在する場合、例えば複数の携帯電話152におけるマイク18の入力レベルを受信及び確認し、大きい入力レベルの携帯電話152から順に、不要音のレベルが閾値TLを超えているかを確認する。不要音のレベルが閾値TLを超えている場合(S108のYES)、逆位相通信を行い(S109)、処理を終了する。なお、不要音のレベルが閾値TLを超えていない場合(S108のNO)、不要音のレベルの確認を繰り返す。
図13に示す逆位相通信の処理手順は、図12に示す逆位相通信(S109)のサブルーチンである。この逆位相通信の処理手順では、逆位相音声通信機能134は、BT通信先の通話中の携帯電話152に「逆位相通信開始」を通知する(S121)。この通知により、BT通信先の携帯電話152のマイク音声が近距離無線通信を介してBT通信先の携帯電話152から受信される。逆位相音声通信機能134は、逆位相生成機能130を起動し(S122)、音位相調整機能131を起動し(S123)、近距離無線通信機能129を介してBT通信先の携帯電話152のマイク音声信号の受信を開始する(S124)。マイク音声信号の受信は、通信装置2の通話の間継続する。通話が終了すると、逆位相音声通信機能134は、逆位相通信の処理からリターンして、音声抑制の処理を終了する。
逆位相生成機能130及び音位相調整機能131が起動した後、逆位相生成機能130は近距離無線通信機能129が取得した音声信号から逆位相信号を生成する。音位相調整機能131は位相を調整し、信号を合成する。近距離無線通信機能129、逆位相生成機能130及び音位相調整機能131による処理は、通信装置2の通話の間継続する。
次に位相調整について図14を参照する。図14は音位相調整の処理手順の一例を示すフローチャートである。この処理手順では、遅延設定値DVを調整して決定する。この処理手順では、音位相調整機能131は、マイク12からの入力音声信号の位相をずらしながらマイク12からの入力音声信号と逆位相信号とを合成し、合成された音声の出力信号を得る。音位相調整機能131は、この合成された音声の出力信号の音量が最も小さい音量になるように遅延設定値DVを調整する。
音位相調整機能131は、初期状態として遅延設定値DVを0[ミリ秒(msec)]に設定し(S141)、位相0の音量レベルを測定する(S142)。音位相調整機能131は、遅延設定値DVに1[msec]加算して、遅延設定値DV=DV+1[msec]に変更し(S143)、DV+1[msec]の音量レベルを測定する(S142)。そして、音量レベルが減少したかを判断し(S145)、減少した場合(S145のYES)、遅延設定値DVの変更(S143)、変更後の遅延設定値DVの音量レベルの測定(S144)及び減少したかの判断(S145)を繰り返す。音量レベルが減少しない場合(S145のNO)、即ち、音量レベルが同一又は増加した場合、音位相調整機能131は、遅延設定値DVを1[msec]減算して、遅延設定値DV=DV−1[msec]に変更し、遅延設定値DVを決定する。そして、音位相調整処理を終了する。
音声の出力信号の音量レベルが、図15に示す曲線142のように変化する場合、遅延設定値DVが位相0の位置から増加するにつれて、合成信号の音量レベルが減少する。遅延設定値DVが位相ΔDに相当する時間になると、音量レベルが増加に転じる。よって、遅延設定値DVが遅延設定値DV=ΔDに調整される。
次にBT通信先の携帯電話の処理手順について図16を参照する。図16はBT通信先の携帯電話の処理手順の一例を示すフローチャートである。この処理手順は、BT通信先の携帯電話152のプロセッサとして例えば処理部17が実行する。BT通信先の携帯電話152のプロセッサが処理部4及び通信装置2と同様の逆位相音声通信機能を備えて、この逆位相音声通信機能がこの処理手順を行ってもよい。携帯電話152のプロセッサ又は逆位相音声通信機能は、BT通信先の装置である通信装置2より「端末通話状態問合せ」要求を受信した場合、端末通話状態として「通話中」を応答する。そして、BT通信先の通信装置2より「逆位相通信開始」通知を受信した場合、「逆位相生成部」「音位相調整部」を起動した後、マイク音声をBT通信先に転送開始する。
BT通信先の携帯電話152は、通話中であるか否かを判断し(S161)、通話中でない場合(S161のNO)、確認を繰り返す。通話中であって(S161のYES)、「端末通話状態問い合わせ」がない場合(S162のNO)、「逆位相通信開始」通知(S164)もないので、「端末通話状態問い合わせ」の確認(S162)を繰り返す。「端末通話状態問い合わせ」がある場合(S162のYES)、BT通信先の装置に端末通話状態として「通話中」を応答する(S163)。「逆位相通信開始」通知があると(S164のYES)、マイク音声をBT通信先の通信装置2に転送を開始して(S165)。処理を終了する。これによりBT通信先の装置である処理部4又は通信装置2は、近距離無線通信により携帯電話152のマイク18に入力される音声信号を受信することになる。
次に、音声の抑制処理のシーケンスについて図17を参照する。図17は、音声の抑制処理シーケンスの一例を示す図である。図17に示すシーケンス図は、一例であって、斯かるシーケンスに本開示の通信装置、信号処理プログラム、信号処理方法および通信システムが限定されるものではない。
図17に示す通信装置2は、例えば話者SP1が使用している携帯電話である。また、図17に示す携帯電話152は、話者SP2が使用している携帯電話であって、例えば通信装置2と同様の構成を備えている。携帯電話152は、マイク18と、近距離無線通信機能156と、逆位相生成機能158と、音位相調整機能160と、逆位相音声通信機能162を備えている。なお、近距離無線通信機能156は、通信部16の一例である。話者SP1は、例えば、通信装置2を使用して音声通信をしているオペレータであり、話者SP2は、例えば、携帯電話152を使用して音声通信をしているオペレータである。
通信装置2では、通話を開始すると(S201)、逆位相音声通信機能134は不要音があるかを確認する(S202)。不要音がない場合(S202のNO)、確認を繰り返し、不要音がある場合(S202のYES)、周囲の携帯電話152をサーチする(S203)。逆位相音声通信機能134は、確認された携帯電話152にBT通信を要求するため、近距離無線通信機能129にBT通信確立要求を送信する(S204)。近距離無線通信機能129は、携帯電話152の近距離無線通信機能156にBT通信要求を送信する(S205)。BT通信要求の送信により近距離無線通信機能129と近距離無線通信機能156の間にBT通信が確立する(S206)。
BT通信が確立されると、逆位相音声通信機能134は携帯電話152の逆位相音声通信機能162に端末通話状態を問い合わせる(S207)。この問い合わせに対し、逆位相音声通信機能162は、通信装置2の逆位相音声通信機能134に端末通話状態として「通話中」を応答する(S208)。この応答に基づいて、逆位相音声通信機能134は、携帯電話152が音声通話中かを判断する(S209)。携帯電話152が音声通話中である場合(S209のYES)、不要音のレベルが閾値TLを超えているかを確認する(S210)。なお、携帯電話152が音声通話中でない場合(S209のNO)、不要音の確認(S202)に戻って処理を繰り返す。不要音のレベルが閾値TLを超えている場合(S210のYES)、逆位相通信開始通知を逆位相音声通信機能162に送信する(S211)。そして、逆位相音声通信機能134は、音位相調整機能131を起動し(S212)、逆位相生成機能130を起動する(S213)。携帯電話152では、マイク18に入力された話者SP2の音声が、マイク18から近距離無線通信機能156に送信される(S214)。近距離無線通信機能156は、BT通信により、近距離無線通信機能129に話者SP2の音声信号を送信する(S215)。近距離無線通信機能129は、話者SP2の音声信号を逆位相生成機能130に送信する(S216)。逆位相生成機能130は、受信した話者SP2の音声信号を、逆位相にして、話者SP2の音声信号の逆位相信号を生成して、音位相調整機能131へ送信する(S217)。音位相調整機能131は、音位相調整により逆位相の音声を減衰させる(S218)。なお、不要音のレベルが閾値TLを超えていない場合(S210のNO)、不要音のレベルの確認を繰り返す。
上記した第2の実施の形態について、特徴事項、利点又は変形例等を列挙する。
(1) 通信装置2は、近距離無線通信を介して通信装置14から話者SP2の音声信号を取得し、取得した音声信号に基づきマイク12が取り込んだ話者SP2の音声を抑制する。よって、通信装置2では、音声通信の際、話者SP2の音声が話者SP1の通信相手に伝達されることが抑制される。話者SP2が発した音声情報が話者SP1の通信相手に漏洩することが抑制される。
(2) また、マイク12が取り込んだ音声が、不要音を含んでいるか否かを近距離通信前に判断するので、不要音がない場合に近距離通信を行うことが抑制され、近距離通信による処理部4又は通信装置2への負荷軽減及び電力消費を軽減することができる。
(3) 通信装置2の周辺に複数の携帯電話152が存在する場合、一番大きい入力レベルをもつ携帯電話152から順に、不要音のレベルを判断するので、周囲の話者の音声の抑制を効率的に行うことができる。
〔第3の実施の形態〕
第3の実施の形態では、音位相調整機能131が既述の位相の調整を行うとともに、マイクからの入力音声信号と、周囲の通信装置からの音声信号との合成比率を調整する。即ち、音位相調整機能131は、周囲の話者の音声を除去するように少なくともマイクからの入力音声信号及び周囲の通信装置からの音声信号のいずれかの音の強さを調整して、これらの音声信号を合成する。位相調整とともに音の強さを調整することにより、周囲の話者の音声の抑制を高めることができる。その他の構成は第1の実施の形態又は第2の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。
遅延設定値と音声の合成比率について図18を参照する。図18は、音声の時間経過に対する振幅の変化の一例を示す図である。図18Aは、通信装置2のマイク12に入力される音声の時間経過に対する変化を示している。図18Bは、携帯電話152のマイク18に入力される音声の時間経過に対する変化を示している。図18A及び図18Bに示す時間変化は、図18Cに示す時間の基準をもとに、時間の流れが合わされている。なお、図18A及び図18Bの振幅の変化は話者SP1の音声と話者SP2の音声によりもたらされる例である。便宜上、話者SP1の音声信号による振幅の変化と、話者SP2の音声信号による振幅の変化を分解して別々に記載している。図18A及び図18Bに示す変化は、一例であって斯かる変化に本開示の範囲が限定されるものではない。
通信装置2において時刻T1からT3の間に確認される話者SP1の音声信号182−1は、携帯電話152において時刻T5からT7の間に話者SP1の音声信号182−2として確認される。通信装置2において時刻T10からT12の間に確認される話者SP1の音声信号184−1は、携帯電話152において時刻T11からT13の間に話者SP1の音声信号184−2として確認される。携帯電話152において時刻T2からT4の間に確認される話者SP2の音声信号186−1は、通信装置2において時刻T6からT8の間に話者SP2の音声信号186−2として確認される。携帯電話152において時刻T9からT12の間に確認される話者SP2の音声信号188−1は、通信装置2において時刻T11からT14の間に話者SP2の音声信号188−2として確認される。話者SP1の音声信号182−1と音声信号182−2は、同一周波数の信号である。話者SP1の音声信号184−1と音声信号184−2は、同一周波数の信号である。話者SP2の音声信号186−1と音声信号186−2は、同一周波数の信号である。話者SP2の音声信号188−1と音声信号188−2は、同一周波数の信号である。
音声信号182−2、184−2、186−2、188−2は、音声の伝搬により時間ΔTほど遅延し、音声の拡散により音声信号182−1、184−1、186−1、188−1に比べて振幅が小さくなる。音声信号の合成は、例えば携帯電話152における話者SP2の音声信号186−1、188−1の振幅と通信装置2における音声信号186−2、188−2の振幅の比率を基に決定する。合成比率は、例えば、式(1)とする。
合成比率=通信装置における振幅/携帯電話における振幅・・・(1)
通信装置における振幅:マイク12からの入力音声信号における振幅
携帯電話における振幅:近距離無線通信で受信した音声信号における振幅
そして、信号の合成は、例えば、式(2)に基づいて合成する。
合成信号=マイクからの入力音声信号+合成比率×逆位相信号 ・・・(2)
マイク18に入力された音声信号186−1、182−2、188−1、184−2は近距離無線通信により通信装置2が受信する。通信装置2は、既述の位相の調整及び式(1)及び式(2)に基づいてマイク12からの入力音声信号と逆位相信号を合成する。得られた合成信号を出力音声とすれば、話者SP2の音声を効率よく抑制することができる。
その他の構成は、第1の実施の形態又は第2の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。
〔第4の実施の形態〕
第4の実施の形態では、複数の通信装置が抑制装置を備えて、近距離無線通信により接続された複数の通信装置において並行して音声の抑制を行う。
図19に示す処理部4−1及び処理部4−2は、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態の処理部4と同様の構成を備えているのでその説明を省略する。図19に示す通信装置2−1及び通信装置2−2は、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態の通信装置2と同様の構成を備えているので、その説明を省略する。図19に示すマイク12−1及びマイク12−2は、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態のマイク12と同様の構成を備えているので、その説明を省略する。
処理部4−1は、周囲に位置する通信装置2−2から近距離無線通信により音声信号を取得し、この通信装置2−2からの音声信号を用いて、マイク12−1から入力された音声に含まれる周囲の音声を抑制する。処理部4−2は、周囲に位置する通信装置2−1から近距離無線通信により音声信号を取得し、この通信装置2−1からの音声信号を用いて、マイク12−2から入力された音声に含まれる周囲の音声を抑制する。
処理部4−1では、近距離無線通信を介して周囲の通信装置2−2から、周囲の通信装置2−2に対する話者SP2の音声信号を取得し、取得した音声信号に基づきマイク12−1が取り込んだ話者SP2の音声を抑制することができる。処理部4−1を搭載した通信装置2−1では、話者SP1と話者SP1の通信相手CP1との間で音声通信が行われる。この音声通信の際、話者SP2の音声が通信相手CP1に伝達されることが抑制される。この抑制により、話者SP2が発した音声情報が話者SP1の通信相手CP1に漏洩することが抑制される。
処理部4−2では、近距離無線通信を介して周囲の通信装置2−1から、周囲の通信装置2−1に対する話者SP1の音声信号を取得し、取得した音声信号に基づきマイク12−2が取り込んだ話者SP1の音声を抑制することができる。処理部4−2を搭載した通信装置2−2では、話者SP2と話者SP2の通信相手CP2との間で音声通信が行われる。この音声通信の際、話者SP1の音声が通信相手CP2に伝達されることが抑制される。この抑制により、話者SP1が発した音声情報が話者SP2の通信相手CP2に漏洩することが抑制される。
複数の通信装置において並行して音声の抑制を行う場合、例えば処理部4−1は、図20に示す逆位相通信の処理手順を行う。処理部4−1の逆位相音声通信機能134は、BT通信先の通話中の通信装置2−2に「逆位相通信開始」を通知する(S221)。この通知により、例えば、BT通信先の通信装置2−2のマイク音声が近距離無線通信を介して通信装置2−2から受信される。逆位相音声通信機能134は、逆位相生成機能130を起動し(S222)、音位相調整機能131を起動し(S223)、マイク12−1の音声をBT通信先の通信装置2−2に転送を開始する(S224)。
BT通信先の通信装置2−2は、例えば図21に示す処理手順を行う。BT通信先の通信装置2−2の逆位相音声通信機能134は、通話中であるか否かを判断し(S261)、通話中でない場合(S261のNO)、確認を繰り返す。通話中であって(S261のYES)、「端末通話状態問い合わせ」がない場合(S262のNO)、「逆位相通信開始」通知(S263)もないので、「端末通話状態問い合わせ」の確認(S262)を繰り返す。「端末通話状態問い合わせ」がある場合(S262のYES)、BT通信先の通信装置2−1に端末通話状態として「通話中」を応答する(S264)。「逆位相通信開始」通知があると(S263のYES)、逆位相音声通信機能134は、逆位相生成機能130を起動し(S265)、音位相調整機能131を起動し(S266)、BT通信先の通信装置2−1にマイク12−2の音声の転送を開始する(S267)。
複数の通信装置において並行して音声の抑制を行うに際し、処理部4−2が例えば図20に示す逆位相通信の処理手順を行い、通信装置2−1が例えば図21に示す処理手順を行ってもよい。その他の処理手順は、第2の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
〔他の実施の形態〕
上記実施の形態では、DSP110及びオーディオコーデック112を含んで通信装置2を構成したが、例えば、DSP110及びオーディオコーデック112の各機能を別々の回路として構成してもよい。図22に示す通信装置204は、近距離無線通信部206、逆位相生成部208及び音位相調整部210を含む。近距離無線通信部206は、例えば近距離無線通信機能129を構成する回路、逆位相生成部208は例えば逆位相生成機能130を構成する回路、音位相調整部210は、例えば、音位相調整機能131を構成する回路である。
通信装置204は、AD変換部212、エンコーダ214、218、デコーダ216、220、無線受信部222、無線送信部224を含む。AD変換部212は、アナログ信号をディジタル信号に変換する回路である。アナログ信号は、マイク12から入力される。ディジタル信号は、音位相調整部210及びエンコーダ214に向け出力される。エンコーダ214、218は信号を符号化する回路であり、例えば、信号を圧縮する。デコーダ216、220は、符号化された信号を、復号する回路であり、例えば、圧縮された信号を元の信号に戻す。無線受信部222は、アンテナ120を介して無線により信号を受信する回路である。無線送信部224は、アンテナ120を介して無線により信号を送信する回路である。その他の構成は上記実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
次に、一方の通信装置において音声の抑制を行う構成について図23を参照する。図23に示す通信装置204−1、204−2は、通信装置204(図22)と同様の構成を備えている。尚、図中の矢示は音声または信号の伝搬の例を表している。また、破線を用いた矢示は周囲の話者による音声または信号の伝搬の例を表している。話者の音声と周囲の話者の音声が重畳する音声の伝搬については、実線を用いた矢示により表している。
通信装置204−2は、通信装置204−1の周囲に配置されている。話者SP1は、通信装置204−1を用いて通信相手CP1と音声通信を行っている。通信相手CP1は話者SP1に「Dさんの住所を教えてください。」と問い合わせている。話者SP1が音声を発すると、話者SP1の音声は、マイク12−1で取り込まれ、AD変換部212−1でディジタル信号に変換された後、音位相調整部210−1に入力される。音位相調整部210−1で調整された音声信号は、エンコーダ218−1で符号化され、無線送信部224−1を介して通信相手CP1に送信される。通信相手CP1の音声は無線受信部222−1を介して受信され、デコーダ220−1で復号化され、スピーカ116−1から放出される。
話者SP2は、通信装置204−2を用いて通信相手CP2と音声通信を行っている。通信相手CP2は、話者SP2に「Yさんの電話番号を教えて。」と問い合わせている。話者SP2は、通信相手CP2に「090−11112222です。」と答えている。話者SP2の音声は、マイク12−2で取り込まれ、AD変換部212−2でディジタル信号に変換された後、エンコーダ218−2に入力される、エンコーダ218−2に入力された音声信号は、エンコーダ218−2で符号化され、無線送信部224−2を介して通信相手CP2に送信される。通信相手CP2の音声は無線受信部222−2を介して受信され、デコーダ220−2で復号化され、スピーカ116−2から放出される。
話者SP2の音声は、通信装置204−2のマイク12−2に直接的に入力されるとともに、空間に拡散して通信装置204−1のマイク12−1にも入力される。マイク12−1に入力された音声は、音位相調整部210−1に到達する。そこで、マイク12−2に入力された話者SP2の音声は、AD変換部212−2からエンコーダ214−2に入力される。話者SP2の音声は、エンコーダ214−2で符号化され、近距離無線通信部206−2を介して近距離無線通信部206−1に送信される。近距離無線通信部206−2と近距離無線通信部206−1の間における信号の伝達には、近距離無線通信が用いられる。近距離無線通信部206−1が受信した話者SP2の音声信号は、デコーダ216−1で復号化される。逆位相生成部208−1において復号化された音声信号から逆位相信号が生成される。逆位相信号が音位相調整部210−1に到達し、マイク12−1に入力された話者SP2の音声が抑制される。これにより、話者SP2の音声が通信相手CP1に伝達されることが抑制され、話者SP2の回答、即ち、Yさんの電話番号が漏洩することを防止する。
次に、通信装置204−1及び通信装置204−2において音声の抑制を行う構成について図24を参照する。図24に示す通信装置204−1、204−2は、図23に示す通信装置204−1、204−2と同様の構成を備えている。話者SP2の音声の抑制は、図23に示す一方の通信装置において音声の抑制を行う場合と同様であるのでその説明を省略する。尚、図中の矢示は音声または信号の伝搬の例を表している。また、破線を用いた矢示は周囲の話者による音声または信号の伝搬の例を表している。話者の音声と周囲の話者の音声が重畳する音声の伝搬については、実線を用いた矢示により表している。
通信相手CP1の問い合わせに対し、話者SP1は「Dさんの情報はお伝えできません。」と回答している。
話者SP1の音声は、通信装置204−1のマイク12−1に直接的に入力されるとともに、空間に拡散して通信装置204−2のマイク12−2にも入力される。マイク12−2に入力された音声は、音位相調整部210−2に到達する。マイク12−1に入力された話者SP1の音声は、AD変換部212−1からエンコーダ214−1に入力される。話者SP1の音声は、エンコーダ214−1で符号化され、近距離無線通信部206−1を介して近距離無線通信部206−2に送信される。近距離無線通信部206−2と近距離無線通信部206−1の間における信号の伝達には、近距離無線通信が用いられる。近距離無線通信部206−2が受信した話者SP1の音声信号は、デコーダ216−2で復号化される。逆位相生成部208−2において復号化された音声信号から逆位相信号が生成される。逆位相信号が音位相調整部210−2に到達し、マイク12−2に入力された話者SP1の音声の抑制が行われる。よって、話者SP1の音声が通信相手CP2に伝達されることが抑制され、話者SP1の回答が漏洩することが防止される。
以上説明した実施の形態について、その特徴事項や変形例を以下に列挙する。
(1) 上記実施の形態では、オペレータセンタ等においてオペレータが実施する形態を例示したが、これに限定されない。狭い範囲において複数の人が携帯端末を用いて会話を行う場合においても、周辺の人の音声を抑制することができる。
(2) 上記実施の形態では、無線通信による音声通信の際に周囲の話者の音声を抑制したがこれに限らず、有線通信による音声通信の際に用いてもよい。例えば、通信装置として固定電話を用いて、電話回線網を通じた音声通信において音声を抑制してもよい。通信装置としてPCを用いて、インターネット等の有線ネットワークを介したネットワーク通信において音声を抑制してもよい。更に、子機電話やヘッドセット等の通信デバイスを近距離無線通信機能により固定電話やPC等と接続して通信装置として用いて音声を抑制してもよい。
(3) 上記実施の形態では、近距離無線通信により受信した音声信号を逆位相に変換したが、これに限定されない。例えば、図25に示す処理部4では、マイク12からの入力音声を位相反転部8に入力する。位相反転部8は、マイクからの入力音声を逆位相に変換して、逆位相信号を生成する。信号相殺部10は、この逆位相信号と、通信部6から近距離無線通信により受信した周囲の通信装置からの音声信号との間の位相又は合成比率を調整してこれらの信号を合成する。斯かる構成であっても、既述の効果を得ることができる。
(4) 上記実施の形態では、通信装置2側で逆位相信号を生成したが、例えば、通信装置14側または携帯電話152側に位相反転部を形成してもよい。この場合、通信装置14または携帯電話152はマイク18の音声信号を位相反転部により反転させて、生成した逆位相信号を通信部6を介して通信装置2に送信するようにすればよい。斯かる構成であっても、既述の効果を得ることができると共に、通信装置2側の処理負担を軽減させることができる。
(5) 音声を抑制するにあたり、複数の周囲の通信装置から音声信号を受信し、マイク12からの入力音声に複数の音声信号を合成して音声を抑制するようにしてもよい。周囲に複数の通信装置が存在する場合に、これらの通話装置の話者の音声を同時に抑制することができる。
(6) 音声抑制の処理手順は、上記実施の形態で既述した処理手順に限定されるものではなく、他の処理であってもよい。たとえば、通話の開始を契機として、逆位相音声通信機能134が図26に示す音声抑制の処理手順を行うようにしてもよい。図26に示す音声抑制の処理手順では、逆位相音声通信機能134は処理部4又は通信装置2の周囲に携帯電話152があるかを確認する(S301)。周囲に携帯電話152がない場合(S301のNO)、処理を終了し、周囲に携帯電話152がある場合(S301のYES)、確認された携帯電話152にBT通信を要求する(S302)。BT通信が確立したかを確認し(S303)、BT通信が確立しない場合(S303のNO)、BT通信の確立の確認を繰り返す。BT通信が確立すると(S303のYES)、BT通信先の携帯電話152に端末通話状態を問い合わせる(S304)。この問い合わせに対する応答に基づいて、逆位相音声通信機能134は、BT通信先の携帯電話152が音声通話中かを判断する(S305)。BT通信先の携帯電話152が音声通話中である場合(S305のYES)、既述の逆位相通信を行った後(S306)、処理を終了し、音声通話中でない場合(S305のNO)、処理を終了する。周囲に携帯電話がない場合及びBT通信先の携帯電話が音声通話中の場合に処理を終了するので、プロセッサによる処理負荷が軽減される。
BT通信先の携帯電話の処理手順は、上記実施の形態で既述した処理手順に限定されるものではなく、他の処理であってもよい。たとえば、図27に示す処理手順では、「端末通話状態問い合わせ」がない場合(S321のNO)、「逆位相通信開始」通知(S323)もないので、通信先の携帯電話152はこの処理を終了する。「端末通話状態問い合わせ」がある場合(S321のYES)、BT通信先の通信装置に端末通話状態として例えば「通話中」又は「待ち受け」を応答する(S322)。「逆位相通信開始」通知があると(S323のYES)、逆位相音声通信機能134は、逆位相生成機能130を起動し(S324)、音位相調整機能131を起動し(S325)、マイクの音声をBT通信先の通信装置に転送を開始する(S325)。なお、「待ち受け」は、着信を待っている状態を意味する。
この場合、図28に示す通信装置2では、通話を開始すると(S341)、逆位相音声通信機能134は、近距離無線通信機能129にBT通信確立要求を送信する(S342)。近距離無線通信機能129は、携帯電話152の近距離無線通信機能156にBT通信要求を送信する(S343)。BT通信要求の送信により近距離無線通信機能129と近距離無線通信機能156の間にBT通信が確立する(S344)。BT通信が確立されると、逆位相音声通信機能134は携帯電話152の逆位相音声通信機能162に端末通話状態を問い合わせる(S345)。この問い合わせに対し、逆位相音声通信機能162は、通信装置2の逆位相音声通信機能134に端末通話状態として例えば「通話中」を応答する(S346)。この応答に基づいて、逆位相音声通信機能134は、携帯電話152が音声通話中かを判断する(S347)。携帯電話152が音声通話中である場合、逆位相通信開始通知を逆位相音声通信機能162に送信する(S348)。そして、逆位相音声通信機能134は、音位相調整機能131を起動し(S349)、逆位相生成機能130を起動する(S350)。逆位相音声通信機能162は、逆位相通信開始通知を受け、音位相調整機能160を起動し(S351)、逆位相生成機能158を起動する(S352)。携帯電話152では、マイク18に入力された話者SP2の音声が、マイク18から近距離無線通信機能156に送信される(S353)。近距離無線通信機能156は、BT通信により、近距離無線通信機能129に話者SP2の音声信号を送信する(S354)。近距離無線通信機能129は、話者SP2の音声信号を逆位相生成機能130に送信する(S355)。逆位相生成機能130は、受信した話者SP2の音声信号を逆位相にして話者SP2の音声信号の逆位相信号を生成して、音位相調整機能131へ送信する(S356)。音位相調整機能131は、音位相調整により逆位相の音声を減衰させる(S357)。
(7) 上記実施の形態では、通信装置間で行う無線通信の一例として、近距離無線通信の例を示したが、通信装置間で行う無線通信は、近距離無線通信に限定されるものではない。無線通信として、例えば、中距離無線通信や遠距離無線通信等の他の無線通信を用いて、例えば音声信号を送信または受信するようにしてもよい。
以上説明したように、本開示の最も好ましい実施の形態等について説明したが、本開示の通信装置、信号処理プログラム、信号処理方法および通信システムは、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は明細書に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。