以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
図1から図5に、本発明のコア回転防止機構を備えるボーリングコア採取装置の実施形態の一例を示す。なお、図1においては本発明の概略構成を分かり易くするために細かい構造の図示を適宜省略している。また、ボーリングコア採取装置は、従来の装置と同様に例えばシャフト10などに水抜き孔が適宜設けられているが、図1から図5においては本発明特有の構成を分かり易くするために図示を省略している。また、以下の説明においては、地盤・岩盤からコア(試料)を採取するためにボーリングコア採取装置を立てた状態である図1に示す状態を基準にして上下方向(即ち垂直方向),横方向(即ち水平方向)を定義する。
ここで、本発明のボーリングコア採取装置は、断層を含んでいるものや、主に風化岩からなるものや、礫岩を多く含むものや、互層岩盤や、変質岩を含むものなど種々の地盤や岩盤を対象とし得るが、以下の説明においては掘削対象を単に地盤と表記する。
まず、コア回転防止機構について説明する。
具体的には、本実施形態のボーリングコア採取装置は、円筒状に形成されて上端部に外ヘッド7が取り付けられると共に円筒周壁下端に掘削手段5が備えられたコアチューブ2と、円筒状に形成されて上端部に内ヘッド6が取り付けられると共にコアチューブ2の内部に当該コアチューブ2と同軸に配設された試料保護パイプ1と、コアチューブ2の外ヘッド7及び試料保護パイプ1の内ヘッド6を貫通するシャフト10とを有し、コアチューブ2の外ヘッド7はシャフト10に対して周方向に回転可能であるのでコアチューブ2はシャフト10に対して軸回転可能であると共に、シャフト10の軸直角断面の形状と試料保護パイプ1の内ヘッド6の貫通孔の形状とを合わせることによって試料保護パイプ1の内ヘッド6はシャフト10に対して周方向に回転しないので試料保護パイプ1はシャフト10に対して軸回転しないようにしている。
また、本実施形態のボーリングコア採取装置は、シャフト10を挟んで対向して配置される少なくとも一対の送り用ローラ14,14を更に有し、当該送り用ローラ14のシャフト10と接する部分にシャフト10の軸直角断面の形状と噛み合う凹部14cが形成されるようにしている。
シャフト10は軸直角断面が六角形に形成される。シャフト10の上端には固定用ロッド13が固定的に連結され、また、シャフト10の下端には固定用ピストン11が固定的に取り付けられる。そして、ボーリングコア採取装置を用いて地盤試料採取を行う際には、固定用ピストン11が試料採取地点の例えば地表面に設置されると共に、地上において例えば櫓(図示していない)などによって固定用ロッド13が定位置に固定される。これにより、シャフト10は地盤に対して軸回転や傾斜などすることが無いように確実に位置固定される。なお、本発明のボーリングコア採取装置の設置場所は地表面に限られるものではない。言い換えると、本発明のボーリングコア採取装置の使用態様は地表面からのコア(試料)採取に限られるものではない。具体的には例えば、ボーリングコア採取装置を進入させて設置し得るボーリング孔を設け、当該ボーリング孔の先端(言い換えると、底面)に設置されて使用されるようにしても良い。
コアチューブ2は、円筒状に形成され、上端部に外ヘッド7が取り付けられると共に、下端部(言い換えると、先端部)にコア下端切断機構21が備え付けられる。また、コア下端切断機構21の下面には掘削手段5が取り付けられる。掘削手段5としては具体的には例えば環状のビット固定部材及び一般的な掘削用ビットが用いられる。
コアチューブ2内に、試料保護パイプ1が収納される。試料保護パイプ1は、円筒状に形成されてコアチューブ2と同軸に配置されると共に、上端部に内ヘッド6が取り付けられ、また、下端は開口している。試料保護パイプ1の外周面とコアチューブ2の内周面との間には僅かな隙間が設けられ、試料保護パイプ1の周囲においてコアチューブ2が試料保護パイプ1に対して軸回転自在に構成される。なお、コアチューブ2の下端部に備え付けられるコア下端切断機構21は内径が試料保護パイプ1の内径と同じに形成されると共に試料保護パイプ1の周壁の直下にせり出すように形成されて備え付けられ、これにより、試料保護パイプ1の外周面とコアチューブ2の内周面との間の隙間の下端がコア下端切断機構21によって塞がれて前記隙間には土や小石や岩石の欠片が入り込むことが無く、コアチューブ2が試料保護パイプ1に対して軸回転自在であることが確保される。
なお、本発明のボーリングコア採取装置における試料保護パイプ1の内径(即ち、採取するボーリングコア(試料)の直径)は特定の大きさに限定されない。具体的には例えば、試料保護パイプ1の内径を、標準的なボーリングコアの場合の50〔mm〕にしたり、大型のコアが必要である場合には100〜300〔mm〕程度にしたりすることが考えられる。
試料保護パイプ1上端部の内ヘッド6は、円盤状に形成され、平面視中心位置に上下方向の貫通孔が設けられると共に当該貫通孔にシャフト10が軸方向に摺動可能に貫通する。このとき、試料保護パイプ1とシャフト10とは同軸に配置される。
内ヘッド6の貫通孔は、シャフト10の軸直角断面の六角形状に合わせて六角形に形成される。これにより、内ヘッド6は、シャフト10に対して周方向に回転することが制限された上で上下方向(即ち、シャフト10の軸方向)に移動可能に構成される。したがって、内ヘッド6が取り付けられている試料保護パイプ1が、コアチューブ2の軸回転などの影響を受けてシャフト10に対して軸回転することが無い。
コアチューブ2上端部の外ヘッド7は、肉厚の円盤状に形成され、平面視中心位置に上下方向の貫通孔が設けられると共に当該貫通孔にシャフト10が貫通する。このとき、コアチューブ2とシャフト10とは同軸に配置される。つまり、試料保護パイプ1とコアチューブ2とシャフト10とは同軸に配置される。また、外ヘッド7の下側部分はコアチューブ2の上端部に嵌まると共に、外ヘッド7の上側部分はコアチューブ2の上端よりも上方に突出する。
外ヘッド7の貫通孔は、シャフト10の軸直角断面の六角形状の最大径寸法よりも大きな直径を有する円形に形成される。そして、外ヘッド7は、シャフト10に対して当該シャフト10の軸心を中心として周方向に回転可能且つ上下方向(即ち、シャフト10の軸方向)に移動可能に構成される。
なお、本実施形態では、内ヘッド6上面の貫通孔周囲に上方に延出する筒状周壁(軸直角断面の内側貫通孔は六角形状、外周形状は円形)が形成されると共に、外ヘッド7下面の貫通孔周辺に下方に延出して内ヘッド6の前記筒状周壁を収容する円筒周壁が形成される。内ヘッド6の前記筒状周壁と外ヘッド7の前記円筒周壁との間にはベアリングが介在し、これにより、外ヘッド7及びコアバレル2の安定してずれの無い軸回転が確保される。
外ヘッド7の上端面に伝達部材8が取り付けられる。伝達部材8は、本体部分が円筒状に形成されると共に、下端にフランジが形成される。そして、本体部分の円筒部の軸方向を上下方向にし且つ本体部分の円筒貫通孔の位置を外ヘッド7の貫通孔の位置に合わせて配置され、下端のフランジが外ヘッド7の上端面に固定されて伝達部材8は外ヘッド7に固定されて取り付けられる。
伝達部材8の本体部分の円筒貫通孔にシャフト10が貫通する。このとき、伝達部材8とシャフト10とは同軸に配置される。
伝達部材8の本体部分は、シャフト10の軸直角断面の六角形状の最大径寸法よりも大きな内径を有する円筒状に形成される。そして、伝達部材8も、シャフト10に対して当該シャフト10の軸心を中心として周方向に回転可能且つ上下方向(即ち、シャフト10の軸方向)に移動可能に構成される。
つまり、伝達部材8の貫通孔と外ヘッド7の貫通孔との位置を合わせて両者が組み合わされて固定され、一体となった両者の貫通孔にシャフト10が貫通する。そして、伝達部材8と外ヘッド7とが一体となってシャフト10に対して当該シャフト10の軸心を中心として軸回転(周方向に回転)可能且つ上下方向に移動可能に構成される。
伝達部材8の本体部分の円筒の外周面の上端縁部には、全周に亘って平歯車8aが設けられる。
そして、伝達部材8の平歯車8aと噛み合う平歯車4aが回転軸に取り付けられた掘削用モータ4が伝達部材8の上方に設けられる。掘削用モータ4はモータカバー9内に当該モータカバー9の天板に固定されて取り付けられる。
モータカバー9は、平面視中心位置に貫通孔が形成された天板及び底板を有する中空円柱状の胴体と、底板から下方に延出する円筒部とを有する。モータカバー9は、軸心位置に上下方向にシャフト10を貫通させ、当該シャフト10に対して上下方向に移動可能に設けられる。
モータカバー9の天板の貫通孔は、シャフト10の軸直角断面の六角形状に合わせて六角形に形成される。これにより、モータカバー9は、シャフト10に対して軸回転することが制限された上で上下方向(即ち、シャフト10の軸方向)に移動可能に構成される。
モータカバー9の中空円柱状の胴体内に平歯車4aを含む掘削用モータ4及び伝達部材8の平歯車8aが収容されると共に、モータカバー9の底板から下方に延出する円筒部内に伝達部材8の本体部分の円筒が収容されるようにモータカバー9と伝達部材8とが組み付けられる。また、モータカバー9は、軸心位置において上下方向にシャフト10を貫通させ、当該シャフト10に対して上下方向に移動可能に設けられる。
伝達部材8の本体部分の円筒とモータカバー9の下方に延出する円筒部との間にはベアリングが介在し、これにより、モータカバー9に対して伝達部材8が軸回転可能な状態で、モータカバー9が伝達部材8に支持される。すなわち、伝達部材8を介してモータカバー9及び掘削用モータ4が外ヘッド7に支持されると共に、掘削用モータ4の駆動力が平歯車4aと平歯車8aを有する伝達部材8とを介して外ヘッド7に伝達されて当該外ヘッド7が取り付けられているコアチューブ2がシャフト10に対して当該シャフト10の軸心を中心として軸回転する。
モータカバー9の上方に、平面視中心位置に貫通孔が形成された天板及び底板を有する中空円柱状のローラカバー16が、底板の貫通孔とモータカバー9の天板の貫通孔との位置を合わせて配置され、ローラカバー16の底板下面がモータカバー9の天板上面に固定されて設けられる。ローラカバー16は、軸心位置に上下方向にシャフト10を貫通させ、当該シャフト10に対して上下方向に移動可能に設けられる。
ローラカバー16の天板及び底板の貫通孔は、シャフト10の軸直角断面の六角形状に合わせて六角形に形成される。これにより、ローラカバー16は、シャフト10に対して周方向に回転することが制限された上で上下方向(即ち、シャフト10の軸方向)に移動可能に構成される。
つまり、モータカバー9の貫通孔とローラカバー16の貫通孔との位置を合わせて両者が上下に固定され、一体となった両者の貫通孔にシャフト10が貫通する。そして、モータカバー9とローラカバー16とが一体となってシャフト10に対して周方向に回転することが制限された上で上下方向(即ち、シャフト10の軸方向)に移動可能に構成される。
ローラカバー16の天板上面に、送り用モータ12が、回転軸をローラカバー16内に下向きに挿し込んで備えられる。また、ローラカバー16内に、複数の送り用ローラ14とこれら送り用ローラ14間でローラの回転駆動を伝達するための伝達用歯車15とが備えられる。
各送り用ローラ14は、軸回転中心である軸心が横方向になるように配置され、ローラカバー16の天板と底板とに上下端が固定されて対向して設けられる軸支壁17,17に、軸方向の一端寄りの位置及び他端の二箇所が軸回転可能に軸支される。各送り用ローラ14の一端には、周縁部に歯車が形成された平歯車14bが備えられる。この平歯車14bは、対向する軸支壁17,17に送り用ローラ14が軸支された状態で軸支壁17の外側に配置される。
軸心が横方向である送り用ローラ14は、シャフト10の軸方向(即ち、上下方向)に間隔をとって並べられ、且つ、シャフト10を挟んで対向して配置される。本実施形態では、シャフト10の一方の側に三つの送り用ローラ14が上下に並べられ、すなわち、シャフト10を挟んで上段・中段・下段の各段で対向する三対で合計六つの送り用ローラ14が配設される。なお、送り用ローラ14の対の数は、三対(言い換えると三段)に限られるものでは無く、一対(一段)や二対(二段)でも良いし、また、四対(四段)以上であっても良い。
そして、これら送り用ローラ14が上中下段の各段で対向してシャフト10を挟むことによって得られる摩擦力により、送り用ローラ14が軸回転するとシャフト10が軸方向に移動する。
また、伝達用歯車15は、周縁部に歯車が形成された円盤状平歯車15aと当該円盤状平歯車15aの片面に設けられた軸とからなり、この軸の軸心が横方向になるように配置され、この軸の軸方向両端の二箇所が対向する軸支壁17,17に軸回転可能に軸支される。伝達用歯車15の円盤状平歯車15aは、対向する軸支壁17,17に軸が軸支された状態で軸支壁17の外側に配置される。
伝達用歯車15は、上下に間隔をとって並べられて配置された送り用ローラ14同士の間に配置される。したがって、伝達用歯車15も、送り用ローラ14と同様に、シャフト10を挟んで対向して配置される。本実施形態では、シャフト10の一方の側において上下に並べられた三つの送り用ローラ14同士の間に二つの伝達用歯車15が上下に並べられ、すなわち、シャフト10を挟んで上段・下段の各段で対向する二対で合計四つの伝達用歯車15が配設される。
そして、送り用ローラ14の平歯車14bと伝達用歯車15の円盤状平歯車15aとが相互に噛み合うように各々の位置が調整される。このように送り用ローラ14の平歯車14bと伝達用歯車15の円盤状平歯車15aとを相互に噛み合わせることにより、上段・中段・下段の各送り用ローラ14の回転方向及び回転速度が同期する。
また、ローラカバー16内に挿し込まれる送り用モータ12の回転軸先端(下端)と、ローラカバー16内の送り用ローラ14のうち一番上(上段)に配置され対向する一対の送り用ローラ14,14の一端(平歯車14bとは反対側の端)とには、相互に噛み合うウォーム歯車12aとウォーム歯車14aとがそれぞれ設けられる。
そして、これら送り用モータ12のウォーム歯車12aと送り用ローラ14のウォーム歯車14aとを介して送り用モータ12の回転駆動が一番上(上段)に配置された送り用ローラ14,14に伝達され、さらに、これら一番上に配置された送り用ローラ14,14の回転駆動が伝達用歯車15,15,…を介して下方(中段,下段)の送り用ローラ14,14,…に順に伝達される。
また、各送り用ローラ14の、対向する軸支壁17,17同士の間の部分であってシャフト10と接する部分には、軸直角断面が六角形状であるシャフト10の外周面の一部と噛み合う(言い換えると、外周面の一部が嵌まる)凹部14cが形成される。
そして、対向して配置される送り用ローラ14同士によってシャフト10を挟んで断面六角のシャフト10の外周面の一部と送り用ローラ14の凹部14cとが噛み合うことにより、各送り用ローラ14が軸回転することによってこれら送り用ローラ14が固定されるローラカバー16に対してシャフト10が軸方向に送り出され、一方で、ローラカバー16に対してシャフト10が軸回転することが無い。
したがって、ローラカバー16の下面に固定されるモータカバー9に対しても、シャフト10が軸回転することが無い。言い換えると、掘削用モータ4が駆動し平歯車4a及び平歯車8aを介して伝達部材8を軸回転させる際の反力がシャフト10と送り用ローラ14の凹部14cとの噛み合わせによって受け持たれ、ローラカバー16及びモータカバー9はシャフト10に対して軸回転することが無い。
その一方で、掘削用モータ4の駆動力によって伝達部材8を介して外ヘッド7及びコアチューブ2がモータカバー9に対して軸回転し、これにより、コアチューブ2がシャフト10の軸心を中心として当該シャフト10に対して軸回転する。
さらにその一方で、上述の通り内ヘッド6及び試料保護パイプ1はシャフト10に対して周方向の回転や軸回転をすることが無いように構成されていると共に試料保護パイプ1とコアチューブ2との間には隙間が設けられているので、コアチューブ2がシャフト10に対して軸回転しても試料保護パイプ1はシャフト10に対して軸回転することが無い。なお、
続いて、コアチューブ2の下端部に備え付けられるコア下端切断機構21について説明する。
具体的には、本実施形態のボーリングコア採取装置は、円筒状に形成されると共に円筒周壁下端に掘削手段5が備えられたコアチューブ2と、当該コアチューブ2の円筒周壁と同じ曲率の棒状に形成されると共に少なくとも内側周面の一部に切削手段21fが備えられてコアチューブ2の円筒周壁と上下方向に重なる位置からコアチューブ2の内部に向かって水平方向に揺動可能にコアチューブ2の下端縁部に一端が取り付けられるコア下端切断手段21dとを有するようにしている。
そして、本実施形態のボーリングコア採取装置は、円筒状に形成されると共にコアチューブ2の円筒周壁の外周に当該コアチューブ2と同軸に配設された伝達パイプ3を更に有し、当該伝達パイプ3の内周面の下端縁部に押出し突起3bが設けられ、伝達パイプ3がコアチューブ2に対して相対的に軸回転して押出し突起3bを周方向に回転させることによってコア下端切断手段21dをコアチューブ2の円筒周壁と上下方向に重なる位置からコアチューブ2の内部に向かって水平方向に揺動させるようにしている。
本実施形態では、外ヘッド7内に駆動部20を備えると共に、当該駆動部20による駆動力を伝達する仕組みを備える。
具体的には、本実施形態では、駆動部20として、外ヘッド7内に、二つの油圧シリンダ20a,20aと、これら一対の油圧シリンダ20a,20aのピストン同士を連結して設けられるローラチェーン20bと、軸方向が上下方向である伝達軸20cとを有する。
本実施形態では、伝達軸20cが外ヘッド7内の周縁寄りの位置に配置されると共に、当該伝達軸20cを頂点としてローラチェーン20bとこれの両端の油圧シリンダ20a,20aとが平面視V字をなすように外ヘッド7内に配置される。
伝達軸20cは、外周面の上端縁部に全周に亘って平歯車20c-2が設けられると共に、その下方にローラチェーン20bと噛み合うスプロケット20c-1が全周に亘って設けられる。
そして、一対の油圧シリンダ20a,20aが伸縮駆動するとローラチェーン20b及びスプロケット20c-1を介して回転駆動が伝達軸20cに与えられ、これにより、伝達軸20cが軸回転して上端縁部の平歯車20c-2が周方向に回転する。
また、駆動部20による駆動力を伝達する仕組みとして、コアチューブ2の外周面を覆うように伝達パイプ3が設けられる。伝達パイプ3は円筒状に形成されてコアチューブ2と同軸に配置されると共に、コアチューブ2の外周面と伝達パイプ3の内周面とは摺動可能な程度に接して構成される。また、伝達パイプ3は、上端縁部がコアチューブ2の上端よりも上方に突出し、同じくコアチューブ2の上端よりも上方に突出している外ヘッド7の外周面を覆うように形成され配置される。
伝達パイプ3は、内周面上端部であってコアチューブ2の上端部に取り付けられた外ヘッド7の位置に、当該外ヘッド7内に突出する内歯車3aが周方向に設けられる。そして、この内歯車3aと駆動部20の伝達軸20cの平歯車20c-2とが噛み合う。
また、伝達パイプ3は、内周面下端部であってコアチューブ2の下端部に備え付けられたコア下端切断機構21の位置に、当該コア下端切断機構21内に突出する押出し突起3bが設けられる。
上述の構成により、駆動部20の一対の油圧シリンダ20a,20aが伸縮駆動するとローラチェーン20bとスプロケット20c-1とを介して伝達軸20cが軸回転し、さらに、平歯車20c-2と内歯車3aとを介して伝達パイプ3が軸回転し、これによって押出し突起3bが周方向に回転する。
また、コア下端切断機構21は、本体21aとコア下端切断部21dとを有する。
本体21aは、試料保護パイプ1の内径と同じ内径の環状帯体に形成される。また、本体21aは、コア下端切断部21dを収容するための周方向の長孔21bが周壁の一部に形成される。
コア下端切断部21dは、本体21aと同じ曲率の弓形をしており、一端が上下方向に配設された揺動軸21eによって本体21aと揺動可能に連結されている。本実施形態では、三つのコア下端切断部21dが備えられる(したがって、本体21aに形成される長孔21bも三つである)。なお、以下においては、コア下端切断部21dの、揺動軸21eによって揺動可能に連結されている方の端部を連結端と呼び、他方の端部を自由端と呼ぶ。
そして、コア下端切断部21dは、本体21aの長孔21b内に収容された状態(図5(A)参照)と、自由端が試料保護パイプ1及びコアチューブ2の軸心位置(言い換えると、試料保護パイプ1及びコアチューブ2の軸直角断面の中心位置)まで移動した状態(図5(B)参照)との間で水平に揺動する。
コア下端切断部21dの自由端の、本体21a内に収容された状態における内側(すなわち、試料保護パイプ1の軸心側)の側面には、切削手段21fが取り付けられる。切削手段21fとしては具体的には例えば一般的な掘削用ビットが用いられる。なお、切削手段21fは、図5に示す例ではコア下端切断部21dの自由端の一部(先端)のみに取り付けられるようにしているが、コア下端切断部21dの全長に亘って(言い換えると、内側側面全体に)取り付けられるようにしても良い。また、切削手段21fは、コア下端切断部21dの自由端の内側の側面だけでなく、上面や下面にも取り付けるようにしても良い。
コア下端切断部21dは、また、自由端側の外側に自由端から連結端側に向けて徐々に浅くなる係合溝21gを有し、コア下端切断部21dが本体21aの長孔21b内に収容された状態において自由端位置であって係合溝21gが最も深い位置に伝達パイプ3の押出し突起3bが位置するように調整される(図5(A)参照)。
そして、上述の構成により、駆動部20の一対の油圧シリンダ20a,20aを伸縮駆動させることによって、押出し突起3bが周方向(図5において右回り)に回転して長孔21b内に収容されたコア下端切断部21dの係合溝21gの最も深い位置から連結端に向かって移動し、これに伴って自由端が長孔21b内から試料保護パイプ1の軸心位置に向かって移動するようにコア下端切断部21dが押し出される(図5(B)参照)。
ボーリングコアを採取する際の、上述したボーリングコア採取装置の動作を以下に説明する。
まず、図1(A)に示すように、シャフト10及び固定用ピストン11が試料保護パイプ1・コアチューブ2・伝達パイプ3内に引き込まれて固定用ピストン11がコアチューブ2下端部のコア下端切断機構21の位置に合わせられ、本実施形態では固定用ピストン11が地盤22の地表面に載置されてボーリングコア採取装置が直立した状態で、櫓(図示していない)によって固定用ロッド13が定位置に固定される。また、掘削前においては、図5(A)に示すように、コア下端切断機構21のコア下端切断部21dは本体21aの長孔21b内に収容される。
このように、シャフト10は、上端が固定用ロッド13を介して位置固定されると共に下端は固定用ピストン11によって地盤22に対して位置固定されるので、地盤22に対して軸回転や傾斜などすることが無いように確実に位置固定される。
次に、作業者や装置操作者によって掘削用モータ4が駆動させられて伝達部材8及び外ヘッド7を介してコアチューブ2が軸回転(図5において右回り)すると共に、送り用モータ12が駆動させられて送り用ローラ14を介してシャフト10が軸方向に押し下げられ、コアチューブ2が軸回転しながら試料保護パイプ1と共に地盤22内に押し下げられる。これにより、コアチューブ2下端部のコア下端切断機構21下面の掘削手段5によって地盤22が掘削されてコア22aの外周面が形成され、この掘削が行われながらコア22aが試料保護パイプ1内に取り込まれ収容されていく。
なお、この段階では、油圧シリンダ20aは駆動させられず、コアチューブ2と伝達パイプ3とは一体として軸回転する(コアチューブ2下端部のコア下端切断機構21の長孔21bの周方向の一端を区画する本体21aが伝達パイプ3の押出し突起3bに当接して押しながらコアチューブ2と伝達パイプ3とは一体として軸回転する)。また、このとき、コアチューブ2及び伝達パイプ3は軸回転する一方で、シャフト10の軸直角断面を六角形状にすると共に内ヘッド6の貫通孔を六角形にすることによって試料保護パイプ1は軸回転しない。したがって、コア22aに異常な力がかかって変形したり性状が変化したりすることが無く、地盤22としての自然状態を乱すこと無く自然状態における実際の性状のままのコアを取り出すことができる。
そして、所定の深さまで掘削した後(図1(B)参照)、作業者や装置操作者によって送り用モータ12が停止させられる一方で掘削用モータ4は駆動させられたままで、すなわち、一定の深さ位置でコアチューブ2を引き続き軸回転させた状態で、作業者や装置操作者によって一対の油圧シリンダ20a,20aが伸縮駆動させられて伝達軸20cを介して伝達パイプ3が軸回転(図5において右回り)する。なお、伝達パイプ3は、油圧シリンダ20aが伸縮駆動させられる前においてコアチューブ2と一体となって軸回転しており、油圧シリンダ20aが伸縮駆動させられることによって、軸回転しているコアチューブ2に対して摺動して更に相対的に軸回転することになる。
伝達パイプ3がコアチューブ2と共に軸回転しながらコアチューブ2に対して摺動して更に相対的に軸回転することによって、コア下端切断機構21のコア下端切断部21dが収容されていた本体21aの長孔21b内から押出し突起3bによって押し出される。そして、コア下端切断部21dが押し出されながらコアチューブ2と共に軸回転(周方向に回転)することにより、当該コア下端切断部21dに取り付けられた切削手段21fによってコア22aの下端が水平に切削される。
なお、コア下端切断部21dによるコア22aの下端部の切削はコア下端切断部21dの切削手段21fを地盤22に押し当ててコアチューブ2を軸回転させることによって行われるところ、伝達パイプ3を軸回転させることによるコア下端切断部21dの押し出しは地盤22の固さなどを考慮した上で徐々に行うようにする。
このコアチューブ2下端部のコア下端切断機構21のコア下端切断部21dの働きによってコア22aの下端部が地盤22から機械的に切削されて切断されるので、コア22a下端を予定の位置(深さ)で確実に切断して所定の形状のコアを得ることができると共に、コア22aに異常な力がかからないようにして地盤22としての自然状態を乱すこと無く自然状態における実際の性状のままのコアを取り出すことができる。更に付け加えると、必要とされるコアの径が大きくても、コア下端切断機構21のコア下端切断部21dの働きによってコア22aの下端部が地盤22から機械的に切削されて確実に切断することができる。
そして、コア下端切断部21dの自由端が限度まで押し出されて当該自由端がコアチューブ2の軸心位置近傍に達した後(図5(B)参照)、油圧シリンダ20aが停止させられて伝達パイプ3の回転駆動が停止させられると共に、掘削用モータ4が停止させられてコアチューブ2の軸回転が停止させられる。このとき、コア下端切断部21dは、自由端がコアチューブ2の軸心位置近傍に達した状態のまま位置が固定される。
そして、固定用ロッド13を引き上げることによってシャフト10を引き上げてコアチューブ2と共に試料保護パイプ1及び伝達パイプ3を地盤22内から取り出す。このとき、自由端がコアチューブ2の軸心位置近傍に達した状態のままであるコア下端切断部21dが試料保護パイプ1内に取り込まれ収容されたコア22aの下面を支えるので、コア22aが落下してしまうことが無くコア22aを確実に地上に取り出される。したがって、必要とされるコアの径が大きいために試料保護パイプ1内に収容されたコア22aが重いとしても、コア下端切断部21dがコア22aの下面を支えるのでコア22aが落下してしまうことが無い。
なお、本発明のボーリングコア採取装置の設置場所は、前述の通り地表面に限られるものではなく、予め設けられたボーリング孔の先端(底面)でも良い。また、ボーリングコア採取装置を地表面に設置し、上述のようにコアを切削・切断して取り出した後、当該コア取り出し後の孔の先端(言い換えると、底面)からコアの切削・切断を改めて行って新たなコアを取り出すようにしても良い(すなわち、採取位置が段々と深くなる複数のコアが順に取り出される)。
以上のように構成された本発明のボーリングコア採取装置によれば、シャフト10が地盤22に対して軸回転したり傾斜したりしないようにすると共にシャフト10の軸直角断面の形状と試料保護パイプ1の内ヘッド6の貫通孔の形状とを合わせることによってシャフト10に対して試料保護パイプ1が軸回転しないようにしているので、コア22aに異常な力がかかって変形したり性状が変化したりすることを防ぐことができ、地盤22としての自然状態を乱すこと無く自然状態における実際の性状のままのコアを確実に取り出すことができる。
また、本発明のボーリングコア採取装置によれば、コアチューブ2下端部のコア下端切断機構21のコア下端切断部21dの働きによってコア22aの下端部を機械的に切削して地盤22から切断するようにしているので、コア22a下端部を予定の位置(深さ)で確実に切断して所定の形状のコアを得ることができると共に、コア22aに異常な力がかからないようにして地盤22としての自然状態を乱すこと無く自然状態における実際の性状のままのコアを確実に取り出すことができる。
また、本発明のボーリングコア採取装置によれば、コアチューブ2と共に試料保護パイプ1を地盤22内から取り出す際にコアチューブ2下端部のコア下端切断機構21のコア下端切断部21dが試料保護パイプ1内に取り込まれ収容されたコア22aの下面を支持するようにしているので、コア22aを落下させてしまうこと無く確実に地上に取り出すことができる。
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態ではシャフト10の軸直角断面を六角形状にすると共に内ヘッド6の貫通孔の形状も六角形にするようにしているが、シャフト10に対して試料保護パイプ1が軸回転しないようにするためのシャフト10の軸直角断面形状及び内ヘッド6の貫通孔形状は六角形に限られるものではなく、内ヘッド6がシャフト10に対して周方向に回転しないように両者が丁度嵌まり合って噛み合う多角形であれば良い。具体的には例えば三角形や四角形や五角形、或いは七角形や八角形など、両者の噛み合わせ(言い換えると、嵌まり合って外れない力)によって内ヘッド6の周方向の回転が防止できれば三角形以上のいずれの多角形でも良い。
また、上述の実施形態ではコア下端切断機構21に三本のコア下端切断部21dを設けるようにしているが、コア下端切断部21dの個数は、三本に限られるものではなく、一本や二本でも良いし四本でも良い。なお、コア下端切断部21dを押し出すことによるコア22aの下端部の切削は、コア22a下端部を完全に切削してコア22aの下端面全面に亘って地盤22から完全に切断するようにしても良いし、コア22aの下端面の中心部分において地盤22と繋がる部分(切削残部分と呼ぶ)が残るようにしても良い。この場合は、コアチューブ2と共に試料保護パイプ1及びコア22aを地盤22内から引き上げることによって切削残部分を引き千切ることになるものの、この切削残部分が十分に少なければたとえ引き千切ったとしてもコア22aにかかる力を十分に小さくして地盤22としての自然状態を乱すこと無く自然状態における実際の性状のままのコアを取り出すことができる。
また、上述の実施形態では駆動部20及び当該駆動部20による駆動力を伝達する仕組みとして主に伝達軸20cや伝達パイプ3を用いてコア下端切断機構21のコア下端切断部21dを揺動駆動させるようにしているが、コア下端切断部21dを揺動駆動させるための仕組みは上述の実施形態の構成に限られるものではなく、掘削・切削前においてコア下端切断機構21の本体21aに収容されているコア下端切断部21dを揺動させてコアチューブ2内(言い換えると、試料保護パイプ1内)にせり出させる仕組みであればどのようなものでも良い。具体的には例えば、伝達パイプ3を設けないで、コアチューブ2を周壁が肉厚の単一円筒構造にすると共に当該肉厚の周壁に軸心方向の貫通孔を設けて当該貫通孔内にシャフトを挿入し、当該シャフトの下端部分を上述の実施形態における揺動軸21eに相当させると共に当該シャフト下端部分にコア下端切断部21dを固定して取り付けるようにし、さらに、外ヘッド7内にモータを設ける。そして、外ヘッド7内のモータの回転駆動を当該モータの回転軸とシャフト上端部分とのそれぞれに設けられたウォーム歯車を介して伝達してシャフトを軸回転させることによってコア下端切断部21dを揺動させるようにしても良い。あるいは、伝達パイプ3を設けないで、コアチューブ2を周壁が肉薄の二重円筒構造にすると共にこの二重円筒の間にシャフトを挿入し、当該シャフトの下端部分を上述の実施形態における揺動軸21eに相当させると共に当該シャフト下端部分にコア下端切断部21dを固定して取り付けるようにし、さらに、外ヘッド7内にモータを設ける。そして、外ヘッド7内のモータの回転駆動を当該モータの回転軸とシャフト上端部分とのそれぞれに設けられたウォーム歯車を介して伝達してシャフトを軸回転させることによってコア下端切断部21dを揺動させるようにしても良い。
また、上述の実施形態ではコアチューブ2の下端部に当該コアチューブ2とは別体のコア下端切断機構21が備え付けられるようにしているが、コア下端切断機構21としての仕組みをコアチューブ2と別体として取り付けるのではなくコアチューブ2の一部として一体として備えるようにしても良い。具体的には例えば、コアチューブ2の内部に収容する試料保護パイプ1の内周面と同一周面(いわゆる面一)になるように内側に張り出した張出部をコアチューブ2の下端縁部に形成し、この張出部に長孔21bを設けると共に揺動軸21eによってコア下端切断部21dを揺動可能に取り付けるようにしても良い。なおこの場合には、張出部の長孔21b内にコア下端切断部21d及び揺動軸21eを収容した後に環状のビット固定部材を有する掘削手段5をコアチューブ2の下端に取り付けるようにすることによって組み立てが可能である。そして、この場合は明らかとして上述の実施形態の場合についてもコア下端切断機構21をコアチューブ2の一部と考えれば、本発明においてコア下端切断部21dはコアチューブ2の下端縁部に取り付けられるものであると言える。
また、上述の実施形態では地盤22からコア22aを引き上げる際にコア22aの下端部を地盤22から引き千切ることによってコア22aに異常な力がかからないようにするためにコアチューブ2下端部にコア下端切断機構21を備えるようにして当該コア下端切断機構21によってコア22aの下端部を機械的に切削して切断するようにしているが、コアチューブ2内に取り込んで収容したコア22aにコアチューブ2の軸回転による異常な力がかからないようにするためにコアチューブ2内において軸回転しないように構成された試料保護パイプ1にとってはコア下端切断機構21を備えることは必須の構成ではない。コア下端切断機構21を備えない場合も、コアチューブ2内に取り込んだコア22aが軸回転しないように構成された試料保護パイプ1内に収容されるので、コアチューブ2の軸回転によってコア22aに異常な力がかかることが防止される。
また、上述の実施形態においては掘削の対象であって試料採取の対象が地盤であることを前提とした例について説明したが、本発明のボーリングコア採取装置の掘削対象は地盤に限られるものではなく、コンクリートに対しても利用が可能である。