JP2013194045A - Dnaポリメラーゼ阻害活性を有する新規化合物 - Google Patents

Dnaポリメラーゼ阻害活性を有する新規化合物 Download PDF

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善之 水品
Michifumi Takeuchi
倫文 竹内
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伸治 紙透
Isoko Kuriyama
磯子 栗山
Fumio Sugawara
二三男 菅原
Hiromi Yoshida
弘美 吉田
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Abstract

【課題】DNAポリメラーゼ阻害活性を有する新規な化合物を見出すと共に、同化合物を利用した新たな医薬組成物を提供することを解決すべき課題とした。
【解決手段】コケに寄生するカビから、DNAポリメラーゼ阻害活性を有する新規化合物を単離した。さらに、該新規化合物がDNAポリメラーゼ阻害活性を有することを確認した。
【選択図】なし

Description

本発明は、DNAポリメラーゼ阻害活性を有する新規化合物及び該化合物を含む組成物に関する。
(DNAポリメラーゼ)
真核生物のDNA合成酵素(DNAポリメラーゼ)は、これまでα、β、γ、δ、ε、ζ、η、θ、ι、κ、λ、μ、σ、TdT(ターミナル・デオキシヌクレオチジル・トランスフェラーゼ)及びRev1の15種類の分子種が知られている。
これらのDNAポリメラーゼは、細胞の増殖、分裂、分化等に関与している。例えば、α型はDNA複製、β型、λ型及びTdTは修復と組換え、δ型及びε型は複製と修復の双方、ζ〜κ型は修復を担っている。
(DNAポリメラーゼ阻害活性を有する化合物)
本発明者らの1人は、DNA複製型のDNAポリメラーゼα,δ,ε阻害剤には、ヒト由来癌細胞増殖抑制活性があることを報告している(参照:非特許文献1)。
また、本発明者らの1人は、DNA修復・組換え型のDNAポリメラーゼλ阻害活性と起炎剤TPAで誘導したマウス耳抗炎症活性やLPSで炎症刺激を与えたマクロファージのTNF-α産生抑制活性には正の相関があることを報告している(参照:非特許文献2)。
以上により、DNAポリメラーゼ阻害活性を有する化合物は、癌、エイズ等のウイルス疾患、免疫疾患の予防・治療に期待されている。
(DNAポリメラーゼ阻害剤)
DNAポリメラーゼの酵素活性を阻害するDNAポリメラーゼ阻害剤は、例えば、癌に対して癌細胞の増殖抑制活性を示し、エイズに対してHIV由来逆転写酵素に対する阻害活性を示し、また、免疫疾患に対して抗原に対する特異的抗体産生を抑制する免疫抑制活性を示すことが知られている。
DNAポリメラーゼ阻害活性を有する糖脂質が、制癌剤、HIV由来逆転写酵素阻害剤、免疫抑制剤として有用であることが報告されている(参照:特許文献1)。
現在、DNAポリメラーゼ阻害剤として、ジデオキシTTP (ddTTP)、N-メチルマレイミド、ブチルフェニル-dGTPなどが知られている。また植物由来の糖脂質であるスルホキノボシルアシルグリセリドにもDNA合成酵素阻害作用が見出されている(参照:特許文献1)。
本発明者らの1人は、DNAポリメラーゼ阻害剤を複数開発して報告している(参照:特許文献2〜4)。
しかし、報告されたDNAポリメラーゼ阻害剤は、本発明のDNAポリメラーゼ阻害剤と構造が明らかに異なる。
Y.Mizushina (2009) Biosci. Biotechnol. Biochem. 73, 1239-1251 Y.Mizushina (2011) 日本栄養・食糧学会誌. 64,377-384
特平11−106395 特開2011−37730 特開2010−120882 特開2002−223750
本発明は、DNAポリメラーゼ阻害活性を有する新規な化合物を見出すと共に、同化合物を利用した新たな医薬組成物(DNAポリメラーゼ阻害剤)を提供することを解決すべき課題とした。
本発明者らは、上記課題を解決するために、コケに寄生するカビから、DNAポリメラーゼ阻害活性を有する新規化合物{参照:下記式(II)、本発明者の一人が「SF213」と命名}を単離した。
さらに、本発明者らは、該新規化合物がDNAポリメラーゼ阻害活性を有することを確認した。
以上により、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
「1.以下の一般式(II)で表される化合物又はその薬学的に許容し得る塩。
(式中、R、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、H、アルキル基又は保護基を示す)
2.前記化合物のR、R3及びR4はHであり並びにR2はメチル基である前項1に記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩。
3.前項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩を有効成分として含有する医薬組成物。
4.前項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩を有効成分として含有するDNAポリメラーゼ阻害剤。
5.前記DNAポリメラーゼがDNAポリメラーゼβである前項4に記載のDNAポリメラーゼ阻害剤。
6.前項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩を食品に配合してなる食用組成物。」
本発明の新規な化合物であるSF213はDNAポリメラーゼ阻害活性を有する。
SF213の構造並びに炭素番号を示す構造式 SF213のHMBC相関を示す構造式 SF213の1H-NMR及び13C-NMRデータ DNAポリメラーゼ阻害活性の測定結果 DNA代謝系酵素阻害活性の測定結果
(本発明の化合物)
本発明の化合物は、下記の一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容し得る塩に関する。
なお、上記の式中、R、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、H、アルキル基又は保護基を示す。ここで、R、R2、R3及びR4で示されるアルキル基としては、例えば、鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル等の炭素数1〜6のアルキル基が例示される。
R、R2、R3及びR4で示される保護基としては、水酸基の保護基であれば特に限定はなく、例えば、アシル基(アセチル、プロパノイル、ベンゾイル基等)、シリル基(トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、tert-ブチルジメチルシリル基等)、アルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル基等)、アルケニル基(アリル、クロチル基等)、アラルキル基(ベンジル、フェネチル基等)、アルコキシメチル基(メトキシメチル基等)、スルホニル基(メタンスルホニル、ベンゼンスルホニル基等)等が挙げられる。
一般式(I)で表される化合物において、好ましくは、R、R3及びR4はHであり並びにR2はメチル基である化合物SF213{参照:下記の式(II)}である。
(薬学的に許容し得る塩)
本発明における「その薬学的に許容し得る塩」の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;アンモニウム塩;1級、2級又は3級アミンの塩;4級アンモニウム塩;アミノ酸塩などが挙げられる。なお、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容し得る塩は、水等の溶媒和物であってもよい。
(本発明の化合物の単離・精製)
一般式(I)で表される化合物において、R、R3及びR4はHであり並びにR2はメチル基である化合物は、コケ(新潟県佐渡市で採取)に寄生するカビを培養して得られる培養物から単離・精製することができる。
具体的には、該カビをPDA培地(ポテトデキストロース液体培地)で静置培養し、培養液から菌体を除去して得られる濾液を溶媒で抽出する。
抽出溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール等のグリコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル,テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素等の極性有機溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の無極性有機溶媒等を用いることができるこれらの溶媒を単独で又は2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
上記した方法によって抽出物を得た後、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、クロロホルム、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、ベンゼン等の有機溶媒を1種又は2種以上用いた溶媒分画操作によって、得られた抽出液から活性画分を分取することができる。
更に、アルミナカラムクロマトグラフィーやシリカゲルクロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等の適当な分離精製手段を1種若しくは2種以上組み合わせて精製することもできる。
さらに、単離されたSF213の水酸基を所定のアルコールを用いて公知の方法でエーテル化することにより、一般式(I)で表される化合物のうちR、R2、R3及び/又はR4がアルキル基、特にメチル基で示される本発明の化合物を得ることができる。
(本発明の化合物の用途)
本発明の一般式(I)で表される化合物は、DNAポリメラーゼ阻害活性、特に選択的に、DNAポリメラーゼ阻害活性を有することから、医薬品への利用が可能である。
例えば、DNAポリメラーゼβ阻害剤、抗癌剤、さらには抗炎症剤等の医薬組成物として有用である。
加えて、本発明の化合物は、さらに、医薬品開発過程におけるリード化合物として利用することもできる。
なお、ヒトと他の哺乳類のDNAポリメラーゼの構造は殆ど同じであるため、本発明のDNAポリメラーゼ阻害剤は、ヒト以外の哺乳類由来のDNAポリメラーゼ阻害剤としても利用可能である。
(本発明の化合物を含む医薬組成物)
本発明の化合物を有効成分とする医薬組成物(DNAポリメラーゼ阻害剤、抗癌剤等)は、単独又は自体公知の担体と共に医薬組成物となし、動物及びヒトに投与することができる。
医薬組成物の剤形としては特に制限されるものではなく必要に応じて適宜選択すればよいが、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等の経口剤、注射剤、坐剤等の非経口剤が挙げられ、好適には非経口剤を挙げることができる。
非経口剤の医薬組成物の場合には、患者の年齢、体重、疾患の程度により異なるが、通常、成人で本発明の化合物の重量として1日あたり1〜200mgの静注、点滴静注、皮下注射、筋肉注射が適当である。この非経口投与剤は常法に従って製造され、希釈剤として一般に注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、注射用植物油、ゴマ油、ラッカセイ油、大豆油、トウモロコシ油、プロピレングリコール等を用いることができる。
(本発明の化合物を含む食用組成物)
本発明の化合物は、医薬品への利用以外に、食品への利用が可能である。例えば、飲食品へ添加・配合することにより抗癌効果、抗発癌効果、又は抗炎症効果をもった食用組成物(例えば、健康食品等)として利用することも可能である。
(本発明の化合物の特性)
本発明者の一人は、DNAポリメラーゼ阻害活性、抗炎症活性及び抗発癌活性の間には互いに関連性が認められることを確認している。
したがって、本発明の化合物をリードとして、DNAポリメラーゼに対する阻害活性を調べることにより、抗癌剤又は抗炎症剤の候補化合物の効率的なスクリーニングができる。本発明は、このようなスクリーニング方法も含まれる。なお、本スクリーニング方法において、DNAポリメラーゼに対する阻害活性を調べる方法は自体公知の方法を採用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
(SF213の単離、精製及び構造決定)
コケに寄生するカビよりSF213を単離、精製した。そして、SF213の構造を決定した。詳細は、以下の通りである。
(1)菌株の単離
新潟県佐渡市にて採取したコケをPDA培地(ポテトデキストロース寒天培地)で培養し、菌株を単離した。
(2)SF213の精製
上記(1)で単離した菌株を1.5 L×3のPDB培地(ポテトデキストロース液体培地)を入れた3個の2 L三角フラスコで55日間、暗所で静置培養した。本菌株を培養した培養液はガーゼを用いて菌体を除去した。得られた濾液を塩化メチレン(CH2Cl2)で抽出し、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、粗抽出物(170.5mg)を得た。この粗抽出物はシリカゲルを担体とし、展開溶媒としてクロロホルム-メタノール(100:0→0:100)を用いたカラムクロマトグラフィーによって8つのフラクション(フラクション1〜8)に分画した。
次に、8つのフラクションの内のフラクション 7{クロロホルム-メタノール(5:1)で溶出したフラクション}を、シリカゲルを担体とし、展開溶媒としてトルエン-酢酸エチル(10:1 →2:1)を用いたカラムクロマトグラフィーによって、4つのフラクション(フラクション7-1〜フラクション7-4)に分画した。
さらに、4つのフラクションの内のフラクション 7-2{トルエン-酢酸エチル(5:1→4:1)で溶出したフラクション}を、シリカゲルを担体とし、展開溶媒としてトルエン-酢酸エチル(4:1→2:1) を用いたカラムクロマトグラフィーによって、6つのフラクション(フラクション7-2-1〜フラクション7-2-6)に分画した。
最後に、フラクション7-2-4から茶色の粉末としてSF213を得た。
(3)SF213の構造決定
化合物SF213は、HR-ESIMS、1H-NMR、13C-NMR、HMBC及びHMQCによって構造決定した。
図1には、SF213の構造並びに炭素番号を示す構造式を示した。
図2には、SF213のHMBC相関を示した。
図3には、CDCl3 + MeOD(CDCl3とMeODの混合溶媒)で測定したSF213の1H-NMR、13C-NMRデータを示した。
また、SF213の諸性質及びスペクトルデータ(NMRデータは除く)は次の通りである。
赤色固体状; HRESIMS m/z 323.0519 [M+Na]+ (calcd for 323.0526)
SF213の構造決定の詳細の解析は、以下の通りである。
SF213はHR-ESIMSから分子式C16H12O6を持つことが示された。C-9 (δ 183.8)、C-10(δ 187.8)の化学シフト値より、2つのケトン基の存在が示唆された。さらに、図3に示す1H及び13C-NMRスペクトラより、SF213はアントラキノンの構造を有することが示唆された。アントラキノンの置換基の位置は、主に、HMBC実験において測定された1H-13Cロングレンジ相関によって決定された。H-2とH-4及びH-6とH-8のアロマティックプロトンは、1H-1H結合定数がJ2-4=1.6 Hz及びJ6-8=2.2Hzであることから、それぞれメタ位であることが示唆された。ヒドロキシメチルプロトン(δ 4.71)からC-2、C-3及びC-4へのHMBC相関より、ヒドロキシメチル基は3位で結合することが決定された。H-2からC-1(δ 162.8)及びC-4へのHMBC相関より、1位の炭素は水酸基に隣接することを決定した。メトキシプロトン(δ 4.02)からC-5(δ 164.2)へのHMBC相関より、メトキシ基は5位で結合することを決定した。H-6からC-7(δ 165.1)及びC-8へのHMBC相関より、7位は水酸基に隣接することを決定した。
以上から、SF213を1,7-ジヒドロキシ-3-(ヒドロキシメチル)-5-メトキシアントラセン-9,10-ジオン{1,7-dihydroxy-3-(hydroxymethyl)-5-methoxyanthracene-9,10-dione}であると決定した。
(DNAポリメラーゼ阻害活性の確認)
上記実施例1で得られたSF213のDNAポリメラーゼ群に対する阻害活性を以下の方法で測定した。なお、哺乳類のポリメラーゼ分子種は15種類が存在しており、アミノ酸配列の相同性や機能の類似性からA-, B-, X-,Y-の4つのファミリーに分類されている。各ポリメラーゼファミリーを代表して、哺乳類由来のDNAポリメラーゼα、β、γ、δ、ε、η、ι、κ、λ、μ、ターミナル・デオキシヌクレオチジル・トランスフェラーゼ(TdT)、魚類由来のDNAポリメラーゼδ、昆虫由来のDNAポリメラーゼα、δ、ε、植物由来のDNAポリメラーゼα、及び、原核生物由来のDNAポリメラーゼ(大腸菌pol I、T4 pol、Taq pol)について試験を行った。
(DNAポリメラーゼ阻害活性の測定方法)
DNAポリメラーゼαは、仔牛の胸腺から常法により抽出し、抗体カラムで精製した標品を使用した。DNAポリメラーゼβは、ラット由来の該当遺伝子を、DNAポリメラーゼγ、η、κ、μ、λは、ヒト由来の該当遺伝子を、DNAポリメラーゼιは、マウス由来の該当遺伝子を、それぞれ通常の遺伝子組み換え法により大腸菌に組み込み、生産させた標品を使用した。DNAポリメラーゼδ、εは、ヒト癌細胞抽出液から抗体カラムを使用して精製した標品を使用した。TdTは仔牛由来の該当遺伝子を、通常の遺伝子組み換え法により大腸菌に組み込み、生産させた試薬(製品コード:2230A)をタカラバイオ(株)から購入して使用した。
魚DNAポリメラーゼδおよび植物DNAポリメラーゼαは、それぞれサクラマス精巣およびカリフラワーの花序組織から常法により抽出精製した標品を使用した。昆虫DNAポリメラーゼα、δ、εは、ショウジョウバエ初期胚の抽出液から抗体カラムを使用して精製した標品を使用した。原核生物DNAポリメラーゼ群は、タカラバイオ(株)から購入して(大腸菌DNAポリメラーゼIの製品コード:2130A、T4DNAポリメラーゼの製品コード:2040A、TaqDNAポリメラーゼの製品コード:RR001A)使用した。
これらのDNAポリメラーゼに対するSF213の阻害活性の測定には、一般的なDNAポリメラーゼ反応系(日本生化学会編、新生化学実験講座2、核酸IV、東京化学同人、63〜66頁)を用いた。すなわち、放射性同位元素で標識した[3H]-TTPを含む系においてDNA合成反応を行い、鋳型DNA [poly(dA)/oligo(dT)18]へ重合された放射比活性を生成物(合成DNA鎖)量の指標とするものである。
阻害率は、(a)コントロールでの合成DNA量、(b)被検物質存在下での合成DNA量について、
b / a × 100 = DNAポリメラーゼ残存活性(%)
として評価した。なお、得られたデータは3回の測定値の平均値である。
(DNAポリメラーゼ阻害活性の測定結果)
DNAポリメラーゼ阻害活性の測定結果を図4に示す。図4の結果から明らかなように、SF213は、DNA修復・組換え型(X-ファミリー)のDNAポリメラーゼβのDNA合成活性を選択的に阻害した。なお、50%阻害濃度は18.0μMであった
100μMで50%以上の阻害活性を有する化合物はDNAポリメラーゼ阻害剤として有効であるので、SF213はDNAポリメラーゼβ阻害活性があることを確認した。
また、SF213は、その他の哺乳類pol分子種10種類、すなわちDNA複製型のB-ファミリーpolα,δ,ε、ミトコンドリアDNA合成を担うA-ファミリーpolγ、DNA修復・組換え型のX-ファミリーpolλ,μ,TdT(Terminal deoxynucleotidyl transferase)、DNA修復型のpolη,ι,κを阻害しなかった。
以上により、本発明の化合物がDNAポリメラーゼβ阻害活性を持つことを確認した。
DNAポリメラーゼは、癌細胞のような細胞分裂が盛んな細胞や組織に対して酵素活性が高い。従って、SF213は抗癌剤として利用できる。
さらに、X-ファミリーのDNAポリメラーゼはDNA修復・組換えを担っているため、癌組織に放射線や化学物質でDNAに傷を生じさせながら、これらの化合物を投与することにより、癌細胞を死滅させることができる。すなわち、本発明の化合物による癌の放射線治療や化学療法への併用効果が期待できる。
より詳しくは、DNA複製型のDNAポリメラーゼα、δ、εも同時に阻害してしまうと、正常細胞の増殖に悪影響を与えるという副作用の問題がある。しかし、DNAポリメラーゼβは、他のポリメラーゼとは異なり、放射線等でDNAに損傷を与えたときに高発現・高活性となる。よって、DNAポリメラーゼβを選択的に阻害できる化合物は、がんの放射線治療の併用効果が期待できる。
(DNA代謝系酵素抑制活性の確認)
上記実施例1で得られたSF213のDNA代謝系酵素抑制活性を以下の方法で測定した。
(DNA代謝系酵素抑制活性の測定)
仔牛プライマーゼは、精製した子牛DNAポリメラーゼαを使用して、文献[「Inhibition ofDNA primase by sphingosine and its analogues parallels with their growthsuppression of cultured human leukemic cells」、Tamiya-KoizumiK.他、Biochem. Mol. Biol. Int.、41巻、1179–1189頁(1997)]に記載されているプライマーゼ活性測定法を用いた。
HIV逆転写酵素は、Worthington Biochemical Corp.(Freehold, NJ, USA)から購入して使用して、DNAポリメラーゼ活性で使用する鋳型DNAの代わりに合成RNAであるpoly(rA)/oligo(dT)18を用いて、重合された放射比活性を生成物(合成DNA鎖)量の指標とした。
ヒト テロメラーゼは、ヒト子宮癌(HeLa)細胞抽出液を使用して、文献[「Inhibition of telomerase by linear-chainfatty acids: A structural analysis」、Oda M.他、Biochem. J.、367巻、329-334頁(2002)]に記載されているテロメラーゼ活性測定法を用いた。
T7 RNAポリメラーゼは、タカラバイオ(株)から製品コード:2540Aを購入して使用して、文献[「Inhibitory effects of 9-β-D-xylofuranosyladenine 5'-triphosphate on DNA-dependent RNApolymerase I and II from cherry salmon (Oncorhynchusmasou)」、Nakayama C.他、J. Biochem.(Tokyo)、97巻、1385-1389頁(1985)]に記載されているRNAポリメラーゼ活性測定法を用いた。
マウスIMPデヒドロゲナーゼ(タイプII) は、マウス由来の該当遺伝子を通常の遺伝子組み換え法により大腸菌に組み込み、生産させた標品を使用して、文献[「Inhibitoryaction of polyunsaturated fatty acids on IMP dehydrogenase」、Mizushina Y.他、Biochimie、89巻、581-590頁(2007)]に記載されているIMPデヒドロゲナーゼ活性測定法を用いた。
ヒトDNAトポイソメラーゼIとヒトDNAトポイソメラーゼIIは、TopoGen, Inc.(Columbus, OH, USA)から購入して使用して、文献[「Inhibitoryeffects of cholesterol derivatives on DNA polymerase and topoisomeraseactivities, and human cancer cell growth」、Ishimaru C.他、Lipids、43巻、373-382頁(2008)]に記載されているDNAトポイソメラーゼIとIIの活性測定法を用いた。
T4ポリヌクレオチドキナーゼは、タカラバイオ(株)から製品コード:2021Sを購入して使用して、文献[「Uhlenbeck, O.C. Isolation andcharacterization of two mutant forms of T4 polynucleotide kinase」、Soltis D.A.他、J. Biol. Chem.、257巻、11332-11339頁(1982)]に記載されているRNAポリメラーゼ活性測定法を用いた。
牛DNA分解酵素Iは、タカラバイオ(株)から製品コード:2270Aを購入して使用して、文献[「An endo-exonuclease from meiotic tissues of the basidiomyceteCoprinus cinereus: Its purification and characterization」、Lu B.C.他、J. Biol. Chem.、226巻、21060-21066頁(1991)]に記載されているRNAポリメラーゼ活性測定法を用いた。
(DNA代謝系酵素抑制活性の測定方法)
DNA代謝系酵素抑制活性の測定方法は、実施例2と同様な方法で行った。
(DNA代謝系酵素抑制活性の測定結果)
DNA代謝系酵素抑制活性の測定結果を図5に示す。図5の結果から明らかなように、SF213は、各DNA代謝系酵素抑制活性を有さないことを確認した。
DNA代謝系酵素は、癌細胞だけでなく正常細胞にも恒常的に存在している。よって、DNA代謝系酵素が抑制されれば、癌細胞のDNA複製だけでなく、正常細胞のDNA複製にも悪影響を与える。従って、DNAポリメラーゼ阻害活性を有しかつDNA代謝系酵素抑制活性を有しない化合物であるSF213は、副作用がない抗癌剤として期待できる。
新規なDNAポリメラーゼ阻害剤を提供することができる。

Claims (6)

  1. 以下の一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容し得る塩。
    (式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、H、アルキル基又は保護基を示す)
  2. 前記化合物のR、R3及びR4はHであり並びにR2はメチル基である請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩。
  3. 請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩を有効成分として含有する医薬組成物。
  4. 請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩を有効成分として含有するDNAポリメラーゼ阻害剤。
  5. 前記DNAポリメラーゼがDNAポリメラーゼβである請求項4に記載のDNAポリメラーゼ阻害剤。
  6. 請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩を食品に配合してなる食用組成物。
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JP2012066630A Pending JP2013194045A (ja) 2012-03-23 2012-03-23 Dnaポリメラーゼ阻害活性を有する新規化合物

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015527322A (ja) * 2012-07-10 2015-09-17 ジョージア ステイト ユニバーシティ リサーチ ファンデーション, インコーポレイテッド アントラキノン類似体ならびにその作製方法および使用方法

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