JP2013194044A - Dnaポリメラーゼ阻害活性を有する新規化合物 - Google Patents
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Abstract
【課題】DNAポリメラーゼ阻害活性および癌細胞増殖抑制活性を有する新規化合物、および該化合物を含有する医薬組成物の提供。
【解決手段】赤クラゲに寄生するカビから単離された下記の化合物、および該化合物を含有する医薬組成物。
(式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、H、アルキル基又は保護基を示す。)
【選択図】なし
【解決手段】赤クラゲに寄生するカビから単離された下記の化合物、および該化合物を含有する医薬組成物。
(式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、H、アルキル基又は保護基を示す。)
【選択図】なし
Description
本発明は、DNAポリメラーゼ阻害活性を有する新規化合物及び該化合物を含む組成物に関する。
(DNAポリメラーゼ)
真核生物のDNA合成酵素(DNAポリメラーゼ)は、これまでα、β、γ、δ、ε、ζ、η、θ、ι、κ、λ、μ、σ、TdT(ターミナル・デオキシヌクレオチジル・トランスフェラーゼ)及びRev1の15種類の分子種が知られている。
これらのDNAポリメラーゼは、細胞の増殖、分裂、分化等に関与している。例えば、α型はDNA複製、β型、λ型及びTdTは修復と組換え、δ型及びε型は複製と修復の双方、ζ〜κ型は修復を担っている。
真核生物のDNA合成酵素(DNAポリメラーゼ)は、これまでα、β、γ、δ、ε、ζ、η、θ、ι、κ、λ、μ、σ、TdT(ターミナル・デオキシヌクレオチジル・トランスフェラーゼ)及びRev1の15種類の分子種が知られている。
これらのDNAポリメラーゼは、細胞の増殖、分裂、分化等に関与している。例えば、α型はDNA複製、β型、λ型及びTdTは修復と組換え、δ型及びε型は複製と修復の双方、ζ〜κ型は修復を担っている。
本発明者らの1人は、DNA複製型のDNAポリメラーゼα,δ,ε阻害剤には、ヒト由来癌細胞増殖抑制活性があることを報告している(参照:非特許文献1)。
また、本発明者らの1人は、DNA修復・組換え型のDNAポリメラーゼλ阻害活性と起炎剤TPAで誘導したマウス耳抗炎症活性やLPSで炎症刺激を与えたマクロファージのTNF−α産生抑制活性には正の相関があることを報告している(参照:非特許文献2)。
以上により、DNAポリメラーゼ阻害活性を有する化合物は、癌、エイズ等のウイルス疾患、免疫疾患の予防・治療に期待されている。
また、本発明者らの1人は、DNA修復・組換え型のDNAポリメラーゼλ阻害活性と起炎剤TPAで誘導したマウス耳抗炎症活性やLPSで炎症刺激を与えたマクロファージのTNF−α産生抑制活性には正の相関があることを報告している(参照:非特許文献2)。
以上により、DNAポリメラーゼ阻害活性を有する化合物は、癌、エイズ等のウイルス疾患、免疫疾患の予防・治療に期待されている。
(DNAポリメラーゼ阻害剤)
DNAポリメラーゼの酵素活性を阻害するDNAポリメラーゼ阻害剤は、例えば、癌に対して癌細胞の増殖抑制活性を示し、エイズに対してHIV由来逆転写酵素に対する阻害活性を示し、また、免疫疾患に対して抗原に対する特異的抗体産生を抑制する免疫抑制活性を示すことが知られている。
DNAポリメラーゼ阻害活性を有する糖脂質が、制癌剤、HIV由来逆転写酵素阻害剤、免疫抑制剤として有用であることが報告されている(参照:特許文献1)。
現在、DNAポリメラーゼ阻害剤として、ジデオキシTTP(ddTTP)、N-メチルマレイミド、ブチルフェニル-dGTPなどが知られている。また植物由来の糖脂質であるスルホキノボシルアシルグリセリドにもDNA合成酵素阻害作用が見出されている(参照:特許文献1)。
DNAポリメラーゼの酵素活性を阻害するDNAポリメラーゼ阻害剤は、例えば、癌に対して癌細胞の増殖抑制活性を示し、エイズに対してHIV由来逆転写酵素に対する阻害活性を示し、また、免疫疾患に対して抗原に対する特異的抗体産生を抑制する免疫抑制活性を示すことが知られている。
DNAポリメラーゼ阻害活性を有する糖脂質が、制癌剤、HIV由来逆転写酵素阻害剤、免疫抑制剤として有用であることが報告されている(参照:特許文献1)。
現在、DNAポリメラーゼ阻害剤として、ジデオキシTTP(ddTTP)、N-メチルマレイミド、ブチルフェニル-dGTPなどが知られている。また植物由来の糖脂質であるスルホキノボシルアシルグリセリドにもDNA合成酵素阻害作用が見出されている(参照:特許文献1)。
また、本発明者らの1人は、DNAポリメラーゼ阻害剤を複数開発して報告している(参照:特許文献2〜4)。
しかし、報告されたDNAポリメラーゼ阻害剤は、本発明のDNAポリメラーゼ阻害剤と構造が明らかに異なる。
Y.Mizushina (2009) Biosci. Biotechnol. Biochem. 73, 1239-1251
Y.Mizushina (2011) 日本栄養・食糧学会誌. 64,377-384
本発明は、DNAポリメラーゼ阻害活性を有する新規な化合物を見出すと共に、同化合物を利用した新たな医薬組成物(DNAポリメラーゼ阻害剤、抗癌剤)を提供することを解決すべき課題とした。
本発明者らは、上記課題を解決するために、C. melanaster(赤クラゲ)に寄生するカビから、DNAポリメラーゼ阻害活性を有する新規化合物{参照:下記式(II)、本発明者の一人が「SF226」と命名}を単離した。
さらに、本発明者らは、該新規化合物がDNAポリメラーゼ阻害活性及び癌細胞増殖抑制活性を有することを確認した。
以上により、本発明を完成した。
さらに、本発明者らは、該新規化合物がDNAポリメラーゼ阻害活性及び癌細胞増殖抑制活性を有することを確認した。
以上により、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
1.以下の一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容し得る塩。
(式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、H、アルキル基又は保護基を示す)
2.前記化合物のR1、R2及びR3がHである前項1に記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩。
3.前項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩を有効成分として含有する医薬組成物。
4.前項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩を有効成分として含有するDNAポリメラーゼ阻害剤。
5.前項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩を有効成分として含有する抗癌剤。
6.前項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩を食品に配合してなる食用組成物。」
1.以下の一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容し得る塩。
2.前記化合物のR1、R2及びR3がHである前項1に記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩。
3.前項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩を有効成分として含有する医薬組成物。
4.前項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩を有効成分として含有するDNAポリメラーゼ阻害剤。
5.前項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩を有効成分として含有する抗癌剤。
6.前項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩を食品に配合してなる食用組成物。」
本発明の新規な化合物であるSF226はDNAポリメラーゼ阻害活性及び癌細胞増殖抑制活性を有する。
(本発明の化合物)
本発明の化合物は、下記の一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容し得る塩に関する。
本発明の化合物は、下記の一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容し得る塩に関する。
なお、上記の式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、H、アルキル基又は保護基を示す。ここで、R1、R2及びR3で示されるアルキル基としては、例えば、鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル等の炭素数1〜6のアルキル基が例示される。
R1、R2及びR3で示される保護基としては、水酸基の保護基であれば特に限定はなく、例えば、アシル基(アセチル、プロパノイル、ベンゾイル基等)、シリル基(トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、tert−ブチルジメチルシリル基等)、アルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル基等)、アルケニル基(アリル、クロチル基等)、アラルキル基(ベンジル、フェネチル基等)、アルコキシメチル基(メトキシメチル基等)、スルホニル基(メタンスルホニル、ベンゼンスルホニル基等)等が挙げられる。
一般式(I)で表される化合物において、好ましくは、R1、R2及びR3がすべてHである化合物SF226{参照:下記の式(II)}である。
(薬学的に許容し得る塩)
本発明における「その薬学的に許容し得る塩」の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;アンモニウム塩;1級、2級又は3級アミンの塩;4級アンモニウム塩;アミノ酸塩などが挙げられる。なお、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容し得る塩は、水等の溶媒和物であってもよい。
本発明における「その薬学的に許容し得る塩」の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;アンモニウム塩;1級、2級又は3級アミンの塩;4級アンモニウム塩;アミノ酸塩などが挙げられる。なお、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容し得る塩は、水等の溶媒和物であってもよい。
(本発明の化合物の単離・精製)
一般式(I)で表される化合物において、R1、R2及びR3がすべてHである化合物は、赤クラゲ(葛西臨海公園で採取)に寄生するカビを培養して得られる培養物から単離・精製することができる。具体的には、該カビをPDB培地(ポテトデキストロース液体培地)で静置培養し、培養液から菌体を除去して得られる濾液を溶媒で抽出する。
抽出溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール等のグリコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル,テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素等の極性有機溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の無極性有機溶媒等を用いることができるこれらの溶媒を単独で又は2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
一般式(I)で表される化合物において、R1、R2及びR3がすべてHである化合物は、赤クラゲ(葛西臨海公園で採取)に寄生するカビを培養して得られる培養物から単離・精製することができる。具体的には、該カビをPDB培地(ポテトデキストロース液体培地)で静置培養し、培養液から菌体を除去して得られる濾液を溶媒で抽出する。
抽出溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール等のグリコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル,テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素等の極性有機溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の無極性有機溶媒等を用いることができるこれらの溶媒を単独で又は2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
上記した方法によって抽出物を得た後、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、クロロホルム、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、ベンゼン等の有機溶媒を1種又は2種以上用いた溶媒分画操作によって、得られた抽出液から活性画分を分取することができる。
更に、アルミナカラムクロマトグラフィーやシリカゲルクロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等の適当な分離精製手段を1種若しくは2種以上組み合わせて精製することもできる。
更に、アルミナカラムクロマトグラフィーやシリカゲルクロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等の適当な分離精製手段を1種若しくは2種以上組み合わせて精製することもできる。
さらに、単離されたSF226の水酸基を所定のアルコールを用いて公知の方法でエーテル化することにより、一般式(I)で表される化合物のうちR1、R2及び/又はR3がアルキルで示される本発明の化合物を得ることができる。
(本発明の化合物の用途)
本発明の一般式(I)で表される化合物は、DNAポリメラーゼ阻害活性を有することから、医薬品への利用が可能である。
例えば、DNAポリメラーゼ阻害剤、抗癌剤、さらには抗炎症剤等の医薬組成物として有用である。
加えて、本発明の化合物は、さらに、医薬品開発過程におけるリード化合物として利用することもできる。
なお、ヒトと他の哺乳類のDNAポリメラーゼの構造は殆ど同じであるため、本発明のDNAポリメラーゼ阻害剤は、ヒト以外の哺乳類由来のDNAポリメラーゼ阻害剤としても利用可能である。
本発明の一般式(I)で表される化合物は、DNAポリメラーゼ阻害活性を有することから、医薬品への利用が可能である。
例えば、DNAポリメラーゼ阻害剤、抗癌剤、さらには抗炎症剤等の医薬組成物として有用である。
加えて、本発明の化合物は、さらに、医薬品開発過程におけるリード化合物として利用することもできる。
なお、ヒトと他の哺乳類のDNAポリメラーゼの構造は殆ど同じであるため、本発明のDNAポリメラーゼ阻害剤は、ヒト以外の哺乳類由来のDNAポリメラーゼ阻害剤としても利用可能である。
(本発明の化合物を含む医薬組成物)
本発明の化合物を有効成分とする医薬組成物(DNAポリメラーゼ阻害剤、抗癌剤、抗炎症剤等)は、単独又は自体公知の担体と共に医薬組成物となし、動物及びヒトに投与することができる。
医薬組成物の剤形としては特に制限されるものではなく必要に応じて適宜選択すればよいが、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等の経口剤、注射剤、坐剤等の非経口剤が挙げられ、好適には非経口剤を挙げることができる。
本発明の化合物を有効成分とする医薬組成物(DNAポリメラーゼ阻害剤、抗癌剤、抗炎症剤等)は、単独又は自体公知の担体と共に医薬組成物となし、動物及びヒトに投与することができる。
医薬組成物の剤形としては特に制限されるものではなく必要に応じて適宜選択すればよいが、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等の経口剤、注射剤、坐剤等の非経口剤が挙げられ、好適には非経口剤を挙げることができる。
非経口剤の医薬組成物の場合には、患者の年齢、体重、疾患の程度により異なるが、通常、成人で本発明の化合物の重量として1日あたり1〜200mgの静注、点滴静注、皮下注射、筋肉注射が適当である。この非経口投与剤は常法に従って製造され、希釈剤として一般に注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、注射用植物油、ゴマ油、ラッカセイ油、大豆油、トウモロコシ油、プロピレングリコール等を用いることができる。
(本発明の化合物を含む食用組成物)
本発明の化合物は、医薬品への利用以外に、食品への利用が可能である。例えば、飲食品へ添加・配合することにより抗癌効果、抗発癌効果、又は抗炎症効果をもった食用組成物(例えば、健康食品等)として利用することも可能である。
本発明の化合物は、医薬品への利用以外に、食品への利用が可能である。例えば、飲食品へ添加・配合することにより抗癌効果、抗発癌効果、又は抗炎症効果をもった食用組成物(例えば、健康食品等)として利用することも可能である。
(本発明の化合物の特性)
本発明者の一人は、DNAポリメラーゼ阻害活性、抗炎症活性及び抗発癌活性の間には互いに関連性が認められることを確認している。
したがって、本発明の化合物をリードとして、DNAポリメラーゼに対する阻害活性を調べることにより、抗癌剤又は抗炎症剤の候補化合物の効率的なスクリーニングができる。本発明は、このようなスクリーニング方法も含まれる。なお、本スクリーニング方法において、DNAポリメラーゼに対する阻害活性を調べる方法は自体公知の方法を採用することができる。
本発明者の一人は、DNAポリメラーゼ阻害活性、抗炎症活性及び抗発癌活性の間には互いに関連性が認められることを確認している。
したがって、本発明の化合物をリードとして、DNAポリメラーゼに対する阻害活性を調べることにより、抗癌剤又は抗炎症剤の候補化合物の効率的なスクリーニングができる。本発明は、このようなスクリーニング方法も含まれる。なお、本スクリーニング方法において、DNAポリメラーゼに対する阻害活性を調べる方法は自体公知の方法を採用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
(SF226の単離、精製及び構造決定)
赤クラゲ(C. melanaster)に寄生するカビよりSF226を単離、精製した。そして、SF226の構造を決定した。詳細は、以下の通りである。
赤クラゲ(C. melanaster)に寄生するカビよりSF226を単離、精製した。そして、SF226の構造を決定した。詳細は、以下の通りである。
(1)菌株の単離
東京都葛西臨海公園にて採取した赤クラゲをPDA培地(ポテトデキストロース寒天培地)で培養し、菌株を単離した。
東京都葛西臨海公園にて採取した赤クラゲをPDA培地(ポテトデキストロース寒天培地)で培養し、菌株を単離した。
(2)SF226の精製
上記(1)で単離した菌株を1 L×4のPDB培地(ポテトデキストロース液体培地)を入れた4個の2 L三角フラスコで21日間、暗所で静置培養した。本菌株を培養した培養液はガーゼを用いて菌体を除去した。得られた濾液を塩化メチレン(CH2Cl2)で抽出し、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、粗抽出物(384.4 mg)を得た。この粗抽出物はシリカゲルを担体とし、展開溶媒としてクロロホルム-メタノール(100: 0→0: 100)を用いたカラムクロマトグラフィーによって6つのフラクション(フラクション1〜6)に分画した。
さらに、6つのフラクションの内のフラクション 5を、シリカゲルを担体とし、展開溶媒としてトルエン-酢酸エチル(5: 1→0: 1)を用いたカラムクロマトグラフィーによって、7つのフラクション(フラクション5-1〜フラクション5-7)に分画した。
最後に、フラクション5-3から茶色の粉末としてSF226を得た。
上記(1)で単離した菌株を1 L×4のPDB培地(ポテトデキストロース液体培地)を入れた4個の2 L三角フラスコで21日間、暗所で静置培養した。本菌株を培養した培養液はガーゼを用いて菌体を除去した。得られた濾液を塩化メチレン(CH2Cl2)で抽出し、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、粗抽出物(384.4 mg)を得た。この粗抽出物はシリカゲルを担体とし、展開溶媒としてクロロホルム-メタノール(100: 0→0: 100)を用いたカラムクロマトグラフィーによって6つのフラクション(フラクション1〜6)に分画した。
さらに、6つのフラクションの内のフラクション 5を、シリカゲルを担体とし、展開溶媒としてトルエン-酢酸エチル(5: 1→0: 1)を用いたカラムクロマトグラフィーによって、7つのフラクション(フラクション5-1〜フラクション5-7)に分画した。
最後に、フラクション5-3から茶色の粉末としてSF226を得た。
(3)SF226の構造決定
化合物SF226は、HR-ESIMS、1H-NMR、13C-NMR、HMBC及びHMQCによって構造決定した。
図1には、SF226の構造並びに炭素番号を示す構造式を示した。
図2には、SF226のHMBC相関を示した。
図3には、MeODで測定したSF226の1H-NMR、13C-NMRデータを示した。
また、SF226の諸性質及びスペクトルデータ(NMRデータは除く)は次の通りである。
茶色固体状; HR ESIMS m/z 269.0425 [M+Na]+(calcdfor 269.0420)
SF226の構造決定の詳細の解析は、以下の通りである。
化合物SF226は、HR-ESIMS、1H-NMR、13C-NMR、HMBC及びHMQCによって構造決定した。
図1には、SF226の構造並びに炭素番号を示す構造式を示した。
図2には、SF226のHMBC相関を示した。
図3には、MeODで測定したSF226の1H-NMR、13C-NMRデータを示した。
また、SF226の諸性質及びスペクトルデータ(NMRデータは除く)は次の通りである。
茶色固体状; HR ESIMS m/z 269.0425 [M+Na]+(calcdfor 269.0420)
SF226の構造決定の詳細の解析は、以下の通りである。
SF226はHR-ESIMSから分子式C13H10O5を持つことが示された。C-1 (δ 172.4)の化学シフト値より、エステル基の存在が示唆された。H-5からC-1、C-3及びC-4へのHMBC相関より、メチレン基(C-5)はエステル基(C-1)と隣接し、ラクトン構造を形成していることが示唆された。H-7からC-2、C-6及びC-9へのHMBC相関、及びH-11からC-4、C-9、C-10及びC-12へのHMBC相関より、ナフタレンの部分構造を決定した。C-6 (δ 164.2)、C-10(δ 158.8)及びC-12(δ 154.3)の化学シフト値より、これらは水酸基と隣接することが示唆された。8-CH3からC-7、C-8及びC-9へのHMBC相関より、このメチル基はナフタレンの8位に結合していると決定した。
以上から、SF226を4,6,9-trihydroxy-7-methylbenzo[de]isochromen-1(3H)-one{4,6,9-トリヒドロキシ-7-メチルベンゾ[de]イソクロメン-1(3H)-オン}であると決定した。
以上から、SF226を4,6,9-trihydroxy-7-methylbenzo[de]isochromen-1(3H)-one{4,6,9-トリヒドロキシ-7-メチルベンゾ[de]イソクロメン-1(3H)-オン}であると決定した。
(DNAポリメラーゼ阻害活性の確認)
上記実施例1で得られたSF226のDNAポリメラーゼ群に対する阻害活性を以下の方法で測定した。なお、哺乳類のポリメラーゼ(pol)分子種は15種類が存在しており、アミノ酸配列の相同性や機能の類似性からA−, B−, X−, Y−の4つのファミリーに分類されている。各ポリメラーゼファミリーを代表してDNA複製型の子牛polα(B−ファミリーpol)、ミトコンドリアDNA合成を担うヒトpolγ(A−ファミリーpol)、DNA修復型のヒトpolκ(Y−ファミリーpol)、DNA修復・組換え型のヒトpolλ(X−ファミリーpol)を用いた。
上記実施例1で得られたSF226のDNAポリメラーゼ群に対する阻害活性を以下の方法で測定した。なお、哺乳類のポリメラーゼ(pol)分子種は15種類が存在しており、アミノ酸配列の相同性や機能の類似性からA−, B−, X−, Y−の4つのファミリーに分類されている。各ポリメラーゼファミリーを代表してDNA複製型の子牛polα(B−ファミリーpol)、ミトコンドリアDNA合成を担うヒトpolγ(A−ファミリーpol)、DNA修復型のヒトpolκ(Y−ファミリーpol)、DNA修復・組換え型のヒトpolλ(X−ファミリーpol)を用いた。
(DNAポリメラーゼ阻害活性の測定方法)
DNAポリメラーゼとして、哺乳類由来のDNAポリメラーゼα、γ、κ、λについて試験を行った。DNAポリメラーゼαは、仔牛の胸腺から常法により抽出し、抗体カラムで精製した標品を使用した。DNAポリメラーゼγ、κ、λは、ヒト由来の該当遺伝子を、通常の遺伝子組み換え法により大腸菌に組み込み、生産させた標品を用いた。
DNAポリメラーゼとして、哺乳類由来のDNAポリメラーゼα、γ、κ、λについて試験を行った。DNAポリメラーゼαは、仔牛の胸腺から常法により抽出し、抗体カラムで精製した標品を使用した。DNAポリメラーゼγ、κ、λは、ヒト由来の該当遺伝子を、通常の遺伝子組み換え法により大腸菌に組み込み、生産させた標品を用いた。
これらのDNAポリメラーゼに対するSF226の阻害活性の測定には、一般的なDNAポリメラーゼ反応系(日本生化学会編、新生化学実験講座2、核酸IV、東京化学同人、63〜66頁)を用いた。すなわち、放射性同位元素で標識した[3H]-TTPを含む系においてDNA合成反応を行い、鋳型DNA [poly(dA)/oligo(dT)18]へ重合された放射比活性を生成物(合成DNA鎖)量の指標とするものである。
阻害率は、(a)コントロールでの合成DNA量、(b) 被検物質存在下での合成DNA量について、
(a -b) / a × 100 = 阻害率(%)
として評価した。なお、得られたデータは3回の測定値の平均値である。
(a -b) / a × 100 = 阻害率(%)
として評価した。なお、得られたデータは3回の測定値の平均値である。
(DNAポリメラーゼ阻害活性の測定結果)
DNAポリメラーゼ阻害活性の測定結果を図4に示す。図4の結果から明らかなように、100μMのSF226はDNAポリメラーゼα、γ、κ、λのDNA合成活性を阻害した。
100μMで50%以上の阻害活性を有する化合物はDNAポリメラーゼ阻害剤として有効であるので、SF226はDNAポリメラーゼ阻害活性があることを確認した。
以上により、本発明の化合物がDNAポリメラーゼ阻害活性を持つことを確認した。
DNAポリメラーゼ阻害活性の測定結果を図4に示す。図4の結果から明らかなように、100μMのSF226はDNAポリメラーゼα、γ、κ、λのDNA合成活性を阻害した。
100μMで50%以上の阻害活性を有する化合物はDNAポリメラーゼ阻害剤として有効であるので、SF226はDNAポリメラーゼ阻害活性があることを確認した。
以上により、本発明の化合物がDNAポリメラーゼ阻害活性を持つことを確認した。
DNAポリメラーゼは、癌細胞のような細胞分裂が盛んな細胞や組織に対して酵素活性が高い。従って、SF226は抗癌剤として利用できる。
さらに、Y−ファミリーのDNAポリメラーゼはDNA修復を担っているため、癌組織に放射線や化学物質でDNAに傷を生じさせながら、これらの化合物を投与することにより、癌細胞を死滅させることができる。すなわち、本発明の化合物による癌の放射線治療や化学療法への併用効果が期待できる。
さらに、Y−ファミリーのDNAポリメラーゼはDNA修復を担っているため、癌組織に放射線や化学物質でDNAに傷を生じさせながら、これらの化合物を投与することにより、癌細胞を死滅させることができる。すなわち、本発明の化合物による癌の放射線治療や化学療法への併用効果が期待できる。
(癌細胞増殖抑制活性の確認)
上記実施例1で得られたSF226の癌細胞増殖抑制活性を以下の方法で測定した。
上記実施例1で得られたSF226の癌細胞増殖抑制活性を以下の方法で測定した。
(癌細胞増殖抑制活性の測定)
本実施例に用いた細胞は、ヒト大腸癌由来HCT116細胞である。培地としてはRPMI1640培地{日水製薬(株)製}に、牛胎児血清10%(v/v)を添加したものを用いた。培養は、5%CO2インキュベーターにて37℃で行った。
本実施例に用いた細胞は、ヒト大腸癌由来HCT116細胞である。培地としてはRPMI1640培地{日水製薬(株)製}に、牛胎児血清10%(v/v)を添加したものを用いた。培養は、5%CO2インキュベーターにて37℃で行った。
上記に示した培地に、10μM 及び100μMのSF226を溶解した。ただし、SF226は水に難溶であるため、一度DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解し、そのものを上記の培地に溶かした。なお、培地中の培地内に存在するDMSOの終濃度は、すべての試験区で1%以下になっており、本実施例で用いたHCT116細胞の増殖の抑制にDMSOが関わる可能性は否定できる。培養は、96穴マイクロプレートで行った。各ウェルに3.0×105個の細胞を植え込み、1つの試験濃度に対し5ウェルずつ与えた。またポジティブコントロールとして、培地に1%のDMSOを含むものを用いた。
SF226添加後は、5%CO2インキュベーター内、37℃で24時間培養し、各試験区の細胞生存率の判定を行った。生存率の判定は、文献[「RapidColorimetric Assay for Cellular Growth and Surviva1: Application toProliferation and Cytotoxicity Assays」、Tim Mosmann, J. Immunol. Methods、65巻、55頁(1983)]に記載されているMTTアッセイ法を用いた。即ち、上記24時間後テトラゾリウム塩MTTを添加し、更に4時間培養した。生細胞による還元を経て生産するホルマザン量を生細胞に比例するとみなし、570nmの光学密度(O.D.)で定量した。
細胞生存率は次の式により算出した。
細胞生存率(%) = 試験区のO.D. [570 nm]/ 対照区のO.D. [570 nm]
得られた結果は5ウェルの平均である。
細胞生存率(%) = 試験区のO.D. [570 nm]/ 対照区のO.D. [570 nm]
得られた結果は5ウェルの平均である。
(癌細胞増殖抑制活性の測定結果)
癌細胞増殖抑制活性の測定結果を図5に示す。図5の結果から明らかなように、SF226はヒト大腸がん細胞(HCT116 cells)の増殖を抑制した。
以上により、本発明の化合物が癌細胞増殖抑制活性を持つことを確認した。
癌細胞増殖抑制活性の測定結果を図5に示す。図5の結果から明らかなように、SF226はヒト大腸がん細胞(HCT116 cells)の増殖を抑制した。
以上により、本発明の化合物が癌細胞増殖抑制活性を持つことを確認した。
新規なDNAポリメラーゼ阻害剤及び抗癌剤を提供することができる。
Claims (6)
- 以下の一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容し得る塩。
- 前記化合物のR1、R2及びR3がHである請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩。
- 請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩を有効成分として含有する医薬組成物。
- 請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩を有効成分として含有するDNAポリメラーゼ阻害剤。
- 請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩を有効成分として含有する抗癌剤。
- 請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容し得る塩を食品に配合してなる食用組成物。
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---|---|---|---|
JP2012066614A JP2013194044A (ja) | 2012-03-23 | 2012-03-23 | Dnaポリメラーゼ阻害活性を有する新規化合物 |
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WO2018034987A1 (en) * | 2016-08-19 | 2018-02-22 | The Johns Hopkins University | Dna polymerase beta inhibitors |
-
2012
- 2012-03-23 JP JP2012066614A patent/JP2013194044A/ja active Pending
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WO2018034987A1 (en) * | 2016-08-19 | 2018-02-22 | The Johns Hopkins University | Dna polymerase beta inhibitors |
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