JP2013188870A - ガスバリア性フィルム及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】真空蒸着法を用いて、生産性を上げるとともに、優れたガスバリア性を有するフィルムを実現することにある。
【解決手段】プラスチック基材11と、このプラスチック基材11の片面又は両面に、成膜チャンバー21内の圧力が5.0×10-1Pa以下で、窒化珪素と珪素とを含んでN/Si組成比が1.23以下、重量密度が0.50g/cm3以上の蒸着材料23を、電子線加熱方式の真空蒸着法にて加熱蒸発させて形成される窒化酸化珪素膜13とを備えたガスバリア性フィルムである。
【選択図】図1

Description

本発明は、食品、医薬品、精密電子部品その他の電子機器関連部材等の包装材料に利用されるガスバリア性フィルムとその製造方法に係り、特に生産性を上げつつ、優れたガスバリア性を備えたガスバリア性フィルム及びその製造方法に関する。
食品、医薬品、精密電子部品等に使用する包装材料は、内容物を保護するために化学的、物理的な安定性、物理的強度、遮断性などの他、その内容物ごとに様々な機能が要求される。
特に、食品の包装は、褐変や色素の分解、油脂の酸化による風味の変化を防止し、鮮度を保持することが求められている。また、医薬品の包装では、有効成分の変質を抑制して効能を維持することが求められ、精密電子部品の包装では、金属部分の腐食や絶縁不良を防ぐことが求められている。
一般に、内容物の変質は、空気中の酸素や水蒸気を媒介として促進されることが多い。そのため、包装材料のガスバリア性が重要になってくる。また、近年は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子や太陽電池等の基材としてプラスチックが用いられる傾向にあるが、プラスチック基材は、酸素ガスや水蒸気に対するバリア性が低いため、これら素子や電子部材等の劣化が問題となる。
特に、有機EL素子では、その光学的特性、機械的な外力に対する耐久性、耐熱性、耐溶剤性、ガスバリア性、表面平滑性等から、窒化酸化珪素膜がバリア膜として用いられている。
このような窒化酸化珪素膜は、一般的にはスパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD(化学気相蒸着)法によって形成できることが知られており、バリア膜の役割を持たせている。
例えば、窒化珪素ターゲットを使用し、窒素ガス雰囲気下で窒化酸化珪素膜を形成させたガスバリア性フィルムが提案されている(特許文献1)。
また、プラズマCVD法を用い、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)を成膜時の前駆体として、窒素、酸素ガスを反応させて、フィルム基材上にSiNxOyCz膜を形成させたガスバリア性フィルムが提案されている(特許文献2)。
さらに、ホロカソード型イオンプレーティングによりバリア膜としての窒化酸化珪素膜を形成したガスバリア性フィルムが提案されている(特許文献3)。
ところで、フィルム基材に窒化酸化珪素膜を形成する方法として、幾つかの方法が知られている。そのうち、真空蒸着法は、スパッタリング法、CVD法、ホロカソード型イオンプレーティングに比べて生産性に優れている。
しかし、真空蒸着法を用いて、窒化酸化珪素膜を形成する場合、窒化珪素を蒸着材料とすることができるが、窒化珪素のみを蒸着した場合には窒素ガスの脱離により成膜中の圧力が上昇し、バリア性の高い窒化酸化珪素膜が得られない。また、成膜過程で蒸着材料からの窒素ガスの脱離により、材料の崩壊が起こり易くなる問題がある。
特開2004−276564号公報 特開2006−274390号公報 特開2000−15737号公報
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、生産性を上げつつ、優れたガスバリア性を備えたガスバリア性フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、請求項1に対応する発明は、プラスチック基材と、このプラスチック基材の片面又は両面に、成膜チャンバー内の圧力が5.0×10-1Pa以下で、窒化珪素と珪素とを含んでN/Si組成比が1.23以下、重量密度が0.50g/cm3以上の蒸着材料を、電子線加熱方式の真空蒸着法にて加熱蒸発させて形成される窒化酸化珪素膜とを備えたガスバリア性フィルムである。
請求項2に対応する発明は、請求項1に対応する発明に記載のプラスチック基材と窒化酸化珪素膜との間に、バリア性及び密着性を高めるために表面処理又はアンカーコートの塗布により中間補助層を形成した構成である。
請求項3に対応する発明は、請求項1又は請求項2に記載の窒化酸化珪素膜の膜厚が10〜300nmの範囲内であり、かつ、水蒸気透過度が5.0g/m2・day以下であることを特徴とするガスバリア性フィルムである。
また、請求項4に対応する発明は、成膜チャンバー内に窒化珪素と珪素とを含んでN/Si組成比が1.23以下、重量密度が0.50g/cm3以上の蒸着材料とプラスチック基材とを対峙させ、前記成膜チャンバー内の圧力が5.0×10-1Pa以下とし、真空蒸着法を用いて蒸着材料を加熱蒸発させ、プラスチック基材の片面又は両面に窒化酸化珪素膜を形成するガスバリア性フィルムの製造方法である。
また、請求項5に対応する発明は、請求項4に記載の真空蒸着法としては、真空ポンプの吸気口にコールドトラップを取り付けた真空蒸着装置を用いて、蒸着材料の加熱蒸発によって前記プラスチック基材に成膜するガスバリア性フィルムの製造方法である
さらに、請求項6に対応する発明は、請求項4又は請求項5に記載の真空蒸着法としては電子線加熱方式を用いたものであることを特徴とする。
本発明によれば、真空蒸着法を用いて成膜によって生産性を上げるとともに、優れたガスバリア性を備えたガスバリア性フィルムとその製造方法を提供できる。
本発明に係るガスバリア性フィルムの概略的な断面図。 本発明に係るガスバリア性フィルムの製造方法を適用する真空蒸着装置の概略的な構成図。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明に係るガスバリア性フィルムの一実施の形態を示す概略的な断面図である。
ガスバリア性フィルムは、プラスチック基材11と、このプラスチック基材11の一方面部に形成された中間補助層12と、この中間補助層1の上面部に形成された窒化酸化珪素膜13とを含む構成である。
プラスチック基材11は、具体的には、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル系(ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等)、ポリアミド系(ナイロン−6、ナイロン−66)、ポリスチレン、エチレンビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、アクリル、セルロース系(トリアセチリルセルロース、ジアセチルセルロース等)などを挙げることができる。その中でも特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いることが好ましい。また、プラスチック材料には、公知の添加剤、安定剤である静電防止剤、可塑剤等が使用されているものであっても良い。
プラスチック基材11の厚さは、特に制限を受けるものではないが、5μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。5μm未満の厚さでは、成膜工程の段階で基材強度が問題になることがある。また、100μm以上の厚さでは、巻き取り系での成膜、後工程での加工性が低くなる。
中間補助層12は、プラスチック基材11と窒化酸化珪素膜13との間のバリア性及びプラスチック基材11と窒化酸化珪素膜13との密着性を向上させる目的で施される。中間補助層12は、本発明に係るガスバリア性フィルムとしては必ずしも必須の構成要素ではないが、プラスチック基材11と窒化酸化珪素膜13との密着力を向上させうる機能を有するものであれば、適用することが望ましい。
中間補助層12は、プラスチック基材11上に表面処理やアンカーコート層等を施すことで形成される。
表面処理としては、酸素ガスや窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品処理等が挙げられる。また、アンカーコート層としては、例えばアクリルポリオール、ポリビニルアセタール、ポリウレタンポリオール等から選択されるポリオール類とイソシアネート化合物から得られる有機高分子、ポリイソシアネート化合物と水との反応により得られるウレア結合を有する有機化合物等が挙げられる。
窒化酸化珪素膜13は、成膜チャンバーの圧力が5.0×10-1Pa以下の状態下で、電子線加熱方式の真空蒸着法を用いて、窒化珪素と珪素とを含んで、N/Si組成比が1.23以下、重量密度が0.50g/cm3以上の蒸着材料を加熱蒸発させて、プラスチック基材11の片面または両面に形成される。
窒化酸化珪素膜13の膜厚は、10〜300nmであることが好ましい。膜厚が10nm未満であると、均一な膜が得られず、膜厚が不十分であるためにガスバリア層としての機能が得られない場合がある。また、膜厚が300nmより厚くなると、窒化酸化珪素膜13に亀裂が入りやすく、バリア性が損なわれる場合がある。膜厚が10〜300nmの範囲内であれば、食品包装材料に求められる水蒸気透過度(WVTR)が5.0g/m2・day以下のバリア性フィルムを得ることができる。
図2は本発明に係るガスバリア性フィルムの製造方法の一実施の形態が適用される真空蒸着装置の概略構成図である。
真空蒸着装置は、電子線加熱方式の真空蒸着法を採用したものであって、バッチ式、ロール・ツー・ロール方式、連続方式など、公知の方式が用いられるが、生産性を向上させる場合にはロール・ツー・ロール方式を用いるのが望ましい。
図2において、21は成膜チャンバーであって、成膜チャンバー21内のほぼ中央底部に例えば断面凹部形状をなす坩堝22が配置され、この坩堝22内には蒸発源となる蒸着材料(蒸発物質)23が収容されている。
蒸着材料23の加熱方式としては、抵抗加熱方式、誘導加熱方式、電子線加熱方式が挙げられるが、蒸着材料23が高融点あるいは高沸点であることから、電子線加熱方式が好ましい。
24は電子線加熱方式を用いた電子銃であって、坩堝22の一側部側の近傍に配置される。電子銃24の構造には、平面陰極形、円筒断面集束形、シートビーム形の3種類があるが、特にその中の1種類に限定されるものではない。
電子線加熱方式の真空蒸着法を用いる電子銃24は、電子放出のための陰極に電位を与える電極が配置されるが、これら電極配置や構造により種々の密度や形状の電子ビーム25が形成される。
電子銃24から発生された電子ビーム25は、磁界で目的に合うように偏向、収束、走査され、坩堝22内に収容される蒸着材料23に照射され、加熱される。
このとき、成膜チャンバー21上部には、坩堝22内の蒸着材料23と対峙するように基材ホルダー26に保持された基材27(基材11に相当する。以下、同じ。)が設定されている。その結果、電子ビーム25の照射によって加熱された蒸着材料23が蒸発し、基材ホルダー26に保持された基材27に蒸着する。
また、成膜チャンバー21には反応ガスを導入するガス導入管28が設けられている。従って、ガス導入管28には、反応ガスを供給するガス配管(図示せず)が接続されている。
29は、高真空ポンプを用いた高真空排気系である。高真空ポンプとしては拡散ポンプまたはターボ分子ポンプが用いられる場合が多い。高真空排気系29は成膜チャンバー21内を高真空にするために使用される。
30は基材27に蒸着した成膜の速度をモニタリングする水晶振動子などの成膜速度計測手段であって、基材27の一側部近傍に配置される。
次に、本発明に係るガスバリア性フィルムの製造方法の一実施形態について説明する。
先ず、成膜チャンバー21の坩堝22内に蒸着材料23を入れ、また基板ホルダー26に保持された基材27を所定位置に配置する。
蒸着材料23としては、窒化珪素と珪素とを含み、N/Si組成比が1.23以下とする。蒸着材料23の蒸着により形成される窒化酸化珪素膜13は、緻密な構造であり、基材27(基材11に相当する。)に高い密着性をもって形成される。これにより、機械的外力が作用しても亀裂や欠陥が生じにくく、優れたガスバリア性、耐熱性、耐久性を高めることができる。
ここで、真空蒸着法にて窒化酸化珪素膜13を形成する一方法としては、窒化珪素を蒸着材料23とすることも考えられるが、窒化珪素のみを加熱したとき、Si34→3Si+2N2の反応が起こり、窒素ガスにより成膜中の圧力が上昇し、バリア性の高い窒化酸化珪素膜13を得ることができない。
しかし、窒化珪素と珪素とを含み、N/Si組成比が1.23以下である蒸着材料23であれば、成膜中の圧力を抑え、安定的に水蒸気透過度(WVTR)の低い窒化酸化珪素膜13を得ることができる。
また、蒸着材料23の重量密度が0.50g/cm3以上とする。この重量密度は、単位体積(cm3)当りの重量(g)で規定する。重量密度が0.50g/cm3以下であれば、蒸着材料23は崩壊しやすく、作業性が悪くなる。また、成膜中は、蒸着材料23からの窒素の脱離により、蒸着材料23の内部に空隙が多くなり、崩れやすくなる。そのため、安定して成膜を行うことが出来ない。また、バリア性の高い窒化酸化珪素膜13を成膜することができない。
蒸着材料23が成形体として用いる場合、その成形方法としては、原料粉末を含有するスラリーを調製して焼成する方法や原料粉末を造粒してプレス成形する方法など、一般的な方法を用いることができる。成形体は公知のバインダーを含んでも構わない。蒸着材料23を収容する坩堝22については、特に規定されるものでは無く、公知のものを用いてもよい。
以上のように蒸着材料23を坩堝22に収容し、かつ、所定位置に基材27を配置した後、高真空排気系29にて成膜チャンバー21内を高真空となるように排気する。
しかる後、電子銃24から発生する電子ビーム25を用いて坩堝22内の蒸着材料23を加熱し、蒸着材料23を蒸発させ、基材27の面に蒸発させた蒸着材料23を蒸着し、窒化酸化珪素膜13を形成する。
このとき、成膜チャンバー21内の圧力は、5.0×10-1Pa以下とする。成膜チャンバー21内の圧力が5.0×10-1Paより高いと、平均自由工程が短くなるため、蒸着粒子の運動エネルギーが低下し、緻密な膜を形成するのが難しく、電子線加熱方式の真空蒸着法を用いた場合、電子ビーム25が蒸着材料23中に入射しにくくなる。窒化珪素から窒素が脱離し、窒素ガスにより成膜チャンバー21の圧力が上昇しやすいため、真空ポンプとしては排気性能の高いターボ分子ポンプや油拡散ポンプを用いることが好ましい。ただし、特に規定されるものではない。
さらに、成膜中の水の分圧は、特に規定されるものではない。ただし、水の分圧が高いと蒸着材料23や蒸着粒子が水と反応し、生じたOH基により、水蒸気透過度(WVTR)が高くなることがあり、バリア性のよい窒化酸化珪素膜13を安定して成膜することができない。そのため、成膜中の水分圧を下げる目的で、真空ポンプの吸気口にコールドトラップを設けることが好ましい。
なお、水分圧をモニターする方法は、公知の方法を用いてよいが、一般的に質量分析計を用いる。残留気体を電離し、電界によりイオンの質量選別を行って検出する。質量の選別方法によりいくつかの質量分析計があるが、残留気体の分析には、四極子形質量分析計(四重極形質量分析計、マスフィルター)がよく用いられている。
一方、基材27の成膜速度をモニターする方法は、水晶振動子表面に薄膜が堆積することにより共振振動数が変化することを利用した水晶振動子や分光光度計を用いた成膜速度計測手段を用いるが、従来公知の計測手段であっても構わない。
窒化酸化珪素膜13の膜厚は、前述したように10〜300nmであることが好ましい。膜厚が10nm未満であれば、均一な膜が得られず、膜厚が不十分であるため、ガスバリア層としての機能が得られない場合がある。また、膜厚が300nmより厚いと、窒化酸化珪素膜13に亀裂が入りやすく、バリア性が損なわれる場合がある。膜厚が、10〜300nmの範囲であると、食品包装等に用いて水蒸気透過度(WVTR)が5.0g/m2・day以下のバリア性フィルムを得ることができる。
なお、成膜チャンバー21内にガスを導入しても構わない。導入するガスの種類は特に規定されるものではなく、酸素、窒素、アルゴン等公知のものを用いることができる。ただし、圧力が上昇すると平均自由工程が短くなる。酸素ガスを導入することで、膜中の酸素元素が増え、透明性が増加する。
以下、本発明に係るガスバリア性フィルム及びその製造方法の具体的な実施例及び比較例について説明する。
<実施例1>
プラスチック基材11である厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片側面に、アクリルポリオールとイソシアネート化合物から得られる有機高分子の中間補助層12を塗布した。
この中間補助層12の上面部に対して、材料中のN/Si組成比が0.89であり、重量密度が1.03g/cm3である蒸着材料23を用い、図2に示す電子線加熱方式の真空蒸着装置にて、電子銃24の電流値を100mAとし、蒸着材料23を加熱蒸発させることにより、膜厚50nmとなる窒化酸化珪素薄膜13が形成されたガスバリア性フィルムを作製した。
このとき、成膜チャンバー21内の圧力は1.6×10-2Pa、水の分圧は3.6×10-4Paであり、成膜された薄膜の組成は、O/Si=1.0、N/Si=0.28である。また、水蒸気透過度(WVTR)は2.9g/m2・dayとなった。
<実施例2>
プラスチック基材11である厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、アクリルポリオールとイソシアネート化合物から得られる有機高分子の中間補助層12を塗布した。
この中間補助層12の上面部に対して、材料中のN/Si組成比が0.75であり、重量密度が1.04g/cm3である窒化珪素と珪素からなる蒸着材料23を用い、かつ、電子線加熱方式の真空蒸着装置にて、100mAの電流値を電子銃24に通電し、蒸着材料23を加熱蒸発させることにより、膜厚50nmとなる窒化酸化珪素薄膜13が形成されたガスバリア性フィルムを作製した。
このとき、成膜チャンバー21内の圧力は1.2×10-2Pa、水の分圧は3.2×10-4Paであり、成膜された薄膜の組成は、O/Si=0.96、N/Si=0.29である。また、水蒸気透過度(WVTR)が2.8g/m2・dayとなった。
<実施例3>
プラスチック基材11である厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に対して、材料中のN/Si組成比が0.75であり、重量密度が1.02g/cm3である窒化珪素と珪素からなる蒸着材料23を用い、かつ、電子線加熱方式の真空蒸着装置にて、電子銃24の電流値100mAとし、蒸着材料23を加熱蒸発させることにより、膜厚50nmとなる窒化酸化珪素薄膜13が形成されたガスバリア性フィルムを作製した。
このとき、成膜チャンバー21内の圧力は1.6×10-2Paであり、成膜された薄膜の組成は、O/Si=0.90、N/Si=0.37である。また、水蒸気透過度(WVTR)が4.4g/m2・dayとなった。
<比較例1>
プラスチック基材11である厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、アクリルポリオールとイソシアネート化合物から得られる有機高分子の中間補助層12を塗布した。このときの水蒸気透過度(WVTR)は50g/m2・dayとなった。
<比較例2>
プラスチック基材11である厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、アクリルポリオールとイソシアネート化合物から得られる有機高分子の中間補助層12を塗布した。
この中間補助層12の上面部に対して、窒化珪素のみからなり、重量密度が1.03g/cm3である蒸着材料23を用い、電子線加熱方式の真空蒸着装置にて、電子銃24の電流値を100mAとし、蒸着材料23を加熱蒸発させることにより、膜厚50nmとなる窒化酸化珪素薄膜13が形成されたガスバリア性フィルムを作製した。
このとき、成膜チャンバー21内の圧力は1.2×10-1Pa、水の分圧は6.3×10-4Paで3であり、得られた薄膜の組成は、O/Si=1.8、N/Si=0.14である。水蒸気透過度(WVTR)は38g/m2・dayとなった。
<比較例3>
プラスチック基材11である厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、アクリルポリオールとイソシアネート化合物から得られる有機高分子の中間補助層12を塗布した。
さらに、中間補助層12の上面部に対して、珪素のみからなり、重量密度が1.03g/cm3である蒸着材料23を用い、図2に示す電子線加熱方式の真空蒸着装置にて、電子銃24の電流値を100mAとし、蒸着材料23を加熱蒸発させることにより、膜厚50nmとなる窒化酸化珪素薄膜13が形成されたガスバリア性フィルムを作製した。
このとき、成膜中の成膜チャンバー21内の圧力は5.0×10-4Pa、水の分圧は3.3×10-4Paである。レートが低く、ほとんど成膜することができなかった。
<比較例4>
プラスチック基材11である厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、アクリルポリオールとイソシアネート化合物から得られる有機高分子の中間補助層12を塗布した。
また、中間補助層12の上面部に対して、材料中のN/Si組成比が1.29であり、重量密度が1.05g/cm3である窒化珪素と珪素からなる蒸着材料23を用い、図2に示す電子線加熱方式の真空蒸着装置にて、電子銃24の電流値を100mAとし、蒸着材料23を加熱蒸発させることにより、膜厚50nmとなる窒化酸化珪素薄膜13が形成されたガスバリア性フィルムを作製した。
このとき、成膜中の成膜チャンバー21内の圧力は7.4×10-2Pa、水の分圧は4.5×10-4Paであり、成膜された薄膜の組成は、O/Si=1.8、N/Si=0.16である。また、水蒸気透過度(WVTR)が6.5g/m2・dayとなった。
<比較例5>
プラスチック基材11である厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、アクリルポリオールとイソシアネート化合物から得られる有機高分子の中間補助層12を塗布した。
さらに、中間補助層12の上面部に対して、材料中のN/Si組成比が0.75、重量密度が0.40g/cm3である窒化珪素と珪素からなる蒸着材料23を用い、図2に示す電子線加熱方式の真空蒸着装置にて、電子銃24の電流値を100mAとし、蒸着材料23を加熱蒸発させることにより、膜厚50nmとなる窒化酸化珪素薄膜13が形成されたガスバリア性フィルムを作製した。
<評価 組成>
以上述べた<実施例1>〜<実施例3>、<比較例1>〜<比較例5>の具体例においては、材料組成比や重量密度の異なる蒸着材料23を用い、かつ、膜厚の異なる窒化酸化珪素薄膜13が形成された各ガスバリア性フィルムについて、X線光電子分光法(XPS)を用いて、窒化酸化珪素薄膜13中の組成を分析し、その評価結果を表1に示す。
なお、<実施例1>〜<実施例3>、<比較例1>〜<比較例5>で作製したガスバリア性フィルムについては、カップ法により、40℃−90%RH雰囲気にて水蒸気透過度を測定した(JIS Z0208準拠)。
Figure 2013188870
従って、表1に示すように、実施例1〜3で作製したガスバリア性フィルムは、窒化酸化珪素薄膜13の膜厚が10〜300nmの範囲内で、かつ、水蒸気透過度(WVTR)が5.0g/m2・day以下であり、比較例1〜5と比較して、食品包装材料で要求されるガスバリア性に優れたガスバリア性フィルムを得ることができる。
従って、以上のような実施の形態によれば、蒸着材料23のN/Si組成比が1.23以下としたので、成膜中の圧力を抑えて、安定的に水蒸気透過度の低い窒化酸化珪素薄膜13を得ることができる。
また、蒸着材料23の重量密度が0.50g/cm3以上とすることにより、蒸着材料23を崩壊させずに作業性を高めることができ、成膜中は窒素の離脱を抑えて安定した成膜処理を進めることが出来る。
また、成膜チャンバー21内の圧力を5.0×10-1Pa以下に抑えることにより、平均自由工程が長くなり、蒸着粒子の運動エネルギーが高まり、緻密な窒化酸化珪素薄膜13を形成することができる。
さらに、真空ポンプの吸気口にコールドトラップを設けることにより、成膜中の水分圧が下がり、水蒸気透過度を下げることができ、よってバリア性のよい窒化酸化珪素薄膜13を安定に成膜することができる。
また、窒化酸化珪素薄膜13の膜厚が10〜300nmとすることにより、均一、かつ、適度の膜厚となり、使用中に亀裂が入ったり、バリア性を損なうような問題を解決できる。
なお、上記実施の形態では、プラスチック基材11の片面に窒化酸化珪素薄膜13を形成したが、プラスチック基材11の両面に窒化酸化珪素薄膜13を形成してもよい。
また、上記実施の形態では、成膜チャンバー21に中央底部に蒸着材料23を収容した坩堝22を固定したが、例えば回転板体に複数の坩堝22を配置し、それぞれの坩堝22に蒸着材料23を収容し、所定時間ごとに回転板体を回転させつつ、該当坩堝22内の蒸着材料23に順次電子線加熱方式で加熱し、蒸発させる構成であってもよい。
このとき、基材ホルダー26に保持される基材27は、加熱蒸発される蒸着材料23のほぼ真上に位置するように配置される。
さらに、上記実施の形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。前記各実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
11…プラスチック基材、12…中間補助層、13…窒化酸化珪素膜、21…成膜チャンバー、22…坩堝、23…蒸着材料、24…電子線加熱方式を用いた電子銃、26…基材ホルダー、27…基材、28…ガス導入管、29…高真空排気系、30…成膜速度計測手段。

Claims (6)

  1. プラスチック基材と、
    このプラスチック基材の片面又は両面に、成膜チャンバー内の圧力が5.0×10-1Pa以下で、窒化珪素と珪素とを含んでN/Si組成比が1.23以下、重量密度が0.50g/cm3以上の蒸着材料を、電子線加熱方式の真空蒸着法にて加熱蒸発させて形成される窒化酸化珪素膜と
    を備えたことを特徴とするガスバリア性フィルム。
  2. 請求項1に記載のガスバリア性フィルムにおいて、
    前記プラスチック基材と前記窒化酸化珪素膜との間に、バリア性及び密着性を高めるために表面処理又はアンカーコートの塗布により中間補助層を形成したことを特徴とするガスバリア性フィルム。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のガスバリア性フィルムにおいて、
    前記窒化酸化珪素膜の膜厚が10〜300nmの範囲内であり、かつ、水蒸気透過度が5.0g/m2・day以下であることを特徴とするガスバリア性フィルム。
  4. 成膜チャンバー内に窒化珪素と珪素とを含んでN/Si組成比が1.23以下、重量密度が0.50g/cm3以上の蒸着材料とプラスチック基材とを対峙させ、前記成膜チャンバー内の圧力が5.0×10-1Pa以下とし、真空蒸着法を用いて前記蒸着材料を加熱蒸発させ、前記プラスチック基材の片面又は両面に窒化酸化珪素膜を形成することを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
  5. 請求項4に記載のガスバリア性フィルムの製造方法において、
    前記真空蒸着法としては、真空ポンプの吸気口にコールドトラップを取り付けた真空蒸着装置を用いて、前記蒸着材料の加熱蒸発によって前記プラスチック基材に成膜することを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
  6. 請求項4又は請求項5に記載のガスバリア性フィルムの製造方法において、
    前記真空蒸着法が電子線加熱方式であることを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
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