JP2013183662A - 水圏植物資源からの酒類の製造方法と製造物 - Google Patents

水圏植物資源からの酒類の製造方法と製造物 Download PDF

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Abstract

【課題】水圏植物素材を原料として、エタノール濃度が5%(以下%表記は特に注釈のない限り、w/v即ち重量/体積濃度の意味とする)を超えるアルコール産物及びその製造法の提供。
【解決手段】海草種子を原料として選択し、糖化処理した後、酵母を使用して発酵させることにより得られる、エタノール濃度が5%を超えるアルコール産物。酵母を使用して発酵させる工程を、上清だけでなく、原料に由来する固形物を残したままの状態で発酵させ、並行複発酵を行わせることによって得ることができる、エタノール濃度が10%以上のアルコール産物。
【選択図】なし

Description

本発明は、水圏植物の一種である海草の種子を原料としたエタノール濃度が5%以上のアルコール産物、及びその製造法に関する。
「水圏植物」は、海産植物と淡水産植物とを含む。このうち海産植物は、さらに大型海産植物と微細海産植物(微細藻類)とに分けられる。大型海産植物と言えば、一般に海藻類(大型藻類)を指す場合も多いが、厳密には、分類学に異なる海藻類と海草類との2つを含む。
海藻類には、褐藻類、紅藻類、緑藻類があり、種子は形成しない。一方、海草類には、アマモ科(Zosteraceae)、ポシドニア科(Posidoniaceae)、ベニアマモ科(シオニラ科、Cymodoceaceae)、トチカガミ科(Hydrocharitaceae)、イトクズモ科(Zannichelliaceae)、カワツルモ科(Ruppiaceae)の6科に60種程度が確認されており、種子を形成するという特徴がある。
水圏植物を原料としてエタノールを産生する研究は、日本や韓国など国土が狭く資源に乏しい国で近年になり盛んに行われている。これらの分野で、従来、研究対象に選ばれてきた水圏植物原料は、ホテイアオイ等の淡水産植物、ホンダワラ等の褐藻類、アオサ等の緑藻類、マクサ等の紅藻類、アマモ等の海草類、クロレラ等の微細藻と多種多様に渡るが、すべて植物体全体を原料として使用しており、海草類の種子だけを集めて原料として使用した例は見当たらない。
既存の酒類をその原料素材から見渡すと、例えば日本酒の原料である米を実らせるイネは、単子葉植物綱イネ目イネ科イネ属という生物学的分類に属する。またイネ科には、オオムギ、コムギ、トウモロコシ、アワ、キビ、サトウキビなどが属し、既存の酒類のうちで種子を原料として造られたもののほとんどが、イネ科の植物から製造されている。
一方、海草類のアマモは、単子葉植物綱イバラ目アマモ科アマモ属に属する。これまでアマモ属はもちろんのことイバラ目の植物を酒類の原料として使用した事例は知られていない。
本発明者は、イバラ目の植物の種子を特定の処理を施すことにより、酒類の原料として使用することができることを見出し、本発明に至ったものである。
また、同じイネ科に属するイネやオオムギやトウモロコシであっても、これらを原料として酒類を製造した場合には、その味が大きく異なるが、本願発明では、科はおろか目レベルで従来の酒類と異なる原料を使用することにより、味の点においても、従来の酒類と大きく異なる、独特の風味を有する酒類を製造することができる。
水圏植物からエタノールを生産する研究の目的は、これまで大きく分けて食品素材、即ち酒類の生産のためと、燃料源、即ち所謂バイオエタノールの生産のための2つがあった。
前者の水圏植物からの酒類の生産については、着想自体は1988年頃、一部の公的研究機関で取り組んだ例があり、それ以前も、各地で、種々の試みがかなり古くからなされていたと考えられる。
しかし、得られる発酵産物のエタノール濃度は、後述するように通常0.5%程度であるため、海藻糖化液を濃縮したり、エタノール発酵産物を蒸留したりする等の特殊な操作なしでは、酒類とは呼べないものであった。
即ち、従来の海藻酒といえば、色付けや風味づけの目的で副原料として水圏植物が添加されてきたリキュール的なものに過ぎなかった(非特許文献1)。
なお、水圏植物を原料として酒類の実用化に成功した例として、水圏植物の中でも得られるエタノール産生量が多い部類の植物と考えられているホテイアオイを原料として発酵させ、焼酎とした事例が知られている(非特許文献2)。この場合もホテイアオイは、一部エタノールの生産に寄与しているが、全体としては風味づけとイメージ付け等のための副原料として使用されているにすぎなかった。
このように、水圏植物だけを原料としたアルコール度の高い酒類の生産と実用化は、現在に至るまで達成されていない。
一方、水圏植物を原料として燃料としてのバイオエタノールの生産を目指す研究は、2000年頃から急激に研究知見が蓄積した(非特許文献3)。
この分野の研究の一つの流れは、富栄養化した淡水湖で大量繁殖する淡水植物を有効利用できないかという観点から行われ、主にホテイアオイ(water hyacinth)を原料としたエタノール発酵に関する研究が行われた(非特許文献2、4−6)。
一方、別の流れとしての海藻を原料とするエタノール製造に関する研究は、研究企画概念書「アポロポセイドン計画」(MRI:www.mri.co.jp/PLAN/2005/20050224_stu01.pdf、2006)や「オーシャンサンライズ計画」(非特許文献7)が契機となりCO2排出削減のためのバイオマス利用という観点から日本で研究が始まり、韓国等の外国にも一部広がった。
このなかではエタノール製造の原料として、当初バイオマス量が多いケルプ類などの褐藻類が原料として有望視されたが、褐藻類の主成分である糖質(アルギン酸)をエタノールに変換することが困難であることから、沿岸域で大量繁殖する海藻で、褐藻類よりもエタノール収量が多いアオサ類等の緑藻類を研究対象にする研究が増えた(非特許文献8)。
一方、韓国の研究者が、ガラクタン(寒天、カラギーナン等のガラクトースを基盤とする多糖)を主成分とする紅藻類を原料として使用し、酸加水分解法によりガラクタンをガラクトースにまで糖化することで、比較的高いエタノール濃度を得られることを報告して注目されたが、この方法でもエタノール濃度は文献値で1%程度であった。3〜5%程度のエタノール濃度が得られたとの文献もあるが確認されたものではない(非特許文献9−12)。
本発明者は、水圏大型植物から得られるエタノール製造を含めた発酵技術に関して1998年から研究を開始し(非特許文献13−16)、特に2007年からは、成分情報に着目して、エタノールの発酵生産を検討した(非特許文献17)。
これらの研究で収集した108検体の海藻についての成分分析の結果から水圏植物から製造可能なエタノール収量を見積もることが可能である。
即ち、水圏植物には、(1)海藻の種類にはあまり関係なく、水分が平均87.4%(w/w,即ち重量/重量濃度。本節のみ重量/重量濃度で議論を進めるが、重量/重量濃度と重量/体積濃度の数値はほぼ同じとなる)と多く含まれ、従って固形分が平均12.6%(w/w)程度含まれること(非特許文献17)、さらに海藻固形分の中で、(2)炭水化物は、平均で植物乾燥重量の57.1%(w/w) (非特許文献17)、即ち植物湿重量あたりでは7.2%(w/w)(計算根拠:固形分12.6%x0.571=7.2% )であることを観察した。
グルコースを微生物で発酵させて得られるエタノール収量は化学反応式 C6H12O6 (分子量180)→2C2H5OH(2x分子量46)+2CO2(2x分子量44) から51%(w/w)(計算根拠:2x46/180x100=51) であることが知られている。
水圏植物の炭水化物のうちの全てがエタノール原料となり得るグルコースであると仮定して、生の水圏植物を原料として、加水をせず、第一段階で糖化して、第二段階で発酵させる(単行複発酵と呼ぶ)ことで得られる エタノールの最大理論収量濃度は、計算上3.7%(w/w)(7.2%x0.51=3.7%)となる。
一方、水圏植物から得られるエタノールの収量をより詳細に見積もるため、植物体の構成糖を分析することも行った。
水圏植物を酸加水分解して得られる糖質の中で、エタノール発酵の原料となり得る糖質は、主にグルコースとガラクトースである。そこで、各種の水圏植物に含まれるグルコースとガラクトースの合計量を、酸加水分解して実際に分析してみると、平均で植物乾燥重量あたり17.1%(w/w)含まれていた(非特許文献17)。
また、調査した中で最大であったカバノリ(紅藻類)の場合で44.6%(非特許文献15)であり、水圏植物湿重量あたりに換算すると平均で2.2%(w/w)(固形分12.6%x0.171=2.2% )、カバノリの場合で5.6%(w/w)(固形分12.6%x0.446=5.6%)であった。
従って得られるエタノールの最大収量は、最も成分的に有利なカバノリの場合で、しかも単糖(グルコース及びガラクトース)からエタノールへの変換が100%の効率で行われたと仮定しても、せいぜい2.9%(w/w)(5.6%x0.51=2.9%)となる。
即ち加水を全く行わず糖化と発酵処理を行っても、単行複発酵により得られるエタノール濃度は、最大で2.9%程度と推定された。
実際には、発酵阻害物質の存在等が影響するため、エタノール収量はさらに低く、比較的高い収量が期待できる水圏植物であるホテイアオイ、アオサ類、オゴノリ類などであっても実測値としてエタノール濃度0.5-2%(w/w)前後を得るのがやっとであるのが現状である(特許文献1、12−14、非特許文献8−11、14、17)。
例えば、非特許文献18では、ホテイアオイの酸糖化液を8倍濃縮して発酵させているが、この場合でもエタノール濃度は1.99%(w/v)に留まっている。 また、韓国での紅藻類やこれから抽出精製した寒天を原料とした研究でも、2010年11月に開催された研究集会の講演要旨資料によると、糖化液に含まれるグルコースとガラクトースの合計値の最高濃度は、6.6%(w/v)であり、実際の発酵産物のエタノール濃度は0.9%(w/v)である(非特許文献11)。
水圏植物からのエタノール製造に関連する文献としては、本発明者が調査した限りでは特許資料として14件(特許文献1−14)、また論文・書籍等資料として代表的なものとして24件(非特許文献1−24)あるが、上述の通り、水圏植物素材を原料として、エタノール濃度が5%を超える発酵産物の製造法は見当たらなかった。
以上の記載の通り、通常の水圏植物素材の成分分析の結果から、これらを発酵させて得られるエタノール濃度は、最大でも2.9%程度である。
酒類の分野では、比較的低いエタノール濃度の低いビールの場合でも、一般にエタノール濃度は3-8%程度である。
従って、通常の水圏植物素材を原料として造醸されたものは、酒類として利用することは困難であると考えられていた。
また醸造酢は通常5%程度の濃度で市販されているが、酢はエタノールから変換されるものであるから、エタノール濃度が5%以上なければ、醸造酢の原料としても不十分である。
特開平7−31485号公報 特開平10−304866号広報 特開平11−56337号公報 特開平11−56344号公報 特開2001−61452号公報 特開2002−265962号公報 特開2003−201号公報 特開2003−310288号公報 特開2006−204264号公報 特開2008−183004号公報 特開2008−271910号公報 特開2010−518850号公報 特開2010−43247号公報 特開2011−244789号公報
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本発明の目的は、これらの現状を克服し、酒類としての利用及び醸造酢や乳酸水溶液等有機酸系の食品素材の原料としても利用できるエタノール濃度が5%以上の発酵産物を水圏植物素材から製造することである。
また以下で記述するように、本発明は、アマモなどの海草類の種子を原料とすることで、本課題を解決しようとする考えに至ったことが一つのポイントであるが、海中で結実するアマモの種子と、陸上で結実するイネ科植物の種子とは、その環境が大きく異なることから、従来、行われてきた酒造用原料の調製や発酵技術のほとんどは、アマモの種子には適用することはできない。
本発明者は、実用に耐えうる酒類の製造方法を提供するため、アマモの種子の効率的収集方法と精製方法、脱穀様処理方法、糖化のために有効な酵素の種類の選択、糖化条件の最適化、発酵のための酵母株の選択等の諸要素について検討を加え、最適な方法を模索した結果、本発明に至った。
本発明者は、一般に水分含量が多く、かつエタノール発酵の基質となる糖質の含量が必ずしも十分でない水圏植物素材から、酒類等としての利用が可能なエタノール濃度が5%以上の発酵産物を如何にして得るかということについて長年、海藻の発酵研究を進めた。
そのなかで、日本酒の場合は、イネ植物体全体を原料として使用しているのではなく、種子である米のみを原料として使用しているのに対し、海藻や淡水植物を発酵させてエタノールを得るための研究を行っている水産系あるいは工学系の諸研究者は、植物体全体を原料として使用しようとしている点が大きく異なることに着目し、原料として水圏植物の中では、例外的に種子を形成する海草類を選び、その種子だけを集めて原料として使用することができれば、糖化と発酵処理を施すことで高いエタノール濃度が期待できるのではないかと考えた。
(原料として最適な海草類の限定)
海草類は、熱帯から寒帯まで分布しており、多くの種は熱帯域・亜熱帯域に分布するが、熱帯性のものは概して種子を形成する率(結実率)が低いため、本願発明の原料として特に適しているのは、温帯域に分布するアマモ科(Zosteraceae)の海草類であり、とりわけ分布頻度の高いアマモ、タチアマモ、コアマモ、オオアマモ、スゲアマモ等のアマモ属(Zostera)の海草類である。
これらの中で藻場作りの観点から種子を収穫したり、栽培したりする技術開発が先行しているアマモ(Zostera marine)が特に、原料として適している。
さらに海草類には多年生と一年生の株が存在するが、種子の形成率が高いという点で一年生の株が適している。即ち、アマモには、地域特性として多年生の群落の他に一部例外的に1年生と呼ばれる群落が繁殖している地域があり、前者の多年生のアマモは、主に根から新たな株が形成されて、繁殖を維持するのに対し、後者は毎年根を含めて草体全体が枯死してしまうため、基本的に種子により繁殖を維持する特徴がある。
このため、多年生のアマモ群落では、種子を形成する花株の形成率が2-36%程度と低いのに対し(非特許文献19)、一年生のアマモは基本的にほぼ全ての株が種子を形成することとなる。
従って、一年生のアマモが繁殖する地域を、種子を収集するための適地として選択することが有利である。
一年生のアマモが広範囲に繁殖する地域は、岡山県瀬戸内市日生町地区(非特許文献20−23)や神奈川県小田和湾(非特許文献21、22)など国内でも非常に限られた場所にしか存在しない。図1にアマモの生活史を非特許文献21より引用して示す。
以降は、海草種子の中で最も原料として好適なアマモの種子を事例で技術の詳細を説明する。
アマモは、漁業関係者が藻場作りを目的として、アマモ種子の収集と播種をしていることから、アマモの採取は、一般に各都道府県の条例で禁止されている。
しかし、一旦、藻場が育成してしまえば、その維持に必要とされるアマモの種子は、藻場で結実する種子の一部であり、残りの大部分の種子は、他地域での藻場育成に利用されない限り、海中で朽ち果てているのが現状である。
本発明は、このような未利用のアマモ種子の有効利用という側面も有している。
しかし、アマモは水中に繁茂している上、その種子は平均で長さが3.8mm、直径が2.0mmの微小なサイズであるため、醸造試験に必要な量を集めることは大変困難である。さらに、種子を一定の量として集めることができても、図2に示されるようにアマモ種子にはその周囲に花穂(かすい)と呼ばれる構造が存在する(非特許文献22)ため、米でいうところの脱穀に相当する処理をして精製することが必要となる。
(種子の収集方法と脱穀様処理の解決)
上述した一年生のアマモが広範囲に繁殖する日生町では、20年以上前から漁業関係者が、藻場作りを目的として、アマモ種子の収集と播種をしており、特に脱穀様処理の方法は、米の場合と異なり機械を用いないユニークな手法である。即ち、種子を実らせた花株を漁船の上から刈り取って、メッシュ袋(目合い1mm)に収容し、海水中に数カ月間浸漬しておくことで、微生物やゴカイ類や巻貝類等のベントス生物により、花穂の部分が分解され、その後洗浄処理をすることで、種子の本体だけを比較的に簡単に精製して収集することが可能である。かかる方法は、そのまま酒造用途に適用可能である。
(種子の収穫の適期)
種子を収穫する時期は、6月中旬から下旬が好ましい。種子の結実数と1粒の種子内のデンプン含量がこの時期に最大になるからである(非特許文献20)。
本実施例で使用した種子の成分分析をおこなった結果、43.3%(乾燥種子、重量換算)という高いデンプン含量が確認された。
(不純物の除去)
しかし、漁業者により播種の目的で収集されたアマモ種子は、海水中に数カ月間も浸漬処理して脱穀様処理をしたものであるため、小さなサイズのゴカイ類や巻貝類が多数(少なくとも30個体以上/kg種子)混入しており、そのままでは、酒類の原料として適さない。
本願発明者は、水道水をかけ流ししながら、比重の小さいゴカイ類を洗い流し、さらに比重の大きい巻貝類は、公知の比重差を利用する選別機で容易に分離できるが、少量であれば手作業でもこれらを取り除くことができ、ほぼ純粋なアマモ種子を得ることができる。
なお、ゴカイ類は、数個体残存しているだけで、これを発酵させた場合に酒類の風味を大きく損ねてしまうが、小さな個体も多いため、全個体を除外するのはなかなか困難である。
このような場合は、100L 水槽にアマモ生種子3kgとアミメハギなど小さな魚30匹を収容し、海水をかけ流しするか或いはエアレーションを強めにかけて酸素不足で魚が死亡するのを避けながら、1日〜3日間放置すれば、魚が残留する小さなゴカイ類を餌として捕食してくれる。
(乾燥処理と保存)
海草種子は、生の状態でも発酵の原料として使用できる可能性が高いと考えられるが、計画的な生産のためには、保存が可能な乾燥体として使用するのが有利である。本願発明の実施例では、乾燥手段として凍結乾燥処理を用いたが、熱風乾燥、冷風乾燥、天日乾燥等、一般的な乾燥手段を用いることが可能である。
乾燥しないで生のまま使用する場合には、海水もしくは食塩濃度3-8%(wt/wt)の水に浸漬した状態で、10℃以下で保存すれば半年以上保存することができる。
この時、海草種子より粒径の大きい(5mm以上)活性炭を添加しておくことにより、雑菌の繁殖を抑制することができる。なお、播種の目的で収集されたアマモ種子の保存では、種子の発芽能力を保持するため、水温15-20℃で塩分3.3%が好適とされているのに対し、本願発明では、種子の呼吸活性が原因で起こるでんぷんの消費の抑制が優先されることから10℃以下とする必要がある。
(糖化処理)
次にアマモの乾燥種子を、各種酵素液を使用して糖化処理した結果、グルコアミラーゼ(エキソグルカナーゼ)及びキシラナーゼを主な活性として保有する市販ヘミセルラーゼが有効に作用し、10.3%の濃度のグルコースを含有する糖化液を得られることが判明した。
ただし、アマモ種子にヘミセルラーゼを作用させて得た糖化液には、分析の結果、キシランが検出されなかったことから、キシランの一種と推定される表皮は前記酵素で分解されなかったものと見られる。
本願発明では、ミキサー等で種子を物理的に破砕する前処理を施すことで種子デンプンの糖化が可能としている。この糖化液のグルコースの濃度は、従来の報告(例えば非特許文献17では、糖化液中のグルコースとガラクトースの合計濃度が2.28%以下)に比べ、画期的に高い濃度である。
糖化のための温度条件は、15℃〜55℃の範囲、好ましくは50〜55℃が適する。酵素の添加量は、仕込み液(種子と水分を合計した重量)に対し、0.01〜5%、好ましくは0.1〜1%の重量が適する。
(発酵処理)
次に、この糖化液に酵母を加えてエタノール発酵させる。発酵のための使用に適する菌種はSaccharomyces cerevisiaeの酵母であって、種子懸濁液に成育可能であれば、どの菌株でも使用できるが、とりわけ好適なのは、日本醸造協会から分譲されている協会7号株(K7株と略記)である。K7株はアマモ種子糖化液の中での迅速で安定的な成育能とエタノールの産生能に優れ、この株を使用することによりエタノール濃度の高い産生物を得ることができる。
本酵母株の全培養液を発酵仕込み液に対して、容量換算で0.001%から1%の分量、好ましくは0.01%から1%の分量として種菌として添加し、培養することでエタノール発酵を達成できる。
発酵温度は、5℃〜37℃の範囲、好ましくは10℃〜25℃が好ましい。
発酵期間は5日間から6カ月程度であるが、最適な発酵期間は、発酵温度と関連して決まる。例えば最初の数日間(実施例では5日間)は、酵母の増殖を促すために、35℃で培養し、その後、発酵産物の酸化をできるだけ抑制するために、低温5℃―23℃に条件を変えるなど工夫することが好ましい(実施例では23℃で10日間)。
風味の点からいえば、20℃以下の低温で酸化を抑えながら長期間発酵させることが好ましい。
本願発明で得られた発酵飲料の風味は、麦芽100%のビールに少し似ているが、モルト感がこれよりも数倍強く、味が濃いというのが第一の特徴である。またイオウ成分に由来すると推定される磯の香りが、ほんのりと感じられ、海のイメージを想起させる風味を有する。日本酒に例えると、アミノ酸や有機酸に由来すると推定される深みのある味を呈し、吟醸酒よりも純米酒に近い口当たりを有する。エタノール濃度を13%以上にした発酵産物は、甘みが少なく超辛口の風味を有するが、好みにより発酵の度合いを変え、グルコースなどの還元糖を適度に残存させたものを醸造するのがよい。
(ろか、蒸留、食酢原料)
得られた醸造産物を製品化するためのろ過処理は基本的に日本酒と類似の手法を用いることができる。
また、スピリッツとして利用するための蒸留手段は、焼酎と類似の手法を使用できる。
食酢原料として使用する場合も、米酢と同様の手法により、酢酸菌を接種して培養することにより、エタノールを酢酸に変換して利用ができる。
アマモの場合には、アマモ草体に種子よりも少ないもののシュークロースがエタノールに変換可能な糖質として含まれており、原料価格も草体の方が安いため、アマモ種子とアマモ藻体を等量(1:1)の割合でブレンドした原料を使用し、発酵産物のエタノール濃度が5%となるように調製して発酵させることが、コスト面から有利である。種子と草体のブレンド材料を使用する場合には、糖化の際に、エキソグルカナーゼだけでなく、セルラーゼとヘミセルラーゼを併用して使用することが有効である。
本発明のエタノール発酵産物は、エタノール濃度が5%以上であるためそのまま酒類としての使用ができる。例えば、糖化処理後の上清のみを使用して単行複発酵をさせれば、エタノール濃度が6%前後のビール様飲料、上清のみでなく種子固形分を残した形態で並行複発酵をさせれば、エタノール濃度が10%を超える日本酒様飲料、発酵後にさらに蒸留処理を行えば、エタノール濃度がさらに高い焼酎様飲料(スピリッツ)の製造が可能である。また、酢酸菌を使用してさらに発酵を進めることにより、醸造酢の原料として使用することもできる。
アマモの生活史を説明した図面 アマモ植物体の構造を示した図面 アマモ種子の収集と前処理方法を示す図面 アマモ種子からの単行複発酵及び並行複発酵による酒類の製造工程を示した図面
最初に、アマモ種子の収集と前処理の方法を図3に示す。また種子を糖化、発酵させるプロセスの概略について、単行複発酵の手法と並行複発酵の手法を例としてとりあげ、具体的な数量例を入れて図4に示す。なお、ここで示すのは一例であり、方法は材料の種類、量等の条件に合わせて適宜変化させることができることはいうまでもない。
(アマモ種子の収集と精製)
種子は、6月に岡山県備前市日生町の一年生を中心とするアマモ群落繁殖地において採集した。まず船上から花枝と呼ばれる種子を結実させた草体約100kgを採集した。次に採集した花枝を、網目サイズが1mmのポリプロピレン製たまねぎ袋に約20kgずつ分けて収容し、牡蠣筏の竹に紐でくくりつけて、海水中に浸漬した。5ヶ月後にこの袋を回収し、海水中で軽く振って、分解物を粗く除去した後、陸上で水道水を掛けながら、分解物をさらに丁寧に振い落した。これをさらにプラスチックのバットに移し、水道水をかけ流しながら、混入しているゴカイ類と比重の小さい未熟の種子を浮かせて、洗い流して除去した。次に攪拌しながら、比重の重い小石、巻貝類の殻類をバットの底に残して種子だけを別のバットに移した。
このようにして生の種子3.1kgを得た。これを-70℃で凍結後、1晩真空凍結乾燥し、常温で長期保存可能な乾燥種子1.16kgを得た。種子の基本性状を表1に示す。
成分分析の結果、アマモ種子は、一般成分が、タンパク質10.1%、炭水化物(一般に糖質含量とほぼ等しいと考えられる)83.5%、脂質1.3%、灰分 5.1%であり、こむぎやとうもろこしに匹敵する炭水化物を含有していることが明らかとなった(表2)。
さらにグルコアミラーゼを作用させて生成してくるグルコース量を酵素法により定量することにより、でんぷん含量を推定した結果、乾燥種子重量の43.3%がでんぷんと推定された(表1)。
なお、種子を硫酸加水分解して、生じる糖化液の主成分は、グルコースとキシロースであった。このことから種子表面の皮は、キシランの一種でできていると推定された。一方、アマモ種子に対してキシラナーゼを主な活性とするヘミセルラーゼ(天野エンザイム社製、セルラーゼA「アマノ」3)とグルコアミラーゼ(天野エンザイム社製、グルクザイムAF6)からなる混合酵素を作用させて得た糖化液を分析したが、キシロースは検出されなかった。
このことから、種子表皮の分解は、市販の酵素剤によっては、かなり困難であると推定された。そこで、アマモ種子でんぷんの糖化処理に際しては、種子の表皮をあらかじめ物理的に破砕しておくことが重要であると考えられる。具体的には、例えば乾燥種子200gを野菜カッター(National製、MK-K58)で、3分間処理し、粉末化して原料として使用した。なお、でんぷん量の測定は、種子粉末を適当な濃度に懸濁後、グルコアミラーゼで37℃2時間処理して産生されてくるグルコースを定量し、常法によりこれに0.9をかけて算出した。0.9を乗さないグルコース全含量を示す値は48.1%(計算根拠:43.3%/0.9=48.1% )である。これは、こめに含まれるこむぎやとうもろこしに含まれるでんぷんの量60-70%に比べ、10%ほど低い値であった。アマモ種子中のでんぷんの含量は最大で55%と報告(非特許文献19)もあり、種子を6月の最適時期に収穫し、脱穀様処理する際の海水浸漬時間を5カ月より短くすることで、でんぷん含量を50-60%程度にすることが期待できる。
(アマモ乾燥種子の糖化処理その1)
アマモ乾燥種子2gを直径16mmのガラス製試験管に収容し、蒸留水を4mL(=種子重量の2倍相当)と表3に示した各種酵素を0.06g(仕込み液の1%)加え、ボルテックス式撹拌装置で均一に懸濁した後、50℃のインキュベーター中で、試験管を床面に対して30度に傾斜させた状態で120rpmで往復振とうさせながら、時間酵素分解を実施した。なおメーカー資料によれば、使用した各酵素の主な活性は、セルラーゼ12S(ヤクルト薬品工業社製)の場合で、ろ紙破壊力(ヤクルト法)12000ユニット/g以上、セルラーゼA「アマノ」3(天野エンザイム社製)の場合で、エンド型グルカナーゼを主とする繊維消化力(天野法)30000ユニット/g以上、セルラーゼT「アマノ」4(天野エンザイム社製)の場合で、エキソ型グルカナーゼを主とする繊維消化力(天野法)4000ユニット/g以上、ヘミセルラーゼ「アマノ」90(天野エンザイム社製)の場合でキシラナーゼ力(天野法)90000ユニット/g以上、グルクザイムAF6(天野エンザイム社製)の場合で、グルコアミラーゼを主とするでんぷん糖化力(既存添加物自主規格法)1600ユニット/g以上、グルク100G(天野エンザイム社製)の場合で、α-アミラーゼ力(国税庁法)350000ユニット/g以上およびグルコアミラーゼ力(国税庁法)60000ユニット/g以上である。試験の結果、グルクザイムAF6(グルコアミラーゼ)が有効であり、96時間でグルコース産生量が最高の103.4g/L(10.3%) に達した。
(アマモ種子の単行複発酵によるエタノール製造)
本実施例では、糖化と発酵を別々のタンクで実施する単行複発酵の例を示す。
並行単発酵試験では、まずアマモ種子粉末12g、蒸留水24mL、グルクザイムAF6を0.24g、セルラーゼA「アマノ」3を0.042g、ヘミセルラーゼ「アマノ」90を0.042g配合し、50℃で96時間処理し、グルコース濃度が92g/L(9.2% )の糖化液を得た。この糖化液を、注射筒(滅菌済)を利用してろ過滅菌(0.22μm)した後、ポリプロピレン製遠心チューブ(滅菌済)に1.3g(=1.2mL)ずつ収容した(各試験区2本立て)。これに酵母S. cerevisiae NBRC10217T株及び同K7株の菌体懸濁液(前培養のサブロー寒天平板培地上に形成されたコロニーをかきとって、0.85%滅菌生理的食塩水に懸濁し、660nm波長で測定した濁度が0.5になる濃度で調製)を、60μL接種した(酵母の初発濃度が約104細胞/gで調製)。37℃で5日間、その後23℃で10日間(合計15日間)培養した結果、表4に示すようにエタノール濃度が平均で、61.7g/L(6.2%、NBRC10219T株)及び65g/L(6.5%、K7株)生産された。なお、酵母を接種していない対照区では、エタノールはほとんど産生されておらず(0.4g/L)、グルコースも全量残存していた。
(アマモ種子の並行複発酵によるエタノール製造)
本実施例では、糖化と発酵を同じタンクで実施する並行複発酵の例を示す。
アマモ乾燥種子500gを2L 容積のガラスビーカーに収容し、蒸留水を1Lと酵素グルクザイムAF6 を7.5g(仕込み液の0.5%)、ヘミセルラーゼ「アマノ」90 を1.5g(仕込み液の0.1%)加え、ガラス棒でかき混ぜ均一に懸濁した後、ビーカー上面にラップをかけた状態で、50℃のインキュベーター中で糖化処理を24時間実施した。最初の9時間は1時間ごとに1分間程度ガラス棒でかき混ぜ、分解を促進した。なお、撹拌については、ガラス棒を用いた手作業による間欠的撹拌ではなく、マグネット撹拌子を投入してマグネット撹拌器により連続的撹拌を行えばより効果的である。この糖化液を100℃20分の条件で間歇滅菌(24時間以上放置してから2回目のオートクレーブ処理を実施すること)してから、並行複発酵試験に使用した。本酵素糖化液に含まれるグルコースの量は、オートクレーブ前に97.6g/L(9.8%)、オートクレーブ後に87.3g /L(8.7%)であった。この糖化液を、表5のように50gずつ8本(4試験区x2本)と500gずつ2本に分注し、実施例4と同様に調製した酵母懸濁液を1%の容量接種し、発酵させた。その結果、表5に示すように酵母K7株を使用して49日間培養したケースで、15日めでエタノール濃度を平均で130.4g/L(13.0%)、最高値で145.6g/L(14.6%)を記録した。酵母の菌株間で比較すると、S. cerevisiaeの標準株であるNBRC10217T株に比べ、K7株の方がエタノールの産生に優れ、特に5日間程度の短期間での発酵能力に優れることが認められた。なお、発酵容器の蓋を閉めて培養するか、開いて培養するかでエタノール産生濃度に違いはなかった。
まず、海産植物資源を原料とするお酒として、産業利用することが可能である。当面、アマモ種子の量的確保が市場規模を決める制限要因となるが、アマモの植物育種(選抜育種や遺伝子組み換え育種)をすることで、将来的には種子の収穫量の向上が期待される。また塩田跡やエビ養殖場跡等の沿岸遊休地を有効活用し、稲作水田のように海草水田を造営し、アマモの大量栽培を実施することで、種子の収量を大幅に増加できると期待され、従って海草を原料とした酒類の市場規模を拡大できると見込める。

Claims (9)

  1. 海草種子からなる原料を、糖化処理した後、酵母を使用して発酵させて得られるエタノール濃度が5%を超えるアルコール産物。
  2. 原料に海草の草体が含まれることを特徴とする請求項1記載のエタノール濃度が5%を超えるアルコール産物。
  3. 海草が一年生のアマモ(Zostera marina)であることを特徴とする請求項1または2記載のエタノール濃度が5%を超えるアルコール産物。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに記載されるエタノール濃度が5%を超えるアルコール産物に酢酸菌を添加しさらに発酵させて得られる造嬢酢。
  5. 海草種子を、その糖質成分を糖化処理した後、酵母を使用して発酵させることを特徴とするエタノール濃度が5%を超えるアルコール産物の製造法。
  6. 海草が一年生のアマモ(Zostera marina)であることを特徴とする請求項5のエタノール濃度が5%を超えるアルコール産物の製造法。
  7. 糖化処理として、アマモ種子の難分解性の表皮を物理的に破壊して内容物である生でんぷんを露出させるとともに、生でんぷんを蒸しゃすることなく、グルコアミラーゼを含む酵素剤により糖化することを特徴とする請求項5または6記載のエタノール濃度が5%を超えるアルコール産物の製造法。
  8. 発酵のための酵母としてSaccharomyces cerevisiae 日本醸造協会7号株を使用することを特徴とする請求項5ないし7の何れかに記載のエタノール濃度が5%を超えるアルコール産物の製造法。
  9. 請求項5ないし8のいずれかに記載されるアルコール産物の製造法において、酵母を使用して発酵させる工程を、上清だけでなく、原料に由来する固形物を残したままの状態で発酵させ、並行複発酵を行わせることとした、エタノール濃度が10%以上のアルコール産物の製造法
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FR3089233A1 (fr) * 2018-11-29 2020-06-05 IFP Energies Nouvelles Procede de traitement d’une biomasse comprenant des macro-algues cellulosiques

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