JP2013181137A - 炉内温度分布の推定方法および推定装置 - Google Patents

炉内温度分布の推定方法および推定装置 Download PDF

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Abstract

【課題】限られた個数の温度センサによる温度測定から全体の炉内温度分布を推定する炉内温度分布の推定方法を提供すること。
【解決手段】本発明の炉内温度分布の推定方法は、物理モデルに基づいて成形コークス製造設備の炉内高さ方向の温度分布を推定する推定ステップ(ステップS1)と、温度センサにより成形コークス製造設備の炉内高さ方向の特定位置の温度情報を取得する測定ステップ(ステップS2)と、物理モデルのパラメータを摂動させた新たな物理モデルから算出される温度分布の変化量を算出する摂動ステップ(ステップS3)と、推定ステップにより推定された温度分布と測定ステップにより取得した特定位置の温度情報との差を、摂動ステップにより算出した温度分布の変化量の線型結合により補正する補正ステップ(ステップS4)とを含む。
【選択図】図7

Description

本発明は、フェロコークスに代表される成形コークスを生産する成形コークス製造設備における炉内温度分布の推定方法および推定装置に関する。
炭材(石炭)と鉄鉱石とを混合して成形した成形物を乾留することによって製造されるフェロコークスは、還元された鉄鉱石の触媒効果によってフェロコークス中のコークスのCO反応性を高めることができ、それに伴う熱保存帯温度の低下によって還元材比を低下させることができる。このようなフェロコークスを製造する技術として、石炭と鉄鉱石の成形物を竪型の乾留炉にて乾留する方法が知られている。
上記のような、フェロコークスに代表される成形コークスを生産する成形コークス製造設備は、竪型の乾留炉の炉頂から練成および成形された未乾留の成形炭を装入し、予熱過程、乾留過程、および冷却過程を経て炉底から成形コークスが排出される構成を有する。この成形コークス製造設備の予熱過程、乾留過程、および冷却過程における成形炭の温度履歴は、成形炭の品質に大きな影響を与えるので、炉の高さ方向の温度分布が適正に制御された状態に保たれることが重要である。
例えば、特許文献1には、冷却過程に用いた冷却ガスを予熱過程に用いる低温ガスとして利用しながら、竪型の乾留炉の炉内温度分布を適正に制御するフェロコークスの製造方法および製造設備が記載されている。
特開2011−057970号公報
しかしながら、上述のような成形コークス製造設備では、設置可能な温度センサの数は限られているので、温度センサが設置されていない部分の炉内温度が不明となる。その結果、炉内温度分布を適正に制御する手段があっても、乾留炉の高さ方向の温度分布の制約に正確に適応した制御をすることができなかった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、限られた個数の温度センサによる温度測定から全体の炉内温度分布を推定する炉内温度分布の推定方法および推定装置を提供することにある。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の炉内温度分布の推定方法は、成形コークス製造設備の炉内高さ方向の温度分布を物理モデルに基づいて推定する炉内温度分布の推定方法において、前記成形コークス製造設備に設けられた温度センサから取得された限られた温度情報に基づいて、前記物理モデルによる温度分布を補正することを特徴とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の炉内温度分布の推定装置は、上記炉内温度分布の推定方法を適用することを特徴とする。
本発明に係る炉内温度分布の推定方法および推定装置は、限られた個数の温度センサによる温度測定から全体の炉内温度分布を推定することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る炉内温度分布の推定方法を適用する成形コークス製造設備の構成を示す概略図である。 図2は、本発明の実施形態に係る炉内温度分布の推定方法における基礎とした物理モデルによる温度分布の補正の方法を示すブロック図である。 図3は、本発明の実施形態に係る炉内温度分布の推定方法におけるデータ同化の説明に用いる竪型乾留炉の4つ区分を示す図である。 図4は、本発明の実施形態に係る炉内温度分布の推定方法におけるデータ同化の説明に用いる温度センサの設置位置の例を示すグラフである。 図5は、ガス大気間熱交換係数を摂動させた場合における、ガスの温度分布の変化量および固体の温度分布の変化量を示すグラフである。 図6は、上記説明した本発明の実施形態である炉内温度分布の推定方法を実現する炉内温度分布の推定装置の構成例を示すブロック図である。 図7は、本発明の実施形態である炉内温度分布の推定方法を示すフローチャートである。 図8は、本発明の実施形態に係る炉内温度分布の推定方法におけるデータ同化を適用した場合のそれぞれのゾーンにおけるガス大気間熱交換係数の推定状況を示すグラフである。 図9は、本発明の実施形態に係る炉内温度分布の推定方法におけるデータ同化を適用した場合としない場合とで、真の温度分布からの乖離度を比較したグラフである。
以下に、本発明の実施形態に係る炉内温度分布の推定方法および推定装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
〔成形コークス製造設備〕
図1は、本発明の実施形態に係る炉内温度分布の推定方法を適用する成形コークス製造設備の構成を示す概略図である。図1に示されるように、本発明の実施形態に係る炉内温度分布の推定方法を適用する成形コークス製造設備1は、成形炭を乾留して成形コークスを生産する竪型乾留炉2を主要構成要素として備え、さらにこの竪型乾留炉2に付随するその他の構成要素を備える。
竪型乾留炉2は、竪型乾留炉2の炉頂から順に低温乾留ゾーンと高温乾留ゾーンと冷却ゾーンとに分離され、低温乾留ゾーンと高温乾留ゾーンとにより成形炭を乾留し、冷却ゾーンで乾留された成形コークスの冷却を行なう。低温乾留ゾーンと高温乾留ゾーンとの間には、低温ガス吹き込み羽口3aが設けられ、低温ガス吹き込み羽口3aから低温ガスを吹き込むことにより、低温乾留ゾーンと高温乾留ゾーンとが分離される。高温乾留ゾーンと冷却ゾーンとの間には、高温ガス吹き込み羽口3b、3dが設けられ、高温ガス吹き込み羽口3b、3dから高温ガスを吹き込むことにより、高温乾留ゾーンと冷却ゾーンとが分離される。
冷却ゾーンには、冷却ガス吹き込み羽口3cが設けられ、冷却ガス吹き込み羽口3cから吹き込まれた冷却ガスにより、竪型乾留炉2に冷却ゾーンが作られる。
竪型乾留炉2の炉頂には、炉内ガスを排出するための炉内ガス排出口4が設けられている。炉内ガス排出口4に接続される排出ガス配管には、第1ガス冷却装置としてのスプレータワー5と第2ガス冷却装置としてのガスクーラー6と炉内ガス中の塵(主にタールミスト)を除去する電気集塵機7が接続されている。これらスプレータワー5、ガスクーラー6、および電気集塵機7を経由した炉内ガスは、発生ガスとして回収され、精製および脱硫後、燃料として使用される。さらに、回収された発生ガスの一部は、竪型乾留炉2に吹き込まれる低温ガス、高温ガス、および冷却ガスに再利用される。なお、炉内ガス中の液体成分は、スプレータワー5およびガスクーラー6にて回収され、安水とタールに分離されて安水用タンク8aおよびタール用タンク8bに保管される。
上述のように回収された発生ガスの一部は、竪型乾留炉2に吹き込まれる低温ガス、高温ガス、および冷却ガスに再利用される。高温ガス加熱炉9により加熱された発生ガスは、高温ガス吹き込み羽口3b、3dに導かれ、高温ガス吹き込み羽口3b、3dから竪型乾留炉2に吹き込まれる。また、低温ガス加熱炉10により加熱された発生ガスは、低温ガス吹き込み羽口3aに導かれ、低温ガス吹き込み羽口3aから竪型乾留炉2に吹き込まれる。さらに、回収された発生ガスの一部は、加熱することなく冷却ガス吹き込み羽口3cに導かれ、冷却ガス吹き込み羽口3cから竪型乾留炉2に吹き込まれる。
さらに、竪型乾留炉2の炉頂付近には、成型炭の装入口12が設けられ、竪型乾留炉2の炉底には、成形コークスを切り出す排出口13が設けられている。竪型乾留炉2にて乾留される成型炭は、装入口12から装入されて竪型乾留炉2の内部に充填され、排出口13から乾留された成形コークスが一定の速度で切り出されることにより、成型炭が竪型乾留炉2に所定時間の在炉をする。
〔炉内温度分布の物理モデル〕
本発明の実施形態に係る炉内温度分布の推定方法を適用する成形コークス製造設備1の竪型乾留炉2における炉内温度分布の物理モデルの例の一つとして、物質収支および熱収支から成る物理モデルを用いて本発明の実施形態に係る炉内温度分布の推定方法を説明する。
本発明の実施形態に係る炉内温度分布の推定方法に用いる物質収支は、下記式(1)(2)にあるように、固体の一部がガス化するという物理モデルである。
Figure 2013181137
一方、熱収支については、下記式(3)(4)にあるように、ガスと固体間との熱交換、ガスと設備周辺大気との熱交換、および反応熱から構成させる。
Figure 2013181137
これを適当な方法(たとえば、スハス V.パタンカー著「コンピュータによる熱移動と流れの数値解析」(森北出版))で離散化したものが下記式(5)である。なお、下記式(5)を求めるに際し、完全陰解法による離散化を行っている。
Figure 2013181137
s(k)、Tg(k)は、それぞれ、タイムステップkにおける竪型乾留炉2の高さ方向における固体およびガスの温度分布を表すベクトル量である。要素数は離散化のメッシュ数に対応する。なお以下で用いる実施例では、このメッシュ数を120個とした。また、u(k)は、操作量を意味し、本モデルでは各羽口から竪型乾留炉2に吹き込まれるガスの温度である。なお、上記式(1)〜(5)において使用した記号は以下を意味する。
Figure 2013181137
〔モデルの同化〕
本発明の実施形態に係る炉内温度分布の推定方法は、例えば上記炉内温度分布の物理モデルを基礎として、この物理モデルとは異なる条件にて仮想の真値シミュレーションを行う。そして、この仮想の真値シミュレーションの部分的な情報を用いて、基礎とした物理モデルによる温度分布を補正する。図2は、本発明の実施形態に係る炉内温度分布の推定方法における基礎とした物理モデルによる温度分布の補正の方法を示すブロック図である。また、以下の説明では、この基礎とした物理モデルによる温度分布を補正することを、データとモデルとを同化させるという意味で「データ同化」と呼ぶ。
以下、本発明の実施形態に係る炉内温度分布の推定方法におけるデータ同化の説明では、竪型乾留炉2を4つに区分けし、この竪型乾留炉2に6箇所の温度センサが設けられている例が用いられる。図3は、本発明の実施形態に係る炉内温度分布の推定方法におけるデータ同化の説明に用いる竪型乾留炉2の4つ区分を示す図である。ここで云う4つの区分とは、図3(または図1)に示した各羽口間(低温ガス吹き込み羽口3a、高温ガス吹き込み羽口3b、3d、冷却ガス吹き込み羽口3c)のゾーンのことであり、下からゾーン1〜4と名付ける。そして、この各ゾーン1〜4におけるガス固体間熱交換係数をα、α、α、αとし、ガス大気間熱交換係数をh、h、h、hとする。
図4は、本発明の実施形態に係る炉内温度分布の推定方法におけるデータ同化の説明に用いる温度センサの設置位置の例を示すグラフである。すなわち、本発明の実施形態に係る炉内温度分布の推定方法におけるデータ同化の説明では、6箇所の温度センサが、図4における丸印の位置に設けられているものとする。つまり、以下の説明では、図4における丸印の位置の温度のみが測定可能であると仮定においてデータ同化を行う。
本データ同化の例では、炉内温度分布の物理モデルを基礎として、この物理モデルとは異なる条件にて仮想の真値シミュレーションを行うために、この物理モデルが含むパラメータのうちガス大気間熱交換係数h、h、h、hを摂動(好適には1%程度の摂動)させた物理モデルを新たに構成する(式(1)〜(5)参照)。このガス大気間熱交換係数h、h、h、hを摂動させた新たな物理モデルによっても、竪型乾留炉2の高さ方向における固体およびガスの温度分布Ts1(k)、Ts2(k)、Ts3(k)、Ts4(k)、Tg1(k)、Tg2(k)、Tg3(k)、Tg4(k)が算出される。
これら竪型乾留炉2の高さ方向における固体およびガスの温度分布Ts1(k)、Ts2(k)、Ts3(k)、Ts4(k)、Tg1(k)、Tg2(k)、Tg3(k)、Tg4(k)と、基礎となった物理モデルによる竪型乾留炉2の高さ方向における固体およびガスの温度分布Ts(k)、Tg(k)との差(つまり変化量)を縦に並べたベクトルとして、a、a、a、aを定義する。すなわち、a、a、a、aは、下式のように定義される。
Figure 2013181137
つまり、a、a、a、aは、竪型乾留炉2の高さ方向の分割にかかるメッシュ数の2倍の要素数の縦ベクトルである。なお、図5は、ガス大気間熱交換係数をh、h、h、hを1%摂動させた場合における、ガスの温度分布の変化量(上段グラフ)および固体の温度分布の変化量(下段グラフ)を示すグラフである。すなわち、図5の上段グラフは、ベクトル量であるTg1(k)、Tg2(k)、Tg3(k)、Tg4(k)の各要素をプロットしたグラフであり、図5の下段グラフは、ベクトル量であるTs1(k)、Ts2(k)、Ts3(k)、Ts4(k) の各要素をプロットしたグラフである。
次に、上記のように定義されたa、a、a、aの線形結合によって、観測値とシミュレーションの値との誤差を補正することを考える。
推定の対象である、竪型乾留炉2内の真のガスおよび固体の温度分布を、上記と同様にメッシュ数の2倍の要素数の縦ベクトルとしてxtrとする。一方、物理モデルによるシミュレーションの結果のガスおよび固体の温度分布を、同様にメッシュ数の2倍の要素数の縦ベクトルとしてxsimとする。また、ガスおよび固体の温度分布の中で、どこの温度を観察できるかを表す行列をCとする。すなわち、行列Cは、温度センサの個数を行数とし、メッシュ数の2倍である2Nを列数とする行列であり、行列Cの要素のうち、i番目の温度センサが位置jの温度を測定するときC[i][j]=1とし、それ以外の要素をゼロとする。
上記のように定義した場合、温度センサにより測定された温度分布をyobsとし、この温度センサの位置における物理モデルによるシミュレーションの結果のガスおよび固体の温度分布をysimとすると、下式が成り立つ。
Figure 2013181137
以下、このyobsとysimとの誤差を、a、a、a、aの線形結合によって補正する方法を説明する。
、a、a、aの線形結合における各項の係数をw、w、w、wとし、物理モデルによるシミュレーションの結果のガスおよび固体の温度分布xsimに補正項として加え、行列Cを掛けたものを計算補正値とyする。すると、この計算補正値とyは、下式で表される。ただし、下式においてAは、a、a、a、aを横に並べて行列表記したものであり、wは、w、w、w、wを縦に並べてベクトル表記したものである。
Figure 2013181137
上記計算補正値yと温度センサにより測定された温度分布yobsとの差が最小になるような係数w、w、w、wを、最小二乗法で求める。そして物理モデルによるシミュレーションの結果のガスおよび固体の温度分布xsimに補正項として加えることにより、データ同化後の温度分布xを算出する。下式は、この計算を数式で表現したものである。
Figure 2013181137
上記計算から解るように、データ同化後の温度分布xは、物理モデルによるシミュレーションの結果のガスおよび固体の温度分布xsimと、ガス大気間熱交換係数h、h、h、hを摂動させた新たな物理モデルから算出される温度分布の変化量を表すa、a、a、aと、ガスおよび固体の温度分布の中で、どこの温度を観察できるかを表す行列Cと、温度センサにより測定された温度分布yobsとを用いて計算される。すなわち、上記計算に基づけば、限られた温度センサによる温度測定から、物理モデルによる全体の炉内温度分布の補正をすることができることが示された。
〔炉内温度分布の推定装置〕
図6は、上記説明したデータ同化による炉内温度分布の推定方法を実現する炉内温度分布の推定装置の構成例を示すブロック図である。ただし、本発明の実施は以下に説明する構成の推定装置限るものではない。
図6に示すように、本発明の実施形態である炉内温度分布の推定方法を実現する炉内温度分布の推定装置100は、情報処理装置101、入力装置102、および出力装置103を主な構成要素として備え、成形コークス製造設備1から取得される炉内高さ方向の特定位置の温度情報を用いて、炉内高さ方向の全体の炉内温度分布の推定する。
情報処理装置101は、パーソナルコンピュータやワークステーション等の汎用の情報処理装置によって構成されることができ、RAM111、ROM112、およびCPU113を備える。RAM111は、CPU113が実行する処理に関する制御プログラムや制御データを一時的に記憶し、CPU113のワーキングエリアとして機能する。ROM112は、本発明の実施形態である炉内温度分布の推定方法を実現する推定プログラム112aと情報処理装置101全体の動作を制御する制御プログラムと制御データとを記憶している。CPU113は、ROM112内に記憶されている推定プログラム112aおよび制御プログラムに従って情報処理装置101全体の動作を制御する。入力装置102は、キーボード、マウスポインタ、テンキー等の入力装置によって構成され、情報処理装置101に対して各種情報を入力する際に操作される。出力装置103は、表示装置や印刷装置等の出力装置によって構成され、情報処理装置101の各種処理情報を出力する。
ROM112内に記憶されている推定プログラム112aは、上述の本発明の実施形態である炉内温度分布の推定方法を情報処理装置101に実行させるよう構成された一連の指令であり、推定プログラム112aによる指令に従った炉内温度分布の推定装置100は、成形コークス製造設備1から取得される炉内高さ方向の特定位置の温度情報を用いて、炉内高さ方向の全体の炉内温度分布の推定する。
〔炉内温度分布の推定方法〕
図7は、本発明の実施形態である炉内温度分布の推定方法を示すフローチャートである。以下では、上記説明した炉内温度分布の推定方法を実現する炉内温度分布の推定装置の構成例を示すブロック図を参照しながら本発明の実施形態である炉内温度分布の推定方法を説明するが、本発明の炉内温度分布の推定方法の実施が、この炉内温度分布の推定装置により限定されるものではない。
図7に示されるように、本発明の実施形態である炉内温度分布の推定方法は、情報処理装置101が、物理モデルに基づいて成形コークス製造設備1の炉内高さ方向の温度分布を推定することから始まる(ステップS1)。この温度分布の推定は、例えば、上記式(1)〜(4)に記載の物理モデルによって算出される温度分布が用いられる。
次に、情報処理装置101が、成形コークス製造設備1に設けられた温度センサより成形コークス製造設備1の炉内高さ方向の特定位置の温度情報を取得する(ステップS2)。すなわち、情報処理装置101は、ステップS1で推定される高さ方向の全体炉内温度分布のうち、その一部の特定位置における実測値を取得することになる。
一方、情報処理装置101は、物理モデルのパラメータを摂動させた新たな物理モデルから算出される温度分布の変化量を算出される(ステップS3)。この摂動されるパラメータとしては、上述のように、例えばガス大気間熱交換係数が用いられる。また、物理モデルのパラメータを摂動させる方法としても、上述のように竪型乾留炉2の4つのゾーンに区分けし、各ゾーンにおけるガス大気間熱交換係数を摂動させる方法がよい。このように各ゾーンにおけるガス大気間熱交換係数を摂動させることにより、線型独立の算出される温度分布の変化量が得られる。
最終的に、情報処理装置101は、ステップS1により推定された温度分布と、ステップS2により取得した特定位置の温度情報との誤差を、ステップS3により算出した温度分布の変化量の線型結合により補正する(ステップS4)。この補正の方法は、上記式(6)のように、ステップS3により算出した温度分布の変化量の線型結合により、推定された温度分布と特定位置の温度情報との誤差に対する補正項を表現し、上記式(7)に記載の計算により、データ同化後の温度分布xを算出することにより行う。
〔シミュレーション〕
次に、本発明の本発明の実施形態に係る炉内温度分布の推定方法におけるデータ同化の効果を検証するためのシミュレーションについて述べる。以下で説明するシミュレーションでは、真値シミュレーションとして、ガス大気間熱交換係数をt=100においてゾーン1を0.7倍し、t=150においてゾーン3を0.6倍とする例を想定した(時刻tはタイムステップ数であり、本シミュレーションでは1ステップ20分としている)。一方、物理モデルについては元の値のままである。当然、このシミュレーション条件では、補正をしなければ真値の温度分布と物理モデルによる温度分布との間には乖離が生じる。
図8は、上記説明した本発明の実施形態に係る炉内温度分布の推定方法におけるデータ同化を適用した場合のそれぞれのゾーンにおけるガス大気間熱交換係数の推定状況を示すグラフである。なお、図8において、ノミナル値とは、元の物理モデルにおけるガス大気間熱交換係数の値のことである。図8に示されるように、本発明の実施形態に係る炉内温度分布の推定方法におけるデータ同化を適用した場合、ガス大気間熱交換係数の変動を正しく推定できることが解る。
また、図9は、本発明の実施形態に係る炉内温度分布の推定方法におけるデータ同化を適用した場合としない場合とで、真の温度分布からの乖離度(ガスおよび固体温度の平均推定誤差)を比較したグラフである。図9に示されるように、本発明の実施形態に係る炉内温度分布の推定方法におけるデータ同化を適用した場合の方が、適用しない場合に比較して、真値の温度分布の経時的変化に対してより正確に追従した推定を行えることが解る。
以上より、本発明の実施形態に係る炉内温度分布の推定方法は、成形コークス製造設備1に設けられた温度センサから取得された限られた温度情報に基づいて、物理モデルによる温度分布を補正するので、限られた個数の温度センサによる温度測定から全体の炉内温度分布を推定することができることが示された。
さらに、本発明の実施形態に係る炉内温度分布の推定方法は、物理モデルに基づいて成形コークス製造設備1の炉内高さ方向の温度分布を推定する推定ステップと、温度センサにより成形コークス製造設備1の炉内高さ方向の特定位置の温度情報を取得する測定ステップと、物理モデルのパラメータを摂動させた新たな物理モデルから算出される温度分布の変化量を算出する摂動ステップと、推定ステップにより推定された温度分布と測定ステップにより取得した特定位置の温度情報との差を、摂動ステップにより算出した温度分布の変化量の線型結合により補正する補正ステップとを含むことで、限られた個数の温度センサによる温度測定から全体の炉内温度分布を推定する方法を実現することができる。
また、本発明の実施形態にかかる炉内温度分布の推定方法は、摂動ステップにて摂動させる物理モデルのパラメータは、ガス大気間熱交換係数であることが好ましい。
1 成形コークス製造設備
2 竪型乾留炉
3a 低温ガス吹き込み羽口
3b 高温ガス吹き込み羽口
3c 冷却ガス吹き込み羽口
3d 高温ガス吹き込み羽口
4 炉内ガス排出口
5 スプレータワー
6 ガスクーラー
7 電気集塵機
8a 安水用タンク
8b タール用タンク
9 高温ガス加熱炉
10 低温ガス加熱炉
12 装入口
13 排出口
100 炉内温度分布の推定装置
101 情報処理装置
102 入力装置
103 出力装置
111 RAM
112 ROM
112a 推定プログラム
113 CPU

Claims (4)

  1. 成形コークス製造設備の炉内高さ方向の温度分布を物理モデルに基づいて推定する炉内温度分布の推定方法において、
    前記成形コークス製造設備に設けられた温度センサから取得された限られた温度情報に基づいて、前記物理モデルによる温度分布を補正することを特徴とする炉内温度分布の推定方法。
  2. 前記物理モデルに基づいて成形コークス製造設備の炉内高さ方向の温度分布を推定する推定ステップと、
    前記温度センサにより前記成形コークス製造設備の炉内高さ方向の特定位置の温度情報を取得する測定ステップと、
    前記物理モデルのパラメータを摂動させた新たな物理モデルから算出される温度分布の変化量を算出する摂動ステップと、
    前記推定ステップにより推定された前記温度分布と前記測定ステップにより取得した前記特定位置の温度情報との差を、前記摂動ステップにより算出した温度分布の変化量の線型結合により補正する補正ステップと、
    を含むことを特徴とする請求項1に記載の炉内温度分布の推定方法。
  3. 前記摂動ステップにて摂動させる物理モデルのパラメータは、ガス大気間熱交換係数であることを特徴とする請求項2に記載の炉内温度分布の推定方法。
  4. 成形コークス製造設備の炉内高さ方向の温度分布を物理モデルに基づいて推定する炉内温度分布の推定装置において、
    前記成形コークス製造設備に設けられた温度センサから取得された限られた温度情報に基づいて、前記物理モデルによる温度分布を補正することを特徴とする炉内温度分布の推定装置。
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