JP2013180497A - 鋼材溶接継手部の防食被覆方法及び装置 - Google Patents

鋼材溶接継手部の防食被覆方法及び装置 Download PDF

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Abstract

【課題】加熱処理しても被覆材が鋼材表面に対してずれたり剥れたりすることがなく、しかも金属製の割型のように被覆層を形成後に取り外す必要もない鋼材溶接継手部の防食被覆技術を提供する。
【解決手段】鋼材(鋼管20)外周面との間に密閉空間18を形成可能な、注入口14Aと排気口12Aとを有する絶縁体製カバー10を、溶接継手部22を含む所望長さ範囲の鋼材(20)の外周囲に装着し、前記注入口14Aより熱硬化性樹脂原料を前記密閉空間18に注入充填して硬化させ、硬化後の熱硬化性樹脂30と前記絶縁体製カバー10とにより前記鋼材(20)を被覆する。
【選択図】図5

Description

本発明は、鋼管、形鋼、棒鋼等の鋼材の溶接継手部へ被覆材を被覆する際に適用して好適な鋼材溶接継手部の防食被覆方法及び装置に関する。
一般に鋼材を溶接する場合、端部を互いに突き合せた状態で溶接する突き合せ溶接が行われている。
例えば、ガスや石油、水等を輸送するパイプラインを構成する鋼管は、耐食性を与えるためにポリエステル等の樹脂を予め被覆して用いられているが、このような被覆鋼管を複数本接続するために突き合せ溶接を用いる場合には、溶接する突き合せ端部とその近傍に被覆材が存在しない状態にして溶接し、その後溶接継手部とその近傍に被覆材を再被覆することが行われている。
従来、被覆鋼管の溶接継手部等への再被覆方法としては、図1に示すような延伸処理した架橋ポリエチレンからなる外層材1の裏面に、ブチルゴム系の粘着剤(内層材)2を塗布したシュリンクチューブ3を、該粘着剤2の表面に付着させている剥離ライナー4を除いて溶接継手部を含む対象範囲の周囲に装着した後、加熱することにより収縮させて被覆する防食技術が、例えば特許文献1に開示されている。
また、溶接継手部を含む対象範囲の周囲に金属製の割型を装着し、その内部にポリウレタン等の主剤と硬化剤を混合して注入し、硬化させることにより熱硬化性樹脂を被覆する防食技術が、例えば特許文献2に開示されている。
特開2006−194368号公報 特開平9−327834号公報
しかしながら、前記特許文献1の防食技術では、埋設鋼管の溶接継手部を、溶接現地でシュリンクチューブを使って被覆防食するためには、バーナーや遠赤外線を利用した加熱装置を現地で用意して加熱しなければならない。その上、粘着剤は熱によって軟化するため、高温では付着力が大きく低下することから、鋼管が加熱されて熱膨張すると被覆部がずれたり剥れたりして金属面が露出することが起こるという問題がある。
この問題は、シュリンクチューブとモルタルを被覆する方法を組み合わせる場合も同様に存在する。
また、特許文献2のポリウレタン等を被覆する防食技術では、金属製の割型と鋼材との間に熱硬化性樹脂を充填しているが、金属製の割型は電気化学的な作用により鋼材に対する防食性能を阻害することがあるので、充填後にこの割型を取り外す必要があるという問題がある。
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、加熱処理しても被覆材が鋼材表面に対してずれたり剥れたりすることがなく、しかも金属性の割型のように被覆層を形成後に取り外す必要もない鋼材溶接継手部の防食被覆方法及び装置を提供することを課題とする。
本発明は、鋼材外周面との間に密閉空間を形成可能な、注入口と排気口とを有する絶縁体製カバーを、溶接継手部を含む所望長さ範囲の鋼材の外周囲に装着し、前記注入口より熱硬化性樹脂原料を前記密閉空間に注入充填して硬化させ、硬化後の熱硬化性樹脂と前記絶縁体製カバーとにより前記鋼材を被覆するようにして、前記課題を解決したものである。
ここで、前記鋼材外周面と前記絶縁体製カバーとの間に変形防止用のスペーサを介在させ、熱硬化性樹脂原料を前記密閉空間に注入する前に、該密閉空間を前記排気口から排気して減圧しておくことができる。この場合、前記スペーサを、合成樹脂からなる前記絶縁体製カバーと一体成型された、前記鋼材外周面方向に延びる複数の突起からなるようにすることができる。
また、熱硬化性樹脂を前記密閉空間に注入する前に、該密閉空間に強化繊維を介在させることができる。
本発明は、又、溶接継手部を含む所望長さ範囲の鋼材の外周囲に装着される、鋼材外周面との間に密閉空間を形成可能な、注入口と排気口とを有する絶縁体製カバーと、前記注入口より前記密閉空間に注入充填して硬化される熱硬化性樹脂原料と、を備えたことを特徴とする鋼材溶接継手部の防食被覆装置を提供するものである。
ここで、前記絶縁体製カバーの内側に、前記鋼材外周面との間に介在される変形防止用のスペーサを更に備えることができる。この場合、前記スペーサを、合成樹脂からなる前記絶縁体製カバーと一体成型された、内側に延びる複数の突起からなるようにすることができる。
また、前記絶縁体製カバーの内側に装着される強化繊維を更に備えることができる。
本発明によれば、鋼材外周面と絶縁体製カバーとの間の密閉空間に熱硬化性樹脂原料を注入充填して硬化させるようにしたので、加熱処理したとしてもシュリンクチューブのように鋼材外周面に対してずれたり剥れたりすることがなく、しかも該カバーが絶縁体であることから取り外す必要もないため、カバー自体を2層目の被覆材として利用できることになり、一段と防食の信頼性を向上することができる。
従来のシュリンクチューブを模式的に示す正面図 本発明に係る第1実施形態に適用される絶縁体製カバーを模式的に示す正面図 前記絶縁体製カバーを構成する上カバーを模式的に示す斜視図 前記絶縁体製カバーを構成する上カバーと下カバーの内面に形成されているスペーサを抽出して模式的に示す斜視図 前記絶縁体製カバーを適用した鋼管の溶接継手部を含む範囲の防食被覆構造を示す縦断面図 本発明に係る第2実施形態の特徴を拡大して模式的に示す要部断面図 第2実施形態に適用される強化繊維を模式的に示す平面図
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図2は、本発明の第1実施形態に適用されるポリエチレン等からなるポリオレフィン製の絶縁体製カバー10を示す正面図である。
この絶縁体製カバー10は、上カバー12と下カバー14からなる割型から構成されており、上カバー12には、図3に示されるように、例えば2箇所に管状の排気口12Aが形成され、下カバー14には、図2に示されるように、例えば1箇所に同様の注入口14Aが形成されていると共に、対向する直径方向外側にそれぞれ延長形成された長手方向に延びるフランジ部12B、14Bを互いに当接させ、ねじや接着剤で接合することにより、鋼管の外周囲に装着可能な所定長さの管を構成する。
また、上カバー12、下カバー14の内周面には、図4にその特徴を抽出して模式的に示すように、多数の突起状のスペーサ16が均一に分布して形成されている。このスペーサ16は、図2にも示されているように、上カバー12、下カバー14と一体成型して形成されている。
図5は、本発明の防食被覆方法を適用した鋼管20の溶接継手部22とその近傍を含む所定長さ範囲の管中心位置における断面構造を示す縦断面図である。
本実施形態では、図2に二点鎖線で示すように、鋼管20の外周面に上カバー12と下カバー14とを配置してフランジ部12B、14Bを互いにねじ等の固定部材で接合固定することにより、図5に示すように、該鋼管20の溶接継手部22を含む、溶接する際に被覆材24を取り除いた除去端部24Aを超える長さ範囲周囲に絶縁体製カバー10を装着する。
この絶縁体製カバー10と鋼管20の外周面との間には、密閉空間18を形成可能とするために、パッキンとして機能すると共に、周囲側壁としても機能するシリコンゴム等からなる弾性リング部材26が長手方向両端部に配設されている。
以上のように、排気口12Aと注入口14Aとを有する絶縁体製カバー10を、溶接継手部22を含む所定長さ範囲の鋼管20の外周囲に装着した後、前記注入口14Aを閉じて前記排気口12Aから前記密閉空間18内を排気して減圧する。
その後、前記排気口12Aを閉じて前記注入口14Aより、例えば不飽和ポリエステル樹脂からなる比較的低分子量の液状の熱硬化性樹脂主剤と硬化剤との混合液からなる熱硬化性樹脂原料を前記密閉空間18に注入充填し、硬化させる。
充填された熱硬化性樹脂原料が硬化して、図5に示された状態にすることにより、熱硬化性樹脂30と前記絶縁体製カバー10とにより前記鋼管20を2層構造で被覆することができる。
本実施形態の具体例としては、鋼管20の呼び径が600A(外径が約600mm)、被覆材24の厚さが2.5mmの場合であれば、絶縁体製カバー10の厚さを3.0mm、長さを600mm、密閉空間18の厚さ(高さ)を5.0mmとすることができる。
以上詳述した本実施形態によれば、鋼管20の外周面と絶縁体製カバー10との間の密閉空間18に充填された熱硬化性樹脂30と、それを覆う絶縁体製カバー10とにより溶接継手部22を含む所定長さ範囲を被覆することができるため、信頼性の高い防食被覆を達成することができる。
また、被覆外層を構成する、例えばポリオレフィン製の絶縁体製カバー10は、予め工場で製作して用いることができると共に、絶縁体製カバー10自体が防食層になることから、防食性能にばらつきが少ない上に防食性を高くすることができる。
また、密閉空間18の内部を減圧してから樹脂を注入するため、内部に気泡等が残留しにくくなることから、防食性能や機械的性質が低下することを抑制することができる。
また、絶縁体製カバー10の内部にはスペーサ16が一体成型されているため、混合液からなる熱硬化性樹脂原料を注入する前に密閉空間18を減圧した場合でも、該絶縁体製カバー10に変形や破損が生じることを有効に防止できる。
更に、このスペーサ16は絶縁体製カバー10の内側表面積を大きくすることになるため、接着剤としての熱硬化性樹脂30との接着力を高める働きをすることもできる。
図6は、本発明に係る第2実施形態の防食被覆方法を適用する際の密閉空間18の一部を拡大して示す要部断面図である。
本実施形態においては、図7に示すような、スペーサ16に対応する位置に孔32が空いた不織布状のカーボン繊維等の強化繊維34を、図6のように孔32の位置にスペーサ16が位置するように介在させ、その状態で前記第1実施形態と同様に密閉空間18内を減圧し、該密閉空間18内に熱硬化性樹脂原料を注入充填して熱硬化性樹脂30を形成する。
本実施形態によれば、熱硬化性樹脂30をFRP(Fiber Reinforced Plastic)にできるため、一段と強度を高めることができる。
なお、前記実施形態では、熱硬化性樹脂主剤が不飽和ポリエステル樹脂である場合を示したが、例えば接着剤等に利用されているエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂等であってもよい。
また、絶縁体製カバー10も、他の熱可塑性樹脂やFRPを使って形成してもよく、更にはより接着性の高いエポキシ系、ウレタン系の樹脂で形成してもよい。
また、密閉空間18内は必ずしも減圧しなくてもよく、十分に粘度の低い熱硬化性樹脂原料であれば、例えば予め脱気して常圧で注入するようにしてもよい。この場合はスペーサ16はなくてもよい。
注入口14Aも、1つでなく、下カバー14の側面を含む複数位置に設けて、注入を迅速化することもできる。
また、スペーサ16は絶縁体製カバー10と一体成型したものに限らず、図4に示したようなシートに突起部が植設された別体として用意してもよい。
更に、鋼材は鋼管に限らず、形鋼、棒鋼等であってもよい。
10…絶縁体製カバー
12…上カバー
14…下カバー
12A…排気口
14A…注入口
12B、14B…フランジ部
16…スペーサ
18…密閉空間
20…鋼管
22…溶接継手部
24…被覆材
24A…除去端部
26…弾性リング部材
30…熱硬化性樹脂
32…孔
34…強化繊維

Claims (8)

  1. 鋼材外周面との間に密閉空間を形成可能な、注入口と排気口とを有する絶縁体製カバーを、溶接継手部を含む所望長さ範囲の鋼材の外周囲に装着し、
    前記注入口より熱硬化性樹脂原料を前記密閉空間に注入充填して硬化させ、
    硬化後の熱硬化性樹脂と前記絶縁体製カバーとにより前記鋼材を被覆することを特徴とする鋼材溶接継手部の防食被覆方法。
  2. 前記鋼材外周面と前記絶縁体製カバーとの間に変形防止用のスペーサを介在させ、熱硬化性樹脂原料を前記密閉空間に注入する前に、該密閉空間を前記排気口から排気して減圧しておくことを特徴とする請求項1に記載の鋼材溶接継手部の防食被覆方法。
  3. 前記スペーサが、合成樹脂からなる前記絶縁体製カバーと一体成型された、前記鋼材外周面方向に延びる複数の突起からなることを特徴とする請求項2に記載の鋼材溶接継手部の防食被覆方法。
  4. 熱硬化性樹脂を前記密閉空間に注入する前に、該密閉空間に強化繊維を介在させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の鋼材溶接継手部の防食被覆方法。
  5. 溶接継手部を含む所望長さ範囲の鋼材の外周囲に装着される、鋼材外周面との間に密閉空間を形成可能な、注入口と排気口とを有する絶縁体製カバーと、
    前記注入口より前記密閉空間に注入充填して硬化される熱硬化性樹脂原料と、
    を備えたことを特徴とする鋼材溶接継手部の防食被覆装置。
  6. 前記絶縁体製カバーの内側に、前記鋼材外周面との間に介在される変形防止用のスペーサを更に備えたことを特徴とする請求項5に記載の鋼材溶接継手部の防食被覆装置。
  7. 前記スペーサが、合成樹脂からなる前記絶縁体製カバーと一体成型された、内側に延びる複数の突起からなることを特徴とする請求項6に記載の鋼材溶接継手部の防食被覆装置。
  8. 前記絶縁体製カバーの内側に装着される強化繊維を更に備えたことを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の鋼材溶接継手部の防食被覆装置。
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