JP2013178149A - 土壌含有放射性物質の分離方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、効率よく大量の土壌を処理できる土壌含有放射性物質の分離方法を提供する。
【解決手段】本発明の土壌含有放射性物質の分離方法は、土壌Sに含まれる放射性物質(放射性セシウム、放射性セシウムイオン[Cs])を溶出可能な複数種の薬液(第1薬液R1及び第2薬液R2)のそれぞれを分けて別々に前記土壌Sに対して接触させる複数の段階からなる洗浄工程(第1洗浄工程、及び第2洗浄工程)を有することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、土壌含有放射性物質の分離方法に関する。
例えば、原子力発電所、使用済原子燃料の再処理工場、原子燃料加工工場等の原子燃料取扱い施設における不測の事故等によって、その施設から大量の放射性物質が放出された場合を想定すると、その放射性物質は迅速に効率よく十分に除去されなければならない。中でも比較的に半減期の長い、放射性のセシウム、ストロンチウム等が広範囲に亘って飛散すると、飛散地域の、例えば土壌のような除去対象物の量も膨大になる。
しかしながら、この土壌を例にとっても、それに含有する放射性物質を迅速に効率よく土壌から分離できる方法であって、かつ土壌を安価で大量に処理できるものは未だ確立されていない。
ところで、放射性のセシウム、ストロンチウム等は、主に陽イオン化して土壌に取り込まれる。一方、土壌を構成するケイ酸塩化合物は、ケイ素がアルミニウムに置き換わることで負に帯電したアニオン部分を有している。したがって、陽イオン化して土壌に取り込まれた放射性のセシウム、ストロンチウム等は、ある種の土壌鉱物(ケイ酸塩化合物)に化学的に強く吸着され、例えば層状ケイ酸塩鉱物の層間部分に吸着したセシウムイオンは、水洗によっては殆ど分離することができない。
従来、土壌に含まれるセシウムをカルボン酸で溶出する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開平6−51096号公報
ところが、一般的な土壌を構成するケイ酸塩鉱物は、アニオン部分の構造によって互いに異なる複数種からなり、土壌に混在する各ケイ酸塩鉱物の割合も多様となっている。つまり、土壌を構成するケイ酸塩鉱物の種類及び割合に応じて土壌における放射性物質の吸着能がそれぞれ異なるために、ある一の地域における土壌に対しては放射性物質のカルボン酸による溶出が有効であったとしても、他の地域における土壌に対して係るカルボン酸による溶出が同様に有効であるとは限らない。
また、地域ごとに放射性物質の除去を行う対象の土壌の成分分析を行って、構成するケイ酸塩鉱物の種類及び割合を特定してから分離に有効なカルボン酸を見出して使用することも考えられるが、効率よく大量の土壌を処理しなければならない土壌含有放射性物質の分離方法には適さない。
そこで、本発明の課題は、効率よく大量の土壌を処理できる土壌含有放射性物質の分離方法を提供することにある。
前記課題を解決する土壌含有放射性物質の分離方法は、土壌に含まれる放射性物質を溶出可能な複数種の薬液のそれぞれを分けて別々に前記土壌に対して接触させる複数の段階からなる洗浄工程を有することを特徴とする。
本発明の土壌含有放射性物質の分離方法によれば、効率よく大量の土壌を処理することができる。
本発明の実施形態に係る土壌含有放射性物質の分離方法を実施する分離装置の構成説明図である。 本発明の実施形態に係る土壌含有放射性物質の分離方法を説明するためのフロー図であり、第1薬液による第1洗浄工程を含むフロー図である。 本発明の実施形態に係る土壌含有放射性物質の分離方法を説明するためのフロー図であり、第2薬液による第2洗浄工程を含むフロー図である。 (a)は、土壌のケイ酸塩鉱物に吸着された土壌含有放射性物質(放射性セシウム)を模式的に示した概念図である。(b)は、土壌に第1薬液としてのアンモニウム塩の水溶液を接触させた際の様子を示した概念図である。(c)は、土壌に第2薬液としてのカリウム塩の水溶液を接触させた際の様子を示した概念図である。 本発明の他の実施形態に係る土壌含有放射性物質の分離方法を使用する分離装置の部分構成説明図であり、図2の第1洗浄工程で土壌に対して使用される第1薬液を向流で2段階に分けて接触させる分離方法を実施する分離装置の部分構成説明図である。 本発明の実施例1及び2、並びに比較例1から3において、薬液による洗浄後に濯ぎを行った土壌の放射能の量を、洗浄前の土壌の放射能の量を100%とした放射能の量の相対比(%)で示すグラフである。 本発明の実施例1において、放射性物質回収工程における上澄み液の放射能の量の経時変化を示すグラフである。 本発明の実施例3及び4、並びに比較例4から6において、薬液による洗浄後に濯ぎを行った土壌の放射能の量を、洗浄前の土壌の放射能の量を100%とした放射能の量の相対比(%)で示すグラフである。 本発明の実施例3において、放射性物質回収工程における上澄み液の放射能の量の経時変化を示すグラフである。 本発明の実施例5及び6、並びに比較例7から9において、薬液による洗浄後に濯ぎを行った土壌の放射能の量を、洗浄前の土壌の放射能の量を100%とした放射能の量の相対比(%)で示すグラフである。 本発明の実施例5において、放射性物質回収工程における上澄み液の放射能の量の経時変化を示すグラフである。
次に、本発明の実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明の土壌含有放射性物質の分離方法及びこの分離方法を実施する分離装置は、複数の薬液を分けて別々に土壌に接触させることを主な特徴とする。
なお、本実施形態では、2種類の薬液(後記する塩等の水溶液)を使用する土壌含有放射性セシウム(134Cs、137Cs)の分離装置及び分離方法を例に取って本発明を具体的に説明する。まず、本発明の土壌含有放射性物質の分離方法を実施する分離装置について説明した後に、当該土壌含有放射性物質の分離方法について説明する。
(土壌含有放射性セシウムの分離装置)
図1に示すように、本発明の分離方法を実施する分離装置は、採取した放射性セシウム含有土壌S(以下、単に「土壌S」と称する)と後記する第1薬液R1との接触(図2の第1洗浄工程)を行う第1ミキサ2及び第1セトラ3と、この第1洗浄工程の実施後に、土壌Sに含まれる第1薬液R1の水洗(図2の第1濯ぎ工程)を行う第1水洗槽4及び第1静置槽5と、この第1濯ぎ工程の実施後に、土壌Sと後記する第2薬液R2との接触(図3の第2洗浄工程)を行う第2ミキサ6及び第2セトラ7と、この第2洗浄工程の実施後に、土壌Sに含まれる第2薬液R2の水洗(図3の第2濯ぎ工程)を行う第2水洗槽8及び第2静置槽9と、を備えている。
前記の第1ミキサ2は、ホッパHに供給される土壌Sと、第1薬液槽10から供給される第1薬液R1との混合物を貯留する貯留槽11と、この貯留槽11内の内容物をモータ駆動の攪拌翼12で攪拌する攪拌装置13と、貯留槽11内の内容物の温度を所定の温度となるように制御する温度制御装置14と、を主に備えて構成されている。
なお、本実施形態では、第1薬液槽10に貯留される第1薬液R1は、第1薬液槽10と貯留槽11とを繋ぐ図示しない所定の配管並びにこの配管途中に設けられた電磁弁及びポンプを介して貯留槽11に供給されるようになっている。また、本実施形態での攪拌翼12としては、リボン翼を想定しているが、プロペラ、パドル等の他の攪拌翼を使用することもできる。また、第1ミキサ2の温度制御装置14としては、後記する第1洗浄工程(図2参照)での設定温度(混合攪拌温度)となるように制御する、図示しないヒータ、冷却管等の熱・冷熱発生手段、温度センサ及びコントローラで構成されるものを想定している。
前記の第1セトラ3は、第1ミキサ2の貯留槽11の底部近傍から抜き出されたその内容物、つまり、土壌Sと第1薬液R1とのスラリー状の混合物を受け入れて、土壌Sと第1薬液R1を静置分離する(土壌Sを沈殿分離させる)沈殿槽15と、この沈殿槽15の内容物の温度を所定の温度となるように制御する温度制御装置14と、を主に備えて構成されている。
なお、本実施形態では、土壌Sと第1薬液R1とのスラリー状の混合物は、第1ミキサ2の貯留槽11と第1セトラ3の沈殿槽15とを繋ぐ図示しない所定の配管並びにこの配管途中に設けられた電磁弁及びポンプを介して沈殿槽15に供給されるようになっている。また、第1セトラ3の温度制御装置14は、第1ミキサ2の前記の温度制御装置14と同様のもので構成することができ、後記する第1濯ぎ工程(図2参照)での設定温度(後記の静置分離温度)となるように沈殿槽19内の温度を制御している。
このような第1セトラ3は、沈殿槽15内で前記のスラリー状の混合物を静置分離して得られる上澄み液としての第1薬液R1を、放射性セシウムの第1回収装置16を介して前記の第1薬液槽10に返送するようになっている。
なお、第1セトラ3での土壌Sと上澄み液としての第1薬液R1との分離は、静置分離を想定しているが、本発明での第1セトラ3における土壌Sと第1薬液R1との分離法としては、積極的な分離法を採用することができる。ちなみに、積極的な分離法としては、例えば、沈殿分離法、分級装置を使用した湿式分離法、遠心分離機や湿式サイクロン等を使用した遠心分離法等が挙げられる。
なお、本実施形態では、この返送分の第1薬液R1は、第1セトラ3の沈殿槽15と、前記の第1薬液槽10を繋ぐ図示しない所定の配管並びにこの配管途中に設けられた第1回収装置16、図示しない電磁弁及びポンプを介して第1薬液槽10に供給されるようになっている。そして、第1薬液槽10に供給された返送分の第1薬液R1は、第1薬液槽10に新たに追加される第1薬液R1aと混合されて、第1ミキサ2の貯留槽11に第1薬液R1として供給される(再利用される)こととなる。
ちなみに、第1回収装置16は、土壌Sから第1薬液R1に溶出させた(分離した)放射性セシウムを回収するように構成されている。この第1回収装置16としては、第1薬液R1に含まれる放射性セシウムを回収することができれば特に制限はなく、例えば、放射性セシウム吸着装置、放射性セシウムの凝集沈殿装置、放射性セシウムの膜分離装置等が挙げられる。
前記の第1水洗槽4は、第1セトラ3の沈殿槽15の底部近傍から抜き出された、第1薬液R1で湿潤した土壌Sを受け入れると共に、第1濯ぎ水槽17から供給される濯ぎ水Wを受け入れてこれらを貯留する貯留槽18と、この貯留槽18の内容物をモータ駆動の攪拌翼12で攪拌する攪拌装置13と、貯留槽18内の内容物の温度を所定の温度となるように制御する温度制御装置14と、を主に備えて構成されている。
本実施形態では、第1セトラ3の沈殿槽15内のスラリー状の混合物は、この沈殿槽15と、第1濯ぎ水槽17の貯留槽18とを繋ぐ図示しない所定の配管並びにこの配管途中に設けられた電磁弁及びポンプを介して貯留槽18に供給されるようになっている。
また、第1濯ぎ水槽17に貯留される濯ぎ水Wは、第1濯ぎ水槽17と貯留槽18とを繋ぐ図示しない所定の配管並びにこの配管途中に設けられた電磁弁及びポンプを介して貯留槽18に供給されるようになっている。ちなみに、本実施形態での濯ぎ水W及び後記するWaとしては、安価な水道水を使用してもよいが、純水を使用することが望ましく、蒸留水を使用することがより望ましい。
また、本実施形態での第1水洗槽4を構成する攪拌装置13としては、前記の第1ミキサ2を構成する攪拌装置13と同様のものを使用することができる。また、第1水洗槽4の温度制御装置14としては、第1ミキサ2の温度制御装置14と同様のものを使用することができる。この第1水洗槽4の温度制御装置14は、後記する第1濯ぎ工程(図2参照)での設定温度(後記の混合攪拌温度)となるように貯留槽18内の温度を制御している。
このような第1水洗槽4は、第1セトラ3の沈殿槽15から送り込まれる、第1薬液R1で湿潤する土壌Sを水洗することで、土壌Sから第1薬液R1を洗い出すようになっている。
前記の第1静置槽5は、第1水洗槽4の貯留槽18の底部近傍から抜き出された濯ぎ水Wを含むスラリー状の土壌Sを受け入れて、土壌Sとこの濯ぎ水Wを静置分離する(土壌Sを沈殿分離させる)沈殿槽19と、この沈殿槽19の内容物の温度を所定の温度となるように制御する温度制御装置14と、を主に備えて構成されている。
なお、貯留槽18から抜き出された濯ぎ水Wを含むスラリー状の土壌Sは、第1水洗槽4の貯留槽18と、第1静置槽5の沈殿槽19とを繋ぐ図示しない所定の配管並びにこの配管途中に設けられた電磁弁及びポンプを介して沈殿槽19に供給されるようになっている。また、第1静置槽5の温度制御装置14は、前記の第1ミキサ2の温度制御装置14と同様のものを使用することができ、後記する第1濯ぎ工程(図2参照)での設定温度(後記の静置分離温度)となるように沈殿槽19内の温度を制御している。
このような第1静置槽5は、沈殿槽19内で前記のスラリー状の土壌Sを静置分離して得られる上澄み液としての濯ぎ水Wを、前記の第1濯ぎ水槽17に返送するようになっている。
この返送分の濯ぎ水Wは、第1静置槽5の沈殿槽19と、前記の第1濯ぎ水槽17を繋ぐ図示しない所定の配管並びにこの配管途中に設けられた図示しない電磁弁及びポンプを介して第1濯ぎ水槽17に供給されるようになっている。そして、第1濯ぎ水槽17に供給された返送分の濯ぎ水Wは、第1濯ぎ水槽17に新たに追加される濯ぎ水Waと混合されて、第1水洗槽4の貯留槽18に供給する濯ぎ水Wとして再利用されることとなる。つまり、第1濯ぎ水槽17の濯ぎ水Wは、第1水洗槽4の貯留槽18及び第1静置槽5の沈殿槽19を介して再び第1濯ぎ水槽17に戻るように循環することとなる。
そして、第1静置槽5の沈殿槽19と、前記の第1濯ぎ水槽17を繋ぐ図示しない所定の配管途中には、循環して土壌Sの洗浄を重ねることで、第1薬液R1の濃度が高まった濯ぎ水Wを排出するためのパージ弁(図示省略)を有するパージ配管(図示省略)が分岐配置されている。
また、本実施形態での分離装置は、後記するように、土壌Sに対する第1洗浄工程(図2参照)を複数回行うために、又は第1濯ぎ工程(図2参照)を複数回行うために、第1静置槽5の沈殿槽19は、この沈殿槽19の底部近傍から抜き出した土壌Sを、第1ミキサ2の貯留槽11及び第1水洗槽4の貯留槽18に返送するように構成されている。
ちなみに、沈殿槽19から貯留槽11への土壌Sの返送、又は貯留槽18への土壌Sの返送の選択は、三方切替え弁V1を切替えて行うようになっている。
前記の第2ミキサ6は、第1静置槽5の沈殿槽19の底部近傍から抜き出された、濯ぎ水Wで湿潤する土壌Sを受け入れると共に、第2薬液槽20から供給される第2薬液R2を受け入れてこれらを貯留する貯留槽21と、この貯留槽21内の内容物を、モータ駆動の攪拌翼12で攪拌する攪拌装置13と、貯留槽21内の内容物の温度を所定の温度となるように制御する温度制御装置14と、を主に備えて構成されている。
なお、沈殿槽19から抜き出された濯ぎ水Wで湿潤する土壌Sは、第1静置槽5の沈殿槽19と、第2ミキサ6の貯留槽21とを繋ぐ図示しない所定の配管並びにこの配管途中に設けられた電磁弁及びポンプを介して貯留槽21に供給されるようになっている。
また、第2薬液槽20に貯留される第2薬液R2は、第2薬液槽20と貯留槽21とを繋ぐ図示しない所定の配管並びにこの配管途中に設けられた電磁弁及びポンプを介して貯留槽21に供給されるようになっている。
また、本実施形態での第2ミキサ6を構成する攪拌装置13としては、前記の第1ミキサ2を構成する攪拌装置13と同様のものを使用することができる。また、本実施形態での第2ミキサ6を構成する温度制御装置14としては、前記の第1ミキサ2の温度制御装置14と同様のものを使用することができ、後記する第2洗浄工程(図3参照)での設定温度(後記の混合攪拌温度)となるように貯留槽21内の温度を制御している。
前記の第2セトラ7は、第2ミキサ6の貯留槽21の底部近傍から抜き出されたその内容物、つまり、土壌Sと第2薬液R2のスラリー状の混合物を受け入れて、土壌Sと第2薬液R2を静置分離する(土壌Sを沈殿分離させる)沈殿槽22と、この沈殿槽22の内容物の温度を所定の温度となるように制御する温度制御装置14と、を主に備えて構成されている。
なお、貯留槽21から抜き出された土壌Sと第2薬液R2のスラリー状の混合物は、第2ミキサ6の貯留槽21と第2セトラ7の沈殿槽22とを繋ぐ図示しない所定の配管並びにこの配管途中に設けられた電磁弁及びポンプを介して沈殿槽22に供給されるようになっている。また、第2セトラ7の温度制御装置14としては、前記の第1ミキサ2の温度制御装置14と同様のものを使用することができ、後記する第2洗浄工程(図3参照)での設定温度(後記する静置分離温度)となるように沈殿槽22内の温度を制御している。
このような第2セトラ7は、沈殿槽22内で前記のスラリー状の混合物を静置分離して得られる上澄み液としての第2薬液R2を、放射性セシウムの第2回収装置23を介して前記の第2薬液槽20に返送するようになっている。
なお、第2セトラ7での土壌Sと上澄み液としての第2薬液R2との分離は、静置分離を想定しているが、本発明での第2セトラ7における土壌Sと第2薬液R2との分離法としては、前記の第1セトラ3と同様の、積極的な分離法を採用することができる。
なお、本実施形態では、この返送分の第2薬液R2は、第2セトラ7の沈殿槽22と、前記の第2薬液槽20を繋ぐ図示しない所定の配管並びにこの配管途中に設けられた第2回収装置23、図示しない電磁弁及びポンプを介して第2薬液槽20に供給されるようになっている。そして、第2薬液槽20に供給された返送分の第2薬液R2は、第2薬液槽20に新たに追加される第2薬液R2aと混合されて、第2ミキサ6の貯留槽21に第2薬液R2として供給される(再利用される)こととなる。
ちなみに、第2回収装置23は、前記の第1回収装置16と同様のものを使用することができる。
前記の第2水洗槽8は、第2セトラ7の沈殿槽22の底部近傍から抜き出された、第2薬液R2で湿潤した土壌Sを受け入れると共に、第2濯ぎ水槽24から供給される濯ぎ水Wを受け入れてこれらを貯留する貯留槽25と、この貯留槽25の内容物をモータ駆動の攪拌翼12で攪拌する攪拌装置13と、を主に備えて構成されている。
なお、沈殿槽22から抜き出された第2薬液R2で湿潤した土壌Sは、この沈殿槽22と、第2濯ぎ水槽24の貯留槽25とを繋ぐ図示しない所定の配管並びにこの配管途中に設けられた電磁弁及びポンプを介して貯留槽25に供給されるようになっている。
また、第2濯ぎ水槽24に貯留される濯ぎ水Wは、第2濯ぎ水槽24と貯留槽25とを繋ぐ図示しない所定の配管並びにこの配管途中に設けられた電磁弁及びポンプを介して貯留槽25に供給されるようになっている。ちなみに、この濯ぎ水Wとしては、前記したように、安価な水道水を使用してもよいが、純水を使用することが望ましく、蒸留水を使用することがより望ましい。
また、本実施形態での第2水洗槽8を構成する攪拌装置13としては、前記の第1ミキサ2を構成する攪拌装置13と同様のものを使用することができる。
このような第2水洗槽8は、第2セトラ7の沈殿槽22から送り込まれる、第2薬液R2で湿潤する土壌Sを水洗することで、土壌Sから第2薬液R2を洗い出すようになっている。
前記の第2静置槽9は、第2水洗槽8の貯留槽25の底部近傍から抜き出された濯ぎ水Wを含むスラリー状の土壌Sを受け入れて、土壌Sとこの濯ぎ水Wを静置分離する(土壌Sを沈殿分離させる)沈殿槽26を主に備えて構成されている。
なお、貯留槽25から抜き出された濯ぎ水Wを含むスラリー状の土壌Sは、第2水洗槽8の貯留槽25と、第2静置槽9の沈殿槽26とを繋ぐ図示しない所定の配管並びにこの配管途中に設けられた電磁弁及びポンプを介して沈殿槽26に供給されるようになっている。
このような第2静置槽9は、沈殿槽26内で前記のスラリー状の土壌Sを静置分離して得られる上澄み液としての濯ぎ水Wを、前記の第2濯ぎ水槽24に返送するようになっている。
なお、この返送分の濯ぎ水Wは、第2静置槽9の沈殿槽26と、前記の第2濯ぎ水槽24を繋ぐ図示しない所定の配管並びにこの配管途中に設けられた図示しない電磁弁及びポンプを介して第2濯ぎ水槽24に供給されるようになっている。そして、第2濯ぎ水槽24に供給された返送分の濯ぎ水Wは、第2濯ぎ水槽24に新たに追加される濯ぎ水Wbと混合されて、第2水洗槽8の貯留槽25に供給する濯ぎ水Wとして再利用されることとなる。つまり、第2濯ぎ水槽24の濯ぎ水Wは、第2水洗槽8の貯留槽25及び第2静置槽9の沈殿槽26を介して再び第2濯ぎ水槽24に戻るように循環することとなる。
そして、第2静置槽9の沈殿槽26と、前記の第2濯ぎ水槽24を繋ぐ図示しない所定の配管途中には、循環して土壌Sの洗浄を重ねることで、第2薬液R2の濃度が高まった濯ぎ水Wを排出するためのパージ弁(図示省略)を備えるパージ配管(図示省略)が分岐配置されている。
なお、本実施形態での貯留槽25内の土壌S、及び沈殿槽26内の土壌Sは、既に放射性セシウムの分離操作が終了しているため、これらの貯留槽25及び沈殿槽26に温度制御装置14を配置していないが、これらの貯留槽25及び沈殿槽26に温度制御装置14を配置することもできる。
また、本実施形態での分離装置は、後記するように、土壌Sに対する第2洗浄工程(図3参照)を複数回行うために、又は第2濯ぎ工程(図3参照)を複数回行うために、第2静置槽9の沈殿槽26は、この沈殿槽26の底部近傍から抜き出した土壌Sを、第2ミキサ6の貯留槽21及び第2水洗槽8の貯留槽25に返送するように構成されている。
ちなみに、沈殿槽26から貯留槽12への土壌Sの返送、又は貯留槽26への土壌Sの返送の選択は、三方切替え弁V2を切替えて行うようになっている。
本実施形態での分離装置は、脱水装置27を更に備えている。この脱水装置27には、前記の第2静置槽9の沈殿槽26の底部近傍から抜き出された、濯ぎ水Wで湿潤する土壌Sが供給されるようになっている。沈殿槽26から抜き出された湿潤する土壌Sは、沈殿槽26と、脱水装置27を繋ぐ図示しない所定の配管並びにこの配管途中に設けられた図示しない電磁弁及びポンプを介して脱水装置27に供給されるようになっている。そして、脱水装置27は、土壌Sから濯ぎ水Wを搾り取ると共に、土壌Sと、この土壌Sから搾り取った濯ぎ水Wを別個に排出するようになっている。
なお、本実施形態での脱水装置27としては、スクリュープレス式のものを想定しているが、土壌Sから濯ぎ水を脱水可能であればこれに限定されるものではなく、例えばロータリプレスフィルタ式のものであってもよい。
(土壌含有放射性セシウムの分離方法)
次に、土壌含有放射性セシウム(134Cs、137Cs)の分離方法について説明する。
本実施形態に係る分離方法は、採取した土壌S(図1参照)に含まれる放射性セシウムを溶出可能な2種の第1薬液R1及び第2薬液R2(図1参照)を準備する薬液準備工程と、前記土壌Sに対して前記2種の第1薬液R1及び第2薬液R2のそれぞれを分けて別々に接触させる2段階からなる洗浄工程(図2の第1洗浄工程及び図3の第2洗浄工程)と、を有することを特徴とする。
図2は、本発明の実施形態に係る土壌含有放射性物質の分離方法を説明するためのフロー図であり、第1薬液による第1洗浄工程を含むフロー図である。図3は、本発明の実施形態に係る土壌含有放射性物質の分離方法を説明するためのフロー図であり、第2薬液による第2洗浄工程を含むフロー図である。
図2に示すように、本実施形態に係る分離方法では、まず土壌Sの採取、分級及び放射能の測定が行われる(ステップS1)。具体的には、採取された土壌Sは、所定の目開きの篩いによって、篩い上の粗粒と、篩い下の細粒とに分級される。そして、これらの粗粒及び細粒について、放射能の測定が行われる。
そして、本実施形態に係る分離方法は、この分級によって得られる土壌Sの粗粒から以下に説明する工程を経て放射性セシウムが分離される。
ちなみに、本実施形態では、比表面積が大きく放射性セシウムの吸着量も大きい(放射能の量(Bq/土壌kg)の大きい)土壌Sの細粒からは放射性セシウムの分離を行うまでもなく、分級した細粒をそのまま高濃度で放射線物質を含有する土壌とみなして特定の放射線管理区域(制限区域)に廃棄(保管)することができる。また、前記の放射能の測定によって、高濃度で放射線物質を含有する細粒を廃棄(保管)することもできる。
なお、本発明の土壌含有放射性物質の分離方法は、ステップS1の分級及び放射能の測定を省略して、採取した土壌Sをそのまま次に続くステップS2で処理することもできる。
次に、ステップS2では、第1ミキサ2(図1参照)にて土壌Sと第1薬液R1(図1参照)との混合攪拌が行われる。このステップS2は、次に説明するステップS3と共に、土壌Sに第1薬液R1を接触させる第1洗浄工程を構成している。
前記の第1薬液R1は、土壌Sに含まれる放射性セシウム、更に具体的には土壌Sに物理的又は化学的に担持された放射性セシウムを溶出可能な薬液から選ばれる1種である。中でも望ましい第1薬液R1は、土壌Sを構成するケイ酸塩鉱物の荷電基に結合している放射性セシウムのイオンを溶出可能な薬液であって、ケイ酸塩鉱物の荷電基に結合するカウンターイオン(金属イオン、水素イオン)を含む薬液から選択される1種である。このような第1薬液R1としては、例えば、アンモニア系化合物水溶液、カリウム系化合物水溶液、ナトリウム系化合物水溶液、マグネシウム系化合物水溶液、カルシウム系化合物水溶液、セシウム系化合物水溶液、酸水溶液等が挙げられる。
アンモニア系化合物の具体例としては、例えば、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、尿素等が挙げられる。
カリウム系化合物の具体例としては、例えば、臭化カリウム、炭化カリウム、塩化カリウム、水素化カリウム、ヨウ化カリウム、三ヨウ化カリウム、窒化カリウム、超酸化カリウム、オゾン化カリウム、酸化カリウム、過酸化カリウム、硫化カリウム、水酸化カリウム、酢酸カリウム、炭酸カリウム、ヨウ素酸カリウム、亜硝酸カリウム、硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、チオ硫酸カリウム、二亜硫酸カリウム、ジチオン酸カリウム、二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、炭酸水素カリウム、硫酸水素カリウム、ペルオキソ硫酸水素カリウム等が挙げられる。
ナトリウム系化合物の具体例としては、例えば、炭化ナトリウム、塩化ナトリウム、水素化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、アジ化ナトリウム、窒化ナトリウム、二酸化ナトリウム、オゾン化ナトリウム、過酸化ナトリウム、酸化ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、ナトリウムフェノキシド、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、ジチオ硫酸ナトリウム、二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、トリチオン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、オルト過ヨウ素酸三水素ナトリウム、オルト過ヨウ素酸二水素ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸水素ナトリウム等が挙げられる。
マグネシウム系化合物の具体例としては、例えば、亜硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、酸化マグネシウム、臭化マグネシウム、硝酸マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、過酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硫化マグネシウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。
カルシウム系化合物の具体例としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、炭化カルシウム、硝酸カルシウム、ヨウ化カルシウム、硫酸カルシウム、硫化カルシウム、炭酸水素カルシウム、臭化カルシウム、乳酸カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、水素化カルシウム、塩素酸カルシウム、酢酸カルシウム、過酸化カルシウム、亜硫酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ヨウ素酸カルシウム等が挙げられる。
セシウム系化合物の具体例としては、例えば、臭化セシウム、硝酸セシウム、水酸化セシウム、ヨウ化セシウム、炭酸セシウム、硫酸セシウム、酸化セシウム等が挙げられる。
酸の具体例としては、例えば、硫酸、塩酸、クエン酸、酢酸、硝酸、シュウ酸等が挙げられる。
以上のような第1薬液R1の中でも、塩の水溶液及び弱酸の水溶液は、分離装置(図1参照)に対する腐食性が低いので望ましい。
第1薬液R1(水溶液)における溶質の濃度は、土壌Sから分離する放射性セシウムの目標量、当該溶質の水に対する溶解度等に応じて適宜に設定することができるが、0.1モル/L以下に設定することが望ましく、0.001モル/L以上、0.1モル/L以下に設定することが更に望ましい。
ステップS2での土壌Sと第1薬液R1との混合比率は、固液比(土壌質量/第1薬液質量)で、1/30〜1/10が望ましい。
ステップS2での土壌Sと第1薬液R1との混合攪拌温度は、第1薬液R1の沸点未満であればよく、大気圧下でステップS2を実施する場合には、溶質濃度に応じての沸点上昇を見込んだ上限を設定すると、100℃以下が望ましく、15℃〜100℃程度が更に望ましい。より望ましくは30℃〜80℃程度である。本実施形態におけるステップS2の混合攪拌温度は、図1に示す第1ミキサ2の温度制御装置14で制御されて設定されることとなる。
図2に示すように、ステップS3では、第1セトラ3(図1参照)にて土壌Sと第1薬液R1(図1参照)との静置分離(土壌Sの沈殿分離)が行われる。このステップS3は、前記したように、前記のステップS2と共に、土壌Sに第1薬液R1を接触させる第1洗浄工程を構成している。
なお、このステップS3での第1セトラ3の沈殿槽15内の静置分離温度は、第1ミキサ2の貯留槽11における前記の混合攪拌温度と同じ範囲に設定することができる。本実施形態におけるステップS3の静置分離温度は、図1に示す第1セトラ3の温度制御装置14で制御されて設定されることとなる。
そして、本実施形態でのステップS2及びステップS3からなる第1洗浄工程で、土壌Sに含まれる放射性セシウムは第1薬液R1に溶出される。つまり、本実施形態では、この第1洗浄工程で、土壌Sの放射性セシウムの第1薬液R1によるミキサ・セトラ抽出が行われることとなる。
次に、ステップS4及びステップS5では、ステップS3で静置分離された土壌Sの水洗(第1濯ぎ工程)が行われる。
先ず、ステップS4では、第1水洗槽4(図1参照)の貯留槽18(図1参照)内にて土壌Sと濯ぎ水W(図1参照)との混合攪拌が行われる。
このステップS4での第1水洗槽4の貯留槽18内の混合攪拌温度は、第2ミキサ6の貯留槽21における後記する混合攪拌温度と同じ範囲に設定することができる。このステップS4の混合攪拌温度は、図1に示す第1水洗槽4の温度制御装置14で制御されて設定されることとなる。
次に、ステップS5では、第1静置槽5(図1参照)にて土壌Sと濯ぎ水Wとの静置分離(土壌Sの沈殿分離)が行われる。
このステップS5での第1静置槽5の沈殿槽19(図1参照)内の静置分離温度は、第2ミキサ6の貯留槽21における後記する混合攪拌温度と同じ範囲に設定することができる。このステップS5の混合攪拌温度は、図1に示す第1静置槽5の温度制御装置14で制御されて設定されることとなる。
そして、このようなステップS4及びステップS5からなる第1濯ぎ工程で、土壌Sに含まれる第1薬液R1が濯ぎ水Wに洗い出されることとなる。
このステップS4及びステップS5の第1濯ぎ工程は、複数回繰り返して行うことができる。この際、図1に示す第1静置槽5の沈殿槽19の底部近傍から抜き出された濯ぎ後の土壌Sは、三方切替え弁V1を介して第1水洗槽4(図1参照)の貯留槽18(図1参照)内に返送される。
また、本実施形態に係る分離方法においては、第1洗浄工程及び第1濯ぎ工程を複数回繰り返して行うこともできる。この際、図1に示す第1静置槽5の沈殿槽19の底部近傍から抜き出された濯ぎ後の土壌Sは、三方切替え弁V1を介して第1ミキサ2(図1参照)の貯留槽11(図1参照)内に返送される。つまり、図2に示すように、ステップS5で濯がれた土壌Sは、符号Aで示すように、ステップS2の第1洗浄工程に付されることとなる。
ちなみに、濯ぎ後の土壌Sが貯留槽11(図1参照)内に返送される場合には、ホッパHに対する土壌Sの供給は中断される。
一方、ステップS3で第1セトラ3の沈殿槽15内の上澄み液として静置分離された第1薬液R1は、前記したように、第1回収装置16に送り込まれる。そして、前記のステップS2及びステップS3からなる第1洗浄工程で土壌Sから第1薬液R1に溶出した放射性セシウムは、ステップS6の第1放射性物質回収工程で第1回収装置16に回収される。次いで、第1回収装置16で放射性セシウムが除かれた第1薬液R1は、再び第1薬液槽10に戻される。その結果、第1薬液R1は再利用され(ステップS7)、ステップS2に戻って第1洗浄工程に使用される。ちなみに、ステップS6で回収された放射性物質は、特定の放射線管理区域(制限区域)に廃棄(保管)される。
次に、図3に示すステップS8では、濯ぎ後の土壌Sが沈殿槽19から第2ミキサ6(図1参照)に供給され、第2ミキサ6(図1参照)にて土壌Sと第2薬液R2(図1参照)との混合攪拌が行われる。このステップS8は、次に説明するステップS9と共に、土壌Sに第2薬液R2を接触させる第2洗浄工程を構成している。
つまり、図2に示すステップS5で濯がれた土壌Sは、符号Bで示すように、図3に示すステップS8の第2洗浄工程に付されることとなる。
前記の第2薬液R2は、前記の第1薬液R1とは異なるものであって、第1薬液R1と同様に、土壌Sに含まれる放射性セシウムを溶出可能な薬液から選ばれる1種である。したがって、第1薬液R1として、例えば硫酸カリウムが選ばれた際には、第2薬液R2としてこの硫酸カリウムが選ばれることはなく、硫酸カリウム以外の薬液、例えば硫酸アンモニウムが選ばれる。
第2薬液R2(水溶液)における溶質の濃度は、土壌Sから分離する放射性セシウムの目標量、当該溶質の水に対する溶解度等に応じて適宜に設定することができるが、0.1モル/L以下に設定することが望ましく、0.001モル/L以上、0.1モル/L以下に設定することが更に望ましい。
ステップS8での土壌Sと第2薬液R2との混合比率は、固液比(土壌質量/第2薬液質量)で、1/30〜1/10が望ましい。
ステップS8での土壌Sと第2薬液R2との混合攪拌温度としては、ステップS2での混合攪拌温度の範囲と同様の範囲で設定することができる。このステップS8の混合攪拌温度は、図1に示す第2ミキサ6の温度制御装置14で制御されて設定されることとなる。
なお、ステップS2での混合攪拌温度とステップS8での混合攪拌温度とを前記の同じ範囲内で設定する場合において、ステップS2での混合攪拌温度とステップS8での混合攪拌温度とは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
次に、図3に示すように、ステップS9では第2セトラ7(図1参照)にて土壌Sと第2薬液R2(図1参照)との静置分離(土壌Sの沈殿分離)が行われる。このステップS9は、前記したように、前記のステップS8と共に、土壌Sに第2薬液R2を接触させる第2洗浄工程を構成している。
なお、このステップS9での第2セトラ7の沈殿槽22内の静置分離温度は、第2ミキサ6の貯留槽21における前記の混合攪拌温度と同じ範囲に設定することができる。本実施形態におけるステップS9の静置分離温度は、図1に示す第2セトラ7の温度制御装置14で制御されて設定されることとなる。
そして、本実施形態でのステップS8及びステップS9からなる第2洗浄工程で、土壌Sに含まれる放射性セシウムは第2薬液R2に溶出する。つまり、前記の第1洗浄工程では土壌Sから溶出し切れなかった放射性セシウムが、この第2洗浄工程での第2薬液R2によるミキサ・セトラ抽出で溶出されることとなる。
次に、図2に戻って、ステップS5で第1静置槽5の沈殿槽19内の上澄み液として静置分離された濯ぎ水Wは、再び第1濯ぎ水槽17に戻されて回収される(ステップS10の第1濯ぎ水回収工程)。その結果、濯ぎ水Wは再利用され、ステップS4に戻って第1濯ぎ工程に使用される。なお、濯ぎ水Wに含まれる放射能の量が多い場合には、ステップS6にて第1薬液R1と図示しない配管を介して合流して放射性物質が回収される。
次に、ステップS11及びステップS12では、ステップS9で静置分離された土壌Sの水洗(第2濯ぎ工程)が行われる。
先ず、ステップS11では、第2水洗槽8(図1参照)の貯留槽25(図1参照)内にて土壌Sと濯ぎ水W(図1参照)との混合攪拌が行われる。
次に、ステップS12では、第2静置槽9(図1参照)にて土壌Sと濯ぎ水Wとの静置分離(土壌Sの沈殿分離)が行われる。
そして、このようなステップS11及びステップS12からなる第2濯ぎ工程で、土壌Sに含まれる第2薬液R2が濯ぎ水Wに洗い出されることとなる。
このステップS11及びステップS12の第2濯ぎ工程は、複数回繰り返して行うことができる。この際、図1に示す第2静置槽9の沈殿槽26の底部近傍から抜き出された濯ぎ後の土壌Sは、三方切替え弁V2を介して第2水洗槽8(図1参照)の貯留槽25(図1参照)内に返送される。
また、本実施形態に係る分離方法においては、第2洗浄工程及び第2濯ぎ工程を複数回繰り返して行うこともできる。この際、図1に示す第2静置槽9の沈殿槽26の底部近傍から抜き出された濯ぎ後の土壌Sは、三方切替え弁V2を介して第2ミキサ6(図1参照)の貯留槽21(図1参照)内に返送される。つまり、図3に示すように、ステップS12で濯がれた土壌Sは、ステップS8の第2洗浄工程に付されることとなる。
ちなみに、濯ぎ後の土壌Sが貯留槽21(図1参照)内に返送される場合には、第2静置槽9の沈殿槽26からの土壌S(図2及び図3の符号B)の供給は中断される。
一方、ステップS9で第2セトラ7の沈殿槽22内の上澄み液として静置分離された第2薬液R2は、前記したように、第2回収装置23に送り込まれる。そして、前記のステップS8及びステップS9からなる第2洗浄工程で土壌Sから第2薬液R2に溶出した放射性セシウムは、ステップS13の第2放射性物質回収工程で第2回収装置23に回収される。そして、回収された放射性物質は、特定の放射線管理区域(制限区域)に廃棄(保管)される。
次いで、第2回収装置23で放射性セシウムが除かれた第2薬液R2は、再び第2薬液槽20に戻される。その結果、第2薬液R2は再利用され(ステップS14)、ステップS8に戻って第2濯ぎ工程に使用される。
次に、ステップS15では、脱水装置27(図1参照)にて土壌Sの脱水が行われる。
一方、ステップS12で第2静置槽9の沈殿槽26内の上澄み液として静置分離された濯ぎ水Wは、再び第2濯ぎ水槽24に戻される。その結果、濯ぎ水Wは再利用され(ステップS16)、ステップS11に戻って第2濯ぎ工程に使用される。なお、濯ぎ水Wに含まれる放射能の量が多い場合には、ステップS13にて第2薬液R2と図示しない配管を介して合流して放射性物質が回収される。
ステップS15で脱水された土壌Sは、回収される(ステップS17)。そして、脱水された濯ぎ水Wは回収されて(ステップS19)、図2に示すステップS4又は図3に示すステップS11に戻されて再利用することができる。
その後、ステップS1の土壌Sの採取場所に、ステップS17で回収された土壌Sが埋め戻されることで(ステップS18)、本実施形態に係る分離方法の工程は終了する。
次に、本実施形態に係る土壌含有放射性セシウムの分離方法の作用効果について説明する。
前記したように、原子燃料取扱い施設の不測の事故により大気中に放出された放射性セシウムは、風によって運ばれ、降雨等によって地表に降下する。そして、地表に降下した放射性セシウムは、土壌S中で主に1価の陽イオン(Cs)として存在する。
この土壌S中の放射性セシウムは、ケイ酸塩鉱物に化学的に強く吸着される。図4(a)は、土壌のケイ酸塩鉱物に吸着された土壌含有放射性セシウムを模式的に示した概念図である。図4(b)は、土壌に第1薬液としてのアンモニウム塩の水溶液を接触させた際の様子を示した概念図である。図4(c)は、土壌に第2薬液としてのカリウム塩の水溶液を接触させた際の様子を示した概念図である。
図4(a)に示すように、土壌S中の放射性セシウムのイオンCs(以下、単に「放射性セシウムCs」という)は、土壌S中の、例えばケイ酸塩鉱物層Lの荷電基(図中、記号−(マイナス)で示す。以下、図4(b)及び(c)において同じ)に化学的に吸着している。ちなみに、図示しないが、放射性セシウムCsは、このように土壌S中で化学的に吸着していないものも存在する。そして、この化学的に吸着していない放射性セシウム(図示省略)は、水洗によって土壌Sから分離される場合もある。
しかしながら、ケイ酸塩鉱物層Lの荷電基(図示省略)に化学的に吸着した放射性セシウムCs(例えば、フレイド・エッジ・サイトと呼称される部位に存在する荷電部分に吸着した放射性セシウムCs)は、ケイ酸塩鉱物層Lの層間に3次元的に入り込んで、水洗によっては殆ど分離することができない。また、前記したように、カルボン酸で土壌中の放射性セシウムを分離する方法(例えば、特許文献1参照)では、多種多様のケイ酸塩鉱物を含む様々な土壌Sに有効ではない。
これに対して、本実施形態に係る土壌含有放射性セシウムの分離方法では、第1薬液R1と第2薬液R2を分けて別々に接触させる。具体的には、例えば、第1薬液R1としてのアンモニウム塩の水溶液を土壌Sに接触させた場合(図2の第1洗浄工程)に、図4(b)に示すように、土壌S中のケイ酸塩鉱物層Lの層間に3次元的に入り込んで、ケイ酸塩鉱物層Lの荷電基(図示省略)に化学的に吸着した放射性セシウムCsは、アンモニウム塩のアンモニウムイオンNH とイオン交換されることで第1ミキサ2(図1参照)及び第1セトラ3(図1参照)にて第1薬液R1(図1参照)に溶出する。
そして、この第1洗浄工程で溶出されなかった土壌S中の放射性セシウムCsは、第2薬液R2としてのカリウム塩の水溶液を土壌Sに接触させることで(図3の第2洗浄工程)、図4(c)に示すように、カリウム塩のカリウムイオンKとイオン交換されて第2ミキサ6(図1参照)及び第2セトラ7(図1参照)にて第2薬液R2(図1参照)に溶出する。
したがって、本実施形態に係る土壌含有放射性セシウムの分離方法によれば、第1薬液R1及び第2薬液R2をそれぞれ分けて別々に接触させる第1洗浄工程及び第2洗浄工程を有することによって、複数の薬液のうち、一の薬液(第1薬液R1)で土壌Sから分離し切れなかった放射性セシウムCsを、他の薬液(第2薬液R2)で分離するので、土壌Sに含まれる放射性セシウムCsを効率よく分離することができる。
また、前記したように、土壌Sを構成するケイ酸塩鉱物の種類及び割合に応じて土壌Sにおける放射性セシウムCsの吸着能がそれぞれ異なるところ、本実施形態に係る土壌含有放射性セシウムの分離方法によれば、複数の薬液(本実施形態では第1薬液R1及び第2薬液R2)で土壌Sから放射性セシウムCsを分離するので、従来のカルボン酸で放射性セシウムを土壌から分離する方法(例えば、特許文献1参照)と比較して、様々な吸着能を有する土壌Sに対して適用することができる。
また、本実施形態に係る土壌含有放射性セシウムの分離方法によれば、土壌Sに薬液(本実施形態では第1薬液R1及び第2薬液R2)を接触させることで土壌Sから放射性セシウムCsを分離することができるので、土壌Sを安価で大量に処理できる。
また、本実施形態に係る土壌含有放射性セシウムの分離方法によれば、複数の薬液(本実施形態では第1薬液R1及び第2薬液R2)を、塩の水溶液及び弱酸からなる群、望ましくは塩の水溶液からなる群より選択することで、この分離方法を実施する分離装置(図1参照)の腐食耐久性を向上させることができる。
また、本実施形態に係る土壌含有放射性セシウムの分離方法によれば、複数の薬液(本実施形態では第1薬液R1及び第2薬液R2)を別々に土壌Sに接触させるので、複数の薬液の混合物を土壌Sに接触させる方法と異なって、複数の薬液同士が互いに干渉し合って、放射性セシウムCsのイオン交換性能を低下させることが避けられる。ちなみに、本実施形態に係る土壌含有放射性セシウムの分離方法は、第1薬液R1及び第2薬液R2を別々に土壌Sに接触させるものであれば、接触させる順番に制限はない。つまり、第2薬液R2を土壌Sに接触させた後に、第1薬液R1を土壌Sに接触させる分離方法であってもよい。
また、本実施形態に係る土壌含有放射性セシウムの分離方法によれば、複数の薬液のうち、一の薬液(第1薬液R1)で土壌Sから放射性セシウムCsを分離した後に、この土壌Sに含まれる一の薬液(第1薬液R1)を濯ぎ水Wで洗浄してから他の薬液(第2薬液R2)で土壌Sから放射性セシウムCsを分離するので、複数の薬液同士が互いに干渉し合って、放射性セシウムCsのイオン交換性能を低下させることが避けられる。
また、本実施形態に係る土壌含有放射性セシウムの分離方法によれば、複数の薬液(本実施形態では第1薬液R1及び第2薬液R2)及び/又は濯ぎ水Wを循環させて再利用するので、放射性セシウムの分離に要するコストを低減することができる。
また、本実施形態に係る土壌含有放射性セシウムの分離方法によれば、放射性セシウムCsを分離した後の土壌Sを、元の土壌Sを採取した場所に埋め戻すので、この分離方法を実施する地域の環境変化を防止することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
前記実施形態では、複数の薬液として第1薬液R1及び第2薬液R2のそれぞれを別々に土壌Sに接触させる分離方法について説明したが、本発明は3つ以上の薬液を別々に土壌Sに接触させる分離方法とすることができる。
また、前記実施形態では、第2濯ぎ工程の実施後に、土壌Sの脱水工程(図2のステップS15)を行っているが、第1濯ぎ工程の実施後においても脱水工程を実施してもよい。また、第1濯ぎ工程の実施後、第1濯ぎ工程を行う前、及び/又は第2濯ぎ工程の実施後、第2濯ぎ工程を行う前に、脱水工程を実施してもよい。つまり、本発明では薬液を変えるごとに脱水工程を行ってもよい。
また、前記実施形態では、土壌含有放射性セシウムの分離方法について説明したが、本発明は土壌Sに含まれる放射性ストロンチウム、放射性バリウム、放射性コバルト、ウラン、プルトニウム、トリウム等の他の土壌含有放射性物質の分離方法に適用することができる。また、本発明は、半減期の比較的短い土壌含有放射性ヨウ素の分離方法を除外するものでもない。
また、前記実施形態では、第1洗浄工程及び第2洗浄工程からなる2段階の洗浄工程を、それぞれ一つのミキサ(第1ミキサ2、第2ミキサ6)と、一つのセトラ(第1セトラ3、第2セトラ7)で行う分離方法について説明したが、本発明は、複数の段階からなる洗浄工程(第1洗浄工程及び第2洗浄工程)の各段階のそれぞれが、土壌Sに対して使用される一の薬液(例えば、第1洗浄工程では第1薬液R1、第2洗浄工程では第2薬液R2)を、複数回断続的に土壌Sに繰り返して接触させる多段で構成することもできる。次に参照する図5は、図2の第1洗浄工程で土壌に対して使用される第1薬液を向流で2段階に分けて接触させる分離方法を実施する分離装置の構成説明図である。
図5に示すように、この分離装置においては、第1洗浄工程が実施される第1ミキサ2が、第1ミキサ2Aと第1ミキサ2Bとで構成され、第1セトラ3が第1セトラ3Aと第1セトラ3Bとで構成されている。なお、図5中、符号10は、第1薬液槽であり、符号11は、貯留槽であり、符号12は、撹拌翼であり、符号13は、撹拌装置であり、符号14は、温度制御装置であり、符号15は、沈殿槽であり、符号16は、第1回収装置であり、符号R1は、第1薬液であり、符号Sは、土壌である。
図5に示すように、この分離装置においては、まず、第1ミキサ2Aの貯留槽11には、ホッパHを介して、採取された土壌Sが供給されると共に、後記する第1セトラ3Bの沈殿槽15内で静置分離された上澄み液としての第1薬液R1が供給される。そして、この第1ミキサ2Aの貯留槽11内では、温度制御装置14によって所定の温度となるように制御されながら、攪拌装置13によって土壌Sと第1薬液R1とが混合撹拌される。
次に、第1セトラ3Aは、第1ミキサ2Aの貯留槽11の底部近傍から抜き出されたその内容物、つまり、土壌Sと第1薬液R1とのスラリー状の混合物を受け入れて、土壌Sと第1薬液R1を沈殿槽15にて静置分離する(土壌Sを沈殿分離させる)。この際、第1セトラ3Aの温度制御装置14は、沈殿槽15の内容物の温度を所定の温度となるように制御する。
そして、第1セトラ3Aの沈殿槽15で静置分離された第1薬液R1で湿潤した土壌Sは、沈殿槽15の底部近傍から抜き出されて第1ミキサ2Bに供給される。また、第1セトラ3Aの沈殿槽15内で上澄み液として静置分離された第1薬液R1は、第1回収装置16を介して第1薬液槽10に供給され、この第1薬液槽10に追加される新たな第1薬液R1aと混合される。
次に、第1ミキサ2Bは、第1セトラ3Aの沈殿槽15の底部近傍から抜き出された、第1薬液R1で湿潤した土壌Sが供給されると共に、第1薬液槽10から第1薬液R1aと混合された第1薬液R1が供給される。そして、この第1ミキサ2Bの貯留槽11内では、温度制御装置14によって所定の温度となるように制御されながら、攪拌装置13によって土壌Sと第1薬液R1とが混合撹拌される。
次に、第1セトラ3Bは、第1ミキサ2Bの貯留槽11の底部近傍から抜き出されたその内容物、つまり、土壌Sと第1薬液R1とのスラリー状の混合物を受け入れて、土壌Sと第1薬液R1を沈殿槽15にて静置分離する(土壌Sを沈殿分離させる)。この際、第1セトラ3Bの温度制御装置14は、沈殿槽15の内容物の温度を所定の温度となるように制御する。
そして、第1セトラ3Bの沈殿槽15で静置分離された第1薬液R1で湿潤した土壌Sは、沈殿槽15の底部近傍から抜き出されて第1水洗槽4(図1参照)に供給される。また、第1セトラ3Bの沈殿槽15内で上澄み液として静置分離された第1薬液R1は、前記したように、第1ミキサ2Aに供給される。
以上のような第1洗浄工程では、土壌Sに対して接触させる第1薬液R1を向流で2段階に分けて接触させるので、土壌Sに含まれる放射性セシウムを更に効率よく分離することができる。ちなみに、このような図5に示す多段接触は、第2洗浄工程に適用することもできる。また、段数が図5に示す2段階に限定されるものではなく、3段階以上とすることもできる。
次に、実施例を示しながら本発明を更に具体的に説明する。
(実施例1)
本実施例では、採取した放射性物質含有土壌(以下、単に「土壌」と称する)を、以下に示す第1洗浄工程、第1濯ぎ工程、第2洗浄工程、及び第2濯ぎ工程に付すことによって土壌の放射性物質を分離した。
<第1洗浄工程>
採取した土壌から500gを秤取して、これに第1薬液としての炭酸カルシウム水溶液(0.01mol/L)5L(5000g)を加えた固液比(質量比1/10)にての混合攪拌を行った。混合攪拌条件は、パドル翼攪拌(回転速度250rpm)、攪拌時間1時間、攪拌温度60℃とした。
そして、これを10分間静置した後、デカンテーションにて上澄み液の炭酸カルシウム水溶液4.5Lを分離回収した。湿潤した土壌は、次の第1濯ぎ工程に付した。
なお、回収した炭酸カルシウム水溶液は、次に説明する放射性物質回収工程を行って、後の第1洗浄工程に再利用した。
≪放射性物質回収工程≫
分離回収した4.5Lの炭酸カルシウム水溶液に、モルデナイト1gを加えて混合攪拌を行った。そして、この混合攪拌の際に、混合物のpHを6.5〜7.5の範囲内となるように調整した。pHの調整には、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液と塩酸を使用した。なお、混合攪拌条件は、パドル翼攪拌(回転速度250rpm)、攪拌時間1時間、攪拌温度20℃とした。
そして、これを10分間静置した後、デカンテーションにて上澄み液の炭酸カルシウム水溶液4.4Lを分離回収した。次いで、この炭酸カルシウム水溶液の炭酸カルシウム濃度を測定すると共に、必要量の炭酸カルシウムを更に加えて濃度を0.01mol/Lに再調整した。
なお、分離したモルデナイト水溶液0.1Lは、後の放射性物質回収工程に再利用した。
<第1濯ぎ工程>
前記の湿潤した土壌の全量に、濯ぎ水としての所定量の水(水道水、以下同じ)を加えた固液比(質量比1/10)にての混合攪拌を行った。そして、この混合攪拌の際に、混合物のpHを6.5〜7.5の範囲内となるように調整した。pHの調整には、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液と塩酸を使用した。なお、混合攪拌条件は、パドル翼攪拌(回転速度250rpm)、攪拌時間5分、攪拌温度20℃とした。
そして、これを10分間静置した後、デカンテーションにて上澄み液4.5Lを分離回収した。この第1濯ぎ工程は、同じ条件で3回繰り返して行った。
なお、本実施例での第1薬液としての炭酸カルシウム水溶液の炭酸カルシウム濃度は0.01mol/Lと低いため、分離回収した上澄み液4.5Lは、後の第1濯ぎ工程に再利用した。
3回の第1濯ぎ工程を行った後の湿潤した土壌を遠心脱水機(himac CR-GIII)を使用し、回転速度3000rpmの条件で20分間脱水した。そして、脱水後の土壌から少量の土壌を秤取し、その乾燥土壌質量当りの放射能の量を測定した。土壌の放射能の量は、NaIシンチレーション検出器(CAPINTEC社製 Captus3000)を使用して総放射能量(Cs−total)を測定した。その結果を図6に示す。
図6は、実施例1において、薬液による洗浄後に濯ぎを行った土壌の放射能の量を、洗浄前の土壌の放射能の量を100%とした放射能の量の相対比(%)で示すグラフである。ここでの測定結果は、図6中、実施例1の「第1洗浄・濯ぎ工程1回目」として記す。
<繰り返しの第1洗浄工程及び第1濯ぎ工程>
3回の第1濯ぎ工程を行って脱水した前記の土壌に、第1薬液としての炭酸カルシウム水溶液(0.01mol/L)5L(5000g)を加えた固液比(質量比1/10)にての混合攪拌を行った。混合攪拌条件は、初回の第1洗浄工程と同条件で行った。
但し、使用した第1薬液としての炭酸カルシウム水溶液は、前記の再利用に供するために回収したものである。
次いで、前記と同様にして、炭酸カルシウム水溶液と土壌を分離すると共に、炭酸カルシウム水溶液は、前記と同様にして再利用し、湿潤した土壌は、前記と同様に、3回の第1濯ぎ工程を行った。
そして、前記と同様にして脱水後の土壌の放射能量を測定した。その結果を、図6中、実施例1の「第1洗浄・濯ぎ工程2回目」として記す。
本実施例では、1回の第1洗浄工程について3回の第1濯ぎ工程を行う工程を、合計で3セット行った。つまり、3回の第1洗浄工程と9回の第1濯ぎ工程とを行った。また、第9回目の第1濯ぎ工程を行った後の土壌について、前記と同様にして脱水後の土壌の放射能量を測定した。その結果を、図6中、実施例1の「第1洗浄・濯ぎ工程3回目」として記す。
その後、9回目の第1濯ぎ工程を行った後の土壌を分離して次の第2洗浄工程及び第2濯ぎ工程に付した。ちなみに、これらの第1洗浄工程及び第1濯ぎ工程が終了した後、再利用に供した炭酸カルシウム水溶液及び濯ぎ水は、前記の放射性物質回収工程を行った後に廃棄し、この回収に使用したモルデナイトも分離して廃棄した。
<第2洗浄工程及び第2濯ぎ工程>
本実施例では、第2薬液として、硫酸アンモニウム水溶液(0.01mol/L)を使用した。この第2洗浄工程及び第2濯ぎ工程では、前記の第1洗浄工程で使用した炭酸カルシウム水溶液に代えてこの硫酸アンモニウム水溶液を使用した以外は、前記の第1洗浄工程及び第1濯ぎ工程と同じ要領でこの第2洗浄工程及び第2濯ぎ工程を行った。つまり、3回の第2洗浄工程と9回の第2濯ぎ工程とを行った。
そして、第1回目の第2洗浄工程について行われた第3回目の第2濯ぎ工程後の土壌、第2回目の第2洗浄工程に対して行われた第6回目の第2濯ぎ工程後の土壌、及び第3回目の第2洗浄工程に対して行われた第9回目の第2濯ぎ工程後の土壌のそれぞれについて、前記と同様にして脱水後の土壌の放射能量を測定した。その測定結果を、図6中、それぞれ、実施例1の「第2洗浄・濯ぎ工程1回目」、実施例1の「第2洗浄・濯ぎ工程2回目」、及び実施例1の「第2洗浄・濯ぎ工程3回目」として記す。
<上澄み液の放射能量の測定>
本実施例では、前記の放射性物質回収工程において、第1回目、第2回目及び第3回目の第1洗浄工程のそれぞれで回収された炭酸カルシウム水溶液からモルデナイトで放射性物質が回収される際の、上澄み液の放射能の量の経時変化を測定した。なお、上澄み液の放射能の量は、NaIシンチレーション検出器(CAPINTEC社製 Captus3000)を使用して総放射能量(Cs−total)を測定した。その測定結果を図7に示す。
図7は、放射性物質回収工程における上澄み液の放射能の量の経時変化を示すグラフである。なお、図7中、「上澄み液の放射能量の相対比(%)」は、第1回目の第1洗浄工程で回収された炭酸カルシウム水溶液の放射能の量を100%とした相対比(%)で表している。
(実施例2)
本実施例では、第1薬液として硫酸アンモニウム水溶液(0.01mol/L)を使用し、第2薬液として炭酸カルシウム(0.01mol/L)を使用した以外は、実施例1と同様に、秤取した土壌500gに含まれる放射性物質を分離した。そして、実施例1と同様に、第1薬液による第1洗浄工程、及びこれに続く第1濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定、並びに第2薬液による第2洗浄工程、及びこれに続く第2濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定を行った。その測定結果を図6に示す。
なお、図6中、実施例2についての横軸の「除染前」、「第1洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程2回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程3回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程2回目」及び「第2洗浄・濯ぎ工程3回目」、並びに縦軸の「放射能量の相対比(%)」は、実施例1についてのそれらと同義である。
(比較例1)
本比較例では、第1薬液及び第2薬液として、それぞれ炭酸カルシウム(0.01mol/L)を使用した以外は、実施例1と同様に、秤取した土壌500gに含まれる放射性物質を分離した。そして、実施例1と同様に、第1薬液による第1洗浄工程、及びこれに続く第1濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定、並びに第2薬液による第2洗浄工程、及びこれに続く第2濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定を行った。その測定結果を図6に示す。
なお、図6中、比較例1についての横軸の「除染前」、「第1洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程2回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程3回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程2回目」及び「第2洗浄・濯ぎ工程3回目」、並びに縦軸の「放射能量の相対比(%)」は、実施例1についてのそれらと同義である。
(比較例2)
本比較例では、第1薬液及び第2薬液として、それぞれ硫酸アンモニウム(0.01mol/L)を使用した以外は、実施例1と同様に、秤取した土壌500gに含まれる放射性物質を分離した。そして、実施例1と同様に、第1薬液による第1洗浄工程、及びこれに続く第1濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定、並びに第2薬液による第2洗浄工程、及びこれに続く第2濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定を行った。その測定結果を図6に示す。
なお、図6中、比較例2についての横軸の「除染前」、「第1洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程2回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程3回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程2回目」及び「第2洗浄・濯ぎ工程3回目」、並びに縦軸の「放射能量の相対比(%)」は、実施例1についてのそれらと同義である。
(比較例3)
本比較例では、第1薬液及び第2薬液として、それぞれ炭酸カルシウム水溶液(0.01mol/L)と硫酸アンモニウム水溶液(0.01mol/L)との混合液(体積比1:1)を使用した以外は、実施例1と同様に、秤取した土壌500gに含まれる放射性物質を分離した。そして、実施例1と同様に、第1薬液による第1洗浄工程、及びこれに続く第1濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定、並びに第2薬液による第2洗浄工程、及びこれに続く第2濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定を行った。その測定結果を図6に示す。
なお、図6中、比較例3についての横軸の「除染前」、「第1洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程2回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程3回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程2回目」及び「第2洗浄・濯ぎ工程3回目」、並びに縦軸の「放射能量の相対比(%)」は、実施例1についてのそれらと同義である。
(実施例3)
本実施例では、第1薬液として炭酸マグネシウム水溶液(0.01mol/L)を使用し、第2薬液として硫酸カリウム(0.01mol/L)を使用した以外は、実施例1と同様に、秤取した土壌500gに含まれる放射性物質を分離した。そして、実施例1と同様に、第1薬液による第1洗浄工程、及びこれに続く第1濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定、並びに第2薬液による第2洗浄工程、及びこれに続く第2濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定を行った。その測定結果を図8に示す。
図8は、実施例3において、薬液による洗浄後に濯ぎを行った土壌の放射能の量を、洗浄前の土壌の放射能の量を100%とした放射能の量の相対比(%)で示すグラフである。
なお、図8中、実施例3についての横軸の「除染前」、「第1洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程2回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程3回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程2回目」及び「第2洗浄・濯ぎ工程3回目」、並びに縦軸の「放射能量の相対比(%)」は、図6の実施例1についてのそれらと同義である。
また、実施例1の前記の放射性物質回収工程と同様に、第1回目、第2回目及び第3回目の第1洗浄工程のそれぞれで回収された第1薬液からモルデナイトで放射性物質が回収される際の、上澄み液の放射能の量の経時変化を測定した。その測定結果を図9に示す。
図9は、放射性物質回収工程における上澄み液の放射能の量の経時変化を示すグラフである。なお、図9中、「上澄み液の放射能量の相対比(%)」は、第1回目の第1洗浄工程で回収された第1薬液の放射能の量を100%とした相対比(%)で表している。
(実施例4)
本実施例では、第1薬液として硫酸カリウム水溶液(0.01mol/L)を使用し、第2薬液として炭酸マグネシウム(0.01mol/L)を使用した以外は、実施例1と同様に、秤取した土壌500gに含まれる放射性物質を分離した。そして、実施例1と同様に、第1薬液による第1洗浄工程、及びこれに続く第1濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定、並びに第2薬液による第2洗浄工程、及びこれに続く第2濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定を行った。その測定結果を図8に示す。
なお、図8中、実施例4についての横軸の「除染前」、「第1洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程2回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程3回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程2回目」及び「第2洗浄・濯ぎ工程3回目」、並びに縦軸の「放射能量の相対比(%)」は、実施例1についてのそれらと同義である。
(比較例4)
本比較例では、第1薬液及び第2薬液として、それぞれ炭酸マグネシウム(0.01mol/L)を使用した以外は、実施例1と同様に、秤取した土壌500gに含まれる放射性物質を分離した。そして、実施例1と同様に、第1薬液による第1洗浄工程、及びこれに続く第1濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定、並びに第2薬液による第2洗浄工程、及びこれに続く第2濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定を行った。その測定結果を図8に示す。
なお、図8中、比較例4についての横軸の「除染前」、「第1洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程2回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程3回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程2回目」及び「第2洗浄・濯ぎ工程3回目」、並びに縦軸の「放射能量の相対比(%)」は、実施例1についてのそれらと同義である。
(比較例5)
本比較例では、第1薬液及び第2薬液として、それぞれ硫酸カリウム(0.01mol/L)を使用した以外は、実施例1と同様に、秤取した土壌500gに含まれる放射性物質を分離した。そして、実施例1と同様に、第1薬液による第1洗浄工程、及びこれに続く第1濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定、並びに第2薬液による第2洗浄工程、及びこれに続く第2濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定を行った。その測定結果を図8に示す。
なお、図8中、比較例5についての横軸の「除染前」、「第1洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程2回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程3回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程2回目」及び「第2洗浄・濯ぎ工程3回目」、並びに縦軸の「放射能量の相対比(%)」は、実施例1についてのそれらと同義である。
(比較例6)
本比較例では、第1薬液及び第2薬液として、それぞれ炭酸マグネシウム水溶液(0.01mol/L)と硫酸カリウム水溶液(0.01mol/L)との混合液(体積比1:1)を使用した以外は、実施例1と同様に、秤取した土壌500gに含まれる放射性物質を分離した。そして、実施例1と同様に、第1薬液による第1洗浄工程、及びこれに続く第1濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定、並びに第2薬液による第2洗浄工程、及びこれに続く第2濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定を行った。その測定結果を図8に示す。
なお、図8中、比較例6についての横軸の「除染前」、「第1洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程2回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程3回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程2回目」及び「第2洗浄・濯ぎ工程3回目」、並びに縦軸の「放射能量の相対比(%)」は、実施例1についてのそれらと同義である。
(実施例5)
本実施例では、第1薬液として炭酸水素ナトリウム水溶液(0.01mol/L)を使用し、第2薬液として硫酸セシウム水溶液(0.01mol/L)を使用した。この硫酸セシウム水溶液を使用した第2洗浄工程では、ミキサ攪拌を行った。ちなみに、硫酸セシウム水溶液を使用したこの第2洗浄工程は、混合物のpHを3〜9に設定することが望ましく、pH5〜7に設定することがより望ましい。なお、第2濯ぎ工程もミキサ攪拌を行ったがこの第2濯ぎ工程はパドル翼攪拌でも構わない。そして、これ以外は、実施例1と同様に、秤取した土壌500gに含まれる放射性物質を分離した。そして、第1薬液による第1洗浄工程、及びこれに続く第1濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定、並びに第2薬液による第2洗浄工程、及びこれに続く第2濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定を行った。その測定結果を図10に示す。
図10は、実施例5において、薬液による洗浄後に濯ぎを行った土壌の放射能の量を、洗浄前の土壌の放射能の量を100%とした放射能の量の相対比(%)で示すグラフである。
なお、図10中、実施例5についての横軸の「除染前」、「第1洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程2回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程3回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程2回目」及び「第2洗浄・濯ぎ工程3回目」、並びに縦軸の「放射能量の相対比(%)」は、図6の実施例1についてのそれらと同義である。
また、実施例1の前記の放射性物質回収工程と同様に、第1回目、第2回目及び第3回目の第1洗浄工程のそれぞれで回収された第1薬液からモルデナイトで放射性物質が回収される際の、上澄み液の放射能の量の経時変化を測定した。その測定結果を図11に示す。
図11は、放射性物質回収工程における上澄み液の放射能の量の経時変化を示すグラフである。なお、図11中、「上澄み液の放射能量の相対比(%)」は、第1回目の第1洗浄工程で回収された第1薬液の放射能の量を100%とした相対比(%)で表している。
(実施例6)
本実施例では、第1薬液として硫酸セシウム水溶液(0.01mol/L)を使用し、第2薬液として炭酸水素ナトリウム(0.01mol/L)を使用した。この硫酸セシウム水溶液を使用した第1洗浄工程では、ミキサ攪拌を行った。ちなみに、硫酸セシウム水溶液を使用したこの第1洗浄工程は、混合物のpHを3〜9に設定することが望ましく、pH5〜7に設定することがより望ましい。なお、第1濯ぎ工程もミキサ攪拌を行ったがこの第1濯ぎ工程はパドル翼攪拌でも構わない。そして、これ以外は、実施例1と同様に、秤取した土壌500gに含まれる放射性物質を分離した。そして、第1薬液による第1洗浄工程、及びこれに続く第1濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定、並びに第2薬液による第2洗浄工程、及びこれに続く第2濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定を行った。その測定結果を図10に示す。
なお、図10中、実施例6についての横軸の「除染前」、「第1洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程2回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程3回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程2回目」及び「第2洗浄・濯ぎ工程3回目」、並びに縦軸の「放射能量の相対比(%)」は、実施例1についてのそれらと同義である。
(比較例7)
本比較例では、第1薬液及び第2薬液として、それぞれ炭酸水素ナトリウム(0.01mol/L)を使用した以外は、実施例1と同様に、秤取した土壌500gに含まれる放射性物質を分離した。そして、実施例1と同様に、第1薬液による第1洗浄工程、及びこれに続く第1濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定、並びに第2薬液による第2洗浄工程、及びこれに続く第2濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定を行った。その測定結果を図10に示す。
なお、図10中、比較例7についての横軸の「除染前」、「第1洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程2回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程3回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程2回目」及び「第2洗浄・濯ぎ工程3回目」、並びに縦軸の「放射能量の相対比(%)」は、実施例1についてのそれらと同義である。
(比較例8)
本比較例では、第1薬液及び第2薬液として、それぞれ硫酸セシウム水溶液(0.01mol/L)を使用した。この硫酸セシウム水溶液を使用した第1洗浄工程及び第2洗浄工程では、ミキサ攪拌を行った。ちなみに、硫酸セシウム水溶液を使用したこの第1洗浄工程及び第2洗浄工程は、混合物のpHを3〜9に設定することが望ましく、pH5〜7に設定することがより望ましい。なお、第1濯ぎ工程及び第2濯ぎ工程もミキサ攪拌を行ったがこの第1濯ぎ工程及び第2濯ぎ工程はパドル翼攪拌でも構わない。そして、これ以外は、実施例1と同様に、秤取した土壌500gに含まれる放射性物質を分離した。そして、第1薬液による第1洗浄工程、及びこれに続く第1濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定、並びに第2薬液による第2洗浄工程、及びこれに続く第2濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定を行った。その測定結果を図10に示す。
なお、図10中、比較例8についての横軸の「除染前」、「第1洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程2回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程3回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程2回目」及び「第2洗浄・濯ぎ工程3回目」、並びに縦軸の「放射能量の相対比(%)」は、実施例1についてのそれらと同義である。
(比較例9)
本比較例では、第1薬液及び第2薬液として、それぞれ炭酸水素ナトリウム水溶液(0.01mol/L)と硫酸セシウム水溶液(0.01mol/L)との混合液(体積比1:1)を使用した以外は、実施例1と同様に、秤取した土壌500gに含まれる放射性物質を分離した。そして、実施例1と同様に、第1薬液による第1洗浄工程、及びこれに続く第1濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定、並びに第2薬液による第2洗浄工程、及びこれに続く第2濯ぎ工程後の土壌における放射能の量の測定を行った。その測定結果を図10に示す。
なお、図10中、比較例9についての横軸の「除染前」、「第1洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程2回目」、「第1洗浄・濯ぎ工程3回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程1回目」、「第2洗浄・濯ぎ工程2回目」及び「第2洗浄・濯ぎ工程3回目」、並びに縦軸の「放射能量の相対比(%)」は、実施例1についてのそれらと同義である。
(実施例及び比較例の評価)
図6、図8及び図10に示すように、実施例1から6では、土壌中の放射能の量を99%以上低減できることが確認できた。
これに対し、土壌の洗浄に1種類の薬液のみを使用した比較例1、2、4、5、7、8では、多くても放射能の量が60%低減されるに止まっていた。
また、2種類の薬液を混合したものを使用した比較例3、6、9では、多くても放射能の量が20%低減されるに止まっていた。
以上のことから、土壌に対して複数の薬液のそれぞれを分けて別々に接触させる洗浄工程を有する本発明は、1種の薬液で土壌を洗浄するもの、及び複数の薬液の混合物で土壌を洗浄するものよりも、はるかに土壌含有放射性物質の分離性能に優れていることが確認できた。
また、図7、図9及び図11に示すように、実施例1、3、5のいずれにおいても、第1洗浄工程で使用した第1薬液にモルデナイトを加えて撹拌した際に(1回目、2回目及び3回目の放射性物質回収工程の際に)、モルデナイトを加えてから60分後の上澄み液の放射能は検出されなかった。
また、図示しないが、第2洗浄工程で使用した第2薬液にモルデナイトを加えて撹拌した際に(1回目、2回目及び3回目の放射性物質回収工程の際に)、モルデナイトを加えてから60分後の上澄み液の放射能は検出されなかった。
したがって、放射性物質含有土壌500gを処理する場合に、モルデナイトの前記の再利用を行うことにより、第1洗浄工程及び第2洗浄工程で使用した第1薬液及び第2薬液中に含まれる放射性物質の回収には、合計2gのモルデナイトで足りることが確認できた。
2 第1ミキサ
2A 第1ミキサ
2B 第1ミキサ
3 第1セトラ
3A 第1セトラ
3B 第1セトラ
4 第1水洗槽
5 第1静置槽
6 第2ミキサ
7 第2セトラ
8 第2水洗槽
9 第2静置槽
10 第1薬液槽
13 攪拌装置
14 温度制御装置
16 第1回収装置
17 第1濯ぎ水槽
20 第2薬液槽
23 第2回収装置
24 第2濯ぎ水槽
27 脱水装置
R1 第1薬液
R2 第2薬液
S 土壌
W 濯ぎ水

Claims (8)

  1. 土壌に含まれる放射性物質を溶出可能な複数種の薬液のそれぞれを分けて別々に前記土壌に対して接触させる複数の段階からなる洗浄工程を有することを特徴とする土壌含有放射性物質の分離方法。
  2. 請求項1に記載の土壌含有放射性物質の分離方法において、
    前記放射性物質が前記土壌の荷電基に結合する金属イオンであり、
    前記複数種の薬液は、前記土壌の荷電基に結合するカウンターイオンを含む薬液から選択されることを特徴とする土壌含有放射性物質の分離方法。
  3. 請求項2に記載の土壌含有放射性物質の分離方法において、
    前記複数種の薬液のそれぞれは、前記カウンターイオンを含む塩の水溶液であることを特徴とする土壌含有放射性物質の分離方法。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の土壌含有放射性物質の分離方法において、
    前記複数の段階からなる洗浄工程の各段階のそれぞれの実施後に、前記土壌を水洗する濯ぎ工程を更に有することを特徴とする土壌含有放射性物質の分離方法。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の土壌含有放射性物質の分離方法において、
    前記複数の段階からなる洗浄工程の各段階のそれぞれは、前記土壌に対して使用される一の薬液を、複数回断続的に当該土壌に繰り返して接触させる多段で構成されていることを特徴とする土壌含有放射性物質の分離方法。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の土壌含有放射性物質の分離方法において、
    前記洗浄工程で前記土壌と接触した後の前記薬液に溶出された前記放射性物質を、当該薬液から回収する放射性物質回収工程を有することを特徴とする土壌含有放射性物質の分離方法。
  7. 請求項6に記載の土壌含有放射性物質の分離方法において、
    前記放射性物質回収工程で前記放射性物質が回収された後の前記薬液が、循環されて前記洗浄工程で再使用されることを特徴とする土壌含有放射性物質の分離方法。
  8. 請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の土壌含有放射性物質の分離方法において、
    前記濯ぎ工程で前記土壌を水洗した後の水が、循環されて当該濯ぎ工程で再使用されることを特徴とする土壌含有放射性物質の分離方法。
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