JP2013172661A - キシリトール生成酵母およびそれを用いたキシリトールの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】キシリトールを効率よく生成できる酵母ならびにこれを用いたキシリトールの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のキシリトール生成酵母は、ミトコンドリア移行シグナルが不活性化された改変Pos5タンパク質を発現し、且つ、キシロース還元能を有する。本発明のキシリトール生成酵母は、例えば、さらに、チャネルの活性制御ドメインが不活性化された改変Fps1タンパク質を発現することが好ましい。本発明のキシリトール生成酵母を、キシロース存在下で培養することにより、効率よく、キシリトールを生成できる。キシロースを原料として効率よくキシリトールを生成できることから、バイオマスを有効利用できる。
【選択図】図7

Description

本発明は、キシリトールを生成する酵母およびこれを用いたキシリトールの製造方法に関し、具体的には、キシロースを効率よくキシリトールに変換する酵母およびこれを用いたキシリトールの製造方法に関する。
近年、石油等の化石燃料の減少、二酸化炭素の削減等の観点から、バイオマスを原料として、エネルギー源等の有用物質を供給する研究が進められ、実用化されるに到っている。しかし、前記バイオマスとして利用されている主要な原料は、例えば、トウモロコシ、大豆、ヤシ油等の食料である。このため、食料源の確保から、食料ではなく、コーンコブ、木材、稲ワラ等の廃棄物を原料として有効利用することが求められている。これらの廃棄物は、多糖としてヘミセルロースを含んでおり、前記ヘミセルロースには、キシロース、アラビノース等の五炭糖が含まれることから、これらの五炭糖を基質として利用できることが望ましい。他方、バイオマスからの有用物質の生産においては、酵母が広く利用されており、キシロース資化性酵母は、キシロースを基質とし、キシロース還元酵素によりキシリトールを生産できることが知られている(非特許文献1、2、3参照)。
キシリトールは、砂糖と同程度の甘味を有し、独特の清涼感を持つ甘味料である。キシリトールは、例えば、加熱による甘みの変化がないため、加工に適しており、口腔内の細菌による酸の産生がほとんどないことから非う蝕性であり、さらに、血糖値の上昇抑制作用や、骨密度の改善効果等も知られており、非常に有用性の高い甘味料である。現在、キシリトールの工業生産は、トウモロコシの茎および芯等を加水分解して、キシロースを抽出し、高温、高圧下での、ニッケル触媒を用いた化学的還元によって、製造されている。しかし、この方法は、環境負荷が高く、使用した触媒の影響、低収率、高コスト等の課題がある。そこで、酵母を利用したバイオプロセスによる、新たなキシリトール生産系の確立が望まれている。
Bioprocess Biosyst Eng. 2012 Jan; 35(1-2): 199-204. Epub 2011 Oct 4. Bioresour Technol. 2012 Feb; 105: 134-41. Epub 2011 Dec 7. Prep Biochem Biotechnol. 2012 Jan; 42(1): 1-14.
そこで、本発明は、キシリトールを効率よく生成できる酵母ならびにこれを用いたキシリトールの製造方法の提供を目的とする。
前記目的を達成するために、本発明のキシリトール生成酵母は、ミトコンドリア移行シグナルが不活性化された改変Pos5タンパク質を発現し、且つ、キシロース還元能を有することを特徴とする。
本発明のキシリトールの製造方法は、前記本発明のキシリトール生成酵母を培養する培養工程を含むことを特徴とする。
本発明のキシリトール生成酵母によれば、キシロースを基質として、効率よくキシリトールを生成できる。このため、本発明は、例えば、前述の廃棄物等のバイオマスを原料として、キシリトールをバイオプロセスによって製造できるため、極めて有用といえる。
実施例で用いたプラスミドpENTPOS5ΔN1の概略図である。 実施例で用いたプラスミドpCR4FPS1ΔN1の概略図である。 実施例で用いたプラスミドpYCN_RfAの概略図である。 実施例で用いたプラスミドpYCNPOS5ΔN1の概略図である。 実施例で用いたプラスミドpJHIXSB G418Bの概略図である。 実施例で用いたプラスミドpJHIGFPS1ΔN1の概略図である。 実施例1におけるPOS5ΔN1遺伝子高発現株に関するキシロース発酵試験の結果を示すグラフである。 実施例2におけるPOS5ΔN1遺伝子/FPS1ΔN1遺伝子高発現株に関するキシロース発酵試験の結果を示すグラフである。 実施例3におけるPOS5ΔN1遺伝子高発現株、および、POS5ΔN1遺伝子/FPS1ΔN1遺伝子高発現株に関するキシロース発酵試験の結果を示すグラフである。
(キシリトール生成酵母)
本発明のキシリトール生成酵母は、前述のように、ミトコンドリア移行シグナルが不活性化された改変Pos5タンパク質を発現し、且つ、キシロース還元能を有することを特徴とする。
Pos5タンパク質(YPL188W)は、NAD(H)リン酸化酵素である。
本発明のキシリトール生成酵母が、キシリトールを効率よく生成できる理由、すなわち、キシロースからキシリトールへの変換を効率よく行える理由は、以下のように推測される。なお、本発明は、この推測には制限されない。キシロース還元酵素は、キシロースをキシリトールに変換する際、同時に、補酵素であるNADPHをNADPに変換する。このため、酵母による発酵が進むにしたがって、補酵素NADPHが減少し、変換効率が低下すると考えられる。そこで、本発明者らは、鋭意研究の結果、まず、第1に、NADPHを確保するため、NAD(H)リン酸化酵素であるPos5タンパク質を利用することを見出した。Pos5タンパク質は、NADHをNADPHに変換し、NADをNADPに変換する触媒機能を有するが、NADに対するよりも、NADHに対するKm値が低い。このため、主に、NADHをNADPHに変換することから、NADPHを確保できる。さらに、第2に、キシロース還元酵素の反応が細胞質で行われることから、細胞質での合成後にミトコンドリア内に移動するPos5タンパク質を、前記細胞質に止めることで、効果的にNADHをリン酸化してNADPHを供給できることを見出した。そこで、前記Pos5タンパク質は、ミトコンドリア移行シグナルによって細胞質からミトコンドリアに移動するため、前記シグナルを不活性化したPos5タンパク質を発現する酵母を作製した結果、キシロースからキシリトールへの変換を効率よく行い、キシリトール収率を向上することを可能とした。
本発明において、前記酵母は、特に制限されない。前記酵母は、例えば、出芽酵母および分裂酵母があげられる。前記出芽酵母は、例えば、サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)があげられ、NBRC1951、NBRC1952、NBRC1953、NBRC1954、X2180−1A(ATCC26786)、CB11(Berkley Stock Center)、W303−1A(BY4848)、X2180−1A−XFN2、X2180−1A−XFN3、X2180−1A−XR1、X2180−1A−XR2等があげられる。前記分裂酵母は、例えば、シゾサッカロミセス ジャポニクス(Schizosaccharomyces japonicusHasegawaea japonicus)、シゾサッカロミセス オクトスポルス(Schizosaccharomyces octosporusOctosporomyces octosporus)及びシゾサッカロミセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等があげられる。この他に、例えば、ピキア スティピティス(Pichia stipitis)、キャンディダ マグノリアエ(Candida magnoliae)等も使用できる。
本発明のキシリトール生成酵母において、前記改変Pos5タンパク質は、前述のように、前記ミトコンドリア移行シグナルの不活性化によって、例えば、ミトコンドリアと比較して、細胞質において多く発現させることができる。本発明のキシリトール生成酵母において、前記改変Pos5タンパク質は、過剰発現していることが好ましい。
酵母において前記改変Pos5タンパク質を発現させる方法は、特に制限されず、例えば、酵母に、前記改変Pos5タンパク質をコードする遺伝子を導入することで行える。すなわち、酵母に、前記改変Pos5タンパク質をコードする遺伝子を導入することで、本発明のキシリトール生成酵母を製造できる。このようにして製造される本発明のキシリトール生成酵母は、例えば、前記改変Pos5タンパク質をコードする遺伝子を有する酵母といえる。以下、前記改変Pos5タンパク質をコードする遺伝子を、改変POS5遺伝子という。前記改変POS5遺伝子ならびに前記遺伝子の導入に関しては、後述する。
本発明において、前記改変Pos5タンパク質は、前記ミトコンドリア移行シグナルが不活性化されていればよい。前記ミトコンドリア移行シグナルの不活性化とは、本来のミトコンドリア移行シグナルの機能を奏さないこと、つまり、前記シグナルによる細胞質からミトコンドリアへの移行が生じないことを意味する。
前記改変Pos5タンパク質は、前述のように、前記改変POS5遺伝子の導入により、酵母内で発現することができ、前記改変Pos5タンパク質および前記改変POS5遺伝子の由来は、特に制限されない。前記改変POS5遺伝子および前記改変Pos5タンパク質は、例えば、酵母由来があげられ、好ましくは、サッカロミセス属由来、より好ましくは、サッカロミセス セレビジエ由来があげられる。サッカロミセス属由来のPOS5遺伝子およびPos5タンパク質は、例えば、Saccharomyces Genome Databaseに登録されており、サッカロミセス セレビシエ由来のPOS5遺伝子およびPos5タンパク質は、登録番号YPL188Wで登録されている。サッカロミセス セレビシエのPOS5遺伝子の塩基配列を、配列番号1に示し、Pos5タンパク質のアミノ酸配列を、配列番号2に示す。POS5遺伝子において、前記ミトコンドリア移行シグナルのコード配列は、配列番号1の1〜51番目の領域であり、Pos5タンパク質において、前記ミトコンドリア移行シグナルは、配列番号2の1〜17番目の領域である。
前記Pos5タンパク質およびPOS5遺伝子は、これらの例示には限定されず、例えば、下記表1に示す種由来のPos5タンパク質およびPOS5遺伝子が同様に利用できる。
Figure 2013172661
前記ミトコンドリア移行シグナルの不活性化は、特に制限されず、例えば、前記シグナル配列における変異によって不活性化されてもよい。前記変異は、例えば、アミノ酸の欠失、置換および/挿入があげられる。前記ミトコンドリア移行シグナルの配列は、例えば、全部が変異してもよいし、一部が変異してもよく、前記変異が欠失の場合、全部が欠失してもよいし、一部が欠失してもよい。
前記改変Pos5タンパク質は、例えば、(P1)〜(P3)のタンパク質があげられる。
(P1)配列番号2のアミノ酸配列において、2〜17番目のアミノ酸残基が、欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、前記ミトコンドリア移行シグナルが不活性化されたタンパク質
(P2)前記(P1)のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、前記ミトコンドリア移行シグナルが不活性化され、且つリン酸化活性を有するタンパク質
(P3)前記(P1)のアミノ酸配列に対して、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、前記ミトコンドリア移行シグナルが不活性化され、且つリン酸化活性を有するタンパク質
前記(P1)の改変Pos5タンパク質は、例えば、前記ミトコンドリア移行シグナルが不活性化されていればよい。具体的には、1〜17番目の前記ミトコンドリア移行シグナルは、例えば、2〜17番目の領域が変異していればよく、1〜17番目の領域が変異してもよい。
前記変異は、例えば、中でも欠失が好ましく、前記(P1)において、「欠失、置換および/または付加」は、「欠失」であることが好ましい。前記改変Pos5タンパク質は、例えば、前記ミトコンドリア移行シグナルの全部を欠失してもよいし、前記ミトコンドリア移行シグナルの一部を欠失してもよい。付加は、例えば、配列内への挿入の意味も含む。
前記(P2)および(P3)は、前記ミトコンドリア移行シグナルが不活性化され、且つ、リン酸化活性を有するタンパク質であればよい。具体例として、例えば、この条件を満たす範囲において、例えば、2〜17番目の領域において、変異していない配列番号2と同じアミノ酸残基を有してもよい。
前記(P2)において、「1もしくは数個」は、例えば、前記(P1)のアミノ酸配列からなるタンパク質が、前記ミトコンドリア移行シグナルが不活性化され、且つリン酸化活性を有する範囲であればよい。前記(P1)のアミノ酸配列において、例えば、1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜9個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個、最も好ましくは1または2個のアミノ酸が、欠失、置換および/または付加されてもよい。なお、本発明において、アミノ酸数および塩基数の数値範囲は、その範囲に属する正の整数を全て開示するものであり、例えば、「1〜3個」との記載は、「1、2、3個」の全ての開示を意味する(以下、同様)。
前記(P3)において、「同一性」は、例えば、前記(P3)のアミノ酸配列からなるタンパク質が、前記ミトコンドリア移行シグナルが不活性化され、且つリン酸化活性を有する範囲であればよい。前記同一性は、例えば、90%以上であり、好ましくは95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。前記同一性は、例えば、BLAST、FAST等の解析ソフトウェアを用いて、デフォルトのパラメータにより算出できる(以下、同様)。
前記改変Pos5タンパク質において、前記ミトコンドリア移行シグナルを除く領域は、例えば、(p1)〜(p3)のタンパク質があげられる。
(p1)配列番号2の18〜414番目のアミノ酸配列からなるタンパク質
(p2)前記(p1)のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、リン酸化活性を有するタンパク質
(p3)前記(p1)のアミノ酸配列に対して、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、リン酸化活性を有するタンパク質
前記改変Pos5タンパク質は、例えば、前記(p1)〜(p3)のアミノ酸配列のN末端に、前記変異したミトコンドリア移行シグナルが結合したタンパク質である。前記ミトコンドリア移行シグナルの全部を欠失させた場合、前記改変Pos5タンパク質は、例えば、前記(p1)〜(p3)のタンパク質である。
前記改変Pos5タンパク質について、サッカロミセス セレビジエ由来の配列番号2に示すPos5タンパク質に基づいて、アミノ酸配列を例示したが、本発明は、これには制限されない。前記配列番号2のPos5タンパク質の他に、他のサッカロミセス セレビジエ株由来、他の酵母由来、他の微生物由来のPos5タンパク質に基づいて、発現させる改変Pos5タンパク質のアミノ酸配列を設定できる。そして、前記アミノ酸配列に基づいて、改変POS5遺伝子の配列を設計し、それに対応する遺伝子を酵母に導入することで、前記改変Pos5タンパク質を発現するキシリトール生成酵母を製造できる。
本発明のキシリトール生成酵母において、前記キシロース還元能は、キシロースを還元してキシリトールに変換する機能であり、キシロース還元酵素の触媒能を意味する。キシロース還元酵素は、前述のように、NADPHを補酵素として、キシリトールを生成する。本発明のキシリトール生成酵母において、前記キシロース還元能は、例えば、酵母が本来有するキシロース還元酵素の還元能でもよいし、キシロース還元酵素のコード遺伝子(以下、キシロース還元酵素遺伝子)を導入し、キシロース還元酵素を発現することによってに付与された還元能でもよい。本発明のキシリトール生成酵母において、前記キシロース還元酵素は、過剰発現していることが好ましい。
前者の場合、酵母は、例えば、ピキア スティピティス(Pichia stipitis)、キャンディダ マグノリアエ(Candida magnoliae)等があげられる。
後者の場合、本発明のキシリトール生成酵母は、例えば、キシロース還元酵素遺伝子が導入された酵母が好ましい。また、本発明のキシリトール生成酵母は、例えば、さらに、キシリトール脱水素酵素のコード遺伝子(以下、キシリトール脱水素酵素遺伝子)およびキシルロースリン酸化酵素のコード遺伝子(以下、キシルロースリン酸化酵素遺伝子)が導入された酵母が好ましい。このように、キシロース還元酵素遺伝子、キシリトール脱水素酵素遺伝子およびキシルロースリン酸酵素遺伝子が導入された酵母は、例えば、キシロースを単独の炭素源とする培地を使用する場合も、キシロースを炭素源として効果的にエネルギーを確保できる。他方、これら3種類の遺伝子のうち、キシロース還元酵素遺伝子のみを導入した酵母の場合、例えば、炭素源として、キシロースの他に、炭素源としてグルコース等を含有する培地を使用することが好ましい。
前記キシロース還元酵素遺伝子および前記キシロース還元酵素の由来は、特に制限されない。前記キシロース還元酵素遺伝子および前記キシロース還元酵素は、例えば、サッカロミセス属、ピキア属、シゾサッカロミセス属、アスペルギルス属等の酵母由来、ラクトバチルス属由来等があげられる。以下の表に、具体例として、前記キシロース還元酵素遺伝子の由来、遺伝子名およびデータベースの登録番号を示す。なお、これらは例示であって、本発明を制限するものではない。
Figure 2013172661
前記キシリトール脱水素酵素遺伝子および前記キシリトール脱水素酵素の由来は、特に制限されない。前記キシリトール脱水素酵素遺伝子および前記キシリトール脱水素酵素は、例えば、サッカロミセス属、アスペルギルス属、スタフィロコッカス属、ピキア属等の酵母由来等があげられる。以下の表に、具体例として、前記キシリトール脱水素酵素遺伝子の由来、遺伝子名およびデータベースの登録番号を示す。なお、これらは例示であって、本発明を制限するものではない。
Figure 2013172661
前記キシルロースリン酸化酵素遺伝子および前記キシルロースリン酸化酵素の由来は、特に制限されない。前記キシルロースリン酸化酵素遺伝子および前記キシルロースリン酸化酵素は、例えば、サッカロミセス属、スタフィロコッカス属、ピキア属等の酵母由来、エッセリシア属由来等があげられる。以下の表に、具体例として、前記キシルロースリン酸化酵素遺伝子の由来、遺伝子名およびデータベースの登録番号を示す。なお、これらは例示であって、本発明を制限するものではない。
Figure 2013172661
前記キシロース還元酵素遺伝子が導入された酵母は、例えば、下記表に示す酵母株等が使用できる。
Figure 2013172661
本発明のキシリトール生成酵母は、さらに、チャネルの活性制御ドメインが不活性化された改変Fps1タンパク質を発現することが好ましい。本発明のキシリトール生成酵母において、前記改変Fps1タンパク質は、過剰発現していることが好ましい。Fps1(YLL043W)タンパク質は、浸透圧調節物質であるグリセロールのチャネルであり、浸透圧の調節タンパク質である。
本発明のキシリトール生成酵母は、このように、さらに前記改変Fps1タンパク質を発現することにより、細胞質で生成したキシリトールを効率よく細胞外に排出できる。このため、酵母内におけるキシリトール生成を、例えば、長時間にわたって効率よく行うことが可能となる。Fps1タンパク質が、キシリトールのトランスポーターチャネルとして機能することは、本発明者らが初めて明らかにした知見である。また、Fps1タンパク質は、活性制御ドメインによって、チャネルとしての排出能が抑制される。そこで、本発明においては、さらに、前記活性制御ドメインを不活性化させた前記改変Fps1タンパク質を発現させることで、前記排出能の抑制が解除される。このため、例えば、長期にわたって、効果的に、酵母内で生成したキシリトールを細胞外に排出することが可能である。
酵母において前記改変Fps1タンパク質を発現させる方法は、特に制限されず、例えば、酵母に、前記改変Fps1タンパク質をコードする遺伝子を導入することで行える。すなわち、酵母に、前記改変FPS1遺伝子および前記改変Fps1タンパク質をコードする遺伝子を導入することで、本発明のキシリトール生成酵母を製造できる。このようにして製造される本発明のキシリトール生成酵母は、例えば、前記改変POS5遺伝子および前記改変FPS1遺伝子を有する酵母と言える。以下、前記改変Fps1タンパク質をコードする遺伝子を、改変FPS1遺伝子という。前記改変FPS1遺伝子ならびに前記遺伝子の導入に関しては、後述する。
本発明において、前記改変Fps1タンパク質は、前記活性制御ドメインが不活性化されていればよい。本来、Fps1タンパク質は、前記活性制御ドメインの働きにより、浸透圧によって、その排出能を調節できるが、前記活性制御ドメインの不活性化とは、不活性化によりFps1タンパク質の排出能が、構成的に高いことを意味する。ここで「構成的に高い」とは、浸透圧に応じた排出能の制御を受けることなく、常に高い排出能を維持していることをいう。
前記改変Fps1タンパク質は、例えば、前記改変FPS1遺伝子の導入により、酵母内で発現することができ、前記改変FPS1遺伝子および前記改変Fps1タンパク質は、例えば、酵母由来があげられ、好ましくは、サッカロミセス属由来、より好ましくは、サッカロミセス セレビシエ由来があげられる。サッカロミセス属由来のFPS1遺伝子およびFps1タンパク質は、例えば、Saccharomyces Genome Databaseに登録されており、サッカロミセス セレビシエ由来のFPS1遺伝子およびFps1タンパク質は、登録番号YLL043Wで登録されている。サッカロミセス セレビシエのFPS1遺伝子の塩基配列を、配列番号3に示し、Fps1タンパク質のアミノ酸配列を、配列番号4に示す。FPS1遺伝子において、前記活性制御ドメインのコード配列は、前記配列番号3の565〜699番目の領域であり、Fps1タンパク質において、前記活性制御ドメインは、前記配列番号4の189〜233番目の領域である。
前記活性制御ドメインの不活性化は、特に制限されず、前記活性制御ドメインの配列における変異によって不活性化されてもよい。前記変異は、例えば、アミノ酸の欠失、置換および/または付加があげられる。前記活性制御ドメインの配列は、例えば、全部が変異してもよいし、一部が変異してもよく、前記変異が欠失の場合、全部が欠失してもよいし、一部が欠失してもよい。
前記改変Fps1タンパク質、例えば、(F1)〜(F4)のタンパク質があげられる。
(F1)配列番号4のアミノ酸配列において、217〜230番目のアミノ酸残基が、欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、前記活性制御ドメインが不活性化されたタンパク質
(F2)配列番号4のアミノ酸配列において、222,225,228,229,230,231,232および/または233番目のアミノ酸残基が置換されたアミノ酸配列からなり、前記活性制御ドメインが不活性化されたタンパク質
(F3)前記(F1)または(F2)のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、前記活性制御ドメインが不活性化され、且つチャネル機能を有するタンパク質
(F4)前記(F1)または(F2)のアミノ酸配列に対して、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、前記活性制御ドメインが不活性化され、且つチャネル機能を有するタンパク質
前記(F1)の改変Fps1タンパク質は、例えば、前記活性制御ドメインが不活性化されていればよい。具体的には、前記活性制御ドメインにおいて、217〜230番目の領域が変異していればよく、さらにその他のアミノ酸残基が変異されてもよい。後者の場合、例えば、189〜230番目の領域が変異してもよい。
前記変異は、例えば、中でも欠失が好ましく、前記(F1)において、「変異」は、「欠失」であることが好ましい。前記改変Fps1タンパク質は、例えば、前記活性制御ドメインの全部を欠失してもよいし、前記活性制御ドメインの一部を欠失してもよい。
前記(F2)の改変Fps1タンパク質は、例えば、前記活性制御ドメインが不活性化されていればよい、具体的には、前記活性制御ドメインにおいて、配列番号4のアミノ酸配列における222、225、228、229、230、231、232および/または233番目のアミノ酸残基のうち、いずれか1つまたは2つ以上が置換されてもよい。前記アミノ酸残基の中でも、例えば、225、228、231および/または232番目のアミノ酸残基の置換が好ましい。前記アミノ酸残基の置換は、例えば、いずれか1カ所の単独置換でもよいし、2カ所以上の置換でもよい。
前記アミノ酸の置換は、例えば、非保存的置換であることが好ましい。前記非保存的置換は、タンパク質の機能を実質的に改変する置換である。具体例としては、例えば、疎水性および親水性の指標(ハイドロパシー)、極性、電荷等の化学的性質、または、二次構造等の物理的性質等が、非類似であるアミノ酸への置換がが好ましい。
前記(F3)および(F4)は、前記活性制御ドメインが不活性化され、且つチャネル機能を有するタンパク質であればよい。この条件を満たす範囲において、例えば、217〜230番目の領域において、変異しておらず、配列番号4と同じアミノ酸残基を有してもよい。
前記(F2)において、「1もしくは数個」は、例えば、前記(F1)のアミノ酸配列からなるタンパク質が、前記活性制御ドメインが不活性化され、且つ前記チャネル機能を有する範囲であればよい。前記(F1)のアミノ酸配列において、例えば、1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜9個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個、最も好ましくは1または2個のアミノ酸が、欠失、置換および/または付加されてもよい。
前記(F3)において、「同一性」は、例えば、前記(F3)のアミノ酸配列からなるタンパク質が、前記活性制御ドメインが不活性化され、且つ前記チャネル機能を有する範囲であればよい。前記同一性は、例えば、90%以上であり、好ましくは95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
前記改変Fps1タンパク質において、前記活性制御ドメインを除く領域は、例えば、(f1)〜(f3)のタンパク質があげられる。
(f1)配列番号4の1〜216番目および231〜669番目のアミノ酸配列からなるタンパク質
(f2)前記(f1)のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、前記チャネル機能を有するタンパク質
(f3)前記(f1)のアミノ酸配列に対して、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、前記チャネル機能を有するタンパク質
前記(f2)において、「1もしくは数個」は、例えば、前記(f1)のアミノ酸配列からなるタンパク質が、前記チャネル機能を有する範囲であればよい。前記(f1)のアミノ酸配列において、例えば、1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜9個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個、最も好ましくは1または2個のアミノ酸が、欠失、置換および/または付加されてもよい。
前記(f3)において、「同一性」は、例えば、前記(f3)のアミノ酸配列からなるタンパク質が、前記チャネル機能を有する範囲であればよい。前記同一性は、例えば、90%以上であり、好ましくは95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
前記改変Fps1タンパク質について、サッカロミセス セレビジエ由来の配列番号4に示すFps1タンパク質に基づいて、アミノ酸配列を例示したが、本発明は、これには制限されない。前記配列番号4のFps1タンパク質の他に、他のサッカロミセス セレビジエ株由来、他の酵母由来、他の微生物由来のFps1タンパク質に基づいて、発現させる改変Fps1タンパク質のアミノ酸配列を設定できる。そして、前記アミノ酸配列に基づいて、改変Fps1タンパク質の配列を設計し、それに対応する遺伝子を酵母に導入することで、前記改変Fps1タンパク質を発現するキシリトール生成酵母を製造できる。
(キシリトール生成酵母の製造方法)
つぎに、本発明のキシリトール生成酵母の製造方法について説明する。なお、以下の方法は、例示であって、本発明は、これらの方法に制限されない。
本発明のキシリトール生成酵母は、前述のように、例えば、酵母に、前記改変POS5遺伝子を導入することで製造できる。
前記改変POS5遺伝子を導入する酵母(以下、「宿主酵母」という)は、特に制限されず、例えば、前述のような各種酵母が使用できる。また、前記宿主酵母は、例えば、キシロース還元能を有する酵母、キシロース還元能を有さない酵母のいずれであってもよい。後者の場合は、前述のように、例えば、前記宿主酵母に、前記キシロース還元酵素遺伝子を導入すればよい。
本発明のキシリトール生成酵母が、さらに、前記改変Fps1タンパク質を発現する場合は、前述のように、例えば、前記宿主酵母に、さらに、前記改変FPS1遺伝子を導入すればよい。
前記宿主酵母に対する前記各種遺伝子の導入方法は、特に制限されず、公知の方法が採用できる。前記遺伝子の導入は、例えば、前記遺伝子を含有する発現ベクターを使用できる。本発明のキシリトール生成酵母の製造において、例えば、前記改変POS5遺伝子の他に、前記改変FPS1遺伝子および/または前記キシロース還元酵素遺伝子を導入する場合、各遺伝子は、例えば、一つの発現ベクターに挿入してもよいが、遺伝子ごとに発現ベクターを使用することが好ましい。
前記発現ベクターは、例えば、前記宿主酵母において、前記遺伝子がコードするタンパク質を発現可能なように、前記遺伝子を含んでいればよく、その他の構成は何ら制限されない。
前記発現ベクターは、例えば、骨格となるベクター(以下、「基本ベクター」ともいう)に、前記遺伝子を挿入することで作製できる。前記基本ベクターの種類は、特に制限されず、例えば、多コピー型(YEp型)、単コピー型(YCp型)、染色体組み込み型(YIp型)等があげられる。前記YEp型ベクターは、例えば、YEp24(J. R. Broach et al., Experimental Manipulation of Gene Expression, Academic Press, New York, 83, 1983)、前記YCp型ベクターは、例えば、YCp50(M. D. Rose et al., Gene, 60, 237, 1987)、前記YIp型ベクターは、例えば、YIp5(K. Struhl et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76, 1035, 1979)、等が報告されている。この他にも、例えば、pYE22m(Biosci. Biotech. Biochem., 59, 1221-1228, 1995)、YIp1(X70480)等があげられる。これらは、容易に入手可能である。
前記発現ベクターは、例えば、前記遺伝子の発現を調節する調節配列を有することが好ましい。前記調節配列は、宿主酵母内で機能すればよく、例えば、プロモーター、ターミネーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル配列、複製起点配列(ori)等があげられる。前記調節配列は、例えば、前記基本ベクターが予め備える配列を利用してもよいし、前記基本ベクターに、さらに、前記調節配列を挿入してもよいし、前記基本ベクターが備える調節配列を、他の調節配列に置き換えてもよい。前記発現ベクターにおいて、前記調節配列の配置は、特に制限されず、前記遺伝子の発現を機能的に調節できるように配置されていればよく、公知の方法に基づいて行うことができる。前記遺伝子は、例えば、発現を促進できることから、前記プロモーターに対してセンス方向に導入することが好ましい。
前記発現ベクターの具体例としては、例えば、下記(i)〜(iii)の構成要素を含む発現カセットを有する形態があげられる。
(i)宿主酵母内で転写可能なプロモーター
(ii)前記プロモーターに結合した目的遺伝子
(iii)RNA分子の転写終結およびポリアデニル化に関し、宿主酵母内で機能するシグナル
前記プロモーターおよびターミネーターは、例えば、宿主酵母内で機能すればよく、その組合せは特に制限されない。前記プロモーターは、例えば、TDH3p、PYK1p、PGK、GAP、TPI、GAL1、GAL10、ADH2、PHO5、CUP1、MFα1等があげられる。また、高発現プロモーターは、TDH3、TPI1、PGK1、PGI1、PYK1、ADH1等があげられる。
前記発現ベクターは、例えば、さらに、選択マーカーのコード配列を有してもよい。前記選択マーカーは、例えば、栄養要求性マーカー、薬剤耐性等の耐性マーカー、蛍光タンパク質マーカー、酵素マーカー、細胞表面レセプターマーカー等があげられる。前記栄養要求性マーカーは、例えば、ura3遺伝子、ura5遺伝子、niaD遺伝子等があげられる。前記薬剤耐性マーカーは、例えば、ハイグロマイシン耐性、ゼオシン耐性、ジェネチシン耐性等のマーカーがあげられる。この他にも、例えば、銅耐性遺伝子(CUP1)(Marin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, 337 1984)、セルレニン耐性遺伝子として、fas2m遺伝子(猪腰淳嗣ら, 生化学, 64, 660, 1992)、PDR4遺伝子(Hussain et al., gene, 101, 149, 1991)等が利用可能である。
前記宿主酵母の形質転換方法は、特に制限されず、公知の方法が利用できる。前記方法は、例えば、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75 p1929(1978))、酢酸リチウム法(J. Bacteriology, 153, p163(1983))等があげられ、この他にも、例えば、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75 p1929 (1978)”、“Methods in yeast genetics, 2000 Edition: A Cold Spring Harbor Laboratory Course Manual”等に記載の方法が採用できる。
その他、一般的なクローニング技術に関しては、例えば、“Sambrook & Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual Vol. 3, Cold Spring Harbor Laboratory Press 2001”、“Methods in Yeast Genetics、A laboratory manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor, NY)”等を参照できる。
前記改変POS5遺伝子は、特に制限されず、前述した前記改変Pos5タンパク質のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドがあげられる。具体的には、前記改変POS5遺伝子は、前記ミトコンドリア移行シグナルが不活性化されるように、前記ミトコンドリア移行シグナルのコード領域において変異を有するポリヌクレオチドがあげられる。前記ミトコンドリア移行シグナルのコード配列における変異は、例えば、前記ミトコンドリア移行シグナルにおけるアミノ酸の欠失、置換および/または付加に該当する変異である。この際、前記ポリヌクレオチドは、前記ミトコンドリア移行シグナルを除く領域において、コドンの読み枠が変化しないことが望ましい。
前記ミトコンドリア移行シグナルのコード配列において、前記変異された塩基の部位および個数等は、特に制限されず、発現する前記改変Pos5タンパク質において前記ミトコンドリア移行シグナルの機能が不活性化されていればよい。
前記改変POS5遺伝子は、例えば、(P1’)〜(P3’)のポリヌクレオチドを含む遺伝子があげられる。
(P1’)配列番号2のアミノ酸配列において、2〜17番目のアミノ酸残基が、欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、前記ミトコンドリア移行シグナルが不活性化されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(P2’)前記(P1’)のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、前記ミトコンドリア移行シグナルが不活性化され、且つリン酸化活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(P3’)前記(P1’)のアミノ酸配列に対して、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、前記ミトコンドリア移行シグナルが不活性化され、且つリン酸化活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
前記(P1’)における領域、(P2’)における欠失等のアミノ酸残基の数、および(P3’)における同一性は、前述の(P1)、(P2)および(P3)の記載を参照できる。
前記改変FPS1遺伝子は、特に制限されず、前述した前記改変Fps1タンパク質のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドがあげられる。具体的には、前記改変FPS1遺伝子は、前記活性制御ドメインが不活性化されるように、前記活性制御ドメインのコード領域において変異を有するポリヌクレオチドがあげられる。前記活性制御ドメインのコード配列における変異は、例えば、前記活性制御ドメインにおけるアミノ酸の欠失、置換および/または付加に該当する変異である。この際、前記ポリヌクレオチドは、前記活性制御ドメインを除く領域において、コドンの読み枠が変化しないことが望ましい。
前記活性制御ドメインのコード配列において、前記変異された塩基の部位および個数等は、特に制限されず、発現する前記改変Fps1タンパク質において前記活性制御ドメインの機能が不活性化されていればよい。
前記改変FPS1遺伝子は、例えば、(F1’)〜(F4’)のポリヌクレオチドを含む遺伝子があげられる。
(F1’)配列番号4のアミノ酸配列において、217〜230番目のアミノ酸残基が、欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、前記活性制御ドメインが不活性化されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(F2’)配列番号4のアミノ酸配列において、222,225,228,229,230,231,232および/または233番目のアミノ酸残基が置換されたアミノ酸配列からなり、前記活性制御ドメインが不活性化されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(F3’)前記(F1’)または(F2’)のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、前記活性制御ドメインが不活性化され、且つチャネル機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(F4’)前記(F1’)または(F2’)のアミノ酸配列に対して、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、前記活性制御ドメインが不活性化され、且つチャネル機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
前記(F1’)における領域、(F2’)における変異のアミノ酸残基、(F3’)における欠失等のアミノ酸残基の数、および(F4’)における同一性は、前述の(F1)、(F2)、(F3)および(F4)の記載を参照できる。
(キシリトールの製造方法)
つぎに、本発明のキシリトールの製造方法は、前記本発明のキシリトール生成酵母を培養する培養工程を含むことを特徴とする。本発明は、前記本発明のキシリトール生成酵母を使用することが特徴であって、その他の工程および条件は、特に制限されない。
前記培養工程において、前記培地の種類は、特に制限されず、例えば、酵母の培養に使用できる公知の培地があげられ、前記培地にキシロースを含有させることが好ましい。前記培地は、例えば、YPD培地(イーストエキストラクト、ポリペプトン、グルコース)、SD培地(Yeast Nitrogen Base w/o amino acids 6.7g/l、グルコース20g/l)等があげられる。前記培地におけるキシロースの含有量は、特に制限されず、例えば、10〜100g/L、好ましくは20〜80g/Lであり、より好ましくは50〜80g/Lである。また、キシリトールからエタノールへの還元能が低い宿主酵母を用いる場合、例えば、キシロースの他、エネルギー源としてグルコース、マルトース、あるいはグリセロール等の宿主酵母がC源として、利用できるものが添加された培地を用いることが好ましい。一方、キシロース還元酵素遺伝子の他、キシリトール脱水素酵素遺伝子およびキシルロースリン酸化酵素遺伝子を高発現する宿主酵母を用いる場合は、例えば、キシロースを単独炭素源とする培地を用いることが好ましい。
前記培地へのキシロースの添加は、例えば、単品のキシロースの添加でもよいし、キシロース含有原料の添加でもよい。前記原料は、キシロースを含んでいればよく、特に制限されず、例えば、キシロースを含む生物由来の原料、すなわち、キシロース含有バイオマスが好ましい。前記バイオマスは、日本国農林水産省が発行した「バイオマス・ニッポン総合戦略」において、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」と定義されている。この定義から、「キシロース含有バイオマス」は、例えば、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたものであって、キシロースを含むもの」と定義できる。前記キシロース含有バイオマスは、特に制限されず、例えば、サトウキビ、トウモロコシ、テンサイ、ジャガイモ、サツマイモ、麦、モロコシ(こうりゃん)、ソルガム等の否可食部、廃木材、パルプ廃液、バガス、もみ殻、コーンコブ、稲ワラ、スイッチグラス、エリアンサス、ネピアグラス等があげられる。
培養条件は、特に制限されず、酵母培養時の公知の条件が採用できる。培養温度は、例えば、28〜35℃であり、好ましくは、30〜32℃である。培養時間は、特に制限されず、例えば、1〜96時間であり、好ましくは、1〜48時間である。酵母の培養は、例えば、好気条件下が好ましく、例えば、振とう培養が好ましい。
本発明のキシリトール生成酵母は、生成したキシリトールを細胞外に放出するため、本発明の製造方法は、さらに、培養工程により得られた培養物から、菌体を含む固体画分と液体画分とを分離する工程を含んでもよい。前記分離は、例えば、遠心分離、ろ過等により行える。
また、本発明の製造方法は、さらに、前記固体画分または前記液体画分から、キシリトールを精製する精製工程を含んでもよい。前記固体画分は、酵母を含むため、例えば、酵母を破壊して、細胞内からキシリトールを放出させ、キシリトールを精製できる。前記液体画分は、細胞内から放出されたキシリトールを含むため、前記液体画分から直接キシリトールを精製できる。前記精製方法は、特に制限されず、例えば、各種クロマトグラフィーが使用できる。
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に記載された態様に限定されるものではない。
以下に、実施例で使用した材料および方法を示す。なお、特に示さない限り、使用した試薬等のマニュアルに準じて処理を行った。
1.酵母株
実施例において、以下に示す酵母株を使用した。株名とあわせて、分譲の登録番号および遺伝子型を示す。
Figure 2013172661
実施例において、POS5遺伝子およびFPS1遺伝子の取得には、X2180−1A株を、POS5ΔN1遺伝子およびFPS1ΔN1遺伝子の高発現株の育種には、X2180−1A−XFN2、X2180−1A−XR1およびX2180−1A−XR2株を用いた。X2180−1A−XFN2株は、stipitisのキシロース還元酵素(XYL1)遺伝子とキシリトール脱水素酵素(XYL2)遺伝子とcerevisiaeのキシルロースリン酸化酵素(XKS1)遺伝子の発現ユニットを、遺伝子型に示したようなプロモーター制御下で、染色体のある領域に組み込まれている株である。X2180−1A−XR1は、stipitisのキシロース還元酵素(XYL1)遺伝子の発現ユニットが、遺伝子型に示したようなプロモーター制御下で、染色体のある領域に組み込まれている株である。X2180−1A−XR2株は、S.cerevisiaeのキシロース還元酵素(GRE3)遺伝子の発現ユニットが、遺伝子型に示したようなプロモーター制御下で、染色体のある領域に組み込まれている株である。なお、本発明は、これらの株に限定されない。
2.培地
培地は、後述する目的に応じて、以下の培地を使用した。下記培地において、「*」は、個別に滅菌した後に、培地に添加したことを示す。
(1)YPD培地
イーストエキストラクト 10g/L、ポリペプトン 20g/L、グルコース 20g/L
(2)YPGly培地
イーストエキストラクト 10g/L、ポリペプトン 20g/L、グリセロール 20g/L
(3)YPX培地
イーストエキストラクト 10g/L、ポリペプトン 20g/L、キシロース 50g/L
(4)YPXD−0.5培地
イーストエキストラクト 10g/L、ポリペプトン 20g/L、キシロース 50g/L、グルコ−ス 5g/L
(5)YPXD−2培地
イーストエキストラクト 10g/L、ポリペプトン 20g/L、キシロース 50g/L、グルコ−ス 20g/L
3.PCR用の鋳型DNAの調製
酵母細胞を、50μlのLysis bufferに懸濁した。前記bufferの組成は、0.125mg/ml ザイモリアーゼ100T、1mol/L ソルビトール、40mmol/L リン酸カリウムバッファー(pH6.8)、1mmol/L ジチオスレイトールとした。前記懸濁液を、30℃で1時間インキュベートした後、プロテアーゼE 1mg/mlを5μl加え、さらに、55℃で20分、続いて99℃で10分インキュベートした。インキュベート後の懸濁液を15,000rpmで10分間遠心し、染色体DNAを含む上清を回収した。これを鋳型DNAとした。
4.POS5ΔN1遺伝子とFPS1ΔN1遺伝子の取得
酵母サッカロミセス セレビジエのPOS5遺伝子およびFPS1遺伝子の塩基配列は、それぞれ、Saccharomyces Genome Databaseにおいて登録されており、登録番号は、POS5遺伝子がYPL188W、FPS1遺伝子がYLL043Wである。これらの塩基配列情報に基づいて、サッカロミセス セレビジエの染色体DNAを鋳型として、PCRによって、POS5ΔN1遺伝子およびFPS1ΔN1遺伝子の増幅産物を得た。具体的には、以下の通りに行った。
サッカロミセス セレビジエは、X2180−1Aを使用した。この酵母株の染色体DNAを鋳型として、下記プライマーPOS5F2およびPOS5R1を用いて、POS5遺伝子からN末端のミトコンドリア移行シグナルが欠損したPOS5ΔN1遺伝子を、PCRによって増幅した。取得したDNA断片を、クローニングキット(Invitrogen社、商品名pENTRTM Directional TOPO Cloning Kits)を用いて、ベクターpENTRTM/D−TOPO(登録商標)に挿入し、プラスミドpENTPOS5ΔN1を得た(図1)。そして、DNAシークエンスにより、挿入したDNA断片の配列について、配列番号2において2〜17番目のアミノ酸配列をコードする領域が欠失したPOS5ΔN1遺伝子であることを確認した。
POS5F2(配列番号5)
5’-CACCGTTTAAACACTAGTATGAGTACGTTGGATTCACATTCCCTA-3’
POS5R1(配列番号6)
5’-GTTTAAACGGATCCTTAATCATTATCAGTCTGTCTCTT-3’
他方、FPS1遺伝子を、前記染色体DNAを鋳型として、下記プライマーFPS1NFSCXBおよびFPS1CRBを用いて、PCRによって増幅した。取得したDNA断片を、クローニングキット(Invitrogen社、TA TOPO Cloning Kits)を用いて、ベクター、pCR4(登録商標)2.1−TOPO pCR2.1−TOPO(登録商標)に挿入し、プラスミドpCR4FPS1を得た。そして、DNAシークエンスにより、挿入したDNA断片の配列を確認した。つぎに、前記pCR4FPS1を鋳型として、下記プライマーFPS1−216RおよびFPS1−231Fと、変異導入キット(STRATAGENE社、ExSiteTM PCR-Based Site-Directed Mutagenesis Kit)とを用いて、変異を導入し、プラスミドpCR4FPS1ΔN1を得た(図2)。なお、変異導入は、前記変異導入キットのマニュアルに従った。そして、前記プラスミドについて、DNAシークエンスを行った。これにより、挿入された前記FPS1遺伝子について、217残基から230残基までの領域、すなわち、N末端の14アミノ酸残基をコードする領域が欠失したFPS1ΔN1遺伝子であること、ならびに、その他の部分に変異がないことを確認した。
FPS1NFSCXB(配列番号7)
5’-GAGCTCTAGAATGAGTAATCCTCAAAAAGCTC-3’
FPS1CRB(配列番号8)
5’-GGATCCTCATGTTACCTTCTTAGCATTAC-3’
FPS1−216R(配列番号9)
5’-GACGTTACGTGGTGATTCATTGCTT-3’
FPS1−231F(配列番号10)
5’-ACACCTACAGTCTTGCCCTCCAC-3’
なお、本実施例では、X2180−1Aの染色体DNAを使用したが、本発明は、この株には限定されず、酵母であれば、いずれも使用できる。また、前記PCRによる目的遺伝子の増幅およびその後の単離等の処理は、プライマーの調製を含め、当業者に周知な方法で行うことができる。
5.POS5ΔN1遺伝子およびFPS1ΔN1遺伝子の高発現ベクターの構築
Destination vectorとして、pYCN_RfAプラスミド(図3)を使用した。そして、Invitrogen社のマニュアルに従って、前記pENTPOS5ΔN1と前記pYCN_RfAプラスミドとのLR反応を行った。これにより、前記pYCN_RfAのRfA配列とPOS5ΔN1遺伝子とを交換し、POS5ΔN1遺伝子高発現ベクターpYCNPOS5ΔN1を作製した(図4)。前記pYCNPOS5ΔN1において、POS5ΔN1遺伝子は、TPI1プロモーターにより制御される。他方、前記pCR4FPS1ΔN1から、XbaIとBamHIとで、FPS1ΔN1遺伝子を切り出し、pJHIXSB G418B(図5)に導入し、pJHIGFPS1ΔN1(図6)を作製した。
6.POS5ΔN1遺伝子高発現株の育種
前記pYCNPOS5ΔN1を、X2180−1A−XR1およびX2180−1A−XR2株に形質転換した。これらの形質転換体を、clonNAT(Nourseothricin dihydrogen sulfate)50μg/mlを含む前記YPD培地のプレートに塗布した。前記プレートに生育した耐性株を取得することで、POS5ΔN1遺伝子高発現株を得た。これらの形質転換体は、前記PGly培地で生育を確認し、呼吸欠損株ではないことを確認した。本実施例では、マーカーとして、clonNAT耐性マーカー遺伝子を用いたが、例示であって、本発明はこれに制限されず、例えば、宿主の遺伝子型によって、他のマーカーも使用可能である。具体例として、宿主の栄養要求性を相補する遺伝子として、例えば、URA3遺伝子を使用し、ウラシルを含まない寒天培地で選択できる。また、シクロヘキシミドに対する薬剤耐性遺伝子として、例えば、YAP1遺伝子を使用し、シクロヘキシミドを含むYPD培地で選択できる。
7.POS5ΔN1遺伝子/FPS1ΔN1遺伝子高発現株の育種
POS5ΔN1遺伝子およびFPS1ΔN1遺伝子の高発現株を作製した。前記pJHIGFPS1ΔN1を制限酵素SphIで切断し、線状DNAをアガロースゲルから回収した。このDNAを、前記pYCNPOS5ΔN1を形質転換したX2180−1A−XR1および前記pYCNPOS5ΔN1を形質転換したX2180−1A−XR2株に、さらに形質転換した。これらの形質転換体を、clonNAT 50μg/mlとジェネチシン300μg/mlを含む前記YPD培地のプレートに塗布した。前記プレートに生育したコロニー数個から、下記プライマーFPS1N_RおよびTPI1pF1を用いてPCRを行った。この結果、増幅断片が得られたことから、前記FPS1ΔN1遺伝子がTPI1プロモーター下に導入されていることが確認できた。さらに、これらの形質転換体は、前記YPGly培地で生育を確認し、呼吸欠損株ではないことを確認した。
FPS1N_R(配列番号11)
5’-TCATCATTTCCCCCATCG-3’
TPI1pF1(配列番号12)
5’-GAGTTTAGTGAACTTGCAAC-3’
8.キシロース発酵試験(スモールスケール)
キシロース発酵試験には、50g/Lキシロースを含有する前記YPX培地、50g/Lキシロースと5g/Lグルコースを含有する前記YPXD−0.5培地、50g/Lキシロースと20g/Lグルコースを含有するYPXD−2培地を、試験用培地として用いた。まず、前記YPD 10mlに、一白金耳の酵母を植菌し、30℃のインキュベーターで、20時間、振とう培養した。得られた培養液から酵母を集菌し、新たなYPD 20mlに懸濁し、30℃で3時間、振とう培養した。培養後、酵母を集菌し、前記試験用培地で2回洗浄した後、新たな試験用培地2mlに、OD600が20〜25となるように植菌し、その懸濁液を、容量3mlのマイクロチューブに入れて蓋をし、30℃でインキュベートした。そして、この培養液から、所定時間後にサンプリングして、遠心、ろ過後、回収した上清について、液体クロマトグラフィーによって成分の分析を行った。
9.キシロース発酵試験(ラージスケール)
容量100mlのメディウム瓶を用いて、発酵試験を行った。前記メディウム瓶の蓋から内部に、内径シリコンチューブを通した。前記メディウム瓶の内部において、前記チューブの一方の先端は、前記内部の培地に接触しない長さに調節した。前記メディウム瓶の外部において、前記チューブの他方の先端には、逆止弁を取り付け、前記瓶内の内圧が高くなった場合は、前記弁を通じて、前記瓶の内部から外部に気体が抜けて、前記内圧が外圧と同じになるようにした。
まず、前記YPD 10mlに、一白金耳の酵母を植菌し、30℃のインキュベーターで、20時間、振とう培養した。得られた培養液全量を、容量300mlの三角フラスコ中のYPD 100mlに植菌し、30℃のインキュベーターで、20時間振とう培養した。培養後、遠心により酵母全量を回収し、再び、容量500mlの三角フラスコ中のYPD 200mlに懸濁し、30℃で6時間振とう培養した。培養後、酵母を集菌し、前記試験用培地で2回洗浄した後、前記メディウム瓶中の新たな試験用培地50ml培地に、OD600が20になるように植菌した。前記メディウム瓶は、内部における前記試験用培地が入っている量の深さまで、水浴につけ、30℃に温度を保ち、滅菌したスターラーバーを入れて、60rpmの速度で攪拌しながら培養した。そして、この培養液から、所定時間後に、1mlサンプリングして、遠心、ろ過後、回収した上清について、液体クロマトグラフィーによって成分の分析を行った。
10.キシリトール、キシロース、エタノール、グリセリロールの測定
上清サンプルについて、高速液体クロマトグラフィーにより、各成分の定量を行った。前記上清サンプルにおける各成分の濃度は、既知濃度の純品サンプルのピーク面積から算出した。
(1)分離カラムおよび条件
カラム:Shodex SUGAR SH−G(6.0×50mm)
+SH1011(8.0×300mm)
溶離液:5mmol/L HSO
流速:0.6ml/min
カラムオーブン:60℃
検出器:ダイオードアレイ検出器(DAD) 280nm(フルフラール類)
示差屈折率検出器(RI)(他の糖類)
(2)装置構成
HPLC本体:日立L−2000シリーズ
ポンプ:L−2130
オートサンプラ:L−2200
DAD検出器:L−2450
RI検出器:L−2490
カラムオーブン:島津 CTO−10A
[実施例1]
前記「6.POS5ΔN1遺伝子高発現株の育種」で作製したPOS5ΔN1遺伝子高発現株について、前記YPXD(キシロース5%+グルコース0.5%)培地を使用し、キシリトール生成を確認した。
宿主として、X2180−1A−XFN2株を使用し、前記POS5ΔN1遺伝子高発現株を育種した。親株(n=2)と、前記高発現株(n=2)について、前記YPXD培地を使用した以外は、前記「8.キシロース発酵試験(スモールスケール)」の方法で、キシロース発酵試験を行った。そして、所定時間(48時間)の培養後に、上清を回収して、高速液体クロマトグラフィーにより、キシリトールおよびキシロースを定量した。これらの結果を、図7に示す。図7は、消費したキシロースの濃度、生成したキシリトールの濃度を示すグラフであり、hostが、親株の結果であり、ΔNPOS5が、前記POS5ΔN1遺伝子高発現株の結果である。図7において、白いバーが、消費したキシロース濃度(ΔXYL)、黒いバーが、生成したキシリトール濃度(Xylitol)を示す。そして、キシリトールの収率は、「キシロース資化量×152.15/150.13」で表わされる量のキシリトールが生成した場合を、収率100%として計算した。この結果、キシリトールの収率は、親株が19.6%であるのに対し、前記POS5ΔN1遺伝子高発現株は、38.9%であった。
このように、本来ミトコンドリアで発現するNADHリン酸化酵素であるPos5タンパク質について、ミトコンドリア移行シグナルを欠失させ、酵母の細胞質に発現させたことにより、キシリトールへの変換効率を向上できた。
[実施例2]
前記「7.POS5ΔN1遺伝子/FPS1ΔN1遺伝子高発現株の育種」で作製したPOS5ΔN1遺伝子/FPS1ΔN1遺伝子高発現株について、前記YPX(キシロース5%)培地を使用し、キシリトール生成を確認した。
宿主として、X2180−1A−XR1株を使用し、POS5ΔN1遺伝子/FPS1ΔN1遺伝子高発現株を育種した。親株(n=2)と、前記高発現株(n=2)について、前記YPX培地を使用した以外は、前記「8.キシロース発酵試験(スモールスケール)」の方法で、キシロース発酵試験を行った。そして、所定時間(48時間)の培養後、上清を回収して、高速液体クロマトグラフィーにより、キシリトールおよびキシロースを定量した。これらの結果を、図8に示す。図8は、消費したキシロースの濃度、生成したキシリトールの濃度を示すグラフであり、hostが、親株の結果であり、ΔNPOS5ΔNFPS1が、POS5ΔN1遺伝子/FPS1ΔN1遺伝子高発現株の結果である。図8において、白いバーが、消費したキシロース濃度(ΔXYL)、黒いバーが、生成したキシリトール濃度(Xylitol)を示す。そして、前記実施例1と同様にして、キシリトールの収率を算出した。この結果、キシリトールの収率は、親株が49.4%であるのに対し、POS5ΔN1遺伝子/FPS1ΔN1遺伝子高発現株は、68.9%であった。
[実施例3]
前記「6.POS5ΔN1遺伝子高発現株の育種」で作製したPOS5ΔN1遺伝子高発現株、および、前記「7.POS5ΔN1遺伝子/FPS1ΔN1遺伝子高発現株の育種」で作製したPOS5ΔN1遺伝子/FPS1ΔN1遺伝子高発現株について、前記YPXD(キシロース5%+グルコース0.5%)培地を使用し、キシリトール生成を確認した。
宿主として、X2180−1A−XR1株を使用し、POS5ΔN1遺伝子高発現株、および、POS5ΔN1遺伝子/FPS1ΔN1遺伝子高発現株を育種した。親株(n=2)と、前記高発現株(n=2)について、前記YPXD培地を使用した以外は、前記「8.キシロース発酵試験(スモールスケール)」の方法で、キシロース発酵試験を行った。そして、所定時間(48時間)の培養後、上清を回収して、高速液体クロマトグラフィーにより、キシリトールおよびキシロースを定量した。これらの結果を、図9に示す。図9は、消費したキシロースの濃度、生成したキシリトールの濃度を示すグラフであり、hostが、親株の結果であり、ΔNPOS5が、前記POS5ΔN1遺伝子高発現株の結果であり、ΔNPOS5ΔNFPS1が、POS5ΔN1遺伝子/FPS1ΔN1遺伝子高発現株の結果である。図9において、白いバーが、消費したキシロース濃度(ΔXYL)、黒いバーが、生成したキシリトール濃度(Xylitol)を示す。そして、前記実施例1と同様にして、キシリトールの収率を算出した。この結果、キシリトールの収率は、親株が90.8%であるのに対し、POS5ΔN1遺伝子高発現株は、92.8%、POS5ΔN1遺伝子/FPS1ΔN1遺伝子高発現株は、99.6%であり、ほぼ100%であった。また、キシロースの資化量は、POS5ΔN1遺伝子高発現株およびPOS5ΔN1遺伝子/FPS1ΔN1遺伝子高発現株共に、親株よりも増加した。また、前記実施例2におけるグルコースを含有するYPX培地と比較して、グルコース未添加のYPXD培地を使用することで、さらにキシリトール生産性が向上した。
このように、N末端を欠失するPos5タンパク質と、さらに、N末端を欠失するFps1タンパク質を高発現したことによって、前記N末端を欠失するPos5タンパク質単独の発現よりも、さらにキシリトールへの変換効率を向上できた。以上の結果から、本発明によれば、キシロースを含むバイオマスを原料として、バイオプロセスによるキシリトールの効率よい生成が可能となり、得られるキシリトールを、例えば、甘味料等として有効に利用できる。
以上のように、本発明のキシリトール生成酵母によれば、キシロースを基質として、効率よくキシリトールを生成できる。このため、本発明は、例えば、前述の廃棄物等のバイオマスを原料として、キシリトールをバイオプロセスによって製造できるため、極めて有用といえる。

Claims (16)

  1. ミトコンドリア移行シグナルが不活性化された改変Pos5タンパク質を発現し、且つ、キシロース還元能を有することを特徴とするキシリトール生成酵母。
  2. 前記改変Pos5タンパク質をコードする遺伝子を有するベクターが導入された酵母である、請求項1記載のキシリトール生成酵母。
  3. 前記改変Pos5タンパク質が、(P1)、(P2)または(P3)のタンパク質である、請求項1または2記載のキシリトール生成酵母。
    (P1)配列番号2のアミノ酸配列において、2〜17番目のアミノ酸残基が、欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、前記ミトコンドリア移行シグナルが不活性化されたタンパク質
    (P2)前記(P1)のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、前記ミトコンドリア移行シグナルが不活性化され、且つリン酸化活性を有するタンパク質
    (P3)前記(P1)のアミノ酸配列に対して、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、前記ミトコンドリア移行シグナルが不活性化され、且つリン酸化活性を有するタンパク質
  4. 前記(P1)のタンパク質が、配列番号2のアミノ酸配列において、2〜17番目のアミノ酸残基が欠失されたアミノ酸配列からなる、請求項3記載のキシリトール生成酵母。
  5. 前記改変Pos5タンパク質が、前記ミトコンドリア移行シグナルの全部を欠失するタンパク質である、請求項1から4のいずれか一項に記載のキシリトール生成酵母。
  6. チャネルの活性制御ドメインが不活性化された改変Fps1タンパク質を発現する、請求項1から5のいずれか一項に記載のキシリトール生成酵母。
  7. 前記改変Fps1タンパク質をコードする遺伝子を有するベクターが導入された酵母である、請求項6記載のキシリトール生成酵母。
  8. 前記改変Fps1タンパク質が、(F1)、(F2)、(F3)または(F4)のタンパク質である、請求項6または7記載のキシリトール生成酵母。
    (F1)配列番号4のアミノ酸配列において、217〜230番目のアミノ酸残基が、欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、前記活性制御ドメインが不活性化されたタンパク質
    (F2)配列番号4のアミノ酸配列において、222,225,228,229,230,231,232および/または233番目のアミノ酸残基が置換されたアミノ酸配列からなり、前記活性制御ドメインが不活性化されたタンパク質
    (F3)前記(F1)または(F2)のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、前記活性制御ドメインが不活性化され、且つチャネル機能を有するタンパク質
    (F4)前記(F1)または(F2)のアミノ酸配列に対して、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、前記活性制御ドメインが不活性化され、且つチャネル機能を有するタンパク質
  9. 前記(F1)のタンパク質が、配列番号4のアミノ酸配列において、217〜230番目のアミノ酸残基が欠失されたアミノ酸配列からなる、請求項8記載のキシリトール生成酵母。
  10. 前記改変Fps1タンパク質が、前記活性制御ドメインの全部を欠失するタンパク質である、請求項6から9のいずれか一項に記載のキシリトール生成酵母。
  11. キシロース還元酵素を発現する、請求項1から10のいずれか一項に記載のキシリトール生成酵母。
  12. 前記キシロース還元酵素をコードする遺伝子を含有するベクターが導入された酵母である、請求項11記載のキシリトール生成酵母。
  13. 前記酵母が、サッカロミセス セレビジエである、請求項1から12のいずれか一項に記載のキシリトール生成酵母。
  14. 請求項1から13のいずれか一項に記載のキシリトール生成酵母を培養する培養工程を含むことを特徴とするキシリトールの製造方法。
  15. 前記培養工程において、キシロースを含有する培地を使用する、請求項14記載のキシリトールの製造方法。
  16. 前記培地が、炭素源として、キシロースのみを含む、請求項15記載のキシリトールの製造方法。
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