JP2013160752A - 放射能物質に汚染された除去土壌を正常な土壌に戻す方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 東日本大震災で破壊された福島第一原発により広範な地域が放射性物質に汚染された。土壌表土を削り取る等の除染が今後本格化し、除去した土壌は急激に増大すると予測されているが、放射性物質に汚染された除去土壌は処分できず、また除去土壌から放射性物質を除去する技術は未だ確立していないため、大きな社会問題になっている。
【解決手段】 放射性物質に汚染された除去土壌から放射性物質を除去し正常な土壌に戻す際に、除去現場付近に洗浄用容器を設置し、網状のかご又は袋に入れた放射性物質に汚染された除去土壌を該洗浄用容器内に配設し、酸の水溶液から成る洗浄剤を充填し、拡販、洗浄した後、洗浄廃液を吸引装置で吸引し、廃液用容器に回収する第一の工程、該洗浄用容器にアルカリまたはその水溶液を散布し中和する第二の工程、該洗浄用容器から該網状のかご又は袋を引き上げて処理後の土壌を別の場所に移し替え、放射性物質を除去した土壌として回収する第三の工程、該第一の工程で該廃液用容器内に回収した洗浄廃液に多孔性物質を添加、拡販し多孔性物質に放射性物質を吸着せしめる第四の工程、該第四の工程処理後の廃液を挿入式のフィルター付き吸引装置で吸引し、フィルターでろ過したろ液を洗浄剤用容器に回収し、洗浄剤として再利用する第五の工程、及び該第五の工程でろ過されず残った残滓を使用済みのフィルターや清掃に使った吸水性材料とともに放射性廃棄物用容器内に回収し保管する第六の工程、を順次実施する。
【選択図】なし

Description

本発明は、放射性物質に汚染された除去土壌から放射性物質を除去し正常な土壌に戻す方法に関する。
2011年3月11日の東日本大震災で破壊された福島第一原子力発電所原子炉の水素爆発や火災等の事故により、放射性物質が飛散し周辺の広範な地域が放射性物質に汚染された。現在、除染作業がクローズアップされており、農地、運動場、山林等の除染方法として土壌表土を削り取る作業が進められている。しかし、放射性物質に汚染された除去土壌は、処分することができず、除去作業を行った地域周辺に保管された状熊にある。除去土壌は、今後、除染作業の本格化とともに急激に増大することが予想され、大きな社会問題になりつつある。
しかしながら、放射性物質に汚染された除去土壌から放射性物質を除去する技術は未だ確立しておらず、また処分場も決まらない状態であるため、そのまま放置せざるを得ないというのが現状である。
本発明は、上に述べた状況において、放射性物質に汚染された除去土壌から放射性物質を除去し正常な土壌に戻す方法を提供することを目的とするものである。
放射性物質に汚染された除去土壌は、今後、除染作業の本格化とともに大量に発生し、その費用は甚大なものになると推定される。また、放射性物質に汚染された除去土壌を工場に運搬し工場で放射性物質を除去することは、周辺の住民感情から言えば極めてむつかしいと考えざるを得ず、住民の納得を得ようとすれば莫大な設備費用とランニングコストがかかるであろう。本発明のもう一つの目的は、除去土壌の発生した現場付近において、簡便な設備で能率よく安価に除去土壌から放射性物質を除去し正常な土壌に戻す方法を提供することにある。
除去土壌の発生した現場で放射性物質の除去作業を行うのは、工場で行う場合に比べて、給排水の手段、周辺の環境保全、作業者の安全確保等、化学工学的管理の面で大きな制約がある。本発明のさらにもう一つの目的は、除去土壌の発生した現場付近において、排水を循環使用して垂れ流さないなど周辺環境に配慮し、また、人体に有害な後遺症を引き起こしかねない材料は使用せず作業者の安全に配慮した、除去土壌から放射性物質を除去し正常な土壌に戻す方法を提供することにある。
本発明は上記目的を達成するために、放射性物質に汚染された除去土壌から放射性物質を除去し正常な土壌に戻す際に、除去現場付近に洗浄用容器を設置し、網状のかご又は袋に入れた放射性物質に汚染された除去土壌を該洗浄用容器内に配設し、酸の水溶液から成る洗浄剤を充填し、拡販、洗浄した後、洗浄廃液を吸引装置で吸引し、廃液用容器に回収する第一の工程、該洗浄用容器にアルカリまたはその水溶液を散布し中和する第二の工程、該洗浄用容器から該網状のかご又は袋を引き上げて処理後の土壌を別の場所に移し替え、放射性物質を除去した土壌として回収する第三の工程、該第一の工程で該廃液用容器内に回収した洗浄廃液に多孔性物質を添加、拡販し多孔性物質に放射性物質を吸着せしめる第四の工程、該第四の工程処理後の廃液を挿入式のフィルター付き吸引装置で吸引し、フィルターでろ過したろ液を洗浄剤用容器に回収し、洗浄剤として再利用する第五の工程、及び該第五の工程でろ過されず残った残滓を使用済みのフィルターや清掃に使った吸水性材料とともに放射性廃棄物用容器内に回収し保管する第六の工程、を順次実施するものである。
本発明において使用する主な設備機器としては、洗浄剤用容器、洗浄用容器、廃液用容器、放射性廃棄物用容器、網状のかご又は袋、吸引装置、フィルター、攪拌機、発電機及び簡易な揚重機等、市販されているかレンタルで調達できるものが多く、試作するにしても大きな費用はかからない。これが本発明の一番目の特徴である。
原子力発電所によって飛散される放射性物質としては、圧力容器や格納容器の破損がない限り、ヨウ素131、セシウム137、キセノン133、クリプトン88等である。これらの放射性物質の半減期は、ヨウ素131が8日、キセノン133が5.3日、クリプトン88が2.8時間であるのに対し、セシウム137は30年と圧倒的に長いため、主に除去の対象となるのはセシウム137と考えられる。セシウムは1族の元素でありアルカリ金属の仲間である。従って、酸に溶けやすいという性質をもっている。セシウムのもつこの性質を利用して除去土壌から放射性セシウムを取り除くのが第一の工程である。すなわち、第一の工程は、除去現場付近に洗浄用容器を設置し、網状のかご又は袋に入れた放射性物質に汚染された除去土壌を該洗浄用容器内に配設し、酸の水溶液から成る洗浄剤を充填し、拡販、洗浄した後、洗浄廃液を吸引装置で吸引し、廃液用容器に回収する工程である。
本発明のニ番目のしかも最大の特徴は、第一の工程において、網状のかご又は袋を使用することにある。網状のかご又は袋に放射性物質に汚染された除去土壌を入れ、それを洗浄用容器に出し入れする。もし網状のかご又は袋を使わなければどういうことになるか。水切りができないため、洗浄廃水を吸引した後に残った土壌は放射性物質が溶け込んだ相当量の水を含んでいる。それを放射性物質除去後の土壌として回収するわけであるから、完全には除去できないということになる。すなわち土壌と放射性物質を完全に分離できないということである。その問題は網状のかご又は袋を使うことにより解決される。網状のかご又は袋を使うことにより、水切りができ、放射性物質が溶け込んだ水を排除することが可能になる。すなわち、土壌から放射性物質を完全に近く分離することができ、回収した土壌の放射能汚染レベルは極めて低いものになる。しかも、網状のかご又は袋を使うことにより土壌の充填と取出しの作業性は飛躍的に向上する。
土壌の取出しを効率よく行うためには、網状のかご又は袋の底部は、蝶番、ファスナー、紐による緊張・弛緩調節により開閉できる構造になっているものが好ましい。網状のかご又は袋の網目の穴の大きさは重要である。土壌の種類、汚染の程度にもよるが、網目が大きいほど作業性がよくなり、放射性物質除去後の土壌の放射能汚染レベルは低くなるが、土壌の損失は大きくなる。また、網目が小さいほど土壌の損失は小さくなるが、作業性が悪くなり、放射性物質除去後の土壌の放射能汚染レベルは高くなる。網目の穴の大きさは0.05〜5mmが好ましく、0.1〜3mmであればさらに好ましい。
網状のかご又は袋に入れた放射性物質に汚染された除去土壌を該洗浄用容器内に配設し、酸水溶液から成る洗浄剤を満たし、酸が土壌粒子表面に行きわたり、土壌粒子表面の放射性セシウム又はその反応生成物を溶解するように充分撹拌する。その後、洗浄廃液を吸引装置により吸引除去し廃液用容器に回収する。吸引の際に、網状のかご又は袋と外側容器との隙間に吸引装置の吸い込み口を差し込んで吸引すれば、洗浄された土壌が廃液中に巻き込まれるのを防ぐことができる。
洗浄剤に使用する酸としては、珪酸塩鉱物を溶かす作用のある弗酸は本発明の目的にはかなり有効と思われるが、取扱いを誤ると歯や骨が劣化する恐れがあり、またリン酸はリン骨疽の原因になるため、本発明においては弗酸とリン酸は使用しない。これは、人体に有害な後遺症を引き起こす恐れのある材料は使用しないという本発明の目的の一つを達成するためである。
塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸等の無機酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸等の有機酸のいずれも、本発明では使用可能な酸であるが、放射性セシウムを溶解するという目的を達成するためには、塩酸、硫酸、硝酸等の強酸が好ましい。
洗浄剤の酸の濃度は、低すぎればセシウム溶解効果が小さく、高すぎれば危険である。目安として3〜30重量%が好ましいが、本発明はこの数値に限定されるものではない。
第二の工程は酸性になった除去土壌を中和するためにアルカリ又はその水溶液を散布する工程である。中和するのが目的なので、加えすぎないように、PHを測りながらPHが7前後になるまでアルカリ又はその水溶液を散布する。
アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等アルカリ金属の水酸化物だけでなく、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物やアンモニア水等アルカリ性有機化合物も使用できる。これらの中で取扱いやすく、また土壌の安定化という点で好ましいのは水酸化カルシウムである。
第三の工程は、洗浄用容器から網状のかご又は袋を引き上げて処理後の土壌を別の場所に移し替え、放射性物質を除去した土壌として回収する工程である。網状のかご又は袋を引き上げる時よく水切りを行う。このとき、除去土壌と放射性物質の分離が行われる。網状のかご又は袋の底部が開閉可能な構造になっていれば、土壌の取出し作業が簡単にできる。処理後の土壌は若干の水を含んでいるので必要に応じて天日乾燥する。
第四の工程は、第一の工程で廃液用容器に回収した洗浄廃液に多孔性物質を添加し、廃液中に溶解している放射性セシウムを多孔性物質に吸着せしめる工程である。多孔性物質は無数のミクロな孔をもっているため、比表面積が大きく、その表面にイオンや微細粒子を吸着せしめる作用がある。
多孔性物質としては、ゼオライト、バーミキュライト、珪藻土、活性炭等が知られており、どれも使用可能であるが、中でも、表面が陰イオンに帯電しているゼオライトは、水溶液中で陽イオンになるセシウムを捕獲するには最も好ましい材料である。本発明においては、陽イオンである放射性セシウムは表面が陰イオンであるゼオライトに捕獲されやすいという性質を利用して、洗浄廃液から放射性セシウムをろ過分離し放射性廃棄物とし、ろ液を洗浄剤として再利用する。これにより、除去土壌の発生した現場付近で土壌の放射性物質除去作業を行い、排水を循環使用し垂れ流さない、という本発明の目的の一つが達成される。
多孔性物質の粒子の大きさは、大きすぎると放射性セシウムの捕獲効率は低下するが、後のろ過工程の効率及び能率がよくなり、小さすぎると放射性セシウムの捕獲効率は高くなるが、後のろ過工程の効率及び能率が悪くなるので、0.1〜50mmが好ましく、0.5〜15mmであればさらに好ましい。
第五の工程は、第四の工程において多孔性物質に放射性物質を吸着せしめた廃液を挿入式のフィルター付き吸引装置で吸引し、フィルターでろ過したろ液を洗浄剤用容器に戻し、洗浄液として再利用する工程である。この第五の工程において、廃液用容器に備え付けのフィルター付き吸引装置ではなく、挿入式のフィルター付き吸引装置を使うというのが、本発明の三番目の特徴である。廃液用容器に備え付けのフィルター付き吸引装置を使うと、どういうことが起こるか。第一の工程で回収した洗浄廃液中に溶け込んでいる放射性物質は、第四の工程で多孔性物質に捕捉される以前に既にフィルター内及びフィルターとコックの隙間に侵入しており、吸引装置稼働時に洗浄剤用容器に流出される。すなわち、放射性物質を第五の工程で完全に除去できず、循環させてしまうということになる。これを防ぐには、廃液用容器の底を二重構造にし、開閉できるようにする等の措置が必要になり、莫大な設備費用がかかる。本発名の目的の一つは、簡便な設備で能率よく安価に土壌の放射性物質を除去する方法を提供することにある。この目的は、挿入式のフィルター付き吸引装置を必要な時に廃液表面に挿入して使うことにより達成できる。
フィルター付き吸引装置のフィルターは、ネジ、紐、バンド等で締めたり緩めたりできるような簡単に脱着できる構造のものがよい。フィルターの穴の大きさは、大きいほど吸引ろ過の作業能率はよくなるが、放射性セシウムを吸着せしめた多孔性物質が、再利用する洗浄剤中に混入する割合が増え、小さいほど吸引ろ過の能率は悪くなるが、放射性セシウムの捕捉率は高くなる。フィルターの穴の大きさは0.03〜3mmが好ましく、0.05〜1mmであればさらに好ましい。
第六の工程は、第五の工程でろ過されず残った残滓を使用済みのフィルターや清掃に使った吸水性材料とともに放射性廃棄物用容器内に回収し保管する工程である。水を含んだ残滓を放射性廃棄物用容器内に回収し、廃液用容器、吸引装置等を清掃した布、紙等の吸水性材料も使用済みのフィルターとともに放射性廃棄物用容器内に回収し保管する。
本発明において、土壌からの放射性物質除去の効率を上げ、しかも作業の能率を落さないためには、網状のかご又は袋の網目の穴の大きさをA、多孔性物質の粒子の大きさをB、挿入式のフィルター付き吸引装置のフィルターの穴の大きさをCとしたとき、A、B,Cの関係をを、A>C、かつB>Cなる不等式を満足するように制御しなければならない。もし、AがCより小さいと、第三の工程における網状のかご又は袋を引き上げ水切りする作業の能率が悪い割には、水切りで通過した細かい土壌を循環させてしまうことになり、放射性物質の除去効率は悪くなる。AがCより大きいことにより、第三の工程における網状のかご又は袋を引き上げ水切りする作業能率が良く、しかも第五の工程で細かい土壌を除去でき、循環させないようにすることができる。もし、BがCより小さいと、第四の工程においてせっかく多孔性物質に放射性物質を吸着せしめたにもかかわらず、該多孔性物質はフィルターを通過してしまい、放射性物質を捕獲できないことになる。BがCより大きいことにより、多孔性物質に吸着せしめた放射性物質を確実に捕獲することができる。
上述したように、放射性物質に汚染された除去土壌から放射性物質を除去し正常な土壌に戻す際に、除去現場付近に洗浄用容器を設置し、網状のかご又は袋に入れた放射性物質に汚染された除去土壌を該洗浄用容器内に配設し、酸の水溶液から成る洗浄剤を充填し、拡販、洗浄した後、洗浄廃液を吸引装置で吸引し、廃液用容器に回収する第一の工程、該洗浄用容器にアルカリまたはその水溶液を散布し中和する第二の工程、該洗浄用容器から該網状のかご又は袋を引き上げて処理後の土壌を別の場所に移し替え、放射性物質を除去した土壌として回収する第三の工程、該第一の工程で該廃液用容器内に回収した洗浄廃液に多孔性物質を添加、拡販し多孔性物質に放射性物質を吸着せしめる第四の工程、該第四の工程処理後の廃液を挿入式のフィルター付き吸引装置で吸引し、フィルターでろ過したろ液を洗浄剤用容器に回収し、洗浄剤として再利用する第五の工程、及び該第五の工程でろ過されず残った残滓を使用済みのフィルターや清掃に使った吸水性材料とともに放射性廃棄物用容器内に回収し保管する第六の工程、を順次実施することにより、放射性物質に汚染された除去土壌の発生した現場付近において、排水を循環使用して垂れ流さず、簡便な設備で、安価に、除去土壌から放射性物質を除去し正常な土壌に戻すという本発明の目的を達成することができる。
本発明は、放射性物質は酸に溶けやすく多孔性物質特に捕捉されやすいという原理を利用しているが、本発明はそれを新規のものとして主張するものではない。本発明者は、網状のかご又は袋、挿入式のフィルター付き吸引装置を使うことを考案し、それにより、実際の作業において、除去土壌から放射性物質を分離することに成功した。さらに、網状のかご又は袋の網目の大きさAとフィルターの網目の大きさCの関係について、A>Cなる不等式を満足するように制御し、また、多孔性物質の粒子の大きさBとフィルターの網目の大きさCの関係について、B>Cなる不等式を満足するよう制御することにより、土壌から放射性物質を有効に除去することができ、かつ放射性物質を廃棄物として有効に回収できることを見い出した。本発明の意義は、以上述べたように、放射能汚染した土壌から放射性物質を除去し、正常な土壌に戻す際に直面する多くの実際的問題を解決し、実現する方法を提示することにある。
以下、本発明の実施の形態を説明する。但し、本発明は放射性物質に関するものであり、本発明の効果を実証する実験を行うことは極めて困難であったが、幸いにも本発明の意義を理解し協力してくれる人が現れ実現できたものである。
実験は福島第一原発から100kmほど離れており、放射性物質による汚染が比較的軽微な栃木県那須郡那須町の個人所有の空き地において実施した。空き地の広さは300mほどであるが、そのうち、1m角の土地から厚さ10cmほど削り取った土壌について、除染を行うことにした。 事前に土壌の放射線量を測定しておいたところ、1.830Bq/kgであった。
この空き地にブルーシートを敷き、容量200lの容器を4個用意し、それぞれ洗浄剤用容器、洗浄用容器、廃液用容器、正常化土壌用容器とし、ブルーシートの上に置き、容量20lの蓋付き容器を放射性廃棄物用容器として用意した。また、洗浄用容器より小さめの底部が蝶番で開閉できる網状のかごを試作し用意した。この網状のかごの網目の穴の大きさは1mmとした。用意した300lの水タンク、耐食性排水ポンプ、携帯式ハンドミキサー、必要な材料等もブルーシートの上に置いた。電力は小型自家発電機により、AC100Vの電源を確保した。網状のかご等の楊重はユニック車により行った。まず、洗浄剤容器に水と塩酸を入れ、15重量%の塩酸水溶液を作った。除去土壌約100lを入れた網状のかごを洗浄用容器内に入れ、排水ポンプにより塩酸水溶液を満たした。ハンドミキサーで充分に撹拌した後、排水ポンプの吸い込み口を洗浄用容器と網状かごの間の隙間に差し込み、そこから廃液を吸引し廃液用容器に送った(第一の工程)。大量の水を含んだ土壌にPH計を挿し込み、PHを見ながら、また軽く撹拌しながら消石灰粉末を散布し、PHが7になったところで散布を止めた(第二の工程)。洗浄用容器から網状かごを引き上げ、しばらくその状態で水切りを行い、充分に水切りした後、網状かごの底から処理後の土壌を正常化土壌用容器に移し替えた(第三の工程)。洗浄用容器内に残った廃液を排水ポンプで廃液用容器に送った後、廃液用容器内の洗浄廃液にゼオライト(日東ゼオライト2号、3号、5号を1/3づつ調合したもので、粒子の大きさは0.8〜6.3mm)を多めに(約5kg)ハンドミキサーで撹拌しながら少しづつ添加した(第四の工程)。吸い込み口に網目の穴の大きさ0.1mmの金網を覆いかぶせるようにして取り付け、バンドで締め付けた状態の排水ポンプにより、前工程が終了し固形分が沈降した後、廃液用容器から廃液をできるだけ水分を搾り取るように吸引し洗浄剤用容器に送り出した(第五の工程)。廃液用容器に残った泥状の残滓を予め備え付けておいた底部排出口から取出し、放射性廃棄物用容器に入れた。布、紙等の吸水性材料で、使用した容器、排水ポンプ、ハンドミキサー、フィルターとして使った金網、ブルーシート等をきれいに掃除し、布、紙等は放射性廃棄物用容器に入れた。容器内にはかなりの水分が溜まっていたので、紙や布が吸収して容積が減少し、用意した放射性廃棄物用容器に納まった(第六の工程)。
第三の工程で正常化土壌用容器に入れた土壌の放射線量を測定したところ、90Bq/kgと処理前の約1/20にまで減少し、本発明の有効性を実証することができた。さらに、第五の工程で洗浄剤用容器に戻されたろ液の放射線量を測定したところ、95Bq/kgと処理後の土壌に極めて近い数値であった。これは、放射性物質を廃液に流出させることなく除去できたことを示すものである。すなわち、網状のかご又は袋の網目の穴の大きさA、多孔性物質の粒子の大きさB、挿入式のフィルター付き吸引装置のフィルターの穴の大きさC、の関係を制御する不等式 A>C、かつB>Cの有効性を実証することができた。

Claims (6)

  1. 放射性物質に汚染された除去土壌から放射性物質を除去し正常な土壌に戻す際に、除去現場付近に洗浄用容器を設置し、網状のかご又は袋に入れた放射性物質に汚染された除去土壌を該洗浄用容器内に配設し、酸の水溶液から成る洗浄剤を充填し、拡販、洗浄した後、洗浄廃液を吸引装置で吸引し、廃液用容器に回収する第一の工程、該洗浄用容器にアルカリまたはその水溶液を散布し中和する第二の工程、該洗浄用容器から該網状のかご又は袋を引き上げて処理後の土壌を別の場所に移し替え、放射性物質を除去した土壌として回収する第三の工程、該第一の工程で該廃液用容器内に回収した洗浄廃液に多孔性物質を添加、拡販し多孔性物質に放射性物質を吸着せしめる第四の工程、該第四の工程処理後の廃液を挿入式のフィルター付き吸引装置で吸引し、フィルターでろ過したろ液を洗浄剤用容器に回収し、洗浄剤として再利用する第五の工程、及び該第五の工程でろ過されず残った残滓を使用済みのフィルターや清掃に使った吸水性材料とともに放射性廃棄物用容器内に回収し保管する第六の工程、から成ることを特徴とする放射性物質に汚染された除去土壌から放射性物質を除去し正常な土壌に戻す方法。
  2. 網状のかご又は袋の底部が、蝶番、ファスナー、紐による緊張・弛緩調節により、開閉できる構造になっている請求項1記載の放射性物質に汚染された除去土壌から放射性物質を除去し正常な土壌に戻す方法。
  3. 網状のかご又は袋の網目の穴の大きさが0.05〜5mmである請求項1記載の放射性物質に汚染された除去土壌から放射性物質を除去し正常な土壌に戻す方法。
  4. 多孔性物質の粒子の大きさが0.1〜50mmである請求項1記載の放射性物質に汚染された除去土壌から放射性物質を除去し正常な土壌に戻す方法。
  5. 挿入式のフィルター付き吸引装置に取付けるフィルターの穴の大きさが0.03〜3mmである請求項1記載の放射性物質に汚染された除去土壌から放射性物質を除去し正常な土壌に戻す方法。
  6. 網状のかご又は袋の網目の穴の大きさをA、多孔性物質の粒子の大きさをB、挿入式のフィルター付き吸引装置のフィルターの穴の大きさをCとしたとき、A>C、かつB>Cなる不等式を満足する請求項1記載の放射性物質に汚染された除去土壌から放射性物質を除去し正常な土壌に戻す方法。
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