JP2013156573A - レンズ保持具、および光学レンズの保持方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】光学レンズの一方の光学面に何らかの処理を施す場合に、他方の光学面を外部から確実に保護できるようにする。
【解決手段】光学レンズ1を保持するレンズ保持具であって、光学レンズ1が有する2つの光学面2,3のうち、一方の光学面2を外部に露出させ、かつ他方の光学面3を密閉空間19に面する状態に保持するレンズ保持部材10を備える。レンズ保持部材10は、光学レンズ1の外径に対応して開口した開口部13とこれに通じる中空部14とを有するとともに、ゴム状弾性を有する弾性材料で構成されている。そして、レンズ保持部材10の開口部13を塞ぐように光学レンズ1を装着した場合に、光学レンズ1を蓋体として中空部14内に密閉空間19が形成される構成となっている。
【選択図】図3
【解決手段】光学レンズ1を保持するレンズ保持具であって、光学レンズ1が有する2つの光学面2,3のうち、一方の光学面2を外部に露出させ、かつ他方の光学面3を密閉空間19に面する状態に保持するレンズ保持部材10を備える。レンズ保持部材10は、光学レンズ1の外径に対応して開口した開口部13とこれに通じる中空部14とを有するとともに、ゴム状弾性を有する弾性材料で構成されている。そして、レンズ保持部材10の開口部13を塞ぐように光学レンズ1を装着した場合に、光学レンズ1を蓋体として中空部14内に密閉空間19が形成される構成となっている。
【選択図】図3
Description
本発明は、光学レンズを保持するときに用いられるレンズ保持具、および光学レンズの保持方法に関する。
一般に、光学レンズは、レンズ基材の荒削り工程、研磨工程、洗浄工程、表面処理工程などを経て製造される。このような製造工程によって製造される光学レンズは、全体に円形の外形を有し、かつ2つの光学面を有するものとなっている。
光学レンズの製造工程においては、何らかの理由により、光学レンズをレンズ保持具で保持する場合がある。たとえば、眼鏡レンズ等の光学レンズの製造工程においては、レンズを浸漬染色方式によって染色する場合に、レンズをレンズ保持具によって保持し、その状態でレンズ保持具と一緒にレンズを染色液に浸漬させている。この種のレンズ保持具に関しては、たとえば、特許文献1〜3に記載されたものが知られている。
光学レンズの製造工程においては、光学レンズの一方の光学面に何らかの処理を施す場合に、他方の光学面を外部から保護したい場合がある。その場合、上記従来のレンズ保持具では、光学レンズの他方の光学面を確実に保護できないという問題があった。その理由は、以下のとおりである。
まず、上記従来のレンズ保持具においては、レンズの外周面をクランプする方式を採用している。このため、実際にレンズ保持具でレンズをクランプしたときに、2つの光学面が共に外部に露出した状態となる。したがって、たとえば、レンズ保持具に保持されたレンズの一方の光学面に液体を霧状に噴射(スプレー処理)する場合に、液体の粒子が他方の光学面に回り込んで付着するおそれがある。このため、レンズの他方の光学面を外部から確実に保護できないという問題があった。
まず、上記従来のレンズ保持具においては、レンズの外周面をクランプする方式を採用している。このため、実際にレンズ保持具でレンズをクランプしたときに、2つの光学面が共に外部に露出した状態となる。したがって、たとえば、レンズ保持具に保持されたレンズの一方の光学面に液体を霧状に噴射(スプレー処理)する場合に、液体の粒子が他方の光学面に回り込んで付着するおそれがある。このため、レンズの他方の光学面を外部から確実に保護できないという問題があった。
本発明の主な目的は、光学レンズの一方の光学面に何らかの処理を施す場合に、他方の光学面を外部から確実に保護することができるレンズ保持具とこれを用いたレンズ保持方法を提供することにある。
本発明の第1の態様は、
光学レンズを保持するレンズ保持具であって、
前記光学レンズが有する2つの光学面のうち、第1の光学面を外部に露出させ、かつ第2の光学面を密閉空間に面する状態に保持するレンズ保持部材を備える
ことを特徴とするレンズ保持具である。
光学レンズを保持するレンズ保持具であって、
前記光学レンズが有する2つの光学面のうち、第1の光学面を外部に露出させ、かつ第2の光学面を密閉空間に面する状態に保持するレンズ保持部材を備える
ことを特徴とするレンズ保持具である。
本発明の第2の態様は、
前記レンズ保持部材は、前記光学レンズの外径に対応して開口した開口部と当該開口部に通じる中空部とを有するとともに、少なくとも前記光学レンズが装着される部分を弾性材料で構成し、前記開口部を塞ぐように前記光学レンズを装着した場合に、前記光学レンズの外周面と前記レンズ保持部材の内周面との接触により前記中空部に前記密閉空間が形成されるように構成されている
ことを特徴とする上記第1の態様に記載のレンズ保持具である。
前記レンズ保持部材は、前記光学レンズの外径に対応して開口した開口部と当該開口部に通じる中空部とを有するとともに、少なくとも前記光学レンズが装着される部分を弾性材料で構成し、前記開口部を塞ぐように前記光学レンズを装着した場合に、前記光学レンズの外周面と前記レンズ保持部材の内周面との接触により前記中空部に前記密閉空間が形成されるように構成されている
ことを特徴とする上記第1の態様に記載のレンズ保持具である。
本発明の第3の態様は、
前記レンズ保持部材に嵌合されて前記レンズ保持部材の外側から締め付け力を付与することにより、前記中空部内に前記光学レンズを固定する固定用部材をさらに備える
ことを特徴とする上記第1または第2の態様に記載のレンズ保持具である。
前記レンズ保持部材に嵌合されて前記レンズ保持部材の外側から締め付け力を付与することにより、前記中空部内に前記光学レンズを固定する固定用部材をさらに備える
ことを特徴とする上記第1または第2の態様に記載のレンズ保持具である。
本発明の第4の態様は、
前記レンズ保持部材の内周面の一部に、前記光学レンズの外周部を突き当て可能なストッパー部が形成されている
ことを特徴とする上記第1、第2または第3の態様に記載のレンズ保持具である。
前記レンズ保持部材の内周面の一部に、前記光学レンズの外周部を突き当て可能なストッパー部が形成されている
ことを特徴とする上記第1、第2または第3の態様に記載のレンズ保持具である。
本発明の第5の態様は、
上記第1〜第4の態様のいずれか一つに記載のレンズ保持具を用いた光学レンズの保持方法であって、
前記レンズ保持部材に前記レンズを装着した状態において、前記第1の光学面が面する外部空間の圧力と前記第2の光学面が面する前記密閉空間の圧力との差を利用して、前記レンズ保持部材と前記光学レンズの接触部分の密着力を高める
ことを特徴とする光学レンズの保持方法である。
上記第1〜第4の態様のいずれか一つに記載のレンズ保持具を用いた光学レンズの保持方法であって、
前記レンズ保持部材に前記レンズを装着した状態において、前記第1の光学面が面する外部空間の圧力と前記第2の光学面が面する前記密閉空間の圧力との差を利用して、前記レンズ保持部材と前記光学レンズの接触部分の密着力を高める
ことを特徴とする光学レンズの保持方法である。
本発明によれば、光学レンズの一方の光学面に何らかの処理を施す場合に、他方の光学面を外部から確実に保護することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明の実施の形態においては、次の順序で説明を行う。
1.光学レンズの構成
2.第1の実施の形態(レンズ保持具の構成、レンズの装着、効果、レンズ保持具の使用事例)
3.第2の実施の形態(レンズ保持具の構成、レンズの装着、効果)
4.第3の実施の形態(レンズ保持具の構成、レンズの装着、効果)
5.第4の実施の形態(光学レンズの保持方法、第1の具体例、第2の具体例、第3の具体例、第4の具体例)
6.変形例等
本発明の実施の形態においては、次の順序で説明を行う。
1.光学レンズの構成
2.第1の実施の形態(レンズ保持具の構成、レンズの装着、効果、レンズ保持具の使用事例)
3.第2の実施の形態(レンズ保持具の構成、レンズの装着、効果)
4.第3の実施の形態(レンズ保持具の構成、レンズの装着、効果)
5.第4の実施の形態(光学レンズの保持方法、第1の具体例、第2の具体例、第3の具体例、第4の具体例)
6.変形例等
<1.光学レンズの構成>
図1は本発明で取り扱う光学レンズの一例として眼鏡レンズの構成を示す図であり、図中(A)は正面図、(B)は側断面図をそれぞれ示している。
図示した眼鏡レンズ1は、たとえば、プラスチック成型によって得られるレンズ基材(フィニッシュレンズやセミフィニッシュレンズ)である。眼鏡レンズ1は、玉型加工前のレンズである。フィニッシュレンズとは、プラスチック成型においてレンズの両面が所定の光学面に仕上げられたレンズをいう。また、セミフィニッシュレンズとは、一方の光学面が仕上げ済みで、他方の光学面が仕上げ前の半完成品のレンズをいう。
図1は本発明で取り扱う光学レンズの一例として眼鏡レンズの構成を示す図であり、図中(A)は正面図、(B)は側断面図をそれぞれ示している。
図示した眼鏡レンズ1は、たとえば、プラスチック成型によって得られるレンズ基材(フィニッシュレンズやセミフィニッシュレンズ)である。眼鏡レンズ1は、玉型加工前のレンズである。フィニッシュレンズとは、プラスチック成型においてレンズの両面が所定の光学面に仕上げられたレンズをいう。また、セミフィニッシュレンズとは、一方の光学面が仕上げ済みで、他方の光学面が仕上げ前の半完成品のレンズをいう。
眼鏡レンズ1の外形は、外径D0の寸法で円形に形成されている。眼鏡レンズ1には表裏の関係で2つの光学面2,3が形成されている。一方の光学面2は凸面に形成されており、他方の光学面3は凹面に形成されている。また、眼鏡レンズ1にはコバ面4が形成されている。コバ面4は、眼鏡レンズ1の外周面(端面)を構成している。
なお、本発明で取り扱う光学レンズは、眼鏡レンズ1に限らず、他の用途で使用されるレンズ、たとえば、カメラ等の鏡筒に取り付けて使用されるレンズであってもよい。また、光学レンズが有する2つの光学面は、それぞれ球面であっても非球面であってもよい。さらに、レンズ素材についても、プラスチック、ガラスのいずれであってもよい。また、カメラ等に用いられるレンズの場合、2つの光学面の組合せとしては、2つの光学面が共に凸面の場合、2つの光学面が共に凹面の場合、一方の光学面が凸面で他方の光学面が凹面の場合のいずれであってもよい。
<2.第1の実施の形態>
(2−1.レンズ保持具の構成)
図2は本発明の第1の実施の形態に係るレンズ保持具の構成を示す断面図である。
レンズ保持具は、全体にカップ型に形成されたレンズ保持部材10を用いて構成されている。レンズ保持部材10は、胴部11と頭部12とを一体に有している。また、レンズ保持部材10は、頭部12と反対側に開口部13を有している。レンズ保持部材10の内部には、中空部14が形成されている。レンズ保持部材10は、ゴム状弾性を有する弾性材料を用いて構成されている。レンズ保持部材10を構成する弾性材料としては、たとえば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴムなどを用いることができる。
(2−1.レンズ保持具の構成)
図2は本発明の第1の実施の形態に係るレンズ保持具の構成を示す断面図である。
レンズ保持具は、全体にカップ型に形成されたレンズ保持部材10を用いて構成されている。レンズ保持部材10は、胴部11と頭部12とを一体に有している。また、レンズ保持部材10は、頭部12と反対側に開口部13を有している。レンズ保持部材10の内部には、中空部14が形成されている。レンズ保持部材10は、ゴム状弾性を有する弾性材料を用いて構成されている。レンズ保持部材10を構成する弾性材料としては、たとえば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴムなどを用いることができる。
胴部11は円筒状に形成されている。胴部11は、開口部13および中空部14を形成している。胴部11の内周面15は、好ましくは、図示のようにテーパー状に傾斜した状態に形成するのがよい。内周面15の傾斜角度θは、レンズ保持部材10の中心軸Jと平行な軸を基準として、たとえば、0度超、10度以下の範囲内に設定されている。内周面15の傾斜角度θは、好ましくは、0度超、5度以下に設定することが好ましい。これは、内周面15の傾斜角度θが5度を超えると、内周面15とコバ面4との接触面積が減少するからである。
胴部11の内周面15は、頭部12から開口部13に向かって徐々に内径が小さくなるように形成されている。さらに詳述すると、内周面15の最小の内径(開口部13の開口径)D1は、眼鏡レンズ1の外径D0よりも小さく設定されている。また、内周面15の最大の内径D2は、眼鏡レンズ1の外径D0よりも大きく設定されている。そして、開口部13から中空部14内に少し進入した位置における内周面15の内径が、眼鏡レンズ1の外径D0とほぼ等しい寸法に設定されている。
胴部11の外周面16は、レンズ保持部材10の中心軸Jと平行をなすように形成されている。胴部11の肉厚寸法は、胴部11の内周面15の半径と外周面16の半径の寸法差によって決まる。このため、胴部11の肉厚寸法は、内周面15のテーパーにしたがい、頭部12から開口部13に向かって徐々に大きくなるように設定されている。
頭部12は、胴部11の中心軸方向の一方を閉塞するように形成されている。頭部12の外側面17は、略円弧状に膨出した状態に形成されている。頭部12の内側面18は、レンズ保持部材10の中心軸Jと交差する状態に形成されている。頭部12の内側面18は、胴部11の内周面15とともに、レンズ保持部材10の中空部14を区画している。なお、頭部12の内側面18は、図例のような平面でもよいし、外側面17と同様の曲面でもよい。
(2−2.レンズの装着)
次に、上記構成からなるレンズ保持具にレンズを装着する場合の手順について説明する。
まず、胴部11の開口部13を外側(開口径が大きくなる方向)に開くように変形させる。レンズ保持部材10は、ゴム状弾性を有しているため、たとえば、開口部13の端を指先や器具等で掴んで外側に引っ張る力を加えることにより、開口部13を拡開するように変形させる。
次に、上記構成からなるレンズ保持具にレンズを装着する場合の手順について説明する。
まず、胴部11の開口部13を外側(開口径が大きくなる方向)に開くように変形させる。レンズ保持部材10は、ゴム状弾性を有しているため、たとえば、開口部13の端を指先や器具等で掴んで外側に引っ張る力を加えることにより、開口部13を拡開するように変形させる。
次に、上述した開口部13の変形状態を維持しながら、中空部14内に眼鏡レンズ1を挿入する。このとき、レンズ保持部材10の中空部14において、眼鏡レンズ1がレンズ保持部材10と同心状に配置されるように、眼鏡レンズ1の姿勢を調整することが好ましい。
次に、胴部11の開口部13に加えていた力を解除する。そうすると、胴部11の内周面15が眼鏡レンズ1のコバ面4に接触した状態となる。また、胴部11の開口部13が眼鏡レンズ1で閉塞された状態となる。このとき、胴部11の内周面15と眼鏡レンズ1のコバ面4との間には、開口部13の弾性変形の解除に伴う接触圧が作用する。このため、眼鏡レンズ1のコバ面4が胴部11の内周面15に密着した状態となる。
以上の手順により、図3(A),(B)に示すように、レンズ保持部材10に眼鏡レンズ1が装着される。この状態では、レンズ保持部材10の中空部14に、眼鏡レンズ1を蓋体として密閉空間19が形成される。具体的には、頭部12の内側面18とこれに対向する眼鏡レンズ1の光学面3、および胴部11の内周面15といった3つの面で囲まれた空間が密閉空間19となる。
(2−3.効果)
このようにレンズ保持部材10に眼鏡レンズ1を装着することにより、眼鏡レンズ1が有する2つの光学面2,3のうち、一方の光学面2は外部に露出し、かつ、他方の光学面3は密閉空間19に面する状態に保持される。このため、眼鏡レンズ1の一方の光学面2に何らかの処理を施す場合に、他方の光学面3を外部から確実に保護することができる。
このようにレンズ保持部材10に眼鏡レンズ1を装着することにより、眼鏡レンズ1が有する2つの光学面2,3のうち、一方の光学面2は外部に露出し、かつ、他方の光学面3は密閉空間19に面する状態に保持される。このため、眼鏡レンズ1の一方の光学面2に何らかの処理を施す場合に、他方の光学面3を外部から確実に保護することができる。
たとえば、眼鏡レンズ1の一方の光学面2に液体を霧状に噴射する場合に、液体の粒子が他方の光学面3に回り込んで付着しないように、光学面3を保護することができる。また、眼鏡レンズ1の一方の光学面2に蒸着材料を付着させて薄膜を形成する場合にも、蒸着材料が他方の光学面3に回り込んで付着しないように、光学面3を保護することができる。さらに、眼鏡レンズ1の一方の光学面2にプラズマ処理を施す場合に、プラズマ処理に伴うダメージ等から光学面3を保護することができる。
また、レンズ保持部材10によって眼鏡レンズ1を保持した場合は、眼鏡レンズ1の光学面3が物理的な接触を伴わない状態(非接触状態)に維持される。このため、たとえば、眼鏡レンズ1の光学面3に何らかの機能膜が形成されている場合に、この機能膜が未硬化または未乾燥の状態であっても、レンズ保持部材10に眼鏡レンズ1を装着することにより、未硬化または未乾燥の状態にある光学面3を保護しながら、光学面2に所望の処理を施すことができる。さらに、空気中に浮遊する塵埃等が眼鏡レンズ1の光学面3に付着しないように保護することもできる。また、レンズ保持部材10の少なくとも内面(内周面15および内側面18)を光吸収性の高い色、具体的には黒色またはこれに近い色にすることにより、光学面2から入射して光学面3から出射した光の反射光(戻り光)が眼鏡レンズ1に再入射しないように保護することもできる。
(2−4.レンズ保持具の使用事例)
以下に、レンズ保持具の具体的な使用事例の一つとして、眼鏡レンズの染色処理工程にレンズ保持具を用いる場合について説明する。
まず、上記の手順でレンズ保持部材10に眼鏡レンズ1を装着することにより、眼鏡レンズ1の一方の光学面2を外部に露出させ、かつ、他方の光学面3を密閉空間19に面する状態に保持する。次に、図4に示すように、眼鏡レンズ1を染色液21に浸漬させる。このとき、眼鏡レンズ1の光学面2は染色液21に接触(浸漬)した状態となり、光学面3は染色液21に接触することなく密閉空間19に面した状態に保持される。このため、眼鏡レンズ1の光学面3が染色されずに光学面2だけが染色される。
以下に、レンズ保持具の具体的な使用事例の一つとして、眼鏡レンズの染色処理工程にレンズ保持具を用いる場合について説明する。
まず、上記の手順でレンズ保持部材10に眼鏡レンズ1を装着することにより、眼鏡レンズ1の一方の光学面2を外部に露出させ、かつ、他方の光学面3を密閉空間19に面する状態に保持する。次に、図4に示すように、眼鏡レンズ1を染色液21に浸漬させる。このとき、眼鏡レンズ1の光学面2は染色液21に接触(浸漬)した状態となり、光学面3は染色液21に接触することなく密閉空間19に面した状態に保持される。このため、眼鏡レンズ1の光学面3が染色されずに光学面2だけが染色される。
ここで、眼鏡レンズ1の染色に用いられる染色液21の温度は、JISで規定される常温(20℃±15℃)よりも高い温度に維持される。具体的には、染色液21の温度が70℃〜98℃の範囲内に設定される。これに対して、レンズ保持部材10に眼鏡レンズ1を装着する作業は、常温の環境で行われる。このため、レンズ保持部材10で保持した眼鏡レンズ1を染色液21に浸漬させると、密閉空間19に存在する空気が、眼鏡レンズ1およびレンズ保持部材10を通して温められる。その結果、密閉空間19の空気が熱膨張する。
そうした場合、上記熱膨張により圧縮された空気によって眼鏡レンズ1が開口部13側に押圧され、この押圧力の作用によって眼鏡レンズ1のコバ面4が胴部11の内周面15に押し付けられる。このため、眼鏡レンズ1を染色液21に浸漬させる前に比べて、胴部11の内周面15と眼鏡レンズ1のコバ面4との密着力が高まり、それと同時に、密閉空間19の密閉性も高まる。
また、レンズ保持部材10に眼鏡レンズ1を装着した状態では、レンズ保持部材10の内部に密閉空間19が形成されるため、眼鏡レンズ1の光学面2を下向きにして染色液21に浸漬させたときに、密閉空間19の空気の存在によって、眼鏡レンズ1およびレンズ保持部材10に浮力が働く。このため、眼鏡レンズ1単体では染色液21に沈むことになるが、レンズ保持部材10で保持した場合は眼鏡レンズ1が染色液21の液面に浮いた状態に維持される。
その後、上述のように眼鏡レンズ1の光学面2を染色液21に浸漬させてからの経過時間が予め設定された染色時間に到達したら、レンズ保持部材10と一緒に眼鏡レンズ1を染色液21から取り出す。染色時間は、眼鏡レンズ1の素材や所望する染色濃度などに応じて設定される時間である。染色液21から眼鏡レンズ1を取り出した後は、胴部11の開口部13を外側に開くように変形させて、レンズ保持部材10から眼鏡レンズ1を取り外す。
以上の染色処理工程においては、眼鏡レンズ1の光学面3を染色液21に接触させることなく、眼鏡レンズ1の光学面2だけを染色することができる。このため、浸漬染色方式でありながら片面染色を実現することが可能となる。
<3.第2の実施の形態>
(3−1.レンズ保持具の構成)
図5(A),(B)は本発明の第2の実施の形態に係るレンズ保持具の構成を示す概略図である。
図5(A)に示す固定用部材22と同図(B)に示すレンズ保持部材10は、第2の実施の形態に係るレンズ保持具を構成する部材である。レンズ保持部材10については、上記第1の実施の形態と同様であるため説明を省略する。
(3−1.レンズ保持具の構成)
図5(A),(B)は本発明の第2の実施の形態に係るレンズ保持具の構成を示す概略図である。
図5(A)に示す固定用部材22と同図(B)に示すレンズ保持部材10は、第2の実施の形態に係るレンズ保持具を構成する部材である。レンズ保持部材10については、上記第1の実施の形態と同様であるため説明を省略する。
固定用部材22は、全体にリング状に形成されている。固定用部材22は、たとえば、樹脂や金属などを用いて構成することが可能であり、特に耐久性やレンズ保持状態の安定性等を考慮すると、金属を用いて構成することが好ましい。さらに、その場合は、軽量化の観点からアルミニウムを用いることが好ましい。また、適度なバネ性を付与する観点からステンレスを用いることも好ましい。
固定用部材22は、帯状のベルト部23と、2つの操作部24とを一体に有している。ベルト部23は、円形のリング状に形成されている。ベルト部23の内径(リング径)は、2つの操作部24を離間する方向に外力を加えることにより、レンズ保持部材10の外径よりも大きく拡開できるようになっている。また、ベルト部23の内径は、上記の外力を加えない状態では、レンズ保持部材10の外径よりも小さくなるように設定されている。操作部24は、ベルト部23の両端部にそれぞれ形成されている。
(3−2.レンズの装着)
次に、上記構成からなるレンズ保持具に眼鏡レンズ1を装着する場合の手順について説明する。
まず、上記第1の実施の形態と同様の手順で、レンズ保持部材10に眼鏡レンズ1を装着する。
次に、上記構成からなるレンズ保持具に眼鏡レンズ1を装着する場合の手順について説明する。
まず、上記第1の実施の形態と同様の手順で、レンズ保持部材10に眼鏡レンズ1を装着する。
次に、図6に示すように、固定用部材22をレンズ保持部材10に嵌合させる。具体的には、固定用部材22に設けられた2つの操作部24を指または図示しない器具等で掴むなどして、ベルト部23の内径をレンズ保持部材10の外径よりも大きく拡開させるように外力を加え、その状態でレンズ保持部材10に固定用部材22を嵌め入れる。その際、レンズ保持部材10の中心軸方向において、眼鏡レンズ1が装着される部分に固定用部材22の位置を合わせ、その状態で外力を開放する。そうすると、外力の開放と同時にベルト部23の内径が固定用部材22自身のバネ性によって縮小するため、レンズ保持部材10の胴部11が外側から固定用部材22によって締め付けられた状態となる。つまり、レンズ保持部材10に嵌合した固定用部材22の締め付け力が、胴部11を介して眼鏡レンズ1に加わる。このため、レンズ保持部材10の中空部14内に眼鏡レンズ1が固定された状態になる。
(3−3.効果)
本発明の第2の実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様の効果に加えて、以下のような効果が得られる。
すなわち、レンズ保持部材10に固定用部材22を嵌合させることにより、図7(A),(B)に示すように、レンズ保持部材10の内周面15と眼鏡レンズ1のコバ面4とを、固定用部材22の締め付け力を利用して密着させることができる。このため、固定用部材22を具備しない構成に比べて、レンズ保持部材10の内周面15と眼鏡レンズ1のコバ面4との接触部分の密着力を高めることができる。このため、第2の実施の形態に係るレンズ保持具を上記の染色処理工程に用いた場合は、レンズ保持部材10の内周面15と眼鏡レンズ1のコバ面4との接触界面に染色液21が侵入しにくくなる。したがって、染色液21が眼鏡レンズ1の染色対象以外の部分に付着するのを抑制することができる。また、固定用部材22による締め付け力によって、レンズ保持部材10に対し眼鏡レンズ1を確実に固定することができる。このため、レンズ保持具に装着した眼鏡レンズ1がレンズ保持部材10から落下しないように落下抑止力を高めることができる。
本発明の第2の実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様の効果に加えて、以下のような効果が得られる。
すなわち、レンズ保持部材10に固定用部材22を嵌合させることにより、図7(A),(B)に示すように、レンズ保持部材10の内周面15と眼鏡レンズ1のコバ面4とを、固定用部材22の締め付け力を利用して密着させることができる。このため、固定用部材22を具備しない構成に比べて、レンズ保持部材10の内周面15と眼鏡レンズ1のコバ面4との接触部分の密着力を高めることができる。このため、第2の実施の形態に係るレンズ保持具を上記の染色処理工程に用いた場合は、レンズ保持部材10の内周面15と眼鏡レンズ1のコバ面4との接触界面に染色液21が侵入しにくくなる。したがって、染色液21が眼鏡レンズ1の染色対象以外の部分に付着するのを抑制することができる。また、固定用部材22による締め付け力によって、レンズ保持部材10に対し眼鏡レンズ1を確実に固定することができる。このため、レンズ保持具に装着した眼鏡レンズ1がレンズ保持部材10から落下しないように落下抑止力を高めることができる。
<4.第3の実施の形態>
(4−1.レンズ保持具の構成)
図8は本発明の第3の実施の形態に係るレンズ保持具の構成を示す概略図である。
図示したレンズ保持具は、上記第1の実施の形態と同様に、全体にカップ型に形成されたレンズ保持部材10を用いて構成されている。ただし、上記第1の実施の形態と比較すると、レンズ保持部材10の内周面15の一部にストッパー部25を設けた点が異なる。ストッパー部25は、内方にせり出すように段付き状に形成されている。ストッパー部25は、全周(360°)にわたって連続的に形成されていてもよいし、所定の角度ピッチで複数箇所(好ましくは3箇所以上)に分けて形成されていてもよい。これにより、胴部11の内周面15は、ストッパー部25の段差を形作る第1の内周面(テーパー面)15aと、それよりも開口部13寄りの第2の内周面(テーパー面)15bによって形成されている。
(4−1.レンズ保持具の構成)
図8は本発明の第3の実施の形態に係るレンズ保持具の構成を示す概略図である。
図示したレンズ保持具は、上記第1の実施の形態と同様に、全体にカップ型に形成されたレンズ保持部材10を用いて構成されている。ただし、上記第1の実施の形態と比較すると、レンズ保持部材10の内周面15の一部にストッパー部25を設けた点が異なる。ストッパー部25は、内方にせり出すように段付き状に形成されている。ストッパー部25は、全周(360°)にわたって連続的に形成されていてもよいし、所定の角度ピッチで複数箇所(好ましくは3箇所以上)に分けて形成されていてもよい。これにより、胴部11の内周面15は、ストッパー部25の段差を形作る第1の内周面(テーパー面)15aと、それよりも開口部13寄りの第2の内周面(テーパー面)15bによって形成されている。
(4−2.レンズの装着)
次に、上記構成からなるレンズ保持具に眼鏡レンズ1を装着する場合の手順について説明する。なお、上記第1の実施の形態と重複する内容はできるだけ省略する。
まず、胴部11の開口部13を外側に開くように変形させた後、その変形状態を維持しながら、中空部14内に眼鏡レンズ1を挿入する。このとき、図9に示すように、眼鏡レンズ1の光学面3の外周部をストッパー部25に突き当てるようにする。
次に、上記構成からなるレンズ保持具に眼鏡レンズ1を装着する場合の手順について説明する。なお、上記第1の実施の形態と重複する内容はできるだけ省略する。
まず、胴部11の開口部13を外側に開くように変形させた後、その変形状態を維持しながら、中空部14内に眼鏡レンズ1を挿入する。このとき、図9に示すように、眼鏡レンズ1の光学面3の外周部をストッパー部25に突き当てるようにする。
次に、胴部11の開口部13に加えていた力を解除することにより、胴部11の第2の内周面15bを眼鏡レンズ1のコバ面4に密着させる。これにより、レンズ保持部材10の中空部14において、眼鏡レンズ1の保持位置と保持姿勢が決まる。以上の手順により、レンズ保持具に眼鏡レンズ1が装着される。以降の染色処理については、上記第1の実施の形態と同様であるため説明を省略する。
(4−3.効果)
本発明の第3の実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様の効果に加えて、以下のような効果が得られる。
すなわち、レンズ保持部材10の内周面15にストッパー部25を形成しているため、レンズ保持部材10に眼鏡レンズ1を装着する場合に、眼鏡レンズ1の位置および姿勢を安定させることができる。このため、レンズ保持部材10の中空部14の奥側に眼鏡レンズ1が入り込みすぎて、眼鏡レンズ1を保持する力が不足してしまう不都合を回避することができる。また、レンズ保持部材10に眼鏡レンズ1が傾いて保持された場合に起こり得る不都合、たとえば、レンズ保持部材10の内周面15と眼鏡レンズ1のコバ面4との密着性低下などの不都合を回避することができる。
本発明の第3の実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様の効果に加えて、以下のような効果が得られる。
すなわち、レンズ保持部材10の内周面15にストッパー部25を形成しているため、レンズ保持部材10に眼鏡レンズ1を装着する場合に、眼鏡レンズ1の位置および姿勢を安定させることができる。このため、レンズ保持部材10の中空部14の奥側に眼鏡レンズ1が入り込みすぎて、眼鏡レンズ1を保持する力が不足してしまう不都合を回避することができる。また、レンズ保持部材10に眼鏡レンズ1が傾いて保持された場合に起こり得る不都合、たとえば、レンズ保持部材10の内周面15と眼鏡レンズ1のコバ面4との密着性低下などの不都合を回避することができる。
また、本発明の第3の実施の形態に係るレンズ保持部材10に、上記第2の実施の形態で記述した固定用部材22を組み合わせた場合は、上記第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
<5.第4の実施の形態>
(5−1.光学レンズの保持方法)
本発明の第4の実施の形態は、上記のレンズ保持具を用いた光学レンズの保持方法に関して、次の方法を採用するものである。すなわち、レンズ保持部材10に眼鏡レンズ1を装着した状態において、一方の光学面2が面する外部空間の圧力(外圧)と他方の光学面3が面する密閉空間19の圧力(内圧)との差を利用して、レンズ保持部材10と眼鏡レンズ1の接触部分の密着力を高める。以下に、この方法を実現する幾つかの具体例について説明する。
(5−1.光学レンズの保持方法)
本発明の第4の実施の形態は、上記のレンズ保持具を用いた光学レンズの保持方法に関して、次の方法を採用するものである。すなわち、レンズ保持部材10に眼鏡レンズ1を装着した状態において、一方の光学面2が面する外部空間の圧力(外圧)と他方の光学面3が面する密閉空間19の圧力(内圧)との差を利用して、レンズ保持部材10と眼鏡レンズ1の接触部分の密着力を高める。以下に、この方法を実現する幾つかの具体例について説明する。
(5−2.第1の具体例)
第1の具体例においては、上記第1の実施の形態で説明したレンズ保持部材10を用いる。レンズ保持部材10を用いて眼鏡レンズ1を保持する場合は、大気圧よりも高圧の環境でレンズ保持部材10に眼鏡レンズ1を装着する。これにより、眼鏡レンズ1を装着したレンズ保持部材10を大気圧の環境に置いた場合は、光学面2が面する外部空間の圧力が相対的に低い圧力となり、光学面3が面する密閉空間19が相対的に高い圧力となる。このため、レンズ保持部材10に装着された眼鏡レンズ1は、密閉空間19からの空気の圧力を受けて開口部13側に押圧され、この押圧力の作用によって眼鏡レンズ1のコバ面4が胴部11の内周面15に押し付けられる。したがって、胴部11の内周面15と眼鏡レンズ1のコバ面4との密着力が高まり、それと同時に、密閉空間19の密閉性も高まる。その結果、レンズ保持部材10を用いて眼鏡レンズ1を保持する場合に、密閉空間19に面する光学面3を一層頑強に保護することができる。
第1の具体例においては、上記第1の実施の形態で説明したレンズ保持部材10を用いる。レンズ保持部材10を用いて眼鏡レンズ1を保持する場合は、大気圧よりも高圧の環境でレンズ保持部材10に眼鏡レンズ1を装着する。これにより、眼鏡レンズ1を装着したレンズ保持部材10を大気圧の環境に置いた場合は、光学面2が面する外部空間の圧力が相対的に低い圧力となり、光学面3が面する密閉空間19が相対的に高い圧力となる。このため、レンズ保持部材10に装着された眼鏡レンズ1は、密閉空間19からの空気の圧力を受けて開口部13側に押圧され、この押圧力の作用によって眼鏡レンズ1のコバ面4が胴部11の内周面15に押し付けられる。したがって、胴部11の内周面15と眼鏡レンズ1のコバ面4との密着力が高まり、それと同時に、密閉空間19の密閉性も高まる。その結果、レンズ保持部材10を用いて眼鏡レンズ1を保持する場合に、密閉空間19に面する光学面3を一層頑強に保護することができる。
(5−3.第2の具体例)
第2の具体例においては、図10に示すレンズ保持部材10を用いる。図示したレンズ保持部材10には、空気の流れを一方向に規制する一方向弁31が付設されている。一方向弁31は、頭部12の外側面17から内側面18に向かう空気の流れだけを許容するものである。このレンズ保持部材10を用いて眼鏡レンズ1を保持する場合は、レンズ保持部材10に眼鏡レンズ1を装着した後、一方向弁31を通して給気ポンプ等により密閉空間19に空気を供給することにより、密閉空間19の空気を圧縮(加圧)する。これにより、光学面3が面する密閉空間19は相対的に高い圧力となり、光学面2が面する外部空間の圧力は相対的に低い圧力となる。このため、上記第1の具体例と同様に、胴部11の内周面15と眼鏡レンズ1のコバ面4との密着力が高まり、それと同時に、密閉空間19の密閉性も高まる。よって、同様の効果が得られる。
第2の具体例においては、図10に示すレンズ保持部材10を用いる。図示したレンズ保持部材10には、空気の流れを一方向に規制する一方向弁31が付設されている。一方向弁31は、頭部12の外側面17から内側面18に向かう空気の流れだけを許容するものである。このレンズ保持部材10を用いて眼鏡レンズ1を保持する場合は、レンズ保持部材10に眼鏡レンズ1を装着した後、一方向弁31を通して給気ポンプ等により密閉空間19に空気を供給することにより、密閉空間19の空気を圧縮(加圧)する。これにより、光学面3が面する密閉空間19は相対的に高い圧力となり、光学面2が面する外部空間の圧力は相対的に低い圧力となる。このため、上記第1の具体例と同様に、胴部11の内周面15と眼鏡レンズ1のコバ面4との密着力が高まり、それと同時に、密閉空間19の密閉性も高まる。よって、同様の効果が得られる。
(5−4.第3の具体例)
この第3の具体例では、図11に示すレンズ保持部材10を用いる。図示したレンズ保持部材10においては、胴部11の内周面15が頭部12から開口部13に向かって徐々に内径が大きくなるようにテーパー状に形成されている。このレンズ保持部材10を用いて眼鏡レンズ1を保持する場合は、大気圧よりも低圧の環境でレンズ保持部材10に眼鏡レンズ1を装着する。これにより、眼鏡レンズ1を装着したレンズ保持部材10を大気圧の環境に置いた場合は、光学面2が面する外部空間の圧力が相対的に高い圧力となり、光学面3が面する密閉空間19が相対的に低い圧力となる。このため、レンズ保持部材10に装着された眼鏡レンズ1は、外部空間からの空気の圧力を受けて頭部12側に押圧され、この押圧力の作用によって眼鏡レンズ1のコバ面4が胴部11の内周面15に押し付けられる。したがって、胴部11の内周面15と眼鏡レンズ1のコバ面4との密着力が高まり、それと同時に、密閉空間19の密閉性も高まる。その結果、レンズ保持部材10を用いて眼鏡レンズ1を保持する場合に、密閉空間19に面する光学面3を一層頑強に保護することができる。
この第3の具体例では、図11に示すレンズ保持部材10を用いる。図示したレンズ保持部材10においては、胴部11の内周面15が頭部12から開口部13に向かって徐々に内径が大きくなるようにテーパー状に形成されている。このレンズ保持部材10を用いて眼鏡レンズ1を保持する場合は、大気圧よりも低圧の環境でレンズ保持部材10に眼鏡レンズ1を装着する。これにより、眼鏡レンズ1を装着したレンズ保持部材10を大気圧の環境に置いた場合は、光学面2が面する外部空間の圧力が相対的に高い圧力となり、光学面3が面する密閉空間19が相対的に低い圧力となる。このため、レンズ保持部材10に装着された眼鏡レンズ1は、外部空間からの空気の圧力を受けて頭部12側に押圧され、この押圧力の作用によって眼鏡レンズ1のコバ面4が胴部11の内周面15に押し付けられる。したがって、胴部11の内周面15と眼鏡レンズ1のコバ面4との密着力が高まり、それと同時に、密閉空間19の密閉性も高まる。その結果、レンズ保持部材10を用いて眼鏡レンズ1を保持する場合に、密閉空間19に面する光学面3を一層頑強に保護することができる。
(5−5.第4の具体例)
第2の具体例においては、図12に示すレンズ保持部材10を用いる。図示したレンズ保持部材10には、空気の流れを一方向に規制する一方向弁32が設けられている。一方向弁32は、頭部12の内側面18から外側面17に向かう空気の流れだけを許容するものである。このレンズ保持部材10を用いて眼鏡レンズ1を保持する場合は、レンズ保持部材10に眼鏡レンズ1を装着した後、一方向弁32を通して排気ポンプ等により密閉空間19の空気を排気することにより、密閉空間19を減圧する。これにより、光学面3が面する密閉空間19は相対的に低い圧力となり、光学面2が面する外部空間の圧力は相対的に高い圧力となる。このため、上記第3の具体例と同様に、胴部11の内周面15と眼鏡レンズ1のコバ面4との密着力が高まり、それと同時に、密閉空間19の密閉性も高まる。よって、同様の効果が得られる。
第2の具体例においては、図12に示すレンズ保持部材10を用いる。図示したレンズ保持部材10には、空気の流れを一方向に規制する一方向弁32が設けられている。一方向弁32は、頭部12の内側面18から外側面17に向かう空気の流れだけを許容するものである。このレンズ保持部材10を用いて眼鏡レンズ1を保持する場合は、レンズ保持部材10に眼鏡レンズ1を装着した後、一方向弁32を通して排気ポンプ等により密閉空間19の空気を排気することにより、密閉空間19を減圧する。これにより、光学面3が面する密閉空間19は相対的に低い圧力となり、光学面2が面する外部空間の圧力は相対的に高い圧力となる。このため、上記第3の具体例と同様に、胴部11の内周面15と眼鏡レンズ1のコバ面4との密着力が高まり、それと同時に、密閉空間19の密閉性も高まる。よって、同様の効果が得られる。
なお、第4の実施の形態に係る眼鏡レンズ1の保持方法は、ストッパー部25が設けられたレンズ保持部材10を用いて眼鏡レンズ1を保持する場合に適用してもよい。また、上記第2の具体例および第4の具体例においては、密閉空間19の空気を圧縮または排気することが可能な位置であれば、一方向弁31,32をレンズ保持部材10のいずれの位置に設けてもかまわない。また、密閉空間19の空気を圧縮または排気するためにレンズ保持部材10に注射針を刺したときに、その針穴が、注射針を抜くことによりレンズ保持部材10自身のゴム状弾性や自己修復機能によって自動的に閉じる構成であれば、一方向弁31,32を設けなくても上記光学レンズの保持方法を実現することが可能である。
<6.変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
たとえば、本発明に係るレンズ保持具を光学レンズの表面処理に用いる場合、表面処理としては染色処理に限らず、ハードコート層、防汚層、防曇層などの機能層を形成する処理に広く用いることが可能である。さらに、本発明に係るレンズ保持具は、光学レンズの表面処理に限らず、たとえば、光学レンズの洗浄処理、熱処理などに用いてもよいし、光学レンズの運搬、保管、検査、試験などに用いてもよい。
また、上記実施の形態においては、レンズ保持部材10の全部を、ゴム状弾性を有する弾性材料で構成しているが、本発明はこれに限らず、少なくとも眼鏡レンズ1が装着される部分(たとえば、胴部11の全部または一部)を当該弾性材料で構成したものであればよい。
また、上記実施の形態においては、レンズ保持部材10の内周面15をテーパー状に形成したが、本発明はこれに限らず、レンズ保持部材10のゴム状弾性だけで眼鏡レンズ1を確実に保持できる場合は、レンズ保持部材10の内周面15を中心軸J(図2)と平行な面で形成してもよい。また、レンズ保持部材10の外周面16についても、中心軸Jと平行な面で形成してもよいし、テーパー状に形成してもよい。
また、レンズ保持部材10の全体形状についても種々の変形が可能である。たとえば図13(A)に示すように、レンズ保持部材10を断面半球状に形成してもよいし、図13(B)に示すように、レンズ保持部材10につば部10aを設けて断面ハット型に形成してもよい。
1…眼鏡レンズ
10…レンズ保持部材
11…胴部
12…頭部
13…開口部
14…中空部
19…密閉空間
22…固定用部材
10…レンズ保持部材
11…胴部
12…頭部
13…開口部
14…中空部
19…密閉空間
22…固定用部材
Claims (5)
- 光学レンズを保持するレンズ保持具であって、
前記光学レンズが有する2つの光学面のうち、第1の光学面を外部に露出させ、かつ第2の光学面を密閉空間に面する状態に保持するレンズ保持部材を備える
ことを特徴とするレンズ保持具。 - 前記レンズ保持部材は、前記光学レンズの外径に対応して開口した開口部と当該開口部に通じる中空部とを有するとともに、少なくとも前記光学レンズが装着される部分を弾性材料で構成し、前記開口部を塞ぐように前記光学レンズを装着した場合に、前記光学レンズの外周面と前記レンズ保持部材の内周面との接触により前記中空部に前記密閉空間が形成されるように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ保持具。 - 前記レンズ保持部材に嵌合されて前記レンズ保持部材の外側から締め付け力を付与することにより、前記中空部内に前記光学レンズを固定する固定用部材をさらに備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載のレンズ保持具。 - 前記レンズ保持部材の内周面の一部に、前記光学レンズの外周部を突き当て可能なストッパー部が形成されている
ことを特徴とする請求項1、2または3に記載のレンズ保持具。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載のレンズ保持具を用いた光学レンズの保持方法であって、
前記レンズ保持部材に前記レンズを装着した状態において、前記第1の光学面が面する外部空間の圧力と前記第2の光学面が面する前記密閉空間の圧力との差を利用して、前記レンズ保持部材と前記光学レンズの接触部分の密着力を高める
ことを特徴とする光学レンズの保持方法。
Priority Applications (5)
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---|---|---|---|
JP2012018933A JP2013156573A (ja) | 2012-01-31 | 2012-01-31 | レンズ保持具、および光学レンズの保持方法 |
EP13744001.2A EP2811334B1 (en) | 2012-01-31 | 2013-01-29 | Manufacturing method of eyeglass lens and lens holder |
PCT/JP2013/051847 WO2013115159A1 (ja) | 2012-01-31 | 2013-01-29 | 眼鏡レンズの製造方法、およびレンズ保持具 |
US14/375,916 US20150024127A1 (en) | 2012-01-31 | 2013-01-29 | Method for manufacturing spectacle lens, and lens holder |
AU2013216119A AU2013216119B2 (en) | 2012-01-31 | 2013-01-29 | Manufacturing method of eyeglass lens and lens holder |
Applications Claiming Priority (1)
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---|---|
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ID=49051767
Family Applications (1)
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2012
- 2012-01-31 JP JP2012018933A patent/JP2013156573A/ja active Pending
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