JP2013147727A - 透明導電性酸化亜鉛薄膜及び該透明導電性酸化亜鉛薄膜の製造方法 - Google Patents
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【解決手段】酸化亜鉛に、Ga及び/又はAlからなる第1元素と、In、Bi、Se、Ce、Cu、Er及びEuからなる群から選択される少なくとも1つからなる第2元素が添加された透明導電性酸化亜鉛薄膜であって、60℃、相対湿度95%の条件下で500時間の環境試験を行ったとき、環境試験前の比抵抗に対する環境試験後の比抵抗の相対変化率が15%以下であり、前記環境試験後の比抵抗が5×10−4Ω・cm以下であり、前記透明導電性酸化亜鉛薄膜に含まれるZnと第2元素の原子数量比(第2元素/Zn)が0.15〜0.46%であり、膜厚が140nm以下であることを特徴とする透明導電性酸化亜鉛薄膜とする。
【選択図】図3
Description
一般的に、膜厚が薄ければ薄いほど、光透過率においては有利であるが、比抵抗及び耐湿熱性は低下する。
特許文献4は、100nm以下の極薄レベルの膜厚の薄膜を一部開示しているものの、膜厚が薄い場合はインジウムの含有量が多く、逆にインジウムが少ない場合は膜厚が厚いものしか開示しておらず、高価であり資源の制約も伴うインジウムの含有量が少なく且つ膜厚が薄い場合に、優れた比抵抗及び耐湿熱性を有する透明導電膜は開示されていない。
特許文献5の透明導電膜は、膜厚が150nm前後であって、膜厚がそれ以下の極薄レベルであっては耐湿熱性を向上させるまでには至っていない。
60℃、相対湿度95%の条件下で500時間の環境試験を行ったとき、環境試験前の比抵抗に対する環境試験後の比抵抗の相対変化率が15%以下であって、環境試験後の比抵抗が5×10−4Ω・cm以下であることにより、高温高湿となる条件下でも使用可能な導電率に優れた透明導電性酸化亜鉛薄膜とすることができる。
透明導電性酸化亜鉛薄膜に含まれるZnと第2元素の原子数量比(第2元素/Zn)が0.15〜0.46%であることにより、高価で資源の制約が懸念される元素を多量に使用する必要がないので、環境に優しく経済的な透明導電性酸化亜鉛薄膜とすることができる。
膜厚が140nm以下であることにより、光透過性に優れ、様々な用途に使用可能な透明導電性酸化亜鉛薄膜とすることができる。
Ga及び/又はAlからなる第1元素は導電性付与成分として添加され、光透過率も高めることができる。
透明導電性酸化亜鉛薄膜に含まれる第1元素の比率は、好ましくは0.1〜6重量%である。
第1元素の比率が0.1重量%未満であると、酸化亜鉛薄膜の導電性を充分に向上させることができないため、好ましくない。
第1元素の比率が6重量%を超えると、酸化亜鉛薄膜の耐湿熱性の向上は実現するが導電性は急激的に減少するため好ましくない。
第2元素を添加することにより、酸化亜鉛薄膜の耐湿熱性を向上させることができる。
透明導電性酸化亜鉛薄膜に含まれる第2元素の比率は、本発明において、Znと第2元素の原子数量比:(第2元素/(第2元素+Zn))≒(第2元素/Zn)は最大で0.46%(0.0046)である。
本発明は、従来のITO(インジウム錫酸化物)膜ではなく、酸化亜鉛主体の導電膜である。インジウムは高価であり資源の制約も懸念される。特許文献6にあるInの原子数量比In/(In+Zn)55〜80%(0.55〜0.80)であり、本発明のIn元素の比率は、顕著に小さい。
Znと第2元素の原子数量比(第2元素/Zn)が0.15%未満であると、酸化亜鉛薄膜の耐湿熱性を充分に向上させることができないため、好ましくない。
Znと第2元素の原子数量比(第2元素/Zn)が0.46%を超えると、酸化亜鉛薄膜の比抵抗が大きくなってしまい、且つ光透過率が低下するため、好ましくない。
一般的に、酸化亜鉛薄膜の膜厚が薄ければ薄いほど、光透過率においては有利であるが、耐湿熱性は低下する。
しかしながら、本発明の透明導電性酸化亜鉛薄膜は、後述する製造方法などにより、140nm以下、さらには100nm以下という極薄レベルにおいても、耐湿熱性の低下を最小限にとどめることが可能となったものである。
膜厚が140nm以下であることにより、原料コストおよび成膜中にかかる生産コストを合わせた総コストにおいてより安価となることから優位であり、かつ高い光透過率を有する透明導電性酸化亜鉛薄膜とすることができる。
上述したように、酸化亜鉛薄膜の膜厚が薄ければ薄いほど耐湿熱性は低下する。本発明は膜厚140nm以下でも、60℃、相対湿度95%の条件下で500時間の環境試験を行ったとき、環境試験前の比抵抗に対する環境試験後の比抵抗の相対変化率が15%以下であり、非常に優れた耐湿熱性を有する。
また、環境試験後の比抵抗が5×10−4Ω・cm以下であるので、導電膜として好適に使用することができる。
この広範囲な波長領域において実現する優れた透明性により、太陽電池等、広範囲での利用が可能となる。
イオンプレーティング装置(10)は、成膜室である真空容器(12)と、真空容器(12)中にプラズマビームPBを供給するプラズマ源であるプラズマガン(プラズマビーム発生器)(14)と、真空容器(12)内の底部に配置されてプラズマビームPBが入射する陽極部材(16)と、成膜の対象である基板Wを保持する基板保持部材WHを陽極部材(16)の上方で適宜移動させる搬送機構(18)とを備える。
本発明の透明導電性酸化亜鉛薄膜の製造方法は、ターゲット(22)として、Ga及び/又はAlからなる第1元素又はその化合物と、In、Bi、Se、Ce、Cu、Er及びEuからなる群から選択される少なくとも1つからなる第2元素又はその化合物が添加された酸化亜鉛の焼結体を用いることを特徴とする。
上記ターゲットを用いることにより、Ga及び/又はAlからなる第1元素に加えて、In、Bi、Se、Ce、Cu、Er及びEuからなる群から選択される少なくとも1つからなる第2元素を含有する透明導電性酸化亜鉛薄膜を製造することができ、この薄膜は、耐湿熱性、光透過性及び導電性に優れる。
Znと第2元素の原子数量比(第2元素/Zn)が0.15%未満であると、製造される酸化亜鉛薄膜の耐湿熱性を充分に向上させることができないため、好ましくない。
Znと第2元素の原子数量比(第2元素/Zn)が0.46%を超えると、製造される酸化亜鉛薄膜の比抵抗が大きくなってしまい、且つ光透過率が低下するため、好ましくない。
第1元素の含有量が0.1重量%未満であると、製造される酸化亜鉛薄膜の導電性を充分に向上させることができないため、好ましくない。
第1元素の含有量が6重量%を超えると、製造される酸化亜鉛薄膜の導電性が急激に減少するため、好ましくない。
酸素ガス容器(19)から真空容器(12)の内部に酸素が供給される。酸素流量は10〜15sccmが好ましい。酸素流量が10sccm未満であると、透明導電性酸化亜鉛薄膜の耐湿熱性が劣化し、60℃、相対湿度95%の条件下で500時間の環境試験前後における比抵抗の相対変化率が大きくなってしまうため好ましくない。
酸素流量が15sccmを超えると、得られる透明導電性酸化亜鉛薄膜の比抵抗が大きくなってしまい、60℃、相対湿度95%の条件下で500時間の環境試験後の薄膜の比抵抗も5×10−4Ω・cmより大きくなってしまい、導電膜として不適な膜となってしまうので好ましくない。
ターゲットとして、Ga2O3(純度99.9%)を3重量%、In2O3(純度99.9%)を0.25重量%添加したZnO(純度99.99%)(ハクスイテック社製)の焼結体を用い、イオンプレーティング法によって膜厚100nmの透明導電性酸化亜鉛薄膜を製膜した。製膜条件を下記に示す。酸素流量15sccmのものを実施例1とし、その他の酸素流量のものを比較例2とする。
(製膜条件)
基板 :厚み0.7mmの無アルカリガラス
基板温度 :200℃
製膜前の基板の予備加熱:なし
製膜時の圧力 :0.2Pa
製膜時の雰囲気ガス条件:アルゴン=140sccm、酸素=0,5,10,15,20及び25sccm
製膜時の放電電流 :140A
製膜時間 :60秒
イオンプレーティング装置:住友重機械工業社製「RPD(Reactive Plasma Deposition)装置」
焼結体のIn2O3の添加量を0.50重量%としたこと以外は製造例1と同じ条件で、膜厚100nmの透明導電性酸化亜鉛薄膜を製膜した。製膜時の酸素流量は、製造例1の条件に加え、12,17sccmでも行った。酸素流量12sccmのものを実施例2とし、その他の酸素流量のものを比較例3とする。
焼結体のIn2O3の添加量を0.75重量%としたこと以外は製造例2と同じ条件で、膜厚100nmの透明導電性酸化亜鉛薄膜を製膜した。酸素流量10sccmのものを実施例3とし、酸素流量12sccmのものを実施例4とし、その他の酸素流量のものを比較例4とする。
ターゲットとして、Ga2O3(純度99.9%)を3重量%添加したZnO(純度99.99%)(ハクスイテック社製)の焼結体を用いること以外は実施例2と同じ条件で、イオンプレーティング法によって膜厚100nmの透明導電性酸化亜鉛薄膜を製膜した。これらを比較例1とする。
このようにして得られた透明導電性酸化亜鉛薄膜について、図2〜4に示すように、比抵抗、耐湿熱性及び光透過率を測定した。比抵抗、耐湿熱性及び光透過率の測定方法は、以下のとおりである。
比抵抗は、ACCENT社製のHL5500PC型HALL効果装置を用いてVan der Pauw法により、室温で測定した。
耐湿熱性は、60℃、95%RHにセットした恒温恒湿槽で500時間の環境試験を行い、環境試験前の薄膜の比抵抗ρ0と環境試験後の薄膜の比抵抗ρを上記(1)と同じ方法で測定し、比抵抗の相対変化率{(ρ−ρ0)/ρ0}×100を評価した。
作製した透明導電性酸化亜鉛薄膜の可視光(波長380−780nm)透過率と近赤外光(波長780−1200nm)透過率を、日立ハイテクノロジーズ社製のU−4100型分光光度計を用いて測定した。
表1,2及び図2より、環境試験前の薄膜の比抵抗は、インジウムを含有しない比較例1の薄膜の方がインジウムを含有する薄膜よりも小さいことがわかる。また、インジウムの含有量が多くなるに従い、薄膜の比抵抗は大きくなることがわかる。
しかし、実施例1と比較例1では、比抵抗の大きな差は見られなかった。
比抵抗の相対変化率Δρは以下の式で表される。
Δρ={(ρ−ρ0)/ρ0}×100
ρ:環境試験後の薄膜の比抵抗 ρ0:環境試験前の薄膜の比抵抗
しかし、上述したように、酸素流量が15sccmを超えると初期の比抵抗が大きくなり導電膜として不適な膜となってしまうので、比抵抗と比抵抗の相対変化率を考慮すると、酸素流量10〜15sccmが最も好ましい。
特に実施例4においては、試験後の比抵抗が4.54×10−4Ω・cmであるので導電膜として好適であり、且つ比抵抗の相対変化率が6.6%という従来の酸化亜鉛薄膜より顕著に優れた耐湿熱性を達成している。
下記表3は、実施例及び比較例の透明導電性酸化亜鉛薄膜の、環境試験後の可視光領域(波長380−780nm)の平均光透過率を示し、下記表4は、実施例及び比較例の透明導電性酸化亜鉛薄膜の、環境試験後の近赤外光領域(波長780−1200nm)の平均光透過率および波長1200nmでの光透過率を示す。
実施例4の薄膜は、可視光領域(波長380−780nm)から近赤外領域(波長780−1200nm) において透過率がいずれの領域においても85%(波長1200nmにおいて測定値80.6%)を越えており、広い波長幅で太陽光を高効率で通すことからカルコパイライト型薄膜太陽電池など薄膜太陽電池用の窓層透明導電膜としても好適である。
実施例1の薄膜は、可視光領域(波長380−780nm)から近赤外領域(波長780−1200nm)において透過率がいずれの領域においても85%(波長1200nmにおいて測定値85.5%)を越えており、広い波長幅で太陽光を高効率で通すことからカルコパイライト型薄膜太陽電池など薄膜太陽電池用の窓層透明導電膜としても好適である。
実施例2の薄膜は、可視光領域(波長380−780nm)から近赤外領域(波長780−1200nm) において透過率がいずれの領域においても85%(波長1200nmにおいて測定値82.1%)を越えており、広い波長幅で太陽光を高効率で通すことからカルコパイライト型薄膜太陽電池など薄膜太陽電池用の窓層透明導電膜としても好適である。
最表面付近やガラス基板との界面付近では、一般的に測定精度が落ちる。図5の測定データが示すように、薄膜表面からの深さ方向のGa,Inの濃度分布は、ほぼ一様と判断される。一般に固溶度が低いといわれるインジウムも、ある深さ箇所で偏析していることなく、深さ方向一様に分布していることから、経時変化的に膜中での高密度領域から低密度領域へのInの大きな密度勾配が原因となる拡散はなく、実施例においては再現性の高いデータが得られていることがわかる。
これは成膜中に供給する酸素ガス流量(単位:sccm)を細かく制御したためである。
Claims (7)
- 酸化亜鉛に、Ga及び/又はAlからなる第1元素と、In、Bi、Se、Ce、Cu、Er及びEuからなる群から選択される少なくとも1つからなる第2元素が添加された透明導電性酸化亜鉛薄膜であって、
60℃、相対湿度95%の条件下で500時間の環境試験を行ったとき、環境試験前の比抵抗に対する環境試験後の比抵抗の相対変化率が15%以下であり、
前記環境試験後の比抵抗が5×10−4Ω・cm以下であり、
前記透明導電性酸化亜鉛薄膜に含まれるZnと第2元素の原子数量比(第2元素/Zn)が0.15〜0.46%であり、
膜厚が140nm以下であることを特徴とする透明導電性酸化亜鉛薄膜。 - 前記膜厚が100nm以下であることを特徴とする請求項1記載の透明導電性酸化亜鉛薄膜。
- 波長380−780nmにおける平均可視光透過率が85%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の透明導電性酸化亜鉛薄膜。
- 波長780−1200nmにおける平均近赤外光透過率が85%以上であり、波長1200nmにおける近赤外光透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の透明導電性酸化亜鉛薄膜。
- 波長380−1200nmにおける平均光透過率が85%以上であり、波長1200nmにおける近赤外光透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の透明導電性酸化亜鉛薄膜。
- イオンプレーティング法による透明導電性酸化亜鉛薄膜の製造方法であって、
イオンプレーティング用ターゲットにプラズマビーム又は電子ビームを照射する工程と、
酸素ガスをイオンプレーティング装置内に供給する工程を備え、
Ga及び/又はAlからなる第1元素又はその化合物と、In、Bi、Se、Ce、Cu、Er及びEuからなる群から選択される少なくとも1つからなる第2元素又はその化合物が添加された酸化亜鉛の焼結体を前記イオンプレーティング用ターゲットとして用い、
前記イオンプレーティング用ターゲットに含まれるZnと第2元素の原子数量比(第2元素/Zn)が0.15〜0.46%であり、
酸素流量が10〜15sccmであることを特徴とする透明導電性酸化亜鉛薄膜の製造方法。 - 前記イオンプレーティング用ターゲットに含まれる前記第1元素の含有量が0.1〜6重量%であることを特徴とする請求項6に記載の透明導電性酸化亜鉛薄膜の製造方法。
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