JP2013141631A - 半導体単層カーボンナノチューブの抽出分離法 - Google Patents

半導体単層カーボンナノチューブの抽出分離法 Download PDF

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Abstract

【課題】 発光領域が1500〜1600nmの半導体SWCNTを選択的に抽出する分散剤及びそれを用いた抽出方法を提供する。
【解決手段】 主鎖に、フルオレン環とピリジン環を有する特定のポリマーを分散剤として用いることにより、発光領域が1500〜1600nmの半導体SWCNTを選択的に抽出することができ、また、該ポリマーを用いることにより、1.2nm以上の大きな直径の半導体SWCNTを選択的に抽出することができる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、半導体単層カーボンナノチューブの抽出法に関し、特に、特定の分散剤を用いた半導体単層カーボンナノチューブの抽出法に関する。
カーボンナノチューブ(以下、CNTともいう)は、炭素原子が平面的に六角形状に配置されて構成された炭素シート(いわゆる、グラファイトからなるシート)が円筒状に閉じた構造を有する炭素構造体である。このCNTには、多層のもの及び単層のものがあるが、いずれもその力学的強度、光学特性、電気特性、熱特性、分子吸着機能等の面から、電子デバイス材料、光学素子材料、導電性材料等の機能性材料としての展開が期待されている。
CNTの中でも単層CNT(SWCNT)は、電気的特性(極めて高い電流密度)、熱的特性(ダイヤモンドに匹敵する熱伝導度)、光学特性(光通信帯波長域での発光)、水素貯蔵能、及び金属触媒担持能などの各種特性に優れており、ナノ電子デバイス、ナノ光学素子、及びエネルギー貯蔵体などの材料として注目されている。
SWCNTの電子物性は、その巻き方(直径や螺旋度)に依存して、金属的性質又は半導体的性質を示すことが知られており、光電変換や電界発光は、半導体としての性質を持つSWCNTに期待されている重要な光・電子機能である。中でも、半導体SWNTの光吸収・発光波長域が、光通信技術などにとって重要な近赤外域(800〜2000nm)にあることから、半導体SWCNTを用いた光電変換素子及び電界発光素子は産業上極めて有用なものと期待される。
SWCNTは、レーザー蒸発法、アーク放電法、及び化学気相成長法(CVD法)などの種々の方法で合成されるが、現状ではいずれの合成方法を用いても、合成直後に得られるSWCNT試料は金属SWCNTと半導体SWCNTの混合物であり、半導体SWCNTを、光電変換素子及び電界発光素子として用いるためには、半導体SWCNTのみを純度良く抽出する方法の開発が非常に重要であった。
半導体SWCNTを分離する方法として、これまでに色々な報告がされている。例えば、DNAでラッピングしたSWCNTを陰イオン交換クロマトグラフィーで分離する方法(特許文献1)、SWCNT分散溶液を濃度勾配遠心分離する方法(特許文献2)、ゲル電気泳動法(特許文献3)、ゲルカラムを用いたクロマトグラフィーで分離する方法(特許文献4)などがある。
なかでも、フルオレン系ポリマーを分散剤として用いることにより、特定のカイラル角又は直径を有する半導体SWCNTを選択的に抽出する方法(非特許文献1、2)は、高純度抽出法として知られている。例えば、Poly[(9,9-dioctylfluorenyl-2,7’-diyl)、及びPoly[(9,9-dioctylfluorenyl-2,7’-diyl)-co-(9,10-anthracene)]は、24.5°以上のカイラル角を有するSWCNTを選択的に抽出するのに用いられ、一方、Poly[(9,9-dioctylfluorenyl-2,7’-diyl)-co-(1,4-benzo-{2,1-3}-thiadiazole)]は、直径が、0.9〜1.1nmのSWCNTを選択的に抽出するのに用いられる。
しかしながら、これまでチューブ直径が1.2nm以下のSWCNTのみに適用可能であった。
最近、我々のグループは、1.3〜1.5nmの大きな直径をもつ半導体SWCNTを選択的に抽出するフルオレン系ポリマーの報告をおこなった(非特許文献3)
特表2006−512276号公報 特表2008−531460号公報 特開2008−285386号公報 特開2011−184225号公報
Nish,A.;Hwang,J.-Y.;Doig,J.;Nicholas,R.J.Nature Nanotech.2007,2,640-646. Chen,F.;Wang,B.;Chen,Y.;Li,L.-J.Nano Lett.2007,7,3013-3017. Tange,M,;Okazaki,T.;Iijima,S.J.Am.Chem.Soc. 2011,133,11908-11911.
しかし、非特許文献3に記載された、下記の式
で表される、ポリジオクチルフルオレニルジニルコベンゾチアゾール(PFO−BT)を分散剤として用いる方法では、発光領域が1500〜1600nmの半導体SWCNTを選択的に抽出することはできないという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、発光領域が1500〜1600nmの半導体SWCNTを選択的に抽出する分散剤及びそれを用い抽出方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、主鎖に、フルオレン環とピリジン環を有する特定のポリマーを用いることにより、発光領域が1500〜1600nmの半導体SWCNTを選択的に抽出することができることを見出した。また、該ポリマーを用いることにより、1.2nm以上の大きな直径の半導体SWCNTを選択的に抽出することができることも判明した。
本発明はこれらの知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]単層カーボンナノチューブから、1500〜1600nmに発光領域を有する半導体単層カーボンナノチューブを選択的に抽出するための分散剤であって、
ポリジオクチルフルオレニルジイルコピリジンからなることを特徴とする、単層カーボンナノチューブ分散剤。
[2]直径が1.2〜1.4nmの半導体単層カーボンナノチューブを選択的に抽出する、[1]に記載の単層カーボンナノチューブ分散剤。
[3]ポリジオクチルフルオレニルジイルコピリジンを分散剤として用いることにより、単層カーボンナノチューブから、1500〜1600nmに発光領域を有する半導体単層カーボンナノチューブを選択的に抽出する、半導体単層カーボンナノチューブの抽出方法。
[4]直径が1.2〜1.4nmの半導体単層カーボンナノチューブを選択的に抽出する、[3]に記載の半導体単層カーボンナノチューブの抽出方法。
本発明によれば、発光領域が1500〜1600nmの半導体SWCNTを選択的に抽出することができる。また、本発明によれば、直径が1.2〜1.4nmの半導体単層カーボンナノチューブを選択的に抽出することができる。
上澄み液中に存在する単層カーボンナノチューブの光吸収スペクトルを示す図 トルエンを分散溶媒として抽出した際の上澄み液から得られた2次元発光(PL)マップを示す図 キシレンを分散溶媒として抽出した際の上澄み液から得られた2次元発光(PL)マップを示す図
本発明は、分散剤として、ポリジオクチルフルオレニルジイルコピリジンを用いて、半導体単層カーボンナノチューブを抽出することを特徴とする。
本発明で用いるポリジオクチルフルオレニルジイルコピリジン(以下、「PFO−Py」ということもある)は、下記の一般式で表される構造を有するフルオレン系ポリマーである。
または
分散剤として用いられるフルオレン系ポリマーは、分散液中においてSWCNTとの相互作用により、SWCNTの表面に吸着し、SWCNTを包むいわゆるラッピング効果を有することが知られているが、SWCNTの分子量が非常に大きいため、分子量が小さすぎると十分にSWCNTをラッピングすることができない。また、分子量が大きすぎると溶媒中におけるフルオレン系ポリマーの分子運動が低下し、十分にSWCNTをラッピングすることができない。
本発明で用いられるPFO−Pyの分子量は、1万〜20万であれば、十分な分散効果を得ることができるが、好ましくは1万〜9万がよい。
本発明は、該分散剤を用いてSWCNTの分散液を製造し、その分散液から、特定の半導体SWCNTを抽出するものであるが、具体的には、合成されたSWCNTと、上記のPFO−Pyとを溶媒中で混合した後、混合物に超音波処理、撹拌処理などを施して分散液を得、得られた分散液を超遠心処理して、上澄み液中に存在するSWCNTを採取する。
本発明において、SWCNTの合成方法は特に限定されず、公知の化学気相成長法、アーク放電法、レーザー蒸発法等の方法によって合成することができるが、好ましくは、触媒の存在下にグラファイトにレーザー光を照射してCNTを合成する方法が用いられる。
具体的には、例えば、原料として、ニッケルおよびコバルトの触媒金属微粉末が混合した炭素ロッドを用意し、この混合ロッドをアルゴン雰囲気下、電気炉により、1200℃程度に加熱し、そこに数100mJ/PulseのNd:YAGレーザーを集光し、炭素と金属微粒子を蒸発させることにより、SWCNTを作製することができる。
分散溶媒としては、ポリジオクチルフルオレニルジイルコピリジンとの相溶性が良好な溶媒が用いられ、例えば、トルエンやトルエンと類似した構造及び性質を有するキシレン等が好ましく用いられる。
本発明において、分散液中における単層カーボンナノチューブの含有量は、分散性が得られる限り特に限定されるものではないが、分散液全量に対して、好ましくは0.01〜0.05質量%とするとよい。
また、本発明において、分散液中におけるポリジオクチルフルオレニルジイルコピリジンの含有量は、SWCNTの含有量によって適宜定めることができるが、分散液全量に対して、好ましくは0.05〜0.5質量%とするとよい。
分散液中のSWCNTとPFO−Pyの質量比(SWVNT/PFO−Py)は、特に限定されないが、0.1〜0.8が好ましい。本発明においては、PFO−Pyのラッピング効果を利用して、有機溶媒に均一に分散したSWCNTの再凝集を防止することができるが、分散液中のSWCNTの含有量に対して、PFO−Pyの含有量が低すぎると、十分なラッピング効果が得られず、また、含有量が高すぎると束になったSWCNTが分散されやすくなり、PFO−Pyによる選択的抽出が損なわれる。
本発明においては、SWCNT、PFO−Py、及び溶媒を混合した後、超音波処理、撹拌処理等を施してSWCNTの分散液を得るが、分散液中での分散性が優れている点から、超音波処理を用いることが好ましい。
分散に使用される超音波処理の方法や条件は、特に限定されるものではなく、分散液中に含有されるSWCNT及びPFO−Pyの量、有機溶媒の種類等によって、適宜、定めることが可能である。具体的には、例えば、40kHz、55W及び20kHz、500W等を用い、約1時間処理することによって良好な分散効果を得ることができる。
本発明においては、得られた上記分散液を超遠心処理することにより、上澄み液中に、1500〜1600nmに発光帯を有する半導体SWCNTが抽出される。
本発明における超遠心処理の条件は、特に限定されないが、相対遠心力147000〜255000×g(g:重力加速度)で、1時間程度行うことが好ましい。
超遠心処理後、目的とする半導体SWCNTは、上澄み液中に存在するが、上済み液から、半導体SWCNTを採取する方法としては、メンブレンフィルターを用いたろ過があげられる。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
[ポリジオクチルフルオレニルジイルコピリジン(Poly[(9,9-dioctylfluorenyl-2,7’-diyl)-co-(2,6-pyridine)])を分散剤として用いた半導体SWCNTの抽出]
レーザー蒸発法で合成した単層カーボンナノチューブ約5mgとポリジオクチルフルオレニルジイルコピリジン(Poly[(9,9-dioctylfluorenyl-2,7’-diyl)-co-(2,6-pyridine)](メーカー:American dye source、製品名:ASD147、分子量:15000)(以下、「PFO−Pyy」とする。)約20mgをトルエン30ml中で混合し、約1時間バス型超音波洗浄器(As-one製ULTRASONIC CLEANER USK-1R、40kHz、55W)で、続いて10分間チップ型超音波破砕機(Sonics & Materials, INC.製超音波ホモジナイザーVCX-500、20kHz、500W)にて処理をおこなうことでナノチューブを分散させた。また、この分散液を1時間超遠心処理後(日立工機株式会社製超遠心分離機:CS100GX II)、上澄み液中に存在する単層カーボンナノチューブを光吸収スペクトル(HITACHI製分光光度計UV-4100)により評価した。
結果を図1に示す。
図1において、実線はPFO−Pyで抽出した試料の光吸収スペクトルである。また、参考試料として、界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム)を用いて水に分散させた単層カーボンナノチューブの光吸収スペクトルを点線で示してある。
図中、930nm付近に観測されるピークは、半導体カーボンナノチューブの第2バンド間に関連する遷移であり、600nmよりも短波長側で観測されるピークは、カーボンナノチューブの第3バンド間に関連する遷移であり、645nmmと690nm付近に観測される2つのピークは、金属カーボンナノチューブの第1バンド間に関連する遷移である。
PFO−Pyで抽出した試料については、金属カーボンナノチューブからのピークが明瞭に観測されず、一方の半導体カーボンナノチューブの信号は明らかに観測されることから、半導体成分が選択的に抽出できていることがわかる。ここでは、半導体カーボンナノチューブの第2バンド間に関連する遷移と金属カーボンナノチューブの第1バンド間に由来する光吸収スペクトルの積分強度比を計算することで、半導体成分と金属成分の比と定義すると、本発明によって抽出された半導体成分は95%以上であった。
上記上澄み液から得られた2次元発光(PL)マップを図2に示す。
InGaAs検出器(Princeton Instruments製OMA-V2.2)と波長可変Ti:sapphireレーザー(Spectra-Physics製 3900S)を組み込んだShimadzu製近赤外PLシステムを用い、2次元PLマップを測定した。発光側に幅10nmのスリットを用い、励起波長と検出波長はそれぞれ5nmと2nmの間隔で走査した。
図中、縦軸は励起波長、横軸は検出波長である。
図2から、1500〜1600nmに発光領域を持つ半導体SWCNTが選択的に抽出されていることがわかる。
(実施例2)
分散溶媒として、トルエンの代わりにp−キシレン(p-xylene)を用いた以外は、実施例1と同様にして、分散液から上澄み液を得た。
上澄み液から得られた2次元発光(PL)マップを図3に示す。
図3から、分散溶媒にキシレンを用いた場合も、1500〜1600nmに発光領域を持つ半導体SWCNTがPFO−Pyによって選択的に抽出されていることがわかる。

Claims (4)

  1. 単層カーボンナノチューブから、1500〜1600nmに発光領域を有する半導体単層カーボンナノチューブを選択的に抽出するための分散剤であって、
    ポリジオクチルフルオレニルジイルコピリジンからなることを特徴とする、単層カーボンナノチューブ分散剤。
  2. 直径が1.2〜1.4nmの半導体単層カーボンナノチューブを選択的に抽出する、請求項1に記載の単層カーボンナノチューブ分散剤。
  3. ポリジオクチルフルオレニルジイルコピリジンを分散剤として用いることにより、単層カーボンナノチューブから、1500〜1600nmに発光領域を有する半導体単層カーボンナノチューブを選択的に抽出する、半導体単層カーボンナノチューブの抽出方法。
  4. 直径が1.2〜1.4nmの半導体単層カーボンナノチューブを選択的に抽出する、請求項3に記載の半導体単層カーボンナノチューブの抽出方法。
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