JP2013139441A - マイクロスフェア - Google Patents

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Shogo Hiraoka
▲祥▼吾 平岡
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Abstract

【課題】本発明は、7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン(化合物(I))又はその塩の長時間作用を有する投与形態及びその製造方法の提供を課題とする。
【解決手段】化合物(I)又はその塩を有効成分として含有するマイクロスフェア。該マイクロスフェアを懸濁状態で含有する水性懸濁注射剤。有機溶媒中に化合物(I)又はその塩及び生体分解性ポリマーを溶解又は懸濁させ、乳化剤の存在下、又は不在下で乳化させた後に、有機溶媒を除去する工程を含む該マイクロスフェアの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン又はその塩を含有するマイクロスフェア、その製造方法及び該マイクロスフェアを含有する水性懸濁注射剤に関する。
7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン(以下、化合物(I)という)又はその塩は、ドパミンD受容体パーシャルアゴニスト作用、セロトニン5−HT2A受容体アンタゴニスト作用及びアドレナリンα受容体アンタゴニスト作用を有し、さらにそれらの作用に加えてセロトニン取り込み阻害作用(あるいはセロトニン再取り込み阻害作用)を併有することが知られており(特許文献1)、中枢神経疾患(特に統合失調症)に対して広い治療スペクトラムを有している。
特開2006−316052号公報
統合失調症等の中枢神経疾患において、長時間(少なくとも1週間、より好ましくは2、3又は4週間、さらに好ましくは6週間以上の期間)作用を有する薬物投与形態は、患者のコンプライアンスを増大させ、そしてそれによって治療における再発率を低下させることができる点で有用である。
しかし、化合物(I)又はその塩について、長時間作用を有する投与形態は知られていない。
本発明は、化合物(I)又はその塩の長時間作用を有する投与形態及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、化合物(I)又はその塩を含有するマイクロスフェア、特に、有機溶媒中に化合物(I)又はその塩及び生体分解性ポリマーを溶解又は懸濁させ、乳化剤の存在下、又は不在下で乳化させた後に、有機溶媒を除去する工程を含むことによって得られるマイクロスフェア、さらには該マイクロスフェアを懸濁状態で含有する水性懸濁注射剤が、化合物(I)又はその塩を長時間にわたって治療量で放出することができることを見出した。
本発明は上記知見に基づきさらに検討を重ねた結果完成されたものであり、下記に掲げるものである。
[1]化合物(I)又はその塩を有効成分として含有するマイクロスフェア。
[2]化合物(I)又はその塩をアモルファス状態で含有する上記[1]記載のマイクロスフェア。
[3]化合物(I)又はその塩を結晶状態で含有する上記[1]記載のマイクロスフェア。
[4]有機溶媒中に化合物(I)又はその塩及び生体分解性ポリマーを溶解又は懸濁させ、乳化剤の存在下、又は不在下で乳化させた後に、有機溶媒を除去する工程を含むことによって得られる上記[1]〜[3]のいずれかに記載のマイクロスフェア。
[5]マイクロスフェアの平均粒子径が5〜150μmである上記[1]〜[4]のいずれかに記載のマイクロスフェア。
[6]化合物(I)又はその塩の含有量が5〜50重量%である上記[1]〜[5]のいずれかに記載のマイクロスフェア。
[7]生体分解性ポリマーがポリ乳酸及び乳酸−グリコール共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記[4]〜[6]のいずれかに記載のマイクロスフェア。
[8]ポリ乳酸及び乳酸−グリコール共重合体の平均分子量が2000〜200000である上記[7]記載のマイクロスフェア。
[9]上記[1]〜[8]のいずれかに記載のマイクロスフェアを懸濁状態で含有する水性懸濁注射剤。
[10]注射されると少なくとも1ヶ月間化合物(I)又はその塩を放出する上記[9]記載の水性懸濁注射剤。
[11]筋肉内投与用又は皮下投与用である上記[9]又は[10]に記載の水性懸濁注射剤。
[12]有機溶媒中に、化合物(I)又はその塩及び生体分解性ポリマーが溶解した溶液を得る工程;得られた溶液を、水と混合し、乳化剤の存在下、又は不在下で乳化してエマルションを得る工程;及び得られたエマルションから有機溶媒を除去する工程を含む上記[1]〜[8]のいずれかに記載のマイクロスフェアの製造方法。
[13]有機溶媒中に、化合物(I)又はその塩が懸濁し、生体分解性ポリマーが溶解した懸濁液を得る工程;得られた懸濁液を、水と混合し、乳化剤の存在下、又は不在下で乳化してエマルションを得る工程;及び得られたエマルションから有機溶媒を除去する工程を含む上記[1]〜[8]のいずれかに記載のマイクロスフェアの製造方法。
[14]前記エマルションを得る工程で混合される水のpHが8以上である上記[12]又は[13]に記載のマイクロスフェアの製造方法。
本発明のマイクロスフェアは、化合物(I)又はその塩を長時間にわたって治療量で放出することができ、持続性製剤として有用である。本発明の水性懸濁注射剤は、化合物(I)又はその塩を長時間にわたって治療量で放出することができ、持続性注射剤として有用である。
図1は実施例1のマイクロスフェアのX線回折パターンを示す。 図2は実施例1のマイクロスフェアのSEM(Scanning Electron Microscope)写真である。 図3は実施例2のマイクロスフェアのpH4及び5での溶出試験の結果を示す。 図4は筋肉内投与(左図)及び皮下投与(右図)された実施例2のマイクロスフェアがシストを形成した様子を示す写真である。図中、シストが形成した場所を矢印で示す。 図5は投与後の実施例2のマイクロスフェアを示す写真である。左上図:筋肉内投与後9日目、右上図:筋肉内投与後28日目、左下図:皮下投与後9日目、右下図:皮下投与後28日目。 図6は実施例2のマイクロスフェアを雌性ラットに筋肉内もしくは皮下投与後の血中濃度の推移を示す。MS−IM:筋肉内、MS−SC:皮下。 図7は実施例4のマイクロスフェア調製途中で得られたエマルションの顕微鏡写真である。図7は本来カラー写真であり、粒子中に色のついた化合物(I)の結晶が観察される。 図8は実施例4のマイクロスフェアのSEM(Scanning Electron Microscope)写真である。 図9は実施例4のマイクロスフェアのX線回折パターンを示す。 図10は比較例1にて得られた懸濁液における、マイクロスフェア内に封入されていない化合物(I)とPLGA粒子の顕微鏡写真である。
本発明のマイクロスフェアは、化合物(I)又はその塩を有効成分として含む。
化合物(I)は、下記の式(I)で表される化合物である。化合物(I)又はその塩は、特開2006−316052号公報に記載の方法、又はそれに準じた方法により製造することができる。
ここで、マイクロスフェアとは一般に粒子径が数μm〜数十μm程度の球状の製剤を言い、表面に凹凸がある場合もある。本発明のマイクロスフェアは、通常、基材ポリマー等の担体を含む。
本発明のマイクロスフェアの平均粒子径は、化合物(I)又はその塩の所望の放出制御特性を得るためには、好ましくは5〜150μm、より好ましくは5〜50μm、最も好ましくは10〜30μmである。
本発明において、化合物(I)又はその塩は、結晶又はアモルファスの状態でマイクロスフェア中に分散されていることが好ましい。この場合の化合物(I)又はその塩の結晶又はアモルファスの粒子を、本明細書において、一次粒子という。
本発明において、マイクロスフェアの平均粒子径を前述した範囲に収めるためには、化合物(I)又はその塩の平均一次粒子径は、いずれの粒子径でもよいが、マイクロスフェア中に結晶状態で含有するには通常マイクロスフェアよりも小さい粒子径であればよく、好ましくは0.05〜100μm、より好ましくは0.1〜50μm、さらに好ましくは0.2〜10μmである。最も好ましくは1〜5μmである。
化合物(I)又はその塩の平均一次粒子径は、原料として上記範囲であればよく、製剤過程等で粒子径は変化してもよい。
上記範囲の平均一次粒子径を有する化合物(I)又はその塩は、公知の方法で製造することができ、例えば、化合物(I)又はその塩の原末をジェットミル等で粉砕することで製造することができる。
ここで、本明細書において、「平均粒子径」とは、レーザー光散乱(laser-light scattering; LLS)法によって測定される場合の体積平均直径(volume mean diameter)をいう。粒度分布は、レーザー光散乱法によって測定され、そして平均粒子径は、粒度分布から計算される。また、一次粒子径とは、凝集せず、一つ一つの粒子がばらばらになった状態での粒子の粒子径を意味する。尚、平均一次粒子径とは一次粒子の平均粒子径を意味する。
本発明のマイクロスフェアにおいて、化合物(I)又はその塩の所望の放出制御特性を得るためには、化合物(I)又はその塩の含有量は、好ましくは5〜50%重量、より好ましくは10〜40重量%である。
本発明のマイクロスフェアは、基材ポリマーとして生体分解性ポリマーを含有することが好ましい。
本発明で用いられる生体分解性ポリマーとしては、生体内で徐々に分解されて所望の徐放性能が得られるものであればよく、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸共重合体(poly(lactic-co-glycolic acid):PLGA)、ポリクエン酸、ポリリンゴ酸、乳酸−アスパラギン酸共重合体、乳酸−ヒドロキシカプロン酸共重合体、グリコール酸−ヒドロキシカプロン酸共重合体、ポリプロピオラクトン、ポリブチロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリカプロラクトン、ポリトリメチレンカーボネート、ポリp−ジオキサノン、ポリα−シアノアクリル酸エステル、ポリβ−ヒドロキシ酪酸、ポリトリメチレンオキサレート、ポリオルソエステル、ポリオルソカーボネート、ポリエチレンカーボネート、ポリγ−ベンジル−L−グルタミン酸、ポリL−アラニン及びポリアルギン酸、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリアミノ酸、ポリアルキレンアルキレート、ポリエチレングリコール、ポリウレタン等の単独重合体及びこれらの共重合体が挙げられる。これらの中でもポリ乳酸及び乳酸−グリコール酸共重合体が好ましい。これらの生体分解性ポリマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
ポリ乳酸又は乳酸−グリコール酸共重合体を使用する場合、その分子量は、広い範囲から適宜選択すればよいが、通常2000〜200000程度、好ましくは4000〜100000程度、より好ましくは5000〜20000程度である。
ここで、上記分子量は、ポリスチレンを基準物質とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン重量換算の重量平均分子量をいう。
また、上記乳酸−グリコール酸共重合体における乳酸:グリコール酸(lactide:glycolide)の比率は、特に限定されず広い範囲から適宜選択すればよいが、通常99:1〜50:50分子数比程度、好ましくは99:1〜75:25分子数比程度である。
ポリ乳酸は、ポリ−D−乳酸、ポリ−L−乳酸、ポリ−DL−乳酸のいずれでもよく、好ましくはポリ−DL−乳酸である。また、乳酸−グリコール酸共重合体は、D−乳酸−グリコール酸共重合体、L−乳酸−グリコール酸共重合体、DL−乳酸−グリコール酸共重合体のいずれでもよく、好ましくはDL−乳酸−グリコール酸共重合体である。
ポリ乳酸又は乳酸−グリコール酸共重合体は公知の方法により製造することができ、また市販品(例えば、PLGA−7520(和光純薬工業製))を使用することもできる。
本発明のマイクロスフェアにおいて、生体分解性ポリマーの含有量は、通常50〜95重量%、好ましくは60〜90重量%である。
本発明のマイクロスフェアは、上記生体分解性ポリマーに加えて、非分解性の生体適合性ポリマーを含有してもよい。また、本発明のマイクロスフェアは、乳化剤等の任意の添加剤を含有してもよい。
本発明のマイクロスフェアは、上記した成分を用いて製剤分野で公知の方法により製造することができる。
本発明のマイクロスフェアは、徐放性能、充填時の流動性及び投与時のシリンジの透過性に優れたマイクロスフェアを得るためには、有機溶媒中に化合物(I)又はその塩及び生体分解性ポリマーを溶解又は懸濁させ、乳化剤の存在下、又は不在下で乳化させた後に、有機溶媒を除去する工程を含んで製造することが好ましい。さらに製剤分野で公知の工程(例えば、濾過工程、整粒工程)を含んでいてもよい。
以下に、本発明のマイクロスフェアの製造方法について詳細に説明する。
本発明の方法は、有機溶媒中に、化合物(I)又はその塩及び生体分解性ポリマーを含有する溶液又は懸濁液を得る工程;得られた溶液又は懸濁液を、水と混合し、乳化剤の存在下、又は不在下で乳化してエマルションを得る工程;及び得られたエマルションから有機溶媒を除去する工程を含む。
まず、有機溶媒中に、化合物(I)又はその塩及び生体分解性ポリマーを溶解又は懸濁させ、均一な溶液又は懸濁液を得る。化合物(I)又はその塩は、有機溶媒中に溶解していてもよく、懸濁していてもよい。生体分解性ポリマーは、有機溶媒中に溶解していることが好ましい。
本発明で用いられる有機溶媒は、生体分解性ポリマーを溶解し得るものであれば特に限定されないが、例えば、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロメタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素;エチルエーテル、イソプロピルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の脂肪酸エステル;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エタノール、メタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール等のアルコール類;アセトニトリル等のニトリル;ジメチルホルムアミド等のアミド類、アセトンなどの水混和性又は水非混和性の有機溶媒が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの中でも、水非混和性の有機溶媒、特にジクロロメタンが好ましい。
化合物(I)又はその塩と有機溶媒の割合は、該有機溶媒100重量部に対して、化合物(I)又はその塩が、通常0.01〜30重量部程度、好ましくは0.1〜20重量部程度、より好ましくは1〜10重量部程度である。
生体分解性ポリマーと有機溶媒の割合は、該有機溶媒100重量部に対して、生体分解性ポリマーが、通常0.1〜30重量部程度、好ましくは0.5〜20重量部程度、より好ましくは1〜10重量部程度である。
次に、得られた有機溶媒溶液又は懸濁液(化合物(I)又はその塩、生体分解性ポリマー及び有機溶媒を含む)を乳化する。すなわち、得られた有機溶媒溶液を水(いわゆる外相)と混合し、水中に該有機溶媒溶液が均一に分散したO/W型エマルションを得るか、又は、得られた懸濁液を水(いわゆる外相)と混合し、水中に該懸濁液が均一に分散したS(固体)/O/W型エマルションを得る。
使用される水は特に限定されないが、医薬製剤分野で許容されるものが好ましく、例えば精製水、注射用水等が挙げられる。
有機溶媒溶液又は懸濁液と水の割合は、所望の粒子サイズのO/W型又はS/O/W型エマルションが得られる割合であれば、特に限定されないが、水1容量部に対して、有機溶媒溶液又は懸濁液が、通常0.001〜0.2容量部程度、好ましくは0.005〜0.1容量部程度、より好ましくは0.01〜0.05容量部程度である。
マイクロスフェアを得るためには水(いわゆる外相)のpHはアルカリ性とすることが好ましく、そのpHは8以上が好ましく、9以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、11以上が最も好ましい。
pH調整の方法は特に限定されないが、例えば、塩基(例えば、水酸化ナトリウム)の添加が挙げられる。
本発明において、水混和性又は水非混和性のいずれの有機溶媒を使用する場合も、乳化剤を使用してもよい。水混和性の有機溶媒を使用した場合は、乳化剤を使用することが好ましい。本発明で用いられる乳化剤は、O/W型又はS/O/W型エマルション、好ましくは安定なO/W型又はS/O/W型エマルションを形成できるものであればいずれでもよく、例えば、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体等の非イオン性界面活性剤;ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、レシチン、ゼラチン、ヒアルロン酸等が挙げられる。これらの乳化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
乳化剤は、乳化前に水相に添加すればよい。
乳化剤の使用量は、特に限定されず、幅広い範囲から選択されるが、乳化剤水溶液中の濃度が、例えば、0.0001〜20重量%程度、好ましくは0.001〜10重量%程度、より好ましくは0.001〜5重量%程度である。
O/W型又はS/O/W型エマルションの調製方法は、特に限定されず、上記有機溶媒溶液又は懸濁液(化合物(I)又はその塩、生体分解性ポリマー及び有機溶媒を含む)が水中に適当なサイズの液滴ないしミセルとして分散する方法を用いればよい。該調製方法としては、例えば、ホモジナイザー等で上記溶液又は懸濁液と水の混合物を適当な回転速度で攪拌し、水中で上記溶液又は懸濁液を微細化してO/W型又はS/O/W型エマルションとする方法、セラミックフィルター等の微細な貫通孔を有するフィルターに上記溶液又は懸濁液と水の混合物を一定速度で通過させることにより上記溶液又は懸濁液を微細化してO/W型又はS/O/W型エマルションとする方法、セラミックフィルター等の微細な貫通孔を有するフィルターに上記溶液又は懸濁液を一定速度で通過させて上記溶液又は懸濁液を微細化した後、水と混合する方法等を用いればよい。
必要であれば、エマルション形成は、多段階で行ってもよい。
なお、エマルション形成時に撹拌の力を調整することで、所望の粒子径を得ることができる。すなわち、エマルション形成時に撹拌の力を強くすれば粒子径を小さくすることができる。
得られたO/W型又はS/O/W型エマルションから有機溶媒を除去することにより、マイクロスフェアの水性懸濁液が得られる。
有機溶媒の除去は、通常用いられる方法が採用される。該方法としては、プロペラ型撹拌機、あるいはマグネチックスターラーなどで撹拌しながら徐々に減圧して行うか、ロータリーエバポレーターなどを用いて、真空度を調節しながら脱離する。
このようにして得られたマイクロスフェア懸濁液からマイクロスフェアを遠心分離あるいは濾過して分取した後、マイクロスフェアの表面に付着している遊離の化合物(I)、乳化剤などを、蒸留水で数回繰り返し洗浄し、必要であれば適切な溶媒で洗浄する。必要に応じ、分取後加温し、減圧下でマイクロスフェア中の水分の脱離およびマイクロスフェア中の溶媒の脱離をより完全に行う。また水中に糖や糖アルコール、その他添加剤の存在下または非存在下で、洗浄後のマイクロスフェアを再懸濁後、凍結乾燥しマイクロスフェア粉末を得ることもできる。凍結乾燥の条件はマイクロスフェアが乾燥しうる範囲であれば特に制限はない。
また、乾燥後のマイクロスフェアを必要に応じて篩で篩過し、目的とする平均粒子径を有するマイクロスフェアを得てもよい。
本発明の方法には、具体的には下記方法(1)及び方法(2)が含まれる。
方法(1):有機溶媒中に、化合物(I)又はその塩及び生体分解性ポリマーが溶解した溶液を得る工程;得られた溶液を、水と混合し、乳化剤の存在下、又は不在下で乳化してエマルションを得る工程;及び得られたエマルションから有機溶媒を除去する工程を含む方法。
方法(2):有機溶媒中に、化合物(I)又はその塩が懸濁し、生体分解性ポリマーが溶解した懸濁液を得る工程;得られた懸濁液を、水と混合し、乳化剤の存在下、又は不在下で乳化してエマルションを得る工程;及び得られたエマルションから有機溶媒を除去する工程を含む方法。
方法1により、化合物(I)又はその塩をアモルファス状態で含有するマイクロスフェアを製造することができる。
方法2により、化合物(I)又はその塩を結晶状態で含有するマイクロスフェアを製造することができる。
上記マイクロスフェアの各製造工程において、本発明の効果に影響を与えない限り、医薬製剤分野で公知の添加剤(例えば、マンニトールなどの糖アルコールや塩化ナトリウムなどの無機物など)を添加してもよい。
本発明のマイクロスフェア、特に上記製造方法により得られるマイクロスフェアは優れた徐放性能を有する。本発明のマイクロスフェアは、少なくとも1週間、より好ましくは2、3又は4週間、さらに好ましくは6週間以上の期間、治療量で化合物(I)又はその塩を放出することができる。本発明のマイクロスフェアは、注射用水に懸濁させた水性懸濁注射剤とした場合に、特に上記効果を発揮することができる。
上記製造方法により得られる本発明のマイクロスフェアは、通常、球状の形状を有する。本発明のマイクロスフェアは、球状の形状を有することで、製造における充填時の流動性や投与時のシリンジ通過性(通針性)が良好であり、また筋肉注射剤として投与した場合に筋肉内の刺激が少ない。
本発明はまた、本発明のマイクロスフェアを懸濁状態で含有することを特徴とする水性懸濁注射剤に関する。
本発明の水性懸濁注射剤は、通常、化合物(I)又はその塩を含有するマイクロスフェア、そのためのビヒクル、および注射用水を含む。
本発明の水性懸濁注射剤のマイクロスフェアの含有量は、注射剤中でマイクロスフェアが分散されれば特に限定されないが、通常5〜50重量%程度、好ましくは10〜40重量%程度、より好ましくは10〜30重量%程度である。
本発明に用いられるビヒクルとしては、例えば、懸濁化剤、バルキング剤、緩衝剤、pH調整剤等が挙げられる。
懸濁化剤の使用量は、注射用水を含む水性懸濁注射剤の総重量に基づいて、通常約0.001〜約10重量%、好ましくは約0.01〜約5重量%、より好ましくは約0.1〜約3重量%の範囲内の量である。好適な懸濁化剤の例としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCNa)、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、HPC、HPC−SL、及びHPC−L)、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、市販のTweens(登録商標)、例えば、Tween20(登録商標)及びTween80(登録商標)(ICI Specialty Chemicals))、ポリエチレングリコール類(例えば、Carbowaxs 3350(登録商標)及び1450(登録商標)、並びにCarbopol 934(登録商標)(Union Carbide))及びポリビニルピロリドンが挙げられ、これらは1種又は2種以上を使用してもよい。これらの懸濁化剤は特に限定されないが、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール類及びポリビニルピロリドンが好ましい。好適な他の懸濁化剤としては、種々のポリマー、低分子量オリゴマー、天然プロダクト(natural products)、及び界面活性剤(非イオン性及びイオン性界面活性剤を含む)が挙げられる。例えば、塩化セチルピリジニウム、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、デキストラン、グリセロール、アカシアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセロール、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、セトマクロゴール1000のようなマクロゴールエーテル)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ポリオキシエチレンステアレート、コロイダル二酸化ケイ素、ホスフェート、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、非結晶性セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンオキサイド及びホルムアルデヒドとの4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノールポリマー(チロキサポール、スペリオン、及びトリトンとしても公知)、ポロキサマー(例えば、Pluronics F68(登録商標)及びF108(登録商標)、これらは、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドのブロックコポリマーである)、ポロキサミン(例えば、Tetronic 908(登録商標)、Poloxamine 908(登録商標)としても公知、これは、エチレンジアミンへのプロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドの連続付加から誘導される四官能性ブロックコポリマーである(BASF Wyandotte Corporation,Parsippany,N.J.))、荷電リン脂質(charged phospholipid)(例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロール)、ジオクチルスルホサクシネート(DOSS)、Tetronic 1508(登録商標)(T−1508)(BASF Wyandotte Corporation)、スルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル(例えば、Aerosol OT(登録商標)、これはスルホコハク酸ナトリウムのジオクチルエステルである(American Cyanamid))、Duponol P(登録商標)(これはラウリル硫酸ナトリウムである(DuPont))、Tritons X−200(登録商標)(これはアルキルアリールポリエーテルスルホネートである(Rohm and Haas))、Crodestas F−110(登録商標)(これはスクロースステアレート及びスクロースジステアレートの混合物である(Croda Inc.))、p−イソノニルフェノキシポリ−(グリシドール)(Olin−10G(登録商標)又はSurfactant 10−G(登録商標)としても公知(Olin Chemicals,Stamford,Conn.))、Crodestas SL−40(登録商標)(Croda,Inc.)、SA9OHCO(これはC1837CH(CON(CH))−CH(CHOH)(CHOH)である(Eastman Kodak Co.))、デカノイル−N−メチルグルカミド、n−デシル β−D−グルコピラノシド、n−デシル β−D−マルトピラノシド、n−ドデシル β−D−グルコピラノシド、n−ドデシル β−D−マルトシド、ヘプタノイル−N−メチルグルカミド、n−ヘプチル−β−D−グルコピラノシド、n−ヘプチル β−D−チオグルコシド、n−ヘキシル β−D−グルコピラノシド、ノナノイル−N−メチルグルカミド、n−ノニル β−D−グルコピラノシド、オクタノイル−N−メチルグルカミド、n−オクチル−β−D−グルコピラノシド、オクチル β−D−チオグルコピラノシド等が挙げられる。
これらの懸濁化剤の大部分は、公知の薬学的賦形剤であり、そしてthe American Pharmaceutical Association及びThe Pharmaceutical Society of Great Britainによって共同発行されたthe Handbook of Pharmaceutical Excipientsに詳細に記載されている(The Pharmaceutical Press, 1986)。懸濁化剤は、市販されておりそして/又は当該分野において公知の技術によって製造することができる。
ここで、マイクロスフェアの一次粒子の平均粒子径が約1μm以上である場合は、懸濁化剤としては、カルボキシメチルセルロース又はそのナトリウム塩が特に好ましい。
バルキング剤の使用量は、注射用水を含む水性懸濁注射剤の総重量に基づいて、通常約1〜約10重量%、好ましくは約3〜約8重量%、より好ましくは約4〜約5重量%の範囲内の量である。本発明における使用に好適なバルキング剤の例としては、マンニトール、スクロース、マルトース、キシリトール、グルコース、スターチ、ソルビトール等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を使用してもよい。これらのバルキング剤は特に限定されず、マンニトールが好ましい。
緩衝剤は、化合物(I)又はその塩を含むマイクロスフェアの水性懸濁液のpHを、約6〜約8、好ましくは約7に調整する量で使用される。このようなpHを達成するために、通常、緩衝剤は、タイプに依存して、注射用水を含む水性懸濁注射剤の総重量に基づいて、通常約0.02〜約2重量%、好ましくは約0.03〜約1重量%の範囲内、より好ましくは約0.08〜約0.2重量%の量で使用される。本発明における使用のために好適な緩衝剤の例としては、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、又はTRIS緩衝剤が挙げられ、これらは1種又は2種以上を使用してもよい。これらの緩衝剤は特に限定されないが、リン酸ナトリウムが好ましい。
pH調整剤は、化合物(I)又はその塩を含むマイクロスフェアの水性懸濁液のpHを、通常約6〜約8の範囲、好ましくは約7に調整する量で使用され、そして、化合物(I)又はその塩を含むマイクロスフェアの水性懸濁液のpHが、所望の約7の中性pHに達するために上昇される必要があるのか、あるいは低下される必要があるのかに依存して、酸又は塩基が適宜選択される。従って、pHが低下される必要がある場合、酸性pH調整剤、例えば、塩酸又は酢酸、好ましくは塩酸が使用される。pHが上昇される必要がある場合、塩基性pH調整剤、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム又は水酸化マグネシウム、好ましくは水酸化ナトリウムが使用される。
上記化合物(I)又はその塩を含有するマイクロスフェア、及びビヒクルを注射用水に懸濁させることによって、均質な懸濁液が得られる。
本発明の水性懸濁注射剤は、ヒト患者における、統合失調症、鬱などのCNS(Central Nervous System)関連障害を治療するために使用される。本発明の水性懸濁注射剤は基本的に1回の投与により、一ヶ月以上の再投与を必要としない単回注射又は複数注射である。本発明の水性懸濁注射剤は1回あたり0.1〜5ml程度、好ましくは0.5〜3ml程度を投与すればよい。
本発明の水性懸濁注射剤は、該製剤の単位体積当たりの高い薬物ローディング(drug loadings)を可能にし、従って、少ない注射体積で比較的高い用量の化合物(I)又はその塩の送達を可能にする。
本発明の水性懸濁注射剤は、例えば筋肉内注射又は皮下注射により投与された場合、実質的に一定の化合物(I)又はその塩の薬物血漿濃度を維持することができる。その際、コンスタントな化合物(I)又はその塩の薬物血漿濃度を少なくとも1週間、より好ましくは2、3又は4週間、さらに好ましくは6週間以上の期間、維持させることができる。
経口投与される化合物(I)又はその塩を含む製剤のための一日開始用量(daily starting dose)は、数mgである。1週間以上の経口投与薬物量と等価の薬物用量を投与するためには、単回用量として、非常に大量の薬物量の投与を必要とする。本発明の化合物(I)又はその塩を含むマイクロスフェアの水性懸濁注射剤によれば、患者にコンプライアンス問題を生じさせることなく、大量の薬物を送達するために、投与することが可能となる。
本発明の水性懸濁注射剤は、用時懸濁注射剤として投与させることができる。
以下に本発明の実施例及び試験例を示し本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び試験例に限定されない。
実施例において、化合物(I)は7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オンを示す。
実施例において、マイクロスフェアの平均粒子径及び粒度分布は、レーザー光散乱法(島津製作所、SALD-3000J)にて、測定用媒体として水を用い、屈折率2.00-0.20iにて測定した。
[実施例1]
ジクロロメタン5mlに化合物(I)約100mg及びPLGA(PLGA-7520、和光純薬工業製)約400mgを溶解させ、得られた溶液を100mlあたり2mlの1N水酸化ナトリウム溶液を添加した1%PVA(SPECTRUM (登録商標) Chemicals & laboratory products(以下SPECTRUMと記載)製)水溶液(20ml、pH約12)と混合し、ホモジナイザー(ポリトロンホモジナイザー、POLYTRON (登録商標) PT3000、KINEMATICA AG製)にてエマルションを形成した。得られたエマルションに、100mlあたり2mlの1N水酸化ナトリウム溶液を添加した1%PVA水溶液を添加して計100mlとし、撹拌羽にて一晩撹拌してジクロロメタンを留去しマイクロスフェア懸濁液を得た。
ここで得られたマイクロスフェア懸濁液中のマイクロスフェアの粒子径はシャープな分布を示し26G針での通針が可能であった(表1)。得られたマイクロスフェア懸濁液を、遠心洗浄濾過、凍結乾燥して、実施例1のマイクロスフェアを得た。
乾燥後のマイクロスフェアの結晶性をX線回折で評価したところ、非晶質であり、マイクロスフェア内で分散体を形成していると考えられた(図1)。
実施例1の乾燥後のマイクロスフェア粒子を光学顕微鏡及びSEMにて観察したところ球状であった(図2)。
[実施例2]
ジクロロメタン10mlに化合物(I)約200mg及びPLGA(PLGA-7520、和光純薬工業製)約600mgを溶解させ、得られた溶液を100mlあたり2mlの1N水酸化ナトリウム溶液を添加した1%PVA(SPECTRUM製)水溶液(30ml、pH約12)と混合し、ホモジナイザー(IKA ULTRA-TURRAX T8、IKA Works, Inc.製)で微細なエマルションを形成した。得られたエマルションに、100mlあたり2mlの1N水酸化ナトリウム溶液を添加した1%PVA水溶液(pH約12)を添加して計100mlとし、撹拌羽にて一晩撹拌してジクロロメタンを留去し、マイクロスフェア懸濁液を得た。
その後、遠心洗浄濾過、凍結乾燥して、実施例2のマイクロスフェアを得た。
得られたマイクロスフェアは平均粒子径約25μmであり、化合物(I)の含有量は約29%であった(表2)。
[試験例1]
実施例2で得られたマイクロスフェアについて、第十五改正日本薬局方に記載のパドル法にて、下記のとおり溶出試験を行った。
化合物(I)が25 mg相当となるようにマイクロスフェアを秤取し、0.05mol/L酢酸緩衝液(pH4.0又はpH5.0)900mL中に加え、37℃、50 rpmの条件で、パドル法にて溶出試験を行った(吸光度測定波長:289 nm及び380 nm)。
結果を図3に示す。pH4では初期に50%程度の溶出が見られたが、その後は溶出が抑えられていることが確認された。試験液をpH5にしたところ、初期バーストは見られず、溶出が抑えられていた。生体内ではより中性に近く、pH5での溶出試験以上に溶出が抑えられることが予想された。
[実施例3]
実施例2で得られたマイクロスフェアを化合物(I)が5%となるようにマンニトール/CMCNa水溶液に再分散し、水性懸濁注射剤を得た(pH: 7.00、浸透圧比: 1.10)。成分及び組成を表3に示す。
[試験例2]
実施例3で得られた水性懸濁注射剤を、非絶食雌性ラットに0.5mL/kgで24G針を使用して筋肉内投与(左大腿部に約4mmの深さで投与)又は頚部後皮下投与した。
投与後に投与部位を取り出してみると、筋肉内投与及び皮下投与どちらにおいても投与されたところでシストを形成していた(図4)。投与されたマイクロスフェアを投与後9日目及び28日目に観察したところ、どちらの投与においても経時的に崩れている様子が観察された(図5)。このことからPLGAが分解されることにより溶出していると考えられた。
得られた血中濃度は筋肉内投与と皮下投与で違いは見られなかった(図6)。これはマイクロスフェアからの溶出が律速であるためと推察された。血中濃度は28日目でも持続しており、このマイクロスフェアは28日以上の徐放を示すことがわかった。このマイクロスフェアは、筋肉内投与でも皮下投与でも同じ血中プロファイルを示す特徴を有し、患者が投与部位を選択できる利点を有する。
[実施例4]
化合物(I)原末をジェットミル(A-Oジェットミル、セイシン企業)にてInlet圧0.5MPa、Grinding圧0.35MPaにて粉砕した。粉砕後の粒子を1%HPC-L溶液に分散し超音波を照射しながら粒子径をレーザー光散乱法(SALD-3000J)にて測定した。得られた粉砕後の化合物(I)の平均粒子径は2.3μmであった。
ジクロロメタン5mlに粉砕した化合物(I)約500mg及びPLGA(PLGA-7520、和光純薬工業製)約500mgを懸濁及び溶解させ、得られた懸濁液を撹拌羽で600rpmで撹拌中の100mlあたり2mlの1N水酸化ナトリウム溶液を添加した1%PVA(SPECTRUM製)水溶液(100ml、pH約12)中に滴下した。滴下後、微細なエマルションを形成した。得られたエマルションを偏光顕微鏡にて観察した写真を図7に示した。PLGAはポリマーであり、偏光を示さないため、粒子中の色のついた結晶は化合物(I)である。エマルション中に化合物(I)の結晶が取り込まれていることが観察された。このエマルションのジクロロメタンが揮発するとエマルション中に溶解しているPLGAとの複合粒子が得られる。
エマルションを得た後、撹拌を300rpmに落とし、一晩撹拌してジクロロメタンを留去し、マイクロスフェア懸濁液を得た。
その後、10μmのフィルターで濾取し、精製水で数回洗浄後、風乾してマイクロスフェア粉末を得た。この乾燥後のマイクロスフェアを電子顕微鏡で観察すると化合物(I)が単独では存在せず、マイクロスフェアに取り込まれPLGAと複合粒子を形成していた(図8)。顕微鏡で観察する限り、得られた粒子のほとんど(約95%以上)が50〜100μmの直径を有する粒子であった。
乾燥後のマイクロスフェアをX線回折にて測定すると化合物(I)の結晶ピークが見られた(図9)。このことからマイクロスフェア中の化合物(I)は結晶で存在していることが確認された。
[比較例1]
ジクロロメタン5mlに化合物(I)約100mg及びPLGA(PLGA-7520、和光純薬工業製)約400mgを溶解させ、得られた溶液を1%PVA(SPECTRUM)水溶液(20ml、pH約7)と混合し、ホモジナイザー(ポリトロンホモジナイザー、POLYTRON (登録商標) PT3000、KINEMATICA AG製)にてエマルションを形成した。得られたエマルションに、1%PVA水溶液を添加して計100mlとし、撹拌羽にて一晩撹拌してジクロロメタンを留去した。得られた懸濁液は、化合物(I)の結晶がマイクロスフェアの外に見られた(図10)。写真上で偏光を示す粒子が化合物(I)であり、小さな丸い粒子がPLGAである。化合物(I)がマイクロスフェアに封入されていないことが分かる。
[比較例2]
化合物(I)原末をジェットミル(A-Oジェットミル、セイシン企業)にてInlet圧0.5MPa、Grinding圧0.35MPaにて粉砕した。粉砕後の粒子を1%HPC-L溶液に分散し超音波を照射しながら粒子径をレーザー光散乱法(SALD-3000J)にて測定した。得られた粉砕後の化合物(I)の平均粒子径は2.3μmであった。
ジクロロメタン5mlに粉砕した化合物(I)約500mg及びPLGA(PLGA-7520、和光純薬工業製)約500mgを懸濁及び溶解させ、得られた懸濁液を撹拌羽で600rpmで撹拌中の1%PVA(SPECTRUM製)水溶液(100ml、pH約7)中に滴下した。滴下後、しばらくするとガム状の物体が形成され、マイクロスフェアを得ることができなかった。実施例4と比較すると、外相であるPVA溶液をアルカリ性にする必要があることが分かる。
本発明は、化合物(I)又はその塩の長時間作用を有する投与形態及びその製造方法を提供する。

Claims (14)

  1. 7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン又はその塩を有効成分として含有するマイクロスフェア。
  2. 7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン又はその塩をアモルファス状態で含有する請求項1記載のマイクロスフェア。
  3. 7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン又はその塩を結晶状態で含有する請求項1記載のマイクロスフェア。
  4. 有機溶媒中に7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン又はその塩及び生体分解性ポリマーを溶解又は懸濁させ、乳化剤の存在下、又は不在下で乳化させた後に、有機溶媒を除去する工程を含むことによって得られる請求項1〜3のいずれかに記載のマイクロスフェア。
  5. マイクロスフェアの平均粒子径が5〜150μmである請求項1〜4のいずれかに記載のマイクロスフェア。
  6. 7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン又はその塩の含有量が5〜50重量%である請求項1〜5のいずれかに記載のマイクロスフェア。
  7. 生体分解性ポリマーがポリ乳酸及び乳酸−グリコール共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項4〜6のいずれかに記載のマイクロスフェア。
  8. ポリ乳酸及び乳酸−グリコール共重合体の平均分子量が2000〜200000である請求項7記載のマイクロスフェア。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のマイクロスフェアを懸濁状態で含有する水性懸濁注射剤。
  10. 注射されると少なくとも1ヶ月間7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン又はその塩を放出する請求項9記載の水性懸濁注射剤。
  11. 筋肉内投与用又は皮下投与用である請求項9又は10に記載の水性懸濁注射剤。
  12. 有機溶媒中に、7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン又はその塩及び生体分解性ポリマーが溶解した溶液を得る工程;得られた溶液を、水と混合し、乳化剤の存在下、又は不在下で乳化してエマルションを得る工程;及び得られたエマルションから有機溶媒を除去する工程を含む請求項1記載のマイクロスフェアの製造方法。
  13. 有機溶媒中に、7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン又はその塩が懸濁し、生体分解性ポリマーが溶解した懸濁液を得る工程;得られた懸濁液を、水と混合し、乳化剤の存在下、又は不在下で乳化してエマルションを得る工程;及び得られたエマルションから有機溶媒を除去する工程を含む請求項1記載のマイクロスフェアの製造方法。
  14. 前記エマルションを得る工程で混合される水のpHが8以上である請求項12又は13に記載のマイクロスフェアの製造方法。
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