(発明の詳細な説明)
本発明は、冠動脈性心疾患(CHD)(特に、心筋梗塞(MI))、および動脈瘤/解離と関連するSNP、ならびにCHDおよび動脈瘤/解離の処置(予防処置を含む)のために使用され得る治療剤(特に、スタチン)に対する個体の応答と関連するSNPを提供する。本発明は、SNPを含む核酸分子、本明細書で開示されるSNPの検出のための方法および試薬、検出試薬の開発のためのこれらSNPの使用、このような試薬を利用するアッセイもしくはキットをさらに提供する。本明細書で開示されるSNPは、CHD、動脈瘤/解離およびヒトにおける関連病理を診断、予測、スクリーニングおよびその素因を評価するために有用である。本明細書で開示される薬物応答関連SNPは、ヒトにおけるスタチン処置(特に、スタチンを使用するCHDおよび動脈瘤/解離の処置もしくは予防)に対する応答を予測、スクリーニングおよび評価するために有用である。さらに、このようなSNPおよびそれらのコードされる生成物は、治療剤および予防剤の開発のための有用な標的である。
さらに、本明細書で開示される薬物応答関連SNPはまた、CHDもしくは動脈瘤/解離を処置もしくは予防するために使用されるスタチン以外の薬物に対する個体の応答を予測するために有用であり、これらSNPはまた、CHDもしくは動脈瘤/解離以外の障害(特に、癌)の処置もしくは予防のためにスタチンに対する個体の応答を予測するために有用である。例えば、癌の処置におけるスタチンの使用は、以下において総説されている:Hindlerら,「The role of statins in cancer
therapy」,Oncologist.2006 Mar;11(3):306−15;Demierreら,「Statins and cancer prevention」,Nat Rev Cancer.2005 Dec;5(12):930−42;Stammら,「The role of statins in cancer prevention and treatment」,Oncology.2005 May;19(6):739−50;およびSleijferら,「The potential of statins as part of anti−cancer treatment」,Eur J Cancer.2005 Mar;41(4):516−22(これらの各々は、それら全体が本明細書に参考として援用される)。
多数のSNPが、39の個体のDNAを再配列決定することにより同定されてきた。そして、それらは、表1〜2では、「Applera」SNP源と示されている。白人人種群およびアフリカ系アメリカ人人種群のそれぞれにおいて見出されたそれらの対立遺伝子頻度が提供される。本明細書中に含まれるさらなるSNPは、既にショットガン配列決定およびヒトゲノムのアセンブリの間に、同定され、そして、それらは、表1および2では、「Celera」SNP源として示されている。さらに、情報、特に、39の個体から得た対立遺伝子頻度情報が表1および2に提供され、各遺伝子/転写産物内の各SNPの正確な位置の同定は、ハプロタイプ(すなわち、同時に遺伝するSNPの群)を、容易に推測することを可能にする。本発明は、SNPハプロタイプならびに個々のSNPを含む。
従って、本発明は、CHD(特に、MI)もしくは動脈瘤/解離、および/または薬物応答(特にスタチン応答)と関連する個々のSNPならびにSNPおよびハプロタイプの組合せ、多型/改変転写産物配列(配列番号1)およびSNPを含むゲノム配列(配列番号4〜9)、コードされるアミノ酸配列(配列番号2)、および転写産物ベースのSNPコンテクスト配列(配列番号3)およびゲノムベースのSNPコンテクスト配列(配列番号10〜132)の両方(転写産物配列、タンパク質配列および転写産物ベースのSNPコンテクスト配列は、表1および配列表に提供され;ゲノム配列およびゲノムベースのSNPコンテクスト配列は、表2および配列表に提供される)、試験サンプルにおいて、これらの多型を検出する方法、CHDまたは動脈瘤/解離を有するか、または発症する個体の危険性を決定する方法、個体がスタチンのような特定の処置(特にCHDまたは動脈瘤/解離の処置または予防)に反応しやすいかどうかを決定する方法CHDまたは動脈瘤/解離などの改変遺伝子/タンパク質と関連する障害を処置するために有用な化合物についてスクリーニングする方法、これらのスクリーニング方法によって同定された化合物、処置/予防計画を選択するために、開示されたSNPを使用する方法、改変遺伝子/タンパク質と関連する障害を処置もしくは予防する方法、およびヒト識別に関して本発明のSNPを使用する方法を提供する。
本発明は、処置レジメンを選択もしくは処方するための方法(例えば、CHDもしくは動脈瘤/解離を有するか、またはCHDもしくは動脈瘤/解離を将来発症する危険性があるか、またはCHDもしくは動脈瘤/解離を以前有した個体に、スタチン処置を施すか否かを決定するための方法、特定のスタチンベースの処置レジメン(例えば、スタチン、もしくは特定の形態/タイプのスタチン(例えば、スタチン化合物の特定の薬学的処方物)の投与量および投与頻度)を選択するための方法、スタチン処置に対して陽性に反応する可能性があることが推定される個体に対する代替の、非スタチンベースの処置を決定するための方法など)、ならびに毒性もしくはスタチン処置からの他の所望でない副作用を経験する可能性を決定するための方法などをさらに提供する。本発明はまた、スタチンもしくは他の治療剤が上記個体の遺伝子型に基づいて投与される個体を選択するための方法、および上記個体の遺伝子型に基づいてスタチンもしくは他の治療剤の臨床試験のために個体を選択する(例えば、上記スタチン処置から陽性に応答する可能性が最も高い、治験に参加する個体を選択する、および/またはスタチン処置から陽性に応答する可能性がない個体を治験から排除する)ための方法を提供する。
本発明は、CHD、動脈瘤/解離、および/もしくはスタチン処置に対する応答と関連する新規なSNP、ならびに当該分野で以前から公知であるが、CHD、動脈瘤/解離、もしくはスタチン処置に対する応答と関連することが以前公知ではなかったSNPを提供する。従って、本発明は、本明細書で開示される新規なSNPに基づく新規な組成物および方法を提供し、そしてまた、CHD(特に、MI)もしくは動脈瘤/解離を有するかもしくは発症させる個体の可能性を評価することに関する方法、CHDもしくは動脈瘤/解離の再発を経験する(例えば、再発性MIを経験する)個体の可能性を推定することに関する方法、個体におけるCHDもしくは動脈瘤/解離の重篤度を予想することに関する方法、またはCHDもしくは動脈瘤/解離からの個体の回復を予想することに関する方法において、公知であるが以前関連していなかったSNPを使用するための新規な方法、ならびにCHDもしくは動脈瘤/解離のスタチン処置(特に、予防処置を含むスタチン処置)に対して応答する個体の可能性を評価することに関する方法を提供する。表1および表2において、公知のSNPは、これらが認められた公的なデータベースに基づいて同定され、これは、以下のSNPタイプのうちの1つ以上として示される:「dbSNP」=dbSNPにおいて認められたSNP、「HGBASE」=HGBASEにおいて認められたSNP、および「HGMD」=Human Gene Mutation Database(HGMD)において認められたSNP。
本発明の特定のSNP対立遺伝子は、CHD(例えば、MI)もしくは動脈瘤/解離を有するかもしくは発症させる増大した危険性、またはCHDもしくは動脈瘤/解離のスタチン処置(特に、予防処置を含むスタチン処置)に応答する増大した可能性、またはCHDもしくは動脈瘤/解離を有するかもしくは発症させる低下した危険性、またはスタチン処置に応答する低下した可能性のいずれかと関連し得る。従って、特定のSNP(もしくはそれらのコードされる生成物)が、個体が、CHD(例えば、MI)もしくは動脈瘤/解離を有するかもしくは発症させる増大した危険性またはスタチン処置に対して応答する増大した可能性を示すSNP対立遺伝子を有するか否かを決定するためにアッセイされ得るのに対して、他のSNP(またはそれらのコードされる生成物)は、個体が、CHDもしくは動脈瘤/解離を有するかもしくは発症させる低下した危険性またはスタチン処置に対して応答する低下した可能性を示すSNP対立遺伝子を有するか否かを決定するためにアッセイされ得る。同様に、本発明の特定のSNP対立遺伝子は、CHD(例えば、再発性MI)もしくは動脈瘤/解離の再発を有する増大した可能性もしくは低下した可能性、CHDもしくは動脈瘤/解離から完全に回復する増大した可能性もしくは低下した可能性、特定の処置もしくは治療化合物から毒性効果を経験する増大した可能性もしくは低下した可能性などのいずれかと関連し得る。用語「変化した」とは、これら2つの可能性(例えば、増大したもしくは低下した危険性/可能性)のいずれかを含むために本明細書において使用され得る。CHD(例えば、MI)もしくは動脈瘤/解離を有するかもしくは発症させる低下した危険性と関連するSNP対立遺伝子は、「保護的」対立遺伝子と言及され得、そしてCHDもしくは動脈瘤/解離を有するかもしくは発症させる増大した危険性と関連するSNP対立遺伝子は、「感受性」対立遺伝子、「危険対立遺伝子、もしくは「危険因子」と言及され得る。
当業者は、核酸分子が二本鎖分子であり得、一本鎖上の特定の部位に対する参照はまた、相補鎖上の対応する部位を参照するということを容易に認識する。SNP位置、SNP対立遺伝子またはヌクレオチド配列の規定において、核酸分子の一本鎖上の特定の部位におけるアデニン、チミン(ウリジン)、シトシン、グアニンに対する参照はまた、核酸分子の相補鎖上の対応する部位におけるチミン(ウリジン)、アデニン、グアニンまたはシトシン(それぞれ)を規定する。従って、参照は、特定のSNP位置、SNP対立遺伝子またはヌクレオチド配列を参照するために、どちらかの鎖上でなされ得る。プローブおよびプライマーは、どちらかの鎖にハイブリダイズするように設計され得、そして、本明細書中に開示されるSNP遺伝子型特定方法は、一般にどちらかの鎖を標的し得る。本明細書を通して、SNP位置を同定する工程において、参照は、便宜のために、一般に、タンパク質コード鎖に対してなされる。
本発明の改変ペプチド、改変ポリペプチドまたは改変タンパク質に対する参照は、当該分野で公知のペプチド/ポリペプチド/タンパク質の対応するアミノ酸配列とは異なる少なくとも一つのアミノ酸残基を含むペプチド、ポリペプチド、タンパク質またはこれらのフラグメントを含む(当該分野で公知のタンパク質は、相互変換可能に、「野生型」タンパク質、「参照」タンパク質または「正常」タンパク質と称され得る)。このような改変ペプチド/ポリペプチド/タンパク質は、本発明により開示されるSNP位置をコードするタンパク質での非同義的ヌクレオチド置換(すなわち、ミスセンス変異)により引き起こされるコドン変化から生じ得る。本発明の改変ペプチド/ポリペプチド/タンパク質はまた、ナンセンス変異(すなわち、早すぎる終止コドンを作製するSNP、終止コドンをなくすことによるリードスルー変異を作製するSNP)から、または他にタンパク質の構造、機能/活性、もしくは発現を変える、本発明により開示される任意のSNP(例えば、プロモーターまたはエンハンサーなどの調節領域におけるSNPまたは代替的なスプライシング、または不完全なスプライシングを生じるSNP(例えば、イントロン内のSNPもしくはエキソン/イントロン境界でのSNP))に起因して生じ得る。本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は相互変換可能に使用される。
本明細書において使用される場合、「対立遺伝子」とは、SNP位置においてヌクレオチドに言及され得る(ここで少なくとも2つの代替ヌクレオチドは、SNPの本来の定義に従って上記SNP位置において集団中に存在する)か、または上記SNP位置を含むコドンによってコードされるアミノ酸残基(ここで上記SNP位置において集団中に存在する代替ヌクレオチドが、異なるアミノ酸残基をコードする代替コドンを形成する)に言及し得る。上記KIF6 SNP(hCV3054799/rs20455)を例として使用して、用語「対立遺伝子」とは、上記SNP位置における例えば、「A」ヌクレオチドもしくは「G」ヌクレオチド(またはその逆相補体)、またはKIF6タンパク質のアミノ酸位置719におけるトリプトファン(Trp)残基もしくはアルギニン(Arg)残基に言及し得る。「対立遺伝子」はまた、本明細書において「改変体」といわれ得る。また、特定のSNPを含むコドンによってコードされるアミノ酸残基は、上記SNPによってコードされるとして同様に言及され得る。
本明細書で開示される1つ以上のSNPをアッセイすることに基づく試験の結果(例えば、CHDもしくは動脈瘤/解離についての個体の危険性、または個体の推定薬物応答)、および/または本明細書で開示される1つ以上のSNPについての個体の遺伝子型など)、および/または試験に関する任意の他の情報は、「報告」として本明細書中で言及され得る。明確な報告は、必要に応じて、試験プロセスの一部として生成され得る(これは、「報告」、もしくは報告を「提供する」、報告を「生成する」、または報告を「生成する」として本明細書で交換可能に言及され得る)。明確な方法の例としては、紙での報告(例えば、試験結果のコンピューターで生成されたプリントアウト)または等価な形式およびコンピューター読み取り可能な媒体(例えば、CD、コンピューターハードドライブ、またはコンピューターネットワークサーバーなど)に保存された報告が挙げられ得るが、これらに限定されない。報告(特に、コンピューター読み取り可能な媒体に保存されたもの)は、データベース(例えば、患者記録のデータベース)の一部であり得、これは、上記報告へのアクセスを制限する(例えば、上記患者およびその患者の医療実施者のみが上記報告を閲覧することを可能にする)セキュリティー特徴を有する「安全なデータベース」であり得る。明確な報告を生成することに加えて、またはその代替として、報告はまた、コンピュータースクリーン(または別の電子デバイスもしくは機器のディスプレイ)上に表示され得る。
報告はさらに、例えば、試験した医療従事者(例えば、医師、看護師、臨床実験従事者、遺伝カウンセラーなど)、健康管理組織、臨床実験室、および/もしくは上記報告を閲覧もしくは有することが意図された任意の他の団体であった個体に「伝えられ」るかまたは「連絡され」得る(これら用語は、本明細書において交換可能に使用され得る)。報告を「伝える」もしくは「連絡する」という行為は、上記報告の形態に基づいて、当該分野で公知の任意の手段によってであり得る。さらに、報告を「伝える」もしくは「連絡する」ことは、報告を送達(「推し進める」)および/または報告を回収する(「引き抜く」)ことを包含し得る。例えば、報告は、団体間で物理的に変形されるような手段(例えば、紙形式の報告について)によって、例えば、ある団体から別の団体へ物理的に送達されることによって、または電子的にもしくはシグナル形態で伝えられる(例えば、e−メールもしくはインターネットを介して、ファックスによって、および/または当該分野で公知の任意の優先もしくは無線連絡法によって)ことによって、例えば、コンピューターネットワークサーバーに保存されたデータベースから回収されることによって、などで伝えられ得る/連絡され得る。
(単離された核酸分子ならびにSNP検出試薬およびキット)
表1および表2は、CHD(特に、MI)もしくは動脈瘤/解離、および/または薬物応答(特にスタチン処置に対する反応)と関連する本発明の各SNPについての種々の情報を提供し、コードされる遺伝子産物(核酸配列中に、IUBコードによって示されるSNPを有する)の転写産物配列(配列番号1)、ゲノム配列(配列番号4〜9)およびタンパク質配列(配列番号2)を含む。さらに、表1および表2は、SNPコンテクスト配列を含み、この配列は、一般に、各SNPの位置の上流(5’)に100ヌクレオチド+下流(3’)に100ヌクレオチド(配列番号3は、表1に開示される転写産物ベースのSNPコンテクスト配列に対応し、配列番号10〜132は、表2に開示されるゲノムベースのコンテクスト配列に対応する)、各SNP位置における代替的なヌクレオチド(対立遺伝子)、および例えば、SNP型(コード部位、ミスセンス部位、スプライシング部位、UTRなど)、SNPが見出されたヒト集団、見出された対立遺伝子頻度、コードされるタンパク質についての情報などに関連する改変体についてのさらなる情報を含む。
(単離された核酸分子)
本発明は、表1および/または表2に開示された一つ以上のSNPを含む単離された核酸分子を提供する。表1および2の少なくとも一つに開示された一つ以上のSNPを含む単離された核酸分子は、本文を通して相互変換可能に、「SNP含有核酸分子」と言われ得る。単離された核酸分子は、必要に応じて全長改変タンパク質またはそれらのフラグメントをコードし得る。本発明の単離された核酸分子はまた、プローブおよびプライマー(「SNP検出試薬」と題された以下の節により詳細に記載される)を含み、これらは、開示されたSNP、および単離された全長遺伝子、転写産物、cDNA分子、およびこれらのフラグメントをアッセイするために使用され得、これらは、例えば、コードされたタンパク質を発現する目的で使用され得る。
本明細書中で使用される場合、「単離された核酸分子」は、一般に、本発明のSNPを含む核酸分子、またはこのような分子(例えば、相補的配列を有する核酸)にハイブリダイズする核酸分子を含み、そして、核酸分子の天然供給源に存在するほとんどの他の核酸から分離される。さらに、「単離された」核酸分子(例えば、本発明のSNPを含むcDNA分子)は、他の細胞物質、または組換え技術によって産生される場合、培養培地、または化学合成される場合、化学的前駆物質もしくは他の化学物質を、実質的に含み得ない。核酸分子は、他のコード配列または調節配列に融合され得、それでもなお、「単離された」と考えられ得る。非ヒトトランスジェニック動物に存在する核酸分子は、動物には、天然には存在しないが、やはり「単離された」と考えられる。例えば、ベクター中に含まれる組換えDNA分子は、「単離された」と考えられる。「単離された」DNA分子のさらなる例としては、異種宿主細胞内で維持される組換えDNA分子、および溶液中の(部分的に、または実質的に)精製されたDNA分子が挙げられる。単離されたRNA分子はとしては、本発明の単離されたSNP含有DNA分子のインビボRNA転写産物またはインビトロRNA転写産物が挙げられる。本発明に従う単離された核酸分子としては、さらに、合成により生成されたこのような分子が挙げられる。
一般に、単離されたSNP含有核酸分子は、本発明によって開示される一以上のSNP位置を含み、それらのSNP位置の両側の隣接ヌクレオチド配列を有する。隣接配列は、上記SNP部位と天然で結合しているヌクレオチド残基および/または非相同ヌクレオチド配列を含み得る。好ましくは、上記隣接配列は、特に上記SNP含有核酸分子が、タンパク質またはタンパク質フラグメントを産生するために使用される場合、SNP位置の両側の約500ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド、約30ヌクレオチド、約25ヌクレオチド、約20ヌクレオチド、約15ヌクレオチド、約10ヌクレオチド、約8ヌクレオチドまたは約4ヌクレオチド(もしくはこれらの間の任意の他の長さ)、あるいは全長遺伝子または全タンパク質コード配列(またはエクソンのようなその任意の一部分)までである。
全長遺伝子および全タンパク質コード配列について、SNP隣接配列は、例えば、SNPの両側の約5KB、約4KB、約3KB、約2KB、約1KBまでである。さらに、この場合には、単離核酸分子は、エクソンの配列を含む(タンパク質をコードするエクソン配列および/または非コードエクソン配列を含む)が、イントロンの配列も含み得る。従って、任意のタンパク質コード配列は、隣接しているか、またはイントロンによって分離され得る。重要な点は、核酸が、遠く離れかつ重要ではない隣接配列から単離され、および適切な長さであり、その結果、特定の処置または組換えタンパク質の発現、SNP位置をアッセイするためのプローブおよびプライマーの調製、およびSNP含有核酸配列特異的な他の用途のような本明細書中で所望される用途に供され得る。
単離されたSNP含有核酸分子は、例えば、ゲノムDNAから単離された遺伝子(例えば、クローニングまたはPCR増幅による)、cDNA分子、またはmRNA転写分子のような全長遺伝子または転写物を含み得る。多型の転写配列は、表1において言及され、そして配列表(配列番号1)に提供され、そして多型ゲノム配列は、表2において言及され、そして配列表(配列番号4〜9)に提供される。さらに、本明細書中に開示される一以上のSNPを含むこのような全長遺伝子および転写物もまた、本発明に包含され、そしてこのようなフラグメントは、使用され、例えば、特定の機能ドメインまたは抗原エピトープのようなタンパク質の任意の一部分を発現し得る。
従って、本発明はまた、表1および2で開示される核酸配列(転写配列は、配列番号1として表1で言及され、ゲノム配列は、配列番号4〜9として表2で言及され、転写物ベースのSNP関連配列は、配列番号3として表1で言及され、そしてゲノムベースのSNP関連配列は、配列番号10〜132として表2で言及される)およびその相補体のフラグメントも含む。上記表で言及された実際の配列は、配列表中で提供される。フラグメントは代表的に、少なくとも約8以上のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約12以上のヌクレオチド、そしてさらに好ましくは、少なくとも約16以上のヌクレオチチドの隣接したヌクレオチド配列を含む。さらに、フラグメントは、少なくとも約18ヌクレオチド、約20ヌクレオチド、約22ヌクレオチド、約25ヌクレオチド、約30ヌクレオチド、約40ヌクレオチド、約50ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約150ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約250ヌクレオチド、または約500ヌクレオチドの長さを含み得る。フラグメントの長さは、意図される用途に基づく。例えば、このフラグメントは改変体ペプチドのエピトープ保有領域または、正常/野生型のタンパク質と異なる改変体ペプチドの領域をコードし得るか、またはポリヌクレオチドプローブまたはポリヌクレオチドプライマーとして有用であり得る。このようなフラグメントは、ポリヌクレオチドプローブの合成ために表1および/または表2に提供さえるヌクレオチド配列を使用して単離され得る。次いで、標識されたプローブが、使用され、上記コード領域に一致する核酸を単離するために、例えば、cDNAライブラリー、ゲノムDNAライブラリー、またはmRNAをスクリーニングし得る。さらに、プライマーが、一以上のSNP部位をアッセイする目的で、または遺伝子の特定領域をクローニングするために、増幅反応において使用され得る。
本発明の単離核酸分子はさらに、核酸サンプル中の目的のポリヌクレオチドのコピー数を増加するために使用される種々の核酸増幅方法のうちの一つの産物である、SNP含有ポリヌクレオチドをさらに含む。このような増幅方法は、当該分野において周知であり、そしてこれらとしては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号、PCR Technology、Principles and Applications for DNA Amplification,H.A.Erlich編,Freeman Press,NY,NY,1992)、リガーゼ連鎖反応(LCR)(WuおよびWallace,Genomics 4:560,1989;Landegrenら、Science 241:1077,1988)、鎖置換増幅(SDA)(米国特許第5,270,184号;および同第5,422,252号)、転写媒介性増幅(TMA)(米国特許出願第5,399,491号)、連鎖直線増幅(linked linear amplification)(LLA)(米国特許第6,027,923号)など、ならびに等温増幅方法[例えば、核酸配列ベースの増幅(NASBA)ならびに自己維持配列複製(self−sustained sequence replication)のような(Guatelliら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874,1990)]が挙げられるがこれらに限定されない。このような方法論に基づいて、当業者は、本明細書中に開示されるSNPの5’側および3’側の領域任意の適切なにプライマーを容易に設計し得る。このようなプライマーは、その配列中に目的のSNPを含む限り任意の長さのDNAを増幅するために使用され得る。
本明細書中で使用される場合、本発明の「増幅ポリヌクレオチド」は、SNP含有核酸分子であり、その量は、試験サンプル中のその開始量と比較した場合、インビトロで実施された任意の核酸増幅方法によって少なくとも2倍に増加している。他の好ましい実施形態において、増幅ポリヌクレオチドは、試験サンプル中のその開始量と比較した場合、少なくとも10倍、50倍、100倍、1000倍、またはさらに10,000倍の増加の結果である。代表的なPCR増幅において、目的のポリヌクレオチドは、増幅されないゲノムDNAの少なくとも50,000倍の量上まってしばしば増幅されるが、アッセイのために必要とされる増幅の正確な量は、その後使用される検出方法の感度に依存する。
一般に、増幅ポリヌクレオチドは、少なくとも約16ヌクレオチドの長さである。より代表的には、増幅ポリヌクレオチドは、少なくとも約20ヌクレオチドの長さである。本発明の好ましい実施形態において、増幅ポリヌクレオチドは、少なくとも約30ヌクレオチドの長さである。本発明のより好ましい実施形態において、増幅ポリヌクレオチドは、少なくとも約32ヌクレオチド、約40ヌクレオチド、約45ヌクレオチド、約50ヌクレオチド、または約60ヌクレオチドの長さである。本発明のさらに別の好ましい実施形態において、増幅ポリヌクレオチドは、少なくとも約100ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、または約500ヌクレオチドの長さである。本発明の増幅ポリヌクレオチドの全長は、目的のSNPが存在するエクソン、イントロン、または遺伝子全体程度の長さであり得るが、増幅産物は、代表的には約1,000ヌクレオチド以下の長さである(しかし、特定の増幅方法は、1000ヌクレオチドの長さよりも長い増幅産物を生じ得る)。より好ましくは、増幅ポリヌクレオチドは、約600〜700ヌクレオチド以下の長さである。増幅ポリヌクレオチドの長さに関わらず、目的のSNPは、その配列に沿って至る所に位置し得ることが理解される。
本発明の具体的な実施形態において、増幅産物は、少なくとも約201ヌクレオチドの長さであり、表1および2に示される転写ベースの関連配列またはゲノムベースの関連配列の一つを含む。このような産物は、その5’末端もしくは3’末端またはその両方に付加的な配列を有し得る。別の実施形態において、増幅産物は、約101ヌクレオチドの長さであり、そして本明細書中に開示されるSNPを含む。好ましくは、そのSNPは、増幅産物の中央に位置する(例えば、201ヌクレオチドの長さである増幅産物において101位、または101ヌクレオチドの長さである増幅産物において51位)か、または増幅産物の中央から1ヌクレオチド、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、10ヌクレオチド、12ヌクレオチド、15ヌクレオチド、もしくは20ヌクレオチド以内に位置する(しかし、上に示したように、目的のSNPは、増幅産物の長さに沿って至る所に位置し得る)。
本発明は、本明細書中に開示される一以上のSNP、その相補体およびそのSNP含有フラグメントを含む、一以上のポリヌクレオチド配列を含むか、このポリヌクレオチドからなるか、または本質的にこのポリヌクレオチドから構成される単離核酸分子を提供する。
従って、本発明は、表1および/もしくは表2に示されるヌクレオチド配列のうちのいずれかから核酸分子(転写物配列は、配列番号1として表1で言及され、ゲノム配列は、配列番号4〜9として表2で言及され、転写物ベースのSNP関連配列は、配列番号3として表1で言及され、そしてゲノムベースのSNP関連配列は、配列番号10〜132として表2で言及される)または表1で言及される改変タンパク質のうちのいずれか(配列番号2)をコードする任意の核酸分子を提供する。上記表で言及された実際の配列は、配列表中で提供される。核酸分子は、ヌクレオチド配列が、この核酸分子の全長ヌクレオチド配列である場合、そのヌクレオチド配列からなる。
本発明はさらに、表1および/もしくは表2で言及されるヌクレオチド配列のいずれかから本質的になる核酸分子(転写配列は、配列番号1として表1に提供され、ゲノム配列は、配列番号4〜9として表2で言及され、転写物ベースのSNP関連配列は、配列番号3として表1で言及され、そしてゲノムベースのSNP関連配列は、配列番号10〜132として表2で言及される)または表1で言及される改変タンパク質(配列番号2)のいずれかをコードする任意の核酸分子を提供する。上記表で言及された実際の配列は、配列表中で提供される。核酸分子は、そのヌクレオチド配列が、最終の核酸分子において少数の付加的なヌクレオチド残基しか伴わずに存在する場合、本質的にそのようなヌクレオチド配列から成る。
本発明はさらに、表1および/もしくは表2に示されるヌクレオチド配列のいずれかまたはそのSNP含有フラグメントを含む核酸分(転写物配列は、配列番号1として表1で言及され、ゲノム配列は、配列番号4〜9として表2で言及され、転写物ベースのSNP関連配列は、配列番号3として表1で言及され、そしてゲノムベースのSNP関連配列は、配列番号10〜132として表2で言及される)または表1に提供される改変タンパク質(配列番号2)のうちのいずれかをコードする任意の核酸分子を提供する。上記表で言及された実際の配列は、配列表中で提供される。核酸分子は、ヌクレオチド配列が、その核酸分子の最終のヌクレオチド配列の少なくとも一部である場合、そのヌクレオチド配列を含む。このような様式において、その核酸分子は、ヌクレオチド配列のみであり得るか、または付加的なヌクレオチド残基(例えば、天然にそれに関係する残基)かもしくは異種ヌクレオチド配列を有する。このような核酸分子は、1個〜少数の付加的なヌクレオチドを有し得るか、またはさらに多くの付加的なヌクレオチドを含み得る。種々の型のこれら核酸分子がどのようにして容易に作製され得、そして単離され得るのかの簡単な説明を、以下に提供する。そしてこのような技術は、当業者にとって周知である(SambrookおよびRussell,2000,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,NY)。
単離核酸分子は、成熟タンパク質に加え付加的なアミノ末端アミノ酸もしくはカルボキシル末端アミノ酸またはその両方、あるいは成熟ペプチド内のアミノ酸をコードし得る(成熟形態が、例えば、一より多くのペプチド鎖を有する場合)。このような配列は、前駆体から成熟形態へのタンパク質のプロセッシングにおいて一定の役割を果たし得、タンパク質の輸送を容易にすること、タンパク質の半減期を伸長もしくは短縮し得、またはアッセイもしくは産生のためにタンパク質の操作を容易にし得る。一般的なインサイチュの場合と同様に、一般的であるように、付加的なアミノ酸は、細胞の酵素によって成熟タンパク質からプロセッシングされ除去され得る。
従って、単離核酸分子としては、ペプチドをコードする配列のみを有する核酸分子、成熟ペプチドをコードする配列およびさらなるコード配列(例えば、リーダー配列または分泌配列(例えば、プレ−プロタンパク質配列またはプロタンパク質配列))を有する核酸分子、付加的なコード配列を有する成熟ペプチドをコードする配列または付加的なコード配列を有さない成熟ペプチドをコードする配列に加えて付加的な非コード配列(例えば、mRNAの転写、mRNAプロセッシング(スプライシングシグナル、およびポリアデニル化シグナルを含む)リボソーム結合、および/または安定性において一定の役割を果たす、転写されるが翻訳されない配列のような、例えば、イントロンおよび非コード5’配列および非コード3’配列)、が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、核酸分子は、例えば、精製を容易にするペプチドをコードする異種マーカー配列へ融合され得る。
単離核酸分子は、mRNAのようなRNAの形態、またはcDNAおよびゲノムDNAを含むDNA形態であり得、例えば、分子クローニングによって得られ得るかまたは化学合成技術による産生またはその組合せにより産生され得る(SambrookおよびRussell,2000,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,NY)。さらに、単離核酸分子(特にプローブおよびプライマーのようなSNP検出試薬)はまた、部分的または全体的にペプチド核酸(PNA)のような一以上の型の核酸アナログ形態(米国特許第5,539,082号;同第5,527,675号;同第5,623,049号;同第5,714,331号)であり得る。核酸、特にDNAは、二本鎖であってもまたは一本鎖であってもよい。一本鎖核酸は、コード鎖(センス鎖)または相補的非コード鎖(アンチセンス鎖)であり得る。DNAセグメント、RNAセグメント、またはPNAセグメントは、例えば、ヒトゲノムのフラグメント(DNAまたはRNAの場合)、または単一のヌクレオチド、短いオリゴヌクレオチドリンカーから、あるいは一連のオリゴヌクレオチドから構築され、合成核酸分子を提供し得る。核酸分子は、参考として本明細書中に提供される配列を使用して容易に合成され得、オリゴヌクレオチドおよびPNAオリゴマーの合成技術は、当該分野で周知である(例えば、Corey、「Peptide nucleic acids:expanding the scope of nucleic acid recognition」、Trends Biotechnol.1997年6月;15(6):224−9、およびHyrupら、「Peptide nucleic acids(PNA):synthesis,properties and potential applications」、Bioorg Med Chem.1996年1月;4(1):5−23を参照のこと)。さらに、大規模な自動化オリゴヌクレオチド/PNA合成(アレイまたはビーズ表面または他の固体支持体上での合成を含む)が、市販の核酸合成機(例えば、Applied Biosystems(Foster City,CA)3900 High−Throughput DNA SynthesizerまたはExpedite 8909 Nucleic Acid Synthesis System)、および本明細書中に提供される配列情報を使用して容易に達成され得る。
本発明は、当該分野で公知の改変されたヌクレオチド、合成ヌクレオチド、もしくは天然に生じないヌクレオチド、または改変された構造エレメント、合成の構造エレメント、もしくは天然に生じない構造エレメント、または他の代替的な/改変された核酸化学を含む、核酸アナログを含む。このような核酸アナログは、例えば、表1および/または表2において同定される一以上のSNPを検出するための検出試薬(例えば、プライマー/プローブ)として有用である。さらに、これらアナログを含むキット/系(例えば、ビーズ、アレイなど)もまた、本発明に含まれる。例えば、本発明の多型配列に基づくPNAオリゴマーは、特に企図される。PNAオリゴマーは、DNAのアナログであり、そのリン酸骨格は、ペプチド様骨格で置換されている(Lagriffoulら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,4:1081−1082(1994)、Petersenら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,6:793−796(1996)、Kumarら、Organic Letters 3(9):1269−1272(2001)、WO96/04000)。PNAは、従来のオリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドアナログよりも、高い親和性および特異性で、相補的なRNAまたはDNAとハイブリダイズする。このPNAの特性は、従来のオリゴヌクレオチドおよびペプチドを用いては達成し得ない新規な分子生物学適用および生化学の適用を可能とする。
核酸の結合特性および/または安定性を改善する核酸改変のさらなる例は、イノシンのような塩基アナログ、インターカレーター(米国特許第4,835,263号)および副溝の結合体(米国特許第5,801,115号)の使用を含む。従って、核酸分子、SNP含有核酸分子、SNP検出試薬(例えば、プローブおよびプライマー)、オリゴヌクレオチド/ポリヌクレオチドに対する本明細書中における言及は、PNAオリゴマーおよび他の核酸アナログを含む。当該分野で公知の核酸アナログおよび選択的核酸化学/改変核酸化学の他の例は、Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry,John Wiley & Sons,N.Y.(2002)に記載される。
本発明はさらに、本明細書中に開示される改変体ポリペプチドのフラグメントをコードする核酸分子および改変体ポリペプチドの明白な改変体をコードする核酸分子を提供する。このような核酸分子は、パラログ(paralog)(異なる遺伝子座)およびオーソログ(ortholog)(異なる生物体)のように、天然に生じ得るか、または組換えDNA方法もしくは化学合成によって構築され得る。天然に生じない改変体は、核酸分子、細胞、または生物への適用されるものを含む、変異誘発技術によって作製され得る。従って、その改変体は、ヌクレオチドの置換、欠失、転位、および挿入を含み得る(表1〜2において開示されるSNPに加えて)。改変体は、コード領域および非コード領域のいずれかまたは両方に生じ得る。この改変体は、保存的および/または非保存的なアミノ酸置換を生じ得る。
さらに、天然に生じる対立遺伝子改変体(ならびにオルソログおよびパラログ)ならびに変異誘発技術によって産生される合成改変体のような、表1〜2に開示される核酸分子の改変体は、当該分野において周知の方法を使用して同定および/または産生され得る。さらにこのような改変体は、表1および/または表2において開示される核酸配列(またはそのフラグメント)と少なくとも、70%〜80%、80%〜85%、85%〜90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を共有し、かつ表1および/または表2に開示される新規SNP対立遺伝子を含む、ヌクレオチド配列を含み得る。さらに、改変体は、表1に開示されたポリペプチド配列(またはそのフラグメント)と少なくとも70%〜80%、80%〜85%、85%〜90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を共有し、かつ表1および/または表2に開示される新規SNP対立遺伝子を含む、ヌクレオチド配列を含み得る。従って、特に企図される本発明の局面は、表1〜2において示される配列と比較した場合ある程度の配列改変体を有するが、本明細書中に開示される新規SNP対立遺伝子を含む、単離核酸分子である。言い換えれば、単離核酸分子が、本明細書中に開示された新規SNP対立遺伝子を含む限り、この新規SNP対立遺伝子に隣接する核酸分子の他の部分は、表1〜2で言及される特定の転写物配列、ゲノム配列、および関連配列からある程度変化し得、表1で言及される特定のポリペプチド配列からある程度変化したポリペプチにコードし得る。
配列相同性を共有する二つの分子の二つのアミノ酸配列または二つのヌクレオチド配列の同一性のパーセントを決定するために、これらの配列は、最適な比較を目的としてアライメントされる(例えば、ギャップが、最適なアライメントのために第一および第二のアミノ酸配列または核酸配列の一方または両方に導入され得、そして非相同性配列は、比較目的のために、無視され得る)。好ましい実施形態において、参照配列の長さの少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%以上は、比較の目的でアライメントされる。次いで対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置でのアミノ酸残基またはヌクレオチドが、比較される。第一の配列におけるある位置が、第二の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められている場合、その分子は、その位置で同一である(本明細書中で使用される場合、アミノ酸または核酸の「同一性」は、アミノ酸または核酸の「相同性」と等しい)。二つの配列の間の同一性のパーセントは、二つの配列の最適なアライメントのために導入される必要性があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮して、それらの配列により共有される同一位置の数の関数である。
二つの配列間の配列の比較および同一性のパーセントの決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成され得る。(Computational Molecular Biology、Lesk,A.M.編、Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.編、Academic Press,New York、1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part 1、Griffin,A.M.およびGriffin,H.G.、eds.,Humana Press, New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;およびSequence Analysis Primer,Gribskov,M.およびDevereux,J.編、M Stockton Press,New York,1991)。好ましい実施形態において、二つのアミノ酸配列間の同一性のパーセントは、Blossom 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、ギャップウェート(gap weight)16、14、12、10、8、6または4、長さウェート(length weight)1、2、3、4、5または6)を使用して、NeedlemanおよびWunschのアルゴリズム(J.Mol.Biol.(48):444−453 1970))を用いて決定され、これは、GCGソフトウェアパッケージ内のGAPプログラムへ組み込まれている。
さらに別の好ましい実施形態においては、二つのヌクレオチド配列間の同一性のパーセントは、NWSgapdna.CMPマトリックスならびにギャップウェート(40、50、60、70、または80)および長さウェート(1、2、3、4、5、または6)を使用してGCGソフトウェアパッケージ内のGAPプログラムを用いて決定される(Devereux,J.ら、Nucleic Acids Res.12(1):387(1984))。別の実施形態において、二つのアミノ酸配列または二つのヌクレオチド配列の間の同一性のパーセントは、PAM120ウェート残基表、ギャップ長ペナルティー12およびギャップペナルティー4を用いて、ALIGNプログラム(バージョン2.0)へ組み込まれているE.MyersおよびW.Millerのアルゴリズム(CABIOS,4:11−17(1989))を使用して決定される。
本発明のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、さらに「照会配列」として使用され、例えば、他のファミリーメンバーまたは関連配列を同定するために、配列データベースに対して検索を実施し得る。このような検索は、Altschulら(J.Mol.Biol.215:403−10(1990))のNBLASTプログラムおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施し得る。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム(スコア=100、ワード長(wordlength)=12)を用いて実施し、本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得ることが可能である。BLASTのタンパク質検索は、XBLASTプログラム(スコア=50、ワード長=3)を用いて実施し、本発明のタンパク質に相同なアミノ酸配列を得ることが可能である。比較目的のためにギャップをいれたアライメントを得るために、Gapped BLASTが利用され得る(Altschulら(Nucleic Acids Res.25(17):3389−3402(1997))。BLASTおよびgapped BLASTプログラムを利用した場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターが、使用され得る。BLASTに加えて、当該分野で使用される他の検索プログラムおよび配列比較プログラムの例としては、FASTA(Pearson,Methods Mol.Biol.25,365−389(1994))およびKERR(Dufresneら、Nat Biotechnol 2002 Dec;20(12):1269−71)が挙げられるが、これらに限定されない。生命情報科学技術に関するさらなる情報については、Current Protocols in Bioinformatics,John Wiley & Sons,Inc.,N.Y.を参照のこと。
本発明はさらに、表1および/または表2に開示される核酸分子の非コードフラグメントを提供する。好ましい非コードフラグメントとしては、プロモーター配列、エンハンサー配列、イントロン配列、5’非翻訳領域(UTR)、3’非翻訳領域、遺伝子調節配列および遺伝子終止配列が挙げられるが、これらに限定されない。このようなフラグメントは、例えば、異種遺伝子の発現を制御することおよび遺伝子調節剤を同定するためにスクリーニングを開発することにおいて有用である。
(SNP検出試薬)
本発明の特定の局面において、表1および/または表2に開示されたSNPおよびその関連転写物配列(配列番号1として表1で言及される)、ゲノム配列(配列番号4〜9として表2で言及される)および関連配列(転写物ベースの関連配列が、配列番号3として表1で言及され、ゲノムベースの関連配列が、配列番号10〜132として表2で言及される)は、SNP検出試薬の設計のために使用され得る。上記表で言及された実際の配列は、配列表中で提供される。本明細書中で使用される場合、「SNP検出試薬」は、本明細書中に開示される特定の標的SNP位置を特異的に検出し、好ましくは、標的SNP位置の特定のヌクレオチド(対立遺伝子)に対して特異的である(すなわち、検出試薬は、好ましくは、標的SNP位置にある異なる選択的ヌクレオチドを区別し得、これによって標的SNP位置に存在するヌクレオチドの正体を決定することを可能とする)。代表的に、このような検出試薬は、標的SNP含有核酸分子に対して配列特異的様式の相補的な塩基対合によってハイブリダイズし、試験サンプル中において当該分野で公知の形態のような他の核酸配列から標的改変体の配列を区別する。検出試薬の例は、表1および/または表2で言及される一以上のSNPを含有する標的核酸にハイブリダイズするプローブである。好ましい実施形態において、このようなプローブは、同一の標的SNP位置において異なるヌクレオチドを有する他の核酸から標的SNP位置で特定のヌクレオチド(対立遺伝子)を有する核酸を区別し得る。さらに、検出試薬は、SNP位置に対して5’側および/または3’側にある特定の領域にハイブリダイズし得、特に表1および/または表2で言及される関連配列(転写物ベースの関連配列が、配列番号3として表1で言及され;ゲノムベースの関連配列が、配列番号10〜132として表2で言及される)に対応している領域にハイブリダイズし得る。検出試薬の別の例は、標的ポリヌクレオチドの相補鎖に沿うヌクレオチドの伸長の開始点として作用するプライマーである。本明細書中に提供されるSNP配列の情報はまた、本発明の任意のSNPを(例えば、PCRを使用に)増幅するためのプライマー(例えば、対立遺伝子特異的プライマー)を設計するためにも有用である。
本発明の一つの好ましい実施形態において、SNP検出試薬は、単離もしくは合成されたDNA、あるいはRNAのポリヌクレオチドプローブはプライマー、またはPNAオリゴマーまたはDNA、RNAおよび/もしくはPNAの組合せであり、表1および/または表2に同定されたSNPを含有する標的核酸分子のセグメントに対してハイブリダイズする。ポリヌクレオチドの形態の検出試薬は必要に応じて、改変塩基アナログ、インターカレート剤、または副溝に結合体を含み得る。プローブのような複数の検出試薬は、SNP検出キットを形成するために、例えば、固体支持体(例えば、アレイもしくはビーズ)に付着させられるか、または溶液中にて供給され得る(例えば、PCR、RT−PCR、TaqManアッセイ、もしくはプライマー伸長反応のような酵素反応のためのプローブ/プライマーセット)。
プローブまたはプライマーは代表的には、精製されたオリゴヌクレオチドまたはPNAオリゴマーである。このようなオリゴヌクレオチドは、代表的に、ストリンジェントな条件下で、標的核酸分子の少なくとも約8個、約10個、約12個、約16個、約18個、約20個、約22個、約25個、約30個、約40個、約50個、約55個、約60個、約65個、約70個、約80個、約90個、約100個、約120個(またはこれらの間のいずれか他の個数)連続するヌクレオチドに対してハイブリダイズする、相補的なヌクレオチド配列の領域を含む。特定のアッセイに依存して、その連続するヌクレオチドは、標的SNP位置を含み得るかあるいは所望されるアッセイを実施するためにSNP位置に十分に近い、5’側および/または3’側の特定の領域含み得るかいずれかである。
他の好ましいプライマー配列およびプローブ配列は、配列表および表1〜2に開示される転写物配列(配列番号1)、ゲノム配列(配列番号4〜9)およびSNP関連配列(転写物ベースの関連配列か、配列番号3として表1で言及され、ゲノムベースの関連配列か、配列番号10〜132として表2で言及される)を使用して容易に決定される。上記表で言及された実際の配列は、配列表中で提供される。このようなプライマーおよびプローブが、本発明のSNPの遺伝子型分類のための試薬として直接的に有用であり、任意のキット/システム形態へ組込まれ得ることは、当業者に明らかである。
標的SNP含有配列に特異的なプローブまたはプライマーを作製するために、そのヌクレオチド配列の5’末端または3’末端において開始する、目的のSNP周辺の遺伝子配列/転写物配列および/または関連配列が代表的には、コンピューターアルゴリズムを使用して調べられる。次いで代表的なアルゴリズムは、その遺伝子配列/SNP関連配列に特有であり、このオリゴマーは、ハイブリダイゼーションのために適切な範囲内のGC含量を有し、ハイブリダイゼーションを妨げ得る推定二次構造を有さず、かつ/または所望される他の特性を保有するか、あるいは、所望されない他の特質を欠く、規定された長さのオリゴマーを同定する。
本発明のプライマ−またはプロ−ブは、代表的には、少なくとも約8ヌクレオチド長である。本発明の一実施形態において、プライマ−またはプロ−ブは、少なくとも約10ヌクレオチド長である。好ましい実施形態において、プライマ−またはプロ−ブは、少なくとも約12ヌクレオチド長である。より好ましい実施形態において、プライマ−またはプロ−ブは、少なくとも約16ヌクレオチド長、17ヌクレオチド長、18ヌクレオチド長、19ヌクレオチド長、20ヌクレオチド長、21ヌクレオチド長、22ヌクレオチド長、23ヌクレオチド長、24ヌクレオチド長、または25ヌクレオチド長である。プロ−ブの最大の長さは、使用されるアッセイの型に依存して、標的配列が検出される限りであり得るが、その最大長は、代表的には、約50ヌクレオチド長未満、60ヌクレオチド長未満、65ヌクレオチド長未満、または70ヌクレオチド長未満である。プライマ−の場合には、その最大長は、代表的には、約30ヌクレオチド長未満である。本発明の具体的な好ましい実施形態において、プライマ−またはプロ−ブは、約18ヌクレオチド長〜約28ヌクレオチド長の範囲内にある。しかし、他の実施形態(例えば、核酸アレイ、およびプロ−ブが基材に付着する他の実施形態)において、上記プロ−ブは、より長い(例えば、約30〜70ヌクレオチド長、75ヌクレオチド長、80ヌクレオチド長、90ヌクレオチド長、100ヌクレオチド長以上)ものであり得る(以下の「SNP検出キットおよびシステム」と題する節を参照のこと)。
SNPを分析するために、選択的SNP対立遺伝子に特異的なオリゴヌクレオチドを使用することが、適切であり得る。標的配列における単一ヌクレオチド変化を検出するそのようなオリゴヌクレオチドは、「対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド」、「対立遺伝子特異的プロ−ブ」または「対立遺伝子特異的プライマ−」のような用語によって呼ばれ得る。多型を分析するための対立遺伝子特異的プロ−ブの設計および使用は、例えば、Mutation Detection A Practical Approach,Cottonら編,Oxford University Press,1998;Saikiら,Nature 324,163〜166(1986);Dattagupta,EP235,726;およびSaiki,WO89/11548に記載される。
各々の対立遺伝子特異的プライマ−または対立遺伝子特異的プロ−ブの設計は、変数(例えば、標的核酸分子中のSNP位置に隣接するヌクレオチド配列の正確な組成、ならびにそのプライマ−またはプロ−ブの長さ)に依存するが、プライマ−およびプロ−ブの使用における別の要因は、そのプロ−ブまたはプライマ−と、標的配列との間のハイブリダイゼ−ションが実施される条件のストリンジェンシ−である。より高いストリンジェンシ−条件は、より低いイオン強度の緩衝液および/またはより高い反応温度を利用し、そして安定な二重鎖を形成するためには、プロ−ブ/プライマ−と標的配列との間のより完全な一致を必要とする傾向がある。しかし、そのストリンジェンシ−が高すぎる場合、ハイブリダイゼ−ションは、全く生じないかもしれない。対照的に、より低いストリンジェンシ−条件は、より高いイオン強度の緩衝液および/またはより低い反応温度を利用し、そしてプロ−ブ/プライマ−と標的配列との間のよりミスマッチした塩基による安定な二重鎖の形成を可能にする。例としてであって限定としてではないが、対立遺伝子特異的プロ−ブを使用する高ストリンジェンシ−ハイブリダイゼ−ション条件についての例示的な条件は、以下の通りである:5×標準的生理食塩水リン酸EDTA(SSPE)、0.5%
NaDodSO4(SDS)を含む溶液を用いる55℃でのプレハイブリダイゼ−ション;同じ溶液中にある標的核酸分子とともに同じ温度でプロ−ブをインキュベ−トすること、その後、2×SSPEおよび0.1% SDSを含む溶液を用いて55℃または室温で洗浄すること。
中程度のストリンジェンシ−のハイブリダイゼ−ション条件が、例えば、約50mM KClを含む溶液を用いて、約46℃にて、対立遺伝子特異的プライマ−伸長反応のために使用され得る。あるいは、上記反応は、高温(例えば、60℃)にて実行され得る。別の実施形態において、オリゴヌクレオチド連結アッセイ(OLA)反応(この反応において、2つのプロ−ブが、それらが標的配列と完全に相補的な場合に連結される)のために適切な中程度にストリンジェントなハイブリダイゼ−ション条件は、約100mM KClの溶液を、温度46℃にて利用し得る。
ハイブリダイゼ−ションベ−スのアッセイにおいて、ある個体由来の標的DNAのセグメントにハイブリダイズするが、別の個体由来の対応するセグメントには、その2つの個体由来の個々のDNAセグメントにおける異なる多型形態(例えば、選択的SNP対立遺伝子/ヌクレオチド)の存在に起因してハイブリダイズしない、対立遺伝子特異的プロ−ブが、設計され得る。ハイブリダイゼ−ション条件は、対立遺伝子間のハイブリダイゼ−ション強度における検出可能な有意な差異が存在し、好ましくは、本質的には二元の応答が存在し、それによって、プロ−ブが対立遺伝子のうちの一方のみにハイブリダイズするかまたは一方の対立遺伝子に対して有意により強くハイブリダイズするに充分に、ストリンジェントであるべきである。プロ−ブは、SNP部位を含む標的配列にハイブリダイズしてそのSNP部位がそのプロ−ブの配列に沿ったどこかに整列するように設計され得るが、そのプロ−ブは、好ましくは、標的配列のセグメントにハイブリダイズして、そのSNP部位が、そのプロ−ブの中心位置(例えば、そのプロ−ブのいずれかの末端から少なくとも3ヌクレオチド離れているそのプロ−ブ内の位置)と整列するように設計される。このプロ−ブ設計は、一般的には、異なる対立遺伝子形態間でのハイブリダイゼ−ションにおける良好な識別を達成する。
別の実施形態において、プロ−ブまたはプライマ−は、標的DNAのセグメントにハイブリダイズして、そのSNPがそのプロ−ブまたはプライマ−の最も5’側の末端または最も3’側の末端のいずれかと整列するように、設計され得る。オリゴヌクレオチド連結アッセイ(米国特許第4,988,617号)における使用のために特に適切な具体的な好ましい実施形態において、上記プロ−ブの最も3’側のヌクレオチドは、その標的配列中のSNP位置と整列する。
オリゴヌクレオチドプロ−ブおよびオリゴヌクレオチドプライマ−は、当該分野で周知の方法によって調製され得る。化学合成方法としては、Narangら、1979、Methods in Enzymology 68:90により記載されるホスホトリエステル法;Brownら、1979,Methods in Enzymology 68:109により記載されるホスホジエステル法;Beaucageら、1981、Tetrahedron Letters 22:1859により記載されるジエチルホスホロアミデ−ト法;および米国特許第4,458,066号に記載される固体支持体法が挙げられるが、これらに限定されない。
対立遺伝子特異的プロ−ブは、しばしば、対の状態で(または、より一般的ではないが、3個または4個の組の状態で(例えば、SNP位置がそれぞれ3個または4個の対立遺伝子を有することが公知である場合、あるいは、標的SNP対立遺伝子の核酸分子の両方の鎖をアッセイするために))使用され、そのような対は、そのSNP位置で対立遺伝子改変体を示す1ヌクレオチドミスマッチ以外は同一であり得る。一般的に、1つの対のうちの一方のメンバ−は、より一般的なSNP対立遺伝子(すなわち、標的集団中においてより頻繁である対立遺伝子)を有する標的配列参照形態と完全に一致し、その対のうちのもう一方のメンバ−は、より一般的ではないSNP対立遺伝子(すなわち、その標的集団において稀な対立遺伝子)を有する標的配列形態と完全に一致する。アレイの場合には、複数のプロ−ブ対が、複数の異なる多型を同時に分析するために同じ支持体上に固定され得る。
ある型のPCRベ−スのアッセイにおいて、対立遺伝子特異的プライマ−は、SNP位置と重複し、そのプライマ−が完全相補性を示す対立遺伝子形態の増幅のみをプライミングする、標的核酸分子上の領域にハイブリダイズする(Gibbs,1989,Nucleic Acid Res.17:2427〜2448)。代表的には、それらのプライマ−の最も3’側のヌクレオチドは、その標的核酸分子のSNP位置と整列し、かつそのSNP位置と相補的である。このプライマ−は、遠位部位にてハイブリダイズする第二のプライマ−と整列の結合に使用される。増幅は、これらの2つのプライマ−から進行し、どの対立遺伝子形態が試験サンプル中に存在するかを示す検出可能な産物を生じる。コントロ−ルが、通常、第二のプライマ−対を用いて実施される。この第二のプライマ−対のうちの一方は、その多型部位で一塩基ミスマッチを示し、この第二のプライマ−対のうちのもう一方は、遠位部位に対して完全相補性を示す。この一塩基ミスマッチは、増幅を防止するかまたは増幅効率を実質的に減少させ、その結果、検出可能な産物が形成されないか、または検出可能な産物がより低量もしくはより低速度で形成される。上記の方法は、一般的には、そのミスマッチがそのオリゴヌクレオチドの最も3’側の位置にある(すなわち、そのオリゴヌクレオチドの最も3’側の位置が、標的SNP位置と整列する)場合に、最も効率的に作用する。なぜなら、この位置は、上記プライマ−からの伸長に対して最も不安定であるからである(例えば、WO93/22456参照)。このPCRベ−スアッセイは、下記のTaqManアッセイの一部として利用され得る。
本発明の具体的実施形態において、本発明のプライマ−は、標的SNPを含む核酸分子のセグメントに対して実質的に相補的な配列を含み、但し、そのプライマ−は、そのプライマ−の最も3’側の末端にある3つのヌクレオチド位置のうちの1つにおいてミスマッチヌクレオチドを有し、その結果、そのミスマッチヌクレオチドは、そのSNP部位において特定の対立遺伝子と塩基対形成しない。好ましい実施形態において、上記プライマ−中のミスマッチヌクレオチドは、そのプライマ−の最も3’側の位置にある最後のヌクレオチドから2番目にある。より好ましい実施形態において、上記プライマ−中のミスマッチヌクレオチドは、そのプライマ−の最も3’側の位置にある最後のヌクレオチドである。
本発明の別の実施形態において、本発明のSNP検出試薬は、検出可能なシグナルを発する蛍光発生レポ−タ−色素で標識される。好ましいレポ−タ−色素は、蛍光色素であるが、検出試薬(例えば、オリゴヌクレオチドまたはプライマ−)に結合され得る任意のレポ−タ−色素が、本発明における使用のために適切である。そのような色素としては、アクリジン、AMCA,BODIPY、カスケ−ドブル−、Cy2、Cy3、Cy5、Cy7、ダブシル、エダンス、エオシン、エリスロシン、フルオレセイン、6−Fam、Tet、Joe、Hex、オレゴングリ−ン、ロ−ダミン、Rhodol Green、Tamra、Rox、およびテキサスレッドが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明のなお別の実施形態において、その検出試薬は、特に、その試薬が自己クエンチングプロ−ブ(例えば、TaqMan)(米国特許第5,210,015号および同第5,538,848号)または分子ビ−コンプロ−ブ(米国特許第5,118,801号および同第5,312,728号)または他のステムレスプロ−ブもしくは直鎖状ビ−コンプロ−ブ(Livakら、1995、PCR Method Appl.4:357〜362;Tyagiら、1996、Nature Biotechnology 14:303〜308;Nazarenkoら、1997、Nucl.Acids Res.25:2516〜2521;米国特許第5,866,336号および同第6,117,635号)として使用される場合に、クエンチャ−色素(例えば、Tamra)でさらに標識され得る。
本発明の検出試薬はまた、他の標識(ストレプトアビジン結合のためのビオチン、抗体結合のためのハプテン、および別の相補的オリゴヌクレオチド(例えば、ジップコ−ドの対)に結合するためのオリゴヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない)を含み得る。
本発明はまた、本明細書中で同定されたSNPヌクレオチドを含まない(またはそのSNPヌクレオチドと相補的である)が、本明細書中に開示される1つ以上のSNPをアッセイするために使用される、試薬も企図する。例えば、本明細書中に提供される標的SNP位置に隣接はするが直接的にはハイブリダイズしないプライマ−が、それらのプライマ−が、その標的SNP位置と近接する(すなわち、その標的SNP部位から1ヌクレオチド以上以内にある)領域にハイブリダイズプライマ−伸長反応において、有用である。そのプライマ−伸長反応の間に、プライマ−は、代表的には、特定のヌクレオチド(対立遺伝子)が標的SNP部位に存在する場合にはその標的SNP部位を過ぎては伸長できず、そのプライマ−伸長産物は、SNP対立遺伝子がどの標的SNP部位に存在するかを決定するために容易に検出され得る。例えば、特定のddNTPが、一旦ddNTPが上記伸長産物(その最も3’側の末端にddNTPを含み、そのddNTPが本明細書中のヌクレオチドである、プライマ−伸長産物は、本発明で詳細に企図される組成物である)に組み込まれるとプライマ−伸長を終結させるために、上記プライマ−伸長反応において使用される。従って、SNP部位およびSNP部位に適用するために使用されるものに近接する領域中の核酸分子に結合する試薬は、結合した配列はそのSNP部位自体を必ずしも含まないけれども、これもまた本発明で企図される。
(SNP検出キットおよびSNP検出システム)
当業者は、本明細書中に開示されるSNPおよび関連する配列情報に基づいて、検出試薬が、本発明の任意のSNPを個別にかまたは組み合わせてアッセイするために開発および使用され得、そのような検出試薬は、当該分野で周知である確立されたキット形態またはシステム形態のうちの1つに容易に組み込まれ得ることを、認識する。用語「キット」および「システム」とは、本明細書中でSNP検出試薬の文脈で使用される場合、複数のSNP検出試薬の組み合わせ、または1つ以上の他の型のエレメントまたは構成要素(例えば、他の型の生化学試薬、容器、パッケ−ジ(例えば、市販用に意図されるパッケ−ジング)、SNP検出試薬が結合している基材、電子ワ−ドウェア構成要素など)と組み合わせた1種以上のSNP検出試薬のようなものを指す。従って、本発明は、SNP検出キットおよびSNP検出システム(パッケ−ジされたプロ−ブとプライマ−との組(例えば、TaqManプロ−ブ/プライマ−の組)、核酸分子のアレイ/マイクロアレイ、および本発明の1種以上のSNPを検出するための1種以上のプロ−ブ、プライマ−、または他の検出試薬を含むビ−ズが挙げられるが、これらに限定されない)をさらに提供する。上記キット/システムは、種々の電子ハ−ドウェア構成要素を必要に応じて含み得る。例えば、種々の製造業者により提供されるアレイ(「DNAチップ」)および微小流体システム(「ラブ・オン・ア・チップ(lab−on−a−chip)」システム)は、代表的には、ハ−ドウェア構成要素を含む。上記キット/システム(例えば、プロ−ブ/プライマ−の組)は、電子ハ−ドウェア構成要素を含まないかもしれないが、例えば、1つ以上の容器中にパッケ−ジングされた1種以上のSNP検出試薬を(必要に応じて、他の生化学試薬とともに)含み得る。
いくつかの実施形態において、SNP検出キットは、代表的には、1種以上の検出試薬と、アッセイまたは反応(例えば、SNP含有核酸分子の増幅および/または検出)を実行するための必要な他の構成要素(例えば、緩衝液、酵素(例えば、DNAポリメラ−ゼもしくはリガ−ゼ)、鎖伸長ヌクレオチド(例えば、デオキシヌクレオチド三リン酸)、Sanger型DNA配列決定反応の場合には鎖終結ヌクレオチド、ポジティブコントロ−ル配列、ネガティブコントロ−ル配列など)を含む。キットは、標的核酸の量を決定するための手段、およびその量を標準物と比較するための手段をさらに含み得る。キットは、そのキットを使用して目的のSNP含有核酸分子を検出するための指示書を含み得る。本発明の一実施形態において、1種以上のアッセイを実行して本明細書中に開示される1種以上のSNPを検出するための必要試薬を含むキットが、提供される。本発明の好ましい実施形態において、SNP検出キット/システムは、核酸アレイの形態、または区画分けされたキット(微小流体システム/ラブ・オン・ア・チップ(lab−on−a−chip)システムを含む)の形態である。
SNP検出キット/システムは、例えば、各標的SNP位置またはその付近にある拡散分子にハイブリダイズする1つ以上のプロ−ブまたはプロ−ブ対を含み得る。複数の対立遺伝子特異的プロ−ブ対が、多数のSNPを同時にアッセイするためにこのキット/システム中に含まれ得る。上記多数のSNPのうちの少なくとも1つは、本発明のSNPである。いくつかのキット/システムにおいて、上記対立遺伝子特異的プロ−ブは、基材(例えば、アレイまたはビ−ズ)に固定される。例えば、同じ基材は、表1および/または表2に示されるSNPのうちの少なくとも1個、10個、100個、1000個、10,000個、100,000個(もしくはこれらの間の他の任意の個数)または実質的にすべてを検出するための、対立遺伝子特異的プロ−ブを含み得る。
用語「アレイ」、「マイクロアレイ」、および「DNAチップ」とは、基材(例えば、ガラス、プラスチック、紙、ナイロン、または他の型の膜、フィルタ−、チップ、もしくは他の適切な固体支持体)に付着された、別個のポリヌクレオチド群を指すために本明細書中で互換可能に使用される。上記ポリヌクレオチドは、上記基材上で直接合成され得るか、または上記基材とは別個に合成された後で上記基材に付着される。一実施形態において、上記マイクロアレイは、米国特許第5,837,832号、CheeらのPCT出願WO95/11995(Cheeら)、Lockhart,D.J.ら(1996;Nat.Biotech.14:1675〜1680)およびSchena,M.ら(1996;Proc.Natl.Acad.Sci.93:10614〜10619)(これらすべては、その全体が参考として本明細書中に援用される)に記載される方法に従って、調製されそして使用される。他の実施形態において、このようなアレイは、Brownら、米国特許第5,807,522号により記載される方法により生成される。
核酸アレイは、以下の参考文献中に概説されている:Zammatteoら「New chips for molecular biology and diagnostics」Biotechnol Annu Rev.2002;8:85〜101;Sosnowskiら「Active microelectronic array system for DNA hybridization,genotyping and pharmacogenomic applications」Psychiatr Genet.2002 Dec;12(4):181〜92;Heller「DNA microarray technology:devices,systems,and applications」Annu Rev Biomed Eng.2002;4:129〜53、Epub 2002 Mar 22;Kolchinskyら「Analysis of SNPs and other genomic variations using gel−based chips」Hum Mutat.2002 Apr;19(4):343〜60;およびMcGallら「High−density genechip oligonucleotide probe arrays」Adv Biochem Eng Biotechnol.2002;77:21〜42。
多数のプロ−ブ(例えば、対立遺伝子特異的プロ−ブ)が、アレイにおいて実施され得、各プロ−ブまたはプロ−ブ対は、異なるSNP位置にハイブリダイズし得る。ポリヌクレオチドプロ−ブの場合、これらのプロ−ブは、光指向性化学プロセスを使用して、基材上の指定領域で合成され得る(かまたは、別個に合成され得、その後、指定領域に付着され得る)。各DNAチップは、格子様パタ−ンで整列され(例えば、10セント銀貨の大きさまで)小型化された、例えば、数千〜数億個の個々の合成ポリヌクレオチドプロ−ブを含み得る。好ましくは、プロ−ブは、順序立ったアドレス指定可能なアレイ状に固体支持体に付着される。
マイクロアレイは、固体支持体に付着した多数の独特の一本鎖ポリヌクレオチド(通常は、合成アンチセンスポリヌクレオチドまたはcDNAフラグメントのいずれか)から構成され得る。代表的なポリヌクレオチドは、好ましくは、約6〜60ヌクレオチド長、より好ましくは約15〜30ヌクレオチド長、最も好ましくは約18〜25ヌクレオチド長である。特定の型のマイクロアレイまたは他の検出キット/システムについて、ほんの約7〜20ヌクレオチド長であるオリゴヌクレオチドを使用することが、好ましくあり得る。他の型のアレイ(例えば、化学発光検出技術と組み合わせて使用されるアレイ)において、好ましいプロ−ブの長さは、例えば、約15〜80ヌクレオチド長、好ましくは約50〜70ヌクレオチド長、より好ましくは約55〜65ヌクレオチド長、最も好ましくは約60ヌクレオチドであり得る。このマイクロアレイまたは検出キットは、遺伝子/転写物または標的SNP部位の既知の5’配列または3’配列を網羅するポリヌクレオチド;遺伝子/転写物の全長配列を網羅する連続するポリヌクレオチド;または標的遺伝子/転写物配列の長さに沿った特定の領域(特に、表1および/または表2に開示される1つ以上のSNPに対応する領域)から選択される独特のポリヌクレオチドを含み得る。上記マイクロアレイまたは検出キットにおいて使用されるポリヌクレオチドは、目的のSNPに対して特異的(例えば、標的SNP部位の特定のSNP対立遺伝子に対して特異的、または複数の異なるSNP部位にある特定のSNP対立遺伝子に対して特異的)であり得るか、あるいは目的の多型遺伝子/転写物に対して特異的であり得る。
ポリヌクレオチドアレイに基づくハイブリダイゼ−ションアッセイは、完全一致標的配列改変体およびミスマッチ標的配列改変体に対する、上記プロ−ブのハイブリダイゼ−ション安定性の差異に依存する。SNP遺伝子型決定のために、ハイブリダイゼ−ションアッセイにおいて使用されるストリンジェンシ−条件は、1SNP位置程度にしか互いと異ならない核酸分子が区別され得るのに充分に高いことが、一般的には好ましい(例えば、代表的SNPハイブリダイゼ−ションアッセイが、1つの特定のヌクレオチドがSNP位置に存在する場合にハイブリダイゼ−ションが生じるが、代替的ヌクレオチドがそのSNP位置に存在する場合にはハイブリダイゼ−ションは生じないように、設計される)。そのような高いストリンジェンシ−の条件は、例えば、SNP検出のために対立遺伝子特異的プロ−ブの核酸アレイを使用する場合に、好ましくあり得る。そのような高いストリンジェンシ−の条件は、先の節において記載されており、当業者にとって周知であり、そして例えば、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.(1989)6.3.1〜6.3.6において見出され得る。
他の実施形態において、上記アレイは、化学発光検出技術と組み合わせて使用される。以下の特許および特許出願(これらはすべて、本明細書により参考として援用される)は、化学発光検出に関するさらなる情報を提供する:米国特許出願10/620332および同10/620333は、マイクロアレイ検出のための化学発光アプロ−チを記載し、米国特許第6124478号、同第6107024号、同第5994073号、同第5981768号、同第5871938号、同第5843681号、同第5800999号、および同第5773628号は、化学発光検出を実施するためのジオキセタンの方法および組成物を記載し;公開された米国出願US2002/0110828は、マイクロアレイコントロ−ルのための方法および組成物を開示する。
本発明の一実施形態において、核酸アレイは、約15〜25ヌクレオチド長のプロ−ブのアレイを含み得る。さらなる実施形態において、核酸アレイは、多数のプロ−ブを含み得、ここで、少なくとも1つのプロ−ブは、表1および/もしくは表2において開示される1つ以上のSNPを検出可能であり、かつ/または少なくとも1つのプロ−ブは、表1、表2、配列表、およびそれらの相補的な配列に開示される配列からなる群より選択される配列のうちの1つのフラグメントを含み、そのフラグメントは、少なくとも約8個連続するヌクレオチド(好ましくは、10個、12個、15個、16個、18個、20個、より好ましくは22個、25個、30個、40個、47個、50個、55個、60個、65個、70個、80個、90個、100個(またはこれらの間の他の任意の個数)以上連続するヌクレオチドを含み、かつ表1および/または表2において開示される新規なSNP対立遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、上記SNP部位に対して相補的なヌクレオチドは、上記プロ−ブの中心から5ヌクレオチド内、4ヌクレオチド内、3ヌクレオチド内、2ヌクレオチド内、または1ヌクレオチド内、より好ましくは上記プロ−ブの中心にある。
ポリヌクレオチドプロ−ブは、PCT出願WO95/251116(Baldeschweilerら)(これは、本明細書中にその全体が参考として援用される)に記載されるように、化学カップリング手順およびインクジェット適用装置を使用することによって、基材表面上で合成され得る。別の局面において、ドット(またはスロット)ブロットと類似する「格子状」アレイが、真空系、熱的結合手順、UV結合手順、機械的結合手順、または化学結合手順を使用して、基材表面にcDNAフラグメントまたはオリゴヌクレオチドを整列させて結合するために使用され得る。アレイ(例えば、上記のアレイ)は、手によってか、あるいは利用可能なデバイス(スロットブロット装置またはドットブロット装置)、材料(適切な任意の固体支持体)、および機器(ロボット機器を含む)を使用することによって、生成され得、そして8個、24個、96個、384個、1535個、6144個以上のポリヌクレオチド、または市販の機器の効率的使用のために適する他の任意の数のポリヌクレオチドを含み得る。
そのようなアレイまたは他のキット/システムを使用して、本発明は、試験サンプル中にある本明細書中に開示されるSNPを同定するための方法を提供する。そのような方法は、代表的には、試験核酸サンプルを、本発明の少なくとも1つのSNP位置に対応する1つ以上のプロ−ブを含むアレイとともにインキュベ−トする工程、ならびに上記試験サンプル由来の核酸と上記プロ−ブのうちの1つ以上との結合についてアッセイする工程を包含する。SNP検出試薬(またはそのような1種以上のSNP検出試薬を使用する、キット/システム)を、インキュベ−ション条件は、上記アッセイにおいて使用される形式、使用される検出方法、ならびに上記アッセイにおいて使用される検出試薬の型および性質に依存する。当業者は、市販のハイブリダイゼ−ション形式、増幅形式、およびアレイアッセイ形式のうちのいずれか1つが、本明細書中に開示されるSNPを検出するために容易に適合され得ることを、認識する。
本発明のSNP検出キット/システムは、SNP含有核酸分子の後の増幅および/または検出のために、試験サンプルから核酸を調製するために使用される構成要素を含み得る。そのようなサンプル調製構成要素は、任意の体液(例えば、血液、血清、血漿、尿、唾液、粘液質、胃液、精液、涙、汗など)、皮膚、毛髪、細胞(特に、有核細胞)、生検、口腔スワブまたは組織標本からの、核酸抽出物(DNAおよび/またはRNAを含む)、タンパク質抽出物もしくは膜抽出物を生成するために使用され得る。上記の方法において使用される試験サンプルは、上記アッセイ形式、上記検出方法の性質、およびアッセイされるべき試験サンプルとして使用される具体的な組織、細胞、または抽出物に基づいて、変化する。核酸抽出物、タンパク質抽出物、および細胞抽出物を調製する方法は、当該分野で周知であり、利用されるシステムと適合するサンプルを得るために容易に適合され得る。試験サンプルから核酸を抽出するための自動サンプル調製システムは、市販されており、その例は、QiagenのBioRobot 9600、Applied BiosystemsのPRISMTM 6700サンプル調製システム、およびRoche Molecular SystemsのCOBAS AmpliPrep Systemである。
本発明により企図される別の形態のキットは、区画分けされたキットである。区画分けされたキットは、試薬が別個の容器中に含まれる任意のキットを包含する。そのような容器としては、例えば、小さいガラス容器、プラスチック容器、プラスチック片、ガラス片、または紙片、またはアレイ形成材料(例えば、シリカ)が挙げられる。そのような容器によって、試験サンプルおよび試薬が相互混入しないようにある区画から別の区画へと試薬を効率的に移動することが可能であるか、またはある区画からそのキット中に含まれない別の容器に移動することが可能であり、各容器の薬剤または溶液は、ある区画から別の区画または別の容器へと、定量的様式で添加され得る。そのような容器としては、例えば、試験サンプルを受容する1つ以上の容器、本発明の1つ以上のSNPを検出するための少なくとも1つのプロ−ブまたは他のSNP検出試薬を含む1つ以上の容器、洗浄試薬(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水、Tris緩衝液など)を含む1つ以上の容器、および結合したプロ−ブまたは他のSNP検出試薬の存在を明らかにするために使用される試薬を含む1つ以上の容器が、挙げられ得る。上記キットは、例えば、核酸増幅反応または他の酵素反応(例えば、プライマ−伸長反応)、ハイブリダイゼ−ション、ライゲ−ション、電気泳動(好ましくは、キャピラリ−電気泳動)、質量分析法、および/またはレ−ザ−誘導蛍光検出のための、区画および/もしくは試薬を必要に応じてさらに含み得る。上記キットはまた、そのキットを使用するための指示書を備え得る。例示的な区画分けされたキットとしては、当該分野で公知の微小流体デバイス(例えば、Weiglら「Lab−on−a−chip for drug development」Adv Drug
Deliv Rev.24;55(3):349〜77(2003年3月)参照)が挙げられる。そのような微小流体デバイスにおいて、上記容器は、例えば、微小流体「容器」、微小流体「チャンバ」、または微小流体「チャネル」と呼ばれ得る。
マイクロ流体デバイスは、「ラボオンチップ(lab−on−a−chip)」系とも称され得、生物医学的なマイクロ電気機械系(bioMEM)または多構成の集積系は、SNPを分析するための本発明の典型的なキット/系である。このような系は、単一の機能性デバイスにおいてプローブ/標的ハイブリダイゼーション、核酸増幅、およびキャピラリー電気泳動法の反応のような過程を縮小化および分画化する。このようなマイクロ流体デバイスは代表的に、系の少なくとも一つの局面において検出試薬を利用し、そしてこのような検出試薬は使用され、本発明の一以上のSNPを検出し得る。マイクロ流体系の一つの例は、米国特許第5,589,136号に開示され、この開示はチップにおいてPCR増幅の統合およびキャピラリー電気泳動が記載される。典型的なマイクロ流体系は、マイクロチップ上に含まれるガラス、シリコン、石英、またはプラスチックのウエハ上に設計されるマイクロチャネルのパターンを含む。サンプルの移動は、電気、電気浸透性、または流体静力学の力によって制御され得、この力は、機能的顕微鏡バルブおよび可動部分を伴わないポンプを作成するためにマイクロチップの異なる範囲にわたって適用される。電圧の変化は、マイクロ機械加工チャンネル間の交点で液体の流動を制御する方法およびマイクロチップの異なるセクションにわたりポンプ注入するための液体流量を変化させるための方法として使用され得る。例えば、米国特許第6,153,073号(Dubrowら)および同第6,156,181号(Parceら)を参照のこと。
SNPの遺伝子型を特定するために、典型的なマイクロ流動系は、例えば、核酸増幅、プライマー伸長、キャピラリー電気泳動、およびレーザー光誘導蛍光検出のような検出方法を統合し得る。このような典型的な系を使用するための典型的なプロセスの最初の工程において、核酸サンプルは、好ましくはPCRによって増幅される。次いで、増幅産物は、ddNTP(各ddNTPに対して特異的な蛍光)および適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用する自動プライマー伸長反応に供され標的SNPのちょうど上流にハイブリダイズするプライマー伸長反応を実施する。3’末端において伸長が一旦完了すると、このプライマーは、キャピラリー電気泳動によって組込まれていない蛍光ddNTPから分離される。キャピラリー電気泳動に使用される分離培地は、例えば、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコールまたはデキストランであり得る。単一のヌクレオチドプライマーの伸長産物中に組込まれたddNTPは、レーザー光誘導蛍光検出によって同定される。このような典型的なマイクロチップが、使用され例えば、少なくとも96サンプル〜384サンプル、またはそれ以上が同時に処理され得る。
(核酸分子の使用)
本発明の核酸分子は、種々の使用(特に、CHD(特に、MI)および動脈瘤/解離の診断、予後、処置、および予防のための、ならびに薬物応答(特に、スタチンに対する応答)を推定するための)を有する。例えば、本発明の核酸分子は、CHDもしくは動脈瘤/解離を発症させる個体の危険性(特に、最初のMIもしくは再発性MIを経験する危険性)を推定するために、個体におけるCHDもしくは動脈瘤/解離の進行(例えば、MIの重篤度もしくは結果)を予想するために、スタチンでのCHDもしくは動脈瘤/解離の処置(もしくは予防)に対して応答する、CHDもしくは動脈瘤/解離を有する(またはCHDもしくは動脈瘤/解離の増大した危険性がある)個体の可能性を評価する、ならびに/あるいは上記個体が、上記スタチン処置から毒性もしくは他の望ましくない副作用を経験する可能性を推定するなどにおいて、有用である。例えば、核酸分子は、ハイブリダイゼーションプローブとして、例えば、メッセンジャーRNA、転写物、cDNA、ゲノムDNA、増幅されたDNAまたは他の核酸分子においてSNPの遺伝子型を特定するために、ならびに全長cDNAおよび表1に開示される改変体ペプチドをコードするゲノムクローンおよびそのオーソログを単離するために有用である。
プローブは、表1および/または表2で言及される核酸分子の全長に沿って任意のヌクレオチド配列にハイブリダイズし得る。好ましくは本発明のプローブは、表1および/または表2に示されるSNP位置を含む標的配列の領域にハイブリダイズする。より好ましくは、プローブは、配列特異的様式でSNP含有標的配列にハイブリダイズし、その結果、標的配列を、どのヌクレオチドがSNP部位に存在するかによって標的配列と異なる他のヌクレオチド配列とを識別する。このようなプローブは、試験サンプル中のSNP含有核酸の存在を検出するために、またはどのヌクレオチド(対立遺伝子)が、特定のSNP部位に存在するかを決定する(すなわち、SNP部位の遺伝子型決定)ために特に有用である。
核酸のハイブリダイゼーションプローブは、核酸発現の存在、レベル、形態、および/または分布を決定するために使用され得る。レベルが決定される核酸は、DNAまたはRNAであり得る。従って、本明細書中に記載されるSNPに特異的なプローブが、使用され所定の細胞、組織、または生物において存在、発現および/または遺伝子のコピー数を調べ得る。これらの用途は、正常レベルに対する遺伝子発現の増加または減少に関与する障害の診断に関連する。mRNA検出のためのインビトロ技術としては、例えば、ノーザンブロットハイブリダイゼーションおよびインサイチュハイブリダイゼーションが挙げられる。DNAを検出するためのインビトロ技術としては、サザンブロットハイブリダイゼーションおよびインサイチュハイブリダイゼーションが挙げられる(SambrookおよびRussell、2000、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor,NY)。
プローブは、例えば、被験体に由来する細胞のサンプルにおいて改変タンパク質コード核酸(例えば、mRNA)のレベルを測定することのよって、またはポリヌクレオチドが、目的のSNPを含有するか否かを決定することによって、改変タンパク質が発現される細胞または組織を同定するための診断試験キットの一部として使用され得る。
従って、本発明の核酸分子は、本明細書で開示されるSNPを検出するためにハイブリダイゼーションプローブとして使用され得、それによって、上記多型を有する個体が、CHDもしくは動脈瘤/解離を発症させる危険性がある(もしくは既に初期段階のCHDもしくは動脈瘤/解離を発症した)か否かを決定し、または個体がCHDもしくは動脈瘤/解離のスタチン処置(予防処置を含む)に対して陽性に応答する可能性を決定し得る。疾患表現型と関連するSNPの検出は、活動性疾患および/もしくは上記疾患に対する遺伝的素因についての診断ツールを提供する。
さらに、本発明の核酸分子は、従って、本明細書で開示されるSNPおよび/もしくはこのような遺伝子の生成物(例えば、発現されるmRNA転写物分子(転写物情報は、例えば、表1に開示される)を含む遺伝子(遺伝子情報が例えば、表2において開示される)を検出するために有用であり、従って、遺伝子発現を検出するために有用である。上記核酸分子は、必要に応じて、例えば、遺伝子発現を検出することにおける使用のためのアレイもしくはキット形式において実行され得る。
本発明の核酸分子はまた、核酸分子の任意の所定領域、特に表1および/または表2に同定されるSNP含有領域を増幅するためのプライマーとしても有用である。
本発明の核酸分子はまた、組換えベクターを構築するためにも有用である(以下により詳細に記載される)。このようなベクターとしては、表1で言及される任意の改変体ペプチド配列の一部または全体を発現する発現ベクターが挙げられる。ベクターはまた、例えば細胞のゲノムのような別の核酸分子配列へ組み込むために使用され、遺伝子および/または遺伝子産物のインサイチュでの発現を変化させる、挿入ベクターも含む。例えば、内因性のコード配列は、相同組換えを介して、一以上の特異的に導入されたSNPを含有するコード領域の全体または一部分と置換され得る。
本発明の核酸分子はまた、改変タンパク質の抗原部分、特に、表1および/または表2に開示されるSNPによって生じる改変体アミノ酸配列(例えば、アミノ酸置換)を含む抗原部分を発現するのにも有用である。
本発明の核酸分子はまた、本発明の核酸分子の遺伝子調節領域を含むベクターを構築するのにも有用である。
本発明の核酸分子はまた、本明細書中に記載されるSNP含有核酸分子に由来する発現されたmRNA分子の全体または一部分に対応するリボザイムを設計するのにも有用である。
本発明の核酸分子はまた核酸分子および改変体ペプチドの一部分または全体を発現する宿主細胞を構築するのにも有用である。
本発明の核酸分子はまた、核酸分子および改変体ペプチドの全体または一部分を発現するトランスジェニック動物を構築するためにも有用である。表1および/または表2に開示されるSNPを含有する核酸分子を有する組換え細胞およびトランスジェニック動物の産生は、例えば、処置化合物および投薬レジメンの効果的な臨床設計を可能とする。
本発明の核酸分子はまた、例えば、核酸の発現を調節する化合物を同定するための薬物スクリーニングのアッセイにおいても有用である。
本発明の核酸分子はまた、細胞が異常な遺伝子発現をしている患者の遺伝子治療においても有用である。従って、エキソビボで操作されそして患者に戻された患者の細胞を含む組換え細胞は、個体へ導入され、ここで組換え細胞は、所望されるタンパク質を産生し個体を処置する。
(SNP遺伝子型分類法)
どの特定のヌクレオチド(すなわち、対立遺伝子)が1つ以上のSNP位置(例えば、表1および/もしくは表2に開示される核酸分子におけるSNP位置)の各々で存在するかを決定するプロセスは、SNP遺伝子型分類といわれる。本発明は、SNP遺伝子型分類の方法(例えば、CHD(特に、MI)もしくは動脈瘤/解離を発症する個体の危険性を評価することにおける使用のための、疾患重篤度および回復について個体の予後を評価するための使用のための、CHD(例えば、MI)もしくは動脈瘤/解離を以前に有した個体が、将来再びCHDもしくは動脈瘤/解離を有する(例えば、1回以上の再発性MIもしくは動脈瘤/解離)を有する可能性を推定するための使用のための、CHD(例えば、MIの増大した危険性)もしくは動脈瘤/解離を発症させる増大した感受性を有する個体に基づいて、個体についての予防レジメンもしくは処置レジメンを実行するための使用のための、スタチン処置(特に、CHDもしくは動脈瘤/解離を処置もしくは予防するため)に対する個体の応答の可能性を評価することにおける使用のための、処置レジメンもしくは予防レジメンを選択することにおける(例えば、CHDもしくは動脈瘤/解離を有するか、または将来CHDもしくは動脈瘤/解離を発症させる増大した危険性がある個体にスタチン処置を施すか否かを決定することにおける使用のための)、あるいは特定のスタチンベースの処置もしくは予防的レジメン(例えば、スタチン処置の投与量および/もしくは投与頻度を処方もしくは選択することにおける使用のための、または投与するためにどの形態/タイプのスタチン(例えば、特定の薬学的組成物もしくは化合物など)を選択するか、スタチン処置からの毒性もしくは他の所望でない副作用を経験する可能性を決定するために使用するための、あるいはスタチンの臨床試験のための個体を選択することにおける(例えば、上記スタチン処置から陽性に応答する可能性が最も高い、治験に参加する個体を選択することにおける使用のための、および/または上記スタチン処置から陽性に応答する可能性がない個体を治験から排除することにおける使用のためのなど)を提供する。
核酸サンプルは、当該分野において周知の方法によって遺伝子特定され、どの対立遺伝子が、目的の任意の所定遺伝子領域(例えば、SNP位置)に存在するかを決定し得る。隣接する配列が、オリゴヌクレオチドプローブのようなSNP検出試薬を設計するために使用され得、このプローブは必要に応じてキットフォーマット中に与えられ得る。代表的なSNP遺伝子特定方法は、Chenら、「Single nucleotide polymorphism genotyping:biochemistry,protocol,cost and throughput」、Pharmacogenomics J.2003;3(2):77−96;Kwokら、「Detection of single nucleotide polymorphisms」、Curr Issues Mol Biol.2003 Apr;5(2):43−60;Shi、「Technologies for individual genotyping: detection of genetic polymorphisms in drug targets and disease genes」、Am J Pharmacogenomics.2002;2(3):197−205;およびKwok、「Methods for genotyping single nucleotide polymorphisms」、Annu Rev Genomics Hum Genet 2001;2:235−58に記載される。高処理のSNP遺伝子型特定についての代表的な技術は、Marnellos、「High−throughput SNP analysis for genetic association studies」、Curr Opin Drug Discov Devel.2003 May;6(3):317−21に記載される。一般のSNP遺伝子特定方法としては、TaqManアッセイ、分子ビーコンアッセイ、核酸アレイ、対立遺伝子特異的プライマー伸長、対立遺伝子特異的PCR、配列されたプライマー伸長、均質なプライマーの伸長アッセイ、質量分析法による検出を伴うプライマー伸長、高熱配列決定(pyrosequencing)、遺伝子アレイで選別される複合プライマーの伸長、周期的増幅(rolling circle)を伴うライゲーション、同質のライゲーション、OLA(米国特許第4,988,167号)、遺伝子アレイで選別される複合ライゲーション反応、制限断片長の多型、一塩基の伸長タグアッセイおよびインベーダーアッセイが挙げられるが、これらに限定されない。このような方法は、例えば、発光または化学発光の検出、蛍光検出、時間分解型蛍光検出、蛍光共鳴エネルギー伝達、蛍光偏光、質量分析、および電気検出のような検出機構と組み合わせて用いられ得る。
多型を検出するための種々の方法としては、切断因子からの保護がRNA/RNA二重鎖またはRNA/DNA二重鎖において不一致の塩基を検出する方法(Myersら、Science 230:1242(1985);Cottonら、PNAS 85:4397(1988)およびSaleebaら、Meth.Enzymol.217:286−295(1992))、改変体および野生型の核酸分子の電気泳動の移動度の比較(Oritaら、PNAS 86:2766(1989);Cottonら、Mutat.Res.285:125−144(1993);およびHayashiら、Genet.Anal.Tech.Appl.9:73−79(1992))ならびに変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)を用いる変性剤の勾配を含むポリアクリルアミドゲルにおいて多型フラグメントまたは野生型フラグメントの移動をアッセイすること(Myersら、Nature 313:495(1985))が挙げられるが、これらに限定されない。特定の位置での配列変動はまた、RNase保護およびS1保護のような、ヌクレアーゼプロテクションアッセイまたは化学切断方法によっても調べられ得る。
好ましい実施形態において、SNP遺伝子型特定は、5’ヌクレアーゼアッセイとしても公知であるTaqManアッセイを用いて実施される(米国特許第5,210,015号および同第5,538,848号)。TaqManアッセイは、PCRの間に特定の増幅産物の蓄積を検出する。TaqManアッセイは、蛍光レポーター色素およびクエンチャー色素を用いて標識されたオリゴヌクレオチドプローブを利用する。レポーター色素は、適切な波長での放射線照射によって励起され、蛍光共鳴エネルギー伝達(FRET)と呼ばれるプロセスを介して同一のプローブ中のクエンチャー色素へエネルギーを伝達する。このプローブへ取り付けられた場合、励起されたレポーター色素は、シグナルを放射しない。インタクトのプローブにおいてクエンチャー色素とレポーター色素の近さは、レポーターについての減少した蛍光を維持する。レポーター色素およびクエンチャー色素は、それぞれ最も5’の末端および最も3’の末端に有り得るか、またはその逆であり得る。あるいは、レポーター色素は、最も5’の末端または最も3’の末端にあり得るが、クエンチャー色素は、内部のヌクレオチドに取り付けられる(またはこの逆)。さらに別の実施形態において、レポーターおよびクエンチャーの両方、互いに離れて内部のヌクレオチドへ取り付けられ得、その結果レポーターの蛍光は、減少される。
PCRの間、DNAポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性がプローブを切断し、それによってレポーター色素とクエンチャー色素とを分離し、そして結果として、レポーターの蛍光の上昇を生じる。PCR産物の蓄積は、レポーター色素の蛍光の上昇を直接モニタリングすることにより検出される。DNAポリメラーゼは、プローブがPCRの間に増幅される標的SNP含有鋳型にハイブリダイズする場合にのみ、レポーター色素とクエンチャー色素との間のプローブを切断し、かつプローブは、特定のSNP対立遺伝子が存在する場合にのみ、標的SNP部位にハイブリダイズするように設計されている。
好ましいTaqManプライマーおよびTaqManプローブの配列は、本明細書中で提供されるSNPおよび関連する核酸配列情報を用いて、容易に決定され得る。Primer Express(Applied Biosystems、Foster City、CA)のようなコンピュータープログラムの多くは、最適なプライマー/プローブのセットを容易に得るために使用され得る。本発明のSNPを検出するためのこのようなプライマーおよびプローブが、例えば、CHD(特に、MI)、動脈瘤/解離、および関連病理を発症しやすい個体をスクリーニングすることにおいて、またはスタチン処置に応答する可能性についてCHDもしくは動脈瘤/解離を有する個体(またはCHDもしくは動脈瘤/解離に罹りやすい個体)をスクリーニングすることにおいて有用であることは、当業者に明らかである。これらプローブおよびプライマーは、キット形式へと容易に組み込まれ得る。本発明はまた、Molecular Beaconプローブ(米国特許第5,118,801号および同第5,312,728号)ならびに他の改変形式(米国特許第5,866,336号および同第6,117,635号)の使用のような、当該分野において周知のTaqmanアッセイの改変を含む。
本発明のSNPの遺伝型を決定するための別の好ましい方法は、OLAにおける二つのオリゴヌクレオチドプローブの使用である(例えば、米国特許第4,988,617号を参照)。この方法において、一つのプローブは、その最も3’末端にSNP部位が整列した、標的核酸のセグメントにハイブリダイズする。第二のプローブは、標的核酸分子の第一のプローブのすぐ3’に隣接するセグメントにハイブリダイズする。二つの並列したプローブは、標的核酸分子にハイブリダイズし、そして、もし第一のプローブの最も3’のヌクレオチドとSNP部位との間に完全な相補性があれば、リガーゼのような結合剤の存在下で連結される。ミスマッチがある場合、連結は起こらない。反応後、連結されたプローブは、標的核酸分子から分離され、そしてSNPの存在の指標として検出される。
以下の特許、特許出願、および公開されている国際特許出願は、全て、本明細書で参考により援用され、種々の形式のOLAを実施するための技術に関するさらなる情報を提供する:米国特許第6027889号、同第6268148号、同第5494810号、同第5830711号、および同第6054564号は、SNP検出を実施するためのOLAストラテジーを記載する;WO 97/31256およびWO 00/56927は、ユニバーサルアレイを用いたSNP検出を実施するためのOLAストラテジーを記載し、ここで、ジップコード配列は、ハイブリダイゼーションプローブの一つに導入され得、かつ結果として生じた産物(もしくは増幅産物)は、ユニバーサルジップコードアレイにハイブリダイズし得る;米国特許出願US01/17329(および09/584,905)は、OLA(もしくはLDR)、続いてPCRを記載し、ここで、ジップコードはOLAプローブに組み込まれ、かつ増幅されたPCR産物は、電気泳動もしくはユニバーサルジップコードアレイ読み出し装置により決定される;米国特許出願60/427818、同60/445636および同60/445494は、SNPlex法およびOLAに続くPCRを用いた多重SNP検出のためのソフトウェアを記載し、ここで、ジップコードは、OLAプローブに組み込まれ、かつ増幅されたPCR産物は、ジップシュート(zipchute)試薬とハイブリダイズし、かつSNPの同定は、ジップシュートの電気泳動読み出し装置により決定される。いくつかの実施形態において、OLAは、PCR(もしくは別の核酸増幅方法)の前に実施される。他の実施形態において、PCR(もしくは他の核酸増幅方法)は、OLAの前に実施される。
SNPを遺伝子型決定するための別の方法は、質量分析に基づく。質量分析は、DNAの4種のヌクレオチドの各々の固有の質量を利用する。SNPは、代替的なSNP対立遺伝子を有する核酸の質量の差異を測定することにより、質量分析によって明白に遺伝子型決定され得る。MALDI−TOF(Matrix Assisted Laser Desorption Ionization−Time of Flight)質量分析技術が、SNPのような分子質量のきわめて正確な決定のために好ましい。SNP分析に対する数多くのアプローチが、質量分析に基づいて開発されている。好ましい質量分析に基づくSNPを遺伝子型決定する方法は、プライマー伸長アッセイを含み、これも、従来のゲルに基づく形式およびマイクロアレイのような他の適用と組み合わせて利用され得る。
代表的に、プライマー伸長アッセイは、標的SNP部位から(5’)上流の鋳型PCRアプリコンに対する、プライマーの設計およびアニールを含む。ジデオキシヌクレオチド三リン酸(ddNTP)および/もしくはデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)の混合物を、鋳型(例えば、PCRなどにより代表的に増幅されている、SNP含有核酸分子)、プライマー、およびDNAポリメラーゼを含有する反応混合物に添加する。プライマーの伸長は、混合物中のddNTPのうちの一つに対して相補的なヌクレオチドが生じる鋳型中の最初の部位で、終結する。プライマーは、SNP部位に直接隣接する(すなわち、プライマーの3’末端のヌクレオチドは、標的SNP部位の隣のヌクレオチドにハイブリダイズする)か、もしくはSNP部位から二つ以上のヌクレオチド離れているかのどちらかであり得る。プライマーが、標的SNP部位から数ヌクレオチド離れている場合、唯一の制限は、プライマーの3’末端とSNP部位との間の鋳型配列が、検出されるべきものと同じ型のヌクレオチドを含まないこと、またはこのことが、伸長プライマーの未完成な終結を引き起こすことである。あるいは、全ての4種のddNTPのみが、dNTPなしで反応混合物に添加される場合、プライマーは常に、標的SNP部位に対応するただ一つのヌクレオチドにより伸長される。この場合、プライマーは、SNP部位より一つ上流のヌクレオチドに結合するために設計される(すなわち、プライマーの3’末端のヌクレオチドは、標的SNP部位の5’側で標的SNP部位に直接隣接するヌクレオチドにハイブリダイズする)。ただ一つのヌクレオチドによる伸長は、伸長されるプライマーの全体の質量を最小にし、それにより、代替的なSNPヌクレオチドの間の質量の差異の分解能を上昇させるので、ただ一つのヌクレオチドによる伸長が好ましい。さらに、非改変ddNTPのプライマー伸長反応に代えて、質量標識されたddNTPが用いられ得る。このことは、これらのddNTPにより伸長されたプライマーの間の質量の差異を上昇させ、それにより、上昇する感度および精度を提供し、そして特に、ヘテロ接合の塩基部位を決定するために有用である。質量標識はまた、集中的なサンプル調製手順の必要性を軽減し、そして質量分析の必要とされる分解能を低下させる。
伸長されたプライマーは、次に精製され得、そして、標的SNP部位に存在しているヌクレオチドの同一性を決定するために、MALDI−TOF質量分析により分析され得る。分析の一つの方法において、プライマー伸長反応からの生成物は、マトリックスを形成する光吸収結晶と組み合わせられる。次に、このマトリックスは、核酸分子をイオン化し、そして気体相に脱着するために、レーザーのようなエネルギー源により打ち付けられる。次に、イオン化された分子は、飛行管内に放射され、そして加速されて検出器に向かってこの管を下る。レーザーパルスのようなイオン化現象と分子が検出器と衝突する間の時間は、その分子の飛行時間である。飛行時間は、イオン化された分子の電荷に対する質量比(m/z)と正確に相関する。より小さいm/zを有するイオンは、より大きいm/zを有するイオンよりも早くこの管を下って進行し、そしてそのため、このより軽いイオンは、より重いイオンの前に検出器に到達する。したがって、飛行時間は、対応する、かつ非常に正確なm/zに変換される。この様式で、SNPは、一塩基部分に異なるヌクレオチドを有する核酸分子において固有の、質量のわずかな差異、および対応する飛行時間の差異に基づいて同定され得る。SNP遺伝子型決定のための、MALDI−TOF質量分析と関連するプライマー伸長反応アッセイの使用に関するさらなる情報については、例えば、Wiseら、「A standard protocol for single nucleotide primer extension in the human
genome using matrix−assisted laser desorption/ionization time−of−flight mass spectrometry」、Rapid Commun Mass Spectrom.2003;17(11):1195−202を参照のこと。
以下の参考は、SNP遺伝子型決定のための質量分析に基づく方法を記載する、さらなる情報を提供する:Bocker、「SNP and mutation discovery using base−specific cleavage snd MALDI−TOF mass spectrometry」、Bioinformatics.2003年7月;19補遺1:I44−I53;Stormら、「MALDI−TOF
mass spectrometry−based SNP genotyping」、Methods Mol Biol.2003;212:241−62;Jurinkeら、「The use of MassARRAY technology for high throughput genotyping」、Adv Biochem Eng Biotechnol.2002;77:57−74;およびJurinkeら、「Automated genotyping using the DNA MassArray technology」、Methods Mol Biol.2002;187:179−92。
SNPはまた、直接のDNA配列決定によっても評価され得る。種々の自動化配列決定手順が利用され得((1995)Biotechniques 19:448)、これらとしては、質量分析による配列決定が挙げられる(例えば、PCT国際公開番号WO94/16101;Cohenら、Adv.Chromatogr.36:127−162(1996);およびGriffinら、Appl.Biochem.Biotechnol.38:147−159(1993)を参照のこと)。本発明の核酸配列は、当業者がこのような自動化配列決定手順のための配列決定プライマーを容易に設計することを可能にする。Applied Biosystems 377、3100、3700、3730、および3730xl DNA Analyzers(Foster City、CA)のような商業的な機器が、自動化配列決定のために、当該分野において一般的に使用される。
本発明のSNPの遺伝子型を決定するために使用され得る他の方法としては、一本鎖高次構造多型(SSCP)および変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)が挙げられる(Myersら、Nature 313:495(1985))。SSCPは、Oritaら、Proc.Nat.Acad.に記載のように、一本鎖PCR産物の電気泳動移動度の変化により、塩基の差異を識別する。一本鎖PCR産物は、二本鎖PCR産物を加熱するか、もしくはそれ以外で変性させることにより生成され得る。一本鎖核酸は、塩基配列に部分的に依存する二次構造を、再び折りたたむか、もしくは形成し得る。一本鎖増幅産物の異なる電気泳動移動度は、SNP部位の塩基配列の差異に関連する。DGGEは、多型DNAに固有の異なる配列依存的安定性および融解特性、ならびに変性勾配ゲルにおける電気泳動移動度パターンの対応する差異に基づいて、SNP対立遺伝子を識別する(Erlich、編、PCR Technology、Principles and Applications for DNA Amplification、W.H.Freeman and Co、New York、1992、7章)。
配列特異的リボザイム(米国特許第5,498,531号)はまた、リボザイム切断部位の発生もしくは消失に基づいてSNPを評価するために、使用され得る。完全にマッチする配列は、ヌクレアーゼ切断消化アッセイによるか、もしくは融解温度の差異により、ミスマッチ配列と区別され得る。SNPが制限酵素切断部位に影響する場合、SNPは、制限酵素消化パターンの変化、およびゲル電気泳動により決定される核酸フラグメントの長さの対応する変化により確認され得る。
SNP遺伝子型決定は、例えば、ヒト被験体から生物学的サンプル(例えば、組織、細胞、流体、分泌物などのサンプル)を収集する工程、サンプルの細胞から核酸(例えば、ゲノムDNA、mRNAもしくは両方)を単離する工程、標的核酸領域のハイブリダイゼーションおよび増幅が生じるような条件下で、標的SNPを含む単離された核酸の領域に特異的にハイブリダイズする一つ以上のプライマーに、核酸を接触させる工程、そして、本発明のSNP部位に存在するヌクレオチドを決定する工程、または、いくつかのアッセイにおいては、増幅産物の存在もしくは非存在を検出する工程(アッセイは、特定のSNP対立遺伝子が存在するか、もしくは存在しない場合にのみ、ハイブリダイゼーションおよび/もしくは増幅が生じるように設計され得る)を包含し得る。いくつかのアッセイにおいて、増幅産物の大きさは、検出され、そしてコントロールサンプルの長さと比較される;例えば、欠損および挿入は、正常な遺伝子型と比較した増幅産物の大きさの変化により検出され得る。
SNP遺伝子型決定は、以下に記載のような数多くの実用的な適用のために有用である。このような適用の例としては、SNP−疾患関連分析、疾患素因スクリーニング、疾患診断、疾患予後判断、疾患経過モニタリング、個体の遺伝子型に基づく治療ストラテジーの決定(薬理ゲノミクス)、疾患もしくは薬物に対する応答の見込みに関連したSNP遺伝子型に基づく治療剤の開発、処置レジメンについての臨床試験のための患者母集団の階層化、個体が治療剤により有害な副作用を経験する可能性の予測、ならびに法医学のようなヒトの確認適用が挙げられるが、これらに限定されない。
(SNPと表現型形質との間の遺伝子型関連の分析)
疾患診断、疾患素因スクリーニング、疾患予後、薬物応答性の決定(薬理ゲノム学)、薬物毒性スクリーニングおよび本明細書中に記載される他の用途のためのSNP遺伝子型特定は、代表的に、1種以上の特定のSNPと目的の特定の表現型形質との間の遺伝的関連を最初に確立することに依存する。
異なる研究設計が、遺伝的関連研究のために使用され得る(Modern Epidemiology,Lippincott Williams & Wilkins(1998),609−622)。観察研究は最も頻繁に実施され、この研究において、患者の応答は妨害されない。第1の型の観察研究は、疾患の予測される原因が存在する人のサンプルと、予測される原因が存在しない人の別のサンプルを同定し、次いで、2つのサンプルにおける疾患の発症頻度が比較される。これらの標本抽出された集団はコホートと呼ばれ、この研究は、前向き研究である。他の型の観察研究は、ケース−コントロールまたは後向き研究である。代表的なケース−コントロール研究において、サンプルは、疾患の特定の徴候のような目的の表現型を有する個体(ケース)、および、結論が導かれる集団(標的集団)における表現型(コントロール)を有さない個体から、収集される。次いで、疾患の可能な原因が、過去に遡って調査される。ケース−コントロール研究においてサンプルを収集する時間および費用が、前向き研究にかかるものよりもかなり少ないので、ケース−コントロール研究は、少なくとも、探索および発見の段階の間、遺伝的関連の研究において、最も一般的に使用される研究設計である。
両方の型の観察研究において、考慮されるべき強力な交絡因子が存在し得る。交絡因子は、疾患の実際の原因および疾患自体の両方に関連するものであり、そして、年齢、性別、民族性ならびに環境因子のような人口統計学的情報を含む。研究において、交絡因子がケースおよびコントロールで適合せず、そして、適切に制御されない場合、偽の関連結果が生じ得る。強力な交絡因子が同定される場合、これらは、以下に説明される分析方法により制御されるべきである。
遺伝的関連研究において、試験されるべき目的の原因は、特定の対立遺伝子またはSNP、またはいくつかのSNPからの対立遺伝子もしくはハプロタイプの組合せである。従って、標本抽出された個体からの組織生検(例えば、全血)が収集され得、ゲノムDNAが、目的のSNPについて遺伝子型を特定される。目的の表現型形質に加えて、人口統計学的情報(例えば、年齢、性別、民族性など)、臨床的情報および環境的情報のような、形質の出現に影響を及ぼし得る他の情報が収集されて、サンプルセットをさらに特徴付け、そして定義し得る。多くの場合、これらの因子は、疾患および/またはSNP対立遺伝子頻度に関連することが知られている。見込みのある遺伝子−環境および/または遺伝子−遺伝子の相互作用もまた存在する。遺伝子−環境および遺伝子−遺伝子の相互作用に取り組むための分析方法(例えば、2つの異なる遺伝子における両方の感受性対立遺伝子の存在の効果が、2つの遺伝子における個々の対立遺伝子の効果を合わせたものよりも大きい可能性がある)は、以下に議論される。
全ての関連する表現型および遺伝子型情報が得られた後、統計的分析を実施して、対立遺伝子または遺伝子型の存在と個体の表現型特徴との間に任意の有意な相関があるかどうかを決定する。好ましくは、遺伝的関連についての統計的試験を実施する前に、データの検査および精選がまず実施される。サンプルの疫学的および臨床的データは、表およびグラフを用いて、記述統計学によりまとめられ得る。データの評価は、好ましくは、データの完成性、矛盾したエントリーおよび異常値についてチェックするために実施される。次いで、χ二乗検定およびt検定(分布が正常でない場合は、ウィルソン順位和検定)を用いて、それぞれ、離散型変数および連続型変数についてのケースとコントロールとの間の有意差についてチェックし得る。遺伝子型の質を保証するために、Hardy−Weinberg不均衡検定がケースおよびコントロールについて別個に実施され得る。個々のマーカーについてのケースおよびコントロールの両方におけるHardy−Weinberg不均衡(HWE)からの有意な偏差は、遺伝子型の誤差の指標であり得る。HWEがマーカーの大半で違反される場合、これは、さらに調査されるべき集団下部構造の指標である。さらに、ケースのみにおいて、Hardy−Weinberg不均衡は、マーカーの疾患との遺伝的関連を示唆し得る(Genetic Data Analysis,Weir B.,Sinauer(1990))。
単一のSNPの対立遺伝子が、表現型形質のケースまたはコントロールの状態に関連するかどうかを試験するために、当業者は、ケースおよびコントロールにおける対立遺伝子の頻度を比較し得る。標準的なχ二乗検定およびフィッシャーの正確検定が、2×2の表(2つのSNP対立遺伝子×2つの目的の分類形質における結果)について実施され得る。SNPの遺伝子型が関連するかどうかを試験するために、χ二乗検定が、3×2の表(3つの遺伝子型×2つの結果)について実施され得る。スコア検定がまた、遺伝子型関連について実施され、ケースおよびコントロールにおける3つの遺伝子型頻度(主なホモ接合型、ヘテロ接合型および少数のホモ接合型)を対照させ、そして、遺伝の3つの異なる様式、すなわち、優性(対比係数2,−1,−1)、相加的(対比係数1,0,−1)および劣性(対比係数1,1,−2)を用いて、傾向を探索する。少数の対立遺伝子 対 主要な対立遺伝子についてのオッズ比、ならびに、ヘテロ接合性改変体およびホモ接合性改変体 対 野生型の遺伝子型についてのオッズ比が、所望の信頼限界(通常は95%)を用いて算出される。
混同(confounder)を制御し、交互作用および効果モディファイアを試験するために、人口統計学的情報(例えば、年齢、民族および性別)または交互作用要素もしくは効果モディファイア(例えば、公知の主要遺伝子(例えば、アルツハイマー病についてのAPOE、または自己免疫疾患についてのHLA))または環境因子(例えば、肺癌における喫煙)を含む、混乱を生じる可能性のある階層化した因子を用いて、階層化した分析が実施され得る。階層化した関連試験は、0、1および2の改変体の対立遺伝子を有する遺伝子型の序数的性質を考慮に入れるCochran−Mantel−Haenszel検定を用いて実施され得る。StatXactによる完全検定(exact test)がまた、計算的に可能な場合実施され得る。混乱モディファイア効果を調節し、交互作用について試験するための別の方法は、SASまたはRのような統計的パッケージを用いて、逐次重ロジスティック回帰分析を実施することである。ロジスティック回帰は、モデル構築技術であり、ここで、最もフィットし、かつ最も倹約な(parsimonious)モデルが構築され、二分法の結果(例えば、特定の疾患を有するか否か)と、一連の独立した変数(例えば、別個の関連する遺伝子の遺伝子型、ならびに関連す得る人口統計学因子および環境因子)との間の関連を記述する。最も一般的なモデルは、オッズ比のロジット変換が、変数(主要効果)とそのクロス積項(cross−product terms)(交互作用)との一次結合(linear combination)として表されるものである(Applied Logistic Regression,Hosmer and Lemeshow,Wiley(2000))。特定の変数または交互作用が、結果と有意に関連するかどうかを試験するために、このモデルにおける係数をまず推定し、次いで、ゼロからのその逸脱(departure)の統計的有意差について試験される。
1つのマーカーについての関連の検定を同時に実施することに加え、ハプロタイプ関連分析がまた、互いに密接に連鎖される多数のマーカーを調べるために実施され得る。試験されるマーカーが、それ自体疾患を生じる変異ではないが、このような変異と連鎖不均衡である場合、ハプロタイプ関連試験は、遺伝子型関連試験または対立遺伝子関連試験よりも強力であり得る。この試験は、なお、疾患が、実際に、ハプロタイプに関する対立遺伝子の組み合わせにより生じる場合により強力である(例えば、APOEは、互いに非常に密接している2つのSNPにより形成されたハプロタイプである)。ハプロタイプ関連を効果的に実施するために、マーカー−マーカー連鎖不均衡の指標(D’およびr2の両方)が、代表的には、ハプロタイプ構造を明らかにするために、遺伝子内のマーカーについて算出される。連鎖不均衡における最近の研究(Dalyら、Nature Genetics,29,232−235,2001)は、遺伝子内のSNPが、ブロックパターンで組織化され、ブロック内に高い程度の連鎖不均衡が存在し、そして、ごくわずかの連鎖不均衡しかブロック間に存在しないことを示している。一旦これらが明らかにされると、疾患状態とのハプロタイプ関連が、このようなブロックを用いて実施され得る。
ハプロタイプ関連試験は、対立遺伝子関連試験および遺伝子型関連試験と同じ様式で実施され得る。遺伝子における各ハプロタイプは、多対立遺伝子マーカーにおける対立遺伝子と類似する。当業者は、ケースおよびコントロールにおけるハプロタイプの頻度を比較するか、または、異なる対のハプロタイプとの遺伝子関連を試験し得る。プログラム「haplo.score」を用いて、ハプロタイプについてスコア試験がなされ得ることが提案されている(Schaidら、Am.J.Hum.Genet.,70,425−434,2002)。この方法において、ハプロタイプはまず、EMアルゴリズムによって推測され、そして、他の因子の調節を可能にする一般化線形モデル(GLM)フレームワークを用いて、スコア試験が実施される。
遺伝子関連試験の実施における重要な決定は、有意なレベルの決定であり、試験のp値がそのレベルに到達するときに、有意な関連が示され得る。正のヒットがその後の確認試験において追跡される、探索分析において、調節されていないp値<0.2(寛大な側の有意差レベル)が、例えば、SNPの、疾患の特定の表現型特徴との有意な関連についての仮説を作成するために使用され得る。SNPが疾患と関連を有するとみなされるためには、p値<0.05(当該分野で従来使用されている有意差レベル)が達成されることが好ましい。関連が示されるためには、p値<0.01(厳密な側の有意差レベル)が達成されることがより好ましい。ヒットが、同じ供給源のより多くのサンプル、または、異なる供給源の異なるサンプルにおける確認分析において追跡される場合、複数の試験についての調節が、実験−ワイズ(wise)誤差率を0.05に維持しつつ、過剰数のヒットを避けるように実施される。異なる種類の誤差率をコントロールするための複数の試験について調節するための異なる方法が存在するが、一般に使用されるがやや保守的な方法は、実験−ワイズ誤差率またはファミリー−ワイズ誤差率を制御するためのBonferroni補正である(Multiple comparisons and multiple tests,Westfallら、SAS Institute(1999))。誤り発見率(FDR)を制御するための並べ替え検定が、より強力であり得る(Benjamini and Hochberg,Journal of the Royal Statistical Society,Series B 57,1289−1300,1995,Resampling−based Multiple Testing,Westfall and Young,Wiley(1993))。多様性を制御するためのこのような方法は、試験が依存的である場合に好まれ、誤り発見率の制御は、実験−ワイズ誤差率の制御と対抗するのに十分である。
統計学的に有意なマーカーが探索段階で同定された後の異なる集団に由来するサンプルを用いる複製研究において、次いで、メタ分析が異なる研究の証拠を合わせることによって実施され得る(Modern Epidemiology,Lippincott Williams & Wilkins,1998,643−673)。利用可能な場合、同じSNPについての当該分野で公知の関連結果がメタ分析に包含され得る。
遺伝子型の特定と疾患状態の分類の両方が、誤りを含み得るので、オッズ比およびp値が、遺伝子型の特定および疾患分類の誤差率についての種々の推定の際にどのように変化するかを見るために、感度分析を実施し得る。
疾患の有病率が異なる下位集団群と関連する場合、ケースとコントロールとの間の下位集団ベースの標本抽出の偏りが、ケース−コントロール関連研究における偽の結果をもたらし得ることは周知である(EwensおよびSpielman,Am.J.Hum.Genet.62,450−458,1995)。このような偏りはまた、遺伝的関連研究における統計学的な力の消失をもたらし得る。集団の層化を検出するために、PritchardおよびRosenbergは、疾患と連鎖しないマーカーを分類し、これらのマーカーに関する関連試験の結果を使用して、任意の集団層化が存在するかどうかを決定することを示唆した(Pritchardら、Am.J.Hum.Gen.1999,65:220−228)。層化が検出される場合、DevlinおよびRoederに提案されたようなゲノムコントロール(GC)法(Devlinら、Biometrics 1999,55:997−1004)が、集団層化に起因する試験統計のインフレーションを調節するために使用され得る。GC法は、集団構造レベルの変化に対して堅固であり、かつ、DNAプール設計に適用可能である(Devlinら、Genet.Epidem.20001,21:273−284)。
15〜20のリンクしないマイクロサテライトマーカーを用いる、Pritchard法が推奨されるが、集団層化を検出するのに十分な力を得るために、30以上の二対立遺伝子マーカーを使用することを示唆した。GC法については、約60〜70の二対立遺伝子マーカーが、集団層化に起因する試験統計についてのインフレーション因子を推定するために十分であることが示されている(Bacanuら、Am.J.Hum.Genet.2000,66:1933−1944)。従って、70の遺伝子間のSNPは、ゲノムスキャンにおいて示されるものとリンクしない領域において選択され得る(Kehoeら、Hum.Mol.Genet.1999,8:237−245)。
一旦、個々の危険因子(遺伝的または非遺伝的)が、疾患に対する素因について見出されると、次の工程は、カテゴリー(例えば、疾患または疾患なし)を予測するための分類/予測スキームを設定することであり、このカテゴリーは、個体がその関連するSNPの遺伝子型および他の非遺伝的危険因子に依存しているかということである。別個の形質についてのロジスティック回帰、および、連続的な形質についての線形回帰は、このような仕事についての標準的な技術である(Applied Regression Analysis,Draper and Smith,Wiley(1998))。さらに、他の技術がまた、分類を設定するために使用され得る。このような技術としては、異なる方法の性能の比較における用途に適切なMART、CART、神経ネットワークおよび判別分析が挙げられるが、これらに限定されない(The Elements of Statistical Learning,Hastie,Tibshirani & Friedman,Springer(2002))。
(疾患の診断および素因のスクリーニング)
遺伝子型と疾患に関連する表現型との間の関連/相関に関する情報は、いくつかの方法で活用され得る。例えば、1つ以上のSNPと、処置が利用可能な疾患に対する素因との間の高度に統計的に有意な関連の場合は、個体におけるこのような遺伝子型パターンの検出は、処置の即時管理、または、少なくとも、個体の定期的なモニタリングの制度を正当化し得る。子供をもうけようと意図している夫婦における、深刻な疾患に関連する感受性対立遺伝子の検出はまた、その生殖決定において、夫婦に価値あるものであり得る。SNPとヒトの疾患との間の、弱いが、なお統計学的に有意な関連の場合、即時の治療的介入またはモニタリングは、感受性対立遺伝子またはSNPを検出した後に正当化されないこともある。それにもかかわらず、被験体は、単純なライフスタイルの変化(例えば、食事、運動)を始めることを動機付けされ得、このライフスタイルの変化は、個体がほとんど、または全く費用をかけずに達成され得るが、個体がリスク対立遺伝子を有することによって危険性が増加し得る、状態を発症する危険性を減少するという、強力な利点を与え得る。
本発明のSNPは、異なる方法で、CHD(例えば、MI)、動脈瘤/解離、または個体のスタチン処置への反応性に対して寄与し得る。いくつかの多型は、タンパク質コード配列内で生じ、そして、タンパク質の構造に影響を及ぼすことによって、疾患の表現型に寄与する。他の多型が、非コーディング領域で生じるが、例えば、複製、転写および/または翻訳への影響を介して、間接的に表現型上の効果を発揮し得る。単一のSNPが、1つ以上の表現型形質に影響を及ぼし得る。同様に、単一の表現型形質は、異なる遺伝子の複数のSNPにより影響を受け得る。
本明細書において使用される場合、用語「診断する」、「診断」、および「診断的な」とは、以下のうちのいずれかが挙げられるが、これらに限定されない:個体が現在、素因/感受性/推定的スクリーニングを有し得るCHDもしくは動脈瘤/解離の検出(すなわち、ある個体がCHDもしくは動脈瘤/解離を将来発症する増大した危険性もしくは低下した危険性を有するか否かを決定すること)、個体におけるCHDもしくは動脈瘤/解離の将来の経過またはCHDもしくは動脈瘤/解離の再発を予想すること、CHDもしくは動脈瘤/解離を現在有しているかもしくは以前有していた個体におけるCHDもしくは動脈瘤/解離の特定のタイプもしくはサブクラスを決定すること、CHDもしくは動脈瘤/解離の以前に行った診断を確認もしくは補強すること、特定の処置もしくは治療剤(例えば、スタチン処置(特に、スタチンを使用するCHDもしくは動脈瘤/解離の処置もしくは予防))に対して陽性に応答する個体の可能性を評価すること、ある個体が陽性に応答する可能性が最も高い治療ストラテジーもしくは予防ストラテジーを決定もしくは選択すること(例えば、特定の治療剤(例えば、スタチン)を選択すること、もしくは治療剤の組み合わせを決定すること、もしくは投与レジメンを決定することなど)、薬物処置(例えば、スタチン処置)に対する個体の応答に関して、応答者/非応答者として個体を分類すること(または確認すること/強化すること)(あるいは応答者/非応答者の特定のサブタイプを決定すること)、ならびにある患者が特定の処置もしくは治療化合物から毒性作用を経験する可能性があるか否かを推定すること。このような診断的使用は、SNPに個々に基づき得るか、または特有の組み合わせまたは本発明のSNPハプロタイプにあり得る。
ハプロタイプは、例えば、特定のゲノム領域が、特定の表現型に影響を与える遺伝子座を有するかどうかを決定するために、より少ない数のSNPが遺伝子型を特定され得る点で、特に有用である(例えば、連鎖不均衡ベースのSNP関連分析)。
連鎖不均衡(LD)とは、所定の集団における各対立遺伝子の存在の別個の頻度から予測されるものよりも多い頻度での、2つ以上の異なるSNP部位における対立遺伝子の同時遺伝(例えば、選択的なヌクレオチド)をいう。独立して遺伝される2つの対立遺伝子の同時遺伝の予測される頻度は、第1の対立遺伝子の頻度に第2の対立遺伝子の頻度を乗じたものである。予測された頻度で同時に生じる対立遺伝子は、「連鎖不均衡」であると言われる。対照的に、LDは、2つ以上の異なるSNP部位における対立遺伝子の間の任意の非ランダムな遺伝的関連をいい、この遺伝的関連は一般に、染色体に沿う2つの遺伝子座の物理的な近接性に起因する。LDは、2つ以上のSNP部位が、所定の染色体上で互いに密接に物理的に近接している場合に生じ得、従って、これらのSNP部位における対立遺伝子は、1つのSNP部位における特定のヌクレオチド(対立遺伝子)が、近くに位置する異なるSNP部位における特定のヌクレオチド(対立遺伝子)と非ランダムな関連を示す結果のために、複数の世代について分離されていないままである傾向がある。従って、SNP部位の1つの遺伝子型を特定することにより、LDにおける他のSNPの遺伝子型を特定したものとほとんど同じ情報が生じる。
種々の程度のLDが、いくつかのSNPが他よりもより密接に関連している(すなわち、LDにおいてより強い)という結果を有する2つ以上のSNPの間で遭遇され得る。さらに、染色体に沿ってLDが延びる物理的な距離は、ゲノムの異なる領域間で異なり、従って、LDが生じるために必要とされる2つ以上のSNP部位の間の物理的分離の程度は、ゲノムの異なる領域の間で異なり得る。
診断目的および類似の使用に関して、特定のSNP部位が、例えば、CHDもしくは動脈瘤/解離に対する個体の感受性またはスタチン処置に対する個体の応答を推定するために有用であることが見いだされる場合、当業者は、このSNP部位とともにLD中に存在する他のSNP部位がまた、同じ目的のために有用であることを認識する。従って、実際の疾患を引き起こす(原因となる)多型でないが、このような原因となる多型とともにLD中に存在する多型(例えば、SNPおよび/もしくはハプロタイプ)はまた、有用である。このような場合において、上記原因となる多型とともにLDに存在する多型の上記遺伝子型は、上記原因となる多型の遺伝子型の推定であり、結論として、上記原因となるSNPによって影響を及ぼされる表現型(例えば、CHD、動脈瘤/解離、またはスタチン処置に対する応答者/非応答者)の推定である。従って、原因となる多型とともにLD中に存在する多型マーカーは、診断マーカーとして有用であり、実際の原因となる多型が未知である場合に特に有用である。
1以上の原因となる多型とLD(および/または、ある状態と有意な統計的関連性を有する1以上の多型とLD)であり得、それゆえ、その原因となる/関連するSNPが診断のために使用される同じ状態を診断するために有用であり得る、多型の例としては、例えば、その原因となる/関連するSNPと同じ遺伝子、タンパク質コード領域、またはmRNA転写産物コード領域における他のSNP、その原因となる/関連するSNPと同じエキソンまたは同じイントロンにおける他のSNP、その原因となる/関連するSNPと同じハプロタイプブロックにおける他のSNP、その原因となる/関連するSNPと同じ遺伝子間領域における他のSNP、ある原因となる/関連するSNPを有する遺伝子の外側であるがその近く(例えば、遺伝子の境界のいずれかの側(5’または3’)から6kb以内)にあるSNP、などが挙げられる。このような有用なLD SNPは、例えば、表1〜2に開示されるSNPの中から選択され得る。
ヒトのゲノムにおける連鎖不平衡は、以下で総説されている:Wallら、「Haplotype blocks and linkage disequilibrium in the human genome」,Nat Rev Genet.2003年8月;4(8):587−97;Garnerら、「On selecting markers for association studies:patterns of linkage disequilibrium between two and three diallelic loci」,Genet Epidemiol.2003年1月;24(1):57−67;Ardlieら、「Patterns of linkage disequilibrium in the human genome」,Nat Rev Genet.2002年4月;3(4):299−309(erratum in Nat Rev Genet 2002年7月;3(7):566);およびRemmら、「High−density genotyping and linkage disequilibrium in the human genome using chromosome 22 as a model」;Curr Opin Chem Biol.2002年2月;6(1):24−30;Haldane
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上述のように、本発明の1つの局面は、照会SNPから特定のLDの距離にあるSNPがまた、VTを有するかまたはVTを発症する増加した危険性または減少した危険性を同定するための確実なマーカーとして使用され得るという発見である。本明細書において使用される場合、用語「照会SNP」とは、遺伝子型決定の結果および解析、または、本願に記載される実際に行った実施例において例示されるような他の適切な実験方法を用いて、疾患の増加した危険性または減少した危険性に関連することが見出されたSNPをいう。本明細書において使用される場合、用語「LD SNP」とは、本願に記載される計算方法の下で、「照会SNP」とLDであることに起因して、疾患の増加した危険性または減少した危険性に関連するSNPとして特徴付けられたSNPをいう。以下、出願人は、特定のSNPが照会SNPとLDであるかどうかを当業者が決定し得る計算方法を記載する。パラメーターr2は、マーカー間の連鎖不平衡の程度を特徴付けるために、遺伝学の分野において一般に使用される(Hudson,2001)。本明細書において使用される場合、用語「〜とLDである」とは、照会SNPに対し、r2のようなパラメーターの閾値の上で測定される特定のSNPをいう。
現在、ある集団から得られた染色体のサンプルにおいて遺伝子の改変を直接観察することは、通常行われていることである。マーカーAおよびBについて、同じ染色体上に位置する2つの遺伝子マーカーにおいて、遺伝子型のデータを有すると仮定する。さらに、2つの対立遺伝子が、これらの2つのマーカーの各々において分離しており、その結果、対立遺伝子A1およびA2がマーカーAにおいて見出され得、そして、対立遺伝子B1およびB2がマーカーBにおいて見出され得ると仮定する。また、これらの2つのマーカーが、ヒトの常染色体上にあると推定する。特定の個体について試験し、そして、これらの対立遺伝子が、両方のマーカーにおいてヘテロ接合性であることを見出し、その結果、その2つのマーカーの遺伝子型がA1A2B1B2である場合、2つの可能な構成が存在する:問題の個体が、1つの染色体上に対立遺伝子A1B1を有し得、そして、残りの染色体上に対立遺伝子A2B2を有し得る;あるいは、個体は、一方の染色体上に対立遺伝子A1B2を有し得、そして、もう一方の染色体上に対立遺伝子A2B1を有し得る。染色体上の対立遺伝子の配列は、ハプロタイプと呼ばれる。この例において、個体は、ハプロタイプA1B1/A2B2またはA1B2/A2B1を有し得る(より完全な説明については、HartlおよびClark(1989)を参照のこと)。連鎖平衡の概念は、ハプロタイプの頻度を、対立遺伝子の頻度に対して関連付ける。
個体のサンプルが、より大きな集団から選択されると推定する。各々が2つの対立遺伝子を有する上記2つのマーカーを考慮すると、以下の4つの可能なハプロタイプが存在する:A1B1、A1B2、A2B1およびA2B2。以下の式を用いて、これらの4つのハプロタイプの頻度を表す:
P11=freq(A1B1) (1)
P12=freq(A1B2) (2)
P21=freq(A2B1) (3)
P22=freq(A2B2) (4)。
2つのマーカーにおける対立遺伝子の頻度は、異なるハプロタイプの頻度の合計であり、単一のマーカーの対立遺伝子の頻度を2つのマーカーのハプロタイプの頻度に対して関連付ける、類似の式のセットを記述することは簡単である:
p1=freq(A1)=P11+P12 (5)
p2=freq(A2)=P21+P22 (6)
q1=freq(B1)=P11+P21 (7)
q2=freq(B2)=P12+P22 (8)。
各マーカーにおける4つのハプロタイプの頻度と、対立遺伝子の頻度とは、合計して1の頻度にならなければならないことに注意されたい:
P11+P12+P21+P22=1 (9)
p1+p2=1 (10)
q1+q2=1 (11)。
2つのマーカーにおける対立遺伝子の間に相関がない場合、ハプロタイプの頻度は、複合対立遺伝子の積に近似することを予想する。したがって、
これらの近似式(12)〜(15)は、2つのマーカーの間に独立した組み合わせが存在する、すなわち、2つのマーカーにおける対立遺伝子は、一緒に、不規則に生じる、という連鎖平衡の概念を表す。これらは、近似値として表される。なぜならば、連鎖平衡および連鎖不平衡は、代表的には、染色体のサンプルの特性と考えられる概念であり;したがって、これらは、サンプル収集のプロセスに起因して、確率変動に対して感度が高いからである。経験的に、多くの対の遺伝子マーカーが、連鎖平衡であるが、確実に、全ての対が連鎖平衡であるわけではない。
上記の連鎖平衡の概念を確立したので、出願人は、連鎖不平衡(LD)の概念を説明し得る。LDは、連鎖平衡からの逸脱である。A1B1ハプロタイプの頻度が、(12)において数学的に記述された連鎖平衡の仮定の下のA1およびB1についての対立遺伝子の積に近似するので、連鎖平衡からの偏差の量についての単純な指標は、これら2つの量における差、D
D=P11−p1q1 (16)
であり、D=0は、完全な連鎖平衡を示す。D=0からの実質的な偏差は、試験される染色体のサンプルにおけるLDを示す。Dがとり得る最大値および最小値を含めた、Dの多くの特性が、Lewontin(1964)において考察される。数学的には、基本的な代数学を用いて、Dがハプロタイプの観点だけから記述され得ることが示され得る:
D=P11P22−P12P21 (17)。
Dを二乗し、その後、A1、A2、B1およびB2の対立遺伝子の頻度の積で割ることによってDを変換すると、その結果得られるr2と呼ばれる量は、統計学において一般に使用されるピアソンの相関係数の二乗と等価である(例えば、Hoel,1954)。
Dについて、0に近いr
2の値は、サンプルセットにおいて試験される2つのマーカー間の連鎖平衡を示す。r
2の値が増加するにつれて、これら2つのマーカーは連鎖不平衡であるといわれる。r
2がとり得る値の範囲は、0〜1である。r
2=1のとき、これら2つのマーカーにおける対立遺伝子の間には完全な相関が存在する。
さらに、上述の量はサンプル特異的なものである。従って、研究されるサンプルに特異的な表記を公式化する必要がある。ここで考察されるアプローチにおいて、主要な関心となるのは以下の3つの型のサンプルである:(i)疾患に関連する表現型により影響を受ける個体からの染色体のサンプル(症例)、(ii)疾患に関連する表現型により影響を受けない個体から得られた染色体のサンプル(対照)、ならびに(iii)ハプロタイプの構築およびペアワイズの連鎖不平衡の計算のために使用される標準的なサンプルセット。以下に記載される方法の展開において使用される対立遺伝子の頻度について、症例または対照のいずれかのサンプルセットを示すために、さらなるサブスクリプトが追加される。
p1,cs=freq(症例におけるA1) (19)
p2,cs=freq(症例におけるA2) (20)
q1,cs=freq(症例におけるB1) (21)
q2,cs=freq(症例におけるB2) (22)
同様に、
p1,ct=freq(対照におけるA1) (23)
p2,ct=freq(対照におけるA2) (24)
q1,ct=freq(対照におけるB1) (25)
q2,ct=freq(対照におけるB2) (26)。
ロバストな連鎖不平衡の計算には、十分に容認されるサンプルセットが必要であるので、International HapMap Project(The International HapMap Consortium 2003,2005;Thorissonら、2005;McVeanら、2005)から得られるデータが、ペアワイズのr2値の計算のために使用され得る。実際、国際HapMapプロジェクトのために遺伝子型決定されたサンプルは、観察される遺伝的バリエーションのパターンから、十分な数の染色体が試験して有意義かつロバストな結論を導くように、種々のヒト部分集団からの代表例として選択された。Internationa HapMap Projectのウェブサイト(hapmap.org)は、プロジェクトの説明、利用された方法および試験されたサンプルを含む。このようなデータ中に存在するパターンの意味を得るために経験的なデータを試験することも有用である。
ハプロタイプの頻度は、上記の式(18)においては明白な独立変数であった。しかし、2マーカーのハプロタイプの頻度を知るためには、位相が二重ヘテロ接合性サンプルについて決定されることを必要とする。試験されるデータにおいて位相が未知であるとき、遺伝子型データから位相を推論するために種々のアルゴリズムが使用され得る。この問題は、以前に考察されており、その考察においては、A1A2B1B2の2つのSNP遺伝子型を有する二重ヘテロ接合性の個体は、以下の2つの異なる染色体セットのうちの1つを有し得る:A1B1/A2B2またはA1B2/A2B1。ハプロタイプの頻度を推定するための1つのこのようなアルゴリズムは、Dempsterら(1977)によって最初に公式化された、期待値最大化(EM)アルゴリズムである。このアルゴリズムは、しばしば、遺伝子型データからハプロタイプの頻度を推論するために、遺伝学において使用される(例えば、ExcoffierおよびSlatkin、1995;Tregouetら、2004)。2つのSNPについての場合がここで検査されているが、EMアルゴリズムは、対立遺伝子の頻度とサンプルサイズとが小さ過ぎないという条件で、誤差がほとんどないということに注意すべきである。r2値に対するインパクトは、代表的には無視できる。
相関する遺伝子マーカーは情報を共有するので、疾患に関連するSNPマーカーを用いたLDにおけるSNPマーカーの照会もまた、疾患の関連を検出するために十分な検出力を有し得る(LongおよびLangley、1999)。疾患に関連する対立遺伝子を直接見出す検出力と、疾患との関連性を間接的に検出する検出力との間の関係性は、PritchardおよびPrzeworski(2001)によって調査された。真っ直ぐに向かう(straight−forward)偏差において、疾患に関連する遺伝子座と比較して、サンプルサイズが係数
(式(18)の逆数)によって増加される場合、疾患に関連する遺伝子座と連鎖不平衡であるマーカーの遺伝子座において疾患との関連性を間接的に検出する検出力は、疾患に関連する遺伝子座において疾患との関連性を直接検出する検出力とほぼ同じであることが示され得る。
従って、N個のサンプルを有する実験を用いて、疾患との関連性を間接的に検出する検出力を計算した場合、(実際の疾患に感受性のある遺伝子座において)疾患との関連性を直接検出するのと等価な検出力は、およそr2N個のサンプルを用いる実験を必要とする。検出力、サンプルサイズおよび連鎖不平衡の間のこの基本的な関係性を用いて、疾患状態に直接関連するSNPマーカーと連鎖不平衡状態にある遺伝子型決定マーカーが、疾患との関連性を間接的に検出する十分な検出力を有するかどうかを決定する際に有用なr2閾値を導出し得る。
間接的なプロセスによる疾患に関連するマーカーを検出する検出力の導出を開始するために、以下のように有効な染色体サンプルサイズを規定する:
上記式において、N
csおよびN
ctは、それぞれ、二倍体の症例および対照の数である。この式は、症例と対照の数が等価ではない状況を扱うために必要となる。症例と対照のサンプルサイズが等しい場合、すなわち、N
cs=N
ct=Nである場合、染色体の有効数の値は、予想通り、単に、n=2Nである。検出力を、有意性レベルαについて計算させる(その結果、αを下回る従来のP値が、統計的に有意であるとみなされる)。標準的なガウス分布の関数を
例えば、Φ(1.644854)=0.95である。r2の値は、間接的な照会により疾患との関連性を検出する検出力の予め特定された最小量を得るために導出され得る。LD SNPマーカーが、疾患に関連する対立遺伝子を有するものであり得、それゆえ、このアプローチが、全ての間接的なプロセスによる検出力の結果が少なくとも照会したSNPマーカーと同程度に大きいと予測されるような、下界モデルを構成することに注意されたい。
βにより、本当に疾患に関連するマーカーを検出しない誤り率を示す。従って、1−βは、統計学的な検出力の古典的な定義である。Pritchard−Pzreworskiの結果をサンプルサイズへと代入すると、αの有意性レベルにおいて疾患との関連性を検出する検出力は、以下の近似
により与えられ、上記式において、Z
uは、u(u∈(0,1))において評価した標準的な正規累積分布の逆数である。Z
u=Φ
−1(u)(ここで、Φ(Φ
−1(u))=Φ
−1(Φ(u))=uである)。例えば、α=0.05に設定し、従って、1−α/2=0.975である場合、Z
0.975=1.95996が得られる。次に、Tの最小検出力の閾値に等しい検出力を設定し、
そして、r
2について解くと、以下の閾値r
2が得られる:
r
2が、照会SNPと、この照会SNPと種々のレベルのLDにある他の多数のSNPとの間で計算されると仮定する。閾値
は、照会SNPと、潜在的なLD SNPとの間の連鎖不平衡の最小値であり、その結果、LD SNPは、依然として、疾患との関連性を検出するためのT以上の検出力を保持する。例えば、SNP rs200が症例−対照の疾患−関連性研究において遺伝子型決定され、SNP rs200が疾患の表現型と関連することが見出されると仮定する。さらに、1,000個の症例の染色体においては、少数の対立遺伝子の頻度が16%であると見出され、1,000個の対照の染色体においては、少数の対立遺伝子の頻度が10%であると見出されたと仮定する。これらの測度を考慮すると、0.05の有意性レベルにおいて疾患との関連性を検出する検出力は、極めて高い、すなわち、対立遺伝子関連性試験を用いて、およそ98%であったことを、実験前に、推測し得る。式(32)を適用すると、r
2の最小値を計算して、疾患との関連性を間接的に評価し、検出力の閾値レベルについて、SNP rs200における少数の対立遺伝子が、本当に疾患に対する素因であると考えることができる。検出力の閾値レベルを80%に設定するとき、
は、上記のものと同じ有意性レベルおよび染色体の数を与える。従って、rs200が0.489よりも大きいペアワイズのr
2値を有するあらゆるSNPは、80%より大きい疾患との関連性を検出する検出力を有すると期待される。さらに、この結果は、LD SNPが、照会SNP rs200との連鎖不平衡によってのみ疾患に関連付けられるような保存的なモデルを考慮する。
疾患の表現型(例えば、CHDまたは動脈瘤/解離)を有する特定のSNPおよび/またはSNPハプロタイプの寄与または関連は、本発明のSNPを使用して、その遺伝子型を有さない個体と比較して、特定の遺伝子型の結果として検出可能な形質(例えば、CHDまたは動脈瘤/解離)を発現する個体、または、その後に、検出可能な形質(例えば、CHDまたは動脈瘤/解離)を発現する危険性を増加もしくは減少してその遺伝子型を配置する個体を同定し得る、優れた診断試験を開発し得る。本明細書中で使用される場合、診断は、単一のSNPまたは一群のSNPに基づき得る。複数のSNP(例えば、表1および/または表2に提供されるSNPの、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、24、25、30、32、48、50、64、96、100、または、これらの間の任意の数、もしくはこれ以上)の組合せた検出は、代表的に、正確な診断の可能性を増加する。例えば、CHDと相関することが公知の単一のSNPの存在は、個体がCHDを有するか、もしくは、CHDを発症する危険性があるという、20%の可能性を示唆し得るのに対して、各々がCHDと相関する5つのSNPの検出は、個体がCHDを有するか、もしくは、CHDを発症する危険性があるという、80%の可能性を示唆し得る。診断もしくは素因のスクリーニングの精度をさらに高めるために、本発明のSNPの分析は、CHDまたは動脈瘤/解離の他の多型もしくは他の危険因子(例えば、疾患の症状、病理学的特徴、家族歴、食事、環境因子またはライフスタイル因子)の分析と組合せられ得る。
当然、CHDまたは動脈瘤/解離の処置もしくは診断において、本発明は一般に、CHDまたは動脈瘤/解離を発症する危険性のある(または危険性の低い)個体、および/または、CHDまたは動脈瘤/解離に関連する病理の絶対的な同定は提供しないが、むしろ、統計的に有意な関連結果に基づいて、疾患を発症する程度もしくは可能性の特定の増加(または減少)を示唆することは、当業者により理解される。しかし、この情報は、例えば、予防処置を開始するため、または、1つ以上の有意なSNPもしくはSNPハプロタイプを保有する個体に、軽微な臨床症状のような警告的な徴候を予見するため、または、初期段階で状態の処置を同定および開始するために、状態の発生をモニターする、定期的な健康診断を有するために使用され得るものとして、非常に価値がある。適時処置されないと非常に衰弱するかまたは致死である疾患の場合特に、潜在的な素因の知識が、たとえ、この素因が絶対的なものでないとしても、効率的に処置するためのまさに有意な様式に貢献する可能性がある。
本発明の診断技術は、種々の方法論(例えば、ハプロタイプ決定のための個体の染色体の分析を可能にする方法、家族研究、単一精子DNA分析または体細胞ハイブリッドが挙げられる)を採用して、検出可能な形質を発症する危険性の増加もしくは減少に関連するSNPもしくはSNPパターンを試験被験体が有するかどうか、または、個体が特定の多型/変異の結果として検出可能な形質を罹患するかどうかを決定し得る。本発明の診断を用いて分析された形質は、CHDまたは動脈瘤/解離に関連する病理および傷害において通常観察される、任意の検出可能な形質であり得る。
本発明の別の局面は、個体が、1つ以上の形質を発症する危険性がある(または危険性が低い)かどうか、または、個体が、特定の形質が原因となる対立遺伝子もしくは形質が影響を与える対立遺伝子を保有する結果として、1つ以上の形質を発現するかどうかを決定する方法に関連する。これらの方法は一般に、個体から核酸サンプルを得る工程、および、この核酸サンプルをアッセイして、1つ以上のSNP位置にどのヌクレオチドが存在するかを決定する工程を包含し、ここで、アッセイされるヌクレオチドは、形質を発症する危険性の増加もしくは減少の指標、または、個体が、特定の形質が原因となる対立遺伝子もしくは形質が影響を与える対立遺伝子を保有する結果として、1つ以上の形質を発現することの指標である。
別の実施形態において、本発明のSNP検出試薬を用いて、個体が、遺伝子発現(集合的に、細胞もしくは体液の「遺伝子応答」)のレベル(例えば、サンプル中のmRNAもしくはタンパク質の濃度など)またはパターン(例えば、発現の反応速度論、分解速度、安定性プロフィール、Km、Vmaxなど)に影響を及ぼす、1つ以上のSNP対立遺伝子を有するかどうかを決定する。このような決定は、(例えば、核酸アレイ、RT−PCR、TaqManアッセイもしくは質量分析を用いることによって)mRNAもしくはタンパク質の発現をスクリーニングすること、個体において変更された発現を有する遺伝子を同定すること、変更された発現を有する遺伝子の発現に影響を与え得る、表1および/もしくは表2に開示されるSNPの遺伝子型(例えば、変更された発現を有する遺伝子内および/もしくはその周囲にあるSNP、調節/制御領域にあるSNP、変更された発現を有する遺伝子の発現に影響を与え得る経路に関与する他の遺伝子内および/もしくはその周囲にあるSNP、または、遺伝子型が特定され得る全てのSNP)を特定すること、ならびに、SNP遺伝子型を変更された遺伝子発現と相関させることによって達成され得る。この様式において、特定のSNP部位における特定のSNP対立遺伝子は、遺伝子発現に影響を与えると同定され得る。
(薬理ゲノム学および治療学/薬物開発)
本発明は、特定の治療剤もしくは薬学的化合物、またはこのような化合物のクラスに対して、特定のSNP対立遺伝子もしくはハプロタイプを有する被験体の薬理ゲノム学を評価するための方法を提供する。薬理ゲノム学は、臨床的に有意な遺伝性のバリエーション(例えば、SNP)が、影響を受けた人における変化した薬物の性質および/または異常作用に起因する薬物に対する応答において機能する役割を扱う。例えば、Roses、Nature 405、857−865(2000);Gould Rothberg、Nature Biotechnology 19、209−211(2001);Eichelbaum、Clin.Exp.Pharmacol.Physiol.23(10−11):983−985(1996);およびLinder、Clin.Chem.43(2):254−266(1997)を参照のこと。こららのバリエーションの臨床結果は、代謝における個々のバリエーションの結果として、特定の個体における治療用薬物の重篤な毒性、または特定の個体における薬物の治療不全を生じ得る。従って、個体のSNP遺伝子型は、治療用化合物が身体に作用する様式、または身体がその化合物を代謝する様式を決定し得る。例えば、薬物代謝酵素におけるSNPは、これらの酵素の活性に影響を与え得、これは次々に薬物作用の強度および期間の両方、ならびに薬物代謝および薬物浄化に影響を与え得る。
薬物代謝酵素、薬物輸送体、製剤用のタンパク質、および他の薬物標的におけるSNPの発見は、なぜ数名の患者が期待された薬物効果を得ず、過度の薬物効果を示すのか、またはなぜ標準的な薬物投薬量から重篤な毒性を受けるのかを説明してきた。SNPは、代謝の速い人(extensive metabolizer)の遺伝子型、および代謝の遅い人(poor metabolizer)の表現型において発現し得る。従って、SNPは、タンパク質の対立遺伝子改変体をもたらし得、その改変体において、ある集団の1以上のタンパク質機能が、別の集団におけるタンパク質機能と異なる。従って、SNPおよびコードされる改変ペプチドは、処置様式に影響を与え得る遺伝的素因を確認するための標的を提供する。例えば、リガンドベースの処置において、SNPは、リガンド結合においてほぼ活性なアミノ末端細胞外ドメインおよび/またはレセプターの他のリガンド結合領域に対する上昇を与え得、それによって、その後のタンパク質活性化に影響を与える。従って、リガンド投薬量は、必然的に特定のSNP対立遺伝子もしくはハプロタイプを含む所定の集団内の治療効果を最大化するように修正される。
遺伝子タイピング(genotyping)の代替として、代替のSNP対立遺伝子によってコードされる改変アミノ酸配列を含む特定の改変タンパク質が同定され得る。従って、個体の薬理ゲノム的特徴付けは、個々のSNP遺伝子型に基づく予防的用途または治療的用途のために有効な化合物およびそのような化合物の有効投薬量の選択を可能にし、それによって、治療の有効性を増強および最適化する。さらに、特定のSNP/ハプロタイプを含む組み換え細胞およびトランスジェニック動物の作製は、有効な臨床設計ならびに処置化合物および投薬レジメンの試験を可能にする。例えば、トランスジェニック動物は、ヒト疾患感受性遺伝子に対してオルソログな遺伝子における特定のSNP対立遺伝子のみが異なるように作製され得る。
本発明のSNPの薬理ゲノム学的使用は、患者の介護に対して(特に、個体のCHD(例えば、MI)または動脈瘤/解離への素因を予測することにおいて、そして(特に、CHDまたは動脈瘤/解離を処置もしくは予防するために)個体のスタチンの使用に対する反応性することにおいて)いくつかの有意な利点を提供する。個々のSNP遺伝子型に基づく個体の薬理ゲノム学的特徴付けは、特定の医薬での処置に対して応答しそうにない個体を同定し得、それによって、医師が、それらの個体に対して効果のない医薬を処方するのを回避することを可能にする。一方で、個体のSNP遺伝子タイピングは、医師に、個々のSNP遺伝子型に基づいて最も有効な適切な医薬および投薬レジメンを選択することを可能にし得る。この情報は、医薬を処方することにおける医師の信頼を増加させ、そして患者に彼らの薬物レジメンに従うように動機付けする。さらに、薬理ゲノム学は、毒性に対する素因のある患者、および特定の薬物または薬物投薬に対する副作用を同定し得る。薬物副作用は、米国単独で1年あたり100,000件を超える可避可能な死亡をもたらし、従って、入院および死亡の重要な原因、ならびに保健医療システムにおける重要な経済的な負担を表す(Pfostら、Trends in Biotechnology、2000年8月)。従って、本明細書中に開示されるSNPに基づく薬理ゲノム学は、生命を維持することおよび保健医療費を実質的に減少させることの両方に対する可能性を有する。
薬理ゲノム学は、一般的には、Roseら、「Pharmacogenetic analysis of clinically relevant genetic polymorphisms」、Methods Mol Med.2003;85:225−37においてさらに議論されている。アルツハイマー病および他の神経変性障害に関する薬理ゲノム学は、Cacabelos、「Pharmacogenomics for the treatment of dementia」、Ann Med.2002;34(5):357−79、Maimoneら、「Pharmacogenomics
of neurodegenerative diseases」、Eur J Pharmacol.2001年2月9日;413(1):11−29、およびPoirier、「Apolipoprotein E:a pharmacogenetic target for the treatment of Alzheimer’s disease」、Mol Diagn.1999年12月;4(4):335−41において議論されている。心血管疾患に関する薬理ゲノム学は、Siestら、「Pharmacogenomics of drugs affecting the cardiovascular system」、Clin Chem Lab Med.2003年4月;41(4):590−9、Mukherjeeら、「Pharmacogenomics in cardiovascular diseases」、Prog Cardiovasc Dis.2002年5月〜6月;44(6):479−98、およびMooserら、「Cardiovascular pharmacogenetics in the SNP era」、J Thromb Haemost.2003年7月;1(7):1398−402において議論されている。癌に関連する薬理ゲノム学は、McLeodら、「Cancer pharmacogenomics:SNPs、chips、and the individual patient」、Cancer Invest.2003;21(4):630−40、およびWattersら、「Cancer pharmacogenomics:current and future applications」、Biochim Biophys Acta.2003年3月17日;1603(2);99−111において議論されている。
本発明のSNPはまた、CHDまたは動脈瘤/解離に対する新規な治療標的を同定するために使用され得る。例えば、CHDまたは動脈瘤/解離に関連する改変体(「改変遺伝子」)もしくはそれらの産物、ならびにこれらの改変遺伝子もしくはそれらの産物と相互作用することによって直接的もしくは間接的に調節される遺伝子またはそれらの産物を含む遺伝子は、例えば、疾患を処置するかまたは疾患の発症を予防もしくは遅延させる治療剤の開発のために標的化され得る。その治療剤は、例えば、標的遺伝子もしくは遺伝子産物の機能またはレベルを調節する低分子、タンパク質、タンパク質フラグメンもしくはペプチド、抗体、核酸、またはそれらの誘導体もしくは模倣物から構成され得る。
本明細書中で開示されるSNP含有核酸分子、およびそれらの相補的核酸分子は、細胞、組織、および生物における遺伝子発現を制御するためのアンチセンス構築物として使用され得る。アンチセンス技術は、当該分野で十分に確立されており、Antisense
Drug Technology:Principles,Strategies,and Applications,Crooke(編)、Marcel Dekker、Inc.:N.Y.(2001)において広範に概説されている。アンチセンス
核酸分子は、一般的には、遺伝子によって発現されるmRNAの領域に相補的であるように設計され、その結果、アンチセンス分子がmRNAとハイブリダイズし、それによってタンパク質へのmRNAの翻訳をブロックする。種々のクラスのアンチセンスオリゴヌクレオチドが、当該分野で使用され、そのうちの2つが切断剤(cleaver)および遮断剤(blocker)である。切断剤は、標的RNAに結合することによって、その標的RNAを切断する細胞内のヌクレアーゼ(例えば、RNaseHまたはRNaseL)を活性化する。遮断剤(これもまた、標的RNAに結合する)は、リボソームの立体障害を通してタンパク質翻訳を阻害する。例示的な遮断剤としては、ペプチド核酸、モルホリノ、ロックされた核酸(locked nucleic acid)、およびメチルホスホネートが挙げられる(例えば、Thompson、Drug Discovery Today、7(17):912−917(2002))。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、治療剤として直接的に有用であり、そして(例えば、遺伝子ノックアウト実験または遺伝子ノックダウン実験において)遺伝子機能を決定および確認するためにもまた有用である。
アンチセンス技術は、以下:Laveryら、「Antisense and RNAi:powerful tools in drug target discovery and validation」、Curr Opin Drug Discov Devel.2003年7月;6(4):561−9;Stephensら、「Antisense oligonucleotide therapy in cancer」、Curr Opin Mol Ther.2003年4月;5(2):118−22;Kurreck、「Antisense technologies.Improvement through novel chemical modifications」、Eur J Biochem.2003年4月;270(8):1628−44;Diasら、「Antisense oligonucleotides:basic concepts and mechanisms」、Mol Cancer Ther.2002年3月;1(5):347−55;Chen、「Clinical development of antisense oligonucleotides as anti−cancer therapeutics」、Methods Mol Med.2003;75:621−36;Wangら、「Antisense anticancer oligonucleotide therapeutics」、Curr Cancer Drug Targets.2001年11月;1(3):177−96;およびBennett、「Efficiency of antisense oligonucleotide drug discovery」、Antisense Nucleic Acid Drug Dev.2002年6月;12(3):215−24においてさらに概説されている。
本発明のSNPは、特定の核酸改変体に対して特異的なアンチセンス試薬を設計するために特に有用である。本明細書中に開示されるSNP情報に基づいて、アンチセンスオリゴヌクレオチドが、1以上の特定のSNPヌクレオチドを含むmRNA分子を特異的に標的するように生成され得る。この様式において、1以上の望ましくない多型(例えば、欠損タンパク質(例えば、触媒ドメインにおけるアミノ酸置換をもたらすSNPヌクレオチド)を含むmRNA分子の発現は、阻害され得るかまたは完全にブロックされ得る。従って、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、特定の多型形態(例えば、欠損タンパク質をコードするSNP対立遺伝子)に特異的に結合するように使用され得、それによって、この形態の翻訳を阻害するが、代替の多型形態(例えば、正常な機能を有するタンパク質をコードする代替のSNPヌクレオチド)には結合しない。
アンチセンス分子は、遺伝子発現および欠損タンパク質の産生を阻害するために、mRNAを不活性化するように使用され得る。従って、これらの分子は、異常な遺伝子発現もしくは望ましくない遺伝子発現、または特定の欠損タンパク質の発現によって特徴付けられる障害(例えば、CHDまたは動脈瘤/解離)を処置するために使用され得る。この技術は、翻訳されるべきmRNAの能力を減弱する、mRNAにおける1以上の領域に相補的なヌクレオチド配列を含むリボザイムによる切断に関与し得る。考え得るmRNA領域としては、例えば、タンパク質コード領域、特に、タンパク質の触媒活性、基質/リガンド結合、もしくは他の機能的活性に対応するタンパク質コード領域が挙げられる。
本発明のSNPはまた、特定のSNP改変体を有する核酸分子を特異的に標的にするRNA干渉試薬を設計するために有用である。RNA干渉(RNAi)(遺伝子サイレンシングとしてもまた称される)は、遺伝子をオフ(off)にするための二本鎖RNA(dsRNA)分子の使用に基づいている。細胞に導入される場合、dsRNAは、その細胞によって低分子干渉RNA(siRNA)として公知の短いフラグメント(一般的には、長さが約21ヌクレオチド長、22ヌクレオチド長、または23ヌクレオチド長)にプロセシングされ、このsiRNAは、細胞が配列特異的様式で使用して、相補的なRNAを認識し、そして破壊する(Thompson、Drug Discovery Today、7(17):912−917(2002))。したがって、本発明の局面は、約18〜約26ヌクレオチド長(好ましくは、19〜25ヌクレオチド長、より好ましくは20、21、22、もしくは23ヌクレオチド長)の単離された核酸分子、およびRNAiのためのこれらの核酸分子の使用を特に企図する。RNAi分子(siRNAを含む)は配列特異的様式で作用するので、本発明のSNPは、特定のSNP対立遺伝子/ヌクレオチド(例えば、欠損タンパク質の産生をもたらす有害な対立遺伝子)を有する核酸分子を認識し、そして破壊するが、代替のSNP対立遺伝子(例えば、正常な機能を有するタンパク質をコードする対立遺伝子)を有する核酸分子に影響を与えないRNAi試薬を設計するために使用され得る。アンチセンス試薬のように、RNAi試薬は、(例えば、欠損した、疾患を引き起こす遺伝子をターンオフ(turn off)するための)治療剤として、直接的に有用であり得、また、(例えば、遺伝子ノックアウト実験または遺伝子ノックダウン実験において)遺伝子機能を特徴付けし、そして確認するのに有用であり得る。
以下の参考文献は、RNAiのさらなる概説を提供する:Reynolds et al.,「Rational siRNA design for RNA interference,」 Nat Biotechnol 22(3):326−30(Mar.2004);Epub Feb.1,2004;Chi et al.,「Genomewide view of gene silencing by small interfering RNAs,」PNAS 100(11):6343−6346 (2003);Vickers et al.,「Efficient Reduction of Target RNAs by Small Interfering RNA and RNase H−dependent Antisense Agents,:」 J Biol Chem 278:7108−7118(2003)Agami、「RNAi and related mechanisms and their potential use for therapy」、Curr Opin Chem Biol.2002年12月;6(6):829−34;Laveryら、「Antisense and RNAi:powerful tools in drug target discovery and validation」、Curr Opin Drug Discov Devel.2003年7月;6(4):561−9;Shi、「Mammalian RNAi for the masses」、Trends Genet 2003年1月;19(1):9−12)、Shueyら、「RNAi:gene−silencing in therapeutic intervention」、Drug Discovery Today 2002年10月;7(20):1040−1046;McManusら、Nat Rev Genet 2002年10月;3(10):737−47;Xiaら、Nat Biotechnol 2002年10月;20(10):1006−10;Plasterkら、Curr Opin Genet Dev 2000年10月;10(5):562−7;Bosherら、Nat Cell Biol 2000年2月;2(2):E31−6;およびHunter、Curr Biol 1999年6月17日;9(12):R440−2)。
SNPの原因とされる病的状態(例えば、CHDまたは動脈瘤/解離)を有する被験体は、遺伝的欠損を修正する(correct)ように処置され得る(Krenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:10349−10354(1999)を参照のこと)。そのような被験体は、その被験体から取り出された生物学的サンプル中の多型を検出し得る任意の方法によって同定され得る。そのような遺伝的欠損は、そのような被験体にSNPの位置で正常/野生型ヌクレオチドを供給する修復配列を組み込んでいる核酸フラグメントを投与することによって、持続的に修正され得る。この部位特異的修復配列は、被験体のゲノムDNAの内因性修復を促進するように作動するRNA/DNAオリゴヌクレオチドを含み得る。部位特異的修復配列は、適切なビヒクル(例えば、ポリエチレンイミンとの複合体)中で投与されるか、アニオン性リポソーム、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス)もしくは投与された核酸の細胞内取り込みを促進する他の薬学的組成物中にカプセル化される。次いで、キメラオリゴヌクレオチドが被験体のゲノムへの正常配列の取り込みを誘導するにつれて、先天的病理をもたらす遺伝的欠損が克服され得る。取り込みの際に、正常な遺伝子産物が発現され、置換が広められ、それによって、被験体の臨床状態の持続的修復および治療的増強が引き起こされる。
cSNPが、病的状態の原因とされるかまたは病的状態の要因とされる改変タンパク質を生じる場合において、そのような状態を処置する方法は、その病理を有する被験体にその改変タンパク質の野生型同族体/正常同族体を投与する工程を包含し得る。一旦、有効な投薬レジメンで投与されると、野生型同族体は、病理状態の補完または改善を提供する。
本発明はさらに、CHDまたは動脈瘤/解離を処置するために使用され得る化合物または薬剤を同定するための方法を提供する。本明細書中で開示されるSNPは、治療剤の同定および/または開発のための標的として有用である。治療剤または治療用化合物を同定するための方法は、代表的には、その薬剤または化合物がSNP含有核酸またはコードされる産物の活性および/または発現を調節する能力をアッセイする工程、そしてSNP含有核酸またはコードされる産物の所望でない活性または発現によって特徴付けられる障害を処置するために使用され得る薬剤または化合物を同定する工程を包含する。そのアッセイは、細胞ベースのシステムおよび細胞を含まないシステムで実施され得る。細胞ベースのアッセイは、目的の核酸分子を天然に発現する細胞、または特定の核酸分子を発現するように遺伝的に操作された組換え細胞を含み得る。
CHDまたは動脈瘤/解離患者における改変遺伝子発現としては、例えば、SNP含有核酸配列(例えば、SNPを含むmRNA転写物分子に転写され得るSNPを含み、順に改変タンパク質に翻訳され得る遺伝子)、または1以上のSNPに起因して発現が変化する正常/野生型核酸配列(例えば、正常な転写物の発現レベルまたは発現パターンに影響を与えるSNPを含み得る調節/制御領域)の発現のいずれかが挙げられ得る。
改変体遺伝子発現のためのアッセイは、核酸レベル(例えば、mRNAレベル)、発現したタンパク質レベル、またはシグナル伝達経路に関連する対応化合物の直接アッセイを含み得る。さらに、シグナル伝達経路に応じてアップレギュレートもしくはダウンレギュレートする遺伝子の発現もまた、アッセイされ得る。この実施形態において、これらの遺伝子の調節領域は、レポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ)に対して作動可能に連結され得る。
改変体遺伝子発現の調節因子は、例えば、細胞が候補化合物/薬剤と接触され、そしてmRNAの発現が決定される方法において同定され得る。候補化合物の存在下でのmRNAの発現のレベルは、その候補化合物の非存在下でのmRNAの発現のレベルと比較される。次いで、候補化合物は、この比較に基づいて改変体遺伝子発現の調節因子として同定され得、そして本発明の1以上のSNPに起因する改変体遺伝子発現(例えば、SNP含有核酸の発現、または核酸分子の発現に影響を与える1以上のSNPに起因する正常/野生型核酸分子の発現の変化のいずれか)によって特徴付けられる障害(例えば、CHDまたは動脈瘤/解離)を処置するために使用され得る。mRNAの発現が、候補化合物の非存在下よりもその存在下において統計的に有意に大きい場合、その候補化合物は、核酸発現の刺激物質として同定される。核酸発現が候補化合物の非存在下よりもその存在下において統計的に有意に小さい場合、その候補化合物は、核酸発現のインヒビターとして同定される。
本発明はさらに、標的として、改変体核酸発現を調節する遺伝子として薬物をスクリーニングすることを通して同定される化合物を使用して、SNPまたは関連する核酸ドメイン(例えば、触媒ドメイン、リガンド/基質結合ドメイン、調節/制御領域など)または遺伝子、あるいはコードされるmRNA転写物を用いる処置方法を提供する。調節としては、核酸発現のアップレギュレーション(すなわち、活性化または作動化(agonization))あるいはダウンレギュレーション(すなわち、抑制または拮抗化(antagonization))のいずれかが挙げられ得る。
mRNA転写物およびコードされるタンパク質の発現は、野生型でも改変体でも、調節/制御エレメント(例えば、発現を調節するプロモーターまたは転写調節因子結合ドメイン)中の特定のSNP対立遺伝子に伴って個々に変更され得る。この状況において、処置方法および化合物は、本明細書中で議論されるように、改変体調節/制御エレメントを調節または克服し、それによって、野生型タンパク質もしくは改変タンパク質のいずれかの正常または健常な発現レベルを生じることを確認する。
本発明のSNP含有核酸分子はまた、臨床試験または処置レジメンにおいて、改変遺伝子またはコードされる産物の発現もしくは活性における化合物を調節することの有効性をモニタリングするのに有用である。従って、遺伝子発現パターンは、化合物(特に、患者が耐性を発達させ得る化合物)を用いる処置の有効性を持続させることについての指標、ならびに毒性についての指標として役立ち得る。遺伝子発現パターンはまた、その化合物に対して影響を受けた細胞の生理学的応答を示すマーカーとして役立ち得る。従って、そのようなモニタリングは、その化合物の投与の増加、または患者が耐性を生じていない代替の化合物の投与のいずれかを可能にする。同様に、核酸発現レベルが、望ましいレベルより低い場合、その化合物の投与は、相応に減少され得る。
本発明の別の局面において、薬学的パックが提供され、そのパックは、治療剤(例えば、低分子薬物、抗体、ペプチド、アンチセンス核酸分子またはRNAi核酸分子など)、および本発明によって提供される1以上のSNPもしくはSNPハプロタイプについて診断的に試験されるヒトへの治療剤の投与のための指示書のセットを含む。
本発明のSNP/ハプロタイプはまた、薬物開発プロセスの多くの様々な局面を改良するのに有用である。例えば、本発明の局面は、個体のSNP遺伝子型に基づいて、臨床試験のために個体を選択する工程を包含する。例えば、個体がその薬物に対してポジティブにお応答することを示すSNP遺伝子型を有する個体は、その試験に含まれ得、そして個体のSNP遺伝子型が、個体がその薬物に対してあまり応答しそうにないかまたは応答しないことを示すか、あるいは毒性影響または他の副作用に罹患する危険性のある個体は、その臨床試験から除外され得る。このことは、臨床試験の安全性を改善し得るだけでなく、その試験が統計学的に有意な効力を示す機会を高め得る。さらに、本発明のSNPは、特定の以前に開発された薬物が、臨床試験において不十分に実施された理由を説明し得、そして臨床試験において以前に不十分に実施された薬物から恩恵を受ける集団のサブセットを同定する一助となり、それによって、以前に開発された薬物を「救い」、そしてその薬物を、それから恩恵を受け得る特定のCHDまたは動脈瘤/解離患者集団に利用可能にする。
SNPは、薬物発見、薬物スクリーニング、および薬物開発において、多くの重要な用途を有する。潜在的な薬物標的として選択される任意の遺伝子/タンパク質について、その遺伝子/タンパク質の改変体が、患者集団中に存在するという高い確率が存在する。従って、治療剤の選択および送達における遺伝子/タンパク質の改変体の影響を決定することは、薬物発見および薬物開発プロセスの不可欠な局面であるべきである。(Jazwinska,A Trends Guide to Genetic Variation
and Genomic Medicine,2002年3月;S30−S36)。
特定の治療標的(例えば、遺伝子、mRNA転写物、またはタンパク質)の改変体(例えば、SNPおよび任意の対応するアミノ酸多型)に関する知識は、改変体を超える効力を示す治療剤候補(例えば、低分子化合物、抗体、アンチセンス核酸化合物またはRNAi核酸化合物など)を同定するために、改変体のパラレルスクリーニングを可能にする(Rothberg,Nat Biotechnol 2001年3月;19(3):209−11)。このような治療剤候補は、患者集団のより大きいセグメントにわたって等しい効力を示し、それによって、治療剤候補についてのより大きい潜在的な市場をもたらすことが期待される。
さらに、潜在的な治療標的の改変体を同定することは、その標的の最も一般的な形態が、治療剤候補の選択のために使用されることを可能にし、それによって、選択された候補物について観察される実験的な活性が、患者集団の最も大きい集団において期待される実際の活性を反映することを確認する一助となる(Jazwinska,A Trends
Guide to Genetic Variation and Genomic Medicine,2002年3月;S30−S36)。
さらに、標的の全ての公知の改変体に対して治療候補をスクリーニングすることは、特定の改変体に関連した潜在的毒性および有害な反応の早期同定を可能にし得る。例えば、治療標的または薬物代謝遺伝子におけるSNPによって引き起こされる、例えば、薬物の吸収、分布、代謝および排出(ADME)における変動性が同定され得、そしてこの情報は、薬物開発プロセスの間に利用されて、薬物の廃棄における変動性が最小にされ得、そして広範囲の患者集団にわたってより安全である治療薬剤が開発され得る。改変タンパク質および表1〜2に提供されるコード多型核酸分子を含め、本発明のSNPは、当該分野で確立された種々の毒物学的方法(例えば、Current Protocols in Toxicology,John Wiley & Sons,Inc.,N.Y.に記載される方法)に関連して有用である。
さらに、当該分野で公知の任意のタンパク質(またはRNAもしくはDNAのいずれかの核酸分子)を標的とする治療薬剤は、表1に開示される改変タンパク質(または多型核酸分子)と交叉反応し得、それにより、薬物の薬物動態特性に顕著に影響を与え得る。その結果、表1〜2に開示されるタンパク質改変体およびSNP含有核酸分子は、対応する当該分野で公知のタンパク質形態(またはその核酸分子)を標的とする治療薬剤を開発、スクリーニングおよび評価する際に有用である。さらに、上記で考察されるように、特定の薬物標的の全ての多型形態の知識は、この薬物標的のこのような多型形態の大部分または全てに対して有効である治療薬剤の設計を可能にする。
(薬学的組成物およびその投与)
本明細書中に開示される任意のCHD、動脈瘤/解離、および/またはスタチン応答関連タンパク質(およびコードする核酸分子)は、CHD、動脈瘤/解離および関連の病状を処置または予防するための治療標的として用いられ得(またはそれ自体が治療用化合物として直接用いられ得)、そして本開示は、これらの治療標的のいずれかを標的とする(またはそれらから構成される)治療用化合物(例えば、低分子、抗体、治療タンパク質、RNAiおよびアンチセンス分子など)が開発されることを可能にする。
一般に、治療用化合物は、類似の有用性を果たす薬剤についての受け入れられた投与形態のいずれかによって、治療有効量で投与される。本発明の治療用化合物の実際の量、すなわち、有効成分は、多数の要因(例えば、処置すべき疾患の重篤度、被験体の年齢および関連の健康状態、用いられる化合物の効力、投与経路および投与形態、ならびに他の要因)に依存する。
治療有効量の治療用化合物は、例えば、1日あたりレシピエントの体重1kgあたり約0.01〜50mg(好ましくは約0.1〜20mg/kg/日)の範囲であり得る。従って、一例として、70kgのヒトに対する投与については、投薬範囲は、最も好ましくは、1日あたり約7mg〜1.4gである。
一般に、治療用化合物は、以下の経路のうちの任意の1つによって薬学的組成物として投与される:経口投与、全身投与(例えば、経皮投与、鼻腔内投与または坐剤投与)、または非経口投与(例えば、筋肉内投与、静脈内投与または皮下投与)。好ましい投与様式は、苦痛の程度に従って調整され得る、従来の毎日の投薬レジメンを用いた、経口投与様式または非経口投与様式である。経口用組成物は、錠剤、丸剤、カプセル剤、半固体、散剤、徐放性処方物、液剤、懸濁剤、エリキシル剤、エアロゾル剤または任意の他の適切な組成物の形態を採り得る。
処方物の選択は、種々の要因(例えば、薬物の投与形態(例えば、経口投与については、錠剤、丸剤またはカプセル剤の形態の処方物が好ましい)および薬物物質のバイオアベイラビリティ)に依存する。近年、薬学的処方物は、表面積を増大させる、すなわち、粒子サイズを減少させることによってバイオアベイラビリティが増大し得るという原理に基づいて、より乏しいバイオアベイラビリティを示す薬物について特に開発されている。例えば、米国特許第4,107,288号は、活性な物質が高分子の架橋マトリクス上に保持される、10nm〜1,000nmの〜サイズ範囲の粒子を有する薬学的処方物を記載する。米国特許第5,145,684号は、薬物物質が、表面モディファイヤの存在下でナノ粒子(400nmの平均粒子サイズ)まで粉砕され、次いで、液体媒体中に分散されて、顕著に高いバイオアベイラビリティを示す薬学的処方物が得られる、薬学的処方物の生産を記載する。
薬学的組成物は、一般に、少なくとも1つの薬学的に受容可能な賦形剤と組み合わせた治療用化合物から構成される。受容可能な賦形剤は、無毒性であり、投与を補助し、そしてこの治療用化合物の治療的利益に対して有害には影響を与えない。このような賦形剤は、任意の固体、液体、半固体、またはエアロゾル組成物の場合は気体の、当業者に一般的に入手可能である賦形剤であり得る。
固体の薬学的賦形剤としては、デンプン、セルロース、滑石、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、イネ、粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、脱脂粉乳などが挙げられる。液体賦形剤および半固体賦形剤は、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールおよび種々の油(石油起源、動物起源、植物起源もしくは合成起源の油(例えば、落花生油、大豆油、鉱油、胡麻油など)を含む)から選択され得る。(特に注射可能溶液用に)好ましい液体キャリアとしては、水、生理食塩水、水性デキストロースおよびグリコールが挙げられる。
圧縮ガスは、エアロゾル形態で本発明の化合物を分散させるために使用され得る。この目的で適切な不活性ガスは、窒素、二酸化炭素などである。
他の適切な薬学的賦形剤およびそれらの処方物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,E.W.Martin編(Mack Publishing Company,第18版,1990)に記載される。
処方物中のその治療化合物の量は、当業者によって採用される十分な範囲内で変化し得る。代表的には、その処方物は、重量%(wt%)ベースで、処方物全体に基づいて、約0.01〜99.99wt%の治療化合物を含み、そのバランスをとるものは、1種以上の適切な薬学的賦形剤である。好ましくは、その化合物は、約1〜80wt%のレベルで存在する。
治療化合物は、単独で、または他の治療化合物もしくは1種以上の他の活性成分と組み合わせて投与され得る。例えば、CHDまたは動脈瘤/解離関連タンパク質のインヒビターまたは刺激剤は、同じCHDまたは動脈瘤/解離関連タンパク質または異なるCHDまたは動脈瘤/解離関連タンパク質の活性を阻害するかまたは刺激する別の薬剤と組み合わせて投与されて、それによりCHDまたは動脈瘤/解離の影響に対抗し得る。
薬理学に関するさらなる情報については、Current Protocols in Pharmacology,John Wiley&Sons,Inc.,N.Y.を参照のこと。
(ヒト識別適用)
CHD、動脈瘤/解離病理学および関連病理学におけるそれらの診断用途および治療用途、および予防用途、ならびに薬物処置(特にスタチン処置)への応答性の予測に加えて、本発明により提供されるSNPはまた、法医学、親子鑑定、および生物測定法(例えば、Gill,「An assessment of the utility of single nucleotide polymorphisms(SNPs) for forensic purposes」,Int J Legal Med.2001;114(4−5):204−10を参照のこと)のような適用のためのヒト識別マーカーとして有用である。個体間の核酸配列における遺伝的変動は、個体を識別し、生物学的サンプルと個体とを識別するために遺伝マーカーとして使用され得る。どのヌクレオチドが個体におけるSNP位置のセットを占めるかという決定は、その個体を区別するSNPマーカーのセットを識別する。分析されるSNP位置が多いほど、1個体におけるSNPのセットが、関連しない個体におけるSNPのセットと同じである確率は、低くなる。好ましくは、複数の部位が分析される場合、その部位は、連鎖していない(すなわち、独立して遺伝する)。従って、SNPの好ましいセットは、本明細書中に開示されるSNPの中から選択され得、これらのSNPとしては、異なる染色体上のSNP、異なる染色体アーム上のSNP、および/または同じ染色体アームに沿って実質的な距離だけ離れて分散されるSNPが挙げられ得る。
さらに、本明細書中に開示されるSNPの中でも、特定の法医学的適用/ヒト識別適用における使用に好ましいSNPとしては、縮重コドン位置(すなわち、2以上の選択的ヌクレオチドのうちの1つであり得、同じアミノ酸をなおコードし得る特定のコドンにおける三番目の位置)に位置するSNPが挙げられる。なぜなら、これらのSNPは、コードされるタンパク質に影響を及ぼさないからである。そのコードされるタンパク質に影響を及ぼさないSNPは、少ない選択圧下にあると予測され、よって、集団中でより多型性であると予測され、これは、代表的には、法医学適用/ヒト識別適用の利点である。しかし、特定の法医学適用/ヒト識別適用(例えば、DNAサンプルから表現型的特性を推測する(個体の家系を推論するかまたはその個体の1種以上の物理的特性を推論する))に関して、そのコードされるタンパク質に影響を及ぼすSNPを利用することは望ましいことであり得る。
表1〜2(これは、「Applera」SNPソースと識別される)に開示されるSNPの多くについては、表1〜2は、39個体に由来する染色体のDNAを再配列決定することによって得られたSNP対立遺伝子頻度を提供する(表1〜2はまた、「Celera」ソースSNP、利用可能な場合、dbEST、HGBASE、および/またはHGMDからの公的なSNPについての対立遺伝子頻度情報を提供する)。表1〜2に提供されるその対立遺伝子頻度は、これらのSNPが、ヒト識別適用のために容易に使用されるようにし得る。表1および/または表2に開示される任意のSNPは、ヒト識別のために使用され得るが、特定のSNP部位における少数の対立遺伝子の頻度が、50%に近くなるほど、そのSNPが、集団中の異なる個体の間を区別する能力が大きくなる。なぜなら、2つの無作為に選択された個体が、そのSNP部位において異なる対立遺伝子を有する可能性は、興味深いことに高くなるからである。表1〜2に提供されるSNP対立遺伝子頻度を使用すると、当業者は、その少数の対立遺伝子の頻度が、例えば、少なくとも1%、2%、5%、10%、20%、25%、30%、40%、45%、または50%であるか、あるいはその間の任意の他の頻度であるSNPのサブセットを容易に選択し得る。従って、表1〜2は、39個体に由来する染色体の再配列決定に基づいて対立遺伝子頻度を提供するので、SNPのサブセットは、ヒト識別について容易に選択され得、そのサブセットにおいて、特定のSNP部位における少数の対立遺伝子の総対立遺伝子数は、例えは、少なくとも1個、2個、4個、8個、10個、16個、20個、24個、30個、32個、36個、38個、39個、40個、またはその間の任意の他の数である。
さらに、表1〜2はまた、広い対立遺伝子頻度情報と合わせて個体群(民族群または人種群と本明細書中で交換可能にいわれる)情報を提供する。例えば、39個体の群(DNAを再配列決定した)を、20名の白人および19名のアフリカ系アメリカ人で構成した。この個体群情報は、ヒト識別のためのSNP選択をさらに精緻にし得る。例えば、ヒト識別についての好ましいSNPは、白人集団およびアフリカ系アメリカ人集団の両方において類似の対立遺伝子頻度を有する表1〜2から選択され得る;従って、例えば、両方の集団において等しく高い識別能を有するSNPが選択され得る。あるいは、白人集団とアフリカ系アメリカ人集団との間で対立遺伝子頻度は統計学的に有意に異なる(極端な例として、特定の対立遺伝子が、白人個体群またはアフリカ系アメリカ人個体群のいずれかでのみ観察され得るが、他方の個体群においては観察されない)SNPが選択され得る;このようなSNPは、例えば、ある犯罪現場で回収された生物学的サンプル(例えば、毛髪または血痕)から、未知の加害者の人種/民族を推定するために有用である。統計学的方法を含め、SNPを使用して、DNAサンプルから家系を推定するという議論については、Frudakisら、「A Classifier for the SNP−Based Inference of Ancestry」,Journal of Forensic Sciences 2003;48(4):771−782を参照のこと。
SNPは、短い直列反復(STR)のような多型マーカーの他のタイプより多くの利点を有する。例えば、SNPは、容易にスコア付けされ得、自動化しやすく、このことにより、SNPは、大規模な法医学的データベースについて選択されたマーカーにされる。SNPは、反復多型よりもゲノム全体を通して遙かに多く見出される。2つの多型形態の集団頻度は、通常、複数対立遺伝子座における複数の多型形態のものよりも高い正確性で決定され得る。SNPは、反復多型よりも変異として安定である。SNPは、分析を妨害し得る人工産物(例えば、スタッターバンド(stutter band))に感受性でない。スタッターバンドは、反復多型を分析する場合に頻繁に遭遇し、サンプル(例えば、多数の供給源に由来するDNAの混合物を含み得る犯行現場サンプル)を分析する場合に、特に煩わしい。STRマーカーを超えるSNPマーカーの別の有意な利点は、SNPをスコア付けするために必要な核酸の長さがより短いことである。例えば、STRマーカーは、一般に、長さが数百塩基対である。他方、SNPは、単一のヌクレオチド、一般には、プライマーおよび/またはプローブ結合のためのSNP位置のいずれかの側の短い保存領域を含む。これは、SNPを、DNAが、短い小片にフラグメント化され得る、法医学的ケースワークにおいて頻繁に遭遇する高度に分解した、または時間が経った生物学的サンプルにおける型決定により扱いやすくする。
SNPはまた、STR遺伝子座を分析する場合に頻繁に遭遇する微小改変体(microvariant)および「オフラダー(off−ladder)」対立遺伝子になりにくい。微小改変体は、増幅されたDNA生成物のサイズを変化させる反復単位内の欠失または挿入であり、その結果、その増幅された生成物は、正常サイズの反復単位を有する参照対立遺伝子と同じ速度で移動しない。サイズによって(例えば、ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動によって)分離される場合、微小改変体は、標準サイズの反復単位の参照対立遺伝子ラダーと整列しないが、むしろ、参照対立遺伝子の間に移動する。その参照対立遺伝子ラダーは、対立遺伝子分類のために対立遺伝子の正確なサイズ分けのために使用される;従って、参照対立遺伝子ラダーと整列しない対立遺伝子は、実質的な分析の問題をもたらす。さらに、複数対立遺伝子の反復多型を分析する場合、ときおり、その集団中であらかじめ認められるよりも多いかまたは少ない反復単位、あるいは参照対立遺伝子ラダーに含まれるよりも多いかまたは少ない反復単位からなる対立遺伝子が見出される。これらの対立遺伝子は、参照対立遺伝子ラダーにおける既知の対立遺伝子のサイズ範囲の外側に移動し、そのために、「オフラダー」対立遺伝子といわれる。極端な場合、その対立遺伝子は、ごく少数の反復しか含まないかまたは非常に多くの反復を含み得るので、それは、その参照対立遺伝子ラダーの範囲の十分外に移動する。この状況において、その対立遺伝子は、観察すらされないかもしれないか、または、多重分析を用ると、別の遺伝子座についてのサイズ範囲内にまたはそのサイズ範囲近くに移動し得、さらに分析を混乱させる。
SNP分析は、STR分析において遭遇する微小改変体およびオフラダー対立遺伝子の問題を回避する。重要なことに、微小改変体およびオフラダー対立遺伝子は、顕著な問題を生じ得、そして特定の既知の対立遺伝子に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを利用する、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションアレイのような分析法を使用する場合に、完全に見逃され得る。さらに、STR分析で遭遇するオフラダー対立遺伝子および微小改変体は、たとえ正しく型分類されたとしても、不適切な統計学的分析をもたらし得る。なぜなら、その集団中のそれらの頻度は、一般に、未知であるかまたは特徴付けが乏しく、よって、その適合する遺伝子型の統計学的有意性には疑問が残り得る。SNP分析の全てのこれらの利点は、大部分のDNA識別例の結論(個体の終身刑、または死亡した個体の家族に対する遺体の再関連づけをもたらし得る)に鑑みて、注目に値する。
DNAは、生物学的サンプル(例えば、血液、骨、毛髪、唾液、または精液)から単離され得、特定のSNP位置における参照供給源からのDNAと比較され得る。複数のSNPマーカーは、適合している遺伝子型の識別能および統計学的有意性を増大させるために、同時にアッセイされ得る。例えば、オリゴヌクレオチドアレイは、多数のSNPを同時に遺伝子型決定するために使用され得る。本発明により提供されるSNPは、個体を識別するか、または特定の生物学的サンプルと個体を関連づけるために、他の多型遺伝マーカー(例えば、当該分野で公知の他のSNP)またはSTRと組み合わせてアッセイされ得る。
さらに、本発明により提供されるSNPは、DNA遺伝子型のデータベース(例えば、犯罪者DNAデータバンク(例えば、FBIのCombined DNA Index System(CODIS)データベース))中に含めるために遺伝子型決定され得る。次いで、未知の供給源の生物学的サンプルから得られた遺伝子型が、適合している遺伝子型を見出すためにデータベースに対して問い合わせられ得、本発明のSNPは、そこで既知のDNA配列および未知のDNA配列を同一性について比較するヌクレオチド位置を提供する。従って、本発明は、例えば、法医学的適用、生物測定法適用、または他のヒト識別適用において使用するために、本発明の新規なSNPまたはSNP対立遺伝子を含むデータベース(例えば、そのデータベースは、集団の個々のメンバーが、本発明の1以上の新規なSNP部位において、どの対立遺伝子を保有するかを示す情報を含み得る)を提供する。このようなデータベースは、代表的には、本発明のSNPまたはSNP対立遺伝子が、コンピューター読み取り可能な媒体上に記録される、コンピューターベースのシステムを含む。
本発明のSNPはまた、親子鑑定において使用するためにアッセイされ得る。親子鑑定の目的は、通常、ある男性が子供の父親であるか否かを決定することである。大部分の例において、その子供の母親は、既知であり、よって、その子供の遺伝子型に対する母親の寄与が追跡され得る。親子鑑定は、その母親に帰さない子供の遺伝子型の一部が、推定の父親の遺伝子型と一致するか否かを調査する。親子鑑定は、その推定の父親およびその子供における多型のセットを分析することによって行われ得、本発明のSNPは、ここで同一性についてその推定の父親および子供のDNA配列を比較するためのヌクレオチド位置を提供する。その父親に帰する、子供における多型のセットが、その推定の父親の多型のセットと適合しない場合、実験誤差を除いて、その推定の父親が、その子供の父親でないと結論づけられ得る。その父親に帰する子供における多型のセットが、推定の父親の多型のセットと適合する場合、統計学的計算は、偶然一致した適合の可能性、および推定の父親がその子供の真の生物学的父親であるという可能性に関して引き出される結論を決定するために行われ得る。
親子鑑定に加えて、SNPは、血族鑑定の他の型についても(例えば、移民目的の家族関係を確証するため、またはある個人が、死亡した個人からの相続を主張するために、その死亡した個人の血縁関係にあると主張する場合のため、など)に有用である。親子鑑定および他の型の血族鑑定についてのSNPの有用性に関するさらなる情報に関しては、統計学的分析のための方法を含め、Krawczak,「Informativity assessment for biallelic single nucleotide polymorphisms」,Electrophoresis 1999 Jun;20(8):1676−81を参照のこと。
ヒト識別のための本発明のSNPの用途は、生物測定系と一般にいわれる種々の鑑定システムにさらに拡張し、代表的には、ヒト(または他の生物)の物理的特性をデジタルデータに変換する。生物測定系は、このような独自の解剖学的または生理学的特性(人差し指、親指の指紋または掌紋;手の形状;手の甲側の静脈パターン;網膜の血管パターンならびに虹彩の色および外観;顔の特徴;声のパターン;サインおよびタイピングの強弱;ならびにDNAとして)を測定する種々の技術的デバイスを含む。このような生理学的測定値は、同一性を確認し、例えば、その識別に基づいて、アクセスを制限または許容するために使用され得る。生物測定法のための適用の例としては、物理的区域のセキュリティー、コンピューターおよびネットワークのセキュリティー、航空機乗客のチェックインおよび搭乗手続、金銭取引、医療記録アクセス、政府機関配電、投票、法執行、パスポート、査証および入国管理、刑務所、種々の軍事的用途、ならびに高価なもしくは危険な品物(例えば、自動車もしくは銃)へのアクセス制限目的(例えば、O’Connor,Stanford Technology Law Reviewおよび米国特許第6,119,096号を参照のこと)が挙げられる。
SNP(特に、本発明によって提供されるSNP)の群は、生物測定法適用(例えば、上記のもの)のために個体を固有に識別するために、分類され得る。このようなSNP分類は、例えば、DNAチップ/アレイを用いて、達成され得る。好ましくは、DNAサンプルを取得するための最小限に侵襲性の手段が利用される。例えば、PCR増幅により、頬内のぬぐい液または指紋(これらは、DNA含有皮膚細胞および接触する間に自然に移った油を含む)から、分析に十分な量のDNAを得られるようになる。
法医学的/ヒト識別適用においてSNPを使用するための技術に関するさらなる情報は、例えば、Current Protocols in Human Genetics,John Wiley&Sons,N.Y.(2002),14.1−14.7に見出され得る。
(改変タンパク質、抗体、ベクターおよび宿主細胞、ならびにその使用)
(SNP含有核酸分子によりコードされる改変タンパク質)
本発明は、SNP含有核酸分子を提供し、その多くは、当該分野で公知の(すなわち、野生型)タンパク質と比較して、改変体アミノ酸配列をコードするタンパク質をコードする。本発明の多型核酸分子によりコードされるアミノ酸配列は、表1において配列番号2として参照され、そして配列表において提供される:これらの改変体は、一般に、本発明の改変タンパク質/ペプチド/ポリペプチド、または多型タンパク質/ペプチド/ポリペプチドといわれる。用語「タンパク質」、「ペプチド」、および「ポリペプチド」は、交換可能に本明細書中で使用される。
本発明の改変タンパク質は、例えば、本明細書中に開示されるcSNP位置のいずれか1つにおいて非類似のヌクレオチド置換によってコードされ得る。さらに、改変タンパク質はまた、発現、構造、および/または機能が本明細書中で開示されるSNP(例えば、終止コドンを作り出すまたは破壊するSNP、スプライシングに影響を及ぼすSNP、および制御エレメント/調節エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、または転写因子結合ドメイン)におけるSNP)によって改変されるタンパク質が挙げられ得る。
本明細書中で使用される場合、タンパク質またはペプチドは、細胞物質も化学的前駆物質も他の化学物質も実質的に含まない場合に、「単離される」または「精製される」といわれる。本発明の改変タンパク質は、均質にまで、または他のより低い純度まで精製され得る。精製のレベルは、意図される用途に基づく。その重要な特徴は、その調製物が、他の成分のかなりの量が存在しても、改変タンパク質の望ましい機能を与えることである。
本明細書中で使用される場合、「細胞物質を実質的に含まない」とは、約30%(乾燥重量で)の他のタンパク質(すなわち、夾雑タンパク質)、約20%未満の他のタンパク質、約10%未満の他のタンパク質、または約5%未満の他のタンパク質を有する、その改変タンパク質の調製物を包含する。その改変タンパク質が組換え生成される場合、それはまた、培養培地を実質的に含まないことであり得る(すなわち、培養培地は、そのタンパク質調製物の容量の約20%未満を表す)。
語句「化学前駆物質も他の化学物質も実質的に含まない」は、改変タンパク質の合成に関与する化学前駆物質または他の化学物質から分離されている、その改変タンパク質の調製物を包含する。一実施形態において、語句「化学前駆物質も他の化学物質も実質的に含まない」は、約30%(乾燥重量で)未満の化学前駆物質もしくは他の化学物質または約20%未満の化学前駆物質もしくは他の化学物質、約10%未満の化学前駆物質または他の化学物質、または約5%未満の化学前駆物質もしくは他の化学物質を有する、その改変タンパク質の調製物を包含する。
単離された改変タンパク質は、その改変タンパク質を天然に発現する細胞から精製され得るか、これを発現するように改変された細胞(組換え宿主細胞)から精製され得るか、または公知のタンパク質合成方法を使用して合成され得る。例えば、SNPを含有する、改変タンパク質をコードする核酸分子は、発現ベクターにクローニングされ得、その発現ベクターは、宿主細胞に導入され得、およびその改変タンパク質は、その宿主細胞において発現され得る。次いで、その改変タンパク質は、標準的なタンパク質精製技術を使用して、任意の適切な精製スキームによってその細胞から単離され得る。これらの技術の例は、以下に詳細に記載される(Sambrook and Russell,2000,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY)。
本発明は、本発明のSNPを含む1以上のコドンによってコードされる1以上の改変体アミノ酸を含むアミノ酸配列を含むか、またはこれらからなるか、またはこれらから本質的になる単離された改変タンパク質を提供する。
従って、本発明は、表1および/または表2に提供されるSNPによってコードされる1以上のアミノ酸多型(または終止コドンの生成または破壊にそれぞれ起因する、短縮または伸長)を含むアミノ酸配列からなる改変タンパク質を提供する。タンパク質は、そのアミノ酸配列は、そのタンパク質のアミノ酸配列全体である場合に、アミノ酸配列からなる。
本発明は、表1および/または表2に提供されるSNPによってコードされる1以上のアミノ酸多型(または終止コドンの生成もしくは破壊にそれぞれ起因する、短縮もしくは伸長)を含むアミノ酸配列から本質的になる改変タンパク質をさらに提供する。タンパク質は、アミノ酸配列が、最終的なタンパク質中にわずか数個のさらなるアミノ酸残基とともに存在する場合、このようなアミノ酸配列から本質的になる。
本発明は、表1および/または表2に提供されるSNPによってコードされる1以上のアミノ酸多型(または終止コドンの生成または破壊にそれぞれ起因する短縮または伸長)を含むアミノ酸配列を含む改変タンパク質をさらに提供する。タンパク質は、アミノ酸配列が、そのタンパク質の最終的なアミノ酸配列の少なくとも一部である場合に、そのアミノ酸配列を含む。このようにして、そのタンパク質は、その改変体アミノ酸配列のみを含んでいてもよいし、さらなるアミノ酸残基(例えば、そのタンパク質と天然に関連しているか、または異種アミノ酸残基である、連続したコードされる配列)を有していてもよい。このようなタンパク質は、数個のさらなるアミノ酸残基を有し得るか、または多くのさらなるアミノ酸を含み得る。これらのタンパク質のどの程度種々の型が作製されかつ単離され得るかの簡単な説明は、以下に提供される。
本発明の改変タンパク質は、キメラタンパク質または融合タンパク質を形成するために、異種配列に結合され得る。このようなキメラタンパク質および融合タンパク質は、改変タンパク質に実質的に相同でないアミノ酸配列を有する異種タンパク質に作動可能に連結されたその改変タンパク質を含む。「作動可能に連結される」とは、その改変タンパク質およびその異種タンパク質についてのコード配列が、インフレームで連結されることを示す。その異種タンパク質は、その改変タンパク質のN末端またはC末端に融合され得る。別の実施形態において、その融合タンパク質は、自動化DNA合成機を含む従来の技術によって合成される融合ポリヌクレオチドによってコードされる。あるいは、遺伝子フラグメントのPCR増幅は、2つの連続した遺伝子フラグメントの間に相補的な突出部(overhang)を生じる別のプライマーを使用して行われ得、これらのフラグメントは、その後、キメラ遺伝子配列を生成するためにアニールおよび再増幅され得る(Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology,1992を参照のこと)。さらに、多くの発現ベクターが、市販されており、これらはすでに融合部分(例えば、GSTタンパク質)をコードしている。改変タンパク質をコードする核酸は、その融合部分がその改変タンパク質にインフレームで連結されるように、このような発現ベクターにクローニングされ得る。
多くの場合、その融合タンパク質は、その改変タンパク質の活性に影響を及ぼさない。その融合タンパク質としては、酵素融合タンパク質(例えば、β−ガラクトシダーゼ融合物)、酵母ツーハイブリッドGAL融合物、ポリ−His融合物、MYCタグ化融合物、HIタグ化融合物およびIg融合物が挙げられるが、これらに限定されない。このような融合タンパク質(特に、ポリ−His融合物)は、組換え発現後のそれらの精製を容易にし得る。特定の宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞)において、タンパク質の発現および/または分泌は、異種シグナル配列を使用することで増大され得る。融合タンパク質は、例えば、Terpe,「Overview of tag protein fusions:from molecular and biochemical fundamentals to commercial systems」,Appl Microbiol Biotechnol.2003 Jan;60(5):523−33.Epub 2002 Nov 07;Graddisら,「Designing proteins that work using recombinant technologies」,Curr Pharm Biotechnol.2002 Dec;3(4):285−97;およびNilssonら,「Affinity fusion strategies for detection,purification,and
immobilization of recombinant proteins」,Protein Expr Purif.1997 Oct;11(1):1−16にさらに記載される。
本発明はまた、本発明の改変体ポリペプチドのさらに明らかな改変体(例えば、天然に存在する成熟形態(例えば、対立遺伝子改変体)、天然に存在しない組換え由来改変体、ならびに配列相同性を共有するこのようなタンパク質のオルソログおよびパラログ)に関する。このような改変体は、組換え核酸技術およびタンパク質生化学の分野における分野で公知の技術を使用して容易に生成され得る。しかし、改変体は、本発明より前の先行技術において公知であるものを除くことが理解される。
表1に開示される改変体ポリペプチドのさらなる改変体は、表1に開示されるアミノ酸配列(またはそれらのフラグメント)と少なくとも70〜80%、80〜85%、85〜90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を共有し、かつ表1に開示される新規なアミノ酸残基(対立遺伝子)(新規SNP対立遺伝子によってコードされる)を含むアミノ酸配列を包含し得る。従って、詳細に企図される本発明の局面は、表1に示されるポリペプチド配列と比較して、ある程度の配列の変化を有するが、本明細書中に開示される新規SNP対立遺伝子によってコードされる新規アミノ酸残基(対立遺伝子)を含む、ポリペプチドである。言い換えると、ポリペプチドが本明細書中に開示される新規なアミノ酸残基を含む限りにおいて、その新規なアミノ酸残基に隣接するポリペプチドの他の部分は、表1に示されるポリペプチド配列からある程度変化し得る。
本明細書中に開示されるアミノ酸配列のうちの1つを含むタンパク質の全長の予めプロセシングされた形態、ならびに成熟プロセシング形態は、本発明の改変タンパク質のうちの1つに対して完全な配列同一性を有し、本明細書中に提供される改変タンパク質と同じ遺伝子座によってコードされると容易に同定され得る。
改変体ペプチドのオルソログは、改変体ペプチドの少なくとも一部に対してある程度有意な配列相同性/同一性を有し、別の生物に由来する遺伝子によってコードされると容易に同定され得る。好ましいオルソログは、ヒト治療標的および因子の開発のために、非ヒト哺乳動物(好ましくは、霊長類)から単離される。このようなオルソログは、そのオルソログタンパク質を生じる2つの生物の関連性の程度に依存して、中程度からストリンジェントな条件下で、改変体ペプチドコード核酸分子にハイブリダイズする核酸配列によってコードされ得る。
改変タンパク質としては、本発明のSNPによって引き起こされる、アミノ酸配列における欠失、付加および置換を含むタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。1つのクラスの置換は、ポリペプチド中の所定のアミノ酸が類似の特性の別のアミノ酸で置換される、保存的アミノ酸置換である。代表的な保存的置換は、脂肪族アミノ酸の中では、Ala、Val、Leu、およびIleの1つを別のアミノ酸で置換すること;ヒドロキシル残基SerとThrとの交換;酸性残基AspとGluとの交換;アミド残基AsnとGlnとの間の置換;塩基性残基LysとArgとの交換;ならびに芳香族残基PheとTyrとの置換である。どのアミノ酸変化が表現系的にサイレントであり得るかに関してのガイダンスは、例えば、Bowieら,Science 247:1306−1310(1990)において見出される。
改変タンパク質は、1つ以上の活性(例えば、別の分子に結合する能力、基質に触媒作用を及ぼす能力、シグナル伝達を媒介する能力など)において十分に機能的であり得るか、またはこれらの活性において機能を欠き得る。十分に機能的な改変体は、代表的には、保存的改変または重要でない残基または重要でない領域における改変を含む。機能的な改変体はまた、機能において何の変化ももたらさないか、またはわずかな変化しかもたらさない、類似のアミノ酸の置換を含み得る。あるいは、このような置換は、ある程度まで、機能に正にまたは負に影響を及ぼし得る。非機能的改変体は、代表的には、1つ以上の非保存的アミノ酸置換、欠失、挿入、逆位、短縮もしくは伸長、または重要な残基もしくは重要な領域における置換、挿入、逆位、もしくは欠失を含む。
タンパク質の機能のために必要不可欠なアミノ酸は、当該分野で公知の方法(例えば、部位特異的突然変異誘発またはアラニン走査突然変異誘発(Cunninghamら、Science 244:1081−1085(1989)))によって、特に、表1に提供されるアミノ酸配列および多型情報を用いて同定され得る。後者の手順は、分子中の全ての残基において単一のアラニン変異を誘発する。次いで、生じる変異体分子は、生物活性(例えば、酵素活性)について試験されるか、またはアッセイ(例えば、インビトロ増殖活性)で試験される。結合パートナー/基質結合について重要な部位はまた、構造分析(例えば、結晶化、核磁気共鳴または光アフィニティーラベリング)によって決定され得る(Smithら、J.Mol.Biol.224:899−904(1992);de
Vosら、Science 255:306−312(1992))。
ポリペプチドは、20種の天然に生ずるアミノ酸と一般的に言われる20種のアミノ酸以外のアミノ酸を含み得る。さらに、多くのアミノ酸(末端アミノ酸を含む)は、天然のプロセス(例えば、プロセシングおよび他の翻訳後修飾)によって、または当該分野で周知の化学的修飾技術によって修飾され得る。従って、本発明の変異タンパク質はまた、誘導体またはアナログを含み、この誘導体またはアナログにおいては、置換されたアミノ酸残基は、遺伝暗号によってコードされるものでないか、置換基が含まれるか、成熟ポリペプチドが別の化合物(例えば、ポリペプチドの半減期を増加させる化合物(例えば、ポリエチレングリコール))と融合されるか、または、さらなるアミノ酸がこの成熟ポリペプチド(例えば、リーダー配列もしくは分泌配列またはこの成熟ポリペプチドの精製のための配列あるいはプロタンパク質配列)に融合される。
公知のタンパク質修飾としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、γカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセシング、ホスホリル化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、タンパク質へのアミノ酸の転移RNA媒介性付加(例えば、アルギニル化)、およびユビキチン化。
このようなタンパク質修飾は、当業者に周知であり、科学文献に非常に詳細に記載されている。特に一般的な修飾、例えば、グリコシル化、脂質結合、硫酸化、グルタミン酸残基のγカルボキシル化、ヒドロキシル化およびADPリボシル化は、以下の最も基本的な教科書に記載される:例えば、Proteins−Structure and Molecular Properties,第2版,T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company,New York(1993);Wold,F.,Posttranslational Covalent Modification of Proteins,B.C.Johnson(編),Academic Press,New York 1−12(1983);Seifterら,Meth.Enzymol.182:626−646(1990);およびRattanら,Ann.N.Y.Acad.Sci.663:48−62(1992)。
本発明は、変異タンパク質のフラグメントをさらに提供する。このフラグメントは、本明細書中に開示される1つ以上のSNPによってコードされる、1つ以上のアミノ酸配列改変体(例えば、置換、または停止コドンの作製もしくは破壊に起因する切断または伸長)を含む。しかし、本発明が関係するフラグメントは、本発明の前の先行技術で開示されているフラグメントを包含するようには解釈されない。
本明細書中で使用される場合、フラグメントは、改変タンパク質由来の、少なくとも約4、少なくとも約8、少なくとも約10、少なくとも約12、少なくとも約14、少なくとも約16、少なくとも約18、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約50、少なくとも約100(もしくは合間の任意の他の数)またはそれ以上連続するアミノ酸残基を含み得る。ここで、少なくとも1つのアミノ酸残基(例えば、本発明によって提供されるcSNP位での非同義ヌクレオチド置換によってコードされる改変体アミノ酸残基)は、本発明のSNPによって影響を受ける。cSNPによってコードされる改変体アミノ酸は、フラグメントの配列に沿って任意の残基位置を占め得る。このようなフラグメントは、改変タンパク質の1つ以上の生物活性を保持する能力、または機能を行う(例えば、免疫原として作用する)能力に基づいて選択され得る。特別に重要なフラグメントは、生物活性フラグメントである。このようなフラグメントは、代表的には、本発明の改変タンパク質のドメインもしくはモチーフ(例えば、活性部位、膜貫通ドメイン、またはリガンド/基質結合ドメイン)を含む。他のフラグメントとしては、ドメイン含有フラグメントまたはモチーフ含有フラグメント、可溶性ペプチドフラグメント、および免疫原構造を含むフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。予想されるドメインおよび機能的部位は、当業者に周知のコンピュータープログラムによって容易に同定可能である(例えば、PROSITE分析)(Current Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,N.Y.(2002))。
(改変タンパク質の使用)
本発明の改変タンパク質は、種々の方法で使用され得る以下が挙げられるが、これらに限定されない:改変タンパク質の生物活性を決定するためのアッセイ(例えば、高処理能力スクリーニングのための複数タンパク質の一団におけるアッセイ)において使用され得る;抗体を産生させるか、または別の型の免疫応答を誘発するため使用され得る;生体液中の改変タンパク質(またはその結合パートナー)のレベルを定量的に決定するために設計されたアッセイにおける試薬(標識された試薬を含む)として使用され得る;細胞または組織に対するマーカーとして(この細胞または組織において、このマーカーは、(構成的に、または組織分化もしくは組織発生の特定の段階で、あるいは疾患状態でのいずれかで)優先的に発現される);治療剤のスクリーニングのための標的として使用され得る;およびヒト被験体に投与される直接的治療剤として使用され得る。本明細書中に開示される任意の改変タンパク質は、研究用製品としての商品化のために試薬等級またはキット型へと開発され得る。上記で列挙された用途を実行するための方法は、当業者に周知である(例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,SambrookおよびRussell,2000,ならびにMethods in Enzymology:Guide to Molecular Cloning Techniques,Academic Press,Berger,S.L.およびA.R.Kimmel(編),1987を参照のこと)。
本発明の特定の実施形態において、本発明の方法は、本明細書中に開示される1つ以上の改変タンパク質の検出を含む。改変タンパク質は、a#1−a#1として、表1および配列表に開示される。このようなタンパク質の検出は、例えば、抗体、低分子化合物、アプタマー、リガンド/基質、他のタンパク質もしくはタンパク質フラグメント、または他のタンパク質結合剤を用いて達成され得る。好ましくは、タンパク質検出剤は、本発明の改変タンパク質に特異的であり、従って、本発明の改変タンパク質と野生型のタンパク質または別の改変体形態との間を識別し得る。これは、一般的には、例えば、改変タンパク質と野生型タンパク質との間で異なるタンパク質の領域(例えば、本発明の非同義cSNPによってコードされた1つ以上のアミノ酸置換を含む、タンパク質の領域、または、停止コドンを作製し、それによってより短いポリペプチドをもたらすナンセンス改変体型SNPに従うタンパク質の領域、または、停止コドンを破壊し、それによってより長いポリペプチドをもたらす読み通し改変体型SNPに従うタンパク質の領域(ここで、このポリペプチドの部分は、このポリペプチドのうちの1つのバージョンでは存在するが、他のバージョンでは存在しない))に結合する検出薬剤を選択するか、または設計することによって達成され得る。
本発明の別の特定の局面において、本発明の改変タンパク質は、CHDもしくは動脈瘤/解離を診断するために、またはヒトにおけるCHDもしくは動脈瘤/解離に対する素因を決定するために、CHDもしくは動脈瘤/解離を処置および/もしくは予防するために、スタチン処置(特に、スタチンを使用するCHDもしくは動脈瘤/解離の処置もしくは予防)に対する個体の応答を予測するために、標的として使用されるなど。従って、本発明は、細胞、組織、または生体における本発明の1つ以上の改変タンパク質の存在もしくはレベルを検出するための方法を提供する。このような方法は、代表的には、試験サンプルと薬剤(例えば、抗体、低分子化合物、またはペプチド)とを接触させる工程を包含する。この薬剤は、改変タンパク質と相互作用することが可能であり、その結果、改変タンパク質への薬剤の特異的な結合が検出され得る。このようなアッセイは、単一検出フォーマットまたはアレイのような複数検出形式(例えば、抗体アレイまたはアプタマーアレイ(タンパク質検出のためのアレイはまた、「タンパク質チップ」とも呼べれ得る))で提供され得る。目的の改変タンパク質は、試験サンプルから単離され得、そして本発明によって開示される1つ以上のSNPによってコードされた改変体アミノ酸配列の存在についてアッセイされ得る。このSNPは、タンパク質および対応するタンパク質機能/活性に対して、(例えば、アミノ酸の置換、欠失、挿入および/もしくは再配列をもたらし得るタンパク質コード領域における非同義置換;停止コドンの形成もしくは破壊;またはプロモーターのような制御要素の変更を介して)変化を引き起こし得る。SNPはまた、非適切な翻訳後修飾をもたらし得る。
サンプルにおける改変タンパク質を検出するための1つの好ましい薬剤は、タンパク質の改変体形態に選択的に結合することが可能な抗体である(抗体は、次節でより詳細に記載される)。このようなサンプルとしては、例えば、被験体から単離された組織、細胞、および生体液、ならびに被験体内に存在する組織、細胞、および液体が挙げられる。
本明細書中に開示されるCHDまたは動脈瘤/解離に関連する改変タンパク質およびそのフラグメントの検出のためのインビトロ法としては、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ウエスタンブロット法、免疫沈降、免疫蛍光、およびタンパク質アレイ/チップ(例えば、抗体またはアプタマーのアレイ)が挙げられるが、これらに限定されない。イムノアッセイおよび関連するタンパク質検出法に関するさらなる情報については、Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,N.Y.,およびHage,「Immunoassays」,Anal Chem.1999 Jun 15;71(12):294R−304Rを参照のこと。
アミノ酸改変体を検出するさらなる分析法としては、電気泳動移動度の変化、トリプシンペプシド消化の変化、細胞ベースのまたは細胞フリーのアッセイにおけるタンパク質活性の変化、リガンドまたは抗体結合パターンにおける変化、等電点の変化、および直接アミノ酸シークエンシングが挙げられるが、これらに限定されない。
あるいは、改変タンパク質は、改変タンパク質に特異的な標識抗体(または他の型の検出試薬)を被験体に導入することによって、その被験体においてインビボで検出され得る。例えば、この抗体は、放射性マーカーで標識され得る。被験体におけるこの放射性マーカーの存在および位置は、標準画像化技術によって検出され得る。
本発明の改変タンパク質の他の使用は、そのタンパク質の分類または作用に基づく。例えば、ヒトから単離されたタンパク質およびそれらの哺乳動物相同分子種は、特に、このタンパク質を発現する細胞または組織における生物学的応答または病理学的応答を調節するための治療用途での使用のための薬剤(例えば、低分子薬または抗体)を同定するための標的として作用する。薬学的薬剤は、タンパク質活性を調節するように開発され得る。
遺伝子発現を調節するための代替物として、治療化合物が、タンパク質機能を調節するように開発され得る。例えば、本明細書中に開示される多くのSNP(例えば、非同義cSNPおよびナンセンス変異型SNP)は、コードされたタンパク質のアミノ酸配列に影響を与える。コードされたアミノ酸配列におけるこのような変化は、特に、このようなアミノ酸配列改変体が機能的タンパク質ドメイン(例えば、触媒ドメイン、ATP結合ドメイン、またはリガンド/基質結合ドメイン)において起こる場合、タンパク質機能に影響を与え得る。機能的ドメインにアミノ酸配列の変化を有する改変タンパク質が、病理学的状態を引き起こし得るか、または病状学的状態に影響を与え得るということは当該分野で確立されている。このような例において、化合物(例えば、低分子薬または抗体)は、改変タンパク質を標的にするように開発され得、そしてタンパク質機能/活性を調節(例えば、アップレギュレーションまたはダウンレギュレーション)し得る。
本発明の治療方法は、本発明の1つ以上の改変タンパク質を標的にする方法をさらに含む。改変タンパク質は、例えば、低分子化合物、抗体、アプタマー、リガンド/基質、他のタンパク質、または他のタンパク質結合剤を用いて、標的され得る。さらに、当業者は、表1に開示される新規のタンパク質改変体(および多型核酸分子)が、対応する当該分野で公知のタンパク質(またはmRNA分子のような核酸分子)の競合的インヒビターとして作用することによって、それら自身で治療剤として直接的に使用され得ることを認識する。
本発明の改変タンパク質は、薬物スクリーニングアッセイ、細胞ベース系または細胞フリー系において特に有用である。細胞ベース系は、タンパク質を自然に発現する、生検標本、または細胞培養物細胞を利用し得る。1つの実施形態において、細胞ベースのアッセイは、改変タンパク質を発現する組換え宿主細胞を含む。細胞フリーのアッセイは、改変タンパク質またはその改変タンパク質をコードする対応するSNP含有核酸フラグメントに直接結合する化合物の能力を検出するために使用され得る。
本発明の改変タンパク質、およびその適切なフラグメントは、高処理能力スクリーニングアッセイにおいて使用され、この改変タンパク質を結合する能力および/またはこの改変タンパク質の活性を調節する能力について候補化合物を試験し得る。これらの候補化合物は、正常機能(例えば、野生型/非改変タンパク質)を有するタンパク質に対してさらにスクリーニングされ、タンパク質活性に対する化合物の効果をさらに決定し得る。さらに、これらの化合物は、インビボ活性/有効性を決定するために、動物系または無脊椎動物系において試験され得る。化合物は、この改変タンパク質を活性化する(アゴニスト)か、または不活性化(アンタゴニスト)すると同定され得、そして異なる化合物は、この改変タンパク質の種々の程度の活性化または不活性化を引き起こすと同定され得る。
さらに、改変タンパク質は、この改変タンパク質とこのタンパク質と正常に相互作用する標的分子との間の相互作用を刺激するか、または阻害する能力について化合物をスクリーニングするために使用され得る。標的は、リガンド、基質、またはこのタンパク質が正常に相互作用する結合パートナー(例えば、エピネフリンまたはノルエピネフリン)であり得る。このようなアッセイは、代表的に、改変タンパク質またはそのフラグメントをこの標的分子と相互作用させ、そしてこのタンパク質とこの標的との間の複合体の形成を検出するか、またはこの改変タンパク質とこの標的との相互作用の生化学的因果関係(例えば、シグナル伝達の任意の関連する効果)を決定することを可能にする条件下で、この改変タンパク質と候補化合物とを組み合わせる工程を包含する。
候補化合物としては、例えば、以下が挙げられる:1)可溶性ペプチドのようなペプチド(Igテイル融合ペプチド、ならびにランダムペプチドライブラリーのメンバー(例えば、Lamら,Nature 354:82−84(1991);Houghtenら,Nature 354:84−86(1991)を参照のこと)、およびD−立体配置アミノ酸および/またはL−立体配置アミノ酸から作製されるコンビナトリアルケミストリー由来の分子ライブラリーのメンバーを含む);2)リンペプチド(例えば、ランダムかつ部分的に変性した、リンペプチドライブラリーに指向するメンバー(例えば、Songyangら,Cell 72:767−778(1993)を参照のこと));3)抗体(例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、抗イディオタイプ抗体、キメラ抗体、および単鎖抗体、ならびにFab、F(ab’)2、Fab発現ライブラリーフラグメント、および抗体のエピトープ結合フラグメント);そして4)有機低分子および無機低分子(例えば、コンビナトリアルライブラリーおよび天然産物ライブラリーから得られる分子)。
1つの候補化合物は、リガンド結合に対して競合する改変タンパク質の可溶性フラグメントである。他の候補化合物としては、突然変異体タンパク質、または改変タンパク質機能に影響を与え、従ってリガンドに対して競合する突然変異を含む適切なフラグメントが挙げられる。従って、リガンドに対して(例えば、より高い親和性で)競合するフラグメント、またはリガンドに結合するが、放出させないフラグメントは、本発明によって包含される。
本発明は、改変タンパク質活性を調節する(刺激するか、または阻害する)化合物を同定するための他の終点アッセイをさらに含む。このアッセイは、代表的に、タンパク質活性を示すシグナル伝達経路における現象のアッセイを包含する。従って、改変タンパク質依存性シグナルカスケードに応答してアップレギュレーションされるか、またはダウンレギュレーションされる遺伝子の発現が、アッセイされ得る。1つの実施形態において、このような遺伝子の調節領域は、容易に検出可能なマーカー(例えば、ルシフェラーゼ)に作動可能に連結され得る。あるいは、この改変タンパク質のリン酸化、または改変タンパク質の標的もまた、測定され得る。この改変タンパク質によって媒介される生物学的機能および生化学的機能のいずれ、終点アッセイとして使用され得る。これらは、本明細書中、本明細書中で引用される参考文献(これらの終点アッセイの標的および当業者に公知の他の機能について、参考として援用される)に記載される生化学的現象または生物学的現象の全てを含む。
結合化合物および/または活性化化合物もまた、キメラ改変タンパク質を用いることによってスクリーニングされ得る。ここで、アミノ末端細胞外ドメインもしくはその部分、膜貫通ドメインの全体もしくは部分領域、および/またはカルボキシル末端細胞内ドメインもしくはその部分は、異種ドメインまたは部分領域によって置換され得る。例えば、基質結合領域は、改変タンパク質によって正常に認識される基質とは異なる基質と相互作用するように使用され得る。従って、異なる一組のシグナル伝達成分は、活性化についての終点アッセイとして利用可能である。これは、アッセイが、改変タンパク質が誘導される特異的宿主細胞以外において実行されることを可能にする。
改変タンパク質はまた、この改変タンパク質と相互作用する化合物を発見するために設計された方法での競合的結合アッセイにおいて有用である。従って、化合物は、化合物を改変タンパク質に結合させるか、または別に改変タンパク質と相互作用させる条件下で、この改変タンパク質に曝露され得る。この改変タンパク質と正常に相互作用する結合パートナー(例えば、リガンド)もまた、混合物に添加される。試験化合物が、この改変タンパク質またはその結合パートナーと相互作用する場合、この改変タンパク質から形成される複合体の量、またはこの改変タンパク質由来の活性を減少させる。この型のアッセイは、改変タンパク質の特定領域と相互作用する化合物についてスクリーニングすることに特に有用である(Hodgson,Bio/technology,1992,Sept 10(9),973−80)。
細胞フリーの薬物スクリーニングアッセイを実行するために、改変タンパク質もしくはそのフラグメントのいずれか、またはその標的分子を固定化して、1つまたは両方のタンパク質の非複合形態からの複合体の分離を促進すること、およびアッセイの自動化を適応することが、時に所望される。マトリックスにタンパク質を固定化するための任意の方法が、薬物スクリーニングアッセイにおいて使用され得る。1つの実施形態において、さらなるドメインを含む融合タンパク質が、タンパク質をマトリックスに結合させる。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/125I融合タンパク質は、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical,St.Louis,MO)、またはグルタチオン誘導化マイクロタイタープレートに吸着され得、これは次いで、細胞溶解物(例えば、35S標識化)および候補化合物(例えば、薬物候補)と組み合わされ、そしてこの混合物は、複合体形成をもたらす条件下で(例えば、塩およびpHについて生理学的な条件で)インキュベートされる。インキュベーションに続いて、このビーズは任意の未結合標識を取り除くために洗浄され、そして固定化されたマトリックスおよび放射標識が直接的に、またはこの複合体が解離された後の上清において、決定され得る。あるいは、この複合体は、マトリックスから解離され得、SDS−PAGEによって分離され得、そしてビーズ画分に見出される結合物質のレベルは、標準的な電気泳動技術を用いてゲルから定量され得る。
改変タンパク質またはその標的分子のいずれかは、ビオチンおよびストレプトアビジンの結合を利用して固定化され得る。あるいは、改変タンパク質と反応するが、この改変タンパク質のその標的分子への結合を妨害しない抗体が、プレートのウェルへと誘導体化され、そして、改変タンパク質が抗体結合によってこのウェルにトラップされ得る。標的分子および候補化合物の調製物は、この改変タンパク質が存在するウェル中でインキュベートされ、そしてこのウェルにトラップされた複合体の量が、定量され得る。GST−固定化複合体について上記された方法に加えて、このような複合体を検出するための方法としては、タンパク質標的分子と反応する抗体、または改変タンパク質と反応して標的分子と競合する抗体を用いた複合体の免疫検出、および標的分子に関する酵素活性を検出することに依存する酵素結合アッセイが挙げられる。
これらの薬物スクリーニングアッセイに従って同定される改変タンパク質活性の調節因子は、このタンパク質経路によって媒介される障害(例えば、CHDまたは動脈瘤/解離)を有する被験体を処置するために使用され得る。これらの処置方法は、代表的には、このような処置を必要とする被験体に、薬学的組成物におけるタンパク質活性の調節因子を投与する工程を包含する。
本明細書中に開示される改変タンパク質、またはそのフラグメントは、この改変タンパク質の発現もしくは活性の不適切な欠如、またはこの改変タンパク質の所望しない発現もしくは活性によって特徴付けられる障害を処置するために、それ自身直接的に使用され得る。従って、処置するための方法は、本明細書中に開示される改変タンパク質またはそのフラグメントの使用を包含する。
本発明のさらに別の局面において、改変タンパク質は、2−ハイブリッドアッセイまたは3−ハイブリッドアッセイで「おとり(bait)タンパク質」として使用される(これは、改変タンパク質に結合するかもしくは改変タンパク質と相互作用し、そして改変タンパク質活性に関与する他のタンパク質を同定するためであり、米国特許第5,283,317号;Zervosら(1993)Cell 72:223−232;Maduraら(1993)J.Biol.Chem.268:12046−12054;Bartelら(1993)Biotechniques 14:920−924;Iwabuchiら(1993)Oncogene 8:1693−1696;およびBrent W094/10300を参照のこと)。このような改変タンパク質結合タンパク質はまた、例えば、タンパク質媒介シグナル伝達経路の要素として改変タンパク質または改変タンパク質標的によるシグナルの伝達に関係している可能性がある。あるいは、このような改変タンパク質結合タンパク質は、改変タンパク質のインヒビターである。
2−ハイブリッド系は、大部分の転写因子(代表的に、別個のDNA結合ドメインおよび活性化ドメインからなる)のモジュール的性質に基づく。簡単に言うと、このアッセイは、代表的に、2つの異なるDNA構築物を利用する。1つの構築物において、改変タンパク質をコードする遺伝子は、公知の転写因子(例えば、GAL−4)のDNA結合ドメインをコードする遺伝子に融合される。他の構築物において、DNA配列のライブラリーに由来し、非同定タンパク質(「おとり(prey)」または「サンプル」)をコードするDNA配列は、公知の転写因子の活性化ドメインをコードする遺伝子に融合される。「おとり(bait)」タンパク質および「おとり(prey)」タンパク質がインビボで相互作用し、改変タンパク質依存性複合体を形成し得る場合、この転写因子のDNA結合ドメインおよび活性化ドメインは、極めて近接する。この近接は、この転写因子に対応する転写調節部位に作動可能に連結されるレポーター遺伝子(例えば、LacZ)の転写を可能にする。レポーター遺伝子の発現が検出され得、そして機能的転写因子を含む細胞コロニーが単離され得、改変タンパク質と相互作用するタンパク質をコードするクローン化遺伝子を得るために使用され得る。
(改変タンパク質に対する抗体)
本発明はまた、本明細書中に開示される改変タンパク質およびそのフラグメントに選択的に結合する抗体を提供する。このような抗体は、本発明の改変タンパク質を定量的に、または定性的に検出するために使用され得る。本明細書中で使用される場合、抗体が改変タンパク質に結合するが、非改変タンパク質に有意に結合しない場合(すなわち、抗体が、本発明の1つ以上のSNPに起因する改変体アミノ酸配列を含まない、正常タンパク質、野生型タンパク質、または当該分野で公知のタンパク質に有意に結合しない場合)、この抗体は、標的改変タンパク質に選択的に結合する(改変体アミノ酸配列は、例えば、非同義的cSNP、停止コドンを作製し、それによってポリペプチドの短縮を引き起こすナンセンスSNP、またはポリペプチドの伸長をもたらす読み通し変異を引き起こすSNPに起因し得る)。
本明細書中で使用される場合、抗体は、当該分野で認識される用語と一致した用語において定義される:抗体は、抗原初回刺激に応答して生体より産生される、複数サブユニットのタンパク質である。本発明の抗体は、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の両方、ならびにこのような抗体の抗原応答性のタンパク質分解性フラグメント(例えば、Fabフラグメント、F(ab)’2フラグメント、およびFvフラグメント)を含む。さらに、本発明の抗体は、任意の種々の操作された抗原結合分子(例えば、キメラ抗体(米国特許第4,816,567号、同第4,816,397号;Morrisonら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851,1984;Neubergerら,Nature 312:604,1984)、ヒト化抗体(米国特許第5,693,762号;同第5,585,089号;および同第5,565,332号)、単鎖Fv(米国特許第4,946,778号;Wardら,Nature 334:544,1989)、2つの結合特異的部位を有する二重特異性抗体(bispecific
antibody)(Segalら,J.Immunol.Methods 248:1,2001;Carter,J.Immunol.Methods 248:7,2001)、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、およびテトラボディ(tetrabody)(Todorovskaら,J.Immunol.Methods,248:47,2001))、ならびにFab接合体(ダイマーまたはトリマー)、およびミニボディ(minibody)をさらに含む。
多くの方法が、所定の標的抗原に対する抗体を産生するか、および/または同定するために、当該分野で公知である(Harlow,Antibodies,Cold Spring Harbor Press,(1989),N.Y.)。一般的に、単離されたペプチド(例えば、本発明の改変タンパク質)が、免疫原として使用され、そして哺乳動物生物体(例えば、ラット、ウサギ、ハムスター、またはマウス)に投与される。全長タンパク質、抗原性ペプチドフラグメント(例えば、改変タンパク質と対応する野生型タンパク質との間で変動する領域を含むペプチドフラグメント)、または融合タンパク質のいずれかが使用され得る。免疫原として使用されるタンパク質は、天然に存在し得るか、合成または組換えで産生され得、そしてアジュバントと組み合わせて投与され得る。このアジュバントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:フロイントアジュバント(フロイント完全アジュバントおよびフロイント不完全アジュバント)、鉱物ゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、界面活性物質(例えば、リソレクチン、プルロニック(pluronic)ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性乳濁液、スカシ貝(keyhole limpet)ヘモシアニン、ジニトロフェノールなど)。
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術によって産生され得る(KohlerおよびMilstein,Nature,256:495,1975)。ハイブリドーマ技術は、特異的モノクローナル抗体を分泌する細胞を不死化させる。この不死化細胞株は、2つの異なる細胞型(代表的には、リンパ球、および腫瘍細胞)を融合させることによってインビトロで作製され得る。ハイブリドーマ細胞は、インビトロまたはインビボで培養され得る。さらに、全てのヒト抗体は、トランスジェニック動物によって産生され得る(Heら,J.Immunol.,169:595,2002)。FdファージおよびFdファージミド技術は、インビトロで組換え抗体を産生し、選択するために使用され得る(HoogenboomおよびChames,Immunol.Today 21:371,2000;Liuら,J.Mol.Biol.315:1063,2002)。抗体の相補決定領域が同定され得、そしてこのような領域に対応する合成ペプチドが、抗原結合を媒介するために使用され得る(米国特許第5,637,677号)。
抗体は、好ましくは、対応する野生型タンパク質と比較して、改変体アミノ酸配列を含む改変タンパク質の領域または別個のフラグメント(例えば、非同意語(nonsynonymous)的cSNPによってコードされるアミノ酸を含む改変タンパク質の領域、停止コドンを作製するナンセンスSNPによってもたらされる短縮によって影響を受ける領域、またはSNPによってもたらされる読み過ごし変異(read−through mutation)に起因する停止コドンの破壊から生じる領域)に対して調製される。さらに、好ましい領域は、機能/活性および/またはタンパク質/結合パートナー相互作用に関与する領域を含む。このようなフラグメントは、タンパク質の表面に位置する領域に対応するフラグメント(例えば、親水性領域)のような物理的特性について選択され得るか、あるいは配列のユニークさに基づいてまたは本発明によって提供されるSNPによってコードされる改変体アミノ酸残基の位置に基づいて選択され得る。抗原性フラグメントは、代表的に、少なくとも約8〜10個の連続したアミノ酸残基を含み、ここで、このアミノ酸残基の少なくとも1つは、本明細書中に開示されるSNPによって影響を受けるアミノ酸である。しかし、抗原性ペプチドは、少なくとも、12個、14個、16個、20個、25個、50個、100個(もしくはこれらの間の任意の他の数)またはそれ以上のアミノ酸残基を含み得、但し、少なくとも1つのアミノ酸は、本明細書中に開示されるSNPによって影響を受ける。
本発明の抗体の検出は、抗体またはその抗原反応性フラグメントを検出可能物質に結合する(すなわち、物理的に連結する)ことによって促進され得る。検出可能物質としては、種々の酵素、補欠分子団、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、および放射性物質が挙げられるが、これらに限定されない。適切な酵素の例としては、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ;適切な補欠分子団複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ;適切な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオロセイン、フルオロセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが挙げられ;発光物質の例としては、ルミノールが挙げられ;生物発光物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられ、そして適切な放射性物質の例としては、125I、131I、35Sまたは3Hが挙げられる。
抗体(特に、治療剤としての抗体の使用)は、以下で概説される:Morgan,「Antibody therapy for Alzheimer’s disease」,Expert Rev Vaccines.2003 Feb;2(1):53−9;Rossら,「Anticancer antibodies」,Am J Clin Pathol.2003 Apr;l19(4):472−85;Goldenberg,「Advancing role of radiolabeled antibodies in the therapy of cancer」,Cancer Immunol Immunother.2003 May;52(5):281−96.Epub 2003 Mar 11;Rossら,「Antibody−based therapeutics in oncology」,Expert Rev Anticancer Ther.2003 Feb;3(1):107−21;Caoら,「Bispecific antibody conjugates in therapeutics」,Adv Drug Deliv Rev.2003 Feb 10;55(2):171−97;von Mehrenら,「Monoclonal antibody therapy for cancer」,Annu Rev Med.2003;54:343−69.Epub 2001 Dec 03;Hudsonら,「Engineered antibodies」,Nat Med.2003 Jan;9(1):129−34;Brekkeら,「Therapeutic antibodies for human diseases at the dawn of the twenty−first ceutury」,Nat Rev Drug Discov.2003 Jan;2(1):52−62(Erratum in:Nat Rev Drug Discov.2003 Mar;2(3):240);Houdebine,
「Antibody manufacture in transgenic animals and comparisons with other systems」,Curr Opin Biotechnol.2002 Dec;13(6):625−9;Andreakosら,「Monoclonal antibodies in immune and inflammatory diseases」,Curr Opin Biotechnol.2002 Dec;13(6):615−20;Kellermannら,「Antibody discovery:the use of transgenic mice to generate human monoclonal antibodies for therapeutics」,Curr Opin Biotechnol.2002 Dec;13(6):593−7;Piniら,「Phage display and colony filter screening for high−throughput selection of antibody libraries」,Comb Chem High Throughput Screen.2002 Nov;5(7):503−10;Batraら,「Pharmacokinetics and biodistribution of genetically engineered antibodies」,Curr Opin Biotechnol.2002 Dec;13(6):603−8;およびTangriら,「Rationally engineered proteins or antibodies with absent or reduced immunogenicity」,Curr Med Chem.2002 Dec;9(24):2191−9。
(抗体の使用)
抗体は、標準的な技術(例えば、アフィニティークロマトグラフィーまたは免疫沈降)によって天然の細胞供給源からまたは組換え宿主細胞から、本発明の改変タンパク質を単離するために使用され得る。さらに、抗体は、生物の種々の組織の間、および正常な発生または疾患の進行の過程にわたって、種々のタンパク質の発現のパターンを決定するために、細胞または組織において本発明の改変タンパク質の存在を検出するために有用である。さらに、抗体は、発現の量およびパターンを評価するためにに、インサイチュ、インビトロ、体液中、または細胞溶解物もしくは懸濁液において、改変タンパク質を検出するために使用され得る。また、抗体は、異常な組織分布、発生の間の異常な発現、または異常な状態(例えば、CHD、または動脈瘤/解離)あるいは個体のスタチン処置の間における発現を評価するために使用され得る。さらに、全長改変タンパク質の循環するフラグメントの抗体検出は、代謝回転を同定するために使用され得る。
本発明の改変タンパク質に対する抗体はまた、遺伝薬理学の分析において有用である。従って、代替のSNP対立遺伝子によってコードされる改変タンパク質に対する抗体は、改変された処置の様式を必要とする個体を同定するために使用され得る。
さらに、抗体は、疾患の活性段階のような疾患の状態において、またはタンパク質の機能に関連する疾患(特に、CHD、または動脈瘤/解離)に対する素因を有する個体において、あるいは処置レジメン(例えば、スタチン処置)の間の患者において、改変タンパク質の発現を評価するために使用され得る。本発明のSNP含有核酸分子によってコードされる改変タンパク質に特異的な抗体は、改変タンパク質の存在をアッセイするために(例えば、改変タンパク質の存在によって示されるようなCHDまたは動脈瘤/解離を診断するため、スタチン処置への個体の応答を予測するため、あるいはCHDまたは動脈瘤/解離への感受性/素因を予測するために)、使用され得る。
抗体はまた、電気泳動度、等電点、トリプシンペプチド消化、および当該分野で周知の他の物理的アッセイによる分析とともに、改変タンパク質を評価するための診断ツールとして有用である。
抗体はまた、組織型別のために有用である。従って、特定の改変タンパク質が特定の組織における発現と相関している場合、このタンパク質に対して特異的な抗体は、組織型を同定するために使用され得る。
抗体はまた、種々の組織における細胞内の改変タンパク質の異常な細胞内局在化を評価するために使用され得る。診断的使用は、遺伝的試験だけではなく、処置様式をモニタリングする際にも適用され得る。従って、処置が、改変タンパク質の発現レベルまたは存在、あるいは改変タンパク質の異常な組織分布または発展的な発現を直すことを最終的な目標とする場合、改変タンパク質または関連するフラグメントに対する抗体は、治療効力をモニターするために使用され得る。
抗体はまた、例えば、結合パートナーに対する改変タンパク質の結合を遮断することによって、改変タンパク質の機能を阻害するために有用である。これらの使用はまた、処置が改変タンパク質の機能を阻害することを包含する治療的文脈において適用され得る。抗体は、例えば、結合を遮断するかまたは競合的に阻害し、従って、改変タンパク質の活性を調節する(作用するかまたは拮抗する)ために使用され得る。抗体は、機能に必要とされる部位を含む特異的改変タンパク質フラグメントに対して、または細胞もしくは細胞膜と関連するインタクトな改変タンパク質に対して調製され得る。インビボ投与について、抗体は、放射性核種、酵素、免疫原性エピトープ、または細胞傷害性剤のようなさらなる治療的ペイロードと連結され得る。適切な細胞傷害性剤としては、ジフテリアのような細菌性毒素、およびリシンのような植物性毒素が挙げられるが、これらに限定されない。抗体またはそのフラグメントのインビボ半減期は、ポリエチレングリコールに対する結合を介するペグ化によって延長され得る(Leongら、Cytokine 16:106,2001)。
本発明はまた、抗体を使用するためのキット(例えば、試験サンプル中の改変タンパク質の存在を検出するためのキット)を包含する。例示的なキットは、抗体(例えば、標識された抗体または標識可能な抗体)および生物学的サンプル中の改変タンパク質を検出するための化合物または薬剤;サンプル中の改変タンパク質の量、または存在/非存在を決定するための手段;サンプル中の改変タンパク質の量と標準とを比較するための手段;および使用のための説明書を含み得る。
(ベクターおよび宿主細胞)
本発明はまた、本明細書中に記載されるSNP含有核酸分子を含むベクターを提供する。用語「ベクター」は、ビヒクル、好ましくは、核酸分子をいい、これは、SNP含有核酸分子を輸送し得る。このベクターが核酸分子である場合、SNP含有核酸分子は、ベクター核酸に共有結合的に連結され得る。このようなベクターとしては、プラスミド、一本鎖ファージもしくは二本鎖ファージ、一本鎖RNAウイルスベクターもしくは二本鎖RNAウイルスベクター、または一本鎖DNAウイルスベクターもしくは二本鎖DNAウイルスベクター、あるいは人工染色体(例えば、BAC、PAC、YAC、またはMAC)が挙げられるが、これらに限定されない。
ベクターは、染色体外エレメントとして宿主細胞内で維持され得、ここで、このベクターは、SNP含有核酸分子を複製し、そしてそのさらなるコピーを産生する。あるいは、ベクターは、宿主細胞ゲノム内に組み込まれ得、宿主細胞が複製する場合にSNP含有核酸分子のさらなるコピーを産生し得る。
本発明は、SNP含有核酸分子の維持のためのベクター(クローニングベクター)または発現のためのベクター(発現ベクター)を提供する。ベクターは、原核生物細胞または真核生物細胞あるいはその両方(シャトルベクター)において機能し得る。
発現ベクターは、代表的に、SNP含有核酸分子の転写が宿主細胞において許容されるように、SNP含有核酸分子に対してベクター内で作動可能に連結されるシス作用性調節領域を含む。SNP含有核酸分子はまた、転写に影響し得る別の核酸分子を用いて、宿主細胞中に導入され得る。従って、第2の核酸分子は、ベクターからのSNP含有核酸分子の転写を可能にするために、シス調節制御領域と相互作用するトランス作用因子を提供し得る。あるいは、トランス作用因子は、宿主細胞によって供給され得る。最終的に、トランス作用因子は、ベクター自体から産生され得る。しかし、いくつかの実施形態において、核酸分子の転写および/または翻訳が無細胞系において行われ得ることが理解される。
本明細書中に記載されるSNP含有核酸分子が作動可能に連結され得る調節配列は、mRNA転写を指向するためのプロモーターを含む。これらの調節配列には、バクテリオファージλ由来の左プロモーター、E.coli由来のlacプロモーター、TRPプロモーター、およびTACプロモーター、SV40由来の初期プロモーターおよび後期プロモーター、CMV最初期プロモーター、アデノウイルス初期プロモーターおよびアデノウイルス後期プロモーター、ならびにレトロウイルス末端反復配列が挙げられるがこれらに限定されない。
転写を促進する制御領域に加えて、発現ベクターはまた、転写を調節する領域(例えば、リプレッサー結合部位およびエンハンサー)を含み得る。例としては、SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス最初期エンハンサー、ポリオーマエンハンサー、アデノウイルスエンハンサー、およびレトロウイルスLTRエンハンサーが挙げられる。
転写開始および制御のための部位を含むことに加えて、発現ベクターはまた、転写終結に必要な配列、および転写される領域において、翻訳のためのリボソーム結合部位を含み得る。発現のための他の調節制御エレメントとしては、開始コドンおよび終止コドンならびにポリアデニル化シグナルが挙げられる。当業者は、発現ベクターにおいて有用な多くの調節配列を知っている(例えば、SambrookおよびRussell、2000,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYを参照のこと)。
種々の発現ベクターは、SNP含有核酸分子を発現するために使用され得る。このようなベクターとしては、染色体ベクター、エピソームベクター、およびウイルス由来のベクター(例えば、細菌性プラスミド由来、バクテリオファージ由来、酵母エピソーム由来、酵素染色体エレメント(酵母人工染色体を含む)由来、バキュロウイルス、パポバウイルス(例えば、SV40)、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、ポックスウイルス、偽狂犬病ウイルス、およびレトロウイルスのようなウイルス由来のベクター)が挙げられる。ベクターはまた、プラスミド由来のものおよびバクテリオファージ遺伝子エレメント(例えば、コスミドおよびファージミド)由来のもののようなこれらの供給源の組み合わせ由来であり得る。原核生物宿主および真核生物宿主に対する適切なクローニングベクターおよび発現ベクターは、SambrookおよびRussell、2000,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYに記載されている。
ベクター中の調節配列は、1つ以上の宿主細胞における構成的発現(例えば、組織特異的発現)を提供し得るか、または例えば、温度、栄養添加剤、または外来因子(例えば、ホルモンもしくは他のリガンド)によって、1つ以上の細胞型における誘導性発現を提供し得る。原核生物宿主細胞および真核生物宿主細胞における核酸配列の構成的発現または誘導性発現を提供する種々のベクターは、当業者に周知である。
SNP含有核酸分子は、当該分野で周知の方法論によってベクター中に挿入され得る。一般的に、最終的に発現されるSNP含有核酸分子は、SNP含有核酸分子および発現ベクターを、1つ以上の制限酵素を用いて切断し、次いで、フラグメントを一緒に連結することによって、発現ベクターに連結される。制限酵素消化および連結についての手順は、当業者に周知である。
適切な核酸分子を含むベクターは、周知の技術を使用して、増殖または発現のための適切な宿主細胞内に導入され得る。細菌宿主細胞としては、Escherichia.coli、Streptomyces spp.、およびSalmonella typhimuriumが挙げられるが、これらに限定されない。真核生物宿主としては、酵母、昆虫細胞(例えば、Drosophila spp.)、動物細胞(例えば、COS細胞およびCHO細胞)、ならびに植物細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書中に記載されるように、融合タンパク質として改変体ペプチドを発現することが望ましくあり得る。従って、本発明は、改変体ペプチドの産生を可能にする融合ベクターを提供する。融合ベクターは、例えば、組換えタンパク質の発現を増加し得、組換えタンパク質の溶解性を増加し得、そして例えば、アフィニティー精製のためのリガンドとして作用することによってタンパク質の精製を補助し得る。タンパク質分解性切断部位は、融合部分の接合において導入され得、その結果、所望の改変体ペプチドが、最終的に、融合部分から分離され得る。このような使用に適切なタンパク質分解性酵素としては、Xa因子、トロンビン、およびエンテロキナーゼが挙げられるが、これらに限定されない。代表的な融合発現ベクターとしては、pGEX(Smithら,Gene 67;31−40(1988))、pMAL(New England Biolabs,Beverly,Mass)およびpRIT5(Pharmacia,Piscataway,NJ)(これらは、それぞれグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはプロテインAを標的組換えタンパク質に融合する)が挙げられる。適切な誘導性非融合E.coli発現ベクターの例としては、pTrc(Amannら,Gene 69:301−315(1988))およびpET 11d(Studierら,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185:60−89(1990))が挙げられる。
組換えタンパク質発現は、遺伝子的背景を提供することによって細菌宿主において最大化され得、ここで、宿主細胞は、組換えタンパク質をタンパク質分解的に切断する能力を損なっている(S.Gottesman,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,Calif.(1990)119−128)。あるいは、目的のSNP含有核酸分子の配列は、特定の宿主細胞(例えば、E.coli)についての優先的なコドン利用を提供するように変更され得る(Wadaら,Nucleic Acids Res.20:2111−2118(1992))。
SNP含有核酸分子はまた、酵母において作動する発現ベクターによって発現され得る。酵母(例えば、S.cerevisiae)における発現のためのベクターの例としては、pYepSec1(Baldariら,EMBO J.6:229−234(1987))、pMFa(Kurjanら,Cell 30:933−943(1982))、pJRY88(Schultzら,Gene 54:113−123(1987))、およびpYES2(Invitrogen Corporation,San Diego,CA)が挙げられる。
SNP含有核酸分子はまた、例えば、バキュロウイルス発現ベクターを使用して、昆虫細胞中で発現され得る。培養された昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)中のタンパク質の発現に利用可能なバキュロウイルスベクターとしては、pAcシリーズ(Smithら,Mol.Cell Biol.3:2156−2165(1983))およびpVLシリーズ(Lucklowら,Virology 170:31−39(1989)が挙げられる。
本発明の特定の実施形態において、本明細書中に記載されるSNP含有核酸分子は、哺乳動物発現ベクターを使用して哺乳動物細胞において発現される。哺乳動物発現ベクターの例としては、pCDM8(Seed,B.Nature 329:840(1987))およびpMT2PC(Kaufmanら,EMBO J.6:187−195(1987))が挙げられる。
本発明はまた、本明細書中に記載されるSNP含有核酸分子が逆方向でベクター中にクローニングされるが、アンチセンスRNAの転写を可能にする調節配列に作動可能に連結されるベクターを包含する。従って、アンチセンス転写は、本明細書中に記載されるSNP含有核酸配列(コード領域および非コード領域の両方を含む)に対して産生され得る。このアンチセンスRNAの発現は、センスRNAの発現に関連する上記のパラメーター(調節配列、構成的発現または誘導性発現、組織特異的発現)のそれぞれに供される。
本発明はまた、本明細書中に記載されるベクターを含む組換え宿主細胞に関連する。従って、宿主細胞としては、例えば、原核生物細胞、下等真核生物細胞(例えば、酵母)、他の真核生物細胞(例えば、昆虫細胞)、および高等真核生物細胞(例えば、哺乳動物細胞)が挙げられる。
組換え宿主細胞は、当業者が容易に利用可能な技術によって、本明細書中に記載のベクター構築物を細胞に導入することによって調製され得る。これらには、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染、リポフェクション、およびSambrookおよびRussell,2000,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,N.Y.(2000))に記載されるような他の技術が挙げられるがこれらに限定されない。
宿主細胞は、1つより多くのベクターを含み得る。従って、異なるSNP含有ヌクレオチド配列が、同じ細胞中に、異なるベクターで導入され得る。同様に、SNP含有核酸分子は、単独で、またはSNP含有核酸分子に関連しない他の核酸分子(例えば、発現ベクターにトランス作用因子を提供する核酸分子)のいずれかで導入され得る。1つより多くのベクターが細胞内に導入される場合、ベクターは、独立して導入され得るか、同時に導入され得るか、または核酸分子ベクターに連結され得る。
バクテリオファージおよびウイルスベクターの場合、これらは、感染および形質導入のための標準的な手順によって、パッケージされたウイルスまたはカプセル化されたウイルスとして細胞に導入され得る。ウイルスベクターは、複製コンピテントであり得るかまたは複製欠損であり得る。ウイルス複製が欠損である場合、複製は、欠損を補う機能を提供する宿主細胞中で行われ得る。
ベクターは、一般的に、組換えベクター構築物を含む細胞の亜集団の選択を可能にする選択マーカーを含む。マーカーは、本明細書中に記載されるSNP含有核酸分子を含む同じベクター中に挿入され得るか、または別のベクター内であり得る。マーカーとしては、例えば、原核宿主細胞についてのテトラサイクリン耐性遺伝子またはアンピシリン耐性遺伝子、および真核生物宿主細胞についてのジヒドロ葉酸レダクターゼ耐性遺伝子またはネオマイシン耐性遺伝子が挙げられる。しかし、発現型の特性についての選択を提供する任意のマーカーが有効であり得る。
成熟改変タンパク質が、適切な調節配列の制御下で、細菌、酵母、哺乳動物細胞および他の細胞において産生され得る場合、無細胞転写および翻訳系がまた、本明細書中に記載されるDNA構築物由来のRNAを使用して、これらの改変タンパク質を産生するために使用され得る。
改変タンパク質(Gタンパク質共役レセプター(GPCR)のようなタンパク質を含む複数膜貫通ドメインを用いて達成することが困難である)の分泌が所望される場合、適切な分泌シグナルは、ベクター中に組み込まれ得る。シグナル配列は、ペプチドに対して内因性であり得るかまたはこれらのペプチドに対して異種であり得る。
改変タンパク質が媒体中に分泌されない場合、タンパク質は、標準的な破壊手順(凍結/解凍、超音波、機械的破壊、溶解剤の使用などを含む)によって、宿主細胞から単離され得る。次いで、改変タンパク質は、回収され得、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、酸抽出、アニオン交換クロマトグラフィーまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー、または高速液体クロマトグラフィーを含む周知の精製方法によって精製され得る。
本明細書中に記載される改変タンパク質の組換え産生が行われる宿主細胞に依存して、これらは、種々のグリコシル化パターンを有し得るか、または細菌において産生される場合、非グリコシル化であり得ることもまた理解される。さらに、改変タンパク質は、宿主媒介プロセスの結果として、いくらかの場合で、初期改変メチオニンを含み得る。
ベクターおよび宿主細胞に関するさらなる情報について、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.を参照のこと。
(ベクターおよび宿主細胞の使用、ならびにトランスジェニック動物)
本明細書中に記載される改変タンパク質を発現する組換え宿主細胞は、種々の用途を有する。例えば、細胞は、所望量の改変タンパク質またはそのフラグメントの調製物に精製され得る改変タンパク質を産生するために有用である。従って、発現ベクターを含む宿主細胞は、改変タンパク質産生に有用である。
宿主細胞はまた、改変タンパク質または改変タンパク質フラグメントを含む細胞ベースのアッセイ(例えば、上記のものおよび当該分野で公知の他の形式)を行うために有用である。従って、改変タンパク質を発現する組換え宿主細胞は、改変タンパク質機能を刺激するかまたは阻害する化合物をアッセイするために有用である。改変タンパク質の機能を調節する化合物のこのような能力は、ネイティブ/野生型タンパク質に対する化合物のアッセイから、または化合物の無細胞アッセイから明らかではないかもしれない。組換え宿主細胞はまた、公知の機能と比較して、改変タンパク質における機能的変化をアッセイするために有用である。
遺伝的に操作された宿主細胞は、非ヒトトランスジェニック動物を作製するためにさらに使用され得る。トランスジェニック動物は、好ましくは、動物の1つ以上の細胞が導入遺伝子である非ヒト哺乳動物(例えば、齧歯類動物(例えば、ラットまたはマウス))である。導入遺伝子は、トランスジェニック動物が発生する細胞のゲノム内に組み込まれ、そしてその細胞型または組織の1つ以上において成熟動物のゲノムに残る本発明のSNPを含む外来DNAである。このような動物は、インビボで改変タンパク質の機能を研究するため、ならびに改変タンパク質活性のモジュレーターを同定および評価するために有用である。トランスジェニック動物の他の例としては、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ヤギ、ニワトリ、および両生類が挙げられるが、これらに限定されない。トランスジェニック非ヒト哺乳動物(例えば、ウシおよびヤギ)は、動物の乳に分泌され得、次いで回収され得る改変タンパク質を産生するように使用され得る。
トランスジェニック動物は、SNP含有核酸分子を受精された卵母細胞の雄性前核内に導入し(例えば、マイクロインジェクションまたはレトロウイルス感染によって)、そして偽妊娠した雌性養育動物において卵母細胞を発生させることによって作製され得る。本発明の1つ以上のSNPを含む任意の核酸分子は、潜在的に、非ヒト動物のゲノム内に導入遺伝子として導入され得る。
発現ベクターにおいて有用な調節配列または他の配列のいずれも、トランスジェニック配列の一部分を形成し得る。これは、まだ含まれていない場合、イントロン配列およびポリアデニル化シグナルを含む。組織特異的調節配列は、特定の細胞または組織中の改変タンパク質の発現を指向するために、導入遺伝子に作動可能に連結され得る。
胚操作およびマイクロインジェクションによりトランスジェニック動物(特に、マウスのような動物)を作製するための方法は、当該分野において慣用的であり、例えば、両方ともLederらによる、米国特許第4,736,866号および同第4,870,009号、Wagnerらによる米国特許第4,873,191号、ならびにHogan,B.,Manipulating the Mouse Embryo,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring
Harbor,N.Y.1986)に記載される。同様の方法は、他のトランスジェニック動物の作製に使用される。トランスジェニック創始動物は、そのゲノム中の導入遺伝子の存在、および/または動物の組織または細胞におけるトランスジェニックmRNAの発現に基づいて、同定され得る。次いで、トランスジェニック創始動物は、導入遺伝子を保有するさらなる動物を繁殖させるために使用され得る。さらに、導入遺伝子を保有するトランスジェニック動物は、さらに、他の導入遺伝子を保有する他のトランスジェニック動物に繁殖され得る。トランスジェニック動物はまた、動物全体または動物の組織が本明細書中に記載される相同組換え宿主細胞を使用して作製されている非ヒト動物を含む。
別の実施形態において、導入遺伝子の調節された発現を可能にする選択された系を含むトランスジェニック非ヒト動物が作製され得る。このような系の1つの例は、バクテリオファージP1のcre/loxPリコンビナーゼ系である(Laksoら、PNAS89:6232−6236(1992))。リコンビナーゼ系の別の例は、S.cerevisiaeのFLPリコンビナーゼ系である(O’Gormanら、Science 251:1351−1355(1991))。cre/loxPリコンビナーゼ系が導入遺伝子の発現を調節するために使用される場合、Creリコンビナーゼおよび選択されたタンパク質の両方をコードする導入遺伝子を含む動物が一般的に必要とされる。このような動物は、例えば、2匹のトランスジェニック動物を交配することにより、「二重」トランスジェニック動物を構築することによって提供され得、一方は、選択された改変タンパク質をコードする導入遺伝子を含み、他方は、リコンビナーゼをコードする導入遺伝子を含む。
本明細書中に記載される非ヒトトランスジェニック動物のクローンもまた、例えば、Wilmut,Iら、Nature 385:810−813(1997)およびPCT国際公開番号WO 97/07668およびWO 97/07669に記載される方法に従って作製され得る。簡単に述べると、トランスジェニック動物由来の細胞(例えば、体細胞)は、単離され、増殖周期を出て、G0期に入るように誘導され得る。次いで、静止細胞は、静止細胞が単離される同じ種の動物由来の除核された卵母細胞に、例えば、電気パルスの使用によって、融合され得る。次いで、再構築された卵母細胞は、桑実胚または胚盤胞まで発生するように培養され、次いで、偽妊娠雌性養育動物に移される。この雌性養育動物から生まれた子孫は、細胞(例えば、体細胞)が単離される動物のクローンである。
本明細書中に記載される改変タンパク質を発現する組換え細胞を含むトランスジェニック動物は、インビボの文脈で、本明細書中に記載されるアッセイを行うために有用である。従って、インビボで存在し、リガンドまたは基質の結合、改変タンパク質活性化、シグナル伝達、または他のプロセスもしくは相互作用に影響し得る種々の生理学的因子は、インビトロ無細胞アッセイまたは細胞ベースのアッセイから明らかではないかもしれない。従って、本発明の非ヒトトランスジェニック動物は、インビトロ改変タンパク質機能および改変タンパク質機能/活性もしくは発現を調節する治療剤または化合物の活性をアッセイするために使用され得る。このような動物はまた、ヌル変異(null mutation)(すなわち、1つ以上の改変タンパク質を実質的にまたは完全に排除する変異)の効果を評価するために適切である。
トランスジェニック動物に関するさらなる情報について、Houdebine,「Antibody manufacture in transgenic animals and comparisons with other systems」、Curr Opin Biotechnol.2002 Dec;13(6):625−9 (Dec. 2002);Petters et al.,「Transgenic animals as models for human disease」、「Transgenic Res.2000;9(4−5):347−51;51,discussion 345−6(2000);Wolf et al.,「Use of transgenic animals in understanding molecular mechanisms of toxicity」、J Pharm Pharmacol. 1998 Jun; 50(6):567−74(Jun.1998);Echelard,「Recombinant protein production in transgenic animals,」,Curr Opin Biotechnol. 1996 Oct;7(5):536−40(Oct.1996);Houdebine,「Transgenic animal bioreactors」,Transgenic Res.2000;9(4−5):305−20(2000);Pirity et al.,「Embryonic stem cells,creating transgenic animals」、Methods Cell Biol. 1998; 57:279−93 (1998);およびRobl et al.,「Artificial chromosome vectors and expression of complex proteins in transgenic animals」,Theriogenology.2003 Jan 1;59(1):107−13.13(Jan.2003)を参照のこと。
以下の実施例は、特許請求される本発明を制限するためではなく、例示するために提供される。
(実施例1:KIF6遺伝子内のhCV3054799と称される遺伝子多型は、CHDのリスクおよび冠状動脈事象の低下に対するスタチン治療からの利益と関連している)
CHD(特に、再発性のMIを含むMI)に関連する遺伝子マーカー、または、CHDに対するスタチン治療の効果を同定するために、2つの臨床治験:コレステロールおよび再発事象(Cholesterol and Recurrent Event;CARE)研究(プラバスタチン(Pravachol(登録商標))を用いたMIの二次予防についての無作為化された多施設二重盲検治験;Sacks et al.,Am.J.Cardiol.68:1436−1446[1991])および西スコットランド冠状動脈予防研究(West of Scotland Coronary Prevention Study;WOSCOPS)研究(プラバスタチン(Pravachol(登録商標))を用いたCHDの一次予防についての無作為化された多施設二重盲検治験;Shepherd et al.,N Eng J Med 333(20),pp.1301−7,Nov.16,1995;Packard et al.,N Eng J Med 343(16),pp.1148−55,Oct.19,2000)において、サンプルを遺伝子型決定した。
十分に実証されたMIは、CARE研究への参加の登録基準のひとつであった。患者は、80の参加研究センターからCARE治験に登録された。無作為化の3〜20ヶ月前に急性MIを有し、年齢21〜75歳であり、そして、240mg/dl未満の血漿総コレステロールレベル、115〜174mg/dlのLDLコレステロールレベル、350mg/dl未満の空腹時トリグリセリドレベル、220mg/dl以下の空腹時グルコースレベル、25%以上の左心室拍出フラクションを有し、症候性のうっ血性心不全を有さない場合の男性と閉経後の女性が治験に選ばれる視覚があった患者を無作為化し、40mgのプラバスタチンを1日1回、または、マッチングさせたプラセボのいずれかを与えた。治験の最初のエンドポイントは、CHDまたは非致死的なMIからの死であり、そして、追跡期間のメジアンは5.0年(4.0〜6.2年の範囲)であった。このCAREの遺伝的研究には、致死的なMIまたは非致死的な再発性のMIから構成される複合エンドポイントを用いた。
元のWOSCOPSコホートおよびネスト化した症例−対照研究の設計は記述されている(Shepherd et al.,N Eng J Med 333(20),pp.1301−7,Nov.16,1995; Packard et al.,N Eng J Med 343(16),pp.1148−55,Oct.19,2000)。WOSCOPS治験の目的は、高コレステロール血症(空腹時のLDLコレステロール >155mg/dl)を持つスコットランド人男性における、原発性MIまたは冠状動脈死のリスクを低下させることについての、プラバスタチンの効果を評価することであった。WOSCOPS研究の参加者は、年齢45〜64歳であり、そして、平均4.9年間冠状動脈事象について追跡された。ネスト化された症例−対照研究には、症例として、冠状動脈事象(常習性の非致死的MI、CHDからの死、または血管再生処置)を経験した全てのWOSCOPS患者(N=580)を含めた。対照は、冒されていない患者に対して年齢および喫煙状態をマッチングさせた。
CARE患者サンプルにおけるSNPの遺伝子型決定のために、Qiagen製のQIAampキットのような従来のDNA抽出法を用いて血液サンプルからDNAを抽出した。遺伝子型は、Iannoneによって記載されるものと同様の方法によって得た(M.A.Iannone et al.,Cytometry 39(2):131−140[Feb.1,2000];また、「SNP検出試薬」の節において上にも記載される)。簡単に述べると、標的DNAを、複合(multiplex)PCRによって増幅し、そして、この増幅産物を、複合オリゴライゲーションアッセイ(OLA)に供し、特異的にライゲーションした産物を、Luminex xMAP(登録商標)Multi−Analyte COOHミクロスフェアに共有結合させた独特のユニバーサル「ZIPコード」オリゴマー配列に対してハイブリダイズさせ、そして、これらのハイブリダイゼーション産物/ミクロスフェアを、高速自動化複合システム(Luminex 100機器)において検出した。
特定のhCV3054799 Argを有する個体が、CAREにおける再発性のMI、および、WOSCOPSにおけるCHD事象を発症するリスクが増加し、そして、これらの個体が、CHD事象の減少によって示されるように、スタチン処置に応答したという結論を支持するデータについては、表5および6を参照されたい。CAREのプラセボアームでは、KIF6 719Argリスク対立遺伝子の保因者は、年齢、性別、喫煙状態、高血圧の病歴、糖尿病の病歴、ボディマス指数、LDL−CおよびHDL−Cについて調整されたモデルにおいて、1.50(95% CI 1.05〜2.15、表5)の再発性MIに対するハザード比を有した。WOSCOPSのプラセボアームでは、KIF6
719Argリスク対立遺伝子の保因者が、高血圧の病歴、糖尿病の病歴、ボディマス指数、LDL−CおよびHDL−Cについて調整されたモデル(症例と対照とは、年齢および喫煙状態についてマッチングされている)において、1.55(95% CI 1.14〜2.09、表5)のCHDに対するオッズ比を有したことが分かった。
CAREでは、プラバスタチン処置が、719Agリスク対立遺伝子の保因者において、再発性MIの相対的リスクを37%低下させ(調整後のHR 0.63、95% CI
0.46〜0.87、表6)、WOSCOPSの保因者では、プラバスタチン処置は、0.50(95% CI 0.38〜0.68、表6)の原発性CHDに対するオッズ比をもたらした。KIF6 Trp719Argについての遺伝子型頻度は、CAREコホートにおいて、TrpTrp、ArgTrpおよびArgArgについて、それぞれ40.6%、46.5%および12.8%であった。WOSCOPS対照群では、頻度は、それぞれ、44.2%、43.6%および12.2%であった。表5および表6のデータは、以下のようにして導いた:
CARE患者の解析では、統計学的解析は、SASバージョン9で行った。CAREにおいてCox比例ハザードモデル(Wald検定)を用いて、プラセボアームにおける偶発的なMIのリスクと、遺伝子型によって規定される下位集団におけるプラセボと比したMIに対するプラバスタチンの効果との両方と、遺伝子型との相関性を評価した。WOSCOPS患者の解析では、対照が前もって症例に対してマッチングされているという条件で、WOSCOPSにおいて条件付ロジスティック回帰モデルを用いた。「治験中のMI」という表題の行には、臨床治験期間中に再発性MIを罹患した患者の数を列挙する。
ハザード比(オッズ比(OR)と似た概念である)についてのHR標準。事象を用いない生存解析におけるHRは、事象のハザードまたはリスクに対する解釈による変数の効果である。例えば、HRは、特定の対立遺伝子の保因者と非保因者との間での冠状動脈事象の割合の比較に基づいて、MIを発症する可能性を記述する;それゆえ、HR=1.5とは、特定の対立遺伝子の保因者が、研究の追跡期間に、非保因者よりも50%高い冠状動脈事象のリスクを有することを意味する。HRはまた、SNP遺伝子型によって規定される下位集団において、スタチンで処置された患者と、プラセボ(または他のスタチン)で処置された患者との間での冠状動脈事象の割合の比較に基づいて、冠状動脈事象に対するスタチン治療の効果を記述し得る;それゆえ、HR=0.5とは、例えば、特定の対立遺伝子の保因者が、プラセボと比較して、スタチン治療による冠状動脈事象の50%の低下を有したことを意味する。表6では、p交互作用値を計算した。交互作用(または、効果の変更)は、第三の変数が曝露と結果との間の関係性を変更する際に形成される。p交互作用 <0.05は、第三の変数(遺伝子型)が、曝露(スタチン処置)と結果(MI)との間の関係性を変更することを示す。遺伝子型と薬物との交互作用は、スタチンの効果(プラセボと比したときの、スタチン処置群における疾患の発生数)が異なる遺伝子型を持つ患者において異なる場合に存在する。hCV3054799リスク対立遺伝子は、CAREではMIのリスクを予測し、そして、WOSCOPSでは、CHDのオッズと関連付けられた。
両方の治験において、KIF6 719Argリスク対立遺伝子の保因者(集団の約60%)が、冠状動脈事象の減少という点で、プラバスタチン治療から有意な利益を享受したのに対し、非保因者は、有意な利益を享受しなかった。さらに、名目上のリスク低下は、非保因者よりも、KIF6 719Arg対立遺伝子の保因者においてより大きかった:CAREでは、保因者において37%の有意なリスク低下が観察されたのに対し、非保因者においては、20%の有意でないリスク低下が観察され、そして、WOSCOPSでは、保因者において50%の有意なリスク低下が観察されたのに対し、非保因者においては、9%の有意でないリスク低下が観察された。遺伝子型と処置との間の有意な交互作用は、WOSCOPSにおいては観察されたが(p=0.01の交互作用)、CAREでは、有意差に達しなかった(p=0.39)(表6)(Iakoubova et al.,「Association of the Trp719Arg polymorphism in kinesin−like protein 6 with myocardial infarction and coronary heart disease in 2 prospective trials:the CARE and
WOSCOPS trials」,J Am Coll Cardiol.2008 Jan 29;51(4):435−43(その全体が本明細書中に参考として援用される))。
(実施例2:hCV3054799のリスク対立遺伝子の保因者は、プラバスタチン(Pravachol(登録商標))処置に加えたアトルバスタチン(Lipitor(登録商標))処置から利益を享受した)
実施例1において先に考察したように、KIF6 719Argリスク対立遺伝子の保因者は、プラセボと比して、プラバスタチン(Pravachol(登録商標))処置によって、非保因者より大きなCAREおよびWOSCOPSの治験における(それぞれ)再発性のMIおよび原発性のCHDの減少を有した(これらの研究のプラセボアームにおいて、KIF6 719Arg対立遺伝子の保因者は、非保因者に比して50%高いCHDの発生率を有することが観察された)。CAREおよびWOSCOPSでは、KIF6 719Argリスク改変体の保因者が、プラセボと比して、プラバスタチン処置から非保因者より大きなCHD事象の減少を有したというこれ以前の観察を考慮すると、PROVE−IT(「プラバスタチンまたはアトルバスタチンの評価および感染治療(Pravastatin or Atorvastatin Evaluation and Infection Therapy)」)研究において、高用量のアトルバスタチン(Lipitor(登録商標))での集中治療が、標準用量のプラバスタチン処置と比して、保因者において、非保因者よりも大きな再発性CHD事象の低下をもたらすかどうかを決定した。さらに、この治験では、KIF6 719Argリスク対立遺伝子の保因者が、プラセボと比して、標準用量のプラバスタチンから利益を享受するのとちょうど同じように、KIF6 719Argリスク対立遺伝子の保因者が、標準用量のプラバスタチンと比して、高用量のアトルバスタチンを用いた集中治療から利益を享受するかどうかを決定した。
KIF6 719Arg保因者に対するスタチン処置の効果をさらに検討するため、急性冠状動脈症候群を持つ患者における死または大規模な心臓血管事象の予防における、プラバスタチンと比較したアトルバスタチンの効果を評価した「プラバスタチンまたはアトルバスタチンの評価および感染治療(Pravastatin or Atorvastatin Evaluation and Infection Therapy)」(PROVE−IT)と称される研究から抽出した集団において、遺伝的相関性の研究を行った。PROVE−ITプロトコールの設計は、これ以前に記述されている(Christopher P.Cannon.,et al.,Intensive versus moderate lipid lowering with statins after acute coronary syndromes.N Engl J Med,2004,350(15):pp.1495−04)。
簡単に述べると、PROVE−ITは、急性冠状動脈症候群後の再発性冠状動脈事象のリスクに対する、集中的なスタチン治療(80mg/日のアトルバスタチン)および中程度のスタチン治療(40mg/日のプラバスタチン)の効果を比較するために、ペアの要因設計を用いた無作為化された治験であった。患者は、18〜36ヶ月追跡し、平均して24ヶ月の追跡を行った。この遺伝学的研究は、PROVE−ITコホートにおける4162人の患者のうち、遺伝子解析について成文のインフォームドコンセントを提供した2061人の患者を含んだ。
この遺伝子解析について、評価は、(1)本明細書中に略述したように、首尾よくDNA抽出および遺伝子型決定を受けている(32人の患者は、DNAの量または質が不適当であることから除外された);(2)白色人種である(非白色人種は、集団の10.4%のみを構成し、別々の解析に十分な検出力を提供せず、さらに、集団層化が組み合わせた解析を危うくする可能性があるため);(3)モデル1および2において調整された共変に関する情報を有する(93人の患者は、情報を欠いていることから除外された)PROVE−IT患者に限定された。上に列挙した基準を満たす1724人の患者のうち、1344人(78.0%)が男性であった。この遺伝子研究には、任意の原因または大規模な心臓血管事象からの死の複合エンドポイントを使用し、これには、MI、入院を要する実証された不安定狭心症、血管再生(無作為化から少なくとも30日後に行われたもの)、および脳卒中を含めた(Iakoubova et al.,「Polymorphism in KIF6 gene and benefit from statins after acute coronary syndromes:results from the PROVE IT−TIMI 22 study」,J Am Coll Cardiol.2008 Jan 29;51(4):449−55)。この研究は、Brigham and Women’s Hospitalおよび全ての参加センターの倫理調査委員会によって承認を受けた。
KIF6の遺伝子型は、先に記載したように、対立遺伝子特異的なリアルタイムPCRを用いて決定した。Cox比例ハザードモデル(Wald検定)を用いて、KIF6 719Arg保因者および非保因者における偶発的なCHDに対するアトルバスタチン処置の効果を評価した。調べた連続変数は、年齢、ベースラインのLDL−CおよびベースラインのHDL−Cのレベルであった。調べた分類変数(categorical variable)は、喫煙状態(習慣的 対 非習慣的)、高血圧およびベースラインの糖尿病であった。全ての報告したp値は両側であった。
高用量のアトルバスタチン治療は、標準用量のプラバスタチン治療と比して、KIF6 719Arg対立遺伝子の保因者において実質的かつ有意な利益をもたらしたが、非保因者では実質的かつ有意な利益はもたらさなかった。保因者(PROVE−IT集団の58.7%)では、高用量のアトルバスタチンでの治療は、標準用量のプラバスタチンと比して、冠状動脈事象の相対的なリスクを44%低減させた。ハザード比は、年齢、性別、喫煙状態、高血圧の病歴、糖尿病の病歴、LDL−CおよびHDL−Cのベースラインレベルについての調整の後に、0.56(95%信頼区間 0.42〜0.75;P<0.0001)であった。対照的に、非保因者では、高用量のアトルバスタチン治療は、標準用量のプラバスタチンと比して、0.97(95%信頼区間 0.72〜1.31;P=0.84)の調整後のハザード比をもたらした。高用量のアトルバスタチンからの利益における保因者と非保因者との間のこの差は、有意であった(遺伝子型と処置との間の交互作用について、P=0.01)(表7)。
したがって、表7のデータは、PROVE−ITコホートにおける冠状動脈事象の発生数に対する、プラバスタチンと比較したアトルバスタチンの効果を示す。表7からわかるように、KIF6 719Arg対立遺伝子の保因者は、プラバスタチンと比して、アトルバスタチン治療から利益を享受し、そして、非保因者は、アトルバスタチンから有意な利益を享受しなかった。この知見は、KIF6 719Argリスク対立遺伝子の保因者が、プラセボと比して、非保因者よりも大きな利益をプラバスタチンから享受したというCAREおよびWOSCOPS研究における先の観察と合わせて、両方のスタチン(プラバスタチンおよびアトルバスタチン)が、KIF6 719Arg対立遺伝子の保因者においては冠状動脈事象を実質的かつ有意に低減するが、非保因者においては冠状動脈事象を実質的にも有意にも低減しないことを意味している。さらに、高用量のアトルバスタチンは、KIF6 719Arg対立遺伝子の保因者における冠状動脈事象の低減において、プラバスタチンよりも効率的である(Iakoubova et al.,「Polymorphism in KIF6 gene and benefit from statins after acute coronary syndromes:results from the PROVE IT−TIMI 22 study」,J Am Coll Cardiol.2008 Jan 29;51(4):449−55(その全体が本明細書中に参考として援用される))。
したがって、KIF6 719Arg対立遺伝子の保因者が多数の異なるタイプのスタチン(例えば、親水性スタチンであるプラバスタチンおよび親油性スタチンであるアトルバスタチンの両方)から利益を享受することが、実施例2において本明細書中に示されており、特に、親水性および親油性の両方のスタチンに有用であることが具体的に示されているので、このSNP、ならびに、本明細書中に開示される他のスタチン応答に関連するSNPは、全クラスのスタチンを越えて同様の有用性を有することが期待される。それゆえ、KIF6 Trp719Arg SNPは、全クラスのスタチンについての治療効果の予測(例えば、個体が任意のスタチン(フルバスタチン(Lescol(登録商標))、ロバスタチン(Mevacor(登録商標))、ロスバスタチン(Crestor(登録商標))およびシンバスタチン(Zocor(登録商標))、ならびにシンバスタチンとエゼチミブ(Vytorin(登録商標))、ロバスタチンと持続放出型のナイアシン(Advicor(登録商標))およびアトルバスタチンとベシル酸アムロジピン(Caduet(登録商標))のようなスタチンを含む組み合わせ治療が挙げられるがこれらに限定されない)から利益を享受するかどうかの決定)に広く有用である。
さらに、KIF6 719Arg対立遺伝子の保因者では、標準用量のプラバスタチン治療と比較した、高用量アトルバスタチン治療からの実質的かつ有意な利益は、早くも無作為化から30日後には明らかとなり、そして、治験の全体にわたって有意なままであった:30日目における調整前のハザード比は、0.18(95% CI、0.04〜0.81)であった。KIF6 719Arg対立遺伝子の保因者において見られる早期の利益とは対照的に、非保因者では、あらゆる時点において、中程度の治療と比較して集中治療の有意な利益は見られなかった。
LDL−Cコレステロール、CRPおよびトリグリセリドレベルは、心臓血管事象に対するリスクファクターであり、集中的なスタチン治療によって低下させられ得るので、高用量のアトルバスタチンまたは標準用量のプラバスタチンのいずれかでの処置に応答したこれらのリスクファクターレベルの変化が、KIF6 719Arg対立遺伝子の保因者と非保因者との間で異なるか否かを解析した。高用量アトルバスタチン群または標準用量のプラバスタチン群のいずれにおいても、治療中のあらゆる時点において、保因者と非保因者との間でこれらのリスクファクターが異なったという証拠は見出せなかった。具体的には、ベースラインまたは研究中のあらゆる予定された診察時にKIF6 719Arg対立遺伝子の保因者と非保因者とを比較すると、両方の処置群において、LDL−C、CRPまたはトリグリセリドレベルのメジアンにおける有意差は見られなかった(p≧0.3)。
これらのデータは、保因者における冠状動脈事象の減少に対する、集中的なスタチン治療のこの早期の優位性が、LDLの低下に起因するようではないスタチンからの早期の利益を説明するために提案された多面発現的な効果である、集中処置レジメンの早期のプラーク安定化作用に起因し得ることを示唆する。多面発現の機構は、処置時のメジアンLDL−Cレベルが保因者と非保因者との間で異ならなかったという本明細書中に記載される観察と一致している。さらに、KIF6 719Arg対立遺伝子の保因者および非保因者は、ベースラインまたは治験中のメジアンCRPレベルが異ならなかったので、KIF6 719Arg対立遺伝子の保因者における集中的なスタチン治療からのこの早期の利益は、CRPレベルの低下に関連する抗炎症機構とは別のようである(Iakoubova et al.,「Polymorphism in KIF6 gene and benefit from statins after acute coronary syndromes:results from the PROVE IT−TIMI 22 study」,J Am Coll Cardiol.2008 Jan 29;51(4):449−55(この全体が本明細書中に参考として援用される))。
(実施例3:KIF6 719Arg改変体の高齢保因者は、CHDに対するリスクが高く、そしてまたスタチン治療から利益を享受するが、非保因者は利益を享受しなかった:PROSPER研究からの結果)
KIF6におけるTrp719Arg多型(rs20455/hCV3054799)のArg改変体は、CHD、特にMIのより大きなリスク、および、スタチン治療からのより大きな利益に関連付けられることが、上記実施例1および2において示されている。この実施例3において記載される解析は、この改変体の高齢保因者が冠状動脈事象に対するリスクがより高いかどうか、そして、高齢保因者がスタチン治療から有意な利益を享受するかどうかを確認することに関する。
この解析では、KIF6 Trp719Arg多型を、「リスク状態にある高齢者におけるプラバスタチンの期待される研究(Prospective Study of Pravastatin in the Elderly at Risk)」(PROSPER)治験(PROSPERは、Shepherd et al.,Lancet.2002 Nov 23;360(9346):1623−30においてさらに記載される)からのサンプルにおいて解析した。PROSPERは、高齢の男性および女性(年齢70〜82歳)の二次および一次の両方の治験であった。PROSPER治験における患者のかなりの割合が、治験への登録前に、MIまたは他の血管疾患を有しており、そして、残りの患者は、登録前に血管事象を有さなかった。KIF6の保因状態と以前の血管事象との間に交互作用が観察されているので、血管事象を持つ群と血管事象を持たない群とを別々に遺伝子型決定した。
5752人の患者をPROSPER治験において遺伝子型決定し、そして、Cox比例ハザードモデルを用いて、(1)プラセボアームの非保因者と比較した、719Arg保因者における冠状動脈事象に対するリスク、および(2)プラバスタチンアームにおける719Argの保因状態に応じたスタチン治療の効果、を調べた。
表8は、PROSPER治験のプラセボアームにおける3つの遺伝子型と保因者(少数のホモ接合性およびヘテロ接合性)の患者の数を示す。以前に血管疾患を有したプラセボ群の患者のうち、719Arg保因者(59.0%)は、非保因者と比較して、冠状動脈事象に対するリスクが表面上増大していた:ハザード比=1.25(95% CI 0.95〜1.64;表9)。ヘテロ接合性については、非保因者と比較して、ハザード比=1.33(95% CI 1.01〜1.77;表9)であった。
表10は、PROSPER治験のプラセボアームにおける3つの遺伝子型と保因者(少数のホモ接合性およびヘテロ接合性)の患者の数を示す。表11は、PROSPER治験のプラバスタチンアームにおける3つの遺伝子型と保因者(少数のホモ接合性およびヘテロ接合性)の患者の数を示す。プラバスタチンの効果を評価するために、リスク評価を用いて、遺伝子型によって規定される下位集団におけるプラバスタチンアームとプラセボアームとを比較した。
以前に血管疾患を有したプラセボ群の患者では、プラバスタチン治療から実質的かつ有意な利益が観察された(ハザード比 0.67、95% CI 0.52〜0.87;表12)のに対し、非保因者では、有意な利益は観察されなかった(ハザード比 0.92、95% CI 0.68〜1.25;表12)。719Argの保因状態とプラバスタチン処置との間の交互作用を表13に示す(p=0.12)。
このように、KIF6 719Arg対立遺伝子の高齢保因者は、非保因者と比してCHD(例えば、MI)に対するリスクが高く、そして、KIF6 719Arg対立遺伝子の高齢保因者は、スタチン治療から有意な利益を享受するが、非保因者は利益を享受しない。
(実施例4:KIF6 SNPと連鎖不均衡状態にあるSNPの同定−CAREおよびWOSCOPSにおける27のタギングSNP(tagging SNP)の解析)
CHDとも関連付けられ得るKIF6 Trp719Arg SNP(rs20455/hCV3054799)と連鎖不均衡状態にあるSNPを同定するために、KIF6 Trp719Arg SNP付近のゲノム領域における27のSNP(本明細書中で、「タギングSNP(tagging SNP)」と称され得る)を、CARE治験およびWOSCOPS治験の両方からのサンプルにおいて解析した(CARE治験およびWOSCOPS治験は、実施例1においてさらに記載される)(Iakoubova et al.,J Am Coll Cardiol.2008 Jan 29;51(4):435−43,特に、オンライン補遺(その全体が本明細書中に参考として援用される))。
CHDと、KIF6 Trp719Arg SNPと連鎖不均衡状態にあり得る他のSNPとの間の相関性を調べるために、Haploview(Barrett et al.,Bioinformatics 2005;21:263−5)において実行されるTagger(de Bakker et al.,Nat Genet 2005;37:1217−23)内のペアワイズタギング(pairwise tagging)を用いて、Trp719Arg SNPをまたぐゲノム領域において、Trp719Argを含む27のタギングSNPを選択した。これらのまたがったゲノム領域は、KIF6遺伝子(第6染色体のヌクレオチド位置39,347,330〜39,442,863、ヌクレオチド位置は、2005年10月のHapMapリリース#19に基づく;The International HapMap Project.Nature 2003;426:789−96)の95.5kbにわたり、そして、HapMap公開リリース#19において2%を超える対立遺伝子頻度を有する148のSNPを含む。この27のタギングSNP(Trp719Arg SNPを含む)は、0.93の平均r2でこれらの148SNPのうち117をタグとした(SNPの91%が>0.8のr2でタグとされた;平均タギングr2は0.7であった)。148のSNPのうち他の31は、Trp719Arg SNPと強い連鎖不均衡状態になかった(r2≦0.25)ので、KIF6 Trp719Arg SNPと疾患との間に観察された相関性の原因である可能性が低い。これらの27のタギングSNPは、CAREおよびWOSCOPSのサンプルにおいて遺伝子型決定され、そして、両方の研究のプラセボアームからのr2値を用いて、KIF6 Trp719Argと、他のタギングSNPとの間で連鎖不均衡が評価された。
この解析に基づけば、これらの27のタギングSNPのうちの5つ(KIF6 Trp719Arg、ならびに、rs9471077、rs9394584、rs11755763およびrs9471080)は、CAREのプラセボアームにおける再発性のMI、およびWOSCOPSのプラセボアームにおけるCHDと相関していることが分かり(p<0.15;メタ分析 p<0.05)、そして、KIF6 Trp719Argおよびrs9471077が特に強く相関していた(表14)。リスク評価とp値とは、各SNPについて、表14に示される遺伝子モデルに基づいて計算した。CAREおよびWOSCOPSの両方における遺伝子型の数もまた表14に示す。表14に提供されるメタ分析の結果は、CAREおよびWOSCOPSを組み合わせた解析において最低のp値を与えた遺伝子型モデルまたは遺伝子モデル(付加的、優性、劣性)のいずれかからのリスク評価およびp値を示す。
表14のSNP(薬物応答、特にスタチン処置からの利益と関連付けられることが本明細書中のどこかに示されている、KIF6 Trp719Arg SNP以外のもの)をさらに解析して、CHDリスクが増大した個体が、プラバスタチン処置から利益を享受するかどうかを決定した。KIF6 Trp719Arg SNPに加えて、表14の4つの他のSNP(rs9471080/hCV29992177、rs9394584/hCV30225864、rs9471077/hCV3054813およびrs9462535/hCV3054808、これらは、以下の「実施例4−追加の解析」の節において以下に記載される)は、(表14に示されるような)CHDのリスクとのその相関性に加えて、CAREおよびWOSCOPSサンプルにおいてプラバスタチン処置からの利益と関連付けられる(これは、表22に示される)ことが分かった。このように、これらの4つのSNPは、CHDのリスク(特にMI)およびスタチンによる利益の両方と関連付けられる。
rs9471077は、Trp719Arg SNPと強い連鎖不均衡状態にあり(プラセボ処置患者においてr2=0.79)、そして、Trp719Argおよびrs9471077についてのリスク比は、CAREおよびWOSCOPSのプラセボアームにおいて同様であった。従来のリスクファクターについて調整した後のCAREにおけるハザード比は、Trp719Argおよびrs9471077についてそれぞれ1.57および1.54(p=0.01および0.02)であり、そして、WOSCOPSにおける調整後のオッズ比は、Trp719Argおよびrs9471077についてそれぞれ1.59および1.46(p=0.003および0.01)であった。KIF6領域のハプロタイプには、CAREにおける再発性のMIおよびWOSCOPSにおけるCHDの両方と、KIF6 Trp719Arg SNP単独よりも有意に関連付けられるものはなかった。rs9471077 SNP(イントロン性のSNP)とCHDとの相関性は、大部分、そのミスセンスTrp719Arg SNP(CHDおよびMIの病因において機能的役割を担い得る)との連鎖不均衡(r2=0.79)によって説明されるようである。
(実施例4−追加の解析:KIF6 SNP付近のゲノム領域におけるSNPの細かいマッピング解析)
この節に記載される解析では、上記実施例4において記載したSNPに加えて、CHD(特にRMI)および/または薬物応答と関連付けられるSNPを同定するために、CARE(CARE治験は、実施例1においてさらに記載される)においてKIF6 SNP付近の他のSNPを解析した。これらのマーカーは、KIF6 SNP rs20455付近のゲノム領域の細かいマッピングによって位置を特定した。解析したKIF6 SNP rs20455付近のゲノム領域は、第6染色体のヌクレオチド位置39,335,279〜39,679,743(ヌクレオチド位置は、Hapmap位置構築36(Hapmap position build 36)に基づいた)であった。
CAREは、二次的な予防治験であった。CARE治験における患者は全て、治験への登録前10ヶ月以内にMIを有した。5年間の追跡の間に、264人の患者がMIをもう一度経験し、そして、2649人の患者がMIをもう一度発症しなかった。プラセボ処置群では、これらの264人の患者のうち150人の患者が、MIをもう一度経験し、そして、これらの2649人の患者のうち1290人の患者が、MIをもう一度発症しなかった。プラバスタチン処置群では、114人の患者がMIをもう一度経験し、そして、この群において1359人の患者は、MIをもう一度発症しなかった。
特定の遺伝子多型において異なる遺伝子型を持つ個体が、CAREのプラセボアームにおける再発性MI(RMI)と関連付けられるか否かを解析した。この解析のために、フィッシャーの正確検定を用いて以下の点を比較した(表15):大部分のホモ接合性個体におけるRMI事象の割合と比較した少数のホモ接合性個体におけるRMI事象の割合;大部分のホモ接合性個体におけるRMI事象の割合と比較したヘテロ接合性個体におけるRMI事象の割合;および大部分のホモ接合性個体におけるRMI事象の割合と比較した小数のホモ接合性個体もしくはヘテロ接合性個体におけるRMI事象の割合。CAREのプラセボアームにおける6つのマーカーの異なる遺伝子型についての再発性RMIと遺伝子型数との相関性の結果を表15に示す。
薬物応答との相関性を決定するために、フィッシャーの正確検定を用いて、以下のようにして、遺伝子型により規定されるCARE下位集団において、プラセボと比したプラバスタチンの効果を評価した:プラセボで処置された少数のホモ接合性個体におけるRMI事象の割合と比較したプラバスタチンで処置された少数のホモ接合性個体におけるRMI事象の割合;プラセボで処置されたヘテロ接合性個体におけるRMI事象の割合と比較したプラバスタチンで処置されたヘテロ接合性個体におけるRMI事象の割合;プラセボで処置された大部分のホモ接合性個体におけるRMI事象の割合と比較したプラバスタチンで処置された大部分のホモ接合性個体におけるRMI事象の割合;およびプラセボで処置された少数のホモ接合性個体またはヘテロ接合性個体におけるRMI事象の割合と比較したプラバスタチンで処置された少数のホモ接合性個体またはヘテロ接合性個体におけるRMI事象の割合。オッズ比と対応する95%信頼区間の推定値を計算した(表16)。CAREコホートにおける正確検定を用いて、Hardy−Weinbergの期待値からの偏差を評価した。エンドポイントとしてRMIを用いて、CARE集団における解析を行った。上記のモデルまたはモードのいずれかにおいてRMIのリスクに対するプラバスタチン処置の効果と有意な(<0.05のp値)相関性を示す遺伝子多型を表16に列挙する。
さらなる解析において、CAREおよびWOSCOPSのサンプルを組み合わせ、そして、ロジスティック回帰モデルを用いて、各研究について調整された場合の各SNPのCHDとの相関性について、リスク、95%信頼区間(95%CI)および両側p値(表14の「メタ分析」を参照のこと)を計算した。例えば、Trp719Arg SNPの周囲のゲノム領域の細かいマッピングによって同定され、ちょうど記載したようなCARE治験からのサンプルにおいて解析され(そして、表15〜16に示され)たrs9462535 SNP(hCV3054808)を、WOSCOPS治験からのサンプル、および、CAREとWOSCOPSとを組み合わせたメタ分析においてさらに解析した。このWOSCOPS、およびCAREとWOSCOPSとを組み合わせたメタ分析の追加の解析に基づけば、rs9462535 SNP(hCV3054808)がCHDに関連していることがさらに確認された(表14)。
(実施例5:動脈瘤または解離に対する素因についての遺伝子マーカー)
この実施例5において記載される解析は、KIF6 SNP(hCV3054799/rs20455)が大動脈の動脈瘤および解離と関連しているかどうかを決定することに関する。
KIF6 SNP(hCV3054799)が、大動脈の動脈瘤または解離と関連付けられるかどうかを決定するために、このSNPを、以下の2つのエンドポイントを用いて解析した:(1)大動脈の動脈瘤または大動脈剥離をエンドポイントとして用い、動脈瘤または解離を有する患者を動脈瘤または解離を有さない患者に対して比較した(表17に示される)、および、(2)大動脈解離をエンドポイントとして用い、解離を有する患者を解離を有さない患者に対して比較した(表18に示される)。
この研究集団は以下のとおりであった。胸大動脈の動脈瘤(TAA)または胸大動脈解離を有する555人の白色人種患者を、動脈瘤または解離をエンドポイントとする解析について遺伝子型決定した。胸大動脈解離を有する128人の白色人種患者を、解離をエンドポイントとする解析について遺伝子型決定した。動脈瘤または解離を有さない180人の患者を、両方の解析についての対照として用いた。全てのサンプルは、米国およびハンガリーからのものであった(米国のサンプルは、本明細書中で「Yale University」サンプルと称され得る)。
この解析に基づけば、KIF6 SNP(hCV3054799)は、動脈瘤または解離、および、解離のみと関連付けられる(p値≦0.05)ことが分かり、そして、両方の状況におけるリスク対立遺伝子は、このSNPについて、これまでにMIと関連付けられたものと同じ対立遺伝子であった(両方のエンドポイントについての遺伝子型の数を表19および20に示す)。また、対照におけるこのSNPの遺伝子型は、Hardy−Weinberg平衡の下で予測された分布から外れていなかった(p値>0.01)。
(実施例5−追加の解析)
この「実施例5−追加の解析」の節において記載される解析は、KIF6 SNP(hCV3054799/rs20455)が、CHDとは関係なく、大動脈の動脈瘤および解離と関連付けられるか否かを決定することに関する。
この解析のために、上記実施例5からのYale Universityサンプル(実施例5において上述されるように、対照と共に胸大動脈の動脈瘤または解離を有する個体を含んだ)を用い、CHD事象を有した個体を症例および対照のサンプルセットから除いた。この解析に関して、CHDは、MI、経皮的経管的冠状動脈形成術(PTCA)または冠状動脈バイパス移植(CABG)として規定した。
次いで、以下の2つのエンドポイントにおける相関性について、KIF6 SNPをこのサンプルセット(CHDを有する個体は除いた)において解析した:1)解離のみ、および2)動脈瘤または解離。この解析の結果を表21に示す。
表21に示されるように、KIF6 SNP(hCV3054799/rs20455)は、CHDを有さない患者においても、解離、ならびに、動脈瘤または解離と関連付けられる。それゆえ、KIF6 SNP(hCV3054799/rs20455)の動脈瘤/解離との相関性は、CHDとは無関係である。
このように、KIF6 SNP(hCV3054799/rs20455)は、(実施例5および「実施例5−追加の解析」の節において本明細書中で示されるように)大動脈の動脈瘤および大動脈解離に対するリスク、ならびに、CHD(MIを含む)のような他の冠状動脈事象に対するリスクと関連付けられる。それゆえ、このSNPは、多数の異なる冠状動脈事象と関連付けられることが示され、それゆえ、他の冠状動脈事象においても同様の有用性を有するものと期待される。その結果、KIF6 SNP(hCV3054799/rs20455)ならびに本明細書中に開示される他のSNPは、冠状動脈事象の全スペクトルに関して広く有用である。さらに、KIF6 SNP(hCV3054799/rs20455)はまた、発作のような他の心臓血管事象とも関連付けられている(例えば、2008年2月20日出願の米国仮特許出願第61/066,584号,Luke et al.を参照のこと)。それゆえ、このSNPは、多数の異なる心臓血管事象と関連付けられることが示され、それゆえ、他の心臓血管事象においても同様の有用性を有するものと期待される。その結果、KIF6 SNP(hCV3054799/rs20455)ならびに本明細書中に開示される他のSNPは、心臓血管事象の全スペクトルに関して広く有用である。さらに、このSNPは、特に、MI、不安定狭心症、血管再生および発作の事象の減少のためのスタチン治療からの利益と関連付けられることが示された(例えば、実施例2を参照のこと)。KIF6 SNP(hCV3054799/rs20455)ならびに本明細書中に開示される他のSNPはまた、特に、脆弱なプラークに対する個体のリスクを決定するために有用である。
(実施例6:CHDおよび薬物応答に関連付けられた、計算されたLD SNP)
本明細書中に記載され、そして表に示されるように、CHD(特に、MI)、動脈瘤/解離および/または薬物応答(特に、スタチン応答)と関連付けられることが分かった特定の「照会SNP(interrogated SNP)」と連鎖不均衡(LD)状態にあると計算されるさらなるSNPを同定するために、別の検討を行った。照会SNPは、表4の第1欄(各照会SNPのhCV識別番号を示す)および第2欄(各照会SNPの公開rs識別番号を示す)に示す。方法論は、本願において先に記載される。簡単にまとめると、LDマーカーを用いた疾患との相関性の検出について、検出力の閾値(T)を適切なレベル(例えば、51%)に設定した。この検出力の閾値は、以前の疾患との相関性の研究からの対立遺伝子頻度データと、本当に疾患と相関するマーカーを検出しない予想された誤り率と、0.05の有意性レベルとを組み込む上記の式(31)に基づく。各照会SNPについて、この検出力の計算およびサンプルサイズを用いて、LDの閾値レベルすなわちr2値(
は、照会SNPとその可能なLD SNPとの間の連鎖不平衡の最小値であり、その結果、非照会SNPは依然として疾患との相関性の検出についてT以上の検出力を保持する。
上記方法論に基づいて、照会SNPについてのLD SNPを見出した。照会SNPについてのいくつかの例示的なLD SNPを表4に列挙する;各LD SNPは、そのそれぞれの照会SNPと関連付けられる。また、存在する場合、照会SNPおよびLD SNPについての公開SNP ID(rs番号)、閾値r2値およびこれを決定するために用いた検出力、ならびに、照会SNPとその対応するLD SNPとの間の連鎖不均衡のr2値も示す。表4における例のように、照会SNP rs20455(hCV3054799)(CHD(特に、MI)ならびに、動脈瘤/解離および薬物応答(特に、スタチン応答)と関連付けられることが本明細書において示されるKIF6 SNP)は、51%の検出力の計算に基づいて、1のr2値においてrs6924090(hCV29161261)とLDの状態にあると計算され、したがって、この後者のSNPをCHD、動脈瘤/解離、または、薬物応答にも関連するマーカーとして確定させた。
本明細書中に引用される全ての刊行物および特許は、本明細書中で完全に参考として援用される。記載されている本発明の組成物、方法およびシステムの種々の改変および変化が、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者に明らかである。本発明は、特定の好ましい実施形態および特定の実施例と関連して記載されているが、特許請求されているような本発明が、このような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際に、分子生物学、遺伝学および関連する分野の当業者に明らかな、本発明を実施するための上に記載された様式の種々の改変が、添付の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。