JP2013137306A - X線導波路及びx線導波システム - Google Patents

X線導波路及びx線導波システム Download PDF

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康平 岡本
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Abstract

【課題】 選択性が高く、広いコアの断面にわたって位相がそろった導波モードを短距離で形成でき、高い空間コヒーレンスを有するX線を実現することができるX線導波路を提供する。
【解決手段】 X線を導波させるためのクラッドとコアからなるX線導波路であり、前記コアが、X線の導波方向に垂直な方向において、屈折率実部の異なる複数の物質よりなる周期構造体を含み、前記X線の波長と前記周期構造体の周期性に対応して決定されるブラッグ角が、前記コアと前記クラッドの界面における前記X線の全反射臨界角よりも小さく、前記ブラッグ角が、前記周期構造体をなす複数の物質間の界面での前記X線の全反射臨界角よりも大きく前記コアは、該コアを構成する周期構造体の周期数が互いに異なる2以上の領域を有し、この周期数の変化分に対応してコアの周期方向の幅が前記2以上の領域で互いに異なることを特徴とするX線導波路を提供する。
【選択図】 図7

Description

本発明は、X線導波路及びX線源とX線導波路とを有するX線導波システムに関する。本発明のX線導波路は、X線分析技術、X線撮像技術、X線露光技術などにおけるX線光学系、およびそれに用いられるX線光学部品などに用いることが可能である。
数10nm以下の短い波長の電磁波を扱う際、異物質間における電磁波に対する屈折率差が非常に小さいため、物質間界面を基準とした全反射角や屈折角が非常に小さくなる。このような理由により、従来、波長の短い電磁波を制御するためには、主に大型の空間光学系が用いられてきており、今でもなお主流となっている。空間光学系をなしている主な部品として、結晶ミラーや異なる屈折率の材料を交互に積層した多層膜反射鏡があり、ビーム整形、スポットサイズ変換、波長選択などの様々な役割を担っている。
このような空間光学系に対し、従来のポリキャピラリのようなX線導波管を用いた部品は、その中にX線を閉じ込めて伝搬させるものである。さらに近年では光学系の小型化、高性能化を目指し、薄膜や多層膜中に電磁波を閉じ込めて伝搬させる、X線導波路の研究が行われている。最も基本的なX線導波路の構成は、コアとしての十分薄い空気層や膜をクラッド層で挟み込んだシングルモード導波路が挙げられ、導波方向に垂直な方向において空間コヒーレンスをもつ導波モードのX線を形成することが可能である。ところがこのシングルモード導波路は、導波路のシングルモード条件を満足するために、コアの厚さが非常に薄くなっており、実際に単位時間当たりに導波することのできるX線の量が少ないという欠点が存在する。このような問題を解決するために、導波路のコアの幅を段階的に縮小してゆき、混在したマルチモードの導波モードを徐々に変換してゆくことによって、非常に狭い幅のコアにX線を集中させるテーパー形状のX線導波路(非特許文献1)が提案されている。また、導波方向においてクラッドを周期的に形成し、特定の導波モードのみを導波路に共鳴させることにより、この導波モードを選択的に導波させて、広い断面のコアにおいてもシングルモードの導波モードを形成可能にするX線導波路(非特許文献2)が提案されている。
Optics Communications,Volume 281,Issue 10,p.2779(2008) Optics Letters,Volume 36,Number 14,p.2602(2011)
しかしながら、先行技術文献で提案されているX線導波路には以下のような課題が存在する。
非特許文献1で提案されているX線導波路の目的は導波路終端部付近において疑似的な点光源を形成することにあり、そのために広い断面のコア領域に混在する多数の異なる導波モードを徐々に狭い断面のコア領域に密集させていくものである。導波路のコア断面は徐々に小さくなるが、導波路終端部付近における導波モードは、単一のものではなく複数の導波モードが混ざり合った複雑なものとなっており、コアの断面にわたって空間的な位相はそろわないものとなってしまう。つまり、空間的なコヒーレンスを有する単一の導波モードを形成することはできない。
また非特許文献2で提案されているX線導波路は、一つの選択的に導波させる目的の導波モードを選択的に導波させるものである。導波方向においてクラッドを周期的に形成することによりこの周期に共鳴する目的の導波モードだけをコアとクラッドの界面で全反射させて、その他の導波モードがこの周期と共鳴しないように設計されている。クラッドが形成されていない部分で、目的の導波モード以外の導波モードは放射されてしまい、目的の導波モードのみを導波させることが可能になる。しかし、基本的に導波モードは、導波方向にわたるコアとクラッドの界面全体においてX線が全反射を繰り返すことにより形成されるものなので、クラッドが形成されていない部分において、目的とする導波モードのX線が部分的に導波路のコア外部へ放射されてしまい、大きな伝搬損失を生じてしまうとともに、目的としない導波モードに対する目的の導波モードの導波モードとしての選択性が低下してしまう。
上記課題を解決するため本発明のX線導波路は、
X線を導波させるためのクラッドとコアからなるX線導波路であり、
前記コアが、X線の導波方向に垂直な方向において、屈折率実部の異なる複数の物質よりなる周期構造体を含み、
前記X線の波長と前記周期構造体の周期性に対応して決定されるブラッグ角が、前記コアと前記クラッドの界面における前記X線の全反射臨界角よりも小さく、
前記ブラッグ角が、前記周期構造体をなす複数の物質間の界面での前記X線の全反射臨界角よりも大きく、
前記コアは、該コアを構成する周期構造体の周期数が互いに異なる2以上の領域を(前記X線の導波方向に)有し、この周期数の変化分に対応してコアの周期方向の幅が前記2以上の領域で互いに異なる
ことを特徴とするものである。
本発明は、導波モードとしての選択性が高く、広いコアの断面にわたって位相がそろった導波モードを形成でき、高い空間コヒーレンスを有するX線を実現することができるX線導波路を提供することを可能とするものである。
(a)周期構造体が、導波断面において、1次元だけの周期構造を有する場合の、これに対応する基本ベクトルを表す模式図である。(b)周期構造体が、導波断面において、2次元の周期構造を有する場合の、これに対応する基本ベクトルを表す模式図である。(c)周期構造体が、導波断面において、2次元の周期構造を有する場合の、これに対応する基本ベクトルを表す模式図である。 近似的に定義されるブラッグ角を説明するための、等周期面よりなる周期構造とX線の関係を表す模式図である。 X線導波路中の導波モードの有効伝搬角度と、伝搬定数である導波方向の波数ベクトルおよび真空中の波数ベクトルの関係を表す模式図である。 X線導波路が互いに平行に対向したクラッドを有する場合の、ブラッグ角の定義について説明するための模式的な断面図である。 周期共鳴導波モードを形成しうる基本的なX線導波路の一形態を表す模式的な斜視図である。 周期共鳴導波モードを形成する基本的なX線導波路の一形態における、導波モードの伝搬損失と有効伝搬角度の関係を表す、計算により得られたグラフである。 本発明の一実施形態に係るX線導波路の構成一を表す模式的な断面図である。 本発明の一実施形態に係るX線導波路における、X線の閉じ込め方向とコアをなす周期構造体の周期数変化との関係について説明するための図である。 実施例1のX線導波路の構成を表す模式的な断面図である。 (a)は、実施例3のX線導波路の製造を表す模式的な斜視図である。(b)は、実施例3のX線導波路中に形成される周期共鳴導波路の、導波断面における電場強度分布の一部を表す模式図である。 (a)は、実施例4のX線導波路の構成を表す模式的な斜視図である。(b)は、実施例4のX線導波路中に形成される周期共鳴導波路の、導波断面における電場強度分布の一部を表す模式図である。 本実施例の導波路の端面から平面波を入射した場合のX線の透過率の、入射角度に対するグラフである。 コアの周期数が互いに異なる2以上の領域がX線の導波方向において周期的に配置されているX線導波路の一例を表す模式的な断面図である。 実施例5の導波路の端面から光子エネルギー8キロエレクトロンボルトのX線を入射した場合の、透過率のy−z面上、z方向に対する入射角度依存性を示すグラフである。 コアークラッド界面における全反射が繰り返される例を説明するための模式的な断面図である。 実施例5のX線導波路の構成を表す模式的な断面図である。
以下、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。
本発明の好適な実施形態のX線導波路は、X線を導波させるためのクラッドとコアからなる。コアは、X線の導波方向に垂直な方向において、屈折率実部の異なる複数の物質よりなる周期構造体を含む。また、X線の波長と周期構造体の周期性に対応して決定されるブラッグ角が、コアとクラッドの界面におけるX線の全反射臨界角よりも小さい。前記ブラッグ角は、前記周期構造体をなす複数の物質間の界面での前記X線の全反射臨界角よりも大きい。
さらに、本実施形態の導波路は、コアが、該コアを構成する周期構造体の周期数が互いに異なる2以上の領域を(前記X線の導波方向に)有し、この周期数の変化分に対応してコアの周期方向の幅が前記2以上の領域で互いに異なることを特徴とする。ここで、典型的には、前記周期構造体の周期数が互いに異なる2以上の領域は、前記X線の導波方向に配置されることになる。
別の表現を用いれば、本実施形態の導波路は、X線の導波方向において、コアを構成する周期構造体が、その断面において周期数が異なる領域を有し、この周期数の変化分に対応して前記断面におけるコアの幅が変化していることを特徴とする。
また、別の表現を用いれば、本実施形態の導波路は、以下の2つの特徴を有する。まず、第一に、コアを構成する周期構造体を構成する繰り返し単位に着目したときに、繰り返し数(これは、周期数と同義である)が、X線導波方向に変化している部分があるという点である。第二に、この変化に応じて。コアを構成する繰り返し単位数も変化しているという点である。なお、この繰り返し単位は、X線の導波方向と垂直な方向に繰り返されているものである。
本発明においてX線とは、物質の屈折率実部が1以下となる波長帯域の電磁波であり、極端紫外光(Extreme Ultra Violet(EUV)光)を含む100nm以下の波長の電磁波を指すものとする。このような短い波長の電磁波の周波数は非常に高く、物質の最外殻電子が応答できないため、紫外光の波長以上の波長をもつ電磁波(可視光や赤外線)の周波数帯域と異なり、X線に対しては物質の屈折率の実部が1より小さくなることが知られている。このようなX線に対する物質の屈折率nは一般的に、下記の式(1)
n=1−δ−iβ’=n’−iβ’ 式(1)
で表されるように、屈折率実部の1からのずれ量δ、物質中でのX線の減衰に関係する虚部のβ’を用いて表される。この減衰は多くの場合物質中でのX線の吸収として考えることができる。δは物質の電子密度ρに比例するため電子密度の大きい物質ほど屈折率の実部n’が小さくなることになる。また、式(1)からわかるように屈折率実部n’は、
n’=1−δ
となる。さらに、ρは原子密度ρと原子番号Zに比例する。つまり、本発明において屈折率実部が異なる2種以上の物質とは多くの場合電子密度が異なる二種以上の物質であるということもできる。このようにX線に対する物質の屈折率は複素数で表されるが、その実部を本明細書中では屈折率実部と称し、虚部を屈折率虚部と称する。
物質中におけるX線の吸収は、物質の電子密度に依存するので、真空状態を、ある屈折率の物質で満たされていると考えた場合に、その屈折率実部は1と最大となる。このことから、本発明においては、真空を屈折率実部が1であり屈折率虚部が0の一つの物質として定義することとする。
本実施形態のX線導波路は、コアとクラッドを備えており、コアとクラッドとの界面での全反射によりX線をコアの中に閉じ込めて導波モードを形成し、X線を伝搬させるものである。この全反射によるX線の閉じ込めを実現するために、X線に対するクラッドの屈折率実部がコアをなすすべての物質の屈折率実部よりも小さくなるように、本実施形態のX線導波路は構成されているものである。
本実施形態のX線導波路中に形成される導波モードのX線は、コアが延びる方向へ導波されるが、この方向を本明細書中では導波方向と称する。導波方向は、導波モードの伝搬定数に平行な方向である。また本明細書中では、導波方向に垂直な断面を導波断面と称する。
本実施形態のX線導波路のコアは、導波断面内で、屈折率実部の異なる複数の物質が周期的に配列された周期構造体を含むものである。導波断面内で、周期構造体は1次元または2次元の周期性を有し、それぞれの場合についてその周期に対応したブラッグ角θを定義することができる。本実施形態におけるブラッグ角は、最低次のブラッグ角とする。導波断面において周期構造体が1次元の周期性を有する場合は一つ、周期構造体が2次元の周期性を有する場合は一つ、または複数のブラッグ角が定義される。
図1(a)に1次元周期構造の例、図1(b)および(c)に2次元周期構造の例を示す。102、105、108はそれぞれ各周期構造をなす物質のうち屈折率実部の小さい方の物質を示し、103、106、109はそれぞれ屈折率実部の大きい方の物質を示す。各周期構造は、これらの物質部分からなり、例えば単位格子をそれぞれ101、104、107とする。すると、図中の矢印で示すように、図1(a)の周期構造において基本ベクトル
Figure 2013137306
、図1(b)の周期構造において基本ベクトル
Figure 2013137306
、図1(c)の周期構造においても基本ベクトル
Figure 2013137306
を定義することができる。図1(b)、(c)のように周期構造の周期性が2次元である場合、基本ベクトルが周期性を表す限り、これら基本ベクトルの決め方は幾通りも考えることができるが、本明細書中では考えうる複数の基本ベクトルのうち、その絶対値が最小の二つのベクトル、または最小と2番目に小さな二つのベクトルを、2次元周期構造を表す二つの基本ベクトルとする。このようにして決められる任意の基本ベクトルを
Figure 2013137306
、その大きさを
Figure 2013137306
とすると、
Figure 2013137306
に平行な方向の周期性における周期(格子定数)が
Figure 2013137306
であることになる。また、この基本ベクトル
Figure 2013137306
は、周期
Figure 2013137306
の1次元周期構造を意味し、図2のように、1次元方向における周期性を表すものとされる等周期面201が周期
Figure 2013137306
で1次元周期配列したものと近似的にみなすことができる。この際、等周期面の間を満たす媒質の屈折率は周期構造体をなす物質の平均屈折率であるとする。この構造にX線を入射するモデルは、結晶にX線を照射して回折方向を検出する結晶分析でよく知られたモデルであり、周期構造である結晶を扱うX線光学におけるブラッグ角の考え方と同じようなものとして、本実施形態の周期構造のX線に対するブラッグ角も考えることができる。本実施形態におけるブラッグ角は、等周期面からの角度とする。例えば図2において、等周期面201に対して入射角206で入射するX線が周期構造中での干渉の結果、強くブラッグ反射される条件は、入射光線202および203の反射X線204および205が強め合う条件となり、このときの入射角をブラッグ角θとすれば、X線の波長と周期構造体の周期性に対応して決定されるブラッグ角θを、下記の式(4)
Figure 2013137306

と表すことができる。ここで、λはX線の波長であり、
Figure 2013137306
は周期構造の平均屈折率である。ただし、これはあくまで近似モデルに基づくものであるので、実際のX線回折実験で得られる角度帯域を有するブラッグ角とはやや異なるが、本発明を説明する上でのブラッグ角として用いるものである。
また、周期構造体は複数の物質の周期配列によりなるものであるので、周期構造体の中には、これら複数の物質間での界面が存在する。これら界面は屈折率実部の異なる物質の間で形成されているため、周期構造中の屈折率実部の大きな物質から屈折率実部の小さな物質に向かってX線が界面に突入する際、X線が全反射される入射角度帯域が存在するので、このような界面においてもX線に対する全反射臨界角が定義される。周期構造中で界面をなす二つの物質のうち屈折率実部の大きい物質の屈折率実部をn’high、屈折率実部の小さい物質の屈折率実部をn’lowとして、この界面つまり周期構造体をなす複数の物質間の界面でのX線の全反射臨界角θc−inは、
Figure 2013137306
と表すことができる。本実施形態の全反射臨界角は界面からの角度とする。
近似的に導波モードが一つの基本波の干渉により形成されるものであるとすると、図3のように、真空中の波数ベクトル
Figure 2013137306
と導波方向の波数ベクトル
Figure 2013137306
のなす角度として、各導波モードの基本波の有効伝搬角度(真空中の波数ベクトルと導波方向の波数ベクトルのなす角)
Figure 2013137306
が下記の式(6)のように定義される。
Figure 2013137306
ここで、導波モードの伝搬定数
Figure 2013137306
である。
本実施形態のX線導波路は、周期構造中での多重干渉の結果得られる周期構造と共鳴する伝搬モードを閉じ込めて、X線を導波させるものである。そしてこの共鳴モードの有効伝搬角度は、ブラッグ反射の角度帯域のうち最小の角度に相当する。つまり、この共鳴モードのX線が本実施形態のX線導波路の周期構造中に存在するためには、有効伝搬角
Figure 2013137306
がおよそθであるX線が周期構造中の角界面において全反射されてはならないということになるので、本実施形態のX線導波路の構成は以下の条件に従うものである。
θC_in<θ 式(7)
上記の式(7)の条件は、X線の波長と周期構造体の周期性に対応して決定されるブラッグ角が、周期構造体をなす複数の物質間の界面でのX線の全反射臨界角よりも大きいという条件を表すものである。
クラッドとコアの界面におけるクラッド側の物質の屈折率実部をnclad、コア側の物質の屈折率実部をncoreとした場合の、膜の面に平行な方向からの全反射臨界角θは、nclad<ncoreとして、
Figure 2013137306
と表される。ただし、本実施形態のX線導波路のコアは非常に小さな周期をもつ周期構造体によりなるものであることにより、X線が全反射する際、X線がコアとクラッドの界面から周期構造体の内部にしみ出すため、実際にはコアとクラッドの界面における全反射臨界角は、コアとクラッドの界面をなすクラッドの屈折率実部と、コアの屈折率実部だけできまる上記の式(8)から少しずれた値になるが、本実施形態のX線導波路を設計する上では、式(8)で表わされる全反射臨界角が、目安の角度として好ましい。本実施形態のX線導波路は、式(7)の条件を満たし、コアの周期構造体の周期性と共鳴する伝搬モードをコアに閉じ込めてX線を導波させるために、有効伝搬角
Figure 2013137306
がおよそθであるX線が、コアからクラッドに向かってコアとクラッドの界面に突入する際に全反射されなくてはならない。つまり、
θ<θ 式(9)
という条件を満たすものである。上記の式(9)の条件は、X線の波長と周期構造体の周期性に対応して決定されるブラッグ角が、コアとクラッドの界面におけるX線の全反射臨界角よりも小さいという条件である。本実施形態のX線導波路が、式(7)および式(9)の条件を満たすように構成されていることにより、本実施形態により、コアをなす周期構造体の周期性と共鳴する導波モードを形成することが可能となる。この導波モードを本明細書中で周期共鳴導波モードと称する。
ここで、本実施形態のX線導波路において、クラッドが1対の互いに平行な対向するものである場合、コアとクラッドの界面に垂直な方向の、コアをなす周期構造の周期性に対応したブラッグ角を、式(7)におけるブラッグ角とする。例えば説明のために、図4に示すように、互いに平行で対向するクラッド403と404に挟まれた領域にコア405が形成されたX線導波路を挙げる。X線の導波方向をz方向として、導波断面において、コア405は、低屈折率実部の物質401中に、導波方向に延びる空孔402が三角格子状の2次元周期構造をなす周期構造体である。この周期構造体において、上記ブラッグ角の説明の部分で述べたように決められる基本ベクトルは、図4中での
Figure 2013137306
および
Figure 2013137306
となるが、本例のX線導波路は、互いに対向する1対のクラッドが構成されたものであるので、式(4)中の
Figure 2013137306
ではなく、コアとクラッドの界面に垂直な方向の周期性に対応する周期dにより置き換えることになる。このように、場合に応じてブラッグ角を定義することにより、X線を閉じ込める方向が1次元方向の場合であっても、2次元方向の場合であっても、本実施形態のX線導波路は式(7)と式(9)を満たすものとなり、周期共鳴導波モードを形成することができる。
図5に本実施形態のX線導波路の構成例を示す。コア506が、金(Au)からなるクラッド501と502により挟まれた構成で、コア506は、厚さ2.8ナノメートルの酸化アルミニウム(Al)504と厚さ11.2ナノメートルのカーボン(C)505が交互に周期的に積層された多層膜であり、1次元周期構造体である。酸化アルミニウム(Al)504とカーボン(C)からなる単位構造503が積層されており、この周期構造体の周期数は25で、周期は14ナノメートルである。多層膜の、クラッド502および501に接する部分はカーボンである。図5中、X線の導波方向をz方向とする。このX線導波路中に形成されうる導波モードの損失の、各導波モードの有効伝搬角度依存性を図6に示す。これは、光子エネルギー8キロエレクトロンボルトのX線に対して、有限要素法を用いて行った計算結果である。図6のグラフは、導波モードの損失を伝搬定数の虚部を用いて縦軸に示し、横軸に導波モードの有効伝搬角度を示す。角度帯域603は、X線が導波路に閉じ込められて導波モードを形成する角度帯域を表し、角度帯域604は、コアとクラッドの界面での全反射臨界角を超えた角度帯域で、X線が導波路に閉じ込められない角度帯域を表す。図6において、有効伝搬角度が小さな低次の導波モードほどその損失が小さく、導波モードの有効伝搬角度が増大するに従い、損失が大きくなってゆく様子がわかる。しかし、図6中のブラッグ角度帯域602付近でこの傾向が大きく破られることがわかる。特にブラッグ角度帯域の最小角度に相当する有効伝搬角度をもつ導波モードの損失が著しく下がることがわかる。これはグラフ中において点601により表わされるもので、周期共鳴導波モードの損失を表すものである。周期共鳴導波モードは周期構造と最も強く共鳴するもので、その電磁場は周期構造中の屈折率実部の大きい物質中つまりカーボン部分中に集中するものである。X線帯域においては、一般的に物質の屈折率実部が大きいほど、その物質の屈折率虚部(吸収などの損失)が小さくなるので、周期共鳴導波モードの電磁場が吸収などの損失が小さい部分に集中すること、および電磁場の包絡線または包絡面がコア中央に偏りクラッドへのしみ出しが小さくなることにより、他の導波モードよりも、その伝搬損失が著しく下がることになる。この事実は、導波路中に形成される導波モードのうち、周期共鳴導波モードが導波モードとして支配的になり、本実施形態のX線導波路のように広いコアを用いたものでも、高次の導波モードを高い選択性をもって導波させることが可能であることを意味する。そして、この選択性が高くなるほど、導波モードの単一性が上がり、導波断面における導波モードの空間コヒーレンスが高くなる。図5のX線導波路の例では、コアが1次元の周期構造体であるので、導波されるX線のコヒーレンスは、1次元方向つまり図5中y方向で高くなる。導波断面において、コアが2次元の周期構造体である場合には、周期共鳴導波モードは、コアの断面全体にわたって制御された、2次元方向において空間コヒーレンスの高い導波モードとなる。
しかしながら、図6に見られるように、例えば点605で示される、周期共鳴導波モードの有効伝搬角と近い低角側の有効伝搬角をもつ導波モードの伝搬損失も、その他の導波モードの伝搬損失よりも下がっていることがわかる。すなわち、有効伝搬角度上で見る、点605で示されるような、周期共鳴導波モードの低角側の隣接導波モードは比較的導波モードとして選択されやすくなってしまうことがわかる。周期構造体の周期数をある程度増やすほど周期共鳴導波モードの損失を下げることができるが、同時にこのような隣接する導波モードの損失も下がってしまうことが分かっている。この状態で、隣接する導波モードを減衰させるには、導波路の導波方向の長さつまり導波距離を長くしなくてはならない。ただし、導波路の長さを長くすると、周期共鳴導波モードも大きく減衰してしまうことになる。
短い導波距離において、このような隣接導波モードの導波モードとしての選択性を下げ、周期共鳴導波モードの選択性をより向上させるため、本実施形態のX線導波路は、X線の導波方向において、前記断面における周期構造体の周期数が変化する領域が設けられ、この周期数の変化分だけ前記断面におけるコアの幅が変化しているように構成されていることを特徴とする。隣接導波モードは、周期共鳴導波モードのように周期構造の周期性に共鳴する導波モードではなく、コア全体を一様な媒質とした場合にコアの幅と共鳴する導波モードである。それゆえ、導波路中に形成され導波方向に伝搬してゆく途中で、隣接導波モードが共鳴しているコアの幅が急激に変化すると、これらの隣接導波モードは変化後のコアの幅に共鳴できずに減衰してしまうことになる。これに対し、周期共鳴導波モードは、コアの周期構造体の周期性に共鳴する導波モードであるので、伝搬過程でコアの幅が急激に変化するとしても、その変化量が周期構造体の周期数の変化によるものであれば、周期構造体であるコアに共鳴しながら伝搬し続けることが可能である。つまり、コアをなす周期構造体の周期数を導波方向において変化させ、この変化分だけコアの幅を変化させることにより、隣接導波モードを減衰させて、周期共鳴導波モードの導波モードとしての選択性を向上させることが可能となる。厳密には、この変化分が厳密に周期の整数倍に一致する場合が、本実施形態の最良の場合となるが、ただし、隣接導波モードの共鳴条件がコア幅だけにより決まるのに対して、周期共鳴導波モードの共鳴条件がコア幅だけでなくむしろ周期構造の周期性により決まることから、本実施形態におけるコア幅の変化分は厳密に周期の自然数倍となる必要はなく、作製誤差などによる多少のずれは許容されるものであり、このずれが本実施形態の効果を損なわせるものとはならない。コア幅が変化する部分は、コア幅が導波方向において不連続に変化していても、連続的に変化していてもよい。
簡単な例として、コアの周期構造体が1次元周期構造であり、このコアが二つのクラッドにより挟まれているX線導波路の構成の例を図7に示す。コアは、相対的に大きな屈折率実部の物質704と小さな屈折率実部の物質703がy方向において1次元周期的に積層された1次元周期構造体であり、701と702がそれぞれ下部クラッド、上部クラッドを表す。X線の導波方向はz方向であり、この例のX線導波路は、式(7)と式(9)を満たすように構成されているものとし、周期共鳴導波モードを形成することができるものである。導波方向において、点線707で示される周期数変化部分を境にその前後で、周期構造体の周期数は1だけ減少している。導波方向において、点線707より前の周期数変化前領域705においては、周期共鳴導波モードのみならず、コアの幅l1に共鳴した比較的伝搬損失の小さな隣接導波モードも存在しうるが、点線707より後の周期数変化後領域706においては、コアの幅がl2となりコアの幅l1に共鳴していた隣接導波モードは、もはやコアの幅l2に共鳴することができず、減衰してゆくことになる。これに対し、点線707の前後で、周期構造体の周期数以外の周期性は変わらないので、周期共鳴導波モードのX線は変わらず周期構造体の周期性と共鳴し伝搬することができる。
コアをなす周期構造体の周期数の変化は、X線導波路を構成するクラッドが1対の互いに平行に対向するものである場合、コアとクラッドの界面に垂直な方向において設定し、その他の場合は、着目する基本ベクトルまたは周期性の高い方向において設定すればよい。例えば、X線が、コアである2次元の周期構造体中に1次元方向において閉じ込められているX線導波路の導波断面と、2次元方向において閉じ込められているX線導波路の導波断面を、それぞれ図8(a)および図8(b)に示す。図8(a)のX線導波路の場合、コアとクラッドの界面での全反射によるX線の閉じ込め方向はy方向に平行であるので、y方向の周期数を、導波方向方向において増減させる部分を設定することにより、本実施形態のX線導波路の構成をなすことができる。図8(a)中では例えば、矢印803で示されるように、導波方向において、コアとクラッドの界面801を802に急激に変化させる部分を設ければよい。また、2次元方向においてX線が閉じ込められている図8(b)のX線導波路の場合でも、例えば矢印806で示すようにy方向に平行なコアとクラッド界面804を805に、導波方向において急激に変化させる部分を設けるなどすればよい。特に、2次元方向においてX線を閉じ込めるX線導波路の場合は、一つの方向の周期数を変化させるだけに限らず、複数の方向における周期数を変化させてもよい。
また本実施形態のX線導波路においては、コアの周期数が互いに異なる2以上の領域が、X線の導波方向において周期的に配置されている。別の言い方をすれば、本実施形態のx線導波路においては、前記断面において周期数が異なる部分、すなわち断面におけるコアの幅が変化している部分が、X線の導波方向において周期的に配置されていることにより、さらに周期共鳴導波モードの選択性を向上させることができる。ここで説明のために図13を用いる。図13は、クラッド1301、1302がコア1303を挟んだ構成のX線導波路であり、X線の導波方向はz方向である。コア1303は相対的に屈折率実部が大きい物質からなる層1304と相対的に屈折率実部が小さい物質からなる層1305とからなる繰り返し構造が複数積み重なって構成されている。導波方向において、周期数が100の大周期数領域1306と周期数が80の小周期数領域1307からなるユニット1308が、導波方向と垂直な方向における周期(1308の長さ)をもって周期的に配置されていることにより、このX線導波路全体としてコアの周期数が導波方向において周期的に変化している。周期数の異なる領域が周期的に複数配置されていることにより、周期共鳴導波モードの選択、およびその他の導波モードの強制的な減衰が繰り返されるため、周期共鳴導波モードの選択性を向上させることができる。また、各導波モードを形成する基本波は、コア−クラッド界面において全反射を周期的に繰り返しており、導波方向における周期共鳴導波モードの全反射の繰り返し周期と、前記コアの周期数の異なる領域の導波方向における周期(前記導波方向において周期的に配置されているコアの周期数が互いに異なる2以上の領域のX線の導波方向における周期)を一致させることにより、導波方向においても周期共鳴導波モードとコアの導波方向における周期の共鳴を起こすことができて、より周期共鳴導波モードの選択性を向上させることができる。ここで、周期共鳴導波モードを形成するX線の基本波の一つに注目して、図15を用いて、全反射の繰り返し周期について説明する。図15(a)および(b)はそれぞれ、コア1501と1504、これらコアを挟むクラッド1502、1503および1505、1506により形成された本実施形態のX線導波路の簡略図である。図15(a)および(b)両方の導波路において、導波方向であるz方向でコアの幅が周期的に変化している。(a)、(b)それぞれの導波路中で周期共鳴導波モードを形成する代表的な基本波がコアとクラッドの界面で全反射を繰り返している様子を矢印1509、1510で表わす。(a)の導波路中、基本波は少周期数領域のコア−クラッド界面で全反射を繰り返していると表わされているのに対し、(b)の導波路中では、基本波が大周期数領域のコア−クラッド界面で全反射を繰り返していると表わされていることになる。(a)、(b)それぞれの場合で、導波方向における全反射の繰り返し周期はそれぞれ、1507および1508であるということになるが、本明細書中の全反射の繰り返し周期としてはこのどちらを用いてよいものとする。これら全反射の繰り返し周期と、コア幅の変化する周期を一致させることにより、効率よく周期共鳴導波モードの選択が行われる。つまり、このことによりコアのy方向の周期性と、導波方向の周期性によりこのX線導波路中の導波モード制御が行われていることになる。また、導波方向におけるコアの周期数変化部分の周期(前記導波方向において周期的に配置されているコアの周期数が互いに異なる2以上の領域のX線の導波方向における周期)は、周期共鳴導波モードの導波方向における全反射の繰り返し周期の自然数倍、または自然数分の1であり、100分の1から10倍の範囲にあることが好ましい。
本実施形態のX線導波路を構成するクラッドをなす材料としては、電子密度の高いものが好ましく、例えば、Au、W、Ta、Pt、Ir、Osなどが挙げられる。これらの材料をスパッタ法などにより成膜することにより、X線導波路のクラッドを形成することができる。
本実施形態のX線導波路を構成するコアが含む周期構造体を、屈折率実部の異なる複数の物質が1次元周期的に積層された構成の周期多層膜により構成することもできる。周期多層膜を構成する物質が、例えば、Be、B、C、BC、BN、SiC、Si、SiN、Al、MgO、TiO、SiO、Pから選択される複数の物質であることが好ましく、それらをスパッタ法などにより、周期的に積層してゆくことにより、コアをなす1次元周期構造体としての多層膜を形成することができる。好ましい形態においては、前記周期多層膜を構成するそれぞれの膜の厚さが前記x線導波方向で一定である。もっとも、この膜厚が厳密に一定であることまでは求められず、実用上問題のない範囲の誤差は当然許容される。
また、コアをなす周期構造体である周期多層膜を、ラメラ構造を有するメソ構造体(ラメラ膜)で構成することにより、本実施形態のX線導波路を構成することもできる。本実施形態におけるメソ構造体とは、界面活性剤の自己集合によって形成される有機−無機ハイブリッド材料からなる構造体であり、2−50nmの構造周期をもつ周期構造体である。メソ構造体には、種々のメソスケールの構造周期性を有するものがある。このようなメソ構造体の無機成分としては、SiO、TiO、SnO、ZrOなどの酸化物が代表的である。メソ構造体のうち1次元周期構造をもつラメラ膜のラメラ構造は、異なる二種類の物質より構成される層状構造であり、この二種類の物質は無機成分を主とする物質と、有機成分を主とする物質により構成される。この無機成分を主とする物質と有機成分を主とする物質は、必要に応じて結合されていてよい。結合されたものの具体例としては、アルキル基の結合したシロキサン化合物から調製されるメソ構造体を挙げることができる。これらラメラ膜はゾル−ゲル法などの手法で基板上に形成されうる。ラメラ膜の構造周期は、使用する界面活性剤の種類や濃度、反応条件などによって適宜所望の値に調整することが可能である。ラメラ膜は、一つの工程において自己組織的に1次元周期構造を形成するので、作製工程の時間と手間を大幅に削減できる。本実施形態のX線導波路のコアをなす1次元周期構造体をラメラ膜とすれば、ラメラ膜を構成する物質の一種がX線の吸収が少ない有機物であることにより、形成される周期共鳴導波モードのX線の伝搬損失にかかる吸収によるX線の伝搬損失を小さくすることができる。
本実施形態のX線導波路を構成するコアをなす周期構造体をメソポーラス材料からなるメソ構造体とすることにより、本実施形態のX線導波路を形成することができる。メソポーラス材料からなるメソ構造体は、一様な媒質中に孔やボイドが周期的に配列されたものであることにより、X線に対して異なる屈折率部分が周期的に配列された屈折率周期構造体として機能する。本実施形態のX線導波路のコアをなすメソポーラス材料からなるメソ構造体は、導波断面において、2次元の周期性を有しており、代表的な構成としては、導波方向に延びる孔が導波断面において三角格子状の2次元周期構造を形成するように配列された2次元周期構造体や、ボイドが六方最密構造をなす3次元周期構造体が挙げられる。メソポーラス材料からなるメソ構造体が、2次元または3次元周期構造体であるどちらの場合においても、導波路の導波断面における構造は2次元周期性を有するものとなる。またメソポーラス材料の孔やボイド内部は、空気などの気体や真空で満たされているものに限らず、有機物および無機物問わず、液体や固体が充填されているものでもよい。
孔の2次元配列よりなるメソポーラス材料中で、導波断面において、孔が1次元方向にのみ周期性を有している場合は、このメソポーラス材料を、この方向において孔と媒質の平均屈折率が周期的に変化する周期多層膜として考えることができる。この場合、このメソポーラス材料を1次元の周期構造体としてコアをなす材料として用いることとなり、上記周期多層膜と同じように、本実施形態のX線導波路を構成することができる。
導波断面において、孔が2次元周期的に配列されているメソポーラス材料は、導波方向に平行な方向に孔が1軸配向しているので、導波路中に形成される周期共鳴導波モードのX線は、導波方向において不変の2次元周期構造中を伝搬することができる。この際、周期共鳴導波モードのモードパターンは、導波断面において、メソポーラス材料の2次元周期性と共鳴した、2次元方向において制御されたものとなる。このモードパターンにおいて、周期共鳴導波モードの電磁場が、導波断面で、周期構造中の屈折率実部が大きく吸収損失が小さい物質中に集中するので、周期共鳴導波モードの伝搬損失は小さなものとなる。さらに、周期共鳴導波モードの導波断面における位相は、2次元周期構造により制御されているため、コアの断面全体にわたってそろったものとなる。
ボイドが3次元周期的に配列された構造の3次元周期構造体であるメソポーラス材料からなるメソ構造体を、本実施形態のX線導波路を構成するコアの材料として用いることもできる。この場合、上記メソポーラス材料が2次元周期構造を有する場合に述べた、導波断面における2次元周期性による周期共鳴導波モードの制御に加え、導波方向の周期性による周期共鳴導波モードの制御が可能となるので、周期共鳴導波モードの時間的な位相変化を制御することが可能である。
本実施形態におけるメソ構造体の調製法は、特に制限されるものではないが、たとえば、集合体として機能する両親媒性物質(特に界面活性剤)の溶液に、無機酸化物の前駆体を加え、成膜を行い、無機酸化物の生成反応を進行させることによって調製される。
また、界面活性剤に加えて、構造周期を調整するための添加物を加えてもよい。この構造周期を調整するための添加物としては、疎水性物質が挙げられる。この疎水性物質の例としては、アルカン類、親水性基を含まない芳香族化合物が挙げられ、その具体的な例としては、オクタンが挙げられる。
無機酸化物の前駆体の例としては、ケイ素や金属元素のアルコキサイド、塩化物が挙げられる。さらに具体的な例としては、Si,Sn,Zr,Ti,Nb,Ta,Al,W,Hf,Znのアルコキサイド、塩化物が挙げられる。アルコキサイドの例としては、メトキサイド、エトキサイド、プロポキサイド、または、その一部がアルキル基に置換されたものが挙げられる。製膜法の例としては、ディップコート法、スピンコート法、水熱合成法が挙げられる。
メソ構造体の構造の制御は、上記作製プロセスにおける材料、プロセス条件を適宜変化させることにより、行うことができる。また、1軸配向性の2次元周期構造を有するメソポーラス材料を作成する際は、上記作製プロセスの前プロセスとして、基板上にラビング工程を経て得られる1軸配向性のポリイミド膜などを形成する工程を設ける。
また、本実施形態のX線導波路のコアをなす周期構造体を、いずれの材料で構成する場合であっても、導波断面における周期構造の周期数の変化および同時にこの変化によるコアの幅の変化をもたらす部分を、導波方向において設けることにより、隣接導波モードのX線を極力減少させて、周期共鳴導波モードのX線を高い選択性をもって導波させることが可能になる。このようにして、導波される周期共鳴導波モードのX線は、コアの周期構造体が1次元の周期性を有する場合は、この1次元方向の広いコア幅に対応した、コアの周期構造体が2次元の周期性を有する場合は、2次元方向において広いコア断面全体にわたる、高い空間コヒーレンスをもつものとなる。
次に、本発明の一実施形態に係るX線導波システムについて説明する。本発明の一実施形態に係るX線導波システムは、少なくとも、X線源及びX線導波路を有する。ここで、X線源としては、1pm以上100nm以下の波長の、一般的なX線帯域のX線を出射するX線源を用いることができる。X線源から出射されるX線は、単一の波長のものであっても、波長に幅をもったものであってもよい。X線源とX線導波路とは、X線源から出射したX線がX線導波路に入射するように配置される。X線導波路としては、これまでに述べてきたX線導波路を用いることが可能である。X線導波システムは、X線源とX線導波路との間に、他の部材(たとえば、多層膜ミラーなど)を有していてもよい。また、X線導波システムは、X線導波路から出射したX線が他の部材に入射するように構成されていてもよい。
本発明のX線導波路の実施形態の例を実施例1として図9を用いて説明する。図9のX線導波路におけるX線の導波方向は、z方向とし、+y方向を上、−y方向を下とする。図9のX線導波路は、シリコン(Si)基板901上の厚さ約20ナノメートルのタングステン(W)からなる下部クラッド902とタングステン(W)からなる上部クラッド903に、周期多層膜であるコアが挟まれた構成となっている。コアである周期多層膜は、厚さ12ナノメートルのカーボン(C)層905と厚さ3ナノメートルの酸化アルミニウム(Al)層904のなす単位構造906がy方向に積層されたものである。つまり、C層とAl層がy方向において、1次元周期的に積層されたものであり、1次元周期構造をなしている。その周期は15ナノメートルであり、最下層と最上層はどちらもAl層となっている。点線909の周期数変化部を境にこの周期多層膜の周期数は、周期数変化前領域907において50、周期数変化後領域908において45となっている。このことにより、y方向におけるコアの幅は、幅911から幅912へと変化しており、その変化分910は、周期多層膜の5周期分に相当し、75ナノメートルとなっている。図9中、変化分910は、説明の簡単のために、1周期分に相当して描かれているが、本実施例ではこの変化分を5周期分とする。これにより、周期数変化前領域907および周期数変化後領域908のクラッド903の厚さは、それぞれ20ナノメートル、および95ナノメートルである。また、導波方向における周期数変化前領域907および周期数変化後領域908の長さは、それぞれ0.5ミリメートルである。
このX線導波路を構成している各層の積層工程として、スパッタ法が用いられる。スパッタ法によりSi基板901上に、下部クラッド902を成膜し、その上に、コア幅911をもつ周期数50の周期多層膜を形成する。この段階で、フォトリソグラフィーとエッチングにより周期多層膜の一部を除去すし、周期多層膜の周期数が5減少している周期数変化後領域908を形成して変化部909を得る。
本実施例のX線導波路において、光子エネルギー10キロエレクトロンボルトのX線と周期多層膜の周期性の関係から得られるブラッグ角は約0.3(°)、このX線の周期多層膜中の各界面における全反射臨界角は約0.084(°)、コアとクラッドの界面における全反射臨界角は約0.38(°)であるので、本実施例のX線導波路は、本明細書中における式(7)および式(9)を満たす構成であるため、1次元周期構造に共鳴する周期共鳴導波モードを形成することが可能なものである。
y−z面において、導波方向に対して約0.3(°)の入射角をもってX線を、周期数変化前領域907の端面のコア部に入射した際、複数の導波モードが励起されるが、これらが導波方向に沿って伝搬するうちに、伝搬損失の大きい導波モードのX線ほど急激に減衰しゆく。複数の導波モードの伝搬損失のうち周期共鳴導波モードの伝搬損失は著しく小さいので、導波方向に伝搬するうちに他の導波モードに対して、周期共鳴導波モードのX線が選択されてゆくことになる。ただし、周期数変化前領域907においては、周期共鳴導波モードの隣接導波モードの伝搬損失もある程度小さいことにより、これら隣接導波モードのX線が存在しうることになる。つまり、z方向における、周期数変化部909での周期数変化前領域907内では、周期共鳴導波モードと隣接導波モードのX線が混在した状態となっている。このときの隣接導波モードはコアの幅911と共鳴する導波モードなので、z方向において周期数変化部909を超えてコア幅の異なる周期数変化後領域908に入った際には、変化したコアの幅912と共鳴できずに急激に減衰してしまう。これに対して、周期共鳴導波モードは、周期構造体の周期性と共鳴するものなので、周期数変化前領域907と周期数変化後領域908の周期数以外の周期性が変わらないことにより、周期数変化後領域内においても、伝搬損失の小さい導波モードとして高く選択され、単一性の高い導波モードのX線が伝搬してゆくことができる。図12は、本実施例の導波路の端面から平面波を入射した場合のX線の透過率の、入射角度に対するグラフである。点線で表した曲線および実線で表した曲線はそれぞれ、周期数変化部がない場合および周期数が周期数変化部において5減少する場合の、透過率を表すものである。矢印1201で示すピークが、周期共鳴導波モードによるX線の選択的な強い透過を意味しており、周期数変化がない場合において1202で示される範囲に隣接モードによるX線の透過が見られる。これに対して、周期数が5減少した本実施例の導波路の場合、1202の範囲の隣接モードによるX線の透過が抑制されていることが分かる。このように周期共鳴導波モードの単一性が高いことから、本実施例のX線導波路の終端付近でのX線が、y方向において、幅911という広い幅のコアにわたって位相のそろった、空間コヒーレンス長の長いものとなりうる。
本発明のX線導波路の別の例を、実施例2として説明する。本実施例のX線導波路は、実施例1のX線導波路のコアをなす周期多層膜をラメラ構造のメソ構造体で構成したものであり、実施例1と同様に図9を用いて説明する。本実施例におけるラメラ構造のメソ構造体は、Si基板上に形成されたタングステン(W)上に、ゾルーゲル法を用いて形成されたラメラ膜で、厚さおよそ3ナノメートルのシリカ(SiO)層と厚さおよそ7ナノメートルの有機物層がy方向に1次元周期的に積層された構造となっている。本実施例のX線導波路において、光子エネルギー10キロエレクトロンボルトのX線とラメラ膜の周期性の関係から得られるブラッグ角は約0.37(°)、このX線のラメラ膜中の各界面における全反射臨界角は約0.1(°)、コアとクラッドの界面における全反射臨界角は約0.4(°)であるので、本実施例のX線導波路は、本明細書中における式(7)および式(9)を満たす構成であるため、1次元周期構造に共鳴する周期共鳴導波モードを形成することが可能なものである。特に、本実施例において、コアがラメラ膜により構成されており、周期共鳴導波モードのX線が、導波断面において有機物層に強く集中した分布をもって伝搬するため、伝搬損失を小さくすることができる。このラメラ膜の周期数は、周期数変化前領域907において48周期であり、周期数変化後領域908において46となっており、周期数変化部909において周期数が2変化し、コアの幅は911から912へと約20ナノメートル変化している。実施例1と同様に、周期数変化部909を境に、隣接導波モードのX線が減衰し、周期共鳴導波モードが強く選択されて導波することにより、単一性の高い、空間コヒーレンス長の広いX線を得ることができる。
本発明のX線導波路の別の例を、実施例3として、図10(a)を用いて説明する。本実施例のX線導波路は、実施例1のX線導波路のコアをなす周期構造体を、メソポーラス材料からなるメソ構造体で構成したものである。本実施例におけるメソポーラス材料は、シリカ(SiO)1004中で、有機物で満たされた導波方向(z方向)に延びる孔1005が、導波断面で2次元方向において配列されたものである。ただし、このメソポーラスシリカの孔は、1軸配向性を有するものではなく、本実施例では、y方向にのみ周期性を有するものである。それゆえ、シリカと孔の平均的な電子密度が異なる二つの層が、y方向で1次元周期的に積層された、近似的な周期多層膜としてみなすことができる。本実施例のX線導波路は、このメソポーラスシリカを、Si基板1001上に形成された厚さ約40ナノメートルのタングステン(W)からなる下部クラッド1002と、タングステン(W)からなる上部クラッド1003で、y方向において挟んだ構成となっている。光子エネルギー8キロエレクトロンボルトのX線と、周期多層膜の近似的な周期多層膜としてのメソポーラスシリカのの周期性の関係から得られるブラッグ角は約0.41(°)、このX線の周期多層膜中の各界面における全反射臨界角は約0.13(°)、コアとクラッドの界面における全反射臨界角は約0.52(°)であるので、本実施例のX線導波路は、本明細書中における式(7)および式(9)を満たす構成であるため、1次元周期構造に共鳴する周期共鳴導波モードを形成することが可能なものである。また、導波方向における周期数変化前領域1009および周期数変化後領域1010の長さは、それぞれ0.5ミリメートルである。本実施例のX線導波路の、導波断面におけるコアの一部を図10(b)に示す。図10(b)中の実線が、構造の境界を表し、より白く表現された領域ほど周期共鳴導波モードの電場強度がより大きい領域を表し、より黒く表現された領域ほど周期共鳴導波モードの電場強度がより小さい部分を表す。コアの断面が2次元構造であるにもかかわらず、1次元周期多層膜中の周期共鳴導波モードのように1次元周期構造と共鳴する周期共鳴導波モードが形成されることが、図10(b)から明らかである。実施例1および実施例2と同様に、導波方向において、点線1008で示すように、この近似的な1次元周期多層膜の周期数が変化する周期数変化部1008を、本実施例のX線導波路は有している。図10(b)の点線が、y方向における1次元周期構造の等周期面を表し、その間隔つまり周期1012は、約10ナノメートルである。図10(a)中で、周期数変化前領域1009におけるy方向の周期数は49、周期数変化後領域1010におけるy方向の周期数は44となっていて、周期数変化部1008を境にy方向におけるコアの幅は、1006から1007へと、5周期に相当する変化分1011だけ変化している。このように、コアの幅が導波方向において変化していることにより、周期共鳴導波モード以外の導波モードが、周期数変化後領域において急激に減衰することにより、より高い選択性をもって、周期共鳴導波モードのX線を伝搬させることができる。つまり、単一性の高い、広いコア幅にわたる空間コヒーレンス長の長い導波モードのX線を形成することが可能である。
本発明のX線導波路の別の例を、実施例4として、図11(a)を用いて説明する。本実施例のX線導波路のコアは、メソポーラスシリカであるメソポーラス材料からなるメソ構造体により構成されている。このメソポーラス材料は、シリカ1104中に導波方向(z方向)に延びる空気で満たされた孔1105が、導波断面において三角格子状の2次元周期構造を形成している2次元周期構造体である。図11(b)に示すコア断面の一部において、実線が構造の境界を表し、二つの矢印1112および1113がこの2次元周期構造体の二つの基本ベクトルを表していて、その大きさは約16.2ナノメートルである。本実施例のX線導波路は、Si基板1101上で、タングステン(W)からなるクラッド1102がメソポーラスシリカのなすコアを、導波断面において2次元方向において囲んでいる構成となっている。このことにより本実施例においてコアとクラッドの界面は、y−z面に平行なものとz−x面に平行なものとが存在することになる。光子エネルギー8キロエレクトロンボルトのX線にたいして、コアとクラッドの界面における全反射臨界角が約0.52(°)、このX線と導波断面における周期構造の基本ベクトルの大きさの関係から得られるブラッグ角が約0.32(°)であり、空気からなる孔1105とシリカ1104の界面における全反射臨界角が約0.2(°)であるので、本実施例のX線導波路により、周期共鳴導波モードを形成することができる。本実施例では、クラッドがコアを囲んでいることから、X線が導波断面で2次元方向において閉じ込められ、閉じ込められたX線が2次元周期構造と共鳴するものが周期共鳴導波モードとなるので、この周期共鳴導波モードは導波断面において2次元方向で制御されているものとなる。図11(b)において、より白く表現された領域ほど周期共鳴導波モードの電場強度がより大きい領域を表し、より黒く表現された領域ほど周期共鳴導波モードの電場強度がより小さい部分を表すので、本実施例のX線導波路中に形成される周期共鳴導波モードが2次元周期構造と強く共鳴するもので、その電磁場が損失の小さい空気の孔の中に集中することがわかる。このことにより、本実施例における周期共鳴導波モードの伝搬損失が非常に小さなものになることがわかる。しかし、1次元方向で制御された周期共鳴導波モードを形成するX線導波路の場合と同様に、本実施例における周期構造のような2次元方向において制御された周期構造を形成するX線導波路においても、周期共鳴導波モードの導波モードとしての選択性を下げてしまうような隣接導波モードが存在する。これら隣接モードは、コアの広さと共鳴する導波モードであるので、本実施例のX線導波路に周期構造の周期数変化部1106を設定することで、このような隣接導波モードのX線をより減衰させて、周期共鳴導波モードのX線を高い選択性をもって伝搬させることができる。図11(a)中、点線で示される領域は、導波方向において周期数変化前領域1110に相当するコアの領域を表し、一点鎖線で示される領域は周期数変化後領域1111に相当するコアの領域を表している。導波方向における周期数変化前領域1110および周期数変化後領域1111の長さは、それぞれ0.5ミリメートルである。周期数変化部1106を境に、周期数変化前領域1110におけるx方向の120周期分に相当する約970ナノメートルのコアの幅1103が、周期数変化後領域1111におけるx方向の110周期分に相当する約890ナノメートルのコアの幅1107へと変化しており、この変化量は、x方向の周期性の5周期分の幅1108およびもう5周期分の幅1109の和となっている。この際、図11(b)中の点線1114が、x方向における等周期面を表す。このことにより、周期数変化後領域1107において、隣接導波モードを急激に減衰させて、周期共鳴導波モードをより選択的に導波させることが可能となっている。本実施例におけるX線導波路に形成される2次元方向で制御された周期共鳴導波モードは、広いコアの断面全体にわたって位相がそろった、単一性の高い特性を持つため、本実施例のX線導波路により、広い断面領域全体にわたって高い空間コヒーレンスをもつX線を形成することができる。
本実施例のX線導波路の作製プロセスについて述べる。Si基板1101上にスパッタにより、約20ナノメートルのタングステンを成膜した後、その上にゾルーゲルプロセスにて、メソポーラスシリカを形成する。フォトリソグラフィーとエッチングを施すことにより、メソポーラスシリカのパターニングを行い、周期数変化前領域1110に相当するコア部分および周期数変化後領域1111に相当するコア領域を形成する。さらに、タングステンからなる最上部のクラッド膜厚が約30ナノメートルになるように、スパッタによりタングステンを成膜することにより、本実施例のX線導波路を作製することができる。
本発明の実施例5としてのX線導波路について図16を用いて説明する。本実施例のX線導波路は、タングステンからなるクラッド1602と1603と、それらに挟まれたコア1601よりなり、コアの幅は導波方向であるz方向において周期的に変化している。コアは、厚さ3ナノメートルの酸化アルミニウム(Al)と厚さ12ナノメートルの炭化ホウ素(BC)がy方向において積層された周期多層膜であり、その周期数は、大周期数領域1604で100、少周期数領域で80となっている。この導波路の中で周期共鳴導波モードを形成する光子エネルギー8キロエレクトロンボルトのX線の有効伝搬角度はおよそ0.295°であり、コアの大周期数領域で全反射を繰り返すとした場合の全反射の繰り返し周期の8倍はおよそ584マイクロメートルである。本実施例の導波路の全体の長さ1607は全反射の繰り返し周期の8倍である584マイクロメートルと一致しており、コア幅が変化するユニットの周期が、その8分の1である73マイクロメートルとなっている。図14は本実施例の導波路の端面から光子エネルギー8キロエレクトロンボルトのX線を入射した場合の、透過率のy−z面上、z方向に対する入射角度依存性を示すものである。黒丸、白丸で表わされる透過率はそれぞれ、本実施例のX線導波路、およびコア幅の変化がない同じ長さのX線導波路におけるものであり、それぞれ最大強度で規格化したものである。コア幅の変化がないX線導波路に対して、本実施例のX線導波路では、周期共鳴導波モードによるX線の透過を表すピーク1401の周りの、1402、1403で表わされる他の導波モードによるX線の透過が抑制され、周期共鳴導波モードの選択性が向上していることが分かる。
以上述べたような、本発明の好適な実施形態に係るX線導波路は、シンクロトロンなどから出力されるX線を操作するためのX線光学系、X線撮像技術、X線露光技術などにおけるX線光学系などに用いられる部品などのX線光学技術分野に利用することができる。
101 屈折率実部の小さい物質の部分
102 単位格子
103 屈折率実部の大きい物質の部分
104 単位格子
105 屈折率実部の小さい物質の部分
106 屈折率実部の大きい物質の部分
107 単位格子
108 屈折率実部の小さい物質の部分
109 屈折率実部の大きい物質の部分
201 等周期面
202 入射X線
203 入射X線
204 反射X線
205 反射X線
206 入射角
401 低屈折率実部の物質
402 空孔
403 クラッド
404 クラッド
405 コア
501 クラッド
502 クラッド
503 単位構造
504 酸化アルミニウム部分
505 カーボン部分
506 コア
601 周期共鳴導波モードに対応する点
602 ブラッグ角度帯域
603 角度帯域
604 角度帯域
605 隣接導波モードの一つに対応する点
701 下部クラッド
702 上部クラッド
703 周期構造体中の屈折率の小さな物質部分
704 周期構造体中の屈折率の大きな物質部分
705 周期数変化前領域
706 周期数変化後領域
707 周期数変化部分
801 周期数変化前のコアとクラッドの界面
802 周期数変化後のコアとクラッドの界面
803 コアとクラッドの界面の変化を表す矢印
804 周期数変化前のコアとクラッドの界面
805 周期数変化後のコアとクラッドの界面
806 コアとクラッドの界面の変化を表す矢印
901 シリコン(Si)基板
902 下部クラッド
903 上部クラッド
904 酸化アルミニウム(Al)層
905 カーボン(C)層
906 単位構造
907 周期数変化前領域
908 周期数変化後領域
909 変化部
910 変化分
911 コアの幅
912 コアの幅
1001 シリコン(Si)基板
1002 下部クラッド
1003 上部クラッド
1004 シリカ(SiO
1005 孔
1006 コアの幅
1007 コアの幅
1008 周期数変化部
1009 周期数変化前領域
1010 周期数変化後領域
1011 変化分
1012 周期
1101 シリコン(Si)基板
1102 クラッド
1103 コアの幅
1104 シリカ(SiO
1105 孔
1106 変化部
1107 コアの幅
1108 変化分
1109 変化分
1110 周期数変化前領域
1111 周期数変化後領域
1112 基本ベクトルを表す矢印
1113 基本ベクトルを表す矢印
1114 等周期面

Claims (16)

  1. X線を導波させるためのクラッドとコアからなるX線導波路であり、
    前記コアが、X線の導波方向に垂直な方向において、屈折率実部の異なる複数の物質よりなる周期構造体を含み、
    前記X線の波長と前記周期構造体の周期性に対応して決定されるブラッグ角が、前記コアと前記クラッドの界面における前記X線の全反射臨界角よりも小さく、
    前記ブラッグ角が、前記周期構造体をなす複数の物質間の界面での前記X線の全反射臨界角よりも大きく、
    前記コアは、該コアを構成する周期構造体の周期数が互いに異なる2以上の領域を有し、この周期数の変化分に対応してコアの周期方向の幅が前記2以上の領域で互いに異なる
    ことを特徴とするX線導波路。
  2. 前記コアの周期数が互いに異なる2以上の領域が、X線の導波方向において周期的に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のX線導波路。
  3. 前記導波方向において周期的に配置されているコアの周期数が互いに異なる2以上の領域のX線の導波方向における周期が、導波路中に形成されるコアの周期構造と共鳴する導波モードを形成する基本波の、コアとクラッドの界面での全反射の導波方向における繰り返し周期と一致することを特徴とする、請求項2に記載のX線導波路。
  4. 前記導波方向において周期的に配置されているコアの周期数が互いに異なる2以上の領域の導波方向における周期が、導波路中に形成されるコアの周期構造と共鳴する導波モードを形成する基本波の、コアとクラッドの界面での全反射の導波方向における繰り返し周期の自然数倍、または自然数分の1であり、100分の1から10倍の範囲にあることを特徴とする請求項2に記載のX線導波路。
  5. 前記周期構造体が、屈折率が互いに異なる複数の物質からなる膜が積層された周期多層膜であることを特徴とする請求項1から4のいずれに記載のX線導波路。
  6. 前記周期多層膜を構成するそれぞれの膜の厚さが前記x線導波方向で一定であることを特徴とする請求項5に記載のX線導波路。
  7. 前記周期多層膜が、ラメラ構造を有するメソ構造体であることを特徴とする請求項5又は6に記載のX線導波路。
  8. 前記周期構造体が、メソポーラス材料からなるメソ構造体よりなることを特徴とする請項1から4のいずれかに記載のX線導波路。
  9. X線源と、該X線源から出射したX線を導波するX線導波路とを少なくとも有するX線導波システムであって、
    前記X線導波路は、X線を導波させるためのクラッドとコアからなり、
    前記コアが、X線の導波方向に垂直な方向において、屈折率実部の異なる複数の物質よりなる周期構造体を含み、
    前記X線の波長と前記周期構造体の周期性に対応して決定されるブラッグ角が、前記コアと前記クラッドの界面における前記X線の全反射臨界角よりも小さく、
    前記ブラッグ角が、前記周期構造体をなす複数の物質間の界面での前記X線の全反射臨界角よりも大きく、
    前記コアは、該コアを構成する周期構造体の周期数が互いに異なる2以上の領域を有し、この周期数の変化分に対応してコアの周期方向の幅が前記2以上の領域で互いに異なる
    ことを特徴とするX線導波システム。
  10. 前記コアの周期数が互いに異なる2以上の領域が、X線の導波方向において周期的に配置されていることを特徴とする、請求項9に記載のX線導波システム。
  11. 前記導波方向において周期的に配置されているコアの周期数が互いに異なる2以上の領域のX線の導波方向における周期が、導波路中に形成されるコアの周期構造と共鳴する導波モードを形成する基本波の、コアとクラッドの界面での全反射の導波方向における繰り返し周期と一致することを特徴とする、請求項10に記載のX線導波システム。
  12. 前記導波方向において周期的に配置されているコアの周期数が互いに異なる2以上の領域の導波方向における周期が、導波路中に形成されるコアの周期構造と共鳴する導波モードを形成する基本波の、コアとクラッドの界面での全反射の導波方向における繰り返し周期の自然数倍、または自然数分の1であり、100分の1から10倍の範囲にあることを特徴とする請求項10に記載のX線導波システム。
  13. 前記周期構造体が、屈折率が互いに異なる複数の物質からなる膜が積層された周期多層膜であることを特徴とする請求項9から12のいずれに記載のX線導波システム。
  14. 前記周期多層膜を構成するそれぞれの膜の厚さが前記x線導波方向で一定であることを特徴とする請求項13に記載のX線導波システム。
  15. 前記周期多層膜が、ラメラ構造を有するメソ構造体であることを特徴とする請求項13又は14に記載のX線導波システム。
  16. 前記周期構造体が、メソポーラス材料からなるメソ構造体よりなることを特徴とする請項9から12のいずれかに記載のX線導波システム。
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