JP2013119521A - 抗がん剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】生体内での特定のシグナル伝達を遮断し、強力ながん細胞の増殖抑制作用を有し、かつ副作用も少ない抗がん剤の提供。
【解決手段】下記の構造式(1):
(式中、A及びBは、それぞれ水素、又は炭素数1〜4のアルキル基を表わす。)で表される化合物を有効成分とする抗がん剤。
【選択図】なし
【解決手段】下記の構造式(1):
(式中、A及びBは、それぞれ水素、又は炭素数1〜4のアルキル基を表わす。)で表される化合物を有効成分とする抗がん剤。
【選択図】なし
Description
本発明は、特定構造のキャビコール類縁体化合物を有効成分として含有する抗がん剤に関する。
生体内での特定のシグナル伝達を遮断する薬剤は、強力な作用とともに少ない副作用が期待できる。又、シグナル伝達経路の中でもMAPキナーゼ経路は細胞増殖などに深く関わっており、MAPキナーゼの過剰な活性化は発がんやがんの転移に関与していると考えられている。そこで、MAPキナーゼシグナル遮断作用を有する薬剤は、抗がん剤など、細胞増殖の異常によって引き起こされる疾患の治療薬として期待することができる。
例えば、特許文献1には、MAPキナーゼシグナル遮断作用を有する薬剤として、下記の構造式(1a)で表されるキャビコール類縁体化合物を含有する薬剤が開示されている。
なお式(1a)中、R1及びR2は、それぞれ、水酸基、アシルオキシ基、又はアルコキシカルボニルオキシ基を表わし、nは0又は1を表わし、R3は、水素、飽和もしくは不飽和のアルキル基、フェニル基、p−アシルオキシフェニル基、又はp−アルコキシカルボニルオキシフェニル基を表わす。
特許文献1では、構造式(1a)で表されるキャビコール類縁体化合物は、抗がん剤としてがんの治療に好適に用いられるとも記載されている。しかし、実際に示されているのは、種々のキャビコール類縁体化合物についてのカルシニューリンノックアウト細胞増殖括性、抗MAPキナーゼシグナル伝達阻害作用のみであり、この化合物が、がん細胞の増殖抑制作用を有するか否かについては示されていない。
又、抗がん剤には、強力ながん細胞の増殖抑制作用を示すとともに、正常細胞を損傷せず副作用が少ないことが求められる。しかし、特許文献1には、キャビコール類縁体化合物が正常細胞に与える影響については全く記載がない。従って、従来は、構造式(1a)で表される種々のキャビコール類縁体化合物が、抗がん剤の有効成分として使用可能であるか、又もし抗がん剤として使用可能な化合物があるとしたらどの化合物であるか明らかではなかった。
本発明は、生体内での特定のシグナル伝達を遮断する薬剤を有効成分として含有する抗がん剤であって、強力ながん細胞の増殖抑制作用を有し、かつ副作用も少ない抗がん剤を提供することを課題とする。
本発明者は、前記構造式(1a)で表される種々のキャビコール類縁体化合物について、がん細胞の増殖抑制作用及び正常細胞に与える損傷の程度を鋭意検討した結果、下記の構造式(1)で表される化合物が、種々のがんについて、強力ながん細胞の増殖抑制作用を示すとともに、正常細胞に損傷をほとんど与えないことを見出し、本発明を完成した。
本発明は、下記の構造式(1):
(式中、A及びBは、それぞれ水素、又は炭素数1〜4のアルキル基を表わす。)で表される化合物を有効成分として含有することを特徴とする抗がん剤を提供する(請求項1)。
この抗がん剤を人体に投与することにより、子宮頸がん、腎がん、舌がん、食道がん、肺がん、膵がん、白血病等のがん細胞の増殖を抑える効果を示す。一方、がん細胞の増殖抑制効果を示す量を人体に投与しても、正常細胞の増殖にほとんど影響を与えず、副作用が少ない。
構造式(1)中のA及びBは、それぞれ、水素又は炭素数1〜4のアルキル基である。すなわち、水素、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチル又はt−ブチルのいずれかの基を表わす。AとBは、同じ基であっても異なった基であってもよい。
請求項2に記載の発明は、A及びBが水素であることを特徴とする請求項1に記載の抗がん剤である。構造式(1)で表されるキャビコール類縁体化合物の中でも、A及びBが水素である化合物が、特にがん細胞の増殖を抑制する作用が大きいことが確認されている。
請求項3に記載の発明は、子宮頸がん、腎がん、舌がん、食道がん、肺がん、膵がん又は白血病の治療に用いられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の抗がん剤である。
本発明の抗がん剤は、人体に投与することにより、がん細胞の増殖を抑える効果を示す。一方、がん細胞の増殖抑制効果を示す量を人体に投与しても、正常細胞の増殖にほとんど影響を与えず、副作用が少ない。従って、優れた抗がん剤として、子宮頸がん、腎がん、舌がん、食道がん、肺がん、膵がん、白血病等の治療に好適に用いられる。
次に本発明の具体的な形態について説明する。なお、この形態は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の趣旨を損なわない限り他の形態へ変更することができる。
前記の構造式(1)で表わされる化合物は、例えば、4−ヒドロキシベンズアルデヒドを、下記の構造式(2)で表わされるグリニャール試薬又は有機リチウム試薬等と反応させた後、水酸基をアルコキシカルボニル化する方法により製造することができる。
式(2)中Mは、MgX又はLiを表わす。ここでXは、Cl、Br又はIである。
この製造方法においては、先ず、4−ヒドロキシベンズアルデヒドと、構造式(2)のグリニャール試薬又は有機リチウムを、以下に示すように反応をさせて、下記の構造式(3)で表されるジオール化合物を得る。この反応は、通常のグリニャール反応や有機リチウムとの反応と同様な条件で行うことができ、例えば、金属ナトリウム等で完全に脱水(乾燥)されたエーテル類中で行われる。ここで使用されるエーテル類としては、例えばエチルエーテルやテトラヒドロフランを挙げることができる。
そしてこのようにして得られたジオール化合物のフェノール性水酸基をアルコキシカルボニル化することにより、構造式(4)で示されるアルコール化合物を得る。アルコキシカルボニル化は、通常のフェノール性水酸基のアルコキシカルボニル化反応と同様の条件で行うことができる。例えば、アルキル炭酸ハライド等を使用して行うことができる。
式(4)中、Aは前記式(1)の場合と同じ意味を表わす。
そしてこのようにして得られたアルコール化合物のアルコール性水酸基をアルコキシカルボニル化することにより、構造式(1)で示されるキャビコール類縁体化合物を得る。このアルコキシカルボニル化も、通常のアルコール性水酸基のアルコキシカルボニル化反応と同様の条件で行うことができ、例えば、アルキル炭酸ハライド等を使用して行うことができる。
前記の製造方法以外にも、構造式(1)で示されるキャビコール類縁体化合物は、4−ヒドロキシベンゾフェノンのフェノール性水酸基を保護基で保護した後、カルボニル基を還元し、その後、前記保護基を取り除いてジオール化合物を得、このジオール化合物に、アルコキシカルボニル化を行う方法によっても製造することができる。4−ヒドロキシベンゾフェノンのフェノール性水酸基の適切な保護基としてはシリル基が例示される。
例えば、当該保護基としてtert−ブチルジメチルシリル基を用いた場合は、以下に示すシリル化反応が行われ、4−ヒドロキシベンゾフェノンから下記構造式(5)のモノシリル体が得られる。このシリル化反応は、通常の水酸基のシリル化反応と同様の条件で行うことができる。
式中、TBSはtert−ブチルジメチルシリル基を表す。以下においても同様である。
水酸基のシリル化後、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)等の還元剤を使用して、4−ヒドロキシベンゾフェノンのカルボニル基を還元し、その後TBS等の保護基が取り除かれる(脱保護)。例えば脱TBS反応には、フッ化テトラブチルアンモニウム等が用いられる。この還元反応及び脱保護基反応により、4−ヒドロキシベンゾフェノンからは、下記構造式(6)で表されるジオール体(前記式(3)で示される化合物と同じジオール体)が得られる。この還元反応及び脱保護基反応は、いずれも、通常のカルボニル基の還元や脱保護基反応と同様の条件で行うことができる。
このようにして得られた構造式(6)で表されるジオール体、すなわち前記式(3)で示される化合物と同じジオール体を、前記のようにしてアルコキシカルボニル化することにより、前記構造式(4)で示されるアルコール化合物を得る。そしてこのようにして得られたアルコール化合物を、前記のようにしてアルコキシカルボニル化することにより、構造式(1)で示されるキャビコール類縁体化合物を得る。
構造式(1)で表わされるキャビコール類縁体化合物を有効成分として含有する抗がん剤は、例えば、注射等により投与することにより使用することができる。
合成例
4−(メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネート(4-(methoxycarbonyloxyphenylmethyl)phenyl methyl carbonate:構造式(1)で示され、A及びBがともに水素である化合物)の製造
4−(メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネート(4-(methoxycarbonyloxyphenylmethyl)phenyl methyl carbonate:構造式(1)で示され、A及びBがともに水素である化合物)の製造
(1)4−ヒドロキシベンズアルデヒドよりの、4−(ヒドロキシフェニルメチル)フェノールの合成
4−ヒドロキシベンズアルデヒド(50mmol)と乾燥テトラヒドロフラン(100mL)の混合物に、アルゴン雰囲気下、フェニルリチウムの約19%ジブチルエーテル溶液(100mmol)を、−78℃にて30分かけて滴下し10分撹拌する。飽和塩化アンモニア水溶液を加え、酢酸エチル(100mL×3)にて抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、乾燥後、溶媒留去する。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=40:1)にて精製し、4−(ヒドロキシフェニルメチル)フェノール(15.5g、99%)を得た。
4−ヒドロキシベンズアルデヒド(50mmol)と乾燥テトラヒドロフラン(100mL)の混合物に、アルゴン雰囲気下、フェニルリチウムの約19%ジブチルエーテル溶液(100mmol)を、−78℃にて30分かけて滴下し10分撹拌する。飽和塩化アンモニア水溶液を加え、酢酸エチル(100mL×3)にて抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、乾燥後、溶媒留去する。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=40:1)にて精製し、4−(ヒドロキシフェニルメチル)フェノール(15.5g、99%)を得た。
(2)4−(ヒドロキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネートの合成
上記の(1)で得られた4−(ヒドロキシフェニルメチル)フェノール(4mmol)と乾燥ジクロロメタン(2mL)の混合物に、トリエチルアミン(12mmol)、メチル炭酸クロリド(4.8mmol)を0℃にて順次加える。30分撹拌し、水を加え、酢酸エチル(30mL×3)にて抽出した。抽出液を飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒留去し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=30:1)で精製し、4−(ヒドロキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネートを得た。
上記の(1)で得られた4−(ヒドロキシフェニルメチル)フェノール(4mmol)と乾燥ジクロロメタン(2mL)の混合物に、トリエチルアミン(12mmol)、メチル炭酸クロリド(4.8mmol)を0℃にて順次加える。30分撹拌し、水を加え、酢酸エチル(30mL×3)にて抽出した。抽出液を飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒留去し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=30:1)で精製し、4−(ヒドロキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネートを得た。
(3)4−(メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネートの合成
上記の(2)で得られた4−(ヒドロキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネート(1mmol)と乾燥ジクロロメタン(2mL)の混合物に、トリエチルアミン(3mmol)、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(0.1mmol)、メチル炭酸クロリド(1.2mmol)を0℃にて順次加える。60分撹拌し、さらにメチル炭酸クロリド(1.2mmol)を0℃にて加える。60分撹拌し、水を加え、酢酸エチル(30mL×3)にて抽出した。抽出液を飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒留去し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=25:1)にて精製し、構造式(1)で表される4−(メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネートを得た。
上記の(2)で得られた4−(ヒドロキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネート(1mmol)と乾燥ジクロロメタン(2mL)の混合物に、トリエチルアミン(3mmol)、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(0.1mmol)、メチル炭酸クロリド(1.2mmol)を0℃にて順次加える。60分撹拌し、さらにメチル炭酸クロリド(1.2mmol)を0℃にて加える。60分撹拌し、水を加え、酢酸エチル(30mL×3)にて抽出した。抽出液を飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒留去し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=25:1)にて精製し、構造式(1)で表される4−(メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネートを得た。
得られた化合物は無色油状物質であり、赤外スペクトル、NMR測定等の結果は以下に示すとおりであった。この結果より、得られた化合物は4−(メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネートであると確認された。
IR(neat): 1732cm−1
1H−NMR(CDCl3)δ: 3.79 (3H, s), 3.89 (3H, s), 6.70, (1H, s), 7.15 (2H, d, J = 8.9 Hz), 7.28.10-7.39 (7H, m).
13C−NMR(CDCl3)δ: 54.8 (q), 55.2 (q), 79.9 (q), 121.0 (d), 126.8 (d),128.10 (d), 128.14 (d), 128.4 (d), 137.4 (s), 139.2 (s), 150.7 (s), 153.9 (s), 154.9 (s).
FAB−MS m/z:316[M]+
HR−FAB−MS m/z:316.0943(C17H16O5,理論値:316.0947)
1H−NMR(CDCl3)δ: 3.79 (3H, s), 3.89 (3H, s), 6.70, (1H, s), 7.15 (2H, d, J = 8.9 Hz), 7.28.10-7.39 (7H, m).
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FAB−MS m/z:316[M]+
HR−FAB−MS m/z:316.0943(C17H16O5,理論値:316.0947)
実施例1
正常細胞に比較的近い性質を持つと考えられる表皮細胞(keratinocyte)と子宮頸がん患者から採取して細胞株として樹立した細胞(ME180とHeLaS3)を、7%非働化ウシ胎児血清加DMEM培地中で、37℃、5%二酸化炭素・飽和水蒸気圧下で培養した。その後、5×104個/mLになるように細胞数を調整し、96ウエルマイクロプレートの各ウエルに200μL播種した。
正常細胞に比較的近い性質を持つと考えられる表皮細胞(keratinocyte)と子宮頸がん患者から採取して細胞株として樹立した細胞(ME180とHeLaS3)を、7%非働化ウシ胎児血清加DMEM培地中で、37℃、5%二酸化炭素・飽和水蒸気圧下で培養した。その後、5×104個/mLになるように細胞数を調整し、96ウエルマイクロプレートの各ウエルに200μL播種した。
細胞を播種した各ウエルに、前記合成例で得られた4−(メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネート(DMSO溶液)を、その培地中の(最終)濃度(以下、サンプル濃度と言う。図1〜5においても同様である。)が、0.1、0.3、1、3又は10μmol/L(μM)になるように加えた後、約3日間培養した。培養後、WST−8(同仁化学社製、Cell−counting Kit−8)を各ウエルに10μLずつ加え、さらに3−6時間培養した。
その後、培養液の450nmにおける光学濃度(OD450:吸光度)を、プレートリーダー(Surerise Tecan社製)を用いて測定した。なお、コントロールとして、4−(メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネートを加えず、DMSOのみを0.5質量%で加えた試料についても、同様に3−6時間培養し、その後、培養液の450nmにおける光学濃度を、プレートリーダーを用いて測定した(サンプル濃度0のデータ)。
表皮細胞、ME180とHeLaS3のそれぞれについて、上記の実験により得られた光学濃度とサンプル濃度との関係を図1に示す。又、4−(メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネートを加えない場合(非処理)とサンプル濃度3μMで加えて処理した後の、表皮細胞、ME180及びHeLaS3の位相差顕微鏡写真を、それぞれ図2、図3及び図4に示す。
同一の細胞においては、細胞数とWST−8の発色(光学濃度)が相関する。従って、図1より、子宮頸がん細胞ME180及びHeLaS3については、1μM以上の濃度の処理によって細胞数が減少し、4−(メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネートがこれらの細胞の増殖抑制作用を有することが示されている。一方、表皮細胞(ketratinocyte)では、10μMの濃度の処理によれば細胞数が減少するものの、3μM程度の濃度の処理によっても細胞数が減少しない。すなわち、4−(メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネートは、正常細胞の増殖に影響を与えない濃度で、がん細胞の増殖を抑制できることが示されており、この化合物を有効成分として含有させることにより、強力ながん細胞増殖抑制作用を有しながらも副作用の少ない抗がん剤が得られることが示されている。
図2より、表皮細胞について、4−(メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネートをサンプル濃度3μMで加えて処理した場合と、加えない場合(非処理)との間では、細胞数に大きな変化が見られないことが示されている。一方、図3及び図4より、子宮頸がん細胞について、4−(メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネートをサンプル濃度3μMで加えて処理した場合は、細胞が増殖できずに大部分が死滅することが示されている。従って、図2〜4からも、4−(メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネートは、正常細胞の増殖に影響を与えない濃度(3μM)で、がん細胞の増殖を抑制できることが示されている。
実施例2
上記ヒト正常表皮細胞を10回以上継代培養して得られた株化細胞(Epi)、および腎がん、舌がん、食道がん、肺がん、膵がんの患者から採取して細胞株として樹立した以下に示すがん細胞を、実施例1と同様な条件で、4−(メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネートの存在下で培養し、同様にして培養後に450nmの光学濃度を測定した。
腎がん :ACHN、KPK1、KPK13
舌がん :HSC3
食道がん:TE15
肺がん :H838
膵がん :PK1
上記ヒト正常表皮細胞を10回以上継代培養して得られた株化細胞(Epi)、および腎がん、舌がん、食道がん、肺がん、膵がんの患者から採取して細胞株として樹立した以下に示すがん細胞を、実施例1と同様な条件で、4−(メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネートの存在下で培養し、同様にして培養後に450nmの光学濃度を測定した。
腎がん :ACHN、KPK1、KPK13
舌がん :HSC3
食道がん:TE15
肺がん :H838
膵がん :PK1
それぞれの細胞株について、上記の実験により得られた光学濃度とサンプル濃度との関係を図5に示す。図5より明らかなように、Epiでは10μMの濃度の処理によっても細胞数に変化は見られなかった。一方、いずれのがん細胞についても、濃度0.3μM以上では、4−(メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネートの濃度に依存して細胞数の減少が認められた。この結果より、4−(メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネートは、正常細胞の増殖に影響を与えない濃度で、子宮頸がん以外の固形がん細胞についても増殖抑制作用があることが示されている。
実施例3
リンパ性白血病の患者から採取して細胞株として樹立した細胞(Jurkat)および骨髄性白血病の患者から採取して細胞株として樹立した細胞(HL60)を、実施例1と同様な条件で、4−(メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネートの存在下で培養し、同様にして培養後に450nmの光学濃度を測定した。ただし、JurkatとHL60の培養は、7%非働化ウシ胎児血清加RPMI培地で行った。
リンパ性白血病の患者から採取して細胞株として樹立した細胞(Jurkat)および骨髄性白血病の患者から採取して細胞株として樹立した細胞(HL60)を、実施例1と同様な条件で、4−(メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネートの存在下で培養し、同様にして培養後に450nmの光学濃度を測定した。ただし、JurkatとHL60の培養は、7%非働化ウシ胎児血清加RPMI培地で行った。
JurkatおよびHL60のそれぞれについて、上記の実験により得られた光学濃度とサンプル濃度との関係を図6に示す。JurkatおよびHL60のいずれについても、4−(メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネートの濃度に依存して細胞数の減少が認められた。この結果より、4−(メトキシカルボニルオキシフェニルメチル)フェニルメチルカーボネートは、リンパ性白血病細胞および骨髄性白血病細胞の増殖を用量依存的に抑制し、リンパ性白血病および骨髄性白血病の治療薬として有望であることが示されている。
Claims (3)
- 下記の構造式(1):
(式中、A及びBは、それぞれ水素、又は炭素数1〜4のアルキル基を表わす。)で表される化合物を有効成分として含有することを特徴とする抗がん剤。 - 構造式(1)中のA及びBが、水素であることを特徴とする請求項1に記載の抗がん剤。
- 子宮頸がん、腎がん、舌がん、食道がん、肺がん、膵がん又は白血病の治療に用いられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の抗がん剤。
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JP2019085381A (ja) * | 2017-11-09 | 2019-06-06 | 学校法人近畿大学 | アポトーシス誘導剤と癌治療剤 |
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JP2009191010A (ja) * | 2008-02-14 | 2009-08-27 | Univ Kinki | キャビコール類縁体化合物、キャビコール類縁体化合物の製造方法、およびmapキナーゼシグナル伝達阻害剤 |
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