JP2013117387A - 測定誤差の補正方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】試験治具測定値と基準治具推定値とを関係付ける数式においてプラス/マイナスの両方の符号をとり得る未定符号について、符号を適切に決定できる測定誤差の補正方法を提供する。
【解決手段】標準試料を試験治具10と基準治具10sとに実装して測定し、試験治具10での測定値(試験治具測定値)と、基準治具10sでの測定値の推定値(基準治具推定値)とを関係付ける数式を、未定符号を除いて決定する。位相確認用試料を試験治具と基準治具とに実装して測定し、未定符号について符号の組み合わせを仮定した数式を用いて、位相確認用試料の基準治具推定値を算出する。符号の組み合わせごとに、各ポートの位相確認用試料の基準治具推定値と試験治具測定値との位相差の絶対値の和を算出し、和が最小になる符号の組み合わせの数式を用いて、任意の電子部品の試験治具測定値から基準治具推定値を算出する。
【選択図】図1

Description

本発明は、測定誤差の補正方法に関し、詳しくは、試験治具に実装した状態で電子部品の電気特性を測定して得られた結果から、その電子部品を基準治具に実装して測定したならば得られるであろう電気特性の推定値を算出する方法に関する。
従来、表面実装型電子部品などの同軸コネクタを有しない電子部品は、同軸コネクタを有する治具に実装し、治具と測定装置の間を同軸ケーブルを介して接続して、電気特性を測定することがある。このような測定においては、個々の治具の特性のばらつきや、個々の同軸ケーブル及び測定装置の特性のばらつきが、測定誤差の原因となる。
同軸ケーブル及び測定装置については、基準特性を有する標準器を同軸ケーブルを介して測定装置に接続して測定することにより、標準器を接続した同軸ケーブル先端よりも測定装置側の誤差を同定することができる。
しかし、治具については、電子部品を実装する部分の接続端子と同軸ケーブルに接続するための同軸コネクタとの間の電気特性の誤差を精度よく同定することができない。また、治具間の特性が一致するように調整することは容易ではない。特に広い帯域幅で、治具間の特性が一致するように治具を調整することは、極めて困難である。
そこで、標準試料を複数の治具に実装して測定し、治具間における測定値のばらつきから、ある治具(以下、「基準治具」という。)と他の治具(以下、「試験治具」という。)との間の相対的な誤差を補正する数式を予め導出しておく。そして、この数式を用いて、任意の電子部品について、試験治具に実装した状態で測定した結果から、その電子部品を基準治具に実装した状態で測定したならば得られるであろう結果を算出し、治具間の誤差を相対的に補正する、いわゆる相対補正法が提案されている。例えば、基準治具はユーザに対して電気特性を保証するために用い、試験治具は電子部品の製造工程における良品選別のための測定に用いる。
具体的には、各ポートについて、試験治具の誤差を除去する散乱行列と基準治具の誤差の散乱行列を合成した散乱行列(これを、「誤差除去アダプタ」という。)を導出する。そして、この誤差除去アダプタを、試験治具測定値の散乱行列に対し合成することで、その電子部品を基準治具に実装して測定したならば得られるであろう測定値(推定値)を算出する。誤差除去アダプタは、各ポートについて、特性の異なる少なくとも3つの標準試料を基準治具と試験治具の両方で測定し、これらの測定結果から計算できる(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−301824号公報
上記相対補正法によれば、例えばポート数が2の場合、次の(1)式により、通過特性を補正するための誤差除去アダプタ(CA)の各パラメータ(2×2の行列の各成分)を算出する。
Figure 2013117387
・・・・(1)

ここで、x、yを正の整数とすると、SxyDnは、基準治具でn番目に測定した試料のSxyの測定値である。SxyTnは、試験治具でn番目に測定した試料のSxyの測定値である。
(1)式によると、通過特性を補正するためのパラメータCA21とCA12については、プラス(+)とマイナス(−)の両方の符号をとり得る。これは、2ポートの誤差除去アダプタ(未知数4)について、相反定理により正逆の通過特性が等しいものとして未知数を3に減らして計算を行ったことによる。
誤差除去アダプタの各パラメータは複素数であるので、プラス/マイナスの符号が異なるということは、振幅が等しく、位相が180°異なる2つの解が得られるということを意味する。
誤差除去アダプタを用いて電気特性を推定するためには、CA21とCA12について、プラス/マイナスのどちらか一方の符号を選択する必要がある。
しかし、そもそも誤差除去アダプタの特性自体が未知であるため、プラス/マイナスのどちらの符号を選択すべきかの判断は、困難を伴う。
誤差除去アダプタの符号が適切に決定されていない場合には、例えばバランスポートを有する製品の特性評価において差動モードとコモンモードで特性が逆になるなどの問題が生じる場合がある。
本発明は、かかる実情に鑑み、試験治具測定値と基準治具推定値とを関係付ける数式においてプラス/マイナスの両方の符号をとり得る未定符号について、プラス/マイナスの符号を適切に決定できる測定誤差の補正方法を提供しようとするものである。
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した測定誤差の補正方法を提供する。
測定誤差の補正方法は、電子部品を試験治具に実装した試験状態で電気特性を測定して得られた試験治具測定値から、当該電子部品を基準治具に実装した基準状態で電気特性を測定して得られる基準治具測定値の推定値である基準治具推定値を算出する方法である。測定誤差の補正方法は、第1乃至第6のステップを備える。前記第1のステップにおいて、測定対象となるすべてのポートのそれぞれについて、特性が異なる少なくとも3種類の補正データ取得用試料を、前記試験状態と前記基準状態とで測定する。前記第2のステップにおいて、前記第1のステップで得られた測定結果から、前記試験治具測定値と前記基準治具推定値とを関係付ける数式を、プラス/マイナスの両方の符号をとり得る未定符号を除いて、決定する。前記第3のステップにおいて、すべての前記ポートについて、位相確認用試料を、前記試験状態と前記基準状態とで測定する。前記第4のステップにおいて、(a)前記第2のステップにおいて決定した前記数式について前記未定符号のプラス/マイナスの符号のすべての組み合わせを仮定し、それぞれの前記組み合わせの前記数式を用い、前記各ポートについて、前記第3のステップにより得られた前記位相確認用試料の前記試験治具測定値から前記位相確認用試料の前記基準治具推定値を算出し、(b)前記各ポートについて、算出した前記位相確認用試料の前記基準治具推定値の位相と、前記第3のステップにより得られた前記位相確認用試料の前記基準治具測定値の位相との位相差の絶対値を算出し、(c)前記組み合わせごとに、前記各ポートについての前記位相差の絶対値の和を算出し、前記和が最小となる前記組み合わせによって、前記数式の前記未定符号の符号を決定する。前記第5のステップにおいて、任意の電子部品を前記試験状態で測定する。前記第6のステップにおいて、前記第5のステップで得られた前記試験治具測定値から、前記第2及び第4のステップで決定した前記数式を用いて、当該電子部品の前記基準治具推定値を算出する。
上記第4のステップにおいて、未定符号のプラス/マイナスの符号が適切に決定されていない数式を用いて算出した基準治具推定値は、未定符号のプラス/マイナスの符号が適切に決定されている数式を用いて算出した基準治具推定値に比べ、位相に関する誤差が大きくなる。プラス/マイナスの両方をとり得る未定符号は、理論的に、必ず正しい組み合わせが存在する。各ポートについての位相確認用試料の試験治具測定値と基準治具推定値との位相差の絶対値の和が最小になる未定符号の組み合わせを選択することにより、位相に関する測定誤差が最小になり、数式の未定符号のプラス/マイナスの符号を適切に決定できる。
好ましくは、前記第5のステップにおいて測定する任意の電子部品の1個のみを、前記第3のステップにおいて測定する前記位相確認用試料に用いる。
この場合、位相確認用試料には、測定対象の電子部品そのものを用いることができ、特別な試料を準備する必要がない。
本発明によれば、試験治具測定値と基準治具推定値とを関係付ける数式においてプラス/マイナスの両方の符号をとり得る未定符号について、プラス/マイナスの符号を適切に決定できる。
本発明の実施形態における測定系の構成図である。 本発明の実施形態における誤差除去アダプタの説明図である。 本発明の実施形態における誤差除去アダプタの符号の説明図である。 本発明の実施形態における2ポートのシグナルフローダイヤグラムである。 本発明の実施形態における2ポートのシグナルフローダイヤグラムである。 本発明の具体例における差動モード特性のグラフである。 本発明の具体例におけるコモンモード特性のグラフである。 比較例1における差動モード特性のグラフである。 比較例1におけるコモンモード特性のグラフである。
以下、本発明の測定誤差の補正方法の実施の形態について、図1〜図5を参照しながら説明する。
図1は、測定系の構成図である。図1に示すように、試験治具10又は基準治具10sと、同軸ケーブル22及び測定装置20を用いて、試料2の電気特性を測定する。
測定時には、治具10,10sに試料2が実装される。破線で模式的に示すように、試料2の各ポートは、治具10,10sの側面に設けられている同軸コネクタ14,14sに電気的に接続される。同軸ケーブル22の先端の同軸コネクタ24は、矢印24xで示すように、治具10,10sの同軸コネクタ14,14sに接続される。
同軸コネクタ24より測定装置20側は、予め、既知の電気特性を有する標準器(例えば、同軸形状の電子部品)を同軸コネクタ24に接続してキャリブレーションを行う。そのため、測定装置20及び同軸ケーブル22は、試験治具10を用いて測定するときと、基準治具10sを用いて測定するときとで、異なるものを用いても構わない。
測定装置20には、例えばベクトル・ネットワーク・アナライザ(VNA)を用いる。VNAは、複数のポートを有し高周波で用いられる電子部品の電気特性を単に測定するだけでなく、測定した生データを任意に設定したプログラムにより演算して出力する機能も備えている。
試験治具10に試料2を実装して電気特性を測定したときの測定結果(以下、「試験治具測定値」という。)と、基準治具10sに試料2を実装して電気特性を測定したときの測定結果(以下、「基準治具測定値」という。)とは、それぞれ、治具10,10s自体の電気特性に起因する測定誤差を含む。同軸コネクタ24よりも測定装置20側は、予めキャリブレーションを行っているので、治具10,10s間の測定誤差は、相対補正法によって補正する。
すなわち、予め、治具10,10s間の相対的な測定誤差を補正する数式(誤差除去アダプタ)を導出しておく。そして、任意の電子部品についての試験治具測定値に、導出した数式(誤差除去アダプタ)を適用して、その電子部品を基準治具10sに実装して測定したならば得られるであろう電気特性の推定値(基準治具測定値)を算出する。
次に、治具10s,10間の相対的な測定誤差を補正する数式(誤差除去アダプタ)について、図2〜図5を参照しながら説明する。
図4(a)は、2ポートの電子部品(以下、「試料DUT」と言う。)を実装した基準治具10sのシグナルフローダイヤグラムを示す。試料DUTの特性を散乱行列(S−DUT)で表し、試料DUTそのものの測定値をS11DUT,S21DUTで示している。基準治具10sにおける同軸コネクタ14sと試料DUTのポートとの間の誤差特性を散乱行列(Er1),(Er2)で表している。回路の両側の端子において、基準治具10sに試料DUTを実装した状態(以下、「基準状態」という。)での測定値S11D,S21Dが得られる。
図4(b)は、試料DUTを実装した試験治具10のシグナルフローダイヤグラムを示す。試料DUTの特性を散乱行列(S−DUT)で表している。試験治具10における同軸コネクタ14と試料DUTのポートとの間の誤差特性を散乱行列(Er1'),(Er2')で表している。回路の両側の端子において、試験治具10に試料DUTを実装した状態(以下、「試験状態」という。)での測定値S11T,S21Tが得られる。
図4(c)は、図4(b)の回路の両側に、誤差特性(Er1),(Er2)を中和するアダプタ(Er1)”,(Er2)”を接続した状態を示すシグナルフローダイヤグラムである。このアダプタ(Er1)”,(Er2)”は、理論上は、誤差特性の散乱行列(Er1)',(Er2)'を伝送行列に変換し、その逆行列を求め、再度散乱行列に変換することにより得られる。誤差特性(Er1)',(Er2)'とアダプタ(Er1)”,(Er2)”との間の境界部分80,82において、試験治具10に試料DUTを実装した試験状態の測定値S11T,S21Tが得られる。図4(c)の回路は、試験治具10の誤差が除去され、回路の両側の端子において、試料DUTそのものの測定値S11DUT,S21DUTが得られる。
図4(c)の回路は試料DUTのみと等価であるので、図4(a)と同様に、図4(c)の回路の両側に、基準治具10sの誤差特性の散乱行列(Er1),(Er2)を接続すると、図5(a)のシグナルフローダイヤグラムのようになる。
図5(a)において符号84で示した(Er1),(Er1)”を合成した散乱行列を(CA)とし、符号86で示した(Er2)”,(Er2)を合成した散乱行列を(CB)とすると、図5(b)のシグナルフローダイヤグラムのようになる。これらの散乱行列(CA),(CB)は、いわゆる「誤差除去アダプタ」であり、試験状態の測定値S11T,S21Tと基準状態の測定値S11D,S21Dとを関係付ける。したがって、誤差除去アダプタ(CA),(CB)が決まれば、任意の電子部品を試験治具10に実装した試験状態での測定値S11T,S21Tから、誤差除去アダプタ(CA),(CB)を用いて、基準治具10sに実装した基準状態の測定値S11D,S21Dを算出(推定)することができる。
各誤差除去アダプタ(CA),(CB)は、それぞれ、4つの係数CA11,CA12,CA21,CA22;CB11,CB12,CB21,CB22を含むが、相反定理により正逆の通過特性は等しいものとすると、CA12=CA21、CB12=CB21となる。したがって、各ポートについて、特性の異なった3種類の標準試料を基準治具10sと試験治具10とに実装して測定し、連立方程式を解くことによって、各係数CA11,CA12,CA21,CA22;CB11,CB12,CB21,CB22を決定することができる。
(CA)の各係数CA11,CA12,CA21,CA22は、前述した(1)式により決めることができる。(CB)の各係数CB11,CB12,CB21,CB22についても、同様に決めることができる。
しかしながら、前述した(1)式に示されているように、各係数CA11,CA12,CA21,CA22のうち、CA12,CA21はプラス/マイナスの両方の符号をとり得るため、それらの符号を適切に決定する必要がある。同様に、(CB)については、CB12,CB21がプラス/マイナスの両方の符号をとり得るため、それらの符号を適切に決定する必要がある。
例えば通過特性を測定する場合、図2に示すように、試験治具測定値を出力するDUT50のポートのうち測定対象となるポートの数がnであるとき、DUT50の測定対象となるポートには、前述した(1)式により決定したそれぞれ2ポートの誤差除去アダプタCM−1,CM−2,・・・,CM-nの一方のポートが、各ポートに1つずつ接続される。誤差除去アダプタCM−1,CM−2,・・・,CM-nの他方のポートには、基準治具推定値が出力される。
DUT50の1つあたりの誤差除去アダプタの個数はn個となる。それぞれの誤差除去アダプタCM−1,CM−2,・・・,CM-nは、プラスとマイナスの符号をとり得るので、図3に示すように、誤差除去アダプタ群60全体としての符号の組み合わせは、2通りありうる。すなわち、誤差除去アダプタ群60は、この2通りのものがありうる。本発明は、この2通りのうちで最適なものを、位相確認用試料を用いて決定する。
以下、本発明の測定誤差の補正方法の手順について、説明する。
まず、基準治具と試験治具との間の誤差を相対的に補正するための誤差除去アダプタを導出する(本発明の第1乃至第4のステップ)。
すなわち、測定対象となるすべてのポートのそれぞれについて、特性が異なる少なくとも3種類の補正データ取得用試料を、試験治具に実装した試験状態と基準治具に実装した基準状態とで測定する(本発明の第1のステップ)。基準治具と試験治具には、全く同一の補正データ取得用試料を実装しても、同一の特性とみなせる別々の補正データ取得用試料を実装してもよい。補正データ取得用試料は、各ポートについて、例えば、短絡、開放、終端など、特性が異なる少なくとも3種類を用いる。
基準状態で測定した補正データ取得用試料の基準治具測定値と、試験状態で測定した補正データ取得用試料の試験治具測定値とから、測定対象の各ポートに接続する誤差除去アダプタを計算し、プラス/マイナスの両方の符号をとり得る未定符号を除いて、誤差除去アダプタを決定するする(本発明の第2のステップ)。
次いで、すべての測定対象のポートについて、位相確認用試料を、試験治具に実装した試験状態と基準治具に実装した基準状態とで測定する(本発明の第3のステップ)。このとき、位相確認用試料には、測定対象の電子部品そのものを用いることができる。測定対象の電子部品そのものを用いる場合には、1個を測定すれば十分であり、位相確認用試料として特別な試料を準備する必要がない。
そして、試験状態で測定した位相確認用試料の試験治具測定値に対して、未定符号のプラス/マイナスの符号の組み合わせを仮定した誤差除去アダプタを順次適用して、位相確認用試料の基準治具推定値を算出し、実際に基準治具で測定した基準治具測定値との比較を行い、誤差除去アダプタの未定符号のプラス/マイナスの符号の最適な組み合わせを決定する(本発明の第4のステップ)。
具体的には、各周波数ポイントにおける測定データは複素データであり、「振幅∠位相」で表すことができるので、測定対象のすべてのポート(p=1,2,・・・,n)について、
(1)位相確認用試料の試験治具測定値STpにq番目(q=1,2,・・・,2)の符号の組み合わせの誤差除去アダプタfqを適用して算出した基準治具推定値fq(STp)の位相θqTp
(2)位相確認用試料の基準治具測定値SDpの位相θDp
を算出する。
そして、(1)と(2)の位相θqTp、θDpの差の絶対値、すなわち位相差の絶対値δq=|θqTp−θDp|をすべてのポート(p=1,2,・・・,n)について算出し、位相差の絶対値の和Δq=δq+δq+・・・+δqを求める。
そして、すべてのq(すなわち、q=1,2,・・・,2)のうち、位相差の絶対値の和Δqが最小となるq=qmax番目の符号の組み合わせを、測定に用いる誤差補正アダプタの未定符号の符号として決定する。
誤差除去アダプタの符号の組み合わせが適切でない場合、位相θqTp、θDpの差は、測定周波数によらずに発生する。そのため、ある一つの周波数ポイントについての測定値だけからでも、誤差除去アダプタの符号を適切に決定することができる。
次いで、測定対象の電子部品の試験治具測定値を測定し、符号を決定した誤差除去アダプタ群60を用いて基準治具推定値を算出する(本発明の第5及び第6のステップ)。
すなわち、任意の電子部品を試験治具に実装した状態で測定する(本発明の第5のステップ)。この測定によって得られた測定結果(試験治具測定値)に、符号を決定した誤差除去アダプタを適用して、その電子部品を基準治具に実装して測定したならば得られるであろう電子部品の電気特性の推定値(基準治具推定値)を算出する(本発明の第6のステップ)。
<具体例> 図6及び図7に、4ポートの試料(デュプレクサ)について、上記手順を適用して特性を測定し、測定誤差を補正した具体例を示す。図6に差動モード特性、図7にコモンモード特性を示す。基準治具測定値を黒色で、試験治具測定値に誤差除去アダプタを適用して補正した補正後の値(基準治具推定値)を灰色で示している。図6及び図7から、すべての周波数領域において、測定値の誤差補正が良好に行われていることが分かる。
<比較例> 図8及び図9に、誤差補正アダプタの符号の選択が適切でない場合の比較例を示す。図8に差動モード特性、図9にコモンモード特性を示す。図6及び図7と同様に、基準治具測定値を黒色で、基準治具推定値を灰色で示している。
比較例では、誤差除去アダプタの符号の関係が適切でないため、すなわち符号が逆であるため、図8及び図9において丸で囲んだように、一部の周波数領域において特性が入れ替わっている。このように、ポート間の位相差が問題になる特性については、誤差除去アダプタの符号の関係が適切でないことによる影響が顕著に現れ、問題になることがある。
なお、ポート間の位相差が問題にならない特性、例えばシングルエンドの振幅特性については、具体例と比較例との特性差がなかった。
以上のように、誤差除去アダプタのすべての符号の組み合わせのうちで、位相確認用試料の試験治具測定値と基準治具推定値の位相特性差が最も小さくなるものを採用することによって、試験治具測定値に誤差除去アダプタを適用して算出した基準治具測定値は、位相特性を正しく再現できる。
例えば、通過特性に関して上記方法を適用すると、バランスポートを有する電子部品の特性評価において、差動モードとコモンモードで特性が逆になることはない。
上記方法は、通過特性に関してのみ適用しても、反射特性のみに適用しても、通過特性と反射特性の両方に適用してもよい。
<まとめ> 試験治具測定値と基準治具推定値とを関係付ける数式においてプラス/マイナスの両方の符号をとり得る未定符号は、位相確認用試料を試験治具と基準治具で測定し、各ポートについての位相確認用試料の試験治具測定値と基準治具推定値との位相差の絶対値の和が最小となる符号の組み合わせを選択することによって、プラス/マイナスの符号を適切に決定できる。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。
10 試験治具
10s 基準治具
14,14s 同軸コネクタ
20 測定装置
22 同軸ケーブル
24 同軸コネクタ
60 誤差除去アダプタ群

Claims (2)

  1. 電子部品を試験治具に実装した試験状態で電気特性を測定して得られた試験治具測定値から、当該電子部品を基準治具に実装した基準状態で電気特性を測定して得られる基準治具測定値の推定値である基準治具推定値を算出する、測定誤差の補正方法であって、
    測定対象となるすべてのポートのそれぞれについて、特性が異なる少なくとも3種類の補正データ取得用試料を、前記試験状態と前記基準状態とで測定する第1のステップと、
    前記第1のステップで得られた測定結果から、前記試験治具測定値と前記基準治具推定値とを関係付ける数式を、プラス/マイナスの両方の符号をとり得る未定符号を除いて、決定する第2のステップと、
    すべての前記ポートについて、位相確認用試料を、前記試験状態と前記基準状態とで測定する第3のステップと、
    前記第2のステップにおいて決定した前記数式について前記未定符号のプラス/マイナスの符号のすべての組み合わせを仮定し、それぞれの前記組み合わせの前記数式を用い、前記各ポートについて、前記第3のステップにより得られた前記位相確認用試料の前記試験治具測定値から前記位相確認用試料の前記基準治具推定値を算出し、
    前記各ポートについて、算出した前記位相確認用試料の前記基準治具推定値の位相と、前記第3のステップにより得られた前記位相確認用試料の前記基準治具測定値の位相との位相差の絶対値を算出し、
    前記組み合わせごとに、前記各ポートについての前記位相差の絶対値の和を算出し、前記和が最小となる前記組み合わせによって、前記数式の前記未定符号の符号を決定する第4のステップと、
    任意の電子部品を前記試験状態で測定する第5のステップと、
    前記第5のステップで得られた前記試験治具測定値から、前記第2及び第4のステップで決定した前記数式を用いて、当該電子部品の前記基準治具推定値を算出する第6のステップと、
    を備えたことを特徴とする、測定誤差の補正方法。
  2. 前記第5のステップにおいて測定する任意の電子部品の1個のみを、前記第3のステップにおいて測定する前記位相確認用試料に用いることを特徴とする、請求項1に記載の測定誤差の補正方法。
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