JP2013116088A - 線維芽細胞の細胞老化状態の評価方法 - Google Patents

線維芽細胞の細胞老化状態の評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】細胞老化状態の適切な評価と、細胞老化の防止及び軽減とのために、細胞老化の前後で大きく変化するマーカーを利用する、線維芽細胞の細胞老化状態の評価方法と、被験処理条件による線維芽細胞の細胞老化阻害効果の評価方法と、前記評価方法を実施するためのキットと、線維芽細胞の細胞老化を抑制する化合物のスクリーニング方法とを開発する。
【解決手段】本発明は、生物学的試料中のOLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量eを決定するステップを含む、線維芽細胞の細胞老化状態の評価方法を提供する。本発明は、被験処理条件による線維芽細胞の細胞老化阻害効果の評価方法を提供する。本発明の評価方法は、(1)被験処理前の生物学的試料中のOLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量Eを決定するステップと、(2)被験処理後の生物学的試料中のOLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量Eを決定するステップとを含む。
【選択図】なし

Description

本発明は、線維芽細胞の細胞老化状態の評価方法と、被験処理条件による線維芽細胞の細胞老化阻害効果の評価方法と、前記評価方法を実施するためのキットと、線維芽細胞の細胞老化を抑制する化合物のスクリーニング方法とに関する。
細胞分裂を不可逆的に停止する細胞老化は、アポトーシスとともに、加齢、酸化ストレス、ゲノムの不安定化等によって誘導されるがん発生を抑制するための生体防御メカニズムとして機能する。一般的に、細胞老化状態の進行は、がん発生のリスクが高いことを示す。また、細胞老化は、線維芽細胞の増殖、並びに、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸等の細胞外マトリクス成分の産生を低下させ、シワ、たるみ、褥瘡等の皮膚状態の悪化を生じさせると考えられている。したがって、細胞老化状態を適切に評価すること、細胞老化を防止及び軽減することは、健康上及び美容上重要である。
本発明の課題は、細胞老化の前後で大きく変化するマーカーを利用する、線維芽細胞の細胞老化状態の評価方法と、被験処理条件による線維芽細胞の細胞老化阻害効果の評価方法と、前記評価方法を実施するためのキットと、線維芽細胞の細胞老化を抑制する化合物のスクリーニング方法とを開発することである。
本発明者は、オルファクトメジン様2A(以下、「OLFML2A」という。)及びサイトカイン受容体様因子1(以下、「CRLF1」という。)の遺伝子産物の発現量が、継代培養を繰り返した線維芽細胞で増大することを見出した。この発見は、前記OLFML2A及びCRLF1の遺伝子産物の発現量は加齢にともなう細胞老化で増大することを示す。そこで本発明者は、OLFML2A及び/又はCRLF1を利用する、線維芽細胞の細胞老化状態の評価方法と、被験処理条件による線維芽細胞の細胞老化阻害効果の評価方法と、前記評価方法を実施するためのキットと、線維芽細胞の細胞老化を抑制する化合物のスクリーニング方法とに関する本発明を想到した。
本発明は、生物学的試料中のOLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量eを決定するステップを含む、線維芽細胞の細胞老化状態の評価方法を提供する。本発明の線維芽細胞の細胞老化状態の評価方法では、正常な生物学的試料中のOLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量eと、細胞老化状態の生物学的試料中のOLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量eとに基づいて評価される場合がある。本発明の線維芽細胞の細胞老化状態の評価方法において、前記OLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量は、OLFML2A及び/又はCRLF1のmRNA及び/又はタンパク質の存在量に基づいて決定される場合がある。
本発明は、被験処理条件による線維芽細胞の細胞老化阻害効果の評価方法を提供する。本発明の評価方法は、(1)被験処理前の生物学的試料中のOLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量Eを決定するステップと、(2)被験処理後の生物学的試料中のOLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量Eを決定するステップと、(3)E及びEに基づいて、前記被験処理条件の細胞老化阻害効果を評価するステップとを含む。
本発明の評価方法において、前記生物学的試料は、被験者から採取された血液、細胞及び組織からなるグループから選択される少なくとも1種類から調製される場合がある。
本発明は、被験処理条件による培養線維芽細胞の細胞老化阻害効果の評価方法を提供する。本発明の評価方法は、(1)前記培養線維芽細胞の細胞老化処理前のOLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量E’を決定するステップと、(2)前記培養線維芽細胞の細胞老化処理後のOLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量E’を決定するステップと、(3)E’及びE’に基づいて、前記被験処理条件の細胞老化阻害効果を評価するステップとを含む。
本発明の評価方法において、前記被験処理条件は、試験化合物が添加された培地中での前記培養線維芽細胞の細胞老化処理の場合がある。
本発明の評価方法において、前記線維芽細胞は哺乳類由来の線維芽細胞株の場合がある。
本発明の評価方法において、前記OLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量は、OLFML2A及び/又はCRLF1のmRNA及び/又はタンパク質の存在量に基づいて決定される場合がある。
本発明の評価方法において、前記OLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量は、対照遺伝子のmRNA及び/又はタンパク質の存在量を基準とする相対値として決定される場合がある。
本発明の評価方法において、前記OLFML2A及び/又はCRLF1のmRNAは、RT−PCR法又は固相雑種形成法で検出される場合がある。本発明の評価方法において、前記OLFML2A及び/又はCRLF1のmRNAは、前記OLFML2A及び/又はCRLF1のmRNAに特異的なプライマー対及び/又はプローブを用いるRT−PCR法又は固相雑種形成法で検出される場合がある。
本発明の評価方法において、前記OLFML2A及び/又はCRLF1のタンパク質は、ELISA法、ウエスタンブロット法、免疫沈降法及び免疫比濁法からなるグループから選択される少なくとも1つの方法で検出される場合がある。本発明の評価方法において、前記OLFML2A及び/又はCRLF1のタンパク質は、前記OLFML2A及び/又はCRLF1のタンパク質に特異的な抗体を用いるELISA法、ウエスタンブロット法、免疫沈降法及び免疫比濁法からなるグループから選択される少なくとも1つの方法で検出される場合がある。
本発明は、前記OLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量を決定するための試薬を含む、本発明の評価方法を実施するためのキットを提供する。
本発明のキットにおいて、前記試薬は、前記OLFML2A及び/又はCRLF1のmRNAに特異的なプライマー対及び/又はプローブか、前記OLFML2A及び/又はCRLF1のタンパク質に特異的な抗体かの場合がある。
本発明は、線維芽細胞の細胞老化を抑制する化合物のスクリーニング方法を提供する。本発明のスクリーニング方法は、(1)前記線維芽細胞の細胞老化を抑制する候補化合物を用意するステップと、(2)細胞老化処理と、前記候補化合物の投与とが実施される前に、前記線維芽細胞のOLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量E’’を決定するステップと、(3)前記細胞老化処理だけが実施された後に、前記線維芽細胞のOLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量E’’を決定するステップと、(4)前記細胞老化処理と、前記候補化合物の投与とが実施された後に、前記線維芽細胞のOLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量E’’を決定するステップと、(5)E’’がE’’よりも低い値を示す候補化合物を、線維芽細胞の細胞老化を抑制する化合物として選択するステップとを含む。
本発明のスクリーニング方法において、前記OLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量は、OLFML2A及び/又はCRLF1のmRNA及び/又はタンパク質の存在量に基づいて決定される場合がある。
本発明は、被験者から採取された生物学的試料中のOLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量を決定するステップを含む、老化の診断方法を提供する。本発明の診断方法において、前記生物学的試料は、採取された血液か、生検により採取された線維芽細胞かの場合がある。本発明の診断方法において、前記OLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量は、OLFML2A及び/又はCRLF1のmRNA及び/又はタンパク質の存在量に基づいて決定される場合がある。
本明細書におけるOLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量とは、生物学的試料におけるOLFML2A及び/又はCRLF1のmRNA及び/又はタンパク質の存在量をいう。前記生物学的試料は、血液、生体内から採取された細胞及び組織と、培養線維芽細胞とを含むが、これらに限定されない。前記生物学的試料は、当業者に標準的な方法で調製することができる。前記生物学的試料の生物種は、ヒト、サル、マウス及びラットを含むが、これらに限定されない。前記OLFML2A及び/又はCRLF1のmRNAは、成熟mRNA、スプライシング・バリアント及び未成熟mRNAを含むが、これらに限定されない。
本明細書における「OLFML2A」及び「CRLF1」は、本発明の評価方法に用いられる線維芽細胞と同じ動物種のオルファクトメジン様2A及びサイトカイン受容体様因子1の相同遺伝子の場合がある。
OLFML2AはOLFACTOMEDIN様のドメインを有する分泌性糖タンパク質である(Tomarev,S.I.及びNakaya,N.、Mol.Neurobiol.、40:122(2009))。CRLF1は、1型サイトカイン受容体と相同性を有する可溶性サイトカイン受容体である(Elson,G.C.ら、J.Immunol.、161:1371(1998))。しかし、OLFML2A及びCRLF1の生理作用、特に細胞老化におけるOLFML2A及びCRLF1の生理作用は明らかにされていない。
以下の実施例に示すとおり、線維芽細胞の細胞老化にともなってOLFML2A及びCRLF1の遺伝子産物の発現量が顕著に増大することはこれまで知られていなかった。したがって、本発明のOLFML2A及びCRLF1の遺伝子産物の発現量を指標とする線維芽細胞の細胞老化状態の評価方法は新規発明である。
本明細書における「細胞老化処理」とは、細胞分裂の不可逆的な停止又は顕著な減少を生じさせるいずれかの処理をいい、培養線維芽細胞の継代を繰り返すこと、ノックアウト動物及びトランスジェニック動物を含む実験動物を長期間飼育することを含むが、これに限定されない。
本発明における培養線維芽細胞とは、生体内から採取された線維芽細胞の初代培養と、継代培養された線維芽細胞と、iPS細胞、間葉系幹細胞その他の多分化能を有する幹細胞から分化された線維芽細胞と、線維芽細胞株とを含み、細胞老化処理で細胞老化可能な細胞をいう。前記線維芽細胞株はTIG−1細胞の場合がある。
本発明におけるOLFML2A及びCRLF1の遺伝子産物の発現量は、線維芽細胞内に存在するOLFML2A及びCRLF1のmRNAの存在量の他、前記線維芽細胞におけるOLFML2A及びCRLF1の遺伝子の転写活性を含む。前記線維芽細胞内に存在するOLFML2A及びCRLF1のmRNAの存在量は、RT−PCR法、ノザンブロット法その他の固相雑種形成法を含むがこれらに限定されない方法によって決定される。前記線維芽細胞におけるOLFML2A及びCRLF1の遺伝子の転写活性は、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β−ガラクトシダーゼ(LacZ)、ルシフェラーゼ(Luc)、緑蛍光タンパク質(GFP)その他のレポータータンパク質が、OLFML2A及びCRLF1の遺伝子の発現制御領域によって駆動されるコンストラクトを培養線維芽細胞に一時的又は永続的に導入することによって測定されるのが典型的である。前記培養線維芽細胞がヒト由来のとき、前記細胞内に存在するOLFML2AのmRNAの存在量をRT−PCR法によって決定するためには、配列番号1及び2に列挙されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドが、プライマーの対として用いられる場合がある。前記培養線維芽細胞がヒト由来のとき、前記細胞内に存在するCRLF1のmRNAの存在量をRT−PCR法によって決定するためには、配列番号3及び4に列挙されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドが、プライマーの対として用いられる場合がある。
本発明におけるOLFML2A及びCRLF1のmRNAの存在量は、決定するときの細胞の数又は全タンパク質の存在量によって標準化された絶対値として決定される場合がある。あるいは、同じ数の細胞が複数の同一容器、例えば、ウェル、ディッシュ、フラスコ等に播種される場合には、細胞老化処理及び被験処理条件における培養後の容器1つあたりのOLFML2A及びCRLF1のmRNAの存在量は、細胞老化処理前の前記線維芽細胞のOLFML2A及びCRLF1のmRNAの存在量を基準とする相対値で表される場合がある。さらに、本発明におけるOLFML2A及びCRLF1のmRNAの存在量は、同じ数の細胞が複数の同一容器、例えば、ウェル、ディッシュ、フラスコ等に播種される場合には、同一条件で処理された容器1つあたりの対照遺伝子のmRNAの存在量で標準化される場合がある。前記対照遺伝子は、いわゆるハウスキーピング遺伝子を含むが、これらに限定されず、例えば遺伝子発現アレイチップ等の手段で見つけることができる。本発明におけるハウスキーピング遺伝子は、28SrRNA、18SrRNA、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)、グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、βアクチン等を含むが、これらに限定されない。前記対照遺伝子がGAPDHの場合には、本明細書における「対照遺伝子のmRNAの存在量」という文言は、GAPDHのmRNAの存在量を意味するものとする。前記培養線維芽細胞がヒト由来のとき、前記細胞内に存在するGAPDHのmRNAの存在量をRT−PCR法によって決定するためには、配列番号5及び6に列挙されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドが、プライマーの対として用いられる場合がある。
本発明における固相雑種形成法には、いわゆるノザンブロット法の他、遺伝子発現アレイチップへの雑種形成法を含むが、これらに限定されない。
本発明におけるOLFML2A及びCRLF1の遺伝子産物の発現量を決定するための試薬には、前記線維芽細胞内に存在するOLFML2A及びCRLF1のmRNAの存在量を決定するための試薬の他、前記線維芽細胞におけるOLFML2A及びCRLF1の転写活性を測定するための試薬が含まれるが、これらに限定されない。前記線維芽細胞内に存在するOLFML2A及びCRLF1のmRNAの存在量を決定するための試薬には、OLFML2A及びCRLF1に特異的なプライマー対と、OLFML2A及びCRLF1に特異的なプローブとが含まれるが、これらに限定されない。前記線維芽細胞がヒト由来のとき、前記OLFML2A及びCRLF1に特異的なプライマー対は、配列番号1及び2と、配列番号3及び4とに列挙されるヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドの場合がある。本発明のキットには、測定する細胞の数、細胞の全タンパク質の存在量等を決定するための試薬と、本発明の対照遺伝子のmRNAの存在量を決定するための試薬とを含むが、これらに限定されない、他の試薬が少なくとも1つ含まれる場合がある。
本発明におけるOLFML2A及びCRLF1の遺伝子産物の発現量は、線維芽細胞により産生されたOLFML2A及びCRLF1のタンパク質の存在量の他、生検により採取された生物学的試料中に存在するOLFML2A及びCRLF1のタンパク質の存在量を含む。OLFML2A及びCRLF1のタンパク質の存在量は、ELISA法、ウエスタンブロット法、免疫沈降法及び免疫比濁法を含むがこれらに限定されない方法によって決定される。前記方法において、OLFML2A及びCRLF1のタンパク質を特異的に認識する抗体が用いられる場合がある。前記抗体は、当業者に標準的な方法で調製されてもよく、商業的に入手可能な抗体であってもかまわない。
本発明におけるOLFML2A及びCRLF1のタンパク質の存在量は、決定するときの細胞の数又は全タンパク質の存在量によって標準化された絶対値として決定される場合がある。あるいは、同じ数の細胞が複数の同一容器、例えば、ウェル、ディッシュ、フラスコ等に播種される場合には、細胞老化処理後及び被験処理条件における培養後の容器1つあたりのOLFML2A及びCRLF1のタンパク質の存在量は、細胞老化処理前の前記線維芽細胞のOLFML2A及びCRLF1のタンパク質の存在量を基準とする相対値で表される場合がある。さらに、本発明におけるOLFML2A及びCRLF1のタンパク質の存在量は、同じ数の細胞が複数の同一容器、例えば、ウェル、ディッシュ、フラスコ等に播種される場合には、同一条件で処理された容器1つあたりの対照タンパク質の存在量で標準化される場合がある。前記対照タンパク質は、いわゆるハウスキーピング遺伝子のタンパク質、例えば、βアクチン、γチューブリン等を含むが、これらに限定されない。ハウスキーピング遺伝子のタンパク質の存在量をELISA法等によって決定するためには、前記タンパク質を特異的に認識する抗体が用いられる場合がある。
本発明におけるOLFML2A及びCRLF1のタンパク質の存在量を決定するための試薬には、前記線維芽細胞により産生されたタンパク質の存在量の他、生検により採取された生物学的試料中に存在するOLFML2A及びCRLF1のタンパク質の存在量を決定するための試薬が含まれるが、これらに限定されない。前記OLFML2A及びCRLF1のタンパク質の存在量を決定するための試薬には、OLFML2A及びCRLF1のタンパク質に特異的な抗体が含まれるが、これらに限定されない。本発明のキットには、測定する細胞の数、細胞の全タンパク質の存在量等を決定するための試薬と、本発明の対照タンパク質の存在量を決定するための試薬とを含むが、これらに限定されない、他の試薬が少なくとも1つ含まれる場合がある。
線維芽細胞の細胞老化阻害効果が評価されるとき、本発明の被験処理条件は、線維芽細胞の細胞老化を抑制する候補化合物の投与のような化学的処理を含むが、これに限定されない。培養線維芽細胞の細胞老化阻害効果が評価されるとき、本発明の被験処理条件は、試験化合物が添加された培地中で前記培養線維芽細胞に前記細胞老化処理を施すことを含むが、その他に、培養の際の温度、ガス組成、ガス分圧その他の物理的条件が操作される場合がある。線維芽細胞の細胞老化阻害効果が評価されるとき、本発明の被験処理条件は、試験化合物が投与された実験動物に前記細胞老化処理を施すことを含むが、その他に、飼育の際の温度、給餌、明暗時間その他の飼育環境条件が操作される場合がある。
本発明のスクリーニング方法において、線維芽細胞の細胞老化を抑制する候補化合物は、微生物、菌類、植物及び動物から調製される化合物と、化学的に合成される化合物とを含むが、これらに限定されない。前記候補化合物は、通常培養線維芽細胞に投与されるが、医療用化合物についてはマウス、ラット、ノックアウト動物及びトランスジェニック動物等を含む実験動物とに投与される場合もある。本発明のスクリーニング方法において、細胞老化処理は、培養線維芽細胞の継代を繰り返すこと、前記実験動物を長期間飼育することを含むが、これらに限定されない。
本発明の診断方法において、被験者のOLFML2A及びCRLF1の遺伝子産物の発現量が決定されるとき、前記発現量が基準値よりも高い値を示す場合に、前記被験者は細胞老化状態であると判断される。前記基準値は、当業者に周知な統計処理によって算出することができる。前記基準値は、健康な被験者の母集団から採取された生物学的試料中におけるOLFML2A及びCRLF1の遺伝子産物の発現量の平均値として決定される場合がある。前記母集団の被験者と、診断される被験者とは、生物種、年齢及び性別が同じであることが好ましい。
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。
正常細胞及び老化細胞のOLFML2AのmRNAの存在量を調べた実験結果を示すグラフ。 正常細胞及び老化細胞のCRLF1のmRNAの存在量を調べた実験結果を示すグラフ。
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。
以下の実験は、アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health(NIH))のガイドラインに従って資生堂リサーチセンターの倫理委員会によって承認された後に実施された。
ヒト線維芽細胞の細胞老化にともなうOLFML2A及びCRLF1の遺伝子産物の発現量の変化
1.材料及び方法
1.1 細胞の調製
試験内容が事前に説明され、同意が書面により生物学的試料の提供者から得られた。線維芽細胞は、生検で採取した前記提供者の皮膚から調製された。前記生検は当業者に周知の標準的な方法で行われた。
1.2 細胞培養
前記線維芽細胞(以下、「正常細胞」という。)は、市販の培養容器に播種され、10%ウシ胎仔血清(FBS、16010159、GIBCO、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を含む細胞培養用培地(DMEM、11885084、GIBCO、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いて37°C、5%CO及び飽和水蒸気雰囲気下で培養された。
1.3 細胞老化処理
細胞老化処理は、前記正常細胞が75cmの培養フラスコ1個あたり1.0×10個播種してコンフルエントになる前に継代する作業を約4ヵ月間繰り返すことによって実施された。前記細胞老化処理で細胞分裂能をほとんど消失した細胞が老化細胞として用いられた。
1.4 OLFML2A及びCRLF1の遺伝子産物の発現量の定量
前記細胞培養用培地はアスピレーターで除去され、前記正常細胞及び前記老化細胞はPBS 2mLで2回洗浄された。RNAがRNeasy Protect Kit(74104、株式会社キアゲン)を用いて前記正常細胞及び前記老化細胞から製造者の指示に従って抽出された。cDNAが定法に従って作製され、定量リアルタイムPCRで用いられた。前記定量リアルタイムPCRには、LightCycler(登録商標)FastStart DNA MasterPLUS SYBR Green I(カタログ番号03 515 885 001、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)が用いられた。ヒトOLFML2A遺伝子から転写したmRNA由来のcDNAの断片を増幅するために、配列番号1及び2に列挙されるヌクレオチド配列からなる順方向及び逆方向プライマーの対が用いられた。ヒトCRLF1遺伝子から転写したmRNA由来のcDNAの断片を増幅するために、配列番号3及び4に列挙されるヌクレオチド配列からなる順方向及び逆方向プライマーの対が用いられた。ヒトGAPDH遺伝子から転写したmRNA由来のcDNAの断片を増幅するために、配列番号5及び6に列挙されるヌクレオチド配列からなる順方向及び逆方向プライマーの対が用いられた。PCRの反応条件は、95°C、10分間を1回と、95°C、10秒間、60°C、5秒間及び72°C、6秒間を40回とであった。OLFML2A及びCRLF1のmRNAの存在量は、LightCycler Software Ver.3.5(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)で解析され、GAPDHのmRNAの存在量で標準化された。
2.結果
図1は、正常細胞及び老化細胞のOLFML2AのmRNAの存在量を調べた実験結果を示すグラフである。図2は、正常細胞及び老化細胞のCRLF1のmRNAの存在量を調べた実験結果を示すグラフである。図1では、老化細胞におけるOLFML2AのmRNAの存在量が、正常細胞におけるOLFML2AのmRNAの存在量を100%とする場合の相対値として記載される。図2では、老化細胞におけるCRLF1のmRNAの存在量が、正常細胞におけるCRLF1のmRNAの存在量を100%とする場合の相対値として記載される。図1及び図2の誤差棒それぞれは、同一条件のウェル3個のmRNAの存在量を決定した測定値の標準誤差を示す。OLFML2A及びCRLF1のmRNAの存在量は正常細胞と比較して老化細胞で顕著に増大した。
3.結論
前記OLFML2A及びCRLF1のmRNAの存在量は細胞老化の前後で大きく変化する。したがって、本発明の評価方法は線維芽細胞の細胞老化を評価できる。また、前記OLFML2A及びCRLF1の遺伝子産物は、被験処理条件による線維芽細胞の細胞老化阻害効果を適切に検出することができるので、多数の被験処理条件、例えば、多数の試験化合物が添加された培地における培養線維芽細胞の細胞老化阻害効果をハイスループットに評価することができる。これは、細胞老化の予防及び/又は軽減に有効な化合物をスクリーニングするうえで非常に有用である。

Claims (12)

  1. 生物学的試料中のOLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量eを決定するステップを含むことを特徴とする、線維芽細胞の細胞老化状態の評価方法。
  2. 被験処理条件による線維芽細胞の細胞老化阻害効果の評価方法であって、
    (1)被験処理前の生物学的試料中のOLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量Eを決定するステップと、
    (2)被験処理後の生物学的試料中のOLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量Eを決定するステップと、
    (3)E及びEに基づいて、前記被験処理条件の細胞老化阻害効果を評価するステップとを含むことを特徴とする、評価方法。
  3. 前記生物学的試料は、被験者から採取された血液、細胞及び組織からなるグループから選択される少なくとも1種類から調製されることを特徴とする、請求項2に記載の評価方法。
  4. 被験処理条件による培養線維芽細胞の細胞老化阻害効果の評価方法であって、
    (1)前記培養線維芽細胞の細胞老化処理前のOLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量E’を決定するステップと、
    (2)前記培養線維芽細胞の細胞老化処理後のOLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量E’を決定するステップと、
    (3)E’及びE’に基づいて、前記被験処理条件の細胞老化阻害効果を評価するステップとを含むことを特徴とする、評価方法。
  5. 前記被験処理条件は、試験化合物が添加された培地中での前記培養線維芽細胞の細胞老化処理であることを特徴とする、請求項4に記載の評価方法。
  6. 前記線維芽細胞は哺乳類由来の線維芽細胞株であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の評価方法。
  7. 前記OLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量は、OLFML2A及び/又はCRLF1のmRNA及び/又はタンパク質の存在量に基づいて決定されることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の評価方法。
  8. 前記OLFML2A及び/又はCRLF1のmRNAは、RT−PCR法又は固相雑種形成法で検出されることを特徴とする、請求項7に記載の評価方法。
  9. 前記OLFML2A及び/又はCRLF1のタンパク質は、ELISA法、ウエスタンブロット法、免疫沈降法及び免疫比濁法からなるグループから選択される少なくとも1つの方法で検出されることを特徴とする、請求項7に記載の評価方法。
  10. 前記OLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量を決定するための試薬を含む、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の評価方法を実施するためのキット。
  11. 前記試薬は、前記OLFML2A及び/又はCRLF1のmRNAに特異的なプライマー対及び/又はプローブか、前記OLFML2A及び/又はCRLF1のタンパク質に特異的な抗体かであることを特徴とする、請求項10に記載のキット。
  12. 線維芽細胞の細胞老化を抑制する化合物のスクリーニング方法であって、
    (1)前記線維芽細胞の細胞老化を抑制する候補化合物を用意するステップと、
    (2)細胞老化処理と、前記候補化合物の投与とが実施される前に、前記線維芽細胞のOLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量E’’を決定するステップと、
    (3)前記細胞老化処理だけが実施された後に、前記線維芽細胞のOLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量E’’を決定するステップと、
    (4)前記細胞老化処理と、前記候補化合物の投与とが実施された後に、前記線維芽細胞のOLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量E’’を決定するステップと、
    (5)E’’がE’’よりも低い値を示す候補化合物を、線維芽細胞の細胞老化を抑制する化合物として選択するステップとを含むことを特徴とする、スクリーニング方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023054008A1 (ja) 2021-09-30 2023-04-06 株式会社 資生堂 毛による肌と見た目の老化評価法

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