JP2013113625A - 電池状態推定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 二次電池の電池状態の良好な推定精度を、より少ない演算負荷で達成すること。
【解決手段】 電池状態推定装置は、電流推定部と、拡散係数補正値設定部と、を備えている。電流推定部は、検出された電池電圧及び電池温度と、反応寄与物質の分布を規定する拡散方程式を少なくとも含む計算モデルである電池モデルと、に基づいて、二次電池の充放電中の電流を推定する。拡散係数補正値設定部は、拡散方程式における拡散係数を補正するための値である拡散係数補正値を、電流検出値を平均化した値と、電流推定部による電流推定値を平均化した値と、の差に基づいて設定する。
【選択図】 図3

Description

本発明は、二次電池の状態を推定するように構成された、電池状態推定装置に関する。
二次電池によって負荷へ電源を供給し、かつ必要に応じて当該負荷の運転中にも当該二次電池を充電可能な電源システムが、広く知られている(例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車、等。)。この種の電源システムにおいて、前記二次電池の性能劣化を抑制したり、当該電源システムの運転を効率化したりするために、前記二次電池の状態(典型的にはSOC:SOCはState of Chargeの略)を推定する装置が、従来種々提案されている(例えば、特許第4649682号公報、特許第4703593号公報、特開2008−243373号公報、特開2010−60406号公報、等参照。)
本発明は、この種の電池状態推定装置(「二次電池の状態推定装置」とも称され得る。)における良好な推定精度を、より少ない演算負荷で達成することを目的としてなされたものである。
−構成−
本発明の電池状態推定装置は、二次電池の状態(以下、「電池状態」と称する。)を推定するように構成されている。この電池状態推定装置は、電圧検出部と、電流検出部と、温度検出部と、を備えている。前記電圧検出部は、前記二次電池の端子間に発生する電池電圧を検出するように設けられている。前記電流検出部は、前記二次電池の充放電中の電流を検出するように設けられている。前記温度検出部は、前記二次電池の温度である電池温度を検出するように設けられている。
また、前記電池状態推定装置は、電流推定部を備えている。この電流推定部は、前記電圧検出部によって検出された前記電池電圧と、前記温度検出部によって検出された前記電池温度と、に基づいて、電池モデルを用いて前記二次電池の充放電中の電流を推定するように設けられている。ここで、前記電池モデルは、反応寄与物質(前記二次電池における電気化学反応に寄与する物質)の分布を規定する拡散方程式を少なくとも含む計算モデルである(かかる電池モデルは、特許第4265629号公報、特許第4649682号公報、特許第4703593号公報、特許第4744622号公報、特許第4802945号公報、特開2007−141558号公報、特開2008−243373号公報、特開2010−60406号公報、等に詳細に記載されている。)。この反応寄与物質には、前記二次電池がいわゆるリチウムイオン電池である場合、リチウムの原子あるいはイオンが該当する。
さらに、前記電池状態推定装置は、拡散係数補正値設定部を備えている。この拡散係数補正値設定部は、前記拡散方程式における拡散係数を補正するための値である拡散係数補正値を設定するように設けられている。
本発明の特徴は、前記拡散係数補正値設定部が、前記電流検出部による電流検出値を平均化した値と、前記電流推定部による電流推定値を平均化した値と、の差に基づいて、前記拡散係数補正値を設定することにある。なお、前記電流検出値を平均化した値としては、同電流検出値をなまし処理することで得られた値が用いられ得る。また、前記電流推定値を平均化した値としては、同電流推定値をなまし処理することで得られた値が用いられ得る。
−作用・効果−
かかる構成を有する本発明の電池状態推定装置においては、前記電圧検出部によって検出された前記電池電圧と、前記温度検出部によって検出された前記電池温度と、に基づいて、前記電流推定部により前記電流推定値が算出される。こうして算出された前記電流推定値は、前記電池状態の推定のために用いられる(詳細には前掲の各公報参照)。
また、前記拡散係数補正値設定部は、前記電流推定値を平均化した値と、前記電流検出部によって検出された前記電流検出値を平均化した値と、の差に基づいて、前記拡散係数補正値を設定する。こうして設定された前記拡散係数補正値が以後の前記電池状態の推定に用いられることで、当該電池状態の良好な推定精度が得られる。
ここで、上述したように、本発明の電池状態推定装置においては、前記電流推定値(これはそもそも前記電池状態の推定のために用いられる値である)を平均化した値と、前記電流検出部によって検出された前記電流検出値を平均化した値と、の差に基づいて、前記拡散係数補正値が設定される。このため、本発明の構成によれば、前記拡散係数補正値の設定のためだけに別途状態量データを取得したり保存したりする必要性が著しく低減する。また、前記拡散係数補正値の設定が、所定の充放電状態の経過後等の条件に拘束されず、任意の時期に行われ得るようになる。
このように、本発明によれば、前記電池状態の良好な推定精度を、より少ない演算負荷で達成することが可能となる。
本発明の一実施形態が適用された電源システムの概略構成を示すブロック図である。 図1に示されている電源システムの一例である車両の概略構成を示すブロック図である。 図1に示されているバッテリ制御用電子制御ユニット内にて実現される、本発明の一実施形態に係る電池状態推定装置の概略構成を示すブロック図である。 図3に示されている拡散係数補正値設定部にて用いられる、拡散係数補正値の設定(取得)のためのマップの一例を示す図である。 本発明の拡散係数補正を行わない場合の、電流及びSOCの推定状態を時間経過とともに示すグラフである。 本発明の拡散係数補正を行った場合の、電流及びSOCの推定状態を時間経過とともに示すグラフである。 図3に示されている電池状態推定装置によって実行される、電池状態(具体的にはSOC)の推定動作の一具体例を示すフローチャートである。 図3に示されている拡散係数補正値設定部にて用いられる、拡散係数補正値の設定(取得)のためのマップの他の一例を示す図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、後述するように、本発明が、以下に説明する実施形態の具体的構成に何ら限定されるものではないことは、全く当然である。本実施形態に対して施され得る各種の変更(変形例:modification)は、当該実施形態の説明中に挿入されると、一貫した実施形態の説明の理解が妨げられるので、末尾にまとめて記載されている。
−電源システムの全体構成−
図1は、本発明の一実施形態が適用された電源システムSの概略構成を示すブロック図である。電源システムSは、二次電池1と、負荷2と、バッテリ制御装置3と、メイン制御ユニット4と、を備えている。この電源システムSは、二次電池1によって負荷2へ電源を供給するとともに、必要に応じて当該負荷2の運転中に生じる電力によって当該二次電池1を充電可能に構成されている。
本実施形態においては、二次電池1は、充放電可能なリチウムイオン電池であって、その端子は電源ライン5を介して負荷2と電気的に接続されている。また、本実施形態においては、電源システムSは、図示しないモータを搭載した車両(電気自動車あるいはハイブリッド自動車)である。すなわち、負荷2には、二次電池1から供給される電力によって駆動される当該モータ等の駆動要素が設けられている。また、負荷2には、車両走行中に発電可能な発電要素(図示せず:この発電要素には上述のモータが含まれ得る)が設けられている。
バッテリ制御装置3は、電気化学反応に基づいて二次電池1の内部状態を推定可能な電池モデルに従って二次電池1の電池状態(SOC等)を推定するとともに、この推定値を含む二次電池1に関する各種情報をメイン制御ユニット4に向けて送出するようになっている。メイン制御ユニット4(以下、「メインECU4」と称する。)は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、バックアップRAM(書き換え可能な不揮発性メモリ)、等を含む、いわゆるマイクロコンピュータであって、バッテリ制御装置3から得られる電池情報、及び運転者からの運転指令情報(図示しないアクセルペダルの操作量等)に応じて、二次電池1の充放電状態や負荷2の動作状態を制御するようになっている。
図2は、図1に示されている電源システムSの一例である車両VHの概略構成を示すブロック図である。図2に示されているように、車両VHは、いわゆる「ハイブリッド自動車」であって、二次電池1、バッテリ制御装置3、及びメイン制御ユニット4に加えて、負荷2としての、第一モータジェネレータ21と、第二モータジェネレータ22と、インバータ23と、電力ライン24及び25と、エンジン26と、動力伝達機構27と、を備えている。
第一モータジェネレータ21は、発電機としても電動機としても動作可能な周知の交流同期型発電電動機であって、エンジン26の回転駆動力のうちの全部又は一部を受け取ることで発電し得るように設けられている。なお、本実施形態においては、第一モータジェネレータ21は、主として発電機として機能するように設けられている。第二モータジェネレータ22は、発電機としても電動機としても動作可能な周知の交流同期型発電電動機であって、二次電池1及び/又は第一モータジェネレータ21から電力供給を受けることで車軸DS(車輪W)を回転駆動するための動力を発生する一方、減速時には車軸DS(車輪W)の回転駆動力から電力を回収し得るように設けられている。
インバータ23は、電源ライン5を介して二次電池1と電気的に接続されている。また、インバータ23は、電力ライン24を介して第一モータジェネレータ21と電気的に接続されるとともに、電力ライン25を介して第二モータジェネレータ22と電気的に接続されている。このインバータ23は、二次電池1から供給された直流電力を交流電力に変換して電力ライン24へ出力するとともに、電力ライン24及び25に供給された交流電力を直流電力に変換して電源ライン5に出力するようになっている。
第一モータジェネレータ21、第二モータジェネレータ22、及びエンジン26は、動力伝達機構27を介して車軸DS(車輪W)と結合されている。動力伝達機構27は、動力分割機構27aと、減速機27bと、を備えている。動力伝達機構27は、エンジン26により出力された回転駆動力のうちの全部又は一部を第一モータジェネレータ21に伝達することで第一モータジェネレータ21における発電を可能とするとともに、エンジン26及び第二モータジェネレータ22により出力された回転駆動力を車軸DSに伝達することで車輪Wを駆動可能に構成されている。
上述のような車両VHの構成はすでに周知となっているので、本明細書においては、これ以上の詳細な説明については省略する。
−バッテリ制御装置の構成−
再び図1を参照すると、バッテリ制御装置3は、バッテリ制御用電子制御ユニット30(以下、「バッテリECU30」と称する。)と、電圧センサ31と、電流センサ32と、温度センサ33と、を備えている。バッテリECU30も、予めプログラムされた所定のシーケンス及び所定の演算を実行するためのCPU、かかるシーケンス及び演算を実行するためのルーチン(プログラム)及びパラメータを格納したROM、CPUによるルーチン実行の際に適宜データが格納されるRAM及びバックアップRAM、等を含む、いわゆるマイクロコンピュータであって、電圧センサ31、電流センサ32、及び温度センサ33が出力する検出信号(検出値)等に基づいて上述の電池情報を生成するようになっている。
電圧センサ31は、二次電池1の端子間に発生する電池電圧に応じた出力を生じるように設けられている。電流センサ32は、二次電池1の充放電中の電流に応じた出力を生じるように設けられている。温度センサ33は、二次電池1の温度である電池温度に応じた出力を生じるように設けられている。
図3は、図1に示されているバッテリECU30内にて実現される、本発明の一実施形態に係る電池状態推定装置300の概略構成を示すブロック図である。この電池状態推定装置300は、拡散推定部311と、開放電圧推定部312と、電池パラメータ値設定部313と、電流推定部314と、境界条件設定部315と、平均濃度算出部321と、SOC推定部322と、を備えている。なお、これらは、公知の電池モデルを用いた上記各公報に開示されたものと同様のものであるので(例えば特開2008−243373号公報の図9及び図10参照)、各部で用いられるモデル式等の詳細は本明細書では省略する(必要であれば上記各公報を参照のこと)。
拡散推定部311は、公知の活物質拡散モデル式により、境界条件設定部によって設定された境界条件に基づいて、活物質内部でのリチウム濃度分布を逐次演算及び更新するようになっている。開放電圧推定部312は、所定のマップに従い、正極および負極それぞれの開放電圧、あるいは正極及び負極を合成した開放電圧を算出するようになっている(図中では、これらを包括して「開放電圧U(θ)」と表記している。U(θ)は開放電圧Uが「θ」の関数としてθを引数とするマップにより取得されることを示している。ここで、「θ」は、拡散推定部311による推定に基づく局所SOCである。)
電池パラメータ値設定部313は、温度センサ33の検出値Tbに従って検知される電池温度T、及び拡散推定部311による推定に基づく現在の局所SOC(図中「θ」と表記されている)に応じて、使用する電池モデル式中の電池パラメータ(直流純抵抗Rd、交換電流密度i0、拡散定数Ds、等)を設定するようになっている。ここで、拡散定数Dsは、電池モデル式中のリチウム濃度分布を規定する拡散方程式に用いられる係数である。なお、本実施形態においては、電池パラメータ値設定部313から拡散推定部311に入力される拡散定数Dsは、電池温度Tと所定のマップとに基づいて一旦取得された拡散定数Dsに対して、後述の拡散係数補正値kdsを乗算した値である(すなわちDs←Ds・kds)。
電流推定部314は、開放電圧推定部312によって推定された開放電圧U(θ)と、電圧センサ31の検出値Vbに従って検知される現在の電池電圧V(t)と、公知の電圧−電流関係モデル式及び活物質拡散モデル式と、に基づいて、電池電流密度I(t)を算出するようになっている。境界条件設定部315は、電流推定部314によって算出された電池電流密度I(t)を反応電流密度(リチウム生成量)に換算して、活物質拡散モデル式の境界条件を更新するようになっている。
平均濃度算出部321は、拡散推定部311によって推定された活物質内部でのリチウム濃度分布に基づいて、正極活物質モデル内のリチウム平均濃度csave(t)を算出するようになっている。SOC推定部322は、平均濃度算出部321によって算出されたリチウム平均濃度csave(t)に基づいて、二次電池1全体のSOC推定値(図中SOCeと示されている)を生成するようになっている。
さらに、電池状態推定装置300は、推定電流平均化処理部331と、検出電流平均化処理部332と、拡散係数補正値設定部333と、を備えている。
推定電流平均化処理部331は、電流推定部314によって算出された電池電流密度I(t)に極板面積を乗じ一次なまし処理することで、電流推定値を平均化した値(以下、「推定電流平均値」と称する。)Ieaveを算出するようになっている。検出電流平均化処理部332は、電流センサ32の検出値に従って検知される検出電流Isを一次なまし処理することで、電流検出値を平均化した値(以下、「検出電流平均値」と称する。)Isaveを算出するようになっている。拡散係数補正値設定部333は、推定電流平均値Ieaveと検出電流平均値Isaveとの差に基づいて、拡散定数Dsの補正値(拡散係数補正値kds)を設定するようになっている。
図4は、図3に示されている拡散係数補正値設定部333にて用いられる、拡散係数補正値kdsの設定(取得)のためのマップの一例を示す図である。図4中、(i)は放電時、(ii)は充電時のマップの一例を示している。また、ΔIave=Isave−Ieaveである。拡散係数には温度依存性があるため、かかるマップは、複数の電池温度Tの範囲毎にそれぞれ設定されている。
−拡散係数補正の概要−
二次電池1は、周知の通り、使用に伴ってその性能が経時的に変化する。かかる性能変化は、リチウム拡散挙動の変化に起因するものである。かかる経時的なリチウム拡散挙動変化に伴い、電池モデルにより取得される電流推定値(電流推定部314によって算出される電池電流密度I(t)の値)と、実際の充放電電流の値と、の間に偏差が発生し(かかる偏差は、定電流充放電時にはオフセット的な偏差として現れる。)、これによりSOCの推定精度が悪化する。かかる電流推定値と実際の充放電電流の値との偏差は、上述のリチウム拡散挙動変化に伴う電池モデルと実際の二次電池1との過電圧の差が電流推定値の差となって現れるために生じる。
図5は、この現象を示すグラフである。図中、(i)は電流推定値及び実際の電流値の時間経過に伴う変化を示すグラフであり、(ii)はSOC推定値及び実際のSOCの値の時間経過に伴う変化を示すグラフである。また、図中、実線は実際の値(真値)を示し、破線は推定値を示しているものとする。図5に示されているように、拡散挙動の変化により、電流推定値の誤差が大きくなり、これによりSOC推定値にも大きな誤差が生じている。
そこで、本発明の発明者は、拡散挙動の変化によって電流推定値と実際の充放電電流の値との間にオフセット的な偏差が生じることに着目し、かかる偏差に基づいて電池モデルにおける拡散係数を補正(学習)する手法を案出した。
なお、拡散挙動の変化に応じた拡散係数の学習に関しては、本出願人は、すでに、特開2008−241246号公報(特許第4703593号)にて、その一手法を提案している(第2実施形態:図12〜図23等参照)。かかる手法は、所定の電池緩和状態を経て拡散係数の学習可能なタイミングが到来した後に、所定のデータ保存期間中に時系列データとして保存された電池データの測定値(電池温度T、電池電流Is、電池電圧V)を用いて、拡散係数の学習を行う、というものである(以下、これを「従来の手法」と称する。)。かかる従来の手法は、以下の知見に基づいて案出されたものである。
一般に、同一符号の大電流が継続し、あるいは大電流が継続した後に電流が停止して電池電圧が緩和する場合に、活物質内のリチウム拡散(拡散抵抗)による電圧変化が顕著に現れる。よって、このような場合に、経時的変化(劣化)により、電池モデルと実際の二次電池1との間に、活物質におけるリチウム拡散係数に差が生じると、電池モデルによる電流推定値に大きな誤差が発生する。かかる事実を利用して、二次電池1に一定電流を所定時間流した後にかかる電流をカットしたときの電流、電圧、及び温度を測定し、測定データの電流カット後の緩和部分の電流プロファイルが、電池モデルによる電流推定値の緩和部分のプロファイルと一致するように、電池モデルにおける拡散係数の同定が行われる。車両VHにおいてこのような拡散係数の同定をオンボードで行うための上述のような電流状態が実現されるのは、回生ブレーキ作動を経て停車する場合である。
かかる従来の手法によれば、電流推定及びSOC推定の誤差を良好に小さくすることができる。但し、従来の手法においては、上述のように、所定の電池緩和状態を経て拡散係数の学習可能なタイミングが到来しなければ拡散係数の学習を行うことができない。また、従来の手法においては、SOC推定には用いられない、拡散係数の学習専用の時系列データを格納する必要があり、そのための大きな記憶容量が必要となるとともに、計算負荷も大きかった。
これに対し、本実施形態(本発明)の拡散係数補正手法によれば、任意の時期に拡散係数補正を行うことが可能になり、補正(学習)機会が増大し、以て推定精度がよりいっそう向上する。なお、図6に、本実施形態(本発明)の拡散係数補正手法を用いた場合の、電流及びSOCの推定状態を示す。
また、本実施形態(本発明)の拡散係数補正手法においては、SOC推定のために用いられるデータ(パラメータ)である電池データの測定値(電池温度T、電池電流Is、電池電圧V)と、SOC推定のために算出される電池電流密度I(t)の推定値と、を用いて拡散係数補正が行われる。したがって、本実施形態(本発明)の拡散係数補正手法によれば、SOC推定のために用いられるデータ(パラメータ)以外の、拡散係数の学習専用の時系列データを格納する必要がなくなり、以て計算負荷や必要な記憶容量が軽減される。
−動作の具体例−
図7は、図3に示されている電池状態推定装置300によって実行される、電池状態(具体的にはSOC)の推定動作の一具体例を示すフローチャートである。図中、「S」は「ステップ」の略称である。図7に示されているSOC推定ルーチン700は、バッテリECU30において所定の演算周期毎に実行される。
まず、ステップ710において電圧センサ31の検出値Vbに基づいて電池電圧V(t)が取得されるとともに、ステップ715において温度センサ33の検出値Tbに基づいてその時点における電池温度Tが取得される。次に、ステップ720において、前回のルーチン実行時に後述するステップ780によって更新されたリチウム濃度分布に基づいて、活物質表面の局所的SOCの値(θ)が算出される。続いて、ステップ730において、上述のステップ720にて算出された局所的SOCの値に基づいて、開放電圧U(θ)値が算出される。その後、ステップ740において、図3に示されている電流推定部314の機能により、電池電圧V(t)、開放電圧U(θ)、及び電池温度Tに応じて設定された電池パラメータ値に基づいて、電池電流密度I(t)の推定値が算出される。以上の処理は、本出願人の先願に係る特開2008−243373号公報の図12におけるステップ100〜140と同様である。
電池電流密度I(t)の推定値が算出されると、処理がステップ750に進行し、電池電流密度I(t)の推定値に極板面積を乗じ一次なまし処理することで、推定電流平均値Ieaveが算出される。また、ステップ755において、電流センサ32の検出値に従って検知される検出電流Isを一次なまし処理することで、検出電流平均値Isaveが算出される。その後、ステップ760において、検出電流平均値Isaveと推定電流平均値Ieaveとの差ΔIaveと、電池温度Tに応じて選択されΔIaveを引数とするマップMAPkdsと、に基づいて、拡散係数補正値kdsが設定(取得)される。
拡散係数補正値kdsが設定(取得)されると、処理がステップ770に進行する。ステップ770においては、推定された電池電流密度I(t)から反応電流密度(リチウム生成量)が算出されるとともに、算出した反応電流密度を用いて拡散モデル方程式の活物質界面における境界条件(活物質界面)が設定される。この処理も、本出願人の先願に係る特開2008−243373号公報の図12におけるステップ150と同様である。
次に、ステップ780において、拡散方程式モデルに従って、活物質モデル内のリチウム濃度分布が計算され、活物質モデル内の各領域のリチウム濃度推定値が更新される。すなわち、ステップ780において実行される処理は、図3における拡散推定部311の機能に相当する。ここで、本具体例においては、ステップ780における処理の実行の際に用いられる拡散係数Dとして、電池温度Tに応じて設定された値に対して、上述の拡散係数補正値kdsを乗じた値が用いられる。なお、上述のように、このとき演算及び更新された最外周の分割領域におけるリチウム濃度は、次回のルーチン実行時に、ステップ720にて局所的SOCの算出に用いられる。
ステップ780にてリチウム濃度分布が更新された後、処理がステップ790に進行し、ステップ780にて求められた活物質内のリチウム濃度分布に基づいてリチウム平均濃度csaveが算出される。続いて、ステップ795において、ステップ790にて求められたリチウム平均濃度csaveに基づいて二次電池1全体のSOC推定値(図中SOCeと示されている)が算出される。これらの処理も、本出願人の先願に係る特開2008−243373号公報の図12におけるステップ171及び172と同様である。その後、本ルーチンが一旦終了する。
<変形例の例示列挙>
なお、上述の実施形態は、上述した通り、出願人が取り敢えず本願の出願時点において最良であると考えた本発明の代表的な実施形態を単に例示したものにすぎない。よって、本発明はもとより上述の実施形態に何ら限定されるものではない。したがって、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、上述の実施形態に対して種々の変形が施され得ることは、当然である。
以下、代表的な変形例について、幾つか例示する。もっとも、言うまでもなく、変形例とて、以下に列挙されたものに限定されるものではない。また、複数の変形例が、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜、複合的に適用され得る。
本発明(特に、本発明の課題を解決するための手段を構成する各構成要素における、作用的あるいは機能的に表現されているもの)は、上述の実施形態や、下記変形例の記載に基づいて限定解釈されてはならない。このような限定解釈は、(先願主義の下で出願を急ぐ)出願人の利益を不当に害する反面、模倣者を不当に利するものであって、許されない。
本発明は、上述の実施形態にて開示された具体的な装置構成に限定されない。例えば、第一モータジェネレータ21と第二モータジェネレータ22とのうちのいずれか一方は、省略されてもよい。また、本発明の適用対象は、ハイブリッド自動車に限定されない。すなわち、例えば、本発明は、内燃機関を用いない電気自動車に対しても良好に適用され得る。さらに、本発明の適用対象は、車両に何ら限定されるものではない。
本発明は、上述の実施形態にて開示された具体的な処理態様に限定されない。例えば、なまし処理に代えて、算術平均処理が用いられてもよい。また、図7に示されている各ステップの順序も、技術的に矛盾しない範囲内において適宜変更可能である。
二次電池1をほぼ満充電の状態からごく低残量の状態まで放電させた後、ほぼ満充電の状態に復帰させるような使用態様が望まれる場合がある(例えばハイブリッド自動車等)。このような場合、放電時に低SOC領域でのSOCの推定値が実際値よりも高くなる、もしくは、充電時に高SOC領域でのSOCの推定値が実際値よりも低くなると、二次電池1の劣化が加速される可能性がある。そこで、これを防止するために、図4に示されているマップに代えて、図8に示されているマップが用いられ得る。
図8に示されているマップにおいては、ΔIaveの全領域において、補正値kds≧1となっている。すなわち、かかるマップを用いた場合、拡散係数を大きくする方向にのみ、拡散係数の補正(学習)が行われる。具体的には、(i)の放電時のものを参照すると、放電時においては、ΔIave<0すなわち検出電流平均値Isave<推定電流平均値Ieaveである場合には、補正値kds=1であり、拡散係数の補正は行われない。一方、(ii)の充電時のものを参照すると、充電時においては、ΔIave>0すなわち検出電流平均値Isave>推定電流平均値Ieaveである場合には、補正値kds=1であり、拡散係数の補正は行われない。
本発明に係る拡散係数補正は、直流抵抗学習と並行して行うことが可能である(特許第4703593号公報における「実施の形態3」参照)。ここで、「直流抵抗学習」とは、電池モデル式中の電池パラメータの一つである直流抵抗Raの経時変化状態を推定することをいう。なお、直流抵抗Raは、二次電池1をマクロに見た場合の内部の直流抵抗に相当するものであって、負極及び正極での電子eの移動に対する純電気的な抵抗である直流純抵抗Rdと、活物質界面での反応電流発生時に等価的に電気抵抗として作用する電荷移動抵抗である反応抵抗Rrと、を併せたものである。
直流抵抗Raの学習は、例えば、初期状態(典型的には新品時であるが、これに限定されるものではなく、予想される最大劣化時と新品時との間の中間的な状態に対応して初期状態が定義されてもよい。)の値からの変化率を算出することによって行われる。すなわち、上述の各センサにより測定された電池データ(Tb,Vb,Ib)と、現在の電池状態(T,θ)に対応して所定のパラメータ特性マップから読み出された直流抵抗の初期値Ranと、を用いた、電池モデル式に基づくパラメータ同定により、直流抵抗変化率の推定値が、公知の逐次最小自乗法モデルを用いて逐次算出される(さらなる詳細は特許第4703593号公報等参照)。
その他、特段に言及されていない変形例についても、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、本発明の範囲内に含まれることは当然である。
また、本発明の課題を解決するための手段を構成する各要素における、作用的あるいは機能的に表現されている要素は、上述の実施形態や変形例にて開示されている具体的構造の他、当該作用あるいは機能を実現可能ないかなる構造をも含む。さらに、本明細書にて引用した各公報の内容(明細書及び図面を含む)は、技術的に矛盾しない範囲において、本明細書の一部を構成するものとして適宜援用され得る。
S…電源システム VH…車両 1…二次電池
2…負荷 21…MG1 22…MG2
23…インバータ 24…電力ライン 25…電力ライン
26…エンジン 27…動力伝達機構
3…バッテリ制御装置 30…バッテリ制御用電子制御ユニット
31…電圧センサ 32…電流センサ 33…温度センサ
300…電池状態推定装置 311…拡散推定部 312…開放電圧推定部
313…電池パラメータ値設定部 314…電流推定部 315…境界条件設定部
321…平均濃度算出部 322…SOC推定部
331…推定電流平均化処理部 332…検出電流平均化処理部
333…拡散係数補正値算出部
4…メイン制御ユニット 5…電源ライン
特許第4649682号公報 特許第4703593号公報 特開2008−243373号公報 特開2010−60406号公報

Claims (2)

  1. 二次電池の状態を推定するように構成された、電池状態推定装置であって、
    前記二次電池の端子間に発生する電池電圧を検出するように設けられた、電圧検出部と、
    前記二次電池の充放電中の電流を検出するように設けられた、電流検出部と、
    前記二次電池の温度である電池温度を検出するように設けられた、温度検出部と、
    前記二次電池における電気化学反応に寄与する物質である反応寄与物質の分布を規定する拡散方程式を少なくとも含む計算モデルとしての電池モデルを用い、前記電圧検出部によって検出された前記電池電圧と、前記温度検出部によって検出された前記電池温度と、に基づいて、前記二次電池の充放電中の電流を推定するように設けられた、電流推定部と、
    前記電流検出部による電流検出値を平均化した値と、前記電流推定部による電流推定値を平均化した値と、の差に基づいて、前記拡散方程式における拡散係数を補正するための値である拡散係数補正値を設定するように設けられた、拡散係数補正値設定部と、
    を備えたことを特徴とする、電池状態推定装置。
  2. 請求項1に記載の、電池状態推定装置であって、
    前記電流検出値を平均化した値は、同電流検出値をなまし処理することで得られた値であり、
    前記電流推定値を平均化した値は、同電流推定値をなまし処理することで得られた値である
    ことを特徴とする、電池状態推定装置。
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