JP2013103875A - バナジウム結晶化複合酸化物及び製造方法 - Google Patents

バナジウム結晶化複合酸化物及び製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 光反応における太陽電池および光触媒の分野では酸化チタンが用いられているが、一般的に酸化チタンの吸収波長は紫外域であり使用目的には限界がある。
酸化チタンなどは光を照射することにより光反応を示すことが知られおり、強力な触媒機能を発揮することが知られており、消臭、汚れの除去、大腸菌などの殺菌用として応用されている。従来、酸化チタンであれば主として400nm以下の紫外光に吸収ピークがあり、光の利用効率が低かった。
【解決手段】 結晶化する温度以上での熱処理したバナジウム結晶化複合酸化物に光を照射することで長波長域まで反応する新規光反応性材として提供する。酸化チタンのバンドギャップは3.2eVであるが、本発明のバナジウム結晶化複合酸化物のバンドギャップは組成により1.0〜2.5eVあり、吸収波長域は長波長の広範囲を有する、新規光反応性材として提供する。
【選択図】図1

Description

発明の詳細な説明
酸化バナジウムを主成分とするガラス混合物を、結晶化する温度または、結晶化する温度以上で熱処理し長波長域まで活性するバンドギャップを有するバナジウム結晶化複合酸化物及び製造法を特徴とする。
本発明は、太陽による自然光や蛍光灯及びLEDなどの人工光に反応する光反応性材、さらにその光反応性材を用いた太陽電池や光触媒の分野、またセンサーの分野の技術に関する。
従来技術
酸化チタンなどは光を照射することにより光反応を示すことが知られている。例えば、光触媒によれば、太陽光により水を分解し酸素と水素が得られる。一方、酸化チタンは光照射によって強力な触媒機能発揮することが知られており、有機物の存在下で光触媒を作用させることにより有機物を分解することが知られている。このため、消臭、汚れの除去、大腸菌などの殺菌用として応用されている。その他、光照射により光触媒が、超親水性を示すことが知られている。すなわち、酸化チタンでコーティングした面に光照射して、液滴を垂らすと全面に広がる性質が発現するため、外壁やミラーに使用することによりセルフクリーニング効果を発揮する。光触媒関連の技術動向として、効率的に光触媒作用を示すような材料が求められている。従来、酸化チタンであれば主として400nm以下の紫外光に吸収ピークがあり、光の利用効率が低かった。このような技術課題に対して、他の酸化物、窒素ドープなどの不純物を注入することにより可視光応答型の光触媒として利用することが提案されている(特許文献1)。
太陽電池として酸化チタンを用いた色素増感太陽電池が提案されている。大きな特徴としては、シリコン太陽電池に比べ有機色素や酸化チタンを用いるため、資源の制約が少ないことや、非常に簡便な設備や技術で安価にかつ大量に製造できる点が挙げられる。
色素増感太陽電池の光電エネルギー変換効率は、変換効率の改善がなされ、可視光のほぼ全域(400〜800nm)を吸収し、耐候性にも優れるが提案がされている(特許文献2、特許文献3)。
特開2006−272036号公報 特開2004−171815号公報 特開2005−166615号公報
従来技術で述べた酸化チタンは、バンドギャップは3.2eV(「Light−Induced Redox Reactions in Nanocrystalline Systems」、「Chemical Reviews VOL.95 No.1」、(1995年)、Anders Hagfeldt、Michael Gratzel 著、American Chemical Society発行、53頁 Fig.3 Band edge position of several semiconductors in contact with aqueous electrolyte at pH 1. Reprinted with permission from American Chemical Society.より)であり、387nmより短波長の光で反応吸収(光閉じ込め効果による光触媒活性能の向上」、「会報光触媒VOL.9 第9回シンポジウム“光触媒反応の最近の展開”」、(2002年)、縫田知宏、金井信宏、橋本和仁、渡辺俊也、大崎壽著、光機能材料研究会発行、45頁 Fig.3 単膜の吸収スペクトルと多層膜におけるTiO吸収スペクトルの計算結果より)するが、可視光域まで反応させ可視応答型太陽電池への応用としてルテニウム系色素での増感効果、さらに不純物ドープによる方法が提案されている。しかし、ルテニウム系の色素が高価であり使用可能な種類も限定されていることから十分な変換効率が得られていない。また不純物ドープによる方法は色素より更に変換効率が悪く実用化が困難であるという問題があった。
本発明はこのような問題を解決し、色素を使用する必要がなく、また不純物ドープすると言う工程を行うことも必要なく長波長域まで光反応する新規光反応性材を提供することを目的とする。
本発明者は鋭意検討の上、導電性を有する酸化バナジウムを主成分とするガラス混合物を従来の常識に反して結晶化させ、当該結晶化物が長波長域まで光反応することを見出した。すなわち、通常、酸化バナジウムを主成分とする混合物から導電性ガラスを作製するためには、当該混合物を溶融温度で加熱処理した後、ガラス化のために急冷することが通常行われるが、ここで急冷するのではなくあえて自然冷却すれば酸化バナジウムを主成分とするガラス混合物が結晶化することを見出した。また、既に一度ガラス化されたものを再度、結晶化温度以上で熱処理をし、その後自然冷却することによっても酸化バナジウムを主成分とするガラス混合物が結晶化することを見出した。さらに、前記の方法で結晶化された物質であるバナジウム結晶化複合酸化物は、光反応性材として長波長域まで活性を有することまでをも見出したのである。本発明者が見出したバナジウム結晶化複合酸化物は、バンドギャップが組成により1.0〜2.5eVとすることができ、吸収波長域を300〜1000nmの吸収域の広範囲を有するものとなる。
すなわち、本発明は、酸化バナジウムを主成分とするガラス混合物を結晶化させたバナジウム結晶化複合酸化物であることを特徴とし、また、光音響分光法による測定において1.0〜2.5eVのバンドギャップエネルギーを有するバナジウム結晶化複合酸化物である。これを換言すれば、本発明のバナジウム結晶化複合酸化物は、300〜1000nmの範囲の光に反応する光反応性材であるといえる。
また、本発明は、酸化バナジウムを主成分に含むガラス混合物を調整する工程と、前記ガラス混合物を溶融及び急冷しガラス組成物を得る工程と、前記ガラス組成物を結晶化温度以上で熱処理を施す工程と、前記熱処理後に自然冷却して結晶化させる工程とを備えるバナジウム結晶化複合酸化物の製造方法である。さらに本発明は、酸化バナジウムを主成分に含むガラス混合物を調整する工程と、前記ガラス混合物を溶融処理する工程と、溶融されたガラス混合物を自然冷却して結晶化させる工程とを備えるバナジウム結晶化複合酸化物の製造方法である。
以下、本発明のバナジウム結晶化複合酸化物及びその製造方法について説明する。本発明は、前述のように酸化バナジウムを主成分とするガラス混合物を結晶化させたバナジウム結晶化複合酸化物であるが、ガラス混合物からガラス組成物を形成した上で製造する方法とガラス混合物から直接製造する方法があるため、酸化バナジウムを主成分とするガラス混合物の構成を説明した上、2通りのバナジウム結晶化複合酸化物の製造方法を説明し、得られたバナジウム結晶化複合酸化物について説明する。さらに各実施例に基づいて作製されたバナジウム結晶化複合酸化物の評価について説明する。なお、以下の記載はあくまで最良形態に係るものであるため、当該記載によって本発明の技術的範囲は限定されるものではない。
《酸化バナジウムを主成分とするガラス混合物》
本最良形態に係る酸化バナジウムを主成分とするガラス混合物は、酸化バナジウムを50〜98モル%含有するものをいい、酸化バリウム、酸化鉄を含むことがさらに好適であり、その他、リン酸、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化銀、ヨウ化銀、酸化リチウム、ヨウ化リチウム、酸化アルミニウム、酸化セシウム、ヨウ化ナトリウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化アンチモン、酸化レニウム等を含んでいてもよい。また、酸化バリウムや酸化鉄を含む場合、酸化バリウムを好適に1〜40モル%含有し、酸化鉄を1〜20モル%含有するものが特に好ましい。更に、酸化バリウム(B)と酸化バナジウム(V)のモル比(B:V)は、好適には5:90〜35:50である。また、酸化鉄(F)と酸化バナジウム(V)のモル比(F:V)は、好適には5:90〜15:50である。但し、どのような組成とするかは、電気・電子材料の種類や用途等により変動するものであるので、酸化バナジウムを50〜98モル%含有するということ以外には前記範囲に何ら限定はない。
《ガラス混合物からガラス組成物を経て製造する方法》
酸化バナジウムを主成分とするガラス混合物からガラス組成物の製造は、公知の方法により製造することができる。例えば、特許第3854985号や特開2004−2181、特開2004−331416、特開2003−277101に開示されているように、酸化バナジウム、酸化バリウム、酸化鉄等のガラス混合物を溶融温度で熱処理することで溶融し、その後急冷することによって得ることができる。ここでは急冷とは、通常毎秒1〜10℃の速度で行い、ガラス転移点が得られる条件を言う。なお、ここでできたガラス組成物の電気伝導度は、25℃において10−13S・cm−1以上で好適であり、10−9S・cm−1以上でより好適であり、10−7S・cm−1以上で更に好適である。ここで、電気伝導度は、四端子法により測定された体積抵抗率を意味する。
次に、前記ガラス組成物を該組成物の結晶化温度以上で一定時間熱処理をする。より具体的には熱処理温度として400℃〜800℃の範囲、より好ましくは450℃〜650℃、時間としては10分〜60分、熱処理雰囲気として大気中で行う。その後、同加熱炉内で室温になるまで自然冷却させる。なお、自然冷却とは、表面と内部の温度差が無く、ガラス転移点が発生しない結晶化される条件を言う。
《ガラス混合物から直接製造する方法》
本発明では、酸化バナジウムを主成分に含むガラス混合物を調整した後に溶融処理する工程と、前述のように急冷して一旦ガラス組成物を形成するのではなく、あえて自然冷却することで結晶化させバナジウム結晶化複合酸化物を得ることもできる。この場合の溶融する方法は公知の方法でよく、公知の急冷に替えて自然冷却をすれば足りる。なお、ここでの自然冷却も、表面と内部の温度差が無くガラス転移点が発生しない結晶化される条件を言う。これにより、一度の熱処理工程でよくなり、製造工程を短縮することができる。
《バナジウム結晶化複合酸化物の光反応特性》
バナジウム結晶化複合酸化物の光反応特性評価は、光音響効果を用いた分光法を用いて行うことができる。光音響分光法では、試料に断続的に光を照射し、試料に吸収された光エネルギーが熱として放出されることにより生じる周期的な熱変化を音波として検出するものであり、その音波をエネルギー変化した結果が図1である。
図1では、本発明のバナジウム結晶化複合酸化物の組成を変えたものを2種類示したものである。組成A(20BaO・70V・10FeO)は2.2eV、組成B(25BaO・55V・10FeO・3AL・7SiO)は1.2eVのバンドギャップエネルギーであることが示されている。つまりバナジウム結晶化複合酸化物は、組成の調整によってバンドギャップエネルギーや吸収領域を調整(組成Aと組成Bの結果からすれば、1030〜500nm)出来る特性を有する。なお酸化チタンは、バンドギャップエネルギーが3.2eVであり、387nmより短波長の光を吸収するが、バナジウム結晶化複合酸化物のバンドギャップは、上述のとおり組成をさらに変化させれば、最終的には、紫外領域から可視領域の吸収、およそ1.0〜2.5eVのバンドギャップエネルギーの範囲で調整することができる。
《バナジウム結晶化複合酸化物の構造特性》
次に、バナジウム結晶化複合酸化物が結晶化されている状態を説明する。図2は、バナジウム結晶化複合酸化物について示差熱分析(DTA)を測定した結果であり、バナジウム結晶化複合酸化物が結晶1ピークと結晶2のピークが発生し結晶物が構成されること(結晶化されていること)がわかる。また、図3は、バナジウム結晶化複合酸化物のX線回折(XRD)結果であり、これによれば、図2の結晶ピーク1がBa−V−Oのピークであり、結晶ピーク2がFe−V−Oのピークであることが理解でき、バナジウム結晶化複合酸化物の構成が確認されている。このように溶融後の冷却の条件にて、示差熱分析(DTA)を測定した結果、結晶ピークが検出されるものは全て、本発明でいう結晶化されたバナジウム結晶化複合酸化物に該当する。
また、本発明のバナジウム結晶化複合酸化物は、粉末化してペースト状にするなどして、太陽電池や光触媒として利用することができるが、粉末化する方法は、ジェットミル乾式粉砕法、ビーズミル湿式粉砕法、RF熱プラズマ法等、公知の方法で行うことができる。さらに連続流通式超臨界製造技術等にて作製することでも可能である。これにより量子効果が得られる反応性を示す10nm以下のサイズ作製が可能である。
《バナジウム結晶化複合酸化物の応用例》
また、従来技術において酸化チタンによる光触媒、太陽電池及び酸化バナジウム主成分の導電率について述べたところであるが、本発明の光活性効果の検証を光照射による発電効果(太陽電池)とアセトアルデヒドのCO析出量による光触媒反応を酸化チタンとの比較を行ったところ、本発明のバナジウム結晶化複合酸化物が光反応性材の活性を高める作用を有する新素材であることが見出され、バナジウム結晶化複合酸化物を光吸収体に用いた湿式太陽電池や、バナジウム結晶化複合酸化物を含んだ光触媒に用いることもできることも後述のとおり確認された。
バナジウム結晶化複合酸化物の製造例及びその評価結果の詳細は、以下のとおりである。
製造例1(ガラス混合物からガラス組成物を経て製造する方法1)
酸化バナジウムを主成分とする化学組成が20BaO・70V・10FeOにそれぞれモル比で調整された混合物及び化学組成が25BaO・55V・10FeO・3AL・7SiOにそれぞれモル比で調整された混合物をそれぞれ作製し、これら混合物を白金るつぼ等に移し加熱炉中1000℃で60分間加熱し、溶融した。これを直ちに加熱炉から取り出し空気中で急冷し導電性ガラス組成物(組成A及びB)を作製した。
次にこれらガラス組成物を、ジェットミルなどより乾式粉砕した平均粒径1〜3μm粒子、更にイソプロピルアルコール(IPA)などで分散させビーズミルによる湿式方式で粉砕させ粉末状ガラスペースト化した。なお、溶剤を完全に除去できる事が可能なら、有機溶剤および水など特に限定するものではない。例えば粉末状ガラス組成物をペースト化(液状化)するための溶剤としては、例えばターピネオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールモノイソブチレート等を単独または混合して使用した組成物でも良い。
その後、縦50mm×横40mm×厚さ1mmのステンレス板の上面に粉末状の酸化バナジウムを主成分とする前記ガラスペースト組成物A及びBを厚さ0.2mmにそれぞれ塗布した。さらに、上記各試料を、室温で10分間静置してペースト塗膜を150℃で30分間加熱して、ペースト塗膜中の有機溶剤を揮発させた。次いで加熱炉に入れて昇温速度10℃/分で580℃に昇温し、同温度にて10分間焼成した。焼成後、加熱炉内で室温になるまで自然冷却させ、バナジウム結晶化複合酸化物(組成A及び組成B)を得た。
製造例2(ガラス混合物からガラス組成物を経て製造する方法2)
製造例1で製造された前記ガラスペースト組成物A及びBを、縦50mm×横40mm×厚さ1mmのステンレス板の上面に厚さ0.2mmに水分散させて塗布した。さらに上記試料を、室温で静置し水を蒸発させ、次いで加熱炉に入れて昇温速度10℃/分で580℃に昇温し、同温度にて10分間焼成した。焼成後、加熱炉内で室温になるまで自然冷却させバナジウム結晶化複合酸化物(組成A及び組成B)を得た。
製造例3(ガラス混合物から直接製造する方法)
酸化バナジウムを主成分とする化学組成が20BaO・70V・10FeOにそれぞれモル比で調整された混合物及び化学組成が25BaO・55V・10FeO・3AL・7SiOにそれぞれモル比で調整された混合物をそれぞれ作製し、これら混合物を白金るつぼ等に移し加熱炉中1000℃で60分間加熱し、溶融した。その後、これを同加熱炉内で室温になるまで自然冷却し、再度加熱処理等することなくバナジウム結晶化複合酸化物(組成A及び組成B)を得た。
発電効果の検証(製造例1で製造したバナジウム結晶化複合酸化物)
次に、バナジウム結晶化複合酸化物の光反応性評価結果について詳細に説明する。評価は図4に示される方法で評価した。すなわち、まずステンレス板4上に結晶形成した被膜にヨウ素系の電解液10を数滴浸した。電解液は一般に支持電解質としては、リチウムイオンなどの陽イオンや塩素イオンなどの陰イオンなど種々の電解質を用いることができる。電解質中に存在させる酸化還元対としては、ヨウ素−ヨウ素化合物、臭素−臭素化合物などの酸化還元対を用いることができる。また、光吸収面にはフッソドープ酸化スズ(FTO)膜3をコーティングしたプラスティック板2を用いた。なお、インジウムドープ酸化スズ(ITO)を用いても良い。さらに、プラスティック板以外に透明性のあるガラスなどにフッソドープ酸化スズ(FTO)膜をコーティングした板を用いても良い。
作製した評価用試料(製造例1で製造したバナジウム結晶化複合酸化物の組成A、組成B)をブラックライト、蛍光灯、及び太陽光にて発生する電圧と電流を図4の模式図(光4、電圧計5、電流系6)の回路を用いて光反応性評価を行なった。なお、使用したハンディーブラックライトは380nmから短波長に分光特性を有するFL10WBLBを使用し照射量1W/cmで評価を行ない、使用した蛍光灯は380nmから長波長に分光特性を有するFL10W蛍光灯(白色)を使用し照射6,000ルクス光量で評価を行ない、使用した光源は自然太陽光に類似した擬似太陽光源はソーラMiniUSS−40(ウシオ製)を照射強度1sun(100mmW/cm)評価をそれぞれ行なった。
具体的には図4の模式図の回路を用いて光を照射し発生する電圧及び電流の測定を行った。組成A(20BaO・70V・10FeO)、組成B(25BaO・55V・10FeO・3AL・7SiO)において発電効果が得られた。
光触媒効果の検証(製造例1で製造したバナジウム結晶化複合酸化物)
図6は、バナジウム結晶化複合酸化物と酸化チタンによるアセトアルデヒド分解によるCO析出濃度(ppm)を照射時間により測定する装置構成を示したものであり、試料をセットした容器16を純空気で置換(純空気を10分間導入)したあとアセトアルデヒド5mlを注入し、蛍光灯11は380nmから長波長に分光特性を有するFL10W蛍光灯(白色)6000ルクスを照射した。照射においては可視光域のみの光とするために400nm以下をカットするフィルター12を用いた。そこから1mlを取り出し口13から取り、アセトアルデヒドが分解しCO析出量を測定した。データ30分ごとにクロマトグラフィー機器で測定を行った。
その結果が図7に示されており、180分後の照射以上を経過するとバナジウム結晶化複合酸化物が酸化チタンを上回る結果となった。300分から900分までは継続光照射のみを行なった。図8にアセトアルデヒド光触媒分解の反応について示す。一般にアセトアルデヒドに光照射すると酸化分解過程で酢酸や蟻酸などの中間体が生成し、更に中間体が酸化分解する事でCOにまで分解生成される。そのCO発生の濃度を測定した結果が図7である。
発明の効果
本発明のバナジウム結晶化複合酸化物は酸化チタンが吸収できない可視光域において、光反応活性を有するという効果を奏する。また、本発明のバナジウム結晶化複合酸化物は実施例で記述したように非常に簡便な設備や技術で安価にかつ大量に製造できる。さらに、本発明のバナジウム結晶化複合酸化物が粉末により構成されれば、各種溶剤を用いてペースト状にでき粘性に優れることになる。それにより板状の固形物で使用出来ない分野である太陽電池や光触媒の分野への応用も可能となる。
バナジウム結晶化複合酸化物の組成による光音響分光によるバンドギャップ測定図 バナジウム結晶化複合酸化物の示差熱分析(DTA)特性結果 バナジウム結晶化複合酸化物結晶X線回折(XRD)データ バナジウム結晶化複合酸化物を用いた光反応特性調査模式図 バナジウム結晶化複合酸化物を用いた光反応特性調査測定データ バナジウム結晶化複合酸化物を用いたCO析出濃度(ppm)光触媒試験模式図 バナジウム結晶化複合酸化物を用いたCO析出濃度(ppm)光触媒試験結果 アセトアルデヒドの光照射による酸化分解のメカニズム
1.照射光源:ブラックライト、蛍光灯、及び太陽光
2.透明プラスティック板
3.透明フッソドープ酸化スズ(FTO)膜導電層
4.縦50mm×横40mm×厚さ1mmのステンレス板
5.電圧計
6.電流計
7.可変抵抗器
8.バナジウム結晶化複合酸化物形成層
9.遮蔽壁(電解液の漏れ防止用)
10.電解液
11.FL10W蛍光灯(白色)の可視光光源
12.400nm紫外光カットフィルター
13.アセトアルデヒド気体取り出し口
14.縦50mm×横50mm×厚さ1mmのテンパックスガラス基板
15.バナジウム結晶化複合酸化物形成層
16.密封された石英ガラスの透明容器(アセトアルデヒド気体含有)

Claims (4)

  1. 酸化バナジウムを主成分とするガラス混合物を結晶化させたバナジウム結晶化複合酸化物
  2. 光音響分光法による測定において、1.0〜2.5eVのバンドギャップエネルギーを有する請求項1記載のバナジウム結晶化複合酸化物
  3. 酸化バナジウムを主成分に含むガラス混合物を調整する工程と、前記ガラス混合物を溶融及び急冷しガラス組成物を得る工程と、前記ガラス組成物を結晶化温度以上で加熱処理を施す工程と、前記加熱処理後に自然冷却して結晶化させる工程とを備える、バナジウム結晶化複合酸化物の製造方法、
  4. 酸化バナジウムを主成分に含むガラス混合物を調整する工程と、前記ガラス混合物を溶融処理する工程と、溶融されたガラス混合物を自然冷却して結晶化させる工程とを備える、バナジウム結晶化複合酸化物の製造方法
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