JP2013094628A - 創外固定ピン - Google Patents
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Abstract
【課題】骨の脆弱部であっても骨を強固に固定することができる骨折用固定器具を提供すること
【解決手段】本発明の創外固定ピンは、棒状のピン本体と、前記ピン本体の一端に形成され、螺旋状のねじ山を有するねじ部とを備える。ねじ部の基端部の外径および先端部の外径は、中心部の外径より大きい。また、ねじ部の基端部のピッチは、先端部のピッチより狭い。ねじ部の基端部と先端部のピッチ差は、0mmより大きく、0.4mm以下である。
【選択図】図6
【解決手段】本発明の創外固定ピンは、棒状のピン本体と、前記ピン本体の一端に形成され、螺旋状のねじ山を有するねじ部とを備える。ねじ部の基端部の外径および先端部の外径は、中心部の外径より大きい。また、ねじ部の基端部のピッチは、先端部のピッチより狭い。ねじ部の基端部と先端部のピッチ差は、0mmより大きく、0.4mm以下である。
【選択図】図6
Description
本発明は、骨折箇所を固定する創外固定ピンに関する。
現在、わが国においてロッキングプレートを用いた骨接合術は、橈骨遠位端骨折などにおいて有力な治療の選択肢となっている。ロッキングプレートは、プレートとスクリュー(固定具)とを固定し、優れた角度安定性を実現することができるものである(例えば、特許文献1参照)。ロッキングプレートを用いた骨接合術は、骨折箇所の転移が生じにくく、骨粗鬆症の症例においても固定性がよいといわれている。また、ロッキングプレートを用いた骨接合術は、固定具を骨に圧着した状態で固定しなくても整復転移を生じないため、骨膜血行の面でも有利であるといわれている。
ロッキングプレートを用いた骨接合術は、プレートとスクリューの角度安定性に依存して、骨折箇所に対して荷重架橋を形成する固定方法であり、スクリューが刺入される骨の強度がスクリューによる応力集中に十分耐えられることが前提となっている。実際、スクリュー自体の強度や、低密度海綿骨領域におけるスクリューの引き抜き強度ばかりが注目されている。
しかしながら、従来のロッキングプレートを用いた骨接合術は、骨の脆弱部(例えば、低密度海綿骨領域)に適用すると、スクリューによる骨のせん断が生じてしまい、十分に固定できないという問題があった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、骨の脆弱部であっても骨を強固に固定することができる骨折用固定器具を提供することを目的とする。
本発明者は、所定形状のねじ部を有する創外固定ピンにより上記課題を解決できることを見出し、さらに検討を加えて本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の創外固定ピンに関する。
[1]棒状のピン本体と、前記ピン本体の一端に形成され、螺旋状のねじ山を有するねじ部と、を備えた創外固定ピンであって、前記ねじ部の基端部の外径および前記ねじ部の先端部の外径は、前記ねじ部の中心部の外径より大きく、前記ねじ部の基端部のピッチは、前記ねじ部の先端部のピッチより狭く、前記ねじ部の基端部と前記ねじ部の先端部のピッチ差は、0mmより大きく、0.4mm以下である、創外固定ピン。
[2]前記ねじ部のねじ山の角度およびとがり山の高さは、一定であり、前記ねじ部の中心部のねじ山の高さは、前記ねじ部の基端部および先端部のねじ山の高さよりも低い[1]に記載の創外固定ピン。
[3]前記ねじ部のピッチは、先端部から基端部に向かって一定の変化率で狭くなる、[1]または[2]に記載の創外固定ピン。
[4]前記ねじ部のピッチの変化率は、0.004〜0.016mm/ピッチである、[3]に記載の創外固定ピン。
[5]前記ねじ部の先端部の谷の径は、前記ねじ部の基端部の谷の径より小さい、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の創外固定ピン。
[6]前記ねじ部の谷の径は、前記基端部から前記先端部に向かって一定の変化率で小さくなる、[5]に記載の創外固定ピン。
[7]前記ねじ部の谷の径の変化率は、0.01875〜0.0375mm/mmである、[6]に記載の創外固定ピン。
[1]棒状のピン本体と、前記ピン本体の一端に形成され、螺旋状のねじ山を有するねじ部と、を備えた創外固定ピンであって、前記ねじ部の基端部の外径および前記ねじ部の先端部の外径は、前記ねじ部の中心部の外径より大きく、前記ねじ部の基端部のピッチは、前記ねじ部の先端部のピッチより狭く、前記ねじ部の基端部と前記ねじ部の先端部のピッチ差は、0mmより大きく、0.4mm以下である、創外固定ピン。
[2]前記ねじ部のねじ山の角度およびとがり山の高さは、一定であり、前記ねじ部の中心部のねじ山の高さは、前記ねじ部の基端部および先端部のねじ山の高さよりも低い[1]に記載の創外固定ピン。
[3]前記ねじ部のピッチは、先端部から基端部に向かって一定の変化率で狭くなる、[1]または[2]に記載の創外固定ピン。
[4]前記ねじ部のピッチの変化率は、0.004〜0.016mm/ピッチである、[3]に記載の創外固定ピン。
[5]前記ねじ部の先端部の谷の径は、前記ねじ部の基端部の谷の径より小さい、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の創外固定ピン。
[6]前記ねじ部の谷の径は、前記基端部から前記先端部に向かって一定の変化率で小さくなる、[5]に記載の創外固定ピン。
[7]前記ねじ部の谷の径の変化率は、0.01875〜0.0375mm/mmである、[6]に記載の創外固定ピン。
本発明の創外固定ピンによれば、骨の脆弱部であっても骨のせん断を生じさせることなく骨を強固に固定することができる。また、本発明の創外固定ピンによれば、骨片に圧迫力を付与することで、骨片同士を強固に固定することができる。
まず、図1を参照しながら、本明細書でねじ部について説明する際に使用する用語について説明する(JIS B0101参照)。図1Aは、一般的なねじ部の模式的な部分断面図である。図1Bは、図1Aに示される領域Bの拡大図である。
図1Aに示されるように、「(ねじ部の)外径」とは、ねじ山の頂に接する仮想的な筒の直径dをいう。また、「(ねじ部の)谷の径」とは、ねじ部の谷底に接する仮想的な筒の直径d3をいう。また、「ピッチ」とは、ねじ部の軸線を含む断面において、隣接するねじ山の相対応する2点を軸線に平行に測った距離Pをいう。
図1Bに示されるように、「ねじ山の高さ」とは、ねじ部の軸線を含む断面において、ねじ山の頂を連ねる直線と谷底を連ねる直線との間を軸線に直角に測った距離hをいう。また、「とがり山の高さ」とは、ねじ部の軸線を含む断面において隣接する2つのフランクをねじ山の頂の方向に延長して交わった点を頂点とし、谷底の方向に延長して交わった点を連ねる直線を底辺とする1ピッチ分の三角形(とがり三角形)の高さHをいう。また、「ねじ山の角度」とは、ねじ部の軸線を含む断面において、隣接する2つのフランクがなす角度αをいう。
本発明の創外固定ピンは、骨折の治療に用いられる創外固定器具の一部である。本発明の創外固定ピンは、棒状のピン本体と、ピン本体の一端に形成され、螺旋状のねじ山を有するねじ部とを備える。本発明の創外固定ピンの使用時には、ねじ部は、骨折した骨に刺入される。一方、ピン本体は、ねじ部が骨に刺入された場合であってもその大部分が皮膚の外部に突出している。そして、骨に刺入された複数の創外固定ピンをフレームにより互いに固定することで、骨折した骨を固定することができる。
以下に、本発明の創外固定ピンの各構成要素について説明する。
[ピン本体]
ピン本体は、棒状の部材である。ピン本体の一端には、螺旋状の溝を設けることでねじ部が形成されている。
ピン本体は、棒状の部材である。ピン本体の一端には、螺旋状の溝を設けることでねじ部が形成されている。
ピン本体の長さは、ねじ部が骨に刺入された場合に、ピン本体の少なくとも一部が体外に突出しうる長さであれば特に限定されず、刺入される骨の種類や刺入箇所などに応じて適宜設定されうる。たとえば、上腕骨の太さは36〜40mm程度であり、橈骨遠位端の太さは18〜20mm程度であり、手指の骨の太さは12〜16mm程度であるので、これらの太さに応じてピン本体の長さを適宜設定すればよい。ピン本体の太さは、ピン本体がフレームによって固定された場合に十分な強度を発揮できれば特に限定されず、ピン本体の材料などに応じて適宜設定される。ピン本体の材料は、十分な強度および生体適合性があれば特に限定されない。ピン本体の材料の例には、チタン合金やステンレス鋼などの生体適合性金属が含まれる。
たとえば、本発明の創外固定ピンを橈骨遠位部の骨折治療に適用する場合、創外固定ピンの全長は10.0〜12.0cm程度(ピン本体の長さは8.0〜10.0cm程度)、ピン本体の太さは0.7〜2.5mm程度であればよい。また、本発明の創外固定ピンを上腕骨の骨折治療に適用する場合、創外固定ピンの全長は12.0cm程度(ピン本体の長さは7.0cm程度)、ピン本体の太さは3.0mm程度であればよい。また、本発明の創外固定ピンを下腿骨の骨折治療に適用する場合、創外固定ピンの全長は15.0〜16.0cm程度(ピン本体の長さは9.0〜11.0cm程度)、ピン本体の太さは4.0mm程度であればよい。
[ねじ部]
ねじ部は、ピン本体の一端に形成されている。ねじ部には、全体(先端部、中心部および基端部)に亘り螺旋状のねじ山が形成されている。ねじ部の長さは、特に限定されず、刺入される骨の種類や刺入箇所などに応じて適宜設定されうる。たとえば、本発明の創外固定ピンを橈骨遠位部の骨折治療に適用する場合、ねじ部の長さは16〜32mm程度であればよい。
ねじ部は、ピン本体の一端に形成されている。ねじ部には、全体(先端部、中心部および基端部)に亘り螺旋状のねじ山が形成されている。ねじ部の長さは、特に限定されず、刺入される骨の種類や刺入箇所などに応じて適宜設定されうる。たとえば、本発明の創外固定ピンを橈骨遠位部の骨折治療に適用する場合、ねじ部の長さは16〜32mm程度であればよい。
本発明の創外固定ピンは、ねじ部の基端部の外径が、ねじ部の中心部の外径より大きいことを第一の特徴とする。このようにすることで、本発明の創外固定ピンの使用時における皮質骨の破壊を抑制することができる。
図2は、創外固定ピン10を骨20,30に斜めに刺入したときの模式的な断面図である。図2Aは、ねじ部の基端部12が平行ねじである創外固定ピン10を使用したときの図であり、図2Bは、ねじ部の基端部12がテーパねじ(ピン本体側がより太い)である創外固定ピン10を使用したときの図である。なお、図2Aおよび図2Bでは、ねじ山を省略している。
図2Aに示されるように、創外固定ピン10は、厚さ1〜2mmの皮質骨20およびその下側に位置する海綿骨30に刺入されているものとする。この図に示されるように、創外固定ピン10は、骨の表面に対して斜めに刺入されることが多い。この状態で、創外固定ピンに皮質骨表面に対して垂直方向の引き抜く力が働くと、皮質骨の薄くなっている部分A(図2A参照)が破壊されてしまう。
この皮質骨の破壊を防ぐために、本発明者は、ねじ部の外径を中心部から基端部に向けて徐々に大きくなるように形成した。これにより、創外固定ピンを骨に斜めに刺入した場合であっても、ねじ部の基端部の山の頂を結ぶ線(直線または曲線)と皮質骨表面のなす角度は、略直角となり、皮質骨の薄くなっている部分Aを無くすことができる(図2B参照)。結果として、本発明の創外固定ピンの使用時における皮質骨の破壊を抑制することができる。
ねじ部の外径は、ねじ部の中心部から基端部に向けて徐々に大きくなるように形成されていることが好ましい。ねじ部の外径が急激に大きくなると、当該部位に応力が集中してしまい、皮質骨の破壊を十分に抑制することができないおそれがある。この場合、ねじ部の軸線と、中心部のねじ山の頂および基端部のねじ山の頂を結ぶ直線とがなす角度は、本発明の創外固定ピンを刺入する角度に応じて適宜設定されうる。たとえば、本発明の創外固定ピンを骨の表面に対して15°で刺入する場合は、上記角度は15°程度であることが好ましい。
ねじ部の中心部および基端部の外径は、特に限定されず、上記角度に応じて適宜設定されうる。たとえば、ねじ部の中心部の外径は、ピン本体の太さに対して80〜200%の範囲内であり、ねじ部の基端部の外径は、ピン本体の太さに対して100〜200%の範囲内である。具体的には、ピン本体の太さが1.6mmである橈骨遠位部の骨折治療に使用する創外固定ピンの場合、ねじ部の中心部の外径は1.28〜3.2mm程度であり、ねじ部の基端部の外径は1.6〜3.2mm程度である。また、ピン本体の太さが3.0mm程度である上腕骨の骨折治療に使用する創外固定ピンの場合、ねじ部の基端部の外径は4.0mm程度である。さらに、ピン本体の太さが4.0mm程度である下腿骨の骨折治療に使用する創外固定ピンの場合、ねじ部の基端部の外径は5.0mm程度である。ただし、いずれの場合であっても、基端部の外径は中心部の外径よりも大きい。ねじ部の中心部では、ねじ山が完全に無くなっていてもよい。
本発明の創外固定ピンは、ねじ部の先端部の外径が、ねじ部の中心部の外径より大きいことを第二の特徴とする。このようにすることで、本発明の創外固定ピンの使用時における海綿骨(特に、低密度海綿骨)の破壊を抑制することができる。
図3は、創外固定ピン10を骨20,30に刺入したときの、骨20,30に対する応力の分布を示した模式図である。図3Aは、ねじ部の先端部14が平行ねじの創外固定ピン10を使用したときの図であり、図3Bは、ねじ部の先端部14がテーパねじ(先端側がより太い)である創外固定ピン10を使用したときの図である。なお、図3Aおよび図3Bでは、ねじ山を省略している。
図3Aに示されるように、創外固定ピン10は、厚さ1〜2mmの皮質骨20およびその下側に位置する海綿骨30に刺入されている。本発明者は、このように創外固定ピン10を刺入したとき、皮質骨20およびねじ部の先端部14近傍に応力が集中することを見出した。このようにねじ部の先端部14近傍に応力が集中してしまうと、ねじ部の先端部14近傍の脆弱な海綿骨は容易に破壊されてしまう。
この海綿骨の破壊を防ぐために、本発明者は、ねじ部の先端部の外径を中心部の外径より大きく形成し、先端部の表面積を拡大することで、先端部近傍における応力の集中を緩和させた(図3B参照)。これにより、先端部近傍の海綿骨に作用する応力を分散させることができるため、海綿骨の破壊を抑制することができる。
ねじ部の外径は、ねじ部の中心部から先端部に向けて徐々に大きくなるように形成されていることが好ましい。ねじ部の外径が急激に大きくなると、当該部位に応力が集中してしまい、海綿骨の破壊を十分に抑制することができないおそれがある。ねじ部の軸線と、中心部のねじ山の頂および先端部のねじ山の頂を結ぶ直線とがなす角度は、特に限定されない。
ねじ部の中心部および先端部の外径は、特に限定されず、刺入される骨の種類や刺入箇所などに応じて適宜設定されうる。たとえば、ねじ部の中心部の外径は、ピン本体の太さに対して80〜200%の範囲内である。また、ねじ部の先端部の外径は、ピン本体の太さに対して100〜200%の範囲内である。具体的には、ピン本体の太さが1.6mmである橈骨遠位部の骨折治療に使用する創外固定ピンの場合、ねじ部の中心部の外径は1.28〜3.2mm程度であり、ねじ部の先端部の外径は1.6〜3.2mm程度である(ただし、先端部の外径は中心部の外径よりも大きい)。
以上のように、本発明の創外固定ピンでは、ねじ部の中心部の外径が、先端部および基端部の外径よりも小さくなるように形成されている。この場合であっても、ねじ部のねじ山の角度およびとがり山の高さは、ねじ部全体に亘り一定であることが好ましい。すなわち、ねじ部のねじ山の角度およびとがり山の高さは、ねじ部全体に亘り一定であり、一方で、ねじ部の中心部のねじ山の高さは、ねじ部の基端部および先端部のねじ山の高さよりも低いことが好ましい。
図4は、ねじ部のねじ山の断面形状の例を示す模式的な断面図である。図4Aは、ねじ部の先端部および基端部の断面図であり、図4Bは、ねじ部の中心部の断面図である。これらの図に示されるように、ねじ部のねじ山の角度αおよびとがり山の高さHは、ねじ部全体(先端部、中心部および基端部)に亘り一定であることが好ましい。具体的には、ねじ部の基端部におけるねじ山の山の頂の幅は0.1mm程度であり、ねじ山の谷底部分の幅は0.7mm程度である。一方、ねじ部の中心部のねじ山の高さh2は、ねじ部の先端部のねじ山の高さh1および基端部のねじ山の高さh3よりも低いことが好ましい。このようにすることで、骨に形成されたねじ溝に対するねじ山の占拠率を維持しつつ、ねじ部の中心部の外径を小さくすることができる。また、ねじ部の中心部のねじ山の頂部が削れているため、ねじ山の周囲に存在する海綿骨の破壊を抑制することができる。なお、ねじ部の先端部のねじ山の高さh1および基端部のねじ山の高さh3は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
本発明の創外固定ピンは、ねじ部の基端部のピッチが、ねじ部の先端部のピッチより狭いことを第三の特徴とする。このようにすることで、骨に圧迫力を加えて、骨を強固に固定することができる。
基端部のピッチは、先端部のピッチより狭くなるように形成されている。また、隣接するピッチは、先端部側より基端部側が狭くなるように形成されている。すなわち、ピッチは、先端部から基端部に向かって、漸次狭くなるように形成されている。本発明の創外固定ピンを骨に刺入した場合、ねじ部の中心部および基端部のねじ山は、先端部のねじ山によって形成されたねじ溝に追従して、骨内を進む。この場合、基端部のピッチが先端部のピッチより狭く、先端部と基端部とでリードが異なるため、先端部と基端部との間に位置する骨に圧迫力を加えることができる。したがって、本発明の創外固定ピンは、骨に圧迫力を加えて、骨を強固に固定することができる。
ねじ部の基端部とねじ部の先端部のピッチ差は、0mmより大きく、0.4mm以下であることが好ましい。ピッチの差が0mmの場合、骨に圧迫力を加えるという効果を発揮させることができない。一方、ピッチの差が0.4mm超の場合、骨への圧迫力が強くなりすぎて、海綿骨が崩れてしまうおそれがある。実際、本発明者の予備実験によれば、高密度海綿骨および低密度海綿骨のいずれにおいても、変位量が0.4mmを超えると弾性変形ではなく塑性変形になるとの結果が得られている。
ねじ部のピッチは、ねじ部の先端部から基端部に向けて徐々に狭くなるように形成されていることが好ましい。ねじ部のピッチが急激に変化すると、当該部位に応力が集中してしまい、海綿骨を破壊してしまうおそれがある。好ましくは、ねじ部のピッチは、ねじ部の先端部から基端部に向けて一定の変化率で狭くなっている。たとえば、ピン本体の太さが1.6〜4.0mm程度であり、かつねじ部の長さが16〜32mm程度である、橈骨遠位部の骨折治療に使用する創外固定ピンの場合、ねじ部のピッチの変化率は、0.004〜0.016mm/ピッチ程度である。この場合、基端部のピッチは、1.0mm程度である。
また、ねじ部の先端部の谷の径は、基端部の谷の径より小さく形成されていることが好ましい。この場合、ねじ山を挟んで隣接する谷の径は、基端部から先端部に向けて、漸次縮小するように形成されていることが好ましい。これにより、骨に刺入する時に、創外固定ピンに推進力を付与することができると共に、ねじ穴の表面に圧迫力を与えることができる。
谷の径は、基端部から先端部に向かって一定の変化率で小さくなっていることが好ましい。たとえば、ピン本体の太さが1.6〜4.0mm程度であり、かつねじ部の長さが16〜32mm程度である、橈骨遠位部の骨折治療に使用する創外固定ピンの場合、谷の径の変化率は、0.01875〜0.0375mm/mm程度である。
以上の構成によれば、中心部の外径より基端部の外径が大きく形成されているため、使用時における皮質骨の破壊を抑制することができる。また、中心部の外径より先端部の外径が大きく形成されているため、使用時における海綿骨の破壊を抑制することができる。さらに、ねじ部の基端部と先端部にピッチ差を生じさせているため、ねじ部の中心部近傍に向かって骨に圧迫力を付与することができる。
本発明の創外固定ピンは、十分な厚みのある皮質骨に対しては、従来のプレートより固定強度を増すことができる。また、本発明の創外固定ピンは、骨片同士に圧迫力を加え、一塊とすることができるので、骨粗鬆症症例のような被薄な皮質骨や低密度海綿骨領域などでも転移が起こりにくい。さらに、本発明の創外固定ピンは、数ミリ程度の軟骨下骨にも容易に刺入されうる。よって、本発明の創外固定ピンは、関節内骨折の整復や軟骨下骨における荷重架橋形成、応力の分散に優れている。
次に、図5および図6を参照して、本発明の実施の形態に係る創外固定ピンについてより詳細に説明する。ここでは、橈骨遠位端骨折の治療に使用できる本発明の創外固定ピンの例を示す。
図5は、本発明の一実施の形態に係る創外固定ピンの全体図である。図6は、図5に示される創外固定ピンのねじ部の部分拡大図である。
図5に示されるように、本実施の形態の創外固定ピン100は、棒状のピン本体110と、ピン本体110の一端に形成され、ねじ山130を有するねじ部120と、を備えている。
創外固定ピン100は、生体適合性金属であるチタンで形成されている。創外固定ピン100の全長は、10.0cm程度である。また、ピン本体110の長さは、8.0cm程度であり、太さは、1.4mm程度である。
図6に示されるように、ねじ部120は、基端部140、中心部150および先端部160に区分されうる。ねじ部120の長さは、20.0mm程度である。ねじ部の外径は、中心部150から先端部160および基端部140にかけて、連続的に変化している。中心部150の外径は、1.6mm程度であり、先端部160および基端部140の外径は、2.3mm程度である。
ねじ部120のピッチは、一定の変化率で、先端部160から基端部140に向かって狭くなっている。先端部160のピッチは、0.7mm程度であり、基端部140のピッチは、0.5mm程度である。この場合、ピッチの変化率は、0.01mm/ピッチ程度である。
ねじ部120の谷の径は、一定の変化率で、基端部140から先端部160に向かって小さくなっている。基端部140の谷の径は、1.6mm程度であり、先端部160の谷の径は、1.0mm程度である。この場合、谷の径の変化率は、0.03mm/mm程度である。
本実施の形態の創外固定ピン100は、例えば、以下の手順で製造されうる。
まず、所定の長さおよび太さのチタン製の棒を準備する。準備したチタン製の棒の一端側を均等に削り、ピン本体110を形成する。次いで、チタン製の棒の他端側にねじ部120を形成する。具体的には、基端部140から先端部160に向かってピッチが大きくなるように、螺旋状の溝を形成する。次いで、ねじ部120の中心部150の外径が、基端部140および先端部160の外径より小さくなるように、中心部150近傍のねじ山を削る。なお、ねじ部を形成した後に、ピン本体を形成してもよい。
本実施の形態の創外固定ピン100は、例えば、以下の手順で使用されうる。
まず、固定する骨片に対して、ドリルを用いてねじ部120の長さと同程度の深さの穴を穿孔する。次いで、穿孔した穴に創外固定ピン100のねじ部120をねじ込むように刺入して、創外固定ピン100を骨に固定する。創外固定ピン100は、必要に応じて各骨片に対して複数本固定されてもよい。その後、各骨片が正常な位置となるように創外固定ピン100をフレームにより固定する。
本発明の創外固定ピンは、例えば、骨粗鬆症の患者が骨折したときに骨折箇所を固定する固定器具として有用である。
10 創外固定ピン
12 ねじ山の基端部
14 ねじ山の先端部
20 皮質骨
30 海綿骨
100 創外固定ピン
110 ピン本体
120 ねじ部
130 ねじ山
140 ねじ山の基端部
150 ねじ山の中心部
160 ねじ山の先端部
d 外径
d3 谷の径
h ねじ山の高さ
H とがり山の高さ
P ピッチ
α ねじ山の角度
12 ねじ山の基端部
14 ねじ山の先端部
20 皮質骨
30 海綿骨
100 創外固定ピン
110 ピン本体
120 ねじ部
130 ねじ山
140 ねじ山の基端部
150 ねじ山の中心部
160 ねじ山の先端部
d 外径
d3 谷の径
h ねじ山の高さ
H とがり山の高さ
P ピッチ
α ねじ山の角度
Claims (7)
- 棒状のピン本体と、前記ピン本体の一端に形成され、螺旋状のねじ山を有するねじ部と、を備えた創外固定ピンであって、
前記ねじ部の基端部の外径および前記ねじ部の先端部の外径は、前記ねじ部の中心部の外径より大きく、
前記ねじ部の基端部のピッチは、前記ねじ部の先端部のピッチより狭く、
前記ねじ部の基端部と前記ねじ部の先端部のピッチ差は、0mmより大きく、0.4mm以下である、
創外固定ピン。 - 前記ねじ部のねじ山の角度およびとがり山の高さは、一定であり、
前記ねじ部の中心部のねじ山の高さは、前記ねじ部の基端部および先端部のねじ山の高さよりも低い、
請求項1に記載の創外固定ピン。 - 前記ねじ部のピッチは、先端部から基端部に向かって一定の変化率で狭くなる、請求項1に記載の創外固定ピン。
- 前記ねじ部のピッチの変化率は、0.004〜0.016mm/ピッチである、請求項3に記載の創外固定ピン。
- 前記ねじ部の先端部の谷の径は、前記ねじ部の基端部の谷の径より小さい、請求項1に記載の創外固定ピン。
- 前記ねじ部の谷の径は、前記基端部から前記先端部に向かって一定の変化率で小さくなる、請求項5に記載の創外固定ピン。
- 前記ねじ部の谷の径の変化率は、0.01875〜0.0375mm/mmである、請求項6に記載の創外固定ピン。
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ID=48617203
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JP (1) | JP2013094628A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016526461A (ja) * | 2013-07-08 | 2016-09-05 | アエスキュラップ アーゲー | 骨ねじ |
-
2011
- 2011-11-07 JP JP2011243363A patent/JP2013094628A/ja active Pending
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JP2016526461A (ja) * | 2013-07-08 | 2016-09-05 | アエスキュラップ アーゲー | 骨ねじ |
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