JP2013088722A - 金属メッキナノワイヤを用いた偏光板 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温・高湿条件下でも高耐久性を維持する偏光板を提供する。
【解決手段】偏光膜と当該偏光膜の片面又は両面に積層された少なくとも1層の低複屈折性フィルムとを有する偏光板であって、
(1)前記偏光膜は、当該膜中において偏光性材料が略同一方向に配向しており、
(2)前記偏光性材料は、平均太さ20〜300nmであり平均長さ0.4μm以上である誘電体からなるナノワイヤの表面に、厚さ1〜15nmの金属メッキ層を形成することにより得られる金属メッキナノワイヤであり、
(3)前記低複屈折性フィルムは、nx、ny及びnzを各方向の屈折率の大きさとし、
Ro=|nx−ny|×dで表される面内位相差値(Ro)が5.0nm以下であり、
Rth={(nx−nz)/(nx−ny)}×dで表される厚み方向位相差値(Rth)が0±5.0nmである、
ことを特徴とする偏光板。
【選択図】なし

Description

本発明は、金属メッキナノワイヤを偏光性材料として用いた偏光板に関する。
現在、液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイには液晶表示用等の偏光板が利用されている。偏光板としては、一般に吸収型偏光板と称されるものが広く利用されている。これは、異方性の色素をフィルム上で配向させることにより得られ、具体的には、水溶性のヨウ素化合物等を吸水性のポリビニルアルコール(PVA)フィルムに含浸させた後に延伸し、更にホウ酸等で架橋した後、トリアセチルセルロース(TAC)等の保護フィルムを積層することにより作製されている。
なお、液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイでは、偏光板が単独で使用されることは少なく、液晶セル等を通過した光の複屈折を抑制する目的で低複屈折性フィルムと組み合わせて使用されることが多い。特に保護フィルムにTACを用いる場合には、TACの製膜過程に起因する複屈折が液晶ディスプレイの光学性能に影響を与え易いため、低複屈折性フィルムを併用することが望ましい。また、いわゆるIPS方式の液晶ディスプレイの場合には、特に複屈折率が小さいことが望まれている。
上記偏光板に関する先行技術としては、特許文献1、2等が公知である。
特開平10−186131号公報 特開2008−11272号公報
上記従来の偏光板には、次のような問題がある。
(1)従来の偏光板に用いるヨウ素化合物等の色素は耐熱性が低く、高温条件下では退色して偏光性能が低下する。
(2)PVAフィルムが高倍率で延伸されているため、高温条件下で収縮することにより偏光性能が低下したり、保護フィルムに複屈折が生じてフラットパネルディスプレイに光漏れが生じたりする場合がある。
(3)PVAフィルムやTACフィルムの吸湿性が大きいため、これらのフィルムが吸湿した場合には、偏光板にカールが生じ易い。
以上を踏まえ、本発明は、高温・高湿条件下でも高耐久性を維持する偏光板を提供することを目的とする。
本発明者は上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の金属メッキナノワイヤを偏光性材料として用いた偏光膜と低複屈折性フィルムとを組み合わせた偏光板によれば上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は下記の偏光板に関する。
1.偏光膜と当該偏光膜の片面又は両面に積層された少なくとも1層の低複屈折性フィルムとを有する偏光板であって、
(1)前記偏光膜は、当該膜中において偏光性材料が略同一方向に配向しており、
(2)前記偏光性材料は、平均太さ20〜300nmであり平均長さ0.4μm以上である誘電体からなるナノワイヤの表面に、厚さ1〜15nmの金属メッキ層を形成することにより得られる金属メッキナノワイヤであり、
(3)前記低複屈折性フィルムは、nx、ny及びnzを各方向の屈折率の大きさとし、
Ro=|nx−ny|×dで表される面内位相差値(Ro)が5.0nm以下であり、
Rth={(nx−nz)/(nx−ny)}×dで表される厚み方向位相差値(Rth)が0±5.0nmである、
ことを特徴とする偏光板。
2.前記低複屈折性フィルムは、トリアセチルセルロース、ノルボルネン、(メタ)アクリル、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン及びポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種の材質からなる、上記項1に記載の偏光板。
3.ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンを主成分とする保護フィルムが片面又は両面に積層されている、上記項1又は2に記載の偏光板。
4.上記項3に記載の偏光板をロール形状に巻き取ることにより得られる偏光板ロール。
5.上記項1〜3のいずれかに記載の偏光板を用いた液晶表示装置。
以下、先ず金属ナノワイヤと偏光性との関係について説明し、次に本発明で用いる偏光性材料(金属メッキナノワイヤ)及び本発明の偏光板について説明する。
金属ナノワイヤと偏光性との関係
光は、進行方向に垂直な面内で互いに直角な方向に振動する2つの偏光(本明細書ではp偏光及びs偏光と言う)に分けることができる。偏光膜は、2つの偏光のうち、一方の偏光を透過し、他方の偏光を遮断(吸収又は反射)する機能を有する。
最近、幅及び長さがナノメーターサイズである棒状金属が、光などの電磁波に対して異方性を示すことが報告されている。なお、長さ1μm以上の棒状金属を金属ナノワイヤ、長さ1μm未満の棒状金属を金属ナノロッドと呼ぶ場合があるが、以下、本明細書では、両者をまとめて長さ0.4μm以上の棒状金属を金属ナノワイヤと呼ぶ。
以下、電磁波の例として光を挙げて説明する。
金属ナノワイヤの長さが光の波長より長く、幅が光の波長より充分細い場合を考える。金属ナノワイヤに光が入射すると、金属ナノワイヤの長さ方向に電場振動面を持つ偏光は、金属ナノワイヤの自由電子を振動させることにより吸収又は反射される。他方、金属ナノワイヤの幅方向に電場振動面を持つ偏光は、金属ナノワイヤの自由電子が光に共鳴した振動を起こし難いため透過する(正確には「前方散乱する」という表現が正しいが、以下、簡略的に「透過する」と言う。)ことが知られている。
金属が光を吸収又は反射するのは、光が電磁波であり、金属中の自由電子が光の電場に共鳴して振動し、光のエネルギーが運動エネルギーに変わるからである。よって、金属が光を吸収又は反射するためには、光の進行方向と垂直な方向に、金属中の自由電子が振動できるだけの金属の幅が必要である。
ミーの理論及びレイリーの散乱の理論では、金属の幅が10nm程度以下になると自由電子が振動できなくなり、光の吸収又は反射は起こらず透過すると考えられている。また、逆に金属の幅が光の波長以上ならば効率良く吸収又は反射すると考えられている。よって、金属ナノワイヤの場合には、長さが光の波長より長く、幅が10nm程度以下であれば良好な偏光性材料になると考えられる。
次に、金属ナノワイヤの長さが光の波長より長く、幅が10nm程度の場合における、光の吸収・反射の違いについて図1を参照しながら説明する。なお、電場振動面が金属ナノワイヤの長さ方向と一致する光をs偏光とし、電場振動面が金属ナノワイヤの幅方向と一致する光をp偏光とする。図1には、光の進行方向と直角に四角柱状の金属ナノワイヤを並べた場合におけるs偏光及びp偏光の電場の振動方向と、金属ナノワイヤの長さ方向、幅方向及び厚み方向との関係が示されている。
p偏光は、金属ナノワイヤの幅が10nm程度以下であれば、金属ナノワイヤの自由電子を振動させない。よって、金属ナノワイヤの長さ、厚みに拘わらず、p偏光は吸収も反射もせず透過する。
s偏光は、金属ナノワイヤの長さが光の波長より長ければ、金属ナノワイヤの自由電子を振動させる。この時、幅が10nm以下でも光は吸収又は反射される。なお、光が吸収されるか反射されるかは、金属ナノワイヤの厚みによって決まる。
入射した光の強度が自然対数の2乗分の1(=約1/7.5)になる厚みは「表皮深さ」と呼ばれ、表皮深さは(2/ωμσ)の1/2乗である。なお、ωは光の角振動数、μは金属の透磁率、σは金属の導電率である。
よって、波長500nmの可視光の場合は、ωμは4.7×10でほぼ一定であり、金属の導電率σ(S/m)は、銀:61×10、アルミニウム:40×10、ニッケル:15×10、タンタル:8×10であるから、表皮深さはそれぞれ、銀:2.7nm、アルミニウム:3.5nm、ニッケル:4.1nm、タンタル:5.3nmとなる。
即ち、導電率が8×10S/m程度以上の導電性の良い金属に光を入射させた場合、厚みが4〜5nm程度ならば光は吸収される。また、厚みがこの2倍以上(10nm以上)であれば表面で光を吸収した後、電磁場が金属の下層に反対の電流を起こし、反射光を生じるため光の反射が起きる。即ち、金属ナノワイヤの厚みが5nm程度ならば吸収され、厚みが10nm程度ならば反射されることになる。このことは、金属ナノワイヤの形状が四角柱から多角柱に変わった場合でも同様である。
金属の表皮深さを併せて考慮すると、金属ナノワイヤの長さが400nm(0.4μm)以上で厚みが5nm以下ならばp偏光は透過し、s偏光は吸収されることが分かる。また、長さが400nm(0.4μm)以上で厚みが10nm程度ならばp偏光は透過し、s偏光は反射されることが分かる。よって、このサイズの金属ナノワイヤを略同一方向に配向させれば偏光膜が得られる。
しかしながら、偏光性及び配向性を高くするには、金属ナノワイヤは直線であることが要求されるが、幅が数nmで直線性が良く、生産性の良い金属ナノワイヤの製造法は殆ど知られていない。また、金属ナノワイヤの幅が細いほど、取り扱い中に曲がったり凝集したりするため、生産上も問題がある。
よって、本発明では、金属ナノワイヤに代えて、平均太さ20〜300nmであり平均長さ0.4μm以上である誘電体からなるナノワイヤの表面に、厚さ1〜15nmの金属メッキ層を形成することにより得られる金属メッキナノワイヤを偏光性材料として用いる。この金属メッキナノワイヤであれば、平均太さ20〜300nmであり平均長さ0.4μm以上である誘電体は直線性の良いものを生産性良く製造することができるため、直線性及び配向性の良い金属メッキナノワイヤを生産性良く製造することができる。また、厚さ1〜15nmの金属メッキ層を形成することにより、厚さ方向の光を透過し、長さ方向の光を吸収する偏光膜とすることができ、偏光性材料として用いることができる。更に、金属メッキ層が従来の色素(偏光性を発現する手段)の代わりであり、耐熱性に優れた偏光膜を提供することができる。
本発明で用いる偏光性材料
本発明で用いる偏光性材料は、平均太さ20〜300nmであり平均長さ0.4μm以上である誘電体からなるナノワイヤの表面に、厚さ1〜15nmの金属メッキ層を形成することにより得られる金属メッキナノワイヤであることを特徴とする。
本発明では、平均太さ20〜300nmであり平均長さ0.4μm以上である誘電体からなるナノワイヤを用いる。なお、「平均」は、電子顕微鏡像においてナノワイヤを任意に10本選び出したときの太さ及び長さのそれぞれの平均値である。
誘電体の平均太さは20〜300nmであり、好ましくは50〜200nmである。なお、誘電体が円柱状又は擬円柱状の場合には太さ=厚さであるが、そうでない場合、例えば、多角柱状又は多角柱がねじれた形状である場合にも太さ=厚さとする。なお、多角柱の一辺の長さは光の波長よりも十分短いことが好ましい。
誘電体のアスペクト比は限定的ではないが、10以上が好ましい。誘電体の長さが20μmを超える場合には、誘電体の直線性が失われ易くなるおそれがある。また、アスペクト比が10未満の場合には、偏光性と配向性が低下するおそれがある。
誘電体からなるナノワイヤとしては、エレクトロスピニング法により得られるナノワイヤとして、(メタ)アクリル樹脂のナノワイヤ、シリカのナノワイヤ等が合成されている。また、気相法により得られるナノワイヤとして、アルミナなどのナノワイヤが合成されている。また、Langmuir, 2004, 20 (11), 4784〜4786頁及びCrystal Growth and Design, 2006, 6(6), 1504〜1508頁には、水熱法により得られるナノワイヤとして、太さ30〜120nmであり長さ数μm〜50μmのヒドロキシアパタイト又はフルオロアパタイトのナノワイヤ(いずれも屈折率は1.64程度)が報告されている。更に、Langmuir, 2007, 23(19), 9850〜9859頁には、ベーマイトのナノワイヤ(屈折率1.7程度)の合成法が報告されている。
その他、誘電体からなるナノワイヤとして、珪素、アルミニウム等の酸化物又は水酸化物からなるナノワイヤ、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、亜鉛及びカリウムのいずれかの金属のリン酸塩、硫酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩又はフェニルリン酸塩からなるナノワイヤも知られている。
本発明では、これらの誘電体に限定されず、誘電体の屈折率(nd)が1.47〜2.2であるナノワイヤであれば好適に使用できる。この中でも、屈折率(nd)は1.47〜1.8がより好ましい。本発明では、これらの誘電体の中でも、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル樹脂、炭酸カルシウム、フルオロアパタイト、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム等を特に好適に使用できる。
誘電体が結晶からなる場合には、通常、多角柱状又は多角柱がねじれた形状を有する。よって、必要に応じて、誘電体の表面を同程度の屈折率を有する同一又は別の誘電体でコートし、表面を曲面とした円柱状又は擬円柱状のナノワイヤにしてから使用してもよい。この場合には、コート後のナノワイヤが、平均太さ20〜300nmであり平均長さ0.4μm以上であり、好ましくはアスペクト比が10以上となるように設定する。
具体的には、誘電体がコア層とその表面に形成されたコート層とを有し、コア層の屈折率が1.47〜2.2であり、コート層の屈折率は、コア層の屈折率をncとし、nc±0.4以内であることが好ましい。この中でも、コア層の屈折率(nc)は1.47〜1.8がより好ましく、コート層の屈折率はnc±0.2以内であることがより好ましい。
コート層としては、コア層と同一の化合物を同一の析出反応で結晶化時間をかけないように時間を短縮して析出させたものが挙げられるが、これに限定されない。
コア層としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、シリコン樹脂等が好ましい。また、必要に応じて、(メタ)アクリル樹脂、シリコン樹脂等に架橋剤(例えば、チタン系架橋剤、ジルコニウム系架橋剤)を添加してコア層としてもよい。架橋剤を添加することにより、コア層の屈折率を調整したり、最終的に得られる偏光性材料の配向性を高めたりすることができる。
上記コア層の表面に(メタ)アクリル樹脂、シリコン樹脂等の非晶性樹脂でコート層を形成して表面が曲面からなるナノワイヤを作製することが、J.Am.Chem.Soc., 2005年, 127 (46), 16040〜16041頁、Crystal Growth and Design, 2006年, 6 (11), 2422〜2426頁、J.Phys.Chem.B, 2006年, 110 (2), 807〜811頁等に記載されている。また、シリカを用いてコート層を形成することが、J.Phys.Chem.B, 2005年, 109(1), 151〜154頁及びJ.Phys.Chem.B, 2006年, 110 (2), 807〜811頁等に記載されている。
誘電体からなるナノワイヤの表面に形成する金属メッキ層は、無電解メッキにより形成することが好ましい。無電解メッキする金属は、1)液層中の反応で析出し易いもの、2)腐食し難いもの、3)表面に不動態層又はそれに準じた保護層を形成することにより腐食し難いものであることが好ましい。
金属メッキ層に用いる金属としては、ニッケル、クロム、亜鉛、タンタル、ニオブ、銀、鉄及びアルミニウムの少なくとも1種が好ましい。上記の中でも、金属メッキ層の無着色性を確保する観点から、ニッケル、クロム、亜鉛、タンタル、ニオブ及びアルミニウムの少なくとも1種がより好ましい。特にアルミニウムメッキについては、メシチレン中でシクロペンタジエニルアルミニウムの熱分解により析出させることが、Chem. Mater. 2006, 18, 1634に報告されており、この反応液中でアルミニウムメッキしてもよい。
金属メッキ層の厚みは1〜15nmであれば良く、好ましくは1〜10nmである。金属メッキ層の表面が不動態被膜で覆われている場合には、不動態被膜の厚みは金属メッキ層の厚みよりも薄いことが好ましい。また、金属メッキ層と不動態被膜を合わせた厚みは金属メッキ層の厚みの2倍以下であることが好ましい。なお、不動態被膜を意図的に形成する際は、金属メッキナノワイヤを溶剤中で加熱するか又は酸化剤で表面処理することにより形成することができる。
数nm程度の金属メッキ層を形成する場合には、メッキ液の溶剤として金属との親和性が高いものを使うと、溶剤の中で金属が凝集し、均一な金属メッキ層が得られ難いことが知られている。この点、J.Phys.Chem.B, 2004年, 108 (28), 9745〜9751頁、J.Phys.Chem.C, 2008年, 112 (11), 4042〜4048頁には、数nm程度の金属メッキ層を形成する場合には、配位性の低い溶剤を用いるか又は溶剤の沸点付近で反応させることが好ましいことが報告されている。よって、このような溶剤を選ぶか、又は、ナノワイヤの表面をカップリング剤で処理して金属との親和性を高めてから金属メッキすることが好ましい。
本発明では、必要に応じて、金属メッキナノワイヤの表面を、更に50nm以下の誘電体被膜でコートしてもよい。コートに用いる誘電体は、屈折率が前記ndに対して±0.4以内のものが好ましく、nd±0.2以内のものがより好ましい。コート材料としては、例えば、アルコキシシランとアルコキシジルコニウムとを酸又はアルカリで加水分解して得られるアルコキシシランとアルコキシチタンと共重合体や、アルコキシシランとアルコキシジルコニウムとを酸又はアルカリで加水分解して得られるアルコキシシランとアルコキシジルコニウムの共重合体が挙げられる。このように、金属メッキナノワイヤの表面を更に誘電体被膜でコートする場合には、偏光性材料の屈折率を調整できるとともに、偏光性材料の配向性を更に高めることができる。
本発明の偏光性材料は、屈折率(nr)がnd±0.4以内の樹脂中に分散・配向させることにより偏光膜として使用することができる。屈折率(nr)としては、nd±0.2以内がより好ましい。
樹脂中に分散させる場合の偏光性材料の含有量は、樹脂及び偏光性材料の合計量を100重量%とし、10〜70重量%程度が好ましく、30重量%〜50重量%程度がより好ましい。また、樹脂中に分散させた後に効率的に配向させるには、分散後に一軸延伸することが好ましい。これにより、偏光膜が得られる。
本発明の偏光性材料の光学的挙動については、次の通りである。
s偏光は、偏光性材料の長さが光の波長以上であれば、金属メッキ層内の自由電子の振動により吸収又は反射されて透過しない。p偏光は、金属メッキ層の厚さが光の波長よりも充分短ければ、金属メッキ層内の自由電子の運動は起こらず、金属は誘電体と同様の光学的挙動を示し、入射した光は、分子に束縛された電子の双極子振動によって散乱する。この場合、散乱が前方散乱(=透過)になるか否かの確認が必要である。また、この光が内部の誘電体層でも同様に散乱されるため、この散乱方向も確認する必要がある。以下、散乱方向を検証する。
分子中の電子による双極子振動では、入射光と同じ光が弾性散乱される。均一層中では光は直進するが、誘電率の異なる物質の界面では、界面が光の波長より十分大きい平面のときは、反射光又はエバネッセント波が生じる。これは、界面を挟んで、波長に相当する長さの界面で分子群が共鳴して双極子振動することに基づく。
しかしながら、p偏光の場合は、金属メッキナノワイヤの厚さ方向に波長に相当する界面の長さが無いため、反射光及びエバネッセント波は生じない。従って、p偏光については金属メッキナノワイヤを透過する光の方向を調べれば良いことになる。
以下、樹脂中に本発明の偏光性材料(金属メッキナノワイヤ)が分散・配向しており、偏光性材料が誘電体層(誘電体は1層)と金属メッキ層とからなるものを考え、散乱の方向=波面法線の方向(単位ベクトルをsであらわす。)を図2により確認する。
図2で、樹脂層(1)→境界a→金属メッキ層(2)→境界b→誘電体層(3)の順に光が進行し、樹脂層(1)内の磁場をH、光の速度をv、屈折率をn、波面法線の単位ベクトルをs、金属メッキ層(2)内の磁場をH、光の速度をv、屈折率をn、波面法線の単位ベクトルをs、誘電体層(3)内の磁場をH、光の速度をv、屈折率をn、波面法線の単位ベクトルをs、時間をt、境界aの位置ベクトルをr、境界bの位置ベクトルをrとする。この時、境界aでの樹脂層(1)内の磁場H、金属メッキ層(2)内の磁場Hはそれぞれ
=H01expiω(t−r・s/v)及び
=H02expiω(t−r・s/v)である。
境界aにおける磁場成分の接線成分及び法線成分が連続であることから、
/v=s/vで、このためには、s1x/v=s2x/vになり、
=v、s1x/s2x=sinθ/sinθから
sinθ=nsinθとなり、振幅はそのままで、進行方向はスネルの法則と同様に屈折する。
境界bでは同様に、振幅は変わらず、
sinθ=nsinθ=nsinθとなる。
=nなら、θ=θで、金属メッキナノワイヤに入射した光は、金属メッキ層(2)前後で光の強度も光の進行方向も変わらないことになる。同様に、誘電体層(3)→金属メッキ層(2)→樹脂層(1)の順に出て行く光も、強度も進行方向も変わらない。従って、p偏光は進行方向を保ったまま金属メッキナノワイヤ中を透過する。これは、反射が起こらないことで前方散乱が起きていることに基づく。
更に、金属メッキ層の表面に、光吸収度の低い数nmの不動態被膜がある場合は、被膜の厚みは一定とみなせる。樹脂層と誘電体層の屈折率が同じならば、同様に光の振幅と進行方向は変わらないことになり、p偏光は透過することになる。つまり、s偏光は吸収又は反射され、p偏光は透過することになる。
なお、偏光度を高くするためには、図2において、p偏光の振動方向の幅wが短いほど良く、先に掲げた特開2006−201540号公報及びNIKKEI MICRODEVICE, 2005年12月号, 156〜157頁等から、wは100nm以下が好ましい。この中でも、金属メッキ層が薄く、ナノワイヤの側面があらゆる方向を向くと考えれば、ナノワイヤの太さが200nm以下でwの平均値は100nmより充分短くなり、偏光膜として要求される偏光度を達成すると考えられる。
偏光膜製造用塗料及び偏光膜
偏光膜製造用塗料は上記偏光性材料を含有し、塗料として用いるために樹脂バインダー、溶剤等の少なくとも1種を含有する。
金属ナノワイヤを生産性良く配向させる方法として、特開2008−279434号公報に金属ナノワイヤの配向塗工法が公開されており、本発明ではこの塗工法を用いて塗料を塗工し、偏光性材料を基板上に配向させることが好ましい。なお、基板としては、塗工により得られた偏光膜を剥離可能な基板を用いることが好ましい。このような基板には、表面の平滑性と乾燥熱に対する耐熱性が求められ、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
上記塗工法は、偏光性材料を含有する塗料を塗工バーにより塗工するものであり、偏光性材料を配向させるために、塗工中の偏光性材料のブラウン運動が穏やかであることが必要である。ここで、ブラウン運動は偏光性材料が重く、長いほど穏やかである。
本発明で用いる偏光性材料は、大きさ、比重とも小さい。そのため、効率的に配向するには、ブラウン運動を抑える目的で増粘用の樹脂を溶解した、少なくとも数百mPa・s以上の粘度の塗料とすることが好ましい。この場合、増粘用の樹脂が、塗膜乾燥後、塗膜中で偏光性材料を囲む樹脂層となる。この樹脂層の屈折率は、p偏光の透過率を良くするため、前記の通り、ナノワイヤの屈折率ndとの差が±0.4以内であることが好ましく、±0.2以内であることがより好ましい。樹脂層の屈折率は、例えば、(メタ)アクリル樹脂又はアクリルアミド樹脂を主成分とし、必要に応じて、架橋剤(例えばチタン系架橋剤、ジルコニウム系架橋剤等)を併用することで1.47〜2.2に調整することができる。
好適には、沸点150℃以下の溶剤に(メタ)アクリル樹脂又はアクリルアミド樹脂と、必要に応じて架橋剤(例えばチタン系架橋剤、ジルコニウム系架橋剤等)を添加して粘度300mPa・s以上とした樹脂溶液に、偏光性材料を分散させて塗料とする。
そして、上記塗料を塗工バーを用いたバーコート法で基板に塗工するに際し、
(1)前記塗工は、前記塗工バーの円周部と前記基材フィルムとの接触長さPが、P≧1000×L(L:金属メッキナノワイヤの平均長さ)となる条件下での塗工であり、
(2)前記塗工バーは、少なくとも前記塗工バーと前記基材フィルムとが接触する領域に均等に溝が設けられており、前記溝の幅Wが、50×φ≦W≦10000×φ(φ:金属メッキナノワイヤの平均太さ)であることが好ましい。
溝の幅Wは金属メッキナノワイヤの平均太さより充分広い必要が有るが、あまりに溝の幅が広いか、接触長さPが短いと配向性が不充分になる。
本発明において、溝を設けた塗工バーとしては、一定の径を有するワイヤーを塗工バーの表面に密に巻きつけたもの(いわゆる「ワイヤーバー」)、又は、塗工バー自体の表面に一定の幅、深さを有する溝を一定ピッチで設けたもの(いわゆる「メイヤーバー」)が用いられる。なお、ワイヤーバーについては、隣接するワイヤーの間隙が溝となる。
上記溝は、溝の幅Wが50×φ≦W≦10000×φ(φ:金属メッキナノワイヤの平均太さ)になるように設定する。50×φ>Wであると、溝の幅Wよりも金属メッキナノワイヤの平均太さφ×50の方が大きくなって、金属メッキナノワイヤの短軸が溝に入らないため配向できない。また、W>10000×φであると、金属メッキナノワイヤの短軸が配向しにくくなる。溝の幅Wが上記条件を満たすと、各溝において金属メッキナノワイヤに剪断流が起こって、金属メッキナノワイヤが塗工方向(略同一方向)に配向する。溝の深さは、金属メッキナノワイヤの平均太さφよりも大きければ特に限定されない。
本発明において、塗工バーの円周部と基材フィルムとの接触長さPは、P≧1000×L(L:金属メッキナノワイヤの平均長さ)の条件を満たすように設定する。接触長さPが上記条件を満たさないと、充分に剪断流が起こらず、金属メッキナノワイヤを配向率80%以上で配向させることが難しい。
上記接触長さPは、使用する塗工バーの直径Rに応じて、抱き角θを調整することにより、上記条件を満たせるよう設定する。つまり、πR×θ/360≧150×Lを満たすように、各々調整すればよい。
塗工バーの直径Rは15〜200mmであることが好ましい。塗工バーの直径を15mmより細くすると、基材の曲げ弾性の影響で塗工バーと基材フィルムとの密着が不良となりやすい。また、200mm以上であると、塗工バーが重くなり、塗工機のモーターに負荷がかかるため好ましくない。
抱き角θについては、πR×θ/360≧150×Lを満たせるならば、特に限定されず、塗工装置等に合わせて適宜決定されればよい。
乾燥塗膜の厚さは限定的ではないが、望ましい偏光特性を発揮させるためには、0.1μm〜10μm程度が好ましい。
配向後の偏光性材料(金属メッキナノワイヤ)は、隣接する偏光性材料どうしの間隙が光の波長未満となることが好ましい。
また、塗料に用いる溶剤は、沸点が150℃より低いものが好ましく、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル、脂肪族ケトン、脂肪酸エステル、脂肪族ハロゲン化物、芳香族アルコール、芳香族エーテル、芳香族ケトン、芳香族エステル、芳香族ハロゲン化物等のうち、沸点が150℃以下のものが好ましい。
本発明の偏光板
本発明の偏光板は、偏光膜と当該偏光膜の片面又は両面に積層された少なくとも1層の低複屈折性フィルムとを有する偏光板であって、
(1)前記偏光膜は、当該膜中において偏光性材料が略同一方向に配向しており、
(2)前記偏光性材料は、平均太さ20〜300nmであり平均長さ0.4μm以上である誘電体からなるナノワイヤの表面に、厚さ1〜15nmの金属メッキ層を形成することにより得られる金属メッキナノワイヤであり、
(3)前記低複屈折性フィルムは、nx、ny及びnzを各方向の屈折率の大きさとし、
Ro=|nx−ny|×dで表される面内位相差値(Ro)が5.0nm以下であり、
Rth={(nx−nz)/(nx−ny)}×dで表される厚み方向位相差値(Rth)が0±5.0nmであることを特徴とする。
上記特徴を有する本発明の偏光板は、金属メッキナノワイヤの金属メッキ層が従来の色素(ヨウ素化合物等の偏光性を発現する色素)の代わりであり耐熱性が高い。また、高温・高湿条件下で収縮やカールが生じ易いPVAフィルムを用いる必要がなく、高温・高湿条件下でも高耐久性を維持することができる。
本発明の偏光板は、偏光膜については前述の通りであり、その片面又は両面に少なくとも1層の低複屈折性フィルムが積層されている。低複屈折性フィルムは、液晶セル等を通過した光の複屈折を抑制する目的で設けられるものであり、本発明では特に、nx、ny及びnzを各方向の屈折率の大きさとし、
Ro=|nx−ny|×dで表される面内位相差値(Ro)が5.0nm以下であり、
Rth={(nx−nz)/(nx−ny)}×dで表される厚み方向位相差値(Rth)が0±5.0nmであるものを使用する。上記Roは5.0nm以下であれば良いが、その中でも3.0nm以下が好ましく、1.0nmがより好ましい。また、上記Rthは0±5.0nmであれば良いが、その中でも0±3.0nm以下が好ましく、0±1.0nmがより好ましい。これらの条件を満たすものであれば、公知の偏光板に使用されているものをそのまま適用することができる。
低複屈折性フィルムの材質は限定的ではないが、例えば、トリアセチルセルロース、ノルボルネン、(メタ)アクリル、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン及びポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種の材質が好ましい。低複屈折性フィルムは、上記列挙した樹脂を押出製膜の後に一軸又は二軸に延伸する方法、上記列挙した樹脂にレタデーション向上剤を添加後、溶剤キャスト法により製膜する方法、上記溶剤キャスト法により製膜後、更に延伸する方法等により得られる。なお、上記製造過程において、押出製膜に用いる金型の温度は低複屈折性フィルムの材質(樹脂)のTg×2+5℃以上であることが好ましい。また、冷却固化時に応力を掛けないこと及び乾燥時の乾燥収縮を極力小さくすることにより、面内位相差値及び厚み方向位相差値を小さくし易い。
本発明で用いる低複屈折性フィルムは、耐久性の観点からガラス転移温度(Tg)は、120℃以上であることが好ましく、130〜150℃がより好ましい。また、主にフラットパネルディスプレイに用いるものであることから、全光線透過率は85%以上であることが好ましい。
偏光膜と低複屈折性フィルムとを積層する際は接着剤を用いることができる。ウレタン系、アクリル系、ポリビニルアルコール系等の接着剤が好ましく、これらの接着剤を使用する場合には透明性が確保し易い。また、接着剤は低複屈折性フィルムとの屈折率差が±0.3以内であることが好ましい。
本発明の偏光板は、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンを主成分とする保護フィルムが片面又は両面に積層されていることが好ましい。当該保護フィルムは、実質的にポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンからなるものが好ましく、通常はポリエチレンテレフタレートフィルム又はポリエチレンのフィルムを用いる。かかる保護フィルムは偏光板自体を保護するために最表面に設けるものである。保護フィルムは厚さが20〜80μm程度が好ましく、40〜60μm程度がより好ましい。これらの保護フィルムを積層することによって、表面の滑り性が向上し、また搬送中の傷発生防止にも有効であるため偏光板はロール化し易い。本発明は、片面又は両面にポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンを含有する保護フィルムを積層した後、ロールすることにより得られる偏光板ロールの発明も包含する。
なお、本発明の偏光板は、上記最表面に設ける保護フィルムのほか、偏光膜を保護する保護フィルムを偏光膜に隣接する位置に設けることができる。偏光膜を保護する保護フィルムとしては、公知のTACフィルムなどが使用できる。偏光膜を保護する保護フィルムの厚さは20〜80μm程度が好ましく、30〜60μm程度がより好ましい。
本発明の偏光板は、高温・高湿条件下でも高耐久性を維持でき、フラットパネルディスプレイ、特に液晶表示装置の部材として好適に使用できる。
本発明の偏光板は、金属メッキナノワイヤの金属メッキ層が従来の色素(ヨウ素化合物等の偏光性を発現する色素)の代わりであり耐熱性が高い。また、高温・高湿条件下で収縮やカールが生じ易いPVAフィルムを用いる必要がなく、高温・高湿条件下でも高耐久性を維持することができる。
光の進行方向と直角に四角柱状の金属ナノワイヤを並べた場合におけるs偏光及びp偏光の電場の振動方向と、金属ナノワイヤの長さ方向、幅方向及び厚み方向との関係を示す図である。具体的には、s偏光は吸収又は反射され、p偏光は透過して、偏光性材料となることを示す図である。 樹脂層(1)→金属メッキ層(2)→誘電体層(3)を通るp偏光の進行方向とその電場を示す図である。p偏光の電場は紙面と平行であり進行方向と直角方向に振動し、この電場でメッキ層内の自由電子はwの方向に運動し、wが短いほどp偏光の透過性が良くなることを説明する図である。 本発明で用いる偏光膜(一例)の偏光性を有限差分時間領域法によりシミュレーションするためのモデルを示す図である。
以下に製造例、比較製造例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は製造例及び実施例に限定されない。
(偏光膜の製造とその特性評価)
製造例1
平均太さ100nm、平均長さ2μmの円柱状のポリメタクリル酸メチル(PMMA)のナノワイヤの表面に金属メッキ層を形成した金属メッキナノワイヤをアクリル系樹脂(屈折率1.49)の塗膜中に分散、配向させた(図3参照)。なお、PMMAナノワイヤの屈折率は1.49である。塗膜は乾燥させて偏光膜とした。以下、「塗膜」と略記する。
塗膜の偏光性能を市販の有限差分時間領域法ソフトで計算した結果を表1に示す。
(但し、ニッケルメッキナノワイヤについては、塗膜中にニッケルメッキナノワイヤが多量に重なった場合の計算は、計算量が膨大となるため、図3に示すように、平均太さ100nmのナノワイヤが、200nm厚みの塗膜に平均ピッチ200nmで平行に配向しているものを1層とし、有限差分時間領域法で1層の透過率を求め、更にLambert-Beerの方法を用いて2.6μm=13層分の透過率を求めた。)
Figure 2013088722
表1中の偏光度は、p偏光の透過率をTとし、s偏光の透過率をTとし、これらから計算される単体透過率T、パラ透過率T及びクロス透過率Tを用いて算出した。具体的には、次の通りであり、他の製造例及び比較製造例についても同様である。
・単体透過率T(%)=(T+T)/2
・パラ透過率T(%)=(T +T )/2
・クロス透過率T(%)=T・T
Figure 2013088722
表1の結果から、金属メッキ層をニッケル(3.5nm厚み)としたときの塗膜の偏光板としての性能は良好である。
製造例2〜4及び比較製造例1〜2
平均太さ100nm、平均長さ20μmの円柱状のフルオロアパタイト(屈折率1.635)のナノワイヤの表面に金属メッキ層としてクロムメッキ層を形成した金属メッキナノワイヤをアクリル系樹脂の塗膜(屈折率1.49、厚さ0.2μm)中に分散、配向させた。実施例及び比較例ごとにクロムメッキ層の厚さを変更した。塗膜の偏光性能をシグマ光機社製の偏光解析装置(特注品)を用いて評価した結果を表2に示す。
クロムメッキ層が薄い場合(比較製造例1)には、s偏光の反射率が低く、十分な偏光分離が得られない。また、クロムメッキ層が厚い場合(比較製造例2)には、s偏光の反射率が高く且つ透過率が低くなり偏光分離は十分得られるが、p偏光の透過率が低下して偏光素子としての損失が大きくなるので好ましくない。よって、金属メッキ層の厚さは2〜15nmに設定することが好ましい。
Figure 2013088722
製造例5〜6及び比較製造例3〜4
平均太さを変えた平均長さ20μmの円柱状のPMMA(屈折率1.49)のナノワイヤに7.5μm厚のアルミメッキ層を形成した金属メッキナノワイヤをアクリル系樹脂の塗膜(屈折率1.49)中に分散、配向した。塗膜の偏光性能を上記偏光解析装置を用いて評価した結果を表3に示す。塗膜の厚さは基本的に0.2μmとし、ナノワイヤの平均太さが200nmの場合は0.3μm、300nmの場合は0.35μmとした。
ナノワイヤの平均太さが細い場合(比較製造例3)には、偏光分離が十分に得られない。平均太さが太い場合(比較製造例4)には、s偏光の反射率が大きく偏光分離が得られており、太さ300nmでも偏光機能は発揮される。但し、比較製造例4ではs偏光の透過率もある程度認められるので、より好ましいナノワイヤの太さは100〜200nmである。
Figure 2013088722
製造例7〜8及び比較製造例5
平均太さ100nmであり平均長さを変えた円柱状のフルオロアパタイト(屈折率1.635)のナノワイヤの表面に10nm厚のクロムメッキ層を形成した金属メッキナノワイヤをアクリル系樹脂の塗膜(屈折率1.49、厚さ0.2μm)中に分散、配向した。塗膜の偏光性能を上記偏光解析装置を用いて評価した結果を表4に示す。
ナノワイヤの平均長さが短い場合(比較製造例5)には、s偏光の反射率より透過率が高くなり、偏光分離が十分に得られない。ナノワイヤの平均長さが2μm以上あれば偏光分離機能は発揮される。但し、ナノワイヤの取り扱い易さからは20μm以下が好ましい。
Figure 2013088722
製造例9〜11及び比較製造例6
平均太さ100nm、平均長さ20μmの円柱状のナノワイヤに7.5μm厚のアルミニウムメッキ層を形成した金属メッキナノワイヤを樹脂塗膜中に分散、配向した。塗膜の偏光性能を上記偏光解析装置を用いて評価した結果を表5に示す。各製造例及び比較製造例は屈折率差を変えたものであり、組み合わせ(ナノワイヤ/樹脂)は以下の通りである。
・製造例9:硫酸マグネシウム(屈折率1.53)/アクリル系(屈折率1.49)
・製造例10:チタン酸カリウム(屈折率2.2)/エピスルフィド系(屈折率1.8)
・製造例11:チタン酸カリウム(屈折率2.2)に10nm厚のエピスルフィド系(屈折率1.8)をコート/チオウレタン系(屈折率1.65)
・比較製造例6:チタン酸カリウム(屈折率2.2)/アクリル系(屈折率1.49)
製造例のように、ナノワイヤと塗膜の屈折率差が多少大きくても偏光分離機能は十分発揮されるが、比較例のように屈折率差が大きすぎるとs偏光の透過率が増えて偏光分離性能が低下する。
Figure 2013088722
(偏光板の製造とその特性評価)
実施例1〜2及び比較例1〜3
実施例1、2及び比較例3で用いる偏光膜として、製造例1で作製したものを用意した(Niメッキ=3.5nm)。また、比較例1〜2で用いる偏光膜として、市販のプレーン偏光板(日東電工製タイプF)を購入し、TACフィルム(保護フィルム)を水中で丁寧に剥離・除去したものを用意した。
複屈折抑制フィルムとして、下記の3種類を用意した。
(1)低複屈折性フィルム1
環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン)である日本ゼオン社製:ゼオノア#1420Rを準備した。当該樹脂を100℃で4時間乾燥後、一軸押出機に投入して溶融し、金型を通過したフィルムを冷却ロールで均一に固化させて厚み60μmのロールを採取した。複屈折抑制フィルム1は、上記金型温度を290℃とすることにより、Ro=3.0nm、Rth=3.5nmとした。各位相差値は、王子計測機器社製KOBRA-21SDHを用いて測定した(以下同様)。
(2)低複屈折性フィルム2
メタクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル)である旭化成ケミカルズ社製:DELPET♯980Nを準備した。当該樹脂を100℃で4時間乾燥後、一軸押出機に投入して溶融し、金型を通過したフィルムを冷却ロールで均一に固化させて厚み60μmのロールを採取した。複屈折抑制フィルム2は、上記金型温度を280℃とすることにより、Ro=2.1nm、Rth=−2.9nmとした。
(3)低複屈折性フィルム3(比較品)
環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン)である日本ゼオン社製:ゼオノア#1420Rを準備した。当該樹脂を100℃で4時間乾燥後、一軸押出機に投入して溶融し、金型を通過したフィルムを冷却ロールで均一に固化させて厚み60μmのロールを採取した。複屈折抑制フィルム3は、上記金型温度を270℃とすることにより、Ro=8.0nm、Rth=9.0nmとした。
偏光膜の片面に各低複屈折性フィルムをウレタン系接着剤(乾燥厚さ1μm)を用いてRoll-to-Rollにより積層した。偏光膜と低複屈折性フィルムの組み合わせについて表6に示す。
また、偏光膜の他面には、偏光膜の保護フィルムとしてプレーンTACフィルム(80μm)をウレタン系接着剤(乾燥厚さ1μm)を用いて積層した。
Figure 2013088722
試験例1
偏光板の複屈折性の違いを明確にする目的で実施例1及び比較例3で作製した偏光板の視野角評価を行った。具体的には、市販のIPS方式のセルを用意し、視認側(セル上側)の偏光板を剥離し、実施例1及び比較例3で作製した偏光板をそれぞれ貼り直すことにより2種の液晶ディスプレイを作製した。
各液晶ディスプレイを暗室中、正面及び法線からの角度70度にてディスプレイ全周囲から目視観察を実施した。
正面からの光漏れはどちらも感じられなかったが、斜め方向からの検査では比較例のディスプレイの方が光漏れが大きく、全体的に灰色のように見えた。
試験例2
実施例及び比較例で作製した偏光板の耐久性試験を行った。耐久性試験の手順は、下記の通りとした。
実施例及び比較例で作製した偏光板を、偏光板の吸収軸方向が45度になるように100mm四方の正方形に打抜いた。これは、偏光板の収縮応力の影響が最も発現し易い条件である。その後、複屈折抑制フィルム面が貼合面となるように配置し、ガラス板に25μmの高耐久のアクリル系粘着剤を介してラミネーターで貼合し、オートクレーブ(50℃、5気圧、10min)に収容して貼合時の余分なエアーを抜いた。
耐久性試験条件は以下の通りとした。
・(条件1)100℃ DRYオーブン
・(条件2)80℃、90% 湿熱オーブン
投入後100、500、1000、1500及び2000時間後に取り出して下記の測定項目1〜3について測定した。
≪測定項目1:偏光度≫
シグマ光機社製偏光解析装置APASを用いて測定した。これは、熱、及び水分による偏光性の低下(従来型偏光板の場合はヨウ素の昇華)の指標となる。
≪測定項目2:光抜け状態観察≫
後方から均一な偏光光を照射し、クロスニコル状態での周縁部光漏れを目視観察した。また、正面からだけでなく、斜め方向からも確認した。これは、偏光子の収縮による位相差値の変化の指標となる。
光抜けが認められない場合には○、エッジ部から5mm迄に光抜けが確認される場合には△、エッジ部から5mm以上の光り抜けが確認される場合には×と評価した。
≪測定項目3:剥がれ状態観察≫
エッジ部のガラスからの剥離状態を目視観察した。これは、熱による偏光子の収縮変化の指標となる。
剥がれが認められない場合には○、エッジ部から2mm迄に剥がれが認められる場合には△、エッジ部から2mm以上の剥がれが認められる場合には×と評価した。
各測定項目の結果を下記表7に示す。
Figure 2013088722
表7の結果から明らかなように、実施例で作製した偏光板は比較例で作成した偏光板と比べて、耐久性(初期からの偏光度低下、額縁状の光漏れ、粘着剤の剥がれ)に大幅な改善が認められることが分かる。

Claims (5)

  1. 偏光膜と当該偏光膜の片面又は両面に積層された少なくとも1層の低複屈折性フィルムとを有する偏光板であって、
    (1)前記偏光膜は、当該膜中において偏光性材料が略同一方向に配向しており、
    (2)前記偏光性材料は、平均太さ20〜300nmであり平均長さ0.4μm以上である誘電体からなるナノワイヤの表面に、厚さ1〜15nmの金属メッキ層を形成することにより得られる金属メッキナノワイヤであり、
    (3)前記低複屈折性フィルムは、nx、ny及びnzを各方向の屈折率の大きさとし、
    Ro=|nx−ny|×dで表される面内位相差値(Ro)が5.0nm以下であり、
    Rth={(nx−nz)/(nx−ny)}×dで表される厚み方向位相差値(Rth)が0±5.0nmである、
    ことを特徴とする偏光板。
  2. 前記低複屈折性フィルムは、トリアセチルセルロース、ノルボルネン、(メタ)アクリル、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン及びポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種の材質からなる、請求項1に記載の偏光板。
  3. ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンを主成分とする保護フィルムが片面又は両面に積層されている、請求項1又は2に記載の偏光板。
  4. 請求項3に記載の偏光板をロール形状に巻き取ることにより得られる偏光板ロール。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の偏光板を用いた液晶表示装置。
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