JP2013086120A - 肉盛溶接体、および肉盛溶接体を利用した海水用機器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】肉盛金属3aに、当該肉盛金属3aと略等しい比重で粒径が10μm以下の炭化金属粒子3bが均一に分散して含有される肉盛材料3を、レーザクラッド溶接で母材1に肉盛り溶接して形成される肉盛溶接体2とする。そして、母材1に肉盛り溶接された肉盛金属3aに炭化金属粒子3bが均一に分散して含有され、ビッカース硬度が600以上であることを特徴とする。また、この肉盛溶接体2が肉盛り溶接された母材1で形成される構成部品を使用する海水ポンプとする。
【選択図】図1
Description
例えば海水ポンプ(インジェクションポンプ)は、海水に含まれる土砂を海水とともに内部に吸い込むため、海水ポンプの本体を構成する鋼材は、塩分による腐食に対する耐性(耐腐食性)に加えて、海水に含まれる土砂による磨耗に対する耐性(耐磨耗性)が要求される。そして、鋼材を保護するとともにこれらの耐性を得るために、鋼材の表面に肉盛溶接体(肉盛体)を肉盛り溶接することが広く実施されている(例えば、特許文献1参照)。
一方で、硬度の高い肉盛溶接体を鋼材に肉盛り溶接する場合、鋼材に対して高温の予熱が必要になる。例えば、海水ポンプを構成する鋼材に二相ステンレス鋼などのステンレス鋼が用いられることがあるが、この場合、Hv600程度の肉盛溶接体を肉盛り溶接する肉盛溶接時の予熱でステンレス鋼が脆化して脆くなるという課題がある。
溶射法は、Hv1000程度の高硬度皮膜を容易に形成できるが、鋼材と皮膜(肉盛体)の結合が機械的結合であるため結合力が弱く、鋼材と皮膜の剥離が発生する可能性がある。また、皮膜内に微小の気孔が多数形成されるため、厳しい腐食環境下での使用が懸念されるという課題がある。
また、特許文献1ではPTA法によって肉盛り溶接しているが、鋼材が溶け出すほどの高温で予熱して肉盛り溶接するため肉盛施工後の肉盛材料に溶け出したFeが含有され、好適な強度を得られない。そのため多層肉盛り溶接して鋼材から離れた肉盛部材のFe含有量を低減させることで好適な強度としている。
また、この肉盛溶接体が肉盛り溶接された鋼材で形成される構成部品を使用した海水用機器とする。
図1の(a)に示すように、本実施形態に係る肉盛溶接体2(肉盛体)は、図1の(b)に示す肉盛材料3が母材1(鋼材)に1mm程度の厚みで、レーザクラッド溶接法で肉盛り溶接されて形成される。
本実施形態において肉盛溶接体2が肉盛り溶接される母材1は、例えば、図5に示す海水ポンプ200の構成部品を形成する鋼材であり、その素材は、例えば、二相ステンレス鋼などのステンレス鋼である。
また、肉盛溶接体2でNi−Cr合金(肉盛金属3a)に分散含有されるNbC粒子(炭化金属粒子3b)の大きさ(粒径)が小さいことが好ましい。
例えば、肉盛材料3の時点でNbC粒子の粒径が10μm以下であることが好ましい。
Ni−Cr合金はHv200程度であるがNbC粒子はHv2000程度と硬度が高く、硬度の低いNi−Cr合金に硬度の高いNbC粒子が均一に分散含有されることによって、好適な硬度の肉盛溶接体2とすることができる。
例えば、Ni−Cr合金に対するNbC粒子の含有比率(重量比率)を適宜設定することによって、Hv600の肉盛溶接体2とすることができる。この含有比率は実験等によって容易に設定できる。以下、NbC粒子の含有比率は重量比率とする。
市販される粉末状のNbCは粒度が100μm程度であり、このNbCの粉末が50%の含有比率で均一に分散して含有される肉盛溶接体2は、模式的に粒径が100μmのNbC粒子(炭化金属粒子3b)がL1の間隔でNi−Cr合金(肉盛金属3a)中に分散配置される構造となる(図2の(a)参照)。
これに対し、例えばNbC粒子の粒径が計50μm程度で含有比率が50%の場合、肉盛溶接体2は、模式的に粒径が50μmのNbC粒子(炭化金属粒子3b)がL1より小さいL2の間隔でNi−Cr合金(肉盛金属3a)中に分散配置される構造となる(図2の(b)参照)。
換言すると、Ni−Cr合金にNbC粒子が均一に分散含有される肉盛溶接体2では、NbC粒子の粒径を小さくして分散度を大きくしたほうが平均硬度が高くなる。
このように肉盛材料3におけるNbC粒子の粒径を10μm以下にすることによって、レーザクラッド溶接法による肉盛溶接時にNbC粒子が溶融してNbC粒子同士が結合しても、肉盛溶接体2におけるNbC粒子の粒径が90μm以下に抑えられ、好適な硬度の肉盛溶接体2になることが確認できた。
レーザクラッド溶接法は100℃程度の予熱で肉盛り溶接することができ、母材1が二相ステンレス鋼などのステンレス鋼であっても脆化を抑制できる。またレーザクラッド溶接法は、粉粒体である肉盛材料3の粒度を限定することなく肉盛り溶接できるため、粒度が20〜60μmの肉盛材料3であっても肉盛り溶接できる。
さらに、レーザクラッド溶接法で肉盛り溶接された肉盛溶接体2(図1の(a)参照)は母材1と冶金的結合するため結合が強力で、肉盛溶接体2が母材1から剥離することがない。
試験装置100は、所定の回転速度で回転するラバーホイール101と、試験片102に肉盛り溶接された肉盛溶接体2と、の接触面に土砂103を供給し、試験片102(肉盛溶接体2)を所定の荷重でラバーホイール101に押し付けたときに、肉盛溶接体2が磨耗する速度(磨耗速度)を測定する。
・試験体A(白丸):NbC粒子の含有比率が30%
・試験体B(白四角):NbC粒子の含有比率が50%
・試験体C(白三角):NbC粒子の含有比率が70%
・母材(黒丸):二相ステンレス鋼
また、NbC粒子の含有比率が50%の試験体B(白四角)は、硬度が約Hv580であり、磨耗速度が約40mm3/hである。つまり、NbC粒子の含有比率が50%の場合、硬度が目標値(Hv600)に略等しく、試験体Aに比べて磨耗しにくくなっていることがわかる。
また、NbC粒子の含有比率が70%の試験体C(白三角)は、硬度が約Hv700であり、磨耗速度が約50mm3/hである。つまり、NbC粒子の含有比率が70%の場合、硬度が目標値(Hv600)より大きく、磨耗速度は試験体Bとほぼ等しくなっていることがわかる。
また、NbC粒子の含有比率が70%以上になると、前記したように柔軟なNi−Cr合金の含有量が少なくなって肉盛溶接体2(図1の(a)参照)が脆くなり、割れが発生しやすくなるため、NbC粒子の含有比率は70%以下が好適であるとした。
さらに、Ni−Cr合金に、粒径が10μm以下のNbC粒子が均一に分散含有される粉粒体の肉盛材料3(図1の(b)参照)をレーザクラッド溶接法によって母材1(図1の(a)参照)に肉盛り溶接して肉盛溶接体2を形成した。
また、Ni−Cr合金およびNbCはともに海水による腐食に対して耐性があり、肉盛溶接体2が肉盛り溶接された母材1も海水による腐食に対して耐性を有する。したがって、肉盛溶接体2が肉盛り溶接された母材1は、海水による腐食や海水に含まれる土砂による磨耗に対する耐性(耐腐食性、耐磨耗性)を備える。
海水用機器には海水ポンプや海水ろ過装置などがあるが、特に海水ポンプには、インペラなど、海水に含まれる土砂等と激しく接触する構成部品が多いことから、前記したように、海水ポンプの構成部品を成形する鋼材には、従来の実績値としてHv600以上の硬度が要求される。そこで、肉盛溶接体2(図1の(a)参照)が肉盛り溶接される母材1(図1の(a)参照)を、海水ポンプを構成する構成部品を成形する鋼材として利用すると効果的である。
海水ポンプ200の構造は限定するものではないが、例えば、図5に要部を示すような遠心ポンプがある。
案内羽根203は、インペラ202から吐出される海水の流路の中心側を形成するリターンステージ206と、ケーシング201の内壁と、の間に形成され、リターンステージ206は駆動軸205の軸受部材としても機能する。
したがって、インペラ202、ケーシング201、案内羽根203、ハブ204、リターンステージ206などの構成部品は土砂によって磨耗しやすい部位となる。そこで、インペラ202、ケーシング201、案内羽根203、ハブ204、リターンステージ206等の構成部品を成形するステンレス鋼(二相ステンレス鋼等)を母材として、前記した肉盛溶接体2(図1の(a)参照)を肉盛り溶接し、土砂に対する耐性(耐磨耗性)を向上することが効果的である。
その他、耐腐食性、耐摩耗性が要求される機器に、本実施形態に係る肉盛溶接体2は広く適用できる。
2 肉盛溶接体
3 肉盛材料
3a 肉盛金属
3b 炭化金属粒子
200 海水ポンプ(海水用機器)
201 ケーシング(構成部品)
202 インペラ(構成部品)
203 案内羽根(構成部品)
204 ハブ(構成部品)
206 リターンステージ(構成部品)
Claims (7)
- 肉盛金属に、当該肉盛金属と略等しい比重で粒径が10μm以下の炭化金属粒子が均一に分布して含有される肉盛材料が、レーザクラッド溶接で母材に肉盛り溶接され、ビッカース硬度が600以上であることを特徴とする肉盛溶接体。
- 前記炭化金属粒子の含有比率が、重量比率で50%以上であることを特徴とする請求項1に記載の肉盛溶接体。
- 前記炭化金属粒子の含有比率が、重量比率で70%以下であることを特徴とする請求項2に記載の肉盛溶接体。
- 前記肉盛金属がNi−Cr合金で、前記炭化金属粒子がNbC粒子であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の肉盛溶接体。
- 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の肉盛溶接体が肉盛り溶接された前記母材で成形される構成部品が使用されていることを特徴とする海水用機器。
- 前記母材がステンレス鋼であることを特徴とする請求項5に記載の海水用機器。
- 前記ステンレス鋼が二相ステンレス鋼であることを特徴とする請求項6に記載の海水用機器。
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2011
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