JP2013063041A - サイレンシング抑制因子およびその取得方法 - Google Patents

サイレンシング抑制因子およびその取得方法 Download PDF

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Abstract

【課題】サイレンシング抑制因子を提供する。
【解決手段】高頻度でサイレンシングが起こる系を選抜し、そのサイレンシングを抑制する活性を指標に、ゲノムライブラリーからサイレンシングを抑制するDNA配列をスクリーニングすることが可能な系。さらに、得られたDNA配列が、複数の植物で異なった原因で起こるサイレンシングを抑制する活性を持っていることを確認した(なお、このゲノム由来のサイレンシング抑制活性を有するエレメントを、抗サイレンシング領域(Anti−silencing region=ASR)と称することがある。)。これらの手段により、植物種において、安定した強いサイレンシング抑制効果を示すDNA配列の同定・単離を行なうことができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、サイレンシングを抑制する因子に関する。より詳細には、転写型遺伝子不活性化の抑制に関する。本発明はまた、サイレンシングを抑制する因子を取得する方法(スクリーニング等)に関する。
外来遺伝子が欠損なく導入されているにも関わらず、それが機能しなくなる遺伝子サイレンシング現象(ジーンサイレンシング、または単にサイレンシングともいい、本明細書では、主としてサイレンシングという)は、遺伝子組換え技術においてしばしば障害となっている。特に、植物における、サイレンシングの一種である転写型遺伝子不活性化(TGS)は後代に遺伝するため、開発途中の組換え作物でこの現象が起こると、大きな損失となる(例:非特許文献1および非特許文献2)。また、遺伝子組換え技術によって導入された遺伝子の発現は、挿入されたゲノム上の位置に依存してばらつきが生じ(位置効果)、組換え体作製の効率を低下させる。一方、TGSは「いつ、どの生物(もしくは系統)で起きるか?」が事前に予測できないため、安定して発現する組換え体作製方法開発を研究の対象とすることが難しい。
植物の組換え技術において、TGSの発生を防ぐ方法として、核マトリクス結合配列(Scaffold/Matrix attachment region(S/MAR)) や位置効果を軽減するバリアーインスレーターが利用されている。しかし、これらすべては、生化学的手法や特定遺伝子の構造解析から同定・単離されたものであり、いずれもTGSの発生抑制効果を指標に単離されたものではない。また、動物から単離されたものが大半を占めており、動植物に共通してTGSの発生抑制効果を示す例も僅かに知られているが、TGS発生抑制能力の無いものも多く含まれている。更に、植物種から単離されたS/MARでも、TGSの発生抑制能を示すものが知られているが、安定しかつ高いTGS発生抑制能力が得られないため、現在まで実用化されているものはない。
位置効果を抑制するDNA配列、即ち、バリアーインスレーターは、動物から多数報告されている(非特許文献3および非特許文献4)。βグロビン遺伝子5’上流で同定されたcHS4配列(1.2Kb)は、4種動物における多数の実験系において、位置効果による導入遺伝子(transgene)の転写抑制を回避する効果が認められている(2004年時点ですでに16の報告が存在している;非特許文献5)。バフンウニのゲノムで単一コピーのアリルスルファターゼ遺伝子には、その5’上流にエンハンサ―遮断効果を有する0.5Kb配列(ArsI)があり、この配列は、タバコ培養細胞において、CaMV P35S(core)::GUSを安定的に発現させる(非特許文献6)。一方、生化学的手法や特定遺伝子の構造解析により、多数の動植物から核マトリクス結合配列(S/MAR)が得られている(非特許文献7)。ニワトリのリゾチーム遺伝子座の5’側上流域に存在する5’MARやタバコ遺伝子rb7−5Aの3’側下流に存在するRb7 MARは、4種類の植物において、P35S::GUSなどの導入遺伝子の発現レベルを上昇させ、かつ、発現のばらつきを抑制するが、それらの程度は植物種や実験系によって異なる(非特許文献7)。
非特許文献8は、リプレッサーによるプロモーターの抑制に関する文献であり、バリアーインスレーター活性でシールドしていることが示されている文献である。
Hagan,N.D.,Spencer,D.,Moore,A.E.& Higgins,T.J.,Plant Biotechnol.J.1,479−490(2003) Mitsuhara I., Yatou O., Iwai T., Naito Y., Nawa Y., & Ohashi Y., Plant Biotechnology 23, 63-69 (2006) Gaszner M, Felsenfeld G. Nat Rev Genet. 7:703−713 (2006) Giles KE, Gowher H, Ghirlando R, Jin C, Felsenfeld G. Cold Spring Harb Symp Quant Bio. 75:79−85 (2010)Giles et al.,Cold Spring Harb.Symp.Quant Biol., 1−7(2010) Recillas−Targa F, Valadez−Graham V, Farrell CM. Bioessays. 26:796−807 (2004) Nagaya S, Yoshida K, Kato K, Akasaka K, Shinmyo A. Mol Genet Genomics. 265:405−413.(2001) Allen GC, Spiker S, Thompson WF., Plant Mol Biol. 43, 361−376 (2000) Kwarks et al. (2003), Nature Biotechnology 21, 553−558.
本発明者らは、高頻度でサイレンシングが起こる系を選抜し、そのサイレンシングを抑制する活性を指標に、ゲノムライブラリーからサイレンシングを抑制するDNA配列をスクリーニングすることが可能な系を開発した。さらに、得られたDNA配列が、複数の植物で異なった原因で起こるサイレンシングを抑制する活性を持っていることを確認した(なお、このゲノム由来のサイレンシング抑制活性を有するエレメントを、本明細書において、抗サイレンシング領域(Anti−silencing region=ASR)と称することがある。)。これらの手段により、植物種において、安定した強いサイレンシング抑制効果を示すDNA配列の同定・単離を行なうことができる。
以上から、本発明は、例えば、以下を提供する。
(1)
(a)配列番号1〜3のいずれか1つに示す配列;
(b)配列番号1〜3のいずれか1つに示す配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列;
(c)配列番号1〜3のいずれか1つに示す配列において、1もしくは数個の置換、付加および/もしくは欠失を有する配列;
(d)配列番号1〜3のいずれか1つに示す配列に対して、高度のストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする配列;
(e)(a)〜(d)の配列の一部を含む配列;および
(f)(a)〜(e)の配列の相補配列;
からなる群より選択される、ヌクレオチド配列を含む、
核酸分子。
(2)前記核酸分子は、サイレンシング抑制活性を有する、項目1に記載の核酸分子。
(3)前記配列は、配列番号1、2または3に示す配列を含む、項目1または2に記載の核酸分子。
(4)項目1〜3のいずれか1項に記載の核酸分子を含む、サイレンシング抑制因子。
(5)項目4に記載のサイレンシング抑制因子を含むベクター。
(6)さらに、プロモーターが作動可能に連結されて含まれる、項目5に記載のベクター。
(7)さらに、導入されるべき遺伝子が作動可能に前記TGS抑制因子に連結されて含まれる、項目5または6に記載のベクター。
(8)さらに、プロモーターが作動可能に連結されて含まれる、項目7に記載のベクター。
(9)項目5〜8のいずれか1項に記載のベクターを含む、遺伝子を導入するための組成物。
(10)項目5〜8のいずれか1項に記載のベクターを含む、細胞。
(11)植物細胞である、項目10に記載の細胞。
(12)項目5〜8のいずれか1項に記載のベクターを含む、植物組織。
(13)項目5〜8のいずれか1項に記載のベクターを含む、植物器官。
(14)項目5〜8のいずれか1項に記載のベクターを含む、植物体。
(15)項目5〜8のいずれか1項に記載のベクターを含む、種子。
(16)項目5〜8のいずれか1項に記載のベクターを含む細胞、植物組織、植物器官、植物体および/または種子に由来する加工品。
(17)(A)高頻度でサイレンシングが起こる系を提供する工程;
(B)該高頻度でサイレンシングが起こる系に、候補核酸を導入する工程;
(C)該高頻度でサイレンシングが起こる系において、サイレンシングが抑制されるかどうかを決定する工程;
(D)工程(C)において、該サイレンシングの抑制をもたらした該候補核酸を選択する工程;
を包含する、サイレンシング抑制因子のスクリーニング方法。
(18)前記サイレンシングは、トランス−転写型遺伝子不活性化(trans−TGS)により生じる、項目17に記載のスクリーニング方法。
(19)前記高頻度でサイレンシングが起こる系は、トランス−転写型遺伝子不活性化(trans−TGS)が高頻度で起こる系である、項目17または18に記載のスクリーニング方法。
(20)前記サイレンシング抑制因子は、転写型遺伝子不活性化(TGS)抑制因子である、項目19に記載のスクリーニング方法。
(21)前記高頻度でサイレンシングが起こる系は、あるプロモーターについて高頻度でサイレンシングが起こる系であり、前記導入工程(B)は、前記候補核酸と該プロモーターとを含むベクターを用いて行われることをさらに特徴とする、項目17〜20のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
(22)前記高頻度でサイレンシングが起こる系は、前記(B)導入工程において使用される導入手法を用いた場合に少なくとも90%でサイレンシングが起こる、項目17〜21のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
(23)前記サイレンシングが生じた場合、前記系の個体は発生せず、該サイレンシングが生じない場合、該系の個体が発生する、項目17〜22のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
(24)前記サイレンシングが生じた場合と、該サイレンシングが生じない場合とで、前記系の表現形が異なる、項目17〜23のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
(25)前記高頻度でサイレンシングが起こる系は、人工的にサイレンシングを生じさせたものである、項目17〜24のいずれか1項に記載の方法。
(26)前記高頻度でサイレンシングが起こる系は、天然にサイレンシングが起きる系である、項目17〜25のいずれか1項に記載の方法。
(27)高頻度でサイレンシングが起こる系を備える、サイレンシング抑制因子のスクリーニングを行うためのキット。
(28)前記高頻度でサイレンシングが起こる系は、あるプロモーターについて高頻度でサイレンシングが起こる系であり、該プロモーターを含む候補核酸を導入のベクターをさらに備える、項目27に記載のキット。
(29)前記高頻度でサイレンシングが起こる系は、アグロバクテリウム形質転換系で形質転換した場合に少なくとも90%導入遺伝子の発現が抑制される、項目27または28に記載のキット。
これらのすべての局面において、本明細書に記載される各々の実施形態は、適用可能である限り、他の局面において適用され得るものであり、上記特徴は組み合わせて使用されうることが理解される。
なお、従来の例はいずれも、導入遺伝子のサイレンシング(この場合、転写型遺伝子不活性化=TGS)の解除を指標とした、ゲノムDNAの体系的スクリーニングで見つかったのではない。従って、単離された後に、導入遺伝子のTGS抑制能の有無の研究が開始されたものである。また、植物において、高いサイレンシング抑制効果、特に高いTGS抑制効果を安定して示すDNA配列の報告、先行技術はこれまで開示されていない。外来遺伝子をサイレンシングから積極的に防御するこれらのゲノムエレメントを探索することによって得られた本発明は、従来にない格別顕著な効果を奏する発明として評価されるべきである。
本明細書において複数の実施形態が開示されるが、適用可能である限り、それらの実施形態の特徴は組み合わせて用いられうることが理解される。また、本発明の他の実施形態は、以下の詳細な説明から当業者には明らかになる。明らかであるように、本発明は、すべて本発明の技術思想および範囲から逸脱することなく、種々の明白な態様において修飾が可能である。従って、図面および詳細な説明は、実施する場合の例示であるとみなされ、制限を意図するものであるとはみなされない。
本発明により、特に、植物種において、安定した強いTGS抑制効果を示すDNA配列が提供され、そのような配列を同定・単離する方法も提供される。
本発明の核酸または因子は、形質転換用ベクターに組込むことで、導入遺伝子のTGSを抑制し安定的に外来遺伝子を発現させることができるようになる。これにより、組換え生物作出のための労力を節約することが可能になると共に、形質転換体であるにもかかわらず導入遺伝子が発現しなくなるという危険性を低減することも可能になる。また、研究用のみならず産業用のベクターとして流通することも考えられる。
図1は、TGSを防ぐ抗サイレンシング領域(ASR)の同定を示す。a:trans−TGS活性を有する遺伝子組換えタバコ植物により、ASRを単離するためのストラテジーを示す概略図。Xは、外来遺伝子がサイレンシングを受けていることを示す。b:CaMV 35Sプロモーター駆動性HPT遺伝子の再導入によるtrans−TGS植物の選択。丸の印は、再生中のシュートを示す。M66−9植物では、通常得られるべき耐性シュートが見られないことから、35Sプロモーターのtrans−TGSによって35S::HPT遺伝子が機能しないものと思われる。c,ASR候補の単離。矢印は、ASR::HPT構築物(a,右下)のライブラリーを用いた、3つのスーパー形質転換体(形質転換体に再度別の組換えDNAを導入する形質転換「スーパー形質転換」により得られた個体を「スーパー形質転換体」という。)。trans−TGS植物からPCRで増幅したASR候補を示す。ASR102を含む植物は、ASRを含むと思われる高分子のバンドのほかに、空のベクター(V)と同じサイズのバンドを示したことから、この植物はASR候補配列をもった挿入物とは別に空のベクターの挿入物を有することが示唆された;Vは、ライブラリーの構築のために使用したベクターである。 遺伝子の発現を安定化させるDNA配列を単離する方法を示す図である。図1Aは、TGSを防ぐ抗サイレンシング領域(ASR)の同定:pTH4を用いた、ASR融合P35S駆動性HPTライブラリーでのスーパー形質転換後の、trans−TGS活性を失った復帰変異体と、ASRによってtrans−TGSの影響をのがれて再生した植物の区別を示す(図2Aもまた参照のこと)。a,trans−TGS活性を有する遺伝子組換えタバコ植物を使用することにより、ASRを選択するためのストラテジーを示す概略図。スーパー形質転換体植物は、導入されたP35S::HPT構築物と隣接するASRによってtrans−TGSから保護されたか、または、スーパー形質転換体細胞がそのtrans−TGS活性を失った(復帰変異体)かのいずれかの場合に、ハイグロマイシンを含む培地上で再生し得る。trans−TGS活性の喪失は、既存の外来遺伝子(P35S::Ced9)の再活性化につながるので、この復帰変異体は、指標としてCed−9タンパク質を検出することによってスクリーニングから除外され得る。Xは、外来遺伝子がサイレンシングを受けていることを示す。詳細については実施例を参照のこと。b,ウェスタンブロッティングによる、既存の外来遺伝子産物の検出。TGSから復帰した個体(復帰変異体)では、既存の外来遺伝子産物であるCed−9タンパク質が検出される。系統の名称については、図1A−aを参照のこと。ウェスタンブロッティングは、記載されたとおりに実施した(Mitsuhara, I., K. A.Mailk, M. Miura and Y. Ohashi (1999) Curr. Biol. 9: 775-778)。 本明細書では、図2は、図2−1〜図2−4として表示する。図2は、CaMV 35Sプロモーター(P35S)間の相互作用によって引き起こされるtrans−TGSを防ぐASR候補の抗サイレンシング活性を示す。図2−1は図2aを示す。a:ASR候補が、同じプロモーターのコピー数の増大によって引き起こされるtrans−TGSを防ぎ得るかどうかを見るためのストラテジーの概略図。 本明細書では、図2は、図2−1〜図2−4として表示する。図2は、CaMV 35Sプロモーター(P35S)間の相互作用によって引き起こされるtrans−TGSを防ぐASR候補の抗サイレンシング活性を示す。図2−2は図2bを示す。b:ASR候補によるtrans−TGSの抑制。プロモーターによって駆動されるGUS遺伝子の発現に対するASRの影響を検討した。コントロール植物(CTおよびCST)ならびにASR候補のうちの1つを含むスーパー形質転換体(ASR ST)のGUS活性を示す。四角の上下辺は、それぞれ第1・第3四分位数を示す(四角は、四分位範囲、即ち、データの上位25%に当たる値から下位25%に当たる値までの範囲を示す);四角内の横棒は、各群の中央値を表す。なお、データを昇順に並べたとき、小さい方から1/4の所の値を第1四分位値(Q1)、大きい方から1/4(小さい方から3/4)の所の値を 第3四分位値(Q3)という。このとき四分位範囲(Inter Quartile Range, IQR)はIQR=Q3−Q1との式で算出することができる。 本明細書では、図2は、図2−1〜図2−4として表示する。図2は、CaMV 35Sプロモーター(P35S)間の相互作用によって引き起こされるtrans−TGSを防ぐASR候補の抗サイレンシング活性を示す。図2−3は図2cを示す。c:ASR候補ASR602によるプロモーター内のDNAメチル化の抑制。コントロールスーパー形質転換体(CST)およびASRスーパー形質転換体(ASR602 ST)におけるGUS構築物のプロモーター領域を調べた。各レーンは、同じスーパー形質転換体を表す。/の右と左の数字は、それぞれ、全植物の数と、メチル化されたプロモーターを有する植物の数である。 本明細書では、図2は、図2−1〜図2−4として表示する。図2は、CaMV 35Sプロモーター(P35S)間の相互作用によって引き起こされるtrans−TGSを防ぐASR候補の抗サイレンシング活性を示す。図2−4は図2dを示す。d:ASR602によるtrans−TGSの抑制。既存のP35S::LUC挿入物の活性を、CSTおよびASR602STに関するスーパー形質転換体P35S::GUS遺伝子の活性に対してプロットした。全体,調べた全ての植物;1コピー,単一コピーのP35S::GUS外来遺伝子の挿入を有する植物。縦軸および横軸はは対数尺であることに留意すること。 本明細書では、図2Aは、図2A−1〜図2A−2として表示する。図2Aは、本研究に使用したバイナリーベクター構築物を示す(方法の節もまた参照のこと)。図2A−1では、pTH1、pMLH7133−GUS、pTH4、pP35Sm−GUSおよびpMLH2113−GUSを示す。
pTH1はtrans−TGS活性を示す植物の選択を目的として、TGS植物をスーパー形質転換するために用いた。このベクターは、CaMV 35Sエンハンサー領域(E35S)とpBI121のプロモーター領域(P35S)とを有し(Jefferson,R.A.,Kavanagh,T.A.& Bevan,M.W.,EMBO J.6,3901-3907(1987))、その後ろにHPTを有する。RBおよびLB,それぞれAgrobacterium tumefaciens TiプラスミドのT−DNAの右境界および左境界;E35S,CaMV 35Sプロモーターの5’上流配列(CaMV 35Sプロモーターの転写開始点から上流側−940塩基〜−90塩基まで(本明細書では35S プロモーター等プロモーターの位置の説明の数値は転写開始点からの塩基数を基準として説明する。);P35S,CaMV 35Sプロモーターの5’上流配列(−90〜−1);HPT,ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(選択マーカー);Tnos,Tiプラスミド内のノパリン合成遺伝子(nos)のポリアデニル化シグナル;Tet,大腸菌や中間宿主であるアグロバクテリウム内で働くテトラサイクリン耐性マーカー遺伝子。
pMLH7133−GUSは、別のCaMV 35Sプロモーター駆動性構築物として用い、trans−TGS植物M66−9のtrans−TGS活性の確認に用いた。この構築物におけるGUS発現カセットは、7コピーのCaMV 35Sエンハンサー(E7)とP35Sを含んでいた。Pnos::NPTII,カナマイシンに対する抵抗性を付与するnosプロモーター駆動性ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(選択マーカー);E7,CaMV 35Sプロモーターの5’上流配列(−940〜−290)および(−290〜−90)×7;Ω,TMVの5’非翻訳配列;In,ファセオリン遺伝子の第一イントロン;GUS,β−グルクロニダーゼ遺伝子(レポーター遺伝子);T35S,CaMV 35S転写産物のポリアデニル化シグナル。
pTH4は、ASRスクリーニングを目的としたゲノムライブラリーの作製のために使用した。このベクターは、2コピーのCaMV 35Sエンハンサー(El)とP35Sを含んでいる。El,CaMV 35Sプロモーターの5’上流配列(−419〜−90)。
pP35Sm−GUSは、ASR候補がエンハンサー活性を有するかどうかを調べるために使用した。この構築物は、転写開始点から−46塩基までの CaMV 35S最小プロモーター領域を有する(Jefferson,R.A.,Kavanagh,T.A.& Bevan,M.W.,EMBO J.6,3901-3907(1987))。
pMLH2113−GUSは、LUCタバコ植物(NW7−24−4;Mitsuhara I.et al.,Genetics 160,343-352(2002))のスーパー形質転換のために使用した(図2a)。この構築物は、2コピーのElとP35Sとを有する。斜線の横棒は、そのメチル化状態がメチル化感受性制限酵素による消化後のPCRアッセイによって分析される領域を示す。この斜線の横棒を挟む2つの矢印(pBI−Hind3−51およびGUSI3)は、PCRアッセイに用いたプライマーセットがアニールする部位を模式的に示している(表3)。
本明細書では、図2Aは、図2A−1〜図2A−2として表示する。図2Aは、本研究に使用したバイナリーベクター構築物を示す(方法の節もまた参照のこと)。図2A−2は、pBI−FWAおよびASR含有pBI−FWAを示す。
pBI−FWAおよびASR含有pBI−FWAは、ASRがArabidopsisにおけるFWA外来遺伝子のサイレンシングを防ぐかどうかを調べるために使用した。pBI−FWA内にクローニングしたFWA領域の5’末端部分をASR602配列で置き換え、ASR602含有pBI−FWAを得た。両方のFWA構築物はFWA遺伝子の5’タンデムリピート(5’TR)を含み、これは、新規DNAメチル化を誘導するために必要十分である(Chan et al., PLoS Biol. 4: e363, 2006)。
図3は、FWA外来遺伝子のサイレンシングとASR602による抑制を示す。遺伝子発現を安定化させるDNA配列ASR602は、他種植物および他種プロモータ―においてTGSを抑制する。a:FWA形質転換体Col株(FWA)およびASR602融合FWAで形質転換したCol株(ASR+FWA)。b:FWA形質転換体およびコントロール形質転換体(ベクターのみ)における開花時間。ベクター,ベクターのみで形質転換したCol株。(遅い開花は、ロゼット葉の数を増加させる。)ベクター,n=11;FWA,n=117;ASR+FWA,n=14。エラーバーは、平均±s.e.m.を示す。**P<0.01;NS,有意差なし。 図3Aは、ASR602と類似するLotusDNA配列の染色体分布を示す。a:http://www.kazusa.or.jp/lotus/clonelist.htmlにおけるアクセッション番号の総数に対する、ASR602様配列を含む配列のアクセッション番号の割合。「ASR602様配列を有するコンティグ」は、1以上のASR602様配列を含む配列のアクセッション番号からなる。「ASR602様配列を有さないコンティグ」は、ASR602様配列を含まない配列のアクセッション番号からなる。nは、各染色体に割り当てられたか、またはマッピングされていないコンティグとして分類されたアクセッション番号の数である。b,ASR602に類似する配列を、1センチモルガン(cM)間隔でL.japonicusの遺伝子マップ(http://www.kazusa.or.jp/lotus/clonelist.html)上にマッピングした。類似配列を見つけるために、デフォルト条件による「bl2seq」検索(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiにおける、2つの配列を整列させるための専用のBLAST)を、ASR602配列をクエリーとして、そして、http://www.kazusa.or.jp/lotus/clonelist.htmlにおける各アクセッション番号を対象として用いて使用した。同定したASR602様配列を、対象として用いたアクセッション番号のマップ位置(cM)(http://www.kazusa.or.jp/lotus/clonelist.html)にプロットした。黒丸,E値<10−20;白丸,E値>10−20 図4は、ASR含有レトロトランスポゾン様配列(ASL)を示す。a,Tnt1(タバコ,X13777)、copia(Drosophila,X02599)およびASLの構造を示す。縞模様の四角は、レトロトランスポゾンがしばしばその両端にもつ長鎖末端反復配列(LTR=long terminal repeats)様の配列を示す。ASL1では、核酸結合タンパク質(NAB)、プロテアーゼ(PRO)遺伝子およびインテグラーゼ遺伝子(INT)の一部に対応する配列が欠失している。PBS,プライマー結合部位;ZF,ジンクフィンガードメイン;RVT、逆転写酵素;RH,RNase H;PPT,ポリプリン領域。b,Tnt1(P10978)、copia(P04146)およびASLの逆転写酵素ドメイン間のアミノ酸の類似性。Tnt1およびcopiaのアミノ酸位置(括弧内)は、アクセッション番号の配列において使用されるものを示す。 本明細書では、図4Aは、図4A−1〜図4A−2として表示する。図4Aは、ASR602含有レトロトランスポゾン様配列(ASL)を示す。図4A−1は、図4Aaを示す。a:Tnt1(タバコ,X13777)、copia(Drosophila,X02599)およびASLの構造(図4も参照のこと)を示す。陰影のついた四角は、挿入物を示す;異なる陰影のパターンは、異なる配列を表す。 本明細書では、図4Aは、図4A−1〜図4A−2として表示する。図4Aは、ASR602含有レトロトランスポゾン様配列(ASL)を示す。図4A−2は、図4Abを示す。b:8つのASLにおけるASR602およびASR602様配列のDNA配列アラインメント。これらの8つのASLを同定するための手順は以下のとおりである:まず、本発明者らは、ASR602のDNA配列を、GenBankウェブサイト上でのBLASTN分析(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)のためのクエリー配列として用い、「Database」を「Others(nr etc.)」に設定したことを除いてデフォルトの条件を用いて、E値に基づき、ASLを含むアクセッション番号のリストを得た。次に、本発明者らは、20番目のE値を持つASL、または、20番目の値未満のE値を有する全ASLを探すために、「上から20番目まで」のアクセッション番号の配列データを使用した。第三に、このようなASL(E値≦20番目のE値)において、本発明者らは、標的部位の重複(target site duplication)を持つLTR対の間に挟まれたASLを探索した。 図5は、サツマイモにおいてASR602はP35S::GUS遺伝子の発現変動性を抑制することを示す。左上および右上は、それぞれP35S::GUS遺伝子のみを形質転換したサツマイモカルス(ASR602無し)を示す。多数のGUSが発現していない細胞が認められる。GUS発現細胞は数も少なく、発現程度のばらつきも大きいことが観察される。中央下は、ASR602を融合させたP35S::GUS遺伝子を形質転換したサツマイモカルスを示す。カルスの全体でGUSが高発現していることが観察される。 図6は、コントロール(pMLH2113)とASR602およびASR501をもつ発現ベクター(pMLH2113+ASR602, 501)との間でのGUSの発現の比較を示す。図6に示すように、GUSを全面で発現しているカルスの割合は、ASR602およびASR501を持つベクターを使用した場合において、それぞれ、コントロールに比べてカイ自乗検定で統計学的に有意(p<0.05)に増加しており、サイレンシング抑制効果がサツマイモで生じていることを実証する。サツマイモの胚由来のカルスをASRを持つないしは持たない改変35S promoter::GUS融合遺伝子をもつAgrobacteriumによって形質転換した。形質転換された細胞は薬剤耐性によって選抜されて細胞塊を形成する。この時従来型のASRを持たない導入遺伝子で形質転換された場合は、多くの細胞塊でGUS遺伝子が発現しない細胞の割合が徐々に高いことから、かなりの頻度で35Sプロモーターのサイレンシングが起きていると考えられる。一方、ASRを含む導入遺伝子をもつ細胞塊では、全体の細胞がGUSを発現している割合が高く、ASRによってサイレンシングが抑制されていると考えられる。
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞等の用語(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」等)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
(定義)
本明細書において「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「オリゴヌクレオチド誘導体」または「ポリヌクレオチド誘導体」を含みうる。「オリゴヌクレオチド誘導体」または「ポリヌクレオチド誘導体」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine-modified cytosine)で置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体およびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体などが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzeret al.、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuka et al.、J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985);Rossoliniet al.、Mol.Cell.Probes 8:91-98(1994))。本明細書では「核酸分子」もまた、核酸、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドと互換可能に使用され、cDNA、mRNA、ゲノムDNA、siRNA、shRNA,RNAとDNAとの複合分子などを含む。本明細書では、核酸および核酸分子は、それらが遺伝的機能を示す場合は、用語「遺伝子」の概念に含まれ得る。
本明細書において、「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいう。通常ゲノム上に一定の順序に配列している。タンパク質の一次構造を規定するものを構造遺伝子といい、その発現を左右するものを調節遺伝子(たとえば、プロモーター)という。本明細書では、遺伝子は、特に言及しない限り、構造遺伝子および調節遺伝子を包含するが、本明細書では通常は構造遺伝子をさす。ただし、文脈に応じて、遺伝子は、構造遺伝子ならびにそのプロモーターなどの転写および/または翻訳の調節配列の両方を包含しうる。本明細書では、「遺伝子」は、物質としての「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」を指すことがある。本明細書においてはまた、「遺伝子産物」は、遺伝子によって発現されたタンパク質、ポリペプチド等のほか、産物として「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」を包含しうる。当業者であれば、遺伝子産物が何たるかはその状況に応じて理解することができる。
本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。ヌクレオチドの配列は、本明細書において「ヌクレオチド配列」または「塩基配列」という。
本明細書において「ヌクレオチド誘導体」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのようなヌクレオチド誘導体およびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのようなヌクレオチド誘導体およびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書では、ヌクレオチド誘導体およびヌクレオチドアナログは、ヌクレオチドと同じ生物学的機能、例えばサイレンシング抑制因子またはプロモーター等の機能を果たす限り、ヌクレオチドの代替として使用され得ることが理解される。
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に認知された1文字コードにより言及され得る。
本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。同一性の検索は例えば、NCBIのBLAST 2.2.25 (2011年5月10日発行)を用いて行うことができる。本明細書における同一性の値は通常は上記BLASTを用い、デフォルトの条件でアラインした際の値をいう。ただし、パラメーターの変更により、より高い値が出る場合は、最も高い値を同一性の値とする。複数の領域で同一性が評価される場合はそのうちの最も高い値を同一性の値とする。
本明細書において、「対応する」ヌクレオチドとは、ある核酸分子またはポリヌクレオチド分子において、比較の基準となる核酸分子またはポリヌクレオチドにおける所定のヌクレオチドと同様の作用を有するか、または有することが予測されるヌクレオチドをいい、サイレンシング抑制因子またはプロモーターにあっては、サイレンシング抑制因子またはプロモーター作用において、同様の寄与をするヌクレオチドをいう。サイレンシング抑制因子またはプロモーターであれば、そのサイレンシング抑制因子またはプロモーターの特定の部分に対応するオルソログにおける同様の部分であり得る。
本明細書において、「対応する」遺伝子とは、ある種において、比較の基準となる種における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝子をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子(例えば、核酸結合タンパク質(NAB)、プロテアーゼ(PRO)遺伝子およびインテグラーゼ遺伝子(INT)、ASR含有レトロトランスポゾン様配列(ASL)等)に対応する遺伝子は、その遺伝子のオルソログであり得る。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。したがって、本発明は、本発明において具体的に同定された配列に対応する他の生物において「対応する」遺伝子もまた、本発明の範囲内にあることが理解される。オルソログは、通常別の生物・ウイルス株において、もとの生物・ウイルス株と同様の機能を果たしていることがあり得ることから、本発明のオルソログもまた、本発明において有用であり得る。したがって、例えば、ある植物のトランスポゾンの遺伝子に対応する遺伝子は、他の植物においても見出すことができる。そのような対応する遺伝子は、本発明のスクリーニング方法を用いて同定することができ、同定した遺伝子をもとにさらに検索することもできる。したがって、例えば、ある植物における対応する遺伝子は、対応する遺伝子の基準となる遺伝子の配列をクエリ配列として用いてその植物(例えば、タバコ、シロイヌナズナ(Arabidopsis))の配列データベースを検索することによって見出すことができる。
本明細書において「フラグメント」、「一部」または「断片」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100、150、200、250およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100、200、300、400、500およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さは、上述のようにそれぞれアミノ酸または核酸の個数で表すことができるが、上述の個数は絶対的なものではなく、同じ機能を有する限り、上限または下限としての上述の個数は、その個数の上下数個(または例えば上下10%)のものも含むことが意図される。そのような意図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。しかし、本明細書では、「約」のあるなしはその数値の解釈に影響を与えないことが理解されるべきである。本明細書において有用なフラグメントの長さは、そのフラグメントの基準となる全長タンパク質の機能のうち少なくとも1つの機能が保持されているかどうかによって決定され得る。
本明細書において、「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、挿入改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。そのような改変体としては、基準となる核酸分子またはポリペプチドに対して、1または数個の置換、付加、挿入および/または欠失、あるいは1つ以上の置換、付加、挿入および/または欠失を含むものが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「保存的(に改変された)改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一な配列をいう。このような塩基配列の改変法としては、制限酵素などによる切断、DNAポリメラーゼ、Klenowフラグメント、DNAリガーゼなどによる処理等による連結等の処理、合成オリゴヌクレオチドなどを用いた部位特異的塩基置換法(特定部位指向突然変異法;Mark Zoller and Michael Smith,Methods in Enzymology,100,468-500(1983))が挙げられるが、この他にも通常ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等分子生物学の分野で用いられる方法によって改変を行うこともできる。このような核酸はまた、化学的に合成することもできる。これらの方法に、例えば、部位特異的変位誘発法、ハイブリダイゼーション法などを組み合わせてもよい。
本明細書において使用される核酸分子は、目的とするサイレンシングの抑制等を達成する限り、上述のようにその核酸の配列の一部が欠失または他の塩基により置換されていてもよく、あるいは他の核酸配列が一部挿入されていてもよい。あるいは、5’末端および/または3’末端に他の核酸が結合していてもよい。また、ポリペプチドをコードする遺伝子をストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、そのポリペプチドと実質的に同一の機能を有するポリペプチドをコードする核酸分子でもよい。このような遺伝子は、当該分野において公知であり、本発明において利用することができる。
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加、挿入および/または欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わること、挿入されること、または取り除かれることをいう。このような置換、付加、挿入および/または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。基準となる核酸分子またはポリペプチドにおけるこれらの変化は、この核酸分子の5’末端もしくは3’末端で生じ得るか、またはこのポリペプチドを示すアミノ酸配列のアミノ末端部位もしくはカルボキシ末端部位で生じ得るか、またはそれらの末端部位の間のどこにでも生じ得、基準配列中の残基間で個々に散在しうる。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能(例えば、サイレンシング抑制機能など)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、15%以内、10%以内、5%以内、または150個以下、100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。
本明細書において「生物学的機能」とは、ある遺伝子またはそれに関する核酸分子もしくはポリペプチドについて言及するとき、その遺伝子、核酸分子またはポリペプチドが生体内において有し得る特定の機能をいい、これには、例えば、プロモーター、サイレンシング、サイレンシングの抑制等を挙げることができるがそれらに限定されない。本発明においては、サイレンシング抑制機能を有するこれらの核酸分子またはポリペプチド自体の機能のほか、生物学的機能としては、例えば、レトロトランスポゾン活性等、これらの具体的な機能と直接的または間接的に関連する機能(例えば、サイレンシング因子との結合など)などを挙げることができるがそれらに限定されない。本明細書において、生物学的機能は、「生物学的活性」によって発揮され得る。本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリヌクレオチド、タンパク質など)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能(例えば、プロモーター、サイレンシング、サイレンシングの抑制など)を発揮する活性が包含され、例えば、ある分子との相互作用によって別の分子が活性化または不活化される活性も包含される。2つの因子が相互作用する場合、その生物学的活性は、その二分子との間の結合およびそれによって生じる生物学的変化、例えば、一つの分子を抗体を用いて沈降させたときに他の分子も共沈するとき、2分子は結合していると考えられる。したがって、そのような共沈を見ることが一つの判断手法として挙げられる。例えば、ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵素活性を包含する。別の例では、ある因子がリガンドである場合、そのリガンドが対応するレセプターへの結合を包含する。そのような生物学的活性は、本明細書の記載に基づき、本発明のスクリーニング方法または当該分野において周知の技術によって測定することができる。このような「活性」は、サイレンシング抑制についていえば、例えば、サイレンシングで抑制されるべき遺伝子の表現形について、その表現形の有無を確認することのほか、他の手法、例えば、結合(直接的または間接的のいずれか)を示すかまたは明らかにするか;応答に影響する(すなわち、いくらかの曝露または刺激に応答する測定可能な影響を有する)、種々の測定可能な指標により測定することができる。また、尺度としては、活性の測定方法に応じて適宜使用することができ、例えば、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに直接結合する化合物の親和性、または例えば、いくつかの刺激後または事象後の上流または下流のタンパク質の量あるいは他の類似の機能を尺度として測定することができる。
従って、本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」の「減少」または「抑制」とは、交換可能に使用され、ある因子(すなわち、発現抑制因子(発現抑制剤))を作用させたときに、作用させないときよりも、発現の量が有意に減少することをいう。したがって、本明細書において「発現」(の)「抑制」とは、広義には、遺伝子の細胞内における発現、すなわち、ゲノムの複製、転写、翻訳が抑制されることをいう。好ましくは、発現の減少は、ポリペプチドの発現量の減少を含む。一般に、サイレンシングが生じる場合には、目的とする遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの発現が減少する。
本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」の「増加」とは、本発明の因子を作用させたときに、作用させないときよりも、発現の量が有意に増加することをいう。好ましくは、発現の増加は、ポリペプチドの発現量の増加を含む。本明細書において「発現」の「誘導」とは、ある細胞にある因子を作用させてその遺伝子の発現量を増加させることをいう。したがって、発現の誘導は、まったくその遺伝子の発現が見られなかった場合にその遺伝子が発現するようにすること、およびすでにその遺伝子の発現が見られていた場合にその遺伝子の発現が増大することを包含する。したがって、本明細書において「発現」(の)「増加」とは、広義には、遺伝子の細胞内における発現、すなわち、ゲノムの複製、転写、翻訳が増加することをいう。好ましくは、発現の増加は、ポリペプチドの発現量の増加を含む。一般に、サイレンシングの抑制が生じる場合には、目的とする遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの発現が増加する(別の言葉で表現すれば、サイレンシングによって減少すべきところが、サイレンシングのない状態に回復するとも言いうる)。
本明細書において、遺伝子が「特異的に発現する」とは、その遺伝子が、植物の特定の部位または時期において他の部位または時期とは異なる(好ましくは高い)レベルで発現されることをいう。特異的に発現するとは、ある部位(特異的部位)にのみ発現してもよく、それ以外の部位においても発現していてもよい。好ましくは特異的に発現するとは、ある部位においてのみ発現することをいう。転写の有無の判定には、このような特異的発現の有無を調べる系を用いてもよい。
本明細書において「相補配列」または「相補体」とは、本明細書では、相補領域全体がそのまま別の特定のポリヌクレオチドとWatson & Crick塩基対を形成することのできるポリヌクレオチドの配列またはその分子等の実体を示す。本明細書では、第1のポリヌクレオチドの各塩基がその相補塩基と対になっている場合に、この第1のポリヌクレオチドはその相補塩基の配列からなる第2のポリヌクレオチドと相補であるとみなす。相補塩基は一般に、AとT(あるいはAとU)との対、またはCとGとの対である。本願明細書では、「相補(体)」という語を「相補ポリヌクレオチド」、「相補核酸」および「相補ヌクレオチド配列」の同義語として使用することがある。これらの用語は、その配列のみに基づいて、ポリヌクレオチドの対に適用されるものであり、2つのポリヌクレオチドが事実として結合状態にある具体的な対を指すものと解釈されるものではない。
本明細書において、ハイブリダイゼーションのための「ストリンジェンシー」または「ストリンジェントな条件」とは、標的配列に対して類似性または相同性を有するヌクレオチド鎖の相補鎖が標的配列に優先的にハイブリダイズし、そして類似性または相同性を有さないヌクレオチド鎖の相補鎖が実質的にハイブリダイズしない条件を意味する。ある核酸配列の「相補鎖」とは、核酸の塩基間の水素結合に基づいて対合する核酸配列(例えば、Aに対するT、Gに対するC)をいう。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、そして種々の状況で異なる。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。一般に、ストリンジェントな条件は、規定されたイオン強度およびpHでの特定の配列についての熱融解温度(Tm)より約5℃低く選択される。Tは、規定されたイオン強度、pH、および核酸濃度下で、標的配列に相補的なヌクレオチドの50%が平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度である。「ストリンジェントな条件」は配列依存的であり、そして種々の環境パラメーターによって異なる。核酸のハイブリダイゼーションの一般的な指針は、Tijssen(Tijssen(1993)、Laboratory Techniques In Biochemistry And Molecular Biology-Hybridization With Nucleic Acid Probes Part I、第2章 「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assay」、Elsevier,New York)に見出される。
代表的には、ストリンジェントな条件は、塩濃度が約1.0M Na未満であり、代表的には、pH7.0〜8.3で約0.01〜1.0MのNa濃度(または他の塩)であり、そして温度は、短いヌクレオチド(例えば、10〜50ヌクレオチド)については少なくとも約30℃、そして長いヌクレオチド(例えば、50ヌクレオチドより長い)については少なくとも約60℃である。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドのような不安定化剤の添加によって達成され得る。本明細書におけるストリンジェントな条件として、50%のホルムアミド、1MのNaCl、1%のSDS(37℃)の緩衝溶液中でのハイブリダイゼーション、および0.1×SSCで60℃での洗浄が挙げられる。
本明細書において、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、当該分野で慣用される周知の条件をいう。本発明のポリヌクレオチド中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより、そのようなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline-sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd ed.,Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまたはT配列のみを含む配列が除外される。「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」とは、上記ハイブリダイズ条件下で別のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとして具体的には、本発明で具体的に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAの塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、好ましくは80%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、90%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
本明細書において「高度のストリンジェンシー」または「高度にストリンジェントな条件」は、核酸配列において高度の相補性を有するDNA鎖のハイブリダイゼーションを可能にし、そしてミスマッチを有意に有するDNAのハイブリダイゼーションを除外するように設計された条件をいう。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、主に、温度、イオン強度、およびホルムアミドのような変性剤の条件によって決定される。このようなハイブリダイゼーションおよび洗浄に関する「高度にストリンジェントな条件」の例は、0.0015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、65〜68℃、または0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、および50% ホルムアミド、42℃である。このような高度にストリンジェントな条件については、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory(Cold Spring Harbor,N,Y.1989);およびAnderson et al.、Nucleic Acid Hybridization:a Practical approach、IV、IRL Press Limited(Oxford,England).Limited,Oxford,Englandを参照のこと。必要により、よりストリンジェントな条件(例えば、より高い温度、より低いイオン強度、より高いホルムアミド、または他の変性剤)を、使用してもよい。他の薬剤が、非特異的なハイブリダイゼーションおよび/またはバックグラウンドのハイブリダイゼーションを減少する目的で、ハイブリダイゼーション緩衝液および洗浄緩衝液に含まれ得る。そのような他の薬剤の例としては、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(NaDodSOまたはSDS)、Ficoll、Denhardt溶液、超音波処理されたサケ精子DNA(または別の非相補的DNA)および硫酸デキストランであるが、他の適切な薬剤もまた、使用され得る。これらの添加物の濃度および型は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに実質的に影響を与えることなく変更され得る。ハイブリダイゼーション実験は、通常、pH6.8〜7.4で実施されるが;代表的なイオン強度条件において、ハイブリダイゼーションの速度は、ほとんどpH独立である。Anderson et al.,Nucleic Acid Hybridization:a Practical Approach、第4章、IRL Press Limited(Oxford,England)を参照のこと。
DNA二重鎖の安定性に影響を与える因子としては、塩基の組成、長さおよび塩基対不一致の程度が挙げられる。ハイブリダイゼーション条件は、当業者によって調整され得、これらの変数を適用させ、そして異なる配列関連性のDNAがハイブリッドを形成するのを可能にする。完全に一致したDNA二重鎖の融解温度は、以下の式によって概算され得る。
(℃)=81.5+16.6(log[Na+])+0.41(%G+C)−600/N-0.72(%ホルムアミド)
ここで、Nは、形成される二重鎖の長さであり、[Na]は、ハイブリダイゼーション溶液または洗浄溶液中のナトリウムイオンのモル濃度であり、%G+Cは、ハイブリッド中の(グアニン+シトシン)塩基のパーセンテージである。不完全に一致したハイブリッドに関して、融解温度は、各1%不一致(ミスマッチ)に対して約1℃ずつ減少する。
本明細書において「中程度にストリンジェントな条件」とは、「高度にストリンジェントな条件」下で生じ得るよりも高い程度の塩基対不一致を有するDNA二重鎖が、形成し得る条件をいう。代表的な「中程度にストリンジェントな条件」の例は、0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、50〜65℃、または0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、および20%ホルムアミド、37〜50℃である。例として、0.015M ナトリウムイオン中、50℃の「中程度にストリンジェントな」条件は、約21%の不一致を許容する。
本明細書において「高度」にストリンジェントな条件と「中程度」にストリンジェントな条件との間に完全な区別は存在しないことがあり得ることが、当業者によって理解される。例えば、0.015M ナトリウムイオン(ホルムアミドなし)において、完全に一致した長いDNAの融解温度は、約71℃である。65℃(同じイオン強度)での洗浄において、これは、約6%不一致を許容にする。より離れた関連する配列を捕獲するために、当業者は、単に温度を低下させ得るか、またはイオン強度を上昇し得る。
約20ヌクレオチドまでのオリゴヌクレオチドプローブについて、1M NaClにおける融解温度の適切な概算は、
Tm=(1つのA−T塩基につき2℃)+(1つのG−C塩基対につき4℃)
によって提供される。なお、6×クエン酸ナトリウム塩(SSC)におけるナトリウムイオン濃度は、1Mである(Suggsら、Developmental Biology Using Purified Genes、683頁、BrownおよびFox(編)(1981)を参照のこと)。
本明細書において「相同性」は、2以上の配列の比較において、それらの配列が進化的に祖先を共有することを示す。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較により類似性に基づいた判定をおこなうか、またはストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。配列の直接の比較により類似性に基づいた判定をおこなう場合、その類似性測定過程のアライメントにおける最も単純な解釈として、同一な(もしくは等価である)文字列(塩基、アミノ酸残基など)で並置されている文字列が、これらの領域が祖先配列のまま変化しなかったものであることを示し、同一でない(もしくは、等価でない)文字列が、突然変異が一方の配列で起こったものであるとの考察が可能である。アライメントにおけるギャップ(インデル)は、配列の一方で、挿入または欠失が起こったものであると考えられる。つまり、それらの配列の同一性または類似性は高いことは、それらの配列における相同性を強く示唆することが理解される。相同性は、サイレンシング抑制因子等の設計において参照される。相同性があるもの(改変体)は本明細書において「ホモログ(相同体)」という。
本明細書において「因子」(agent)としては、意図する目的を達成することができる限りどのような物質または他の要素(例えば、光、放射能、熱、電気などのエネルギー)でもあってもよく、場合により「剤」ともいう。そのような意図する目的としては、例えば、サイレンシング抑制等を挙げることができる。そのような物質としては、例えば、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAあるいはゲノムRNAのようなRNAを含む)のほか、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)などでもあり得、これらの複合分子も挙げられるがそれらに限定されない。ポリヌクレオチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリヌクレオチドの配列に対して一定の配列相同性(例えば、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約98%以上、約99%以上等の配列同一性)をもって相補性を有するポリヌクレオチド、プロモーター領域等転写に関連する領域に結合する転写因子のようなポリペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「複合分子」とは、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、脂質、糖、低分子などの分子が複数種連結してできた分子をいう。そのような複合分子としては、例えば、RNAとDNAとの複合分子、糖脂質、糖ペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。本発明において、目的とする生物学的な活性、例えば、サイレンシング抑制活性を有する限り、それぞれの改変体もしくはフラグメントなどをコードする核酸分子も使用することができる。また、そのような核酸分子を含む複合分子も使用することができる。
本明細書において「単離された」生物学的因子(例えば、細胞、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子が天然に存在する生物体の細胞内の他の生物学的因子(例えば、核酸である場合、核酸以外の因子および目的とする核酸以外の核酸配列を含む核酸;タンパク質である場合、タンパク質以外の因子および目的とするタンパク質以外のアミノ酸配列を含むタンパク質など)から実質的に分離または精製されたものをいう。「単離された」核酸およびタンパク質には、標準的な精製方法によって精製された核酸およびタンパク質が含まれる。したがって、単離された核酸およびタンパク質は、化学的に合成した核酸およびタンパク質を包含する。
本明細書において「精製された」生物学的因子(例えば、細胞、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子に天然に随伴する因子の少なくとも一部が除去されたものをいう。したがって、通常、精製された生物学的因子におけるその生物学的因子の純度は、その生物学的因子が通常存在する状態よりも高い(すなわち濃縮されている)。
本明細書中で使用される用語「精製された」および「単離された」は、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95重量%、そしてなおさらにより好ましくは少なくとも98重量%の、同型の生物学的因子が存在することを意味し、その対象物を天然物から区別するために用いられる。
本明細書で使用される「ベクター」、「組み換えベクター」、「遺伝子導入ベクター」および「遺伝子ベクター」は互換可能に使用され、「ベクター」、「組み換えベクター」、「遺伝子導入ベクター」および「遺伝子ベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入(導入ともいう)させることができるベクターをいう。そのようなベクターとしては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体および植物個体などの宿主細胞において自立複製が可能であるか、または染色体中への組込みが可能で、本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。ベクターのうち、クローニングに適したベクターを「クローニングベクター」という。そのようなクローニングベクターは通常、制限酵素部位を複数含むマルチプルクローニング部位を含む。そのような制限酵素部位およびマルチプルクローニング部位は、当該分野において周知であり、当業者は、目的に合わせて適宜選択して使用することができる。そのような技術は、本明細書に記載される文献(例えば、Sambrookら、前出)に記載されている。好ましいベクターとしては、プラスミド、ファージ、コスミド、エピソーム、ウイルス粒子またはウイルスおよび導入または組み込み可能なDNAフラグメント(すなわち、相同組換えによって宿主ゲノム中に導入または組み込み可能なフラグメント)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、「ベクター」、「組み換えベクター」、「遺伝子導入ベクター」および「遺伝子ベクター」としては、バイナリーベクター、アグロバクテリウムベースのベクター、プラスミドベクターなどが挙げられるが、これらに限定されない。
ベクターの1つの型は、「プラスミド」であり、これは、さらなるDNAセグメントが連結され得る環状二重鎖DNAループをいう。別の型のベクターは、ウイルスベクターであり、ここで、さらなるDNAセグメントは、ウイルスゲノム中に連結され得る。特定のベクター(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)は、これらが導入される宿主細胞中で自律的に複製し得る。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞中への導入の際に宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、それにより、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターは、これらが作動可能に連結される遺伝子の発現を指向し得る。このようなベクターは、本明細書中で、「発現ベクター」といわれる。従って、本明細書において「発現ベクター」または「発現プラスミド」とは、構造遺伝子およびその発現を調節するプロモーターに加えて種々の調節エレメントが宿主の細胞中で作動し得る状態で連結されている核酸配列をいう。調節エレメントは、好ましくは、ターミネーター、薬剤耐性遺伝子のような選択マーカーおよび、エンハンサーを含み得る。生物(例えば、植物)の発現ベクターのタイプおよび使用される調節エレメントの種類が、宿主細胞に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。本明細書において「植物発現ベクター」は、植物において発現を駆動するベクターをいい、本発明の遺伝子の発現を調節するプロモーターなどの種々の制御配列が宿主植物の細胞中で作動可能に連結されている核酸配列をいう。本願明細書で用いる用語「制御配列」は、機能的プロモーターおよび、任意の関連する転写要素(例えば、エンハンサー、CCAATボックス、TATAボックス、SPI部位など)を有するDNA配列をいう。
植物発現ベクターは、好ましくは、植物遺伝子、プロモーター、ターミネーター、薬剤耐性遺伝子およびエンハンサーを含み得る。発現ベクターのタイプおよび使用される調節エレメントの種類が、宿主細胞に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。本発明に用いる植物発現ベクターは、さらにT−DNA領域を有し得る。T−DNA領域は、特にアグロバクテリウムを用いて植物を形質転換する場合に遺伝子の導入の効率を高める。上記のような植物発現ベクターは、当業者に周知の遺伝子組換え技術を用いて作製され得る。作動可能に連結させるためには、目的とする機能(遺伝子発現、サイレンシング抑制)が発揮される限り、どのような位置関係、距離であってもよいことが理解される。距離については、例えば、配列番号1の配列でFWAの系で行う場合、サイレンシング抑制因子の位置は、転写開始点の5’上流側の1.0kb〜1.2kbが代表例として挙げられるがそれに限定されない。また、例示的な例を挙げると、FWA転写開始点をまたいで存在する約450bpのダイレクトリピート配列の存在が、FWAのサイレンシングを生じさせるには必要十分である、ということが判っており(Chan et al., PLoS Biol. 4(11):e363. (2006))、このような情報を用いて、適宜作動可能な連結の配置を調整することができる。
本明細書において用いられ得る植物細胞に対する「組み換えベクター」としては、Jefferson et al. (Jefferson,R.A., Burgess,S.M. and Hirsh,D. (1986)Proc. Natl. Acad. Sci. USA,83, 8447-8451; Jefferson,R.A., Klass,M., Wolf,N. andHirsh,D. (1987) J. Mol. Biol., 193, 41-46. and The EMBO Journal vol.6 no. 13pp.3901 -3907, 1987)のpBI121を基にしたバイナリーベクター、pBE2113(例えば、pBE2113-GUS), pBE7133、pE2113,pE7133 (Mitsuhara et al., Plant CellPhysiol. 37(1): 49-59 (1996)),pEl2Omega(pEl2Ω) (Ohtsubo et al., Plant Cell Physiol. 40(8): 808-817(1999)), pMLH7133 (Mochizuki et al., Entomologia Experimentalis et Applicata93: 173-178, 1999.)(これらは、改変35Sプロモーターを用いて目的の遺伝子を駆動するようにされている。)、pMLH2113-GUSにASRを挿入したもの、pTNシリーズ(例えば、pTN1,2 (Fukuoka et al., Plant Cell Reports (2000), 19:815-820))等の空ベクターにASRを挿入して、自前の発現カセット(プロモーター+目的の遺伝子)を挿入したもの、pANDA(奈良先端大学院大学島本教授より分譲、MikiD, Itoh R, and Shimamoto K (2005), Plant Physiol. 138: 1903-1913)、pBE7133-GUS-Hygro(pE7ΩIGUS-Hygro)、pPZP2H-lacを挙げることができるがそれらに限定されない。
本明細書において「作動可能に連結」(operably linked)とは、遺伝子が発現し得るように、それに関するポリヌクレオチドと、その発現を調節するプロモーター、エンハンサー等の種々の調節エレメントとが宿主細胞中で作動し得る状態で連結されることをいい、プロモーター等の転写翻訳調節配列または翻訳調節配列についていう場合、所望の配列の発現(作動)がその転写翻訳調節配列または翻訳調節配列の制御下に配置されることをいう。プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配置されるが、必ずしも隣接して配置される必要はなく、必ずしも上流でなくてもよい。したがって、本明細書において「作動可能に連結」はまた、導入(されるべき)遺伝子についていう場合、適切な条件下(例えば、プロモーター、エンハンサー等の調節配列が機能する条件下)で、その遺伝子の転写または発現が実現するように配置されることをいう。通常、プロモーターとの関係では、導入(されるべき)遺伝子の遺伝子コード領域はその下流に配置されるが、必ずしも隣接して配置される必要はなく、必ずしも下流でなくてもよい。距離は向き・位置が効果の有無に影響するとは想定されておらず、例えば、10kb程度離れていても、逆向きでも、プロモーターの上流でも下流でも、抑制効果を示すと期待される。例えば、ベクター中にサイレンシング抑制因子が存在することによって、導入されるべき遺伝子の発現に対するサイレンシングが抑制されるような態様もまた、この作動可能な連結の状態に含まれる。また、作動可能に連結は、サイレンシングの作用を妨害しないということでもある。
本明細書において「プロモーター」とは、遺伝子の転写の開始部位を決定し、またその頻度を直接的に調節するDNA上の領域をいい、RNAポリメラーゼが結合して転写を始める塩基配列である。推定プロモーター領域は、構造遺伝子ごとに変動するが、通常構造遺伝子の上流にあるが、これらに限定されず、構造遺伝子の下流にもあり得る。本発明では、プロモーターは単数使用されても良く、複数のプロモーターが使用されても良い。複数のプロモーターが使用される場合、同じベクターに含まれていても良い。プロモーターは、誘導性であっても、構成的であっても、部位特異的であっても、時期特異的であってもよいが、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターが好ましい。プロモーターとしては、例えば、目的とする植物の宿主細胞中で発現できるものであればいかなるものでもよい。本明細書において、遺伝子の発現について用いられる場合、一般に、「部位特異性」とは、植物の部位におけるその遺伝子の発現の特異性をいう。「時期特異性」とは、植物の発達段階に応じたその遺伝子の発現の特異性をいう。そのような特異性は、適切なプロモーターを選択することによって、所望の生物に導入することができる。部位特異的調節エレメントを使用して核酸を発現することによって、組換え植物発現ベクターでは、特定の細胞型において核酸の発現を優先的に指向し得る。部位特異的調節エレメントは、当該分野で公知である。本明細書において、「部位特異的発現プロモーター」とは、器官(例えば、根、茎、葉、果実、種子ならびにそれらの組合せなど)、組織(例えば、表皮、篩部、柔組織、木部、維管束、ならびにそれらの組合せなど)、発達段階(例えば、発芽期、生長期、開花期、登期ならびにそれらの組み合わせなど)などにおいて、特異的なプロモーターである。原理的には、個体において特異的に発現している遺伝子を単離し、そのプロモーター、発現制御シス領域を単離することによって得られる。本明細書において、プロモーターの発現が「構成的」であるとは、生物のすべての組織において、その生物の成長/増殖のいずれにあってもほぼ一定の量で発現される性質をいう。本明細書において「植物プロモーター」は、植物で発現するプロモーターを意味する。再生植物のすべての組織において、本発明のポリヌクレオチドの発現を指向させる植物プロモーターフラグメントを採用し得る。構成的に発現させるためのプロモーターとしては、例えば、ノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター(Langridge,1985,Plant Cell Rep.4,355)、カリフラワーモザイクウイルス19S−RNAを生じるプロモーター(Guilley,1982,Cell 30,763)、カリフラワーモザイクウイルス35S−RNAを生じるプロモーター(Odell,1985,Nature 313,810)、イネのアクチンプロモーター(Zhang,1991,Plant Cell 3,1155)、トウモロコシユビキチンプロモーター(Cornejo 1993,Plant Mol.Biol.23,567)、REXφプロモ−タ−(Mitsuhara,1996,Plant Cell Physiol.37,49)などを用いることができる。あるいは、植物プロモーターは、特定組織において本発明のポリヌクレオチドの発現を指向させ得るか、またはそうでなければ、より特異的な環境または発達の制御下にあり得る。このようなプロモーターは、本明細書では、「誘導可能な」プロモーターと称する。誘導可能なプロモーターとしては、例えば、光、低温、高温、乾燥、紫外線の照射、特定の化合物の散布などの外因によって発現することが知られているプロモーターなどが挙げられる。この様なプロモーターとしては、例えば、光照射によって発現するリブロース−1,5−2リン酸カルボキシラーゼ小サブユニットをコードする遺伝子のプロモーター(Fluhr,1986,Pro.Natl.Acad.Sci.USA 83,2358)、低温によって誘導されるイネのlip19遺伝子のプロモーター(Aguan,1993,Mol.Gen.Genet.240,1)、高温によって誘導されるイネのhsp72、hsp80遺伝子のプロモーター(Van Breusegem,1994,Planta 193,57)、乾燥によって誘導されるシロイヌナズナのrab16遺伝子のプロモーター(Nundy,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87,1406)、紫外線の照射によって誘導されるトウモロコシのアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーター(Schulze-Lefert,1989,EMBO J.8,651)などが挙げられる。また、rab16遺伝子のプロモーターは植物ホルモンのアブシジン酸の散布によっても誘導される。本発明で用いられるプロモーターは、サイレンシング抑制機能が達成される限り、どのようなタイプのプロモーターであっても利用することができることが理解される。
本明細書において「ターミネーター」は、遺伝子のタンパク質をコードする領域の下流に位置し、DNAがmRNAに転写される際の転写の終結、およびポリA配列の付加に関与する配列である。ターミネーターは、mRNAの安定性に寄与し、そして遺伝子の発現量に影響を及ぼすことが知られている。ターミネーターの例としては、CaMV35Sターミネーター、およびノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター(Tnos)が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書において「エンハンサー」とは、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられる配列をいう。そのようなエンハンサーは当該分野において周知である。例えば、エンハンサーとして、CaMV35Sプロモーター内の上流側の配列を含むエンハンサー領域が用いられるが、これらに限定されない。エンハンサーは複数個用いられ得るが1個用いられてもよいし、用いなくともよい。
本発明のポリヌクレオチドは、そのままでまたは改変されて、当業者に周知の方法を用いて、適切な植物発現ベクターに連結され、公知の遺伝子組換え技術により、植物細胞に導入され得る。導入された遺伝子は、植物細胞中のDNAに導入されまたは組み込まれて存在する。なお、植物細胞中のDNAとは、染色体のみならず、植物細胞中に含まれる各種オルガネラ(例えば、ミトコンドリア、葉緑体など)に含まれるDNAを含む。
本明細書において「薬剤耐性遺伝子」は、形質転換植物の選抜を容易にするものであることが望ましい。カナマイシン耐性を付与するためのネオマイシンフォスフォトランスフェラーゼII(NPTII)遺伝子、およびハイグロマイシン耐性を付与するためのハイグロマイシンフォスフォトランスフェラーゼ遺伝子(HPT)などが好適に用いられ得るが、これらに限定されない。これらの薬剤耐性遺伝子は、本発明においてスクリーニング技術などにおいて用いられる。特に、本発明の高頻度にサイレンシングが起きる系において用いられる場合は、サイレンシングが起きると薬剤耐性が付与されず、発生しなくなるように系を構築することができる。
本明細書において遺伝子の「導入」または「遺伝子導入」とは、生体内またはインビトロにおいて、標的細胞内に、天然、合成または組換えの所望の遺伝子または遺伝子断片を、導入された遺伝子がその機能を維持するように、導入することをいう。本発明において導入される遺伝子または遺伝子断片は、特定の配列を有するDNA、RNAまたはこれらの合成アナログである核酸を包含する。また、本明細書において使用される場合、遺伝子導入、形質転換等は、互換可能に使用されうる。このように「導入」される遺伝子は、本明細書において「導入遺伝子」または「導入されるべき遺伝子」という。そのような導入遺伝子としては、有用物質(医薬、色素、芳香成分など)生産遺伝子、植物生長制御(促進/抑制)遺伝子、糖代謝関連遺伝子、耐病虫害性〔昆虫食害抵抗性、真菌(菌類)及び細菌病抵抗性、ウイルス(病)抵抗性など〕遺伝子、環境ストレス(低温、高温、乾燥、光障害、紫外線)抵抗性関連遺伝子、形態(形、大きさ、器官の数など)等が挙げられるが、これらに限定はされない。
本明細書において、核酸分子を細胞に導入する技術は、どのような技術でもよく、例えば、形質転換、形質導入、トランスフェクションなどが挙げられる。そのような核酸分子の導入技術は、当該分野において周知であり、かつ、慣用されるものであり、例えば、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley、New York、NY;Sambrook Jら(1987)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.およびその第三版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載される。遺伝子の導入は、ノーザンブロット、ウェスタンブロット分析のような本明細書に記載される方法または他の周知慣用技術を用いて確認することができる。ベクターの導入方法としては、細胞にDNAを導入する上述のような方法であればいずれも用いることができ、例えば、周知のアグロバクテリウム法のほか、トランスフェクション、形質導入、形質転換など(例えば、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法など)が挙げられる。
本明細書で使用される場合、「外来」の核酸分子または遺伝子などとは、ある対象核酸分子内に含まれるその対象核酸分子以外の起源の核酸分子または遺伝子などをいう。本発明のサイレンシング抑制の対象は、通常外来の核酸分子または遺伝子でありうる。外来の核酸分子は、ベクターによって導入された遺伝子が発現するために適切な調節配列(例えば、転写に必要なプロモーター、エンハンサー、ターミネーター、およびポリA付加シグナル、ならびに翻訳に必要なリボゾーム結合部位、開始コドン、終止コドンなど)と作動可能に連結される。ある実施形態では、外来遺伝子は、この外来遺伝子の発現のための調節配列を含まない場合もありうる。遺伝子導入ベクター内に含まれる外来の核酸分子は、代表的にはDNAまたはRNAの核酸分子であるが、導入される核酸分子は、目的(例えば、薬剤耐性、開花遅延)を果たす核酸アナログ分子を含んでもよい。遺伝子導入ベクター内に含まれる分子種は、単一の遺伝子分子種であっても、複数の異なる遺伝子分子種であってもよい。
本明細書で使用される場合、「遺伝子導入」について言及するとき、「活性」とは、ベクターによる「遺伝子導入」によって実現される任意の活性をいい、導入された遺伝子の機能(例えば、発現ベクターの場合、コードされるタンパク質の発現および/またはそのタンパク質の活性など)を指標として検出され得る。
DNA導入のための植物材料としては、導入法などに応じて、葉、茎、根、塊茎、プロトプラスト、カルス、花粉、種子胚、苗条原基などから適当なものを選択することができる。
また一般に、植物培養細胞へDNAを導入する場合、材料としてプロトプラストが用いられ、エレクトロポーレーション法、ポリエチレングリコール法などの物理・化学的方法によってDNAの導入が行われるのに対して、植物組織へDNAを導入する場合、材料としては葉、茎、根、塊茎、カルス、花粉、種子胚、苗条原基など、好ましくは葉、茎、カルスが用いられ、ウイルスもしくはアグロバクテリウムを用いた生物学的方法、またはパーティクルガン法などの物理・化学的方法によってDNAの導入が行われる。アグロバクテリウムを介する方法としては、例えば、Nagelらの方法(Microbiol.Lett.,67,325(1990))が用いられ得る。この方法は、まず、植物発現ベクターで(例えば、エレクトロポレーションによって)アグロバクテリウムを形質転換し、次いで、形質転換されたアグロバクテリウムをリーフディスク法などの周知の方法により植物組織に導入する方法である。これらの方法は、当該分野において周知であり、形質転換する植物に適した方法が、当業者により適宜選択され得る。植物発現ベクターを導入された細胞は、例えば、カナマイシン耐性などの薬剤耐性を基準として選択される。選択された細胞は、常法により植物体に再生され得る。
本発明のポリヌクレオチドが導入された植物細胞から植物を再生させるには、タバコ、イネなどの外植片ないしカルスにアグロバクテリウムを感染させる方法で形質転換させる場合、例えば、必要に応じて、このような植物細胞を、シュート形成培地上で芽を再分化させた後、ホルモンフリーのMS培地などで培養して発根させればよい。発根した幼植物体は、土壌に移植して栽培することにより植物体とすることができる(なお、シロイヌナズナにin planta法で形質転換する場合、花の中での次世代植物の受精と並行して形質転換が行われるので、再分化のステップは不要である)。再生(再分化)の方法は植物細胞の種類により異なる。様々な文献にイネ(Fujimura,1995,Plant Tissue CultureLett.2,74)、トウモロコシ(Shillito,1989,Bio/Technol.7,581、Gorden-Kamm,1990,Plant Cell 2,603)、ジャガイモ(Visser,1989,Theor.Appl.Genet.78,594)、タバコ(Nagata,1971,Planta 99,12)など各種の植物に対しての再分化の方法が記載されている。
再生した植物体においては、当業者に周知の手法を用いて、導入された本発明の遺伝子の発現を確認し得る。この確認は、例えば、ノーザンブロット解析を用いて行い得る。具体的には、植物の葉から全RNAを抽出し、変性アガロースでの電気泳動の後、適切なメンブランにブロットする。このブロットに、導入遺伝子の一部分と相補的な標識したRNAプローブをハイブリダイズさせることにより、本発明の遺伝子のmRNAを検出し得る。本発明のポリヌクレオチドを用いて形質転換され得る植物は、遺伝子導入の可能ないずれの植物をも包含する。
本明細書において遺伝子発現(たとえば、mRNA発現、ポリペプチド発現)の「検出」または「定量」は、例えば、mRNAの測定および免疫学的測定方法を含む適切な方法を用いて達成され得る。分子生物学的測定方法としては、例えば、ノーザンブロット法、ドットブロット法またはPCR法などが例示される。免疫学的測定方法としては、マイクロタイタープレートを用いるELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などが例示される。また、定量方法としては、ELISA法またはRIA法などが例示される。アレイ(例えば、DNAアレイ、プロテインアレイ)を用いた遺伝子解析方法によっても行われ得る。DNAアレイについては、文献(例えば、秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」)に広く概説されている。プロテインアレイについては、Nat Genet.2002 Dec;32 Suppl:526-32に詳述されている。遺伝子発現の分析法としては、上述に加えて、RT−PCR、RACE法、SSCP法、免疫沈降法、two−hybridシステム、インビトロ翻訳などが挙げられるがそれらに限定されない。そのようなさらなる分析方法は、例えば、ゲノム解析実験法・中村祐輔ラボ・マニュアル、編集・中村祐輔 羊土社(2002)などに記載されており、本明細書においてそれらの記載はすべて参考として援用される。
本明細書において「細胞」とは、当該分野で使用されるのと同様の意味で用いられ、植物について用いられる場合、植物の任意の細胞を意味する。本明細書では植物細胞は、任意の植物細胞であり得る。植物細胞の例としては、葉および根などの植物器官の細胞、カルスならびに懸濁培養細胞が挙げられる。植物細胞は、培養細胞、培養組織、培養器官、または植物体のいずれの形態であってもよい。好ましくは、培養細胞、培養組織、または培養器官であり、より好ましくは培養細胞である。
本明細書において「植物」とは、当該分野で使用されるのと同様の意味で用いられ、サイレンシングが起きる可能性のある任意の植物を意味する。
本明細書において「組織」とは、当該分野で使用されるのと同様の意味で用いられ、形態、機能の面で同じ細胞の集まりを意味する。
本明細書において「器官」とは、当該分野で使用されるのと同様の意味で用いられ、生体の分化した構造物であり、種々の細胞および/または組織からなる特別な機能に適応しているものをいう。
本明細書において「植物体」とは、当該分野で使用されるのと同様の意味で用いられ、農林水産植物の個体をいう。通常、植物体は、複数の器官から構成されているが、単数の器官で構成されていてもよい。特に区別しない場合は、文脈によって「植物体」は「植物」と称することもある。また、植物体には、広義には種子が包含されうる。
本明細書において「種子」とは、当該分野で使用されるのと同様の意味で用いられ、発芽して新しい植物体を形成する胚を含む受精胚珠をいう。
本明細書において「形質転換体」とは、形質転換によって作製された細胞などの生命体の全部または一部をいう。形質転換体は、その対象に依存して、形質転換細胞、形質転換組織、形質転換宿主などともいわれる。本発明において用いられる細胞または植物は、形質転換体であってもよい。なお、本明細書では、形質転換体に再度別の組換えDNAを導入する形質転換を「スーパー形質転換」という。また、スーパー形質転換により得られた個体を「スーパー形質転換体」という。
本明細書において「加工品」とは、本発明の細胞、植物組織、植物器官、植物体、種子から何らかの加工を経て得られる任意の生成物をいう。そのような加工品としては、例えば、食品、医薬品などを挙げることができるが、それらに限定されない。これらの加工品は、目的とするサイレンシング抑制機能が達成されて得られたものであることから、本発明の生物学的機能に密接に関連する物(product)であるということができる。
本明細書において「サイレンシング」または「ジーンサイレンシング」とは、遺伝子発現の抑制現象を意味する。「サイレンシング」と呼ばれる現象としては、ゲノムインプリンティング、X染色体の不活性化、PEV(position effect variegation)、トウモロコシ等で見られるパラミューテション、転写型遺伝子不活性化(TGS)、転写後型ジーンサイレンシング(PTGS)などが挙げられる。このように、理論に束縛されることを望まないが、サイレンシングは、植物に遺伝子(プロモーター+コード領域+転写終結シグナル)を形質転換(transformation)しても、発現すべきタンパク質が発現しない、あるいは、はじめは発現していたのに後で発現しなくなる現象ということができるところ、サイレンシングにはいくつかのメカニズムがあると考えられる。サイレンシングは、例えば、“形質転換によって植物に導入する遺伝子の塩基配列”に対して、相同性を有する配列に生ずるサイレンシング、すなわち、相同性依存型ジーンサイレンシング(Homology−dependent gene silencing;HDGS)と、“形質転換によって植物に導入する遺伝子の塩基配列”に依存しないサイレンシング、の2つに分類することができる。また、サイレンシングを、メカニズムの異なる観点から分類すれば、転写が抑制されている結果、タンパク質ができない、すなわち、transcriptional gene silencing (TGS)と、転写はされるが、転写産物(mRNA)が分解されることにより、タンパク質ができない(post−transcriptional gene silencing, PTGS)の2つに分類する事が出来る。前記した2通りの分類の関係を整理すれば、次の通りである;(1)「HDGS」と(2)「HDGSでないサイレンシング」;そして(1)は、さらに、(1)(a)「TGS」と(1)(b)「PTGS」に分けられる。また、(2)“HDGSでないサイレンシング”は“転写が抑制されている結果、タンパク質ができないサイレンシング”であることが知られているため、(2)「HDGSでないサイレンシング」は、本明細書にいうcis−TGSのカテゴリーに分類され、他方で(1)(a)狭義の「TGS」は、本明細書にいうtrans−TGSのカテゴリーに分類される。このうち、cis−TGSを抑制する配列は色々知られている(バリヤーインスレーター等)。本発明は、特に、trans−TGSを抑制する配列をもスクリーニングすることができ、trans−TGSをも抑制する活性を有する配列を提供した点が従来では見出すことができなかった点の一つであるといえる。植物における導入遺伝子の不活性化の一つとして、相同性依存型ジーンサイレンシング(Homology−dependent gene silencing;HDGS)があり、そのHDGS様の現象は、植物内在性遺伝子、植物以外のトランスジェニックにおいても見られており、生物が本来有する遺伝子制御機構であると考えられる。「相同性依存型ジーンサイレンシング」または「HDGS」は、複数の遺伝子が、その塩基配列の相同性またはその配列の類似性に依存して起こる遺伝子発現の抑制現象をいう。特に、特定の導入された遺伝子(導入遺伝子)を過剰発現させると、その導入遺伝子とともに本来ゲノムに存在していた(すなわち、内在的な)同一または相同な遺伝子が抑制される現象をいう。「HDGS」としては、遺伝子コード領域のホモロジーによって起こるものとして「PTGS」が挙げられるが、その他にプロモーター間のホモロジーに依存して転写型ジーンサイレンシング(TGS)が起こる例もある。
本明細書において「転写型遺伝子不活性化(TGS)」とは、サイレンシングの一種であり、転写段階で導入した遺伝子が不活性化されることをいう。この不活性化の原因としては、主にプロモーター領域がメチル化されることが原因とされているが、必ずしもメチル化の有無とサイレンシングが相関しない例も報告されており、その詳細な機構は不明である。
本明細書において「シス(cis)−転写型遺伝子不活性化(TGS)」とは、転写型遺伝子不活性化(TGS)の一種であり、同一染色体上の近傍からの影響による不活性化をいう。したがって、cis−TGSでは、(不活性化因子が)該当する遺伝子の近傍になければ転写が制御されない。
本明細書において「トランス(trans)−転写型遺伝子不活性化(TGS)」とは、転写型遺伝子不活性化(TGS)の一種であり、cis−TGS以外の任意のTGSをいう。したがって、本明細書では、トランスとの用語は、そのゲノムのどこにでもという意味を包含しうる。代表的には、trans−TGSは、異なった染色体間の不活性化、あるいは同一染色体領域間であれば、塩基配列相同性に基づく不活性化を含む。したがって、また、trans−TGSは、相同性依存型ジーンサイレンシングの一形態としても理解されうる。すなわち、trans−TGSには、ある特定の配列あるいはこれと高い相同性を有する配列を有するプロモーターからの転写のみが特異的にサイレンシングされる形態が含まれる。trans−TGSは、制御すべき遺伝子のそばに存在することも有りうるが、そばになくても別の染色体に有っても機能しうる。1つの実施形態では、trans−TGSは、プロモーターの塩基配列あるいはその相同性に依存する点で、「シス(cis)−転写型遺伝子不活性化(TGS)」と区別される。cis−TGSは、プロモーターの塩基配列又はその相同性には依存せず、プロモーターが存在する染色体上の位置に依存するからである。
本明細書において使用しうる別の例示的な手法としては、trans−TGSがプロモーター配列特異的なものである場合、サイレンシング抑制が、プロモータあるいは転写物の配列に特異的か否かによって「峻別」する方法を利用することができる。trans−TGSがプロモータ配列特異的であれば、その抑制もプロモーター配列特異的に見られるはずであり、他方、cis−TGSはプロモーター・転写産物(mRNA)の配列にかかわらず起こることから、それに対する抑制もプロモーター・転写産物の配列に依存せずに観察されることになる。加えて、PTGSは、転写産物の配列特異的であり、プロモーター配列には依存しないことから、trans−TGSとは区別できる。さらには、trans−TGSに対する抑制とPTGSに対する抑制とは、候補配列があった場合とない場合とで、転写物の転写効率(転写物の存在量ではない)をrun−onアッセイ(核run−off転写アッセイ(nuclear run−on transcription assay)ともいう。)で比較することによっても区別することができる。
本明細書において、1つの例示的な手法では、互いに相同性の低いプロモーターP1およびP2のいずれかと、互いに相同性の低い構造遺伝子C1およびC2のいずれかとの4つの組み合わせを有する発現ベクターのそれぞれに候補配列Xをつけた場合とつけない場合の8通りを形質転換することにより、Xがcis−TGSを抑制しているのか、あるいは、trans−TGSを抑制しているのか、あるいは、PTGSを抑制しているのかを実験的に区別することができる。この場合、前提となるのは、形質転換された細胞において、P1あるいはP2特異的なtrans−TGSが働いていることが必要で、もし、それがない場合は、Xがtrans−TGSを抑制する活性を有していた場合であっても、見かけ上何の効果も見えないことになる。例示的な手法例としては、例えば以下がある。まずP1::C1、P1::C2、P2::C1、P2::C2の4つの組み合わせの融合遺伝子を作成し、それぞれを植物に導入する。P1::C1、P1::C2の組み合わせでサイレンシングが起こり、ほかでは起きなかった場合、P1配列に依存したサイレンシング(HDGS)が起きたことになる。プロモーターP配列に依存したサイレンシングが起きていることからこれはtrans−TGSとみなすことができる。一方、P1::C1、P2::C1でサイレンシングが起き、ほかの組み合わせで起きなかった場合は、C1配列に依存したサイレンシング(HDGS)が起きたことになる。転写される領域(構造遺伝子)に依存したサイレンシングが起きていることから、これはPTGSによるものであることが分かる。いずれの組み合わせに関しても同様にサイレンシングが起きる場合、cis−TGSが起きやすい系であると考えられる。なお、この場合、P1、C1などに対するサイレンシングがすでに起こっていることを前提に記載しているが、そうでない場合は、P1プロモーターに無関係の構造遺伝子C3をつなげた融合遺伝子を多重導入したり、無関係のプロモーターP3でC1構造遺伝子を過剰発現させたりすることなどによっても、それぞれに対するtrans−TGSやPTGSを誘発させることができる。
本明細書において、cis−TGSとtrans−TGSとを峻別する方法は種々存在するが、例えば、遺伝的に別の染色体に有っても影響するかどうかを調べ、効果があればtrans−TGSであると判断することが想定される。例えば、交配によってヘテロにした時にサイレンシングの原因領域がない染色体でも起こるないしは、再々形質転換を行い導入した遺伝子にも起こればトランスであると判断することができる。
サイレンシング抑制が、プロモータあるいは転写物の配列に特異的か否かによって「峻別」する方法を利用することができる。trans−TGSがプロモータ配列特異的であれば、その抑制もプロモーター配列特異的に見られるはずであり、他方、cis−TGSはプロモーター・転写産物(mRNA)の配列にかかわらず起こることから、それに対する抑制もプロモーター・転写産物の配列に依存せずに観察されることになる。加えて、PTGSは、転写産物の配列特異的であり、プロモーター配列には依存しないことから、trans−TGSとは区別できる。さらには、trans−TGSに対する抑制とPTGSに対する抑制とは、候補配列があった場合とない場合とで、転写物の転写効率(転写物の存在量ではない)をrun−onアッセイで比較することによっても区別することができる。
本明細書において、1つの例示的な手法では、互いに相同性の低いプロモーターP1およびP2のいずれかと、互いに相同性の低い転写産物(構造遺伝子)C1およびC2のいずれかとの4つの組み合わせを有する発現ベクターのそれぞれに候補配列Xをつけた場合とつけない場合の8とおりを形質転換することにより、Xがcis−TGSを抑制しているのか、あるいは、trans−TGSを抑制しているのか、あるいは、PTGSを抑制しているのかを実験的に区別することができる。例えば、TGSとPTGSを区別しようとする場合、PTGSか否かを知るためにrun−onアッセイをし、転写活性が高ければPTGS、顕著に低ければTGSと判断しうる。また、サイレンシングされている遺伝子のプロモータ領域のメチル化状態を調べ、プロモータがメチル化されていればTGSと判断しうる。あるいは、脱メチル化剤(例えば、アザシチジンなど)の処理で、サイレンシングが解除されるかどうかを調べ、PTGSは、同処理でもサイレンシングが解除されないことで判断しうる。
本明細書中において「転写後型ジーンサイレンシング」または「PTGS」は、転写後に起こる遺伝子発現の抑制現象をいう。RNAiによる発現抑制もPTGSの一種である。
本明細書において「サイレンシング抑制」とは、ある因子(例えば、核酸配列、核酸分子等)について言及するとき、サイレンシングを抑制することをいう。
本明細書において「転写型遺伝子不活性化(TGS)抑制」とは、サイレンシング抑制の一種であり、導入した遺伝子が転写段階で不活性化することを抑制する(すなわち、サイレンシングによる不活性化が減少するかまたはなくなる)ことをいう。本明細書において「転写型遺伝子不活性化(TGS)抑制活性」とは、ある因子(例えば、核酸配列、核酸分子)についていうとき、その因子が有する、転写型遺伝子不活性化(TGS)を抑制する活性ことをいう。
本明細書において「サイレンシング抑制因子」とは、サイレンシング抑制活性を有する因子をいう。因子としては、例えば、核酸分子、その複合体等を挙げることができるがそれらに限定されない。サイレンシング抑制因子が導入されているかどうかは、例えば、「サイレンシング抑制因子+プロモーター+導入遺伝子」と「プロモーター+導入遺伝子」とをそれぞれ形質転換した系を対比して、その導入遺伝子の発現のレベルを対比し、導入された遺伝子が、サイレンシング抑制因子が共存する場合により高率で発現されていることを確認することによって、サイレンシング抑制因子であることを確認することができる。サイレンシング抑制(因子)は、本明細書において、抗サイレンシング領域(ASR)と同義で用いられることもある。
本明細書において「高頻度」にサイレンシングが起こるとは、サイレンシング事象が頻繁に起きることをいう。「高頻度」は、本発明のスクリーニングの目的に関して通常、サイレンシングが50%以上の確率で起こることをいい、好ましくは、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.9%以上、99.99%以上などであり得る。なお、復帰変異体が生じる率をエスケープ率と称すると、100%−エスケープ率=サイレンシング率と算出することができる。サイレンシングの「高頻度」は、ある特定のプロモーターについての「高頻度」であってもよい。実際のスクリーニングでは、例えば、3000個の形質転換シュートが得られるはずの規模でライブラリーを導入して、30個のシュートが得られ、うち27個は復帰変異体であったとすると、結果的にTGS活性を失ったものを濃縮しているとどうかに拘わらず、通常の形質転換では3000個シュートが出てくるところを、27個の復帰変異体しか出てこなかった(3個はASR活性によって発現が確保された目的の形質転換シュート)と考えることができる。そうするとサイレンシングによって形質転換効率が99%以上抑制されたといえることになる。この例の場合、実施例等で使用したタバコ形質転換体M66−9の場合でのサイレンシング頻度(仮にX%)の算出手法を示す。
代表的な例として、通常であれば3000個体が得られる条件下(すなわち、サイレンシングが起きなければ3000個体が得られるはずの条件下)で、復帰変異体が27個体、および本発明のサイレンシング抑制因子が機能した結果発生した個体が3個体あったとすると、合計30個体が得られたと判断されうる。この例の場合、生ずるはずの3000個体の内訳は、(1)サイレンシングが起きなかったため、得られた27個体と、(2)サイレンシングが起きたために、生じてこなかった2970個体と、(3)そしてサイレンシングは起きている個体であるが、本発明のサイレンシング抑制因子が機能した結果、サイレンシングが抑制された(スクリーニングにおけるヒット(当たり)が3個体存在すると判断することになる。他方、実施例でも例示されるシロイヌナズナ(Arabitopsis)でのFWA遺伝子ゲノミッククローンのAgrobacteriumによる形質転換系」では、形質転換したFWA遺伝子ゲノミッククローンは必ずサイレンシングされる(Soppe et al., Mol Cell. 6:791−802 (2000); Cao and Jacobsen, Curr Biol. 12:1138−44 (2002); Chan et al., Science 303:1336 (2004)参照 )。従って、この場合のサイレンシング頻度は、100%と算出されることになる。
本明細書において「系」(system)とは、有機的な関連をもった部分の集まりであって、植物体などの、実験の一単位を形成する実体をいう。本発明において使用されうる系としては、サイレンシングの成否が生死を分けるような形質転換系(Promoter Inverted Repeat(IR)でプロモーター特異的配列の反転反復配列(inverted repeats)を強制発現などによってサイレンシング(TGS)を誘導することによって作出できる。)、サイレンシングの成否では生死を分けるものではないが表現形が異なる形質転換系などを挙げることができる。
本明細書において「高頻度でサイレンシングが起きる系」は、サイレンシング抑制因子のスクリーニングを可能ならしめる頻度でサイレンシングが生じる任意の系、例えば、植物体(例えば、天然の植物、形質転換体等)をいう。高頻度でサイレンシングが起きる系は、本明細書における記載をもとに、例えば、例示されるM66−9形質転換体(特許生物寄託センターへの受領番号:FERM AP−22156(M66−9)(受託番号:FERM P−22156;受領日2011年7月25日、受託日2011年9月15日)がCaMV 35Sプロモーター等のプロモーターからの転写に対するサイレンシング活性(ここでは、TGS活性)を有する旨の情報をもとに、当業者はこれと同様の系であって、プロモータAからの転写に対するTGSを高頻度に起こす系を選択するなど、プロモーター等を適宜置き換えながら作製することができることが理解される。
本明細書において「候補核酸」とは、スクリーニングを行う際にその標的となる核酸をいう。このような候補核酸の供与元としては、任意の遺伝子ライブラリー、あるいはゲノムライブラリー等を用いることができるが、これらに限定されない。
本明細書において、サイレンシングが抑制されるかどうかの「決定」(判定)は、本明細書の記載および当該分野において周知の技術を考慮して、任意の手段によって実現することができ、そのサイレンシングが標的とするプロモーターからの転写が正常に近いレベルで生じたかどうかを判定することによって行なうことができる。
本明細書において、候補核酸の「選択」は、サイレンシングを抑制する活性を有する核酸を選択することをいい、本明細書の記載および当該分野において周知の技術を考慮して、任意の手段によって実現することができる。
本明細書においてプロモーターの「制御下」とは、そのプロモーターの転写促進活性の制御が及ぶことをいう。
本明細書において「導入遺伝子の発現」とは、その導入遺伝子が導入された生物(細胞)内で、転写、翻訳等が生じ予定していた分子が生じ、場合によって予定していた機能が発揮されることをいう。形質転換は、狭義には、導入遺伝子が細胞内のゲノムに組み込まれることをいうところ、その状態のみでは、必ずしも意図した転写等が生じず、予定していた機能が発揮されないこともあることから、形質転換と発現とは厳密には異なるということになる。
本明細書において「導入遺伝子の発現」の「抑制」とは、サイレンシング等の導入遺伝子の発現の抑制環境がない場合に比べて、問題としている状況において発現が減少していることをいう。例えば、そのような抑制としては、抑制がない場合に比べて、50%、90%、99%、99.9%等の発現レベルの低下があることが挙げられる。
本明細書において、サイレンシングの頻度は、通常の条件に発生すべき個体数で、サイレンシングが生じる条件下でサイレンシングが生じた個体数を除した割合で示される。
本明細書において「通常の条件」とは、野生型の植物、または形質転換などで改変された植物体であっても導入しようとする組換えDNAに対してサイレンシングを起こす頻度が野生型と同等であると考えられる植物に、サイレンシングによる制御を受けることが常態ではない組換えDNAを導入する場合(条件)を言う。したがって、そのような条件は、サイレンシングを受けない条件をいうこともできる。そのような「通常の条件」は当業者には明らかであり、使用する系によって適宜決定することができる。例えば、タバコ、アラビドプシス等の場合は、以下を例示することができる。例えば、タバコにアグロバクテリウムを介したリーフディスク法を用いて35Sプロモーター::GUSおよびNosプロモーター::NPT2遺伝子を導入する場合、通常1外植片当たり1個以上のシュートが形成され、シュートから再分化した個体の半数以上がGUS活性を有する。(GUS活性を持たない個体は、(i)Km選抜が不十分で野生型植物が育ったエスケープ、(ii)遺伝子導入が不完全でNos::NPT2が導入されたが、GUSは入っていないもの、(iii)サイレンシングによるもの(さらにこの中にTGSだけでなくPTGSによるものが含まれる。また複数コピー導入されている個体は何らかのかたちでサイレンシングを起こしやすい。)。例えば、野生型のアラビドプシスの場合、野生型アラビドプシスに同様の35Sプロモーター::GUSおよびNos プロモーター::NPT2遺伝子を導入した場合も同様にKm抵抗性を示した個体の過半がGUS活性を示すが、FWAおよびNosプロモーター::NPT2遺伝子を導入した場合、FWAの発現の結果花芽形成が遅延する個体は原則として現れない。この場合、FWA発現個体数/GUS発現個体数、FWA発現個体数/軽質転換植物数、どちらを取っても発現率は0%、逆にサイレンシング率は100%とみなすことができる。例えば、サツマイモの場合、サツマイモに35Sプロモーター::GUSおよびNosプロモーター::NPT2遺伝子を導入する場合、薬剤耐性を有するカルスのうち80%ほどがGUS活性を示さないもしくは斑状のGUS染色パターンを示す。この系では、35S promoterのサイレンシングが高頻度で起きているとみなされ、その割合は80%程度であると考えられるというように、適宜条件を挙げることができる。
1つの実施形態では、通常の条件は、以下のようにして決定することができる。すなわち、本明細書において「適宜決定する」方法としては、例えば、実施例において例示されるM66−9の場合、35Sプロモーター特異的サイレンシング(実施例の場合trans−TGS)がかかっているため、35Sプロモーターでドライブされたハイグロマイシン耐性遺伝子を入れた場合と、例えば、アクチン遺伝子プロモーターで駆動されたハイグロマイシン耐性遺伝子を入れた場合とでは、ハイグロマイシン耐性の個体が出てくる率は、35Sプロモータの場合の方が低くなる。この比率(35Sプロモータの場合の出現頻度/アクチン遺伝子プロモーターの場合の出現頻度)をXとし、一方、プロモーターの強さによる違いを補正するために、上記ベクターを野生型タバコにそれぞれ入れた場合の出現頻度の比率(35Sプロモータの場合の出現頻度/アクチン遺伝子プロモーターの場合の出現頻度)をYとすれば、M66−9でサイレンシングが起こる率は、(1−X/Y)と見積もることができる。この場合、M66−9および野生型タバコに対する遺伝子の導入頻度およびそれぞれにおける2種のプロモーター活性の比が(サイレンシングが起こっていないとすれば)同一であるとの仮定して計算することができる。
あるいは、別の実施形態では、例えば、M66−9の場合、35SプロモーターでドライブされたベクターをM66−9と野生型(目的とするサイレンシング(trans−TGS)が働いていないと考えられる系統)にそれぞれ導入した場合に、出現するハイグロマイシン耐性個体の出現頻度の比を1から引いたものとして頻度を算出することができる。
以上から、例えば、M66−9の場合、通常の条件とは、野生型のタバコに35S::HPTを導入してハイグロマイシン抵抗性個体が得られる条件であり、サイレンシングが起きる条件:M66−9に35S::HPTを導入しても形質転換個体が得られる率がごく少ない条件であるということができる。例えば、FWAの場合、通常の条件とは、シロイヌナズナに35S::GUSなどを導入して普通にGUS+の個体が得られる条件をいい、サイレンシングが起こる条件とは、シロイヌナズナにFWAを導入して花芽分化が遅れる個体はごく少ない条件を言う。例えば、サツマイモの場合、通常の条件とは、35S以外のプロモーター可能ならば過去にサツマイモで機能することが確認されているプロモーター、そのようなものが知られていないとしたら、サツマイモ内在性のプロモーターやサツマイモに感染するアグロバクテリウムやDNAウイルスなどサツマイモで機能することが予測されるプロモーターで駆動される外来遺伝子(GUSなど)を導入してこれらが普通に機能する条件をいう。サイレンシングが起こる条件とは、サツマイモに35S::GUSを導入しても半分以上の個体でGUS−ないしは多型化(variegated)状態となる条件である。
本明細書において「サイレンシングが生じる条件」または「サイレンシングが生じうる条件」とは、サイレンシングが通常よりも高頻度で起きうる任意の条件をいう。
本明細書において「サイレンシングが生じる条件下でサイレンシングが生じなかった個体数」とは、生死の相違を含む表現形の相違の結果、サイレンシングが生じなかった場合に生じる発現形を有する個体の数をいう。
本明細書において「系の個体」が「発生しない」とは、スクリーニングに関して言及するとき、サイレンシングが生じる結果個体が発生しないような系の場合に、サイレンシングが実際に生じた結果個体が発生しないことをいう。
本明細書において「系の個体」が「発生する」とは、スクリーニングに関して言及するとき、サイレンシングが生じる結果個体が発生しないような系の場合に、サイレンシングが実際に生じない結果個体が発生することをいう。
本明細書において「系の表現形が異なる」とは、スクリーニングに関して言及するとき、サイレンシングが生じる結果個体の表現形が異なる系の場合に、サイレンシングが実際に生じた結果と生じていない結果とで異なる表現形の個体が発生することをいう。
本明細書において、「人工的にサイレンシングを生じさせた(もの)」とは、天然ではサイレンシングが生じていない系において、人工的な操作、例えば組換え等によるサイレンシングが生じるものを選抜等を行うことによって作製したものをいう。例えば、CaMV 35Sプロモーターを基本とする発現ベクターを導入した形質転換植物の中から、導入遺伝子がTGSによって不活性化されている系統を選抜し、さらにそれらの中から、再導入した35Sプロモーターが高頻度で不活性化されるサイレンシング活性を持っている1系統を選択することによって「人工的にサイレンシングを生じさせた(もの)」を作製することができる。
本明細書において、「天然にサイレンシングが起きる系」とは、天然で、サイレンシングが起きることが知られている系をいう。例えば、シロイヌナズナ内在性の遺伝子FWA (FLOWERING WAGENINGEN)(通常はTGSによって発現が抑制されており、さらに形質転換によって新たに導入した場合も高頻度で不活性化を受ける)を有する系などを挙げることができる。
本明細書において「キット」とは、スクリーニングの目的で使用される場合、スクリーニングに必要な成分等を備えたユニットをいう。キットは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分(例えば、高頻度でサイレンシングが起こる系等の植物体等の系、候補核酸、プロモーター、プロモーターを含む候補核酸を導入のベクターなど)が提供されるユニットをいう。混合されて提供されるべきでなく、使用直前に混合して使用することが好ましいような組成物の提供を目的とするときに、このキットの形態は好ましい。そのようなキットは、好ましくは、提供される部分(例えば、試薬をどのように処理すべきかを記載する指示書または説明書を備えていることが有利である。本明細書においてキットが試薬キットとして使用される場合、キットには、通常、酵素の使い方などを記載した指示書などが含まれる。
本明細書において「指示書」は、試薬の取り扱い、使用方法、調合方法、作製方法、収縮方法など、スクリーニング法を実施する人、農業技術者などのスクリーニングまたは形質転換等の遺伝子操作を行う人に対して記載したものである。この指示書は、本発明のスクリーニング法を実施する手順等を指示する文言が記載されている。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記されることが好ましい。指示書は、いわゆる添付文書(packageinsert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ(ウェブサイト)、PDF、電子メール)のような形態でも提供され得る。
本明細書において使用される場合、「スクリーニング」とは、目的とするある特定の性質をもつ物質(例えば、サイレンシング抑制因子)などを、特定の操作および/または評価方法で多数の候補から選抜することをいう。本発明では、所望の活性を有するスクリーニングによって得られた物質(例えば、サイレンシング抑制因子)またはその候補もまた、本発明の範囲内に包含されることが理解される。
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J.et al.(1989).Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience;Ausubel,F.M.(1989).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience;Innis,M.A.(1990).PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Ausubel,F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Ausubel,F.M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Ausubel,F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,and annual updates;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications:Protocols for Functional Genomics,Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
人工的に合成した遺伝子を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えば、Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRLPress;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac,IRL Press;Adams,R.L.et al.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman&Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(I996).Bioconjugate Techniques,Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
(好ましい実施形態)
本発明の好ましい実施形態を、以下に掲げる。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでない。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
(サイレンシング抑制因子、核酸分子、ベクター、細胞等)
1つの局面において、本発明は、配列番号1〜3のいずれか1つに示す配列またはその改変体もしくはホモログ、例えば、(a)配列番号1〜3のいずれか1つに示す配列;(b)配列番号1〜3のいずれか1つに示す配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列;(c)配列番号1〜3のいずれか1つに示す配列において、1もしくは数個の置換、付加および/もしくは欠失を有する配列;(d)配列番号1〜3のいずれか1つに示す配列に対して、高度のストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする配列;(e)(a)〜(d)の配列の一部を含む配列;および(f)(a)〜(e)の配列の相補配列;からなる群より選択される、ヌクレオチド配列を含む、核酸分子を提供する。これらの核酸分子は、生物学的機能を有することが好ましい。そのような生物学的機能としては、サイレンシング抑制機能等を挙げることができる。これらの配列の改変配列もまた本発明に包含されることが意図される。そのような改変配列は、保存的改変体であることが好ましくありうる。
配列番号1(ASR602)またはそれに類似する配列としては、ASL1〜ASL8(それぞれ、配列番号4〜11)等のretrotransposons of Ty1−copia familyのメンバー等を挙げることができる。そして、そのような類似配列としては、以下を挙げることができる。表では、左側にアクセッション番号(Accession)、右側には推定機能(Description)を記載している。ただし、従来技術では、いずれの配列についてもサイレンシング抑制機能は評価(実際に測定)されていない。これらの類似配列は、ASR602(配列番号1)に酷似している配列であり、サイレンシング抑制効果が高いと考えられる。そして、本発明は、これらの類似配列、およびこれらの配列に対応する他の生物における配列を含む核酸分子またはサイレンシング抑制因子も包含することが企図される。
配列番号2(ASR102)またはそれに類似する配列としては、以下を挙げることができる。表では、左側にアクセッション番号、右側には推定機能を記載している。ただし、従来技術では、いずれの配列についてもサイレンシング抑制機能は評価(実際に測定)されていない。そして、本発明は、これらの類似配列、およびこれらの配列に対応する他の生物における配列を含む核酸分子またはサイレンシング抑制因子も包含することが企図される。
配列番号3(ASR501)またはそれに類似する配列としては、以下を挙げることができる。表では、左側にアクセッション番号、右側には推定機能を記載している。ただし、従来技術では、いずれの配列についてもサイレンシング抑制機能は評価(実際に測定)されていない。そして、本発明は、これらの類似配列、およびこれらの配列に対応する他の生物における配列を含む核酸分子またはサイレンシング抑制因子も包含することが企図される。
1つの実施形態では、本発明の核酸分子は、配列番号1〜3のいずれか1つに示す配列もしくはその相補体またはそれらの一部を含むか、配列番号1〜3のいずれか1つに示す配列もしくはその相補体またはそれらの一部からなる。別の実施形態では、本発明の核酸分子は、配列番号1〜3のいずれか1つに示す配列に対して、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の配列同一性を有する配列もしくはその相補体またはそれらの一部を含むか、その配列もしくはその相補体またはそれらの一部からなるものでありうる。別の実施形態では、本発明の核酸分子は、配列番号1〜3のいずれか1つに示す配列において、1つ以上、または1もしくは数個の置換、付加および/もしくは欠失を有する配列もしくはその相補体またはそれらの一部を含むか、その配列もしくはその相補体またはそれらの一部からなるものでありうる。別の実施形態では、本発明の核酸分子は、配列番号1〜3のいずれか1つに示す配列に対して、中程度または高度のストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする配列もしくはその相補体またはそれらの一部を含むか、その配列もしくはその相補体またはそれらの一部からなるものでありうる。これらの配列自体は、一部公知の配列と同一のものがありうるが、そのような配列であっても、サイレンシング抑制活性については知られていなかったことから、その意味で新規性があるといいうる。
本発明の配列番号1に関連するASR602様の配列は、極めて種特異的な配列であった(実施例参照)。ASR602は、Ty1/copiaレトロトランスポゾンにおける3’長鎖末端反復配列(LTR)に隣接する部分に起源するもののようである(図4、図3Aおよび4A)。Drosophila Ty3/gypsyレトロトランスポゾンにおいて、バリアーインスレーター活性を有する2つのDNA配列が同定されているが、これらの配列は、5’非翻訳領域(Roseman,R.R,,Pirrotta,V,& Geyer,P.K.,EMBO J.12,435-442(1993))またはLTR(Brasset E,Hermant C,Jensen S,&Vaury,C.,Gene 450,25-31(2010))に位置している。ASR602は、既知の足場/マトリクス結合領域(S/MAR)およびインスレーターの構造特性に類似した配列の特徴を有さなかった。ASR602の機能は、S/MARおよびインスレーターのものとは異ると考えられる。S/MARおよびバリアーインスレーターは、外来遺伝子を両側に配置されると、位置効果から(外来)遺伝子を切り離す。すなわち、隣接するゲノム領域からの異質染色質領域(heterochoromatin)の拡大を抑制する(Bode,J.,Benham,C.,Knopp A.&Mielke C.,Crit Rev Eukaryot Gene Expr.10,73-90(2000);Gaszner,M.&Felsenfeld,G.,Nat Rev Genet.7,703-713(2006))。これに対し、ASR602は、外来性遺伝子に融合させた際に、別の染色体/領域上に位置するサイレンサー遺伝子座によって引き起こされるTGSを抑制することが実証された(実施例参照)。ASR602は、宿主ゲノムの後成調節系によって制御されるクロマチンを活性状態に維持するための「合図」として機能することが示唆される。
本発明の核酸分子またはサイレンシング抑制因子等についてさらに説明する。真核生物は、内因性遺伝子、外来遺伝子および侵入性核酸(invasive nucleic acid)を調節するためにエピジェネティック機構を採用している(Matzke,M.A.,Aufsatz,W.,Kanno,T.,Mette,M.F.&Matzke,A.J.,Adv.Genet.46,235-275(2002);Wassenegger M., Gene silencing.Int Rev Cytol.219,61-113(2002))。一部の内因性遺伝子/外来遺伝子が転写型遺伝子不活性化(TGS)を受ける一方で、その他の遺伝子はTGSを回避するので(Wolffe,A.P.,Curr Biol.7,R796-798(1997);Finnegan,J.&McElroy,D.,Bio/technol.12,883-888(1994))、ゲノム領域のエピジェネティックなTGS/非TGS状態を積極的に決定するための内因性DNA配列が存在し得るものと考えられる。理論に束縛されることを望まないが、本発明の核酸分子は、同一発現ベクター内に配置された外来遺伝子をTGSから積極的に防御するこれらのゲノムエレメントでありうる。転写型遺伝子不活性化(TGS)は、転写の抑制を介して機能し、関与する遺伝子がプロモーター領域において配列の相同性を共有する場合に主として生じるが、広範囲の真核生物における内因性遺伝子/外来遺伝子で見られる現象である(Matzke,M.A.,Aufsatz,W.,Kanno,T.,Mette,M.F.&Matzke,A.J.,Adv.Genet.46,235-275(2002);Wassenegger M.Gene silencing.Int Rev Cytol.219,61-113(2002);Daxinger L, Whitelaw E. Genome Res. 20, 1623-1628 (2010).)。TGSは、広く、遺伝子組換え技術に対する非常に大きな障害と認識されており(Pannell,D.& Ellis,J.,Rev.Med.Virol.11,205-217(2001))、特に遺伝子組換え植物においては、自然に生じたTGSは後代に遺伝しうるため(Assaad,F.F.,Tucker,K.L.&Signer,E.R.,Plant Mol Biol.22,1067-1085(1993);Hagan,N.D.,Spencer,D.,Moore,A.E.&Higgins,T.J.,Plant Biotechnol.J.1,479-490(2003))、その解決は、農業上、遺伝子組換え技術を応用するためにも、重要な課題となっている。。真核生物ゲノムにおける外来遺伝子のTGSは、染色体上の挿入部位(Wilson,C.,Bellen,H.J.&Gehring,W.J.,Annu Rev.Cell Biol.6,679-714(1990))と、内因性遺伝子を調節するエピジェネティックな機構(Matzke M.et al.,Biochim.Biophys.Acta.1677,129-141(2004);Matzke,M.A.,Mette,M.F.,Aufsatz,W.,Jakowitsch,J.&Matzke,A.J.,Genetica 107,271-287(1999))に大きく依存していることから、内因性遺伝子のTGSをエピジェネティックに制御するゲノムDNAエレメントの存在が示唆される。従って、この様な“内在性遺伝子のTGSを制御するDNAエレメント”は、外来遺伝子のTGSを抑制する潜在的な能力も有するであろうことが予想される。本発明者らは、本明細書において開示したように、強制的にプロモーター相同性依存性のTGSに対する抑制因子を、二次的に導入した外来遺伝子がトランスにサイレンシングされる遺伝子組換えタバコ植物を用いるスクリーニング戦略によって単離したが、得られた配列は、トランス−TGSに限定されていないとの証拠も得られている。したがって、理論に束縛されることを望まないが、本発明の核酸分子は、トランス−TGS等のTGSに限定されることなく、PTGSなどの他のサイレンシングの抑制因子としての機能を有しうることが想定される。すなわち、本発明において、本発明者らが見出したTGSを予防するDNAエレメント、およびスクリーニング基準としてのこのDNAエレメントのTGSを抑制する能力を実証したといえる。本発明者らは、実施例において例示するように、サイレンシング抑制を目的とする植物とは異なる植物種(例えば、ミヤコグサ(Lotus japonicus))のゲノムライブラリーから抗TGSエレメントの一例を同定し、そして、その例があるゲノムエレメント(171塩基対)が種間で広くサイレンシング抑制活性または抗TGS活性を有することを確認した。このエレメントに類似する配列は、この種のゲノムにおいて点在しており、3’長鎖末端反復配列(ltr)に隣接するTy1/copiaレトロトランスポゾンの部分に由来していた。この知見は、宿主のサイレンシング活性(防御(defense))と、トランスポゾンの抗サイレンシング活性(反防御(counterdefense))との間の拮抗する関係性の共進化に関する新たな見通しを提供する(Matzke,M.A.,et al.,2002;Matzke,M.A.et al.,1999;Vance,V.&Vaucheret,H.,Science 292,2277-2280(2001);Buchmann,R.C.,Asad,S,,Wolf,J.N,,Mohannath,G,&Bisaro,D.M.,J Virol.83,5005-5013(2009))。さらに、本発明のサイレンシング抑制因子またはASRは、TGSを抑制し、そして、外来遺伝子発現の適切な調節を確実にするために有効なツールを提供する。植物におけるサイレンシングについては、YoshikawaM et al., 細胞工学,Vol. 30, No. 7, 2011も参照することができる。
理論に束縛されることを望まないが、本発明で達成されたサイレンシング抑制については、本発明の抑制因子がそのサイレンシング抑制機能を発揮するためには、サイレンシングを担う因子または領域(したがって、サイレンシング抑制にも関連する因子または領域)と特異的に相互作用することが必要であり得ると考えられることから、実際に得られた配列と完全に同一であることは必須ではなく、得られた配列とある程度相同であれば、目的の因子または領域に結合等の相互作用することができ、最終的なサイレンシング抑制を達成することができると考えられる。そのような結合等相互作用のためには、例えば、70%以上の相同性もしくは同一性、好ましくは、80%以上の相同性もしくは同一性、90%以上の相同性もしくは同一性、より好ましくは95%以上の相同性もしくは同一性、さらに好ましくは98%以上の相同性もしくは同一性、さらになお好ましくは99%以上の相同性もしくは同一性が必要でありうる。
また、理論に束縛されることを望まないが、本発明において見いだされた3種の具体的配列から、1)ASR602(配列番号1)の中と、直後に存在するAAGGGGGAGTAC(配列番号12)が共通していることから、この配列を有することが好ましくありうる。また、2)ASR102, ASR501, ASR602に共通して存在する転写因子のDofの結合配列AAAGが存在することから、この配列を有することが好ましくありうる。さらに、3)3)上記のAAAGを延長したAAAGAAG配列がASR102,ASR 602に共通して存在することから、この配列を有することが好ましくありうる。加えて/あるいは、4)ASR102およびASR602に共通して存在するGAGTACCの7bp配列が存在することから、この配列を有することが好ましくありうる。
インスレーターおよびMARは、挿入部位周辺からのヘテロクロマチン化を抑制する機能を持つことが知られているが、本発明で同定した配列は、挿入部位とは関係ないサイレンシングを抑制する活性をもつことなどから、これらとは異なる機能を有しうると考えられる。また、本発明で同定したDNA配列と同一の配列は報告されておらず、かつ相同性のある配列にもTGS抑制活性は報告されていない。TGSを抑制する配列を利用した植物用ベクターは開発されていないことから、本発明は、植物用の実用的なベクターとして有用性は高い。
導入遺伝子の発現は、挿入されたゲノム上の位置に依存してばらつきが生ずるため(位置効果)、真核生物ゲノム内には、TGSの生起を決定するDNA配列が存在することが予想される。
1つの実施形態において、本発明の核酸分子は、サイレンシング抑制活性を有する。種々の実施形態において、このサイレンシングは、トランス−TGS、シス−TGS、PTGS等でありうる。別の実施形態では、本発明の核酸分子は、転写型遺伝子不活性化(TGS)抑制活性を有する。種々の実施形態において、このTGSは、トランス−TGS、シス−TGSでありうる。
1つの好ましい実施形態では、本発明の核酸分子は、配列番号1、2または3に示す配列を含む。別の好ましい実施形態では、本発明の核酸分子は、配列番号1、2または3に示す配列からなる。
1つの局面において、本発明は、本発明の核酸分子を含むサイレンシング抑制因子を提供する。ここでサイレンシング抑制因子に含まれる核酸分子は、本発明の核酸分子として説明されている任意の配列を含みうることが理解される。種々の実施形態において、このサイレンシングは、トランス−TGS、シス−TGS、PTGS等でありうる。別の実施形態では、本発明の核酸分子は、転写型遺伝子不活性化(TGS)抑制活性を有する。種々の実施形態において、このTGSは、トランス−TGS、シス−TGSでありうる。
1つの実施形態では、本発明のサイレンシング抑制因子は、(a)配列番号1〜3のいずれか1つに示す配列;(b)配列番号1〜3のいずれか1つに示す配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列;(c)配列番号1〜3のいずれか1つに示す配列において、1もしくは数個の置換、付加および/もしくは欠失を有する配列;(d)配列番号1〜3のいずれか1つに示す配列に対して、高度のストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする配列;(e)(a)〜(d)の配列の一部を含む配列;および(f)(a)〜(e)の配列の相補配列;からなる群より選択される、ヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む。
別の実施形態では、本発明のサイレンシング抑制因子は、サイレンシング抑制活性に有意な影響を与えない限り他の配列または他の物質を含んでいてもよい。
別の局面において、本発明は、本発明のサイレンシング抑制因子または本発明の核酸分子を含むベクターを提供する。このようなベクターとしては、本発明のサイレンシング抑制因子または本発明の核酸分子の機能を発揮させることができるものであればどのようなものでも良く、例えば、本明細書において例示されるpBE2113(例えば、pBE2113−GUS)、pBE7133、pE2113、pE7133、pEl2Omega(pEl2Ω)、pMLH7133(これらは、改変35Sプロモーターを用いて目的の遺伝子を駆動するようにされている。)、pMLH2113−GUSにASRを挿入したもの、pTNシリーズ(例えば、pTN1,2)等の空ベクターにASRを挿入して、自前の発現カセット(プロモーター+目的の遺伝子)を挿入したものなどを挙げることができ、このほかにも、pBI121を基にしたバイナリーベクターなどを利用することができる。これらのベクターは、本明細書において引用した文献において教示されており、あるいは、農業生物資源研究所(http://www.nias.affrc.go.jp/plantdefense/)等から入手することができる。
1つの実施形態では、本発明のベクターは、さらに、プロモーターが作動可能に連結されて含まれる。本発明の実施には、使用されるプロモーターは、プロモーターであれば種類を問わず原理的に実施可能である。理論に束縛されることを望まないが、本明細書において実証されたように、ウイルス由来の構成的発現を示すプロモーター (CaMV 35S プロモーター)と、植物自身の持つ組織+期間特性発現を示すプロモーター(FWA)の両方をサイレンシングから保護できたことから、植物種およびプロモーターの種類を問わず原理的に実施可能であると考えられるからである。
別の実施形態では、本発明のベクターは、さらに、導入されるべき遺伝子が作動可能にサイレンシング抑制因子に連結されて含まれる。
別の実施形態では、本発明のベクターは、さらに、プロモーターが作動可能に連結されて含まれる。
別の局面において、本発明は、本発明のベクターを含む、遺伝子を導入するための組成物を提供する。本発明の組成物としては、遺伝子を導入する目的を阻害しない限り、どのような他の成分でも含むことができる。そのような他の成分としては、例えば、緩衝剤、安定剤、保存剤、湿潤剤、乳化剤、抗酸化剤、静菌剤、および分散剤等を挙げることができる。
別の局面において、本発明は、本発明のベクターを含む、細胞を提供する。1つの実施形態では、本発明の細胞は、植物細胞である。このような植物細胞は、サイレンシングを抑制することが企図される任意の植物細胞でありうる。
別の局面において、本発明は、本発明のベクターを含む、植物組織を提供する。このような組織としては、維管束組織(篩部組織、木部組織などを含む)、頂端分裂組織、葉肉組織、厚角組織、柔組織を挙げることができるがそれらに限定されない。
別の局面において、本発明は、本発明のベクターを含む、植物器官を提供する。例えば、植物器官としては、茎、根、葉、花などを挙げることができるがそれらに限定されない。
別の局面において、本発明は、本発明のベクターを含む、植物体を提供する。本発明の植物体は、再生産用のものであってもよく、それ自体を観賞用に使用してもよく、あるいは工業用製品、食品もしくは医薬品等自体またはそれらの原料として使用するものであってもよい。
別の局面において、本発明は、本発明のベクターを含む、種子を提供する。本発明の種子は、再生産用のものであってもよく、それ自体を観賞用に私用してもよく、あるいは工業用製品、食品もしくは医薬品等自体またはそれらの原料として使用するものであってもよい。
さらに別の局面において、本発明は、本発明のベクターを含む細胞、植物組織、植物器官、植物体および/または種子に由来する加工品を提供する。本発明の加工品は、工業用製品、食品、医薬品、あるいはそれらの原料でありうるがそれらに限定されない。
(サイレンシング抑制因子のスクリーニング方法およびキット)
別の局面において、本発明は、(A)高頻度でサイレンシングが起こる系を提供する工程;(B)該高頻度でサイレンシングが起こる系に、候補核酸を導入する工程;(C)該高頻度でサイレンシングが起こる系において、サイレンシングが抑制されるかどうかを決定する工程;(D)工程(C)において、該サイレンシングの抑制をもたらした該候補核酸を選択する工程;を包含する、サイレンシング抑制因子のスクリーニング方法を提供する。本発明のスクリーニングの概念は、広範囲の生物からのサイレンシング抑制因子の単離に応用可能である。このスクリーニング法によって単離されたサイレンシング抑制因子は、遺伝子組換え技術における進展をもたらし、そして、このサイレンシング抑制因子の分析は、ゲノム調節のエピジェネティックな調節機構に関する新たな研究分野を開くものである。
本発明のスクリーニング方法において、サイレンシングについて「高頻度」は、サイレンシング抑制のスクリーニングを可能にする程度の頻度であれば、どのようなものであってもよく、通常、サイレンシングが50%以上の確率で起こることをいい、好ましくは、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.9%以上、99.99%以上などであり得る。
高頻度かどうかの判定は、上記確率を算出することによってなすことができる。ただし、実際に人工的な系を作成した場合、復帰変異体を起こした細胞が優先的に細分化してくるので、結果的に過大評価している可能性がありうる(例えば、実施例で使用したM66−9の場合、シュートの出る率が非常に低い場合、シュートが出るまで葉片を培養する;ただし、実施例で使用したFWAのような天然の系の場合、サイレンシングの成否が形質転換効率に影響しない)。そのような場合、理想的には、「通常の(サイレンシング頻度がとくに高くない)条件で発生すると想定される個体数で、サイレンシングが高頻度で起こる条件下で発生した個体数を除した割合」が「エスケープ率」であるが、エスケープ率は、本件で用いた系では、通常出てこない復帰変異体も計数しており、過大評価されるため、復帰変異体数が0の場合も本件の系の場合1等と計数されることになる。このような場合でも、高頻度の判断には影響ないことが理解される。すなわち、しかし、そのような場合は、エスケープ率が高くなるだけであるため頻度評価には差しさわりがないことが理解される。すなわち、エスケープ率で見たときには通常の過大評価されない条件での評価<過大評価した評価となるため、頻度でみると、エスケープ率で見たときには通常の過大評価されない条件での評価>過大評価した評価となることから、設定した「高頻度」の条件を、過大評価した評価でクリアしている限り、通常の過大評価されない条件での評価で常に満たしていることになるからである。
本発明において用いられる高頻度でサイレンシングが起こる系は、上記条件を満たす限り、どのようなものであってもよい。また、このような高頻度でサイレンシングが起こる系は、天然に存在するもの(例えば、FWAを有するシロイヌナズナ)であっても人工的に創製したもの(例えば、実施例等で使用したタバコ形質転換体M66-9)であってもよい。
例えば、CaMV 35Sプロモーターのようなプロモーター(好ましくは、汎用のものであり、強力なものがよいがそれに限定されない。)を基本とする発現ベクターを導入した形質転換植物(例えば、タバコ植物が使用されうるがこれに限定されない。)の中から、導入遺伝子がTGS等のサイレンシングによって不活性化されている系統を選抜し、さらにそれらの中から、再導入した35S プロモーターが高頻度で不活性化されるサイレンシング(例えば、trans−TGS)活性を持っている系統を選択することができる。この系統は、CaMV 35S プロモーター::薬剤選抜マーカー等の選抜マーカーを持つ形質転換ベクターを再導入しても形質転換体を選抜することができないが、CaMV プロモーター::薬剤選抜マーカーにサイレンシング抑制能(例えば、TGS抑制能)を持つDNA配列が付加されれば薬剤選抜等による選抜が可能になる。
そこで、例えば、CaMV 35Sプロモーター::薬剤選抜マーカー(例えば、ハイグロマイシン薬剤耐性遺伝子であるhph遺伝子)の上流に候補核酸(例えば、ミヤコグサゲノムDNA断片等のゲノムDNA断片)を挿入したライブラリーを構築し、このライブラリーで、上記の形質転換体を形質転換した後、選択培地(例えば、ハイグロマイシン薬剤耐性を行う場合はハイグロマイシン含有培地)で選抜された形質転換体を選抜することができる。選抜された形質転換体に挿入された候補核酸(例えば、ミヤコグサゲノムDNA断片等のゲノムDNA断片)にはサイレンシング抑制活性を有する可能性が高いことから、これらについてさらにその活性を確認する実験を行うことができる。サイレンシング抑制活性は、形質転換体(例えば、タバコ)におけるプロモーターコピー数の増加に伴うサイレンシング(例えば、TGS)を抑制する活性を測定することによって確認することができる。(例として、図1を参照)。
選抜した候補核酸がサイレンシング抑制活性を普遍的に有するかどうかについては、別の植物(例えば、シロイヌナズナ)を用いて行なうことができる。シロイヌナズナ内在性の遺伝子FWA(FLOWERING WAGENINGEN)(通常はサイレンシング(TGS)によって発現が抑制されており、さらに形質転換によって新たに導入した場合も高頻度で不活性化を受ける)に連結した場合、FWA遺伝子の不活性化が抑制されることを確認することができる。従って、本発明の方法によってサイレンシング(TGS)を抑制する活性をもつDNA配列を高効率で単離でき、単離されたサイレンシング(TGS)抑制配列はタバコおよびシロイヌナズナにおいて別種のプロモーターで起こるTGSを抑制することができる(例として、図2を参照のこと)。
別の例として、本発明の核酸配列(例えば、配列番号1〜3)を連結したCaMV 35Sプロモーター::GUS遺伝子等のプロモーター::マーカーコンストラクトを導入した別の植物(例えば、サツマイモ)の形質転換培養細胞に用いて、そのマーカー(例えば、GUS)の発現変動性が抑制されることが明らかにすることができる(例として、図3を参照)。
したがって、本発明は、サイレンシング(例えば、TGS)を負に制御するDNA配列を体系的に同定する方法を初めて提供する。また、このように体系的に同定されたサイレンシング(例えば、TGS)抑制活性をもつDNA配列そのものも、導入遺伝子を安定的に発現させることができるベクターの開発に寄与する。また、本発明のスクリーニング戦略は、サイレンシング抑制因子(TGS抑制因子)であるDNAエレメントの新たなクラスを効率的に見出すのに役立つ。
なお、真核生物ゲノム内からはTGSを阻止するDNA配列が見出されているが、当該配列を単離するための体系的なスクリーニングを行う方法は開発されていない。従来知られているインスレーターまたはMAR(Matrix Attachment Region)など、サイレンシングを抑制する活性をもつDNA配列が知られているものの、これらは既知の遺伝子領域周辺の機能解析の結果、活性が認められたもので、本件の様なスクリーニングによって単離されたものではなく、体系的なスクリーニングは示唆すらされていなかった。また、サイレンシング抑制効果の有無を調べる研究で用いられた方法も異なっており、本発明のような方法を用いて初めて実質的な意味での「スクリーニング」が可能となった。さらに、サイレンシング、特に、TGSを抑制する配列を利用した植物用ベクターは開発されていないことから、本発明には、極めて有用性が高いというべきである。特に、理論に束縛されることを望まないが、一つの側面において、本発明は、TGSを抑制する因子を見出すためには、高頻度でサイレンシングが起きる系が必要であることを見出した点においても顕著な特徴が認められるべきである。また、本発明のスクリーニング方法を実施した結果、取れてきた配列は、本明細書において実証されているように、trans−TGSを抑制する活性を有する配列が主であるが、例えばサツマイモの形質転換の結果から判断すると、この配列は、cis−TGSまたはPTGSをも抑制する可能性がある点において、スクリーニングがターゲットとするメカニズムが限定されていない点も特徴の一つであるといえる。
1つの実施形態では、本発明のスクリーニング方法において、前記サイレンシングは、トランス−転写型遺伝子不活性化(trans−TGS)により生じるものを目的としうる。
1つの実施形態では、本発明で用いられる高頻度でサイレンシングが起こる系は、トランス−転写型遺伝子不活性化(trans−TGS)が高頻度で起こる系である。
別の実施形態では、本発明のスクリーニング方法が目的とするサイレンシング抑制因子は、転写型遺伝子不活性化(TGS)抑制因子である。
別の実施形態では、本発明で用いられる高頻度でサイレンシングが起こる系は、あるプロモーターについて高頻度でサイレンシングが起こる系であり、導入工程(B)は、前記候補核酸と該プロモーターと共にを含むベクターを用いてで行われることをさらに特徴とする。この場合、前記決定工程(C)は、該ベクターに含まれる前記プロモータの制御下にある発現に対するサイレンシングが抑制されるかどうかを決定する工程であることをさらに特徴とすることができる。例示的な実施形態では、この工程(C)は、形質転換体が抗生物質耐性であるか否か(すなわち、抗生物質存在下でも成長するか否か)を決定する工程、あるいは、開花が遅くなるか否かを(例えば、視認等により)決定する工程でありうる。
別の実施形態では、本発明で用いられる高頻度でサイレンシングが起こる系は、(B)導入工程において使用される導入手法を用いた場合に少なくとも90%でサイレンシングが起こる。
別の実施形態では、本発明で用いられるサイレンシングの頻度は、通常の条件で発生すべき個体数で、サイレンシングが生じる条件下でサイレンシングが生じた個体数を除した割合で示される。したがって、「高頻度でサイレンシングが起こる系は、前記(B)導入工程において使用される導入手法を用いた場合に少なくとも90%導入遺伝子の発現が抑制される」との意味は、前記サイレンシングの頻度は、通常の条件で発生すべき個体数で、サイレンシングが生じる条件下でサイレンシングが生じた個体数を除した割合で示される割合であることが理解される。
別の実施形態では、本発明で用いられる高頻度でサイレンシングが起こる系は、本発明のスクリーニング方法においてサイレンシングが生じた場合、前記高頻度でサイレンシングが起こる系の個体は発生せず、該サイレンシングが生じない場合、該高頻度でサイレンシングが起こる系の個体が発生する系でありうる。
別の実施形態では、本発明で用いられる高頻度でサイレンシングが起こる系は、サイレンシングが生じた場合と、サイレンシングが生じない場合とで、前記高頻度でサイレンシングが起こる系の表現形が異なる系でありうる。
別の実施形態では、本発明で用いられる高頻度でサイレンシングが起こる系は、人工的にサイレンシングを生じさせたものである。さらに別の実施形態では、本発明で用いられる高頻度でサイレンシングが起こる系は、天然にサイレンシングが起きる系である。
別の局面において、本発明は、高頻度でサイレンシングが起こる系を備える、サイレンシング抑制因子のスクリーニングを行うためのキットを提供する。このサイレンシング抑制因子は、転写型遺伝子不活性化(TGS)の抑制因子、あるいはトランス−転写型遺伝子不活性化(TGS)でありうる。
1つの実施形態では、本発明のキットにおいて含まれる高頻度でサイレンシングが起こる系は、あるプロモーターについて高頻度でサイレンシングが起こる系であり、この場合に本発明のキットは該プロモーターを含む候補核酸を導入するためのベクターをさらに備える。
別の実施形態では、本発明において用いられる高頻度でサイレンシングが起こる系は、アグロバクテリウム形質転換系で形質転換した場合に通常、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95%、少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%、なおいっそう好ましくは少なくとも99.9%、さらになおいっそう好ましくは少なくとも99.99%導入遺伝子の発現が抑制される系である。なお、他の形質転換系で測定した場合にも、アグロバクテリウム形質転換系と同様の頻度を示すかあるいはより高い数値を示しうるが、本発明の目的においては実質的に同一とみなすことができる。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願等の参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
以下に、実施例を用いて本発明を詳述する。以下の実施例は、例示の目的にのみ提供され、本発明は、以下の実施例には限定されないことが理解される。以下に使用した試薬類は、和光純薬(Wako)、タカラバイオ(TaKaRa)Sigma−Aldrich、ナカライテスク、New England Biolab等から入手した。
(方法および材料)
trans−TGS植物の選択に使用した遺伝子組換えタバコ植物と、GUS構築物を持つスーパー形質転換体に関して使用したLUC発現タバコ植物は、文献に記載されたとおりに作製した(Mitsuhara,I.,Malik,K.A.,Miura,M.& Ohashi,Y.,Curr Biol.9,775-778(1999);Mitsuhara I.et al.,Genetics 160,343-352(2002))。GUSおよびLUCアッセイは、文献に記載されたとおりに実施した(Sasaki,K.et al.,Plant Mol.Biol.62,753-768(2006))。より詳細な情報については、必要に応じて、各欄に記載する。
(一般的な方法論)
以下に、本実施例で用いた種々の技術について、項目ごとに説明する。
(植物材料および植物の形質転換)
野生型タバコ(Nicotiana tabacum cv.Sumsun NN)および遺伝子組換えタバコの植物および培養細胞を、文献に記載されたとおりに成長させた(Mitsuhara I.et al.,Genetics 160,343-352(2002))。trans−TGS活性を有する植物を選択するために、遺伝子組換えタバコ株M65およびM66由来の植物を使用した(Mitsuhara,I.,Malik,K.A.,Miura,M.&Ohashi,Y.,Curr Biol.9,775-778(1999))。M65株およびM66株は、それぞれ、bcl−xLおよびced−9のオープンリーディングフレームを有しており(Hisahara,S.et al.,J Cell Sci.111,667-673(1998))30、これらを、発現ベクターpBE2113(Mitsuhara I.et al.,Plant Cell Physiol.37,49-59(1996))に挿入した。pBE2113は、2コピーのCaMVプロモーター(El)のエンハンサー領域(−419〜−90)と、1コピーのCaMV 35Sプロモーター(P35S)のコアプロモーター(−90〜−1)を有し、その後ろに、発現させようとする目的の遺伝子を有する。タバコおよびArabidopsisのAgrobacteriumを介した形質転換は、文献に記載されたとおりに実施した(Mitsuhara I.et al.,Genetics 160,343-352(2002);Clough,S.J.& Bent,A.F.,Plant J.16,735-743(1998))19,31。長日性条件(16時間の明/8時間の暗)下で、成長させた植物のロゼット葉の数を計数することにより、Arabidopsis thaliana(生態型:コロンビア(Col))の開花時期を決定した。開花時期のデータを、Kruskal−Wallis検定により比較し、その後、Dunnの多重比較処理を行った。
(プラスミド構築物)
P35S::HPT(ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子)を選別マーカーとして含むpTH1は、HPT発現カセットの方向がpTH2と反対である点を除き、pTH2ベクター(Kawahigashi,H.et al.,J Agric Food Chem.55,1241-1247(2007))と同じ特徴を有する。
pMLH7133−mwti1b(HPTを含む)(Mochizuki,A.et al.,Entomol Exp Appl.93,173-178(1999))の誘導体であるpMLH7133−GUSは、mwti1b遺伝子をpE7133−GUS(Mitsuhara I.et al.,Plant Cell Physiol.37,49-59(1996))内のプロモーター−GUSカセットのGUSレポーター遺伝子で置き換えることによって作製する。
pTH4を作製するために、pMLH7133−mwti1b(Mochizuki,A.et al.,Entomol Exp Appl.93,173-178(1999))のHPT発現カセット(SmaI−SmaI領域)をpTRA415(R)−delNPT(Fukuoka,H.et al.,Plant Cell Reports 19,815-820(2000))のXhoI部位(Klenowフラグメントで平滑末端化したもの)に挿入した。Lotusゲノムライブラリーの作製のために、このDNAをHindIIIで消化し、pTH4のHind3部位に挿入した(図2A)。
pP35Sm−GUSを作製するために、pBI121(Jefferson,R.A.,Kavanagh,T.A.& Bevan,M.W.,EMBO J.6,3901-3907(1987))のCaMVプロモーター領域を、−46 CaMV 35S最小プロモーター(P35Sm)(Jefferson,R.A.,Kavanagh,T.A.& Bevan,M.W.,EMBO J.6,3901-3907(1987))で置き換えた。この構築物内のP35Smの直ぐ上流に位置するHindIII部位に、ASR候補を挿入し、そしてこれを、エンハンサー活性の測定に用いた(図2A)。
pMLH2113−GUSは、pMLH7133−GUSのプロモーター−GUSカセットを、pE2113−GUSのプロモーター−GUSカセット(HindIII部位からBamHI部位まで)で置き換えることによって構築される(Mitsuhara I.et al.,Plant Cell Physiol.37,49-59(1996))。
FWA形質転換のための「コントロール」構築物(pBI−FWA、図2A)を作製するために、GenBankアクセッション番号NC_003075の13037026〜13042519位に対応する、FWA遺伝子の5.5キロベースフラグメントを、Arabidopsis(生態型:コロンビア)のゲノムDNAに由来するプライマーセット(創生したHindIII部位を有する「UP FWA51」と、内因性のEcoRI部位を有する「FWA32」;表3)を用いてPCRで増幅した(図2A)。HindIIIおよびEcoRIで消化したPCR産物で、pBI121のプロモーター−GUSレポーターカセット(HindIII部位とEcoRI部位の間の領域)(Jefferson,R.A.,Kavanagh,T.A.& Bevan,M.W.,EMBO J.6,3901-3907(1987))を置き換えた。ASR602を含有するFWA形質転換のためのベクターを作製するために、pBI−FWAの創生したHindIII部位と、内因性のXbaI部位との間の領域(172塩基)を、HindIII部位を上流に、下流側に創生したXbaI部位を持つASR602フラグメント(元のASR602(171bpのHindIIIフラグメント)の3’末端をPCRにより変えたもの)で置き換えた。
(生化学分析)
免疫ブロッティングには、Hisaharaらの方法に基づいて(Hisahara,S.et al.,J Cell Sci.111,667-673(1998))ポリクローナル抗Ced−9抗体(Mituhara et al. 1990, CurrentBiology)を用いて行った。タバコおよびArabidopsisからのゲノムDNA抽出は、記載されたとおりに行った(Mitsuhara I.et al.,Genetics 160,343-352(2002))。Lotus japonicus(系統名:Miyakojima MG-20)のゲノムDNAは、独立行政法人農業生物資源研究所の梅原洋介博士(Dr. Y. Umehara)によって提供された。
(GUSアッセイおよびLUCアッセイ)
レポーター遺伝子アッセイは、記載されたとおりに実施した(Sasaki,K.et al.,Plant Mol.Biol.62,753-768(2006))。抽出物の一部(aliquot)を、37℃にて30分間、4−メチルウンベリフェリル−β−d−グルクロニドを含むバッファー中でインキュベートした。GUS活性によって形成された4−メチルアンベリフェロンの量を、蛍光分光光度計(F−2500;Hitachi High−Tech Co.,Ltd.)を用いて測定した。上清の一部20μlを50μlのPicaGeneTM(LUCアッセイのための溶液;Toyo B−Net Co.,Ltd.)中でインキュベートした。LUC活性は、Microtiter Plate Luminometer MLXTM(Dynex)を用いて10秒間で測定した。
メチル化感受性制限酵素を用いてDNAメチル化を検出するための定性的PCRアッセイ。
このアッセイの基本概念は文献(Singer-Sam,J.,LeBon,J.M.,Tanguay,R.L.& Riggs,A.D.,Nucleic Acids Res.18,687(1990))に記載されているものに基づいた。メチル化の状態について分析するタバコ植物を、ASR602を有するか、または、ASR602無しのスーパー形質転換体タバコ植物から無作為に選択した(図1b、CSTおよびASR602 ST)。ゲノムDNAを個々から単離し、メチル化感受性制限酵素であるHgaI、AluIまたはXmnIで消化した。各DNAサンプル(100ng)を、製造業者の説明書にしたがって0.5単位の各制限酵素で2時間消化し、その後、エタノール沈殿を行った。PCR増幅には、製造業者の説明書にしたがって、消化したDNAの各々75ngをAmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ(Applied Biosystems)を用いたPCR反応液(10μl)中でテンプレートとして用いた。サイクリングの条件は以下のとおりであった:95℃で9分間;55℃での30秒間のアニーリング、72℃での1分間の伸長および95℃での30秒間の変性の40サイクル;そして、72℃で5分間。pMLH2113−GUSにおけるGUS遺伝子に融合させた35Sエンハンサー/プロモーター領域(図2AのpMLH2113−GUSの斜線の横棒)を、それぞれ、エンハンサー/プロモーター領域の5’上流配列と、GUSの5’末端領域の配列に対応するプライマーセット「pBI−Hind3−51」および「GUSI3」を用いてPCR増幅した(図2A、表3)。各PCR産物の容量の半分をゲル電気泳動後、臭化エチジウム染色によって増幅されたDNA断片を検出した。
(スーパー形質転換体における外来遺伝子のコピー数を決定するための定量的PCRアッセイ)
各スーパー形質転換体におけるpMLH2113−GUS構築物のコピー数を、(Seo,S.et al.,Plant Physiol.155,502-514(2011))に記載されたとおりに定量的リアルタイムPCRを行い、GUS/LUCの遺伝子量比を測定することにより定量した。全ての形質転換体植物およびスーパー形質転換体植物からDNAを個別に単離し、これらのDNAのGUSおよびLUC遺伝子の存在量を測定した(図2d)。GUSおよびLUC遺伝子を、それぞれ、2つのプライマー対(GUSについては、「GUSI51」および「Tnos Yomeru」;LUCについては「LUCI51」および「Tnos Yomeru」)を用いてPCR増幅した(表3を参照のこと。)。
(実施例1:高頻度でサイレンシングが起きる系の開発)
(高頻度でサイレンシングが起きる系の開発)
本発明者らは、プロモーターの相同性に基づいて強制的にTGSを引き起こす形質転換植物をもちいて、ASRをスクリーニングするための新規の系を考案した(図1a)。本発明者らは、まず、組換え植物の中から、あらかじめ導入されていた構築物のプロモーターと相同性のある二次的に導入したプロモーターが相同性依存的に遺伝子不活性化を引き起こす遺伝子組換え植物を単離した。TGSを起こしている外来遺伝子は、しばしば、遺伝子座の離れた相同性プロモーターをトランスにサイレンシングさせる(Matzke,M.A.,Mette,M.F.,Aufsatz,W.,Jakowitsch,J.& Matzke,A.J.,Genetica 107,271-287(1999);Vaucheret,H.&Fagard,M.,Trends Genet.17,29-35(2001))(trans−TGS)。また、trans−TGSは、既存のサイレンシングされたプロモーターに対して相同であり、かつ、異なる遺伝子座に挿入された、二次的に導入した外来遺伝子内のプロモーター上で生じる(Fagard,M.&Vaucheret,H.,Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol.51,167-194(2000);Matzke,M.A.,Primig,M.,Trnovsky,J.&Matzke,A.J.,EMBO J.8,643-649(1989);Park,Y.D.et al.,Plant J.9,183-194(1996);Thierry,D.&Vaucheret,H.,Plant Mol Biol.32,1075-1083(1996))。本発明者らは、これまでに、強化型カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター::bcl−xL/ced−9(Mitsuhara,I.,Malik,K.A.,Miura,M.&Ohashi,Y.,Curr Biol.9,775-778(1999))(本明細書において、このプロモーターをenhanced P35Sと称する)で形質転換した遺伝子組換えタバコ植物から、いくつかのTGS植物を見出した。これらのサイレンシングを受けた植物は、複数コピーの外来遺伝子を有しており、このサイレンシング状態は次世代に遺伝し、そして、DNAメチル化の強力なインヒビターである5−アザシチジンでの処理によって、導入遺伝子は再活性化されたことから、このサイレンシングがTGSであることが示唆された。次に、本発明者らは、これらのTGS植物を、強制的trans−TGS植物を選択するための供給源として採用した。強制的trans−TGS活性を示す植物を選択するために、本発明者らは、P35S::HPT構築物であるpTH1を用いて、これらのTGS植物の外植片(explant)をスーパー形質転換した(図2A)。これらのTGS植物が、強力なtrans−TGS活性を有する場合、外植片に導入されたpTH1はサイレンシングを受け、結果としてスーパー形質転換された細胞が生じたとしてもその細胞は、選抜マーカーである35S::HPTが機能しないためにハイグロマイシン含有培地では増殖できず、当然、カルスの誘導を引き起こすことも、シュートの形成を引き起こすこともない。TGS植物M66−9からは、pTH1でスーパー形質転換されたカルスまたはシュートを得ることはできなかったことから(図1b)、M66−9がtrans−TGS活性を有することが示唆された。
次に、このTGS植物M66−9が、別の35Sプロモーターにより駆動される構築物に対して強制的trans−TGSを引き起こすかどうかを確認するために、本発明者らは、各々の強化型P35Sによって駆動されるHPT遺伝子(enhanced 35S::HPT)およびGUS遺伝子(enhanced 35S::GUS)を含む、別のP35S駆動性構築物であるpMLH7133−GUSを用いてM66−9をスーパー形質転換した(図2A)。この構築物を含むAgrobacteriumの感染後2日目(2 DAI)に、M66−9外植体には、GUS活性をもつスポットが検出された。しかしながら、外植体は、アグロバクテリウムを感染後7日後においてGUS染色斑を示さず、また、スーパー形質転換されたシュートを再生することもなかったことから、GUS構築物がM66−9外植体内に導入されるものの、その後trans−TGSによって抑制されることが確認された。
このようにして、本発明者らは、M66−9を、ASRスクリーニングに使用することができる、強制的trans−TGS誘導植物として同定し、(図1A)、ASRのスクリーニングに使用した。
このM66−9は、2011年7月25日に、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに受領番号FERM AP−22156(受託番号:FERM P−22156;「寄託者が付した識別のための表示」は、M66−9)として寄託した。
(実施例2:サイレンシング抑制因子のスクリーニング:抗サイレンシング領域(ASR)候補の単離)
本実施例では、サイレンシング抑制因子(ASR)のスクリーニングを行った。サイレンシング抑制活性を持たないゲノムフラグメントを含むP35S駆動性構築物をM66−9にスーパー形質転換すると、この構築物内のP35Sはサイレンシングを受け、選抜マーカーである35S::HPT遺伝子が機能しないために、スーパー形質転換体(二重形質転換体)は得られない(図1a、中央下)。一方、ASRを含むP35S駆動性構築物をM66−9にスーパー形質転換すると、35S::HPT選抜マーカーが機能しハイグロマイシン耐性を獲得したスーパー形質転換植物が再生されるはずである(図1a、右下)。
ASRを単離するためのライブラリー構築物として、本発明者らは、別の強化型P35S::HPTカセットを含むpTH4を用いた(図2A)。L.japonicusのゲノムDNAを、HindIIIで消化して、pTH4のHindIII部位に挿入し、そして、Agrobacteriumに導入した。1μgのpTH4および0.5μgのL.japonicsゲノムDNAあたり、およそ3,000の独立したクローン(平均1,500bpの挿入サイズ)を生成した。M66−9の約1000の葉片を、このゲノムライブラリーを含むAgrobacteriumによって接種し、合計30の独立したスーパー形質転換シュートを得た。30のスーパー形質転換体において、元の外来遺伝子(強化型P35S::ced−9、図1a)がなおTGSを示していることを確認するために、タンパク質ゲルプロット分析によって、Ced−9の発現を調べた。これらのうち27の植物においてCed−9タンパク質が検出され、これらの植物が、サイレンシングの状態からのエピジェネティックな復帰変異体であることを示唆された(図1A−b)。本発明者らは、これらのスーパー形質転換植物の元の外来遺伝子が、trans−TGS活性を失っているので、これらの植物では再導入した構築物にASR活性をもつDNA配列が挿入されている可能性は低いと考え、以降の解析から除外した。(図1A−a、右下)。他の3つのスーパー形質転換体は、元の外来遺伝子の発現を示さなかった。これらの結果は、これらの3つの植物における元の外来遺伝子がサイレンシングされており、trans−TGS活性を維持していたが、これらの植物におけるスーパー形質転換されたP35S::HPT選択マーカー遺伝子はサイレンシングを受けていないことを示しており、スーパー形質転換構築物に挿入された各ゲノムフラグメントにASR活性があることが示唆される(図1a、右下、図1A−a、中央下)。本発明者らは、ベクター配列内に設計したプライマーセットを用いるPCR(図1c)によって、これら3つのスーパー形質転換体から再導入構築物に挿入されたミヤコグサDNA断片をASR候補として単離した。

(実施例3:サイレンシング抑制因子のエンハンサー活性の評価)
本発明者らは、次に、これらのASR候補がサイレンシングの抑制というよりはむしろ、強力なエンハンサー活性を有するために、TGSを克服したという可能性を検討した。3つのASR候補の各々を、CaMV 35S最小プロモーター::GUS(β−グルクロニダーゼ遺伝子)カセットの5’の端に挿入した(図2A)。この構築物に挿入した3つのゲノムフラグメントは、GUS発現における有意な増加を示さず(表1)、これらのASR候補がエンハンサー活性を有さないことを示している。
(実施例4:抗サイレンシング領域(ASR)候補のサイレンシング抑制活性の確認:形質転換タバコを用いた例)
外来遺伝子のコピー数と発現レベルとの間の逆の関係性が、しばしば、相同性依存性のTGSにおいて観察されるので(Assaad,F.F.,Tucker,K.L.& Signer,E.R.,Plant Mol Biol.22,1067-1085(1993);Matzke,M.A.,Mette,M.F.,Aufsatz,W.,Jakowitsch,J.&Matzke,A.J.,Genetica 107,271-287(1999);Wolffe,A.P.,Curr Biol.7,R796-798(1997))、本発明者らは、これらのASR候補の多様な外来遺伝子に対する抗サイレンシング活性を確認するために、P35S領域のコピー数の増加に基づくTGS誘導系を確立した。本発明者らは、これまでに、強化型P35S::LUC(ルシフェラーゼ遺伝子)を有し、かつ、著しく高レベルのLUC発現を示す遺伝子組換えタバコ植物(図2a、NW7−24−4)を作成している(Mitsuhara I.et al.,Genetics 160,343-352(2002))。この遺伝子組換え植物は、2コピーの35Sエンハンサー領域と1コピーの35Sプロモーター領域を有する強化型P35S::LUC構築物に関して、単一コピーが挿入されたホモ接合体であるため、この植物は、1つの二倍体細胞につき、4コピーの35Sエンハンサー領域と2コピーの35Sプロモーター領域を有する(図2a)。本発明者らは、この強化型P35S::LUC植物を、pMLH2113−GUSでスーパー形質転換した(図2a、図2A)。この強化型P35S::GUS構築物を強化型P35S::LUC植物にスーパー形質転換すると、得られるスーパー形質転換体は、少なくとも8コピーの35Sエンハンサー領域と4コピーの35Sプロモーター領域を有するはずである(CST、コントロールスーパー形質転換体)(図2a)。強化型P35S::LUC植物を強化型P35S::GUS構築物でスーパー形質転換した場合、得られたスーパー形質転換体のおよそ半分が、極めて低いレベルのGUSの発現を示した(図2b)。これに対し、野生型のタバコをpMLH2113−GUSで形質転換した場合、異なるベクターにおける同じGUSカセットについて報告されたとおり(Mitsuhara I.et al.,Plant Cell Physiol.37,49-59(1996))20、形質転換体の大部分が比較的高いGUS発現を示した(CT、コントロール形質転換体)(図2b)。CSTにおいてGUSの発現を示さないか、または低いGUS発現を示す植物の頻度がより高いのは、スーパー形質転換体における35Sエンハンサー/プロモーターのコピー数の増加によるTGSに起因するものと示唆される(図2b、CST)。
このTGS誘導系を用いて、本発明者らは、3つのASR候補が本物の抗サイレンシング活性を示すかどうかを検討した。ASRを含むpMLH2113−GUS構築物(図2a右、図2A(補足図2))を、強化型P35S::LUC植物中にスーパー形質転換した。ASR候補を含むスーパー形質転換体(ASR ST)(図2b)において、抑制されたGUS活性を示す植物の頻度は、ASR無しのスーパー形質転換植物(CST、コントロールスーパー形質転換体)のものよりも低く(図2b)、これらのASR候補はこのスーパー形質転換系においても抗サイレンシング活性を有することが示唆される。ASR102 STおよびASR602 STは、コントロールの形質転換体/スーパー形質転換体(CTおよびCST)よりも高いGUS活性のメジアン値を示した(図2b)。最も短いASR602(171bp)を、最も有望なASR候補としてさらなる特徴付けのために、選択した。
実施例1〜4の結果から、本発明において、「高頻度でサイレンシングが起こる系」を選抜し、そのサイレンシングを抑制する活性を指標に、ゲノムライブラリーからTGSを抑制するDNA配列をスクリーニングすることが可能な系を開発することができたことが実証される。
(実施例5:サイレンシング抑制因子のさらなる特徴づけ:強化型P35S::LUC植物であるNW7−24−4にスーパー形質転換されたGUS構築物に対する強化型P35SプロモーターのDNAメチル化状態の分析)
本実施例では、サイレンシング抑制因子のさらなる特徴づけを行った。
TGSは、しばしばプロモーター領域におけるDNAメチル化を伴う(Matzke M.et al.,Biochim.Biophys.Acta.1677,129-141(2004);Bender J.,Annu Rev Plant Biol.55,41-68(2004))。 本発明者らは、PCRを利用したメチル化アッセイを用いて、ASR602有またはASR602無しのいずれかのスーパー形質転換体において、GUS遺伝子と融合させた35Sエンハンサー/プロモーター領域におけるDNAメチル化状態を分析した(図2a、ASR602 STおよびCST)。GUS遺伝子と融合させた35Sエンハンサー/プロモーター領域(図2AのpMLH2113−GUSの斜線の横棒)を、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼで消化し、その後、PCR増幅を行った(プライマー等については、表3を参照)。プロモーター領域が重度にメチル化されている場合、この領域内のDNAは、酵素分解に対して抵抗性であるはずであり、結果としてこの領域からのPCR産物が増幅される。ASR602無しのスーパー形質転換体の多くでは、制限酵素による処理後に増幅されたPCR産物が検出され、GUSと融合させた35Sエンハンサー/プロモーター領域が、ASR602無しのスーパー形質転換体において重度にメチル化されることを示唆する(図2c、CST)。これに対して、ASRを含むスーパー形質転換体からは増幅されたDNAはほとんど検出されなかった(図2c、ASR602 ST)。このアッセイの結果は、ASR602が、DNAのメチル化から、隣接するエンハンサー/プロモーター領域を保護することを示唆した。(図2A)。
(実施例6:同じスーパー形質転換体における既存のP35S::LUC挿入物上でのサイレンシングの誘導)
本発明者らは次に、このTGSがまた、同じスーパー形質転換体における既存のP35S::LUC挿入物上で誘導されるかどうかを検討した(図2d)。P35S::GUSのスーパー形質転換体は、既存のP35S::LUC遺伝子座を変更しないので、スーパー形質転換体は全て、高いレベルのLUC発現を示すはずである。しかしながら、P35S::LUC植物のP35S::GUSスーパー形質転換体によって誘導されたTGSが、trans−TGSである場合、既存のP35S::LUCの発現に影響を与えうる。本発明者らは、このスーパー形質転換された系統の中でかなりの数の植物が低いレベルのLUC発現を示すことを見出した(図2d、左)。ASR602無しのスーパー形質転換体(図2d、右上、CST/全体)では、P35S::GUSとP35S::LUCの発現レベルとの間に、有意な正の相関性が存在した(表2);低いGUS発現を有するこれらのスーパー形質転換体の大部分は、極めて低いLUCの発現を示したことから、P35S::GUSおよびP35S::LUCの35Sプロモーター間の相互作用によってお互いにTGSが誘導されたことを示した(図2d、左上、CST/全体)。
本発明者らは次に、ASR602を配置したP35S::GUSをスーパー形質転換する場合に、P35S::LUCのTGSが生じるかどうかを検討した。ASR602(ASR602 ST)を含むスーパー形質転換体では、ごく少数の植物がP35S::GUS外来遺伝子および/またはP35S::LUC外来遺伝子の低い発現を示し(図2d、左下、ASR602 ST/全体)た。この結果は、ASR602を含むP35S::GUSを持つスーパー形質転換体において、ASR602が連結されたP35S::GUSのTGSを予防した結果として、別の遺伝子座に存在するP35S::LUCに対するtrans−TGSをも抑制することを示唆している。
複数コピーの外来遺伝子を有する植物は、複雑な遺伝子組換え遺伝子座を形成したり(Tzfira T.,Li,J.,Lacroix,B,& Citovsky,V.,Trends in Genet.20,375-383(2004))、そして/または、PTGSを受けたりする(Wassenegger M.Gene silencing.Int Rev Cytol.219,61-113(2002);Mitsuhara I.et al.,Genetics 160,343-352(2002))傾向がある。本発明者らは、検討した全植物(図2d、左、全体)から、1コピーのP35S::GUSを含むスーパー形質転換体(図2d、右、1コピー)、を選択するために、P35S::GUSのコピー数を測定した。スーパー形質転換体におけるP35S::GUSのコピー数を決定するために、スーパー形質転換体から単離したゲノムDNAを用いたリアルタイムPCRにより、GUS/LUCの遺伝子量比を測定した(表3)。本発明者らは、1コピーの挿入を持つスーパー形質転換体を選択し、これらのGUS発現およびLUC発現のデータを再度プロットした(図2d、右、1コピー)。ASR602無しのスーパー形質転換体(図2d、右上、CST/1コピー)において、およそ半分の植物(7/13)が、既存のP35S::LUCおよびスーパー形質転換したP35S::GUSの低い発現レベルを示した(表2)。ASR602を持つスーパー形質転換体(図2d、右下、ASR602 ST/1コピー)では、P35S::LUC外来遺伝子および/またはP35S::GUS外来遺伝子が低い発現レベルを示す植物はなかった(0/12)。これらの結果は、ASR602が、スーパー形質転換した遺伝子の単回の挿入によって誘導されるTGS/trans−TGSを効率的に抑制することを示した。
(実施例7:天然植物でのサイレンシング抑制の効果の確認)
ASR602が、別の植物種および別のプロモーターにおいて抗サイレンシング活性を示すかどうかを検討するために、本発明者らは、ASR602有/ASR602無しのArabidopsis開花遺伝子(flowering gene)であるFWAのゲノムクローンを用いて、Arabidopsisコロンビア株(Col)野生型を形質転換した。内在性のFWA遺伝子は、遺伝的なサイレンシングによって発現が抑制されておりプロモーター領域に存在する直列の反復配列が高度にメチル化されている;このFWA遺伝子のメチル化が低下しているfwa変異体は、異所性のFWA過剰発現を示し、遅い開花という表現型を示す(Soppe,W.J.et al.,Mol.Cell 6,791-802(2000))。直列の反復配列を含むFWAゲノムクローンを野生型植物に形質転換によって導入した場合、FWA外来遺伝子が効率的にサイレンシングされるため、開花時期は変更されない(Soppe,W.J.et al.,Mol.Cell 6,791-802(2000);Cao,X.&Jacobsen,S.E.,Curr.Biol.12,1138-1144(2002))。ASR602が抗サイレンシング活性を有する場合、ASR602と連結したFWA遺伝子で形質転換した野生型植物では、このFWA外来遺伝子のサイレンシングが抑制されるはずであり、結果として、このFWA外来遺伝子が発現して遅い開花を示すはずである。ASR602無しのFWAゲノムクローン(図2A)をCol内に形質転換した植物(図3、FWA)は、ベクターコントロール形質転換体(図3b、ベクター)および野生型植物(Col、データ示さず)と同じ開花時期を示したことから、既報のとおり導入したFWA外来遺伝子がサイレンシングされることが確認された。ASR602を配置したFWAゲノムクローンをCol内に形質転換した植物(図3、ASR+FWA)は、ASRなしのFWAの形質転換体(図3、FWA)およびベクターコントロール形質転換体(図3b、ベクター)の両方と比べて、有意に遅い開花を示し、ASR602がFWA外来遺伝子のサイレンシングを抑制することが確認された。「FWA」形質転換体および「ASR+FWA」形質転換体(T世代、図3)の両方からの植物の次世代(T世代)は、開花時期に関して、両方のT形質転換体と同じ傾向を示した。これらの結果は、ASR602がスクリーニングに用いたタバコ植物や35Sプロモーターに限定されず、別の種(Arabidopsis)において別のプロモーター(FWA)に対してもTGS抑制活性を示すことを示唆した。
(実施例8:サツマイモでのサイレンシング抑制例)
本実施例では、サツマイモでのサイレンシング抑制例を示す。
サツマイモの形質転換には、鹿児島県農業開発総合センターバイオテクノロジー研究所で樹立した、鹿児島県サツマイモ高系14号茎頂由来の胚発生能を有するカルス(K9カルス)を材料とした。同様の胚発生能を有するカルスは、大谷ら(1996年 Breeding Science 46: 257−260)の方法にしたがって作成することができる。サツマイモ高系14号は、青果用サツマイモ「べにさつま」「鳴門金時」「ことぶき」「宮崎紅」「土佐紅」「五郎島金時」などとして一般に市販されており、容易に入手することができる。
ASRを持つないしは持たない改変35S promoter::GUS融合遺伝子をもつベクター(pMLH2113GUS,pMLH2113GUS501−, pMLH2113GUS602−)をAgrobacterium EHA105株を用いて形質転換した。前培養用培地(1mg/l 4―フルオロフェノキシ酢酸, 3% スクロース, 0.3% ジェランガム(Gellan Gum),pH5.8)で培養したカルス500mgおよびアグロバクテリウム4mlおよび共存培養培地(1mg/l 4―フルオロフェノキシ酢酸,3% スクロース,pH5.8) 20mlを混合して室温で35分50rpmで緩やかに混和したのち、静置してカルスを沈殿させた。アグロバクテリウムを含む培養液を駒込ピペットにより取り除いた後、10mlの共存培地で洗浄した。このカルスを1mlの共存培地に懸濁したのち、濾紙上に広げて25℃暗所で培養する。3日後、スルベニシリン(Sulbenicillin)250mg/lを含む共存培地20mlでカルスを洗浄し、さらに、スルベニシリン250mg/l,パロモマイシン(Paromomycin)25mg/lを含むMS培地でさらに2回洗浄したのち、選択培地上(1mg/l 4−フルオロフェノキシ酢酸,3%スクロース, 250mg/l カルベニシリン,25mg/l パロモマイシン,1%寒天,pH5.8)にカルスを広げた。選択培地上で25℃、暗所で培養し、約2カ月で形質転換された細胞が増殖して、細胞塊が形成された。
得られた細胞塊を細胞塊毎に取りだし、定法(たとえばMitsuhara et al 1996 Plant and Cell physiology)にしたがって、x−gluc(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロン酸)を基質とする組織化学染色を行ったところ、この時従来型のASRを持たない導入遺伝子で形質転換された場合は、多くの細胞塊でGUS遺伝子が発現しないないしはGUS活性を持たない細胞の割合が高い傾向が有った。したがって、かなりの頻度でサイレンシングが起きていると考えられる。一方、ASRを含む導入遺伝子をもつ細胞塊では、全体の細胞がGUSを発現している割合が高かった。したがって、ASRによってサイレンシングが抑制されていると考えられる。
結果を図5に示す。図5に示すように、本発明で同定されたサイレンシング抑制因子(ASR602, ASR501)はP35S::GUS遺伝子の発現変動性を抑制する。図5の左上および右上に示すように、P35S::GUS遺伝子のみを形質転換したサツマイモカルス(ASR無し)では、多数のGUSが発現していない細胞が認められる。GUS発現細胞は数も少なく、発現程度のばらつきも大きいことが分かった。一方、図5の中央下に示すように、ASR602を融合させたP35S::GUS遺伝子を形質転換したサツマイモカルスでは、カルス内のほぼ全ての細胞でGUSが高発現している細胞塊の割合が高いことが分かった。細胞塊全体がGUS活性を示した細胞塊(GUS+++)をGUS発現系統、GUS発現が認められない(GUS−)もしくは発現している細胞と発現していない細胞が混在している(Variegated, GUS+−)をGUSサイレンシング系統として、2分し、両者をχ自乗検定によって優位差検定を行ったところ、ASR602およびASR501を導入したベクターで形質転換した場合、コントロールベクターと比べて、発現細胞塊の割合が統計学的に有意(p<0.05)に増加しており、サイレンシング抑制効果がサツマイモで生じていることを実証することができた。
以上から、得られたDNA配列が、複数の植物で異なった原因で起こるTGSを抑制する活性を持っていることを確認した。
(実施例9:サイレンシング抑制因子の配列解析)
(3つのASR候補の一次構造)
3つのASR候補のヌクレオチド配列を、GenBankのBLASTプログラム(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)を用い、クエリーとして解析した(パラメータは、BLAST 2.2.25の定義に従った)。これらの配列全体の間には、配列の類似性はなかった(BLASTにおけるbl2seqによるE値>0.009)。ASR102(約3.0kbp)は、L.japonicusのゲノム配列(AP010447.1)に対して非常に高い類似性を示した(BLASTNによる最大スコア=5371、クエリー適用範囲=100%、E値=0、最大同一性=99%)。また、ASR102は、7つのEST(E値<10−11)および52の仮想タンパク質(BLASTXによるE値<10−40)に対する顕著な類似性を示し、ASR102がタンパク質コード遺伝子の一部であることが示唆された。ASR501(約300bp)は、L.japonicusのゲノム配列(AP010439.1)に対して非常に有意な類似性を示した(BLASTNによる最大スコア=553、クエリー適用範囲=100%、E値=10−153、最大同一性=99%)。また、ASR501は、18のEST(E値<10−7)およびいくつかの「with no lysine(リジンなし)」キナーゼ(BLASTXによるE値<8x10−4)に対する顕著な類似性を示した。ASR602の配列(171bp)は、いかなる配列データベースにも登録されていなかったが、ASR602に類似する配列は、L.japonicusのゲノム内に豊富にあり、また、十分に保存されていた(BLASTNによる)。
(実施例10:ASR602配列を用いた類似性検索)
ASR602配列を、GenBankの非冗長ヌクレオチドデータベースに対するBLASTN検索(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)のクエリーとして用いた場合、このクエリー配列は、L.japonicusから多数のヒット(169の非冗長エントリー、E値<10−11)<表1Aを参照>をもたらしたが、他の生物からはヒットをもたらさなかった(E値>0.054);このクエリー配列を、GenBankのESTデータベースに対して用いた場合、この検索は、3つのLotus EST(BP033633、BF177524、BP055557;E値<10−21)をもたらした;GenBank内のBLASTNの残る13のデータベースのいずれにおいても、このクエリー配列は、いかなる他の生物からのヒットももたらさなかった(E値>10−4)。ASR602自体は、いかなる配列データベースにも登録されていなかったが、ASR602に類似する配列は、L.japonicusのゲノム内に豊富にあり、また、高度に保存されていた;この類似配列は、染色体に割り当てられたL.japoincusの独立したコンティグにおいて頻繁に見られた(http://www.kazusa.or.jp/lotus/index.html)(図3A)。非冗長エントリーからなるL.japoincusのコンティグのASR602に類似する配列の周辺をさらに解析すると、これらの配列がレトロトランスポゾンファミリーのメンバーに由来する部分であったことが示唆された(図4aおよび図4A)。これらの多くは、種特異的な長鎖末端反復配列(LTR)(1.2kb)を含む。このLTR間に挟まれたゲノム単位をBlastX検索した結果、検討した「LTR間に挟まれた単位」は、全て、Ty1−copiaファミリーのレトロトランスポゾン内に保存されたいくつかのタンパク質ドメインを含むことが明らかになった(図4b)。これらの単位の両端(LTRの外側)にはしばしば、ゲノム中の挿入位置ごとに異なる5塩基配列の標的部位の重複が隣接していた。これらの結果は、これらの単位がTy1/copiaファミリーのレトロトランスポゾンに起源するものであったことを示唆した。
逆に考えれば、これらのレトロトランスポゾンに存在する類似配列は、いずれも、サイレンシング抑制活性を有しうる可能性を有することが示唆された。
(実施例11:配列絞込み例)
本実施例では、サイレンシング抑制因子の配列についてさらに分析する。
上記実施例で得られた、ASR602を70bp程度に切り分けたものと、12bpの疑わしい反復配列について、FWA/Arabidopsisの系で活性を確認する実験を行う。手法は実施例6、7および8に記載した手法に準じる。これらの結果が出た時点で、ある程度の予測を行い、必要に応じてさらに絞り込みの実験を行う。
(実施例12:ベクター作成例)
本発明のサイレンシング抑制因子を含むベクターとして、汎用性のあるものを作成する。
Mitsuhara et al., Plant CellPhysiol. 37(1): 49−59 (1996)または本明細書において引用した他の論文等を参考にして、本発明のサイレンシング抑制因子を含むベクターを作成することができる。
基本的に、例示されるpBE2113−GUS、pEl2Omega−GUS,、pMLH7133−GUS等にはユニークなHind3部位があり、クローニングしてきたASR断片にも両端にHind3部位が存在する。これらのpBE2113−GUS, pEl2Omega−GUS,、pMLH7133−GUSも含め主要なベクターに関して、Hind3は目的の遺伝子を駆動する改変35Sプロモーターの直上流にあるため、ここに挿入すれば保護したいプロモーターと本発明のサイレンシング抑制因子(ASR)とが隣接することになる。
より具体的には、pBE2113−GUSなどをHind3で切断後CIAP または BAP処理によって末端を脱リン酸化して自己ライゲーションを抑制しておく。CIAP または BAP処理後フェノール抽出によって酵素を不活性化したのちに、ベクターDNAはエタノール沈殿によって回収する。
ASR602などがクローニングされたプラスミドベクターをHind3で分解後、ASR断片をアガロースゲル電気泳動によってプラスミドと分離し、ゲルからASR配列に相当するDNAを回収する(回収には、Gene clean, BIO101などのキットを使用、方法は適用可能なものであれば、当該分野で公知のどの手法を用いても良い)。
ベクターとASRをDNAリガーゼによって結合させた後、定法によって大腸菌に形質転換してASRが挿入されたベクターを持つ大腸菌を作成する。ベクターの選抜マーカー(この場合はKm)抵抗性となった大腸菌コロニーからベクターDNAを調整して、ASRが正しく挿入されたクローンを選択する。
これによって、本発明のサイレンシング抑制因子を含むベクターを作製することができる。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきである。
本発明により、形質転換用ベクターに組込むことで、導入遺伝子のTGSを抑制し安定的に外来遺伝子を発現させることができるようになる。これにより、組換え生物作出のための労力を節約することが可能になると共に、形質転換体で有るにもかかわらず導入遺伝子が発現しなくなるという危険性を低減することも可能になる。また、研究・産業用のベクターとして流通することも考えられる。植物形質転換用ベクターシリーズは、農作物(例えば、イネ、ムギ、トウモロコシ等の穀物、果物、工芸作物等を含む)、観賞用植物などに使用されうることから、これらの用途として利用することができる。
受託番号:FERM P−22156
(受領番号FERM AP−22156)
配列番号1:ASR602の核酸配列
配列番号2:ASR101の核酸配列
配列番号3:ASR501の核酸配列
配列番号4:ASL1の核酸配列
配列番号5:ASL2の核酸配列
配列番号6:ASL3の核酸配列
配列番号7:ASL4の核酸配列
配列番号8:ASL5の核酸配列
配列番号9:ASL6の核酸配列
配列番号10:ASL7の核酸配列
配列番号11:ASL8の核酸配列
配列番号12:ASR602の核酸配列(配列番号1)の中と、直後に存在するAAGGGGGAGTAC
配列番号13:BL31、AAT ATG GGC AGC GAA GGC C
配列番号14:P35−31、CGT CAT CCC TTA CGT CAG TGG AGA T
配列番号15:pBI−Hind3−51 ATG ACC ATG ATT ACG CCA AGC
配列番号16:GUSI3、TAC GAA TAT CTG CAT CGG CG
配列番号17:GUSI51、GCA GGG AGG CAA ACA ATG AA
配列番号18:LUCI51、GTA ATT TTG TAA TTG TGG GTC AC
配列番号19:Tnos Yomeru、TGT TTG AAC GAT CGG GGA AAT
配列番号20:UP FWA51、TTA AAA GCT TAG TAA ATC ATT GTG GCG ACA CTT TTT TTC GTC TC 下線は制限部位である。
配列番号21:FWA32、TTA AGA ATT CTG GAA TGC ATT TTT CAC CTG ATA TAG TG 下線は制限部位である。
配列番号22:TNT1の部分配列(図4のB)
配列番号23:COPIAの部分配列(図4のB)
配列番号24:ASL1のアミノ酸配列(図4のb)
配列番号25:ASL2のアミノ酸配列(図4のb)
配列番号26:ASL8のアミノ酸配列(図4のb)

Claims (29)

  1. (a)配列番号1〜3のいずれか1つに示す配列;
    (b)配列番号1〜3のいずれか1つに示す配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列;
    (c)配列番号1〜3のいずれか1つに示す配列において、1もしくは数個の置換、付加および/もしくは欠失を有する配列;
    (d)配列番号1〜3のいずれか1つに示す配列に対して、高度のストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする配列;
    (e)(a)〜(d)の配列の一部を含む配列;および
    (f)(a)〜(e)の配列の相補配列;
    からなる群より選択される、ヌクレオチド配列を含む、
    核酸分子。
  2. 前記核酸分子は、サイレンシング抑制活性を有する、請求項1に記載の核酸分子。
  3. 前記配列は、配列番号1、2または3に示す配列を含む、請求項1に記載の核酸分子。
  4. 請求項1に記載の核酸分子を含む、サイレンシング抑制因子。
  5. 請求項4に記載のサイレンシング抑制因子を含むベクター。
  6. さらに、プロモーターが作動可能に連結されて含まれる、請求項5に記載のベクター。
  7. さらに、導入されるべき遺伝子が作動可能に前記TGS抑制因子に連結されて含まれる、請求項5に記載のベクター。
  8. さらに、プロモーターが作動可能に連結されて含まれる、請求項7に記載のベクター。
  9. 請求項5に記載のベクターを含む、遺伝子を導入するための組成物。
  10. 請求項5に記載のベクターを含む、細胞。
  11. 植物細胞である、請求項10に記載の細胞。
  12. 請求項5に記載のベクターを含む、植物組織。
  13. 請求項5に記載のベクターを含む、植物器官。
  14. 請求項5に記載のベクターを含む、植物体。
  15. 請求項5に記載のベクターを含む、種子。
  16. 請求項5に記載のベクターを含む細胞、植物組織、植物器官、植物体および/または種子に由来する加工品。
  17. (A)高頻度でサイレンシングが起こる系を提供する工程;
    (B)該高頻度でサイレンシングが起こる系に、候補核酸を導入する工程;
    (C)該高頻度でサイレンシングが起こる系において、サイレンシングが抑制されるかどうかを決定する工程;
    (D)工程(C)において、該サイレンシングの抑制をもたらした該候補核酸を選択する工程;
    を包含する、サイレンシング抑制因子のスクリーニング方法。
  18. 前記サイレンシングは、トランス−転写型遺伝子不活性化(trans−TGS)により生じる、請求項17に記載のスクリーニング方法。
  19. 前記高頻度でサイレンシングが起こる系は、トランス−転写型遺伝子不活性化(trans−TGS)が高頻度で起こる系である、請求項17に記載のスクリーニング方法。
  20. 前記サイレンシング抑制因子は、転写型遺伝子不活性化(TGS)抑制因子である、請求項19に記載のスクリーニング方法。
  21. 前記高頻度でサイレンシングが起こる系は、あるプロモーターについて高頻度でサイレンシングが起こる系であり、前記導入工程(B)は、前記候補核酸と該プロモーターとを共に含むベクターを用いて行われることをさらに特徴とする、請求項17に記載のスクリーニング方法。
  22. 前記高頻度でサイレンシングが起こる系は、前記(B)導入工程において使用される導入手法を用いた場合に少なくとも90%でサイレンシングが起こる、請求項17に記載のスクリーニング方法。
  23. 前記サイレンシングが生じた場合、前記系の個体は発生せず、該サイレンシングが生じない場合、該系の個体が発生する、請求項21に記載のスクリーニング方法。
  24. 前記サイレンシングが生じた場合と、該サイレンシングが生じない場合とで、前記系の表現型が異なる、請求項21に記載のスクリーニング方法。
  25. 前記高頻度でサイレンシングが起こる系は、人工的にサイレンシングを生じさせたものである、請求項17に記載の方法。
  26. 前記高頻度でサイレンシングが起こる系は、天然にサイレンシングが起きる系である、請求項17に記載の方法。
  27. 高頻度でサイレンシングが起こる系を備える、サイレンシング抑制因子のスクリーニングを行うためのキット。
  28. 前記高頻度でサイレンシングが起こる系は、あるプロモーターについて高頻度でサイレンシングが起こる系であり、該プロモーターを含む候補核酸を導入のベクターをさらに備える、請求項27に記載のキット。
  29. 前記高頻度でサイレンシングが起こる系は、アグロバクテリウム形質転換系で形質転換した場合に少なくとも90%導入遺伝子の発現が抑制される、請求項27に記載のキット。
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