JP2013049159A - 木質材料の素地調整方法及びその素地調整後に塗装した塗装木質材 - Google Patents

木質材料の素地調整方法及びその素地調整後に塗装した塗装木質材 Download PDF

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貴文 伊藤
Yoshihisa Horiuchi
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Abstract

【課題】サンダーダスト等の埃を抑制することができる上に、簡便で安価に行うことができ、さらには、塗装回数を軽減させることができる素地調整方法及びその素地調整後に塗装した塗装木質材を提供することを目的としている。
【解決手段】木質材料の表面に熱を与えながら当該木質材料の厚みを圧縮し、前記木質材料の表面組織を圧壊する素地調整方法を行い、その素地調整方法を行った上で塗装を施す塗装木質材を生成する。
【選択図】なし

Description

本発明は、木質材料に塗装する際の前工程として行われる素地調整方法に関し、さらには、その素地調整後に塗装した塗装木質材に関する。
木材をはじめとする種々の木質材料を用いて建材や家具等を製造するにあたって、一般的に、表面保護あるいは加飾を目的として上記木質材料に施されている。また、この塗装工程前に、平滑度を高め、塗料の染み込みを均一にして塗装の仕上がりを美しくするために、上記木質材料の素地を調整する工程もごく一般的に行われている。そして、このような素地調整方法として、例えば非特許文献1に示すような、サンドペーパーを用いる方法が知られている。
塗装の事典 吉田豊彦ほか2名編 朝倉書店 1988年2月1日第5版発行(465頁)
しかしながら、サンドペーパーを用いた素地調整方法には、以下のような問題があった。すなわち、第1に、サンドペーパーを用いて素地調整を行う際、サンダーダストが生じるため、そのサンダーダストを除塵する必要があるが、その除塵が不十分な場合、塗装の仕上がり状態を著しく低下させてしまうという問題があった。また、第2に、除塵後のサンダーダストを廃棄する際、粉塵爆発の危険性があるため廃棄処理が困難であるという問題もあった。そして、第3に、サンドペーパーを用いた素地調整方法は、多大な作業時間を要する上に、消耗品であるがゆえに取替え作業が必要であるため、ランニングコストが増大するという問題もあった。一方、第4に、サンドペーパーを用いた素地調整を行った後、その木質材料に塗装を施す際、一定厚(例えば0.08mm程度)の塗膜を得ようとすると、最低でも3回の塗装工程を行わなければならず、非常に手間がかかるという問題があった。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、サンドペーパーを用いない素地調整を行うことでサンダーダスト等の埃を抑制することができる上に、しかも、素地調整を簡便で安価に行うことができ、さらには、塗装回数を軽減させることができる素地調整方法及びその素地調整後に塗装した塗装木質材を提供することを目的としている。
本発明者は、上記課題を解決する手段として、請求項1に記載のような木質材料の表面に熱を与えながら当該木質材料の厚みを圧縮し、前記木質材料の表面組織を圧壊する木質材料の素地調整方法の発明を完成し、そして、請求項8に記載のように、その素地調整方法を行った上で塗装を施す塗装木質材の発明を完成させた。なお、この木質材料の表面組織を圧壊する手段として、請求項2及び6に記載のようにロールプレスを用いた方が好ましい。それは、小型の装置でも任意の長さの木質材料が処理でき、そして表面だけを選択的に熱圧縮できるという利点があり、さらには、作業性が容易となるという利点があるためである。
また、木質材料の厚みを圧縮する際の当該木質材料の厚みの圧縮量は、請求項3及び7に記載のように0.5mm〜2mmであることが好ましい。0.5mm未満であれば、従来のサンドペーパーを用いた素地調整方法の性能とそれほど変わることがなく、2mmを超えると、木質材料の表面にひび割れが発生してしまうためである。
一方、木質材料として、請求項4及び8に記載のように鋸挽き仕上げされた材料を用いることもできる。このように、凹凸があるような鋸挽き材料であっても表面組織を圧壊させることで塗装が可能となり、それがために、その凹凸を活かした塗装木質材を生成することができる。
しかして、本発明によれば、サンドペーパーを用いない素地調整を行うことでサンダーダスト等の埃を抑制することができる上に、しかも、素地調整を簡便で安価に行うことができ、さらには、塗装回数を軽減させることができる。
以下、本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態に係る木質材料は、スギ、ヒノキ等が用いられる。また、木質材料として、鋸挽き仕上げされた材料を用いることもできる。
このような木質材料を素地調整するには、ロールプレスを用いて、その木質材料の表面に熱を与えながら当該木質材料の厚みを圧縮して素地調整を行う。なお、この木質材料の厚みの圧縮量としては0.5mm〜2mmであることが好ましい。0.5mm未満であれば、後述する実施例及び比較例に示すように、従来のサンドペーパーを用いた素地調整方法の性能とそれほど変わることがなく、一方、2mmを超えると、木質材料の表面にひび割れが発生してしまうためである。なおまた、熱圧縮する手段は、ロールプレスに限らず、他のものを用いても良い(例えば、平盤プレス)。ただし、ロールプレスを用いた方が、小型の装置でも任意の長さの木質材料が処理でき、そして表面だけを選択的に熱圧縮できるという利点があり、さらには、作業性が連続的にできて、しかも容易であるため、ロールプレスを用いた方が好ましい。
そして、上記のような素地調整が行われた後、その上に塗装が施され塗装木質材が生成されることとなる。このように生成された塗装木質材が、建材や家具等に使用されることとなる。
ところで、上記塗装に使用される塗料としては、溶剤系のポリウレタン塗料や、アクリル樹脂塗料が用いられる。そして、塗装方法としては、下塗り、上塗りの2回塗装が好適である。通常、塗装方法としては、下塗り、中塗り、上塗りの3回塗装を行い、0.08mm程度の塗膜を得るのであるが、本実施形態では、下塗り、上塗りの2回塗装のみで0.08mm程度の塗膜を得ることができるためである。これは、本実施形態のような素地調整を行えば、塗料の染み込みを抑制することができるからであると推測される。
次に、実施例及び比較例を用いて、本発明を更に詳しく説明する。
(実施例1〜4)
実施例1〜4の試験板は以下のようにして作製した。
<木質材料>
木質材料としては、気乾状態で表面を回転かんな盤によって仕上げた幅約110mm、厚さ15mm、長さ2000mmのスギ板目板を用い、そのスギ板目板を長さ400mmずつ4枚裁断した。
<素地調整>
そして、その長さ400mmずつ4枚裁断したスギ板目板を温度約150℃の熱ロールプレス(株式会社望月機工製作所製のウッドタフナー)を用いて、厚みを順に、0.3mm,0.5mm,1mm,2mmに圧縮処理し、表面組織を圧壊させることで素地調整を行った。
<塗布仕上げ>
その素地調整の後、床用に開発された溶剤系のポリウレタン塗料(大谷塗料株式会社製)を用い、夫々、下地塗装と上塗り塗装の2回塗布で仕上げを行うことで実施例1〜4の試験板を作製した。なお、塗布量は、約200g/mとした。
(比較例1)
比較例1の試験板は以下のようにして作製した。
<木質材料>
木質材料としては、上記実施例1〜4と同様、表面を回転かんな盤によって仕上げた幅約110mm、厚さ15mm、長さ2000mmのスギ板目板を用い、そのスギ板目板を長さ400mmに1枚裁断した。
<素地調整>
そして、その長さ400mmに1枚裁断したスギ板目板の表面を#180のサンドペーパーで研磨して素地調整を行った。
<塗布仕上げ>
その素地調整の後、上記実施例1〜4と同一のポリウレタン塗料を用い、下地塗装と上塗り塗装の2回塗布で仕上げを行うことで比較例1の試験板を作製した。なお、塗布量は、約200g/mとした。
上記のように作製された実施例1〜4及び比較例1の試験板を用いて、以下のような性能評価試験を実施した。
<耐摩耗性試験>
JIS Z 2101 木材の試験方法 16.摩耗試験 16.1研磨紙法に従い、テーバー式摩耗試験機を用いて、耐摩耗性を評価した。
この耐摩耗性評価試験にあたって、実施例1〜4及び比較例1の試験板の長さを400mmから110mmに鋸断した後、ドリルで中心に直径6mmの穴を開けて試験を行った。なお、このように直径6mmの穴を開けた実施例1〜4及び比較例1の試験板は、試験を行う前に、20℃で相対湿度約60%の試験室内にて十分に調湿した後、試験を行った。
一方、この耐摩耗性評価試験にて用いた研磨紙は、100回転ごとに歯ブラシで付着した摩耗粉を取り除くようにした。なお、同JISでは、摩耗に伴う重量減少量と、試験板の密度及び摩耗面積から摩耗量(摩耗の深さ)を算出することになっているが、実施例1〜4の試験板は素地調整として熱ロールプレスを用いて、表面組織を圧壊させているため、摩耗した部分の密度と全体の密度が異なる。そのため、この算出方法では正確な性能比較ができないため、表面粗さ計で直接、摩耗輪の形状を測定して、摩耗により生じた溝の断面積と、摩耗量(摩耗により生じた溝の深さの平均値)を求めることとした。その試験結果を表1に示す。
Figure 2013049159
上記表1より、実施例1は、比較例1に比べ深さ及び断面積が多少減少しているものの、実施例2〜4は、比較例1に比べ深さ及び断面積が大きく減少していることが分かる。そのため、従来の素地方法に比べ、熱ロールプレスを用いて、厚みを圧縮(特に0.5mm〜2mm)し、表面組織を圧壊させた素地方法の方が耐摩耗性に優れていることが分かる。
<引っかき試験>
JIS K 5600−5−4 塗膜の機械的性質 第5部:引っかき硬度(鉛筆法)に準拠して、荷重を750gとして鉛筆引っかき試験を実施した。その試験結果を表2に示す。
Figure 2013049159
上記表2より、実施例1は、比較例1と同じ結果となったが、実施例2〜4は、比較例1で生じた傷が一切認められないことが分かる。そのため、従来の素地方法に比べ、熱ロールプレスを用いて、厚みを圧縮(特に0.5mm〜2mm)し、表面組織を圧壊させた素地方法の方が、表面硬度が優れていることが分かる。
<鋼球落下試験>
直径約25mm、重さ0.65N(66.7g)の鋼球を1mの高さから自然落下させ、その際生じたくぼみの形状を表面粗さ計で直接測定した。なお、くぼみ形状は、ほぼ円形であったが、その中心を通り、くぼみの最も深い部分を含む断面の形状を測定し、最大の傷深さを求めた。その試験結果を表3に示す。
Figure 2013049159
上記表3より、実施例1は、比較例1と略同じ結果となったが、実施例2〜4は、比較例1で生じた深さの半分以下の深さであることが分かる。そのため、従来の素地方法に比べ、熱ロールプレスを用いて、厚みを圧縮(特に0.5mm〜2mm)し、表面組織を圧壊させた素地方法の方が、落下物による傷が顕著につきにくくなっていることが明らかとなった。
<試験結果の評価>
上記試験結果により、塗装回数を減じたとしても、塗装の主たる目的である、耐摩耗性、硬さ、傷つきにくさが従来の素地方法に比べ、飛躍的に向上していることが分かった。そして、耐摩耗性、硬さ、傷つきにくさが従来の素地方法に比べ、飛躍的に向上していることより、塗料の染み込みを抑制することとなり、塗装回数を減じたとしても、従来と同程度の塗膜(例えば0.08mm)を得られることが分かった。
次に、実施例5〜7及び比較例2を用いて、塗装試験を行った。
(実施例5〜7)
実施例5〜7の試験板は以下のようにして作製した。
<木質材料>
木質材料としては、気乾状態で表面を帯のこ盤によって仕上げた幅約110mm、厚さ15mm、長さ2000mmのスギ板目板を用い、そのスギ板目板を長さ400mmずつ3枚裁断した。
<素地調整>
そして、その長さ400mmずつ3枚裁断したスギ板目板を温度約150℃の熱ロールプレス(株式会社望月機工製作所製のウッドタフナー)を用いて、厚みを順に、0.5mm,1mm,2mmに圧縮処理し、表面組織を圧壊させることで素地調整を行い実施例5〜7の試験板を作製した。
(比較例2)
比較例2の試験板は以下のようにして作製した。
<木質材料>
木質材料としては、上記実施例5〜7と同様、表面を帯のこ盤によって仕上げた幅約110mm、厚さ15mm、長さ2000mmのスギ板目板を用い、そのスギ板目板を長さ400mmに1枚裁断した。
<素地調整>
そして、その長さ400mmに1枚裁断したスギ板目板の表面を#180のサンドペーパーで研磨して素地調整を行い比較例2の試験板を作成した。その際、のこ挽きで生じた凹凸の意匠性を損なわないように、のこ目の毛羽立ちだけを除くようにした。
<塗装試験>
オイルステイン(日本ペイント株式会社製)を用い、刷毛ならびにウェスでの塗装試験を実施した。その結果を表4に示す。
Figure 2013049159
上記表4に示すように、実施例5〜7は、刷毛、ウェスのいずれの方法でも難なくオイルステインの塗布ができ塗布作業が容易であった。しかしながら、比較例2は、鋸挽きで生じた凹凸に刷毛やウェスが引っかかり、オイルステインが思うように伸びず、刷毛やウェスの毛が抜けて素地に残り、作業性が非常に悪くなるばかりであった。
<塗装試験結果の評価>
上記塗装試験結果により、熱ロールプレスを用いて、厚みを圧縮(特に0.5mm〜2mm)して表面を圧壊させるような素地調整を行えば、木質材料が、凹凸があるような鋸挽き材料であったとしても、塗装が可能であることが分かった。
以上説明した本実施形態によれば、木質材料の表面に熱を与えながら当該木質材料の厚みを圧縮し、その木質材料の表面組織を圧壊して素地調整を行っているため、サンダーダスト等の埃を抑制することができる。そしてさらには、木質材料の表面に熱を与えながら当該木質材料の厚みを圧縮し、その木質材料の表面組織を圧壊して素地調整を行っているだけであるから、非常に簡便に安価に素地調整を行うことできる。また、上記素地調整を行うことにより、従来の塗装回数より少ない回数で同様の塗膜を得ることができる。
一方、上記のような素地調整を行えば、凹凸があるような鋸挽き材料であったとしても塗装が可能となり、その凹凸を活かした塗装木質材を生成することが可能である。それゆえ、意匠性に優れた塗装木質材を生成することができる。

Claims (8)

  1. 木質材料の表面に熱を与えながら当該木質材料の厚みを圧縮し、前記木質材料の表面組織を圧壊することを特徴とする木質材料の素地調整方法。
  2. ロールプレスを用いて、前記木質材料の表面に熱を与えながら当該木質材料の厚みを圧縮してなることを特徴とする請求項1に記載の木質材料の素地調整方法。
  3. 前記圧縮時の木質材料の厚みの圧縮量が0.5mm〜2mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の木質材料の素地調整方法。
  4. 前記木質材料は、鋸挽き仕上げされた材料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の木質材料の素地調整方法。
  5. 木質材料の表面に熱を与えながら当該木質材料の厚みを圧縮し、前記木質材料の表面組織を圧壊し、その上に塗装を施してなることを特徴とする塗装木質材。
  6. ロールプレスを用いて、前記木質材料の表面に熱を与えながら当該木質材料の厚みを圧縮してなることを特徴とする請求項5に記載の塗装木質材。
  7. 前記圧縮時の木質材料の厚みの圧縮量が0.5mm〜2mmであることを特徴とする請求項5又は6に記載の塗装木質材。
  8. 前記木質材料は、鋸挽き仕上げされた材料であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の塗装木質材。

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