JP2013043859A - 病原性細菌用抗菌剤、及びその用途 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記一般式(1)で表されるナイボマイシンエステル誘導体。
前記一般式(1)において、R1は、OCOCH3、OCOCH(CH3)2、及びOCOCH2CH2CH3のいずれかを表す。
【選択図】なし
Description
<1> 下記一般式(1)で表されるナイボマイシンエステル誘導体の少なくともいずれかを含有し、少なくとも1種の病原性細菌に有効であることを特徴とする病原性細菌用抗菌剤である。
<2> 病原性細菌が、黄色ブドウ球菌、腸球菌、肺炎球菌、及び抗酸菌の少なくともいずれかである前記<1>に記載の病原性細菌用抗菌剤である。
<3> 黄色ブドウ球菌が、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン中間耐性黄色ブドウ球菌(VISA)、及びバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)の少なくともいずれかである前記<2>に記載の病原性細菌用抗菌剤である。
<4> 腸球菌が、キノロン類感受性腸球菌、キノロン類耐性腸球菌、及びグリコペプチド類耐性腸球菌の少なくともいずれかである前記<2>に記載の病原性細菌用抗菌剤である。
<5> 肺炎球菌が、キノロン類感受性肺炎球菌、キノロン類耐性肺炎球菌、及びβ−ラクタム類耐性肺炎球菌の少なくともいずれかである前記<2>に記載の病原性細菌用抗菌剤である。
<6> 抗酸菌が、BCG、Mycobacterium tuberculosis(結核菌)、Mycobacterium smegmatis、Mycobacterium abcessus、及びMycobacterium aviumの少なくともいずれかである前記<2>に記載の病原性細菌用抗菌剤である。
<7> 前記<1>から<6>のいずれかに記載の病原性細菌用抗菌剤を含有することを特徴とする感染症治療薬である。
<8> MSSA感染症治療薬、MRSA感染症治療薬、VISA感染症治療薬、及びVRSA感染症治療薬の少なくともいずれかである前記<7>に記載の感染症治療薬である。
<9> 腸球菌感染症治療薬、肺炎球菌感染症治療薬、及び抗酸菌感染症治療薬の少なくともいずれかである前記<7>に記載の感染症治療薬である。
<10> 少なくとも1種の病原性細菌に感染した個体の治療における使用のための、前記<1>から<6>のいずれかに記載の病原性細菌用抗菌剤である。
<11> 少なくとも1種の病原性細菌に感染した個体の治療における使用のための、前記<7>から<9>のいずれかに記載の感染症治療薬である。
<12> 少なくとも1種の病原性細菌に感染した個体を治療するための方法であって、個体に下記一般式(1)で表されるナイボマイシンエステル誘導体の少なくともいずれかを含有し、前記病原性細菌に有効である病原性細菌用抗菌剤を投与することを特徴とする方法である。
<13> 病原性細菌が、黄色ブドウ球菌、腸球菌、肺炎球菌、及び抗酸菌の少なくともいずれかである前記<12>に記載の方法である。
<14> 黄色ブドウ球菌が、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン中間耐性黄色ブドウ球菌(VISA)、及びバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)の少なくともいずれかである前記<13>に記載の方法である。
<15> 腸球菌が、キノロン類感受性腸球菌、キノロン類耐性腸球菌、及びグリコペプチド類耐性腸球菌の少なくともいずれかである前記<13>に記載の方法である。
<16> 肺炎球菌が、キノロン類感受性肺炎球菌、キノロン類耐性肺炎球菌、及びβ−ラクタム類耐性肺炎球菌の少なくともいずれかである前記<13>に記載の方法である。
<17> 抗酸菌が、BCG、Mycobacterium tuberculosis(結核菌)、Mycobacterium smegmatis、Mycobacterium abcessus、及びMycobacterium aviumの少なくともいずれかである前記<13>に記載の方法である。
<18> 病原性細菌用抗菌剤が、該病原性細菌用抗菌剤を含有する感染症治療薬の形で個体に投与される前記<12>から<17>のいずれかに記載の方法である。
本発明の病原性細菌用抗菌剤は、下記一般式(1)で表されるナイボマイシンエステル誘導体の少なくともいずれかを含有し、必要に応じて、更にその他の成分を含有する。
前記病原性細菌用抗菌剤における前記ナイボマイシンエステル誘導体の少なくともいずれかの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記病原性細菌用抗菌剤は、前記ナイボマイシンエステル誘導体の少なくともいずれかそのものであってもよく、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記ナイボマイシンエステル誘導体の少なくともいずれかの製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法から適宜選択することができ、例えば、ナイボマイシンにエステル基を導入する方法、ナイボマイシンエステル誘導体を生産する微生物から製造する方法、ナイボマイシン類及びその誘導体の少なくともいずれかを生産する微生物から製造して得られたナイボマイシン類及びその誘導体から合成する方法、遺伝子工学的手法により製造する方法、化学合成により製造する方法などが挙げられる(Strelitz F,et al.,PNAS,1955,41(9),620−624.;Rinehart KL Jr,et al.,J Am Chem Soc,1970,92(23),6994−6995.;Naganawa H,et al.,J Antibiot,1970,23(7),365−368.参照)。
なお、ナイボマイシン及びその誘導体であるデオキシナイボマイシンは、前記一般式(1)で表される化合物において、R1が、それぞれOH及びHである化合物であり、国際公開第2011/058923号パンフレットに記載の製造方法により製造することができる。
また、前記ナイボマイシン類及びその誘導体の少なくともいずれかを生産できるその他の微生物についても、常法によって、自然界より分離することが可能である。
なお、前記ストレプトマイセス・ハイリナム株を含め、前記ナイボマイシン類及びその誘導体の少なくともいずれかを生産する微生物を、放射線照射やその他の変異処理に供することにより、前記ナイボマイシン類及びその誘導体の少なくともいずれかを生産する生産能を高めることも可能である。また、遺伝子工学的手法により前記ナイボマイシン類及びその誘導体の少なくともいずれかを生産する生産能を高めてもよい。
これらの材料は、ナイボマイシン類生産菌が利用し、ナイボマイシン類の生産に役立つものであればよく、公知の培養材料はすべて用いることができる。
前記培養の温度としては、前記ナイボマイシン類生産菌の発育が実質的に阻害されずに、前記ナイボマイシン類及びその誘導体の少なくともいずれかを生産し得る範囲であれば、特に制限はなく、使用するナイボマイシン類生産菌などに応じて適宜選択することができるが、25℃〜35℃が好ましい。
前記培養の期間としては、特に制限はなく、前記ナイボマイシン類及びその誘導体の少なくともいずれかの蓄積に合わせて適宜選択することができる。通常、培養3日間〜10日間で前記ナイボマイシン類及びその誘導体の少なくともいずれかの蓄積が最高となる。
前記採取方法の具体例としては、前記培養による培養上清を、水と混ざらない溶媒により抽出する方法、各種吸着剤に対する吸着親和性の差を利用する方法、ゲルろ過法、向流分配を利用したクロマトグラフィー法等を、単独又は組み合わせて用いる方法などが挙げられる。
また、分離した菌体からは、適当な有機溶媒を用いた抽出方法や、菌体破砕による溶出方法などにより、前記ナイボマイシン類及びその誘導体の少なくともいずれかを菌体から抽出し、上記と同様に単離精製して採取することができる。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エタノール、水、デンプン等の薬理学的に許容され得る担体などが挙げられる。
前記病原性細菌用抗菌剤中の、前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、前記ナイボマイシン類及びその誘導体の少なくともいずれかの効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができる。
前記病原性細菌用抗菌剤が抗菌活性を示す対象としては、少なくとも1種の病原性細菌であれば、薬剤耐性の有無に関わらず、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、黄色ブドウ球菌、腸球菌、肺炎球菌、抗酸菌などが好ましい。また、薬剤耐性上の分類では、キノロン類感受性菌、キノロン類耐性菌、グリコペプチド類耐性菌、β−ラクタム類耐性菌、ペニシリン類耐性菌、及びこれら耐性菌の複合型などが好適に挙げられる。
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus:S.aureus)は、通性嫌気性のグラム陽性球菌である。ヒトや動物の皮膚、消化管常在菌であるブドウ球菌の中では、毒性が高く、中でも、薬剤耐性を獲得した薬剤耐性黄色ブドウ球菌は、病院感染の最も主要な病原性細菌である。
前記黄色ブドウ球菌としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(methicillin−susceptible S.aureus:MSSA)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin−resistant S.aureus:MRSA)、バンコマイシン中間耐性黄色ブドウ球菌(vancomycin−intermediate S.aureus:VISA)、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(vancomycin−resistant S.aureus:VRSA)、及びこれら耐性菌の複合型であるMRSAのVISA臨床菌株、MSSAのVISA臨床菌株などが挙げられる。
腸球菌(Enterococcus faecalis:E.faecalis)は、主にヒトを含む哺乳類の腸管内に存在する常在菌であり、通性嫌気性でグラム陽性の連鎖球菌である。
前記腸球菌の菌種としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Enterococcus属のE.faecalis、E.faecium、E.avium、E.casseliflavus、E.gallinarum、E.flavescensなどが挙げられる。
また、薬剤耐性上の分類では、前記腸球菌としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、キノロン類感受性腸球菌、キノロン類耐性腸球菌、グリコペプチド類耐性腸球菌、及びこれら耐性菌の複合型などが挙げられる。
肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae:S.pneumoniae)は、肺炎などの呼吸器の感染症や、敗血症、髄膜炎などの全身性感染症を引き起こす強毒菌であり、グラム陽性の双球菌である。
また、薬剤耐性上の分類では、前記肺炎球菌としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、キノロン類感受性肺炎球菌、キノロン類耐性肺炎球菌、β−ラクタム類耐性肺炎球菌、及びこれら耐性菌の複合型などが挙げられる。
抗酸菌は、グラム陽性桿菌である結核菌を含むマイコバクテリウム属に属する細菌グループの総称であり、その菌種としては、例えば、BCG、Mycobacterium tuberculosis(結核菌)、Mycobacterium smegmatis、Mycobacterium abcessus、Mycobacterium aviumなどが挙げられる。これらの中でも、Mycobacterium tuberculosis(結核菌)、Mycobacterium aviumが好ましい。
また、薬剤耐性上の分類では、前記抗酸菌としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、キノロン類感受性抗酸菌、キノロン類耐性抗酸菌などが挙げられる。
前記キノロン類は、DNAジャイレース(DNA gyrase)及びトポイソメラーゼIVの少なくともいずれか(以下、単に「トポイソメラーゼ」と称することがある。)の活性を阻害し、細菌のDNA合成を阻害する合成抗菌薬であり、医薬品や動物用医薬品として広く用いられている。
前記オールドキノロン類としては、例えば、ナリジクス酸、ピロミド酸、ピペミド酸などが挙げられる。
前記ニューキノロン類は、例えば、ノルフロキサシン、レボフロキサシン、オフロキサシン、エノキサシン、塩化シプロフロキサシン、トシル酸トスフロキサシン、塩酸ロメフロキサシン、フレロキサシン、スパフロキサシン、ガチフロキシン、メシル酸パブフロキサシンなどが挙げられる。
前記I型トポイソメラーゼは、DNA2本鎖の一方だけを切断する酵素であり、トポイソメラーゼI及びトポイソメラーゼIIIが存在する。
前記II型トポイソメラーゼは、DNA2本鎖の2本とも切断する酵素であり、前記DNAジャイレース(トポイソメラーゼII)及び前記トポイソメラーゼIVがこれに分類される。
前記キノロン類耐性菌は、トポイソメラーゼのAサブユニットに作用するため、Aサブユニットをコードする遺伝子であるgyrA及びgrlAの少なくともいずれかに変異を有することにより、キノロン類に対する耐性を獲得した細菌である。
また、前記キノロン類感受性菌としては、後述する実施例の表1−2、表2−2、表3−2、表4〜7、表8−1、表8−2、表9〜11などにおいて、レボフロキサシンのMICが4mg/L未満である菌株などが挙げられる。
ここで、「MIC」は、最小発育阻止濃度である。
また、前記キノロン類耐性菌としては、後述する実施例の表1−2、表2−2、表3−2、表4〜7、表8−1、表8−2、表9〜11などにおいて、レボフロキサシンのMICが4mg/L以上である菌株などが挙げられる。
前記グリコペプチド類は、細菌の細胞壁合成前駆体であるD−アラニル−D−アラニン構造と強く結合し、細菌の細胞壁の合成を阻害する合成抗菌薬であり、医薬品や動物用医薬品として広く用いられている。
MRSAなど抗生物質が効かない菌にも効果があるが、バンコマイシン治療が無効なバンコマイシン中間耐性黄色ブドウ球菌(VISA)、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)が発見され、これらの菌に対しては無効である。
前記グリコペプチド類としては、例えば、バンコマイシン、テイコプランニンなどが挙げられる。
また、後述する実施例の表3−2等に挙げたバンコマイシン耐性菌、テイコプラニン耐性菌などが挙げられる。
ここで、「バンコマイシン耐性菌」とは、バンコマイシンのMICが4mg/L以上の菌株であり、「テイコプラニン耐性菌」とは、テイコプラニンのMICが16mg/L以上の菌株である。
前記β−ラクタム類は、その構造が細菌の細胞壁を架橋するD−アラニル−D−アラニンに似ているため、細菌のトランスペプチターゼがペニシリンとアラニン構造とを誤認識し、細胞壁の架橋が行われなくなるという作用機序を有する、細菌の細胞壁合成を阻害する合成抗菌薬である。
前記β−ラクタム類としては、例えば、オキサシリン、イミペネム、ペニシリン、メチシリン、セファロスポリン、アンピシリン、カルバペネム系、モノバクタム系などが挙げられる。
また、後述する実施例の表3−2、表4等に挙げたオキサシリン耐性菌、表8−1、8−2等に挙げたペニシリン耐性菌などが挙げられる。
ここで、「オキサシリン耐性菌」とは、MRSAに対しては、オキサシリンのMICが4mg/L以上の菌株を指す。また、「ペニシリン耐性菌」とは、肺炎球菌に対しては、髄膜炎の場合、0.12mg/L以上の菌株を指し、肺炎等のその他の感染症の場合は、8mg/L以上の菌株を指す(Clinical and Laboratory Standards Institute. Performance standards for antimicrobial susceptibility tasting;18th informational supplement.M100−S18.Wayne,PA: Clinical and Laboratory Standards Institute,2008.参照)。
前記病原性細菌用抗菌剤の剤型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、経口固形剤、経口液剤、注射剤、吸入散剤などが挙げられる。
前記経口固形剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤などが挙げられる。
前記経口固形剤の製造方法としては、特に制限はなく、常法を使用することができ、例えば、前記ナイボマイシンエステル誘導体の少なくともいずれかに、賦形剤、及び必要に応じて、前記その他の成分、各種添加剤を加えることにより製造することができる。ここで、前記賦形剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、珪酸などが挙げられる。また、前記添加剤としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味/矯臭剤などが挙げられる。
前記結合剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
前記崩壊剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖などが挙げられる。
前記滑沢剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化チタン、酸化鉄などが挙げられる。
前記矯味/矯臭剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸などが挙げられる。
前記経口液剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤などが挙げられる。
前記経口液剤の製造方法としては、特に制限はなく、常法を使用することができ、例えば、前記ナイボマイシンエステル誘導体の少なくともいずれか、及び必要に応じて、前記その他の成分に、添加剤を加えることにより製造することができる。ここで、前記添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、矯味/矯臭剤、緩衝剤、安定化剤などが挙げられる。
前記緩衝剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。
前記安定化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トラガント、アラビアゴム、ゼラチンなどが挙げられる。
前記注射剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶液、懸濁液、用時溶解用固形剤などが挙げられる。
前記注射剤の製造方法としては、特に制限はなく、常法を使用することができ、例えば、前記ナイボマイシンエステル誘導体の少なくともいずれか、及び必要に応じて、前記その他の成分に、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤などを添加することにより製造することができる。
ここで、前記pH調節剤及び前記緩衝剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、前記安定化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸などが挙げられる。前記等張化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖などが挙げられる。前記局所麻酔剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩酸プロカイン、塩酸リドカインなどが挙げられる。
前記病原性細菌用抗菌剤の投与方法、投与量、投与時期、及び投与対象(個体)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記投与方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、経口投与法、注射による方法、吸入による方法などが挙げられる。
前記投与量としては、特に制限はなく、投与対象個体の年齢、体重、体質、症状、他の成分を有効成分とする医薬の投与の有無など、様々な要因を考慮して適宜選択することができる。
前記投与対象(個体)としては、少なくとも1種の前記病原性細菌に感染した個体であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、その動物種としては、例えば、ヒト、サル、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、トリなどが挙げられるが、これらの中でも、ヒトに好適に用いられる。
前記抗菌活性を測定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、MIC(最小発育阻止濃度)を求める方法などが挙げられる。
前記MICを求める方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜用いることができる。
本発明において、「薬剤耐性である」又は「薬剤耐性菌」とは、ある病原性細菌に対して該薬剤を投与した際の抗菌活性が低い(又は抗菌力が弱い)ことを意味する。この場合、前記病原性細菌に対するMICとしては、特に制限はなく、細菌の種類、用いる薬剤などに応じて適宜選択することができ、例えば、キノロン類耐性菌では、レボフロキサシンのMICが4mg/L以上;バンコマイシン耐性菌では、バンコマイシンのMICが4mg/L以上;テイコプラニン耐性菌では、テイコプラニンのMICが16mg/L以上;オキサシリン耐性菌では、MRSAに対しては、オキサシリンのMICが4mg/L以上;ペニシリン耐性肺炎球菌では、髄膜炎の場合、0.12mg/L以上、肺炎等のその他の感染症の場合は、8mg/L以上などが挙げられる。
また、本発明において、「薬剤感受性である」又は「薬剤感受性菌」、とは、ある病原性細菌に対して該薬剤を投与した際の抗菌活性が高い(又は抗菌力が強い)ことを意味する。この場合、前記病原性細菌に対するMICとしては、特に制限はなく、細菌の種類、用いる薬剤などに応じて適宜選択することができる。
ここで、「抗菌活性が高い」又は「抗菌力が強い」とは、ある薬剤について、ある病原性細菌に対するMICが低いことをいい、他の薬剤と比較した場合、該他の薬剤によるMICよりも該薬剤によるMICが低いときに、該他の薬剤よりも該薬剤において「抗菌活性が高い」という。また、前記病原性細菌に対するMICとしては、特に制限はなく、細菌の種類、用いる薬剤などに応じて適宜選択することができるが、8mg/L以下が好ましく、4mg/L以下がより好ましく、2mg/L以下が更に好ましく、1mg/L以下が特に好ましい。
前記病原性細菌用抗菌剤は、1種単独で使用してもよいし、他の成分を有効成分とする医薬と併せて使用してもよい。また、前記病原性細菌用抗菌剤は、他の成分を有効成分とする医薬中に、配合された状態、即ち、該薬剤耐性菌用抗菌剤を含有する感染症治療薬の形で使用してもよい。
前記病原性細菌用抗菌剤は、薬剤耐性の有無に関わらず、黄色ブドウ球菌、腸球菌、肺炎球菌、抗酸菌などの様々な病原性細菌に対して幅広い抗菌スペクトラムを有し、キノロン類、グリコペプチド類、β−ラクタム類、ペニシリン類などの従来の抗菌剤に比べて抗菌活性が高く、副作用がなく、血清存在下で活性が低下せず、簡単に製造可能であることから、病原性細菌用抗菌剤、及び前記病原性細菌用抗菌剤を含有する感染症治療薬として好適に利用可能である。
本発明の感染症治療薬は、本発明の病原性細菌用抗菌剤を含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
前記感染症治療薬における前記病原性細菌用抗菌剤は、本発明の病原性細菌用抗菌剤において説明した病原性細菌用抗菌剤である。
前記感染症治療薬における前記病原性細菌用抗菌剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記感染症治療薬は、前記病原性細菌用抗菌剤そのものであってもよい。
前記感染症治療薬における前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エタノール、水、デンプン等の薬理学的に許容され得る担体などが挙げられる。
前記感染症治療薬中の、前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、前記ナイボマイシンエステル誘導体の少なくともいずれかの効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができる。
前記感染症治療薬は、1種単独で使用してもよいし、他の成分を有効成分とする医薬と併せて使用してもよい。また、前記感染症治療薬は、他の成分を有効成分とする医薬中に、配合された状態で使用してもよい。
前記感染症治療薬の対象となる感染症としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、MSSA感染症、MRSA感染症、VISA感染症、及びVRSA感染症の少なくともいずれかが特に好ましい。
また、前記感染症治療薬の対象となる感染症としては、グラム陽性菌による感染症が好ましく、腸球菌感染症、肺炎球菌感染症、抗酸菌感染症などがより好ましい。
前記感染症治療薬の剤型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、経口固形剤、経口液剤、注射剤、吸入散剤などが挙げられる。
これらの経口固形剤、経口液剤、注射剤、及び吸入散剤としては、本発明の病原性細菌用抗菌剤において説明した経口固形剤、経口液剤、注射剤、及び吸入散剤において、前記ナイボマイシンエステル誘導体に代えて、前記病原性細菌用抗菌剤を用いたものが挙げられる。
前記感染症治療薬の投与方法、投与量、投与時期、及び投与対象としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
これらの投与量、投与時期、及び投与対象(個体)としては、本発明の病原性細菌用抗菌剤において説明した投与量、投与時期、及び投与対象(個体)において、前記病原性細菌用抗菌剤に代えて、前記感染症治療薬を用いたものが挙げられる。
前記感染症治療薬は、本発明の病原性細菌用抗菌剤を含有することから、薬剤耐性の有無に関わらず、黄色ブドウ球菌、腸球菌、肺炎球菌、抗酸菌などの様々な病原性細菌に対して幅広い抗菌スペクトラムを有し、キノロン類、グリコペプチド類、β−ラクタム類、ペニシリン類などの従来の抗菌剤に比べて抗菌活性が高く、副作用がなく、血清存在下で活性が低下せず、簡単に製造可能であるため、薬剤耐性の有無に関わらず、黄色ブドウ球菌、腸球菌、肺炎球菌、抗酸菌などの様々な病原性細菌による感染症、特にMSSA感染症、MRSA感染症、VISA感染症、及びVRSA感染症の少なくともいずれかに好適に利用可能である。また、前記感染症治療薬は、腸球菌感染症、肺炎球菌感染症、及び抗酸菌感染症の少なくともいずれかにも好適に利用可能である。
ナイボマイシン8mgにピリジン5mLを加え、次いで無水酢酸20μLを加え室温で撹拌した。14時間後、メタノール1mLを加えて1時間撹拌し、アセチルナイボマイシンの合成反応を終了した。このアセチルナイボマイシンを含む反応液を減圧下で濃縮乾固し、得られた乾固をクロロホルム−メタノールの混合溶媒50mLでアセチルナイボマイシンを抽出した。得られたアセチルナイボマイシン粗抽出物を、更に、下記のHPLC条件で精製した。
アセチルナイボマイシンは、溶出時間34分間〜38分間に溶出され、これを集め減圧下で濃縮乾固することにより、純粋なアセチルナイボマイシンを8.4mg得ることができた。
なお、ナイボマイシンは、国際公開第2011/058923号パンフレットに記載の製造方法により製造した。
<HPLC条件>
装置: SSC−3465(株式会社センシュー科学製)
カラム: CAPCELL PAK C18、20mm径×250mm
(資生堂株式会社製)
カラム温度: 25℃
流速: 8.0mL/分間
検出器: UV検出器(SSC−5410、株式会社センシュー科学製)
展開溶媒A: アセトニトリル
展開溶媒B: 0.01%トリフルオロ酢酸水
勾配スケジュール: A B
0分〜45分 5%→50% 95%→50%
45分以降 50% 50%
ナイボマイシン8mgにピリジン5mLを加え、次いでイソブチリルクロライド40μLを加え室温で撹拌した。14時間後、メタノール1mLを加えて1時間撹拌し、イソブチリルナイボマイシンの合成反応を終了した。このイソブチリルナイボマイシンを含む反応液を減圧下で濃縮乾固し、得られた乾固をクロロホルム−メタノールの混合溶媒50mLでイソブチリルナイボマイシンを抽出した。得られたイソブチリルナイボマイシン粗抽出物を、更に、上記製造例1のHPLC条件で精製した。
イソブチリルナイボマイシンは、溶出時間44分間〜47分間に溶出され、これを集め減圧下で濃縮乾固することにより、純粋なイソブチリルナイボマイシンを5.8mg得ることができた。
ナイボマイシン8mgにピリジン5mLを加え、次いでブチリルクロライド40μLを加え室温で撹拌した。14時間後、メタノール1mLを加えて1時間撹拌し、ブチリルナイボマイシンの合成反応を終了した。このブチリルナイボマイシンを含む反応液を減圧下で濃縮乾固し、得られた乾固をクロロホルム−メタノールの混合溶媒50mLでブチリルナイボマイシンを抽出した。得られたブチリルナイボマイシン粗抽出物を、更に、上記製造例1のHPLC条件で精製した。
ブチリルナイボマイシンは、溶出時間45分間〜48分間に溶出され、これを集め減圧下で濃縮乾固することにより、純粋なブチリルナイボマイシンを6.9mg得ることができた。
(1) 分子式は、C18H16O5N2で表された。
(2) 高分解能質量分析(HRESIMS:正イオンモード)の結果、実験値は、m/z 341.1138(M+H)+であり、計算値は、m/z 341.1132(C18H16O5N2として)であった。
(3) プロトン核磁気共鳴スペクトルとして、600MHzにおいて重ジメチルスルホキシド中で、25℃にて測定した1H−NMRスペクトルのチャートは、図1に示す通りである。
(4) 炭素13核磁気共鳴スペクトルとして、150MHzにおいて重ジメチルスルホキシド中で25℃にて測定した13C−NMRスペクトルのチャートは、図2に示す通りである。
(1) 分子式は、C20H20O5N2で表された。
(2) 高分解能質量分析(HRESIMS:正イオンモード)の結果、実験値は、m/z 369.1451(M+H)+であり、計算値は、m/z 369.1445(C20H20O5N2として)であった。
(3) プロトン核磁気共鳴スペクトルとして、600MHzにおいて重ジメチルスルホキシド中で、25℃にて測定した1H−NMRスペクトルのチャートは、図3に示す通りである。
(4) 炭素13核磁気共鳴スペクトルとして、150MHzにおいて重ジメチルスルホキシド中で25℃にて測定した13C−NMRスペクトルのチャートは、図4に示す通りである。
(1) 分子式は、C20H20O5N2で表された。
(2) 高分解能質量分析(HRESIMS:正イオンモード)の結果、実験値は、m/z 369.1447(M+H)+であり、計算値は、m/z 369.1445(C20H20O5N2として)であった。
(3) プロトン核磁気共鳴スペクトルとして、600MHzにおいて重クロロホルム中で、25℃にて測定した1H−NMRスペクトルのチャートは、図5に示す通りである。
(4) 炭素13核磁気共鳴スペクトルとして、150MHzにおいて重クロロホルム中で25℃にて測定した13C−NMRスペクトルのチャートは、図6に示す通りである。
表1−1に示すメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(methicillin−susceptible S.aureus;MSSA)、MRSA、及びこれらの変異株を用い、キノロン類、及びナイボマイシン類を用い、各菌株に対する抗菌活性について、下記に示すMIC測定方法を用いて検討した。
ナイボマイシン類として、ナイボマイシンエステル誘導体:製造例1〜3で製造したアセチルナイボマイシン(以下、「ANM」と称することがある。)、イソブチリルナイボマイシン(以下、「NM2」と称することがある。)、及びブチリルナイボマイシン(以下、「NM3」と称することがある。)、並びに、国際公開第2011/058923号パンフレットに記載のナイボマイシン(以下、「NM」と称することがある。)、及びデオキシナイボマイシン(以下、「DNM」と称することがある。)を用いた。なお、NM及びDNMは、国際公開第2011/058923号パンフレットに記載の製造方法により製造した。
ここで、前記MSSAとは、β−ラクタム類のオキサシリン(バクトシルbctocill、GlaxoSmithKline plc製;以下、「OXA」と称することがある。)のMICが4mg/L未満の菌株を意味する。
−各菌株の前培養−
表1−1に示す各菌株を4mLの培地(Tryptical Soy Broth:TSB、Becton Dickinson社製)で37℃にて一晩振盪培養した。コントロールとしては、FDA209Pを用いた。
培養終了後、カチオン調整Mueller Hinton Broth(CAMHB、Becton Dickinson社製)に懸濁し、吸光度計を用いて578nmで0.3の吸光度となるようにCAMHBで菌液を調製し、更にCAMHBで500倍希釈した。
キノロン類及びナイボマイシン類(ANM、NM2、NM3、NM及びDNM)は、CAMHBにて、それぞれ256mg/Lに調製した。ここから、2倍段階希釈を行い、0.125mg/Lまで11段階の希釈を行った。
前記各濃度のキノロン類及びナイボマイシン類を含むCAMHB 50μL/ウェルに、前記500倍希釈した前培養した各菌液をそれぞれ50μL/ウェル添加し、37℃で一晩静置培養した。
培養終了後、菌の増殖の有無を濁度にて目視して判定し、各菌株のMICを求めた。ここで、キノロン類耐性黄色ブドウ球菌は、LVFXのMICが4mg/L以上の菌株である。ナイボマイシン類の評価基準としては、MICが8mg/L以下となる場合に抗菌活性を有する(有効である)と評価した。結果を表1−2に示す。
なお、試験例1において、ナイボマイシン類が、変異したgyrA及びgrlAの少なくともいずれかに作用しているか否かは、前記評価基準で評価した場合のナイボマイシン類感受性菌と、ナイボマイシン耐性菌とにおけるMIC値が、gyrA及びgrlAの少なくともいずれかの遺伝子の変異により変化したか否かをみることで判断することができ、これらのMICの値が4倍以上変化する場合を「有意」であると評価した。即ち、gyrA及びgrlAの少なくともいずれかの遺伝子が変異した変異株におけるナイボマイシン類のMIC値が、親株のMIC値と比較して1/4(変異株/親株)の場合を「有意」であると評価した。
これに対し、ANMは、キノロン類耐性を有する臨床分離黄色ブドウ球菌に対して、ナイボマイシン類の中で最も抗菌力が高いことが分かった。また、ANMは、キノロン類感受性菌に対しても、比較的強い抗菌力(MIC≦4mg/L)を示すことが分かった。
また、NM2も、臨床分離黄色ブドウ球菌に対してアセチルナイボマイシンよりも抗菌力が低いものの、トポイソメラーゼ遺伝子に変異をもたないキノロン類感受性の臨床分離株には、NM及びDNMに対して同等以上の抗菌力を持つことが分かった。
また、ナイボマイシン類は、Ser84がLeuに変異したDNAジャイレースに共通して作用していることが確認されたが、ANMは、Ser80がフェニルアラニン又はチロシンに変異したトポイソメラーゼIVに対しても抗菌活性を示すことが分かった。
したがって、ANMは、キノロン類耐性菌及びキノロン類感受性菌のいずれに対しても、強い抗菌力を有することが分かった。
表2−1に示す黄色ブドウ球菌のMRSA、CA−MRSA、及びMSSAを用い、グリコペプチド類、イミペネム類、キノロン類、及びナイボマイシン類を用い、各菌株に対する抗菌活性について検討した。
なお、表2−1に記載の各菌株は、下記文献に記載され、それぞれの研究機関から、あるいは、公的な菌株バンクであるNARSA:Networkon Antimicrobial Resistance in Staphylococcus aureusから取得することができる。各菌株と文献との対応は、表2−1に記載の通りである。
文献1:Schuhardt VT et al.,J Bacteriol,1968,Sep 96(3),734−7
文献2:Approved Standard−8th Edition.Wayne, PA:Clinical and Laboratory Standards Institute;CLSI M7−A7.
文献3:Aminaka M et al.,2008,Juntendo Medical Journal Vol54,328−336
文献4:Kuroda M et al.,Lancet,2001,Apr 21,357(9264),1225−40.
文献5:Baba T et al.,Lancet,2002,May 25,359(9320),1819−27
文献6:Novick RP et al.,J Bacteriol,1965,Aug 90,467−80
文献7:Gill SR et al.,J Bacteriol,2005,Apr,187(7),2426−38.
文献8:Diep BA et al.,Lancet,2006,Mar 4,367(9512),731−9.
β−ラクタム類としては、イミペネム(チェナム、MSD株式会社製;以下、「IPM」と称することがある。)、及びOXAを用いた。
キノロン類としては、NFLX、LVFX、OFLX、CPFX、TFLX、及びSPFXを用いた。
ナイボマイシン類としては、試験例1で用いたANM、NM及びDNMを用いた。
試験例1において、菌株を表1−1に示す菌株に代えて表2−1に示す菌株を用い、前記菌株に作用させる化合物を表1−2に示す化合物に代えて表2−2に示す化合物を用いたこと以外は、試験例1と同様の方法で菌株の培養、各化合物の調製、及びMICの測定及び評価を行った。結果を表2−2に示す。
また、ナイボマイシン類が高い抗菌活性を示した菌株に対して、グリコペプチド類及びイミペネム類は、キノロン類より高い抗菌活性を示したが、その活性は、ナイボマイシン類と比較すると低いものであった。
表3−1に示す世界各国由来のMRSAのVISA臨床分離菌株(以下、「VI−MRSA」と称することがある。)及びMSSAのVISA臨床分離菌株(以下、「VI−MSSA」と称することがある。)、並びに、表4に示すアメリカで分離されたVRSA臨床菌株に対する抗菌活性について、試験例2で用いたグリコペプチド類、β−ラクタム類、キノロン類、及びナイボマイシン類を用いて検討した。
なお、表3−1に「†」で示した菌株は、Lulitanond A,et al.,J Clin Microbiol,2009,Jul;47(7),2311−6.Epub 2009,Apr 29.に、「*」で示した菌株は、Cui,L.,X.Ma, et al.,2003,J Clin Microbiol 41(1),5−14.に、「§」で示した菌株は、Wang,J.L.,S.P.Tseng, et al.,2004,Emerg Infect Dis 10(9),1702−4.に記載されており、それぞれの各研究機関から入手できる。
また、表3−1及び表4におけるその他の菌株は、NARSAより入手できる。
試験例1において、菌株を表1−1に示す菌株に代えて表3−1及び表4に示す菌株を用い、前記菌株に作用させる物質を表1−2に示す化合物に代えて表3−2及び表4に示す化合物を用いたこと以外は、試験例1と同様の方法で菌株の培養、各化合物の調製、及びMICの測定及び評価を行った。結果を表3−2及び表4に示す。
なお、VCMのMICが4mg/L以上である菌株が、「バンコマイシン耐性菌」であり、TEICのMICが16mg/L以上である菌株が、「テイコプラニン耐性菌」である。
これに対し、ANMは、キノロン類感受性菌に対しては全て、高い活性を示し,キノロン類耐性菌株に対しても、ほとんどの株でNM及びDNMに対して同等以上の抗菌力を示した。
表5に示す腸球菌(Enterococcus faecalis)(NCTC12201及びNCTC12203以外の株は、塩野義製薬株式会社から分譲された。なお、順天堂大学細菌学教室から入手することも可能である。)を用い、キノロン類及びナイボマイシン類を用い、各菌株に対する抗菌活性について検討した。NCTC株は、いずれもバンコマイシン耐性腸球菌で、National Collection of Type Cultures(NCTC)から入手できる。なお、表5に示すキノロン類耐性腸球菌は、LVFXのMICが4mg/L以上の腸球菌を示す。
試験例1において、菌株を表1−1に示す菌株に代えて表5に示す菌株を用い、前記菌株に作用させる化合物を表1−2に示す化合物に代えて表5に示す化合物を用いたこと以外は、試験例1と同様の方法で菌株の培養、各化合物の調製、及びMICの測定及び評価を行った。結果を表5に示す。
これに対して、ANMは、キノロン耐性の腸球菌 E.faecalisに対し、NMと同等、ANMより優れた抗菌力を示し,さらに、NM及びDNMが全く無効なキノロン感受性の腸球菌 E.faecalis株に対しても、有効な抗菌活性(大部分がMIC2mg/L以下)を示した。
表6に示す腸球菌 E.faeciumを用い、キノロン類及びナイボマイシン類を用い、各菌株に対する抗菌活性について検討した。ここで、菌株名に“RPR”を含む13株は、ローヌプーランローラー(RPR)から分譲された。“JS1676”は、東京大学から分譲された。“JS1732”は、福島県立医科大学検査部から分譲された。“JS2024”及び“JS2248”の2株は、江東微生物研究所から分譲された。
なお、腸球菌 E.faeciumは、腸球菌 E.faecalisよりも薬剤耐性能が高い菌種である。
試験例1において、菌株を表1−1に示す菌株に代えて表6に示す菌株を用い、前記菌株に作用させる化合物を表1−2に示す化合物に代えて表6に示す化合物を用いたこと以外は、試験例1と同様の方法で菌株の培養、各化合物の調製、及びMICの測定及び評価を行った。結果を表6に示す。
したがって、ANMは、腸球菌 E.faecalis(表5参照)に加えて、E.faecalisよりも従来の薬剤の効きにくい腸球菌 E.faeciumに対しても、抗菌スペクトラムが拡大し、有効であることが分かった。
表7に示す肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)臨床分離株及びその変異株を用い、キノロン類、及びナイボマイシン類の、各菌株に対する抗菌活性について、MIC測定方法を用いて検討した。
なお、表7において、変異株は、親株(IID553株、杏林製薬株式会社より分譲)を段階的に、より高い活性を持ったキノロン類で選択して取得した菌株であり、gyrAがコードするDNAジャイレース(トポイソメラーゼII)のAサブユニット(GyrA)において、gyrAの変異によりアミノ酸が変異したもの、又はgrlAがコードするトポイソメラーゼIV(GrlA)において、grlAの変異によりアミノ酸が変異したものである(Fukuda,H.,and Hiramatsu,K.,“Primary targets of fluoroquinolones in Streptococcus pneumoniae.”,Antimicrob Agents Chemother,1999,43(2),410−412.;Fukuda,H.,Kishii,R.,Takei,M.,and Hosaka,M.,“Contributions of the 8−methoxy group of gatifloxacin to resistance selectivity,target preference,and antibacterial activity against Streptococcus pneumoniae.”Antimicrob Agents Chemother,2001,45(6),1649−1653.参照)。即ち、第1段キノロン類耐性変異株は、臨床分離株である親株において、表7に示す遺伝子が変異した菌株であり、第2段キノロン類耐性変異株は、前記第1段キノロン類耐性変異株において、表7に示す遺伝子が更に変異した菌株である。
試験例1において、菌株を表1−1に示す菌株に代えて表7に示す菌株を用い、前記菌株に作用させる化合物を表1−2に示す化合物に代えて表7に示す化合物を用いたこと以外は、試験例1と同様の方法で菌株の培養、各化合物の調製、及びMICの測定及び評価を行った。結果を表7に示す。
また、ANMは、キノロン感受性肺炎球菌に対して高い抗菌活性を持ち、キノロン耐性変異株に対しても同等の抗菌活性を示す点で、NM及びDNMと異なっている。このことは、ANMがトポイソメラーゼに結合する部位の立体構造がキノロン耐性変異により、ほとんど影響を受けないことを示唆する。つまり、ANMは、NM及びDNMと、異なる部位に結合することを示唆している。
表8−1及び表8−2に示す肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)を用い、キノロン類及びナイボマイシン類を用い、各菌株に対する抗菌活性について検討した。ここで、菌株名に“BCLSP”を含む23株は、三菱化学メディエンス株式会社(旧三菱化学BCL)から分譲された。菌株名に“KBSP”を含む20株は、江東微生物研究所から分譲された。菌株名に“JHSP”を含む6株は、順天堂医院から分譲された。
試験例1において、菌株を表1−1に示す菌株に代えて表8−1及び表8−2に示す菌株を用い、前記菌株に作用させる化合物を表1−2に示す化合物に代えて表8−1及び表8−2に示す化合物を用いたこと以外は、試験例1と同様の方法で菌株の培養、各化合物の調製、及びMICの測定及び評価を行った。結果を表8−1及び表8−2に示す。
なお、PENのMICが0.12mg/L以上である菌株は、髄膜炎における「ペニシリン耐性菌」である。
表8−1の結果より、ANMのキノロン類感受性肺炎球菌臨床分離株に対する抗菌活性は、NMとほぼ同等であり、DNMより高いことが分かった。また、表8−2の結果より、キノロン類耐性肺炎球菌臨床分離株に対しても、ANMの抗菌活性は、NMとほぼ同等であり、DNMより高いことが分かった。
表9〜11に示す抗酸菌(BCG、Mycobacterium smegmatis、Mycobacterium abcessus、及びMycobacterium avium)を用い、キノロン類及びナイボマイシン類を用い、各菌株に対する抗菌活性について検討した。
なお、BCG株は、国内のワクチン株として用いられているBCG Tokyo172株である。M.smegmatis株(ATCC6841)及びM.avium株(RIMD1314004)は、日本細菌学会(http://www.nacos.com/jsbac/04−4−table1.html)から分譲された。M.abcessus株(ATCC19977及びTW5646)は、東京女子医科大学病院中央検査部臨床検査科から分譲された。
M.avium株の培養条件としては、小川培地に生育した菌を滅菌耳で4mlの7HSFに摂取し、35℃で一週間培養した。得られた培養液を新たな7HSFで20倍希釈し、35℃で一夜培養した。次いで、培養液を50倍希釈し、50μLの菌液を50μLの使用培地に薬剤と共に添加した。
なお、「MacFarland 0.5」とは、マクファーランド比濁法による濁度であり、Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI) guideline M07−A8 Vol.29(2),B4.1に記載の「0.5 McFarland Turbidity Standard」に従って、測定することができる。
なお、使用培地“7H9broth+10%OADC”は、Difco Middlebrook 7H9 Broth,BD(Becton,Dickinson and Company製)に10%のBBLTM Middlebrook OADC Enrichment,BD(Becton,Dickinson and Company製)を添加したものを示し、使用培地“CAMHB”(cation−adjusted Mueller−Hinton broth)は、Mueller−Hinton broth(Becton,Dickinson and Company製)を、CLSI法に倣い、1Lあたり、Ca2+25mg及びMg2+12.5mgに調整したものを示し、使用培地“7HSF”は、1Lあたり、7H9(Becton,Dickinson and Company製)5.2g、カゼイン(半井化学薬品株式会社製)1g、グリセロール5ml、OADC(Becton,Dickinson and Company製) 100mlに調整したものを示す。
試験例1において、菌株を表1−1に示す菌株に代えて表9〜11に示す菌株を用い、前記菌株に作用させる化合物を表1−2に示す化合物に代えて表9〜11に示す化合物を用いたこと以外は、試験例1と同様の方法で菌株の培養、各化合物の調製、及びMICの測定及び評価を行った。結果を表9〜11示す。なお、表11には、培養期間2日の結果を示す。
また、表10より、NM2及びNM3は、抗酸菌 M.smegmatisに対して、ANM、NM及びDNMよりも抗菌活性が高いことが分かった。
また、表11より、NM2及びNM3は、抗酸菌 M.abcessus、及び抗酸菌 M.aviumに対して、キノロン類や他のナイボマイシン類よりも抗菌活性が高いことが分かった。
表12に示す通り、ナイボマイシン類の抗菌活性に及ぼす牛胎児血清の影響について検討した。
なお、菌株として、VISAの代表株であるMu50を用い、4mLのTBSで前培養してOD0.3に調整した後、500倍に希釈し、得られた希釈液50μLを各ウェルに添加し、最終的に100μL/ウェルとなるように、各薬剤、CAMHB培地及び血清を添加した。MIC範囲として、0.06mg/L〜8mg/Lを調べた。
Claims (9)
- 下記一般式(1)で表されるナイボマイシンエステル誘導体の少なくともいずれかを含有し、少なくとも1種の病原性細菌に有効であることを特徴とする病原性細菌用抗菌剤。
- 病原性細菌が、黄色ブドウ球菌、腸球菌、肺炎球菌、及び抗酸菌の少なくともいずれかである請求項1に記載の病原性細菌用抗菌剤。
- 黄色ブドウ球菌が、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン中間耐性黄色ブドウ球菌(VISA)、及びバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)の少なくともいずれかである請求項2に記載の病原性細菌用抗菌剤。
- 腸球菌が、キノロン類感受性腸球菌、キノロン類耐性腸球菌、及びグリコペプチド類耐性腸球菌の少なくともいずれかである請求項2に記載の病原性細菌用抗菌剤。
- 肺炎球菌が、キノロン類感受性肺炎球菌、キノロン類耐性肺炎球菌、及びβ−ラクタム類耐性肺炎球菌の少なくともいずれかである請求項2に記載の病原性細菌用抗菌剤。
- 抗酸菌が、BCG、Mycobacterium tuberculosis(結核菌)、Mycobacterium smegmatis、Mycobacterium abcessus、及びMycobacterium aviumの少なくともいずれかである請求項2に記載の病原性細菌用抗菌剤。
- 請求項1から6のいずれかに記載の病原性細菌用抗菌剤を含有することを特徴とする感染症治療薬。
- MSSA感染症治療薬、MRSA感染症治療薬、VISA感染症治療薬、及びVRSA感染症治療薬の少なくともいずれかである請求項7に記載の感染症治療薬。
- 腸球菌感染症治療薬、肺炎球菌感染症治療薬、及び抗酸菌感染症治療薬の少なくともいずれかである請求項7に記載の感染症治療薬。
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