JP2013040083A - 合わせガラス、及び合わせガラスを備えた防火設備 - Google Patents

合わせガラス、及び合わせガラスを備えた防火設備 Download PDF

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Abstract

【課題】防火性能上、最も優れたガラスである耐熱結晶化ガラスを用いた防火安全ガラスを、効率的に且つ低コストで製造する技術を提供する。
【解決手段】結晶化ガラスから構成される耐熱板ガラスを少なくとも一枚含む複数のガラス板10を、樹脂フィルム11を介して、接着剤12で貼り合わせた合わせガラス100であって、耐熱板ガラスの接着面を未研磨の状態にしてある。結晶化ガラスの平均線膨張係数は、30〜750℃の温度範囲において、−10〜10×10−7/Kである。
【選択図】図1

Description

本発明は、結晶化ガラスから構成される耐熱板ガラスを少なくとも一枚含む複数のガラス板を、樹脂フィルムを介して、接着剤で貼り合わせた合わせガラス、及び当該合わせガラスを備えた防火設備に関する。
百貨店、スーパー等の商業施設、市役所、病院、駅ビル等の公共施設、大型オフィスビル等の民間施設において、窓やドアに使用されるガラスには、万一の火災発生時に炎や煙を遮断して延焼を最小限に食い止める防火機能や、破損してもガラス破片が飛散せず、貫通孔を生じさせない安全機能が要求される。このため、最近の建物には、両者の機能を合わせ持つ防火安全ガラスが採用されるケースが増加している。
防火安全ガラスは、耐火性に優れた耐熱板ガラスを使用して製造される。耐熱板ガラスは、主に、強化ガラスでもある耐熱強化ガラス及び低膨張防火ガラスと、耐熱結晶化ガラスとに分類される。耐熱強化ガラスは、建築用板ガラスとして通常使用されるソーダ石灰ガラスを原寸切断し、エッジに特殊研磨を施した後、特殊な熱処理を行って耐熱性及び耐衝撃性を高めたものである。低膨張防火ガラスは、建築用板ガラスとして通常使用されるソーダ石灰ガラスよりもソーダ分及び石灰分を低減するとともに、ホウ酸成分を添加し、成形したガラスを原寸切断した後、熱処理を施したガラスである。
これに対して、耐熱結晶化ガラスは、成形した板ガラスに所定の熱処理を施すことによりガラス全体に微細結晶を析出させ、耐熱性を大きく高めたリチウム−アルミナ−珪酸系組成のガラスである。耐熱結晶化ガラスは、平均線膨張係数が非常に小さいため、例えば、火災発生時の消火活動による散水で急冷されても破損することがない。このため、現状では、耐熱結晶化ガラスは、防火性能上、最も優れたガラスであると言える。
耐熱結晶化ガラスは、溶融ガラスをロールアウト法により製板し、熱処理を施してガラス中に微細結晶を析出させた後、ガラスの両面を研磨して最終製品としている。ロールアウト法による成形では、ガラス表面にロール跡が残り易く、フロート法により製造したガラス板と比較してガラス表面の平坦性が劣る。ガラス表面の平坦度が低くなると、ガラスの透過像に歪みが発生したり、光の乱反射が増加するなどの問題が発生し、商品価値が低下する。従って、ロールアウト法により製造したガラス板は、最終製品とする前に、ガラス両面の研磨工程が必要となる。
ところが、耐熱結晶化ガラスは、ガラス中に微細結晶を析出させているため硬度が高くなるという特性がある。そして、このことが、ガラス面の研磨時間の増大につながり、防火安全ガラスを製造する際の作業効率の悪化や、コストアップの原因となっていた。
そこで、特許文献1では、ガラス面の研磨工程を行わずに耐火性ガラスパネルを製造することを試みている。具体的には、一定間隔を空けて複数の透明なガラス板を配置し、ガラス板の間隙に充填剤としてハイドロゲルを封入している。これにより、ガラス表面が未研磨状態であっても、ロール跡等の凹凸部分にハイドロゲルが接触することにより、光の乱反射や透過像のゆがみを抑えることができる、とされている。
特開平6−056486号公報
ガラス板の間にハイドロゲルを充填する場合、ある程度厚みのある空間を設ける必要がある。このため、特許文献1の耐火性ガラスパネルでは、全体として厚みが大きくなり、スッキリとした外観を得ることができない。また、ガラス板とハイドロゲルとの屈折率の差により、ガラスパネルの透過像の歪みが大きくなり易い。加えて、ガラス板の間にハイドロゲルを充填する作業において、ハイドロゲル中に気泡が混入すると透明感が低下することになる。このため、ハイドロゲルの充填中は細心の注意を払う必要があり、このことが作業効率の低下や製造コストのアップにもつながり得る。さらに、ハイドロゲルは紫外線により劣化したり、時間の経過とともに徐々に水分が蒸発して収縮することがある。このため、特許文献1の耐火性ガラスパネルは、屋外での長期間の使用には適さない。
このように、ハイドロゲルを封入した防火安全ガラスは、耐熱結晶化ガラスのガラス面の研磨工程を省略できるものの、依然として改善の余地は大きい。本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、防火性能上、最も優れたガラスである耐熱結晶化ガラスを用いた防火安全ガラスを、効率的に且つ低コストで製造する技術を提供することを目的とする。さらに、そのような防火安全ガラスを備えつつ、外観上も良好で、利用場所が限定されない防火設備を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明に係る合わせガラスの特徴構成は、
結晶化ガラスから構成される耐熱板ガラスを少なくとも一枚含む複数のガラス板を、樹脂フィルムを介して、接着剤で貼り合わせた合わせガラスであって、
前記耐熱板ガラスの接着面を未研磨の状態にすることにある。
上記課題で説明したように、結晶化ガラスから構成される耐熱板ガラス(耐熱結晶化ガラス)は、溶融ガラスをロールアウト法により成形していた。このため、ガラス表面を平坦にするための研磨工程が必要となっていた。
この点、本構成の合わせガラスは、耐熱板ガラスの接着面を未研磨の状態にしているが、接着面には接着剤で樹脂フィルムが貼り合わせられるので、接着剤が未研磨のガラス表面の微細な凹凸に入り込み、接着層となって平坦な表面を形成する。すなわち、ガラス表面は見かけ上、平坦化される。このため、接着面の研磨工程を行わなくても、合わせガラスの透明性を確保することができる。その結果、耐熱板ガラスのガラス表面の接着面の研磨工程が不要となるので、効率的に且つ低コストで合わせガラスを製造することが可能となる。
本発明に係る合わせガラスにおいて、
前記結晶化ガラスの平均線膨張係数は、30〜750℃の温度範囲において、−10〜10×10−7/Kであることが好ましい。
本構成の合わせガラスは、上記の平均線膨張係数を備えることから、平常時はもちろん、万一の火災発生時においても十分に小さい平均線熱膨張率を維持し、消火活動による散水で急冷されても破損することはない。
本発明に係る合わせガラスにおいて、
前記結晶化ガラスは、前記接着面の表面粗さ(Ra)が0.16μm以下であることが好ましい。
本構成の合わせガラスでは、未研磨状態にしてある耐熱板ガラスの接着面の表面粗さ(Ra)を0.16μm以下とすることにより、接着剤がガラス表面の微細な凹凸に確実に入り込み、接着層となって平坦な表面を形成するため、ガラス表面は見かけ上、十分に平坦化される。このため、耐熱板ガラスの接着面を研磨しなくても合わせガラスの透明性を十分に確保することができる。また、耐熱板ガラスと樹脂フィルムとの密着性が良好に維持されるので、合わせガラスの透過像が明確になり、良好な外観を呈した高品質の合わせガラスを実現することが可能となる。
本発明に係る合わせガラスにおいて、
前記樹脂フィルムは、テトラフルオロエチレン(TFE)−ヘキサフロオロプロピレン(HFP)−ビニリデンフルオライド(VDF)共重合体(THV)、ポリカーボネート(PC)、及びポリエチレンテレフタレート(PET)からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
防火安全ガラスに用いられる樹脂フィルムは、発煙、発火しない素材を採用する必要がある。
この点、本構成の合わせガラスに用いられる樹脂フィルムは、耐熱性に優れた樹脂であるTHV、PC、及びPETからなる群から選択されるものであるから、高温環境下でもほとんど発煙せず、発火もし難い。
なお、樹脂フィルムをガラス板の間に挟み込んで接着すると、樹脂フィルムはガラス板に対して密着し、樹脂フィルムとガラス板との間に存在する接着剤(接着層)への酸素の供給が略遮断される。このため、接着剤に関しても、高温環境下での発煙、発火は起こり難い。従って、本構成の合わせガラスは、高い防火・安全性能を備えた防火安全ガラスとなり得るものである。
本発明に係る合わせガラスにおいて、前記接着剤は紫外線硬化樹脂を主成分とする光硬化型接着剤であることが好ましい。
例えば、合わせガラスが耐熱板ガラスと通常のガラス板との組み合わせによって構成される場合、両ガラスの平均線膨張係数が大きく異なるため、熱により硬化するタイプの接着剤で貼り合わせると、加熱時にガラス板の反りや破損が発生するおそれがある。また、加熱により樹脂フィルムや接着剤が劣化し、透明感が低下することもある。
この点、本構成の合わせガラスであれば、ガラス板や樹脂フィルムに熱をかけずに接着剤を硬化させることができるので、耐熱板ガラスと通常のガラス板との組み合わせであっても、両者は確実に一体化し、ガラス板の反りや破損が発生せず、透明感も良好な合わせガラスを製造することができる。また、熱をかけながらの圧着作業が不要となるので、ガラス面に直接触れずに、ガラス板と樹脂フィルムとの接着を行うことができる。
上記課題を解決するための本発明に係る防火設備の特徴構成は、
本発明に係る合わせガラスと、
前記合わせガラスを嵌め込む枠体と、
を備え、
前記枠体に前記合わせガラスの周縁部を受け入れる溝部が設けてあり、前記合わせガラスを前記枠体に嵌め込んだ状態において、前記合わせガラスの周縁部と前記溝部との間に発生する隙間を耐熱性材料で封止していることにある。
本構成の防火設備は、本発明に係る合わせガラスのガラス周縁部と枠体の溝部との間に発生する隙間を耐熱性材料で封止している。これにより、万一の火災発生時に炎や煙を遮断して、延焼を最小限に食い止めることができる。
また、本構成の防火設備は、上述の合わせガラスを使用するものであるから、良好な外観を備えつつ、低コストで、利用場所に限定されない防火設備として高い商品価値を有している。
図1は、本発明の第一実施形態に係る合わせガラスの分解斜視図である。 図2は、本発明の第一実施形態に係る合わせガラスの斜視図である。 図3は、本発明の第二実施形態であり、第一実施形態に係る合わせガラスを用いた防火設備の正面図、及び枠体の一部を外して側方から見た防火設備の要部拡大断面図である。
以下、本発明に係る合わせガラス、及び当該合わせガラスを用いた防火設備に関する実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
<第一実施形態>
図1は、本発明の第一実施形態に係る合わせガラス100の分解斜視図である。合わせガラス100は、2枚のガラス板10(10a,10b)と、当該2枚のガラス板10の間に挟み込まれる樹脂フィルム11と、当該樹脂フィルム11を介して2枚のガラス板10を貼り合わせる接着剤から構成される接着層12とを有している。図2は、本発明の第一実施形態に係る合わせガラス100の斜視図であり、2枚のガラス板10を、樹脂フィルム11を介して接着層12により一体化した合わせガラス100を示している。合わせガラス100は、2枚のガラス板10(10a,10b)の内、少なくとも1枚が、結晶化ガラスから構成される耐熱板ガラス(耐熱結晶化ガラス)とする。これにより、高い防火・安全性能を備えた防火安全ガラスとなり得る。なお、2枚のガラス板10(10a,10b)のいずれもが耐熱結晶化ガラスであってもよい。
結晶化ガラスで構成されるガラス板(耐熱結晶化ガラス)は、溶融ガラスをロールアウト法により成形するため、ガラス表面にロール跡が残り易い。また、フロート法により製造したガラス板と比較してガラス表面の平坦性が劣る。従って、従来では、ロールアウト法により製造したガラス板を合わせガラスに使用する場合、ガラス板の表面を研磨する必要があった。この問題に関し、本発明者らは鋭意研究の結果、ガラス板の表面が未研磨の状態のままであっても、適切な接着剤を使用することにより、合わせガラスとして十分に使用可能な外観の良好なガラスを実現できることを見出した。
ガラス板10に接着剤を塗布すると、接着剤が未研磨のガラス表面の微細な凹凸に入り込み、接着層12となって平坦な表面を形成する。すなわち、ガラス表面は見かけ上、平坦化される。平坦化されたガラス面には、平坦な樹脂フィルム11が貼り合わせられる。このため、接着面の研磨工程を行わなくても、合わせガラス100の透明性を確保することができる。このように、本発明では、耐熱板ガラスのガラス表面の接着面の研磨工程が不要となるので、効率的に且つ低コストで合わせガラス100を製造することが可能となる。接着剤及び樹脂フィルム11の詳細については後述する。
図1及び図2では、2枚のガラス板10で1枚の樹脂フィルム11を挟み込むことにより合わせガラス100を構成しているが、ガラス板10は2枚を超える枚数であっても構わない。例えば、3枚のガラス板10で2枚の樹脂フィルム11を挟み込む構成が挙げられる。当該3枚のガラス板10が、ガラス板10a、ガラス板10b、及びガラス板10cで構成される場合(図示せず)、ガラス板10a、10b、10cのうち何れか1枚が耐熱結晶化ガラスであればよいが、ガラス板10a、10b、10cのうち2枚が耐熱結晶化ガラスであってもよく、3枚のガラス板の全てが耐熱結晶化ガラスであってもよい。ガラス板10が2枚を超える場合、内側に存在するガラス板10の両面に接着剤を塗布して接着層12を形成し、樹脂フィルム11を介して別のガラス板10と貼り合わされる。ガラス表面の研磨に用いる研磨剤は、酸化セリウム(CeO)、ダイヤモンド砥石等が挙げられる。
耐熱結晶化ガラスは、β−石英固溶体の結晶が析出した透明結晶化ガラスであり、平均結晶粒径が可視光波長に比べて十分に小さいことが特徴である。耐熱結晶化ガラスの好ましい特性は、30〜750℃の温度範囲において、−10〜10×10−7/Kの平均線膨張係数を有する。これにより、合わせガラス100は、平常時はもちろん、万一の火災発生時においても十分に小さい平均線熱膨張率を維持し、消火活動の散水(スプリンクラー等)で急冷されても破損することはない。
耐熱結晶化ガラスの平坦性は、例えば、表面粗さ(Ra)によって評価することができる。ここで、「表面粗さ(Ra)」とは、ガラスを加工したときのガラス表面の状態を示すもので、ガラス表面の凹凸の面積を平均化して表した数値である。表面粗さ(Ra)の測定は、例えば、Taylor−Hobson社製の触針式表面粗さ計(タリステップ)を用いてカットオフ9μmで測定する。測定値は、ガラス表面の数箇所の表面粗さを測定しその平均値で示す。表面粗さ(Ra)は、ガラスの組成及びガラスの加工方法によって大きく異なる。本発明の合わせガラスに使用する耐熱結晶化ガラスは、接着面の表面粗さ(Ra)が0.16μm以下であることが好ましい。接着面の表面粗さ(Ra)が0.16μm以下であると、接着剤が耐熱結晶化ガラスの未研磨面の微細な凹凸(表面粗さ)に確実に入り込み、接着層12となって平坦な表面を形成するため、ガラス表面は見かけ上、十分に平坦化される。このため、耐熱板ガラスの接着面を研磨しなくても合わせガラス100の透明性を十分に確保することができる。また、耐熱板ガラスと樹脂フィルム11との密着性が良好に維持されるので、良好な外観を呈した高品質の合わせガラス100を実現することが可能となる。接着面の表面粗さ(Ra)が0.16μmを上回ると、接着剤が未研磨面の凹凸部分に完全に入り込まず、耐熱結晶化ガラスと樹脂フィルム11とを十分に密着させることができないため、合わせガラス100の透過像がぼやけ、透明感も低下する。
耐熱結晶化ガラスは、組成として、SiO 60〜70重量%、Al 17〜27重量%、LiO 3〜6重量%、NaO 0.05〜1重量%、KO 0.1〜1重量%、ZrO 1〜3重量%、TiO 1〜3重量%、MgO 0.1〜0.9重量%、P 0.05〜2重量%、As 0〜2重量%、Sb 0〜2重量%を含有することが好ましい。この組成であれば、耐熱結晶化ガラスの平均線熱膨張係数を−10〜10×10−7/Kの範囲とすることができる。また、ロールアウト法でガラス板を成形した場合、ガラス表面の表面粗さ(Ra)を0.16μm以下に抑えることができる。耐熱結晶化ガラスの各組成についての詳細を以下に説明する。
SiOは、網目状のネットワーク構造を形成するとともに結晶を構成する成分である。SiO含有量が60重量%より少ないと平均線膨張係数が高くなるとともに機械的強度も低くなる。一方、70重量%より多いとガラスの溶解が困難となり、泡や失透物等の欠陥が発生する。SiO含有量は、64〜66重量%であることがさらに好ましい。これにより、所定の平均線膨張係数を維持するとともに、ガラスの透明性も維持することができる。
Alは、結晶を構成する成分である。Al含有量が17重量%より少ないとガラスの失透性が強くなるとともに化学耐久性が低下する。一方、27重量%より多いとガラスの粘度が高くなりすぎて均一なガラスが得られなくなる。Al含有量は、21〜23重量%であることがさらに好ましい。これにより、化学耐久性を維持するとともに、ガラスの透明性も維持することができる。
LiOは、結晶を構成する成分である。LiO含有量が3重量%より少ないと所望の結晶を形成することが難しくなるとともに溶解性も悪くなる。一方、6重量%より多いとガラスの失透性が強くなる。Al含有量は、3〜5重量%であることがさらに好ましい。これにより、所望の結晶化を形成して耐熱性を高めることができるとともに、ガラスの透明性も維持することができる。
NaOは、ガラスの溶解性を向上させる成分である。NaO含有量が0.05重量%より少ないと所望の溶解性が得られない。一方、1重量%より多いとガラスの平均線膨張係数及び誘電損失が大きくなる。NaO含有量は、0.4〜0.6重量%であることがさらに好ましい。これにより、所定の平均線膨張係数を維持するとともに、ガラスの均一性を維持することができる。
Oは、ガラスの溶解性を向上させる成分である。KO含有量が0.1重量%より少ないと所望の溶解性が得られない。一方、1重量%より多いとガラスの平均線膨張係数及び誘電損失が大きくなる。KO含有量は、0.2〜0.4重量%であることがさらに好ましい。これにより、所定の平均線膨張係数を維持するとともに、ガラスの均一性を維持することができる。
尚、NaO及びKOの合計含有量は、0.5〜2重量%であることが好ましい。NaO及びKOの合計含有量が0.5重量%より少ない場合は、ガラスの溶解性が低下し、2重量%を超えるとガラスの強度や耐熱性が低下する。
ZrOは、核形成剤として作用する成分である。ZrO含有量が1重量%より少ないと安定して結晶化しないとともに、粗く大きい結晶が形成されることから、透明な結晶化ガラスを得ることが困難となる。一方、3重量%を超えるとジルコニアの未分解物が生成し、ガラス中に失透物が発生する。
TiOは、核形成剤として作用する成分である。TiO含有量が1重量%より少ないと結晶化の促進効果が得られず、所望の結晶が得られなくなる。一方、3重量%より多いと、液相温度が高くなることにより、成形作業が困難となる。さらに、耐熱結晶化ガラスが褐色に呈色して透明感が損なわれる。TiO含有量は、1.3〜3重量%であることがさらに好ましい。これにより、所望の結晶化度を達成して耐熱性を高めることができるとともに、ガラスの透明性も維持することができる。
尚、ZrO及びTiOの合計含有量は、2.6〜5重量%であることが好ましい。ZrO及びTiOの合計含有量が2.6重量%より少ない場合は、結晶化の促進効果が得られず、機械的強度が低下する。一方、合計含有量が5重量%を超えると失透性が強くなり、均一な結晶化ガラスを得ることが困難となる。
は、核形成剤として含有するZrOの難溶解性を改善する成分である。P含有量が0.5重量%より少ないとその改善効果がない。一方、2重量%より多いと相分離し易くなるとともに結晶生成量が多くなり、透明性が低下する。P含有量は、1〜2重量%であることがさらに好ましい。これにより、所望の結晶化が得られるとともに、ガラスの透明性も維持することができる。
また、As及びSbは清澄剤として添加され、その合計含有量は、0.2〜2重量%であることが好ましい。これにより、ガラスの溶解性、作業性、均一性を向上させることができる。合計含有量が0.2%より少なくなると清澄効果が低下し、2重量%を超えると環境上好ましくない。As及びSbのより好ましい合計含有量は、0.2〜0.4重量%である。
更に、本発明で利用される耐熱結晶化ガラスは、CaO、PbO、F、Cl又はCeO2等の任意の成分を其々0.5〜3重量%含有してもよい。これにより、所望の用途に適した合わせガラス100を構成することができる。
また、本発明で利用される耐熱結晶化ガラスの厚みは1〜12mmが好ましく、4〜12mmがより好ましい。これにより、合わせガラス100は、防火設備として、所望の防火・安全性能を備えることが可能となる。また、上記厚み範囲の耐熱結晶化ガラスは、通常のガラス板と互換性があるため、従前の使用場所にそのまま適用することができる。
防火安全ガラスに用いられる樹脂フィルム11は、発煙、発火しない素材を採用する必要がある。このような樹脂フィルム11は、耐熱性に優れた樹脂であるテトラフルオロエチレン(TFE)−ヘキサフロオロプロピレン(HFP)−ビニリデンフルオライド(VDF)共重合体(THV)、ポリカーボネート(PC)、及びポリエチレンテレフタレート(PET)からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。その他、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、フロリネーテッドエチレンプロピレン(FEP)、4フッ化エチレン−パーフロロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、4フッ化エチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)等も使用可能である。また、樹脂フィルム11の厚さは、0.2〜2mmが好ましい。これにより、合わせガラス100は、高い防火・安全性能を備えた防火安全ガラスとなり得る。樹脂フィルム11の厚みが0.2mm未満では、合わせガラス100が所望の耐衝撃性を得ることは困難である。一方、樹脂フィルム11の厚みが2mmを超えると、合わせガラス100の透明性を確保することが困難となるだけでなく、万一の火災発生時に樹脂フィルム11が溶融・分解することで煙の発生量が大幅に増加するおそれがある。
ガラス板10と樹脂フィルム11とを接着させる接着剤としては、硬化前は比較的低粘度の液状接着剤(例えば、熱硬化性樹脂を主成分とするもの、紫外線硬化性樹脂を主成分とするもの等)を使用できるが、紫外線硬化樹脂を主成分とする光硬化型接着剤が好ましい。合わせガラス100が耐熱板ガラスと通常のガラス板との組み合わせである場合、両ガラスの平均線膨張係数が大きく異なるため、熱により硬化するタイプの接着剤で貼り合わせると、加熱時にガラス板10の反りや破損が発生するおそれがある。また、加熱により樹脂フィルム11や接着剤が劣化し、透明感が低下することもある。これに対して、光硬化型接着剤を用いると、ガラス板10や樹脂フィルム11に熱をかけずに接着層12を硬化させることができる。従って、耐熱板ガラスと通常のガラス板との組み合わせであっても、両者は確実に一体化し、ガラス板10の反りや破損が発生せず、透明感も良好な合わせガラス100を製造することができる。また、熱をかけながらの圧着作業が不要となるので、ガラス面に直接触れずに、ガラス板10と樹脂フィルム11との接着を行うことができる。従って、合わせガラス100の透明感は低下しない。
紫外線硬化樹脂としては、例えば、紫外線に対して反応するメタクロイル基やアントラセン基等の官能基をドープしたアクリル系樹脂等が挙げられる。光硬化型接着剤は、ガラス板10の未研磨面にバーコーターやスピンコーター等を使用して均一な膜厚に塗布され、接着層12が形成される。これにより、未研磨面の凹凸が見かけ上、平坦化される。次いで、平坦な表面を有する接着層12上に樹脂フィルム11が貼り合わせられ、当該樹脂フィルム11上にさらに紫外線硬化型接着剤を所望の厚みに塗布され、別のガラス板10が貼り合わされる。この状態で、ガラス板10の側方から紫外線を照射すると、接着層12が硬化し、一体の合わせガラス100が完成する。
上記第一実施形態に係る合わせガラス100の構成を例示する。ただし、本発明の合わせガラスは、以下の構成例に限定されない。
(1)耐熱結晶化ガラス+光硬化性接着剤+ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム+光硬化性接着剤+耐熱結晶化ガラス
(2)耐熱結晶化ガラス+光硬化性接着剤+ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム+光硬化性接着剤+他の耐熱板ガラス(例えば、無アルカリガラス基板(日本電気硝子社製OA−10)、高歪点ガラス基板(日本電気硝子社製PP8)等)
(3)他の耐熱板ガラス+光硬化性接着剤+ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム+光硬化性接着剤+耐熱結晶化ガラス+光硬化性接着剤+ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム+光硬化性接着剤+他の耐熱板ガラス
<第二実施形態>
図3は、本発明の第二実施形態であり、第一実施形態に係る合わせガラス100を用いた防火設備200の正面図、及び枠体20の一部を外して側方から見た防火設備200の要部拡大断面図である。要部拡大断面図中の矢印は、防火設備200の正面側を示したものである。図3に示されるように、防火設備200は、合わせガラス100を、枠体20に嵌め込んで、合わせガラス100の周縁部と枠体20の溝部21との間に発生する隙間を耐熱性材料で封止して構成される。具体的には、枠体20には合わせガラス100の周縁部を受け入れる溝部21が形成されており、当該溝部21の幅は合わせガラス100の厚みより大きく構成されている。合わせガラス100の周縁部外側には、耐熱性の材料であるセラミックファイバーブランケット22が設けられている。合わせガラス100の周縁部と溝部21との間の隙間には、防火性シリコーン23が充填されている。これにより、万一の火災発生時に炎や煙を遮断して、延焼を最小限に食い止めることができる。
防火設備の作製方法の例としては、以下の方法があるが、この作製方法に限定されない。
先ず、合わせガラス100の左右側面及び下部に取り付けられる枠体20の一部を作製する。防火設備に用いられる鋼材(例えば、アルミニウム合金板、溶融亜鉛メッキ鋼板等)をコの字型の断面を有する長尺物に加工し、内側に合わせガラス100の周縁部を受け入れる溝部21を形成する。長尺物を合わせガラス100の形状に合うように組み合わせ、内側の溝部21に沿って合わせガラス100をスライドさせ、合わせガラス100の三方を枠体20に嵌め込む。その後、別に作製した枠体20の一部であるコの字型の断面を有する長尺物を合わせガラス100の上部に嵌め込み、完全な枠体20とする。合わせガラス100の周縁部と枠体20の溝部21との間に発生する隙間には、防火性シリコーン23を封入する。防火性シリコーン23は、例えば、SE5007(東レ・ダウコーニング社製)、シーラント40N(信越シリコーン社製)、シーラント74(信越シリコーン社製)等を、コーキングガンを用いて充填される。
本発明に係る片面未研磨の耐熱結晶化ガラスを用いて作製した合わせガラスと、両面研磨の耐熱結晶化ガラスを用いて作製した合わせガラスとについて、其々の合わせガラスの透過像の歪み、及び光の乱反射について比較検証した。
<実施例1>
本実施例で用いられる耐熱結晶化ガラスは、最終的な組成がSiO 67重量%、Al 23重量%、LiO 4重量%、ZrO 3重量%、TiO 2重量%となるように、溶融したガラスをロールアウト法により製板し、最高温度950℃で結晶化した後、ガラス片面を研磨して作製された(商品名:ファイアライト、日本電気硝子社製)。耐熱結晶化ガラスの未研磨面の表面粗さ(Ra)は0.15μmであり、研磨面の表面粗さ(Ra)は0.025μmである。この耐熱結晶化ガラスは、30〜380℃の温度範囲において、−2×10−7/Kの平均線膨張係数を有し、幅1200mm×高さ2400mm×厚み4mmのサイズを有する。
合わせガラスの作製において、先ず耐熱結晶化ガラスの未研磨面に紫外線硬化型接着剤を塗布し、0.2mm厚のポリカーボネートフィルムを貼り付け後、紫外線照射により接着剤を硬化させた。次いで、ポリカーボネートフィルムの全面に紫外線硬化型接着剤を塗布し、3mmのソーダライム製のフロートガラスを貼り合わせた後、紫外線照射により接着剤を硬化させ、合わせガラスを作製した。紫外線硬化型接着剤に用いられる紫外線硬化樹脂は、アクリル系樹脂を用いた。
<比較例1>
本比較例で用いられる耐熱結晶化ガラスは、最終的な組成がSiO 67重量%、Al 23重量%、LiO 4重量%、ZrO 3重量%、TiO 2重量%となるように、溶融したガラスをロールアウト法により製板し、最高温度950℃で結晶化した後、ガラス両面を研磨して作製された(商品名:ファイアライト、日本電気硝子社製)。耐熱結晶化ガラスの研磨面の表面粗さ(Ra)は、両面とも0.025μmである。この耐熱結晶化ガラスは、30〜380℃の温度範囲において、−2×10−7/Kの平均線膨張係数を有し、幅1200mm×高さ2400mm×厚み4mmのサイズを有する。
合わせガラスは、実施例1と同じ方法で作製した。
<像確認試験1>
実施例1及び比較例1で作製した合わせガラスを用いて、其々の合わせガラスを介した像のゆがみ及び光の乱反射を、以下の方法で確認した。
合わせガラスの一方のガラス面から1m離れた場所に観察者を配置し、合わせガラスの他方のガラス面から1m離れた場所に蛍光灯を設置した。観察者は、合わせガラスを通して、蛍光灯の像のゆがみ及び光の乱反射を確認した。さらに、観察者は、蛍光灯が配されている地点と略同じ位置から、合わせガラスに映り込んだ蛍光灯の像のゆがみ及び光の乱反射を確認した。
その結果、実施例1及び比較例1の合わせガラスは、合わせガラスを通した場合、及び合わせガラスに映り込んだ場合の何れの場合においても、蛍光灯の像のゆがみ及び光の乱反射について差異は認められなかった。
<実施例2>
耐熱結晶化ガラスとして、未研磨面の表面粗さ(Ra)が0.16μmであること以外は、実施例1と同じ条件のものを使用した。
合わせガラスの作製において、先ず耐熱結晶化ガラスの未研磨面に紫外線硬化型接着剤を塗布し、0.2mm厚のポリカーボネートフィルムを貼り付け後、紫外線照射により接着剤を硬化させた。次いで、ポリカーボネートフィルムの全面に紫外線硬化型接着剤を塗布し、耐熱結晶化ガラスの未研磨面を貼り合わせた後、紫外線照射により接着剤を硬化させ、合わせガラスを作製した。紫外線硬化型接着剤に用いられる紫外線硬化樹脂は、アクリル系樹脂を用いた。
<比較例2>
耐熱結晶化ガラスは、比較例1と同じ耐熱結晶化ガラスを使用し、実施例2と同じ方法で合わせガラスを作製した。
<像確認試験2>
合わせガラスに映る蛍光灯の像のゆがみ及び光の乱反射を、上記実施例1と同様の方法で確認した。
その結果、実施例2及び比較例2の合わせガラスは、合わせガラスを通した場合、及び合わせガラスに映り込んだ場合の何れの場合においても、蛍光灯の像のゆがみ及び光の乱反射について差異は認められなかった。
本発明に係る合わせガラス、及び合わせガラスを備えた防火設備は、百貨店、スーパー等の商業施設、市役所、病院、駅ビル等の公共施設、大型オフィスビル等の民間施設において、防火安全ガラス及び防火設備として利用することができる。
10(10a,10b) ガラス板
11 樹脂フィルム
12 接着層
20 枠体
21 溝部
22 セラミックファイバーブランケット
23 防火性シリコーン
100 合わせガラス
200 防火設備

Claims (6)

  1. 結晶化ガラスから構成される耐熱板ガラスを少なくとも一枚含む複数のガラス板を、樹脂フィルムを介して、接着剤で貼り合わせた合わせガラスであって、
    前記耐熱板ガラスの接着面を未研磨の状態にしてある合わせガラス。
  2. 前記結晶化ガラスの平均線膨張係数は、30〜750℃の温度範囲において、−10〜10×10−7/Kである請求項1に記載の合わせガラス。
  3. 前記結晶化ガラスは、前記接着面の表面粗さ(Ra)が0.16μm以下である請求項1又は2に記載の合わせガラス。
  4. 前記樹脂フィルムは、テトラフルオロエチレン(TFE)−ヘキサフロオロプロピレン(HFP)−ビニリデンフルオライド(VDF)共重合体(THV)、ポリカーボネート(PC)、及びポリエチレンテレフタレート(PET)からなる群から選択される少なくとも一つである請求項1〜3の何れか一項に記載の合わせガラス。
  5. 前記接着剤は、紫外線硬化樹脂を主成分とする光硬化型接着剤である請求項1〜4の何れか一項に記載の合わせガラス。
  6. 請求項1〜5の何れか一項に記載の合わせガラスと、
    前記合わせガラスを嵌め込む枠体と、
    を備え、
    前記枠体に前記合わせガラスの周縁部を受け入れる溝部が設けてあり、前記合わせガラスを前記枠体に嵌め込んだ状態において、前記合わせガラスの周縁部と前記溝部との間に発生する隙間を耐熱性材料で封止してある防火設備。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2015174527A (ja) * 2014-03-14 2015-10-05 三菱重工交通機器エンジニアリング株式会社 プラットホームドア装置のドア
JPWO2014162718A1 (ja) * 2013-03-31 2017-02-16 積水化学工業株式会社 熱膨張性耐火材料およびそれを用いた樹脂サッシの防火構造

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